中小企業も本気の女性活用。2022年度から始まる行動計画とは

書いてあること

  • 主な読者:社員101人以上の会社の経営者
  • 課題:女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」の策定義務が生じる
  • 解決策:女性活躍は経営者と現場のギャップが生じがちなので注意。計画の策定・実行で助成金の対象となるので受給を検討する

1 2022年4月1日より「行動計画」に関する義務の対象が拡大

女性活躍推進法に基づく「一般事業主行動計画」(以下「行動計画」)とは、

会社が女性の活躍に関する課題を解決するための計画であり、社員数が常時301人以上の会社に策定などが義務付けられている

状況です。これが、

2022年4月1日より、社員数が常時101人以上の会社にも義務付けられる

ことになります。

経営者は「当社では女性が十分に活躍している」と思っていても、実際は、

  • 育児休業から復帰した女性へのサポートが不十分で、その後のキャリアが限定される
  • 女性の管理職登用に注力しているが、そもそも管理職に与えられている権限が小さい

といったケースがあります。行動計画を策定する場合、その過程で「採用者に占める女性の割合」「管理職に占める女性の割合」などを確認するので、こうした課題が明らかになる可能性があります。また、行動計画を策定すると、一定の要件を満たすことで、

  • 最大60万円の「両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)」を受給できる
  • 会社PRなどに使える「えるぼし認定」「プラチナえるぼし認定」を取得できる

といったメリットがあります。

2 まずは行動計画の策定などの全体像を押さえよう

2022年4月1日より、社員数が常時101人以上の会社に義務付けられるのは、

  • 行動計画の策定・届け出
  • 女性の活躍に関する情報公表

です。

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「1.行動計画の策定・届け出」「2.女性の活躍に関する情報公表」に違反しても罰則はありませんが、次のペナルティーを受けることがあります。

都道府県労働局からの報告徴収、助言、指導、勧告、会社名の公表

ここから先は、「1.行動計画の策定・届け出」の「(ステップ1)自社の女性の活躍に関する状況把握、課題分析」に焦点を当てて、ポイントを紹介します。行動計画の策定例、届け出の様式、女性の活躍に関する情報公表のイメージなどについては、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html
■厚生労働省「女性の活躍推進企業データベース」■
http://positive-ryouritsu.mhlw.go.jp/positivedb/
■厚生労働省東京労働局「【労働者数101人以上~300人以下の事業主の皆様へ】令和4年4月1日改正女性活躍推進法の義務化について ≪NEW≫」■
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/hourei_seido_tetsuzuki/kinto2/joseikatsuyaku300ika.html

3 女性の活躍に関する課題を明らかにする

1)「基礎項目」と「選択項目」を押さえる

女性の活躍に関する状況を把握する場合、まずは「基礎項目」の状況を全て調査し、次に「選択項目」の状況を可能な限り調査します。

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2)数値だけではなく本質も見る

把握した状況を基に自社の課題を分析し、解決のためのアプローチを行動計画に落とし込みます。厚生労働省東京労働局では、状況把握の結果に応じた数値改善のアプローチ例として、次のようなものを紹介しています。

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基本的には基礎項目と選択項目のうち、数値が低い項目に注目することになりますが、注意しなければならないのは、

「数値が低い項目=解決すべき課題」とは限らない

ことです。例えば、管理職に占める女性の割合が低い場合、

そもそも管理職になることが、本当に女性の活躍につながるのか

という問題があります。中小企業では個々の社員一人一人の裁量が大きいため、管理職がマネジメントできる範囲が限られます。つまり、「管理職になったら女性が活躍できる」とは言いにくく、管理職の権限を見直すことが先決となります。

こうした課題を見つけるには、

経営者自身が「女性が活躍しているとは、どのような状態なのか」を掘り下げる

ことが重要です。活躍のイメージは、

  • 新しい仕事に積極的に挑戦する女性が多い
  • 育児休業や時短勤務などの両立支援制度を、積極的に利用する女性が多い
  • 特別な成果などを上げるわけではないが、活気にあふれている女性が多い

などさまざま考えられます。

3)解決のためのアプローチに注意する

解決のためのアプローチも慎重に判断します。例えば、女性の育児休業取得率を高めたい場合、育児休業取得率が低い理由によってアプローチが異なります。

  • 管理職の理解が乏しい:マタニティーハラスメント研修などを受講させる
  • 長期休業が取得しにくい:多能工化を進めつつ、業務委託なども利用する
  • 復帰に不安を覚える:休業中、定期的に仕事に関する情報を共有する
  • 復帰後の両立支援が不安:時短勤務など自社の両立支援制度を再度周知する

この辺りは、社内アンケートなどで、

自社の仕事や両立支援制度で改善が必要だと思う項目は何ですか(理由も)

といった質問を、女性にぶつけてみるとよいでしょう。

4 行動計画を策定・実行すると助成金の対象になる

1)両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)

両立支援等助成金(女性活躍加速化コース)とは、

  • 社員数が常時300人以下の会社が、行動計画に盛り込んだ取組内容を実施し、3年以内に数値目標を達成した場合、
  • 47万5000円(生産性に関する要件を満たした場合は60万円)が支給される

というものです。申請先は管轄の都道府県労働局で、支給は1社につき1回限りです。詳細はこちらをご確認ください。

■厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内(両立支援等助成金)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/shokuba_kosodate/ryouritsu01/index.html

2)えるぼし認定・プラチナえるぼし認定

「えるぼし認定」は女性の活躍が推進されている証しといえます。行動計画の策定・届け出、女性の活躍に関する情報公表を行った会社は、えるぼし認定の申請ができます。取得のメリットは次の通りです。

  • 自社のウェブサイトや商品などに認定マークを貼布してPRできる
  • 公共調達で加点評価を受けられる
  • 日本政策金融公庫「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」を、通常より低金利で利用できる

えるぼし認定は3段階に分かれています。また、えるぼし認定を取得した会社のうち、「女性の活躍推進に関する状況が優良である」など一定の要件を満たした会社は、さらに上位の「プラチナえるぼし認定」を取得できます。

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えるぼし認定・プラチナえるぼし認定の詳細は、こちらをご確認ください。

■厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000091025.html

以上(2021年11月)

