経営効率化を図る「持株会社化」のメリットと具体的な手法を解説

書いてあること

  • 主な読者:持株会社を活用した経営統合を検討している経営者
  • 課題:持株会社化のメリットとデメリット、具体的な手法を知りたい
  • 解決策:現在の組織体制、株主との関係、各事業の好不調に応じて適切な方法を選択する

1 経営の先行きが不透明な中でのグループ経営

持株会社とは、他社の株式の相当割合を保有し、子会社として支配・管理することを主たる事業とする会社で、一般的には、

  • 純粋持株会社:子会社の活動を支配・管理することを主たる事業とする
  • 事業持株会社:子会社の支配・管理を行うだけでなく、自らも何らかの事業を行う

といったように分類されます。本稿では、持株会社が子会社の株式を100%保有して経営統合することを「持株会社化」とします。持株会社化によって、グループ間の役割を分離する、好調な事業への投資をする、不調な事業から徹底するなどの判断がしやすくなります。

持株会社化のメリットとデメリットを整理した上で、具体的な手法として「株式移転」「株式交換」「会社分割」の概要を紹介します。

2 持株会社化の一般的なメリットとデメリット

1)戦略立案と事業遂行を分離した効率化。ただし、運営が複雑になることも?

持株会社化の最大の特徴は、経営戦略と個別事業の分離です。グループ全体の経営戦略を持株会社が担い、個別事業の執行を子会社に委ねることで、権限・責任の明確化とグループ全体の戦略の最適化が図れます。

一方、子会社はグループ全体の方針や意思決定に従うため、この点で経営の自由度は低下します。また、重要な意思決定は、子会社のみならず、持株会社(場合によっては他の子会社)との調整が必要になります。会社法上も、取締役会等の機関は持株会社・各子会社に設置することになり、この点も経営判断の遅れや手続の煩雑化などの原因になります。

2)管理部門の効率化が見込める。ただし、管理体制の整備が不可欠?

子会社に配置すべき人事や総務、法務といった管理部門等を持株会社が包括して担当するなどして、グループ全体の業務を効率化できます。

ただし、グループ全体の管理体制が整っていないとこのメリットは享受できず、逆に混乱を招きます。そのため、管理部門等の重複業務の効率化という視点から、シェアードサービスを提供するなど、最適化を図る必要があるでしょう。

3)各企業が独立できる。ただし、一体感の醸成は困難?

持株会社化で個々の企業を傘下に収めることで、一体的な経営ができます。合併との違いは、企業文化の融合や人事制度の擦り合わせが不要な点です。つまり、個々の企業の個性を生かしつつ、経営の一体化が図れます。こうした特徴を踏まえ、将来の合併を見据えつつ、その前段階として持株会社化を図るケースなどがあります。

半面、グループとしての一体感の醸成を阻害することにもなります。こうした傾向は、意思決定の迅速化や各企業の自主性を重視して権限委譲を進めるほど顕著になりがちです。

4)機動的な事業再編が可能になる。ただし、維持には相応の負担が掛かる?

持株会社化によって、グループ内の事業の再構成を機動的に行えます。例えば、事業の拡大を図るために他社を取り込む場合、持株会社傘下の一事業会社とすることができます。また、不採算事業を切り離すときも、事業ごとに会社を分けておけば、その不採算事業を担当する会社の株式譲渡等を行って事業を切り離すことができます。

一方、持株会社の維持には相応の負担が生じます。純粋持株会社の収益源は子会社から受け取る剰余金の配当、子会社が支払う経営指導料やブランド使用料などに限られてしまいます。事業持株会社には本業の収益がありますが、費用の相当部分は子会社負担が一般的です。

5)税制上のメリットを受けられる

1.グループ法人税制の適用

子会社の株式を100%保有すると、グループ法人税制が強制的に適用されます。詳細は省略しますが、グループ法人税制では、100%グループ内における一定資産の譲渡に関する譲渡損益の繰り延べ、受取配当金の益金不算入、寄附金の損金・益金不算入等が定められています。

2.連結納税の導入

所定の手続をすれば、持株会社化によって法人税の連結納税ができます。連結納税とは、企業グループ内の個々の企業の所得と欠損を通算して法人税を課税する仕組みです。「景気動向の影響を受ける企業と常に安定している企業の損益を通算し、景気後退時の納税額を抑える」ことなどが可能です。

ただし、連結納税制度の適用を受ける際は、一定の要件に該当する連結子法人の繰越欠損金を引き継ぐことができない、子会社が保有する一定の資産については時価評価をする必要があるなどのデメリットもあります。

6)事業承継対策に活用することができる

純粋持株会社化は事業承継対策の面で効果が期待できます。詳細は省略しますが、純粋持株会社の株価評価は、純資産価額法となるため、純粋持株会社化することで株価の評価額を引き下げられる場合があります。また、複数の事業会社がある場合、相続の対象となる株式を純粋持株会社の株式のみにできるので、株式の分散防止や相続時の手続の簡素化などが図れます。

3 「株式移転」による持株会社化

株式移転とは、1または2以上の株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることです。子会社の株主には、持株会社の株式などを交付することで、持株会社の傘下に複数の完全子会社を置くことが可能です。株式移転による持株会社化を「株式移転方式」ということもあります。

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株式移転の特徴は、持株会社(A社)を新設する点であり、持株会社と子会社はいずれも株式会社でなければなりません。また、子会社の株主に株式の対価として交付するものは、持株会社の株式や社債などとされています。一般的には、組織再編税制における適格要件を充足するために、持株会社の株式のみを交付することが多いようです。組織再編税制における適格要件は、1.完全支配関係内(100%グループ内)の組織再編、2.支配関係内(50%グループ内)の組織再編、3.共同事業を形成するための組織再編でそれぞれ異なります。しかし、いずれの場合であっても、対価要件(株式移転等の対価として、移転後の持株会社の株式等以外の資産が交付されないこと)が課されています。

