データを交えて確認する「適正人件費」の求め方・考え方

書いてあること

  • 主な読者:適正人件費の基本的な計算方法を知りたい経営者、人事担当者
  • 課題:相対的な指標ばかりで、具体的にどれくらいが妥当なのか、はっきりした答えがない
  • 解決策:人件費は付加価値の分配である。付加価値を基準に適正人件費を検討する

1 適正人件費の考え方

コストにはさまざまな種類がありますが、人件費はコントロールがとても難しいものです。「給与で社員と会話ができたら一流の経営者」と言えるほど、

経営者の評価を給与として社員に伝え、やる気を引き出す

ことは容易ではありません。

一方、人件費は収益、あるいは借金から支払うコストですから、適正な水準にコントロールしなければなりません。そこで登場するのが「適正人件費」です。この記事では、適正人件費を求めるための基本的な考え方を紹介していきます。

2 労働分配率と付加価値を確認する

本来、適正人件費は絶対的に決められるべきものですが、一般的には、

  • 労働分配率=人件費÷付加価値×100

を計算し、同業他社などと比較して相対的な目安を求めます。労働分配率とは、

付加価値に対する人件費の割合

です。そして、付加価値とは、

企業が生産・サービス活動によって新たに生み出した価値

です。付加価値は企業の実力であり、同業他社などと差別化を図る上での基本です。付加価値の求め方には、

  • 日銀方式:経常利益+人件費+賃借料+減価償却費+金融費用+租税公課
  • 中小企業庁方式:売上高-外部購入価値(材料費、買入部品費、外注加工費など)

などがあります。

労働分配率と付加価値は、経済産業省「企業活動基本調査」で確認できます。これにより、

同業他社と自社の労働分配率や付加価値を比較することで、相対的な妥当性を知ること

ができます。なお、この調査では労働分配率と付加価値を次のように計算しています。

  • 労働分配率=給与総額÷付加価値×100
  • 付加価値=営業利益+給与総額+減価償却費+福利厚生費+動産・不動産賃借料+租税公課

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3 モデル給与額を確認する

同業他社がどのくらい給与を支払っているのかを確認することで、より具体的なイメージをつかむことができます。ここでは厚生労働省「令和2年賃金構造基本統計調査」のデータを紹介します。

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4 適正人件費を絶対的に決定する

以上のデータから、相対的な適正人件費を確認することができます。ただ、適正人件費は各社の状況によって絶対的に決定すべきものです。極端にいえば、

同業他社よりも給与が高くても経営が安定していればよいし、逆に同業他社よりも給与が低くても社員がやりがいを感じているならよい

ということです。

自社の給与を上げることを検討する場合、次の2つの方法があります。

  • 人件費以外のコストや利益を削減して、人件費枠を増やす方法
  • 収益を拡大し、それによって人件費枠も増やす方法

1.は現在の収益構造の中でのやりくりといえ、2.は新規事業の開発などをする攻めの方法といえます。いずれにせよ、人件費(給与)は付加価値の分配なので、付加価値の支払い能力が重要です。次の指標などが良好であれば適正人件費を高めに設定でき、逆の場合もしかりです。

  • 年間の付加価値額
  • 付加価値率(=付加価値÷売上高×100)
  • 労働分配率(=人件費÷付加価値×100)

5 (おさらい)適正人件費の求め方

適正人件費の求め方を整理しましょう。まずは現在の労働分配率を計算し、業界平均との差異を分析して、適正人件費を設定する方法です。その際、モデル支給額を確認すると、具体的なイメージが湧きます。

こうしてイメージした適正人件費に、企業の経営戦略を加味します。例えば、新規事業を開発する場合、目標売上高を決定し、そこから予想される付加価値を基に適正人件費を検討します。詳細は割愛しますが、目標利益を考慮した損益分岐点は、

  • (固定費+目標利益)÷限界利益率

によって求めることができます。この場合の付加価値を検討し、適正人件費を求めます。

以上(2021年9月)

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画像:pixta

エコドライブのすすめ(2021/09号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

今、地球温暖化により、異常気象、海面上昇に伴う浸水被害、生態系の変化、森林消失の危険などが深刻な問題になっています。
地球温暖化を防ぐには、私たちが日々のくらし中で二酸化炭素(CO2)をなるべく出さないことが大切であり、そのために私たちがすぐにできる取組みは身近にたくさんあります。
その一つが、自動車の「エコドライブ」※の実践です。
ドライバー一人ひとりの日々の積み重ねが地球環境の改善につながります。

※「エコドライブ」という言葉には、エコロジカルドライビング(環境に配慮した運転)とエコノミカルドライビング(経済的な運転)の2つの意味があります。

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1.エコドライブ10のすすめ

エコドライブとは、燃料消費量やCO2排出量を減らし、地球温暖化防止につなげる運転技術や心がけであり、以下の「エコドライブ10のすすめ」を実践する運転です。

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出典 経済産業省ウェブサイト 2020年1月27日エコドライブ普及連絡会発表資料
https://www.meti.go.jp/press/2019/01/20200127004/20200127004.html (2021.8.17閲覧)より当社作成

2.燃費改善の効果

エコドライブ実践による燃費改善は、CO2排出量の削減と燃料代の節約につながります。

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日々の運転で燃費を管理しましょう。

※COOL CHOICE ウェブサイト内に「エコドライブ実践ツール」として燃費管理の方法が掲載されています。
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/ecodriver/point/  (2021.8.17閲覧) 

3.安全運転の効果

エコドライブを実践することは安全運転を行うことと同じ効果があります。
急発進、急ブレーキをなくし、車間距離を適切にとれば、周りの交通状況に柔軟に対応することができ、交通事故防止の効果を得られます。
仮に日本中のすべてのドライバーがエコドライブを徹底したら交通事故発生件数は約半分になると言われています。

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※出典 COOL CHOICE ウェブサイト
https://ondankataisaku.env.go.jp/coolchoice/ecodriver/about/03.html (2021.8.17閲覧)より当社作成

運転の仕方は、その人の性格を映すといわれます。エコドライブの実践で、スマートで安全な運転を心がければ、周りの人からの評価・信頼にも繋がります。

以上(2021年9月)

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画像:amanaimages

【与信管理】海外ビジネスにおけるリスクマネジメント

書いてあること

  • 主な読者:海外企業と取引することになり、リスクマネジメントをしたい経営者
  • 課題:何に注意したらよいのか、どこから情報を入手できるのか分からない
  • 解決策:リスクを調査して対応方法(予防・除去、回避、移転、保有)を決定する

1 リスクマネジメントの基本的な考え方

外国企業を相手にする海外ビジネスは、国内企業を相手にする場合と比べて、為替相場やビジネスに対する意識の違いなど不確実な部分が大きくなります。そこで重要になるのがリスクマネジメントです。

リスクマネジメントでは、まず、企業を取り巻く外部・内部の環境を調査した上で、どのようなリスクがあるのかを確認します。その後、調査・確認によって明らかになったリスクの評価・分析を行います。具体的には、リスクの発生要因と発生確率、リスクの大きさ(発生時の被害額)の見積もりを立てます。リスクが企業にもたらす損失は一定ではないため、リスクの評価・分析は、先入観にとらわれることなく客観的で冷静な視点から行うことが求められます。

リスクの調査・確認、評価・分析は、リスクマネジメントの基礎になるものであり、継続的に取り組むことで効果的なリスクマネジメントの実践が可能となります。

2 リスクへの対応の基本的な考え方

1)リスクの予防・除去

例えば、信用調査会社、取引先銀行、支援機関などを通じて必要な情報を収集、分析することは、リスクの予防・除去の第一歩につながります。リスクを完全に予防・除去することは困難なため、リスク調査・確認、評価・分析において、可能な限りさまざまなリスクを想定して対応策を準備することが重要です。

2)リスクの回避

リスクが大きく対応が不可能と判断された場合、そのリスクに関わる一切の企業活動を速やかに停止します。例えば、海外ビジネスでは、「交渉相手の信用が著しく低い場合」「投資先の国内の政情が著しく不安定な場合」などのケースが該当します。企業活動を停止する際の基準(ルール)を策定し、策定した基準に該当した場合は、ためらわずに迅速に行動することが重要です。