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画像:peshkova-Adobe Stock

薄暮時間帯の運転(2021/11号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

日没前後の時間帯は薄暮時間帯※と言われ、交通事故のリスクが高まる時間帯です。

特に11~12月は、薄暮時間帯と多くの人の帰社時間や帰宅時間が重なり、交通事故のリスクもさらに高まるため、自動車の運転にはより一層の注意が必要です。

この時間帯の交通事故を防ぐため、薄暮時間帯のリスクとドライバーの注意点をご紹介します。

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※季節や地域によって差はありますが、一般には「夕暮れ時」や「たそがれ時」などと呼ばれる時間帯であり、警察庁では、日没時刻の前後1時間を「薄暮時間帯」としています。

1.重大事故の発生状況

(1)死亡事故が多い時間帯

死亡事故は、17時台から19時台に多く発生しています。薄暮時間帯の死亡事故件数は、7月から増加傾向となり11月~12月に最も多くなっています。

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(2)薄暮時間帯の死亡事故

死亡事故の当事者別では「自動車対歩行者」の事故が多く、薄暮時間帯は顕著になっています。 その事故類型別をみると「横断中」が約9割を占めています。

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※出典:警察庁Webサイト「薄暮時間帯における交通事故防止」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/hakubo.html
 (2021.10.5 閲覧)から当社作成

2.薄暮時間帯のリスク

薄暮時間帯は交通量が増す分、昼間よりリスクが高くなります。運転する際には以下のような点に注意が必要です。

(1)交通ルールを守らない歩行者等の増加

帰宅ラッシュ等での交通量の増加に伴い、信号無視、横断歩道付近の横断、自動車の直前直後横断、ながらスマホ、無灯火の自転車などと遭遇するかもしれません。

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(2)歩行者や自転車に気づきにくくなる

薄暮では周囲のコントラストがなくなり、景色全体が暗くなるため視力が低下します。また、これから冬に向けて黒っぽい服装※が多くなり、歩行者や自転車に気づきにくくなります。

※「赤色や緑色・茶色・黒色」は全部黒っぽく見えて、暗がりに隠れてしまいます。

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(3)一日の疲れ・油断からの漫然運転

薄暮時間帯は、一日の疲れが出たり、また会社や自宅付近の運転では油断が生じやすくなります。集中力や注意力が低下した運転は、急な「飛び出し」などへの反応が遅れ、非常に危険です。

3.運転の注意点

(1)横断歩道に関するルールの遵守

横断歩道に歩行者がいる場合は、横断歩道の直前で一時停止し、その通行を妨げないようにしましょう。

路面に「ダイヤマーク」がある場合、速度を落として運転しましょう。

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(2)早めのヘッドライト点灯

視界を確保するため、また、他の車や歩行者に自分の車の存在を知らせるため、早めに点灯しましょう。日没の30分より前を目安に点灯するのが、早期点灯のタイミングです。

暗い道を走行する際は、ハイビームを上手に使って歩行者等の早期発見に努めましょう。

(3)危険を予測した慎重な運転

運転への集中を絶やさないように努めるとともに、「見えにくいところに歩行者や自転車が隠れているかもしれない」「自動車に気づかず歩行者や自転車が突然横断してくるかもしれない」といった危険を予測して、慎重に運転しましょう。

以上(2021年11月)

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画像:amanaimages

【朝礼】「進化圧」を感じ、「ゼロリスク」信仰と決別しよう

新型コロナウイルス感染症の影響で、この1~2年のうちに、10年分のデジタル化が進んだといわれます。この変化がさらに続くことは間違いなく、私たちは次の世界を見据えて進化しなければなりません。私たちが進化するために必要なこととして、「進化圧」を感じ、「ゼロリスク」信仰と決別することについてお話しします。

さて、いまやデジタル化の代名詞となっているのが、DX(デジタルトランスフォーメーション)です。しかし、DXは抽象的で分かりにくい面があり、多くの会社はペーパーレス化という、身近で具体的な課題をDXとして取り組んでいます。

こうした話のときに出てくるのが、「ペーパーレスはDXではない!」「ペーパーレス化の先の目的は何だ?」と批評する人です。こうした人は、ペーパーレス化をばかにしたり、非協力的な姿勢を示したりして組織の足を引っ張りますが、当の本人もDXを定義できているわけではなく、「DXなのだから、何か壮大なことをしなければならない」と漠然と考えているだけです。

当社はどうでしょうか。今から10年ほど前、当社はコスト削減の一環として、まさにペーパーレス化を掲げました。しかし、ちまちまとした取り組みは定着せず、全く結果が出ませんでした。

しかし今は、リモートワークを進めた結果、95%以上のペーパーレス化が達成されています。リモートワークを実施する際、ペーパーレス化はほとんど意識していませんでした。

そう、私たちは働き方を変えただけです。「新しい働き方をしなければ生き残れない」という強烈な危機感にかられて、行動を起こしただけのことなのです。

生物学の世界には、「進化圧」という言葉があります。簡単にいうと、「生物は環境に適合しなければ生き残れない。だから進化せよという圧力」のことです。当社がリモートワークを掲げたのはコロナ前でしたが、コロナによって一気に進化圧が強まりました。急激な変化は、捉え方によっては変わろうとする者の背中を押すのです。

生物は自然界の変化に対応するために体の色を変えたり、木に登れるようになったりします。当社に置き換えると、私たちはリモートワークにフィットした組織に進化しました。しかし、まだまだ道半ばです。DXは私たちが生き残る可能性の一つにすぎず、私たちには強い進化圧がかかり続けているのです。

「なるほど、では行動しよう!」と思うわけですが、そのときに出てくるのが「ゼロリスク」信仰です。リスクがゼロにならないと決められない、動けないという、日本人にありがちな思考ですが、リスクはゼロになりません。自然界ならとっくに捕食者に食べられてしまう姿勢です。

コロナやDXは今の話題であり、数カ月後は別のものになっているかもしれません。ただ一ついえるのは、リスクをとって変わらなければ、新しい可能性も生まれないということです。

以上(2021年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

カネがなく、チームは弱い。それでも利益を出す仕組み作り/千葉ロッテを黒字転換させた前球団社長の組織再建術(前)

1 創業以来50年続いた赤字会社を5年で黒字に転換

創業以来、50年にわたって赤字の連続。新たに投資するための資金も不足し、現有戦力は弱小で補強もままならず、顧客基盤も不安定――。そんな会社が、新社長を迎えて5年目に黒字転換を果たしました。その会社の名前は、千葉ロッテマリーンズ。ご存じの通り、プロ野球の球団を運営する会社です。

