【チェックリスト付き】社員が定年退職したときに必要な労務と税務の手続き

書いてあること

  • 主な読者:定年退職する社員がいる中小企業の労務担当者、経理(税務)担当者
  • 課題:会社が行う手続きと、社員が行う手続きとがあるので、抜け漏れなく進めたい
  • 解決策:会社用と社員用の手続きチェックリストを作り、相互に確認しながら進める

1 定年退職する社員に関する労務と税務の手続き一覧

社員が定年退職した場合、しなければならない労務と税務の手続きがたくさんあります。しかし、中小企業の場合、毎年定年退職者が出るわけではないので、抜け漏れが生じがちです。そこで、次のようなチェックリストを作ってしっかりと対応したいものです。

画像1

画像2

労務や税務の知識がある方は、このリストを確認用として使っていただければ大丈夫です。一方、手続きの内容などを改めて確認したい方は、この後の説明をお読みください。各手続きの後ろにある(会社)や(社員)は、手続きをする主体を示しています。

2 労務の手続き:社会保険(健康保険・厚生年金保険)

社会保険は、定年退職後の社員の働き方に応じて、必要な手続きが次のように異なります。

  • 定年退職後、再雇用され、社会保険の被保険者要件を満たす場合:1)、2)、3)
  • 定年退職後、再雇用され、社会保険の被保険者要件を満たさない場合:1)、2)、4)
  • 定年退職後、再雇用されない場合:1)、2)、4)

1)保険証の回収(会社)

会社は、社員の退職時に、社員とその被扶養者の保険証(健康保険被保険者証)を回収します。 万が一、社員などが保険証を紛失していたら、回収不能届(健康保険被保険者証回収不能届)を作成し、紛失した旨を記載します。

2)資格喪失届と保険証の提出(会社)

会社は、社員が退職した日の翌日から5日以内に、資格喪失届(健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届)と保険証(紛失した場合は回収不能届)を、所轄年金事務所に提出します。手続きが終わると、年金事務所から資格喪失の通知が会社に送られてくるので、退職日から2年間、会社が保管します。

なお、会社が資格喪失届と保険証の提出を怠ったり虚偽の届け出をしたりした場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が、会社に科せられます。

3)再雇用時の資格取得届の提出(会社)

定年退職と同時に再雇用された社員が、社会保険の被保険者要件を満たし、かつ再雇用後の給与が大幅に下がる場合、「同日得喪」の手続きを行うことで、再雇用された月から標準報酬月額を変更できます。

同日得喪を行う場合、会社は、社員が退職した日の翌日から5日以内に、資格喪失届、保険証と併せて資格取得届(健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届)を、所轄年金事務所に提出します。被扶養者がいる場合、被扶養者(異動)届(健康保険被扶養者(異動)届)も一緒に提出します。手続きが終わると、年金事務所から資格取得の通知と新しい保険証が会社に送られてきます。資格取得の通知は、再雇用後の労働契約が更新されず終了する日から2年間、会社が保管し、新しい保険証は社員に交付します。

なお、会社が資格取得届の提出を怠ったり虚偽の届け出をしたりした場合、6カ月以下の懲役または50万円以下の罰金が、会社に科せられます。

4)公的医療保険に加入(社員)

社員は、退職した後も所定の期日までに、健康保険などの公的医療保険に必ず加入しなければなりません。公的医療保険については、再就職先で健康保険に加入する場合を除くと次のような選択肢があり、それぞれ加入などに必要な手続きなどが異なります。

画像3

3 労務の手続き:雇用保険

雇用保険は、定年退職後の社員の働き方に応じて、必要な手続きが次のように異なります。

  • 定年退職後、再雇用され、雇用保険の被保険者要件を満たす場合:手続きは原則不要
  • 定年退職後、再雇用され、雇用保険の被保険者要件を満たさない場合:1)、2)、3)
  • 定年退職後、再雇用されない場合:1)、2)、3)

1)離職証明書の作成(会社)

会社は、社員の退職時に、離職証明書(雇用保険被保険者離職証明書)を作成します。離職証明書は、退職した社員が離職票をもらうために必要な書類で、社員が59歳以上の場合、作成は義務です。離職証明書を作成したら、社員に離職理由に異議がないことなどを証明するための署名をしてもらいます。

2)資格喪失届と離職証明書の提出(会社)

会社は、社員が退職した日の翌日から10日以内に、資格喪失届(雇用保険被保険者資格喪失届)と離職証明書を所轄ハローワークに提出します。手続きが終わると、ハローワークから「資格喪失の通知(会社と社員の控え)」「離職証明書(会社の控え)、離職票」が送られてきます。資格喪失の通知(会社の控え)と離職証明書(会社の控え)は、退職日から4年間、会社が保管します。資格喪失の通知(社員の控え)と離職票は、到着後、速やかに社員に送付します。

