起業家が知っておきたい「事業の適法性」

「事業の適法性」は、許認可の取得、投資家への説明、上場審査など、スタートアップが成長していく様々な場面で問題となる法務の重要テーマの一つです。「事業の適法性」という言葉に明確な定義があるわけではありませんが、本稿では、「企業が事業を行う上で適用され得る法令の遵守」と広い意味で捉えることとします。
このシリーズでは、事業の適法性について、起業家の皆さんに押さえておいて頂きたい基本的な事項を3回に分けてご紹介していきます。第1回目となる今回は、事業の適法性を確保していないと、どのようなリスクが現実的に生じ得るのかをご説明します。

1 事業の適法性を確保していない場合のリスク

1)投資契約におけるリスク

昨今、スタートアップの投資契約書がコモディティ化しつつあることもあり(経済産業省『我が国における健全なベンチャー投資に係る契約の主たる留意事項』等)、創業から間もない段階の資金調達においても、投資契約書の中に表明保証条項の一部として「事業に関する法令が遵守されていること」等が定められていることが多く見受けられます。
表明保証条項への違反は、投資家による株式買取請求権の行使条件となっていることも多いため、契約の当事者である会社や経営株主等は、事業の適法性を確保できないことにより、少なくとも株価相当額のリスクを負うおそれがあります。
なお、バイアウトの際の契約条項にも同種の定めが置かれることが一般的であるため、上記と同様のリスクが生じることになります。

2)デューディリジェンスにおけるリスク

金額規模の大きな資金調達やバイアウトが実施される場合には、投資家や買収者から会社の法的なリスクの洗出しと分析を行うための調査(「法務デューディリジェンス」といいます)の実施を求められることがほとんどです。
法務デューディリジェンスの段階で法令違反が発覚する場合には、調達金額や買収価額の算定に悪影響が生じるリスクや、法令違反に対する行政処分等に備え特別補償を求められるなど契約条件が不利になるリスク、法令違反の内容によっては資金調達やバイアウトそのものが中止となるリスクもあります。

3)上場承認に支障が生じるリスク

主幹事証券会社による引受審査や、証券取引所による上場審査では厳格な質問対応が求められます。指摘される法令違反に気づいていなければそれ自体が命取りになります。また、法令違反に気づいていながらそれを是正していないのであれば、よほど合理的な説明ができない限り、やはり各審査で承認を得ることは難しくなります。

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2 事業の適法性を確保し維持することの難しさ

事業に対応する法律が存在する場合、同じ法律の中でも具体的なビジネススキームによって適用される条文が変わり、守るべきルールが異なることも珍しくありません。法令には、施行規則や施行令といった法律より下位のルールも存在するため、それら全てを守らなければ事業の適法性は確保できません。さらに、法令には改正もあるため、油断していると違法な状態が容易に生じてしまいます。
そして、厳密には法令ではありませんが、法令を所管する行政庁が公表する各種ガイドライン等についても、企業が成長するにつれて、遵守すべき立場に置かれていくことになります。
このように事業の適法性を確保するためには、確認すべき事項が多岐にわたるほか、法令の内容が抽象的であるため、その内容を確認するだけでは答えが出ないという問題も生じます。事業の適法性の確保のため、法務やコンプライアンスの専門部署を設置し、インハウスローヤー(組織内弁護士)を迎え入れるといったことも考えられますが、全ての会社でそのような対応が可能なわけではありません。そこで、次回は、起業家の皆さんが適法性を確保するために活用できる手段について解説します。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年7月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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外出自粛、休業……緊急時の労務手続き

書いてあること

  • 主な読者:社員を休ませるか否かの基準や手続きを、正しく知りたい経営者
  • 課題:リモートワーク、出社、休業を実施するための手続きが分からない
  • 解決策:基本は命令の根拠を得るために就業規則を変更すること

新型コロナウイルス感染症により、会社は予期せず社員を休業させなければならない経験をしました。今回は突然のことであったため体制が整わないまま対応したかもしれませんが、新型コロナウイルス感染症の第2波も懸念される今、BCPの観点からも今後に向けた準備が必須です。

