「お客様が怖い」をなくす営業力強化法

書いてあること

  • 主な読者:営業部に配属されたがお客様とうまく話せない “営業初心者”や「営業が苦手な部下」を持つマネジャー
  • 課題:お客様と話すとき、必要以上に委縮してしまう
  • 解決策:怖れるなかれ、失敗はあってよい。あとは、簡潔に話す、プラスの言い方をするなど日ごろの訓練がものを言う

1 営業担当者は「お客様が怖い」?

営業担当者がお客様としっかりコミュニケーションが取れない。うまく提案できない。多くの会社で共通する課題です。例えば、お客様のニーズや提案の検討状況など確認するための質問ができない営業担当者が少なくないのです。

営業担当者がお客様に質問できない理由は2つです。1つ目は、質問すべきことが分からないことです。上司の指示の下、言われたことをやっているだけの営業担当者は、何を質問したらよいか自分で考えることができません。

2つ目は、営業担当者に「お客様が怖い」という気持ちがあることです。確かに、お客様と向き合いその声に真摯に耳を傾けようとすればするほど、大切なお金を支払っていただいていると思えば思うほど「お客様は怖い」ものです。

しかし、必要以上に「お客様が怖い」と萎縮するのは問題です。行き過ぎると、「時間がない」と言い訳をして、お客様への連絡や提案などを避け、後回しにするようになるでしょう。これでは営業のチャンスを逃してしまいます。

「お客様が怖い」を克服して営業力を強化するには、訓練することが大切です。特に営業担当者が苦手意識を持ちやすい「質問するとき」「プレゼンテーション(プレゼン)するとき」について、今日からでも社内でできる訓練法や心構えを見てみましょう。

2 質問の訓練は、事前準備が大切

質問の訓練は、質問する役とお客様役に分かれて行うロールプレイング(ロープレ)が効果的です。お客様役には営業経験の豊富な上司や先輩が適していますが、今までにない視点を求めるなら、若手社員をお客様役にするのも一策です。

「お客様が怖い」を克服するための訓練は、臨場感が必要です。質問する役はもちろん、お客様役も、想定するお客様のことを事前に情報収集した上で訓練に臨みましょう。この事前準備を習慣づけると、実際の営業現場でも役に立ちます。

また、質問する役が「この質問によって商談をどのように進めたいのか」を考え、自分の意思を持っておくことも不可欠です。冒頭で紹介した「何を質問したらよいか自分で考えることができない」という問題の解決にもなるでしょう。

そこでお客様役は、質問する役が「どうしたいのか」をあらかじめ確認し、その方向に進む質問ができているかをチェックしましょう。例えば提案プランAの導入を目指すなら、Aについての感触を確認する質問ができているか、などのようにです。

3 「簡潔に分かりやすく」の訓練

「お客様が怖い」という気持ちが先立つと、「嫌がられたらどうしよう」「断られたらどうしよう」という不安がどんどん大きくなります。その結果、お客様に対して回りくどい言い方で長々と質問してしまうことがあります。

状況や関係性にもよりますが、回りくどい質問は、お客様を不快な気分にさせます。質問の意図が分からず、答えにくいからです。こうならないように、訓練の際に簡潔で分かりやすい言い方を心掛けることが大切です。

例えば、質問する役は、初めに「お聞きしたいことが3点あります」と言って、質問が何点あるか明らかにすることを習慣づけます。そうすれば、相手に「いつまで質問が続くのだろう」と思わせることはなくなるでしょう。

また、5W2H「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうする・いくら」を明らかにすれば、自分の考えを整理して質問ができます。特に重要かつお客様に聞きにくいのは「なぜ」です。必ず「なぜ」を明らかにする訓練をしましょう。

4 「プラスの言い方」の訓練

質問も含め、お客様と話をする際はできるだけプラスの言い方をすることが大切なのですが、「お客様が怖い」と思い過ぎていると、自分のほうからマイナスの言い方をしてしまうことがあります。

例えば、「この方法が良いと思いますが、これだと手間が掛かって大変ですよね?」と聞くのと、「多少手間が掛かるかもしれませんが、これがお客様のニーズに合った一番良い方法です。いかがですか?」と聞くのとでは印象が全く違います。

お客様に対してプラスの言い方ができるようになるには、ロープレにおいてプラスの言い方を意識します。それをお客様役がチェックし、マイナスの印象を受けた言い方については改善します。

5 プレゼンは緻密な組み立てが必要

お客様に商品・サービスを提案するプレゼンの訓練にも事前準備が必要です。プレゼンの目的や内容を覚えるのはもちろん、「どこにどのくらいの時間を掛けて話すか」をあらかじめ組み立てなければなりません。

例えば、資料1ページごとに何分間話をするかという進行表を作っておくのもよいでしょう。聞き役は、進行表を見ながら、想定時間をオーバーしたページをチェックしてプレゼンする側にフィードバックし、調整しながら全体を仕上げます。

こうした準備や訓練は自信につながります。プレゼンは緊張するので、「お客様が怖い」という気持ちが全くなくなることはないかもしれませんが、自信がつけば、必要以上に萎縮せずに済むでしょう。

また、聞き役には、厳しい上司や先輩がよいかもしれません。プレゼン後の質疑応答のロープレでは、聞き役がわざと答えにくい質問をするのもよいでしょう。厳しい状況を想定して訓練をしておけば、本番で楽に話せるようになるでしょう。

6 「堂々と話す」訓練

プレゼンで大切なのは、相手に伝わるよう、堂々と話すことです。いくら提案の内容が良くても、早口過ぎたり声が小さかったり、自信がなさそうな話し方では、相手に与える印象が良くありません。

人は自分の話し方に影響されます。小さい声で自信がなさそうに話していると、本当に自信がなくなり、「お客様が怖い」という気持ちが強くなるものです。訓練のときから大きな声でゆっくり話すよう心掛けましょう。

また、自分の言葉で話すことも大切です。上司から言われた通りのことを説明しているだけでは深みがなく、相手に伝わりません。お客様の前では、緊張してなおさら自分で言っていることが分からなくなるでしょう。

プレゼンの訓練をしていると、どうしても話しにくいところが出てきたりしますが、これも「自分の言葉になっていない」のが原因です。こうした場合は、話す内容や資料をもう一度見直して、自分の言葉で説明しやすいように変えていくとよいでしょう。

7 失敗は、あっていい

プレゼンには自信があるものの、その後にお客様から質問されるのが怖いという営業担当者も少なくありません。想定問答集は作るものの、リアルのビジネスではお客様が想像もしないような質問をしてくるのが常だからです。

これは対面のプレゼンに限らず、電話でも同じです。営業担当者はお客様からの質問にうまく答えられないと「失敗した」「お客様が怖い」と思いがちですが、分からないことを「分からないので確認します」と答えるのは恥ずかしいことではありません。

「お客様が怖い」と萎縮する気持ちは、裏を返せば「うまくいかなかったらどうしよう」「嫌な思いをしたくない」「恥ずかしい思いをしたくない」という失敗を恐れる気持ちでもあります。

こうした気持ちにとらわれ過ぎてお客様と接することを避けていては、結果を出すことはできません。たとえ失敗したとしても、それは貴重な経験です。何もしないでいるより、一歩前に進んでいるのです。

以上(2018年11月)

pj70050
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ワイン市場と国内ワイナリーの業界動向

書いてあること

  • 主な読者:ワインの製造・販売を検討する経営者
  • 課題:市場規模や業界を取り巻く環境が分からない
  • 解決策:市場規模や大手製造業者の動き、輸入ワインの状況などを把握する

1 ワインの基準と分類

1)ワインの定義

国税庁のウェブサイトによると、ワインとはぶどうを原料として発酵させたものの総称を指します。ただし、酒税法では果実酒もしくは甘味果実酒に分類されます。国税庁は「酒のしおり(平成31年3月)」の中で、酒税法第3条第13号および第14号に基づく果実酒および甘味果実酒の定義の概要について、主に次のように説明しています。

  • 果実酒…「果実を原料として発酵させたもの(アルコール分が20度未満のもの)」または「果実に糖類を加えて発酵させたもの(アルコール分が15度未満のもの)」
  • 甘味果実酒…「果実酒に糖類又はブランデー等を混和したもの」

ワインの製造法によって4分類したものを当てはめると、非発泡性のスティル・ワインおよび発泡性のスパークリング・ワインは果実酒に、発酵過程でブランデーなどの強い酒を加えたフォーティファイド・ワインの多く(一部は果実酒)や、スティル・ワインに薬草や果汁などを加えたフレーバード・ワインは甘味果実酒となります。

2)「国産ワイン」の表示基準

国税庁は、酒税の保全及び酒類業組合等に関する法律第86条の6第1項に基づき、2015年10月30日に「果実酒等の製法品質表示基準」(以下「基準」)を定めました。それまで一般的に「国産ワイン」と呼ばれてきたものを、原材料や製造地によって明確に分類したもので、2018年10月30日から適用しています。基準では、ワインを次の3つに区分しています。

  • 日本ワイン…国産ぶどうのみを原料とし、日本国内で製造された果実酒
  • 国内製造ワイン…日本ワインを含む、日本国内で製造された果実酒および甘味果実酒
  • 輸入ワイン…海外から輸入された果実酒および甘味果実酒

