社内の情報流通をブロックする「門番社員」を排除せよ!

書いてあること

  • 主な読者:自身と他の部下との間に入って「門番」になってしまう部下がいる
  • 課題:門番にもやる気はあるが、他の部下の成長に悪影響を及ぼす
  • 解決策:上司がつとめてフラットかつ平等に接して、情報の非対称性をなくす

1 特定の部下に頼り過ぎてはいけない?

来年度の行動計画を検討している中堅社員のAさん。人、つまり部下に関する課題解決が重要だと認識しています。Aさんが最も憂慮している課題は、機能するチームづくりです。

Aさんのチームは5人です。このうち、Aさんの考えを理解して、自主的に活動してくれるのはBさん1人だけで、残りの4人は指示された仕事しかしません。自主的に活動しようとする部下もいますが、何から始めたらよいのか分からないようです。

こうなるとAさんはBさんに頼るようになりますが、チーム内でコミュニケーションの偏りが生じると、Bさん以外の4人の活動がますます停滞します。どうしたらよいのか、AさんがC部長に相談したところ、C部長は次のように返しました。

「優秀なBさんに頼るのは当然だけど、与える権限は調整しないとね。例えば、他の部下がAさんに話をする際、必ずBさんを通すような体制になっていると、チームのコミュニケーションは停滞し、部下の成長機会も失うことになるよ」

2 部下を門番にしてはいけない

優秀な部下は上司とともに行動する時間が長く、かばん持ちや秘書(スケジュール調整)のような役割を担います。こうして、上司が会う相手、商談の内容、ビジネスの進め方などを学んでいくわけです。上司としても優秀な部下を育てたいと思っているので、特に重要なシーンでは同行させます。また、一部のスケジュール管理も任せるようになるため、その部下は上司のスケジュールを把握するようになります。

こうなったときに生じる、上司が意図しない現象が優秀な部下の“門番化”です。以下、門番化した部下を「門番」と表記します。上司と話をするには必ず門番を通したり、上司の考えを本人ではなく門番に確認したりする体制になっていくのです。

皮肉なことに、この傾向は一生懸命に働いている上司のチームほど顕著です。こうした上司の威厳は高く、多忙のため、部下はなかなか話す機会のない上司に畏怖の念を抱くため、門番に頼るようになります。

これはいけないと感じた上司は、全ての部下を平等に扱おうとするかもしれません。しかし、経験の浅い部下や、やる気が乏しい部下に時間を割いて、優秀な部下と接する時間が減ることの機会費用は小さくありません。

では、上司はどうするべきなのでしょうか。まず、上司の考え方、スケジュール、経費(交際接待費など)の使い道などの情報を平等に知らせます。こうすることで、門番による偏った情報統制を回避でき、チームに平等感が広まります。

一方、部下が上司から与えられた情報を活用して具体的にどのような行動を取るかは、部下自身に任せます。こうすると、優秀な部下や、やる気のある部下が自然と目立つようになってきます。

3 能力不足の部下をフォローする

部下の中には、上司の方針を踏まえ、いかにも“もっともそう”なことを言うものの、何ら行動を起こさない人が少なくありません。このタイプは、何も考えていない口だけの部下と、やる気はあるが何をしたらよいか分からない部下に大別されます。

後者のやる気はあるが何をしたらよいか分からない部下には、何らかのケアをしなければなりません。重要なのは、思考と行動をセットにすることと、期限を設けることの徹底です。

思考と行動をセットにすることについては、1~2カ月に1回の頻度で個別面談をすると効果的です。部下が次の面談までにすべきことを決めていくのです。なお、最初は様子見ということで、上司は細かな管理などはせずに部下に任せてみます。

その結果、上司が納得できるスピード感で行動できている部下はそのままでよいでしょう。一方、面談では目標に納得しているようだが、ほとんど行動を起こすことができない部下には、期限を設ける必要があります。

具体的には、部下と一緒に行動を分解し、優先順位付けも行います。部下が動けない理由は、「能力がない」「時間がない」「優先順位が分からず混乱している」といった3点に集約されます。

行動を分解し、優先順位付けを行うことで問題は切り分けられます。「いつまでに何をする」ところまで明確なのに行動できないのは、その時点では部下の能力が不足しているということなので、目標のレベルを下げる必要があります。

部下の人数にもよりますが、この取り組みを上司1人で行うのは負担が重くなります。そのため、一部の取り組みについては優秀な部下に任せるようにします。ただし、優秀な部下が門番化しないように注意することは不可欠です。

4 自分で人材を見つけ、採用する

ここで紹介してきたのは、今いるメンバーの力を高めていくための取り組みです。一方、新しいことを始める場合には、新たなメンバーを迎え入れなければならないこともあります。

最近は空前の人手不足で、いわゆる「リファラル採用」(社員による人材の紹介や募集)が中小企業に広まっています。採用はこれまで人事の仕事でしたが、リファラル採用では、上司が自分の欲しい人材を積極的に見つけられるようになります。

今、自分のチームに不足しているのはどのような人材なのか、上司が一番理解しているはずです。部下の成長を待つ時間はなく、全社的に人手不足で補充が見込めないのであれば、人事と連携しながら、自らメンバーを探してくることも大切なのです。

以上(2021年9月)

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画像:gstockstudio-Adobe Stock

成果と出口戦略を決める/経済性と社会性を両立させる中小企業のSDGs(2)

書いてあること

  • 主な読者:SDGsに本格的に取り組みたいけれど、企業としての損得勘定も気になる経営者
  • 課題:経済性と社会性を両立させるSDGsの取り組み方を知る
  • 解決策:取り組みの成果を誰が褒めてくれ、どんな経済的なメリットがあるのかという出口戦略を決める。必要であれば行政などへの提言事業も行ってメリットを引き出す