これに加え、1.と2.の場合においては従前の支配関係継続が要件となります。また、2.と3.の場合には事業継続と従業者の引き継ぎ(おおむね80%)も要件となり、3.の場合はさらに事業の関連性、発行済株式の80%以上の継続保有、事業規模5倍以内または特定役員の継続就任が要件となります。

株主・債権者への対応としては、子会社の反対株主の株式買取請求権が認められています。

一方、債権者保護手続については、特定のケースに限定されています。債権者保護手続とは、合併などを行う場合、債権者に対して事前にその旨を知らせ、異議を述べる機会を設ける手続です。異議申立のあった債権者に対しては弁済などの措置を取らなければなりません。株式移転における債権者保護の対象は、交付される持株会社の新株予約権が、新株予約権付社債に付された新株予約権である場合の、新株予約権付社債権者に限られます。

4 「株式交換」による持株会社化

株式交換とは、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社または合同会社に取得させることです。株式交換は、株式移転と同様、持株会社の100%子会社化により持株会社化を図るための方法です。株式移転と違うのは、持株会社は既存の会社であることです。株式交換は、主に事業持株会社化をするときに利用されます。

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子会社の株主に株式の対価として交付するものは、株式や社債などに限定されておらず、現金を交付することができます。ただし、組織再編成税制における適格要件の1つに、持株会社の株式のみとする旨が定められているのは株式移転と同じです。

株主・債権者への対応としては、株式移転と同様、子会社の反対株主の株式買取請求権が認められているだけでなく、持株会社の反対株主の株式買取請求権も認められています。

一方、債権者保護手続については、株式移転と同様、子会社の新株予約権付社債権者に対して必要である他、子会社の株主に株式移転の対価として持株会社の株式等以外の財産(現金等)を交付する場合は、持株会社の既存の債権者に対しても必要となります。

5 「会社分割」による持株会社化

会社分割とは、株式会社または合同会社が事業に関して有する権利義務の全部または一部を、分割後に他の会社に承継させる手続です。会社分割には、

  • 新設分割:事業に関して有する権利義務を新たに設立する新設会社に承継させる
  • 吸収分割:事業に関して有する権利義務を既存の承継会社に承継させる

といった手法があります。「新設分割」は、複数の事業部門を有する会社を事業部門ごとに分社化して独立採算制とする(カンパニー制)場合などに使われます。一方、「吸収分割」は、グループ会社において実質的に重複する事業を行っているケースなどにおいて、1つの会社に同一事業を集中して経営効率を上げる場合などに使われます。

会社分割では、純粋持株会社を創設させるための方法として「抜け殻方式」と呼ばれる方法があります。抜け殻方式とは、事業に関する権利義務の全部を他の会社に承継させて、親会社はグループ統括のみを行うようにする方式です。

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会社分割には、会社の一部の事業を切り分けて分社化する際に煩雑な手続を回避できるという大きなメリットがあります。

会社の一部の事業を他の会社に譲渡する方法には「事業譲渡」もあります。しかし、事業の包括承継ではないため、譲渡する事業に係る契約を全て個別に結び直す必要があります。債務も当然には承継されないため、個別の債権者の同意が必要です。これに対して、会社分割は事業を包括承継できるため、事業に関する契約は当然に引き継がれますし、個別の債権者の同意も不要です。また、事業承継の対価として必ずしも資金を用意する必要はなく、株式を割り当てることができます。

以上(2021年3月)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 平田圭)

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【文例付き】渋沢栄一、豊臣秀吉の「名言」を使った若手社員に向けたスピーチ

書いてあること

  • 主な読者:朝礼などで若手社員に期待することを伝えたい経営者
  • 課題:若手社員は「失敗」や「目立つこと」を極度に嫌がるとの調査結果もあり、意識のギャップがある
  • 解決策:若手社員の傾向に配慮しつつ、先達の名言なども引用して伝えていく

1 「失敗」や「目立つこと」を極度に嫌がる令和の新入社員

清少納言や吉田兼好も随筆でこぼしていた、「最近の若者は……」という愚痴。世代間に意識のギャップがあるのは、いつの時代にも共通した人類の永遠のテーマなのかもしれません。とはいえ、若者は会社の未来を担う重要な存在。経営者の熱い思いを伝え、一緒に会社の未来を作っていきたいものです。そのためには、まずは若手社員との意識のギャップがあることを知っておくことが大切です。

日本能率協会マネジメントセンターが2020年11月に公表した「イマドキ若手社員の仕事に対する意識調査2020」(以下「若手社員の意識調査」)によると、最近の若手社員は、他の世代の人たちと比べて、「失敗」や「目立つこと」を極度に嫌がる傾向があるようです。一方の経営者には、若いうちにどんどん失敗してほしい、遠慮なく自分の意見を主張してほしいなどと考え、やはり両者にはギャップがあるかもしれません。

そこで本稿では、若手社員のこうした傾向を踏まえた上で、彼らの意識の変化を促すようなスピーチを、先達の名言を使った文例も添えて紹介します。

2 文例1 「成功か失敗か」より重要なことを気付かせる言葉

「成功失敗の如きは、謂わば丹精した人の身に残る糟粕(そうはく)のやうなものである」(渋沢栄一*)

1)文例

皆さんも理解されていると思いますが、社会人は結果が全てというのは、正しい考えです。ですが、その「結果」というものが何なのか、もう一度考え直してみてください。なぜなら私は、一時的な成功で利益を上げたり、プロジェクトを成功させたりすることだけが、結果だとは思っていないからです。

明治時代に金融業や鉄道・運輸業、製造業、エネルギー産業、宿泊業など約500社もの設立に関わった渋沢栄一は、「論語と算盤(そろばん)」の言葉で知られるように、ビジネスマンに倫理観や公益性を強く求めた人物です。

