【事業承継】 弁護士が教える。事業承継でホールディングスを活用するメリットと実務

1 事業承継でホールディングスを活用する5つのメリット

ホールディングスとは、事業会社の株式を譲渡などして設立される会社(持株会社)です。このホールディングスの傘下に事業会社を加えれば、事業承継対策として次の5つのメリットが期待できます。

  • 株価上昇を抑制する効果が得られる
  • 先代経営者のポストが用意できる
  • 後継者世代の経営管理ができる
  • 所有と経営の分離ができ、親族外への承継に対する不安排除の一助になる
  • 複数の事業を統括・管理できる機能が持てる

1)株価上昇を抑制する効果が得られる

ホールディングス体制に移行すると、事業会社の株価上昇を抑制する効果が得られます。これはホールディングスの資産となった事業会社の株式が値上がりすると、ホールディングスが保有する資産に含み益が生じるからです。

ホールディングスは、事業会社の株式が資産の50%以上を占めているケースが多いです。そのため、株価評価をする際は純資産方式で株価を算定します。この純資産方式による計算過程で時価評価が必要になるのですが、価値が上昇している資産(業績好調な事業会社の株式など)を有している場合は含み益が生じます。そして、この含み益に対して純資産方式では、

法人税相当額37%を控除できる

ので、結果として株価の上昇を抑えられる効果が期待できるのです。

自社株の相続税評価額

さらに、ホールディングスが本社ビルなどの不動産を保有すると、不動産の評価減によって株価が引き下げられる効果も期待できます。なぜなら、ホールディングスが不動産を取得した場合、取得後3年間は取得価格で評価しなければなりませんが、3年を経過するとその不動産を相続税評価で評価できるようになるからです。

不動産の相続税評価というのは、建物は固定資産税評価額、土地は路線価評価額となりますが、このような相続税評価は、時価の半額ほどであるケースが多いといわれています。つまり、評価減が起こる資産を親会社であるホールディングスが取得すると事業会社の株価を押し下げてくれる効果が期待できるのです。

2)先代経営者のポストが用意できる

事業承継を円滑に進めるためには、役員退職金を支給された先代経営者のポストを用意するケースがあります。長期にわたって代表者として事業会社の経営を担ってきた先代経営者は、依然として社内外に大きな影響力を持っているのが通常だからです。

ホールディングスは事業会社の株式を100%保有しており、事業会社を経営支配していますので、先代経営者がホールディングスの代表者に就任し、事業会社は後継者世代に委ねると良いバランスになることがあります。

先代経営者のポスト

3)後継者世代の経営管理ができる

事業承継を決断する経営者の悩みの多くは後継者の経営手腕ですが、この問題もホールディングスの活用で解消できます。

ホールディングスは、事業会社の株式を100%保有しているため、事業会社の株主総会の決議を書面決議(書面の同意のみで決議があったものとみなされる方法)で行うことができます。事業会社の株主総会決議というのは、事業会社の取締役の選解任や報酬の決定など、事業会社の経営の根幹にかかわる事項です。それを書面決議で決定できる権利を持っているのですから、ホールディングスは事業会社に対して強い経営支配を及ぼします。

この経営支配の仕組みを活用し、若い後継者世代の経営をサポートすることができます。経営のバトンを後継者に渡した後、事業会社の経営状況が思わしくない場合には、経営方針を変更させるなどの修正を行うことができます。

4)所有と経営の分離ができ、親族外への承継に対する不安排除の一助になる

中小企業の事業承継がなかなか進まない理由の1つは、親族内に後継者がいないことです。経営者に子がない、子がいたとしても他の企業に就職しているなど、事情はさまざまです。こうした後継者不在の問題もホールディングスの活用で解消できます。

具体的には、ホールディングスは事業会社の株式や不動産などの資産を所有する機能だけを担わせ、事業会社の経営は、役職員の中で一番優秀な者に担わせるのです。事業会社に利益が計上された場合、例えばその3割をホールディングスに配当で分配し、3割を内部留保にし、4割を役職員の報酬として分配するなど、一定のルールを作って、経営を親族外の経営者に担わせることも可能です。

親族外の者に事業会社の社長のポストを担わせることは不安に感じられる場合もあるかもしれませんが、ホールディングスは、事業会社の株式の100%を保有していますので、事業会社の社長を変更するのも書面決議で行うことができます。

所有と経営の分離

5)複数の事業を統括・管理できる機能が持てる

どのような事業であっても、良いときもあれば悪いときもあります。そのような中で事業を永続させていくには、複数の事業をホールディングスの傘下で管理していくことが重要になります。A、B、Cの3つの事業のうち、A事業の将来性は低くても、B事業、C事業がそれを補ってくれるグループを目指すということです。

このように複数の事業を統括するのが、まさにホールディングスです。ホールディングスに管理部門を配置することで、A事業、B事業、C事業の経営を管理し、経営資源を将来の事業計画に従って振り分けていくことができるようになります。また、このようにグループ経営ができれば、A事業は親族内の後継者に、B事業、C事業は親族外の役員に経営を委ねるなどの体制を取ることもできるようになります。

