【朝礼】本物の“ポジティブ”に必要な“ネガティブ”視点

「何か新しいことにチャレンジする場合、皆さんはどのように考えるでしょうか?」

「ポジティブに取り組む!」という人がいれば、「ネガティブになってしまう……」という人もいるでしょう。少し意地悪な問い方でしたが、この質問だけでは、皆さんは考えを決めることはできないはずです。なぜなら、この段階では、何にチャレンジするのかが全く分からないからです。

そして、ここで気付いてほしい大事なポイントがあります。

まず「ポジティブに取り組む!」と考えた人は、本当にそう思っていますか。周囲から「ポジティブに考えなさい」と言われ続けて、そうしなければならないと無理をしていませんか。

ポジティブに考えることで前向きになり、活気が出るのはよいことです。しかし、ビジネスにおいては実現可能性も考えなければなりません。もしかすると、これからチャレンジしようとしていることは、ほとんど成功の見込みがないものかもしれません。そうしたビジネスを、単純にポジティブに力強く進めるのは危険です。

次に、「ネガティブになってしまう……」と考えた人は、自分を褒めてください。こう考えた人は、周囲から「後ろ向きだ」と言われ続けて、自分が嫌になっているかもしれません。しかしビジネスでは、何にチャレンジするのか分からない状況で、気持ちだけを無理やりポジティブにする、いわば“えせポジティブ”よりもよいのです。

ポジティブとネガティブは二項対立のようにいわれますが、ビジネスではそのようなことはありません。局面によってポジティブな考え方とネガティブな考え方を使い分けることが大事です。そして、勝機を見つけ、ここぞというときに前向きに明るく進めることが、“本物のポジティブ”なのです。

京セラの創業者である稲盛和夫氏の言葉に「楽観的に構想し、悲観的に計画し、楽観的に実行する」というものがあります。人はできない理由を探すことが得意です。しかし、それだけを考えていたら、何も新しいことにチャレンジできません。そのため、アイデアを出すときは楽観的、つまり「やればできる。何とかなるさ」とポジティブに考えるようにするのです。

ただし、このままでは成功確率の低い見切り発車になってしまうので、計画段階では悲観的、つまりネガティブな考えに立ち、難所の見極めと回避策の立案が必要になるのです。こうして計画ができたら、あとは楽しみながらポジティブに仕事をすればよいということになります。

我が社には、ポジティブな一部の人と、ネガティブな多くの人がいます。どちらがよいということではなく、大切なのは局面に応じたポジティブとネガティブのバランスなのです。今、我が社は次の事業を模索しています。今の時点でリスクは何らありません。ぜひ、ポジティブに考え、楽しみながら次のビジネスを見つけましょう。

以上(2021年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【事業承継】後継者育成における経営者の役回り

書いてあること

  • 主な読者:事業承継を検討していて、後継者をどのように育成するか悩んでいる経営者
  • 課題:後継者の任命、育成に当たって必要なことを整理したい
  • 解決策:経営手法と経営ノウハウの具体化。後継者の意見の尊重

1 経営者の役回り

1)後継者の経営能力を社員に示す

企業は経営者と社員の集合体といえ、両者が認め合い、有機的に結合することで大きな力を発揮します。社員は、事業承継によって新たな経営者となった後継者の経営能力や人格を推し量っています。

そのため、後継者候補(以下「後継者」)となっている人は、事業承継前から社員の信用を得る必要があり、そのためには現経営者の長所と短所を踏まえた上で、自身のスタイルを確立していく必要があります。

2)経営手法と経営ノウハウを徹底的に落とし込む

経営者は最終的な意思決定権者です。そのため、後継者が現経営者に対して「自分のやり方でやらせてくれ」と意見することは悪いことではありません。

ただ、長きにわたる経験によって培われてきた現経営者の経営手法と経営ノウハウは、これから経営を行う後継者が知っておかなければならないことです。時流や経営環境が変化したとしても変わらない普遍的なものがあります。現経営者は、後継者の意思を尊重しつつ、これまでのやり方を押し付けるのではなく、後継者に自身の経営手法と経営ノウハウを教えていきましょう。その際、経営ビジョンなどの全体像だけではなく、事業拡大期など過去の重要な局面で行ってきた判断や結果、そして、なぜその時期にどのような経緯で決断したかといったことまで、後継者に教えることが重要です。

現経営者が持つこうした経営手法と経営ノウハウは、現経営者の頭の中だけにあることが多いので、現経営者は、これらをできるだけ体系化し、文書化することが求められます。場合によっては、社内の適任者か社外のコンサルタントの活用を検討するとよいでしょう。

3)自らの経営手法を確立するには長い期間が必要

現経営者の経営手法や経営ノウハウを後継者が理解する過程で、両者の考え方の違いが明確になり、衝突することもあります。このような場合、現経営者が後継者の意見を引き出して議論することで、後継者に広い視野で論理的に考えるきっかけを与えます。

現経営者と議論を重ねて後継者が導き出した経営方針やプロジェクトなどを、事業承継前に試せる場が必要です。後継者が実際に自らの考えを試してみることで、現経営者もその実施過程と結果を見てアドバイスができます。この際、必要な権限は後継者に委譲し、同時に責任も課します。後継者が自由に動ける環境で自らの考えを実行できて初めて後継者は自らの能力を自覚し、結果に対して素直に向き合うことができます。

また、経営者とは常に重責を担う立場であり、事業承継前とはいえ後継者が失敗した場合は、役員報酬をカットするなどして経営者としての結果責任の重要性を認識させる必要があります。このように、現経営者が後継者に徐々に権限を委譲し、実力を試せる場を広げていくことが、後継者の経営者としての自覚の養成と自らに適した経営手法の確立につながっていきます。

2 社内の体制づくり

1)非協力的な幹部社員の扱い

現経営者と会社を支えてきた幹部社員の中には、自身より年齢の若い後継者を下に見たり、自身が後継者に選ばれなかったことを妬ましく思ったりする者がいるかもしれません。このような幹部社員は、新たな経営者に不満を持つことがあります。

こうした場合、まずは現経営者が幹部社員に説得してみます。それでもその幹部社員の姿勢が改まらなければ処遇を考えざるを得ません。その際、幹部社員はそれまで企業を支えてきた功労者であることも考慮することを忘れてはなりません。

一方、幹部社員としてイエスマンだけを残せばいいわけではありません。企業の発展のために後継者への諌言をいとわない幹部社員や、これまでの豊富な経験に基づいて適切なアドバイスができる幹部社員が必要です。

