ショートステイ市場の動向

書いてあること

  • 主な読者:ショートステイの概要、ビジネスチャンスを探りたい経営者
  • 課題:サービス内容、需要動向が分からない
  • 解決策:高齢化に伴う要介護者数の増加などから、需要が上がると見られている。今後、事業者の参入活性化によって、居宅介護の中心的役割を担うことが期待されている

1 ショートステイの概要

1)ショートステイとは

ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)とは、「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」(以下「基準」)によると、それぞれ次の要件を満たした介護サービスです。

1.短期入所生活介護

特別養護老人ホームなどの施設で短期間、生活してもらい、その施設で行われる、入浴、排せつ、食事等の介護、その他の日常生活を送る上で必要となるサービスおよび機能訓練をいいます。

要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話及び機能訓練を行うことにより、利用者の心身の機能の維持並びに利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければなりません(基準第120条)。

2.短期入所療養介護

介護老人保健施設などの施設で短期間、生活してもらい、その施設で行われる、看護、医学的な管理の必要となる介護や機能訓練、その他必要となる医療、日常生活上のサービスをいいます。

要介護状態となった場合においても、その利用者が可能な限りその居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、看護、医学的管理の下における介護及び機能訓練その他必要な医療並びに日常生活上の世話を行うことにより、療養生活の質の向上及び利用者の家族の身体的及び精神的負担の軽減を図るものでなければなりません(基準第141条)。

短期入所生活介護および短期入所療養介護は、介護保険制度に基づき「介護給付(要介護1~要介護5)」によって給付が行われます。

なお、予防給付によるサービス「介護予防短期入所生活介護」「介護予防短期入所療養介護」は、「指定介護予防サービス等の事業の人員、設備及び運営並びに指定介護予防サービス等に係る介護予防のための効果的な支援の方法に関する基準」に定められています。

2)ショートステイのサービス概要

ショートステイのサービスは、介護保険の給付対象となります。

特別養護老人ホームなど福祉系の施設におけるサービスが「生活介護」で、介護療養型医療施設などの医療系の施設や介護老人保健施設における医療系のサービスが「療養介護」となります。

ショートステイで行われるサービスは、食事・入浴・排せつ介助・機能訓練・生活相談などで、介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)や介護老人保健施設などの施設入所者に対して行われるサービスとほとんど変わりません。いずれも目的は、「利用者の介護」と「利用者の家族を日々の介護から解放してリフレッシュしてもらうこと」とされています。

3)ホテルコスト(居住費および食費)は利用者負担

ホテルコストとは、「居住費(滞在費:家賃・光熱費)」と「食費」を指し、ショートステイを含め施設系・入所系のサービスにおいては利用者負担となっています。ホテルコストの概要は次の通りです。

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居住費(滞在費)は次の4つに分けられ、それぞれ利用額が異なります。

  • ユニット型個室:リビング(共同生活室)を併設した個室
  • ユニット型準個室:リビング(共同生活室)を併設した、固定壁だが天井との隙間がある個室
  • 従来型個室:リビングを併設しない個室
  • 多床室:定員4人以下の部屋

原則、ショートステイを利用した場合の居住費や食費の金額は、利用者と施設との契約によります。ただし、市町村民税非課税世帯などの利用者の場合は、申請により負担限度額が適用され、負担が軽減されます。

4)介護報酬

多くの種類があるショートステイの基本報酬のうち、その一部を紹介します。

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2 ショートステイ市場の現状と今後

1)ショートステイの事業所数

ショートステイ事業所数の推移は次の通りです。

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2017年度は、介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護(老健)、短期入所生活介護を行う事業所数が増加しています。

2)ショートステイに対する介護報酬支払状況

ショートステイサービスにおける介護費の推移は次の通りです。

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2017年度のショートステイサービスにおける介護費は増加している一方、短期入所療養介護(病院等)は、介護療養型医療施設の他施設への転換などを背景に減少傾向にあります。

3)民間企業の参入の必要性と今後

厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査」によると、ショートステイの運営主体別事業所数(2016年10月1日時点)は次の通りです。

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ショートステイの運営主体のうち、企業の占める割合はそれほど高くありません。これは、もともとショートステイ事業が社会福祉法人が運営する介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)内、または介護老人保健施設内でのサービスという枠内で設定されていたので、企業やNPOなどがショートステイ専門の施設を作ろうとしても採算を取るのが難しいためだと考えられます。今後は、企業の参入によって利用しやすいショートステイが増加していくことが期待されています。

4)ショートステイの見通し

ショートステイは介護者の身体的・精神的負担を軽減させるためにも必要不可欠なサービスであることから、今後、ショートステイへの需要はますます高まることが予想されます。その要因としては次が挙げられます。

  • 高齢化に伴う要介護者数の増加
  • 介護老人福祉施設の入所待ち利用者による「つなぎ」としての需要

ショートステイは需要のあるサービスであり、事業者の参入活性化によって、今後の居宅介護の中心的役割を担っていくことが期待されます。

以上(2018年10月)

pj50207
画像:GagliardiPhotography-shutterstock

グリーン経営認証制度の概要と中小運輸事業者による取得メリット

書いてあること

  • 主な読者:グリーン経営認証制度の取得を検討する経営者
  • 課題:取得による効果、取得までの流れ、取得にかかるコストが分からない
  • 解決策:取得に際し、自社の環境改善に向けた取り組みを洗い出し、認証基準を満たす改善策を打ち出すことが先決

1 グリーン経営認証制度とは

環境負荷の少ない事業運営を「グリーン経営」といいます。国土交通省では、「環境行動計画」を策定し、環境貢献型経営(グリーン経営)を促進しています。運輸業界においては、中小規模の事業者でも環境改善に向けた自主的で継続的な活動を行うことが求められています。

グリーン経営認証は、トラック事業者、バス事業者、タクシー事業者、旅客船事業者、内航海運事業者、港湾運送事業者、倉庫事業者を対象として、交通エコロジー・モビリティ財団(以下「交通エコモ財団」)が認証機関となり、グリーン経営推進マニュアルに基づいて、一定のレベル以上の取り組みを行っている事業者に対して、審査の上、認証・登録を行うものです。

グリーン経営推進マニュアルは、環境マネジメントシステムに関する国際規格であるISO14000シリーズに基づいて作成されたもので、同マニュアルに従うことで、中小規模の事業者でも環境改善に向けた取り組みの目標設定とその評価が容易になります。

環境負荷の低減に関して第三者機関が取り組みを審査・認証するという点で、グリーン経営認証制度は、環境マネジメントシステムに関する国際規格「ISO14001」と似ていますが、実際は異なります。

ISO14001は環境改善を図るための組織体制や書類の整備といったマネジメントシステムの適合性を審査するものですが、グリーン経営認証制度は、環境改善の取り組み結果(環境パフォーマンス)を審査するものです。また、グリーン経営認証制度では、認証後のレベルアップを図るため、認証機関である交通エコモ財団が指導・助言も実施します(ISO14001では認証機関による指導・助言は禁止されています)。

中小規模の事業者はコスト的・人的な問題からISO14001の認証を取得しにくいのが現状です。グリーン経営認証制度はこうした点を考慮した制度であり、中小規模の事業者でも取り組みやすいようにコストや手続きの面で配慮されています。

■交通エコロジー・モビリティ財団「グリーン経営認証制度」■
https://www.green-m.jp/

2 グリーン経営の認証取得までの基本的な流れ

グリーン経営の認証取得までの基本的な流れは次の通りです。

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本稿では、トラック事業者に注目し、グリーン経営認証を取得するまでの主なポイントを紹介していきます(基本的に、トラック・バス・タクシーなど輸送モードによる手続きの大きな違いはありません)。

1)申請書などの入手

まずは、申請書とともに自社の取り組み状況のチェックリスト(以下「チェックリスト」)やグリーン経営推進マニュアル(以下「マニュアル」)を入手することから始まります。チェックリストは、トラック事業者がグリーン経営認証を取得できる状態にあるかを確認するための重要な書類です。マニュアルには、トラック事業者が環境負荷低減を推進するために重要な「グリーン経営の意義や進め方」などが記載されています。

いずれも、交通エコモ財団のウェブサイトからダウンロードすることができます。

2)チェックの実施と改善の取り組み

トラック事業者は、交通エコモ財団のチェックリストを使って、自社の環境負荷低減の取り組みを確認します。

チェックリストは、環境保全やエコドライブなどに関するチェック項目があり、全てYesかNoで回答できるようになっています。各チェック項目はレベル1~3の3段階に分かれていて、レベル3で要求される活動が最も高度です。

なお、チェック項目の中で特定のレベルが網掛けになっているものがあります。網掛けは、認証基準と連動しており、網掛けのレベルに到達していなければグリーン経営認証を取得することはできません。

トラック事業者向けのチェックリスト(一部抜粋)は次の通りです。

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チェックの結果、認証基準に到達し、認証基準の解説にある資料が整備されていれば、交通エコモ財団にグリーン経営認証の審査を申請できます。認証基準に到達していない場合には、認証基準を満たすよう改善の取り組みを行います。

3)認証審査申請

交通エコモ財団にグリーン経営の認証審査を申請します。申請の際は、次の書類に必要事項を記入して交通エコモ財団に郵送します。なお、次の書類は、全て交通エコモ財団のウェブサイトからダウンロードすることができます。

  • 認証審査申請書
  • 審査登録対象事業所一覧表
  • (注)認証登録連盟事業者一覧表(ただし、旅客船事業者、内航海運事業者、港湾運送事業者、倉庫事業者のみ)