ホールディングスのイメージ

2 ホールディングス化のための2種類の手続き

1)株式譲渡によりホールディングスを設立する方法

オーナーが保有する事業会社の株式をホールディングスに譲渡すれば、ホールディングス体制を構築することができます。しかし、株式譲渡をする場合は、ホールディングスが株式を買い取る資金を銀行から調達しなければならず、過剰な債務を負担せざるを得ない恐れがあります。また、株式の譲渡代金の20%が譲渡所得税として課税され、ホールディングス体制に移行するだけで多額の税負担が発生する恐れもあることに留意しなければなりません。

2)株式移転を行う方法

株式移転によって持株会社を設立する場合、大きな税負担を負うことなく、ホールディングス体制に移行できます。株式移転の場合には、オーナーが事業会社の株式をホールディングスに現物出資し、その代わりにホールディングスの新株の発行を受けます。オーナーはホールディングスに事業会社の株式を渡しますが、対価として現金の支払いを受けないので課税されることは有りません。

株式移転によって持株会社を設立する場合

3 事業承継でホールディングスを活用する際のポイント

以上のように、事業承継対策としてホールディングスを活用するメリットは多いです。もっとも、このようなメリットを享受するためにはある程度の時間が必要です。一口にホールディングスといっても、どの程度の期間、その組織が運営されているのかで信用力も得られるメリットも大きく違ってくるからです。

事前にどのような課題を解決するためにホールディングスを活用するのか、方針を明確化した上で、じっくり組織を作っていくことが重要になってきます。

以上(2025年7月作成)
(日比谷タックス&ロー弁護士法人 弁護士 福崎剛志)

pj30207
画像:Mariko Mitsuda

メガソーラー向けの蓄電池導入に関する動向はどうなっている?

1 蓄電池の概要

太陽光発電で生み出した電気を効率的に使うために併設される蓄電池は、家庭用と産業用とに分かれます。家庭用と産業用の大きな違いは、蓄電池に貯められる電気の容量にあります。家庭用は容量が5kWh~10kWh程度に対して、産業用は小さくても10数kWh~20kW、大きいものだと容量50kWh~100kWh程度の容量の電気を貯められるとされています。

産業用の蓄電池は、主に次の種類の蓄電池が用いられます。

  • ナトリウム硫黄電池(NAS電池)
  • レドックスフロー電池
  • ニッケル水素電池
  • リチウムイオン電池

太陽光発電は日が差している日中に発電ができる一方で、天候が悪い日や、夕方から夜間は発電できず、発電した電力を消費ピーク時に活かしきれない課題もあります。そのため、蓄電池を導入することで次のような効果があるとされています。

  • 電力の安定供給
  • ピークシフト(需要が少ない時間帯に電力を蓄え、ピーク時に供給することで電力網の負荷を軽減する)
  • 災害時・停電時の電力確保
  • 環境負荷の低減・CO2排出量の削減

2 蓄電池の市場規模などに関するデータ

1)蓄電システムの出荷実績について

日本電機工業会(JEMA)の定置用リチウムイオン蓄電システム自主統計によると、系統連系型(電力系統が電力会社の送電網に接続されている仕組み)定置用リチウムイオンバッテリー蓄電システムの出荷実績は次の通りです。

定置用リチウムイオンバッテリー蓄電システムの出荷実績

定置用リチウムイオンバッテリー蓄電システムの出荷実績

出荷実績は2018年度を境に大きく伸びています。主な要因として、2018年7月に閣議決定されたエネルギー基本計画で、蓄電システムの重要性が改めて位置づけられたことや、導入支援が拡充したことが挙げられます。

3 蓄電池導入に関する支援策について

産業用蓄電池を使って一定の事業を行うと、環境共創イニシアチブなどが実施する補助金を受け取れることがあります。

1)「再生可能エネルギー電源併設型蓄電システム導入支援事業」(環境共創イニシアチブ)

発電事業者が、再生可能エネルギー電源設備へ新たに蓄電システムを併設し、再生可能エネルギーの有効活用や普及拡大、需給バランスの改善に寄与する事業に対して補助を行うことを目的とする制度です。設計費・設備費・工事費の1/2以内、または1/3以内が補助対象となります。なお、補助上限額はありません。

■再生可能エネルギー電源併設型蓄電システム導入支援事業■
https://sii.or.jp/saieneheisetsu06r/

(注)2025年5月30日時点で公募(1次)が締切となり、2次締切まで公募を受け付けするか否かについては今後、審査状況に応じて、環境共創イニシアチブのウェブサイトで案内される予定です。

2)「業務産業用蓄電システム導入支援事業」(環境共創イニシアチブ)

DR(電力の需要量と供給量を合わせる手法)に活用できる蓄電池を、電力需給ひっ迫時だけでなく再エネ出力制御対策にも活用することで、電力の安定供給・再エネ電源の更なる導入加速に貢献することを目的とする制度です。業務産業用蓄電システムを導入する際の設計費・設備費・工事費の1/3以内が補助対象となります。補助上限額は3億円です。

■令和6年度補正 業務産業用蓄電システム導入支援事業■
https://sii.or.jp/DRchikudenchi_gyousan06r/

3)ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業(環境イノベーション情報機構)

蓄電池の導入を通じて、ストレージパリティ(太陽光発電設備の導入に際して、蓄電池を導入しないよりも、導入したほうが経済的メリットのある状態)を達成、再エネ活動と防災の強化を図る事業です。業務用・産業用の蓄電池導入に対し、1kWh当たり3万9000円を上限として補助金が交付されます。

■ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業■
https://www.eic.or.jp/eic/topics/2025/st_r06c/2ndpre/