この記事では、オーナー会社からの資金の補填に安住していた組織の仕組みを変え、社員の意識を変えた前球団社長・山室晋也氏へのインタビューを通じて見える、組織再建の秘訣を紹介します。

前編となる今回は、お金がなく、チームは弱く、新たな投資も戦力補強もできない中で作り上げた、利益を出すための仕組み作りについてのインタビューです。

2 「どうしようもない」財務状況からの出発

大手銀行の子会社で社長をしていた私が千葉ロッテマリーンズ(以下「千葉ロッテ」)の社長に就任したのは、2014年1月のことでした。高校・大学・社会人とラグビーをやっていた私は、球団社長になるまで、特に野球に深い思い入れがあるわけでもありませんでした。

縁あって社長に就任することになりましたが、最初に財務諸表を見て抱いた感想は、「どうしようもないな」というものでした。1969年の「ロッテオリオンズ」誕生以来、赤字の連続。近年は毎年20億~30億円もの赤字を垂れ流し、オーナーであるロッテホールディングス(以下「ロッテHD」)が広告費として補填することが常態化していました。その状況を変えるには、この会社を自立させることが必要だと感じました。つまり、オーナーではなく、ファンやスポンサーにしっかり向き合うビジネスに転換させることが必要だと考えたのです。

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3 全社員の生の声を聞くことで課題が見えてくる

私が社長に就任する際、オーナーであるロッテHDからは、次の3つの指令を受けました。

  • 年間の赤字を12億円程度に削減する
  • チームを強くする
  • ロッテブランドを高める

3つの指令を遂行すべく、社長に就任して私が最初にやったことは、60~70人の正社員全員に対するヒアリングでした。現場の人たちが、職場の雰囲気をどう感じ、会社についてどう考えているのか、困っていることはないか、などについて把握することから始めました。

事前にヒアリングシートを配り、回答してもらった上でヒアリングを行います。ヒアリングシートには、会社全体と自分の部署のそれぞれについて、次の項目を記載してもらいました。

  • 良い点
  • 改善すべき点
  • 提案(意見、展望)
  • 自分の夢、目指す社員像
  • その他(自由記入欄)

ヒアリングは1人当たり30分ほどかけて行い、ヒアリングの後も、部署ごとのショートミーティングを1、2週間に1回程度続けました。

全社員へのヒアリングで見えてきた千葉ロッテの課題は、次のようなものでした。

  • そもそもお金がない
  • 集客のためには積極的な選手補強などによるチーム力の強化が必要
  • ファン拡大のための投資が必要
  • どの部門も社員数が不足しており、疲弊している
  • 球場の立地や設備に問題がある
  • ファン、スポンサー、地域・行政など、あらゆるステークホルダーとの信頼関係の構築が必要

こうした見えてきた課題を基に、千葉ロッテを再建するための優先順位を決めました。

4 再建のための優先順位を決める

私には3つの指令が与えられていましたが、千葉ロッテを再建するには、限られた資金や人的資源などを効率的に動かすために、優先順位を決める必要がありました。これは経営者として重要な仕事だと思っています。原則通りに、ROI(投資利益率)の高いものから、次のように優先順位を決めました。

  • 売り上げを伸ばす
  • 得た資金で最も投資効果の高い分野(集客やファンの増加)に投資して収益を増やす
  • さらに増えた資金をチーム力強化とファンの満足度向上に充てる

会社を再建する場合、まずはコスト削減を第一に考える人も少なくないと思います。ですが、特に中小企業では、コスト削減に注力しても効果はたかが知れています。特に球団経営の場合、広告収入の粗利益率は80%以上、チケット収入の粗利益率は85%以上という特徴があります。売り上げを伸ばすほうが、はるかにROIにインパクトがあるのです。

また、プロスポーツの場合、チーム力を強化して人気選手を集めれば集客力も増すと思われがちですが、お金をかけて良い選手を集めれば必ず勝てるほどスポーツは簡単ではありませんし、そこが面白いところでもあります。

私たちにはチームの強さはコントロールできないので、チームの強さと集客力・経営状況は切り離して考えるべきです。「チームが弱いから赤字になっている」というのは危険な考え方です。これは、「景気が悪いから赤字になっている」というのと同じ論理かもしれません。自分たちがコントロールできる部分で、ファンやスポンサーのためにできることはあります。そこに注力することで、弱くても稼げる会社作りを目指すべきです。どんなにチーム力を強化しても、6球団の中には1位から6位までの「勝者」と「敗者」が生まれます。ですが、球団経営では6球団全てが黒字という「勝者」になることが可能です。

5 スポンサーへの営業強化で売り上げ10億円アップ

千葉ロッテ再建の第一歩は、売り上げを伸ばすことから始めました。球団経営で売り上げを伸ばすポイントは、スポンサー収入、チケット収入、放映権の3つです。中でもスポンサー収入は単価が高く、最も即効性があるので、スポンサーへの営業の強化を最優先課題としました。

1)商売の原理原則「自分を安売りしない」「フェアな交渉を行う」を徹底

まず行ったのは、私が社長に就任する前までの旧弊の改革です。従来は売り上げ目標も広告費のルールもなかったため、「看板が空白にさえならなければいい」と、スポンサーごとに営業部の裁量による値引きが横行していました。そこで、売り上げ目標を設定するとともに、広告の種類ごとの価格を明確に定めました。これは、「自分を安売りしない」「フェアな交渉を行う」という商売の原理原則に即したものです。

2)選手の協力を得てスポンサーに明確なメリットを提示

その一方で、スポンサーには明確な2つのメリットを提示することにしました。いずれも選手の協力を得て実現したものです。1つは、選手と会えたり話せたりすることです。シーズン終了後の11月に選手とスポンサーとのゴルフコンペを開催し、選手がスポンサーの幹部とともにゴルフコースを回ってもらうことにしました。また、シーズン前にはスポンサーを集めた「出陣式」を行い、選手がスポンサーの幹部のテーブルまで行ってシーズンの抱負などを語る機会を設けました。

もう1つのスポンサーのメリットは、地元でのイメージアップになるということです。選手に介護施設や学校の訪問などの社会貢献活動に積極的に協力してもらったり、地元向けのイベントを開催したりして、千葉ロッテが地元の「公器」としての存在価値を高めることで、結果としてスポンサーとなっている会社のイメージアップにつながるというものです。