3)リスクの移転

損害保険などに加入することで、リスク(発生した損失)を保険会社に移転する方法です。ただし、全てのリスクを補填できる完全な保険商品は存在しないため、各企業の中核となる業務に手厚い保険を掛けることになります。

4)リスクの保有

自社への影響が小さいと評価・分析されたリスクへの対応手段で、対応するために必要な資金を手当てするものです。具体的には、貸倒引当金の計上などによって万一の事態に備えます。前述したリスクの移転を併用し、自社で保有できない部分について保険に加入することもあります。

3 契約内容を巡るトラブルへの備え

1)海外信用調査

海外企業と取引する場合、事前に信用調査を行い、相手方の財務状況などを確認することが不可欠です。信用調査の具体的な方法として次が挙げられます。

  • Dun & Bradstreet(米国)、Experian(アイルランド)など国際的な信用調査会社を通じて調査する
  • 取引相手から近年の会計書類を受け取って調査する
  • 取引銀行に依頼して銀行照会を行う

データベースサービス「日経テレコン21」の「D&Bグローバルプロファイル」や「エクスペリアン企業調査レポート」を利用すれば、Dun & BradstreetやExperianがまとめた海外企業の信用情報を入手できます。

また、国内の大手信用調査会社である東京商工リサーチは、Dun & Bradstreetと業務提携し、海外の企業情報を提供しています。

■日経テレコン21■
https://t21.nikkei.co.jp/
■東京商工リサーチ「D&Bレポート(海外企業調査レポート)」■
https://www.tsr-net.co.jp/service/product/dnb_report/

2)英文契約書作成

海外企業と取引する場合、契約書は英文で作成するのが一般的です。後の誤解が生じるのを防ぐためにも、契約書は分かりやすい内容にすることが基本です。しかし、実際は米英の法律家による長大な契約書の例文がそのまま使用されることがあります。米国などの法律家が長年かかって作成した契約書の例文は、完成度が高く、条項の見落としがないと考えられているからです。

こうした例文を用いて契約書を作成する場合、必ず日本語訳を添付し、内容を徹底的に理解し、企業内外での誤解を回避することが必要です。また、当然のことながら、完成した契約条項の内容を詳細まで把握しなければなりません。トラブルが発生し、相手方に問題となる条項を指摘された場合、「理解していなかった」という言い訳は通用しません。

3)仲裁による紛争の解決

トラブルが発生し、当事者間の話し合いで解決できない場合、仲裁か訴訟かの選択になります。将来のトラブルに備えて一般に広く行われているのは、仲裁によって解決する旨を合意し、契約書に仲裁条項または仲裁約款を挿入しておく方法です。

日本貿易振興機構「貿易・投資相談Q&A クレームなどの紛争解決のための仲裁」によると、仲裁と訴訟との比較は次の通りです。

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仲裁は、私法上の権利やその他の法律関係に関する紛争が生じた場合、または生じる恐れのある紛争を、訴訟による解決ではなく、相互の合意の上で当事者以外の第三者に解決を委ね、その判断に服する制度です。仲裁判断は裁判判決と同様、相手方がその履行を拒否したとしても裁判所による執行が可能となり、日本国内はもとより、「外国仲裁判断の承認および執行に関する条約(ニューヨーク条約)」の締約国であれば外国での執行も可能です。

解決を委ねる第三者としては仲裁機関を選定するのが一般的です。常設の仲裁機関としては、日本商事仲裁協会や、アメリカ仲裁協会、ロンドン国際仲裁裁判所、国際商業会議所などがあります。仲裁地は、言語や距離的な側面を考慮すると自国の機関を選択できれば最良ですが、自社と相手方の双方の合意が難しいときは、第三国の機関を選定するのも一案です。仲裁条項には、「どの仲裁機関の」「どの仲裁規定に従って」「どこの仲裁地で行うか」の3点を明記することが重要です。

■日本貿易振興機構「貿易・投資相談Q&A」■
https://www.jetro.go.jp/world/qa/
■日本商事仲裁協会■
https://www.jcaa.or.jp/

4)専門家の利用

契約交渉や契約書の作成は、弁護士や公認会計士などの専門家に依頼するほうが無難です。投資先である現地の法律と税務については、現地の専門家とコンサルティング契約を結ぶとよいでしょう。

また、事前に日本で調べたい事項については、外国法事務弁護士を利用するとよいでしょう。外国法事務弁護士は、法務大臣が外国法事務弁護士となる資格を承認し、日本弁護士連合会の名簿に登録された者で、自分が資格を有する国(原資格国)の法律と一定条件の下で日本以外の第三国の法律事務を行うことを業務とします。

渉外的要素を有する法律事務については、日本の弁護士と共同して事業を営むことができ、日本で行われる国際仲裁事件の手続きにおいては、日本の法律・外国の法律にかかわらず、日本の弁護士と同様に当事者を代理して活動できます。

4 取引先が倒産した場合への備え

1)海外取引先の倒産

海外取引先が倒産した場合、売掛金などの債権回収は困難です。従って、海外取引先が倒産した場合は、「技術提供契約の場合には、技術資料を引き揚げる」「自社保有と主張できる商品を回収する」「現地の法制度に詳しい弁護士の意見を聞いて違法性のある行為を避ける」など、できることを迅速かつ冷静に行うことが大切です。

2)保険による対処

貿易取引において「輸出ができない」「代金回収ができない」といった取引のリスクをカバーするために保険商品が利用されます。これらは貿易保険といい、日本貿易保険が扱う保険商品です。なお、貿易取引では一般的に、輸送中の貨物の破損・毀損などをカバーするための保険も利用されます。これらは海上保険といい、損害保険会社が扱う保険商品です。

各保険商品の詳細は、日本貿易保険もしくは損害保険会社などで確認できます。

■日本貿易保険■
https://www.nexi.go.jp/

5 留意したい外的要因・内的要因

1)外的要因

外的要因とは、相手先国の政策変更、政治・経済・社会環境の変化など、自社以外の要因から派生するリスク(いわゆるカントリーリスク)です。例えば、次のようなリスクが挙げられます。

  • 相手先国のデフォルト(債務不履行)
  • インフレの急進
  • 通貨の急落
  • 内乱や革命
  • 外資規制
  • 政権交代による経済・通商政策の変更
  • 地震や洪水などの自然災害

海外進出計画を立てる際は、販売計画など収支・採算面に関する調査にばかり重きを置いて、外的要因の調査分析はおろそかになりがちです。しかし、実際には外的要因から派生するリスクが海外進出企業の活動の制約となることが多くあります。そのため、外的要因の調査は事前に行う必要があります。政情が不安定な国はもとより、政情が安定していても製造・環境基準や会計基準、商習慣などに違いがある国については、外的要因を冷静かつ慎重に調査分析することが必要です。

2)内的要因

内的要因とは、自社の情報収集能力、調査分析能力、品質管理能力、労務管理能力、資金調達力、現地社会への貢献力など自社内の弱点から派生するリスクです。例えば、次のようなリスクが挙げられます。

  • 事業部間のコミュニケーションが円滑でない
  • 技術系の社員と事務系の社員の認識にギャップがある
  • 営業部門と生産部門の認識にギャップがある
  • 本社と現場の認識にギャップがある
  • ビジョン、重点戦略が現場の一般社員にまで浸透していない
  • 短期的、個別的対応が中心で中長期的視点に立った戦略が乏しい
  • 組織が保守的で機動性、柔軟性に欠ける

海外進出に際しては、関連部門との連携なしには、効果的なリスクマネジメントの実現は困難であるといえるでしょう。

以上(2021年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

【規程・文例集】業務効率化のために見直したい「職務分掌規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:法改正に対応した会社規程のひな型が欲しい経営者、人事労務担当者
  • 課題:どの情報が正しいか分からない。シンプルで分かりやすい情報が欲しい
  • 解決策:弁護士や社会保険労務士など、専門家が監修したひな型を利用する

1 職務分掌とは

職務分掌とは、次のように各部門や従業員の役割と責任を決めることです。

  • 企業で行われている職務の内容、遂行方法、難易度、重複(1つの職務を複数の従業員が担当しているなど)を把握する
  • 職務の担当部門を決定する
  • 職務を遂行するための職位ごとの権限を決定する
  • 決定した内容を文書化し、それに従って活動する