1 SDGsで経済的なメリットを享受するのに必要な「出口戦略」

第1回では、コロナ禍において、新しいビジネスモデルへの転換が求められている中で、

「もっと社会課題、そして政府や地方自治体が作る政策に目を向け、経済性と社会性の両立を目指すことが、中小企業のSDGsの取り組み方である」

と、お話しさせていただきました。また、具体的に自社の事業と政策のマッチングの仕方も示させていただきました。

ただし、実際に政策とマッチングさせた事業に取り組んで成果を上げ、経済的なメリットを享受することは、口で言うほど簡単ではありません。行政など社会課題の解決に取り組むプロ集団とパートナーになり、運動(成果を作るアクション)を行う必要があります。

今回は、こうした運動の仕方を含め、

最終的にSDGsで経済的なメリットを享受するまでの「出口戦略」を決める方法

についてお話をさせていただきます。

2 成果を得るための運動は「推進事業」と「提言事業」の2つ

第1回でご説明したように、SDGsの取り組みで鍵になるのは、ビジネスに取り組んでいるプロ集団である企業と、社会課題の解決に取り組んでいるプロ集団である行政やNPOという、両プロ集団の融合です。両プロ集団の融合は、解決する社会課題を決める段階では自社の事業と政策とのマッチングでしたが、成果を得るために運動する段階での両プロ集団の融合は、企業が行政やNPOなどとパートナーとして連携することを意味します。

では、両プロ集団を融合させ、成果を得るための運動とは、具体的にはどんなアクションでしょうか? 私が共同代表を務める一般社団法人SDGsマネジメント(以下「SDM」)では、「推進事業」と「提言事業」の2つがあると定義しています。

第1回でも紹介した、SDMで共同代表をしている西岡徹人さんが経営するSUNSHOW GROUP(以下「SG」)による女性活躍の推進を例に、2つの運動の方法をご説明します。

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1)推進事業

「推進事業」の第一歩は、自社が目指す成果と、行政などが後押ししている政策をマッチングさせることです。政府は女性活躍の推進にあたり、女性活躍推進法という法律を策定し、女性採用比率の向上、勤続年数の男女格差是正、労働時間の適正化、女性管理職比率の向上などを指標に掲げて、企業の女性活躍を後押ししています。

その一環として厚生労働省では、「えるぼし認定」という企業認定制度を準備し、企業の女性活躍への取り組みを見える化し、社会的に評価できるような仕掛けを展開しています。SGでは、厚生労働省をパートナーにすることに決め、同省が推進するえるぼし認定を取得しました。

ただし、SGの推進事業のポイントは、えるぼし認定の取得だけを成果とせず、女性従業員が活躍できるような環境づくりを目指す部門「チーム夢子」を創設するという、自社で独自に決めた成果を連動させていることです。

政府が制定する認定制度系の推進事業は、取得したら終わりという企業が少なくありません。認定を取得することは、「政府からのお墨付き」としてとても重要なことなのですが、我々が目指すべき成果とは、持続的に社会課題を解決する仕組みを作ることです。

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2)提言事業

次に「提言事業」についてご説明します。SDMでは提言事業を「政策の弱点を捉えて、自ら仮説を立案し、対象地域を決めて、プロ集団とのパートナー連携を通じて社会実験を行い、エビデンスを集めて検証すること」と定義しています。推進事業による成果だけでは経済的なメリットが得られにくいと感じた場合、提言事業によって世論や行政などに働き掛け、メリットを享受できるようにするための運動です。

具体的に、SGでの事例をお話しします。前述の通り、SGはえるぼし認定という制度を活用しました。ですが、残念ながらこのえるぼし認定という制度だけでは、女性活躍推進政策として完璧なものとはいえませんでした。

SDMは2020年、企業のえるぼし認定取得を後押しするため、女性活躍推進アドバイザーによる無料相談事業を支援しました。ところが、コロナ禍ということもあるかもしれませんが、正直に申し上げると、中小企業の皆さまの反応は良くありませんでした。SDMが社会保険労務士や専門家の皆さまと検証した中では、「えるぼし認定だけでは、中小企業にとって女性活躍を推進するインセンティブが感じられない」との意見が多く出ました。

これを受けてSGは、他の企業も女性活躍の推進に取り組みやすくなるようなメリットが明らかになる仮説を立証するために、一般社団法人WOMAN EMPOWERMENT PLATFORM(以下「WEP」)を立ち上げました。WEPでは、「どんな中小企業でも女性と男性が力を合わせ、得意なことを活かしあうことができる」という仮説を立証するための社会実験を行い、その経過を発信しています。SGでのビジネス上の成果に加え、WEPでの社会実験の成果についても、西岡さんを通じて厚生労働省に伝えられますので、政策の変化も期待できます。なお、一般社団法人を立ち上げる意義については、次回に詳しくご説明させていただきます。

3 出口戦略は「褒めてもらう」ことから始まる

最後に、経済的なメリットを享受するための「出口戦略」について話をします。企業が社会課題の解決に取り組むときに陥りがちなのが、「自己満足」です。設定した成果は、誰が幸せになっているのでしょうか? 誰が褒めてくれるのでしょうか? 出口戦略は、それが「誰か」を、事前にしっかり決めておくことから始まります。