なお、会社が資格喪失届と離職証明書の提出を怠ったり虚偽の届け出をしたりした場合、またはこれらの書類を社員に送付しない場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が、会社に科せられます。

3)雇用保険の求職者給付の受給手続き(社員)

社員が再就職を希望する場合、住所地を管轄するハローワークで手続きをすることで、求職活動中、雇用保険の求職者給付が受けられます。退職時の年齢が65歳未満か否かによって給付の種類が次のように異なります。

画像4

4 税務の手続き

1)退職所得の受給に関する申告書の提出(社員)

退職金を受け取る社員は、退職金の支払いを受ける日までに、「退職所得の受給に関する申告書」(以下「申告書」)を会社に提出します。

2)退職する社員の所得税の計算(会社)

会社は、申告書を受領後、原則として次の算式で計算した金額(課税退職所得金額)を基に所得税を計算します。

課税退職所得金額=(退職手当等の額-退職所得控除額)×1/2

なお、税制改正により、勤続年数が5年以下である社員に300万円を超える退職金を支給する場合、その300万円を超える部分については上記算式の「1/2」を適用することができなくなるので注意が必要です(2022年1月1日以降に支給する退職金から適用されます)。

退職手当等の額から控除できる退職所得控除額は、原則として次の通りです。

画像5

社員が申告書を提出しない場合、会社は、退職金の金額に対して20.42%の税率で源泉徴収をしなければなりません。この場合、当然ながら、社員は退職金の支給時に退職所得控除などを受けられないため、社員が自分で確定申告することによって精算する必要があります。

3)住民税未納分の支払い(会社)

在職中、住民税は給与から特別徴収されていますが、社員が退職した場合、退職の時期によって処理の方法が違います。住民税には普通徴収と特別徴収があり、その概要は次の通りです。なお、会社勤めの場合は、原則、特別徴収となります。

  • 普通徴収:納税者本人が、市区町村に住民税を納めること
  • 特別徴収:会社が給与から住民税を天引きし、市区町村に住民税を納めること

では、社員が退職する時期に応じた住民税の処理を説明します。

1.1月1日から4月30日までに退職する場合

この場合、会社が退職月から5月分までの住民税を一括で、最後の給与または退職金から天引きし、市区町村に一括で納めます(一括徴収)。なお、給与または退職金から、住民税が多すぎて控除しきれなかった場合は、その金額については社員自身が普通徴収で市区町村に納めることになるため、本人に知らせる必要があります。

2.5月1日から5月31日までに退職する場合

この場合は、通常通り、5月分の給与から住民税を天引きし、市区町村に納めます。

3.6月1日から12月31日までに退職する場合

この場合は、退職月から翌5月分までの住民税は、退職した社員がすぐに再就職する場合を除き、次のいずれかの方法で手続きします。

  • 会社が、最後の給与または退職金から一括で天引きして市区町村に納める
  • 退職時に普通徴収に切り替えて、退職する社員が市区町村に納める方法

4)退職所得の源泉徴収票と給与所得の源泉徴収票の作成(会社)

会社は、社員が退職後1カ月以内に、退職所得の源泉徴収票と給与所得の源泉徴収票を作成して、社員に交付します。なお、退職するのが役員の場合には、役員に交付するのに加えて、税務署と退職する役員が住む市区町村に退職所得の源泉徴収票を提出(原則退職後1カ月以内)しなければなりません。

また、会社が退職所得の源泉徴収票や給与所得の源泉徴収票を退職した社員に交付しない場合、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が、会社に科せられます。

以上(2021年12月)
(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ 特定社会保険労務士 諸富一子)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

pj30052
画像:Dmytro Zinkevych-shutterstock

【従業員が交通事故!】責任割合はどうなる? ⑤前方車両の急ブレーキ

書いてあること

  • 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
  • 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
  • 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する

1 事故事例と状況を把握します。

今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、一般道でB(相手方の赤い車)に追突してしまいました。Bが突然急ブレーキをかけて車間距離が一気に詰まってしまったため、Aの停止が間に合わなかったそうです。

画像1

【A車:自社車両 B車:相手方車両】

安全な場所に停止している自動車への追突事故や、法定速度の範囲内で通常の走行をしている自動車への追突事故の場合は、追突された側に過失(不注意やミス)がないため、責任割合はA100%:B0%となることが一般的です。

これは「車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。」(道路交通法26条1項)と定められているためです。

今回のケースでは「後ろから煽られている感じがして、イライラしてブレーキを踏んだ」とBが言っていたそうです。

2 今回の責任割合を、見てみましょう。

1)責任割合の決まり方は?

双方に責任が生じる事故の場合、それぞれの保険会社を窓口として交渉することが一般的です。過去の裁判例の責任割合を参考に、実際の事故状況を踏まえて話し合い、決定していきます。

2)今回の責任割合は?