3)トップセールスも重要

スポンサー収入は最も投資効果の高い課題ですから、社長だった私の稼働時間の中でも、3分の1程度というかなりの部分をスポンサー回りに投入しました。既存のスポンサーだけでなく、銀行で働いていた時代のお客さまも訪問して新規開拓を行いました。

こうした営業努力によって、私が在任した6年の間に、オーナーであるロッテHD以外のスポンサーからの収入を、年間で10億円増やすことができました。

6 集客力を高める投資で収益を改善

スポンサー収入の増加によって経営が安定してきたため、次のステージとして、投資効果の高い課題である集客やファンの増加に取り組みました。チケットの売り上げは全体の売り上げの4分の1ほどですが、来場してくれるファンの数は球団経営の根幹であり、経営基盤の安定につながります。

1)重視すべきは既存の顧客か、新規の顧客か

中小企業にとって、取引の長いお客さまは大切な存在です。ですが、既存顧客への配慮を重視するあまり、新規顧客の獲得を遠慮していては、会社は先細りしてしまいます。

千葉ロッテの課題は、ライトなファン層の開拓でした。従来から「千葉ロッテファンは熱い」と言われており、社員もそのような熱い古参ファンを大事に思ってきました。しかし、会社の経営を考えると、古参ファンを守るか、新規ファンを獲得するか、どちらかに絞って戦略を立てなければ投資効果が薄れてしまいます。

私が選んだのは、新規ファンの獲得でした。しかし、社員の多くは「これまで築き上げてきたマリーンズファン(千葉ロッテファン)の文化を壊してしまう」と反対しました。私は「このまま古参ファンに甘えていてはいけない。大切なのは、ファンの裾野を広げて来場者を増やすことで収益を上げ、チームを強くすることだ。一時的には古参ファンの意向に反しても、古参ファンはいつか必ず分かってくれる」と社員に訴えました。

そして、来場者にユニホームを無料配布したり、「こどもの日」に子供たちに帽子やタオルをあげたりと、応援グッズがたくさんもらえるイベントを増やすことで、イベントデーの来場者数を飛躍的に伸ばすことができました。たとえ最初は無料のグッズが目当てであっても、まずは球場に足を運んでもらい、球場の雰囲気を含めた生のプロ野球の魅力を体感してもらわなければ、新規ファンの獲得はできません。

2)立地の悪さという弱点は諦めて発想を転換

先にも触れましたが、千葉ロッテの課題の1つに、球場の立地があります。本拠地のホームグラウンドは海際にあり、球場を中心に同心円状の商圏を描いても半分は海です。さらに東京駅から球場までは電車で約40分プラス徒歩で約15分かかるため、平日に仕事を終えて観戦するにはアクセスが悪いという致命的な欠点があります。

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そこで私は、思い切った決断をしました。平日に売り上げを求めるのは諦め、土・日に経営資源をフル投入することにしたのです。その代わり、平日は「未来のファン」を生み出す日にしました。地元の千葉県の小学生とその親たちを積極的に球場に招待して、試合観戦や仕事体験などをしてもらうことにしたのです。これは、何歳でスポーツチームのファンになったかという市場調査(小学生までにプロ野球チームのファンになった人が3分の1以上を占めているというアンケート結果もあります)から見ても、理にかなった戦略だと思います。

3)チケット単価を上げる

価格戦略は会社にとって、非常に重要です。サービスの価値に見合った価格を設定し、売り上げを最大化させなければなりません。

千葉ロッテでは従来、球場の座席の価格は、大まかなエリアに分けて設定していました。ですが、同じエリアでも前方と後方とでは見え方が違う、つまり試合観戦という点での価値が異なることもありました。そこで、きめ細かい料金設定を行い、メリハリをつけることにしました。これは、価値があるものを正当に評価してもらうためです。例えば最前列の座席は、クッションの利いた高級なシートに変え、テーブルを付けて足元に荷物入れを設置した「サブマリン・シート」として高価格で売り出すことにしました。

また、従来は記者席だった、バックネット裏という観戦者にとって最高のスペースを、高級ビールやソフトドリンク飲み放題、オードブル食べ放題のVIP席に改装しました。改装費用に7000万円ほどかけましたが、ネーミングライツを販売し、座席が即完売となったことで、2年で投資回収できました。当初は記者からの反発もありましたが、「会社を立て直すためには背に腹は代えられない」と腹をくくり、3階席に移動してもらいました。

黒字に転換した後の2019年には、さらに思い切った施策を行いました。外野席からグラウンドにせり出す形で、「ホームランラグーン」という座席を新設しました。これには、外野手と同じような目線で観戦できる単価の高い座席数を増やすことに加えて、「野球の華」ともいえるホームラン数を増やして試合を面白くするという狙いもありました。他球場と比べたホームランが出る確率の指標を、「ホームランファクター」といいます。2016年から2018年までの千葉ロッテのホームグラウンドでのホームランファクターは、平均の1よりはるかに低い0.72でしたが、ホームランラグーンの設置によって2019年は1.07へと上昇しました。

記者席の移動や、試合結果にも影響するホームランラグーンの設置は、会社としては社内の誰もが良いと感じることですが、外部からの反発や調整の難しさも想定されました。そのため、実現困難だと考えて、提案をためらっていた社員もいたのではないかと思います。そのようなことは、やはりトップが「いいんだ、やるんだ」と提案し、実行すべきだと思います。

ただし、私は基本的に自分からは提案せず、なるべく社員からの発言を待つようにしています。社長の提案には社員も忖度(そんたく)して賛同するので、勘違いして「裸の王様」になってしまいがちです。とはいっても、どうしても「あれをやったらどうだ」というものは、つい出てしまうものですが……。

4)数値化によって20年以上固定していた球場内の飲食店に競争原理を導入

長らく取引していた発注先を変更するのは、中小企業にとっても大きな決断を伴うことでしょう。そのようなときに活用すべきなのが、「数値化による評価」です。

新規のファンの獲得によって高めた集客力を売り上げ増につなげるには、チケット販売だけでなく、飲食物やグッズの販売を無視できません。むしろこちらのほうが経営努力による「伸びしろ」が大きいといえます。

ところが千葉ロッテの場合、私が社長に就任するまで20年以上にわたり、同じ業者が球場内の飲食店を運営していました。それによって「球場の名物」があり、固定ファンがいたのも確かですが、競争原理が働いていないことに疑問を感じました。広く業者を募ることを提案すると、社員からも反発を受けました。