  • 審査申請用チェックリスト記入用紙

4)実地審査と是正処置

審査員(交通エコモ財団のスタッフなど)が、実際にグリーン経営の認証を申請したトラック事業者を訪問して、その活動を審査します。審査に要する時間の目安は、1つの事業所(事業者ではありません)につき4~5時間程度です。

仮に、認証基準に達しない不適合事項が発見された場合、トラック事業者は「是正処置」として、60日以内に不適合事項を是正して交通エコモ財団に報告します。

5)審査結果の判定と認証・登録

審査員が作成した「実地審査報告書」に基づき、交通エコモ財団が判定します。交通エコモ財団が、認証基準の全てを満たしていると判断した場合、トラック事業者はグリーン経営の認証を取得することができます。

グリーン経営の認証を取得するトラック事業者は、交通エコモ財団に審査料などの費用を支払わなければなりません(審査料などの詳細は後述します)。

こうしてグリーン経営の認証を取得したトラック事業者は、環境に優しいトラック事業者として登録され、交通エコモ財団のウェブサイトで事業者名が公表されます。

6)定期審査

定期審査は、新規登録日または更新登録日から1年目に実施されます。トラック事業者は、チェックリストおよび関連書類を交通エコモ財団に提出し、書類審査を受けます。

7)更新審査

更新審査は2年ごとに実施されます(定期審査の1年後)。グリーン経営の認証の有効期間は2年間なので、更新審査を受けなければグリーン経営認証を維持することができません。更新審査では、トラック事業者は新規取得の際と同様の実地審査を受けます。

3 グリーン経営の認証取得などに必要な費用

グリーン経営の認証取得などに必要な費用は次の通りです。トラック事業者は、新規登録時、および2年ごとの更新時に表の金額を一括して支払うこととなります(表中の交通費以外は消費税別です)。また、2年ごとの更新の間の1年は書類審査が行われます。

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4 グリーン経営の認証を取得することの効果

1)グリーン経営認証の登録件数

交通エコモ財団ウェブサイト公表資料によると、業種別のグリーン経営認証登録事業所数(2018年9月1日時点)は次の通りです。

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2)グリーン経営の認証取得の効果

トラック事業者などの運輸事業者がグリーン経営の認証を取得する(登録を受ける)メリットには、次の点が挙げられます。

  • 交通エコモ財団のウェブサイトなどで事業者名が公表される
  • 登録証、ロゴマークが交付され、車両に貼り付けるなど自由に使える
  • 交通エコモ財団から環境保全活動に関する情報提供や指導、助言が受けられる

また、交通エコモ財団が2018年4月に発表した「グリーン経営認証取得による効果(トラック、バス、タクシー、倉庫、港湾運送)-平成28年度版-」によると、運輸事業者は、グリーン経営の認証取得によって、「燃費の向上」「電気/燃料使用量削減」「職場モラルの向上」「お客様からの評価の向上/取引上の優遇」「リーダー層の人材育成」「交通事故件数の減少」「車両故障件数の減少」など、さまざまなメリットを感じているようです。

■グリーン経営認証取得による効果(トラック、バス、タクシー、倉庫、港湾運送、旅客船、内航海運)-平成28年版-■
http://www.green-m.jp/greenmanagement/result.html

3)運輸事業者がグリーン経営の認証を取得することの意義

運輸業界には「環境・安全」が一層強く求められており、荷主・一般消費者は、「環境・安全」に悪影響を及ぼしてはならないとの意識を強めています。

激化する競争の中、今後、勝ち残る事業者となるためには、「環境・安全」への取り組みがさらに重要となるという意識を持たなければなりません。その際、グリーン経営認証取得は、「環境・安全」への取り組みを進める上で1つのきっかけとなるでしょう。

なお、自治体や都道府県トラック協会の中には、グリーン経営認証料金の助成制度を実施しているところがあり、また、金融機関などの低金利融資制度・保険料割引制度もあるので、確認してみるとよいでしょう。

以上(2018年10月)

pj50208
画像:pexels

介護老人福祉施設の開設を考える

書いてあること

  • 主な読者:介護老人福祉施設の運営を検討する経営者
  • 課題:介護老人福祉施設の開所および運営を行いたい
  • 解決策:必要な申請や条件、収支モデルを参照する

1 介護老人福祉施設の概要

1)介護老人福祉施設とは

介護保険法において、「介護老人福祉施設」とは、「特別養護老人ホーム(入所定員30人以上)」であって、当該特別養護老人ホームに入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて入浴・排せつ・食事などの介護、日常生活上の世話、機能訓練、健康管理、療養上の世話をする施設をいいます(介護保険法第8条第27項)。なお、入所定員が29人以下の施設は、「地域密着型介護老人福祉施設」と規定されています(介護保険法第8条第22項)。

市町村は、都道府県知事が指定する介護老人福祉施設により行われる介護福祉施設サービス(注)に要した費用について、施設介護サービス費を支給します(介護保険法第48条第1項)。

(注)介護福祉施設サービスとは、介護老人福祉施設に入所する要介護者に対し、施設サービス計画に基づいて行われる、入浴、排せつ、食事などの介護、日常生活上の世話、機能訓練、健康管理、療養上の世話をいいます。

介護老人福祉施設は、まず、「老人福祉法」において「特別養護老人ホーム」の設立許可を受け、次いで、「介護保険法」において「介護老人福祉施設」の指定を受ける必要があります。

厚生労働省「介護サービス施設・事業所調査の概況」によると、介護老人福祉施設の施設数の状況は次の通りです。

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また、同調査によると、介護老人福祉施設の施設数・定員・在所者数の状況は次の通りです。

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2)特別養護老人ホームの設置認可

市町村および地方独立行政法人以外で、特別養護老人ホームを設置する場合、まず、設置主体は社会福祉法人である必要があります。また、老人福祉法第15条第6項では、「都道府県知事は、社会福祉法人による認可の申請があった場合において、当該申請に係る区域における特別養護老人ホームの入所定員の総数が、都道府県が老人福祉計画において定めるその区域の特別養護老人ホームの必要入所定員総数にすでに達している場合または特別養護老人ホームの設置によってこれを超えることになる場合には設置の認可をしないことができる」と規定されています。

社会福祉法人が特別養護老人ホームの設置認可の申請をするときには、次の事項を記載した申請書を、施設を設置しようとする地の都道府県知事に提出しなければなりません(老人福祉法施行規則第2条第1項)。

  • 施設の名称、種類および所在地
  • 施設の地理的状況
  • 建物の規模および構造並びに設備の概要
  • 特別養護老人ホームの設備および運営に関する基準に規定する施設の運営についての重要事項に関する規程
  • 入所者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 職員の勤務の体制および勤務形態
  • 協力病院の名称および診療科名並びに当該協力病院との契約の内容
  • 施設の長その他主な職員の氏名および経歴
  • 事業開始の予定年月日
  • 地方独立行政法人が設置する場合にあっては、資産の状況を記載した書類

3)介護老人福祉施設の指定

入所定員が30人以上の指定介護老人福祉施設の指定は、都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)が行います(介護保険法第86条第1項、第203条の2)。一方、入所定員が29人以下の地域密着型介護老人福祉施設の指定は市町村長により行われます(介護保険法第78条の2第1項)。

指定を受けようとする者は、次の事項を記載した申請書・書類を施設の開設を所管する都道府県知事に提出しなければなりません(介護保険法施行規則第134条)。

  • 施設の名称および開設の場所
  • 開設者の名称および主たる事務所の所在地並びに代表者の氏名、生年月日、住所および職名
  • 当該申請に係る事業の開始の予定年月日
  • 開設者の定款、寄附行為等およびその登記事項証明書または条例等
  • 特別養護老人ホームの認可証等の写し
  • 併設する施設がある場合にあっては、当該併設する施設の概要
  • 建物の構造概要および平面図並びに設備の概要
  • 入所者の推定数
  • 施設の管理者の氏名、生年月日および住所
  • 運営規程
  • 入所者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 当該申請に係る事業に係る従業者の勤務の体制および勤務形態
  • 当該申請に係る事業に係る資産の状況
  • 協力病院の名称および診療科名並びに当該協力病院との契約の内容
  • 当該申請に係る事業に係る施設介護サービス費の請求に関する事項
  • 介護保険法第86条第2項各号に該当しないことを誓約する書面(誓約書)
  • 役員の氏名、生年月日および住所
  • 介護支援専門員の氏名およびその登録番号
  • その他指定に関し必要と認める事項

2 施設基準

特別養護老人ホームの施設基準は、「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準(以下「基準」)」に定められています。同基準に定められているユニット型施設の主な内容を紹介します。

1)運営規程(基準第34条)

ユニット型特別養護老人ホームは、次に掲げる施設の運営についての重要事項に関する規程を定めておかなければなりません。

  • 施設の目的および運営の方針
  • 職員の職種、数および職務の内容
  • 入居定員
  • ユニットの数およびユニットごとの入居定員
  • 入居者へのサービスの提供の内容および費用の額
  • 施設の利用に当たっての留意事項
  • 非常災害対策
  • その他施設の運営に関する重要事項

2)共同生活室を設ける場合の施設の基準(基準第35条)

ユニット型特別養護老人ホームの建物は、耐火建築物でなければなりません。ただし、入居者の日常生活に充てられる場所を2階以上の階および地下のいずれにも設けていないユニット型特別養護老人ホームの建物は、準耐火建築物とすることができます。

ユニット型特別養護老人ホームには、次の各号に掲げる設備を設けなければなりません。ただし、他の社会福祉施設等の設備を利用することにより当該ユニット型特別養護老人ホームの効果的な運営を期待することができる場合であって、入居者へのサービスの提供に支障がないときは、次の各号(1.を除く)に掲げる設備の一部を設けないことができます。