SGの事例の場合、女性活躍のための推進事業は、直接的に「お客さまから褒められる」ことは目指していません。むしろお客さまには見えない部分であり、「女性活躍を推進しているのでSGから家を買う」という動機付けにもなりません。SGの女性活躍推進事業は、「厚生労働省から褒められる」「従業員から褒められる」「金融機関から褒められる」「報道機関から褒められる」ことを出口戦略にしています。結果として、褒められることが「生産性の向上」「離職率の低下」「金融評価の向上」などのメリットに結び付いているのです。

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また、提言事業の出口戦略は、行政などに提言を受け入れてもらうことです。ですが、提言は行政にとって耳の痛い話です。行政の立場で見れば、自分たちがやってほしいこと(推進事業)をやってもくれない企業から、正論であっても耳の痛い話は言われたくないでしょう。SGは政策推進をしっかりと実行することで、厚生労働省や地元の岐阜市に提言を受け入れてもらいやすい良好な関係を構築しているので、提言事業についてもしっかりと出口を確保することができています。

4 ここまでのまとめ

ここまでの話で、経済性と社会性を両立させるために決める、成果と出口戦略をイメージすることはできましたでしょうか? 最後に、成果と出口戦略の思考フローを整理します。

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第3回は、推進事業と提言事業という2つの運動について深掘りしながら、SDGsの究極の形ともいえる、SDGsをビジネスモデル化するためのパートナーシップによる価値創造についてお話をします。

以上(2021年9月)

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画像:Adobe Stock-Sakosshu Taro

【従業員が交通事故!】責任割合はどうなる? ①同幅員の交差点

書いてあること

  • 主な読者:社有車の事故防止に力を入れたい経営者や運行管理責任者ならびに運転者
  • 課題:交通事故の基本的な責任割合や未然防止策を知りたい
  • 解決策:過去の裁判例に基づく基本的な責任割合と場所や状況に応じた事故防止策を理解する

1 今回の現場と事故の状況を把握します。

今回の事故状況はこちらです。A(自社の青い車)が、交差点でB(相手方の赤い車)と接触してしまいました。双方ともに、直進しようとしていたそうです。

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【A車:自社車両 B車:相手方車両】

一般的に交差点で確認すべきポイントは、主に以下の5点です。

①信号の有無
②双方の道路幅
③交通規制の有無
④センターラインの有無
⑤双方の速度

その他、双方の進行方向(直進、右折、左折など)、車の損害状況や通行した時間帯なども把握しておくと、責任割合を判断する参考になります。また、最近ではドライブレコーダーを搭載した車両も多くなってきました。ドライブレコーダーの機種によっては、時間経過するとデータが自動消去されるものや、走行すると上書きされてしまうものもありますので、事故を録画したデータの保全も重要です。

2 今回の責任割合を、見てみましょう。

1)責任割合の決まり方は?

双方に責任が生じる事故の場合、主に加入している保険会社が窓口となって、相手保険会社と交渉します。過去の裁判例を参考に、実際の事故状況に応じて責任割合を話し合い、決定します。

2)今回の責任割合は?

過去の裁判例より、A(自社の青い車)60%:B(相手方の赤い車)40% が基本の責任割合となります。

今回は信号機や一時停止等の規制がなく、どちらの道路も同じ幅でセンターラインがありません。双方同程度のスピードで接触した場合の基本の割合です。

道路交通法では、左方優先(左側の車を優先)とすることが定められています(道路交通法36条1項1号)。そのため、左方側のB車の割合が10%程度少なくなることが一般的です。

※実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容とは異なる結果になる場合もあります。

3 事故を未然に防ぐポイントは?

交差点は建物やブロック塀などで見通しの悪い場所も多く、左右の安全を走行しながら確認するのは、難しいケースもあります。

  • まずは、交差点進入時はスピードを落とす
  • 次に、左右の安全が確認できる地点まで、減速しつつ進む(カーブミラーも活用)
  • さらに、車や自転車が突然出てくる事も想定し、慎重に走行する

ことで、事故のリスクを軽減することができます。

車の運転は一人で行う業務のため、運転者本人が「事故を絶対に起こさない。」という意識を強くもち、事故を起こさない運転行動を自主的に行うことが重要です。

また、管理者は運転者がそのような意識をもち、日々実践できるように組織的なサポート・指導・管理を行う必要があります。

以上(2021年9月)

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本記事で紹介している責任割合は、過去の裁判例を参考にした基本的な割合です。実際は、それぞれの事故状況に応じて個別に決定されます。そのため、記載の内容と異なる結果になる場合もあります。

組織を速く動かすために必要なのはアクセル人材よりもブレーキ人材

書いてあること

  • 主な読者:プロジェクトなどを率いる立場になってきた中堅社員
  • 課題:スピードをあげるために「イケイケ」で進もうとするが、危ういところがある
  • 解決策:アクセルを踏む人材だけではなく、ブレーキを踏める人材を側におく

1 流れを途絶えさせる(?)意見

現在、中堅社員のAさんの会社では、全社を挙げて業務効率化プロジェクトを推進しており、Aさんはそのプロジェクトの責任者を任されていました。業務効率化は喫緊の課題であり、これまでにもさまざまな案が出され、既に実行に移されているものも数多くあります。

今は、各部署のメンバーが集まったオンラインミーティングの最中です。既にスタートしている取り組みの進捗状況や成果報告、新たな業務効率化策の検討を行っています。

そこで、あるメンバーから、新たな業務効率化案が提案されました。そのメンバーの説明では、大きな効果が見込めるとのことで、Aさんをはじめ、各メンバーもすぐにでも取り組みを始めるという方向で議論が進んでいました。そのような中、メンバーのBさんが発言をしました。

