【規程・文例集】「パワーハラスメント防止規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:法改正に対応した会社規程のひな型が欲しい経営者、人事労務担当者
  • 課題:どの情報が正しいか分からない。シンプルで分かりやすい情報が欲しい
  • 解決策:弁護士や社会保険労務士など、専門家が監修したひな型を利用する

1 2022年4月1日より中小企業でもパワハラに対する防止措置が義務化

パワハラ(パワーハラスメント)は、「優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、就業環境が害されること」です。

2020年6月1日に改正労働施策総合推進法が施行され、パワハラに対する防止措置を講じる義務が企業に課されました(中小企業への適用開始は2022年4月1日)。違反すると都道府県労働局の助言、指導、勧告の対象となり、勧告に従わない場合は企業名公表もあり得ます。

パワハラに対する防止措置の内容は、次の通りです。

  • パワハラ防止の方針(パワハラがあってはならない旨など)の明確化、周知・啓発
  • パワハラ相談窓口の設置・運用(他のハラスメントの相談窓口と一体的に運用)
  • パワハラに関する相談があった場合の事実確認、行為者の処分と再発防止策の検討
  • その他の措置(プライバシーの保護、相談者などに対する不利益な取扱いの禁止など)

これらの措置を円滑に行うためには、その根拠となる規程を「パワーハラスメント防止規程」などの形で定めることが必要です。

パワーハラスメント防止規程を定め、従業員に周知することで、従業員はそれを遵守する義務を負い、違反した場合は懲戒の対象とすることもできます。

また、パワハラが生じた場合、被害者が企業に損害賠償請求をしてくることがあります。そうしたケースの多くでは、「企業の労務管理」が問題になりますが、パワーハラスメント防止規程を定め、適切に運用されているという事実は、企業が自社の実情に合わせて誠実にパワーハラスメント対策を進めていることの一つの証しとなり、損害賠償責任を免れることができます。

2 パワーハラスメント防止規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【パワーハラスメント防止規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、パワーハラスメントの防止およびそれが発生した後の雇用管理上の対応について定めるものであり、役員および従業員(以下「従業員等」)に適用されるものとする。

第2条(パワーハラスメントの定義)
1)パワーハラスメントとは、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超え、相手の就業環境を害することをいう。パワーハラスメントに該当する具体的な行為は以下の通りである。

  • 不殴打、足蹴りするなどの身体的暴力行為。
  • 相手やその親族、友人などの人格や尊厳を傷つける行為。
  • 業務遂行に関係のない要求を相手にしたり、自らの固定観念を相手に押し付けるような行為。
  • 業務遂行に関係のない事項について、執拗に相手から説明を求めること。
  • 違法行為を強要すること。
  • 相手を無視することや誹謗中傷すること、その他相手の名誉を傷つける噂を社内外に流布すること。
  • 業務遂行上の指導であっても、相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返しとること。また、必要以上に叱責を繰り返すこと。
  • 業務遂行上の指導であっても、客観的に実現が不可能な内容を相手に求めて過度の精神的な苦痛を与えること。
  • 故意に情報を与えない、連絡事項を伝えない等の行為を繰り返し、職務遂行を妨害すること。
  • 解雇や降格など相手に雇用不安を与えるような言動をとること。
  • その他、相手の人格や尊厳を侵害する言動をとること。

2)前項の「職場」とは、会社内に限らず、取引先、出張先など全ての業務遂行場所をいい、また、就業時間内に限らず、実質的に職場の延長と見なされる就業時間外の時間を含むものとする。
3)第1項の「相手」とは、会社の従業員等に限らず、取引先、顧客など全ての業務遂行上の関係者を指す。

第3条(パワーハラスメントの防止)
1)全ての従業員等は、国籍、信条、性別、職務上の地位・権限・職権、雇用形態に関係なく、相手の人格や尊厳を尊重し、パワーハラスメントあるいはそれと疑われる行為をしてはならない。
2)所属長等は、従業員等がパワーハラスメント(疑い例を含む)を受けていることを知ったときは、それを黙認してはならず、速やかに「パワーハラスメント相談窓口」(第4条にて定義。以降同様)に通知しなければならない。
3)従業員等は、他の従業員等がパワーハラスメント(疑い例を含む)を受けていることを知ったときは、それを黙認してはならず、速やかに上司および「パワーハラスメント相談窓口」に通知しなければならない。

第4条(「パワーハラスメント相談窓口」の設置)
1)会社は、「パワーハラスメント相談窓口」を設置する。「パワーハラスメント相談窓口」は次の各号に定める業務を行うものとする。

  • パワーハラスメントに関する従業員等やその親族からの相談および苦情の受け付け。
  • 教育指導によるパワーハラスメントの未然防止。
  • パワーハラスメントの事実関係の確認など早期解決、再発防止。
  • その他、パワーハラスメントの未然防止、早期解決に資する業務。

2)「パワーハラスメント相談窓口」の責任者(以下「窓口責任者」)は総務部長とし、「パワーハラスメント相談窓口」の担当者(以下「窓口担当者」)は会社が個別に指名した従業員等とする。
3)会社は、窓口責任者および窓口担当者に別途定める「パワーハラスメント相談対応マニュアル」(省略)を配布する。窓口責任者および窓口担当者は当該マニュアルに基づき、パワーハラスメントの防止および対応に当たらなければならない。また、窓口責任者および窓口担当者は会社が指定するパワーハラスメント防止教育を受講しなければならない。
4)会社は、窓口責任者および窓口担当者の名前を、人事異動などの変更の都度、周知させる。

