2022年度税制改正大綱のポイント整理 ~住宅ローン減税と賃上げ税制の改正が目玉~

(要旨)

  • 2022年度の税制改正大綱が与党から示された。大所は①住宅ローン減税の見直しと②賃上げ減税の見直しだ。
  • 住宅ローン減税の見直しでは、控除率引き下げ・対象となるローン残高上限の引き下げが家計負担増要因となる一方で、控除期間の延長、優遇対象となる住宅の種類の拡大が行われている。新たに優遇対象となる「省エネ基準適合住宅」は戸建てで9割、共同住宅で7割(新築分)が基準を満たしており、多くの住宅が優遇を受けられるとみられる。また、ローン残高が少ない、支払い税額が少ない世帯では減税メリットをフルに受けられないため、控除率引き下げのデメリットよりも控除期間延長のメリットが大きくなる。改正後のほうが減税額が多くなる世帯も相応にいるだろう。
  • 賃上げ減税は大企業では給与増額分の最大30%、中小企業では最大40%の税額控除を受けることができるよう拡充される。ただ、一時的な減税が企業にとっては固定費にあたる賃金上昇をどこまで促すのかは不透明。
  • 今後の課題として、働き方の中立化のための所得控除制度の見直し、資産移転時期の中立化のための資産課税の見直しのほか、金融所得課税における「1億円の壁」の見直しなどが挙げられている。筆者の注目は資産課税の見直し。若年層への資産移転・生前贈与促進と格差固定化防止という2つの論点について、バランスの取れた議論が求められている。

2022年度税制改正大綱が示される、大所は住宅ローン減税改正&賃上げ減税拡充

12月24日に令和4年度税制改正大綱が閣議決定された。今回の税制改正の大所は①住宅ローン減税の見直しと②賃上げ税制の拡充である。①は昨年度大綱で改正の方向が示されていたもので、金利低下のもとで住宅ローンの金利負担分を減税額が上回る、いわゆる「逆ざや」が会計検査院に問題視されたことを発端とするものだ。減税額の上限を金利負担分とするキャップ制の導入も議論されたが、事務の煩雑さ等の観点から一律で控除率を引き下げる形に落ち着いた。キャップ制は上限額の範囲内で高めのローン金利を選択する誘因にもなってしまう点も問題含みであった1。②は賃上げ税制の拡充だ。要件を満たすことで、大企業で給与増額分の最大30%、中小企業で40%の税額控除を受けられるようにし、企業の従業員への賃金還元を後押しする。

このほか、企業によるスタートアップ出資を促すオープンイノベーション税制の延長、住宅資金の贈与税非課税制度の縮小・延長等の改正が示されている。富裕層に保有資産の報告を求める財産債務調書制度は、所得が少ない場合でも資産要件のみで提出を求め、提出義務者の範囲が広げられる。2023年10月から開始される予定のインボイス制度の円滑な移行に向けた対応等も大綱で示されている。

2022年度税制改正大綱の主な内容


1 例えば、キャップ制を設けると変動金利:0.5%、固定金利:1.0%の場合、控除率が▲0.5%、▲1.0%となり、実質負担は0.0%、0.0%で同等となる。金利上昇のリスクを抑えられる固定金利を選択する、といったようにインセンティブにゆがみが発生しうる。

住宅ローン減税改正はプラスになる世帯も、ポイントは控除期間延長と省エネ住宅基準

今回の住宅ローン減税の改正によって控除額算定にあたってローン残高に乗じる控除率が引き下げられる(1%→0.7%)ほか、対象となるローン残高の上限が引き下げられている。また、減税を受けるための所得要件が3000万円→2000万円に引き下げられており、これらの点は増税(減税縮小)要因だ。一方で、ローン控除の期間は10年→13年に延長されているほか、残高上限の優遇が受けられる住宅の種類が増えている。従来は優遇を受けられる長期認定優良住宅とその他の一般住宅の括りのみであったが、ZEH(ネットゼロエネルギーハウス)と省エネ住宅の2つが追加される。認定基準の厳しい順に長期認定優良住宅>ZEH>省エネ住宅となり、控除上限もこの順に大きい。

資料2では改正内容を踏まえて通算の最大控除額を計算、その変化をまとめた。これらの認定基準に該当しない一般住宅については最大減税額が縮小されるなど基本的に増税(減税縮小)方向での改正となる一方、環境配慮型住宅に大きめの控除が導入されている。このうち、省エネ住宅はカバー範囲が広く、2019年度の新築住宅に占める割合は戸建てで9割弱、共同住宅で7割程度に上る(資料3)。新築でみると現行制度の一般住宅の最大控除額は400万円だが、新制度の省エネ基準を満たした場合の最大控除額は364万円と減税額の縮小度合いはさほどドラスティックなものではない。また、①ローン残高が少ない、②対象となる所得・住民税が控除率1%分に満たない、ために最大控除額まで恩恵をフルに受けられていない世帯にとっては、控除率が引き下げのマイナス影響は小さい一方、控除期間延長の恩恵が大きくなる。今回の改正がプラスになる世帯も相応にいるものと考えられる。