ただし、こうした良い面を持つ幹部社員も、後継者から見れば自分より社内事情に通じている年配者であり、ある意味扱いにくい存在です。現経営者は、後継者とよく話し合い、こうした幹部社員の有用性を伝えた上で、後継者がこうした幹部社員と信頼関係を築いていけそうかを判断しましょう。

2)新たな幹部社員の任命

新たに経営者という立場になる後継者にとって、同時期にパートナーとなる幹部社員がいることはとても頼もしいものです。自身に似通った境遇に置かれた幹部社員の存在は自身を客観的に見るきっかけとなります。同時に、抜てきされた幹部社員の気持ちも高揚させることができるでしょう。人選については当然のことながら後継者に一任し、現経営者は後継者が気兼ねすることなく、自分の意思で決定できるように配慮しましょう。

3)事業承継のいち早い告知

後継者の経営能力の向上や幹部の刷新には、5年程度の時間がかかることが予想されます。現経営者は、自分が健康で気力が充実しているうちに、前もって後継者の育成と体制づくりに着手すべきです。そして、現経営者は後継者の育成にめどが立ったら、後継者と事業承継の時期をいち早く社内に告知しましょう。告知後、退職する幹部社員が出てくる可能性なども考慮し、告知の時期は事業承継の2年ほど前に行ったほうがよいと考えられます。

また、早期の告知は、後継者による事業承継をよしとしない社員に対して、退職を促すことにもつながり、事業承継時の一斉退職による混乱を避ける効果が期待できます。

4)社員への印象づくり

どのような経営者にも良い面と悪い面があります。現経営者は、社員が良く思っていなかった自身の姿勢や社風・制度、改善しようと思っていたができなかったことを後継者に伝えましょう。事業承継後に、その一部を後継者が改善することで、重要な経営のスタート時に、社員に良い印象を与えることができます。

改善する内容は、経営者と社員がコミュニケーションを取れる仕組みを設ける、人事評価制度を変えるなど、さまざまなことが考えられます。ただし、賃金の一律引き上げなど明白な機嫌取りは、恒久的に実施できるものではなく、社員に過大な期待とその後の落胆を招きかねないため、注意が必要です。

以上(2021年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】貴重な「斜め上」の先輩

皆さんの中にはご存じの方がいるかもしれませんが、私はこの会社の先輩である○○さんに、よくお世話になっています。けさは、この場を借りて○○さんに感謝の気持ちを伝えるとともに、上司の方々には、日ごろは目に見えないかもしれませんが、○○さんは後輩の面倒見が良いという部分でも会社に貢献していることを知っていただきたいと思います。また、若手の皆さんには、私にとって○○さんのような先輩を持つことが、いかに自分にとってプラスになるか、参考にしていただければと思います。

○○さんと私は、業務が違いますので、一緒に仕事をさせていただく機会はほとんどありません。話をするようになったきっかけは、廊下で擦れ違ったときに、○○さんに「ちょっと元気ないんじゃないの?」と声を掛けていただいたことでした。そのときの私は、仕事で行き詰まっていて、難しい顔をしていたのだと思います。それ以来、事あるごとに話しかけていただくようになり、次第に打ち解けてくると、飲みにも誘っていただくようになりました。

○○さんとは業務での上下関係がないので、評価を気にすることもなく、気兼ねなく相談事を聞いてもらえます。また、直属の先輩や上司に相談すると、「こうしたほうがいいよ」というアドバイスをいただけるのはありがたいのですが、私の場合、具体的なアドバイスよりも、共感や励ましをもらいたいときが少なからずあります。

そんなときこそ、○○さんに相談します。すると、○○さんは、まずはじっくりと話を聞いて、「分かるよ。僕も昔、同じようなことで悩んだことがあったから」と共感してくれます。その上で、「僕の場合は、こう考えるようにしたら、うまくいくようになったよ」と、あくまでも参考程度といった形でヒントを与えてくれるのです。

たまに○○さんは、私の直属の先輩や上司のエピソードも話してくれます。その話を聞いて、「あの先輩も、昔はそんなことで苦労していたんだな」と、少しホッとしたりもします。

今だから言えますが、会社を辞めたいと思ったときに相談したのも○○さんでした。○○さんに励ましてもらわなかったら、今の私はありません。○○さんには、本当に感謝しています。

今では○○さんとは、互いにプライベートの相談もしていますし、○○さんから「君と同年代の人たちは、この新企画についてどう思っているの?」といったことを聞かれたりもしています。

最近知ったのですが、私と○○さんのような、直接の上下関係ではない先輩との関係を、「斜め上」の関係というそうです。私にとって、「斜め上」の○○さんは、非常に貴重な存在です。そして、私は○○さんにしていただいていることのお返しができるよう、なるべく「斜め下」の後輩に声を掛けるようにしています。直属の先輩や上司には言いにくい悩みを抱えている人がいたら、ぜひ私を聞き役として使ってください。

以上(2021年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

ノリの悪い上司の下で仕事は楽しいか?

書いてあること

  • 主な読者:チーム力を高めて結果を出したい管理職
  • 課題:結果ばかりが気になってしまい、チーム全体の雰囲気づくりが疎かになっている
  • 解決策:管理職が率先して動き、良いノリをつくってチームを勢いづける

1 雰囲気を悪くしているのは誰だ?

季節外れの人事異動を命じられた中堅社員のAさん。営業部から企画開発部への異動です。企画開発部でAさんが担当するのは新規事業の開拓です。とても楽しそうな仕事に、Aさんはワクワク感を抑え切れません。

しかし、企画開発部に配属されて数日勤務してみると、異動前に抱いていたイメージと現実が全く違うことを知ります。一言で言うと、企画開発部は“ノリ”が悪いのです。そして、その原因は企画開発部のB部長にあります。

B部長は後ろ向きの性格なうえ、機嫌が悪くなるとすぐに態度に出します。また、オンライン飲み会などのイベントにもほとんど参加しません。こうしたB部長が発する良くない雰囲気がメンバーにも波及し、企画開発部全体をどんより暗いものにしています。

企画開発部は、今年度末に新規事業の計画を社長にプレゼンテーションします。今のタイミングは、新年に向けてメンバーを勢いづける大事な時期です。本来ならばB部長がスピーチし、力強い言葉でメンバーを鼓舞するべきです。しかし、B部長にそうした考えはないようで、いつもどおり振舞っています。「こんな環境で仕事をしても楽しくない……」。Aさんは、ビジネスにおけるノリの大切さを実感し始めていました。