その渋沢は、「成功失敗の如きは、謂わば丹精した人の身に残る糟粕のやうなものである」と語っています。成功や失敗というものは、人としての責務を全うし、努力をした人の体に残った酒かすのように、価値の低いものだというのです。つまり、結果はどうであれ、それまでの努力が大切だということです。

私は渋沢の考えに賛同します。むしろ、真剣に向き合ってどんどん失敗してほしいと思います。失敗は失敗した人だけが経験できる貴重なものであり、その経験は次のチャレンジで必ず活きてくるからです。皆さんが高い志を持って努力し、自分を磨いていくことのほうが、会社にとってははるかに好ましいことなのです。

2)解説:「失敗=悪=恥」という意識にとらわれた若手社員を解放する

若手社員の意識調査によると、若手社員ほど「失敗を恐れない」人の割合が低く、「失敗したくない」人の割合が高くなっています。その背景には、「恥をかきたくない」「他人からの評価が気になる」といった思いもあるようです。

今の若手社員は、バブル崩壊で経済が長年低迷し、中国にGDPで抜かれ、少子高齢社会への対策が遅れるなど、日本の「失敗する姿」ばかりを見続けて育ちました。閉塞感から抜け出せない雰囲気の中で、世の中の厳しさを強く感じてきた若者たちが、「失敗=恥」と考えるのは自然なことでしょう。逆に、今の若手社員は、結果を出すことの重要さを痛感している、危機感をしっかりと持った世代、と見ることもできます。

かといって、「成功=善」「失敗=悪」という二元論にとらわれ過ぎることは、好ましくありません。自分の夢に向かって進むことや高い志を持つこと、挑戦すること、経験を積むことなど、二元論以外にも考え方があることを示してあげるのが大切です。

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3 文例2 「目立つ」ことや「主張する」ことを後押しする言葉

「自分が気に入らぬからといって、ほかの者も気に入らぬとはかぎりますまい」(豊臣秀吉**)

1)文例

織田信長、豊臣秀吉、徳川家康の中で1人だけ採用するとしたら、私は迷わず秀吉を選びます。なぜなら、秀吉は「人たらし」との異名があるように、愛想がよく、周囲の人たちに気遣いができる人だったからです。ですが、人に合わせるだけでは自分がありません。空気を読む力を持っていた秀吉ですが、あえて空気に逆らうこともできたことが秀吉の素晴らしいところです。

秀吉が最初に仕えたのは、今川義元の家臣である松下之綱(ゆきつな)でした。一説によると、秀吉は之綱の配下として能力を発揮し出世するのですが、同僚たちの妬みを受け、無実の罪で訴えられます。秀吉は無実を主張し、之綱も無実だと分かっていましたが、「大勢の家臣には替えられない」と、秀吉を解雇したといいます。その後、信長の配下で秀吉が大活躍し、之綱の仕える今川家が没落したのは、皆さんご存じの通りです。

組織である以上、同僚に合わせることは必要ですが、その前提は各人が自分の意見を持ち、議論した結果です。之綱は秀吉のことを指して、「あのような男を誰が召し抱えるのか」と言ったそうです。秀吉はこれに反発し、「(あなたは)大将たるべき器量をお持ちでない方だ。自分が気に入らぬからといって、ほかの者も気に入らぬとはかぎりますまい」と言い返したそうです。

同僚に合わせるというのは、「自分を曲げる」ということではありません。皆さんも秀吉のように、正しいと思ったことは、私を含めたあらゆる社員に対して、遠慮せずに意見してください。この会社では、同僚の妬みという心配も無用です。秀吉のように、「きっと誰かが自分を評価してくれる」と信じて、自分の能力を存分に発揮してください。

2)解説:集団の空気に逆らう勇気も

若手社員の多くは、SNSを使いこなし、オンラインで「人とつながる」ことの経験が豊富です。グループ内で良好な関係を維持することにたけているといえます。彼らはメッセージの文面や絵文字だけでも集団の空気を読み、自らが目立つことを避け、相手に合わせ、主張しないことを身に付けてきたのです。

若手社員の意識調査でも、若手社員ほど目立つことや主張することを控え、周囲と同調しようとする傾向が顕著となっています。その点では、会社という組織で活動するには、非常に適した人材だといえるでしょう。

しかし、先々、会社の屋台骨を支える人材に成長してもらうには、周囲と同調しているだけでは困ります。価値観の違い、と言ってしまえばそれまでですが、時にはあえて空気に逆らって、自分が正しいと思った意見を主張する、周りから抜きん出る、ということの重要さも伝えておきたいものです。

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【参考文献】

(*)「青淵百話 乾」(渋沢栄一、国書刊行会、1986年4月)
(**)「名将言行録 現代語訳」(岡谷繁実、北小路健・中澤恵子訳、講談社、2013年6月)

以上(2021年3月)

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【朝礼】夢は無限、チャンスは有限

皆さん、おはようございます。早いもので2020年度も間もなく終わりを迎えます。今年度はコロナ禍の影響もあり、仕事でもプライベートでも「耐え忍ぶ」場面が多かったかもしれません。我が社は既に反転攻勢に出ていますが、来る2021年度、皆さんにはさらに攻めの姿勢に転じ、困難に「挑戦する」一年にしてほしいと思います。そこで、今日は挑戦をテーマにした話をします。

皆さんは、登山家の植村直己(うえむらなおみ)さんをご存じでしょうか。1970年に日本人で初めて世界最高峰のエベレスト登頂に成功し、さらに同年、北米大陸のマッキンリー登頂を成し遂げて、世界初の五大陸最高峰登頂者となった人です。日本列島3000キロを徒歩で縦断したり、北極圏1万2000キロを犬ゾリで完走したりと、登山以外にも数々の冒険に挑戦されました。こうした偉業だけを見ると、恐れを知らない人に思えるかもしれませんが、実は植村さんには、人一倍臆病な上に、高所恐怖症という意外な一面がありました。