  • ユニット
  • 浴室
  • 医務室
  • 調理室
  • 洗濯室または洗濯場
  • 汚物処理室
  • 介護材料室
  • 前各号に掲げるもののほか、事務室その他の運営上必要な設備

1つの居室の定員は、1人とします。ただし、入居者へのサービスの提供上必要と認められる場合は2人とすることができます。

居室は、いずれかのユニットに属するものとし、当該ユニットの共同生活室に近接して一体的に設けなければなりません。ただし、1つのユニットの入居定員は、おおむね10人以下としなければなりません。

居室は地階に設けることはできません。1つの居室の面積は10.65平方メートル以上を標準とします。ただし、2人部屋の場合にあっては、21.3平方メートル以上を標準とします。

居室には寝台またはこれに代わる設備を備えなければなりません。1つ以上の出入口は、避難上有効な空地、廊下、共同生活室または広間に直接面して設けなければなりません。床面積の14分の1以上に相当する面積を直接外気に面して開放できるようにしなければなりません。必要に応じて入居者の身の回り品を保管できる設備を備え、ブザーまたはこれに代わる設備を設けなければなりません。

3)職員の配置の基準(基準第12条)

特別養護老人ホームには、次の各号に掲げる職員を置かなければなりません。ただし、入所定員が40人を超えない特別養護老人ホームにあっては、ほかの社会福祉施設などの栄養士との連携を図ることにより、入所者の処遇に支障がないときは、栄養士を置かないことができます。

  • 施設長:1人
  • 医師:入所者に対し健康管理および療養上の指導を行うために必要な数
  • 生活相談員:入所者の数が100人またはその端数を増すごとに1人以上
  • 介護職員または看護職員(看護師もしくは准看護師)
    • イ.介護職員および看護職員の総数は、常勤換算方法で、入所者の数が3人またはその端数を増すごとに1人以上
    • ロ.看護職員の数は、次の通りとすること
    • 入所者の数が30人を超えない場合、常勤換算方法で1人以上
    • 入所者の数が30人を超えて50人を超えない場合、常勤換算方法で2人以上
    • 入所者の数が50を超えて130人を超えない場合、常勤換算方法で3人以上
    • 入所者の数が130人を超える場合、常勤換算方法で3人に、入所者の数が130人を超えて50人またはその端数を増すごとに1人を加えた数以上
  • 栄養士:1人以上
  • 機能訓練指導員:1人以上
  • 調理員・事務員その他の職員:当該特別養護老人ホームの実情に応じた適当数

3 開業収支を考える

1)前提条件

1.売上高

年間売上高は、施設定員80人(10人×8ユニット)として3億5503万円とします。算出式は次の通りです。

  • {介護サービス費28万7400円×12カ月+ホテルコスト(1970円+1380円)×365日)}×定員80人×稼働率95%=3億5503万円

厚生労働省「介護給付費実態調査月報(2019年4月審査分)第7表、介護サービス受給者1人当たり費用額、サービス種類・都道府県別」によると、介護福祉施設サービスの介護サービス受給者1人当たり費用の平均月額は28万7400円となっています。

また、ここではホテルコストとして滞在費を1日当たり1970円、食費を1日当たり1380円としました。

厚生労働省「介護報酬の算定構造(2018年4月以降適用)」によると、ユニット型介護福祉施設サービス費(I)(ユニット型個室)(1日当たり)は次の通りです。

  • 要介護1:636単位
  • 要介護2:703単位
  • 要介護3:776単位
  • 要介護4:843単位
  • 要介護5:910単位

2.原価率

原価・変動比率は、後掲表(介護老人福祉施設の収支)の介護事業費用のうち(4)その他を参考に27.7%とします。

3.人件費

また、固定費は同じく後掲表(介護老人福祉施設の収支)の介護事業費用のうち(1)給与費63.8%を参考に2億2651万円(3億5503万円×63.8%)とします。

4.施設整備・設備整備費用

施設整備費を8億8000万円(1000坪×88万円)、設備整備費を7200万円とします。

その他の諸条件は次の通りです。

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2)収支シミュレーション

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4 介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支

厚生労働省「平成28年度介護事業経営概況調査結果」によると、介護老人福祉施設の収支は次の通りです。

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介護事業費用は、(1)給与費、(2)減価償却費、(3)国庫補助金等特別積立金取崩額、(4)その他に分類されています。なお、(4)その他には、水道光熱費、燃料費、給食の材料費、賃借料、旅費交通費、通信費、消耗品費、雑費などが含まれます。

以上(2019年10月)

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新しい市場が広がる「キャンプ」関連業界の動向

書いてあること

  • 主な読者:従来のキャンプ場との差異化を検討する経営者
  • 課題:グランピングの動向、事例、留意点などを把握したい
  • 解決策:さまざまなタイプのグランピング施設を参考に、他社には無いサービスを提供する

1 10年に1度のビッグトレンド

大自然の中で、食事や宿泊を楽しむ。こうした自然に親しむという従来のキャンプの良さを残す一方で、豪華なインテリアに囲まれ、ホテル並みのサービスを受けられる「グランピング」が注目されています。

グランピングは、キャンプに興味はあるが未経験の層や、キャンプにそれほど関心がなかった層を取り込み成長しています。国内外の観光・レジャー業界では、「10年に1度のビッグトレンド」ともいわれています。

国や自治体もこれに注目し、地方創生の観点からグランピング事業を手掛けるDMO(地域と協同して観光地域作りを行う法人)のプロジェクトや事業者に対して補助金を交付するなどしており、ビジネスの裾野が広がっています。

2 グランピングの関連データ

グランピングという言葉は、グラマラス(Glamorous、魅惑的な)とキャンピング(Camping)を組み合わせた造語です。「テント設営や食事の準備などの煩わしさから旅行者を解放した『良い所取りの自然体験』」と定義されています(日本グランピング協会)。

グランピングの市場規模などに関する統計はありません。しかし、日本オートキャンプ協会「オートキャンプ白書2017」で示されている「オートキャンプの参加人口」の中には、グランピング施設の宿泊者も含まれているので参考になります。

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オートキャンプの参加人口が増加している背景には、30~40代のいわゆる「団塊ジュニア世代」の参加の他、グランピングやアウトドア要素を取り入れたインテリアなどの普及などがあるようです。

オートキャンプ白書では、グランピングへの興味についても調査しています。年齢が若く(20代が35.0%、30代が30.6%)、キャンプの経験年数が浅い対象者(1年の対象者が36.2%、2~3年が28.6%)ほど、関心が高くなっています。

3 グランピングのポジショニング

1)キャンパーの裾野を広げるグランピング

オートキャンプの参加人口は2016年では830万人にすぎず(オートキャンプ白書)、顧客層の拡大が業界の課題です。キャンプは自然に触れることが醍醐味です。一方、準備の煩わしさなどが参加の妨げになっているため、この問題を解消しなければなりません。

例えば、キャンプ用品などを手掛けるスノピークでは、「自宅とテントを行き来する」をコンセプトに、普段着としても違和感のないアウトドアに対応した衣料品の販売や、インテリアや料理にキャンプの要素を取り入れたレストランの運営などをしています。

これと同じ感覚で、グランピングは非キャンパーがキャンプに関心を持つきっかけとなり得ます。従来のキャンプ市場と成長余地を取り込もうとするグランピング市場の関係をポジションマップにまとめると、次のようになります。

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豪華な設備や充実したサービスが提供されることから、グランピングの利用料金は高額です。ただし、細かく見ていくと提供可能なアクティビティ、設備の充実度などで、主にターゲットとする顧客に違いも見られます。

ハイエンド志向タイプのグランピング施設にヒアリングしたところ、中心顧客は30~40代のカップルで、夏休みなどは家族連れも来るとのことです。同様に、雰囲気体験タイプの中心顧客は20代のカップルで、グループ利用も多いとのことです。

2)ハイエンド志向タイプ

広い敷地にテントやコテージが余裕を持って配置され、ぜいたくなプライベート空間が味わえます。インテリアやアメニティーなども著名ブランドで統一し、ハイキングや乗馬などのアクティビティも充実しています。施設例は「星のや富士」などです。

3)雰囲気体験タイプ

野外に設営されたテントなどで宿泊し、グランピング気分を味わえると同時に、入浴や食事などは既存の宿泊施設を利用します。施設例は「一里野高原ホテルろあん」などです。

4)レジャー充実タイプ

日帰り温泉、ゴルフ場、観光農園などのレジャー施設に併設・隣接されており、「お父さんはゴルフ、子どもたちは野山の散策」など、趣向の異なるさまざまなレジャーを楽しむことができます。施設例は「ネスタリゾート神戸」などです。

5)キャンプ場の手軽な多角化タイプ

既存のキャンプ場で、豪華な料理を食べたり、グランピング用のテントやコテージなどに宿泊したりするグランピングプランを楽しむことができます。施設例は「しのつ公園キャンプ場」などです。

6)ポジション未確定タイプ

宿泊施設は付随せず、都市部のビルの屋上や既存の結婚式場などの場所で、グランピングテイストの空間や食事を楽しむことができます。グランピング用のテントで食事ができる飲食店、グランピングウェディングなどがあります。施設例は「WILD MAGIC -The Rainbow Farm」などです。

4 広がる? ビジネスチャンス

グランピングにビジネスチャンスを見いだし、さまざまな事業者がグランピング施設の運営や関連事業に参入しています。実際に関連事業者はどう考えているのでしょうか。グランピング用のドームメーカーにヒアリングした結果は次の通りです。