第5条(パワーハラスメントへの対応)
1)パワーハラスメント(疑い例を含む)の報告があった場合、窓口担当者は、相談者からの事実確認の後、窓口責任者へ報告する。
2)窓口担当者は、相談者の人権に配慮した上で、必要に応じて相談者、パワーハラスメントの疑いのある言動をした者(以下「行為者」)、被害者、上司並びに他の従業員等から事実関係を聴取し、関係する資料の提出を求める。
3)前項の聴取や関係する資料の提出を求められた従業員等は、正当な理由がない限り、調査に協力すべき義務を負い、事実を隠ぺいせず、真実を述べなければならない。また、聴取の対象となる事実関係や聴取を受けていることについて社内外で口外する等、会社の調査を妨害する行為をしてはならない。
4)窓口担当者は、窓口責任者に事実関係を報告する。
5)会社によるパワーハラスメント調査を適正に進めるため、又は被害拡大のおそれを避けるために必要と会社が判断する場合には、問題解決のための措置を講ずるまでの間、暫定的に行為者、被害者、上司並びに他の従業員等に対し、相談者等に対する接触の禁止、勤務場所の変更、自宅待機等の緊急措置を命じることがある。自宅待機の期間中、会社は労働基準法第26条の「休業手当」を支払うものとする。
6)パワーハラスメントの事実が確定した場合、会社は行為者については就業規則に照らして懲戒処分を決定する。また、パワーハラスメントの被害者および行為者の配置転換など、被害者の労働条件および就業環境を改善するために必要な措置を講じる。

第6条(不利益な取扱いの禁止)
会社はパワーハラスメントに関する相談や苦情を申し出たこと、または事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない。

第7条(プライバシーの保護)
1)何人も、パワーハラスメントに関する相談および聴取などで知り得た情報を、みだりに第三者に漏洩してはならない。
2)窓口責任者および窓口担当者は、パワーハラスメントへの対応に当たって、被害者および行為者など関係する従業員等のプライバシーの保護に十分に留意しなければならない。

第8条(再発防止の義務)
窓口責任者は、パワーハラスメント(疑い例を含む)の事案が生じたときは、改めてパワーハラスメント防止を周知徹底すると同時に、研修を実施するなど、適切な再発防止策を講じなければならない。

第9条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

以上(2021年8月)
(監修 弁護士 田島直明)

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画像:ESB Professional-shutterstock

「べき論者」が変革を妨げる

書いてあること

  • 主な読者:入社3〜5年目でさらに成長したい中堅社員
  • 課題:率先して行動したいのだが、知らず知らずのうちに変革をストッパーになってしまう
  • 解決策:まずは自身の言動が、変革を妨げる要因になっていないか見直してみる

1 場を白けさせる発言

中堅社員のAさんは、全社をあげて業務効率を進める「業務改善委員会」のメンバーとして、会議に出席しています。この委員会は社長の肝煎りで、各部門の実務を担うエース級の人材が集まり、「会社を良くするために何をすべきか」という観点から議論をしています。

今日のテーマは、古くて新しいテーマである「5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)」です。現在、会社はリモートワークの影響などもあり5Sが徹底されておらず、多くの問題が起こっています。例えば、決算時に実地棚卸しをしたら、管理がずさんで所定の場所とは違うところから商品が出てきました。他にも、営業部では本来金庫にしまうべき顧客情報が記載された書類がデスクに放置され、行方が分からなくなってしまう事態が起きました。具体的な問題にはならず「ヒヤリ・ハット」で済んだものの、紛失していてもおかしくない状況です。

そこで、委員会では5S活動を徹底させようと、早期に取り組むべき重点項目の洗い出しと、大まかなスケジュールなどについて活発な議論をしていました。そんな中、中堅社員のAさんが、ふと

リモートワークによる混乱は分かりますが、そもそも5Sの徹底はそれとは関係なく、当然のことですよね。重点項目の洗い出しよりも、全ての部門で「5S」を徹底させるべきじゃないですかね

と発言しました。その発言で、それまで活発に議論されていた場が、一気に“白けた”空気に変わってしまいました……。

2 変革の先頭に立とう

業務の仕組みや組織の文化を変えるといった組織変革は、全ての会社にとって大切なテーマです。このとき、中堅社員は変革を先導して、成功に導いていかなければならない立場です。

にもかかわらず、次に紹介するような言動で、変革の足を引っ張ってしまう人もいます。

1)「べき論」で語る人

代表的な例が、Aさんのように実現性の低い理想論を持ち出して、「こう変えていくべきだ」と語る「べき論者」です。

べき論者となる理由は、その課題について具体的に掘り下げて考えていないためです。だからこそ、実情にそぐわない理想論しか語ることができません。しかし、本人はその事実に気が付いていません。実のある議論を壊しているのにもかかわらず、本人は「5S推進についてしっかり考え、意見している」と思い込んでいます。

だからこそ、その課題について具体的に掘り下げて考えている人にとっては、べき論者の意見は場違いでしかなく、周囲は“白けた”空気になってしまうのです。

理想を模索することは大切です。しかし、変革を先導していく立場にある中堅社員は、「夢見る現実者」でなければなりません。べき論者にならないようにするためには、その課題を現実的な話として、しっかりと考えることです。

Aさんであれば、「自分が先頭に立って5Sを浸透させるために、何をどのように進めていくか」ということを現実的にイメージすることです。手順・スケジュール・必要となる予算や人員など、5W2Hで考えてみるのです。そうすれば、自分の意見が妥当なものか、それとも単なる理想論なのかは判断できるはずです。

2)「検討します」という人

「検討します」という人も、変革を妨げることがあります。新しいことに取り組む際は、さまざまな不安があります。そのため、例えば、上司から「このように変えることはできないか」と変革に関する相談を受けても、すぐには判断できないことがあります。

そのとき、つい口にしてしまうのが、「検討します」という言葉です。

しかし、単に「検討します」というだけでは、結論が出ずに終わることがほとんどです。他意はなくても、日々の仕事に忙殺される中で検討は後回しになり、うやむやになってしまいがちです。

変革が成功するか否かは、事前に判断できるものではありません。であれば「検討します」と立ち止まるのではなく、早急に行動に移す方法を考えるようにしましょう。とにかくやってみて、もし、問題があれば改善していくというスタンスで進めるのです。