では、こうしたハンディを持ちながら、なぜ植村さんは数々の偉業を成し遂げることができたのでしょうか。私は彼の自伝を読んで、1つ大きな理由があると感じました。それは、植村さんが「今しかない」という感覚を非常に大事にしていたことです。植村さんは大学4年生のとき、友人がアラスカの山で日本では見られない氷河を見てきた話を聞き、「外国の山に登りたい」という夢への情熱を燃やします。

就職してから渡航するという選択肢もあったのでしょうが、植村さんは「今、山に登ることが幸せになる道だ」と信じて疑わず、就職そっちのけでヨーロッパのアルプスに渡ります。そして、生まれて初めて氷河を目の当たりにした植村さんは、その美しさに魅入られ、登山家としての人生を本格的にスタートさせます。

登山家としての活動を本格的に開始した後も、「今しかない」を大事にする姿勢は変わりませんでした。エベレストの登山隊に推薦されたときにも、「このチャンスを逃してはならない」と二つ返事でこれを引き受けています。彼の自伝の中では、さまざまな局面で「チャンス」という言葉が登場しているのです。

さて、皆さんの中に、仕事あるいはプライベートで成し遂げたい夢や目標がありながら、「今は他のことが忙しいから」「まだタイミングじゃないから」と、それを先延ばしにしている人はいませんか? 夢を抱くことは誰にでもできます。しかし、その夢をかなえるチャンスは、いつまでも皆さんを待ってくれません。タイミングを逸して他の人に先を越されたり、コロナ禍のように予想できない事態に見舞われて、チャンスを逃したりすることは少なくありません。

夢は無限に広がりますが、チャンスは有限です。先延ばし癖が付いている人は、「今しかない」を大事にして、挑戦する2021年度にしてください。

以上(2021年2月)

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画像:Mariko Mitsuda

中小企業こそファイナンス思考が役に立つ/経営者のためのファイナンス講座(1)

書いてあること

  • 主な読者:将来の意思決定に役立つファイナンス思考を身に付けたい経営者
  • 課題:ファイナンスの考え方がよく分からない
  • 解決策:「会計」は過去を見せるものであり、「ファイナンス」は将来を見せるもの

1 時代は会計から、会計+ファイナンスへ

近年、「ファイナンス」という言葉をよく聞くようになり、ベストセラー本も出ています。会計が会社や事業にとって必須というのは疑う余地がないものですが、会計と並ぶものとしてファイナンスが認識されるようになったのです。

そこで、この連載では、最近話題のファイナンスについて分かりやすく解説をしていきます。それも、中小企業の観点からファイナンスを捉えてみます。現時点で多くの方にとって、ファイナンスは「正体不明」であり、「うちみたいな中小企業には関係ない」と思っているかもしれません。実は、そんな難しい話でも新しい話でもないのです。ファイナンスの見方と具体例を知っていれば、会計に振り回されずに、より効率的で効果的な経営につながります。

2 ファイナンスとは、「お金」をモノサシに将来を考えること

ファイナンスという言葉は、日本語でいえば「財務」と訳されることが多いようです。しかし、財務という言葉から想像されるような、単なる資金繰りの話ではありません。本当の意味はもう少し広いのです。

ざっくりいえば、ファイナンスとは「お金」をモノサシとするものの見方のことです。これは、皆さんご存じの会計が、利益をモノサシとする見方なのと対照的です。会社を経営するうえでは、会計が扱う利益も大事ですが、ファイナンスが扱うお金も大事ということに、皆さん異論はないでしょう。「勘定合って銭足らず」というように、いくら利益が出ていても、資金が切れてしまったら会社は潰れてしまいます。そこで、利益よりもリアルなお金をモノサシに将来を考えるのがファイナンスの見方なのです。

会計では利益を計算するために、損益計算書などの決まったカタチがあります。一方、ファイナンスでは決算書のような決まったカタチがないので、余計に分かりにくくなっています。そこで、もう一つだけ、ファイナンスを理解するのに役に立つキーワードを紹介しましょう。それは、「将来」です。私がウォルト・ディズニー・ジャパンに勤めていたときの上司だった経営者は、よくこう言いました。「ファイナンスはサーチライト、会計はバックミラー」と。車に例えると、会計は後ろ=過去を見せるものであり、ファイナンスは前=将来を見せるものということです。さらに、「わたしが運転(=経営)を間違えないように、前をよく照らしてくれ」と続けるのが常でした。

3 年度末の節税対策も「ファイナンス」?

皆さんの身近な例で考えてみましょう。中小企業でも、年度末近くになって利益が出そうだと分かり、将来のために物品を購入する場合があります。なかには、頑張ってくれた感謝として従業員に決算賞与を出すうれしい会社も。実は、この取り組みはファイナンスの視点と共通するのです。

それは、決算が締まる前に利益が出るという「将来」を予想し、会社にとってより良い意思決定を行っているからです。もちろん、購入する物品が会社にとって必要なものであることが大前提ですが、利益が出ても税金で持っていかれてしまうなら、この際購入しようと考えるわけです。また、もう一つのキーワードである「お金」にも着目しています。今期だけの目先の数字にとらわれるのではなく、会社にとって必要なものを中長期の将来にわたって考える点で、まさにファイナンスが目指すところでもあります。

4 会計が中小企業の良さをダメにしてしまうこともある

会計の利益だけに目を向けていると、なかなかこのような判断にはつながらないかもしれません。なぜなら、会計の利益というのは、いろいろな決め事に基づいて計算されるバーチャルなものだからです。その一例として、勘定科目の使い方があります。

例えば、飲食業では、利益を出すには、原材料費は3割に抑えるべきだといわれます。皆さんは「俺の〇〇」という飲食店チェーンをご存じでしょうか。店の前に行列が絶えなかったこのチェーンは、その慣習的な考えを打ち破り、高級食材を惜しみなく使いました。当然原材料費は3割では収まりません。しかし、自由に食材を使えることを魅力に感じた高級店出身の料理人を多数起用できたことで話題を呼び、集客に大成功しました。事業としては、立食を中心に回転率を上げたことで、利益を生み出すことができたようです。