基準では、この他にも「特定の原材料を使用した旨の表示」など、ワインの表示について定めています。

2 国内ワイン市場の規模

1)日本のワイン市場

国税庁「酒税課税関係等状況表」によると、果実酒および甘味果実酒の販売(消費)数量の推移は次の通りです。

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ワインの中心を占める果実酒の販売(消費)数量は、ここ数年はほぼ横ばいですが、10年前と比べると大きく増加しています。なお、キリンのウェブサイトにある「ワイン参考資料(2019年7月)」では、「2000年以降ワインは、食事をしながら楽しむ食中酒として、(中略)スーパーやコンビニエンスストアでも気軽に購入できるようになり、日常で飲まれるお酒として定着しつつあります」としています。

■キリン「データ集」■
https://www.kirin.co.jp/company/data/

総務省「家計調査」によると1世帯当たりのワインの購入数量と支出金額の推移は次の通りです。

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10年前と比べると、酒類全体の支出金額が減少傾向にあるのに対して、ワインの支出金額は大幅に増加し、ここ数年は横ばいとなっています。結果的に、酒類に占めるワインの支出の割合は、10年前と比べて3ポイント上昇しています。

2)国内のワイナリー数

国税庁「国内製造ワインの概況」によると、国内ワイナリー数およびワイン製造販売事業者数の推移は次の通りです。

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堅調なワインの消費動向にも支えられ、国内のワイナリーは増加傾向にあります。ワイナリー数は2017年度に300場を超えました。

3 国内ワイン業界の環境

1)PEST分析

国内ワイン業界を取り巻く環境について、ビジネスフレームワークのPEST分析を基に触れていきます。

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ワイン自体の需要は堅調に推移していますが、酒類全体の消費の落ち込みや、低価格の輸入ワインの流入といった価格低下要因もあります。国内ワインは製造ノウハウや機器類の技術の改善による品質向上や、日本ワインのブランド化などによって、付加価値を高める土壌が整備されてきているといえます。現時点では、ワインに対する堅調な需要を背景に、国内外の製造・販売業者が売り上げを拡大させようと、品質面および価格面で激しく競合している状況にあるといえます。

2)ワイン製造業者の経営状況

ワイン製造業は、大手飲料・食品メーカーのグループであるメルシャン(キリンホールディングス傘下)、サントリーワインインターナショナル(サントリーホールディングス傘下)、アサヒビール(旧サントネージュワイン)、サッポロビール(旧サッポロワイン)、マンズワイン(キッコーマン傘下)の大手5社と、その他の中小企業という構造となっているようです。

国税庁による2014年度のデータでは、ワインの製成数量(9万5098キロリットル)のうち、78.7%(7万4864キロリットル)を大手5社が占めています。

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国税庁「国内製造ワインの概況(平成29年度調査分)」によると、ワイン製造業者の8割以上は生産規模が100キロリットル以下にとどまる一方で、1000キロリットル以上を生産する7者で全体の8割以上を生産しています。一方、日本ワインの生産割合で見ると、300キロリットル以下の製造業者は9割以上が日本ワインを製造しているのに対し、1000キロリットル以上の大手製造業者では8.4%にとどまっています。

生産規模によって、少量高付加価値型と大量生産型に分かれているといえます。 

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大手を除いたワイン製造業者の経営状況は、2015年度をピークに利益が悪化しているようです。特に期限付免許者である新規参入業者の平均では赤字経営となっています。国税庁「国内製造ワインの概況(平成29年度調査分)」によると、期限付免許者を除いた製造業者においても、2017年度は営業赤字の製造業者が49者(27.2%)、営業利益額が50万円未満の製造業者が28者(15.6%)で、両者を合わせると77者(42.8%)に上ります。営業赤字ないし営業利益額が50万円未満の製造業者の数は、2016年度の66者(39.7%)、2015年度の51者(28.2%)から年々増加しており、経営環境が厳しくなってきていることが分かります。

3)ワイン製造の主要産地と品種

ワインの原材料となるぶどうは、気候や土壌の性質などによって生産に適した品種が異なります。また、ぶどうの品種改良の進展によってもワインの品質が変わります。例えばヤマソービニオンは、1990年に山梨大学によって登録された、カベルネ・ソービニヨンとヤマブドウを交配して作られた品種で、山形県や岩手県などで生産されています。

ワインは原材料となるぶどうの品種の他、製造地域の気候や製造方法などによって、地域単位、ワイナリー単位で個性が出るため、差異化しやすい商品といえます。

ワインの生産量の上位5道県である主要ワイン生産地の生産量と、使用しているぶどうの品種別数量は次の通りです。

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4)輸入ワインの状況

国内ワイン市場に大きな影響を与えるのが、輸入ワインの存在です。前出のキリンのウェブサイトにある「ワイン参考資料(2019年7月)」によると、2018年のワインの出荷数量(36万1388キロリットル)のうち、3分の2程度(23万9379キロリットル)を輸入ワインが占めています。

海外からのワインの輸入量は、ここ数年はほぼ横ばいとなっていますが、10年前と比べると数量ベースで39.9%増加しています。ただし、金額ベースでは18.3%の増加にとどまっています。1リットル当たりの平均単価で見ると、2008年の約764円から2018年には約646円へと下落しています。

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主要6カ国からのワインの輸入の状況は、各国によってさまざまです。最も輸入数量が増えているのは、2007年9月に発効した日本チリ経済連携協定に基づき、段階的に関税の引き下げが続いたチリです。輸入数量は10年間で4倍近くに増えて、日本向け第1位の輸出国に躍進しました。ただ、平均単価は1リットル当たり300円台と低価格商品の扱いとなっており、2018年には1リットル当たり約316円まで下落しています。スペイン産ワインも低価格商品の位置付けにあるといえます。

一方、米国産ワインは平均単価を上昇させており、「カリフォルニアワイン」などのブランド戦略が奏功しているといえます。また、フランスも1リットル当たり1000円前後を維持しています。

消費者がブランドによって、低価格帯と高価格帯の商品を選別して購入する傾向が広がっているとみられます。

5)経済連携協定の影響

今後は、自由貿易協定の広がりにより、輸入ワインの数量が増加する可能性があります。2019年2月に発効した日EU経済連携協定により、これまで15%または1リットル当たり125円のうち安い関税がかけられていたEU産のワインへの関税が撤廃されました。これにより、イタリア、フランス、スペインといったワイン輸出国から無関税でワインが流入することとなりました。

また、2007年9月に発効した日本チリ経済連携協定に基づき、12年間で段階的に関税を引き下げてきたチリワインに対する関税が、2019年4月に完全撤廃となりました。オーストラリアに関しても、2015年1月に発効した日本オーストラリア経済連携協定に基づき、ボトルワインの輸入に関して7年間での撤廃に向けた段階的な関税の引き下げを行っています。

輸入会社は、従来は販売価格に転嫁していた関税の分の費用を、価格を下げたり、拡販施策に活用したりして、販売攻勢をかけることも想定されます。

6)ワイナリーへの格付け

これまで日本では個別のワインに対する品評会はありましたが、ワイナリーに対する評価には、あまり高い関心が寄せられていませんでした。

こうした中で2018年から、品質の高いワインを造るワイナリーを表彰する「日本ワイナリーアワード」が始まりました。消費者がワインを愉しむ一助となることを目指したもので、日本ワインを広く取り扱う酒販店・飲食店の代表または仕入れ担当者や、日本ワインに関する著作・記事のある人たちで構成する日本ワイナリーアワード審議会が審査を行います。

審査では、最高位の「5つ星」から「4つ星」「3つ星」「コニサーズワイナリー」の4段階で格付けを行います。高い格付けを得た中小のワイナリーは、ワイン愛好家からの関心が集まり、独自のブランドづくりに役立つとみられます。

以上(2019年12月)

pj50473
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イベント業界(企画会社、会場設営会社)の動向

書いてあること

  • 主な読者:イベント業界への参入を検討する経営者
  • 課題:現在の市場規模、注意すべき点などが分からない
  • 解決策:市場規模や今後の展望などから、参入の可能性を探る

1 イベント業界の概要

1)イベント業界の成り立ち

イベントには、オリンピックやFIFAワールドカップなどの巨大なスポーツ大会をはじめ、国際会議(コンベンション)、展示会・見本市、コンサートや演劇などの興行や地域のフェスティバルなど多種多様なものがあります。広義で見ると、会社内の周年事業や学校の運動会などもイベントに含まれます。

イベントの開催目的は社会貢献から企業の営利活動、地域住民の集まりまで多岐にわたっており、主催者も官公庁、企業、業界団体、地域住民などさまざまです。

こうしたイベントは、規模が大きくなるほど主催者が独力で開催することは困難となり、いわゆるイベント業界の会社やボランティアの協力が欠かせません。また、経験の浅い主催者は、外部からイベント開催のノウハウの指導を受けることが必要な場合もあります。イベントの開催に当たり、裏方作業を中心に主催者などから業務を請け負うことで、イベント業界は成り立っています。

2)イベント業界の構成

イベントを開催するには、企画、制作、運営、会場設営、会場の警備、物販、清掃、広報など、多様な役割の担い手が必要です。イベント業界には、主催者だけでは手が回らない、さまざまな業務を遂行する数多くのイベント関連会社があり、こうした業務を請け負っています。

イベントの規模や目的などによってイベント関連会社の関わり方はさまざまです。主催者が企画段階からイベント関連会社に協力を仰ぐ場合、業務委託を受けたイベント関連会社が、運営や会場設営などその他の業務全般の発注についても取り仕切るケースが多いようです。

