現場力を強化するためのヒント

書いてあること

  • 主な読者:価値を生む現場づくりを目指す経営者
  • 課題:現場力が優れている企業となるために押さえておくべきポイントを知りたい
  • 解決策:社員をまとめ上げるために欠かせないのが、「人に対する信頼感や親近感」、あるいは少し強い表現で言えば「忠誠心」といったものである。そのため、日頃のコミュニケーションの積み重ねなどが重要になる

1 現場力とは

現場力とは、「自主的に問題を発見し、それを解決できる社員が集まる現場に備わる力」です(論者によって異なります)。現場は日々の業務を担う場であり、あらゆる企業に存在します。

現場は「企業の価値を生む場」と言い換えることができ、その優劣は企業の競争力に大きな影響を与えます。経営者なら自社の現場力を少しでも高めたいと考えるはずです。それは、現場力に優れている企業と劣っている企業とでは、次のような違いがあるからです。

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2 「7つのS」に見る組織変革のヒント

現場力を高めるには、さまざまな施策を多面的に実施し、社員の意識、あるいは組織全体を変革していく必要があります。その際に参考になるのが、「マッキンゼーの7Sモデル」です。

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7つのSは、「ハードS:Strategy(戦略)、Structure(組織構造)、System(システム・制度)。ソフトSよりも変えやすい」と「ソフトS:Shared value(共通の価値観)、Style(経営スタイル・社風)、Skill(スキル・能力)、Staff(人材)。強制的または短時間で変えることは困難」に大別されます。

組織変革を進める際、ビジョンの策定などハードSの整備に注力してしまいがちです。社員からの支持を得られるかは別として、極論を言えばハードSは経営者がトップダウンで変えることができるなど、取り組みやすいからです。

一方、ソフトSには社員の価値観が反映される必要があるため、変えるには時間を要します。以降では、変えることが難しいソフトSの4要素の視点から、現場力を高めるための取り組みを考えていきます。

3 ソフトSを高める

1)Shared value(共通の価値観)

現場力を高める素地となる共通の価値観を社員が共有できるようにします。共通の価値観を共有する方法として、「クレド(企業の信条や行動指針を簡潔に記したもの)を導入するなど、現場での判断基準を示すルールを明文化すること」が考えられます。

クレドは、経営者がトップダウンで作成することもできますが、社員がボトムアップで作成したほうが現場の実情に即した内容が盛り込まれ、組織に浸透しやすいことがあります。

2)Style(経営スタイル・社風)

経営スタイル・社風は社内で緩やかに共有されているものであり、クレドのようにはっきりと明文化できるものではありません。しかし、社員は少なからず経営スタイル・社風に影響を受けて業務を進めていることを意識しましょう。

経営スタイル・社風を社内に浸透させる方策として、「自由に意見を言い合うことのできる場を積極的に設ける」などが考えられます。また、経営者が朝礼や社内報などを通じて、経営スタイル・社風を体現しているエピソードを紹介することも効果的です。

3)Skill(スキル・能力)

現場力を発揮している状態とは、現場の社員が単に目の前にある問題解決や改善活動に取り組むだけではなく、より高いレベルで業務を遂行しようとしていることです。社員には「問題を発見・指摘する力」「問題を解決する力」が求められます。

社員に「問題を発見・指摘し、解決する」ことを体感するために、「『目安箱』のような制度を整備し、業務のやり方、社内の制度で疑問に思っていることなど、日々の業務で感じている問題を指摘してもらう」などの方法が考えられます。

社員が問題を発見・指摘した後は、どのような解決策を実施するのか、また、その結果など、問題解決に至るまでのプロセスを掲示板に貼り出すなどして、現場で問題を共有できるようにします。

4)Staff(人材)

現場力を高めるためには、「経営者と現場をつなぐ人材」が不可欠です。マネジャーなどの立場にあるミドルマネジメントに、「共通価値観を共有する、経営スタイルを浸透させる、社員のスキル・能力を引き出す」ための取り組みを促進してもらいましょう。

例えば、「社員のスキル・能力を引き出す」といった取り組みを促進するのであれば、社員とのコミュニケーションを通じて、日々の業務で感じている問題点を聞き出し、それをどう解決すればよいのかアドバイスを与えたり、一緒に考えたりしてもらいます。

4 現場力を高めるための視点

1)レビンのモデル

現場力を高める取り組みを一過性のものとしないために、心理学者のクルト・レビンが提唱した「1.解凍→2.変革・移動→3.再凍結」の順で変革を進めていくモデルが参考になります。これを実施することで、時間を経るに従って現場力を高めていくことができます。

なお、「1.解凍」は社員に変革の必要性を理解させ、新たな変化に向けての準備を促す段階、「2.変革・移動」は組織に新しい行動基準や考え方を導入する段階、「3.再凍結」は新しい行動基準や考え方を定着させて高める段階のことです。 

2)経営者、ミドルマネジメントといったリーダーが現場を動かす原動力となる

現場力を高めるためにさまざまな取り組みを実施していくことになりますが、社員には賛成派も反対派もいるので、全社員を巻き込んで取り組みを進めることは簡単ではありません。

社員をまとめ上げるために欠かせないのが、「人に対する信頼感や親近感」、あるいは少し強い表現で言えば「忠誠心」です。例えば、「以前社長と懇親会で話したときに、自分の話を真剣に聞いてくれた」「マネジャーの○○さんはいつも自分をサポートしてくれているから、あの人が困っているなら力になりたい」といったようなことです。

一見、小さなことに思えますが、こうした小さなコミュニケーションの積み重ねや、社員のことを気に掛けている姿勢が、社員を動かす力になるということを忘れてはいけません。

以上(2018年10月)

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地域密着型サービスの概要

書いてあること

  • 主な読者:地域密着型サービスについて知りたい経営者
  • 課題:サービス内容が数種類に分かれているので、各サービスの概要を把握したい
  • 解決策:地域密着型サービスは9種類。地域密着型介護予防サービスは3種類で、高齢者の状況などによってサービスが分かれている

1 地域密着型サービスの概要

1)地域密着型サービスとは

超高齢社会を迎え、認知症の高齢者や一人暮らしの高齢者の増加が見込まれています。地域密着型サービスは、高齢者が身近な地域での生活を継続できるようにするためのサービスです。

地域密着型サービスには、介護給付および予防給付の対象となるサービス、介護給付のみ対象となるサービスがあります。事業者の指定や監督は市町村が行います。

施設などの規模が小さいので、利用者のニーズにきめ細かく応えることができます。事業者が所在する市町村に居住する者が利用対象者となっています。

2)地域密着型サービスの種類

1.定期巡回・随時対応型訪問介護看護

日中・夜間を通じて、訪問介護と訪問看護を一体的に、またはそれぞれが密接に連携しながら、定期巡回訪問と随時の対応を行います。

2.看護小規模多機能型居宅介護(2015年4月に「複合型サービス」から名称変更)

小規模多機能型居宅介護と訪問看護の複数のサービスを組み合わせ、看護と介護サービスの一体的な提供により、医療ニーズの高い要介護者を支援します。

3.夜間対応型訪問介護

夜間に定期的な巡回をしたり、通報によって居宅を訪問したりして、排せつの介護、日常生活上の緊急時の対応を行います。

4.地域密着型通所介護

日中、小規模のデイサービスセンターなどにおいて、入浴、排せつ、食事などの日常生活上の世話、機能訓練などを日帰りで提供するサービスです。

地域密着型通所介護は、2016年4月1日に創設され、これに伴い、従前の小規模な通所介護事業所については、地域密着型通所介護事業所に移行しました。なお、小規模な通所介護を地域密着型サービスへ移行させるに当たり、地域との連携や運営の透明性を確保するための運営推進会議の設置などの新たな基準が設けられました。また、療養通所介護、認知症対応型通所介護に関する規定についても、同様の改正が行われています。

5.認知症対応型通所介護

脳血管疾患、アルツハイマー病などにより認知機能が低下した高齢者に対して、通所介護事業所などにおいて、入浴、排せつ、食事などの介護、機能訓練を提供します。

6.小規模多機能型居宅介護

デイサービスを中心に、高齢者の状態や希望に応じて、訪問介護やショートステイなどを組み合わせてサービスを行います。

7.認知症対応型共同生活介護

認知症の高齢者が9人以下の少人数で共同生活しながら、入浴、排せつ、食事などの日常生活上の世話、機能訓練などを提供するサービスです。

8.地域密着型特定施設入居者生活介護

介護専用の有料老人ホーム(定員29人以下)などで、食事、入浴などの介護や機能訓練を提供します。

9.地域密着型介護老人福祉施設入所者生活介護

小規模な特別養護老人ホーム(定員29人以下)で、入浴、排せつ、食事などの介護サービスや機能訓練、健康管理サービスを提供します。

2 地域密着型介護予防サービスの概要

1)地域密着型介護予防サービスとは

地域密着型介護予防サービスとは、地域密着型サービスを提供する施設において提供される介護予防サービスのことをいいます。地域密着型介護予防サービス事業者の指定は、市町村長が行います(介護保険法第115条の12)。