4 蓄電池導入に関する規制・留意点について

1)蓄電池を設置する際の規制

1.蓄電池の設備基準

蓄電池は、消防法施行規則の規定に基づき、構造や設置の要件が定められています。例えば、次のような要件があります。

  • 設置する室の壁から0.1メートル以上離して設置すること
  • 水が侵入、または浸透するおそれのない場所に蓄電池を設置すること
  • 蓄電池を設置する場所には、屋外に通じる換気設備を設けること など
■消防法施行規則■
https://laws.e-gov.go.jp/law/336M50000008006/

2.蓄電池設置の際の届け出

容量が20kWを超える蓄電池を設置する場合には、設置される市町村等が定める火災予防条例が適用されるため、管轄の消防署への届け出が必要になります。詳細は、あらかじめ管轄の消防署に確認するようにしましょう。

■静岡市「燃料電池発電設備・変電設備・急速充電設備・発電設備・蓄電池設備設置届出書」■
https://www.city.shizuoka.lg.jp/shinsei/s6329/p0087.html

2)蓄電池に関するリスク

1.火災の防止

過充電や過放電などによる火災には注意が必要です。2024年には鹿児島県内のメガソーラー発電所で火災事故が発生した事例もあります。

蓄電池に用いられることがあるリチウムイオン電池では、過充電・過放電で蓄電池内の温度が上がり、発火や破裂につながる恐れがあります。そのため、蓄電池メーカーの協力を得て設備点検を怠らないことが重要です。

2.耐用年数の確認

蓄電池の耐用年数について、国税庁が定める減価償却資産上の耐用年数は次の通りに分けられます。

  • 建物内に設置したもの:6年
  • 電気業用設備で、金属製でないもの:8年
  • 電気業用設備で、金属製のもの:17年

一方で、使用環境や蓄電池の種類にもよりますが、蓄電池の寿命は最大で15年程度となっており、税務上の数字と実際に使用できる期間とで異なるため注意が必要です。

5 蓄電池製造企業の事例

1)パナソニック(東京都港区)

同社では、法人の施主向けに公共・産業用 蓄電システムを提供しています。工場や学校の大規模施設での蓄電に対応する機種から、蓄電と電気自動車への充電を同時に行えるタイプの蓄電池もあります。

■パナソニック「公共・産業用 蓄電システム(法人の施主様向け)」■
https://www2.panasonic.biz/jp/energy/chikuden/

2)パワーエックス(東京都港区)

同社では、2.7MWhの大容量蓄電池を自社開発しており、AIによる電力運用の管理や、修理費用、交換費用を20年間無料でサポートすることが特徴です。また、メガソーラーへの導入実績もあります(次章で後述)。

■PowerX Mega Power■
https://power-x.jp/megapower?gl=JP

3)GSユアサ(京都府京都市)

同社では、太陽電池と蓄電池を使用した蓄電池付きの太陽光発電システムの開発・製造に積極的に取り組んでいます。公共産業用に10?100kVA出力の蓄電システムを取り揃えており、用途により、リチウムイオン電池と鉛蓄電池を選択することができたり、停電対応やピークカットに対応できたりすることが特徴です。

■GSユアサ「蓄電システム」■
https://ps.gs-yuasa.com/products/sl/storage/

4)日本ガイシ(愛知県名古屋市)

同社では、産業用蓄電池でNAS電池を取り扱っています。NAS電池の実用化は同社が世界初となっており、次のような特徴があります。

  • 鉛蓄電池の約3分の1のコンパクトサイズ
  • 電力負荷平準によるピークカットが可能
  • 定置用蓄電池の世界的な安全規格UL1973のUL認証を取得
■日本ガイシ「NAS電池」■
https://www.ngk.co.jp/product/nas.html

6 蓄電池を併設するメガソーラー施設の事例

1)大村メガソーラー発電所

九電みらいエナジー(福岡県福岡市)が長崎県大村市で運用しているメガソーラー施設です。蓄電システムの導入を進めており、パワーエックス(東京都港区)が提供する蓄電容量8226kWhの蓄電池、ニシム電子工業(福岡県福岡市)が提供するエネルギーマネジメントシステム「TAMERBA EMS」を新たに設置する計画です。また、同社では、今回の蓄電システム設置に伴い、FIT制度からFIP制度による売電へ切り替えることも予定しています。

■ニシム電子工業「太陽光発電所併設型蓄電システム受注のお知らせ」■
https://www.nishimu.co.jp/news_top/blog/info/136

2)すずらん釧路町太陽光発電所

東急不動産(東京都港区)、三菱 UFJリース(東京都)、日本グリーン(東京都千代田区)の3社が出資するSPC(特定目的会社)が主体となり、北海道釧路町で運用しているメガソーラー施設です。約163haの遊休地を活用し、出力約92MW、年間発電量は一般家庭約2万1300世帯の年間電力消費量に相当する発電を行っています。蓄電池は、北海道電力が2015年4月に公表した「太陽光発電設備の出力変動緩和対策に関する技術要件」に基づき、大容量リチウムイオン電池を備えています。