中小企業では、各部門の職務や職位の権限の境界が曖昧なことが少なくありませんが、職務分掌を定めることで社内に規律が生まれ、部門間のけん制機能も働くようになります。

以降で紹介するひな型は、一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定める内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

2 職務分掌規程のひな型

【職務分掌規程のひな型】

第1章 総則
第1条(目的)

本規程は、会社の経営方針を実施するための組織機構、職務分掌、職務権限に関する基準を明確に定め、職務の効率的かつ円滑な遂行と責任体制の明確化を図ることを目的とする。

第2条(用語の定義)
本規程において各用語の定義は、次に定めるところによる。

  • 組織
    経営方針を実施するために系統的に編成された機構をいう。
  • 職位
    組織における職務遂行上の地位をいう。
  • 職務分掌
    各組織に配分された一定範囲の責任業務をいう。
  • 職務権限
    職位にある者に与えられた職務遂行上の権限をいう。

第2章 組織機構
第3条(組織単位)

組織機構の単位は、機能別に編成された部・課とする。この他、必要に応じて横断的なプロジェクトチームを編成することがある。

第4条(組織図)
組織図は別表第1「組織図」の通りとする。

第5条(組織運営の原則)
1)職務の遂行に当たっては、関係部門と十分に協議しなければならない。
2)権限行使に当たっては、認められた範囲を超えてはならない。

第3章 職務分掌
第6条(経営企画部の分掌事項)

経営企画部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。

  • 中期経営計画に関する事項。
  • 資本政策に関する企画立案および推進に関する事項。
  • 新規事業の企画に関する事項。
  • 予算編成に関する事項。
  • 経営分析および諸経営資料作成に関する事項。
  • その他の特命業務。

第7条(総務部の分掌事項)
総務部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。
<総務課担当業務>

  • 売上債権の回収および与信管理に関する事項。
  • 役員の庶務事項および取締役会開催に関する事項。
  • 諸規程の立案、制定、改廃並びに示達に関する事項。
  • 文書の管理に関する事項。
  • 印鑑、印章の管理に関する事項。
  • 損害保険に関する事項。
  • 広告宣伝に関する事項。
  • 社宅および寮、社有車の管理に関する事項。
  • 社外慶弔、見舞い、贈答に関する事項。
  • 防災体制整備および指導に関する事項。
  • リース資材および消耗品の発注に関する事項。
  • 個人情報の保護に関する事項。
  • 苦情処理に関する事項。
  • その他の特命業務。

<人事課担当業務>

  • 人員計画に関する事項。
  • 人事考課、業績考課に関する事項。
  • 給与、賞与、その他諸手当、退職金、社会・労働保険に関する事項。
  • 従業員の採用、退職、解雇、休職、復職、異動に関する事項。
  • 従業員の勤怠管理に関する事項。
  • 従業員の研修、教育に関する事項。
  • 従業員の福利厚生に関する事項。
  • 従業員の労働安全衛生に関する事項。
  • 労働法令の手続きに関する事項。
  • 人事、労務関係規程の立案、制定、改廃に関する事項。
  • その他の特命業務。

第8条(経理・財務部の分掌事項)
経理・財務部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。

  • 小口現金の取り扱いに関する事項。
  • 支払伝票などの管理に関する事項。
  • 請求業務に関する事項。
  • 現金・預金に関する事項。
  • 小切手・手形に関する事項。
  • 有価証券に関する事項。
  • 金融機関との取引に関する事項。
  • 資金計画に関する事項。
  • 決算に関する事項。
  • 税務に関する事項。
  • 経理・会計関係規程の立案、制定、改廃に関する事項。
  • その他の特命業務。

第9条(営業部の分掌事項)
営業部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。

  • 新規取引先の開拓に関する事項。
  • 営業展開のための技法開発に関する事項。
  • 営業計画、販売計画および集金計画の作成並びに実施に関する事項。
  • 販売方法の検討および販売価格の設定に関する事項。
  • 取引先の動向把握および市場情報の収集管理に関する事項。
  • 同業他社の動向把握に関する事項。
  • その他の特命業務。

第10条(製造部の分掌事項)
製造部の分掌事項は次の各号に定める通りとする。

  • 製品の製造に関する事項。
  • 製品製造計画の作成および実施に関する事項。
  • 製造設備の管理に関する事項。
  • 資材調達に関する事項。
  • 製造技術の動向把握および市場情報の収集管理に関する事項。
  • 会社同等製品および同業他社の動向把握に関する事項。
  • その他の特命業務。

第4章 職務権限
第11条(職位)

職位は次の各号に定める通りとする。

  • 代表取締役社長
    取締役会の決定に基づき会社業務を統括し、業務遂行の最高責任者として会社業務を執行する者。
  • 取締役
    取締役会の決定に基づき、代表取締役社長から委嘱された会社業務を執行する者。
  • 監査役
    取締役の会社業務の執行を監査する者。
  • 部長
    代表取締役社長などの命に従い、管轄業務を遂行する者。
  • 課長
    部長の命に従い、管轄業務を遂行する者。

第12条(職務権限の行使)
職位にある者は、明確な範囲の責任事項と、職務遂行に必要な権限を有するものとする。職位にある者は、法令、会社の諸規程などに従い、最も適した方法で自己の権限を行使する。

第13条(職務権限事項)
職位にある者に付与される職務権限は、別表第2「職務権限表」の通りとする。

第14条(代位行使)
職位にある者が不在または事故など一定の事由によりその権限を行使し得ない場合は、原則として、直属の上位職位にある者の決定または協議によるものとする。

第15条(相互協力)
職位にある者は、互いの職務権限を尊重し、他の職位の職務権限を侵してはならない。職位間の見解などが一致しない場合は、必要な指導、助言を上位職位に求めた上で協議する。

第16条(報告義務)
職位にある者は、職務遂行の経過および結果について、速やかに直属の上位職位に報告しなければならないが、一定の軽易な事項については省略することができる。

第17条(罰則)
役員および従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第18条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

■別表第1「組織図」■

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■別表第2「職務権限表」■

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以上(2021年9月)

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画像:ESB Professional-shutterstock

部下のやる気を高める上手な褒め方のポイントは「あいうえお」

書いてあること

  • 主な読者:部下を「褒める」ということに本気で向き合いたい中堅社員
  • 課題:褒めるのが苦手だし、そもそも褒めるようなことを部下はしていない?
  • 解決策:愛情を持つ、言い方に注意する、上から目線にならない、影響に配慮する、同じ基準で叱る

1 褒めるべきだったのか……

「課長から指示された会議資料の確認をお願いしたいのですが……」。中堅社員のAさんに、部下である入社1年目のBさんが声をかけました。「分かりました。15時までには確認するよ」とAさんは答えました。

資料に一通り目を通し、問題がないことを確認したAさんは、Bさんに、その旨を伝え、課長に資料を提出するよう指示をしました。

その後、Bさんが作成した資料を手にした課長の反応は、Aさんには意外なものでした。課長は資料に目を通しながら、「今回の会議の議題の中心となる●●が一目で分かるようになっていて、よく出来ているじゃないか! よくできてる」と、普段は厳しい課長が満足そうな笑顔でBさんの仕事を褒めたのです。また、そんな課長の表情を見たBさんもうれしそうに「ありがとうございます。次も頑張ります!」と元気よく答えました。

その様子を見たAさんは「課長が言っていることは資料作成の基本中の基本だよな。べつに褒めるようなことではないと思うんだけど……」と。

2 褒めることの効果

中堅社員になって部下を持つと、指導の一環で部下を褒めることが大切になってきます。褒める一番の目的は、「部下の成長を促すこと」です。上司から褒められることで、部下は自分の考え方や仕事の進め方などが正しいことを認識し、仕事に対して自信を深めるきっかけになります。また、自分が会社や部署に貢献できていること、また、会社や部署が自分を必要としていることを実感する機会にもなります。