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3)イベント関連会社の業務内容

ここでは、イベント関連会社の業務内容について触れます。

1.イベント企画会社

主催者から請け負ったり、広告代理店などから業務を受託したりします。主催者がコンペ方式やプロポーザル方式で企画会社を選定することが多いようです。

イベントの内容や企画会社によっては、企画会社が制作や運営まで一貫して取り仕切るケースもあるようです。例えば、イベント企画会社のフロンティアインターナショナル(東京都渋谷区)は、労働者派遣業、屋外広告業、特定建設業、一級建築士事務所、警備業などの許可・登録・認定を受けています。

一方、シミズオクト(東京都新宿区)のように、イベントの運営から会場設営、会場管理など「裏方」業務に強みを持った会社もあります。こうした「裏方」業務は、主に人材派遣会社などからの派遣人材が実際の担い手となっています。

2.イベント会場設営会社

イベントの制作・運営を行う企画会社などからの発注に応じて業務を行います。会場設営といっても、建築、建築用機材などのレンタル、電気系統の配線、映像・音響系の機材設置および演出など、さまざまな分野があります。イベント会場の内装や展示のデザインなどを中心に手掛ける大手ディスプレイ会社の中には、展示会のブースの設営などを、自社グループ会社で行うケースもあるようです。

4)イベント業界に関する法規制など

イベントを開催するには、主に安全面から、さまざまな法規制に従う必要があります。

1.建築基準法

建築基準法では、仮設興行場や仮設店舗などを含む仮設建築物に関し、安全上、防火上および衛生上の観点から許可基準を設けています。例えば、火気を使用する設備もしくは器具を設けた場合、壁や天井の表面の仕上げを準不燃材料にすることが定められています。

2.警備業法

来場者の誘導や会場の警備、交通整理などイベントでの警備は、雑踏警備業務となります。国家公安委員会規則により、雑踏警備業務を行うには、予想される雑踏の状況に応じて、開催区域ごとに1級または2級検定合格警備員を配置する必要があります。

3.食品衛生法

飲食物を提供する出店者がある場合は、出店場所の所轄の保健所から営業許可証を得る必要があります。

4.道路交通法

道路露店や屋台を出店したり祭礼行事を行ったりする場合や、道路案内などの広告板を設置する場合は、管轄する警察署長から道路使用許可を受けなければなりません。

5.消防法(火災予防条例)

イベントの際に、コンロなど規制の対象となる火気器具などを使用する露店などには、消火器の準備が義務付けられています。また、消防長が定める屋外イベントを行う場合には、防火担当者の選任や火災予防上必要な業務計画の提出などが必要となります。

この他、法規制ではありませんが、イベントの円滑な実施のために、事前に保健所、警察、消防などに相談することを求めている地方自治体が多いようです。

2 イベント業界の市場分析と展望

1)イベント業界の市場規模と環境分析

日本イベント産業振興協会が2019年6月に公表した2018年の国内イベント消費規模推計によると、交通費や宿泊費なども含めた国内イベント消費規模は前年比4.2%増の17兆3510億円に上り、7年連続で前年を上回りました。

また、日本展示会協会が2019年2月に公表した展示会実績によると、同協会会員である主催者・団体が2017年度に開催した展示会数は、前年度を10.1%上回る369件となりました。来場者数も前年度より9.5%多い412万4965人となっています。

電通テックのイベントプロデューサーの経歴を持つ岡星竜美・目白大学メディア学部特任教授(イベント学)へのヒアリングによると、「全てのイベントの市場規模が拡大しているわけではないが、特にスポーツ分野や、大規模な音楽フェスティバルなど大型イベントの市場が拡大しており、業界全体としては成長している」(*)とのことです。

2020年には東京オリンピック・パラリンピック、2025年に国際博覧会(大阪・関西万博)という巨大イベントを控えている他、観光庁などが訪日客の増加などを目指しMICE(Meeting=企業などの会議、Incentive Travel=企業などの報奨・研修旅行、Convention=国際会議、Exhibition/Event=展示会・見本市やイベント)誘致に取り組んでいること、消費者が参加・体験型のレジャーを楽しむ“コト消費”を好む傾向が強まっていることなど、今後もイベント業界の市場規模が拡大するとみられる要因はさまざまあります。

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2)イベント業界のM&Aの動向

業務内容の特性を考慮すると、イベント企画会社はクリエーティブ性に加え、ノウハウの蓄積や、クライアントなど関係各社へのコネクションといったノウハウ・情報集約性の高い業種であり、大手では組織力やネームバリュー、小規模の会社は個人の経験や力量に依存する部分が大きいと考えられます。このため、海外展開などを除き、単純な規模拡大を目指した水平的な統合効果は、それほど大きくないといえるでしょう。

一方、垂直的な統合には自社グループによる提供サービスの拡充という点から一定の効果があると考えられます。特に、主催者やイベント参加者からの信頼度を高めるため、知名度の高いメディアや広告代理店の傘下に入るケースは、被買収企業にもメリットのあるM&Aになるといえます。

また、肉を中心としたスーパーマーケットや外食事業を展開するジャパンミートが、「肉フェス」などを制作・運営しているAATJを買収したように、本業に関わる分野の啓発・発展を目指し、イベントの譲り受けを目的としたM&Aを行うことも合理的な戦略といえるでしょう。

イベント設営会社に関しては、現場部門は労働集約的であり、2020年の東京オリンピック・パラリンピックなど巨大イベントが増えた場合、人手不足になる可能性も考えられます。こうした要因もあり、特に小規模の事業者にとっては、水平的な統合を目的としたM&Aによるスケールメリットは大きいとみられます。また、業務量を平準化しにくいイベント業界の弱点を補完するために、既存事業を活かした他業種への進出もしくは他業種との統合のために、M&Aを活用することも有効でしょう。

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3)イベント業界の展望

前述の岡星特任教授へのヒアリングによると、「最近のイベント業界の傾向として、大型化、長期化、複合化が見られる。消費者の満足度を高め、興行者の利益も拡大させるために、規模を拡大したり、開催期日を長くしたり、例えば花火大会の開催地周辺で音楽ライブやグルメイベントを開催するなどイベントを複合化させたりしている。これらはイベントの規模が大きくなるので、一定程度の大きな会社でないと企画・運営はできない」(*)とのことです。

その一方で、「映像系に強いとか、演出の評価が高いといった、『クリエーティブ・ブティック』もある。今後も有名ユーチューバーとの連携やドローン、VR(バーチャルリアリティー)を使った映像表現など、突出したコンテンツを活用したイベントを開催できる企画会社が急成長する余地がある。地方の地域イベントは、地方自治体の予算が続く限りは継続的に行われるので、安定性はあるだろう」(*)とのことです。

4)イベント産業のISO

イベント業界の展望として、イベントマネジメントの国際標準規格ISO20121の取得が挙げられます。2007年に策定された規格で、環境問題などの持続可能性を考慮したものとなっています。認証の対象はイベント、主催者や制作会社などの企業、競技会場などの施設といったもので、ロンドンやリオデジャネイロのオリンピック・パラリンピックの組織委員会も取得しました。

国内のイベント関連会社では、コンベンションの企画・運営を行う日本コンベンションサービス(東京都千代田区)や、スポーツイベントなどを制作するセレスポ(東京都豊島区)が取得しています。今後、規格の知名度が高まるに従って、取得の有無が1つの評価につながる可能性もあります。

3 経営指標

イベント関連会社に関する公的機関が公表している経営指標は確認できませんでしたが、イベント関連会社である広告代理業およびディスプレイ業の経営指標を紹介します。

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以上(2019年12月)

pj50478
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遊休地活用のアイデア例

書いてあること

  • 主な読者:遊休地を活用したい経営者
  • 課題:具体的にどう活用するのが効果的か分からない
  • 解決策:さまざまな活用例を参考に、できそうなアイデアを模索する

1 新事業の展開の必要性が高まる

どの産業も導入期、成長期、成熟期、衰退期をたどります。成熟期もしくは衰退期にある産業の事業者は、規模を縮小しつつ事業を継続して残存者利益を勝ち取るか、新たな収益源を生み出すしか、生き残る手段はありません。

本稿では、従来の事業の縮小・撤退などで生じた遊休地もしくは空きビルなどの建築物の活用により、新たな収益源を生み出すためのアイデア例を紹介します。

2 遊休地の活用例

1)セルフストレージ

セルフストレージは、顧客に収納スペースを提供するものです。タイプを大きく分けると、倉庫業法に基づき、物品を預かる事業である「トランクルーム」と、物品を収納するためのスペースを顧客に賃貸する事業の「レンタル収納」および「貸しコンテナ」があります。

トランクルームは倉庫業法に基づく事業であり、事業者には顧客との寄託契約により物品の補償義務が生じます。これに対し、レンタル収納および貸しコンテナは、スペースの賃貸借契約になるので、賃貸業と見なされ、原則として物品の補償はありません。

レンタル収納はビルや専用施設の室内を区切って使用するのが一般的で、貸しコンテナは屋外にコンテナを設置することが多いようです。このため、後者は遊休地、前者は後述する空きビル(建築物)の活用例に該当します。

セルフストレージは国内での歴史が浅く、今後の市場の成長が期待されています。業界大手のキュラーズのプレスリリースによると、トランクルームの2018年の市場規模は約590億円で、2025年には1000億円を超える規模へと成長する可能性を秘めているとしています。また、日本セルフストレージ協会のウェブサイトによると、米国では1700万室のセルフストレージがあるのに対し、日本では50万室程度にとどまっており、「狭い住宅事情の日本では、今後このサービスの需要は大きくなっていくものと思われます」と分析しています。

■キュラーズによる市場規模に関するプレスリリース■
https://www.quraz.com/info/pr/20190523.aspx
■日本セルフストレージ協会■
http://www.japanssa.org/