  • 全国に先駆けてグランピング施設を開業した事業者は、海外で広まりつつあった豪華なイメージを打ち出すグランピングに目をつけた。これらの事業者は海外の最新のトレンドへの感度が高い、一部の富裕層を初期のメインターゲットとした
  • グランピング施設の顧客は、レジャーの選択肢として従来はキャンプを検討していなかった層が中心。ウェブサイトでグランピング施設の魅力的な内外装やたき火のイメージに引かれたことに加え、煩わしい準備がないことを評価している

同様に、グランピング用のトレーラーハウスなどを販売するメーカーへのヒアリングによると、「施設の設備などによって異なるものの、グランピング施設はホテルの建設などに比べて初期投資が少なく、地域の中小企業も参入しやすい」とのことです。

特にキャンプ関連事業者にとって、グランピング市場への参入障壁は低そうです。しかし、図表2の右側のポジションマップで示した「ポジション未確定タイプ」のように、特徴を打ち出し切れない施設も少なくないようで、今後の苦戦が懸念されます。

5 地方創生×グランピング

グランピングは地方創生の観点からも注目されています。欧米を中心に世界的にグランピングに関心を集めていることもあり、複数の自治体やDMOなどがインバウンドを含めた観光客を呼び込むために、グランピング事業に食指を動かしています。

例えば、国土交通省では、国立公園の有効活用を目的に、常設ではなく、全国各地を巡るアウトドアホテル(グランピング)を運営する企業と提携し、国立公園内でのグランピングをスタートさせようとしています。

また、岡山県赤磐(あかいわ)市は国の「地方創生拠点整備交付金」を使って、市営オートキャンプ場内にグランピング区画を整備しました。この他、土地の貸し出しなど通じて、グランピング事業を手掛ける事業者を支援しているケースも見られます。

グランピングは、土地整備、施設建設、施設運営(飲食、清掃など)など、関連事業者の裾野が広いことも特徴です。そのため、地域の関連事業者への経済効果なども期待されています。

6 開業に際しての留意点

1)運営に掛かる費用

グランピング施設の紹介や、参入を検討する事業者へのコンサルティングなどを行っているGLAMPING JAPANへのヒアリングによると、「新たにグランピング施設を開業する場合、レセプションを備え、テント3張り、ホワイトドーム(ドーム型テント)2基、コテージ5軒などを導入したケースを例にすると、水回りの整備や調度品の購入費なども含めて2億円程度は必要」とのことです。

このうち、約60%が土地の購入費や施設施工費、機材の購入費に割り当てられ、約20%がウェブサイトやプロモーション、それらの媒体に掲載するモデルやカメラマンへの支払いなどとなっています。この他、約10%が食材の購入費やメニュー考案のためのフードコーディネーターへの支払い、残る約10%がスタッフの育成費用です。

費用の中でも、広告費は重要です。顧客はイメージ画像に引きつけられる傾向があるため、モデルやプロのカメラマンを起用して、実際に訪れてみたいと思わせる画像を用意することが、プロモーションの重要なポイントとなります。

また、特に若い世代をターゲットとする場合、いわゆる「インフルエンサー」と呼ばれるインスタグラマーやYouTuberを活用し、SNSを通じて情報を拡散することも有効な方法となるようです。

2)稼働率を高める2つの取り組み

前述したGLAMPING JAPANによると、「グランピング施設の運営において、同一の敷地内でドーム型テントやキャビンなどの複数の宿泊設備を提供すること、付随するアクティビティを全て宿泊料金に含めた体系で提供することが重要」とのことです。

これにより、宿泊客を飽きさせず、明瞭会計で安心感を与えることもできます。例えば、スキー場を運営している奥伊吹観光は、夏場の収益源として、グランピング施設である「GLAMP ELEMENT」を運営しています。

同施設では、テントや高床式のキャビン、日本初上陸といわれる雨粒型のレインドロップテントなどを設置しています。宿泊料金には、朝食・夕食代だけではなく、バーでの飲食代も含まれています。2017年のオープン以降、非常に高い稼働率を誇っているそうです。

以上(2018年8月)

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変化を拒む従業員を組織変革に巻き込む技術

書いてあること

  • 主な読者:改革を進めたい経営者
  • 課題:従業員に危機感がなく、改革に対して協力的ではない
  • ポイント:組織変革の基本プロセスと従業員を巻き込むためのポイントを解説する

1 内部の人にフォーカスする

企業が改革に失敗する原因はさまざまですが、「組織内の人々を変革する」という視点の欠如が問題であることが少なくありません。企業を動かしている内部の人々が、改革を受け入れ、真剣に取り組める環境をつくるにはどうしたらよいのかを探ります。

2 組織変革に対する心理的拒否感

人は先の見えない不安定な状況を嫌い、現状を好む傾向があります。この本能的ともいえる改革に対する心理的拒否感はとても強力です。改革に対する心理的拒否感は、次のような事項に起因しているといわれています。

  • 改革により、自分たちが既得権益を失うと考えている
  • 改革を行う際に新たに発生するコストの負担が重いと考えている
  • 慣れ親しんだ習慣(仕事の進め方など)を変えなければならないと考えている
  • 改革の必要性(現状の問題点、改革後のメリットなど)を認識していない
  • 現状に不満を感じていないため、改革をしようという動機がない
  • 改革の必要性を人ごととして考えている

厄介なのは、改革によって自らが悪影響を受けることが明らかなときや、どのような影響を被るのか不透明なときだけではなく、自らにとってメリットの大きい結果が予想される場合でさえ心理的拒否感が高まってしまうことです。

特に幹部従業員の心理的拒否感は強力です。「自分が積み上げてきたものが否定される」と考えれば、企業変革の抵抗勢力となります。経営者はそのような幹部従業員を「分からず屋」と思うでしょうが、フォローしないと前に進みません。

3 組織変革の基本プロセス

1)推進チームの形成

組織変革を推進するチームを形成します。チームの人選は次の要件を重視して行いますが、注意が必要なのは、幹部従業員が企業変革に反対の場合、“計画を潰してしまう”恐れがあることです。リーダー格の従業員は慎重に選びます。

  • 社内に影響を与えることのできる人材
  • 課題に取り組むための高い専門知識を持つ人材
  • 既存のやり方にこだわらず、新しい発想ができる人材

推進チームのメンバーとしての適性は、通常の人事異動などの基準とは異なります。例えば、「仕事ができる」と社内で評価の高い従業員は、既存の業務プロセスになじんでいます。

一方、組織変革によってその業務プロセスを破壊することになるかもしれないとなると、前述の従業員には心理的拒否感が働きますし、新たな業務プロセスに適応できるかも分からないのです。

「既存のやり方にこだわらず、新しい発想ができる人材」を見つけ出す必要があります。表面上の変革者はたくさん出てくるでしょうが、本音でこう考える従業員は限られます。経営者が自ら面接をして選抜しましょう。

2)問題点などの分析

1.分析プロセスに社内人材を積極的に参加させる

問題点の分析には社内人材を積極的に参加させます。この過程で、従業員は自社の危機的状況を実感し、「このままでは、まずい!」と心理的拒否感が和らいでいく可能性があります。

とはいえ、社内人材だけに任せると、悪い要因を過小評価し、良い点を過大評価してしまうなど、自社に甘い評価を下してしまう危険性があります。また、こうしたプロジェクトに不慣れな人材だけで行うと、質の高い分析ができません。

そのため、客観的な立場から専門的な知識に基づく意見を言える人材として、コンサルタントなどの社外人材を活用することも一案です。ただし、社外人材はあくまで分析のサポート役とし、好き勝手な意見を言わせないようにします。

2.最悪のシナリオを明確にする

問題や課題を分析するときは、必ず、改革をしなかった場合の影響を明確にしなければなりません。この結果は、従業員の間に危機感を創出し、改革へのモチベーションを上げるために有効です。

また、最悪のシナリオは部門別、あるいは個人別のレベルまで細分化することで、従業員により身近な問題として認識させることができます。例えば、「全社売上高○%の減少」ではなく、「△部門の営業1課の取引先□社との取引停止」と示します。

3)ビジョンと戦略の検討

自社の将来あるべき姿を示すビジョン(全ての社内人材の行動をまとめ上げる際の指針)と、ビジョンを実現するための戦略を検討します。ビジョンを策定する際は、次の点に注意しましょう。

  • 誰もが簡単に理解でき、将来の企業像がはっきりイメージできるものである
  • 内外の人々にとって魅力的で、実現することが強く望まれるものである
  • 企業を改革することによって実現可能なものである

優れたビジョンはこれらの要件を満たしているといわれますが、実際にこれらの要件を満たした魅力的で優れたビジョンを生み出すことは容易ではありません。また、ビジョンを生み出すための簡単な方法はありません。

そのため、何度もミーティングして見直しを繰り返しながら、数カ月以上の時間を掛けることもあります。急ぐ場合は、あらかじめ期間を決定してビジョンを作成したり、目標値の設定などで代用したりする方法も検討しておく必要があります。

ビジョン作成後は、それを実現するための戦略を立案します。導入するマネジメント手法や新たな経営戦略などは戦略の一部を形成します。なお、戦略の立案は重要なステップですが、本稿は「人」を中心に取り上げているため説明を省略します。

4)危機意識とビジョン・戦略の周知

これまでのステップで検討した問題や課題、それらを放置した場合の最悪のシナリオ、それを回避するための改革に向けたシナリオ(ビジョンと戦略)を従業員に伝え、共有します。

最悪のシナリオによっては、「変わらなければならない」という危機意識が従業員に芽生えます。そして、改革に向けたシナリオを示すことによって最悪のシナリオを避けるために取り組むべき具体的な方策を示します。