そこで私が行ったのが、「数値化による評価」です。「売り上げ」「オペレーション」「衛生」「接客態度」などの評価項目を作って業者に改善を促し、1年間で基準に達しなかった業者には立ち退いてもらいました。これによって売り上げは飛躍的に伸び、接客サービスも向上しました。「お客さまのために何ができるか」を考えれば、必要な措置だったと思います。

5)ブランド作りとSNSでの発信

オーナーからの指令にもあった、「ロッテブランドを高める」は大きな課題ですが、子会社としてグループ全体のブランディングを行うのは困難ですので、千葉ロッテとしてのブランド価値向上を目指すことにしました。

球団経営の特徴は、ある意味で「商品」ともいえる選手や監督が頻繁に入れ替わることです。会社の旗艦商品を刷新する場合、とても大きな経営判断を伴うでしょうが、プロ野球の場合は看板選手の引退やトレードが少なくありません。それでも変わらずに千葉ロッテというチームを応援したいと思ってもらえる、「これが千葉ロッテマリーンズだ」と誇れるものを見つけるために、社内で自由に話し合いをしました。

そこで挙がったブランド候補を集約した結果、千葉ロッテのブランドを「意外性」「日本一の応援」「突飛なファンサービス」の3つに決めました。

ブランド力を高めてファンを増やすには、メディアへの発信が大切です。しかし、試合結果以外に、チームの特色をメディアを通じて伝えられる機会は多くありません。そこで活用したのがSNSです。選手たちが試合前に円陣を組む姿、勝利後のロッカールームでリラックスして試合を振り返る姿、ドラフト会議の前に意気込むフロントや監督を映した「ドラフト会議舞台裏」など、球団広報が積極的に発信することで、ファンに感情移入してもらえる取り組みを進めました。

6)メディア対策のためにトップとして一肌脱ぐ

SNSでの発信力は高まっていますが、やはりプロスポーツは、「メディアに取り上げられてなんぼ」というビジネス構造であることには変わりません。

いろいろなチャレンジをする中で、メディアからの注目を集めることに成功したのが、「つば九郎(くろう)移籍問題」でした。2014年末にフリーエージェント(以下「FA」)で千葉ロッテから東京ヤクルトスワローズ(以下「東京ヤクルト」)に移籍することになったエースピッチャーの人(鳥)的補償として、私が東京ヤクルトのマスコットキャラクターである「つば九郎」の移籍を要求する緊急記者会見を開いたのです。FA制度の補償の仕組みを知らなかった私のボケから生まれた話なのですが、多くのメディアに取り上げてもらうことができました。さらに、東京ヤクルトから断られた後、東京ヤクルトの遠征時だけつば九郎をレンタルすることを再提案する形で、もう一回記者会見を開くことができました。

世間では私がメディアに出たがっていると勘違いされているようですが、私は本当は出たくもなんともないのに、社員たちから利用されているだけです。頑張って企画している社員から、「社長、これやってください」と頼まれてしまうと、トップとしても、「いや、俺はやめておくよ」というわけにはいかない、というだけです。

ちなみに、つば九郎移籍問題の記者会見では、つば九郎への3年契約の年俸としてロッテのお菓子を提案し、オーナーの人気商品を宣伝することもできました。

これで山室晋也氏インタビューの前編は終わりです。後編では、社員の意識を変えることで組織の再建につなげていった方法についてお伺いしています。熱い内容にご期待ください。

【参考文献】
「経営の正解はすべて社員が知っている」(山室晋也、ポプラ社、2021年2月)

山室晋也(やまむろ しんや)
1960年1月25日、三重県生まれ。エスパルス代表取締役社長。
1982年に立教大学経済学部卒業後、大手銀行に入行。4店の支店長を経て、2011年4月から執行役員。2013年4月、銀行子会社の代表取締役社長に就任。
2013年11月に千葉ロッテマリーンズ顧問に就任し、2014年1月から取締役社長。2019年12月、退任。
2020年1月、清水エスパルスを運営するエスパルス代表取締役社長に就任し、現在に至る。
著書に「経営の正解はすべて社員が知っている」(ポプラ社、2021年2月)。

以上(2021年11月)

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画像:千葉県

職場のハラスメント撲滅月間

1 「いじめ・嫌がらせ」に関する相談件数

都道府県労働局などの総合労働相談コーナーに寄せられる民事上の個別労働紛争の相談内容の中で、「いじめ・嫌がらせ」は9年連続で最多となりました。

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大企業は、令和2年6月にハラスメント防止措置が法律上義務化されていることから、「いじめ・嫌がらせ」ではなく「労働基準法等の違反の疑いがあるもの」として別に計上されおり、過去の相談件数と単純比較はできないものの、件数は高止まりの様相を呈しています。また、相談全体に対する割合もおおむね4分の1を占める状況が続いており、職場におけるハラスメントの防止対策は各企業において喫緊の課題と言えそうです。

2 自主点検の実施

来年4月から中小企業にもパワーハラスメントの防止措置が義務化されることを受けて、東京労働局では、現時点における取り組み状況を確認するための「自主点検票」を作成し、一部の中小企業に対し点検を要請しました。その点検票には、以下の講ずべき措置を10個の項目に区分して記載しています。

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「自主点検票」は、東京労働局のホームページ上でダウンロードが可能となっています。また、取り組みが未了の事項については、参考となる「自主点検解説動画」や資料なども合わせて公開されていますので、準備を始める企業は活用してみてはいかがでしょうか。

東京労働局「パワハラ防止対策(改正労推法)自主点検」ぺージ
https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/news_topics/kyoku_oshirase/_120743/jisyutennkenn.html

3 おわりに

パワーハラスメントの問題に関しては、過日、国内自動車メーカーの男性が自殺した事件で、高裁において、パワーハラスメントや過重労働が自殺の原因として、労災を認める判決を下したことがニュースになりました。同判決では、労災認定の基準として新設された「パワーハラスメント」の項目で審理され、名古屋高裁はその新基準に沿って労災と認定しました。これから何ら対策を講じない「パワーハラスメントの放置」は企業の責任問題にも発展することになります。経営上の重要課題として、職場のハラスメントの撲滅に取り組みましょう。

※本内容は2021年10月14日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

【朝礼】困っているのは、私たち以上にお客さまです!