なお、本当に時間をかけて検討したい事項があるのであれば、課題と期限を明確にしなければなりません。

3)失敗の原因を他のせいにする人

「5S活動の推進」のような社員の行動を変えなければ実現できない変革は、組織に定着させるのには時間がかかります。

そのため、「取り組んではみたものの、組織に定着しない」「定着したと思ったものの、時間がたつと、元に戻ってしまった」という失敗はよくあります。このようなとき、「皆、忙しくて十分な時間がなかった」「皆が言うことを聞いてくれなかった」と、失敗の原因を他のせいにする人がいます。

もちろん、こうした点も失敗した原因の1つであることは間違いないでしょう。しかし、見落としがちなのが、中堅社員などの変革を先導する人自身の「諦め」です。

重要なことであれば、忙しくても時間を確保して続けなければいけませんし、取り組みに消極的な人がいれば、繰り返し指導しなければいけません。また、問題があれば、それを解消しながら進めることが求められます。これらを実現するために何より大切なことは、中堅社員自身が改革を率先垂範していくことです。中堅社員が根負けしてしまっては、変革は成功しません。

3 変えるためには、変わること

変革というと、「会社の仕組みや社員の行動を変えなければならない」と、自分以外に視点が向きがちです。しかし、変革は一人一人の行動から始まります。まずは自身の言動が、変革を妨げる要因になっていないか見直すことから始めましょう。

以上(2021年8月)

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画像:JackF-Adobe Stock

上司の皆さん、ピンチのときに頼れる部下を育てられていますか?

書いてあること

  • 主な読者:いざというときに自分の代行ができる「頼れる部下」を持ちたい人
  • 課題:部下に関心を持てないし、自分の分身になるような教育をしてしまう
  • 解決策:衝突をいとわずに、思いやビジョンを共有する。進むべき道が共有できたら、部下を信じて任せる

1 頼れる部下の育て方?

「本当に助かったよ。ありがとう!」。そう言って中堅社員のAさんに「肘タッチ」を求めたのは、Aさんの上司であるB部長です。あまり人を褒めないB部長ですが、今回ばかりはAさんに感謝しています。

B部長の家族が病気になり、B部長は看病のために2週間も休まなければならなかったのですが、その間、中堅社員のAさんがB部長の代行を立派に務めたのです。Aさん自身も多忙でしたが、ここが正念場と踏ん張ってB部長を助けたのでした。

そんなAさんの活躍はすぐに社内に知れ渡り、頼れる部下を持つことを羨む他の部長たちがB部長のところに話を聞きに来ました。「どうやったら、Aさんみたいな部下が育つの?」。するとB部長は、次のように返しました。

「根本的な思いを共有する努力が必要だね。『今、私たちはなぜこの仕事をしていて、将来、どこを目指すのか?』。みんなのビジョンは明確になっているか? そして、それを部下に繰り返し伝えているか?」

2 関心を持てないことは“罪”である?

上司に求められる根本的な要件は、「人(相手)に関心を持つこと」です。企業規模や業種によって異なりますが、課長クラスになれば一定数の部下がいるでしょう。しかし、人(相手)に関心を持たないまま役職が上がると、「部下の様子や業務の進捗状況をきちんと把握できない」という、いわゆる問題上司になってしまいます。顧客などに対しても同様で、相手の立場で考えて、行動することができません。

周囲に関心を持つことは上司の最低限の条件ですが、さらに求められるのは、部下と思いやビジョンを積極的に共有することです。考え方は人それぞれで、部下と衝突することもあるでしょうが、それでも問題ありません。むしろ、衝突できるくらいの関係になったほうがよいのです。

思いやビジョンが共有できれば、途中で意見の食い違うところがあっても、向かうべき先が同じなので安心して部下に任せることができますし、“箸の上げ下ろし”のような細かな話をしなくても済みます。

3 型にはめずに“共育”する

自分の分身のようになることを部下に求める上司が少なくありません。しかしこれは、「上司のやり方」に部下をはめ込んでいるだけであり、その部下は、上司の以上に育つことはないでしょう。また、考え方も似てくるので多様性もありません。

ピンチのときに頼れる部下とは、

基本は押さえながらも、自分で判断し、行動できる存在

です。事あるごとに行動パターンを詰め込んでいく上司のもとでは、こうした部下は育ちません。全ての部下がそうであるとは言えませんが、上司の目には、「この部下は他とは違う」という輝く存在がいるはずです。そうした部下とは、ディスカッションを繰り返しながら、共に学び合う“共育”の関係を築くことが大事です。こうすることで互いのことを深く理解することができ、理解しているからこそ、ピンチのときに「任せた!」と言うことができます。

「この部下は他とは違う」と気づくには、繰り返しになりますが、まず人(相手)に関心を持てなければなりません。

以上(2021年8月)

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画像:Friends Stock-Adobe Stock

【朝礼】お客様に感謝される秘訣

先日、営業部のAさんがお客様のハートをつかむ素晴らしい働きをしてくれたので紹介します。ぜひ、皆さんもお手本にしてください。

Aさんの上司であるB課長から私が受けた報告によると、今回の件は、次のようなAさんの進言から始まりました。

「C社に提出した報告書で引用しているデータの最新版が公表されました。トレンドが少し変わったようです。C社の担当者は、その資料を使って3日後に会議をするはずなので、すぐに更新版を送ったほうがよいと思います。このままだと、担当者は他の出席者からデータが古いことを指摘され、立場が悪くなる恐れがあります」。

この進言をB課長は受け入れ、すぐに報告書の更新と再提供をAさんに指示しました。この対応はC社の担当者から深く感謝され、信頼関係が強まったそうです。

このようないきさつを、B課長は誇らしげに私に報告してくれたわけです。

「先んずれば人を制す」と言います。Aさんが先手を打って対応してくれたからこそ、わが社はC社とより良い関係を築くことができました。逆に、Aさんの進言がなければ、C社の担当者は「データが古い!」と会議で指摘されてしまったかもしれません。その場合、担当者の怒りの矛先は当社に向かい、「データが更新されたのなら教えてほしい。お金を払っているのだから」とクレームを言ってきたでしょう。

このように、ビジネスの局面はたった1つの行動によってがらりと変わります。皆さんがビジネスを有利に進めるためには、Aさんのように、こちらのほうから先に行動を起こして、自分たちのペースをつくることも必要です。そのために、皆さんは次の2つのことを実践してください。