地域密着型介護サービス事業者で、介護予防サービス(要支援者向け介護サービス)を提供したい場合、地域密着型介護予防サービスの指定を併せて受ける必要があります。

2)地域密着型介護予防サービスの種類

1.介護予防小規模多機能型居宅介護

介護予防小規模多機能型居宅介護とは、居宅要支援者について、その者の心身の状況、その置かれている環境などに応じて、その者の選択に基づき、その者の居宅において、または所定のサービスの拠点に通わせ、もしくは短期間宿泊させ、当該拠点において、その介護予防を目的として、入浴、排せつ、食事などの介護その他の日常生活上の支援であって、厚生労働省令で定めるものおよび機能訓練などを行うことをいいます。

2.介護予防認知症対応型通所介護

介護予防認知症対応型通所介護とは、居宅要支援者であって、認知症である者について、その介護予防を目的として老人デイサービスセンターなどに通わせ、当該施設において、厚生労働省令で定める期間にわたり、入浴、排せつ、食事などの介護その他の日常生活上の支援であって、厚生労働省令で定めるものおよび機能訓練などを行うことをいいます。

3.介護予防認知症対応型共同生活介護

介護予防認知症対応型共同生活介護とは、要支援者であって、認知症である者について、その共同生活を営むべき住居において、その介護予防を目的として、入浴、排せつ、食事などの介護その他の日常生活上の支援および機能訓練などを行うことをいいます。

3 地域密着型サービスの事業者数、介護費

1)地域密着型サービス事業者数

地域密着型サービス事業者数の推移は次の通りです。

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ほとんどの事業所では、介護給付の対象となる事業所の指定と、予防給付の対象となる事業所の指定を併せて受けています。

2)地域密着型サービスの介護費

地域密着型サービスの介護費の推移は次の通りです。なお、介護費は介護給付と予防給付の合計値です。

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介護費はいずれの地域密着型サービスにおいても増加傾向にあります。国民健康保険中央会では介護予防給付のみの数値を非公開としています。そのため、同中央会の統計からは地域密着型介護予防サービスについての介護費を把握することができません。

地域密着型サービスの中で、認知症対応型共同生活介護が多くを占めており、介護費は増加を続けています。介護度の高い要介護者が増えるに伴い、認知症高齢者も増加しており、施設が整備されるとともに介護費についても拡大の一途です。

以上(2018年10月)

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「価値創造」思考でゲームチェンジャーになる

書いてあること

  • 主な読者:新規ビジネスを考える経営者
  • 課題:ビジネスチャンスを発見するに、ゲームチェンジャーの思考を身に付けたい
  • 解決策:価値創造のための思考法やフレームワークを紹介する

1 ゲームチェンジャーに必要な発想

ビジネスでもプライベートでも、多くの人はこれまでの経験や知識に照らして物事を考え、意思決定する傾向があります。これは、大きな失敗につながりにくい安全な考え方といえます。しかし、ビジネスの場合、ここから一歩飛び出さなければ、既存の枠にとらわれない、自由な発想でビジネスを創造していく“ゲームチェンジャー”にはなれません。

本稿では、「思考」に焦点を当てながら、価値創造の取り組みを円滑に進める上で押さえておきたい、基本的なポイントを紹介していきます。

2 創造すべき真の価値とは

1)真の価値はどこにあるのか?

価値創造の取り組みを考える前に、創造すべき価値とは何かを考えてみましょう。それは、「競合他社より魅力的で、消費者から支持を得られる価値」です。このような価値を生み出すためには、競合他社や消費者の視点だけでなく、もう少し広く多面的な視点で捉える必要があります。例えば、「個人」「組織」「社会」の3つの視点を取り入れるとよいでしょう。

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2)個人にとっての価値

価値創造に取り組むのは、従業員をはじめとした組織内の人々が中心となります。従って、創造する価値は組織内の人々にとって、取り組みに積極的に参加したくなる魅力を備えていることが必要です。

3)組織にとっての価値

創造する価値が組織の理念やビジョンと一致することで、場当たり的ではなく、持続的な取り組みにすることができます。ただし創造する価値は短期的にはもちろん、将来的にも組織に有益でなければなりません。

4)社会にとっての価値

創造する価値は、消費者・株主・取引先・地域社会などの外部のステークホルダーにとって魅力的で、恩恵をもたらすものであることが求められます。

3 価値創造のための思考とは

価値創造は、既存の枠にとらわれない自由で多様な発想で思考することによって生まれます。そのため、次の2点を前提として押さえておきましょう。

  • チームを組成し、多くの人々の多様な意見を活用できる体制で取り組む
  • 「経験や知識は自由な発想を阻害する要因になり得る」ことを念頭に置き、チームのメンバー選定や、チーム内の意思決定など、あらゆる場面で経験や知識を過度に重視しないようにする

本稿では、チームで価値創造を進めることを想定して話を進めていきます。しかし実際は必ずしもチームを作る必要はなく、従業員へのアンケートなどによって意見を幅広く収集する方法もあります。

4 思考のためのフレームワーク

1)価値創造の思考法

個人で思考する場合も、集団で思考(議論)する場合も同様ですが、一般的に思考法は「選択/集中型思考」と「仮説/検証型思考」の2つに大別できます。

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価値創造に適しているのは「仮説/検証型思考」です。なぜなら、「選択/集中型思考」のように現状だけに注目せず、一部現状を生かしながらも仮説を自由に立て、その仮説の適切性を検証するものだからです。

2)思考のステップ

思考とは、目的やテーマなどの前提条件の範囲内で、持ち合わせている情報の中から結論を導き出すために必要な情報を選択し、結論へと連結させていく一連の流れをいいます。思考のイメージは次の通りです。

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価値創造の取り組みを推進するチーム(以下「価値創造型チーム」)は、「結論のみならず、どのような情報が抽出・選択され、どのように連結されて結論に至ったのか」というプロセスをメンバー間で共有しながら議論を進めます。では、「仮説/検証型思考」のステップを具体的に見ていきましょう。

1.思考の前提

思考プロセス(情報連結のフレーム)の大枠をあらかじめ設定します。

2.情報抽出

情報や意見を出して集めます。こうして集めることを「拡散」といいます。結論や選択基準にとらわれずに、自由に多くの情報を列挙することが重要です。

3.情報選択

多くの情報や意見から、必要なものや重要なものを選択します。こうして選択することを「収束」といいます。具体的で明確な選択基準を設定することが重要です。

4.仮説構築

選択した情報を連結し、仮説の行動プランを構築します。

5.検証・意思決定

仮説の行動プランの妥当性を証明できる根拠を明らかにし、意思決定を行います。

3)ポイントは「思考の前提」

価値創造に関する議論では、多様なメンバーが自由闊達(かったつ)に意見するため、議論が拡散しがちです。そこで、思考の前提を設定し、こうした事態を防ぎます。

思考の前提になるのは、「目的」「テーマ」「使用情報」「ゴール(アウトプット)」「時間内に合意できない場合の最終決定方法」「時間・場所・メンバーなどの討議環境」の6つです。議論に先立って、これら6つの前提をメンバーに周知徹底することで、議論の無用な混乱を防ぐようにします。

5 価値創造型チームを成功に導くリーダー像

1)リーダーに求められる能力

リーダーは通常、チームの成果を左右する重要な役割を担います。これは価値創造型チームにおいても同様です。以降では、価値創造型チームを成功に導くリーダー像について紹介します。価値創造型チームのリーダーに欠かせないのは、次の2つの能力です。

  • 議論をリードする理論的な思考力
  • メンバーの能力を引き出し、結集させるコミュニケーション力

価値創造型チームは明確な結論が見えない中、新たな価値を模索します。そのため、議論が混乱したり行き詰まったりするなど、さまざまな障害に直面しがちです。こうした障害を乗り越えて結論を導き出すには、リーダーがその時々の状況を勘案しながら、全メンバーが納得できるように議論を理論的にリードすることが必要です。

また、自由闊達な議論を通じて、個々のメンバーが持つ能力を最大限に発揮してもらうことも大切です。しかし、単に個々のメンバーの能力を引き出すだけでは不十分です。

個々のメンバーの力を結集しなければ、チームとしての成果は見込めません。リーダーは個々のメンバーの能力を引き出しつつ、多様なメンバーを1つにまとめる能力が求められます。

2)ファシリテーション型のリーダーシップ

価値創造型チームのリーダーには、「議論をリードする理論的な思考力」「メンバーの能力を引き出し、結集させるコミュニケーション力」が求められます。しかし、リーダーシップが強すぎると、メンバーはリーダーと異なる意見を出すのを遠慮したり、安易な妥協や追随を見せたりするなど、自由な議論が損なわれる可能性があります。そこで重要になるのが、ファシリテーションです。

ファシリテーションとは、「指示したり結論を示したりするなどして議論の内容自体をリードするのではなく、議論の枠組みを示すなどして『議論の場』をコントロールしながら、議論を促進・支援・後押しするリーダーシップ」をいいます。 

価値創造型チームのリーダーは、メンバーが自由に、かつ自発的・意欲的に発言できる場を形成するファシリテーション型のリーダーシップを発揮することが好ましいといえるでしょう。

3)押さえておきたいファシリテーションの手法

ファシリテーション型のリーダーシップを発揮するには幾つかの手法があります。ここでは特に重要な「思考の前提」「プロセスリード」「質問」「傾聴」「肯定・受容」「確認」の概要を紹介します。それぞれの手法は次の通りです。

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メンバーの能力を最大限に生かし、価値創造型チームの活動を有益にするには、リーダーは上記の点に注意しながら、議論を進めていくことが大切です。

以上(2018年10月)