そして、褒められることで得た自信や充実感は、仕事に対するモチベーションや、会社や部署に対する貢献意欲を高める効果があり、それが、部下の成長の原動力となるのです。

とはいえ、「褒め言葉を掛けさえすればよい」ということではありません。こうした効果を高めるためには、上司は正しく部下を褒めなければなりません。

3 「褒めるところがない」は、上司の責任

部下について「褒めるようなことは、それほど多くない」と言う上司が、しばしばいます。しかし、それは部下ではなく、「褒めるところを見つけられない」上司自身に問題があります。もし、そう感じている人がいれば、次の2つの点について振り返ってみてください。

1つ目は、部下の仕事ぶりを自分(上司)基準で評価していないかということです。褒めるべき点は、部下基準で評価しなければなりません。当然のことのようですが、こうしたことは意外と見落とされがちです。

もう1つは、常に部下に対して気を配っているかということです。部下は、部下なりに、常に努力し、創意工夫をしながら、仕事に取り組んでおり、褒めるべき点は必ずあるはずです。

そうした部下の姿に気が付いていない(=褒めるところがない)のであれば、それは、部下の言動に対して、しっかりと気を配っていないということであり、上司失格を意味するものです。「褒めるところがない部下はいない」。そういう気持ちで、今一度、部下の言動に注目するようにしましょう。

4 上手な褒め方の「あいうえお」

1)「あ」:愛情を持つ

褒めるということは、単に「褒め言葉を掛ける」ことではありません。その言葉に、上司の思いがこもっているか、単なるうわべだけの言葉なのかは、部下は敏感に感じ取ります。そして、うわべだけの褒め言葉では、部下のモチベーションや貢献意欲は高まりません。むしろ、うわべだけの褒め言葉では、上司に対する失望感を与えるだけであり、逆効果になることを覚えておきましょう。

2)「い」:言い方は具体的にする

同じ内容について褒める場合でも、言い方次第で部下の成長度合いは違ってきます。例えば、難しい仕事を成し遂げたとしましょう。その部下を褒める際、「よく頑張った」といったように、漠然と褒めるだけでは、部下の成長にはつながりません。「●●について工夫をした点が良かった」といったように、良かった点などを具体的に褒めることで、はじめて部下は何が良かったのかを理解し、次に生かすことができるようになります。

3)「う」:うれしさを共有する

褒めることがあるということは部下の成長の証しであり、それは、部下に期待を寄せ、成長を願っている上司にとっても喜ばしいことです。褒めるときには、例えば「私もうれしいよ」といった言葉を添えるなどして、そうした思いを伝え、部下と共有する雰囲気をつくりましょう。それは、部下にとっても、うれしいことのはずです。

4)「え」:笑顔で褒める

いくら褒めているといっても、上司が堅い表情や暗い声では、部下は素直に喜ぶことはできません。また、モチベーションや貢献意欲も高まりにくいものです。褒めるときには、部下が遠慮なく喜びを表せるように、笑顔と明るい声で褒めるようにしましょう。

5)「お」:オープンにする

褒めるときは、周囲に人がいる前で、大きな声で褒めるのが原則です。皆の前で、褒められることで、部下の喜びは大きくなり、自信も一層深まります。

ただし、皆の前で褒められたことで、気が緩んでしまう部下もいます。そうしたことがないように、部下に気を配ることも上司の役割であることを忘れてはいけません。

以上(2021年9月)

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画像:Drobot Dean-Adobe Stock

パワハラにならない上手な叱り方のポイントは「あいうえお」

書いてあること

  • 主な読者:部下を「叱る」ということに本気で向き合いたい中堅社員
  • 課題:ついつい感情的に怒ってしまい、後から後悔する
  • 解決策:愛情を持つ、言い方に注意する、上から目線にならない、影響に配慮する、同じ基準で叱る

1 叱った後に……

仕事でミスをした部下のBさんを叱った中堅社員のAさん。Aさんとしては熱心に指導したつもりですが、周囲は「少し厳し過ぎでは……」と感じている様子です。

その日の夕方、タイミングを見計らって課長がAさんに声をかけました。「今日はずいぶん厳しくBさんを叱っていたけど、何があったんだ?」。これに対してAさんは、「はい、実は……」と、Bさんを叱った理由を説明しました。それを聞いた課長は、「なるほど。理由は分かった」と言いつつも、「ここにはBさんの同期や後輩もいるわけだから、その辺りのことも考えてあげないといけないよ。Bさん、ひどく落ち込んだ様子だったから、後でフォローしておくように」と、Aさんに指示を出しました。

Aさん自身も、「ちょっと厳しすぎたかな」と感じていたところだったので、課長に指摘されて、「やはりそうだったか。もう少しBさんの気持ちに配慮して叱ればよかった……」と、反省したのでした。

2 “安全策”は上司の身勝手

中堅社員になって部下を持つと、指導の一環で部下を叱る機会が増えてきます。「叱る」ことは、「褒める」「教える」「考えさせる」ことと同様に、部下を指導する上で欠かせない取り組みです。同時に、上司も叱る過程で、問題をきちんと分析し、どうすれば部下に正しく伝わるかを考えたり、部下の話を根気強く聞こうと努力したりするため、叱ることによって自身の上司としての成長にもつながります。

一方、「パワハラと言われたくない」「部下に嫌われたくない」などと考え、真剣に叱らずに、“安全策”に逃げ込む上司もいます。この場合、上司は部下の顔色をうかがいながら、話す内容、言葉、口調、時間を選びます。時には、場を和ますために不必要な笑顔も振りまくかもしれません。こうすれば、部下との衝突は避けられるでしょう。

ただし、オブラートに包まれた上司の言葉や表情から、部下はその真意を読み取ることはできません。また、部下は上司の叱り方から自分が犯したミスの重大さを理解するものですが、これもままなりません。

部下を叱る一番の目的は「部下の成長を促すこと」ですが、上司が“安全策”に逃げ込んだ瞬間に、叱る目的は「部下の機嫌を損ねないこと」にすり替わります。その場しのぎで部下と表面上は友好的な関係は保てるかもしれませんが、その代償として部下の成長の機会を奪っていることを認識しなければなりません。

3 逃げず、怒らず、あくまで「叱る」

「叱るときは真剣に叱る」。これが上司の仕事であり、安易に“安全策”に逃げてはいけません。とはいえ、ただ厳しくすればよいわけでもありません。先の“安全策”とは正反対で、感情に任せて部下を怒鳴りつける上司もいますが、これでは部下は畏縮してしまいます。

よく「叱る」と「怒る」は違うといわれます。怒るというのは、自分の気持ち(怒り)を、一方的かつ感情的に相手にぶつけている状態です。一方、叱るというのは、部下の成長を促すために、相手を尊重しながら間違いを正し、共に成長していくことです。叱るのは「教育」(教えて育てる)の一環ですが、そこには、同じ「きょういく」でも意味が異なる、「共育」(共に育む)という意味も含まれることを忘れてはいけません。

4 上手な叱り方の「あいうえお」

1)「あ」:愛情を持つ

「叱るよりも叱られるほうが楽」と言われる程、叱る側にはエネルギーが必要です。しかし、自分が辛いときでも、部下のためになるのであれば、上司は真剣に叱らなければなりません。

なお、叱るのを止めることを部下への「やさしさ」と勘違いしてはいけません。真剣に叱らなければ、部下の成長の機会を奪ってしまうのです。

2)「い」:言い方に注意する

同じ内容について叱る場合でも、言い方次第で部下の聞く態度(話の受け入れ度合い)は大きく違ってきます。

例えば、部下が納期遅れを起こしたとしましょう。「部下が二度と納期遅れをしないように指導する」という上司の意図は同じでも、納期遅れのいけない点を強調する叱り方と、部下本人の性格(「ずぼら」「忘れっぽい」など)のいたらなさを強調する叱り方では、明らかに前者のほうが部下は聞く耳を持ってくれるものです。

3)「う」:上から目線にならない

上司の立場と権限を利用して、「とにかく俺(上司)の言うことを聞けばいい!」という叱り方は好ましくありません。叱るときの原則は、できるだけ部下と同じ目線に立ち、部下の言い分もよく聞くことです。そうしなければ部下の考えをよく理解できず、適切な「言い方」が分からないからです。