そこで本稿では、社員にリモートワークを命じる場合などに必要な主な労務手続きをまとめます。

1 リモートワークを命じるための主な労務手続き

1)就業場所の見直し

リモートワークの就業場所は、自宅、カフェ、サテライトオフィスなどさまざまです。感染症対策などとしてのリモートワークの場合、安全衛生などの観点から就業場所を「自宅、その他会社が指定した場所」などに限定する必要があります。

2)労働時間管理の方法の見直し

自社の労働時間管理がリモートワークでも適用できるかを確認します。タイムカードなど、オフィス備え付けの設備がないと労働時間を管理することが難しい場合、次のように労働時間管理の方法を変える必要があります。

  • 社員に始業・終業時刻を、電話、メール、業務日報などで報告させる
  • 社員が使用するノートパソコンの使用時間を記録する
  • ノートパソコンでも打刻可能な勤怠管理システムを導入する

3)通勤手当の見直し

オフィスに出勤しない社員に、定額の通勤手当を支払うことは合理的ではなく、実際にこれを見直す会社が増えています。就業規則や賃金規程の見直しが必要です。「月に所定労働日数の3分の1以下しか出勤予定のない社員には定額の通勤手当は支給せず、社員の請求に基づき実費を支給する」などの規定を置くことになるでしょう。

4)費用負担の見直し

リモートワークで発生する通信費などの費用を、会社と社員どちらが負担するのか決めておく必要があります。業務に要した通信費などは会社の負担とするのが望ましいでしょう。光熱費など、仕事とプライベートの境界線が分かりにくい費用は、社員とトラブルにならないよう、会社と社員どちらが負担するのか、定額で支給するのか明細を提出してもらい会社が認めた費用を支給するのかなど、明確にルールを定めます。

5)就業規則の変更・届け出

上の1)から4)については、就業規則の見直しが必要となる可能性があります。就業規則を変更する場合は、社員の過半数を代表する者の意見書を添えて所轄労働基準監督署に届け出ます。緊急時は就業規則の変更などが即座にできない場合がありますが、少なくとも個別の同意を取るようにしておきましょう。なお、リモートワークの規程例については、次のコンテンツが参考になります。

6)情報通信機器の見直し

労務管理ではありませんが、セキュリティーの観点で重要なので紹介します。

リモートワークに必要な機器は原則として会社が貸与することが望ましいです。台数の関係などで社員が私物のノートパソコンなどを使用する場合、会社指定のセキュリティーソフトをインストールしてもらう、フリーのWi-Fiには接続しないよう指導を徹底するなどの対策を講じます。こうしたルールは、「リモートワーク規程」などにまとめるとよいでしょう。

2 出社させる場合の主な労務手続き

1)労働時間制度の見直し

例えば、緊急事態宣言中などの非常時に社員を出社させる場合、感染リスクを減らすための取り組みが不十分だと、会社が安全配慮義務違反に問われる恐れがあります。

労働時間制度については、社員が混雑する時間帯の通勤を避けられるよう、時差出勤やフレックスタイム制などを導入することを検討します。すでにこれらの制度を導入している場合も、社員に混雑の状況をヒアリングし、必要があれば時差出勤の始業・終業時刻やフレックスタイム制のコアタイム(必ず出社しなければならない時間帯)を変更します。

2)社員へのマスク着用などの徹底周知

オフィス内で感染者が出ると、その社員だけでなく、他の社員や来客などにも感染が広がる恐れがあります。

そのため、業務中はマスク着用や手洗いを徹底するよう、社員に周知する必要があります。なお、就業規則に規定があれば、一定の強制力をもって社員に命じることができます(命令の妥当性はケース・バイ・ケースです)。会社が命じてマスクを着用させる場合、社員が義務を履行できるよう、マスクなどを会社側で用意するのが望ましいでしょう。

3)体調不良の社員への対応

例えば、新型コロナウイルス感染症の場合、症状として発熱やせきを伴うといわれています。業務上の必要性・緊急性があっても、原則としてこうした症状がある社員は出社を認めるべきではなく、他の社員が業務を代行できないか検討するなどの対応を取る必要があります。

4)就業規則の変更・届け出

上の1)から3)については、就業規則の見直しが必要となる可能性があります。就業規則の見直しについては、前述した通りです。緊急時は就業規則の変更などが即座にできない場合がありますが、少なくとも個別の同意を取るようにしておきましょう。