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「農福連携」で農家と福祉施設が得られるメリット

書いてあること

  • 主な読者:担い手不足に悩む農業者、障がい者の低い賃金・工賃に悩む障害福祉サービス事業所
  • 課題:異業種との連携であり、メリットが不明。ノウハウがない。相談窓口も分からない
  • 解決策:「お試し」で始めることができる。まずはハローワークなどに相談してみる

1 農福連携のすすめ

「農福連携」とは、「農業と福祉が連携し、障害者の農業分野での活躍を通じて、農業経営の 発展とともに、障害者の自信や生きがいを創出し、社会参画を実現する取組」です。

農福連携には、農業者、障害福祉サービス事業所、障がい者の3方にさまざまなメリットがあります。国も2019年に「農福連携等推進ビジョン」を取りまとめるなど、農福連携を積極的に推進しています。農業者や障害福祉サービス事業所への補助金もあります。

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日本基金が2018年に実施した「農福連携の効果と課題に関する調査」(以下、日本基金によるアンケート調査)によると、農福連携に取り組む農業者(120件)の78%が5年前と比べて「年間売上額が上がった」と答えています。同様に、障害福祉サービス事業所(696カ所)の74%が5年前と比べて「賃金・工賃が増加した」と答えています。

障害福祉サービス事業所にもヒアリングをしてみました。島根県にある障害福祉サービス事業所Aへのヒアリングによると、《企業の下請けの場合、作業量や収入が企業の経営状況に左右されやすく、障がい者に思うような工賃を払えない上、障がい者にとって複雑な作業が多かった。事業として農業を始めたことで、障がい者の時給は3年で約2倍に増えた》とのことです。

また、《企業の下請けは施設内での作業がほとんどだったが、農作業は屋外で自然と触れ合うため、障がい者の精神衛生上とても良く、労働意欲が増し、急な欠勤や短時間で帰るといったことがなくなった》とのことです。

農福連携にはさまざまなメリットがあります。特に担い手不足に悩む農業者、障がい者の低い工賃に悩む障害福祉サービス事業所にとっては検討に値するのではないでしょうか。

2 農福連携の3つのパターン

農福連携の主なパターンは3つです。

  • 障害福祉サービス事業所が事業として農業を行う
  • 障害福祉サービス事業所と農業者が請負契約を結ぶ
  • 農業者が障がい者を直接雇用する(ハローワークに相談する)

3つのパターンそれぞれの取り組み手順については、厚生労働省と農林水産省が共同でまとめたスタートアップマニュアルが参考になります。

■厚生労働省・農林水産省「農福連携スタートアップマニュアル 第1分冊」■
※農林水産省「農福連携の推進」ページの「4.パンフレット・マニュアル」よりダウンロード
https://www.maff.go.jp/j/nousin/kouryu/kourei.html

既存の農福連携の事例では、障害福祉サービス事業所が事業として農業を行うパターンが多いです。しかし、障害福祉サービス事業所が自ら農地法上の要件を満たして農地の借り入れ・購入をしたり、販路を確保したりするといったハードルがあります。

この点も踏まえ、農林水産省では《初めて農福連携に取り組む際は、障害福祉サービス事業所と農業者が請負契約を結ぶパターンを推奨しており、実際に増えてきている》とのことです。

となると、大事なのは請負契約を結ぶ相手の見つけ方となります。主な方法は次の3つです。

  • 共同受注窓口を利用する
  • 自治体の農業部局・福祉部局に相談する
  • 都道府県の普及指導センターやJAに相談する

共同受注窓口は、複数の障害福祉サービス事業所などが共同して受注業務のあっせんや仲介を行う組織で、農福連携についてのマッチングや契約のサポートを行っています。各都道府県が民間団体に委託して実施しています。そのため、地域の共同受注窓口については、各都道府県や日本セルプセンターに問い合わせて確認できます。

ただ、近隣に連携できる農業者が登録していないこともあるので、自治体にも相談してみましょう。農業部局や福祉部局は、農福連携を始めたい、または受け入れる障害者数を増やしたい農業者の情報を持っている可能性があります。

他にも、各都道府県には、農業の担い手に技術や経営に関する支援を行う普及指導センターが設置されていたり、各地域の農業協同組合(JA)でも農福連携に理解がある組合員(農業者)を紹介しているところがあったりします。

3 お試しでやってみる

1)「障害福祉サービス事業所と農業者が請負契約を結ぶ」場合

数日間、試行的に農作業を請け負ってもらう「お試しノウフク」という方法があります。お試しノウフクには、主に次の2つのパターンがあります。

  • 農作業に関する請負契約を締結して、報酬を支払う
  • 農作業に関する請負契約を締結せず、短期間・無報酬で「援農ボランティア」をする

請負契約を締結して報酬を支払うパターンの場合、圃場において障がい者に具体的な指示を行うのは、障害福祉サービス事業所の職業指導員となります。そのため、農業者が職業指導員に農作業の内容を伝えたり、作業体験をしてもらったりした上で、職業指導員が障がい者に作業を割り当てます。農業者は、障がい者の仕事に対して意見があれば、本人に直接伝えるのではなく、職業指導員から伝えてもらうようにします。

2)「農業者が障害者を直接雇用する」場合

農業者にとって、障がい者を直接雇用するのは負担が重いものです。この負担を軽減できる制度として、次の3つがあります。

  • トライアル雇用助成金の活用
  • 農作業体験会による交流
  • 特別支援学校高等部の職場実習の受け入れ

まず検討したいのは、厚生労働省「トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース)」の活用です。3カ月間(精神障がい者は原則6カ月間)の期間を定めて、障がい者を試行的に雇用する場合、期間終了後に国から、月額最大4万円(精神障がい者は月額最大8万円)を一括して支給されるというものです。窓口はハローワークとなります。

トライアルの後、障がい者を継続して雇用した場合、厚生労働省「特定求職者雇用開発助成金」を活用できます。例えば、特定就職困難者コースでは、重度障害者等を除く身体・知的障害者(週当たり所定労働時間が30時間以上)については、2年間で120万円が支給されます。

ただし、これら助成金はハローワークや職業紹介事業者などの紹介によって雇用する場合にのみ適用されるもので、例えば、農業者の親族や知人からの紹介を通じて雇用に至った場合などは、対象外になります。

他にも芋掘りや稲刈りなどの農作業体験会を開催し、障がい者との接点を持ったことをきっかけに、その後の雇用につながった事例が少なくありません。また、特別支援学校高等部の中には、近隣の企業などを訪問して職業体験活動や作業実習をする「職場実習」を行っているところがあります。

4 請負報酬の決め方

請負報酬は、中立・公平な第三者が関与しながら、決めていくのが望ましいとされます。参考までに、請負報酬の設定方法や、支払い方法の留意点などを見ていきます。

1)請負報酬の単価の決め方

請負報酬は、「完成された作業の内容に応じて算定されるものであること」とされているため(「就労移行支援事業、就労継続支援事業(A型、B型)における留意事項について」)、「出来高払い」が基本です。

障害福祉サービス事業所に依頼したい作業について、健常者ベースで時間当たりの仕事量を測定します。次に、測定した仕事量を基に、最低賃金をクリアするように、収穫量1㎏当たりの報酬単価を設定します。なお、農産物の現物支給は認められていません。

2)必要経費について

障害福祉サービス事業所から農業者の圃場まで移動する際の交通費については、障害福祉サービス事業所が負担する契約とする他、農業者が積極的に障がい者を受け入れたい場合などには、請負報酬に含めるなど農業者が負担する契約もあります。

職業指導員の人件費は、障害福祉サービス事業所に対して支払われる訓練等給付費を充当することとなっており、職業指導員の人件費を契約に含めることは認められていません。

5 作業管理のポイント

水やりや草取りなどは、専門的な技術や判断を必要とせず、農業経験が少ない障害福祉サービス事業所も取り組みやすい作業です。それでも不慣れな状況で行うと、確認行為に時間を要し、場合によってはやり直しになります。大切なのは、農業者と職業指導員の間で、作業の仕上がり具合を確認するとともに、あらかじめ作業の練習を行うことです。

作業の誤解に伴うトラブルを避けるためにも、その後の作物の生育や農業経営に大きな影響を及ぼしかねない作業については、農業者自身が行ったほうがよいかもしれません。

その他、農林水産省が2019年10月に発表した「農福連携事例集」や、農福連携に取り組む事業者へのヒアリングによると、障がい者が作業しやすいように、次のような工夫をしている事例があります。

  • 「きれいに洗う」ではなく、「スポンジで5回こすって洗う」など、具体的に指示する
  • 障がい者の特性に合わせて作業指示を出す。例えば、記憶が続かない障がい者の場合は、目の前に作業内容を記載したカードを置く
  • 作業工程を細分化し、1人が行う作業内容および時間を最小化する
  • 作業手順の図式化と完成例(写真など)を示す
  • 作業道具を複数用意し、使いやすいものを選択できるようにする

6 障がい者が作業しやすい環境を整備するには?