2)コインランドリー

コインランドリーはクリーニング業法の適用外の事業です。ただし、衛生的な管理を行うために厚生労働省が「コインオペレーションクリーニング営業施設の衛生措置等指導要綱」を定めており、事業者は施設の開設時などに保健所への届け出を行うことが必要となります。

基本的に店舗の営業は無人で行えるメリットがあることから、個人がフランチャイジーになるなどして副業として事業を始めるケースもある他、異業種からの参入も活発になっているようです。

東日本コインランドリー連合会のウェブサイトによると、コインランドリーの店舗数は、1997年の1万739店から、2017年は2万店となり、20年間でほぼ倍増しています。同連合会では、米国と比べて人口当たりのコインランドリーの店舗数はまだ半分であることから「これから伸びるビジネス」と見ています。

コインランドリーの特徴として、顧客には洗濯や乾燥のための待ち時間があることから、さまざまな施設を併設し、売り上げ手段の多様化や集客力のアップを図る動きが見られます。代表的な併設店舗は、カフェ、コンビニエンスストア、書店、ガソリンスタンド、フィットネスクラブなどで、この他にも洗濯関連のワンストップサービスとして洗濯代行を引き受ける店舗やクリーニング店もあるようです。

併設店舗の広がりは、逆に異業種からの参入を促す効果もあります。コンビニエンスストア大手のファミリーマートは2018年3月、コンビニエンスストアに併設したコインランドリー「ファミマランドリー」の第1号店を開店しました。2019年2月にはコンビニエンスストアおよび24時間フィットネスクラブとコインランドリーを併設した店舗も開設しています。また、ドラッグストア大手のツルハドラッグは2018年7月、コインランドリーのフランチャイズを展開するエムアイエス(旧mammaciao)とフランチャイズ契約を結び、ドラッグストアの施設内にコインランドリーを開設しました。

■東日本コインランドリー連合会■
http://claej.net/

3)サービス付き高齢者向け住宅

サービス付き高齢者向け住宅(以下「サ高住」)は、2011年に改正された「高齢者の居住の安定確保に関する法律」に基づく高齢者向けの住宅です。入居する高齢者に対し、状況把握サービス(入居者の心身の状況を把握し、その状況に応じた一時的な便宜を供与するサービス)、生活相談サービス(入居者が日常生活を支障なく営むことができるようにするために入居者からの相談に応じ必要な助言を行うサービス)、その他の高齢者が日常生活を営むために必要な福祉サービスを提供する施設で、建築物ごとに都道府県知事の登録を受けた住宅(もしくは有料老人ホームの居住部分)を指します。

登録を受けるには、国土交通省および厚生労働省が定めた基準を満たす必要があります。基準は国土交通省のウェブサイト「サービス付き高齢者向け住宅」に掲載されています。

高齢者住宅協会のウェブサイトによると、サ高住の登録件数は毎月増加しており、2011年12月の112棟・3448戸から、2019年7月には7415棟・24万7165戸へと増えています。

サ高住に関しては国が供給支援策を講じており、建設・改修の補助や税制優遇、住宅金融支援機構による融資などを受けられることも、追い風になっているといえます。

■国土交通省「サービス付き高齢者向け住宅」■
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000005.html

3 空きビル(建築物)の活用例

1)レンタルオフィス、貸し会議室

レンタルオフィスにはさまざまな定義がありますが、ここでは椅子やデスク、電話、通信回線など業務に使用される一定の物品や環境が備わったオフィス全般を指すこととします。そのため、シェアオフィス、コワーキングスペース、サービスオフィス、バーチャルオフィス、インキュベーションオフィスなどもレンタルオフィスに含むこととします。貸し会議室は、椅子、テーブル、ホワイトボードなどを備えた会議用の一室のみを貸し出す事業です。いずれも建築物内の1部屋単位から開業可能な事業です。

レンタルオフィスはシェアハウスのオフィス版という見方もできますが、他社との交流による情報収集や、施設に付随した各種サービスなど、賃料の安さ以外の目的で利用する企業が多いと見られます。料金体系は、月決めから時間貸し、機器類や各種サービスの利用といったオプションの設定などさまざまあります。貸し会議室は1日単位、時間単位での料金体系が多いようです。

貸し会議室大手で、サービスオフィスを展開する日本リージャスホールディングスを2019年4月に完全子会社化したティーケーピーが2019年8月に公表した新中期経営計画説明資料によると、同社が「フレキシブルオフィス」と定義するホテル宴会場、貸し会議室、レンタルオフィス、コワーキングスペースの2019年の市場規模は2000億円で、2030年には6兆円に拡大すると予測しています。同社はフレキシブルオフィス事業に関して、提供施設を2019年7月の410拠点・48万7000平方メートルから、2030年には約1500拠点・約140万平方メートルに拡大させる計画です。

レンタルオフィスは、施設やサービスの内容によって差異化が図れます。例えば、起業家向けのインキュベーションオフィス、セミナールーム・イベントスペース・会議室が使用可能なオフィス、共用スペースにラウンジやカフェを併設したオフィスなどがあります。この他、受付や電話対応の人員を配備したオフィスや、キッズルームが利用可能なオフィスもあります。さらに運営者側が共用スペースを使って、想定顧客のニーズに合わせたセミナーやイベントを定期的に開催するなど、ソフト面でも差異化できます。

一方、会議室は差異化策よりも規模や立地の影響が大きいと見られますが、前述のティーケーピーは宿泊施設に会議室などを併設した宿泊研修施設も展開しており、差異化にも取り組んでいます。

2)フィットネスクラブなど

日本生産性本部「レジャー白書2019」(以下「白書」)によると、フィットネスクラブの2018年の市場規模は7年連続の拡大となる4800億円で、前年を190億円(4.1%)上回りました。白書では小規模フランチャイズチェーンの拡大と、大手事業者のリノベーションや新業態・サービスの提供が寄与しているとしています。具体的には、24時間セルフサービス型ジムやトレーニングスタジオ、ホットヨガスタジオ、ストレッチサービス店を例に挙げています。さらに、新たに注目を集めている業態として、低酸素状態や暗闇でトレーニングするなど、小規模の目的志向業態と呼ばれる“ブティックスタジオ”の出店にも言及しています。

また、ヨガ・ピラティススタジオも成長が期待されています。白書によると、2018年の余暇活動の潜在需要(希望率から参加率を引いた数値が高いもの)の上位10位の中で、ヨガ・ピラティスは女性合計で第5位(13.6%)となり、女性の20代から50代までの各世代で上位10位以内に入っています。

ボルダリング・クライミングジムも注目されています。スポーツクライミングは新たに2020年の東京オリンピックで正式競技種目になり、今後メディアでの露出度が増えることが予想されます。中でもスポーツクライミングの3競技(リードクライミング、スピードクライミング、ボルダリング)のうち最も手軽に行えるボルダリングに特化したジムは、老若男女が参加できる施設としてニーズが高まる可能性があります。

3)その他

この他にも、立地の制約などは受けますが、今後の市場の拡大が見込まれる事業として、幼児向けのインドアプレイグラウンド、VR(バーチャルリアリティ)アミューズメント施設、インドアゴルフ場・シミュレーションボウリング場、カフェ等併設型ランニング(ウォーキング)ステーションなどが挙げられます。

以上(2019年11月)

pj50468
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事業多角化のアイデア例

書いてあること

  • 主な読者:既存事業の多角化を検討したい経営者
  • 課題:具体的にどんな事業で多角化すればよいのか分からない
  • 解決策:さまざまな業種の多角化例を参考に、事業の方針を模索する

1 新事業の展開の必要性が高まる

どの産業も導入期、成長期、成熟期、衰退期をたどります。成熟期もしくは衰退期にある産業の事業者は、規模を縮小しつつ事業を継続して残存者利益を勝ち取るか、新たな収益源を生み出すしか、生き残る手段はありません。

本稿では、ガソリンスタンド業、ガス検針業、住宅リフォーム業、墓石販売業という既存の事業をベースにした事業の多角化により、新たな収益源を生み出すためのアイデア例を紹介します。

2 既存事業の多角化例

事業の多角化には、既存事業のノウハウを活かせる事業や、既存事業と顧客層が重なり相乗効果も期待できる事業があります。事業の多角化の方向性について図表に示した後に、具体的な多角化の事例を紹介していきます。

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1)ガソリンスタンド業

1.自動車関連事業

車検や修理、タイヤの販売を行うガソリンスタンド(以下「SS」)は従来からありますが、事業範囲をクルマ回り全般に広げる動きがあります。 

コスモ石油はグループ会社などを通じて、カーリース、レンタカー、自動車販売・買い取り・廃車手続きの他、自動車保険やロードサービス「コスモカーレスキュー」を展開しています。自動車販売や保険などについては、「くるまの相談窓口」をコンセプトにSSに併設している「ビークルショップ」で、カーライフコンシェルジュと呼ぶ認定スタッフによる無料アドバイスも行っています。

また、伊藤忠エネクスも「カースタ」(カーライフスタジアムの略)のブランドを使った車の総合サービスとして、レンタカーや自動車販売・買い取りなどを行っています。

この他、ある程度の敷地の広さがあることが条件になりますが、SSにEV(電気自動車)の充電ステーションを併設するケースもあるようです。

2.給油や洗車の待ち時間を活用した併設店舗

SSを利用する顧客には、一般的に給油や洗車の間の待ち時間があります。SS事業者の中には、この時間を利用して他の商品・サービスの購入を促したり、SSへの来店動機を増やしたりすることを目的に、さまざまな施設を併設するケースが増えています。ただし、併設した施設の運営は、自社で行うよりもノウハウを持っている専門の事業者が行うほうが成功率は高いと考えられるため、併設店舗の設置については多角化よりも既存SSの活性化を主眼に置いたほうがよいでしょう。