ちょっと待ってください。その部署では既に多くの取り組みが始められています。それらは、まだ部署内で定着しておらず、効果測定も十分ではありません。その上、この案を進めれば、業務に混乱を来してミスが発生したり、社員の“業務効率化疲れ”を招いたりしないでしょうか。その辺りを確認しつつ、場合によっては、現在の取り組みの優先順位の見直しや、この案の延期や中止も視野に入れて、もう少し慎重に検討しませんか。

Bさんの発言で、盛り上がっていた会議が静まり返ってしまいました。

2 カーレースで勝つためのポイント

中堅社員が円滑に業務を進めていくためには、信頼のおける部下が必要です。その部下に求める基準や役割はさまざまですが、大切なポイントの一つに

適切にブレーキを踏むことができるか

ということがあります。適切にブレーキを踏むことのできる人(以下「ブレーキを踏む人」)とは、組織の流れや雰囲気に流されず、また自身の利害関係を問わずに、そこに潜むリスクなどを見つけ、必要に応じて建設的な対策を提案したり、時には「反対だ」という意見を、毅然として主張したりできる人です。

しばしば、「カーレースで重要になるポイントは、ブレーキングにある」といわれます。これと同じで、組織が“速く走る”ためには、アクセルを踏む人だけではなく、ブレーキを踏む人も重要な存在です。

中堅社員が、その役割を担うこともできますが、自分とは違った視点からブレーキを踏む人が身近にいることは、意思決定の質を高める上で大切になります。

3 ブレーキを踏む人はなぜ貴重か

反対意見を言える人をそばに置くことの大切さは、よく指摘されます。そのため、ブレーキを踏む人のような存在の重要性は認識している人が多いでしょう。しかし、ブレーキを踏む人は多くありません。それは、ブレーキを踏む人になるためのハードルが高いからです。例えば、ブレーキを踏む人には次のような要素が欠かせません。

1)相応の知識や経験

ブレーキを踏む人は、決して保守的であったり、自身の保身を図るために反対したりしてはいけません。また、人の好き嫌いで物事を判断するような人でもありません。ブレーキを踏む人は、各局面において是々非々で考え、ブレーキを踏む必要性、踏むときのタイミングを考慮した上で、適切な意見を表明できる人です。

こうした判断を下すには、業務に関する知識・経験が必要ですし、実務の流れや組織の現状などを、しっかりと把握していなければできません。

2)組織への高い貢献意欲や使命感

通常、ブレーキを踏むことで、“得”をすることはありません。冒頭の例でいえば、業務効率化という実績が上がれば組織での評価は高まります。メンバーは昇進・昇格するかもしれません。

しかし、Bさんのようなブレーキを踏む人は、ともすると「抵抗勢力」「後ろ向きの人」などと、否定的な評価をされがちです。また、ブレーキを踏むことに対する明確な評価基準はないので、昇進・昇格につながることも少ないです。

そのため、社員の中には「ブレーキを踏むべきだ」と思っていても、「ここで言っても、何の得もない」などと考えて、実際に発言を控えるような人もいます。それにもかかわらず、ブレーキを踏めるというのは、その人が「組織を、より良くしたい」「組織のために役立ちたい」といったような、組織への高い貢献意欲や使命感があるからです。

4 育てるために上司が気を付けること

ブレーキを踏む人を育てるために大切なことは、月並みかもしれませんが、上司がその人の意見や行動を認め、感謝の思いを示すことです。

昇進・昇格などの形で報いることも大切です。しかし、組織への高い貢献意欲や使命感がある人は、それと同等、あるいはそれ以上に、上司の「ありがとう」という言葉で、自身が認められているという事実を意気に感じます。

例えば、重要案件について意見を聞くようにすると、その人は「上司に信頼されている」「組織に必要とされている」ということを実感するものです。

また、ブレーキを踏む人は、社内で相応の役職にいることが一般的なため、上司は「職務上、当然のこと」と考え、その後のフォローを怠りがちです。しかし、「ありがとう。あの意見は役に立ったよ」などといった一言も効果があるので、そうした配慮を忘れないようにしましょう。

以上(2021年9月)

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画像:khosrork-Adobe Stock

【朝礼】営業力を高めるために必要な3つのこと

私が通うクリーニング店には、2通りの店員がいます。白いシャツをクリーニングに出すことが多い私に、「シャツ1枚につきプラス15円で襟をより白く仕上げるサービスがおすすめです。いかがですか」と提案してくれる店員と、そうした提案を全くしてくれない店員です。

前者の場合、白いシャツを着る機会が多い私は喜んでそのサービスを利用します。後者の場合、仕方なく私のほうからそのサービスをお願いすることになります。するとその店員は、「1枚プラス15円かかってしまいますが、よいですか」と聞いてきます。まるで、私に対して悪いことをしているかのように。そう聞かれた私は、後者の店員の「営業力の低さ」をもどかしく思います。同時に、我が社の社員は、前者の「サービスを自ら前向きに提案できる店員」のようにあってほしいと願うのです。実際のところ、皆さんはどちらの店員に近いのでしょうか?