このような事業のモデルは、勘定科目にとらわれていたら、なかなか思いつかないでしょう。当然ですが、全体を俯瞰(ふかん)し、全体で利益が出ることこそが大事なのです。

公認会計士の私が言うのも変かもしれませんが、定着しすぎた感のある会計の見方に縛られているのかもしれません。特に個性的な事業が多い中小企業においては、その良さが失われてしまいかねないのです。

5 中小企業こそ、ファイナンスを始めよう

このような特性に加えて、リソースの面から考えても、中小企業がファイナンスの考え方を取り入れることはメリットが大きいといえます。

会計で扱うのは過去の結果ですので、良く見せようとしても限度がありますし、会計処理を工夫したところで事業の本質には関係ないことです。これは、例えば、お化粧で気になる箇所をカバーしようとするのと同じです。できることなら、素肌を整えて、化粧があまり必要ない状態をつくるほうがいいはずです。ファイナンスは「素肌美人」を目指す、会社のこれからの業績を良くするために役に立つ見方なのです。

人やお金などの制約が比較的大きい中小企業にとっては、見栄えよりも本質に焦点を当てられるほうが望ましいはずです。ですので、中小企業こそ、ファイナンスの見方をぜひ身に付けることで効果が高くなるといえます。

この連載では、ファイナンスを手軽に身に付けたい中小企業の経営者のために、具体的な事例を用いて、中小企業に関わる内容だけを選りすぐって、分かりやすく解説していきたいと思います。無理のない範囲で少しずつ進める指針になればうれしいです。

以上(2021年3月)
(執筆 管理会計ラボ 代表取締役 公認会計士 梅澤真由美)

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【朝礼】主張する気がない者はこの場から去れ

「自分の意見を主張する」。ここ数年のうちに、多くのビジネスパーソンに求められるようになった姿勢です。「主張」とは、自分の意見を相手に訴えることです。ここでいう意見は、「理想」と言い換えられる、ビジネスに対する皆さんの熱い思いです。そうした思いがぶつかり合うエネルギーはすがすがしく、その当事者になることはとても楽しいものです。ですので、私は皆さんにぜひ、主張してほしいと思っています。

一方で、多くのビジネスパーソンは正しく主張することができません。それは自分の意見を持っていないからですが、その背景には、これまで自分の意見を持つことを明示的に求められなかったことがあるでしょう。つまり、意見を持って主張するという発想がないわけです。

ただ、これまで朝礼の場で何度も話しているように、状況は変わりました。業績好調な企業では、「出るくいを歓迎する」文化を育んでおり、我が社もそのような組織を目指しています。自分の意見に完璧を求める必要はありません。人と話したり、本を読んだりする中で変わっていくからです。ですので、皆さん、まずは新年度に向けて、ビジネスにおける自分の存在意義を考えてください。

ここで皆さんにアドバイスですが、焦って正しくない主張をするのはやめたほうがよいです。後ろ向きの主張や、「意見なきポーズの主張」は周囲を不快にし、結果として皆さんから人が離れ、孤立してしまうことになるからです。

正しくない主張を、私は「逃亡」「怠惰」「迎合」の3つに分類しています。

「逃亡」とは、例えば「自分には意見があるが、言っても何も変わらないので言いません」と宣言するような人です。この宣言をもって主張しているつもりでしょうが、意見を言わないのなら、何ら主張していないのと同じです。

「怠惰」とは、上司や顧客からの依頼を面倒に思い、自分が楽をするために「やらない方法を主張する」ことです。言うまでもありませんが、こうした主張の意図は透けて見えるので、すぐに周囲の人から相手にされなくなります。

「迎合」とは、いわゆる「フリーライダー」で、「声の大きい人に乗っかって、自分の主張にすり替える」ことです。こうした人は、風見鶏のように意見が変わるので、相手が頭のいい人なら、自身の主張を通すために利用されるだけです。

これらの主張に遭遇すると、私は本当に嫌な気分になります。ぎこちなくてもいいので、真っすぐに自分の意見をぶつけてください。これに勝るものはないのです。また、主張し合うことは、これまでとはレベルの違う「熱いコミュニケーション」です。会社と社員の関係がドライになったといわれて久しいですが、明らかにその流れとは逆行することになるでしょう。しかし私は、この会社の未来について皆さんと主張し合い、議論したいと心から願っています。ここにいる皆さん、その準備はできていますか?

以上(2021年2月)

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【朝礼】「自分はツイている」と思ったほうがいい3つの理由

皆さんは自分のことを、「ツイている」と思いますか、それとも「ツイていない」と思っていますか。私は、自分が幸運に恵まれ、「持っている」人間だと思っています。正確に言うと、そう思うようにしています。

宝くじの1等が当たりでもしない限り、自分がツイていると実感できないかもしれません。ですが、「自分はツイている」と思ったほうが得だから、そう思っているのです。特に今のような逆風のときほど、「ツイている」と思っている人の価値は高まるものです。その理由は後ほど話します。

もし「世の中は思い通りにならないことばかりで、自分がツイているとは思えない」と感じている人がいたら、その人は、物事の捉え方を変えてみるべきです。例えば、コロナ禍で業績が下がって「ツイていない」と思うのは簡単です。それを、「それでも会社は存続し、仕事ができるのは運がいい」「コロナ禍で世の中が変化して、自分たちも変われるチャンスをもらった」という考えに改めてみませんか。そうすれば、「もう少し頑張ってみよう」という気持ちになりやすいでしょう。

このように、前向きになれるということが、自分が幸運だと思ったほうがいい1つ目の理由です。そして、なんとか頑張ってこの危機を乗り越えたときに、「やはり自分はツイている。自分の運を信じていれば大丈夫だ」と思えるようになれますし、そうなると、その後はもっと自分を信じて頑張れるという、好循環が生まれます。