併設店舗の代表的な例がコンビニエンスストアやコーヒーショップであり、大手チェーンとの協業も進んでいます。この他にも、出光興産(旧昭和シェル石油)は2018年12月、ピザハットとの併設店舗の1号店を開設するとともに、5年以内に併設店舗を100店開発する計画を明らかにしました。また、ENEOSを展開するJXTGエネルギーは2018年12月、コインランドリー併設事業のトライアルを実施するため、併設店舗の1号店を開設しました。併設するコインランドリーはOKULABが運営する「BALUKO」で、SSのスタッフがコインランドリーを管理します。

運転に伴う身体の凝りを和らげることなどを想定したストレッチ店や、長距離トラックのドライバーなど向けにシャワー室や入浴施設を併設したSSもあります。なお、シャワー室は無料で提供している店舗もあるようです。

2)ガス検針業

ガス検針業に関連する多角化として、ガス検針を利用した見守りサービスがあります。大東建託グループでLPガス販売などを行うガスパルは、離れて暮らしている65歳以上の高齢者もしくは障害を持っている人が使用しているガスメーターを1日1回検針し、使用状況を親族などの指定されたメールアドレス(最大3カ所)に送る「ぱるメール」のサービスを月額500円で提供しています。

東京ガスは「くらし見守りサービス」の名称で、同社のガスメーターが設置されている住戸を対象に、見守りサービスを提供しています。ガスの消し忘れ確認のために、スマートフォンを使ってガスの使用状況を確認し、ガスを止めることもできる他、ガスを長時間使用している場合に電話で確認するサービスもあります。また、離れて暮らす家族の見守りのために、前日にガスの利用が一度もなかった場合に、登録したメールアドレスに知らせるサービスもあります。利用するためには、ガスメーターを通信機能付きのタイプに交換する必要があります。

同社の「くらし見守りサービス」ではこの他、「自宅・家族の見守り」として、スマートフォンに、外出時の鍵の締め忘れをすぐに知らせるサービスや、外出前や就寝時に戸締まりをチェックできるサービス、子供や高齢者が帰宅したことを知らせるサービスも提供しています。利用するには有料のセンサーの設置が必要となります。

ちなみに、ガス検針業者ではありませんが、ガスメーターを製造している東洋計器も、ガスの使用が長時間なかった場合に指定したメールアドレスに自動的に知らせるサービスを提供しています。

3)住宅リフォーム業

リフォーム事業のノウハウを活かした多角化の例として、買い取り再販事業やワンストップリノベーション事業が挙げられます。ただし、リフォームの中でもごく一部の改修や修理ではなく、フルリフォームもしくは新たな機能や装備などを加えたリノベーションを行うノウハウを持っていることが前提となります。

いずれも顧客層を従来の住宅保有者から、住宅の購入希望者にまで広げることができます。また、今後増加が見込まれる空き家を活用できる事業であるため、ビジネスチャンスが広がることも期待されます。

1.買い取り再販事業

買い取り再販事業は、リフォーム業者が自ら中古の物件を購入し、フルリフォームもしくはリノベーションをして価値を高めて再販売する事業です。物件購入と販売まで行うため、利益率が高まる可能性がありますが、物件購入のための資金が必要となり、在庫を抱えるリスクもあります。

なお、当該事業は不動産業の要素もあるため、参入するには、リフォーム範囲や規模に応じて必要となる建築一式工事や内装仕上工事といった建設業許可に加えて、宅地建物取引業の免許と、宅地建物取引士の設置が必要となります。

2.ワンストップリノベーション事業

ワンストップリノベーション事業は、物件購入希望者に対し、リフォーム工事を前提に、中古物件探しからリフォームプランの提供、購入に際しての資金計画、ローン申し込みの案内まで行う事業です。物件の仲介やあっせんを行う場合は、買い取り再販事業と同様に宅地建物取引業の免許と宅地建物取引士の設置が必要となります。また、物件購入希望者がローンを組む際に案内できる金融機関と連携しておく必要もあります。

4)墓石販売業

1.石材関連事業

墓石に限らず、石碑や記念碑、石像なども取り扱って事業を多角化するケースがあります。従来の墓石の製造技術を活用すれば、技術的な参入障壁は低いといえます。例えば、導入する石材の種類を広げ、デザイン性を高めた商品を提案すれば、石材加工に関連する多様なニーズに対応するサービスを提供できるようになります。需要全体は少ないかもしれませんが、インターネットでも注文を受け付けるなどして、ニッチトップを目指すという考え方もあります。

2.葬儀関連事業など

墓石の購入希望者へサービスの提供ができ、相乗効果が見込める関連サービスとして、墓地および霊園の案内があります。また、墓石販売業者が葬儀業に進出する事例もあるようです。

3.アフターサービスの拡充

墓石販売だけでなく、墓石保有者へのアフターサービスを拡充させることでビジネスチャンスは広がります。

特に、地方の過疎化や都市部への人口流入などに伴い、地方にある墓の“墓守”が不在となったり、親族が墓参りすることが困難になったりするケースが話題となっており、こうした人たちの問題解決が事業多角化のヒントとなる可能性があります。墓参り代行や、墓の清掃代行・洗浄などの需要は、今後も増えていくことが想定されます。また、これまで十分に墓参りができていなかったことで墓が荒れたり、複数ある墓を合葬したり、といった事情で墓をリフォームするニーズもありそうです。

墓守の問題がさらに深刻化して、墓じまいや改葬を行うケースもあります。先祖代々の墓に納骨するという従来の考え方から、納骨堂の活用や散骨などへと多様化している中で、墓石関連業は今後、新規販売よりも既存の墓石の解体の需要のほうが高まることも考えられます。

以上(2019年11月)

pj50467
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増加する「リハビリ難民」の受け皿 自費リハビリ事業の動向

書いてあること

  • 主な読者:自費リハビリ事業を検討する経営者
  • 課題:市場の動向や、サービスの具体的な価格帯が分からない
  • 解決策:事業を取り巻く環境を整理し、既存サービスの価格を参考にする

1 自費リハビリ事業とは

脳梗塞を含む脳血管疾患などを発症すると、約6割の患者に「片まひ」や、筋肉が不自然につっぱる「痙縮(けいしゅく)」などの後遺症をもたらすといわれます。この後遺症の程度を軽くしたり、一度失った機能を取り戻したりするのに欠かせないのがリハビリです。

脳血管疾患でのリハビリは、「急性期」「回復期」「維持期・生活期」の大きく3段階に分かれます。

  • 急性期:発症から2~3週間程度で、体の機能低下を最小限に抑えるもの
  • 回復期:発症から1~4カ月程度で、日常生活に最低限必要な動作や機能を回復させるもの
  • 維持期・生活期:発症から4~6カ月以降で、自宅に戻って回復期に取り戻した機能を維持させるもの

病院など医療機関に入院して行われる急性期と回復期のリハビリは主に医療保険、退院後、介護保険事業所が行う維持期・生活期のリハビリは主に介護保険から費用が給付されます。

ただし、医療保険によるリハビリは保険適用日数に制限があったり、介護保険によるリハビリは利用者の個別のニーズを満たすことができなかったりすることから、希望するリハビリが受けられない「リハビリ難民」が増加しています。

このように、公的社会保障制度の下では対応が難しいニーズに対して、保険外の完全自費負担で、個別具体的にサービスを提供する自費リハビリ事業が注目されています。自費リハビリ事業が満たすニーズには、次のようなものがあります。

  • すし職人の「再び握りたい」というニーズに対し、手先の回復に特化したリハビリを提供
  • 社長の「座って話せるようになりたい」というニーズに対し、言語聴覚療法に特化したリハビリを提供
  • 事務職の職場復帰したいというニーズに対し、パソコンのキーボードを打てるようになることに特化したリハビリを提供
  • 母親の「子どものお弁当が作れるようになりたい」というニーズに対し、車いすに座ったままでも料理ができるようになることに特化したリハビリを提供

2 自費リハビリ事業を取り巻く環境と成長要因

1)自費リハビリ事業のPEST分析

自費リハビリ事業を取り巻く環境と成長要因について、ビジネスフレームワークの「PEST分析」に沿って考えていきます。自費リハビリ事業のPEST分析は次の通りです。

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2)政治(Political):医療保険・介護保険制度の改正により「リハビリ難民」が増加

厚生労働省は、2006年度の診療報酬改定で、病院など医療機関におけるリハビリ(医療保険)に対し、長期にわたり継続的にリハビリを行うことが医学的に有用であると認められる一部の疾患等を除き、算定日数上限を設けました。

例えば、脳血管疾患のリハビリの算定日数上限は180日で、基本的には、180日以内に退院しなければならなくなりました。

退院後は、例えば脳血管疾患の場合、1カ月当たり13単位(1単位20分)に限り、医療保険でリハビリ病院の外来を受けることができました。しかし、2018年度の診療報酬改定で、2019年4月以降は要介護者等については、1カ月当たり13単位のリハビリ外来も廃止されました。

このため、多くのリハビリ患者は、退院後、介護保険でデイサービスや訪問リハビリテーションなどの介護保険によるリハビリに移行することになります。こうした背景から、デイサービスの受給者数は、2008年4月の1カ月当たり約46万人から、2018年10月の1カ月当たり約61万人まで増加しています。