過去の裁判例より、A(自社の青い車)70%:B(相手方の赤い車)30%が基本の責任割合となります。

Bの急ブレーキの事実に争いがなく、かつ正当な理由もなくブレーキをかけたことが明らかになっている場合の基本の割合です。

前述のとおり、追突された側に過失がない場合の責任割合はA100%:B0% ですが、今回の事故状況における基本の責任割合には、道路交通法で「車両等の運転者は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き、その車両を急に停止させ、又はその速度を急激に減ずることとなるような急ブレーキをかけてはならない」(同法24条)と定められていることに基づいて、Bの過失を認めています。

※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。

3 今回の事故事例を未然に防ぐポイントとは。

今回は追突事故において、追突をされた側にも責任が問われるケースをご紹介しましたが、追突事故の発生を予防するには、

  • 安全な車間距離を維持する(一般道での安全な車間距離の目安は、例えば時速40キロで走行の場合は25メートル、時速60キロで走行の場合は45メートルと言われています)
  • 渋滞時には前方車だけではなく、2台前の車の動きや横からの車の割り込みなども注視して前方車の動きを予測する

ことが重要です。

その他、ドライブレコーダーを活用した安全運転指導や教育サービス、無料の安全運転セミナーを提供している機関もありますので、それらを利用して自動車事故防止活動をしていくのも良いでしょう。

以上(2021年12月)

sj09023

本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。

【従業員が交通事故!】責任割合はどうなる? ④信号のある交差点(赤×青)

書いてあること

  • 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
  • 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
  • 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する

1 事故事例と状況を把握します。

今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、交差点でB(相手方の赤い車)と接触してしまいました。Aは赤信号、Bは青信号だったそうです。

画像1

【A車:自社車両 B車:相手方車両】

今回のポイントは「信号機の色」です。

信号機の色は双方の主張が食い違うことがありますので、周囲の方の目撃情報などの協力を仰ぐことも有効です。

もしドライブレコーダーが搭載されている場合は、事故を録画したデータの保全をしておく事が重要です。ドライブレコーダーの機種によっては、時間経過するとデータが自動消去されるものや、走行すると上書きされてしまうものもありますので注意しましょう。

2 今回の事故事例の基本的な責任割合(過失割合)を見てみましょう。

1)責任割合の決まり方は?

双方に責任が生じる事故の場合、それぞれの保険会社を窓口として交渉することが一般的です。過去の裁判例の責任割合を参考に、実際の事故状況を踏まえて話し合い、決定していきます。

2)今回の責任割合は?

過去の裁判例より、A(自社の青い車)100%:B(相手方の赤い車)0% が基本の責任割合となります。

信号機のある交差点では、通行する車両は信号に従わなければならない(道路交通法7条1項)ため、赤信号で進入したAに100%の責任が生じます。

ただし、Bが前方に対する注意を払っていれば容易に事故を回避できた場合や、信号の変わり目に事故が起こった場合は、Bも責任を問われることがあります。

※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。

3 今回の事故事例を未然に防ぐポイントは?

信号無視の主な原因としては、①信号の見落とし ②信号の誤認 ③タイミング 等が考えられます。

①信号の見落とし・・疲労や考え事、同乗者との会話などにより集中力を欠如しない。
②信号の誤認・・黄色は「止まれ」の意味。矢印表示などの変則信号機では慎重に、誤って一つ先の信号と勘違いしないよう気を付ける。
③タイミング・・黄色信号で交差点へ進入しない。

赤信号で交差点に進入した場合の事故はスピードが出ていることが多く、双方の車が大破したり、横転や怪我など大きな事故につながりやすく危険です。無理な交差点進入は避け、心と時間に余裕を持って運転することを心掛けましょう。

その他、ドライブレコーダーを活用した安全運転指導や教育サービス、無料の安全運転セミナーを提供している機関もありますので、それらを利用して自動車事故防止活動をしていくのも良いでしょう。

以上(2021年12月)

sj09022

本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。

【従業員が交通事故!】責任割合はどうなる? ③一方が優先道路の交差点

書いてあること

  • 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
  • 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
  • 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する

1 事故事例と状況を把握します。

今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、交差点でB(相手方の赤い車)と接触してしまいました。Bの進行道路には、交差点を貫通するセンターラインがあったそうです。

画像1

【A車:自社車両 B車:相手方車両】

今回のポイントは、センターラインです。

①実線(繋がっている線)か破線(点線)かどうか
②交差点の中心を貫通しているかどうか
③A側から見た時、中央線が視認できるか

などを確認します。

もしドライブレコーダーが搭載されている場合は、事故を録画したデータの保全をしておく事が重要です。ドライブレコーダーの機種によっては、時間経過するとデータが自動消去されるものや、走行すると上書きされてしまうものもありますので注意しましょう。

2 今回の事故事例の基本的な責任割合を見てみましょう。

1)責任割合の決まり方は?