おはようございます。最近、表情に元気がない人が多いように感じます。確かに、最近は会社の業績も、世の中全体も暗い話題が多いので、気がめいってしまいがちなのは分かります。ですが、暗い顔ばかりしていても仕方ありません。そんなときこそ、私たちが事業を行うことの意味を考えて、原点に立ち返ってみましょう。

今さら言うまでもないことですが、そもそも会社の事業は、お客さまのニーズがあって初めて成り立つものです。利益が出るということは、私たちが提供するサービスに対して、お客さまがそれだけの価値を見いだしていただいているということです。つまり、これまで会社が利益を得てきたのは、私たちが提供するサービスが、お客さまの役に立っていたからです。

では、利益が出ていない今は、私たちの提供するサービスが不要になったということでしょうか? 私は、決してそのようなことはないと思っています。私たちの提供するサービスが陳腐化したわけではなく、また、お客さまのニーズが大きく変化してしまったわけでもありません。ただ、純粋にコロナ禍という外部要因によって、私たちのサービスをお客さまに届けにくくなっているのだと思います。

もちろん、コロナ禍によってお客さまのニーズは変化した部分もありますが、これは意図的な変化ではなく、コロナ禍という制約を受ける中で、やむを得ずニーズが変化しているだけです。

そのように考えると、売り上げや利益が減っている私たちも困っていますが、これまでサービスを利用して満足していただいていたお客さまのほうが、もっとお困りなのではないかと思いませんか?

分かりやすい例えは飲食店です。飲食店側も来店客が減って困っていますが、その裏には、コロナ禍で飲食店に行けずに困っているお客さまが大勢いらっしゃるわけです。ですからお客さまは、飲食店に行けなくなった代替として、飲食物の持ち帰りや宅配サービスを利用されているのです。

私たちの事業も同じです。コロナ禍の制約によってサービスを受けることができなくなった、もしくは受けたいサービスが変化してしまったお客さまに対して、私たちのほうから歩み寄っていかなければなりません。つまり、コロナ禍の制約があってもお客さまがサービスを受けられるような方法を考え、必要であれば新たな代替サービスを提供するようにしなければいけません。

自分本位に物事を考え、ただ売り上げや利益が減って「困った」と言っているだけでは、私たちの存在意義はありません。私たちのサービスをご利用できずに困っているお客さまに寄り添い、改善できる方法を考えましょう。従来と同じやり方にこだわる必要はありません。柔軟に、お客さまにとって何が良いか考えてみましょう。私も知恵を振り絞りますので、皆さんも良いアイデアが浮かんだらぜひ提案してください。

以上(2021年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】行き当たりばったりで仕事をしてはいけません

私たちは、日々、スケジュール管理をしながら仕事を進めています。足元の仕事を整理して手順を決めるために、スケジュール管理はとても大切です。しかし、目の前の仕事を整理するだけのスケジュール管理では、今後の成長にはつながりません。個人のスケジュール管理は、会社全体の経営計画と同じといえます。つまり、足元の仕事の進捗は、将来の目標達成につながっていくものなのです。

私は、期首の全体説明会において、当社の経営計画を皆さんにしっかりと示しました。3年の中期経営計画、それを実現するために今年度中にやるべきことをまとめた短期経営計画、そして、詳細な予算計画も明らかにしました。これらの資料を見れば、皆さんは、いつでも3年後の当社の新規事業、クライアント別の収益、コストの内訳、働き方を把握することができます。

さて、当社ではイントラネット上で、私や役員も含む、全社員のスケジュールを誰でも確認できるようにしています。また、スケジュールを登録する際は、月単位や週単位で達成すべき成果も明らかにすることとされています。私はイントラネットに登録されている皆さんのスケジュールを定期的に確認していますが、多くの人は当日分だけ、長い人でも2~3日先までしかスケジュールを登録していません。しかも、登録されているスケジュールは、定時定型業務や営業の訪問予定くらいです。

この状況は、管理職についてもあまり変わりません。登録されているスケジュールは、訪問や来客の予定がほとんどです。管理職ともなれば人と会うことが大事な仕事であり、部下から同行を求められることも多いでしょう。それは分かります。しかし、訪問や来客によってどのような成果を上げようとしているのか、あるいは上げたのかについて一切登録されていないのは残念なことです。

そこで、今朝からスケジュール管理の方法を変えます。これは、皆さんの行動を縛るためではありません。会社の将来に向けて、日々やらなければならない活動とその成果を、皆さん自身がしっかりと把握するためです。

まず、全員が1週間先までのスケジュールと、その1週間で達成したい成果を登録してください。これまで、経営計画と自分のやるべきことをリンクして考えてこなかった人にとって、1週間先までスケジュールを登録するのは難しいはずです。しかし、今、自分は何をすべきかを真剣に考え、少しずつでも登録してください。

特に管理職は、率先して1週間先までのスケジュールと成果を登録してください。自身の活動の成果と反省点は、必ず部下に示しましょう。そして、部下がスケジュールを登録し、成果を上げる活動ができるよう、サポートしてください。

スケジュールとは、私たちが、将来の成長に向かって行動した軌跡を示すものです。そのことを忘れず、前に進んでいきましょう。

以上(2021年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】ストライクゾーンの広げ方

皆さんは、野球の「ストライクゾーン」がどの範囲を指すか知っていますか。簡単に言うと、ストライクゾーンは、打者が自然体でボールを打つことのできる範囲を指します。縦幅の上限は、打者の肩の上部とユニホームのズボン上部との中間点で、下限は膝頭の下部です。この上限と下限の間にあり、なおかつホームベース上にある空間が、ストライクゾーンというわけです。

つまり、ストライクゾーンの縦幅は、打者によって変わるということになります。背の高い打者であれば、ストライクゾーンは広くなるのです。

私はビジネスにおいてもストライクゾーンがあると思っています。対応できる範囲、あるいは得意分野と言い換えてもいいでしょう。

ビジネスにおけるストライクゾーンも、野球と同じように人によって範囲が異なります。野球と違うのは、無限大に広げることができるという点です。野球のストライクゾーンはルールで決められていますが、ビジネスの場合はそうではありません。自分自身の努力や心掛け次第で、いくらでも広げることができるというのが私の考えです。