しかし、デイサービスは基本的に集団リハビリが主で、個別の機能訓練は15分程度といわれます。また、訪問リハビリテーションは、個別リハビリですが、それでも基本的に40分~1時間と短時間です。また、いずれの場合も、脳血管疾患専門のスタッフなどは多くありません。

このような背景から、長期にわたってリハビリを希望しているにもかかわらず、医療保険から切り離された患者のうち、介護保険1号被保険者でも2号被保険者でもない40歳未満の患者や、介護保険によるリハビリを受けたくても利用可能な施設がなかったり、介護保険によるリハビリでは満足できない患者を中心に、「リハビリ難民」が生まれました。

3)経済(Economical):高齢の労働者が増加

脳血管疾患患者の約6割が70歳以上といわれます。近年では、働く高齢者が増加しており、70歳以上の労働者は2008年の268万人から、2018年には425万人となっています。60歳以上の労働者を見ても、2008年の1099万人から、2018年には1414万人まで増えています。

働く高齢者が増えたことで、脳血管疾患患者で職場復帰を急ぐケースが増加しているとみられます。前述の通り、介護リハビリでは、患者の職種に応じた個別機能訓練を十分に受けることができません。

4)社会(Social):働き盛りで職場復帰を急ぐ若年層が存在

厚生労働省「患者調査」によると、2017年10月時点の脳血管疾患の総患者数は約112万人、日本リハビリテーション医学会によると、2014年時点で約300万人と推定され、毎年、新たに25万~30万人が発症しているといわれます。

今後、高齢化により患者数は増加するとみられており、それに伴って、自費リハビリ事業への需要も広がることが予想されます。

また、前述した通り、介護保険1号被保険者でも2号被保険者でもない40歳未満の若年層を含め、20代~50代といった働き盛りで、自らの職種に応じた個別機能訓練を強く希望する人たちに対し、自費リハビリサービスが受け皿となります。

現に、デジタルヘルスベンチャーとして自費リハビリ施設「脳梗塞リハビリセンター」を全国で17店舗展開するワイズが、2018年3月9日の未来投資会議 構造改革徹底推進会合で発表した資料によると、利用者の年代は20代~50代が全体の46%に上っています。

5)技術(Technological):個別的なニーズに応える最新機器が登場

利用者の個別的なニーズに応えるため、VR機器やロボットなどさまざまな機器が開発されています。

ワイズは、麻痺した下肢の運動を脳に再学習させる歩行支援ロボット、仮想現実(VR)技術を応用して、ゲーム感覚で車いすでの姿勢保持や歩行などに必要なトレーニングを行う機器、会話を通じて言語トレーニングを行うロボットなどを導入しています。

3 自費リハビリ事業の競争環境

1)自費リハビリ事業のファイブフォース(5つの力)分析

自費リハビリ事業の競争環境について、ビジネスフレームワークの「ファイブフォース分析」に沿って考えていきます。自費リハビリ事業の競争環境は次の通りです。

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2)新規参入の脅威 脅威度:大

厚生労働省へのヒアリングによると、「自費リハビリ事業は介護保険外のサービスとなるので、介護保険法に基づく都道府県の指定・許可は必要なく、施設・設備基準も存在しない」(*)とのことです。

そのため、既存の介護保険事業者や異業種からの参入が相次いでいます。

(*)厚生労働省 老健局(2019年8月22日時点)

3)売り手の脅威 脅威度:中

施設・設備面での参入障壁も低く、理学療法士が1名とベッドが2台程度あれば開業することが可能だといわれます。

ただし、個別のニーズに応えるために、前述したような最新のリハビリ機器を導入する場合は、特定のメーカーの独自技術であることが多いため、売り手の価格決定力が大きくなるでしょう。

また、理学療法士や作業療法士は、近年増加しているものの、介護保険事業所が全国的に増えていることから、現在ではまだ人手不足といわれます。サービスの質は、いかに優秀な理学療法士や作業療法士を確保するかに影響される部分も大きいため、採用の際は、既存の介護保険事業所よりも高い給与や待遇を設定することなどが重要です。

4)代替サービスの脅威 脅威度:小

リハビリテーションを提供するサービスという観点では、既存の介護保険内のリハビリサービスが代替サービスといえるでしょう。

前述の通り、介護保険内のリハビリサービスに満足できない、または、利用することができない人たちが、自費リハビリサービスに流れてきていることから、代替サービスとしての脅威は小さいといえます。

5)買い手の脅威 脅威度:小

自費リハビリ事業の基本的なサービスとして、利用者と個別に面談し、各利用者に合ったプログラムを組むことで、効果を実感させやすいという特色があります。一度、効果を実感するとリピーターになりやすいため、多くの自費リハビリ施設では、無料や安価での体験サービスを実施しています。

また、現状、自費リハビリ施設は都市部に多く、都市の郊外や地方にはニーズに対して施設数が少ないといわれます。そのため、今後、都市の郊外や地方への出店には大きな可能性があるといえます。

6)業界内の競合企業との敵対関係 脅威度:小~中

前述したワイズや、豊田通商の完全子会社である豊通オールライフが運営する「AViC THE PHYSIO STUDIO」(都内で4店舗展開)などが、出店攻勢を強めています。

新規参入が容易なことから、今後も、大規模・小規模問わず出店が増えていくことが予想され、立地やサービス面での差異化が重要になってくるでしょう。

例えば、無料体験を実施してリピーターを確保したり、家族が送迎しやすい日曜日などに営業したり、遠方の利用者のために送迎サービスを行ったりするなどの差異化を図っているケースがあります。

4 【参考】自費リハビリ事業のサービス・価格帯

参考として、AViC THE PHYSIO STUDIOの2019年9月時点での主なサービス内容や価格は次の通りです。

・上肢(麻痺手)集中コース

  • 【内容】脳卒中の中でも、日常生活で非常に困る上肢の麻痺の改善に特化したリハビリコース。利用者それぞれに適した課題を設定し、反復で手・腕をトレーニングする。
  • 【回数】週5回(1回約3時間、3週間)
  • 【価格】45万円~(税別)

・歩行集中コース

  • 【内容】脳卒中の後遺症として代表例の1つである歩行障害の改善に特化したリハビリコース。免荷式トレッドミルやエアロバイクなどの機器を用いて、歩く練習を行う。
  • 【回数】週4回(12週間)
  • 【価格】48万円~(税別)

・整形外科・運動器リハビリプログラム

  • 【内容】整形外科疾患の後遺症による体の痛みや歩きにくさ、動かしにくさといった機能不全に対して集中的にトレーニングを行うプログラム。独自の動画解析システムを利用して、姿勢・歩行・痛み動作の確認をし、北欧最先端機器を利用した「スリングエクササイズセラピー」やインナーマッスルを目覚めさせる体幹トレーニングを行う。
  • 【回数】オーダーメードプラン:週1~3回 回数×12週間
  • 短期集中プラン:週3~5回 回数×2週間
  • 【価格】オーダーメードプラン:12万円~(税別)
  • 短期集中プラン:6万円~(税別)

・訪問リハビリプログラム

  • 【内容】さまざまなリハビリ機器を利用者の自宅に持参し、日常生活をうまく送れるための練習をする。
  • 【価格】1時間当たり1万2000円(税別)

以上(2019年11月)

pj50466
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DIY市場の動向

書いてあること

  • 主な読者:ホームセンターの開業を検討する経営者
  • 課題:現在の市場規模、注意すべき点などが分からない
  • 解決策:市場規模を把握し、既存店の差異化策を参考にする

1 DIY市場の動向

1)ホームセンターとは

日本標準産業分類によると、ホームセンターとは、「主として住まいの手入れ改善にかかる商品を中心に、家庭用品、園芸用品、電気機械器具、家具・収納用品、建築材料などの住関連商品を総合的、系統的に品ぞろえし、セルフサービス方式により小売りする事業所で、店舗規模が大きい事業所をいう」と定義されています。

2)売上高および店舗数の推移

日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会(以下「日本DIY協会」)の推計によると、ホームセンターの売上高および店舗数の推移は次の通りです。

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日本DIY協会の推計によると、ホームセンター業界の売上高は2003年以降、業界全体で約3兆9000億円前後で、ほぼ横ばいの状態が続いています。

商品ジャンルごとの売上高では、ニトリやイケアなど専門店や、ドラッグストアなど他業種との競合により、家具・収納用品や家庭用品の売上高は減少する傾向にあります。

加えて、少子高齢化の影響により地方の人口減少や都市部への人口集中が進み、戸建て住宅からマンションへの移行が進むなど、住環境が変化することによって、長期的にホームセンターの売上高は減少するとみられています。

ホームセンター大手各社は、これまで特定地域を中心にドミナント展開を行ってきましたが、業界の売上高の伸びが鈍化する中、これまで出店を行ってこなかった他地域への新規出店を進めています。店舗数の増加に伴い競争が激化し、1店舗当たりの販売額や売り場面積当たりの売上高も減少しています。

3)大型店出店とホームセンター業界の寡占化

ホームセンターが取り扱う商材は他の業態に比べ差異化が難しく、同質化競争に陥りやすいといえます。品ぞろえを充実させることが、他店との差異化につながるため、大手各社は大型店舗を新規出店し、集客力を確保してきました。こうした大手各社の新規出店により、同一商圏にあった中堅・中小のホームセンターの淘汰が進みました。その結果、現在、売上高が1000億円を超える上位9社で、売上高ベースで業界全体の約7割を占めるようになっています。