双方に責任が生じる事故の場合、それぞれの保険会社を窓口として交渉することが一般的です。過去の裁判例の責任割合を参考に、実際の事故状況を踏まえて話し合い、決定していきます。

2)今回の責任割合は?

過去の裁判例より、A(自社の青い車)90%:B(相手方の赤い車)10% が基本の責任割合となります。

道路標示により中央線が交差点の中まで連続して設けられている(貫通している)道路は、「優先道路」として認められます。

道路交通法では、優先道路を通行している車両が見通しのきかない交差点を通行する時には徐行義務は無い(道路交通法42条1号)と定められています。しかしその場合でも、交差道路を通行する車両等に注意し、できる限り安全な速度と方法で進行する義務が求められている(道路交通法36条4項)ため、Bにも10%の責任割合が発生します。

※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。

3 今回の事故事例を未然に防ぐポイントとは。

皆さんは「二段階停止」や「多段階停止」という言葉を聞いた事がありますでしょうか。

一度停止するだけではなく、安全を確認できる場所で二度、三度と停止して慎重に進んでいく運転方法です。安全確認に加えて、他の車などに自車を認知させる意味もあります。

今回のA側の注意点としては

  • カーブミラー等を活用し、多段階停止をしながら慎重に進む
  • 交通の往来が多い場所では無理に横断しようとせず、まずは左折し迂回してできるだけ安全なルートも検討する

ことで、事故のリスクを軽減することができます。

また優先道路のB側においても、交差点がある場合にはカーブミラー等で進入車の有無を確認しましょう。「優先道路だから大丈夫」と過信せず、前方を注視して減速するなど、構えることも大切です。

その他、ドライブレコーダーを活用した安全運転指導や教育サービス、無料の安全運転セミナーを提供している機関もありますので、それらを利用して自動車事故防止活動をしていくのも良いでしょう。

以上(2021年12月)

sj09021

本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。

【会員特典】お役立ち資料の無料ダウンロードページ

\経営者のための/
リスクマネジメントマニュアル ~ハラスメント対策編~

「ハラスメント対策」できていますか?

「自社でハラスメントは起こらない」と、油断してはいませんか? 事が起きてからでは遅い、リスクを認識するところから始めましょう!

本資料では、企業が知っておくべきハラスメント事例や対策をご紹介します。

昨今の法改正からハラスメントによる影響まで網羅的に記載しており、経営者みなさまの基礎知識としてはもちろん、従業員研修などにもお使いいただけます。

sj_DLbutton

\経営者のための/
リスクマネジメントマニュアル ~休業リスク対策編~

休業リスクに対する備えは、万全ですか…?

「事業所の建物・設備の損壊により、一時休業せざるをえなくなったら…」

「取引先が台風被害に遭ってしまい、部品が納入されなくなったら…」

経営における、休業リスクの多い国、日本。例えば、近年多発する台風・集中豪雨・地震などの大規模な自然災害による被害額は実に世界の14.3%※ にのぼるともいわれています。

本資料では、様々なリスクソリューションを提供する損保ジャパンの視点と調査データをもとに「他社はどうしている?」の疑問にお答えします。

※『2019年版中小企業白書』(中小企業庁編) | https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf

sj_DLbutton

【朝礼】今年の進化と来年の進化を考えてください

今日は私から皆さんに2つ、提案があります。1つ目は、「今年を振り返って、去年に比べて自分が進化した点は何か考えること」。2つ目は、「来年、今年よりも進化したい点を決めること」です。今年もあとわずかで終わりますので、ぜひ年内にやってみてください。

この提案をしようと思ったのは、お付き合いのあるデザイナーさんから聞いた「口紅の話」がきっかけです。化粧品メーカーでは、口紅の色合いや品質を常に研究してバージョンアップしているので、同じ赤でも、数年前に出した商品と今年出した商品では、色や質感がかなり異なるそうです。そのため、若い頃から愛用している口紅を変えずに使い続けていると、「妙に古臭いメーク」に見えてしまいます。言葉を選ばずに言えば、「昭和感のあるメーク」です。

デザイナーさんいわく、「口紅で新しい赤が出ている上に、化粧品以外のさまざまな商品でも赤が変化しているのに、自分の口紅だけが十何年も前からの赤であれば、当然古く見える」のだそうです。身の回りの商品やはやりなどの変化に伴って、世の中全体の色彩感覚も変化しているから、ということなのでしょう。

色に着目したデザイナーさんらしい面白い視点です。これに加えて私が思うのは、世の中全体の色彩感覚の他にも、当然、「自分の顔が変化したのに同じ口紅を使い続けている」のも、古臭いメークに見える要因ではないかということです。