5)オフィス内の“3密”の解消

労務管理ではありませんが、感染防止の観点で重要なので紹介します。

密閉空間(換気の悪い密閉空間である)、密集場所(多くの人が密集している)、密接場面(互いに手を伸ばしたら届く距離での会話や発声が行われる)は、感染リスクを増大させる、いわゆる“3密”といわれています。

オフィスの場合、「30分に1回以上、数分間程度、窓を全開にする」「執務室や会議室の座席を、ソーシャルディスタンス(社会的距離)が取れる間隔に配置する」などの取り組みが必要となります。

3 休業させる場合の主な労務手続き

1)休業手当の支払い

使用者の責に帰すべき事由により休業する場合、会社は休業期間中、社員に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。使用者の責に帰すべき事由には、会社の故意・過失による場合はもちろん、不可抗力を主張し得ない全ての場合が含まれます。

新型コロナウイルス感染症を例にすると、緊急事態宣言が発出されたからといって、直ちに休業手当の支払いが不要と判断されるわけではありません。「社員を(リモートワークで実施できる)他の業務に就かせることができるのに休業させた」場合などは、休業手当の支払いが必要になる可能性があります。

2)雇用調整助成金の申請

「雇用調整助成金」は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた会社が、社員に対して一時的に休業などを行った場合に支給される助成金です。事業を行えない状態で休業手当を支払うのは会社にとって負担ですが、これを利用することでその負担を軽減することができます。

2020年6月12日からは、新型コロナウイルス感染症に伴う特例措置として、支給上限額の引き上げ(1人日額8330円から1万5000円へ)なども行われています。詳細は、都道府県労働局やハローワークに問い合わせるとよいでしょう。

以上(2020年7月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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期待高まる「自転車関連ビジネス」 裾野を広げて顧客獲得

書いてあること

  • 主な読者:宿泊施設・住宅(不動産)・観光・健康関連サービス業界の経営者
  • 課題:人口減や高齢化の加速に備え、集客力の向上および集客方法の転換が求められている
  • 解決策:健康志向や環境問題など、将来的なテーマに合致したアイテムである自転車のユーザーの裾野を広げ、固定客として取り込む

1 自転車関連ビジネス、続々登場

健康志向、環境問題、人口減に伴うコンパクトシティ化、災害時の交通機能の維持、観光立国などなど。

「自転車」は、日本の将来を語る上で欠かせない、こうしたキーワードに合致するアイテムの1つです。国や地方自治体が自転車の活用の推進を図る中、潜在的な成長余地を見込む会社による、自転車ユーザーをターゲットにしたビジネスが続々と登場しています。

その中には、顧客として取り込める自転車ユーザーの裾野を自ら広げる動きもあります。ひとたび自転車ユーザーの取り込みに成功すると、自転車関連の他領域に進出したり、自転車メーカーとコラボレーションができたりと、波及効果や相乗効果が期待できます。

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2 裾野を広げる自転車関連ビジネスの事例

1)自転車ショップ×八百屋×コインランドリー

東京・五反田駅近くの東急池上線のガード下に自転車ショップと八百屋、コインランドリーを併設したショップ「STYLE-B」があります。運営するのは、駐輪場システムなどを手掛ける日本コンピュータ・ダイナミクスです。中核の自転車ショップでは、自転車を含むアウトドア関連のアパレル・雑貨を販売する他、メンテナンス用のピットや、レンタサイクルも展開しています。

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目指しているのは、裾野が広いライトユーザーの取り込みから始まる自転車関連事業の垂直展開です。米国発のおしゃれな自転車ブランド「Pure Cycles」を国内独占販売するなど、商品や店舗の内装はデザイン性にこだわりましたが、ライトユーザーは「自転車ショップだけでは気軽に入りにくい」(店舗開発を行ったマネジャー)という面もあります。

そこで、東京都内で多店舗展開している「旬八青果店」をテナントに呼び込んだり、スウェーデン製の洗濯乾燥機6台を導入して自社運営のコインランドリーを併設したりして、「入りやすさ」と「入りたい」を意識しました。

旬八青果店ではコーヒーも販売しており、来店者は10席ほどの多目的スペースでくつろぐことができます。自転車ショップを、来店頻度の高い八百屋とコインランドリーに挟まれた多目的スペースに面して配置することで、来店者が自転車を目にする機会を増やしました。