■東急不動産「新たな戦略(4 蓄電池事業)」■
https://tokyu-reene.com/newBusiness.html

3)ソフトバンク苫東安平ソーラーパーク 2

ソフトバンクグループで、再生可能エネルギー事業などを手掛けるSBエナジー(東京都港区)と三菱UFJリース(東京都千代田区)が出資するSPC(特定目的会社)が主体となり、北海道安平町で運用しているメガソーラー施設です。出力約65MW、年間発電量は一般家庭約1万9854世帯分の電力消費量に相当する発電を行っています。蓄電池は、容量約19MWhの大容量リチウムイオン電池が併設されています。

■SBエナジー「事業内容」■
https://www.sbenergy.co.jp/ja/business/

7 参考

1)電力の買取制度について

太陽光発電などの再生可能エネルギーで発電した電気は、これまで固定価格買取制度(FIT・再生可能エネルギーを市場から独立した形で電力会社が一定期間、一定の価格で買い取る制度)で運営されてきました。FIT制度は電力の買取価格が一定である一方で、需要のピーク時に供給量を増やしてもインセンティブが発生しない、適用開始から20年後に契約が満了となり、その後は買取価格が保証されない(価格が下がってしまう恐れがある)といった課題があります。

そこで、2022年度から導入された制度がFIP(Feed-in Premium)です。FIT制度のように電力を固定価格で買い取るのではなく、発電事業者が卸市場などで売電したときに、その売電価格に対して一定のプレミアム(補助額)を上乗せする仕組みです。

あらかじめ定められた基準価格(FIP価格)から参照価格(市場取引で期待される収入)を引いた額は「プレミアム単価」となり、発電事業者は売電価格にプレミアムが上乗せされた合計分を収入として受け取ることができます。

FIP制度では、市場価格と連動して1カ月単位で参照価格が見直されるため、需給バランスに応じて取引の戦略を立てやすくなります。また、蓄電池で発電した電気を貯めておくと、発電量の少ない時間帯でも電力を売却できるようになります。電力市場で需要が高まるタイミングで、蓄電池で貯めた電力を活用して供給を増加させれば、収益を拡大させることができるのも大きなメリットになります。

2025年度以降の価格表(太陽光、調達価格1kWh当たり)は次の通りです。

2025年度以降の価格表

FIT・FIP制度の詳細や、現在の電力の価格はこちらで確認することができます。

■経済産業省資源エネルギー庁「FIT・FIP制度」■
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/

2)中部地方のウェルカムゾーンマップ

中部電力パワーグリッド(愛知県名古屋市)では、「中部地方のウェルカムゾーンマップ」として、需要家向けの供給余力マップを公開しています。マップでは、送電線の位置情報や系統上の空き容量、早期に電力供給できる用地や立地検討に必要なインフラ情報などを地図上で確認できます。

そのため、愛知県、岐阜県、三重県、静岡県、長野県で特別高圧供給が必要な工場などを検討する事業者が事業用地の適否判断をするといった場面で活用できます。

■中部電力パワーグリッド「中部地方のウェルカムゾーンマップ」■
https://powergrid.chuden.co.jp/youchi/

以上(2025年7月作成)

pj50557
画像:Yoshinori Okada-Adobe Stock

【朝礼】大いに悩み、そして行動する「ストレイ・シープ(迷える子)」であれ

【ポイント】

  • 夏目漱石の小説の主人公・三四郎は、都会に翻弄されつつ、自分なりに考え、行動した
  • ビジネスに絶対の正解はない。失敗を恐れて行動しないよりはしたほうがいい
  • ただ、思考停止に陥ってはいけない。考えて行動するからこそ、失敗を次に活かせる

今日は、夏目漱石の小説「三四郎」についてお話しします。この作品は、明治時代の終わりごろ、九州から上京した青年・三四郎が、東京の洗練された空気に戸惑いながらも、さまざまな人々との出会いを通して、少しずつ自分の世界を広げていく物語です。

この物語のキーパーソンになるのが三四郎と同年代の女性・美禰子(みねこ)です。彼女は東京で育った良家の女性で、三四郎は彼女に引かれていきます。印象的なのが、彼女が三四郎に向けて言った「ストレイ・シープ(迷える子)」という言葉。上京してきた三四郎には、「母のいる故郷の世界」「学問を極めようとする人たちの集まる、やや浮世離れした大学の世界」「美禰子が暮らす華やかな都会の世界」という3つの世界ができていて、彼はその世界の中で自分の立ち位置を決められずにさまよう、ストレイ・シープだったのです。

しかし、自分の考えや信念をしっかり持てないながらも、自分なりに考えて行動を起こそうとする三四郎は次第に成長し、最終的に美禰子に自分の思いを告白します。残念ながら、美禰子はすでに別の男性と婚約が決まっていて、三四郎と結ばれることはなかったのですが、私は自分なりの勇気を出した三四郎がとても好きです。

今日、皆さんにこの作品を紹介したのは、「明確な答えが見つからなくても、何か行動を起こしてみよう」というメッセージを伝えたかったからです。最近は「失敗したくない」と考えるあまり、何かに挑戦することが苦手な人が増えているように思います。ですが、ビジネスに絶対の正解などというものはありません。失敗を恐れて行動しないよりは、行動して失敗して、それを次の成功の糧にするほうがずっと素晴らしいことではないでしょうか。

ただ、同時に大切なのは「思考停止に陥らないこと」です。何も考えずに行動するのはただの愚か者です。自分が今、どんな状況に置かれていて、その上でどう行動したいのか。熟慮した上で行動を起こすから、失敗したとしても次に活かすことができるのです。考えることからも、行動することからも逃げず、大いに悩み、そして行動するストレイ・シープになってください。

以上(2025年7月作成)

pj17223
画像:Mariko Mitsuda

【参加無料】地域事業者向けセミナー「買いたくなる商品づくりを考える」開催!