このステップで重要なのは、改革を人ごとではなく自分の問題として認識させることです。また、経営者や改革推進チームのメンバーなどが中心となって、さまざまなコミュニケーション手段や機会を利用しながら、組織内部に広めていく努力も必要です。

5)計画の実行

1.改革の必要性やビジョンや戦略を繰り返し伝える

社内で共有化の進んだ危機意識や、ビジョンや戦略などの改革のシナリオを常に想起させるように、改革が成功するまで継続してそれらを伝え続ける必要があります。役員会、朝礼、ミーティングなどを利用します。

2.短期的な成果を実現する

従業員がビジョンや戦略を理解しても、思うような結果が出なければ改革に対するモチベーションが低下します。そうならないようにするためには、小さくても短期的な成果を実現していくことが大切です。

そうして短期的な成果を生み出し、「私たちの取り組みは正しい」ということを実感させることによって、改革に対するモチベーションを維持することができます。また、成功は、改革に反対している者や疑問を抱いている人に対する説得材料となります。

短期的な成果を生み出すためには、戦略立案の際に、短期的な成功が見込める段階的な目標を設定しておくことや、計画の一部を先行プロジェクトとして計画し、集中的に取り組み、短期的な成果を実現するなどの方法があります。

3.成果を適切に評価する

改革のプロセスは、短期的な成果の積み重ねです。必要に応じて人事評価制度を見直し、成功の都度適切に評価します。また、たとえ小さな成果であっても全社を挙げて喜び、成果を生み出す上で貢献した人材や部門を必ずたたえます。

4 組織変革で大切な要素

1)「慣性」を意識する

心理的拒否感は根深いため、改革が成功しているように見える状況においても、従業員の心の中には常に以前の状況に戻りたいという「慣性」が働いていることを忘れてはいけません。

この対処を怠ると、次第に従業員の間に慣性が広まっていき、改革が失敗に終わってしまう恐れがあります。慣性に流されないように、改革に対するモチベーションと勢いを維持しなければなりません。

2)反対者への対応

改革の必要性についてどれほど熱心かつ具体的な説明を行っても、改革に同意しない従業員が出てくることを経営者は覚悟しなければなりません。しかし、一口に反対者といっても、次のように「温度差」があります。

  • 表立って明確な反対行動は取らないが、改革には協力しない
  • 反対の立場を明確にした上で、改革に協力しない
  • 他の従業員に悪影響を与えるなど、改革に対してマイナスの影響を与える

反対者の意見に真摯に耳を傾けて、改革の取り組みをより多くの従業員が納得できるものにしていくことは大切です。しかし、改革を成功に導くためには、時には毅然とした態度を示すことも必要です。

3)経営者の積極的関与

経営者が全ての改革プロセスに主体的に関わる必要はありませんが、社内に明確な支持の姿勢を示すことは欠かせません。また、経営者は社内外の人々から注目されるため、改革の「語り部」として、改革後の素晴らしい未来を示すことが求められます。

改革は経営者など一部の人間の強力なリーダーシップによってもたらされると思われがちです。しかし、経営者がどれほど強力なリーダーシップを発揮しても、従業員が改革を拒めば企業は何も変わりません。

意外と忘れられがちなことですが、改革の成否は従業員の改革に対するモチベーションを高め、改革のプロセスに巻き込んでいくことができるかどうかに懸かっています。この点に十分に注意しましょう。

以上(2018年7月)

pj80010
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利益計画の作成と煩雑にならない実行方法

書いてあること

  • 主な読者:利益計画の重要性を認識しつつも、作成する時間がない経営者
  • 課題:利益計画の妥当性が分からないなど、時間がかかる
  • ポイント:経営者の夢や熱意を込めつつ、無謀ではない利益計画をまずは形にする

1 目標利益を導くアプローチ

利益計画を作成する際は、最初に利益目標を設定し、それを達成するための売上高を算出するのが通常です。ただし、単一事業で展開しているなど収益構造の変化が小さい場合は先に売上目標を設定し、そこから利益を逆算することもあります。いずれにしても、上下(売上と利益)を何度も行き来しながら確認します。

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利益計画は、「予測PL(収支の目標を示したPL)」を作成して検討します。小さな会社なら経営者が、ある程度の規模になると企画部門や経理部門が予測PLを作成します。

理想的な利益計画は、経営者の夢や熱意が伝わり、なおかつ数字に裏付けられた実現可能性が高いことです。次章ではこの中の数字に注目し、主な損益項目を予測する際のポイントを確認していきます。

2 損益項目を予測する際の勘所

1)売上高の予測

売上高の予測は、過去3~5期分の(製品別の)売上高や伸び率などを分析しながら行います。関係部門の売上見込みを足し合わせていく方法と、当該部門に精通している担当者に見積もらせる方法を併用します。

例えば、関係部門から報告される売上見込みを足し合わせる場合、現場の担当者にヒアリングすることになりますが、担当者レベルだと視野に偏りがあります。そこで、当該部門に精通している担当役職者からセカンドオピニオンを取ります。

2)製造原価の予測

製造原価は材料費、労務費、製造経費に分けて予測します。さらに、製造に直接的に関係する「直接費」と、間接的に関係する「間接費」とにも分けます。例えば材料費の場合、製品に使用される部品は直接材料費、設備のメンテナンスなどに使う工具は間接材料費となります。

分かりやすいのは、製造個数と相関性のある直接費です。こちらは製造計画を確認しながら、過去の対売上高比率を参考に予測します。原材料価格の変動や人員計画を加味することも忘れてはなりません。

一方、間接費は売上高や製造個数と相関性があるとは限らないため、予測が難しくなります。過去データを参考にしつつ、現場の担当者へのヒアリングも行うとよいでしょう。

3)販売費・一般管理費の予測

販売費・一般管理費の細かな内容は企業によって異なりますが、広告宣伝費、交際費、人件費などの勘定科目ごとに積み上げて予測します。通常、販売費・一般管理費の大部分を占めるのは人件費なので、人件費とそれ以外の経費に分けて予測するのも1つの方法です。

人件費は、人員計画と1人当たりの人件費から予測します。また、それ以外の経費は、過去データから予測するのが基本ですが、設備投資をした場合は減価償却費に関係してくるので、設備投資計画も必ず確認しましょう。

4)営業外損益の予測

過去データから予測するのが基本です。金融機関からの借り入れの条件は必ず確認しましょう。この他、投資活動を行っている場合は、外部環境についても分析する必要があります。

3 目標利益を設定する4つの方法

1)前年度実績に上積みする方法

前年度の経常利益の5%増、10%増などといった具合に、上積みの目標利益を設定する方法です。

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2)必要決算資金から決める方法

業績によって支払う配当金、役員賞与などの必要決算資金から、目標利益を設定する方法です。

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3)借入金返済額から決める方法

借入金の返済原資は利益から生まれます。そのため、借入金の返済ができる利益を目標利益として設定する方法です。

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4)売上高経常利益率から決める方法

売上高経常利益率の業界平均、上位企業の経常利益率や自社の過去3年平均の指標を参考にして、目標利益を設定する方法です。

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5)目標利益には経営者の熱意がこもる

これらは定量的な分析から目標利益を導くものであり、経営者の熱意とは別のものです。こうして設定された目標利益に対して、「こんな弱気じゃ駄目だ! もっとチャレンジングな計画を立てよう!」などと、経営者が修正を求めることは珍しくありません。

放っておくと弱気になりがちな利益計画に刺激を与える意味で、経営者の熱意は大切です。ただし、実現可能性が著しく低いものでは意味がないため、次章で紹介するように、その妥当性を評価することになります。

4 目標利益の妥当性評価と改善

1)目標利益の妥当性を検証する

当初予測した利益と目標利益とを比較すると、必ず差額が生じます。この差異をどのように埋めていくかを検討します。仮に、目標利益よりも予想した利益が低い場合は、販売計画を強化する、目標利益を引き下げるなどの施策を検討します。逆の場合は、目標利益の実現可能性や、損益項目の検討が甘くなかったかを再検証するなどを行います。

2)目標利益を高める際の考え方

仮に、目標利益を上方修正する場合、損益分岐点の観点から次の3つを検討してみるとよいでしょう。

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固定費の低減や限界利益率の向上によって損益分岐点は下がるため、利益が増加します。固定費については残業削減による人件費の削減、変動費については調達の見直しなどを検討します。また、売上の増加は、新規販売先の開拓や販売価格のアップ、値引きの停止などを検討します。

5 利益計画の実行

最終的に決定した利益計画は、経営企画部門や経理部門を通じて全社的に周知します。利益計画は実行しなければ意味がありませんが、日常業務に追われて改善活動がおろそかになり、計画倒れに終わることが珍しくありません。

そうならないように、各部門の責任者は、定期的に利益計画の進捗状況を経営者に報告するようにします。その報告には、「当初の計画に照らして状況は変化していないか」「推進上の問題点はないか」などの内容を盛り込みます。

また、3カ月に1回程度、各部門の責任者が状況の報告会を行います。その報告会には経営者も出席するようにします。もし、当初の計画に照らして状況が大きく変わっている、あるいは変わりそうなのであれば、利益計画を修正する柔軟性も必要です。

以上(2020年4月)

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特定施設入居者生活介護サービス事業の概要

書いてあること

  • 主な読者:特定施設入居者生活介護サービス事業を新たに手掛けたい経営者
  • 課題:申請に当たって必要な書類や、設備基準について知りたい
  • 解決策:介護保険法や厚生労働省令「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準」に基づき、手続きや必要なものを確認する

1 特定施設入居者生活介護事業における指定の申請

1)居宅サービス介護事業としての特定施設入居者生活介護

「特定施設入居者生活介護」とは、有料老人ホームやケアハウスなど厚生労働省令で定める特定施設に入居している要介護者等について、特定施設サービス計画に基づき、入浴、排せつ、食事などの介護、その他の日常生活上の世話、機能訓練および療養上の世話を行うことです。