ただし、2024・25年は新築住宅についてはいずれも縮小方向での改正が予定されており、こちらは明らかな負担増の要因だ。基本的には住宅ローン減税制度は縮小方向が志向されていることは確かであろう。将来的には再改正を加えたうえで延長されることも想定されるが、その際には省エネ・脱炭素基準の厳格化等を通じて、より環境性能の高い住宅の取得を促すような形が考えられる2。同様のスキームは自動車におけるエコカー減税でも用いられており、住宅ローン減税も似た形になる可能性があろう。


2 なお、今回の改正では既に、2024年以降に建築確認をした新築住宅については、省エネ基準適合が住宅ローン減税適用の要件とすることが示されている。

今後の住宅ローン減税制度 控除率・控除期間・所得要件

今後の住宅ローン減税制度 制度適用年・住宅種類ごとの最大控除額

新築住宅に占める環境基準等の認定を受けた住宅の割合

賃上げ減税を拡充、どこまで利用が広がるかは不透明

賃上げ減税は給与増額率などを要件に、より多くの従業員還元をした場合には減税額が追加される仕組みとなっていたが、今回の改正でこの追加減税部分が拡充されることになった。より大幅な賃上げに対してインセンティブを効かせた形だ。内容を以下でまとめた。要件を満たせば大企業では給与増額分の30%、中小企業では40%の税額控除を受けることができる。また、大企業の要件を「新規雇用者支給額の増加」から「継続雇用者支給額の増加」に切り替える。コロナ禍による経済環境の悪化を受けて「新規雇用」を重視した内容としていたが、継続雇用者支給額=賃金引上げに重心を移す。

ただ効果は不透明だ。基本的にこれまでの賃上げ減税が目に見えた効果をあげられていない理由は、一時的な減税と固定費である賃金の引き上げは時間軸が異なっているからだと考えられる。目先は減税メリットを受けることができても、将来減税がなくなった際に賃金を引き下げることは難しい。政府・与党の議論でもなされている通り、税制のみで賃上げを促進することには限界もあろう。

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積み上がる宿題

今後の検討事項は山積みである。大綱には今後の課題として働き方の中立化を目指した所得控除制度の見直し、相続税と贈与税の資産課税の中立化のほか、昨今岸田首相の発言も多かった金融所得課税への対応などが明記されている(資料5)。

筆者が注目しているのは資産課税の資産移転時期の中立化に関する議論だ。長年検討課題として挙げられ、議論が続けられている。高齢化に伴った老老相続の増加、高い贈与税のために若年層への資産移転が進まない問題が念頭に置かれているが、昨今の税制調査会の議事録等からは資産課税の強化や生前贈与制度の非課税枠縮小など「格差固定化防止」により比重が置かれている印象を受ける。日本の相続税の最高税率はすでに海外と比べても高い水準にあるほか、国際比較では日本の資産格差は小さい部類に入る(資料6)。資産課税の強化は節税のためのアパート投資などにつながり、それが空き家問題に拍車をかけるといった非効率な支出も招いている。格差固定化防止は重要な課題ではあるが、それぞれがもたらす影響を幅広くとらえた丁寧な議論が必要だろう。

大綱で明示された今後の課題

上位10%の人が持つ資産シェア

以上(2022年1月)
(執筆 第一生命経済研究所 経済調査部)

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「ゾーン30」「ゾーン30プラス」(2022/01号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

警察庁の統計によると、交通事故における歩行者や自転車の死者数の約半数は、自宅付近で発生した事故によるものです。また歩行者と車両の事故では、時速30kmを超えると歩行者の致死率が高くなります。

このため生活道路の交通安全対策として「ゾーン30」「ゾーン30プラス」が進められています。これら生活道路の交通安全対策を理解し、歩行者や自転車を保護する運転を心がけましょう!

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※出典:国土交通省ウェブサイト、「ゾーン30プラス」に関する2021年8月26日報道発表の別添資料を当社加工
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001419903.pdf

1.「ゾーン30」とは

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  • 「ゾーン30」とは、生活道路における歩行者や自転車の安全な通行を確保するため、生活道路を含む定められたエリアで最高速度が30km/hの速度規制を実施するエリアです。
  • エリア内では走行速度を規制するだけでなく、抜け道としての通行を抑制・排除する交通安全対策が行われています。
  • スクールゾーン(時間通行禁止)と組み合わせることもあります。

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2.「ゾーン30プラス」とは

「ゾーン30プラス」とは、交通規制(ゾーン30)に物理的デバイスを加え、歩行者や自転車を守ろうとしているエリアです。

警察と道路管理者が緊密に連携し、地域住民等の合意形成を図りながら、生活道路における人優先の安全・安心な通行空間の整備・拡充を順次進めています。

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※出典:国土交通省ウェブサイト、「ゾーン30プラス」に関する2021年8月26日報道発表の別添資料を当社加工(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001419903.pdf

「ゾーン30」や「ゾーン30プラス」は、歩行者や自転車にとって危険があり、運転者から見ても、子供の飛び出しなど予測できないような行動により、重大な交通事故につながりやすい場所に設けられています。

ドライバーの皆さんは、「ゾーン30」や「ゾーン30プラス」の交通安全対策を理解し、歩行者や自転車の安全に配慮した思いやりの運転を心がけましょう。

以上(2022年1月)

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【朝礼】2022年、皆さんにやってほしいたった一つのこと