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「八百屋に来た母親に自転車ショップであることも認知してもらい、子供を送り迎えするようになったときに、電動アシスト自転車を購入してもらう」「コインランドリーに来た人が、待ち時間に多目的スペースでコーヒーを飲みながら自転車を眺めるうちに、サイクリングに興味を持ち始める」。STYLE-Bでは、このようなシーンを想定しています。

2)サイクリスト向けマンション

「愛する自転車を、屋外の共用駐輪場には置きたくない」。そんなサイクリストの思いを実現した賃貸ワンルームマンション「LUBRICANT ARAKAWA BASE」が、東京・江東区の荒川近くにあります。部屋に自転車を収納できるラックがあり、マンション入り口はカギを取り出さなくても開くシステムを採用。エレベーターは自転車を楽に載せられるように奥行きを広くしています。マンションを開発した長谷工不動産はこうした設備を、自転車雑誌の監修を受けながら整えました。

開発会社の狙いの1つは、新たな入居者募集ルートの開拓です。LUBRICANTの場合、入居者の募集は不動産業者経由ではなく、自転車関連イベントなどの場で独自に行っています。当初は手間が掛かるものの、「認知度の向上とともに入居者の募集コストが低下する」(マンションの企画担当者)ことが期待できます。

また、LUBRICANTで得られる、自転車ユーザーにとって便利な設備に関するノウハウを活用して、通常のマンションで自転車を利用する人たちへの利便性の向上につなげることも想定されています。

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さらに、共用スペースの貸し出しによる収益も大きな狙いの1つです。荒川沿いにサイクリングに訪れる非入居者も含め、共用スペースを「サイクリストが集まる場所」として定着させることで、自転車や関連用品の製造販売業者をはじめとする、自転車関連業者による臨時出店やイベント開催の機会が増えると見込んでいます。

自転車関連業者にとっても、サイクリストを対象としたターゲット・マーケティングをしやすいメリットがあります。自転車用のトレーニング機材の製造会社が、マンションの住民などをモニターとして活用したケースもあるそうです。

こうした狙いを実現させるため、開発会社は最も重要となるマンションの認知度向上に向けて、次のような取り組みを行っています。

  • 月に2~3回程度のペースで、サイクリストを対象にしたトレーニングやスキルアップの講習を開催する
  • 海外で活躍する現役の自転車競技の選手がオフシーズンに入居した際の感想をSNSに投稿してもらう
  • サイクリストとして影響力の強いYouTuberに共用スペースを体験してもらう

なお、マンションの賃料は「サイクリストに向けた設備・サービスなどのこれまでにない付加価値により、周辺相場に縛られない賃料設定をしている」(マンションの企画担当者)とのことですが、30~40代の独身者を中心に20戸程度(全38戸)の入居者があり、セカンドハウスとして週末に利用する人もいるそうです。

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共用スペースには、メンテナンス用のピットやトレーニング施設、洗車用の設備があります。また、交流スペースには自転車雑誌が並び、自転車競技が見られる大型テレビも備えます。この他、提携した近隣の自転車ショップが「サイクルコンシェルジュ」として週に1回マンションを訪問し、自転車のサポートやメンテナンスをするサービスも提供しています。

3)愛車で観光地を回れるサイクリングバスツアー(R)

旅行先でサイクリングを楽しむ「サイクルツーリズム」は、国内外の観光客を誘致し地域の活性化につなげる手法として注目を集めています(後述)。とはいえ、わざわざ遠方の観光地まで自転車をこいで行くほどの愛好家は限られます。

そこで生まれたのが、自転車を積んだバスで観光地まで移動し、好きなスポットだけを自転車で回れる「サイクリングバスツアー(R)(注)」です。

国際興業は、2012年4月から日帰りを中心としたサイクリングバスツアーを催行している草分け的な存在です。ターゲットは、サイクリングの初心者からサイクリングの面白さを感じてきた人までの、ビギナー層が中心です。このため当初は「顧客と自転車の輸送サービス」としてスタートしましたが、今では添乗員が同伴し、現地でサポートライダーが帯同することもあります。同社は、「適切なサイクリングルートの選定や、食事場所・観光場所の紹介が大切。各種のトラブルや、補給食の提供などのさまざまなニーズにも対応するようになった」(ツアーの担当者)といいます。ツアーによっては現地で自転車を借りられるようにアレンジし、手ぶらでの参加も可能としました。きめ細かなサービスにより、「価格面で改善の余地はあるが、一度ツアーに参加していただくと、ヘビーなリピーターになってもらっている」(同)とのことです。