障がい者の作業に支障となる危険な箇所を補修する、作業動線を改善するなど、障がい者が作業しやすい環境を整える必要があります。

このような場合に活用できるのが、農林水産省「農山漁村振興交付金(農福連携対策)」の農福連携整備事業です。障がい者が作業しやすいように農業生産施設、農機具庫などの付帯設備、休憩所やトイレなどを整備する際に支援するものです。交付率は1/2(上限1000万円、2500万円など)となっています。

以上(2020年5月)

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設備投資、賃上げなどで活用できる税優遇

書いてあること

  • 主な読者:人材や設備投資を検討している中小企業の経営者・税務担当者
  • 課題:人材・設備投資をした場合に受けることができる税金対策を知りたい
  • 解決策:投資活動を行った場合に選択することができる税優遇の基本的な仕組みや、主な投資に関する税制の概要を説明

1 企業の成長に欠かせない「投資」に係る優遇税制

企業の成長には、人材や設備などに対する投資は必要不可欠です。これらの投資活動を活性させるために、税制においても減税や軽減措置などの優遇規定を幾つか設け、その後押しを行っています。本稿では、このような投資活動を行った場合に選択することができる税優遇の基本的な仕組みや、主な投資に関する税制の概要を説明します。

なお、本稿では、法人税の内容について紹介しますが、個人事業者(所得税)についても同様な優遇税制が設けられており、これらの内容は法人税と基本的な部分で変わりはありません。

2 優遇税制の基本的な仕組み

1)青色申告の選択

税制において、人材確保や設備などに対する優遇税制を受けるための大前提として、納税者は青色申告を選択する必要があります。そして、青色申告を選択するためには、青色申告を行おうとする事業年度が開始する日の前日まで(設立の日の属する事業年度の場合は、設立の日以後3カ月を経過した日とその事業年度終了の日とのいずれか早い日の前日まで(注))に、一定の事項を記載した「青色申告の承認申請書」を納税地の所轄税務署長に提出し、その承認を受ける必要があります。

青色申告の承認を受けると、納税者は税法に定める人材確保や設備購入などに関する一定の要件を満たす投資を行った場合に、納税者自身の選択により、特別償却や税額控除などの優遇税制を受けることができるようになります。

(注)個人の場合は、適用を受けようとする年の3月15日(その年の1月16日以後、新たに事業等を開始した場合には、その事業等を開始した日から2カ月以内)までです。

2)特別償却と税額控除の違い

優遇税制の種類は幾つかありますが、投資活動に関するものとして、主に特別償却と税額控除を挙げることができます。

特別償却は、通常の減価償却費(以下「普通償却費」)の他に、設備の取得など投資をした固定資産の取得価額に、一定の割合を乗じて計算するなどした特別な償却費(以下「特別償却費」)の損金算入を認めるという制度です。よって、損金に算入することができる償却費が増加(普通償却費+特別償却費)することで、所得金額を減少させる効果があり、資本投下の資金を早期に回収することが可能になります。

一方、税額控除は、所得金額から算出された当事業年度の法人税額から、投資をした固定資産の取得価額などに一定の割合を乗じて計算した金額を直接法人税額から控除し、納める法人税額を減少させることができる制度です。ただし、直接法人税額から控除することができる金額は、原則として所得金額から算出された当事業年度の法人税額の10%または20%が上限となります。

なお、特別償却と税額控除のいずれも適用を受けることができる要件を満たしている場合でも、重複適用はできません。また、確定申告後に「特別償却(税額控除)から税額控除(特別償却)への変更」も認められません。どちらの制度を適用したほうが、自社にとって有利になるかは、会社の事情ごとに異なるため、いずれの制度を選択するかを申告書の提出期限までに、税理士などの専門家と相談して決めておく必要があります。

3)一時償却と割増償却の違い

特別償却については、さらに一時償却と割増償却に分けることができます。一時償却は、原則として取得した固定資産の使用を開始した事業年度のみに適用される「初年度償却の制度」になりますが、割増償却は一定の期間において「複数の事業年度において適用を受けることができる制度」になります。また、一時償却の計算方法は、取得した固定資産の取得価額を基に計算されるのに対し、割増償却は、普通償却費に一定の割合を乗じて特別償却費の額を計算します。この割増償却の制度は、建物や構築物、機械装置など使用可能期間の年数が比較的長い資産について適用されることが多いようです。

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3 主な「投資」に関する税制

1)中小企業投資促進税制(機械等・特定経営力向上設備・経営改善設備の取得)

中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けた中小企業者等が、2019年4月1日から2021年3月31日までの間に一定の設備投資を行った場合には、7%の税額控除または30%の特別償却(一時償却)の適用を受けることができます。なお、対象となる設備投資には次のものがあります。

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2)商業・サービス業・農林水産業活性化税制

認定経営革新等支援機関等による経営の改善に関する指導および助言を受け、かつ、売上高または営業利益の伸び率が年2%以上であることの確認を受けた中小企業者等が、2019年4月1日から2021年3月31日までに一定の経営改善設備投資を行った場合には、7%の税額控除または30%の特別償却(一時償却)の適用を受けることができます。なお、対象となる設備投資には次のものがあります。

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3)給与等の引き上げ及び設備投資等を行った場合等の税額控除(賃上げ・設備投資促進制)

2018年4月1日から2021年3月31日までに開始する各事業年度において、企業が国内雇用者に対して給与等を支給し、一定の要件を満たす場合には、給与等支給増加額の15%(教育訓練費の額の比較教育訓練費の額(前事業年度及び前々事業年度の教育訓練費の額の年平均額)に対する増加割合が20%以上であるときは、給与等支給増加額の20%)の税額控除の適用を受けることができます(法人税額の20%が上限)。さらに、中小企業者等のときは、一定の要件を満たすときは、給与等支給増加額の25%の税額控除の適用を受けることができます(法人税額の20%が上限)。

4)中小企業の防災・減災の設備投資に係る特別償却の創設

青色申告書を提出する中小企業者等(前事業年度の所得金額の平均が年15億円を超える法人など一定の法人を除く)は、次の要件を満たす場合、一定の設備等(特定事業継続力強化設備等)の取得価額の20%を特別償却の適用を受けることができます。

  • 中小企業等経営強化法の事業継続力強化計画または連携事業継続力強化計画の認定を受けた者
  • 中小企業等経営強化法の改正法の施行の日から2021年3月31日までの間に一定の設備等(特定事業継続力強化設備等)を取得等し、事業の用に供した場合

特定事業継続力強化設備等とは、災害への事前対策を強化するための設備等で、次のものをいいます。

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4 優遇税制の適用を考える際の留意点

これらの優遇税制は、その時々の政策の影響を受けるため、毎年行われる税制改正の動向を注視しておきましょう。税制改正では、それぞれの制度で定められている要件など(資本金の額や取得資産の金額基準、適用期限など)が変更されることが多くあり、実際に適用を受ける際には最新の適用条件を満たさなければなりません。また、実務上の手続きとして、申告書に証明書や認定書の写しを添付する必要があるため、あらかじめ、税務署や顧問税理士に相談の上、適用を受ける制度をよく確認するようにしましょう。

以上(2020年3月)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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訪問介護事業の開業手続き

書いてあること

  • 主な読者:コスト削減を進めたい経営者
  • 課題:どのような手順で、何を対象に削減していけばよいのか迷う
  • 解決策:利益に貢献しないコストを科目ごとにあぶり出し、アプローチする

1 訪問介護事業の概要と動向

1)訪問介護

「訪問介護」は居宅サービスの1つで、「要介護者であって、居宅において介護を受けるものについて、その者の居宅において介護福祉士その他政令で定める者により行われる入浴、排せつ、食事等の介護その他の日常生活上の世話であって、厚生労働省令で定めるもの」をいいます(介護保険法第8条第2項)。

訪問介護事業者となるには、都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)より指定を受けなければなりません。指定条件は、申請者が法人であり、厚生労働省令で定める基準を満たしていることです。

訪問介護サービスは「身体介護」「生活援助」に大別されます。身体介護とは「起床介助、排せつ介助、食事介助、衣服の着脱、体位交換、入浴介助」などの身体に触れる介護です。また、生活援助とは「調理、洗濯、掃除」などの身体に触れない介護です。

身体介護サービスの「入浴介護」は、利用者の自宅浴室において入浴を介助するサービスですが、別の介護サービスである「訪問入浴介護」は、特殊浴槽などの入浴設備とともに利用者宅を訪問して入浴サービスを行うものです。

訪問介護サービスの介護報酬は次の通りです。

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2)訪問介護事業者数の推移

訪問介護事業者数の推移(各年度末時点)は次の通りです。

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2015年度の介護保険法改定により、介護予防訪問介護は2018年3月をもって終了し、訪問介護に相当するサービスの提供は市町村による新しい総合事業「介護予防・日常生活支援総合事業」へ移行されました(2017年度の2948事業者については、2018年3月になってもなお、総合事業に移行せずに介護予防訪問介護サービスを提供していた事業者数です)。

介護予防・日常生活支援総合事業は、利用者の状態・意向を市町村が判断し、介護予防サービスと生活支援サービスを一体的に提供するものです。

これは、市町村が責任主体となって実施している「地域支援事業」を再編成するに当たり、全国一律のサービスの種類・内容・運営基準・単価によるのではなく、市町村の判断でボランティア、NPO、民間企業、社会福祉法人、協同組合などの地域資源を効果的に活用できるようにしていくことが目的です。

2 訪問介護事業者の指定申請

1)介護保険法の指定居宅サービス事業者としての指定申請の流れ

指定手続きの流れは、次の通りです。

  • 指定申請(都道府県知事に提出)
  • 申請の審査(書面審査)
  • 事業者指定(指定通知書の交付)

都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)による居宅サービス事業の指定は、居宅サービス事業を行う者の申請により、居宅サービスの種類および当該居宅サービスの種類に関わる居宅サービス事業を行う事業所ごとに行います(介護保険法第70条第1項、第203条の2)。