2 ビジネスにおけるノリの効果

一般的にノリというのは、そのときの雰囲気や流れに乗って勢いをつけることを意味します。調子づいて羽目を外すなど、「悪ノリ」の意味でも用いられます。

悪ノリは、ビジネスでも発生します。調子に乗って、言わなくてもいいことを言ってしまったという経験は誰にもあるでしょう。また、相手のペースにまんまと乗せられて、不利な条件を受け入れてしまうことがあるかもしれません。こうしたことは、特に権限のある管理職は、避けなければなりません。

逆に、管理職は、「良いノリ」を率先してつくるべきです。例えるなら、波に乗って組織に勢いを与えるイメージです。例えば、新しいチャレンジなど会社やチームの状況、新年度、年末年始などの時期などを踏まえつつ、「ここだ!」というときに自らの言葉で波を起こし、チームを乗せるのです。

うまく波に乗ることができれば、チームは明るい雰囲気で満たされ、活力も生まれます。メンバーは仕事を楽しむことができるので、パフォーマンスも高まります。マネジメントに優れた管理職は、こうしたビジネスにおけるノリの大切さを理解しており、良いノリをつくる努力を惜しみません。

3 率先垂範で明るい組織をつくる

ノリの悪い管理職が自分を変えようとする際に確認したいのは、「管理職はチームを任された『公人』であり、常に周囲から見られている」という認識です。

一つの例を挙げてみます。近年は社員満足度を高めるための仕掛けをする会社が増えています。まだリアルで集まれたころの例ですが、ある会社がこうしたイベントを開催し、余興でダンスをすることになりました。ここで役員や管理職のノリが分かれました。「よし、やろう!」と積極的に参加するグループと、「こういうの苦手で……」とダンスの輪から遠ざかるグループが出てきたのです。

イベントの参加者は、役員や管理職がどのように行動するかを観察しています。ダンスが下手でも関係ありません。社長以下、管理職は全員参加で、楽しくダンスをするのが好ましい姿です。そうした姿を見たイベントの参加者は、「明るくて一体感のある会社」だと感じるからです。これは会社全体のイベントの例でしたが、部門単位でも本質は同じです。

4 会議のノリを悪くする管理職

管理職が積極的なのは好ましいですが、注意しないと意図せず周囲を畏縮させてしまうことがあります。ありがちなのは会議です。会議で管理職が発言するのは良いことですが、誰も発言を制しないのをよいことに “独演会”になっていないでしょうか。また、管理職は“少しだけ”厳しく言ったつもりが、周囲が過剰に反応してしまい、恫喝(どうかつ)と受け取られてはいないでしょうか。

周囲がどう受け取るかは、普段の管理職のノリで違ってきます。日ごろから明るく前向きな姿勢を保ち、部下に意見を出させ、真剣に議論することが大切です。このような管理職の言葉なら部下も耳を傾けるでしょうし、少々厳しくされたくらいで、恫喝されているとは感じないでしょう。

5 ノリが仕事を楽しくする

「孫子」の中に「激水のはやくして石を漂わすに至るは、勢なり(兵勢篇)」という一節があります。管理職なら、大きな岩をも押し流すほどの勢いを自分のチームに取り入れたいと考えるはずです。特に、既存のビジネスが絶好調なとき、新規事業など新しいことにチャレンジするとき、逆境を克服するときなどの「勝負どころ」ではそうでしょう。

そして、勝負どころでチームが“戦う態勢”になれるか否かを決める要素に、管理職のノリがあります。そのため、管理職は良いノリをつくらなければならないのです。とはいえ、良いノリが突然生まれ、チームに定着するわけではありません。管理職が日ごろから努力を重ねる必要があるのです。

以上(2021年8月)

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「ぶら下がり人材」を減らし、意欲的な社員を増やすためのターゲティング戦略(後編)

書いてあること

  • 主な読者:社内の雰囲気をもっと良くしたい、社員のやる気をもっと高めたい経営者
  • 課題:リモートワークやフレックスタイム制などの施策をいろいろ講じているが、効果を実感できない。それどころか、逆に離職する社員までいる
  • 解決策:自社の社員を5つの層に分類し、会社に居続けてほしい社員の優先順位を立てて、それに基づいて施策を打っていく

1 ハイポテンシャル人材、立ち上がり人材、優秀人材の順で離職対策を進める

ぶら下がり人材(やる気はないが消極的な理由で会社に定着している社員)を減らし、意欲的に働く社員が増えていく好循環を創り出す方法として、まず「会社として大事にしたい人材像を定義する」ことが必要です。

具体的には社員全体を次の5つの層に分け、どの層に焦点を当てるかを明確にしていきます。

  • 優秀人材:すでに会社のけん引役となっている優秀な社員
  • ハイポテンシャル人材:3~5年後に優秀人材になりそうな社員
  • 立ち上がり人材:新卒・中途を問わず入社から1年以内の社員
  • 普通人材:やるべきことを真面目にこなす社員
  • ぶら下がり人材:やる気はないが消極的な理由で会社に定着している社員

筆者がお勧めするのはハイポテンシャル人材、立ち上がり人材、優秀人材の順で離職対策を進めることです。後編では、この3つの層の社員に対し、具体的にどのような施策を打てば会社に居続けてもらえるのかを見ていきます。

2 どうすれば会社に居続けてもらえる?