これはつまり、自分の顔が変化していることを認識できていないともいえます。毎日鏡で見ていると、確かに変化に気付きにくいでしょう。

このことは、私たち一人ひとりの仕事、生き方、人生にも通じるところがあります。毎日同じ環境で同じ仕事をしていると、自分の変化はなかなか認識できません。「前よりこの仕事の処理速度が上がった」「クライアントへの話の仕方が変わって反応が良くなった」など、実は、変化というより良い方向に進化していることでさえ、意識していないと気付かないことが多いのです。

また、人間は惰性の生き物です。「意識する」という点で言うと、そもそも、自分を進化させようと意識して行動していなければ、前に進んでいくことはできないでしょう。

そこで冒頭の提案です。皆さん、今年の進化を振り返り、そして来年の進化の目標を、自分で意識して決めてください。ちなみに私は、今年は社外の人に対してオンラインセミナーでお話しする機会が多い年でした。そのため、オンラインの最初の1分で引きつけるコツを前より身に付けたと思いますし、画面越しにファシリテーションする能力も上がったように感じます。来年は、これをさらに進化させて、定期的な動画配信にチャレンジしようと考えています。見た目も大事なので、ジョギングも始めようと思います。そう考えると、来年が楽しみで仕方ありません! 皆さんもぜひ、考えてみてください。

以上(2021年12月)

pj17081
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】クリスマス・キャロルの老人はなぜ守銭奴になったのか

12月といえば、皆さんが楽しみにしているイベントがありますね。そう、クリスマスです。今日はクリスマスにちなんで、19世紀のイギリスの小説「クリスマス・キャロル」の話をします。ご存じの方も多いでしょうが、まずは、あらすじを説明しましょう。

ロンドンに、会計事務所を営むスクルージという老人がいました。スクルージは裕福でしたが、お金にがめつく、従業員を低賃金でこき使い、友人の葬儀への出費も渋るなど、いわゆる守銭奴でした。加えて頑固で怒りっぽいため、街の人々からは嫌われ、孤独な毎日を過ごしていました。

しかし、ある年のクリスマスに、3人の精霊が彼の元を訪れ、過去・現在・未来の世界へといざないます。スクルージは、守銭奴になる前の、家族や恋人を大切にしていた過去の自分と、守銭奴になって誰からも惜しまれずにこの世を去った未来の自分を目にします。また、自分の思いやりのなさが原因で、貧しい人々が不幸になったことを知り心を痛めます。スクルージは改心し、貧しい人々のためにお金を使うことを惜しまなくなり、愛される存在になったというお話です。

スクルージは本来、周囲の人間を思いやれる心を持っていて、その心が残っていたからこそ、最後に改心することができました。では、そんな彼が、なぜお金に執着するようになってしまったのでしょうか。小説の中で、若い頃に彼と破局した恋人が次のようなことを言っています。

「生きることに臆病で、何かあったときのためにお金だけはためておこうと考えるようになってしまった。昔は気高い野心があったのに、仕事に成功してお金を得たことで、お金以外は何も望まないようになった」

スクルージは、気高い野心も忘れ、「お金を得る」ことだけが目的になってしまったのです。私たちはこの話から、目的を常に見失わないことの大切さ、そして難しさを学ぶことができます。

では、皆さんに質問です。ビジネスでは常に「利益」が求められ、皆さんは常日ごろからそのための努力をしています。しかし、「そうして得た会社の利益を使って何を実現したいか」を考えている人はいますか。「利益を出すこと」は会社にとってとても大切ですが、皆さんには、その先のことも考えられるようになってほしいのです。

私には会社が得た利益を使い、お客様や社会のために実現したい夢があります。しかし、この会社は私だけのものではありません。皆さんも、どのようなお金の使い方をしたいか、ぜひ意見を出してください。「利益を出して次にどうするか」を考えるようになれば、売上目標やコスト削減目標を達成する目的が明らかになります。今よりも主体的に考え、行動できるようになるでしょう。

改心したスクルージは、事業でためたお金を、貧しい人々を支えるために使うことを選択しました。皆さんは、何に会社のお金を使いますか。 ぜひ新年に向けて考えてください。

以上(2021年12月)

op17033
画像:Mariko Mitsuda

全国企業倒産から見る2021年度上半期の建設業倒産

はじめに

2021年度上半期(4-9月期)の全国企業倒産は2,937件(前年同期比23.8%減)で、年度上半期としては、1966年(2,982件)以来、55年ぶりに3,000件を下回った。

一方、建設業の上半期の倒産件数は527件(前年同期比6.7%減)で、年度上半期としては、2009年度以降、13年連続で前年同期を下回り、1991年度以降の30年間で最少だった。全国企業倒産と同様に、記録的な低水準が続いた。

ただ、業種を問わず、新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)感染拡大は多大な影響を及ぼしている。さらに、建設業界は代表者の高齢化や後継者難、人手不足など構造的な問題を抱え、コロナ収束後も不透明感が増す。重層的な下請構造で、経営体力の乏しい中小・零細業者が多いだけに、今後の倒産推移が注目される。