1つ目は、お客様や取引先に少なくとも月に一度は連絡をして、相手の状況をできるだけ把握することです。今、相手が何をしようとしているのか、どのようなことを懸案事項と認識しているのか、いつ私や上司に質問されても答えられるくらいにしておいてほしいのです。

2つ目は、声に出すことです。少しでも「おかしい」「こうしたほうがいい」と思ったら、そのことを上司や周りに必ず伝えましょう。そうすれば、その件は検討事項となり、何らかの行動を起こすことにつながります。

以上、Aさんのことを中心にお話ししましたが、最後に、B課長にもお礼を言いたいと思います。AさんがC社を含めお客様や取引先に月に一回以上の連絡をしていたのは、B課長がそうしているのを見てきたからです。また、Aさんが臆することなく進言できたのは、B課長が部下の言葉に耳を傾ける姿勢を示してきたからです。そしてB課長は、C社のことを自分ではなくAさんの手柄として私に報告してきました。簡単なようでなかなかできることではありません。管理職の方は、ぜひ、チームづくりの参考にしてください。

以上(2021年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】茶道の精神「一期一会」で“マンネリ”を打破しよう

そろそろ今年度の上期末を迎える時期です。皆さんの中には、「忙しいけれど充実した日々を過ごしている」という人が多いでしょうが、一方で、「毎日同じことの繰り返しでつまらない」と、仕事に“マンネリ”を感じている人もいるかもしれません。そこで皆さんに問いかけたいのですが、そもそも「仕事は毎日同じことの繰り返しだ」という認識、これは本当に正しいのでしょうか。今日は、自分の仕事への姿勢を考え直すためのヒントになる話をします。

私には、趣味で長年茶道を続け、数年前自分の家に茶室を造った友人がいます。先日、初めてその茶室を訪れる機会があり、お茶をごちそうになりました。訪れた茶室は数畳の小さな部屋で、茶室を飾るのも茶道具、掛け軸、花といった最低限のものだけ。意地悪な言い方をすれば簡素な部屋なのですが、私はその茶室を非常に奇麗だと感じました。

それもそのはず。友人は、人が来るたびに茶道具を必ず磨き、掛け軸や花も毎回変えているそうです。その理由について、友人はこう話しました。「お茶はいつでも飲めるけど、『同じそのお茶』が飲める機会は二度とない。だから1回のお茶を意味のあるものにしたい。『一期一会(いちごいちえ)』の精神だよ」。私はその言葉になるほどと思うと同時に、皆さんの仕事にもこの一期一会の精神を当てはめることができるのではないかと考えました。

まず、日々の仕事にマンネリを感じている人の仕事は、本当に同じことの繰り返しでしょうか。営業、総務、経理、企画、どの仕事にも必ず“相手”がいます。お客様や取引先だけではありません、一緒に仕事をする会社の仲間だってそうです。そして、茶道と同様、その相手とその時間を共有できるのは1回限りです。「相手との時間を意味のあるものにするにはどうすればいいか」を突き詰めて考えれば、おのずと仕事の中に工夫が生まれます。「同じことの繰り返し」ではないはずです。とはいえ、人間のエネルギーには限界があり、この工夫を続けるのは、なかなか大変でしょう。

そこでもう1つ考えたいのが、仕事量のコントロールです。諸説あるようですが、茶室が一般的に小さく簡素な造りになっているのは、一期一会の精神を実現しやすくするためだそうです。つまり、人が来るたび、茶道具や掛け軸、花などを無理せず奇麗に整えられるようにするため、茶室はあえて小さくし、道具も最低限のものだけにとどめているわけです。皆さんが抱えている仕事についても同じです。お客様や取引先、会社の仲間にとって必要のない“ムダ”な仕事があるのなら、思い切ってそれをやめてみましょう。そして、空いた時間を、「仕事の相手との時間をより良いものにするための工夫」に充ててください。

「工夫をやめない、ただし無理をしない」。これが皆さんに求める仕事の姿勢です。実践すれば、マンネリを感じる暇もないはずです。

以上(2021年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

「できて当然」の業務に大苦戦 大人の発達障害との向き合い方

書いてあること

  • 主な読者:いつまでたっても仕事が上達しない社員を持つ上司・経営者
  • 課題:仕事が上達しない要因として発達障害の可能性がある
  • 解決策:発達障害の特徴や実際の対処例を参考にし、それに応じた取り組みを検討する

1 “大人の発達障害” 10人に1人が当てはまるとも

「単純なミスを何度も繰り返す」「毎回時間を守れずにクライアントとトラブルになる」。皆さんの会社に、このような社員はいませんか。社員をマネジメントする立場から見ると、頭の痛い存在かもしれませんが、頭ごなしに叱る前に知っておきたいことがあります。

それは、「発達障害」のことです。発達障害とは、

脳機能障害の一種です。症状には個人差があり、「忘れっぽい人」や「おっちょこちょいな人」などをどこまで含めるかにもよりますが、一説には総人口の10%程度が何らかの発達障害に当てはまる

ともいわれます。

このことを知らずに、接し方や指導方法を誤れば、パワハラやうつ病などを引き起こす恐れもあります。この記事では、発達障害の種類と特徴を確認し、業務上で見られがちな傾向やコミュニケーションのポイントなどを紹介します。

2 発達障害の種類は大きく3タイプ。複合タイプもある

1)ASD、ADHD、LDの3つのタイプ

発達障害のある人の脳は、そうではない人の脳と比べて、機能に障害があり、発達にバラツキがあります。「できること」と「できないこと」のギャップが大きく、コミュニケーションや社会生活に支障が出る場合があります。

発達障害になる原因は完全には解明されていません。先天的な遺伝、両親の出産時の年齢や健康状態、化学物質による環境汚染などが影響しているともいわれています。

発達障害として「ASD(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)」「ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)」「LD(学習障害)」がよく知られています。これらの症状に明確な境界はなく、それぞれの特徴を複数持ち合わせている人もいます。