ホームセンター売上高上位9社の売上高、店舗数は次の通りです。

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2 ホームセンター各社による主な取り組み

ホームセンター各社は、他社との差異化戦略に取り組んでいます。主要な取り組みには、次のようなものがあります。

1)商品力の強化

ホームセンター各社は、プライベートブランド(PB)商品の開発を進めています。スケールメリットを活かせることなどから、大手各社では、今後もPB商品の点数を増やし、全商品に占めるPB商品の売上構成比率を高める方針を掲げています。

いち早く2000年代から、自社で製造から小売りまでを行うSPA(製造小売り)化を進めたカインズによる差異化戦略の成功も、各社による取り組みを進める後押しになっているとみられます。

2)新たな店舗開発

ホームセンターの中には、新しい店舗開発を行うことで、集客力の向上を目指す動きがあります。例えば、食品スーパーとの併設店や、ホームセンターを中心としたショッピングモール型の店舗開発です。食品などを取り扱う店舗と併設することで、集客力を高めるとともに、日常的に利用してもらうことで来店機会を増やす狙いがあるようです。

これまでホームセンターは、主に郊外のロードサイドに自動車で来店するファミリーを想定して大型店を開発してきました。しかし今後、地方人口が減少し都市部への人口集中が進むと予想される中、都市生活者など新たな顧客をターゲットとする小型店の開発も進められています。

また、従来のホームセンターは、一般消費者向けと事業者向けの商品が同じ売り場で販売されてきました。しかし、双方で商品に対するニーズが異なることや利用シーンが異なることなどから、建設業者などの事業者を対象とする小規模商圏を想定した小型店舗の開発が進められています。

3)新たなマーケット開拓

ホームセンターの中には、より専門性の高いサービスに注力することで、新たなマーケットを開拓しようとする取り組みを進めているところもあります。例えば、コメリでは既存のホームセンター事業に加え、農家などへの支援サービスを打ち出しており、農業従事者向けに特化したサービスを展開することで、マーケット開拓に取り組んでいます。

また、この他にも、ペット販売に関する業界シェアの拡大を狙い、他の事業者と提携するケースなども見られます。

大手ホームセンター上位9社の主な対応は次の通りです。

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この他にも、大手各社では、ECサイトと実店舗との連携強化や会員サービスの充実、既存店の活性化・効率化、物流網の整備などに取り組むとしています。

専門誌などによると、今後、例えば空き家対策におけるDIYへの需要の高まりや、余暇時間が増加することで多様なレジャーへの需要が生まれる可能性もあり、ホームセンター各社にはこうした機会を捉え新しいビジネスモデルを構築することが求められます。

3 コーナン商事の取り組み

1)コーナン商事の現状

コーナンを運営するコーナン商事(大阪府堺市)は、主に近畿圏を中心に2019年2月末時点で全国に356店舗を展開しています。同社の店舗には、一般消費者向けのホームセンター事業である「コーナン」、建築、塗料、作業用品などのプロ向けの工具や資材を取り扱う「コーナンPRO」などがあります。「コーナンPRO」では、現場作業に向かう前に利用してもらうために早朝から営業を行うなどしています。

同社のセグメント別売上高の推移は次の通りです。

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また、同社は2018年4月に九州地区を中心に、食品スーパーとホームセンターを併設した店舗の展開を行う、ホームインプルーブメントひろせ(大分県大分市)と資本業務提携し、九州地区での出店を進めました。

2)今後の取り組み

コーナン商事は、2018年4月12日に2020年を目標とする第2次中期経営計画「もっと大好きや!!コーナン」を策定しています。計画では、売り上げ規模を拡大して高収益を追求するとしています。そのための重点戦略として、商品戦略、人事戦略、投資戦略、財務戦略の4つの戦略を掲げ、特に商品戦略を最重要として位置付けています。商品戦略の具体的な内容は、次のようなものです。

・PB商品開発体制を強化し、売上構成比40%を目指す
・「誰に」「何を」販売するのかを明確に設定し、魅力あるPB商品の開発を進める

これにより、同社の商圏シェア率を向上させるとしています。

同社は、2017年4月に小田急電鉄の子会社でホームセンター事業を行っていた「ビーバートザン(神奈川県厚木市)」、2019年4月にプロ顧客向けの会員制建築資材卸売店舗「建デポ(東京都千代田区)」の株式を取得して子会社としています。同計画において、3年間で50店舗をめどに出店を進めるとしており、第2の商圏と位置付けた東京などの首都圏での出店を進める方針を打ち出しています。

この他にも、2019年4月1日より、楽天が運営する共通ポイントサービス「楽天ポイントカード」を導入し、「ホームセンターコーナン」「ホームストック」「コーナンPRO」で共通するポイントサービスの利用を可能にしました。また、同日より同社独自のチャージ式電子マネー「コーナンpay」を全店で導入しています。こうした取り組みにより顧客の利便性を高めるとともに、業務の効率化を目指すとしています。今後は、こうした顧客情報を活用したサービスの充実を進めるとみられます。

同社は、2019年5月に公表した長期ビジョン「New Stage 2025」の中で、PB比率の向上とともにSPA化の推進、ホームセンター業界に限らない商品供給事業の拡大、ECとリアル店舗の連携による利便性の向上を打ち出しています。また、同ビジョンでは、2016年にベトナムに出店した後、2025年までにベトナム国内に30店舗展開することを目標として掲げています。

4 参考:統計資料

「ホームセンター経営統計 2019年版」(日本ホームセンター研究所、2019年4月12日)

■日本ホームセンター研究所■
http://www.hci.co.jp/

以上(2019年10月)

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画像:unsplash

温浴施設の動向

書いてあること

  • 主な読者:温浴施設の開業を検討する経営者
  • 課題:現在の市場規模、開業に当たって注意すべき点が分からない
  • 解決策:温浴施設数の推移や具体的な注意点を把握する

1 温浴施設の動向

1)温浴施設数の推移

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、公衆浴場の施設数の推移は次の通りです。

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衛生行政報告例では、スーパー銭湯を含む温浴施設は、「ヘルスセンター」「その他」に分類されています。「ヘルスセンター」「その他」の施設数は、ともに2014年度にわずかに増加しているものの、2013年度と比較すると2017年度は減少しています。

2)市場規模の推移

温浴施設の市場規模に関して、日本生産性本部が発行している「レジャー白書2018」を基に市場規模の推計を紹介します。温浴施設の推定市場規模の推移は次の通りです。

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温浴施設の利用状況を見ると、「実際の参加者数」は2014年に大幅に増加したもののその後は減少しており、2017年は前年に比べわずかに増加しているものの、2013年と比較すると減少しています。

一方で、「年間平均費用」は2013年と比較すると2017年は増加しています。利用者数が伸び悩む中、多くの温浴施設で飲食メニューを充実させるなど、他店との差異化を図りながら、顧客単価を上げる取り組みが行われており、こうした取り組みが影響しているとみられます。

また、温浴施設の大手チェーンでは、軽食メニューや美容関連のサービスを充実させることで、若者や女性などの利用を促す取り組みを行っています。こうした取り組みの影響もあり、温浴施設の市場規模は年により多少の増減はあるものの、2013年に比べてわずかに拡大しているとみられます。

2 地域別温浴施設数の推移

厚生労働省「衛生行政報告例」によると、地域別温浴施設数の推移は次の通りです。

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以上(2019年7月)

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画像:pixabay

自動車ディーラーを取り巻く市場変化

書いてあること

  • 主な読者:自動車ディーラーの開業を検討、もしくは運営している経営者
  • 課題:乗用車の販売が伸び悩む中、今後の市場の展望が読めない
  • 解決策:従来のビジネスモデルを見直し、新たなサービス創出を模索する

1 新車需要の変化

乗用車の新車販売台数の推移は次の通りです。ここでの乗用車は登録車と軽自動車を合わせた数値です。

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近年は、2年連続で年間500万台を突破するなど、新車市場は堅調に推移しており、新車流通を担うディーラーの経営環境も良好だといわれます。

一方で、日本自動車販売協会連合会は2018年10月に発表した調査リポート「乗用車ディーラービジョン(2018年版)」において、乗用車の年度別新車需要は、2020年度以降に下降局面に入ると予想されています。

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新車需要が下降局面に入る理由として、同リポートでは、ユーザーが家計の支出に慎重で、自動車の保有期間が長期化するトレンドが続くと予測されることを挙げています。

同連合会が2017年に発行した「2017年版 自動車ディーラービジョン(乗用車店編)」では、10年後の新車販売は今より約100万台減少すると予測しています。今、多くのディーラーは、新車販売が年間400万台の時代が到来しても事業を継続できる体制づくりを模索しているといわれます。

2 平均使用年数の長期化

乗用車(軽自動車を除く)の平均使用年数推移は次の通りです。

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2018年の乗用車の平均使用年数は13.24年となり、3年連続の増加で過去最高となりました。2000年と比べると3.28年延びています。

現行の自動車税では、車齢13年を超えるガソリン車についてはおおむね10%の重課対象となっており、平均使用年数のデータも車齢13年いっぱいまで買い替えを控えるユーザーが増えていることを示しています。

3 消費税率引き上げの影響

2019年10月に予定されている消費税率引き上げについて、「乗用車ディーラービジョン(2018年版)」によると、駆け込みで購入する層が一定数いる一方で、生活費全体が上昇する懸念から買い替えを遅らせる層も一定数いるとのことです。

消費税率引き上げによるマイナスの影響を抑えるための具体的な措置として、2018年12月に閣議決定された「平成31年度税制改正大綱」には、2019年10月以降に新車新規登録を受けた自家用乗用車(軽自動車を除く)について、自動車税の恒久減税を行うことなどが記されています。