2)申請書と必要書類

訪問介護に関わる指定居宅サービス事業者の指定を受けようとする者は、次に掲げる事項を記載した申請書または書類を都道府県知事に提出しなければなりません(介護保険法施行規則第114条第1項)。

  • 事業所の名称及び所在地
  • 申請者の名称及び主たる事務所の所在地並びにその代表者の氏名、生年月日、住所及び職名
  • 当該申請に係る事業の開始の予定年月日
  • 申請者の定款、寄附行為等及びその登記事項証明書又は条例等
  • 事業所の平面図
  • 利用者の推定数
  • 事業所の管理者及びサービス提供責任者の氏名、生年月日、住所及び経歴
  • 運営規程
  • 利用者からの苦情を処理するために講ずる措置の概要
  • 当該申請に係る事業に係る従業者の勤務の体制及び勤務形態
  • 当該申請に係る事業に係る資産の状況
  • 当該申請に係る事業に係る居宅介護サービス費の請求に関する事項
  • 介護保険法第70条第2項各号に該当しないことを誓約する書面
  • 役員の氏名、生年月日及び住所
  • その他指定に関し必要と認める事項

3 指定を受けるための基準

申請者は法人であることと、厚生労働省令で定める基準「指定居宅サービス等の事業の人員、設備及び運営に関する基準(以下「基準」)」を満たしていなければなりません。

1)人員に関する基準(基準第5条)

指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに置くべき訪問介護員などの員数は、常勤換算方法で2.5人以上としなければなりません。

指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとに、常勤の訪問介護員等のうち、利用者の数が40またはその端数を増すごとに1人以上の者をサービス提供責任者としなければなりません。

利用者の数は、前3カ月の平均値とします。ただし、新規に指定を受ける場合は、推定数によります。

指定訪問介護事業者は、指定訪問介護事業所ごとにもっぱらその職務に従事する常勤の管理者を置かなければなりません。ただし、指定訪問介護事業所の管理上支障がない場合は、当該指定訪問介護事業所の他の職務に従事し、または同一敷地内にある他の事業所、施設などの職務に従事することができるものとします。

2)指定訪問介護の基本取扱方針(基準第22条)

指定訪問介護は、利用者の要介護状態の軽減または悪化の防止に資するよう、その目標を設定し、計画的に行われなければなりません。

指定訪問介護事業者は、自らその提供する指定訪問介護の質の評価を行い、常にその改善を図らなければなりません。

3)指定訪問介護の具体的取扱方針(基準第23条)

訪問介護員等の行う指定訪問介護の方針は、次に掲げるところによるものとされています。

  • 指定訪問介護の提供に当たっては、第24条第1項に規定する訪問介護計画に基づき、利用者が日常生活を営むのに必要な援助を行う。
  • 指定訪問介護の提供に当たっては、懇切丁寧に行うことを旨とし、利用者またはその家族に対し、サービスの提供方法等について、理解しやすいように説明を行う。
  • 指定訪問介護の提供に当たっては、介護技術の進歩に対応し、適切な介護技術をもってサービスの提供を行う。
  • 常に利用者の心身の状況、その置かれている環境等の的確な把握に努め、利用者またはその家族に対し、適切な相談および助言を行う。

4)訪問介護計画の作成(基準第24条)

サービス提供責任者は、利用者の日常生活全般の状況および希望を踏まえて、指定訪問介護の目標、当該目標を達成するための具体的なサービスの内容などを記載した訪問介護計画を作成しなければなりません。

訪問介護計画は、既に居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画の内容に沿って作成しなければなりません。

サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成に当たっては、その内容について利用者またはその家族に対して説明し、利用者の同意を得なければなりません。

サービス提供責任者は、訪問介護計画を作成した際には、当該訪問介護計画を利用者に交付しなければなりません。

サービス提供責任者は、訪問介護計画の作成後、当該訪問介護計画の実施状況の把握を行い、必要に応じて当該訪問介護計画の変更を行うものとします。

訪問介護計画の変更は訪問介護計画の作成と同様の手続き、方法による必要があります。

以上(2018年10月)

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1兆円市場の創出へ 「セルロースナノファイバー」に高まる期待

書いてあること

  • 主な読者:新たな素材を導入して、既存商品の付加価値向上を図りたい経営者
  • 課題:セルロースナノファイバーの導入を検討したいが、素材や商品開発に関する情報が不足している
  • 解決策:他社の開発事例を参考にしたり、産学官による連携組織に問い合わせたりして、セルロースナノファイバーに関する情報を入手する

1 軽くて強くてエコな新素材

セルロースナノファイバー(以下「CNF」)は、植物細胞の細胞壁や植物繊維の主成分であるセルロースを、ナノサイズ(1ナノメートルは10億分の1メートル)にまで微細化したものです。樹木など自然由来の原料のため環境に優しく、入手も処分も容易であることに加え、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍以上の強度を持つといった特性があります。こうした特性を活かした商品開発の取り組みも進んでいます。2020年は研究開発段階から実用化段階へシフトしたともいわれており、経済産業省などが目標に掲げる「2030年に関連材料で1兆円市場の創出」に向けた期待はますます高まっています。

本稿では、CNFを活用した商品開発の事例や、1兆円市場の創出へ向けた課題や取り組みを紹介します。

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前述した通り、CNFの最大の特性は軽さと強度の高さ、そして資源としての持続性です。通常は親水性ですが、疎水性に加工処理することも可能で、疎水化すると用途の幅はさらに広がります。また、製造(解繊)方法によって異なる特性を持つこともあります。こうした多様な特性を生かして、食品添加物、化粧品、スポーツ用品、医療用品、家電、電子部品、建材、自動車部品など多岐にわたる分野で用途開発が進められています。詳細は第3章で紹介しますが、既に中小企業でも、CNFを活用した商品を開発し、販売しているケースも増えてきています。

さらに、今後の研究の進展によっては、別の素材と複合化させることにより、新たな機能を持った商品の誕生や、あらゆる商品の付加価値向上につながる可能性を秘めているといえます。

2 多様な特性がマーケットを広げる

ここでは現時点で明らかになっているCNFの特性(機能および効用)と、活用が期待されている具体的なマーケットについて、M(マーケット)、F(機能・効用)、T(技術)のつながりで分析するMFTフレームを使って見てみます。

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一般的に、増粘性や保水・保湿性、比表面積の広さなど、CNF単体かつ少量でも特性を発揮しやすいものは、比較的商品化が容易といえます。一方、他の素材との複合化が必要な機能などは、商品化への難易度が高いといえるでしょう。

3 中小企業による商品開発の事例

中小企業の中には、CNFのメーカーや地元の地方自治体などと協力し、自社商品にCNFを活用して付加価値を向上させているケースも出てきています。

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4 1兆円市場の創出への課題

1)製造コストの高さ

最大の課題は、製造コストです。原料は低価格ですが、解繊をする際のコストの問題があります。1キログラム当たりの製造コストは、炭素繊維が2000円程度、鉄が100円程度とされるのに対し、CNF(ドライ換算)は現状で5000円程度といわれています。

経済産業省などは2030年度時点でCNFの製造コストを1キログラム当たり300円にまで低減させることを目標としていますが、製造コストと生産量は“鶏と卵の関係”であり、価格低減にはCNFの需要拡大が不可欠です。

国内のCNFの素材メーカー各社によるCNF生産能力は年間900トン程度とみられていますが、CNFの動向に関する講演も行っている京都市産業技術研究所の北川和男研究フェローは、「現状の稼働率は3割程度だろう。これがフル稼働するようになれば、製造コストは1キログラム当たり1000円程度にまで低下することも見込まれる。そこまで低下すれば、他の素材との価格競争力が出てくる」と期待を込めます。

2)技術を商品化につなげるさまざまなマッチング機能

CNFが持つ特性を商品の付加価値向上に結びつけるマッチング機能の充実も、CNF普及のための課題です。その際、技術を保有する大学や企業と、CNFを使って商品化を目指す中小企業などをマッチングさせるコーディネーターの役割が重要になります。

図表3で紹介した、陶?によるCNFを活用した磁器の製造は、京都市産業技術研究所が素材メーカーと共に開発したCNF活用技術を転用したものです。前述の北川フェローは、「新たな磁器は順調に売リ上げを伸ばしているが、それだけでなく、1つのマッチングによって、工業用セラミックスの分野まで活用が期待できるようになった。CNFは一般に知られるようになってから日が浅いので、用途がどこまで広がっていくのか、まだ分からない。コーディネーターのマッチングによって、ニッチトップの企業や中小企業がCNFを活用できるチャンスが広がる。商品化しやすい分野から事例を積み重ねることでCNFの生産量が増えれば、製造コストも下がっていき、さらに用途が広がる」と、コーディネーターの意義を強調します。

また、自動車部品へのCNFの活用といった大きなプロジェクトには、異業種間の連携というマッチングも大切です。「パルプ直接混練法(京都プロセス)」と呼ばれる樹脂複合化方法を開発した京都大学生存圏研究所の矢野浩之教授は、「普及拡大のためには用途、出口に合わせた原料から最終品までの作りこみ、そのための異分野連携が必要です。CNFで自動車材料を作る取り組みが進んでいますが、製紙会社、化学会社、自動車部材会社、自動車会社で材料品質に関する意識が大きく異なります。この点の擦り合わせが普及拡大のカギです」としています。