長年の取り組みにより、ツアーの受け入れに関する引き合いも増えているそうです。同社は、「サイクリングイベントの開催者からの問い合わせはしばしばある。サイクリングを活用して観光振興につなげたい地方自治体からの問い合わせも、日を追うごとに増加している。お客様に良質なサービスを提供できるよう、受け入れ先の地方自治体の熱心さなども考慮しながら、タイアップ先を考えている」(同)といいます。

(注)「サイクリングバスツアー」は、国際興業の登録商標です。

4)“輪泊”ホテルも開業 官民一体でサイクルツーリズムの拠点に

東京から電車で1時間程度の距離にある茨城県土浦市。霞ヶ浦と筑波山の結節点として、湖と山を臨む自然豊かなエリアでもあります。その要衝となるJR土浦駅に直結した駅ビル「PLAYatre TSUCHIURA」内に、星野リゾートが手掛ける自転車ユーザー向けのホテル「星野リゾート BEB5土浦」が開業しました。

ホテルのテーマ「ハマる輪泊(りんぱく)」は、自転車に興味のない人もその魅力にはまり、あらゆる自転車ニーズにはまることを意味しています。部屋数は90室で、一部の部屋は自転車を持ち込める他、愛車と一緒にチェックイン・チェックアウトができます。

BEB5土浦が入居するPLAYatreは、霞ヶ浦の外周など全長約180キロメートルのサイクリングロード「つくば霞ヶ浦りんりんロード」の利用者へのワンストップサービスを提供する拠点施設として、2018年3月にオープンしました。館内には自転車で乗り入れることができます。駐輪場や、自転車を持ち込めるサイクルカフェの他、自転車ショップ、レンタサイクル、シャワー室、コインロッカーなどを集約した茨城県の施設「りんりんスクエア土浦」も入居しています。

同県によると、りんりんロードの自転車利用者数は2015年度の約3万9000人から2018年度には約8万1000人に増加しました。2020年度は約10万人を目標に掲げており、BEB5土浦とりんりんスクエアとの融合により、東京方面を中心とした一般観光客などの集客力向上が期待されます。

3 自転車ユーザーの増加に寄与する要因

今後、自転車ユーザーの増加に寄与する要因について、ビジネスフレームワークのPEST分析を使って紹介します。

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特に注目すべき点は、社会的、経済的な流れを受けて、国や地方自治体が自転車の活用を積極的に推進していることです。国や地方自治体による取り組みは今後、自転車ユーザーの裾野の拡大や、自転車関連ビジネスの発展に、さまざまな影響を与えることも想定されます。そこで本章では、国および地方自治体による自転車の活用推進の動きをまとめました。

1)自転車活用推進法の施行

2017年5月に、「自転車の活用による環境への負荷の低減、災害時における交通の機能の維持、国民の健康の増進等を図る」ことを目的とした自転車活用推進法が施行されました。これに基づき政府は同月、国土交通大臣を本部長とする自転車活用推進本部を設置しました。

2018年6月に閣議決定された2020年度までの自転車活用推進計画では、自転車の活用の推進に向け、さまざまな指標を設定しています(図表3)。

同推進本部は2019年11月、サイクルツーリズムの推進を目的に、「第1次ナショナルサイクルルート」として3ルートを指定しました。前述の「つくば霞ヶ浦りんりんロード」もそのうちの1つに含まれています。

また、同推進本部と自転車協会など自転車関連の団体は2019年4月、自転車活用推進官民連携協議会を発足させています。

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2)自転車を活用したまちづくりを推進する全国市区町村長の会

2018年11月に、294の地方自治体が参加して「自転車を活用したまちづくりを推進する全国市区町村長の会」が発足しました。発足1年後の2019年11月時点で参加する地方自治体は358まで増えています。同会について、ウェブサイトでは「我が国の自転車文化の向上、普及促進を図るとともに、各地域が取り組む地方創生推進の一助となること」を目的に掲げています。

