1 「マーケティング分析」を用いて営業戦略を見直してみよう
営業活動は、会社の業績を支える重要な業務です。そして営業戦略は、
営業活動の方向性を定め、営業活動の指針となるもの
です。しかし現実的には、この戦略策定が曖昧なまま営業活動を行っている企業も多いのではないでしょうか。例えば、
- 「目標売上金額○億円(対前年度比10%増)」といった業績目標はあるものの、それを実現するための道筋(戦略)が不明瞭である
- 営業戦略はあるものの、前年度の内容を踏襲したもので、市場環境の変化などを踏まえておらず実態に合っていない
といった具合です。
営業部門が効果的に営業活動に取り組み、成果を上げていくためには、しっかりと練られた営業戦略が不可欠です。そして、
効果的な営業戦略を策定するためには、自社を取り巻く環境や現在の状況を整理し、明文化する、「マーケティング分析」が何より大切
です。以降で、営業戦略策定に役立つマーケティング分析の方法を紹介します。
2 顧客・製品・環境のマーケティング分析
営業戦略を策定する際の第一歩は、外部環境や内部環境についてしっかりとマーケティング分析を行うことから始まります。
ここでは、こうした点を検討する際に利用できる主な分析手法などを紹介していきます。
1)顧客に関する分析
顧客層を分析する方法はさまざまありますが、よく知られているものとして、
があります。
1.ターゲットセグメンテーション分析
ターゲットセグメンテーション分析とは、市場を特定の基準に基づいて細分化し、それぞれの集団の特徴を分析する方法です。市場を細分化する際には、
「各集団が同質的なニーズを有する」「各集団間はニーズが異なる」ようにするのが基本
です。
市場を細分化する際は、次のように、比較的情報を入手しやすい基準を使うことから始めてみるとよいでしょう。
- (個人向け市場の場合)年齢、性別、学歴、職業、所得水準、居住地など
- (法人向け市場の場合)業種、所在地、企業規模(売上金額、従業員数、資本金)など
2.パレート分析
ある成果について、全体のうち少数の要素(人や商品など)がその成果の多くに貢献することを、「パレートの法則」と呼びます。分かりやすく店舗で例えると、2割の顧客による売上金額が、売上金額全体の8割を占めている、といった具合です。
そしてパレート分析とは、売上金額や利益額、そして累計売上比率などに基づいて、既存顧客の会社への貢献度を分析する方法です。先述の「パレートの法則」と同じように、少数の優良顧客が売上金額などの大半を占めているケースがよく見られます。そこで、パレート分析を行うことで、顧客の貢献度合いや会社にとっての重要度を分析し、可視化することができます。
例えば、図表1では、「自社売上金額の大部分を占める顧客」をグループA、「Aへのランクアップを視野に営業する顧客」をグループB、「自社としては積極的な営業を控え、継続して情報を発信する顧客」をグループCに区分しています。

なお、パレート分析は、必ずしも図表1のようにABCの3つのグループに分ける必要はありません。各社の実情に応じてグループを増やしたりして分析するのもよいでしょう。
2)製品に関する分析
自社製品の可能性を分析するために役立つ分析方法の1つがPPM(Product Portfolio Management)です。PPMとは、自社製品を「相対的シェア」と「市場の成長率」の2つの軸に基づいて自社製品の可能性を整理し、経営資源をどう振り分ければよいかを4象限で示したものです。PPMの概念は図表2の通りです。

PPMでは「市場の成長率」と「相対的シェア」を軸に、製品を「問題児」「花形」「金のなる木」「負け犬」に分類しますが、この4つのパターンは製品の“誕生”から“死滅”へのプロセス(プロダクトライフサイクル)にもたとえられます。つまり、
- 「問題児」として登場
- 「花形」に成長
- 「金のなる木」に成長
- 「負け犬」となって消えていく
という考え方です。
そのため、PPMにのっとって基本的な経営資源の配分を考えると、「金のなる木」で得た資金を「花形」や将来性の見込める「問題児」に投資し、育成していくことになります。そして、花形への移行を見込めない一部の「問題児」や「負け犬」からは撤退を考えます。
ただし、実際には「負け犬」になりかけている製品のテコ入れを行ったり、リニューアルをしたりして、再び他の象限に該当するような製品になるケースもあります。そのため、基本的な経営資源の配分の考え方をベースにしつつ、自社の方針などを踏まえて、各製品の位置付けを検討することになるでしょう。
3)外部環境・内部環境の分析
外部環境や内部環境を分析する最もポピュラーな方法が、SWOT分析です。SWOT分析は、自社の内部環境を強み(Strength)と弱み(Weaknesses)、外部環境を機会(Opportunities)と脅威(Threat)に分けて分析します。SWOT分析の視点は、図表3の通りです。

SWOT分析の結果に基づく戦略策定の基本方針は図表の通りですが、いずれにせよ
「強みをいかにして活かすか」という点を重視して考える
ことが大切です。弱みに対する相応の対処は必要ですが、弱みは経営者の考え方、組織上の問題などが複雑に絡み合っていて、簡単には改善できないケースが多く見られます。ですから、強みを活かすほうが、営業活動を効果的に行える可能性が高いといえます。
なお、他の環境分析手法には次のようなものがありますので、状況に応じて活用を検討してみるといいでしょう。