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2)発達障害の種類その1:ASD

ASD(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)には、自閉症やアスペルガー症候群などが含まれます。以前は、広汎性発達障害と呼ばれることもありました。

一般的に、ASDの人は相手の気持ちや場の空気を読んだり、意思疎通を円滑に図ったりすることが不得意とされています。また、臨機応変に対応することが苦手なため、自分が慣れ親しんだ手順や環境のほうが安心する傾向があります。

その上で、自閉症の人は、言葉の発達の遅れ、コミュニケーションにおける困難さなどの特徴を持っていることが多くあります。

アスペルガー症候群の人も自閉症と同様の特徴がありますが、言語の発達の遅れはあまり見られず、知能の発達にも明確な遅れはありません。

ASDの傾向がある社員への接し方として、以下のようなものが想定されます。

  • ASDのケース:曖昧な指示や表現の理解に苦労する場合

上司から「最近(仕事の)調子どう?」や「あの商談どうなっている?」と聞かれた際に、的外れなことを答えたり、どの商談のことかが分からなかったりする

上司は、ASDの社員には、具体的に短く指示を出すことを心掛けます。例えば、実際に上司が指示の一部をやってみせたり、「PDF作成、セキュリティーは◯◯」などの指示をまとめたデータを当人に渡したりするのがよいでしょう。

3)発達障害の種類その2:ADHD

ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)の人は、色々なことに気が散ってケアレスミスを繰り返したり、締め切りや納期を守れなかったりします。また、1つの作業や仕事に何時間も休みなく集中し過ぎて、他のことに全く手が着かなくなることもあります。これを「過集中」と呼びます。

ADHDの人は、不注意優勢型、多動性―衝動性優勢型、その両方の特徴を持つ混合型の3種類に分けられます。

不注意優勢型の人は、必要なことに注意を向け、集中することが苦手です。身の回りの整理整頓も苦手で、忘れ物が多かったり、約束の時間に遅れたりします。

多動性―衝動性優勢型の人は、じっとしていることが苦手で、衝動的に行動を起こすことがあります。会話を遮って一方的に話したり、列の順番を待てなかったりもします。

ADHDの傾向がある社員への接し方として、以下のようなものが想定されます。

  • ADHDのケース:複数の作業を同時にできない場合

上司から指示を聞く際や、電話応対の際に、話を聞きながらメモを取ることができない。話を聞く(理解する)ことばかりに集中してメモを取り忘れたり、メモを取ることばかりに集中して、話の内容が理解できなくなったりしてしまう

上司は、1つずつ指示を出すことを心掛けます。また、一度に複数の作業の指示を出す際は、作業を1つずつ書き出し、取り組むべき順に番号をつけて渡すとよいでしょう。この他、ADHDの社員が電話応対する際は、「1.日時」「2.相手の氏名」「3.電話の宛先」「4.件名」「5.依頼事項」など、メモを取るべき項目についてフォーマットを作成しておくと効果的です。

ADHDの社員と接する際は、ミスがあることを前提とし、リカバリーできる方法や工夫を考えていくことが大切になります。

4)発達障害の種類その3:LD

LD(学習障害)は、全般的な知能の遅れは見られないものの、読む、書く、聞く、話す、計算するなどのうちいずれかの能力の習得と使用に著しい困難が見られます。

例えば、読む能力に困難が生じている障害は、読字障害・難読症・ディスレクシアなどと呼ばれており、似たような形の文字を識別できなかったり、文章を理解できなかったりします。また、マニュアルの内容を理解できなかったり、メールの文面を見落としたりすることもあります。

文字を書く能力に困難が生じている障害は、書字障害やディスグラフィアと呼ばれており、左右反転の文字である鏡文字を普段から書いてしまったり、誤字脱字の多い文章や文字の大きさのバランスが悪い文字を書いてしまったりします。また、メモを素早く取ることができなかったり、文書の作成に時間がかかったりします。

LDの傾向がある社員への接し方として、以下のようなものが想定されます。

  • LDのケース:文字の識別や文章の理解に苦労する場合

議事録や報告書、メールの文面を読んだり、その内容を把握したりするのに苦労する

上司は、文章読み上げソフトやレコーダーなどのツールの活用を検討してみましょう。その他、文字の大きさやフォントを変えて文字を読みやすくしたり、パソコンの作業用画面の背景色を明るい色から落ち着いた色に変更したりすることで、症状が改善したケースもあります。

LDは他の発達障害を併発している場合が多く、ASDやADHDの人に有効な対応方法も含めて、症状に応じた対策が必要です。

3 困ったときは周囲の「自己診断」よりも専門家に相談を

これまで、発達障害のある人の特徴と接し方の例を挙げてきました。前述の通り、こうした症状や程度は千差万別です。重要なのは、個別の社員が抱える特徴ごとに、接し方や指導方法を工夫することです。

障害者の就労支援事業を行っているLITALICOパートナーズによると、職場での少しの配慮や工夫だけで働きやすい環境となり、課題が解決される場合があるそうです。

例えば、「周囲の同僚の動きなどが気になって集中できず、同じミスを繰り返していた社員がいたケースでは、壁に向いて座るように座席を変えただけで、その社員が集中力を保つことができるようになり、ミスが減った」といいます。

他にも、「適材適所に配置することも有効で、当人の苦手な業務が極力少なく、発達障害の特徴が有効に発揮できる業務を任せる、という考え方もある」としています。例えば、1つのことに集中することが得意な人には、会話の中で臨機応変な対応が求められる電話応対業務よりも、大量の販売データから、顧客の隠されたニーズをつかむような分析が向いているといえるかもしれません。

注意しなければならないのが、発達障害の症状があるからといって、専門家でない人が安易に発達障害だと判断しないことです。発達障害の症状の中には、うつ病などのメンタルヘルス疾患などと似たものもあります。誤った判断をすれば、事態を悪化させたり、当人を傷つけてしまったりする可能性もあります。