ハイポテンシャル人材、立ち上がり人材、優秀人材の社員にアプローチする上でのポイントは、離職の種類別に施策を立てることです。具体的には、次の3つの場合に分けて考えます。

  • 離脱:心身の健康状態が悪化し働けなくなるときに起こる離職
  • 消極的離職:「働きやすさ」が低下したときに、今の環境から逃れるための離職
  • 積極的離職:「働きがい」が低下したとき、つまり今の会社で働くモチベーションが低下した場合に多い離職(自分の希望をかなえるための転職)

1)ハイポテンシャル人材に対する施策

1.離脱が発生している場合

ハイポテンシャル人材をつぶしてしまう恐れがあり、一番良くないパターンなので、早急に対策が必要です。ハイポテンシャル人材は、仕事に集中しやすく、のめり込んで行うため疲労が蓄積しやすいという特徴があるので、メンタルヘルスケアを実施しましょう。

2.消極的離職が発生している場合

何らかの理由で働きやすさが低下しています。ただ、具体的に何が問題なのかが分かれば、解決策自体は明快なことが多く、経営者や管理職の覚悟さえあれば容易に対策が進みます(リモートワークやフレックスタイム制の導入、給与水準のアップなど)。ですから、まずは社員の悩みをよく聞くことが大切です。離職時のアンケートの蓄積、意識調査や1on1面談などによって、社員の声を拾いましょう。

3.積極的離職が発生している場合

一番対策が難しいです。「働きがい」を上げるための機会を創出する必要があります。具体的には、本人の強みが活用される仕事内容を与える、成長していると実感ができるようなアサインの仕方をする、職場のメンバー同士の交流機会を増やし居場所として認識してもらうなどが考えられます。ただし、「コミュニケーションを取らずに仕事に集中したい」など、社員の性格などによっては効果が見られないこともあり、対策には時間や手間を要するケースが多いです。3.の対策をするなら、1.と2.の離職対策に注力するのがよいでしょう(過度な働きやすさをつくりすぎないように注意)。

2)立ち上がり人材に対する施策

1.離脱が発生している場合

採用時にミスマッチが起きている可能性があります。入社時にストレス耐性を確認しておくこと、採用面談時に「この会社でどのような労働価値を得られるのか」などを擦り合わせておくことが大切です。また、新しい職場に適応していく段階では疲労が蓄積されやすいため、入社後3カ月程度は過度な業務負荷をかけず、段階的に業務を広げるようにしましょう。

2.消極的離職が発生している場合

業務負荷の多さや人間関係に注意が必要です。現場の上長による定期的な声掛けや1on1面談の実施、人事による会社や部署への適応状況のヒアリングを通じて、立ち上がり人材の業務や精神をサポートしていくようにしましょう。

3.積極的離職が発生している場合

見本となるハイポテンシャル人材を複数育成することが対策になります。前編で述べた通り、ハイポテンシャル人材が優秀人材になろうと成長していく姿は、立ち上がり人材にとっての良い道標となり、ひいては働きがいにつながります。

3)優秀人材に対する施策

1.離脱が発生している場合

年齢層が高めのケースが多いです。メンタルヘルスケアをはじめ、心身の健康をサポートするようにしましょう。

2.消極的離職が発生している場合

不満を特定し、全社的な問題であれば除去しましょう。親の介護や自身の体調など、高齢の社員ならではの悩みを抱えているケースがあるため、必要に応じて休暇制度や健康診断の項目の見直しなど、できる範囲での対応を行いましょう。

3.積極的離職が発生している場合

これを止めるのは至難の業です。優秀人材はその能力故に、一度転職を決意してしまうと、すぐに辞める可能性があります。ここにかける労力があれば、ハイポテンシャル人材や立ち上がり人材の離職対策に注力したほうがよいでしょう。

3 ターゲティング戦略によってぶら下がり人材はどうなる?

このように、ターゲティング戦略を行うことで、意欲的に働く社員が評価される会社になると、組織がぬるま湯化するプロセスと逆の現象が発生します。具体的には、モチベーションの低いぶら下がり人材に、次のような変化が起こります。

  • 働きやすさが下がって、自分の許容範囲から外れるので離職する(消極的離職)
  • 働きやすさは下がるが、自分のやれる範囲で頑張ろうとする(ぶら下がり状況の改善)
  • やった分だけ評価される文化になるので「やる」ようになる(染まる)

こうした変化により、意欲を持って働く社員の割合が増加すれば、会社全体の生産性の向上なども期待できます。

なお、今回は、離職対策のターゲティング戦略を中心に話してきましたが、離職は全てが悪というわけではありません。ゼロを目指すのではなく最適化することが重要です。特に近年は、働き方改革やコロナ対応により雇用の形も変わってきています。

若手未経験者を採用し、ある程度たったら積極的離職(転職)を推奨する「卒業文化」を創出することで、ハイポテンシャル人材が集まりやすい環境をつくるという戦略もあるので、会社や業種、時代に合った仕組みを取り入れていくことをお勧めします。

以上(2021年7月)
(執筆 エリクシア代表取締役 医師 産業医 経営学修士(MBA) 上村紀夫)

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「ぶら下がり人材」を減らし、意欲的な社員を増やすためのターゲティング戦略(前編)

書いてあること

  • 主な読者:社内の雰囲気をもっと良くしたい、社員のやる気をもっと高めたい経営者
  • 課題:リモートワークやフレックスタイム制などの施策をいろいろ講じているが、効果を実感できない。それどころか、逆に離職する社員までいる
  • 解決策:自社の社員を5つの層に分類し、会社に居続けてほしい社員の優先順位を立てて、それに基づいて施策を打っていく

1 「働きやすさ」重視の風潮が逆に社員の離職につながる?

働き方改革にコロナ対応の影響があり、リモートワークやフレックスタイム制、長時間労働の規制など、「働きやすさ」を高める施策は日本社会に一気に浸透しました。ただ、これは手放しで歓迎できるかというと、必ずしもそうではありません。

働きやすさを改善する施策は、導入当初は喜ばれますが、時間がたつにつれて「当たり前」となり、その状況に甘んじる社員が増えていきます。そして、

業務への責任感ややる気が感じられない、いわゆる「ぶら下がり人材」

を生み出してしまうのです。ぶら下がり人材が増え、仕事は「ほどほどにやればいい」という空気感が出来上がると、

意欲的に働いている社員のやる気がそがれ、最悪の場合、離職してしまう

という、施策の本来の目的と逆の結果を生み出すことがあります。

では、これを防ぐにはどうすればいいのでしょうか? 対策を端的に言うと、

働きやすさと働きがいの片方ではなく両方を満たすことを意識しつつ、意欲のある社員が評価され離職しなくなるシステムをつくることです。そのためには、会社として大事にしたい人材像を定義し、その社員が活躍しやすい職場環境を実現する施策を打つことが必要

です。

前編では、組織の成長を妨げるぶら下がり人材を減らし、意欲的に働く社員が増えていく好循環を創り出す施策として、ターゲティング戦略の一部を紹介します。この方法は、筆者がこれまで累計3万件以上の産業医面談や年間1000件以上の組織への従業員サーベイを実施してきた経験と、MBA、経営コンサルタント、産業医としての知見から効果が得られると実感している手法です。組織活性の低さに課題を抱える経営者の方は、ぜひご活用ください。

2 ぶら下がり人材ってどんな社員?