あけましておめでとうございます! さて、迎えた2022年に、私は皆さん一人ひとりに、ぜひやってほしいことがあります。それは、

「私はこれを一年間続けた」と言えるものをつくる

ことです。分かりやすい例えで言うと、毎朝ジョギングをする、週に1度は本を読む、月に1度は異業種の人と交流するなどです。あれもこれもと欲張らず、何か一つでいいのですが、1点だけ条件があります。「続けることが、自分のこれからにとってプラスになる」と、皆さん自身がワクワクできるものにしてください。

私が皆さんに、この「一年間続けたプラスになるもの」をつくることをお願いするのには、2つ理由があります。まず1つ目は、よく「継続は力なり」と言いますが、「継続は自信になる」からです。2022年を振り返ったとき、一年間続けたものがあれば、それは皆さん一人ひとりに自信や誇りをもたらしてくれるでしょう。何かあったときに、よりどころになるかもしれません。

2つ目の理由は、「自分の未来を考える」という視点を持ってほしいからです。この一年間で続けるプラスのことは、例えば健康に良いかもしれませんし、新しい知識や気付きを与えてくれるかもしれません。きっと、皆さんのこれからの人生をより豊かにしてくれます。つまり、費やした一年間の時間と労力は、未来の自分に向けての投資、贈り物ともいえるでしょう。

忙しいときというのは、どうしても目の前の仕事に追われて近視眼的になりがちです。皆さんも恐らくそうだと思います。ですので、「プラスになるものを一年間続ける」ことを通じて、少しでも未来を考える機会をつくってほしいのです。「物事を長期スパンで考えろ」なんて難しいことは言いません。「自分の未来にとってプラスになりそうなことを、取りあえず一年間やってみる」。これなら実践できそうな気がしませんか?

もし既に何か続けていることがある人は、それを変わらず続けてもいいですし、内容をバージョンアップしてもいいでしょう。

ちなみに私は、週に1度は、自分と違う若い世代かつ社外の人の話を聞き、学ばせていただくことを続けると決めています。私は50代ですので、20代で起業している人などを想定しています。刺激になり、私自身をバージョンアップできそうだからです。ただし、そういう人たちと話すには、まずその機会を自分でつくりにいかなければなりませんし、知識や柔軟な発想、年齢などの属性にとらわれないフラットな思考も求められます。

さて、皆さんは何を一年間続けるでしょうか。イタリアでは、「100年先ではまだ短い。300年先においしいワインにすることを考えてワインづくりをしている」と聞いたことがあります。これはなかなか持てない視点です。300年とは言わないまでも、今年は皆さんも、未来を考える視点を持って前に進みましょう!

以上(2022年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】今年は「応援される人」になろう

新しい年に入り、皆さんは気持ちも新たに仕事をしていることでしょう。これから先、皆さんがさらに成長していくために、私から一つ課題を出します。それは、皆さんが「応援される人」になることです。今でも家族や友人、同僚は皆さんを応援しているでしょう。私が求めるのは、社外の人、それも自分よりも年上や年下の人から応援される人になるということです。なぜなら、応援される人には、それだけの魅力があり、それこそがビジネスパーソンとして成長するための大切な要素だといえるからです。

私には、50歳になってから畑違いの部門に異動になった知人がいます。そこはテクノロジーを使った新規事業の開発部門で、それまで彼が所属していた管理部門とは業務の性質が全く違います。右も左も分からずに困り果てた彼は、30歳近くも年が離れた若手に頭を下げて教えを請い、一生懸命に勉強しました。

それだけではなく、誰よりも積極的に社内外の人と交流し、勉強会にも参加しました。そうした活動を継続すると、知識が少しずつ蓄えられていき、人脈も広がっていきます。そして、ついに合同プロジェクトを立ち上げ、成功させることができたのです。異動から7年目の出来事でした。私が成功の要因を尋ねると、彼は笑顔で言いました。「社内外を問わず、たくさんの人が私に力を貸してくれたからこそ成功することができた。私一人では何もできなかった。周囲に恵まれたのだ」

皆さんは、どのような人なら応援したいと思うでしょうか。私は、応援される人には4つの要素があると考えています。

1つ目は、自分が成し遂げるべきことを知り、実際にそれを成し遂げるという強い信念を持っていることです。私の知人は畑違いの部門に異動になっても“腐る”ことはありませんでした。新規事業を立ち上げることを目標とし、それを成し遂げるために困難に立ち向かったのです。

2つ目は、継続した努力ができることです。彼は新規事業を成功させるまでに、7年もの間、諦めずに取り組み続けました。これは「私はこの仕事をしている」と胸を張って他人に言えるレベルであり、その人を象徴する魅力となります。

3つ目は、年齢に関係なく、他人の言葉に素直に耳を傾けられる柔軟さです。50歳ともなればそれなりに経験があるものですが、彼はそれに固執せず、若手の意見も十分に聞きました。

4つ目は、成功してもおごらず、他人への感謝の気持ちを忘れないことです。一番苦労したのは彼でしょう。しかし彼は、つらいときでも笑顔を絶やさず感謝の気持ちを伝え、むしろ率先して周囲の人を応援していたのです。

どうでしょう。応援される人に共通する4つの要素のうち、皆さんは幾つ当てはまりましたか。応援される立場になれば、大きな力と可能性を手に入れることができます。皆さん、今日から応援される人を目指して活動してください。