例えば、明治から昭和初期にかけて日銀総裁や総理大臣、大蔵大臣を歴任した高橋是清は、10代前半に米国で奴隷として扱われたり、30代半ばでペルーの銀山開発などの失敗で全財産を失ったりしています。そんな不幸に見舞われた是清ですが、子供の頃から「自分は運がいい」と思い込むほど、生来の楽天家だったので、失敗をして窮地に陥っても努力できたと語っています。

自分がツイていると思ったほうがいい2つ目の理由は、自分を見失わないということです。人は何かに成功すると、「全て自分の実力だ」と有頂天になり、周囲が見えなくなってしまいがちです。「成功したのは、運が味方したからだ。油断していると風向きが変わって、今度は失敗してしまうかもしれない」と気を緩めずにいれば、その後も努力を怠ることはないでしょう。

3つ目の理由は、幸運だと思われている人の周りには、人が集まってくるということです。誰しも、「自分はツイていない」と暗い顔をしてうつむく人よりも、自信にあふれた明るい表情の人と一緒に働きたいと思うものです。日露戦争の日本海海戦でバルチック艦隊を破った東郷平八郎は、「運のいい男だから」という理由で連合艦隊の司令長官に抜てきされたといわれています。

今のような、先行きが不透明なときほど、「自分はツイている」と思っている人を心強く感じるものです。今日から、物事の捉え方を前向きに変えてみましょう。

以上(2021年2月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】固い結束力で繁栄した最強集団の悲劇

突然ですが、皆さんは最強の肉食動物は何だと思いますか? 単体で戦えばライオンやトラかもしれませんが、集団では「リカオン」が最強だと私は思っています。なぜなら、リカオンの狩りの成功率が、70%とも80%ともいわれるほど高いからです。対してチーターの狩りの成功率は50%、ライオンは30%、トラに至っては10%とされているので、リカオンのすごさが分かります。

リカオンはアフリカに生息するイヌ科の動物で、10頭から数十頭の群れで生活しています。体長は1メートルほど、体重は30キログラムほどと小柄ですが、群れの結束力がすごいのです。

リカオンの結束力を支えている習性の1つが、狩りに行くかどうかを、くしゃみによる投票で決めることです。群れの誰もが最初にくしゃみをすることで狩りに行くことを提案できますし、リーダーの同意も必須ではありません。ただし、ある群れでは、最初にリーダーがくしゃみをした場合は、3頭程度がくしゃみで同意すると狩りに行きますが、経験が浅く序列の低いリカオンが提案した場合、10頭ほどの同意が必要といいます。

この誰もが提案者になれる方法は、メンバーの意思を尊重する民主的、かつ合理的なもので、学ぶべき点があります。私は皆さんにも、積極的に提案し、意欲的に仕事を進めてほしいと思います。

とはいえ、組織として我が社が目指すのは、リカオンのような集団ではありません。リカオンは、生き残るには決定的な弱点があるからです。

リカオンは体格で勝るライオンなどに襲われることを避けるため、縄張りを持たず広範囲に移動して、天敵と接触する機会を減らしています。

問題は、環境の変化により身を守るのが難しくなっているのに、その生活スタイルを変えられていないことです。人間の生活領域の拡大に伴い、リカオンは広範囲に移動することがあだとなって、人間との接触機会が増えました。そのため、家畜を食べる「害獣」として駆除されたり、人間が飼っている犬の病気に感染したりしています。今では最盛期の1%に当たる5000頭ほどにまで減少しているとの報告もあり、絶滅危惧種に指定されています。同じく数を減らしているライオンやチーターと比べても、圧倒的に負けています。

私は、リカオンの結束力の強さが「集団的な思考停止」を招き、それが広範囲での移動スタイルを変えられない要因になっていると思います。外部環境の変化への対応でなく、集団の和を最優先してきたため、仲間に生活スタイルの変化を強いる提案は、出しにくかったのかもしれません。

会社という組織も同じです。単なる仲良し集団で居心地の良さに安住していては、組織は前に進めません。時には私や同僚への批判をしてもいいのです。会社のために改善すべきと思ったら、一時的に集団の結束を乱すことを恐れず異を唱え、皆と違う方向に進むことで、会社を変えてください。私もそうしています。それこそが、会社の永続につながる、真の組織貢献です。

以上(2021年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

子会社を閉じる(解散・清算)ときの税務の留意点

書いてあること

  • 主な読者:子会社の業績が悪化し、その対応を判断しなければならない経営者
  • 課題:解散・清算の税務は、通常ほとんど触れない特殊分野であり、よく分からない
  • 解決策:100%子会社の子会社株式清算損や評価損といった損金の扱いに注意する

1 子会社整理の際に検討される主な方法

子会社の業績が悪化し、事業の継続が困難になってしまった場合、経営者は子会社の整理を決断しなければなりません。子会社を整理する際の主な方法をまとめた上で、「解散・清算」に注目し、税務上の留意点などを解説します。最後に、解散・清算の手続きもまとめます。

1)親会社が吸収合併する

合併には吸収合併と新設合併とがありますが、一般的には親会社が子会社を吸収合併するケースが多いです。この場合、重複コスト(経理や総務といった管理業務など)をカットできる一方、子会社の負うリスクを引き継ぐことになります。主なメリット・デメリットを整理すると次のようになります。経営者は税理士などの専門家に相談しつつ、考えられるメリットとデメリットをできるだけ網羅的に把握することが大切です。

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2)買い手がいる場合、子会社の経営権や事業を譲渡する

合併によるメリットが見込めない場合は解散・清算手続きを検討するのがほとんどですが、買い手がいる場合は経営権や事業の譲渡も検討できます。経営権の譲渡とは、株式を譲渡することです。また、事業譲渡とは、子会社が営んでいる事業のうち、買い手の希望している事業に関連する資産や負債を譲渡することです。