特定施設入居者生活介護は介護保険制度における居宅サービスの1つです。居宅サービス事業者は都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)より指定を受ける必要があります(介護保険法第41条第1項、同第70条第1項および第2項、同第203条の2)。入居定員が29人以下の小規模施設は地域密着型サービスを行う施設として市町村長への申請になります(介護保険法第78条の2第1項)。

2)提出事項

特定施設入居者生活介護を行うために事業者の指定を受けようとする者(居宅サービス事業者)は、次に掲げる事項を記載した申請書または書類を、当該指定に係る事業所の所在地を管轄する都道府県知事に提出しなければなりません(介護保険法施行規則第123条)。特定施設入居者生活介護に係る居宅サービス事業者の指定に当たって必要となる提出事項は次の通りです。

  • 事業所の名称及び所在地
  • 申請者の名称及び主たる事務所の所在地並びにその代表者の氏名、生年月日、住所及び職名
  • 当該申請に係る事業の開始の予定年月日
  • 申請者の定款、寄附行為等及びその登記事項証明書又は条例等
  • 建物の構造概要及び平面図(各室の用途を明示するものとする)並びに設備の概要
  • 利用者の推定数(要介護者及び要支援者のそれぞれに係る推定数を明示するものとする)
  • 事業所の管理者の氏名、生年月日、住所及び経歴
  • 運営規程
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 当該申請に係る事業に係る従業者の勤務の体制及び勤務形態
  • 当該申請に係る事業に係る資産の状況
  • 指定居宅サービス等基準第192条の2に規定する受託居宅サービス事業者が事業を行う事業所の名称及び所在地並びに当該事業者の名称及び所在地
  • 指定居宅サービス等基準第191条第1項に規定する協力医療機関の名称及び診療科名並びに当該協力医療機関との契約の内容(同条第2項に規定する協力歯科医療機関があるときは、その名称及び当該協力歯科医療機関との契約の内容を含む)
  • 当該申請に係る事業に係る居宅介護サービス費の請求に関する事項
  • 誓約書
  • 役員の氏名、生年月日及び住所
  • 介護支援専門員(介護支援専門員として業務を行う者に限る)の氏名及びその登録番号
  • その他指定に関し必要と認める事項

事業所の所在地を含む区域における利用定員の総数が、都道府県の介護保険事業支援計画に定める合計数に達しているか、新たに指定することによってこれを超えることになる場合などには、都道府県知事は事業者の指定をしないことができます(介護保険法第70条第4項)。

2 特定施設入居者生活介護の事業基準、介護報酬

1)特定施設入居者生活介護の基本方針

特定施設入居者生活介護事業の人員、設備、運営に関する基準は、厚生労働省令「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「基準」)」に規定されています。

居宅サービスに該当する特定施設入居者生活介護の事業は、特定施設サービス計画に基づき、入浴、排せつ、食事などの介護、その他の日常生活上の世話、機能訓練および療養上の世話を行うことです。これにより、入居者が要介護状態などとなった場合でも、当該指定特定施設においてその有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるようにするものでなければなりません(基準第174条第1項)。

指定特定施設入居者生活介護事業者は、安定的かつ継続的な事業運営に努めなければなりません(基準第174条第2項)。

2)特定施設入居者生活介護の設備に関する基準

指定特定施設の介護居室、一時介護室、浴室、便所、食堂および機能訓練室は、次の基準を満たさなければなりません(基準第177条第4項)。

  • 1居室の定員は1人とする。ただし、利用者の処遇上必要と認められる場合は2人とすることができるものとする。プライバシーの保護に配慮し、介護を行える適当な広さであること。地階に設けてはならないこと。一以上の出入り口は、避難上有効な空き地、廊下または広間に直接面して設けること。
  • 一時介護室は、介護を行うために適当な広さを有すること。
  • 浴室は、身体の不自由な者が入浴するのに適したものとすること。
  • 便所は、居室のある階ごとに設置し、非常用設備を備えていること。
  • 食堂は、機能を十分に発揮し得る適当な広さを有すること。
  • 機能訓練室は、機能を十分に発揮し得る適当な広さを有すること。

指定特定施設は、利用者が車いすで円滑に移動することが可能な空間と構造を有するものでなければなりません(基準第177条第5項)。

指定特定施設の建物は、建築基準法に規定する耐火建築物または準耐火建築物でなければなりません(基準第177条第1項)。

指定特定施設は、一時介護室(一時的に利用者を移して指定特定施設入居者生活介護を行うための室)、浴室、便所、食堂および機能訓練室を有しなければなりません。ただし、他に利用者を一時的に移して介護を行うための室が確保されている場合には一時介護室を、他に機能訓練を行うために適当な広さの場所が確保できる場合には機能訓練室を設けないことができるものとします(基準第177条第3項)。

3)特定施設入居者生活介護の介護報酬

要介護者に対する「特定施設入居者生活介護」、要支援者に対する「介護予防特定施設入居者生活介護」の各サービスを提供した事業者には介護報酬が支払われます。

  • 介護予防特定施設入居者生活介護(介護予防給付)
  • 地域密着型特定施設入居者生活介護(定員29人以下):市町村が指定・監督権限を持ちます。
  • 地域密着型以外の特定施設入居者生活介護(定員30人以上):都道府県が指定・監督権限を持ちます。

特定施設入居者生活介護の介護報酬(1日当たり)は次の通りです。

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2018年4月の介護報酬改定において、特定施設入居者生活介護に新設された加算としては、退院・退所時連携加算、入居継続支援加算、生活機能向上連携加算、若年性認知症入居者受入加算、口腔衛生管理体制加算などがあります。

  • 退院・退所時連携加算:30単位/日
  • ※入居から30日以内に限る
  • 入居継続支援加算:36単位/日
  • 生活機能向上連携加算:200単位/月
  • ※個別機能訓練加算を算定している場合は100単位/月
  • 若年性認知症入居者受入加算:120単位/日
  • 口腔衛生管理体制加算:30単位/月

3 有料老人ホームとケアハウスの状況

特定施設入居者生活介護の指定を受けてサービスを行っているのは、主に有料老人ホームとケアハウスです。厚生労働省「社会福祉施設等調査」によると、有料老人ホームとケアハウスの施設数、定員、在所者数の推移(各年10月1日調査)は次の通りです。

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有料老人ホームは増加し続けています。これは介護専用型ではなく外部サービスを利用する「住宅型」の有料老人ホームが増加していることなどが理由にあります。

4 介護費の推移

国民健康保険中央会によると、特定施設入居者生活介護の介護費の推移は次の通りです。

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特定施設入居者生活介護の利用は拡大を続けています。指定を受ける主な施設は有料老人ホームですが、低所得者対策などからも、ケアハウスなど有料老人ホーム以外の施設の充実の重要性も高まっています。

以上(2018年10月)

pj50210
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訪問介護事業の開業手続き

書いてあること

  • 主な読者:コスト削減を進めたい経営者
  • 課題:どのような手順で、何を対象に削減していけばよいのか迷う
  • 解決策:利益に貢献しないコストを科目ごとにあぶり出し、アプローチする

1 訪問介護事業の概要と動向

1)訪問介護

「訪問介護」は居宅サービスの1つで、「要介護者であって、居宅において介護を受けるものについて、その者の居宅において介護福祉士その他政令で定める者により行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって、厚生労働省令で定めるもの」をいいます(介護保険法第8条第2項)。

訪問介護事業者となるには、都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)より指定を受けなければなりません。指定条件は、申請者が法人であり、厚生労働省令で定める基準を満たしていることです。

訪問介護サービスは「身体介護」「生活援助」に大別されます。身体介護とは「起床介助、排せつ介助、食事介助、衣服の着脱、体位交換、入浴介助」などの身体に触れる介護です。また、生活援助とは「調理、洗濯、掃除」などの身体に触れない介護です。

身体介護サービスの「入浴介護」は、利用者の自宅浴室において入浴を介助するサービスですが、別の介護サービスである「訪問入浴介護」は、特殊浴槽などの入浴設備とともに利用者宅を訪問して入浴サービスを行うものです。

訪問介護サービスの介護報酬は次の通りです。

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2)訪問介護事業者数の推移

訪問介護事業者数の推移(各年度末時点)は次の通りです。

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2015年度の介護保険法改定により、介護予防訪問介護は2018年3月をもって終了し、訪問介護に相当するサービスの提供は市町村による新しい総合事業「介護予防・日常生活支援総合事業」へ移行されました(2017年度の2948事業者については、2018年3月になってもなお、総合事業に移行せずに介護予防訪問介護サービスを提供していた事業者数です)。

介護予防・日常生活支援総合事業は、利用者の状態・意向を市町村が判断し、介護予防サービスと生活支援サービスを一体的に提供するものです。

これは、市町村が責任主体となって実施している「地域支援事業」を再編成するに当たり、全国一律のサービスの種類・内容・運営基準・単価によるのではなく、市町村の判断でボランティア、NPO、民間企業、社会福祉法人、協同組合などの地域資源を効果的に活用できるようにしていくことが目的です。

2 訪問介護事業者の指定申請

1)介護保険法の指定居宅サービス事業者としての指定申請の流れ

指定手続きの流れは、次の通りです。

  • 指定申請(都道府県知事に提出)
  • 申請の審査(書面審査)
  • 事業者指定(指定通知書の交付)

都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)による居宅サービス事業の指定は、居宅サービス事業を行う者の申請により、居宅サービスの種類および当該居宅サービスの種類に関わる居宅サービス事業を行う事業所ごとに行います(介護保険法第70条第1項、第203条の2)。