7月28日(月)オフィスあいさい(みはらしの丘 オフィスあいさい広場内)にて、地域事業者向けセミナー「買いたくなる商品づくりを考える」が開催されます!
詳細は、チラシか公式サイトをご参照ください。

公式サイトはこちら!


↑クリックで拡大表示↑

参加お申し込みはこちらから!

【開催概要】

  • 日時 2025年7月28日(月)
  • 場所 オフィスあいさい(みはらしの丘 あいさい広場内) 徳島県小松島市立江町炭屋ヶ谷47-3
  • 主催 小松島市/地域共創推進業務運営事務局
  • 問合せ先 とくぎんトモニリンクアップ株式会社 岸(088-656-1161)

以上(2025年7月作成)

経営者がよく使う「生成AI」 断トツの第1位は◯◯!

1 気になる経営者たちの「生成AI」事情

近年、ビジネス界で大きな注目を集めている生成AI。ChatGPTにGemini……さまざまなAIツールがほんの数年間で驚くほどの進化を遂げていますが、実際のところ、会社のトップである経営者は、生成AIをどのような思いで、どのように活用しているのでしょうか。

「ウチの会社にはまだ関係ない」と思っている人もいるかもしれませんが、すでに多くの会社が生成AIを業務に取り入れているのも事実。そこで、2025年6月、中小企業の経営者全409人を対象として、生成AIに関する独自アンケートを実施してみました!

この記事では、調査結果から見えてきた

経営者の生成AIの利用状況、具体的な活用事例を紹介

していきます。どの設問にも個性のある回答が出揃いましたので、ぜひお楽しみください。なお、回答の中で、明らかに誤字と思われる表記などは修正しています。

2 業務でAIを利用する経営者は◯◯%!

1)業務でAIって使う?

業務でAIって使う?

まず、「業務で生成AIを使用することはありますか?」という質問には、全体409人のうち、

11.0%が「日常的に使用する」、21.8%が「たまに使用する」

と回答しています。一方で、

41.8%は「使用する予定がない」

と回答しており、「難しそう」「何に使えるのか分からない」「自社の業務では使えない」と考えている経営者も多いと思われます。

業務でのAI使用状況

2)何の生成AIを使う?

何の生成AIを使う?

また、全体409人のうち、業務で生成AIを「日常的に使用する」「たまに使用する」と回答した134人に、「業務ではどの生成AIをよく使用しますか?」という質問をしてみました。

「ChatGPT」が65.7%と圧倒的な人気

を誇っています。

どの生成AIをよく使用しているか

それぞれの生成AIを選んだ理由も聞きました。

【ChatGPT】

  • 最初に有名になったAIの定番だから
  • AIの情報は正しいとは言えないが、情報が的確に近いのはChatGPTだと思うから
  • OpenAIに課金して利用しているので、優先的に利用している
  • 色々使うが最初はChatGPT
  • 認知度が高いので学習内容が多いから

【Gemini】

  • 使用範囲が広いのでGemini
  • Google Workspaceを使っているので
  • 使い勝手が自分に合っているため
  • スマホもPCのブラウザもGoogleを使っているので、一番身近にある
  • 情報の出所が分かるから

【Copilot】

  • Officeについてきたから
  • Edge上で検索する際は、これを使う
  • すぐ立ち上げられるので使いやすいから
  • 手っ取り早くほぼ期待通りの回答が出るから
  • 適正な文書校正をしてくれて、行き詰まった時に助かっている

また、中には、

  • Copilot、Gemini、ChatGPTに同じ質問をして総合的に考える
  • 画像作成までできるのでChatgptを使うことが多いが、文書作成は自然な文章ができるのでClaude(Anthropic社の生成AI)

など、用途によって生成AIを使い分けている生成AIマスターもいらっしゃいました!

3)生成AI、どう使う?

生成AI、どう使う?

業務で生成AIを「日常的に使用する」「たまに使用する」と回答した134人を対象に、「業務で使用される生成AIの使用用途」を聞きました。皆さん、使い方は十人十色! 文章の精査からプログラミングまで、生成AIは経営者の立派な相棒として、大活躍しているようです。

【書類作成】

  • 挨拶文の作成
  • 報告書の作成
  • 書類作成、辞書代わり
  • 資料の作成や議事録、プログラミングなど
  • 原稿の推敲(表現の揺れチェック)
  • 価格交渉の資料作り

【アイデア出し】

  • 調べ物のアシスタント
  • 仕事のアイデアを相談している
  • 分析や、原因、対策を行って貰う
  • 発信のネタ出し、表現のブラッシュアップ、論文検索
  • デザインを考えるときのヒント

【画像作成】

  • イメージ画像の生成
  • 文章を画像表現した際にどうなるかを検討する材料にしている
  • イラストが欲しいときに作ってもらう
  • オリジナルの画像などを作る
  • 写真加工

【その他の用途】

  • 利息計算
  • プログラムの生成
  • 英語の説明書を作成するときのたたき台
  • 品質管理
  • 補助事業申請等に相談してます
  • 起業時の社名の案検討
  • 需要予測など