ただし、「遅刻をしない」などビジネスでは理屈抜きで守るべきルールがあります。それを教え込むときは、上司の立場を利用するのも一策です。

4)「え」:影響に配慮する

周囲に人がいる前で叱られる部下は、「恥ずかしい」「皆の前で侮辱された」と考え、上司の話を聞くどころか、反発を強めます。同様に、朝一番で叱られた部下は、一日中、嫌な思いをすることになります。こうした叱ることの悪影響を排除するために、叱る場所やタイミングには配慮しなければなりません。

また、叱ることとセットで、こちらから世間話をふってみるなど部下の気持ちをフォローすることも上司の役割です。

5)「お」:同じ基準で叱る

同じことをしたのに、あるときは褒められ、あるときは叱られるというのでは、部下は何が正しいのか分かりません。叱る側が必ず守るべきこととして、叱る基準を明確にしなければなりません。

ただし、そのときの状況や部下の成長度合いなどによって叱る基準が変化するのも事実です。これまでとは違う基準で部下を叱る場合、「今回、叱るのは……」と、はじめにその理由を明確にするのが理想的です。

以上(2021年9月)

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【規程・文例集】2021年6月9日公布の改正育児・介護休業法に対応した「介護休業等に関する規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:法改正に対応した「介護休業等に関する規程」のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に規程のどの部分を見直せばいいか分からない
  • 解決策:2021年6月9日公布の改正育児・介護休業法の内容を確認する。有期雇用社員の介護休業の取得要件が見直されていれば、ひとまず問題ない

1 有期雇用社員の育児・介護休業の取得要件が緩和

2021年6月9日公布の改正育児・介護休業法により、

2022年4月1日からは、有期雇用社員の介護休業の取得要件のうち、「同一の会社での雇用期間が連続1年以上」という取得要件が廃止

されます。これにより、

パートが介護休業を利用するケースが増える

ことが想定されます(過半数労働組合などと労使協定を締結した場合に限り、雇用期間が1年未満の社員を対象から除外することができます)。

育児・介護休業法では「介護休業」の他、勤務時間の短縮、時間外労働の制限、介護休暇など、家族を介護する社員のためのさまざまな支援制度が多岐にわたるため、介護休業等に関する規程によって整理することが欠かせません。この記事では、2021年6月9日公布の改正・育児介護休業法に対応した、「介護休業等に関する規程」のひな型を紹介します。

2 介護休業等に関する規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【介護休業等に関する規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、従業員の介護休業、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、介護短時間勤務などに関する取り扱いについて定めるものである。本規程に定めのない事項は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律およびその関係法令」(以下「法令」)による。

第2条(介護休業の対象者など)
1)要介護状態にある対象家族を介護する従業員(日々雇われる従業員を除く)が、当該対象家族の介護のための休業を希望する場合、本規程で定めるところにより介護休業を取得することができる。期間を定めて雇用される従業員(以下「期間契約従業員」)にあっては、申出時点において、次の全てに該当する場合に限り介護休業を取得することができる。

介護休業を開始しようとする日から93日を経過する日(以下「93日経過日」)から6カ月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでないこと。

2)前項にかかわらず、会社は別途協定した「育児・介護休業等に関する労使協定」(省略)で定めた次の従業員の介護休業は認めない。

  • 入社1年未満の従業員。
  • 申出日から93日以内に雇用関係が終了することが明らかな従業員。
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員。

3)要介護状態にある家族とは、負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり法令で定める基準の常時介護を必要とする状態にある者をいう。
4)対象家族とは、次に定める者をいう。

  • 配偶者(事実上、婚姻関係と同様の事情にある者を含む)。
  • 従業員の父母および子。
  • 従業員の祖父母、兄弟姉妹および孫。
  • 配偶者の父母。
  • その他、会社が認めた者。

5)介護休業の期間については、基本給および諸手当、その他の月ごとに支払われる賃金は支給しない。
6)賞与の算定対象期間に介護休業をした期間が含まれる場合には、当該期間を算定対象期間から除いて計算する。
7)介護休業の期間中の定期昇給は行わないものとし、復職後の昇給において休業前の勤務実積を加味し調整する。
8)退職金の算定に当たっては、介護休業をした期間を勤務したものとして勤続年数を計算するものとする。

第3条(介護休業の申し出の手続きなど)
1)介護休業の取得を希望する従業員は、原則として介護休業を開始しようとする日(以下「介護休業開始予定日」)の2週間前までに「社内様式1 介護休業申出書」を総務部に提出しなければならない。なお、期間契約従業員が介護休業中に労働契約を更新することになり、引き続き介護休業を希望する場合は、更新された労働契約期間の初日を介護休業開始予定日として、「社内様式1 介護休業申出書」を総務部に提出することで再度の申し出を行うものとする。
2)介護休業の申し出は、特別な事情がない限り、対象家族1人につき、延べ93日間までの範囲内で3回を上限とする。ただし、前項後段の申し出をする場合はこの限りではない。
3)会社は、「社内様式1 介護休業申出書」を受け取るに当たり、必要最小限度の各種証明書の提出を求めることがある。
4)「社内様式1 介護休業申出書」が提出されたときは、会社は速やかに当該申出書を提出した従業員(以下「介護休業の申出者」)に対し、「社内様式2 介護休業取扱通知書」を交付する。

第4条(介護休業の申し出の撤回など)
1)介護休業の申出者は、介護休業開始予定日の前日までに「社内様式3 介護休業申出撤回届」を総務部に提出することで、介護休業の申し出を撤回することができる。
2)「社内様式3 介護休業申出撤回届」が提出されたときは、会社は速やかに当該届を提出した従業員に「社内様式2 介護休業取扱通知書」を再度交付する。
3)同一の対象家族について介護休業の申し出が撤回され、撤回後最初の介護休業の申し出も撤回された場合、その後の介護休業の申し出については、会社はこれを拒むことができる。
4)介護休業開始予定日の前日までに、対象家族の死亡などにより介護休業の申出者が、申し出に関わる対象家族を介護しないこととなった場合、介護休業の申し出はされなかったものとみなす。この場合において、介護休業の申出者は、原則として当該事由が生じた日に、総務部にその旨を通知しなければならない。

第5条(介護休業の期間など)
1)介護休業の期間は、同一の対象家族につき延べ93日間までとし、介護休業の申出者はその範囲内で3回を上限として、「社内様式1 介護休業申出書」に記載した期間の介護休業を取得することができる。
2)前項にかかわらず、会社は、法令の定めるところにより介護休業開始予定日の指定を行うことができる。
3)従業員は、介護休業を終了しようとする日(以下「介護休業終了予定日」)の2週間前までに「社内様式4 介護休業期間変更申出書」を総務部に提出し、介護休業終了予定日を繰り下げることができる。
4)「社内様式4 介護休業期間変更申出書」が提出されたときは、会社は速やかに当該申出書を提出した従業員に「社内様式2 介護休業取扱通知書」を再度交付する。
5)次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、それぞれに定める日に介護休業は終了するものとする。

  • 対象家族の死亡などにより介護休業に関わる家族を介護しないこととなった場合
    当該事由が発生した日。
  • 介護休業の申出者について、産前・産後休業、育児休業または新たな介護休業が始まった場合
    産前・産後休業、育児休業または新たな介護休業の開始日の前日。

6)第5条第5項第1号の事由が生じた場合には、介護休業の申出者は原則として当該事由が生じた日に、総務部にその旨を通知しなければならない。

第6条(介護休暇)
1)要介護状態にある対象家族の介護その他の世話をする従業員(日々雇われる従業員を除く)は、当該対象家族が1人の場合は1年間につき5日、2人以上の場合は1年間につき10日を限度として、介護休暇を取得することができる。この場合の1年間とは、4月1日から翌年3月31日までの期間とする。
2)前項にかかわらず、会社は別途協定した「育児・介護休業等に関する労使協定」(省略)によって除外された次の従業員の介護休暇は認めない。

  • 入社6カ月未満の従業員。
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員。

3)介護休暇は、1日単位または1時間単位で取得することができる。なお、1時間単位の場合、始業時刻から終業時刻の間で連続または断続して取得することができる。
4)介護休暇を申し出る従業員は、原則として、事前に「社内様式5 介護休暇申出書」を総務部に提出するものとする。
5)介護休暇を取得した時間については賃金を支給しない。