日ごろから皆さんに言っている通り、お客様に提案するのは悪いことではありません。むしろ、お客様は提案を待っています。状況にもよりますが、商品やサービスを提案してくれる皆さんのことを、お客様は、「自分のことを考えてくれているのだな」と好意的に感じるものです。

皆さんがお客様に提案できないのは、「何を提案すべきか分からない」「断られたりしたくない」と思うからかもしれません。中には、営業しようという意識を持てていない人もいるでしょう。

こうした状況を変え、営業力を高めてお客様に自ら提案できるようになるために、今日から次の3つのことを実践してください。

まず1つ目は、数字に敏感になることです。皆さんは今期の売上目標が分かりますか? 会社の売上と営業利益を知っていますか? 一番大きな売上のお客様とその金額をすぐに答えられますか? こうした数字は営業の基本です。売上や利益といった数字に敏感になることで、営業しようという意識も芽生えてくるでしょう。

2つ目は、我が社の商品やサービスをよく知ることです。特に、商品やサービスの「おすすめポイント」は必ず押さえておきましょう。コストや納期を含め、お客様にどのような価値を提供できるのかを知っていれば、「何を提案すべきか分からない」ということはなくなるはずです。

そして3つ目は、お客様のことをよく知ることです。それには、接する機会を増やすことが大切です。私が皆さんに、少なくとも月に1度はお客様と話をするように言っているのはそのためです。今どきはSNSを使っているお客様も多いので、それをチェックするのもよいでしょう。お客様の投稿、どのようなセミナーやイベントに顔を出しているかを見れば、お客様が今、何に関心を持っているかが分かるからです。

この3つのことを積み重ね、ぜひ一度、営業で成功体験をしてください。それこそが、皆さんの営業力の大きな肥やしになるでしょう。

以上(2021年9月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「なぜ」を考えたくなる提案があります

先日、ウェブサイトのマーケティングをしている人と話す機会があり、「ウェブサイトの利用状況を分析する秘訣」を聞きました。印象に残った部分を皆さんにお話しします。

さて、皆さんは、ウェブサイトの利用状況を分析するにあたり、一番重要なことは何だと思いますか。考え方は人それぞれですが、その人が重要だと言っていたのは、

「なぜ」と思えるかどうか

でした。集計データを見て、「ウェブサイトの訪問数が増えた、あるいは減った」を把握して終わりではなく、「それはなぜだろう」と思ってもう一歩調べを進めてみる。例えば、月間でウェブサイト全体の訪問数が増えたなら、「前月に比べてどのページの訪問数が増えたから全体が増えたのか」を調べていく。減った場合もしかりです。

そして該当するページが分かったら、今度は、「なぜ、そのページの訪問数が増えたのか」「どんな人が訪問しているのか」とさらに調べを掘り下げ、「こういう人が、こういう理由で訪問するケースが増えていると思われる」と仮説を立てていく。こうして、一つひとつの事象に「なぜ」と思い、掘り下げていくことが、分析とその後の改善には欠かせないのだそうです。

これは、ウェブに限らずビジネス全般に通じることではないでしょうか。例えば、お客さまから要望を聞いたときや苦言を呈されたとき、皆さんは「なぜ」と思い、尋ねることができますか。

あるいは、「今月はこの商品が売れた、問い合わせが多かった」「今期の売り上げが前期を上回った」といった状況に対して、「なぜ」と思い、理由を知ろうと行動できるでしょうか。

お客さまの要望や苦言の理由を知れば、お客さまの本音、やりたいことが見えてくるかもしれません。また、商品の売れた理由が分かれば、次の商品開発に活かせるでしょうし、前期を上回る売り上げに何が寄与したかが分かれば、それを次の営業活動や、リソース配分に活かせるでしょう。このように、「なぜ」の理由には、ビジネスを前進させるヒントがたくさんあると思います。

また、別の角度から見ると、

「なぜ」と思えるのは関心があるから

ともいえます。恐らく、ウェブサイトの分析でも、「訪問してくれた人をもっと知りたい」と思うことが、「なぜ」の源泉になっているはずです。

同じように、お客さまや商品、売り上げに関心を寄せれば、おのずと「なぜだろう」と理由が知りたくなるのではないでしょうか。

そこで、皆さんに提案です。毎月、チームで「今月、人気があった商品はどれか。それはなぜか」を話し、発表し合ってみましょう。自分一人では見えていなかったお客さまのやりたいことや商品の良さに、気付けるかもしれません。そして何より、「なぜ」の理由を考えるのは、皆さんの知的好奇心をくすぐる面白いことだと私は思うのです。

以上(2021年8月)

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画像:Mariko Mitsuda

人材流動化が進む時代の上司道。部下への「感謝」の気持ち忘れないこと

書いてあること

  • 主な読者:人材流動化が進む時代の上司のあり方について迷っている人
  • 課題:部下の至らないところばかりが目についてしまう
  • 解決策:部下への感謝の気持ちを忘れない。また、実際に部下に感謝の気持ちを伝える

1 部下を失う上司の気持ち……

中堅社員のAさんは、システム部に所属しています。今夜は今月末で転職する同僚Bの最後の出勤日です。同僚Bは学生時代の友人に誘われて、その友人が働いている会社に転職することを決意したそうです。要するに、引き抜きです。詳細は不明ですが、噂によると同僚Bの労働条件は今よりも良くなるようで、システム畑の人間としては、キャリアアップにつながるチャンスです。

システム部の部長も加わって、会話をしています。笑顔は絶やしませんが、部下が去っていく寂しさは隠しきれません。いずれAさんも上司になり、部下を本気で叱ったり、部下を失ったりすることもあるでしょう。そのために学ぶべきことが多いと感じる夜でした。

2 人は意外と簡単に辞めていく?