前述の通り、会社が働きやすさ重視の施策を導入しても、社員は時間がたつとそのありがたみを忘れてしまい、「当然の権利だ」と思うようになります。あなたの周囲でこんな声を聞いたことはありませんか?

  • 会社は好きじゃない。でも転職してまでも環境を変えたいわけじゃない
  • 会社も仕事もどうでもいいけど、人間関係や給与には不満がない
  • お金のために毎日8時間を犠牲にしていると思えば我慢、我慢

こんな声を発している人は「ぶら下がり人材」である可能性があります。仕事をしないわけではありませんが、モチベーションが低く本来の能力を発揮しようとせず、ローエネルギーで働いていることが多いです。

ぶら下がり人材が増えると、仕事はほどほどにやればいいという「ぬるま湯」のような文化が出来上がり、意欲的に働きたい社員は不満を抱えます。こうした社員が、

  • この会社では自分の能力を活かせない
  • このままでは自分が駄目になる

と思い詰めてしまえば離職につながり、会社は優秀な人材を手放すことになります。

3 会社に居続けてほしい社員は誰?

1)まずは社員を5つの層に分ける

ぶら下がり人材を減らし、意欲的に働く社員が増えていく好循環を創り出すためには、まず「会社として大事にしたい人材像を定義する」ことが必要です。具体的にはどんな人でしょうか? ここでは、ターゲティング戦略を用いた分析のやり方を説明します。

ターゲティング戦略とは端的に言うと、

社員全体を幾つかの層に分け、どの層に焦点を当てるかを明確にしていく手法

です。グラフを使って考えると分かりやすいです。縦軸にパフォーマンス、横軸に社歴を取り、次の5つの層に分けて社員を当てはめます。

  • 優秀人材:すでに会社のけん引役となっている優秀な社員(全体の10%で設定)
  • ハイポテンシャル人材:3~5年後に優秀人材になりそうな社員(全体の10%で設定)
  • 立ち上がり人材:新卒・中途を問わず入社から1年以内の社員(全体の10~20%で設定)
  • 普通人材:やるべきことを真面目にこなす社員(全体の50~60%で設定)
  • ぶら下がり人材:やる気はないが消極的な理由で会社に定着している社員(全体の0~10%で設定)

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2)次に会社として優先的に対策すべき層を決める

5つの層に社員を当てはめたら、どの層の社員を優先的に対策すべきか決めます。会社として大事にしたい人材像は、経営方針や業界状況によって異なりますので一概には言えませんが、筆者の経験からお勧めする順番は、こちらです。

ハイポテンシャル人材→立ち上がり人材→優秀人材

「あれ? 優秀人材が最優先ではないの?」と思った方、これには3つ理由があります。

  • 優秀人材は、働く理由や仕事をする上で大切にしたいこと(労働価値)が明確な分、ばらつきも大きいので対策がしにくい
  • 優秀なので外部から魅力的なオファーを受けやすいため、転職のハードルが低く、引き止めるのが困難
  • 優秀人材を手放すことで、それまで優秀人材が独占していた仕事や役職が他の社員に引き継がれ、他の社員の成長が促進される場合がある

では、ハイポテンシャル人材が最優先となる理由は何でしょう? これにも3つ理由があります。

  • 優秀人材とは逆に労働価値のばらつきが小さく、「成長機会」や「強みを活かせること」を重視する傾向があり、対策がしやすい
  • ハイポテンシャル人材が豊富にいれば、優秀人材が抜けてもその穴を埋めることができ、会社が安定する
  • 修練を積んで優秀人材へとレベルアップしていくハイポテンシャル人材の姿は、他の社員(特に立ち上がり人材)が自身の成長を考える上でのロールモデルになる

続いて優先すべきは、立ち上がり人材です。理由は2つです。

  • 立ち上がり人材は、入社して日が浅く会社に染まりきっていない分、これからハイポテンシャル人材に成長する可能性がある
  • フレッシュな立ち上がり人材がいきいきと働いていると、採用活動で求職者にプラスのイメージを与えやすい(逆に立ち上がり人材が離職すると、「入ってもすぐ辞めてしまう会社」というレッテルを貼られやすく、採用活動に影響する)

まずは、会社として大事にすべき人材は誰か、その優先順位をイメージしていただくことが重要です。

以上(2021年7月)
(執筆 エリクシア代表取締役 医師 産業医 経営学修士(MBA) 上村紀夫)

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片手で殴り合いながら、片手で握手をする

書いてあること

  • 主な読者:入社3〜5年目でさらに成長したい中堅社員と、それを見守る経営者
  • 課題:ビジネスの状況を一面的にしか見ることできない
  • 解決策:自分の立ち位置や感情にこだわりすぎず、高所から目的を確認する

1 競合他社と業務提携。その理由は?

中堅社員のAさんは、上司であるB部長の営業方針が理解できません。最近、Aさんの会社は競合C社の参入で浮足立っているのですが、B部長はそのC社と業務提携しようと画策しているのです。

確かにC社と業務提携をすれば、正面から争うことはなくなるかもしれません。しかし、先日、Aさんは自身が担当する顧客をC社に奪われたばかりで、心情的にC社を受け入れられません。たまりかねたAさんは、B部長に直談判しました。「B部長、C社の件ですが、本当に業務提携が最善策なのでしょうか? 正面から戦いましょう!」。するとB部長は次のように返しました。

「Aさんの気持ちは分かる。誤解しないでもらいたいのは、私を含め、当社が戦う姿勢を失ったわけではないよ。より大きな市場をつくり、当社がさらに成長するためにC社と提携するほうがよいと判断したんだよ」

2 一見矛盾する相手との付き合い方

上司も部下に限らず、当事者には意見があり、衝突することもあるでしょう。人と人が密接に関わるシーンにおいて一方の主張が100%通ることはほぼなく、分かり合える領域、分かり合えない領域、その中間にある調整が可能な領域が混在しています。

競合先であっても、100%利害が不一致であるとは限りません。実際、ビジネスでは「先行企業がいたほうが、新規参入が楽である」「後続企業がいたほうが、市場が広がりやすい」といったことがあります。戦うことで一緒に市場を広げるイメージです。

こうした状況を、「片手で殴り合いながら、片手で握手をするようなもの」と表現することがあります。自分の立ち位置や感情にこだわりすぎず、高所から目的を再確認できれば、一見矛盾する相手との付き合い方が見えてきます。