以上(2022年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

伊藤博文/経営のヒントとなる言葉

「人は人に使われることを知って、而(しか)して後に人を使うようにならなければならぬ」(*)

出所:「伊藤博文直話 暗殺直前まで語り下ろした幕末明治回顧録」(新人物往来社)

冒頭の言葉は、

  • 「たとえ誰かの下でどのような仕事を行っているときであっても、常に全力を尽くさなくてはならない。そうすれば、いつか自分が人の上に立ったときに、その経験が必ず役に立つ」

ということを表しています。

1853年、米国から黒船が来航し、幕府に開国を迫りました。これに対する幕府の弱腰の対応によって国内では攘夷(外国人や外国文化を排斥すること)運動が盛んになり、幕府に対する反発が強まりました。

こうした中、伊藤氏は、吉田松陰(よしだしょういん)が教える松下村塾(しょうかそんじゅく)で勉学に励み、後に高杉晋作(たかすぎしんさく)をはじめとする塾生たちとともに攘夷運動に加わることとなります。しかし、伊藤氏は単純な攘夷主義者ではなく、「西洋の技術を取り入れて日本の軍事力を強化し、日本の独立を守る」という考えを持っていました。そのため、1863年に同志の井上馨(いのうえかおる)氏たちとともに、海外の情勢を探り、技術を学ぶために英国へ留学しました。そして、産業や工業、軍事などの西洋文明を目の当たりにして、「日本は開国して商工業を発展させ、国力を高めなくてはならない」という考えを強めました。

その後、長州藩は1864年に禁門の変(蛤御門(はまぐりごもん)の変)で敗北して朝敵となり、第一次長州征討を受けて幕府に降伏しました。しかし、幕府への降伏に反対する高杉晋作がわずかな人数で決起し、たちどころに藩内の保守勢力を一掃して倒幕を目指す政権を立ち上げました。この際、伊藤氏は高杉晋作の命を受け、藩内の各方面に対して粘り強く交渉を重ねました。

その後、1866年の第二次長州征討では、幕府軍は長州軍に大敗を喫しました。このことにより、幕府の権威は大きく失墜し、1867年の大政奉還によって江戸幕府は終焉(しゅうえん)を迎えました。そして、王政復古の大号令によって明治政府が成立し、以降、日本は近代国家としての道を歩み始めることとなります。

伊藤氏は、明治新政府において大久保利通(おおくぼとしみち)氏や木戸孝允(きどたかよし)氏などの薩長閥の長を支えて活躍しました。その後、「明治十四年の政変」で大隈重信(おおくましげのぶ)氏が失脚した後は、政府において中心的な役割を担うこととなり、1885年に内閣制度が設置されると、初代内閣総理大臣に就任しました。

こうして、伊藤氏は、最終的には内閣総理大臣という、多くの人の上に立つ立場となりました。伊藤氏は、仕事ということについて次のように述べています。

「およそ人は、その従事するところのことに忠実ならざるべからず」(*)
(人間は、自分が就く仕事を忠実に行わなくてはならない)

伊藤氏は、自身が人の下で働く際には、忠実にそれを行い、ときには命がけで取り組みました。こうした経験が、後に人の上に立つ立場になった際に十分に生きることとなりました。どのような仕事であっても、必ず後の自分自身にとって役に立ちます。そうした仕事の中にやりがいを見つけ出すことこそが、人の上に立つことを志す上で重要となるのです。

【参考文献】
本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】
いとうひろぶみ(1841〜1909)。周防国(現山口県)生まれ。吉田松陰の松下村塾で学ぶ。高杉晋作や久坂玄瑞(くさかげんずい)などとともに倒幕運動に参加するなど、明治維新の立役者として大きな役割を果たす。1885年、初代内閣総理大臣就任。

【参考文献】
(*)「伊藤博文直話 暗殺直前まで語り下ろした幕末明治回顧録」
(新人物往来社(編)、新人物往来社、2010年4月)

以上(2021年10月)

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【朝礼】来年は「任され、任せる人」になります

早いもので、今年もあとわずかで終わりです。せっかくなので、けさはこの場を借りて、私の1年間の仕事を振り返ってみたいと思います。

いきなりネガティブな出だしで申し訳ないのですが、私が今年を振り返って最初に出てくる感想は「しんどかった」です。私たちのチームにとってこの1年間は、昨年から始まったリモートワークにも慣れ、いよいよ新しいサービスに本腰を入れていこうというタイミングでした。しかし、同じタイミングでメンバーの離職が続き、少ない人数で仕事を回すことを余儀なくされました。

「この難局を乗り越えるには、今まで以上にチームが結束しなければならない」。そう思って私が意識的に行ったことは、仕事が多そうなメンバーに自分から声を掛け、細かい業務を引き取ることでした。積極的にサポートに入ることでチーム内の仕事はスムーズに回り、サポートに入った相手からは感謝され、距離感も一層近くなりました。

しかし、やがて問題が起きました。私自身の本来の仕事が、今までよりも高いレベルを求められるようになってきたのです。上司から求められるレベルをなかなかクリアできず、しかも他のメンバーへのサポートは継続して行っていたので、私が仕事に割く時間は増え、反対にプライベートに割ける時間は少なくなっていきました。そのため、イライラすることが増え、せっかく距離感が近くなった他のメンバーに対しても、話しかけにくい雰囲気をつくってしまうようになりました。