多くのビジネスパーソンにとって、人(上司、部下、同僚など)は、そこに居ることが当たり前の存在になっているのではないでしょうか。

しかし、役職が上がってくると、そのように楽観的な考え方はできません。なぜなら、人は意外と簡単に会社を去っていくからです。特に人材流動化が当たり前になりつつある今はなおさらです。実際、「今よりも良い条件の会社に誘われたとき」「家庭の事情で働き続けることが難しくなったとき」「上司や同僚とどうしても反りが合わないとき」「仕事に飽きてしまったとき」。このような状況に置かれたら、今の会社を去るというのも有力な選択肢になるはずです。

役職が上がるということは、それだけキャリアを積んできた証しです。自身の退職を真剣に考えたことがあるかもしれませんし、部下の退職を経験しているかもしれません。そうした中で、人に対する認識が、居ることが当たり前の存在から、居てくれることがありがたい存在に変わっていくのです。

3 感謝の気持ちが前提

こうした感覚は、自分が率いる組織が大きくなるほど強くなります。組織が大きくなるということは、自分の目が行き届かない範囲が広がり、部下に任せなければ回すことができない仕事が増えるということです。

上司は、部下に「仕事が遅い!」「仕事が雑だ!」などと不満を感じますが、部下の仕事を全て上司が行うことはできません。上司から見て至らないところが多くても、自分の指示を聞いてくれる部下が居るからこそ仕事が成り立つということです。上司は部下に感謝しなければなりません。

4 自分よりも優秀な部下を求める

しかし、世の中には「自分の指導の至らなさ」が分からない上司が多いものです。そして、そうした上司ほど、部下にドリームチームのような働きを求めます。

ただし、ここで確認しておきたいのは、上司自身がドリームチームを率いるのにふさわしい指揮官であるかということです。皆さんが部下を持つ場合、自分よりも「能力が高い部下」と「能力が低い部下」のどちらを求めるでしょうか。

ドリームチームを求めるならば、自分よりも能力が高い部下を求めるはずですが、実際は自分よりも能力の低い部下を集める上司が少なくないようです。そのほうが、部下を従わせやすいからです。

にもかかわらず、自分よりも能力が低い部下にドリームチームのような働きを求めるということに、大きな矛盾があります。役職に応じて仕事の難易度も上がります。困難な仕事をやり遂げるためには、自分よりも優秀なメンバーを確保し、マネジメントできる上司にならなければなりません。

5 上司の人間性

昨今では、Aさんの同僚Bのように他社から引き抜かれる社員もいれば、逆に自社が他社から引き抜くこともあります。

そのような状況で、自分よりも優秀なメンバーを確保し、マネジメントしていくことは容易ではありませんが、特に優秀な部下は飽きやすいことを念頭に置いておきましょう。

部下から見たときに、直属の上司が、そのまた上司から指示されたことだけを黙々とこなす人だったらどうでしょうか。刺激や新鮮さが感じられずに閉塞感を覚え、新天地を探したくなるかもしれません。

こうしたことがないように、特に優秀な部下に対しては新しい仕事を任せるようにしましょう。期待以上の成果を上げることもあるはずです。

また、上司は謙虚さと誠実さを忘れてはいけません。ダメな上司は、目の前の“大人”が、部下として自分の指示に従ってくれることのすごさに気付かず、部下を気遣いません。部下は、そのような上司についていきたいとは思わないでしょう。上司と部下といえども、最後は人と人との関係です。上司は部下のことを尊重し、真摯に向き合わなければなりません。

6 上司の器がはっきりと分かるのは?

最後に、自分の部下が転職によって会社を去る場合を考えてみます。転職の理由はどうあれ、部下が会社を去っていくのはつらいものです。

しかし、上司が意識すべきは会社に残る部下です。その部下たちは、会社を去っていく部下にどのように接するかをよく観察しています。もし、去っていく部下に嫌みの一つでも言おうものなら、たちまち「器の小さい上司」のレッテルを貼られ、後のマネジメントに悪影響が出るでしょう。Aさんの上司であるシステム部の部長が送別会で笑顔を絶やさなかったように、上司は寛容な姿勢を示さなければなりません。

また、昨今では一度会社を去った社員が出戻ってくることが珍しくありません。あるいは、ビジネスパートナーになる可能性もあります。つらくても先々のことを考え、笑顔で部下と握手をして別れることが上司には求められるのです。

以上(2021年9月)

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画像:fizkes-Adobe Stock

KPIを使って、全社一丸で業績改善/経営者のためのファイナンス講座(7)

書いてあること

  • 主な読者:将来の意思決定に役立つファイナンス思考を身に付けたい経営者
  • 課題:業績改善のために、何から取り組めばよいのか判断が難しい
  • 解決策:KPIに分けることで、原因把握、改善の優先順位付け、そしてアクションがとりやすくなる

1 利益はKPI達成の積み重ね

KPI(Key Performance Indicator)という言葉を聞いたことはありますか? この10年ほどでよく耳にするようになった言葉なのですが、日本語では、

KPIは重要業績評価指標

といった意味で使われています。例えば、製造業の材料歩留り率や稼働率、営業であれば受注率などがこれに当たります。

最終的な業績というのは、利益で表現されることが多いものですが、直接利益を上げようと思っても難しいものです。KPIを用いて改善に取り組むことで、最終的に利益を上げることにつなげるのです。

KPIは横文字3つの略称ということで、難しいのではないかと警戒される方もいるかもしれませんが、ポイントだけ押さえればKPIは使い勝手がいいものです。中小企業で実際に使えるKPIのポイントを、今回は見ていきたいと思います。

2 KPIに分けることで、取り組みやすくなる

在宅勤務が増えてから、自宅の電気代が上がり、困っているという話を聞くことがあります。私も以前電気代の高さに驚いて、利用明細を確認したことがありました。

利用明細には、請求される電気代の金額はもちろん、併せて電気代の計算の基となった使用量や単価が載っています。電気代が高いといっても、使用量の問題なのか、それとも単価の問題なのか、両方あり得るのです。つまり、電気代を下げたいのであれば、まず、どちらの問題なのかを確認する必要があります。