しかし、最近の皆さんを見ていると、自らストライクゾーンを狭めてしまっているように思えます。これほどもったいないことはありません。

皆さんは、仕事の進め方一つにしても、前例踏襲にこだわり、従来とは違うやり方を「厄介だ」「面倒だ」と頭から否定してはいないでしょうか。それではストライクゾーンは狭いままです。決まった軌道のボールは打てるでしょうが、応用が利かず、できることも増えていきません。

皆さんには、ビジネスにおけるストライクゾーンを広げる努力をしてほしいのですが、そのためには、柔軟性と行動力が必要です。

例えば、お客様や私、上司などから、従来とは違うことをお願いされたときでも、「まずは、やってみる」ようにしてください。前例があるかどうかは全く関係ありません。「できない」と決めてかからず、できる方法を柔軟に考えることです。

ただ、今の知識やノウハウでは足りないことも出てくるはずです。その際には、その分野に詳しい人を探し、連絡を取り、実際に話を聞いてみてください。関連する勉強会に参加してもよいでしょう。こうして行動を起こすことで、ストライクゾーンは広がっていくのです。

また、社内外のさまざまな人と交流していると、「この人はストライクゾーンが広い」と思える人にも出会えます。そうした人には、どのようにして広げているのか、日ごろの行動を聞いて参考にするのもよいでしょう。

どのようなボールが来ても対応できるストライクゾーンの広さは、皆さんの武器になります。今日からぜひ、広げる努力をしてください。

以上(2021年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】去るときは悲しみよりも喜びを

先日、父と母と3人で、あるタレントさんが登場するテレビ番組を見ていました。そのタレントさんは、長年芸能界で活躍している大スターです。今でも面白いトークを展開する方なのですが、最近は高齢のため、滑舌やはつらつさなどは、さすがに昔に比べると衰えてきています。そんなタレントさんを巡って、父と母が軽い口論になりました。

母「この人も年を取ったね。さすがにそろそろ引退したほうがいいんじゃないかしら」

父「ばかなことを言っちゃいけない。衰えても、応援してくれるファンがいる限り、頑張らなきゃいけないのがスターってもんだ」

母「これ以上衰えを見せたら、それこそファンが悲しむでしょう。潮時を見極めるのもスターの務めじゃないの?」

結局、この口論は私が「まぁまぁ」と間に割って入ったことで終わりました。

父と母の口論を振り返ると、父も母も「ファンを悲しませない」という視点に立っていて、私はどちらの言い分も一理あると思いました。だからこそ、仮に自分がこのタレントさんと同じ立場に立った場合、衰えてでも活動を続けるのか、あるいは引退するのか、その選択が非常に難しいと感じました。前者を取れば衰えを気にするファンが、後者を取れば活動継続を希望するファンが、それぞれ悲しむことになるからです。

ただ、そんなことを考えていたとき、私はふと「ファンを悲しませないことだけが、ファンを大切にすることになるのかな」と疑問に思いました。なぜこんな疑問が出てきたかというと、数年前に野球選手を引退したイチロー氏の言葉を思い出したからです。

イチロー氏は引退会見で、「引退に当たって後悔や思い残したことはないか」と質問され、「あんなもの見せられたら後悔などあろうはずがありません」と答えていました。「あんなもの」とは、その日の引退試合での観客の歓声のことです。イチロー氏は、母国の日本で引退試合を行い、多くの日本人の目の前で最後の勇姿を見せてくれました。ファンにとって最高の舞台で、「引退の悲しみを上回るほどの喜び」を与えたイチロー氏の去り際は、実に爽やかでした。

私たちは、一ビジネスパーソンですが、ある意味で「ファン」ともいうべき、大切なお客さまがいます。そして、私たちが会社に属している以上、定年退職や部署異動などによって、いつかお客さまとの別れのときがやって来ます。そんな引退の時期が来たとき、私は、お客さまから「ただ悲しまれるだけ」で引退していくような社員にはなりたくありません。商品やサービスを通じて、引退の悲しみを上回るだけの喜びを与え、「ありがとう」と感謝されながらお別れしてもらえるような、そんな社員になれるように、業務にまい進したいと思います。

以上(2021年10月)

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画像:Mariko Mitsuda

【交渉術】ビジネスに欠かせない交渉の実践テクニック

書いてあること

  • 主な読者:交渉の窓口担当者
  • 課題:関係者間の主張を調整するのが難しい
  • 解決策:交渉の目的や自分の主張を明確にするなど、交渉の準備などをしっかりする

1 交渉の目的はWin-Winの関係を築くこと

交渉の目的は自分の要求を一方的に相手に認めさせることではなく、

双方が主張と譲歩を繰り返しつつ、互いに納得できるWin-Winの妥協点を見いだすこと

です。

例えば、自社が100万円のサービスを80万円に値切った場合、100万円という「パイ」の大きさが変わらなければ、自社が得をした分だけ相手は損をします。これを「ゼロサム・ゲーム」といいます。理想的な交渉は、ゼロサム・ゲームを脱し、何かで損をしても別の何かで得をするように「パイ」を大きくする「プラスサム・ゲーム」に転換することです。

交渉はさまざまなシーンで行われます。特に、ビジネスは社内外を問わず複数の関係者が互いの主張を調整し合いながら進められるので、交渉を避けては通れません。とはいえ、自社の要求を力ずくで認めさせようとすれば、ビジネスはうまくいきません。そのため、主張すべきところは主張し、妥協すべきところは妥協するといった交渉が重要となります。

この記事では、ビジネスに欠かせない交渉の基本を紹介していきます。

2 相手からより大きな譲歩を得るために

1)交渉に勝つために必要な事前準備をする

交渉をしても、一方の主張が全面的に受け入れられることはほとんどありません。そのため、当事者は主張と譲歩を繰り返しながら妥協点を探ります。こちらが譲歩する代わりに相手にも譲歩を求めることになるので、相手からより大きな譲歩を得たほうが交渉の勝者です。

相手から譲歩を得るには、事前準備が必要です。交渉の事前準備は、

  • 交渉の目的を明らかにし、自分の主張を固めること
  • 相手が最も重視している事項について仮説を立てること

です。

2)交渉の目的を明らかにし、自分の主張を固める

多くの交渉担当者は、「交渉の目的や自分の主張は、言うまでもなく明確である」と勘違いしています。例えば、販売部でA社を担当している山田さんの頭の中は次のようなものです。

今回の交渉の目的は、A社に製品を販売すること。他社への販売実績は100万円なので、A社にも100万円で提案する

山田さんが交渉に臨んだところ、A社から次のオファーが出されました。これに対して、山田さんはどのように切り返すことができるでしょうか。恐らく、即答することはできないでしょう。

金額は100万円で結構です。その代わり、納期を半分に短縮してください

山田さんが考えていたのは、交渉の目的は「販売」、主張は「他社と同様に100万円で販売する」ことだけです。これでは、あまりにも準備不足です。少なくとも、次の点は明確にしておきたいものです。

  • 販売金額を含め、納期やアフターサービスなどでどこまで譲歩できるのか?
  • なぜ、他社に対する同規模の取引事例を基準に販売金額を決定したのか?