しかし先日、見かねた上司が、私を食事に誘って話を聞いてくれました。私がイライラしている理由を聞いた上司は、こう言いました。「他のメンバーの仕事を積極的に手伝ってくれることには感謝している。だが、君はもう新入社員ではなく中堅社員だ。仕事を任されるだけでなく、任せることもできるようにならなければいけないよ」

私はハッとしました。私はこれまで「チームの人数が少ないから、きっと同僚や後輩も忙しいに違いない」と、彼らに仕事を振ることをせず、自分1人でこなすことばかりを考えていました。しかし、上司との会話の中でそれが誤りであることを知りました。同僚や後輩は忙しいものの、チームのサポートに入れないほどの仕事量ではありませんでした。それどころか、私が1人で仕事を引き取ることで、私自身の本来の仕事が遅れ、それを確認する上司に迷惑が掛かっていたのです。私はチームを気遣っているようで、実はチームのことが全く見えていませんでした。

ですから、来年は、仕事が多くて困っているメンバーがいたら、単に自分が引き取るのではなく、同僚や後輩も含め、誰がサポート役として適任なのかを考えられる社員になります。それには、メンバーが抱えている仕事の内容や量を正確に把握することが大前提になります。私は来年、皆さんの仕事を注意深く観察していきます。そして、中堅社員としてレベルを1段階上げ、仕事を「任され、任せる人」になります。

以上(2021年12月)

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画像:Mariko Mitsuda

18分で社員のアイデアが108も集まるすごい会議法! 全員が当事者になる「BBHメソッド」

書いてあること

  • 主な読者:現状の手詰まりの状態を打破したい経営者
  • 課題:現状を打破できるすごいアイデアが思いつかない
  • 解決策:発想・収束・評価までを60分で実施できるBBHメソッドでアイデアを生み出す

1 使えるアイデアは「300分の1」。だからこそスピード重視を

現代のビジネスではスピードが重視され、短時間で大量のアイデアを出すことが求められます。私は「300分の1法則」と呼んでいますが、

アイデアを300出しても、そのうちのせいぜい1つくらいしか世の中では通じない

ということです。ですから、本当にすごいアイデアを出したいのなら、衆知を集めて大量のアイデアを出さなければなりません。

そこで、この記事で紹介するのが、「BBHメソッド」です。BBHメソッドは、

アイデアの発想・収束・評価を、わずか60分で実施する方法

です。具体的には、次の3つの技法を活用します。

  • 発想:アイデアを出す「ブレインライティング(BW)」
  • 収束:発想をまとめる「ブロック法(BL)」
  • 評価:優秀なアイデアを選ぶ「持ち点法(Holding Point Method、HP)」

BBHメソッドは、3つの技法の頭文字をとって私がネーミングした方法です。わずか60分で実施できる優れものですので、ぜひあなたの会社でもご活用ください。

2 ブレインライティング(BW)は沈黙のスピード発想法

ここでは、私がブレインライティングを改良した「カードブレインライティング法(以下「BW」)」を紹介します。従来のブレインライティングでは、アイデアを整理し分類する際に、アイデアをカードに再度転記しなければなりませんでした。そこで、図表1のようなBWシートを考えました。アイデアをカードに記入すれば自由に動かせるので、再度転記する必要がありません。

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1)事前の準備

1.テーマを決める

まずテーマを決めます。テーマは、できるだけ具体的なものにします。

2.メンバーを選ぶ

テーマに関連のない人でも、解決力のある人は積極的にメンバーに加えましょう。メンバー数は6人が原則ですが、BWは何百人でも実施できます。

3.リーダーを決める

リーダーを1人選びます。リーダーの役割は、進行と時間チェックです。

4.机を四角型にする

机を2卓付けて四角型にし、全員がお互いの顔が見えるように座ります。

5.各メンバーにBWシートの材料を渡す

A4用紙1枚と、黄色の付箋紙(2.5㎝×7.5㎝、以下「カード」)を20枚渡します。各メンバーは、図表1のように配られたA4用紙を横長にし、最上部にテーマを書き、下にカードを貼ります。これがBWシートです。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番(各ラウンドを3分で実施する例)

1.リーダーがタイマーを3分にセットする

各メンバーはBWシート(図表1)を用意します。

2.第1ラウンド

各メンバーはBWシートの1列目に3つアイデアを記入します。基本的には文章にして記入し、主語・述語を入れるようにします。

3.BWシートを渡す

3分たったら各メンバーはBWシートを左隣の人に渡します。3つ書けなくても、時間になったら渡さなければなりません。

4.第2ラウンド

第2ラウンドも3分です。渡されたBWシートの2列目に自分のアイデアを記入します。1列目のアイデアと無関係なものでも、1列目をヒントに考えても構いません。ただし、1列目のアイデアと全く同じものはいけません。