第7条(所定外労働の制限)
1)要介護状態にある対象家族を介護する従業員(日々雇われる従業員を除く)が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、所定労働時間を超えて労働をさせることはない。
2)前項にかかわらず、会社は別途協定した「育児・介護休業等に関する労使協定」(省略)によって除外された次の従業員の所定外労働は制限しない。

  • 入社1年未満の従業員。
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員。

3)所定外労働の制限を請求する従業員は、1回につき、1カ月以上1年以内の期間(以下「制限期間」)について、制限を開始しようとする日(以下「制限開始予定日」)および制限を終了しようとする日を明らかにして、原則として、制限開始予定日の1カ月前までに、「社内様式11 所定外労働制限請求書」を総務部に提出するものとする。この場合において、制限期間は、第8条に定める時間外労働の制限期間と重複しないようにする。
4)会社は、「社内様式11 所定外労働制限請求書」を受け取るに当たり、必要最小限度の各種証明書の提出を求めることがある。
5)所定外労働の制限開始予定日の前日までに、対象家族の死亡などにより「社内様式11 所定外労働制限請求書」を提出した従業員(以下「所定外労働の制限の請求者」)が請求に関わる家族を介護しないこととなった場合には、請求されなかったものとみなす。この場合において、所定外労働の制限の請求者は、原則として当該事由が生じた日に、総務部にその旨を通知しなければならない。
6)次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、それぞれに定める日に制限期間は終了するものとする。

  • 対象家族の死亡などにより所定外労働の制限に関わる家族を介護しないこととなった場合
    当該事由が生じた日。
  • 所定外労働の制限の請求者について、産前・産後休業、育児休業または新たな介護休業が始まった場合
    産前・産後休業、育児休業または新たな介護休業の開始日の前日。

7)前項第1号の事由が生じた場合には、所定外労働の制限の請求者は原則として当該事由が生じた日に、総務部にその旨を通知しなければならない。

第8条(時間外労働の制限)
1)要介護状態にある対象家族を介護する従業員(日々雇われる従業員、入社1年未満の従業員、1週間の所定労働日数が2日以下の従業員を除く)が、当該対象家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、1カ月について24時間、1年について150時間を超えて時間外労働をさせることはない。
2)時間外労働の制限を請求する従業員は、1回につき、1カ月以上1年以内の期間について、制限を開始しようとする日(以下「時間外労働の制限開始予定日」)および制限を終了しようとする日を明らかにして、原則として、時間外労働の制限開始予定日の1カ月前までに、「社内様式6 時間外労働制限請求書」を総務部に提出するものとする。この場合において、時間外労働の制限期間は、前条に定める所定外労働の制限期間と重複しないようにする。
3)会社は、「社内様式6 時間外労働制限請求書」を受け取るに当たり、必要最小限度の各種証明書の提出を求めることがある。
4)時間外労働の制限開始予定日の前日までに、対象家族の死亡などにより「社内様式6 時間外労働制限請求書」を提出した従業員(以下「時間外労働の制限の請求者」)が、請求に関わる家族を介護しないこととなった場合には、請求されなかったものとみなす。この場合において、時間外労働の制限の請求者は、原則として当該事由が生じた日に、総務部にその旨を通知しなければならない。
5)次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、それぞれに定める日に時間外労働の制限は終了するものとする。

  • 対象家族の死亡などにより時間外労働の制限に関わる家族を介護しないこととなった場合
    当該事由が生じた日。
  • 時間外労働の制限の請求者について、産前・産後休業、育児休業または新たな介護休業が始まった場合
    産前・産後休業、育児休業または新たな介護休業の開始日の前日。

6)前項第1号の事由が生じた場合には、時間外労働の制限の請求者は原則として当該事由が生じた日に、総務部にその旨を通知しなければならない。

第9条(深夜業の制限)
1)要介護状態にある対象家族を介護する従業員が当該家族を介護するために請求した場合には、事業の正常な運営に支障がある場合を除き、午後10時から午前5時までの間(以下「深夜」)に労働させることはない。
2)前項にかかわらず、会社は次のいずれかに該当する従業員からの深夜業の制限の請求は認めない。

  • 日々雇われる従業員。
  • 入社1年未満の従業員。
  • 深夜業の制限の請求に関わる対象家族の16歳以上の同居の家族が、次のいずれにも該当する従業員。
    a.深夜において就業していない者(1カ月について深夜における就業が3日以下の者を含む)であること。
    b.負傷、疾病または障害により介護が困難でないこと。
    c.産前産後でないこと。
  • 1週間の所定労働日数が2日以下の従業員。
  • 所定労働時間の全部が深夜にある従業員。

3)深夜業の制限を請求する従業員は、1回につき、1カ月以上6カ月以内の期間について、制限を開始しようとする日(以下「深夜業の制限開始予定日」)および制限を終了しようとする日を明らかにして、原則として、深夜業の制限開始予定日の1カ月前までに、「社内様式7 深夜業制限請求書」を総務部に提出するものとする。
4)会社は、「社内様式7 深夜業制限請求書」を受け取るに当たり、必要最小限度の各種証明書の提出を求めることがある。
5)深夜業の制限開始予定日の前日までに、対象家族の死亡などにより「社内様式7 深夜業制限請求書」を提出した従業員(以下「深夜業の制限の請求者」)が、深夜業の制限の請求に関わる家族を介護しないこととなった場合には、請求されなかったものとみなす。この場合において、深夜業の制限の請求者は、原則として当該事由が生じた日に、総務部にその旨を通知しなければならない。
6)次の各号に掲げるいずれかの事由が生じた場合には、それぞれに定める日に深夜業の制限は終了するものとする。

  • 対象家族の死亡などにより深夜業の制限に関わる家族を介護しないこととなった場合
    当該事由が生じた日。
  • 深夜業の制限の請求者について、産前・産後休業、育児休業または新たな介護休業が始まった場合
    産前・産後休業、育児休業または新たな介護休業の開始日の前日。

7)前項第1号の事由が生じた場合には、深夜業の制限の請求者は原則として、当該事由が生じた日に、総務部にその旨を通知しなければならない。
8)深夜業の制限を受ける従業員に対して、会社は必要に応じて昼間勤務ヘ転換させることがある。

第10条(介護短時間勤務)
1)要介護状態にある対象家族を介護する従業員は、申し出ることにより、所定労働時間を原則として午前9時30分から午後4時30分まで(休憩時間は午後0時から午後1時までの1時間)の6時間とすることができる。
2)前項にかかわらず、会社は、介護短時間勤務の時間の指定を行うことができる。
3)第1項にかかわらず、会社は次のいずれかに該当する従業員からの介護短時間勤務の申し出を拒むことができる。

  • 日々雇われる従業員。
  • 別途協定した「育児・介護休業等に関する労使協定」(省略)によって除外された次の従業員。
    a.入社1年未満の従業員。
    b.1週間の所定労働日数が2日以下の従業員。

4)介護短時間勤務の申し出をしようとする従業員は、対象家族1人につき利用開始の日から3年間で2回までの範囲内で、短縮を開始しようとする日および短縮を終了しようとする日を明らかにして、原則として、短縮を開始しようとする日の2週間前までに、「社内様式8 介護短時間勤務申出書」を総務部に提出しなければならない。「社内様式8 介護短時間勤務申出書」が提出されたときは、会社は速やかに介護短時間勤務の申出者に対し、「社内様式9 介護短時間勤務取扱通知書」を交付する。その他適用のための手続きなどについては、第3条から第5条までの規定を準用する。
5)介護短時間勤務の適用を受ける期間の賃金については、別途定める「賃金規程」(省略)に基づく基本給を時間換算した額を基礎とした実労働時間分の基本給を支給する。
6)介護短時間勤務の適用を受ける期間は、通常通り勤務したものとして、賞与、定期昇給、退職金の算定対象期間に加える。

第11条(介護時差出勤)
1)要介護状態にある対象家族を介護する従業員(日々雇われる従業員を除く)は、申し出ることにより、始業および終業の時刻を次のように変更することができる(以下、所定労働時間が7時間30分の場合)。