また、使用量については、前年同月比や前月比なども載っていることが多いです。これを使えば、いつからどれだけ上がっているか、その傾向や原因も分かるかもしれません。さらに、単価は電力会社などが決めることなので、新電力に切り替えない限り、自分では対応することはできません。自分で取り組めるのは、使用量だけなのです。

このように、電気代は私たちにとって身近な例ですが、ここにもKPIは存在します。分かりやすく言うと、

使用量は、家計に残るお金(=利益)を増やすためのKPI

となるのです。また、KPIは、ただ定めるのではなく、それを改善することが最終目的です。ですから、この場合では、在宅日数を確認したうえで、在宅日数と1日当りの使用量のどちらに原因があるのかを確認してみるのもいいでしょう。つまり、ここで大事なのは、

KPIに分けることで、原因把握、改善の優先順位付け、そしてアクションがとりやすくなる

ということです。

3 KPIは、指標を選んで数字を決める

電気代の例で、1日当りの使用量をKPIとして選んだとします。次に行うのは、水準を決めることです。例えば、1日当りの使用量を10%削減するといった感じです。会社でKPIを運用するときの流れもまさに同じです。利益に影響を与える項目を分解して、その中から指標を決定します。そのうえで、どの水準を目指すかを数値で表すのです。

例えば、コンビニエンスストア(以下「コンビニ」)では、たびたびこんなキャンペーンをやっているのを見かけます。「700円買ったらスピードくじを1回」。なぜ700円かといえば、これも実は、売上のKPIが理由なのです。小売業の売上は主に客数と客単価に分解されるので、客単価を上げれば伸びます。チェーンによって異なるものの、一般にコンビニの客単価は600円程度と言われます。もし、あと100円で700円になって、スピードくじが引けるのであれば、本来は買う予定がなかった商品を手に取るかもしれません。これが客単価アップのからくりで、そうした最後の購買を後押しするために、レジ周りには手に取りやすい、100円程度のまんじゅう類などが並べられているのです。

4 誰が担うかを明確にするのも大事

客単価を上げるための取り組みでも、担当する部署や人によって出てくる案は異なります。前述した陳列方法の工夫は店舗指導をする担当者によるアイデアでしょうし、スピードくじは販売促進を担当する人のアイデアでしょう。

会社で、KPIを運用するときも、誰に依頼するかは大事です。それにより、期待できる効果の大きさが変わるからです。経営者や経理担当者は、KPIの指標と水準を決めたあとに、最適な担当者を選ぶのを忘れないでください。コンビニの例の通り、1つのKPIに対して影響を与えるのは1つの部門や担当者だけとは限りません。全社を見る視点から、現状を踏まえて見極める必要があるということです。

5 KPIは先行指標だからこそ役立つ

利益改善のためにKPIは役立つと言いました。しかし、なぜKPIを設定するのでしょうか。直接、利益改善を狙えばよいとも考えられます。

こうしない1つの理由は、

利益は多様な勘定科目から計算されるものなので、要因を区分けしないと取り組みにくい

ことあがります。利益はまさに会社全体の活動の「結果」なので、社内で仕事を分担しているのと同様です。改善したい場合には、KPIとして分担し直す必要があるのです。特に、各部門にとっては利益といわれても理解しづらく、さらには自分たちのアクションにつながりづらいので、KPIというわかりやすい言葉に「翻訳」しているのです。

もう1つの理由は、

利益が計算されるのには時間がかかるので、速報として状況を把握するのにKPIの方が適切

だからです。経理が月次決算で利益を算出するのに、数日は要します。それを見てから改善のためのアクションをとるのでは、遅い場合があります。そこで、KPIを通じて状況を早期に把握して、必要な場合には対処を早めにとることを可能にします。つまり、KPIは、利益を生み出すためのPDCAサイクルをタイムリーに回すのに役立ちます。

6 業績改善のためには、KPIの通訳に

この連載で扱うファイナンスの目的は、業績を良くすることにあります。まさにKPIは、業績改善には欠かせない各部門のアクションを促すのに効果的なツールといえます。

各部門に動いてもらうには、正しく理解してもらうのが不可欠ですから、各部門になじみが深いKPIを使うのが効率的なのです。

KPIは業務の理解がないと難しい場合もあるかもしれませんが、業績改善の効果は期待できます。また、KPIは各部門の方と話すときの共通言語のようなものです。多くの場合、各部門の従業員は会計に対する理解が深くないため、利益で話しても難しいことが多いものです。

全社の業績を担う経営者や経理の方には、

利益とKPIのあいだで自在に翻訳できる通訳になっていただく

ことが不可欠といえます。

以上(2021年9月)
(執筆 管理会計ラボ 代表取締役 公認会計士 梅澤真由美)

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令和3年度の最低賃金額改定と業務改善助成金

1 改定の仕組み

厚生労働大臣から諮問を受けた中央最低賃金審議会が、「中央最低賃金審議会目安に関する小委員会」により審議を重ね、取りまとめた「目安に関する公益委員見解」などを、地方最低賃金審議会に示します。各地方最低賃金審議会では、この答申を参考にしつつ、地域における賃金実態調査や参考人の意見などを踏まえた調査審議のうえ、答申を行い、各都道府県労働局長が地域別最低賃金を決定することとなります。

2 今回の答申のポイント

今回の中央および地方最低賃金審議会の答申のポイントは以下の通りです。

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3 業務改善助成金の拡充

今回の答申で盛り込まれた業務改善助成金は、設備投資により生産性を向上させ、事業場内最低賃金の引き上げを図る中小企業を支援するものです。8月から、この助成金に賃金引上げ対象人数で最大10人以上の枠が増設され、助成上限額が450万円から600万円に拡大されました。以下にその特例の概要をお伝えします。必要な要件などの詳細は厚生労働省のHPでご確認ください。