3 交渉や議論からは結果が得られない

競合先と業務提携を判断する一つの基準は、競争領域と協調領域が明確に線引きでき、なおかつその業務提携によって自社に利益がもたらされるか否かです。このイメージがないと、交渉や議論を重ねても活路が見いだせないことがよくあります。かといって、力押しをすれば関係は破綻するでしょう。

この状況を突破するには、ある程度こちらが折れて、相手が求めるものを差し出すことです。ただし、そうすることで自社が大きな損害を被るだけでは意味がありません。今は厳しくても、将来の可能性が広がるかを分析し、したたかに進める必要があります。

また、業務提携が成立した後も大変です。双方が勝手な解釈をして動き始めると、そもそもの協調領域が崩壊してしまいます。慎重に相手との距離感を測りながら、粛々と目的を達成するための活動を続ける忍耐力が求められます。

4 使えるものは何でも使う

ビジネスは関係者に動いてもらうことで成立します。管理職など、組織の中での立場が上になればなおさらで、社内外の多くの人を巻き込んでいく必要があります。相手が競合先であっても例外ではありません。

仕事に対する情熱があり、理想があるからこそ競合であっても業務提携を進めることができます。そして、相手に合わせつつも、一つ一つの言動を数字に裏付けられたものとして行います。これは、なかなか高度なテクニックだといえるでしょう。

立場が上になれば、難しい局面を乗り越えなければならないことも増えます。“使えるものは何でも使う”という感覚を持ち、自分が動かすことのできる関係者を増やしていくことが、ビジネスの可能性を広げることにつながります。

以上(2021年8月)

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「デジタル」でシニアの生活を変革 “高齢者テック”最新事情

書いてあること

  • 主な読者:高齢者向けの新サービスを展開したい経営者
  • 課題:高齢者の悩みに応えるサービスを知りたい
  • 解決策:国内外の事例を参考にし、他社にないサービス展開の参考とする

1 高齢社会の課題をテクノロジーで解決

スマートフォン(スマホ)、テレビを使って高齢者向けのサービスが続々と登場しています。国内では、離れた土地に住む子供や孫とリアルタイムに会話ができるサービスや、長年の仕事の経験を活かせる仕事のマッチングサービスなどが注目されています。

また、海外のスタートアップからは、クレジットカードの詐欺を防止するデビットカードを提供するサービスや、子供の独り立ち後の空き部屋をレンタルできるサービスなどが登場し、「高齢大国ニッポン」が直面する課題を解決できそうなものもあります。

この記事では、続々登場している高齢者向けのデジタル技術「高齢者テック」の動向を追います。

2 国内外で登場した最新の高齢者テック

今回紹介する「高齢者テック」の特徴を、「人や社会との関わりをもつ」「健康や安全な生活を送る」「仕事や資産形成に役立てる」「余暇や趣味を楽しむ」で分類してみると次のようになります。

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1)孫の様子をスマホで確認「まごチャンネル」

動画配信サービスを手掛けるスタートアップのチカクは、スマホのアプリで撮影した孫の動画を、祖父母のいる実家のテレビに送信し、テレビで孫の様子を楽しめる「まごチャンネル」を提供しています。

核家族化が進み、子供を連れて実家に帰省する回数も限られる現代、親世代は手軽にスマホで子供の動画を記録・視聴できるようになった一方、スマホに不慣れな祖父母世代は引き続きテレビが主な視聴デバイスとなっています。同社はこの世代間のギャップを「まごチャンネル」で埋めることに成功しました。

実家のテレビに専用の受信ボックスを接続し、テレビリモコンで「まごチャンネル」に合わせるだけで、送られてきた動画を視聴できることから、スマホやアプリに不慣れな高齢者でも簡単に操作できます。送信されてきた動画を視聴すること自体はスマホでも可能ですが、老眼で小さいものが見づらい高齢者も多く、大きな画面のテレビで見る臨場感が好評なようです。

2)孤独解消にご近所さんをマッチング「Buddy Hub(バディーハブ)」

Buddy Hubは、英国で高齢者向けの多世代間コミュニティーサービスを提供しています。Buddy Hubに登録すると、家の近隣に暮らす、共通の関心事や経験を持つ異なる世代の3人のユーザーとマッチングしてもらえます。ユーザーには、高齢者と3週間に1度は会うことが推奨され、スケジュールが合わない場合は他のユーザーが穴埋めをすることになります。

英国では、65歳以上の高齢者のうち約150万人が日ごろから孤独を感じており、慢性的な孤独が早死にするリスクを高めるともいわれています。こうした中で、同社のサービスにより、高齢者とその他の世代間のコミュニティーづくりを活性化させ、より良い社会の実現につながると期待されています。

なお、マッチングには性格やコミュニケーションスキル、好みなどに加え、犯罪歴の有無なども審査されます。これには、サービス内容には買い物や料金の支払いの援助なども含まれ、高齢者の中には介護などの支援が必要とされる場合もあるといった理由があります。

3)デジタルスキルを学び直し「MENTER(メンター)」&「複業留学」

エクセルやデータ分析、情報セキュリティー知識などのデジタルスキルの学習サービスを提供するWHITEは、ベンチャー企業での副業を支援するエンファクトリーとともに、シニア人材のデジタルスキル学習支援「MENTER」と、企業への人材マッチング「複業留学」を複合させたサービスを開始しました。

両社の共同事業の背景として、新型コロナの影響を受けてリモートワークの広まり・デジタル人材の需要が高まったこと、シニア人材にもデジタルスキルの学習を支援することで、新たなキャリア構築の支援を行うためとしています。

70歳までの就業機会の確保が企業に求められていく中で、これまでの社会人経験を活かしつつ、時代に合ったスキルを身に付けたシニア人材をベンチャー企業に供給していく仕組みです。スキルアップのためのオンラインでの学習プログラムをMENTERが、本業に影響が出ない範囲での実際の就業機会を複業留学がそれぞれ提供します。就業の際は、報酬型の「複業タイプ」、研修形式の「研修タイプ」のどちらかを選択できます。

4)ベテラン社員のノウハウを企業とマッチング「inow(イノウ)」

転職サイトなどを運営するアトラエは、ベテラン人材と、彼らの豊富な経験を業務に活かしたい企業をマッチングさせるプラットフォーム「inow」を、2021年5月から提供しています。

inowでは、ユーザー(ベテラン人材)の経験や人脈、自身の興味のある分野などを登録し、関連する求人を掲載している企業とマッチングすることができます。企業側が掲載する求人は、ベテラン社員のノウハウや顧問としての意見を求めるようなものを想定しています。inowの特徴として挙げられるのは、単なる求人マッチングだけでなく、週1日の業務委託や長期の顧問契約なども柔軟に決められることです。