5.BWシートを渡す

第2ラウンドが終了したら、速やかにシートを左隣の人に渡します。

6.第3ラウンドから第6ラウンドまで

第3ラウンド以降は、同様の作業を繰り返します。もし、時間内に3つアイデアを記入し、手元シートで上のほうに空欄があれば、そこにもアイデアを記入します。

BWはこのように進めていきます。1ラウンドが3分で6ラウンドですから、計18分。こんな短時間でも全員が全欄を記入すれば、6人×3アイデア×6ラウンド=108アイデア。たった18分で108ものアイデアが出る技法です。

3 BWのカードを一挙にまとめるブロック法(BL)

次は、BWをスピーディーにまとめる技法である「ブロック法(以下「BL」)」を活用します。これは、「KJ法」からヒントを得て私が考案した方法です。

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1)事前の準備

1.メンバーとリーダーを決める

メンバーとリーダーは、BWを実施したときと同じにします。

2.項目名を記入するカードを用意する

机はBWのときと同様に四角型にし、中央にA3用紙5枚を重ならないように敷きます。続いて項目名を記入するためのピンク色のカードを30枚用意します。

3.BWシートを配布する

各メンバーに、本人がアイデアを記載していないBWシートと、B4用紙1枚を渡します。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番

1.内容が似たアイデアを集めてカード群をつくる

各メンバーは、手元のBWシートに貼られたカードの中から、内容が似たもの同士を集めてカード群を幾つかつくり、手持ちのB4用紙に貼ります。ただし、1つのカード群のカードは5枚以内とします。

2.カード群の1つを中央のA3用紙に貼る

リーダーの右隣の人が、自分がまとめたカード群の中から1つを選んで読み上げ、机上の中央に敷いたA3用紙に貼ります。

3.他のメンバーが似た内容のカードを加える

出されたカード群に内容が似たカードを持っているメンバーは、そのカードを机上の中央のA3用紙に貼ったカード群に加えます。

4.カード群の項目名を付ける

メンバー全員でカード群の項目名(グループ名)を考え、ピンク色のカードに書いて貼ります。

5.次のメンバーがカード群の1つを中央のA3用紙に貼る

2番目の人が手持ちカード群の中から1つ選んで読み上げ、机上の中央に敷いたA3用紙に貼ります。以降、1回目と同様に他のメンバーが内容の似たカードを加え、項目名を考えます。

その後も同じ手順を繰り返し、全てカードを出しきるまで続けます。その際の注意点は、次の3点です。

  • まとめきれないカードは、「その他」としてまとめます。
  • 新たに思いついたアイデアがあれば、黄色のカードに記入して出します。
  • カード群のカードが多すぎるとまとまりがなくなるので、基本的に1群のカード数は10枚以内とします。

4 優秀なアイデアを一挙に評価する持ち点法(HP)

最後は、アイデアを評価する技法である「持ち点法(以下「HP」)」を活用します。通常、評価は話し合いで行うことが多いのですが、評価対象が何百もあると、とても時間がかかってしまいます。そこで私は、評価者全員が同じ持ち点を持ち、平等に評価するHPを考えました。HPなら、全員が同じ持ち点を一斉に配分するので、全員が平等に評価でき、ムダな討議時間が減ります。

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1)事前の準備

特にありません。BLから引き続いて行います。

2)リーダーの説明

ここで紹介している内容ですので、省略します。

3)会議の本番

1.評価するカードに点数を記入する

各メンバーがそれぞれ3つのアイデアに投票する場合、各メンバーは全カードの中からカードを選び、カードに1位なら3(3点)、2位なら2(2点)と数字を記入します。

2.カードに合計得点を記入する

全員の記入が終了したら、各カードに赤字でそのカードの合計得点を記入します。

3.得点が入ったカードだけ貼り出す

得点が入ったカードだけ、他の用紙に貼り出します。

4.話し合いで優秀なアイデアを選ぶ

合計得点の高いアイデアを中心に、全メンバーで話し合って優秀なアイデアを選びます。

5 BBHメソッドは簡単でスピーディー。ぜひご活用ください

アイデア会議をこのBBHメソッドで実施すれば、60分(BWに20分、BLに20分、HPに10分、アイデア選択に10分)で完了することが可能です。

私が代表を務める株式会社創造開発研究所では、ネーミングや商品企画の会議でこのBBHメソッドをよく使います。ネーミングの発想では500ものアイデアを出すことも珍しくありません。200くらいの発想数なら、BBHメソッドを活用し、3時間程度で実施することも可能です。

BW自体は、ドイツのホリゲル(Holiger)氏が開発したアイデア会議の技法です。ホリゲル氏はドイツの形態分析法の研究者で、経営コンサルタントでもあります。アイデア会議の代表技法である「ブレインストーミング」の欠点である、発言する人と発言しない人とが極端に分かれ、沈黙して考えることができないことを改良して、BWを考案しました。日本人には、「人前で積極的に意見を言うのが得意ではない」という人が多いので、このBWはとても日本人に向いた会議法だと思います。

まとめにはKJ法がよく使われますが、KJ法はメンバー全員の話し合いによって全カードをまとめる作業を行うので、大変時間がかかります。しかし、BLならまとめる作業を分担して行うので、大幅に時間が短縮されます。そしてHPも時間短縮が可能な評価法です。

ぜひ、皆さまの会社でも、さまざまな場面でこのBBHメソッドを活用してみてください。

以上(2021年12月)
(執筆 株式会社創造開発研究所代表 高橋誠)