3)品質および安全性に関する規格の標準化

CNFに関する国内外の規格が標準化されていないことも課題の1つです。海外ではCNFのことを「セルロースナノフィブリル」と呼ぶこともあり、用語としても統一されていません。CNFが市場で広く取引されるようになるには、CNFの定義付けをはじめ、素材や製品の品質および安全性に関する評価項目や評価方法、評価の表示方法などについての統一基準を整備する必要があります。

CNFに関する国際標準規格については現在、国際標準化機構(ISO)のナノテクノロジー専門委員会「TC229」で審議されています。日本は化学処理/物理解繊法の製造方法で生産されるシングルサイズ(超微細)のCNFを対象に、標準化についての提案を行っており、2021年度の発行を目指しています。

安全性については、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、産業技術総合研究所などが2020年3月に、「セルロースナノファイバーの安全性評価手法に関する文書類」を公開しています。

■NEDO「セルロースナノファイバーの安全性評価手法に関する文書類を公開」■
https://www.nedo.go.jp/news/press/AA5_101302.html

5 産学官連携で進む研究開発

国土の7割近くが森林である日本は、原料が豊富ということもあってCNFの研究開発に積極的に取り組んでおり、世界的にも先行しているといわれています。特に産学官が連携することで、開発ペースの加速につながっているようです。ここでは国内の研究開発体制を紹介します。

1)国の支援でCNFの実用化に向けた研究を推進

CNFの活用に関する国の支援事業は、基幹産業である自動車産業向けを中心に、家電や建築といった業種に重点が置かれています。2020年度は、CNFの実用化に向けた研究が進む見通しです。

環境省は2019年10月から11月に開催された東京モーターショーで、CNFを用いた軽量化自動車「Nano Cellulose Vehicle(NCV)」のコンセプトカーを初公開しました。研究機関や民間企業などが集まったコンソーシアムが開発したもので、ドアトリム、ボンネット、ルーフパネルなどの部品にCNFを活用。部品単体では最大5割程度、車全体で約13%の軽量化を実現しました。燃費の軽減や、素材の製造・廃棄・リサイクルなどを含めると、二酸化炭素の排出量を従来よりも約1割削減できる見込みといいます。

また、経済産業省と農林水産省は連携事業として、2015年度から2020年度まで、自動車や家電、住宅・建材などにCNF活用製品を活用するための早期社会実証を推進しています。2020年度は、CNF適用部材などを活用した業界横断型のマッチングを図るとともに、各技術の適用対象拡大ポテンシャルの調査を実施する方針です。また、CNF活用ガイドラインも作成することを予定しています。

この他、NEDOでは2020年度から2024年度まで、炭素循環社会に貢献するCNF関連技術開発を行っています。CNF製造プロセスのコスト低減の開発を行い、2030年度末にCNF複合樹脂の製造コストを1キログラム当たり500円以下にすることを目指しています。また、市場の比較的大きい分野での用途開発の促進や、量産効果が期待されるCNF利用技術の開発を行う計画です。こうした研究により、2030年度で年間373万トンの二酸化炭素の排出削減を目指しています。

2)素材開発を担う大学と民間企業

CNF開発の要所となる解繊の方法に関しては、大学の研究者を中心に研究が進められています。京都大学生存圏研究所、東京大学、九州大学大学院は、それぞれ独自の解繊方法を編み出し、民間企業に採用されています。

CNFの製造は、大手製紙メーカーを中心に、薬剤などの化学、繊維、機械などのメーカーが参入しています。多くは大学で開発された解繊技術を基にしていますが、独自に技術を開発している機械メーカーなどもあります。既に年間500トン規模の生産工場も稼働しており、こうした素材メーカーは自社だけでなく、希望する企業にサンプルを提供するなどして、用途および販路の拡大に取り組んでいます。

経済産業省近畿経済産業局および京都市産業技術研究所では、CNF関連サンプル提供企業の一覧を掲載しています。

■京都市産業技術研究所「セルロースナノファイバーの取組」■
http://tc-kyoto.or.jp/about/organization/planning/cnf.html

2020年4月には、経済産業省が主導した産学官による連携組織「ナノセルロースフォーラム」の後継組織として、民間企業が主体となってCNFの実用化・事業化の促進を行う「ナノセルロースジャパン」が発足しました。

3)地域で広がる産学官連携

CNFを地域経済の振興に結びつけようと、一部の地域では、CNFを活用した商品の開発に積極的に取り組んでいます。こうした地域には、CNFの製造開発を進めている企業の工場が立地していることが多く、素材メーカーの持つ製造技術を、主に地元をはじめとする中小企業による新たな商品開発に結びつけようと、自治体や公的研究機関が中心となって連携組織を作っています。自治体や公的研究機関は、補助金による支援の他、素材メーカーと地元企業とのマッチングにも力を入れています。また、地元の大学も商品化に貢献するような研究に取り組むケースが見られます。

国内の主な産学官連携組織は次の通りです。

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以上(2020年7月)

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全額損金算入? 源泉課税? 福利厚生費とみなし給与の違い

書いてあること

  • 主な読者:福利厚生を充実させたい経営者
  • 課題:経営者は福利厚生費のつもりでも、給与とみなされるものがある
  • 解決策:全ての社員に公平で、かつ、社会通念上妥当な金額とする

福利厚生費(法定福利費を除く)について税務上の明確な定義はありませんが、例えば、一般的には「役員、社員、パートおよびアルバイト(以下「社員等」)に対して医療、衛生、慰安、修養等の労働環境向上のために給付する手当等(給料および交際費に該当するものを除く)」であるとされています。例えば、慰安のために行う社員旅行費や、社員食堂での昼食の提供費などがあります。

税務上、福利厚生費は損金算入できますが、そのためには、その福利厚生費が全ての社員等に公平で、かつ、社会通念上妥当な金額のものでなければなりません。逆にこれらの要件に該当しない場合、社員等に対する給与(または報酬)とみなされ(以下「みなし給与」)、予期していない課税が生じる可能性があります。

1 福利厚生費とみなし給与

1)みなし給与の考え方

みなし給与とは、福利厚生の目的で給料以外の名目で支払われる手当等のうち、所得税法上「給与所得」とみなされるものです。所得税法上、支給により社員等が享受した経済的利益が社会通念上、相当であると認められない場合には、福利厚生費ではなく、みなし給与と判定されます。

みなし給与として所得税法上の給与所得に該当する場合、勘定科目が福利厚生費で計上されていたとしても、源泉所得税を徴収(以下「源泉徴収」)すべき費用となり、所得税および復興特別所得税(以下「源泉所得税」)が課されます

なお、以降では、福利厚生費を源泉徴収の必要がない費用、みなし給与を給与所得に該当し、源泉徴収の必要がある費用として解説していきます。

2)社会通念上とは

「社会通念上」について税務上の明確な定義はありませんが、一般的に通用している社会常識などと解されます。社会通念は不確定な概念であるため、一般的な事例については、所得税が課されるか否かについて、所得税法基本通達に判定の目安が示されています。また、実際に判断する際には、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

3)みなし給与と判断された場合の税務リスク

会社側で福利厚生費として処理していた支払いを、税務調査でみなし給与と判断された場合は、源泉所得税が追加的に課されます(以下「追徴課税」)。さらに、ペナルティーとして次の附帯税が課されます。

  • 源泉所得税を納付期限までに納付しなかったことに対するペナルティーとしての不納付加算税(納付すべき源泉所得税額の10%相当額)
  • 納付期限から実際に納付した期間に応じた利息に相当する延滞税(納付期限の翌日から納付する日までの日数に応じて計算した金額)

また、役員に支給した福利厚生費がみなし給与に該当する場合は、社員と同じく源泉所得税が追徴課税され、さらに、みなし給与相当額が法人税計算上の損金に算入されず、法人税についても追徴課税されます

2 福利厚生費になるか否かの判断に迷いやすい事例

会社が負担した費用が福利厚生費となるか、みなし給与となるかは、その費用の内容や支払いの経緯などから総合的に判断する必要があります。以降では、福利厚生費に該当するか否かが問題となりやすい一般的な事例を紹介します。

なお、原則的に源泉所得税が課される支払いについても、宿直・日直その他特殊な業務に従事しているなど一定の事情がある場合には、源泉所得税が課されないケースもあります。また、役員に提供する社宅など、役員に支給した福利厚生費については、取り扱いが異なる場合があるため注意しましょう。

1)社員等に支給するお祝い金等がある場合

社員等またはその親族の慶弔禍福(結婚・出産・入院など)に関して、会社の規程など一定の基準に従って支払われ、金額も社会通念上妥当なものについては、福利厚生費となります。具体的には結婚祝い、出産祝い、香典、病気見舞いなどです。

また、新型コロナウイルス感染症に感染した社員等に支給する一定の見舞金などについても、源泉所得税は課されません

2)社員慰安旅行を実施する場合

会社が社員等の慰安のために行った旅行で、社会通念上一般的なものに係る費用については、次のいずれの要件も満たしている場合に、原則、福利厚生費となります。 

ただし、会社が慰安旅行に参加しなかった社員等に対し、その参加に代えて金銭を支給する場合、または役員だけを対象として旅行費用を負担する場合には、みなし給与となり、源泉所得税が課される可能性があるので注意が必要です。

  • 旅行の期間が4泊5日以内であること。なお、海外旅行の場合には、外国での滞在日数が4泊5日以内であること。
  • 旅行に参加した人数が全体の人数の50%以上であること。