特に、A社のオファーをどこまで受け入れるのか決めておかなければなりません。初めから譲歩の限界を落としどころに交渉をするわけではありませんが、「80万円までなら値下げする」といったように譲歩の限界が明確でなければなりません。

また、山田さんのように他社への取引事例を基準に条件を設定するケースが多いですが、A社にとっては関係のない話です。他がどうあれ、A社にはA社の条件があります。A社が交渉上手だと、山田さんの主張は逆手に取られ、「うちは、御社が事例として挙げた取引先より大きな取引をするので、値下げをご検討いただけますよね」と切り返されてしまいます。

このように、自分では交渉の材料が準備できているつもりでも、実は交渉の目的が曖昧であったり、主張の根拠が弱かったりすることがあります。上司や同僚にも意見を求めながら、少なくとも次の点は明らかにして交渉に臨みたいものです。

  • 交渉の目的と背景を把握しているか?
  • 最も重視する交渉事項(金額、納期、数量など)は何か?
  • 自分の主張は明確か、またその主張の正当性を証明する根拠はあるか?
  • 自分が譲歩できる限界を決めているか?

3)相手が最も重視している事項について仮説を立てる

「交渉はテーブルに着く前から始まっている」といいます。これは、事前に交渉相手に関する情報を多く入手しているほうが有利になることを示しています。

実際、交渉の場で初めて主張や譲歩の内容を考えることはありません。入念な事前準備の末、いくつかの交渉シナリオを準備し、状況に応じて自社にとって最も有利な方向を目指すことが基本です。そこで、相手の状況について次の点を調べることが重要になります。特に、複数の会社が競合する商談では、商談相手に関する情報を少しでも多く集めるようにします。

  • 交渉相手の主張が適正(不適正)であることを示す客観的な資料はあるか?
  • 交渉相手が最も望んでいる事項について仮説を立てたか?
  • 交渉相手はどのような人柄か?
  • 交渉相手のキーパーソンは誰か、その人は交渉に出席するのか?
  • 交渉相手の出席者の役職と人数は?

4)相手の主張は、相手にとって都合がよい内容である

ある程度、交渉の経験がある人は、交渉が双方の譲歩によって成立することを知っています。そこで、あらかじめ販売価格などに譲歩する分を上乗せしてくることが珍しくありません。例えば、150万円で販売したいところ、200万円を提示して50万円の値引きの余地を残すパターンです。相手がこの作戦に乗り、まんまと180万円で販売できたとします。この場合、

  • 販売側:30万円の利益が上積みされる
  • 購入側:20万円のコスト削減

となります。この例で、販売側が悪いわけではなく、多くのビジネスはこうして決着しています。とにかく注意すべきなのは、相手の主張してくることは、こちらに都合がよさそうなことであっても、実際は相手にとって都合がよいということです。それを見極めるためにも、事前の情報収集が大切なのです。

そうした意味では、仮に購入側が入念な事前準備をして、製品の適正価格は130万円であることを把握していたら、「他社の製品も調べたが200万円は高過ぎる。130万円にしてください」と切り返すことができ、全く違った展開になっていたでしょう。

3 実践で使える交渉テクニック

1)「良い警官」と「悪い警官」

「良い警官」と「悪い警官」は、交渉相手にとって好ましくない主張をする「悪い警官」と、それをなだめて交渉相手にとって好ましい主張をする「良い警官」がチームになって交渉に臨むテクニックです。よくある方法は、上司を「悪い警官」役にすることです。そして、「上司はなかなか値下げを認めませんでしたが、私のほうで何とか説得し、御社に15%引きで販売できるよう社内調整をしました。上司はこれがギリギリで、見積もりの有効期間も1カ月だといっています。これ以上の値下げはできません。ぜひご検討ください」といったように交渉します。

2)譲歩の回数を決め、その幅を小さくしていく

交渉相手に要求されるたびに譲歩をするようではダメなので、あらかじめ譲歩できるラインと譲歩の回数を決めておきます。例えば、値引きは最大10万円まで、譲歩するのは3回と決めた場合、「1回目は6万円、2回目は3万円、3回目は1万円」といったように譲歩の幅を小さくしていきます。これにより、交渉相手は「本当にギリギリなのだな」という印象を持ちます。

3)時間をうまく使う

交渉には期限があります。これをうまく使うことで交渉を有利に進めることができます。まず、頻繁に交渉の機会を設けるなど、交渉相手に多くの時間を使わせます。人は過去の投資をなかなか捨てることができないため、「このように多くの時間を割いて交渉してきたのだから、何とかして成立させたい」と考えがちです。

次に、交渉の期限を切って相手に本気で動いてもらいます。「夏休みの宿題」と同じで、時間に余裕があると、どうしても物事を先送りにしてしまいがちです。そこで、「交渉期限は今月いっぱいです。それまでに明確なご回答がいただけないのであれば、この話は白紙にさせていただきます」といったように、期限を切って交渉相手に差し迫った気分にさせるのです。

4 交渉をしないケース

交渉の勝ち負けは譲歩の大きさで決まりますが、目先の利益だけを考えて交渉するのはよくない場合があります。仮に、交渉相手が厳しい条件を提示してきたとしても、「今、その条件を受け入れるか否か」だけを考えるのではなく、その条件を受け入れることで末長く安定した取引が見込めないかを検討してみるのです。

また、ビジネスはギブ・アンド・テークです。過去、自社に大きな譲歩をしてくれた取引先が、「今回はどうしても譲歩できない。こちらの提案を受け入れてくれないか」とお願いしてきたら、今回はこちらが譲歩する番かもしれません。これも、将来にわたって良好な関係を維持していくために必要なことです。

交渉はビジネスにおいて不可欠であるものの、あえて交渉を避けたほうがよいケースがあることにも留意しなければなりません。

以上(2021年10月)

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