3)子会社を解散・清算する

合併によるメリットが見込めず、経営権や事業の買い手も現れない場合は、子会社を解散・清算する検討に入ります。

1.解散

解散とは、事業活動をやめて会社を消滅させることです。なお、会社は解散しただけでは消滅することはなく、続けて「清算」という手続きが必要になります。

2.清算

清算とは、会社の財産を換金したり、債権・債務を整理したりすることです。これらの手続きを経て、最終的に残った財産を株主に分配したところで手続きは終了し、会社は消滅します。なお、清算には「通常清算」と「特別清算」とがあります。「通常清算」は、会社の財産で全ての債務を返済することができるとき(債務超過でないとき)に取られる方法で、「特別清算」は債務超過を疑われる会社が裁判所の監督下のもとで進められる方法です。

2 子会社を清算するときの税務上の主な留意点

1)子会社に対する債権の免除

子会社が債務超過の状態にある場合、特別清算を避けるため、親会社から子会社に対する貸付金(子会社側では借入金)などの債権(子会社側では債務)を免除することが多いです。この債権の免除による損失(貸倒損失)は親会社の損金(税務上の費用)とすることができますが、免除の金額が過剰な場合、損金として認められないケースがあります。

2)子会社株式清算損は損金にできない

残余財産の分配がある場合、親会社は、子会社株式の帳簿価額と残余財産分配額(全ての資産を現金化し、負債の弁済・納税した後に残る財産の価額)の差額は、損益計算書に損失として計上することになります。税務上もこの損失は損金となります。

ただし、持株割合が100%の子会社(以下「100%子会社」)の株式については、この損失は例外として損金になりません。

3)子会社株式評価損を損金にできない

子会社が解散して清算手続きに入った場合、親会社が子会社株式評価損を計上することがあります。この評価損については、子会社の財務状況などによっては税務上も損金になります。

ただし、子会社株式清算損と同じように、100%子会社の株式について計上した評価損は損金になりません。

4)100%子会社の繰越欠損金は親会社に引き継ぐことができる

100%子会社の株式については、親会社側で子会社株式清算損や評価損を損金にすることはできません。その代わり、100%子会社の有している繰越欠損金を親会社に引き継ぐことができます。繰越欠損金とは、残余財産が確定した日の翌日前10年以内に開始した事業年度で生じた欠損金(税務計算上の純損失)で、税務計算上で所得と相殺していない未処理のものをいいます。

5)税理士などへの相談

解散や清算に関連する税務は、事業が続いている段階では触れることのない特殊分野です。損金の取り扱いも通常時と異なる点が多く、思わぬ課税が生じる可能性もあります。解散や清算をするときは税理士などの専門家へ相談し、誤った処理をしないようにすることが重要です。

3 子会社の解散・清算実務(通常清算の場合)の流れ

1)株主総会による解散決議と清算人の選任

会社を解散する場合、株主総会で解散決議を行い、承認を得る必要があります。同時に、その後の清算事務を執行する「清算人」の選任も併せて行います。清算人になるのに資格などは必要なく、一般的には代表取締役だった人が清算人になるケースが多いです。

2)登記手続き

解散が承認されてから2週間以内に、解散登記と清算人の選任登記を行わなければなりません。

3)官報公告

債権者に会社の解散を通知するとともに、債権の申し出をするよう、官報に公告を出す必要があります。なお、官報公告は、申し込みから実際に掲載されるまで10営業日前後の日数がかかります。

4)貸借対照表と財産目録の作成

清算人は、解散日の貸借対照表と財産目録を作成し、株主総会の承認を得ます。また、株主総会で承認された後は、必要な税務申告書を作成して提出します。

5)債権の回収や債務の弁済

解散日現在で未回収の債権を回収し、保有する財産を換価した上、債務の弁済を行います。なお、3)の公告から2カ月間(債権の申し出期間)は債務を勝手に弁済することはできません。従って、債務については、債権の申し出期間が経過してから弁済するようにしましょう。

6)清算確定申告

債権の回収・財産の換価を行った上、全ての債務を弁済したところで残った財産の金額が確定(残余財産の確定)したら、1カ月以内に必要な税務申告(清算確定申告)をします。この清算確定申告が、会社が行う最後の確定申告手続きになります。

7)残余財産の分配

必要な税務手続き・納税が完了したら、株主の持株割合に応じて残余財産を分配します。

8)決算報告書の作成と株主総会の承認

清算手続き中に得た収入の額や債務の弁済額などを記載した決算報告書を作成し、株主総会の承認を得たら清算は結了し、会社は消滅することになります。

9)清算結了の登記と税務届出書の提出

8)の株主総会の承認を受けて清算が結了したら清算結了登記を行うとともに、必要な税務届出書を税務署や県税・市税事務所に提出することで、全ての手続きは終了となります。

4 解散・清算で経営者が考えるべきこととは?

1)債権者への通知

会社を解散した場合、国が発行する官報で「解散した旨」や「債権の申し出をしてほしい旨」などを通知(公告)する必要があります。なお、経営者が解散を決断する前に取引先などにその事実が知れ渡ってしまうと、信用不安に陥るリスクがあるので注意しましょう。

2)従業員の解雇

会社が従業員を雇用している場合は、清算手続き中に従業員を解雇しなければいけません。解雇は早い段階で行うほうが給与や法定福利費の負担を抑えられます。しかし、経営者が解散を決断する前に解雇予定であることを知られると、従業員の動揺も大きく、解散までの期間の業務に支障が出ることがあります。従って、従業員に解雇通知を出すタイミングは慎重に決める必要があります。

3)保有財産の換価

負債(買掛金や借入金)の弁済に充てるため、保有している固定資産などは売却して現金化(換価)しなければなりません。なお、不動産などについては売却に時間がかかる一方、慌てて売却すると、安い金額でしか売れないこともあります。このような売却に時間がかかる資産は解散・清算を決定する前の段階で現金化する判断が必要です。

4)各種契約の解除

事務所のテナント契約やリース契約などがある場合には、解約手続きをする必要があります。契約内容によっては、事前に解約通知を行わないと違約金が取られる場合があるので、あらかじめ確認しておきましょう。

5)その他

会社を解散した場合は、税務署や社会保険事務所などに届け出をしなければなりません。また、許認可を必要とする事業を行っている場合、各業法に従って廃業届などを提出する義務があるケースがあります。

以上(2021年2月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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【朝礼】デジタル時代だからこそ熱くなれ!