4 参考データ

本章では、自転車の普及率や購入されている新車の車種など、自転車ユーザーに関する現在の傾向を示したデータを紹介します。

1)自転車の普及率の推移

自転車の普及率は上昇傾向にあります。

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2)車種別の1店舗当たり平均年間新車販売台数の推移

新車販売台数に占める車種別の構成比を見ると、日常の交通手段に主として使われる一般車が低下傾向にある一方で、一般道路での走行に適したスポーツ車であるクロスバイクや、電動アシスト車の比率が高まっています。

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自転車ユーザーの好みが、従来の「ママチャリ」のようなタイプから、ファッション性や機能性の高いタイプの自転車にシフトしているとみられます。

同じく自転車産業振興協会「自転車国内販売動向調査 年間総括(2018年)」では、一般車で最も多く購入された価格帯(価格帯別販売台数構成比が最も高い価格帯)は、2万3001円~2万7000円です。一方、クロスバイクは5万1円~8万円、電動アシスト車は10万1円~12万円の価格の自転車が最も購入されています。自転車が「単なる交通手段としてのツール」から、「こだわりを持った愛用品」「サイクリングを楽しむための娯楽用品」に変わってきているといえそうです。                              

以上(2020年4月)

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ファクタリングの仕訳はどうすればよい? 知っておきたい会計処理

この記事で紹介するのは、ファクタリングを利用したときの会計処理です。ファクタリングとは、自社の持つ債権を譲渡したり、担保したりすることで資金融通を図ることであり、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた企業が資金繰りを改善するために利用するケースが増えています。
そうなると、会計処理の実務も重要になってきますので、分かりやすく紹介していきます。

なお、ファクタリングのメリット・デメリットや仕組み図、具体的サービスの例などは本サイトの下記記事をご参照ください。

1 ファクタリングの種類

ファクタリングは、大きく分けて保証型と買取型という2種類の方法があります。
保証型とは、自社の保有する債権に保険を掛けておき、当該債権の保証対象先である債務者が倒産するなどして債権が回収できなくなったときに、保証限度額内で債権の支払いを受けるファクタリングです。

買取型とは、自社の保有する債権を第三者に売却(譲渡)することで、手数料を差し引かれた差額を現金化するファクタリングです。さらに、買取型には自社とファクタリング業者の二者間で契約するケースと、債務者を交えた三者間で契約するケースとがあります。保証型は、基本的に損害保険としての性質があるため、損害保険に即した会計処理の流れになります。一方、買取型は、債権がファクタリング業者に会計上移転されたのかどうかを判別して会計処理を行う必要があり、複雑な形になっています。

2 保証型の会計処理

保証型ファクタリングの契約を行い、実際に売掛債権100万円が回収不能になり、保険金を受け取ったケースです。

保証型の会計処理を説明した画像です

保証型の場合、ファクタリング契約を締結した時点では、特に仕訳を切ることはありません。実際に返済が期日までに行われないなどのイベントが生じたとき、これが保証の条件に該当した場合に2.の仕訳を切ることになります。まず1つ目の仕訳で、売掛債権が回収不能(貸し倒れ)となった処理を行います。次に2つ目の仕訳で、ファクタリング契約による保険金を受け取った金額を、雑収入による入金の処理を行います。

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3 買取型の会計処理の判別

 

1)売買取引と金融取引

買取型の会計処理に移る前に、「債権がファクタリング業者に会計上移転されたのかどうか」を判別する基準を見ていきましょう。企業会計基準第10号金融商品に関する会計基準9項には、次のように記載されています。

9.金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転するのは、次の要件がすべて充たされた場合とする。
(1)譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること
(2)譲受人が譲渡された金融資産の契約上の権利を直接又は間接に通常の方法で享受できること
(3)譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと

この3点を満たした場合には、債権の譲渡が認められて売買取引として処理されますが、1点でも満たさなかった場合には、債権の譲渡が認められずに金融取引として処理されることになります。この中で、買取型ファクタリングにおいてしばしば論点になり得るのは、(1)中の「法的に保全」と、(3)中の買戻す権利です

2)契約当事者と「法的に保全」

買取型ファクタリングには、自社とファクタリング業者の二者間で契約するケースと、債務者を交えた三者間で契約するケースがあることを「1 ファクタリングの種類」で記載しました。二者間での契約は、債務者が契約当事者に含まれていないため、債権者が債務者に知られずに契約ができるというメリットがある一方、債務者の合意を得ていないことから債権譲渡が二重に行われるかもしれないといったリスクがあります。