そのため、発達障害の症状が顕著な社員がいた場合には、本人の悩みや課題に理解を示した上で、専門家に相談したり、医療機関の受診を促してみたりするのがよいでしょう。

例えば、発達障害情報・支援センターでは、発達障害のある人やその関係者からの相談などを受け付けている他、必要に応じて関係機関の紹介も行っています。

以上(2021年8月)
(監修 株式会社LITALICOパートナーズ)

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画像:pexels

社会課題と政策への感度を高める/経済性と社会性を両立させる中小企業のSDGs(1)

書いてあること

  • 主な読者:SDGsに本格的に取り組みたいけれど、企業としての損得勘定も気になる経営者
  • 課題:経済性と社会性を両立させるSDGsの取り組み方を知る
  • 解決策:自社の強みを、解決すべき社会課題と政策にマッチさせる。または政策感度を上げて政府や行政が注力するテーマを把握し、自社の事業にマッチさせる

1 コロナ禍で分かった、企業の危機管理と社会課題の解決が直結していること

1)コロナ後の中小企業が向かうべき針路は「SDGs」

2020年の実質GDP成長率が前年比4.8%減と落ち込み、東京五輪・パラリンピックでは多くの試合が無観客で、期待していたほどの経済効果が得られなくなった今、「コロナさえなければ……」と思っている方は少なくないでしょう。しかしながら、社会はコロナ前に戻ることはできません。中小企業の経営者の皆さんも、コロナ禍を機に、今までのビジネスモデルが全く通用しない時代に突入していると実感されているのではないでしょうか。このような中で私たちはどこに向かえばいいのでしょうか? 私は、その答えは、「SDGs」にあると思っています。

国際連合が掲げたSDGs(Sustainable Development Goals=持続可能な開発目標)とは、個人や企業が地球の社会課題に向き合い、変化に対応していくことで、持続可能な社会を作るための17の目標です。SDGsが採択された2015年以前にも、マラリアやSARS(重症急性呼吸器症候群)、MERS(中東呼吸器症候群)といった感染症は世界で大きな問題になっていましたが、日本では運良く感染が広がることはありませんでした。今回、

コロナによって初めてパンデミックを経験した日本は、国民と企業と政府が一丸となって感染症の抑止、つまり持続可能な社会づくりに取り組むことの必要性を悟った

のではないでしょうか。

2)経済性に取り組むプロ集団と、社会性に取り組むプロ集団との融合を

私は、これまで日本の企業は、社会課題への感度、また政策への感度が低かったのではないかと考えています。それがコロナ禍を機に、企業の危機管理が社会課題の解決に直結しているということを認識したのではないでしょうか。新しいビジネスモデルへの転換が求められている中で、中小企業はもっと社会課題、そして政府や地方自治体が作る政策に目を向けなければなりません。これは、企業が経済性と社会性の両立を目指すということでもあります。

私が共同代表を務める一般社団法人SDGsマネジメント(以下「SDM」)は、企業が経済性と社会性の両立を実現させるために、SDGsの導入支援をしています。私たち中小企業は、「ビジネス=経済性」に取り組むプロ集団であります。それに対して、政府や地方自治体の職員は、「社会課題=社会性」に取り組むプロ集団であります。企業にとっても社会にとっても、この2つのプロ集団の融合が求められているのです。このシリーズでは、中小企業が経済性と社会性の両立を実現させるためのSDGsの取り組み方について、3回に分けてご説明します。

2 「どんな社会課題を解決する会社なのか?」を打ち出す

SDMでは、SDGsを導入しようとする企業に必ず質問することがあります。

「あなたの会社は、どこの、どんな社会課題を、誰と解決をするのですか?」

この質問をされたときに、まず企業が当たる壁は、社会課題が分からないということです。経営者の感覚的に回答をいただくことはできますが、数値的な根拠=エビデンスをもって回答いただける方はほとんどいません。その理由は、自社の商圏内での政策を見ていないからです。

私たちSDMは、政策の調査研究をします。最初に見るのは、政府がおおむね毎年7月に発表する「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)です。日本の中でもトップクラスの国家公務員の皆様が、自分の省庁の担当政策を、この骨太の方針に1行書き入れてもらうために、粉骨砕身して作り上げられます。日本の課題や方向性が端的に表現されている資料であり、これを読み込まずして日本を知ることはできません。

次に見るのは、商圏の地方自治体の総合計画や「まち・ひと・しごと創生総合戦略」などです。これは、骨太の方針と違い複数年度にわたる計画ですが、商圏の人口動態やそれに伴う社会課題、産業政策などが記載されています。資料はインターネットの検索エンジンを通じて簡単に調べることができます。これらを調査し、読み込み、自分の事業と関わりそうな文面をマークすることで、ようやく自社の事業と社会課題の付き合わせができるようになります。

3 中小企業のSDGsは「事業と政策とのマッチング」で実現

では、具体的にどうやって「自社がどんな社会課題を解決する会社か」を決めるのか、実例を基にご説明します。

SDMの共同代表である西岡徹人さんが代表を務めるSUNSHOW GROUP(以下「SG」)は、第2回ジャパンSDGsアワードを受賞されました。SGでは、毎年SDGsへの取り組みを「SDGs REPORT」としてまとめ、発信をしています。この報告書から我々が学ぶべきポイントは、中小企業のSDGsは「事業と政策とのマッチング」であるということです。

SGは、全社ではなく事業部ごとに政策とマッチングさせています。例えば、SUNSHOW夢ハウスというブランドで低価格住宅の販売を手がける事業部は、主にSDGsの中のゴール1:「貧困をなくそう」に貢献することを掲げています。従来、低価格の商品を売るのは、競合他社に価格競争で勝つことを目的にしてしまいがちですが、SGでは社会課題解決を目的としています。

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では、どのように社会課題を設定しているかを、SGを例に説明します。

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1)事業の目指すべき姿を設定する

まず、SUNSHOW夢ハウスという事業の強み=ローコスト・価格優位性が、経済的価値だけでなく、社会的価値にどのように貢献するのか? を仮説として設定します。この場合は、「相対的貧困の解消」という仮説を設定しました。