マッチングの肝となる人材と案件の検索は機械学習を用いて、ユーザーの経験と企業の人材ニーズのマッチングの精度を高めています。さらに、ユーザーの興味や関心を機械学習することで、ユーザーが想定していないマッチング候補の提案も行えるようです。

副業や人材の流動化が進み、高齢者雇用安定法により高齢者の雇用がこれまで以上に求められる中で、ベテラン人材のノウハウの活用は、ユーザーと企業の双方にとって今後も要注目といえそうです。

5)使わなくなった空き部屋を貸し出す「Homesharing(ホームシェアリング)」

米国のSilvernestは、高齢者の住む家や空き部屋を若者とシェアする「Homesharing」を提供しています。これは、自宅をシェアするルームメイトをマッチングさせる高齢者のためのプラットフォームです。一般的な賃貸と異なり、自身は家に住みながら、使わなくなった空き部屋を貸し出し、リビングなどを共有します。こうすることで、貸し手である高齢者は、使わない部屋を収益化でき、同時に審査を通過した同居人と時間をシェアすることが可能です。同居人となるユーザーとしても、通常の部屋を借りるよりも安価に住まいを確保できるメリットがあります。

同居人の候補とのマッチングには、貸し手のプロフィールや質問事項への回答内容、部屋の詳細などを基に候補者とのマッチング度がランク付けされます。また、家賃を安定的に確保するために、同社ではリース契約や家賃の自動引き落としなどにも対応しています。

6)単身高齢者向け見守りサービス「ドシテル」

日立グループの日立グローバルライフソリューションズは、高齢の親の生活をセンサーで検知し、スマホで様子を見守るサービス「ドシテル」を提供しています。

これは、高齢の親のリビングなどにセンサーを設置し、日々の動きを「活動量」として検知し、活動量の程度に応じてユーザーのスマホにアニメーションとして表示されます。こうすることで、親の在宅・不在や、活動量の増減が把握できます。日々のデータも蓄積されることから、「起床時間になっても冷蔵庫を開けていない」「夜になっても外出から戻っていない」などの、いつもと異なる行動もプッシュ通知で設定できることから、万が一のときの備えにもなります。

活動量を計測するセンサーには、監視するカメラなどはついていないため、親のプライバシーを守ることもできます。親の様子はアニメーションで表示されるので、ユーザー側も「監視している」感覚を最低限に抑えることができます。

7)認知症を事前に検知し、脳トレで予防「Neurotrack(ニューロトラック)」

米国のシリコンバレー発のスタートアップNeurotrackは、スマホで認知機能のテストを行い、アルツハイマーなどの認知症の早期発見と脳機能の維持・改善を行うアプリを提供しています。

記憶や脳機能が徐々に失われるアルツハイマーなどの進行を止めたり、予防したりする薬は開発段階です。また、認知症は実際に目に見える症状が現れる10年以上も前から徐々に進行しており、症状が現れたときにはもう手遅れともいわれます。

Neurotrackは、こうした予兆をアプリで把握し、症状が現れる前に脳のトレーニングを行うことで、予防・改善を目指しています。臨床的に実証されている同社の認知機能のテストでは、スマホやパソコンのカメラで、ユーザーの視線を解析し、処理速度や注意力などの異常を検知します。そして、認知機能の改善に効果的とされる生活習慣の改善プログラムを提案し、テストを繰り返すことで認知機能の改善・向上を図ります。

同社は既に日本企業とも業務提携を始めており、第一生命ホールディングスやSOMPOホールディングスに認知機能に関するアプリの提供を行っています。

8)クレジットカードや銀行口座を管理する「True Link(トゥルーリンク)」

米国のTrue Linkは、高齢者や障害者など、自身でクレジットカードや銀行口座の管理が難しい人を対象とした、利用制限付きのプリペイドカードを提供しています。同社の「The True Link Visa Prepaid Card」は、カードが使える商品や店舗、金額などを本人以外がコントロールすることができます。

そうすることで、例えば、オンラインショッピングで高額商品を買うのを家族がブロックしたり、健康を損なう恐れのあるお酒やタバコの購入を制限したりできます。また、物忘れのために「頼んでもいないのに注文してしまった」というようなアクシデントも防げます。利用履歴はオンライン上で見られ、不正利用や使いすぎなども確認できます。

日本では、高齢者を狙った架空請求詐欺や振り込め詐欺が後を絶たない状況で、こうしたサービスへの期待が今後高まってくる可能性があります。一方で、高齢者のお金の使い道を制限することにもなり、導入するには丁寧な説明が必要になりそうです。

3 高齢者テック関連データ

前述の通り、高齢者向けのさまざまなサービスが世の中に登場しています。こうしたサービスのユーザーである高齢者の、インターネットの利用や日常生活の動向を見てみましょう。

1)総務省「令和2年通信利用動向調査」:年齢層別のインターネット利用機器

総務省「令和2年通信利用動向調査」によると、年齢層別のインターネット利用機器の状況は次の通りです。

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この調査結果から、60歳未満の層ではスマホの利用が高く(おおむね80%以上)、パソコンの利用率も20~59歳では60%を超えています。一方、60~80歳以上の層を見ると、年齢層とともにスマホやパソコンなどの利用率は減少するものの、「スマホとパソコンの利用率の差(緑の丸枠)」が縮小しています。高齢者向けのデジタルサービスを提案するには、画面が大きく、現役時代に操作することのあったパソコンでの利用を考慮した仕様にする必要があるかもしれません。

2)東京都「令和2年度東京都福祉保健基礎調査」:日常生活に必要なサービス

東京都では、65歳以上を対象とした高齢者の生活実態に関する調査を実施しています。それによると、回答者の57.2%が、身の回りの世話などの「日常生活支援サービス」の利用意向があると回答しています。

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同調査では、「生きがいを感じるとき」についても調査しており、回答者の40%以上が、「趣味やスポーツに熱中しているとき」「夫婦や孫など家族との団らんのとき」「友人や知人と交流しているとき」「テレビを見たり、ラジオを聴いたりしているとき」と回答しています。