  • 時差出勤A:午前9時始業、午後5時30分終業。
  • 時差出勤B:午前9時30分始業、午後6時終業。
  • 時差出勤C:午前10時始業、午後6時30分終業。

2)介護時差出勤は、対象家族1人につき利用開始の日から3年間で2回までの範囲内で申し出ることができる。介護時差出勤を申し出る従業員は、その適用を開始しようとする日(以下「時差出勤開始予定日」)および終了しようとする日並びに時差出勤Aから時差出勤Cのいずれに変更するかを明らかにして、原則として時差出勤開始予定日の2週間前までに、「社内様式10 介護時差出勤申出書」を総務部に提出しなければならない。
3)会社は、「社内様式10 介護時差出勤申出書」を受け取るに当たり、必要最小限度の各種証明書の提出を求めることがある。その他適用のための手続きなどについては、第3条から第5条までの規定を準用する。
4)介護時差出勤の適用を受ける期間は、通常通り勤務したものとして、賞与、定期昇給、退職金の算定対象期間に加える。

第12条(社会保険などの取り扱い)
会社は、各月に会社が従業員負担分として納付した社会保険料を翌月○日までに従業員に請求するものとし、従業員は会社が指定する日までにこれを支払わなければならない。

第13条(職場復帰支援)
会社は、連続1カ月以上の介護休業を取得する従業員が介護休業期間中に復職準備プログラムの受講を希望する場合、別途定める「復職準備プログラム基本計画」(省略)に沿って、当該従業員に会社の負担で復職準備プログラムを実施する。

第14条(復職後の取り扱い)
介護休業後の勤務は、原則として休業直前の部署および職務で行うものとする。ただし、本人の希望がある場合および組織の変更などやむを得ない事情がある場合には、部署および職務を変更することがある。

第15条(ハラスメントの防止および不利益取り扱いの禁止)
1)全従業員は、従業員が「介護休業、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限、深夜業の制限、介護短時間勤務などの申し出や請求」(以下「介護休業などの利用」)をした従業員の就業環境を害する言動を行ってはならない。
2)前項の言動を行ったと認められる従業員に対しては、就業規則(省略)第○条に基づき、厳正に対処する。
3)会社は、介護休業などの利用をしたことを理由に、従業員に対して解雇などのいかなる不利益な取り扱いも行わない。

第16条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

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以上(2021年9月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【朝礼】あなたには「自分の物差し」がありますか?

「もしも、君が本当になろうと決めたのなら、もう成功したのと同じだよ」

これは、米国の第16代大統領であるエイブラハム・リンカーンの言葉です。なぜ、決めることが成功につながるのか。私は、本気で決めたら、その目的を達成するための判断基準、つまり「自分の物差し」ができ、それに従って行動できるようになるからだと考えています。けさはこの「自分の物差し」についてお話しします。

先日、メンターと話をしていたときに、「リモートにより人と会う機会が減る中、大切なのは『自分たちらしさ』を共有することである」と言われました。つまり、「これって、うちっぽいよね!」、あるいは「これって、うちっぽくないよね」とメンバーが同じ感覚を持てるということです。この「うちっぽさ」は必ずしも明文化されておらず、私たちが持っている「目に見えない物差し」で判断しているということです。

共通の物差しを持った組織が強いことは間違いないのですが、一つ前提条件があります。それは、その物差しが、「メンバー自身のものになっているか」ということです。

先日、私は交渉の途中で席を立とうと思ったことがありました。「相手の担当者が、自分たちのことしか考えていない」と感じてしまったからです。私の「ビジネスの物差し」は、まず「愛があるか否か」にあります。ですから、自分勝手な人とは、できるだけ仕事をしたくないのです。

ただ、結論としては、もう少し交渉を続けてみることにしました。話を聞いているうちに、相手の担当者が「会社や上司の物差し」で話していることに気付いてきたからです。つまり、会社から課せられたノルマを達成しようと上司の指示を遂行することに必死で、自分勝手にならざるを得ない状況のようでした。

問題は、実はその担当者は愛ある人物かもしれないのに、会社や上司の物差しを意識し過ぎて、自分を出せなくなっていることです。共通の認識となる「らしさ」は大切ですが、そこにメンバーの自主性が伴わなければ、「借り物」の物差しで判断し、行動し続けることになるのです。

物差しは環境の中でつくられ、そして浸透していきます。組織である以上、最後は上司の指示に従うべきです。しかし、そこに至るまでに自分の判断を差し挟む余地が全くない、報連相をしても聞く耳を持ってもらえないといった組織では、メンバーの「自分で考え、判断する能力」はどんどん退化します。結果として、会社の方針や上司の指示に従って自分勝手なことを言っていることに疑問すら感じなくなります。

大切なのは、会社の方針や上司の指示に、皆さんの考えを掛け合わせることです。そのときに生じる疑問や矛盾から皆さんの物差しがつくられていきます。今、皆さんは誰の物差しで判断していますか? 「自分はどうしたいのか?」と自問自答することで答えは見えてきます。

以上(2021年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

「設備投資」を判断するときに使える4つのアプローチ

書いてあること

  • 主な読者:設備投資を行うか否かの定量的な判断基準が欲しい経営者
  • 課題:設備投資は多くの資金を必要とし、その効果も長期に及ぶため判断が難しい
  • 解決策:複数の定量的な評価方法を理解し、投資の目的によって使い分ける

1 設備投資の定量的な判断基準は欲しくありませんか?

工場の建設や拡張、製造機械の購入などの設備投資は、経営者にとって重要な判断の1つです。綿密に計画を立てても、製品の増産や生産性の向上が計画通りに進むかは、蓋を開けてみないと分からないものであり、

設備投資は、ワクワクするけど怖い

というのが本音かもしれません。それに、今どきは環境問題への配慮も必要です。

「えいやっ!」と腹をくくることも必要ですが、ファイナンス的な評価を取り入れると、よりクリアに状況がつかめるようになります。例えば、自社の財務状況への影響を数字で示せば、それは客観的な判断材料になります。また、投資後の実績と当初計画とを比較すれば、現場の問題点や次の設備投資への課題も見つかるでしょう。

この記事では、設備投資を検討する上で重要な4つの評価方法について、事例を用いながら分かりやすく解説していきます。

2 限界利益による評価

限界利益とは

売上高から変動費を差し引いたもの

です。限界利益は事業の比較や損益分岐点を求める際に用いる、比較的なじみの深い数字であり、

限界利益を使用した設備投資効果の評価は多くの会社で利用されています。

確認も兼ねて説明すると、会社の費用は変動費と固定費に大別されます。変動費とは、設備の操業度の増減に比例して増減する費用です。仮に売上がゼロであれば変動費もゼロです。メーカーの場合は、材料費、買入部品費、外注加工費など、小売業の場合は、仕入原価がこれに当たります。設備の操業度を売上高の増減で表現すると、変動費は次の式で表します。

変動費=売上高×変動費率

一方、固定費とは、売上の増減に関係なく発生する費用で、人件費や減価償却費などが該当します。固定費は、操業度がゼロでもフル操業時でも、理論的には同額しか発生しません。

費用は変動費と固定費から成り立ち、その関係は次の式で表します。

費用=変動費+固定費=売上高×変動費率+固定費

限界利益とは、売上高から変動費を差し引いたもので、次の式で表します。

限界利益=売上高−変動費=売上高−売上高×変動費率=売上高×(1−変動費率)
=売上高×限界利益率

変動費率は一定ですから、限界利益率(=1−変動費率)も一定です。この限界利益率が高ければ、売上高の増加に伴って付加価値の増加も見込めます。

それでは限界利益を使って利益の算出方法を見てみます。

利益
=売上高−費用
=売上高−変動費−固定費
=限界利益−固定費

限界利益が固定費より大きければ黒字で、反対なら赤字です。また、利益は出ないが損失も出ない売上高が損益分岐点になります。

以上から、利益を増加させる方法は次の通りです。

  • 売上高を増やす、設備の操業度を高める
  • 限界利益率を高める(変動費率を下げる)
  • 固定費を下げる

それでは、設備投資効果の限界分析を考えてみます。まず、設備投資に伴う固定費の増減額を計算します。人件費その他に減価償却費、固定資産税、金利などの増減額を考慮します。