2)申請書と必要書類

訪問介護に関わる指定居宅サービス事業者の指定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書または書類を都道府県知事に提出しなければなりません(介護保険法施行規則第114条第1項)。

  • 事業所の名称及び所在地
  • 申請者の名称及び主たる事務所の所在地並びにその代表者の氏名、生年月日、住所及び職名
  • 当該申請に係る事業の開始の予定年月日
  • 申請者の定款、寄附行為等及びその登記事項証明書又は条例等
  • 事業所の平面図
  • 利用者の推定数
  • 事業所の管理者及びサービス提供責任者の氏名、生年月日、住所及び経歴
  • 運営規程
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 当該申請に係る事業に係る従業者の勤務の体制及び勤務形態
  • 当該申請に係る事業に係る資産の状況
  • 当該申請に係る事業に係る居宅介護サービス費の請求に関する事項
  • 介護保険法第70条第2項各号に該当しないことを誓約する書面
  • 役員の氏名、生年月日及び住所
  • その他指定に関し必要と認める事項

3 指定を受けるための基準

申請者は法人であることと、厚生労働省令で定める基準「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「基準」)」を満たしていなければなりません。

1)人員に関する基準(基準第5条)

指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに置くべき訪問介護員などの員数は、常勤換算方法で2.5人以上としなければなりません。

指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに、常勤の訪問介護員等のうち、利用者の数が40またはその端数を増すごとに1人以上の者をサービス提供責任者としなければなりません。

利用者の数は、前3カ月の平均値とします。ただし、新規に指定を受ける場合は、推定数によります。

指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとにもっぱらその職務に従事する常勤の管理者を置かなければなりません。ただし、指定訪問介護事業所の管理上支障がない場合は、当該指定訪問介護事業所の他の職務に従事し、または同一敷地内にある他の事業所、施設などの職務に従事することができるものとします。

2)指定訪問介護の基本取扱方針(基準第22条)

指定訪問介護は、利用者の要介護状態の軽減または悪化の防止に資するよう、その目標を設定し、計画的に行われなければなりません。

指定訪問介護事業者は、自らその提供する指定訪問介護の質の評価を行い、常にその改善を図らなければなりません。

3)指定訪問介護の具体的取扱方針(基準第23条)

訪問介護員等の行う指定訪問介護の方針は、次に掲げるところによるものとされています。

  • 指定訪問介護の提供に当たっては、第24条第1項に規定する訪問介護計画に基づき、利用者が日常生活を営むのに必要な援助を行う。
  • 指定訪問介護の提供に当たっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者またはその家族に対し、サービスの提供方法等について、理解しやすいように説明を行う。
  • 指定訪問介護の提供に当たっては、介護技術の進歩に対応し、適切な介護技術をもってサービスの提供を行う。
  • 常に利用者の心身の状況、その置かれている環境等の的確な把握に努め、利用者またはその家族に対し、適切な相談および助言を行う。

4)訪問介護計画の作成(基準第24条)

サービス提供責任者は、利用者の日常生活全般の状況および希望を踏まえて、指定訪問介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容などを記載した訪問介護計画を作成しなければなりません。

訪問介護計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画の内容に沿って作成しなければなりません。

サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成に当たっては、その内容について利用者またはその家族に対して説明し、利用者の同意を得なければなりません。

サービス提供責任者は、訪問介護計画を作成した際には、当該訪問介護計画を利用者に交付しなければなりません。

サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成後、当該訪問介護計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて当該訪問介護計画の変更を行うものとします。

訪問介護計画の変更は訪問介護計画の作成と同様の手続き、方法による必要があります。

以上(2018年10月)

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全額損金算入? 源泉課税? 福利厚生費とみなし給与の違い

書いてあること

  • 主な読者:福利厚生を充実させたい経営者
  • 課題:経営者は福利厚生費のつもりでも、給与とみなされるものがある
  • 解決策:全ての社員に公平で、かつ、社会通念上妥当な金額とする

福利厚生費(法定福利費を除く)について税務上の明確な定義はありませんが、例えば、一般的には「役員、社員、パートおよびアルバイト(以下「社員等」)に対して医療、衛生、慰安、修養等の労働環境向上のために給付する手当等(給料および交際費に該当するものを除く)」であるとされています。例えば、慰安のために行う社員旅行費や、社員食堂での昼食の提供費などがあります。

税務上、福利厚生費は損金算入できますが、そのためには、その福利厚生費が全ての社員等に公平で、かつ、社会通念上妥当な金額のものでなければなりません。逆にこれらの要件に該当しない場合、社員等に対する給与(または報酬)とみなされ(以下「みなし給与」)、予期していない課税が生じる可能性があります。

1 福利厚生費とみなし給与

1)みなし給与の考え方

みなし給与とは、福利厚生の目的で給料以外の名目で支払われる手当等のうち、所得税法上「給与所得」とみなされるものです。所得税法上、支給により社員等が享受した経済的利益が社会通念上、相当であると認められない場合には、福利厚生費ではなく、みなし給与と判定されます。

みなし給与として所得税法上の給与所得に該当する場合、勘定科目が福利厚生費で計上されていたとしても、源泉所得税を徴収(以下「源泉徴収」)すべき費用となり、所得税および復興特別所得税(以下「源泉所得税」)が課されます

なお、以降では、福利厚生費を源泉徴収の必要がない費用、みなし給与を給与所得に該当し、源泉徴収の必要がある費用として解説していきます。

2)社会通念上とは

「社会通念上」について税務上の明確な定義はありませんが、一般的に通用している社会常識などと解されます。社会通念は不確定な概念であるため、一般的な事例については、所得税が課されるか否かについて、所得税法基本通達に判定の目安が示されています。また、実際に判断する際には、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

3)みなし給与と判断された場合の税務リスク

会社側で福利厚生費として処理していた支払いを、税務調査でみなし給与と判断された場合は、源泉所得税が追加的に課されます(以下「追徴課税」)。さらに、ペナルティーとして次の附帯税が課されます。

  • 源泉所得税を納付期限までに納付しなかったことに対するペナルティーとしての不納付加算税(納付すべき源泉所得税額の10%相当額)
  • 納付期限から実際に納付した期間に応じた利息に相当する延滞税(納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて計算した金額)

また、役員に支給した福利厚生費がみなし給与に該当する場合は、社員と同じく源泉所得税が追徴課税され、さらに、みなし給与相当額が法人税計算上の損金に算入されず、法人税についても追徴課税されます

2 福利厚生費になるか否かの判断に迷いやすい事例

会社が負担した費用が福利厚生費となるか、みなし給与となるかは、その費用の内容や支払いの経緯などから総合的に判断する必要があります。以降では、福利厚生費に該当するか否かが問題となりやすい一般的な事例を紹介します。

なお、原則的に源泉所得税が課される支払いについても、宿直・日直その他特殊な業務に従事しているなど一定の事情がある場合には、源泉所得税が課されないケースもあります。また、役員に提供する社宅など、役員に支給した福利厚生費については、取り扱いが異なる場合があるため注意しましょう。

1)社員等に支給するお祝い金等がある場合

社員等またはその親族の慶弔禍福(結婚・出産・入院など)に関して、会社の規程など一定の基準に従って支払われ、金額も社会通念上妥当なものについては、福利厚生費となります。具体的には結婚祝い、出産祝い、香典、病気見舞いなどです。

また、新型コロナウイルス感染症に感染した社員等に支給する一定の見舞金などについても、源泉所得税は課されません

2)社員慰安旅行を実施する場合

会社が社員等の慰安のために行った旅行で、社会通念上一般的なものに係る費用については、次のいずれの要件も満たしている場合に、原則、福利厚生費となります。 

ただし、会社が慰安旅行に参加しなかった社員等に対し、その参加に代えて金銭を支給する場合、または役員だけを対象として旅行費用を負担する場合には、みなし給与となり、源泉所得税が課される可能性があるので注意が必要です。

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること。なお、海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。

3)社員等に食事を提供する場合

社員等に支給する食事の費用は、次の2つの要件をどちらも満たしている場合に限り、福利厚生費となります。そうでなければ、食事の価額から社員等の負担している金額を差し引いた金額が、みなし給与となります。

  • 社員等が食事の価額の半額以上を負担していること。
  • 次の金額が1カ月当たり3500円(税抜き)以下であること。
    (食事の価額)-(社員等が負担している金額)

4)社員等に借り上げ社宅などを提供する場合

会社が社員等に対して借り上げ社宅や寮などを貸与し、社員等から1カ月当たり一定額の家賃(一定の算式で計算した金額。以下「賃貸料相当額」)以上を受け取っている場合には、その借り上げ料と受取家賃の差額は福利厚生費となり、源泉所得税は課されません。なお、次の場合には、それぞれ扱いが異なるため注意が必要です。

1.無償で貸与している場合

賃貸料相当額がみなし給与となります。

2.社員等から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の49%以下である場合

受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額がみなし給与となります。

3.社員等から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上である場合

受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、福利厚生費となります。

5)特許等を受けるまでには至らない発明や工夫に対して報奨金等を支給する場合

社内提案制度など一定の基準に従って、作業の合理化、製品品質の改善や経費の節約などにつながる工夫・考案をした社員等に対して報奨金等を支払う場合には、次のように取り扱います。