同調査から、「ちょっとした家のお手伝い」や「気軽な話し相手」など、「人とのつながりを得るためのサービス」へのニーズがあることが伺えます。

前述の「まごチャンネル」や「Buddy Hub」のようなサービスは、今後のさらなる成長が期待できそうです。

以上(2021年8月)

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経営者100人アンケートで分析 ITを活用した業務効率化はこの項目から始めよう

書いてあること

  • 主な読者:ITを活用した業務効率化に取り組みたいと考えている経営者
  • 課題:他社と比べて自社がどの程度遅れているのか、何から着手すればよいのか知りたい
  • 解決策:多くの企業が導入している項目や業務効率化に成功しやすい項目などを参考に、優先順位を付けて取り組む

1 ITを活用した効率化、他社はどうなの? 何からすべき?

「ITを活用して業務効率化を!」――。最近よく耳にする言葉ですが、一口にITを活用した業務効率化といっても、導入すべき分野や項目はさまざまです。項目によっては、既に中小企業にも定着しているものや経営者の関心の高いものがある一方で、頑張って取り組んでみても業務効率化につながる可能性が低いものもあります。実際にITを活用して業務効率化に結びつけるには、項目ごとに優先順位を付けるべきです。

そこで、この記事では、経営者を対象に実施した、ITを活用した業務効率化の取り組み状況についてのアンケート結果を、ランキング形式で紹介します。アンケートは2021年5月にインターネットで行い、経営者111人から回答を得ました。ITを活用した業務効率化に取り組んでいる企業、これから取り組もうと考えている企業の皆さんが、今、何に優先して取り組めばよいのかの判断材料にご活用ください。

なお、質問した取り組みは30項目に上り、分野は「社内の連絡」「社内の機器」「経理関連」「営業関連」「人事・総務関連」と多岐にわたります。詳しくは巻末をご参照ください。

2 ライバルに後れを取るな!:既に導入して成功している企業が多い項目

30項目のうち、「既に導入し、業務効率化に成功している」との回答率の高かった上位5項目は、次の通りです。

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インターネットによるアンケートということもあり、さすがにフロッピーディスクの廃止やインターネット回線の導入は、既に終えている企業が少なくないようです。

注目すべきは、インターネットバンキングの活用です。まだ経理担当者が銀行回りをしている企業は、早めに見直しを検討したほうがよさそうです。また、チャットやSNSに詳しい社員も増えているので、こうしたツールの活用や、ノートPC・タブレット端末の支給が、業務効率化につながる可能性は高まっているといえるでしょう。

3 今、最もホットなのはこれ!:多くの企業が取り組みたいと思っている項目

30項目のうち、「早急に取り組みたいと思っている」との回答率の高かった上位7項目(同率第2位まで)は、次の通りです。

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上位7項目のうち、4項目がペーパーレス化に関する項目でした。ペーパーレス化はITの活用を広げていくために、避けては通れない入り口です。今のうちに、ペーパーレス化できる項目がないか、検討しておくとよいでしょう。

4 ライバルは尻込みしている!:取り組みたいけど難しいと思われている項目

30項目のうち、「取り組みたいが、実際に導入するのは難しいと思う」との回答率の高かった上位5項目は、次の通りです。

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見積書・請求書・発注書といった取引関連の書類のペーパーレス化については、図表2のように早急に取り組みたいという企業が多い一方で、導入は難しそうとの見方も多くなっています。経営者にとっては最も「頭の痛い課題」といえそうですが、既に導入したと回答した28人のうち、6割弱に当たる16人が「業務効率化に成功している」と回答しています。同業他社を引き離すために、導入を検討してみてはいかがでしょうか。

「日本ならでは」の課題ともいえるのが、FAXやハンコの廃止です。この2項目がボトルネックとなってITの活用が滞る可能性もありますので、この際、思い切って検討してみるのも一策です。

5 導入した場合の成功率と失敗率に注目

せっかく導入しても、業務効率化につながらなければ、経費の無駄遣いとなるだけでなく、社員の間に混乱を来すという弊害も生じてしまいます。導入した場合の成功率と失敗率を参考に、取り組むべきかどうかを検討してみてはいかがでしょうか。

1)導入して業務効率化に成功した割合が高い項目

30項目のうち、「既に導入し、業務効率化に成功している」「導入したが、あまり成果が上がっていない」と回答した人の中で、「既に導入し、業務効率化に成功している」人の割合が高かった上位5項目は、次の通りです。

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チャット・SNSツールの活用やフロッピーディスクの廃止に関しては、既にプライベートでも定着していることが、社員にはなじみがあり技術的にも対応が容易という、ソフト・ハードの両面で成功率を高める要因になっているとみられます。

一方、稟議書のペーパーレス化、インターネットバンキングの活用、電子納税・電子申告については、社員全員が関わるものではなく、一部の担当者だけが対応すれば導入可能という点が、成功率の高さにつながっているとみられます。経理関連の項目は、多くの社員の対応が必要な「経費申請や領収書、会計処理などの書類のペーパーレス化」を除くと、比較的成功率が高くなっています。

2)導入しても成果が上がっていない割合が高い項目

30項目のうち、「既に導入し、業務効率化に成功している」「導入したが、あまり成果が上がっていない」と回答した人の中で、「導入したが、あまり成果が上がっていない」人の割合が高かった上位5項目は、次の通りです。

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上位5項目のうち、営業関連が上位3項目を占めています。顧客分析に基づくターゲットマーケティングやWebサイトを使ったマーケティングなど、今までの営業の手法と大きく異なる上に、専門性の高さが難易度を高めている背景にありそうです。

また、非対面での研修や、図表にはありませんが第6位に入っている「テレビ会議システムを活用した営業や接客(オンライン商談)」(45.0%)など、対面の強みを持っている項目は、ITを活用しても強みを維持できるかどうか慎重に検討する必要があるかもしれません。

3)成功率を分ける要因

一概には言えませんが、大きな傾向として、導入して成功する可能性が高い項目は、

  • 少ない人数が対応すれば導入できる
  • 既に社員にとってなじみがある
  • 技術的に導入が容易

といった要素が影響している側面もあるとみられます。

一方、導入をしても失敗する可能性の高い項目は、

  • 従来と手法が大きく異なる
  • 専門性が高い
  • IT化すると強みを発揮させにくい

といった要素が影響しているといえるかもしれません。

6 参考:アンケートで質問した項目のリスト

今回のアンケートでの質問項目は、次の30項目です。

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以上(2021年8月)

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