2021年度上半期の全国企業倒産 50年間で最少件数

2021年度上半期(4-9月期)の全国企業倒産(負債額1,000万円以上)は、件数が2,937件(前年同期比23.8%減)、負債総額が5,746億2,600万円(同4.0%減)だった。

件数は、2年連続で前年同期を下回り、バブル末期の1990年同期(3,070件)を割り込み、1972年以降の50年間で最少となった。

産業別では、年度上半期では2015年同期以来、6年ぶりに全10産業で減少し、なかでも「農・林・漁・鉱業」「建設業」「製造業」「卸売業」「小売業」「金融・保険業」「不動産業」の7産業は30年間で最少だった。また、地区別は、2013年同期以来、8年ぶりに全9地区で前年同期を下回り、四国を除く8地区は30年間で最少で、産業別ならびに地区別ともに歴史的な低水準だった。

負債総額は、年度上半期では2年ぶりに減少し、1972年度以降では1973年度(3,631億100万円)に次いで3番目の低水準だった。ただ、8月には「負債10億円以上」の倒産が前年同月を上回ったほか、9月も「同10億円以上」「同5億以上10億円未満」「同1億円以上5億円未満」でそれぞれ増加し、負債1億円以上の構成比は26.7%(前年同月18.7%)を占め、中堅規模への広がりも見られた。

9月末をもって緊急事態宣言などが解除された。コロナ禍の長期化で、飲食業や宿泊業など対人接触型の非製造業を中心に、影響は広範囲に及ぶ。ただ、コロナ関連支援策が倒産抑制に効果を発揮し、企業倒産は記録的な低水準が続いている。なかでも倒産抑制に最も貢献したのが総額40兆円に達する、政府系・民間金融機関による「実質無利子・無担保融資(ゼロ・ゼロ融資)」だ。融資による緊急避難的な資金繰り支援で、コロナ禍の影響を受けた企業は信用力に関わらず融資を受けることが出来た。これまで借入が難しかった企業でも資金を調達することで、一時的にキャッシュ・フローが改善し資金繰りを凌いだ。

一方で、ゼロ・ゼロ融資は最長5年間の返済据置期間が設定出来た。ただ利用した企業の約6割が据置期間を1年としたため、業績回復が遅れるなかで、返済開始と同時に返済猶予(リスケジュール)を要請する企業も出ている。事業規模以上の借入を行った企業も多く、本業回復が見通せないなか、「過剰債務」が新たな経営課題として浮上している。

画像1

【東京商工リサーチ調べ】

2021年度上半期の建設業倒産 件数は過去30年間で最少も負債は3年ぶりに増加

2021年上半期(4-9月)の建設業の倒産件数は、527件(前年同期比6.7%減)だった。2009年度以降、13年連続で減少し、1992年度以降の30年間で最少を記録した。

ただ、四半期別では、2021年1-3月が前年同期比34.3%減(379→249件)、4-6月が同3.3%増(269→278件)、7-9月は同15.8%減(296→249件)と増減を繰り返した。なかでも9月度の倒産件数は102件と、前年同月比22.8%増で、今年に入り6月(100件)を上回る最多件数を更新し、今後の倒産増加をうかがわせた。

地区別では、9地区のうち減少が5地区(北海道、東北、北陸、近畿、九州)で、いずれも2ケタ台の減少だった。一方、増加したのは4地区(関東、中部、中国、四国)で、なかでも四国は2倍増(6→12件)と、まだら模様を見せた。

負債総額は516億5,300万円(前年同期比8.1%増)で、3年ぶりに前年同期を上回ったものの、1992年度以降では2020年度(477億8,200万円)に次ぐ低水準だった。負債1億円未満が397件(前年同期11.9%減)で、全体の7割超(構成比75.3%)を占めている点では変化はない。ただ、負債10億円以上が6件(前年同期比20.0%増)、1億円以上5億円未満が115件(同16.1%増)とそれぞれ増加し、他産業と同様に倒産の中堅規模化を示した。

画像2

【東京商工リサーチ調べ】

全国企業倒産と同様に、建設業の倒産も歴史的な低水準が続く。ただ、決して安泰というわけではない。「防災・減災、国土強靭化」などの公共事業を背景に土木工事が堅調な一方で、東京五輪関連をはじめとする大型工事の一巡や災害復旧工事が収束し、さらにコロナ禍での営業自粛や工事の中止・延期、計画の見直しなどから、建築工事を主体に厳しい受注状況が続いた。