3)社員等に食事を提供する場合

社員等に支給する食事の費用は、次の2つの要件をどちらも満たしている場合に限り、福利厚生費となります。そうでなければ、食事の価額から社員等の負担している金額を差し引いた金額が、みなし給与となります。

  • 社員等が食事の価額の半額以上を負担していること。
  • 次の金額が1カ月当たり3500円(税抜き)以下であること。
    (食事の価額)-(社員等が負担している金額)

4)社員等に借り上げ社宅などを提供する場合

会社が社員等に対して借り上げ社宅や寮などを貸与し、社員等から1カ月当たり一定額の家賃(一定の算式で計算した金額。以下「賃貸料相当額」)以上を受け取っている場合には、その借り上げ料と受取家賃の差額は福利厚生費となり、源泉所得税は課されません。なお、次の場合には、それぞれ扱いが異なるため注意が必要です。

1.無償で貸与している場合

賃貸料相当額がみなし給与となります。

2.社員等から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の49%以下である場合

受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額がみなし給与となります。

3.社員等から受け取っている家賃が、賃貸料相当額の50%以上である場合

受け取っている家賃と賃貸料相当額との差額は、福利厚生費となります。

5)特許等を受けるまでには至らない発明や工夫に対して報奨金等を支給する場合

社内提案制度など一定の基準に従って、作業の合理化、製品品質の改善や経費の節約などにつながる工夫・考案をした社員等に対して報奨金等を支払う場合には、次のように取り扱います。

1.その工夫・考案がその社員等の通常の職務の範囲内である場合

支払った報奨金等の金額は社員の給与となります。

2.その工夫・考案がその社員等の通常の職務の範囲外である場合で、一時に支給するもの

支払った報奨金等の金額は、社員等の一時所得となり、会社は源泉徴収の義務がありません。報奨金等が一定額以上の場合には、社員等本人が確定申告をする必要があります。

3.その工夫・考案がその社員等の通常の職務の範囲外である場合で、その工夫・考案の実施後の成績等に応じ継続的に支給するもの

支払った報奨金等の金額は、社員等の雑所得となり、会社は源泉徴収の義務がありません。報奨金等が一定額以上の場合には、社員等本人が確定申告をする必要があります。

なお、社員等が特許を取得できる発明をしたため、報奨金等を支給する場合等は、取り扱いが異なるので注意しましょう。

以上(2020年7月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 富永慎也)

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販売力がアップする「売場づくり」の虎の巻

書いてあること

  • 主な読者:小売店の販売担当者
  • 課題:他店との差異化を図るために、売り場レイアウトを改善したい
  • 解決策:マグネット商品やPOPの設置など、見やすい売り場にするための陳列法を紹介する

1 顧客ターゲットを明確に

小売店の集客力は品ぞろえに比例します。実店舗の場合、豊富な品ぞろえを可能にするのは店舗の大きさであり、言い方を換えれば小売店の集客力は店舗規模に比例するといえます。

店舗スペースを有効に活用するには、取扱商品を絞り込む必要があります。例えば、得意な分野に特化した品ぞろえとすれば、大規模店など競合店との差異化につながり、集客力・販売力の向上につながります。

また、店には誰が買いに来るのか、または誰に売りたいのかを明確にしましょう。顧客は、居住地域、年齢、性別、職業、収入、趣味などで絞り込まれていき、最後は個人レベルにまで絞り込まれます。

2 見やすく買いやすい売場

1)通路

店には入り口と出口、店内を回遊するための通路が必要です。小規模店の場合、入り口も出口も同一のケースが多いでしょうが、スーパーなどのように店舗面積が広くなると、入り口と出口、通路の在り方が重要になります。

入り口と出口といっても、顧客を出口からは入れず、入り口からは出さないということではありません。店舗立地や人の流れから、メーンとなる入り口を設けて、それに対して出口を設けるということです。

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図表1の通り、どちらが入り口でどちらが出口でも問題ありません。店舗の立地上、道路の人の流れが右から左への流れが多ければ、右を入り口、左を出口とするのが自然でしょう。

2)売場構成

顧客にどのような順序で商品を見てもらうか。入り口から出口までの商品陳列に工夫をしましょう。図表2のレイアウトの場合、主通路に沿った塗りつぶし部分が主力商品の陳列スペースになります。

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主通路に沿った陳列スペースには、消費量が多く、購入頻度の高い商品を陳列します。消費量が多いということは生活必需品であり、購入頻度が高いということは来店時に購入される確率の高い商品ということになります。

食品でいえば、生鮮3品(青果、鮮魚、精肉)の他、パン、牛乳、納豆、豆腐、総菜などデイリー商品がこれに該当します。一方、米、味噌、しょうゆなどは毎日消費するものですが、購入頻度という点では当てはまりません。

電気店であれば、入り口付近には、電球、蛍光灯、電池、電気シェーバーなどの消耗品や小型家電を配置し、テレビや冷蔵庫などの大型家電は店の奥に配置するということになります。

3)顧客を店の奥へと引き付けるマグネット

顧客を店の奥へと誘導し、購入意欲を高めます。話題性のある商品、売れ筋商品、最先端の商品を顧客を引き寄せる「マグネット商品」として店の奥に配置します。スポットライトを当ててたり、近辺でイベントを行ったりするのも効果的です。

このようなマグネット商品は、常に同じものであると陳腐化し、マグネットとしての力が衰えます。マグネット商品は定期的に変更し、売場を常に新鮮で活気のあふれる雰囲気に保つ必要があります。

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3 陳列方法の工夫

1)エンド陳列

陳列台(什器)の両端の部分をエンドといいます。図表4の網掛け部分がエンドです。エンド部分は比較的目立つので、副通路に陳列してある商品の中で目玉商品といえるものを置くと、それに興味を持った顧客は副通路の奥へと進んでいきます。

また、副通路に陳列するよりもエンド部分に陳列したほうが、商品はよく売れると言われます。そこで、利幅が大きいなど販売政策上売りたい商品を意図的にエンドに陳列すれば販売数量の増加が期待できます。

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2)明るさ

人は暗い場所より明るい場所のほうが安心できるため、店の入り口は明るいほうが入店しやすいものです。また、顧客を店の奥に誘導するには、店の奥をさらに明るくする必要があります。

店全体を同じ明るさにするのではなく、入り口と店の奥を明るく見せるなどメリハリを付けます。また、離れた所から明るさの違いを表現するには、床よりも壁面に光を当てると効果的なため、壁面にライトを当てることがポイントです。

3)見やすさ

人の視線は、正面よりやや下方向を向いています。店内では顧客の視線は近くのものから店の奥に流れていくことになります。また視線は左から右へ流れやすくなっているので、通常、左側から右側へと視線が流れます。

右利きの人が多いことも影響しているのかもしれませんが、向かって左側よりも右側に商品を置いたほうがよく売れると言われます。また、腰から肩の高さが見やすく、手で触れやすいので、ゴールデンゾーンと呼ばれています。

4)並べ方

商品陳列をする場合、商品分類をはじめとして、ブランド別、価格別、色別、素材別、目的別などで商品グループをまとめます。見た目を意識すれば、形と大きさでまとめることになります。

しかし、定規で測ったような状態だと、それを乱すことを避けたいという意識が働きます。また、人は統一された中に秩序ある変化があると楽しさを感じるため、きちんとした中にあえて不規則な陳列を行うことがポイントです。

平面的に並べる方法と立体的に並べる方法がありますが、一般的に人は平面的に並べられたものより立体的に並べられたものに注目しやすく、強い印象を受けるため、エンド陳列など注意を引きたい場所は立体的な陳列にするとよいでしょう。

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5)目立たせるための演出

通常の什器陳列ラインよりも前に張り出させるエクステンド(張り出し)陳列で、他の商品よりも目立たせることができます。また、アイランド(島出し)陳列で、通路の真ん中に重点商品を置くのも目立ちます。

エクステンド陳列もアイランド陳列も、売場が整然としている場合に、有効な演出方法です。しかし、売場全体が張り出していたり島出しされていては、その演出効果がないばかりか、通路を塞いでしまうことになります。

6)沈黙の販売員「POP」

POP(Point of Purchase Advertising)は、販売時点広告という意味です。POPは商品内容、特徴、価値などを伝えることができ、ときに販売員の言葉以上に顧客の心をつかみます。

例えば、「私が作った野菜です」と生産者の顔とコメントが付いていたり、「私のお薦め品」と販売員の顔と名前、薦める理由が書いてあったら、顧客に興味を持ってもらえるでしょう。

4 楽しい雰囲気の売場づくり

1)行列と人だかり

行列や人だかりがあると人は興味を持ち、その行列や人だかりの先にあるものに価値を感じます。店や売場としては、この行列や人だかりによって、繁盛しているという印象を与えることができます。

行列を演出するには、店内と店外を問わず、多くの人の目につく入り口付近などで、特売コーナーや目玉商品を設置するのが王道です。ただし、行列が長くなり過ぎたりすると、逆に顧客のストレスとなるので注意しましょう。

2)ショッピングの楽しみ

ショッピングは、必要な商品を購買するだけでなく、商品を見たり、試したりする楽しさも含めた一連の行動です。そのため、店舗では必要な商品がそろっているというだけでなく、楽しいショッピング体験を提供してもらえるような工夫が求められます。

そこで、売場において顧客の関心を引いたり、購入動機を意識させる必要があります。そのためには、単に素通りしてしまう店ではなく、少しでも立ち止まり、商品を見て触れて試してみたくなるような売場演出の工夫が必要です。