3 営業目標と2種類の戦略を定める
分析が済んだら、早速目標や戦略を定めていきます。
具体的な営業戦略の内容はさまざまですが、主な要素を整理すると次のようになります。
- 営業目標
- 営業目標を達成するための市場戦略(以下「市場戦略」)
- 営業活動を支えるための内部戦略(以下「内部戦略」)
以降で、それぞれの要素について解説します。
1)営業目標
「営業目標」とは、1年間の営業活動を通じて達成すべき目標です。営業上の目標というと、「目標売上金額○億円(対前年度比●%増)」といった業績目標が思い浮かびますが、売上金額以外の目標設定も忘れてはいけません。
例えば、「営業担当者の育成」「営業情報の共有化による組織のレベルアップ」など、業績目標とは直接的な関連が薄いものであっても、営業力を強化するためになど解決すべき課題があれば、営業目標として設定しましょう。
2)市場戦略
「市場戦略」とは、営業目標を達成するための外部に対する戦略です。具体的には、
「どの顧客に」「どの製品を」「どのようにして」販売していくのか
といった観点があげられます。マーケティング戦略であれば、「○○地域の法人をターゲットに、A製品を重点的に販売する」といったように、「市場=一定のマス」として説明されることが多いですが、市場戦略では「より具体的な形にする」必要があります。

例えば、○○地域の法人をさらにセグメント化しその中で優先順位を付け、営業目標を達成するためにいつまでに何をすべきか、といった点まで落とし込むと、営業部門が実際に活動する際の指針として、市場戦略が効果的にはたらくでしょう。
3)内部戦略
「内部戦略」とは、営業活動を支える社内に関する戦略のことです。例えば、組織体制や業務フローの見直し、営業担当者の確保・育成などといった営業力強化のための社内における取り組みなどが該当します。
これらの営業戦略は、営業部門のみで全てを決定できるものではありません。また、経営戦略をはじめ企業活動を規定するその他の戦略などとの整合性もとれている必要があります。実際にはこうした整合性を確認しながら、
「営業戦略を策定し、その他の戦略や企業活動にも反映させていく」→「その他の戦略や企業活動の内容を踏まえて、営業戦略の内容を見直す」
ことを繰り返し、最適な戦略を練っていくことになります。
次章では、この3種類の目標と戦略をどのように策定していくかを解説・紹介していきます。
4 分析結果を戦略に反映させるには?
各種分析結果を基にして、より説得力ある、そして実現性の高い戦略を策定することができます。
戦略の策定に際して、前述したような手法で行った分析結果を活用する最大のメリットは、過去の延長線上の営業戦略から脱却できるという点
にあります。以降では、効果的な営業戦略を策定する際のポイントを紹介します。
1)戦略の階層
まず、実効性のある営業戦略を策定する際には、「営業目標」「基本方針」「個別戦略」「アクションプラン」の4つの階層に分けて考えるのが基本です。営業戦略のイメージ(市場戦略)は図表6の通りです。

内容は企業ごとに異なりますが、まず「営業目標」の下に営業戦略の方向性を示す「基本方針」を策定します。この基本方針を実現するための取り組みが個別戦略です。個別戦略は、地域別、顧客層別、製品別など、複数の戦略を策定するのが一般的です。
そして、個別戦略において具体的に実行すべき事項を整理したのがアクションプランです。上図のアクションプランは簡略化していますが、実際には「誰が」「いつまでに」「何をするのか」といった点が分かるように決めておきます。例えば、「ターゲットのリスト化と担当割を△チームが4月中に行う」といったように、できる限り目標を具体的に定めておくことが大切です。
内部戦略についても同様に、4つの階層に分けて考えるのが基本となります。具体的には図表7のようなイメージです。

内部戦略については特に、社内のさまざまな部門との調整が必要になります。各部署と連携しつつ、目標を達成するために必要な戦略を整えていきましょう。
2)戦略を策定する際の注意点
まず、営業戦略を策定する際には、例えば「新規顧客の開拓」といった1つの方向性の営業戦略のみを検討するのではなく、新たな成長の可能性を探るため、複数の方向性を検討してみるのもひとつの手です。
そして内部戦略は一見、すぐには目に見える結果につながらないように思えますが、将来的な成長には欠かせない要素です。策定する際は、何より各部署との整合性を図り、慎重に作り上げていくことが重要です。
また、営業戦略と内部戦略どちらも共通して、
戦略とは「やらないことを決めること」
でもあります。営業目標を達成するためには、多くのことに取り組んだほうがよいことは確かですが、優先順位付けを行うことも不可欠です。関係部署と議論を重ねつつ、取捨選択を重ね、最良の営業戦略を選択することが望ましいでしょう。
小回りの利く中小企業の場合は、営業戦略の見直しなどを比較的容易に行うことができ、これは規模の大きな企業には真似できない利点です。営業戦略の進捗状況や成果を常に注視して臨機応変に営業戦略を見直し、自社の成長に役立てていきましょう。
以上(2025年2月更新)
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