今後も限られた受注を巡って業者間でパイの奪い合いが激しさを増す可能性があり、受注獲得に向けた工事単価のたたき合いが消耗戦にまで発展することも懸念される。

建設業への「新型コロナ」の影響広がる

とは言え、「新型コロナ」感染拡大の影響が直撃し、売上が消失した飲食業や宿泊業、観光産業などに比べて、建設業への影響はこれまで少なかった。東京商工リサーチが実施したアンケート調査でも、2020年5月調査で「(新型コロナの影響を)すでに受けている」と回答した企業は全業種平均で78.7%に達したが、建設業は54.4%と10産業のうち最も低く、唯一の50%台にとどまった。

ところが、2021年5月に建設業での「新型コロナ」関連倒産が過去最多の21件発生し、同月は建設業全体の2割超(22.1%)を占めた。飲食業や宿泊業などに比べて注目度は低いが、徐々に影響が広がりつつあることを印象づけた。

これを裏付けるように、2021年1-9月の「新型コロナ」関連倒産(負債1,000万円以上)は全国累計1,986件に達するなか、業種別では「飲食業」、「宿泊業」に次いで、「建設業」は3番目に多く、アパレル関連や食品販売を件数では上回った。

また、新型コロナの影響は最新期決算(2021年3月期)でも顕著だった。「(2021年3月期の)中小企業の産業別の売上高は、10産業のうち、農・林・漁・鉱業と金融・保険業を除く8産業で減収だった。なかでも2020年3月期と比較して減収幅が最大だったのは建設業で、前期比6.7ポイント低下(2020年3月期3.3%増→2021年3月期3.4%減)」(「2021年3月期決算 17万社の業績動向調査」、東京商工リサーチ調べ)と、他産業と比べて売上高の落ち込みが激しく、深刻さが垣間見えた。

画像3

【東京商工リサーチ調べ】

受注回復期ほど倒産リスク高まる

新型コロナの新規感染者数の減少に伴い、大都市圏を中心とした再開発やコロナ禍で延期になっていた工事が、全国的に動き始めている。さらに、昨年末の経済対策による「住宅ローン減税特例措置(13年控除)」の延長や「グリーン住宅ポイント制度」の創設で、民間工事も受注環境は回復傾向にある。ただし、受注競争は依然として激しく、採算低下とともに資金繰りが悪化している中小・零細企業は多い。さらに“ウッドショック”や“アイアンショック”に代表される資材価格の高騰や調達難の影響が、卸売業者にとどまらず、地域や職種を問わず波及しかねない点でも注意が必要だ。

こうしたなか、9月30日をもって緊急事態宣言などが全面解除された。今後の本格的な事業再開に伴い、人手不足の再燃とともに運転資金需要も活発になる。ただ、その際に注意しなければならないのが黒字倒産だ。ゼロ・ゼロ融資などの資金繰り支援策を受けて過剰債務状態に陥り、業績回復のメドも立たない中小・零細企業は多い。2021年3月期決算内容が端的に物語っている。「2021年3月期決算で借入金の増加企業の割合が最も高かったのは建設業で約半数(48.9%)に及び、増加率の最大も19.0ポイント増の建設業」(「2021年3月期決算『企業の借入金』状況調査」)だった。

過剰債務を抱えた企業にとって新たな資金調達は容易ではない。折しも、2020年秋頃から金融機関などでは審査体制をコロナ禍前の平時レベルまで戻しつつある。財務内容が傷み、業績改善が見込めない企業が新たな資金調達を試みた際、拒絶や減額されることも散見されるようになった。なかでも経営基盤が脆弱な小・零細企業は深刻さが増す。今後は、受注が回復する一方で、手元資金が枯渇し、倒産もしくは事業継続を断念し廃業を迫られるケースが徐々に増えるものと懸念される。

最後に、取引先の倒産に備える保険について紹介したい。損害保険ジャパンでは、建設業向けにも取引信用保険を販売しており、見積時に取引先毎の独自の信用情報を無料提供している。与信管理業務への活用にあたっては、こちらの動画をご視聴いただくことをおすすめする。

sj_linkicon

以上(2021年12月)

sj09020
画像:pixabay

【朝礼】繁忙期の対応で分かる会社のレベル

皆さんの頑張りのおかげで、当社の新規事業は絶好調です。一方、皆さんの仕事量は増え、顧客から要求されることも一段と難しくなりました。いわゆる「繁忙期」ですが、ここをうまく乗り越えないと、当社は次のステージに立てません。今朝は、そのために大切なことをお話しします。

皆さんは、当社の取引先であるIT企業のA社を知っていますね。A社で当社を担当しているWebディレクターは、当初、とても仕事が丁寧で信頼できました。ところが、ここ数カ月は人が変わったように仕事が雑になってしまいました。不思議に感じた私は、A社のエンジニアに状況を確認しました。すると、問題のWebディレクターは新しい開発案件を複数担当することになって余裕がなくなり、当社に限らず、全般的に仕事が雑になっているというのです。