次に、限界利益の増減額を算出します。そのためには、売上高の増加額と限界利益率を設定します。

新製品の場合、限界利益率の予想には十分な検討が必要です。しかし、既存製品の場合は、外注部品を内製化するなどのケースでなければ、ほぼ変化は生じません。そのため、限界利益率は不変として考えるべきケースも多いです。もっとも、新型機械の導入で歩留率の向上が図られる場合は、その分を考慮に入れます。設備投資による増加利益は次の式で算出できます。

利益増加額=予想売上高増加額×限界利益率−固定費増加額

例えば、新たな設備投資によって、売上高が1000万円増加すると予想でき、限界利益率が60%で、固定費が200万円増加するというケースで考えると、次の通りです。

利益増加額=1000万円×60%−200万円=400万円

3 回収期間法による評価

回収期間法とは、

投資額を、その投資からもたらされる年間のキャッシュフローで回収するのに何年かかるかを求める

ものです。収益による償却年限といわれるもので、次の式で求められます。

画像1

この評価の場合、回収期間の長短によって投資の採用を検討します。例えば、本来7年以内で回収すべきものが10年超と見込まれれば、通常は見送りとなります。

キャッシュフローとは、利益と減価償却費(リース資産にかかるものを除く)を合計したものです。押さえておきたいのは、減価償却費という、資金流出のない費用がキャッシュフローの重要な構成要素となることです。

また、どの段階の利益(営業利益、経常利益、当期純利益)で把握するかによって違いがあります。設備投資案の検討では、営業利益+減価償却費を採用することがあります。なぜなら、設備投資の判断は資金調達の方法(外部借入か自己資金か)によって左右されるべきでないからです。しかし、回収期間法の考え方からは適切でないともいえます。回収期間は、

経営者が設備投資を実際に何年で回収できるかを知る

ためのものだからです。この考え方によれば、投資回収に充当できるキャッシュフローは、次の式の範囲内とするのが適切であるといえます。

年間キャッシュフロー(回収期間法)
=当期純利益(税引後利益)+減価償却費−社外分配金(配当金)

例えば、設備投資額が2500万円、予想キャッシュフロー(年平均)を500万円と見込んだケースで考えると、次の通りです。

回収期間=2500万円/500万円=5年間

4 会計的利益率法による評価

会計的利益率法とは、一般的には、

投資額に対する会計的利益(償却後利益)の率を求める

ものです。会計的利益と呼ばれるのは、設備投資の費用を減価償却の形で会計上負担させているからです。

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償却後利益としては、税引前利益を使用する場合と税引後利益を使用する場合がありますが、以降の数値例では税引前利益を使用します。

分母に設備投資に投下された資本(投資額)を用いて利益率を出す方法と、設備投資の前後の総資産利益率(使用総資産に対する営業利益率。ROAという)を比較する方法の2つがあります。

例えば、B社は親会社からの増産要請で5000万円の設備投資を行いました。投資前と投資後では次のような数字が見込まれます。

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1)現状の総資産利益率(ROA)

利益=売上高−(変動費+固定費)=1億円−(1億円×70%+2700万円)=300万円
総資産利益率=300万円÷8570万円=3.5%

ちなみに、総資産8570万円には、次の売上債権残高および期末棚卸高が含まれています。

売上債権残高:2500万円(売上高1億円×3/12カ月)
期末棚卸高:1000万円(売上高1億円×10%)

2)投資後の総資産利益率(ROA)

利益=1億3000万円−(1億3000万円×70%+3400万円)=500万円
総資産=投資前の使用総資産+設備投資額+増加運転資本
=8570万円+5000万円+1050万円(注)=1億4620万円

(注)増加運転資本=売上高増加額×(売上債権回転期間+期末棚卸高対売上比率)
=(1億3000万円−1億円)×(3/12+0.1)=1050万円

総資産利益率=500万円÷1億4620万円=3.4%

3)設備投資に対する利益率(ROI)

投資に伴う増分利益=500万円−300万円=200万円
投下資本=設備投資額+増加運転資本=5000万円+1050万円=6050万円
ROI=200万円÷6050万円=3.3%

以上から、現状とほぼ同等のROAが確保され、採算的には一応のレベルに達しているのではないかという判断ができます。

5 現在価値法による評価

1)現在の金額と将来の金額

回収期間法と会計的利益率法を検討してきましたが、両者には共通の欠点があります。それは、

貨幣の時間的価値を全く考慮していない

ことです。つまり、

現在のキャッシュフロー1000万円も、10年後のキャッシュフロー1000万円も同価値

として扱ってしまうことになります。

この1000万円を運用すれば運用益が得られる可能性もありますし、運用損が生じる恐れもあります。いずれにしても同じ価値というのは経済的に不合理なのです。

2)正味現在価値法(NPV法)

そこで登場するのが、正味現在価値法です。正味現在価値法とは、

投資により得られる一連のキャッシュフローを、ある一定の資本コストで割り引いた現在価値の合計が設備投資額より大きければ投資を実行する

という方法です。

画像4

ここでは、

投資は、NPV≧0であれば実行、NPV<0であれば見送り

とします。例えば、年間キャッシュフローを500万円、資本コスト(資金の調達コスト)が3%、回収期間は5年、投資額2000万円のケースで考えると次の通りです。

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本ケースでは、NPV289万8536円≧0であるので、投資は実行すると判断できます。

以上(2021年9月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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画像:photo-ac

【朝礼】あなたは「本物」が分かりますか?

先日、宝石商から後継者を育てる際の方針について話を聞いたのですが、これがとても興味深いものでした。宝石商が後継者に伝えていかなければならない最も大切なことは、「宝石の真贋(しんがん)の見極め方」です。その能力を高めるために、宝石商は後継者に本物の宝石だけを見せ、その輝きや色合いを徹底的に刷り込むそうです。

「これが本物。こっちは偽物」と、真贋両方を見せて比べさせるのではなく、本物だけをひたすら見せることで、実際に偽物を見たときに、「これは本物とは違う」と一目で分かるようになるのだそうです。

この考え方はビジネスにおける人付き合いでも同様で、「本物」といわれる人たちと付き合うことで自分自身の成長につながります。「本物」を「一流」と言い換えてもよいでしょう。

「本物」といわれる人たちが持っている哲学に触れ、一緒に仕事を進めていくことで、自身の判断のよりどころが生まれ、物事の正しい進め方も分かってきます。「朱に交われば赤くなる」といいますが、二流三流ではなく、「本物」の人たちと付き合うことで、自らも「本物」に近づいていくということなのでしょう。

とはいえ、人は宝石とは違います。明確な真贋があるわけではありません。名経営者と呼ばれる人などは「本物」といえるかもしれませんが、感じ方は人それぞれです。重要なのは、どのような人を「本物」と思うかという自分の中の基準です。

私が皆さんに日ごろ、「本を読みなさい」「社外の人と話す機会をつくりなさい」「多くのことを経験しなさい」と言っているのは、「どのような人を『本物』と思うか」という基準を皆さん自身で見つけ、それを目標の姿としてほしいからです。

私の場合、「この人は本物だ」と思うポイントを3つ持っています。

1つ目は、家族を大事にしている人です。家庭生活は人間の基本です。それを大事にする人は、何事も大事にするだろうと信頼できるからです。

2つ目は、「時間」と「お金」の使い方に哲学のある人です。「ここに時間とお金を使う」と決めてその通りに使っている人は、自ら物事を考え、判断し、行動することができるからです。

3つ目は、地道な努力を続けられる人です。何かを成し遂げるために地道な努力が必要だと分かってはいても、それを実践できている人は多くはありません。人は、やすきに流れます。自分を律する強い意志の持ち主こそ、地道な努力を続けることができるのです。

この3つのポイントは、あくまでも私の感じる「本物像」です。皆さんも自分なりの「本物像」を見つけ、「本物」と思える人に会う機会をつくる努力をしてください。宝石商では「本物」を見せてくれますが、「本物の人」は皆さんのほうから行動を起こさなければ出会うことはできません。そしていつの日か皆さん自身が「本物」となることを期待しています。

以上(2021年9月)

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画像:Mariko Mitsuda