以上(2025年7月作成)

pj00775
画像:ChatGPT

4兆ドルの衝撃! AI時代の王者エヌビディアが映す企業の地殻変動

2025年7月、米国半導体大手エヌビディアの株価が時価総額4兆ドルの壁を超えたニュースは、テック業界のみならず世界経済全体に衝撃を与えました。この記録は、同社がAIインフラの王者として、新たな世界秩序を築きつつあることを示しています。

かつて2000年の時点で世界を牽引していたのは、ゼネラル・エレクトリック(GE)やインテル、エクソンモービルといった旧来の産業・金融大手でした。特にインテルは、PC時代のCPUを独占し、テクノロジーの「心臓部」としての地位を確立していました。

しかし、2007年のiPhoneの登場、翌2008年のリーマン・ショックが、すべてを変えました。GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)はモバイルとクラウドの波に乗り、インターフェースとサービスの領域で支配的な地位を築きました。ここではデータ、ネットワーク効果、ユーザー体験が価値創造の中心となり、GAFAが市場価値を急伸させたのです。

ところが今、新たな地殻変動が起きています。それがAIとエヌビディアです。生成AIや大規模言語モデルの普及に伴い、GAFAすらも再び「インフラ」への依存を強めています。AIは、従来のCPUでは処理が困難であり、並列計算に優れたGPUが不可欠です。エヌビディアは、この需要を10年以上前から見越し、CUDAという開発プラットフォームを整備してきました。

CUDAは、単なるGPUドライバではなく、AI開発における事実上の標準インフラです。多くの開発者、研究機関がこれに対応したコードを書いており、他社への乗り換えは事実上困難です。これは、かつてマイクロソフトのWindowsがアプリ開発者を囲い込んだ構造と似ており、強力な競争優位性を形づくっています。

さらに忘れてはならないのが、台湾の半導体メーカーTSMCの存在です。エヌビディアの最先端GPUは、TSMCの3nm(ナノメートル)以下の製造プロセスなくしては成立しません。エヌビディアは設計、TSMCは製造という水平分業が、半導体を巡るグローバルな力学を決定づけているのです。この構造の中で、かつての巨人インテルは設計と製造を一体で保ち続けた結果、柔軟性を失い競争力を落としました。

2025年現在の時価総額ランキングは、エヌビディア、マイクロソフト、アップル、アマゾン、アルファベット(グーグル)といった米国企業が独占しています。その中でTSMCやブロードコムといった半導体プレーヤーも存在感を増しており、もはや経済の中核は「計算能力」そのものへと移っています。

この構図は、単なる一時の流行ではなく、構造的変化です。情報処理の高度化が進むなかで、計算基盤(コンピュート・サブストレート)を握る者が、価値の中枢を支配するようになったのです。

インテルが築いたCPU時代、GAFAが築いたクラウドとエコシステムの時代、そして今、エヌビディアとTSMCが中心となる「AIインフラの時代」。この歴史の流れを正確に理解することが、未来を切り拓く鍵となるでしょう。

在留外国人人口の増減率の推移

(注)このアニメーションGIFは、イメージを分かりやすく伝えるために生成AIによって作成したものですので、実際の数字等については各企業のHP等でご確認ください。

以上(2025年7月作成)

pj50558
画像:bephoto-Adobe Stock

「社会保険の適用拡大」、いよいよ全ての会社が対象に?

2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(年金制度改正法)」が国会で成立し、「社会保険の適用拡大」がさらに推し進められることになりました。

社会保険の適用拡大とは、

社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入するパート等の範囲が拡大されること

です。また、ここでいう「パート等」とは、

週の所定労働時間または月の所定労働日数が、正社員の4分の3未満の短時間労働者

です。本来、パート等は社会保険の適用対象外ですが、会社が厚生年金の被保険者数について一定の要件を満たし、さらにパート等が労働時間や賃金について一定の要件を満たすと、社会保険に強制加入となるのです。

現状は、会社とパート等が図表の1.から5.までの要件を全て満たすと、パート等が社会保険に加入するルールになっていますが、年金制度改正法によって、図表の赤字部分「1.厚生年金保険の被保険者数」「3.賃金」にメスが入ることになりました。

パート等の被保険者要件

「1.厚生年金保険の被保険者数」については、現状は常時50人超の被保険者を雇用する会社が対象になっていますが、

10年かけて段階的に縮小・撤廃され、2035年10月以降は全ての会社が対象になる

ことになりました。

厚生年金保険の被保険者数

「3.賃金」については現状、月額8.8万円以上の賃金要件が定められていますが、

年金制度改正法の公布日(2025年6月20日)から3年以内に、この賃金要件は撤廃される

ことになりました。

賃金

この他、個人事業所の適用対象の拡大なども予定されているので、厚生労働省ウェブサイトで確認しておきましょう。

■厚生労働省「社会保険の加入対象の拡大について」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000147284_00021.html

社会保険の適用拡大によって、社内では社会保険料の負担を確認する必要が出てくる他、

  • 対象となるパート等に、社会保険料の天引きが発生する旨を説明する
  • パート等が希望する場合、労働条件の見直しを検討する

などの実務が発生します。社会保険の適用拡大は段階的に行われていて、基本的な対応は2024年10月の制度改正時と同じになると思われます。次のコンテンツで、具体的な実務の内容などを紹介しているので、興味のある方はぜひご確認ください。