減税額は、総排気量に応じて1000cc以下の4500円から2500cc超の1000円まで、排気量が少ない車ほど減税額が大きくなっています。

他にも、次のような施策を講じるとしています。

  • 燃費性能などの優れた自動車への買い替えを促す狙いで導入された自動車税のグリーン化特例について、2年延長する
  • 自動車取得税廃止の代替として2019年10月から新たに導入される「環境性能割」について、1年間の措置として、税率を1%軽減する
  • エコカー減税について、自動車重量税に関しては適用基準を厳しくした上で軽減割合を25%下げる条件で2年間延長する

政府与党は、こうした施策を通して、5%から8%に引き上げた2014年4月のように、経済への影響を及ぼさないよう万全を期すとしています。

4 販売形態の多様化

近年では、インターネットも自動車販売チャネルの1つとなっています。楽天やAmazonといったショッピングモールだけでなく、自動車専門のECサイトでも販売されています。

ドイツのダイムラーは2013年12月からメルセデス・ベンツのドイツ国内でのインターネット販売を開始していますが、2018年3月のジュネーブモーターショーで同社は「2025年までに世界販売の25%をオンライン販売にする」との方針を明らかにしています。

また、米国のテスラも、自社の電気自動車をインターネットで販売しています。

国内でも、日産自動車がインターネット上で車種の検討から納車までの手続きを完結できる個人向けリース「NISSAN@DIRECT」のトライアルを東海地区4県(岐阜・静岡・愛知・三重)にて、2019年2月末まで実施しています。

ユーザーの動向次第では、今後、自動車のネット販売が拡大していく可能性があります。

5 「クルマを売る店」からの脱却

トヨタ自動車は2018年4月、完全子会社のトヨタ東京販売ホールディングスと、その完全子会社の自動車販売会社4社を「融合」し、新会社を設立すると発表しました。また、2018年11月には2022年~2025年をめどに4社がもつ「専売車種」をなくし、全店で全車種を販売できるようにすることを目指すとしました。

東京での4社の統合の理由について、トヨタ自動車は「クルマの『保有』から『利活用』へのシフト」が進んでいることを踏まえ、地域での顧客・行政・他企業との連携強化により「新たなモビリティサービス提供によるビジネスモデル変革への挑戦」を進めることに触れています。再編はその具体策であり、試乗車を使ったカーシェアリングサービスや高齢者のための移動サービスなど、販売店を、自動車を売るための店舗から、その地域の実情に根ざしたモビリティサービスを提供するための拠点にしていくとしています。

6 ビジネスモデルの見直しが求められる

前述の次世代自動車やカーシェアリングサービスの普及、予想される新車需要の減少に伴い、自動車ディーラーも従来のビジネスモデルの見直しが求められるといわれます。

「乗用車ディーラービジョン(2018年版)」では、市場の構造変化を想定した関連ビジネスとして、自動車に通信機能を持たせてIoT化する「コネクティッド技術」を活用し、既存の自動車流通網が勝ち組として生き残るための次世代型シェアリングモデルを提案しています。その基本的な仕組みは次の通りです。

  • コネクティッド技術による個人認証を活用し、車両が変わっても運転者の利用履歴情報が車内で認識・照合され、使用度に応じた合理的な課金方式とする。現在の車保有者も、車の「所有権」ではなく、「使用権」を月額で支払う方式へシフト
  • 安全性や省燃費性能、通信技術等の進化が著しいため、同じ車の利用期間は望みに応じて自由に決められる(数時間~10年まで)。また各種機能の進化度合いや車のグレード(中古車も含む)に応じて、料金体系も幅広い選択肢がある
  • ディーラー敷地内には、月額で利用できる車のラインアップが豊富にそろっており、車非保有者向けにも現行のカーシェアリングに比べ、借りられる拠点数、拠点当たりの台数、選択可能な車種数とも巨大化する
  • 車両の稼働率に応じた価格変動システム等で利用コストを低減。自宅や鉄道駅から不便な場所では、電動自転車・スクーターのシェアリングや保管場所の仲介サービス等も提供(店舗内敷地も含む)

同リポートによると、カーシェアリングサービスについては、「ディーラー経営者により賛否が大きく分かれているのが現状である」とのことです。その上で、「ディーラーの強みは、既に国内で7000万台以上の車の保有を支え、店舗ネットワークと敷地、展示・試乗車・中古車等の車両、整備機能、豊富な人材などの資産を有する面が挙げられ、それを生かせるようにしたい」としています。

以上(2019年7月)

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シェアオフィスの市場動向

書いてあること

  • 主な読者:シェアオフィスの開業を検討する経営者
  • 課題:現在の市場規模、開業に当たって注意すべき点が分からない
  • 解決策:市場の推移や具体的な注意点を把握する

1 シェアオフィスとは

1)シェアオフィスの定義

シェアオフィスの定義は明確ではありませんが、一般的には、壁やパーテーションなどによって区切られたスペースや座席を、複数の利用者(主に小規模事業者や個人事業者など)がレンタルで利用するオフィスのことを指します。

通常のオフィス賃貸では、オーナーは業務に使用するスペースのみを利用者に貸し出します。しかし、シェアオフィスでは、オーナーが業務に必要なコピー機、固定電話やインターネット回線などを準備したり、オペレーターによる電話応対などのサービスを実施したりしているケースが多くあります。

2)シェアオフィスの分類

シェアオフィスの分類は、シェアオフィス自体の定義が明確でないため一概には言えませんが、各社ウェブサイトなどの情報から次のように大別することができます。

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図表1の分類の仕方は一例で、企業によっては、コワーキングスペースのようなフリーアドレス式のもののみをシェアオフィスとして扱い、レンタルオフィスなどは数に含めないケースもあります。ただし、いずれもオフィスのスペースや座席をレンタルするという点については共通しています。

2 シェアオフィスの市場動向

シェアオフィスに関する公的な統計はありませんが、レンタルオフィスやコワーキングスペースの開業支援などを行う日本レンタルオフィス協会のウェブサイト「レンタルオフィスNAVI」によると、2019年6月24日時点で、次の件数が掲載されています。

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シェアオフィスの分布を見ると、東京都が全国の半数近くを占めており、その後に大阪府、福岡県、神奈川県などが続きます。静岡県の掲載件数は13件で、都道府県別では第13位となっています。

シェアオフィスは、通常のオフィス物件の賃貸よりも初期投資を抑えやすく、主に小規模事業者や個人事業者などが利用します。加えて昨今は、シェアオフィスを利用する他企業と交流を図りたい企業や、働き方改革の一環で通勤時間を短縮したい企業の従業員などが利用することも多くなっています。

こうした状況の中、足元では不動産・運送・鉄道など、各業界の企業が自社所有のオフィスを改修し、シェアオフィス事業に参入しています。

3 開業の留意点

1)参入障壁

既存のオフィスビルを利用してシェアオフィスを開業する場合、大掛かりな改修工事などが不要となるため、開業費用は比較的低額で済みます。

シェアオフィスを開業するのに特別の許可などは必要なく、また既存のオフィスビルを利用する場合であれば、建築基準法上の申請手続きなども基本的には不要となるため、比較的短期間で開業することができます。

また、オフィスビルを区割りして複数の業者にレンタルするため、仮に退去者が出ても、オフィスビルの1棟を1業者に貸し出す通常のオフィス賃貸に比べ、利用者の退去による事業への影響は少なくなります。

このような特性から、シェアオフィスは比較的参入がしやすい事業であるということができます。

2)設備・サービスの内容

シェアオフィスは、レンタルに供するオフィスビルさえあれば一応は開業することはできますが、各業界の企業が次々にシェアオフィス事業に参入している昨今では、設備・サービスを充実させ、他社との差異化を図ることが重要となります。

シェアオフィスにおける設備・サービスの例としては次のようなものがあります。

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3)ターゲット分析

シェアオフィスは、サテライトオフィスのように遠方の大企業の従業員を誘致するケースもありますが、基本的なターゲットは、オフィス近隣の小規模事業者や個人事業者になります。

こうしたターゲットを早期から囲い込むためには、「オフィス近隣にどのような業者が多いのか」「従業員数はどの程度か」などを分析した上で、ターゲット層が求める設備やサービスの内容を検討します。

例えば、「近隣にIT企業が多い場合は、インターネット回線を個別に引くことを検討する」「役所などがある場合は、役所に関連する仕事の多い士業向けに、会議室の壁を機密性の高い防音壁にする」といった対応が考えられます。

4 シェアオフィスを展開する企業の取り組み

1)WeWork

シェアオフィスの最大手であるWeWorkでは、24時間365日オフィススペースを利用することができます。専用デスクには施錠可能なキャビネットなどを取り揃えている他、来客対応や郵送対応のサービスも行っているため、業務に集中することができます。また、WeWorkコミュニティとして、イベントへの参加や福利厚生などのビジネス以外のサービスを利用できる点も大きな特徴です。

2)サーブコープ

サーブコープは、まだシェアオフィスの浸透していない1990年代からサービスオフィスなどの運営を行っています。提供しているサービスの水準が全般的に高く、同社の全ての拠点では、電話の応対や転送などを代行する秘書サービスが利用できます。また、固定電話番号の即時発行、企業間の無料通話、施設の予約といったITサポートも充実しています。

3)リージャス(TKP)

2019年4月に貸し会議室大手のTKPがシェアオフィスを展開する日本リージャスを買収し、シェアオフィス事業を手掛けています。同社のシェアオフィスは1日単位で利用することができ、スタッフが増えた場合にはデスクスペースの追加などのスケールアップやオフィスのカスタマイズにも対応しています。

以上(2019年8月)

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