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画像:Monet-Adobe Stock

【朝礼】年末の挨拶で分かる会社のレベル

早いもので2021年も今月で終わります。我が社のような3月決算の会社の場合、この時期には2つの節目を迎えます。1つは新年を迎えること、もう1つはその3カ月後に新年度を迎えることです。会社全体としては今の経営計画の総決算となりますし、並行して新しい年度の戦略も描くことになります。

この時期は、個人ベースでもけじめをつけるのに絶好のタイミングです。積み残していた仕事を片づけたり、新しい年や年度にチャレンジすることを決めたりします。そして、何か新しいことを始めるということは、別の何かを捨てるということでもあります。
さて、皆さんはお客様や取引先に年末の挨拶をすると思いますが、それはどのような内容のものでしょうか。ここがとても大切だと私は思うのです。相手によって挨拶の内容は変わってくるものですが、「今年はありがとうございました。来年もよろしくお願いします」と伝えるだけでは、不十分です。

年末のご挨拶は、相手に対する提案だと思ってください。相手は、新しいビジネスの取捨選択をしています。そこに、新しいビジネスのアイデアがあったらどうでしょうか。もし、その内容が魅力的なものであれば、新年早々に会ってもっと詳しく話を聞きたいと思うはずです。また、的を射たものでなかったとしても、提案をしてくれる相手との関係をなくそうとは思わないでしょう。

私のところにも、毎年、たくさんの年末の挨拶状が届きます。もちろん、全てに目を通し、返信もしますが、「今年はありがとうございました。来年もよろしくお願いします」といった定型的なものには、やはり「こちらこそ、ありがとうございました」と、定型文で返すだけです。正直なところ、印象に残りません。

皆さんは、相手の印象に残り、次のビジネスにつながる年末の挨拶をしなければなりません。そのためには、新しい提案を盛り込むことの他に、これから話す2つの要素も加えるようにしてください。

1つは、今年、その相手と取り組んだビジネスを振り返ることです。「今年は、一緒に新しいビジネスを企画して営業しました」といった具合ですが、そのとき、その商談における象徴的な会話など、相手と自分しか知らないことを盛り込むと、相手はこちらに親近感を抱きます。

もう1つは、年明けの具体的な行動を示すことです。「1月の第3週目にお会いしましょう」といったように、次の具体的な行動を示すことで、年明け早々から新しいビジネスの可能性を模索できるようになるのです。

定型的な挨拶やカレンダーの配布だけでは自社を印象づけるのが難しい時代になりました。私たちは、今のこの時期を生かして次のビジネスの可能性を見いだしていきましょう。それは、たった1つの年末の挨拶から始まるのです。

以上(2021年12月)

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画像:Mariko Mitsuda

すっきり分かる自社株の3つの評価方法

書いてあること

  • 主な読者:自社株の評価方法が知りたい経営者
  • 課題:評価方法の種類、自社が採用すべき方法が分からない
  • 解決策:評価方法は会社の規模に応じて「類似業種比準方式」「純資産価額方式」「併用方式」に分かれる

1 自社株の評価方法は規模区分で決まる

事業承継対策では、会社の株式(以下「自社株」)がどのように後継者に移すかが重要なポイントであり、特に自社株の評価額は、事業承継に必要な資金額に直結します。

税務上、取引相場のない株式の価額は、評価しようとするその株式の発行会社(以下「評価会社」)が大会社、中会社または小会社のいずれに該当するかに応じて評価します(財産評価基本通達178)。まずは、自社の規模区分を確認してみましょう。

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規模区分(大会社、中会社、小会社)に応じて自社株の評価方法は次のように異なります(財産評価基本通達179)。

  • 大会社:類似業種比準価額方式で評価。納税義務者の選択により純資産価額方式によって評価することも可能
  • 中会社:類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式によって評価。納税義務者の選択によって純資産価額方式で評価することも可能
  • 小会社:純資産価額方式によって評価。納税義務者の選択により、類似業種比準価額方式と純資産価額方式の併用方式によって評価することも可能

2 類似業種比準価額方式

類似業種比準価額方式は、大会社の株式を評価する際に用いる方法です。大会社は事業規模が上場会社に準ずる会社とみなし、評価する会社の事業内容が類似している上場会社の株価に比準して株式の評価額を求めます。

具体的には、評価する会社と業種が類似している上場会社の株価を基に、1株当たりの配当金額、年利益金額、純資産価額を勘案して、次の算式によって株価を算出します(財産評価基本通達180)。

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3 純資産価額方式

純資産価額方式は、主に小会社の株式を評価する際に用いる方法です。小会社の株式は、個人企業財産の評価とのバランスを考慮し、原則として1株当たり純資産価額によって評価します。純資産価額方式の計算方法は次の通りです(財産評価基本通達185)。

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評価差額は資産の含み益ですが、これに37%を乗じて評価差額に対する法人税等に相当する金額を算出します(財産評価基本通達186-2)。

4 併用方式

併用方式は、主に中会社の株式を評価する際に用いる方法です。併用方式は次式で算出します(財産評価基本通達179)。

類似業種比準価額×L+1株当たり純資産価額×(1-L)