ビジネスのデジタル化が急速に進んでいます。その影響もあり、「感情を表に出さず、とにかく機械のように働くこと」を【効率化】と考える人もいるようです。しかし、私はそうした働き方には反対であり、デジタル化が進む時代だからこそ、「よりウエットに、人と人とのつながりを深める」ことを重視したいと考えます。それが私の信条であると同時に、今後のビジネスの可能性を広げていくために欠かせない、重要な要素であると信じているからです。

私には、尊敬してやまないビジネスの恩師がいます。今から20年ほど前、その恩師から「君は本当にすごいな!」と褒められたことがあります。それは、私が電話とメール、提案書のやりとりだけで、一度も相手と会うことなく数百万円の契約を獲得したからです。今でこそオンラインでの商談が普及していますが、当時はそのような発想は全くありません。「とにかく会って話そう」というのが通常です。しかもその相手は、社会的に非常に“おかたい”業界の人です。常識的に考えて、相手が一度も会ったことのない私と契約をするなんて考えられません。

にもかかわらず私が契約できたのは、もちろん会社の実績もありますが、それ以上に私の本気の姿勢と熱意が伝わり、私自身を信頼してもらえたからだと思っています。

皆さん、私はどうやって会ったことのない相手の信頼を得たと思いますか。

「人のどこを見て、信頼するか」は人それぞれですが、自己分析をしてみると、電話などのやりとりだからこそ、挨拶をきちんとするとか、時間などの約束を守るといったことに注意していました。そして、ここが重要なのですが、相手から難しい要求をされても、その難題と真正面から向き合う姿勢を決して崩しませんでした。夜遅くまで電話で話したり、一日に何十通もメールでやりとりしたりしました。互いの上司を説得するための作戦を一緒に考えたことも何度もありました。そうした中で強固な信頼関係が生まれ、「あなたと、このプロジェクトを成功させたい!」と互いに思えるようになったのです。

表面だけを捉えれば、電話やメールだけの営業は効率的に映り、そこばかりが注目されます。しかし、この例で私が心掛けたのは、泥臭いコミュニケーションを通じて、私の熱意を示すことでした。電話やメールは手段にすぎません。

これからのビジネスでは、画面越しでしか話したことのない相手と提携することが普通になります。そのとき、皆さんは相手のどこを評価して「組んでもいい!」と判断しますか。逆に、相手からの信頼をどのように勝ち取りますか。ましてや今は「個」を尊重する時代です。聞こえはいいですが、要は「会社の看板を外した状態で、皆さんが、どれだけ清く正しく存在感を示せるか」ということです。感情を奮い立たせ、熱い思いを伝えることがその答えになるはずです。

以上(2021年1月)

pj17038
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】議論に必要なのは「愛」「尊敬」「知識」

皆さんは、同僚やクライアントと正しく「議論」することができますか。議論とは、特定のテーマについて互いの意見を論じ合うことです。ビジネスでもしばしば議論することがありますが、これは互いに知恵を出し合い、より良い仕事をするためのものです。

ところが、ビジネスで行われる議論の多くは「勝負」になりがちです。「論破」という言葉に引っ張られるのか、「相手を言い負かすこと」が目的になっているのです。こういう間違った議論では雰囲気が険悪になり、相手から何か言われると自分自身を否定された気分になってしまいます。議論で否定するのは意見の内容や分析であり、相手自身ではないのですが、感情的になるとこの大原則を忘れがちです。しかし、論破されるのは悔しいかもしれませんが、自分にはなかった視点を得て、考え方を見直すきっかけになるわけですから、決して「負け」ではないのです。

また、経験上、議論が「勝負」になりがちなことを分かっている人は、衝突を避けるための努力をします。素晴らしいことですが、やはり方向性を間違えている人が多いように思います。よくあるのは、議論を深めるというよりも、相手をおだてて場を和ませ、折衷案に落とし込むケースです。しかし、こうした折衷案に魅力はありません。

どうすればビジネスでの議論がうまくいくでしょうか。議論の「さしすせそ」と「たちつてと」という興味深い指摘があるので紹介します。

まず、議論の「さしすせそ」は、議論を円滑に進めるための言葉です。具体的には、「さすがですね、知りませんでした、すごいですね、センスがいいですね、そうなんですね」と相手を肯定し、場の雰囲気を和らげる言葉です。

一方、議論の「たちつてと」は、研究者やエンジニアなどがよく使う言葉とされています。具体的には、「例えば? 違いは? つまり? 定義は? 統計的な裏付けは?」と質問し、状況を確認する言葉です。

ここで重要なのは、「さしすせそ」と「たちつてと」を対立項のように捉え、自分がどちらを使ったら有利かなどと考えないことです。「さしすせそ」も「たちつてと」も、議論を進めるためのきっかけにすぎません。議論の展開や雰囲気を考えて、「それは知りませんでした。ちなみに、統計的な裏付けはあるのですか?」と両方を組み合わせて使えばよいだけのことです。

議論には目的があります。お客様にとって良いサービスをつくるための議論であれば、まずお客様への愛がなければなりません。また、議論の相手は、共に良いサービスを検討する仲間であり、そこに尊敬がなければなりません。最後に、議論を深めるには準備、つまり知識が必要です。この「愛」「尊敬」「知識」を意識して議論すれば、くだらない勝ち負けにこだわることはなくなります。今年、皆さんの議論がバージョンアップすることを期待しています。

以上(2021年1月)

pj17037
画像:Mariko Mitsuda