2)エビデンスデータを収集する

次に、仮説を立証するためのエビデンスデータの収集をします。先に述べたように、このエビデンスに最も適しているのが、国や地方自治体が出すさまざまな計画です。SGの場合は、国レベルでは「子供の貧困対策に関する大綱」を、県レベルでは「岐阜県子どもの貧困対策アクションプラン」を参照しています。

3)事業指標=ビジネスインディケーターを設定する

その上で、単に低価格住宅を造り、販売するという目標だけでなく、SDGsのターゲットに準じた指標を設定し、事業内容との整合性をとります。この指標設定に役立つのも政策であります。社会性に取り組むプロ集団が作成する政策には、必ずKPI=Key Performance Indicator(重要業績評価指標)が設定されています。

これは、社会課題に対して重点改善項目を設定し、政策を実行することで、いつまでに、どれくらい改善が見込まれるかを指標化したものです。行政の指標なので、視点が大きいものもありますが、その中でも自社の事業に置き換えた場合に、どの指標において貢献できるかを解釈することが可能です。

4 注目のテーマに“便乗”して、新たな自社の強みを作る

これから解決する社会課題を設定しようと考えていらっしゃる中小企業の経営者の皆さんの中には、「うちには社会課題にマッチングできそうな強みがない」という方もいらっしゃるでしょう。そのような方のために、今、最も熱いテーマをご紹介します。これらのテーマに、いわば“便乗”して事業を進めることで、新たな自社の強みを作ることもできます。

そのために注目すべきは、最新の政策です。2021年6月18日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針2021)は、タイトルに「日本の未来を拓く4つの原動力〜グリーン、デジタル、活力ある地方創り、少子化対策〜」と記載されています。要するに、この4つの政策については、「政府としては企業が積極的に取り組んでいただければ、お金=予算もつけますよ! 社会的評価も上がりますよ!」と言ってくれているわけです。従って、わざわざこれを無視して、事業をやる必要はあるのでしょうか?

図表3で、4つの政府の施策と、それに対応するSDGs、社会課題、そしてそれらに対応する自社の事業の例を紹介しています。ぜひ参考にしてください。

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いかがでしょうか。「社会課題を自社の事業にマッチングさせる=社会性と経済性の両立」でポイントになるのは、国や県・市町村が言っている話を、自社の事業に置き換えて解釈することです。SDMではそれをローカライズといっています。社会課題を遠い国の話として人ごとのように聞くのではなく、いかに自分事としてローカライズできるかが、コロナ禍を乗り切る鍵であると考えます。

次回は、自社の事業を社会課題の解決に対応させることで、会社がどのように経済的メリットを享受できるかについてご説明します。

以上(2021年8月)

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画像:Sakosshu Taro-Adobe Stock

部下が追いたくなる上司の背中とは?

書いてあること

  • 主な読者:入社3〜5年目でさらに成長したい中堅社員と、それを見守る経営者
  • 課題:「すごい」と思える上司がいるが、日々、何をしているのか分からない
  • 解決策:固定観念を取っ払って上司の行動を観察してみる。そして、具体的に行動する

1 営業スタイルが明確に異なる2人の上司

営業部に所属する中堅社員のAさん。Aさんには2人の上司がいます。1人はB部長で、“いかにも営業”というタイプ。昔ながらの足で稼ぐ営業を徹底し、部下には「俺の背中を見て仕事を覚えろ!」と檄(げき)を飛ばします。

もう1人のC部長は、B部長とは全く違うタイプ。日ごろ、何をしているのか分からない謎の存在ですが、社内外の多くの人から頼られていますし、営業成績も抜群です。「C部長は一体どのような営業をしているのか?」と、Aさんの関心は高まっています。

C部長の行動の謎を解いて自分の営業に生かしたいAさんは、直接尋ねみることにしました。「C部長が日ごろ、何をしているのか分かりません。でも、営業の数字は上げています。一体、何をしているのですか?」。するとC部長は次のように返しました。

「ははは。私は営業部の部長だからね、文字通り“営業”をしているだけだよ。だけど、“売り方”が他の人と少し違うかな。私の場合、先にサービスをして恩を売り、それから商品を売っているんだよ」

2 上司のミステリアス。今と昔

「社長や専務はもちろん、事業本部長が何をしているのか分からない」。こう思っている人は少なくないでしょう。立場や責任が違いすぎて、どこで何をしているのか全くイメージできないということです。ある意味でベールに包まれた上司のミステリアスな感じは、かつては部下から見ると憧れにつながる面もあったようです。

しかし今どき、こうした行動の隠し方ははやりませんし、スケジューラーなどで見える化されているため、隠すこともできません。上司は、“報酬以上に働いている”ことを示すために、行動をオープンにすることが求められる時代です。

それでも、冒頭のC部長のような存在は「何者?」ということで、注目を集めます。C部長のような人が注目されるのは、幅広い活動を通じて人脈が広がったり、多様性が確保されたりして、それがビジネスの可能性を広げているからでしょう。

これからの上司に求められるのは、会社にこもる上司でも、昔ながらのやり方だけを踏襲する上司でもありません。これまでの組織の常識では測れない新しい価値観を、分かりやすく部下に示すことができる上司です。

3 上司が背中で見せるもの

C部長のような型にはまらない営業スタイルは、マニュアルなどを作ってコピーすることができません。よく上司は仕事ぶりを「背中で見せる」といいますが、昔とは見せる内容が違います。見せる内容は、複数業務への関わりを示す分単位のスケジュールや、成功や失敗の事例だけではありません。ましてや、滅私奉公的に組織に貢献する根性論でもありません。

これから上に立つ者が示すべきなのは、「新しいやり方をしてもいいのだ。そのために、社内外でこのように承認を取ればよいのだ」という、道の切り開き方です。そして、楽しそうに新しい道を切り開く背中に部下は魅力を感じます。

この行動は非常に大きなものを組織に残します。上に立つ者が、自分の達成したい目的を掲げ、苦手な人間ともうまくコミュニケーションを取りながらビジネスを進める姿は、そのまま部下自身や組織の可能性となり、将来に花開くことでしょう。

以上(2021年8月)