一般的に、店での滞在時間に比例して、商品の購入確率が高まるといいます。自店だけでなく、競合店でも取り扱っている商品であっても、陳列の場所や見せ方によって売場の雰囲気は大きく変わり、顧客に商品をアピールすることができるでしょう。

以上(2019年4月)

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画像:unsplash

【事業承継】後継者候補となる従業員の見極めポイント

書いてあること

  • 主な読者:主な読者:後継者候補を見つけたい経営者
  • 課題:後継者候補を見つける際の参考となる考え方が知りたい
  • ポイント:ポジティブ、謙虚、勤勉を基準とする

1 経営者の根本的な仕事は2つ

経営者にとって「100年企業」は1つの夢です。この夢を実現するために経営者がやるべきことは、「利益を出し続ける」「人を育てる」です。企業は利益を出し続けなければ存続できません。そして、利益の出る事業を立ち上げて遂行するのは「人」です。そのため、経営者は人を育てなければなりません。

経営者が将来の経営幹部の卵を見いだすに当たって参考になるように、経営幹部に求められる素養をまとめます。

2 ポジティブであること

1)ポジティブだからつかめるチャンスがある

将来の経営幹部に求められる最も基本的な条件は、ポジティブ(前向き)であることです。ポジティブな経営幹部は組織に明るさと活力を与え、ビジネスのちょっとした変化からチャンスを見いだす可能性が高まるからです。

ビジネスでは「規制改革が行われた」「相手の担当者が変わった」など、常に変化があります。ここで、「新しい規制に対応すればチャンス」とポジティブになるのと、「この忙しいのに厄介だ……」とネガティブになるのとでは、次の行動の質が違います。

実際に規制改革がチャンスになるかどうかは分かりません。しかし、やってみなければ何も起こりません。であるならば、前に進むために行動を起こしたほうが可能性も広がります。

経営幹部が組織に与える影響は大きいものです。ポジティブな経営幹部が率いる組織は明るく積極的で、ネガティブな経営幹部が率いる組織は暗く消極的です。ビジネスチャンスをつかめるのは、ポジティブな経営幹部が率いる組織です。

2)失敗しても立ち上がる強さを組織に浸透させる

従業員がポジティブであるか否かは、日ごろの言動を見ていればある程度分かりますし、経営者があえて難題を任せてみるのも一策です。そのとき、「よし! やってやる」と前向きに取り組む姿勢が見られれば合格です。

中には、内心はやる気に満ちているのに、それを表に出さない従業員もいます。こうした従業員は、「やる気を見せたのに、失敗したら恥ずかしい……」と考えているのかもしれませんが、このような考え方は経営幹部としてはふさわしくありません。

「一勝九敗」という経営者がいるように、失敗することのほうが多いのです。そのため、経営幹部には、失敗しても何度でも立ち上がる心の強さが必要であり、それを組織に見せることで「折れない組織」をつくることができます。

3 謙虚であり、短慮でないこと

1)謙虚でなければ成長できない

経営幹部は、常に新しいことにチャレンジしなければなりません。とはいえ、自分一人でできること、学べることは限られています。そのため、経営幹部はたくさんの人と出会い、謙虚な姿勢で人と接し、多くのことを吸収していく姿勢が求められます。

従業員の謙虚さが垣間見られる1つの例は、上司からちょっと面倒な指示を受けたときです。指示の内容をよく考えもせず、反射的に「でも……」「難しいですね……」などと言っているようでは失格です(きちんと考えた上での回答ならば問題ありません)。

部下の立場で考えれば、上司の指示は大概面倒なものであり、「なぜ、そんな細かいことまで指摘されなければならないんだ」と感じることが少なくないはずです。しかし、上司は何らかの目的や意図がなければ部下に指示を出しません。

親の説教のありがたさが、年を取ってから分かるのと同じで、その場では分からないかもしれませんが、上司の指導は部下の成長を促すものです。この点をわきまえ、上司の面倒な指示に聞く耳を持てる従業員が経営幹部に向いているといえるでしょう。

2)短慮は単なる思考停止

ただし、謙虚に相手の話を聞くとはいっても、相手が言っていることや、目に見えたことだけで全部を把握したつもりになり、単純に物事を判断してしまうのでは短慮であると言わざるを得ません。

周囲の人が常に正しいことを教えてくれるわけではありません。上司の指示もしかりです。経営幹部になることを期待されている従業員であれば、相手の話を受け入れつつ、「本当にそうなのか? もっと良い方法はないのか?」と考える姿勢が必要です。

これは相手の話を聞くときに限ったことではありません。例えば、「Aさんが新規取引先を獲得して1000万円を売り上げた」としましょう。まずは同僚の成功を祝福する素直さと、次は自分が売り上げてやるという意気込みが必要です。

ただし、「Aさんはすごい! 1000万円の売り上げのおかげで今月の目標が達成できた。自分も頑張ろう!」と漠然と考え、それで終わっているようでは、経営幹部としては物足りません。

企業経営の観点からいえば、1000万円を売り上げた理由やその手法を分析し、横展開して再現することが重要です。成功は一瞬にして次の取り組みのプロセスに組み込んでいかなければならないのです。

Aさんがどのような営業手法を取ったのか、あるいはAさんの他にその活動を側面サポートしたBさんの功績が大きいのではないかなど、物事の本質を捉える姿勢は常に求められます。

これはとても大切です。経営幹部になると、自分の部下だけではなく、顧客や取引先も評価しなければならなくなります。経営幹部の役割は、目に見えることを正確に把握しつつ、それを深掘りして将来を見据えた戦略を検討・遂行することです。

4 勤勉であること

1)意気込みだけでは太刀打ちできない?

ビジネスは決断の連続です。正しい決断ができる確率を高めるには、会計・法務・労務など多分野にわたる正確な知識が不可欠です。そのため、経営幹部には、ビジネスの多分野にわたる正確な知識を貪欲に吸収し続ける勤勉さが求められます。

決断すべき事項や局面によって異なりますが、経営幹部として最低でもその分野の入門書と初級の専門書をそれぞれ1冊読むべきです。それらを読んだ上で生じた疑問を解消するため、専門家からコメントをもらう程度のことも必要でしょう。

一方、何かを決断する際、情熱や意気込みが重要だとする従業員がいます。確かに情熱や意気込みは不可欠ですが、知識が圧倒的に不足している状態で動くのは危険過ぎます。知識と情熱のバランスを取る必要があります。

2)勤勉+勉強好き=指導力

経営幹部は勤勉でなければ務まりませんが、加えて勉強好きであることが理想的です。自分が知らないことを一から勉強するのは楽ではありませんが、勤勉でしかも勉強好きな従業員であれば、楽しみながらコツコツと取り組むことができるでしょう。

一生懸命に勉強すれば「分からないことが分かるようになる」という、ごく当たり前のことを経験している従業員が経営幹部になれば、自身の経験も踏まえ、勤勉であることの大切さを部下に教えることができます。

部下がその影響を受けて勤勉になれば、組織全体の知識量が増えていきます。そうして蓄えられた知識や物事を学ぶ姿勢は、何か新しいことを始めるときだけではなく、既存事業の見直しの際にも役立ちます。

一方、勤勉でない人は知らないことから逃げる癖がついています。そうした従業員が経営幹部になると、自分が知らないことは部下に丸投げし、部下から上がってきた報告書の質を判断することもできず、そのまま上司や顧客に提出してしまいます。

従業員が勉強家であるか否かは、日ごろの仕事への取り組みを見ていれば分かります。知識は勉強量に比例して増えていくため、勉強している従業員の発言や報告書の内容は明らかにレベルアップしていきます。

これに対して、いつも同じことばかりを言っている従業員は勉強していない可能性があります。発言に進歩がないのは、勉強して自分の知識や意見をブラッシュアップしていない証拠だといえるでしょう。

5 全体の利益を考えられること

1)24時間仕事のことを考えられるか?

「24時間仕事のことを考えられるか?」というと、違法な長時間労働を強制したり、人権を無視したような言動を繰り返したりする「ブラック企業」を連想する人がいるかもしれません。

ここでいう「24時間仕事のことを考えられるか?」というのは、文字通りに24時間働くということではなく、「どれだけ当事者意識を持って仕事に取り組むことができるか」ということの1つの例えです。

経営者にとって仕事は自分の一部であり、夢の中で出てきたアイデアを枕元に置いてある紙にメモをすることもあるほどです。文字通り、「寝ていても仕事のことを考えている」わけです。経営幹部にも、こうしたマインドが求められます。

2)全体を意識して行動できるか

全体を意識して働くことは、当事者意識を持って働くということに他なりません。従業員が当事者意識を持つと、視野が広がり、自分のことだけではなく全体の利益を意識できるようになっていきます。こうした従業員の意識の変化は、ちょっとした行動にも表れます。

例えば、定期的に社内清掃をしている場合、従業員の動きを確認してみましょう。全体のことを考えている従業員は、いつも共用スペースの掃除から始めます。自分のデスクは日ごろから整理整頓されているので、すぐに共用スペースの掃除ができるのです。

自分を犠牲にするわけではありません。しかし、仕事と真剣に向き合うと、会社や同僚のために自分は何をすべきかを考え、それが言動に表れてきます。社内外の全体に目を配れる視野の広さや部下への配慮は、経営幹部が人を導く上で不可欠な素養です。

以上(2020年7月)

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画像:photo-ac