1.その工夫・考案がその社員等の通常の職務の範囲内である場合

支払った報奨金等の金額は社員の給与となります。

2.その工夫・考案がその社員等の通常の職務の範囲外である場合で、一時に支給するもの

支払った報奨金等の金額は、社員等の一時所得となり、会社は源泉徴収の義務がありません。報奨金等が一定額以上の場合には、社員等本人が確定申告をする必要があります。

3.その工夫・考案がその社員等の通常の職務の範囲外である場合で、その工夫・考案の実施後の成績等に応じ継続的に支給するもの

支払った報奨金等の金額は、社員等の雑所得となり、会社は源泉徴収の義務がありません。報奨金等が一定額以上の場合には、社員等本人が確定申告をする必要があります。

なお、社員等が特許を取得できる発明をしたため、報奨金等を支給する場合等は、取り扱いが異なるので注意しましょう。

以上(2020年7月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 富永慎也)

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【事業承継】後継者候補となる従業員の見極めポイント

書いてあること

  • 主な読者:主な読者:後継者候補を見つけたい経営者
  • 課題:後継者候補を見つける際の参考となる考え方が知りたい
  • ポイント:ポジティブ、謙虚、勤勉を基準とする

1 経営者の根本的な仕事は2つ

経営者にとって「100年企業」は1つの夢です。この夢を実現するために経営者がやるべきことは、「利益を出し続ける」「人を育てる」です。企業は利益を出し続けなければ存続できません。そして、利益の出る事業を立ち上げて遂行するのは「人」です。そのため、経営者は人を育てなければなりません。

経営者が将来の経営幹部の卵を見いだすに当たって参考になるように、経営幹部に求められる素養をまとめます。

2 ポジティブであること

1)ポジティブだからつかめるチャンスがある

将来の経営幹部に求められる最も基本的な条件は、ポジティブ(前向き)であることです。ポジティブな経営幹部は組織に明るさと活力を与え、ビジネスのちょっとした変化からチャンスを見いだす可能性が高まるからです。

ビジネスでは「規制改革が行われた」「相手の担当者が変わった」など、常に変化があります。ここで、「新しい規制に対応すればチャンス」とポジティブになるのと、「この忙しいのに厄介だ……」とネガティブになるのとでは、次の行動の質が違います。

実際に規制改革がチャンスになるかどうかは分かりません。しかし、やってみなければ何も起こりません。であるならば、前に進むために行動を起こしたほうが可能性も広がります。

経営幹部が組織に与える影響は大きいものです。ポジティブな経営幹部が率いる組織は明るく積極的で、ネガティブな経営幹部が率いる組織は暗く消極的です。ビジネスチャンスをつかめるのは、ポジティブな経営幹部が率いる組織です。

2)失敗しても立ち上がる強さを組織に浸透させる

従業員がポジティブであるか否かは、日ごろの言動を見ていればある程度分かりますし、経営者があえて難題を任せてみるのも一策です。そのとき、「よし! やってやる」と前向きに取り組む姿勢が見られれば合格です。

中には、内心はやる気に満ちているのに、それを表に出さない従業員もいます。こうした従業員は、「やる気を見せたのに、失敗したら恥ずかしい……」と考えているのかもしれませんが、このような考え方は経営幹部としてはふさわしくありません。

「一勝九敗」という経営者がいるように、失敗することのほうが多いのです。そのため、経営幹部には、失敗しても何度でも立ち上がる心の強さが必要であり、それを組織に見せることで「折れない組織」をつくることができます。

3 謙虚であり、短慮でないこと

1)謙虚でなければ成長できない

経営幹部は、常に新しいことにチャレンジしなければなりません。とはいえ、自分一人でできること、学べることは限られています。そのため、経営幹部はたくさんの人と出会い、謙虚な姿勢で人と接し、多くのことを吸収していく姿勢が求められます。

従業員の謙虚さが垣間見られる1つの例は、上司からちょっと面倒な指示を受けたときです。指示の内容をよく考えもせず、反射的に「でも……」「難しいですね……」などと言っているようでは失格です(きちんと考えた上での回答ならば問題ありません)。

部下の立場で考えれば、上司の指示は大概面倒なものであり、「なぜ、そんな細かいことまで指摘されなければならないんだ」と感じることが少なくないはずです。しかし、上司は何らかの目的や意図がなければ部下に指示を出しません。

親の説教のありがたさが、年を取ってから分かるのと同じで、その場では分からないかもしれませんが、上司の指導は部下の成長を促すものです。この点をわきまえ、上司の面倒な指示に聞く耳を持てる従業員が経営幹部に向いているといえるでしょう。

2)短慮は単なる思考停止

ただし、謙虚に相手の話を聞くとはいっても、相手が言っていることや、目に見えたことだけで全部を把握したつもりになり、単純に物事を判断してしまうのでは短慮であると言わざるを得ません。

周囲の人が常に正しいことを教えてくれるわけではありません。上司の指示もしかりです。経営幹部になることを期待されている従業員であれば、相手の話を受け入れつつ、「本当にそうなのか? もっと良い方法はないのか?」と考える姿勢が必要です。

これは相手の話を聞くときに限ったことではありません。例えば、「Aさんが新規取引先を獲得して1000万円を売り上げた」としましょう。まずは同僚の成功を祝福する素直さと、次は自分が売り上げてやるという意気込みが必要です。

ただし、「Aさんはすごい! 1000万円の売り上げのおかげで今月の目標が達成できた。自分も頑張ろう!」と漠然と考え、それで終わっているようでは、経営幹部としては物足りません。

企業経営の観点からいえば、1000万円を売り上げた理由やその手法を分析し、横展開して再現することが重要です。成功は一瞬にして次の取り組みのプロセスに組み込んでいかなければならないのです。

Aさんがどのような営業手法を取ったのか、あるいはAさんの他にその活動を側面サポートしたBさんの功績が大きいのではないかなど、物事の本質を捉える姿勢は常に求められます。

これはとても大切です。経営幹部になると、自分の部下だけではなく、顧客や取引先も評価しなければならなくなります。経営幹部の役割は、目に見えることを正確に把握しつつ、それを深掘りして将来を見据えた戦略を検討・遂行することです。

4 勤勉であること

1)意気込みだけでは太刀打ちできない?

ビジネスは決断の連続です。正しい決断ができる確率を高めるには、会計・法務・労務など多分野にわたる正確な知識が不可欠です。そのため、経営幹部には、ビジネスの多分野にわたる正確な知識を貪欲に吸収し続ける勤勉さが求められます。

決断すべき事項や局面によって異なりますが、経営幹部として最低でもその分野の入門書と初級の専門書をそれぞれ1冊読むべきです。それらを読んだ上で生じた疑問を解消するため、専門家からコメントをもらう程度のことも必要でしょう。

一方、何かを決断する際、情熱や意気込みが重要だとする従業員がいます。確かに情熱や意気込みは不可欠ですが、知識が圧倒的に不足している状態で動くのは危険過ぎます。知識と情熱のバランスを取る必要があります。

2)勤勉+勉強好き=指導力

経営幹部は勤勉でなければ務まりませんが、加えて勉強好きであることが理想的です。自分が知らないことを一から勉強するのは楽ではありませんが、勤勉でしかも勉強好きな従業員であれば、楽しみながらコツコツと取り組むことができるでしょう。

一生懸命に勉強すれば「分からないことが分かるようになる」という、ごく当たり前のことを経験している従業員が経営幹部になれば、自身の経験も踏まえ、勤勉であることの大切さを部下に教えることができます。

部下がその影響を受けて勤勉になれば、組織全体の知識量が増えていきます。そうして蓄えられた知識や物事を学ぶ姿勢は、何か新しいことを始めるときだけではなく、既存事業の見直しの際にも役立ちます。

一方、勤勉でない人は知らないことから逃げる癖がついています。そうした従業員が経営幹部になると、自分が知らないことは部下に丸投げし、部下から上がってきた報告書の質を判断することもできず、そのまま上司や顧客に提出してしまいます。

従業員が勉強家であるか否かは、日ごろの仕事への取り組みを見ていれば分かります。知識は勉強量に比例して増えていくため、勉強している従業員の発言や報告書の内容は明らかにレベルアップしていきます。

これに対して、いつも同じことばかりを言っている従業員は勉強していない可能性があります。発言に進歩がないのは、勉強して自分の知識や意見をブラッシュアップしていない証拠だといえるでしょう。

5 全体の利益を考えられること

1)24時間仕事のことを考えられるか?

「24時間仕事のことを考えられるか?」というと、違法な長時間労働を強制したり、人権を無視したような言動を繰り返したりする「ブラック企業」を連想する人がいるかもしれません。

ここでいう「24時間仕事のことを考えられるか?」というのは、文字通りに24時間働くということではなく、「どれだけ当事者意識を持って仕事に取り組むことができるか」ということの1つの例えです。

経営者にとって仕事は自分の一部であり、夢の中で出てきたアイデアを枕元に置いてある紙にメモをすることもあるほどです。文字通り、「寝ていても仕事のことを考えている」わけです。経営幹部にも、こうしたマインドが求められます。

2)全体を意識して行動できるか

全体を意識して働くことは、当事者意識を持って働くということに他なりません。従業員が当事者意識を持つと、視野が広がり、自分のことだけではなく全体の利益を意識できるようになっていきます。こうした従業員の意識の変化は、ちょっとした行動にも表れます。

例えば、定期的に社内清掃をしている場合、従業員の動きを確認してみましょう。全体のことを考えている従業員は、いつも共用スペースの掃除から始めます。自分のデスクは日ごろから整理整頓されているので、すぐに共用スペースの掃除ができるのです。

自分を犠牲にするわけではありません。しかし、仕事と真剣に向き合うと、会社や同僚のために自分は何をすべきかを考え、それが言動に表れてきます。社内外の全体に目を配れる視野の広さや部下への配慮は、経営幹部が人を導く上で不可欠な素養です。

以上(2020年7月)

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