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画像:peshkov-Adobe Stock

脳・心臓疾患に関する労災認定基準の見直し

1 脳・心臓疾患に関する事案の労災補償状況

『令和2年度「過労死等の労災補償状況」』によると、直近5年間の脳・心臓疾患の労災請求件数、支給決定件数などは次のとおりです。

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令和2年度について、請求件数は前年度比152件の減となり、支給決定件数は前年度比22件の減、うち死亡件数は前年度比19件減の67件でした。

過労死の認定基準は、平成13年の改定により「長期にわたる疲労の蓄積が脳・心疾患の発症原因になる」との考え方が盛り込まれ、残業が「直近1カ月で100時間超」か「2~6カ月間平均で月80時間超」の場合は、業務との関連性が高く労災認定が妥当とする「過労死ライン」が示されました。それをもとにした、今回の時間外労働時間別(1か月または2~6か月における1か月平均)支給決定件数は、「評価期間1か月」では「100時間以上~120時間未満」の27件が最も多く、また、「評価期間2~6か月における1か月平均」では「80時間以上~100時間未満」の75件が最も多い結果となっています。

2 認定基準の見直し

今回の検討会報告書では、過労による脳・心臓疾患の労災認定基準については、勤務の不規則性や身体的負荷など他の要素も踏まえ、柔軟に判断するよう現行の認定基準を見直すべきと示しています。

そのなかで「業務の過重性の評価」に関する検討結果の概要は次のとおり記載されています。

検討結果の概要

  • 脳・心臓疾患の発症に近接した時期における負荷のほか、長期間にわたる業務による疲労の蓄積が脳・心臓疾患の発症に影響を及ぼすとする考え方は、現在の医学的知見に照らし是認できるものであり、この考え方に沿って策定された現行認定基準は、妥当性を持つ。
  • 「短期間の過重業務」及び「長期間の過重業務」において、業務による負荷要因としては、労働時間のほか、勤務時間の不規則性(拘束時間の長い勤務、休日のない連続勤務、勤務間インターバルが短い勤務、不規則な勤務・交替制勤務・深夜勤務)、事業場外における移動を伴う業務(出張の多い業務、その他の事業場外における移動を伴う業務)、心理的負荷を伴う業務、身体的負荷を伴う業務及び作業環境(温度環境、騒音)の各要因について検討し、総合的に評価することが適切である。
  • 長期間の過重業務の判断において、疲労の蓄積の最も重要な要因である労働時間に着目すると、①発症前1か月間に特に著しいと認められる長時間労働(おおむね100時間を超える時間外労働)に継続して従事した場合、②発症前2か月間ないし6か月間にわたって、著しいと認められる長時間労働(1か月当たりおおむね80時間を超える時間外労働)に継続して従事した場合には、業務と発症との関連性が強いと判断される。
  • 労働時間のみで業務と発症との関連性が強いと認められる水準には至らないが、これに近い時間外労働が認められ、これに加えて一定の労働時間以外の負荷が認められるときには、業務と発症との関連性が強いと評価できる。

3 さいごに

本報告書を受けた労災認定基準の改正により、過労死等として労災の支給決定件数の増加が見込まれます。一定の時間外労働を行っている企業としては、労働時間の削減や労働者の負荷軽減を実施するなど、安全配慮義務の履行について、しっかりと考えていくことが大切となるでしょう。

以上(2021年8月)
(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)
※本内容は2021年7月16日時点での内容です。

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画像:pexels

【朝礼】本物の“ポジティブ”に必要な“ネガティブ”視点

「何か新しいことにチャレンジする場合、皆さんはどのように考えるでしょうか?」

「ポジティブに取り組む!」という人がいれば、「ネガティブになってしまう……」という人もいるでしょう。少し意地悪な問い方でしたが、この質問だけでは、皆さんは考えを決めることはできないはずです。なぜなら、この段階では、何にチャレンジするのかが全く分からないからです。

そして、ここで気付いてほしい大事なポイントがあります。

まず「ポジティブに取り組む!」と考えた人は、本当にそう思っていますか。周囲から「ポジティブに考えなさい」と言われ続けて、そうしなければならないと無理をしていませんか。

ポジティブに考えることで前向きになり、活気が出るのはよいことです。しかし、ビジネスにおいては実現可能性も考えなければなりません。もしかすると、これからチャレンジしようとしていることは、ほとんど成功の見込みがないものかもしれません。そうしたビジネスを、単純にポジティブに力強く進めるのは危険です。

次に、「ネガティブになってしまう……」と考えた人は、自分を褒めてください。こう考えた人は、周囲から「後ろ向きだ」と言われ続けて、自分が嫌になっているかもしれません。しかしビジネスでは、何にチャレンジするのか分からない状況で、気持ちだけを無理やりポジティブにする、いわば“えせポジティブ”よりもよいのです。

ポジティブとネガティブは二項対立のようにいわれますが、ビジネスではそのようなことはありません。局面によってポジティブな考え方とネガティブな考え方を使い分けることが大事です。そして、勝機を見つけ、ここぞというときに前向きに明るく進めることが、“本物のポジティブ”なのです。

京セラの創業者である稲盛和夫氏の言葉に「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」というものがあります。人はできない理由を探すことが得意です。しかし、それだけを考えていたら、何も新しいことにチャレンジできません。そのため、アイデアを出すときは楽観的、つまり「やればできる。何とかなるさ」とポジティブに考えるようにするのです。

ただし、このままでは成功確率の低い見切り発車になってしまうので、計画段階では悲観的、つまりネガティブな考えに立ち、難所の見極めと回避策の立案が必要になるのです。こうして計画ができたら、あとは楽しみながらポジティブに仕事をすればよいということになります。

我が社には、ポジティブな一部の人と、ネガティブな多くの人がいます。どちらがよいということではなく、大切なのは局面に応じたポジティブとネガティブのバランスなのです。今、我が社は次の事業を模索しています。今の時点でリスクは何らありません。ぜひ、ポジティブに考え、楽しみながら次のビジネスを見つけましょう。

以上(2021年8月)

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画像:Mariko Mitsuda