以上(2025年7月作成)

pj00778
画像:キキセマルオ-Adobe Stock

【事業承継】 弁護士が教える。事業承継で種類株式を活用するメリットと実務

1 事業承継に種類株式を活用する3つのメリット

種類株式とは、

一般的な株式と権利が異なる株式

のことで、次の9種類があります。

種類株式の種類

これらをうまく活用することで安定して事業承継を進めることができます。中小企業の事業承継でよく活用されるのは、

  • 3号:議決権制限株式
  • 5号:取得請求権付株式
  • 6号:取得条項付株式
  • 8号:拒否権付株式

です。具体的な効果は次の通りです。

  • 株式を後継者に贈与した後も、現社長が経営権を持ち続けられる(議決権制限株式、拒否権付株式を活用)
  • 将来の株式分散を防止しつつ、後継者候補に株式を保有させられる(取得条項付株式)
  • 社長の遺族が相続した場合、相続税の資金を捻出できる(取得請求権付株式)

1)株式を後継者に贈与した後も、現社長が経営権を持ち続けるができる

将来の株価上昇が予想される場合、早い時期に株式を後継者に渡した方が税務上有利です。とはいえ、後継者がまだ若いなどの理由で、株式は渡せても、経営は任せられないケースがあります。

このようなケースで場合に活用できるのが議決権制限株式です。例えば、社長が100%の株式を保有している状態から後継者に90%の株式を渡すと、通常、会社の支配権を渡すことになります。

株式贈与後の支配関係

これでは困るので、議決権制限株式を活用し、後継者に渡す全株式を無議決権株式にすれば、

後継者は90%の株式を所有するが、株主総会で議決権は行使できない

状態になります。後継者は議決権を行使できないので、X社の株主総会を開催する際に後継者を招集する必要もありません。

また、拒否権付株式を活用して、完全には経営権を渡さずに後継者に株式を渡すこともできます。後継者に渡す株式ではなく、社長が保有する株式を拒否権付株式に変更すると、

事前に取り決めた重要項目については、株主総会だけでは決定できない

状態にすることができます。

2)将来の株式分散を防止しつつ、後継者候補に株式を保有させられる

後継者候補の役員に、「経営者の立場から業務に従事して欲しい」という思いから株式を保有させるケースがあります。しかし、何も対策をしていないと、役員が退任・退職したときに株式を会社に戻してもらえない事態に陥ります。

例えば、資本金が1000万円、純資産が1億円の会社が、役員に10%の株式を100万円で保有させたとします。10年後、その会社の純資産が10億円に増加したら、役員が保有している株式の価値も1億円(純資産が10億円の会社の10%の権利)に増加します。そして、役員が退任・退職する際、100万円で保有させた株式を1億円で買い戻すことになります。これでは資金繰りが大変ですし、買い戻しができなければ株式が分散してしまいます。

このようなケースで活用できるのが取得条項付株式です。取得条項付株式であれば、

一定の事由が生じた場合には、会社が強制的に株主から株式を買い戻す

ことができます。

例えば、役員が退任・退職する場合には、X社が株式を一定の金額で強制的に買い戻すことができるように定めます。こうして買い戻した株式を、次の世代の役員に保有させることで、株式を循環して保有する仕組みを作ることもできます。

役員に株式を保有させた場合の支配関係

3)社長の遺族が相続した場合、相続税の資金を捻出できる

非上場会社における事業承継の課題は、

社長が死亡(急逝)したときに、その遺族が納税資金の確保に苦労する

ことです。通常、非上場会社の株式の買い手はいません。遺族が相続した株式を会社に買い取って欲しいと要望しても、会社も社長の死亡で混乱していたり、買取資金が確保できなかったりという理由から、これに応じられないケースがあります。

このようなケースで活用できるのが取得請求権付株式です。この株式は、

株主が会社に株式の買い取りを請求する

ことができるので、遺族は相続税の納税資金を確保しやすくなります。

なお、会社から株式の買取資金を受け取る場合、配当金を受け取ったとみなされ(みなし配当)、その他の所得と合算して総合課税となります。ただし、相続により株式を取得した場合、相続後3年10カ月の期間内に会社に株式を買い取らせると、

みなし配当の特例(会社から受け取る譲渡代金を20%の譲渡所得税で精算できる)

が活用できます。さらに、納税した相続税については株式の譲渡所得を計算する際に経費にできます。その結果、株式を会社に買い取らせる際に家族にかかる所得税の実効税率は10%半ばほどになるケースもあり、非常に有利な税率で会社の資金を相続人に移転することができます。

2 種類株式の発行手続き

種類株式の発行については、

  • 新たに種類株式を発行する場合
  • 既存の株式を種類株式に変更する場合

といったケースがあるので以下で説明します。なお、いずれの場合も、種類株式の種類や会社の組織形態によって定款の変更内容や決議項目などの詳細が異なります。そのため、実施の際は弁護士など専門家に相談しながら進めましょう。

1)新たに種類株式を発行する場合

新たに種類株式を発行する場合は、定款の変更(種類株式の発行に関する一定の項目を追加・変更する)に関する株主総会での特別決議が必要です。株主総会の特別決議とは、株主の議決権の50%超(3分の1以上の割合を定款で定めた場合にあっては、その割合以上)を保有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要な決議です。