(1)特に業況の厳しい事業主への特例

 ① 対象人数の拡大・助成上限額引上げ

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 ② 設備投資の範囲の拡充

現行では自動車(特種用途自動車を除く)やパソコン等の購入は対象外とされていますが、コロナ禍の影響を受ける中にあっても、賃金引上げ額を30円以上とする場合には、生産性向上に資する自動車やパソコン等も補助対象に拡充されます。

(2)全事業主を対象とする特例

 ① 45円コースの新設

 ② 同一年度内の複数回申請

通常、同一年度内の複数回の受給は認められていませんが、特例により年度内に2回までの申請が可能となります。

4 さいごに

コロナ禍冷めやらぬ中での最低賃金の改定によって、事業運営に大きく影響を及ぼす企業もあるでしょう。雇用を維持し生産性を向上するために、本助成金の活用を検討してみてはいかがでしょうか。

※本内容は2021年8月13日時点での内容です

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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「あなたの得意分野は何ですか?」 ~得意分野を中心に大きく広がる活躍のフィールド~

書いてあること

  • 主な読者:自分の得意分野を持ちたい入社3〜5年の社員
  • 課題:得意分野を持つことに半信半疑で、なかなか具体的な行動に移せない
  • 解決策:「社内で相対的に強いではなく、社外でも絶対的に強い」を意識する

1 得意分野があるってうらやましい!

人事部に配属された入社5年目のAさん。これまで営業や調達の仕事をしてきたAさんにとって、人事部は全くの別世界で、日々、戸惑いの連続です。

同じ時期、人事部にはもう1人の新人が配属されました。中途採用のBさんです。Bさんは前職でも人事部で働いており、社会保険労務士の資格も持っています。人事の仕事は慣れたものです。そんなBさんの姿を見たAさんは、「得意分野があるってすごいな。それに比べて俺ときたら……」と、肩を落としてしまいました。

昼休み、落ち込むAさんに課長が声を掛けました。「焦る必要はないぞ。Bさんは人事の経験者で、Aさんとはそもそもスタートが違うのだから」。するとAさんは、「しかし、Bさんは転職してきたばかりですよね。どこに行っても通用する得意分野があるのはうらやましいです」と言いました。それを聞いてニヤッと笑った課長は、「じゃ、Aさんも得意分野を持てばいいよ!」。

2 自分の得意分野を持とう!

「自分の得意分野を持たなければ!」

これは、入社3~5年程度の社員が直面しがちなテーマです。一通りの教育を受けてビジネスパーソンとしての基礎体力がついてくるこのころ、次のステップとして自分の得意分野を意識し始める社員が少なくないためです。

得意分野はそう簡単に持てるものではなく、継続的に努力する必要があります。あえてそれにチャレンジしようとするのは、その社員が次のようなことを認識したのでしょう。

  • 将来、実現したいビジネスや自分が活躍したいフィールドが明確になってきた
  • 目標となるビジネスパーソンを見つけ、それに近づきたいライバルを見つけた
  • 手痛い失敗して、切実に自分の能力向上をしたい

これは、ビジネスパーソンとしての目標が明確になってきているということであり、中堅社員が半歩先に進んだ証しです。

3 なぜ、得意分野を持つとよいのか?

1)深掘りの仕方が身に付く

専門性を高めるためには、1つの分野を深掘りしなければなりません。それも、正しい手順で、適切な場所を掘らなければ、知識は効率的に身に付きません。資格取得などを通じて専門性を高める過程で、課題に取り組む際の正しいアプローチの方法と、これまで気付いていなかった物事の奥深さを知ることができます。

2)成長が加速する

1つの得意分野を持つことは、自分がビジネスパーソンとして成長していくための足掛かりになります。1つの分野を深掘りしたときの成功体験と失敗体験、その際に獲得した知識を整理するために作った“器”(頭の中の引き出し)が、別の分野を深掘りする際に生かされるため、以前よりも効率的に知識を吸収することができます。

3)良質な人脈が広がる

資格取得のために勉強する中で知り合う人々は、皆、同じ目標に向かって努力している仲間です。目標を共有しているということで互いに心を開きやすく、関係が深まっていくことも珍しくありません。そこから広がっていく人脈はとても貴重で、有力な情報源にもなります。

4)経験が糧になる

得意分野を持つためには継続した努力が必要で、時にはプライベートを犠牲にしなければならないこともあります。そうしたつらい経験は、自分の“心”を鍛えてくれます。何らかの試練に遭遇したとき、「あのときに克服できたのだから、今回も大丈夫!」と、自分自身を勇気づけてくれるでしょう。

5)継続的な取り組みになる

得意分野を確立するのは容易ではありませんが、それ以上に、得意分野を維持することのほうが大変です。状況は刻々と変化するため、常に知識を正確で最新の状態にアップデートしておかなければなりません。これを継続することができれば、知識の幅はますます広がり、その分野に明るいといわれる人よりも有利になります。

4 基準は「社外でも絶対的に強い」こと

人は意外と物事を知りません。そのため、ある事柄についてちょっと勉強しただけで、周囲よりも情報通になれます。しかし、ちょっと勉強した程度の中途半端な知識では得意分野とはいえません。どこまで深掘りしていくかの基準を設けましょう。

分かりやすいのは資格の取得ですが、資格制度が整備されていない分野の場合は、“他流試合”をして、確かめてみましょう。その分野について学んでいる人が集まっている勉強会などを見つけ、積極的に参加してみるのです。そうした場でも、自分の知識が十分に通用するようならば、社外でも絶対的に強いレベルといえます。

以上(2021年9月)

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