Lの割合は次の通りです。企業規模が大きいほうがLの割合が高くなるため、その分、類似業種比準価額の割合が高くなります。

  • 中会社で大会社に近いもの:0.90
  • 中会社で中間のもの:0.75
  • 中会社で小会社に近いもの:0.60
  • 小会社:0.50

5 その他の留意点

1)株式保有特定会社の株式の評価

評価した価額の合計額に占める株式、出資および新株予約権付社債の価額の合計額が50%以上である評価会社の株式の価額は、純資産価額方式により評価します。なお、納税義務者の選択により、他の一定の方法により評価することもできます(財産評価基本通達189-3)。

2)土地保有特定会社または開業後3年未満の会社等の株式の評価

大会社に区分される会社で土地保有割合が70%以上である会社の株式は、純資産価額方式により評価します。同じく、中会社に区分される会社で土地保有割合が90%以上である会社の株式は、純資産価額方式により評価します。ここでいう大会社及び中会社には一定の小会社も含みます(財産評価基本通達189-4)。

開業後3年未満の会社等の株式は、純資産価額方式により評価します(財産評価基本通達189-4)。

3)配当還元方式(特例的評価方式)による株式の評価

同族株主以外および同族株主等であっても持ち株数が少ない一定の株主が取得した株式については、発行会社の規模にかかわらず、特例的評価方式である配当還元方式によって評価します。なお、その金額が原則的評価方式(類似業種比準価額方式、純資産価額方式、併用方式)により計算した金額を超える場合には、原則的評価方式により評価します(財産評価基本通達188-2)。

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以上(2021年12月)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:pixabay

大隈重信/経営のヒントとなる言葉

「失敗はわが師なり。失敗はわが大なる進歩の一部なり」(*)

出所:「日本のリーダー名語録 優れた指導者に学ぶ決断力 明治・大正・昭和」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

  • 「たとえ失敗をしても、そこで諦めてはいけない。失敗を次のステップに向けたバネとすることで、その先に大きく進むことができる」

ということを表しています。

1868年、明治新政府が成立すると、大隈氏は財政や外交分野の才能を認められ、政府の要職を歴任しました。そして、薩長派の巨頭である木戸孝允(きどたかよし)氏や大久保利通(おおくぼとしみち)氏が逝去すると、大隈氏は筆頭参議(政府の重職)として、実質的に明治政府を運営することとなりました。

当時、世間では国会開催や憲法制定を求める自由民権運動が高まりをみせていました。こうした動向に対し、伊藤博文(いとうひろぶみ)氏をはじめとする多くの参議は、「国会開催や憲法制定は漸進的に進めるべきである」という考えを持っていました。これに対し、かねてより英国の議会政治を日本でも実現しなくてはならないと考えていた大隈氏は、国会開催や憲法制定に関して急進的かつ具体的な考えを持っていました。

このため、大隈氏と伊藤氏たちの間で対立が深まることとなります。そして、1881年、伊藤氏ら反大隈派の巻き返しを受け、政争に敗れた大隈氏は、政治の舞台から去ることを余儀なくされました。

しかし、こうした逆境にあっても、大隈氏は希望を捨てませんでした。1882年、大隈氏は立憲改進党を結成しました。そして、「日本の近代化を推進するためには、立憲政治の指導者たる人材の育成が不可欠である」と考え、さらに同年、東京専門学校(現早稲田大学)を創立しました。

その後、1890年、日本において初めての国会(帝国議会)が開催されましたが、以降も藩閥体制に変化はなく、明治維新の主導的存在であった薩摩藩と長州藩の出身者が交互に総理大臣を務めるという状態が続きました。

こうした状況を改革するべく、1898年、大隈氏は自由党総理の板垣退助氏(いたがきたいすけ)と協力し、憲政党を結成しました。こうして、大隈氏が総理大臣の座に就き、日本初の政党内閣が誕生することとなりました。

晩年、大隈氏は往時を振り返り、次のように述べています。

「道が窮(きわま)ったかのようで他に道があるのは世の常である。時のある限り、人のある限り、道が窮(きわま)るという理由はないのである」(**)

この言葉は、「たとえ進むべき道がなくなってしまったかのように思えても、どこかに必ず道は開けている」ということを表しています。

大隈氏が創立した早稲田大学では、建学以来「在野精神」という理念が掲げられてきました。大隈氏は、政治家であった時代の多くを在野で過ごしながらも、常に志を高く持ち続けました。

失敗は、人生における一場面での結果にすぎません。大切なのは、「失敗をどのようにとらえ、そこからどのようにして立ち上がるか」ということです。諦めることなく、失敗をバネとしてそこから立ち上がってこそ、大きな進歩を遂げることができるのです。

【本文脚注】
本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】
おおくましげのぶ(1838〜1922)。肥前国(現佐賀県)生まれ。蘭学および英学(オランダ語および英語を通じて得られる西洋の学問)を学ぶ。1868年、明治政府の外国事務局判事就任。1898年、板垣退助氏とともに憲政党結党。

【参考文献】
(*)「日本のリーダー名語録 優れた指導者に学ぶ決断力 明治・大正・昭和」(武田鏡村、PHP研究所、2007年4月)
(**)「次代への名言 政治家篇」(関厚夫、藤原書店、2011年1月)
「大隈重信」(中村尚美、吉川弘文館、1986年1月)

以上(2021年5月)

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画像:photo-ac