「よくある話だ」と聞き流してはいけません。繁忙期という意味で、皆さんも、このWebディレクターも状況は同じです。繁忙期は、リソース不足で余裕がなくなり、ミスも出やすくなります。早期に態勢を立て直さないと混乱が拡大し、顧客は「おいおい、大丈夫か?」と不安を覚えます。それに、こちらのビジネスが好調ということは、顧客のビジネスも好調である可能性が高くなります。この場合、顧客も繁忙期なので取引先の管理に余計な手間をかける余裕はありません。取引先の仕事が雑なままで改善されなければ、早いタイミングで取引先の変更を決断するでしょう。

実際私も、A社に発注予定だった開発案件を別のIT企業に発注しました。それだけではありません。今、A社に依頼している案件も、徐々に別のIT企業に移管することを検討しています。

繁忙期には一過性のものと、継続するものとがあります。一過性のものには、決算期の経理業務などが挙げられますが、この類いは足元の業務さえ乗り切れば状況が落ち着くので、踏ん張りが利きます。

一方、当社の今の繁忙期は、当社が成長する限り続くものです。そのため、私たちは仕事の進め方を何度も抜本的に見直しながら、その都度、現状にフィットさせなければなりません。そのために、まずは仕事の進め方を分解して、割り振りをし直しましょう。例えば営業なら、一人の担当者が属人的に行ってきた仕事を、アポイント、訪問、対応などのように分解して担当分けし、仲間を信じて任せることで、効率化が図れます。

次にすべきことは、これまで以上に丁寧に仕事を進めることです。仕事の進め方を変えれば混乱が生じますし、時間も取られます。そうなると、無意識のうちに丁寧さのレベルが低下しがちなので、丁寧過ぎるくらいでちょうどよいのです。

最後に、これまで以上に顧客の立場に立つことです。当社の成長は顧客あってのことです。その感謝を忘れず、顧客が安心して当社に仕事を任せてくれるようにならなければなりません。

以上(2021年12月)

op16906
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】私の話を「鵜呑みにできる器」はあるか?

「鵜呑み(うのみ)」は、人から聞いた話をよく考えずに受け入れてしまうこと、という意図で使われ、悪い行為の例として挙げられます。ですから、「人の話を『鵜呑み』にしては駄目だ!」と叱ったりするのですが、私は全く違う意見を持っていて、ある面では鵜呑みを肯定しています。特に何かを始めるとき、鵜呑みは一つの過程であり、鵜呑みにできる「器」を持つことが必要だと思っています。けさは、一般とは違う解釈ですが、鵜呑みに対する私なりの考えをお話しします。

先日、皆さんから「私のライティングのノウハウを勉強したいので話してほしい」と依頼されたので、60分程度、お話ししました。このとき、皆さんが私の話を「どのように聞いてくれたのか?」がとても大事です。私はライティングで成果を上げていて、そのノウハウを皆さんのレベルに合わせて出し惜しみなく話しました。皆さんが私のノウハウをきちんと実践してくれたら、今よりも良くなるのは間違いありません。そのための最初の過程として、私の話を鵜呑みにすることが必要なのです。

鵜呑みが最初の過程になるのは、別の分野でも同じことです。例えば、私は趣味でピアノを習っており、まずは先生の話を聞き、言われた通りにやってみようと努力しました。そして、ある程度、先生の言う通りにできるようになったら、そこから自分なりの工夫を加えます。いわゆる「守破離(しゅはり)」の流れです。

ところが、人の話を鵜呑みにできる人は意外と少ないものです。それは、「鵜呑みにできる器」がないからです。ここでいう鵜呑みにできる器とは、「素直さと柔軟さ」のことです。

なぜか私たちは、人の意見に何か突っ込める人を優秀だと勘違いしている節があります。逆に言えば、人の話を鵜呑みにする人は、自分の考えがなく、知識も足りない人だと低く評価されがちです。しかし、鵜呑みにするからといって、自分の考えがないことにはなりません。むしろ、自分の考えを持ちつつ、人の話を鵜呑みにするのは、思っているよりも難しいことです。なぜなら、自分のプライドなどが邪魔をして、「それは違う」という意識が出てくるからです。それを排除して、人の話を受け入れることができるのは、素直で柔軟に考えられる人なのです。

さて、ここまで鵜呑みを肯定してきましたが、これには条件があります。それは、鵜呑みにして終わりにしないということです。繰り返しますが、鵜呑みは最初の過程であり、その先は皆さんの努力が不可欠です。「何かを始めようと思っている人」や「何かを改善したいと思っている人」は、比較的、人の話をよく聞きます。しかし、その後、相手の言った通りに努力する人は本当に限られます。善かれと思って与えた課題さえ、ろくにやってきません。鵜呑みは新しい考えを自分の中に入れることですが、その先の努力があってこそ、道は開けていくのです。

以上(2021年12月)

pj17080
画像:Mariko Mitsuda