種類株式を発行するための基本的な手続きは次の通りです。

  • 株主総会の招集
  • 株主総会の特別決議(取得条項付株式の場合は、株主全員の同意が必要)にて、定款の変更を決定
  • 株主総会の特別決議にて、株式発行に係る募集要項の決定
  • 募集要項などの通知
  • 申込者の中から、割り当てる者と株式数などを決定
  • 募集株式を割り当てられた者の引き受けと、株式金額の払い込み
  • 種類株式の発行
  • 登記(変更後の定款に関する登記は上記2.の日から2週間以内、発行可能株式総数や発行する種類株式などに関する登記は上記5.の日から2週間以内)

2)既存の株式を種類株式に変更する場合

既存の株式を種類株式に変更する場合も定款の変更に関する株主総会での特別決議が必要です。

既存の株式を種類株式に変更するための基本的な手続きは次の通りです。

  • 上記1.~2に同じ
  • 全株主の同意により、既存株式から種類株式に変更
  • 上記8.に同じ

3 みなし配当の特例の注意点

種類株式を発行する際、とても重要になるのが定款の変更内容です。例えば、拒否権付株式を発行する場合、拒否権付株式を保有する株主による「種類株主総会」で決定が必要な事項を定めなければなりません。もし、すべての決議について拒否権を持つようにしたいなら、

株主総会および取締役会の決議事項については、法令で定める決議機関による決議に加えて、種類株主総会の決議を要する

などと定めます。どの範囲で種類株主総会の決議を要すると定めるかで、拒否権の範囲が決まります。どの程度の権限を先代経営者に留保するか検討して、定款の定めることが重要です。

実際の交付手続きも複雑なケースが多いので、弁護士などの専門家とこまめに連携しながら進めるようにしましょう。

以上(2025年7月作成)
(執筆 日比谷タックス&ロー弁護士法人 代表弁護士 福崎剛志)

pj30203
画像:Mariko Mitsuda

徳島県主催のマカオ・香港 経済視察ミッションに板東頭取が団長として参加しました

令和7年4月23日~同26日、板東頭取を団長として、徳島県主催「経済ミッションinマカオ・香港」が組成・実施されました。
ミッション団には28社・団体から46名が参加され、マカオの現地経済の視察やIR(統合型リゾート)企業とのディスカッション、香港での現地バイヤーを招聘しての徳島県産品商談会などが開催されました。
香港はアジア屈指の自由貿易港であり、マカオもIRを中心に経済的に発展を遂げていることから、いずれの地域もアジア地域では重要な市場と考えられます。当該市場の成長を取込むべく、弊行板東頭取・後藤田徳島県知事がトップセールスを実施、今後の徳島県産品の輸出等につながる糸口を獲得することができました!

マカオ IR企業:Galaxy Entertainment Groupとの意見交換

マカオ:DON DON DONKI(PPIH社)視察

マカオ 日本産食材卸売事業者との商談、澳門日本人商会との懇親会

徳島県産品商談会風景@香港リーガルカオルーンホテル

三井物産(香港)有限公司との意見交換

当行では取引先企業さまの海外展開を幅広く支援しております。香港・マカオをはじめとする海外への輸出や進出等を検討される際にはぜひお声がけくださいませ!!

以上(2025年7月作成)

在職老齢年金の支給停止調整額が「62万円」に!?

2025年6月13日、「社会経済の変化を踏まえた年金制度の機能強化のための国民年金法等の一部を改正する等の法律(年金制度改正法)」が国会で成立し、「在職老齢年金」が改正されることになりました。

在職老齢年金とは、

働きながら老齢年金をもらうと、年金額がカットされることがあるという制度

です。厚生年金保険に加入しながら老齢年金をもらう60歳以上の社員が対象で、賃金と年金の合計額が「支給停止調整額」というボーダーラインを超えると、十分な収入があるとみなされ、老齢年金の一部または全額が支給停止となる仕組みです。

平均寿命・健康寿命が延びる中で、「せっかく働いても年金が減ってしまうは困る」という声が、高齢者や高齢者を雇用する会社から多く寄せられ、

2026年4月から、ボーダーラインである支給停止調整額が「51万円→62万円」

に引き上げられることになりました。簡単に言うと、

  • 賃金(ボーナスを含む年収の1/12)と、老齢厚生年金の合計額が月62万円以下の場合、老齢年金は全額支給される
  • 合計額が月62万円を超える場合、超えた分の1/2の額が年金から差し引かれる

という仕組みになります。なお、支給停止を受けるのは老齢年金のうち老齢厚生年金(厚生年金保険)だけで、老齢基礎年金(国民年金)は対象になりません。具体的には次のようなイメージです(図表の「50万円」は2024年度の金額です)。

在職老齢年金制度の見直し

例えば、上の図を見てください。賃金(ボーナスを含む年収の1/12)が45万円、厚生年金が10万円の方の場合、

賃金45万円+厚生年金10万円=55万円

です。支給停止のラインが50万円の場合、支給停止のラインが50万円のため、超過分5万円(55万円ー50万円)の半額、2万5000円が支給停止となりますが、2026年4月以降は、

支給停止調整額が62万円となるため、従来停止されていた2万5000円も支給される

というわけです。

次のコンテンツで、在職老齢年金の他、年金制度の基本をまとめているので、興味のある方はぜひご確認ください(内容は2024年7月時点のものになります)。

以上(2025年7月作成)

pj00774
画像:beeboys-Adobe Stock