そのリスクを担保するために、売上債権を買取った側がその債権の所有権を主張するための要件を第三者対抗要件といいます。しかし、買取型は第三者対抗要件を具備していません。このため債権譲渡の登記を行っているか否かが、「法的に保全」されているかを判断する基準となります。つまり、二者間契約のときに債権譲渡の登記を行っていないときは、ファクタリング会社の契約上の権利が「法的に保全」されているとはいえず、取引実態は金融取引として処理されます。

3)買戻す権利(買戻し特約、リコースファクタリング)

買取型ファクタリングは通常、買戻し特約(金融機関などが買取った売上債権の決済がされないときは、元の所有者が買戻す特約)を付けずに債権の評価を行って譲渡契約を行うため、利息制限法が適用されずに手数料が30~40%と高額になるケースもあり得ます。ただし、買戻し特約を付けると、債務者が倒産したことなどにより債権が回収できなくなったときに債権者が弁済をしなければならず、これは上記基準の通り債権は移転されないと判断されます。そのため、利息制限法が適用されて手数料が下がり、取引実態は金融取引として処理されます。なお、買戻し特約がないものをノンリコースといい、ノンリコと略されたりします。

4 買取型の会計処理

「3 買取型の会計処理の判別」の記載の通り、買取型の会計処理を行う上で、1.契約形態が二者間か三者間か、2.売買取引と判断されるか金融取引と判断されるか、で4分類に分かれることが分かりました。それではそれぞれの会計処理を見ていきましょう。

1)二者間かつ売買取引

二者間において、買戻し特約がなく、債権譲渡の登記を実行しているケースです。売掛債権100万円について、手数料5%で実行したケースを見てみましょう。

買取型の会計処理(二者間かつ売買取引)を説明した画像です

2)三者間かつ売買取引

続いて、1)のケースを三者間にしたケースを見てみましょう。なお、三者間の契約であるため、債権譲渡の登記を実行していなくても、債務者への対抗要件は具備しています。

買取型の会計処理(三者間かつ売買取引の会計処理)を説明した画像です

1)のケースに比べ、3.と4.がなくなっただけの形となっています。これは債務者から直接ファクタリング会社に振り込まれているため、自社の会計上では何も起きない結果です。買戻し特約がないため、仮に債務者が弁済できなくても、自社に請求されることはありません。

3)二者間かつ金融取引

続いては二者間において、買戻し特約がある、または債権譲渡の登記を実行していないケースです。売掛債権100万円について、手数料5%で実行したケースを見てみましょう。

買取型の会計処理(二者間かつ金融取引)を説明した画像です

売買取引に比べ、契約締結時では特に仕訳がなく、入金時には短期借入金として処理がされています。

4)三者間かつ金融取引

最後に三者間において、買戻し特約があるケースです。

買取型の会計処理(三者間かつ金融取引)を説明した画像です

3.債務者からファクタリング会社への入金が実行され、実務上その報告をもって売掛金と短期貸付金を相殺します。このように、ファクタリングの会計処理は、保証型と買取型の5パターンで整理されます。

以上

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プラモデル・フィギュア業界の動向

書いてあること

  • 主な読者:プラモデル、フィギュア業界の動向を知りたい経営者
  • 課題:業界の具体的な構造、分類、参入する主なプレイヤーなどが分からない
  • 解決策:業界を俯瞰し、主要企業の具体的な動き、取り組みを知ることが大切

1 プラモデル・フィギュアの概要

1)プラモデル・フィギュアとは

プラモデルは、主な部品がプラスチックで成形された模型の一種です。材料・成型方法の自由度が高いことからさまざまなものを表現しやすく、多種多様なのが特徴です。流通は一般的に、紙箱に詰められた形態で行われます。

フィギュアは、プラスチック・樹脂・金属などを材料に成形されたものです。メーカー側で組み立て・彩色するなどして、購入した消費者が手を加えることなく、飾ったり遊んだりできるようにしています。

流通は一般的に、内容物が見える透明シート製の窓を紙箱や、プラスチック容器に密封した「ブリスターパック」を使った形態で行われます。なお、安価なフィギュアの中には、パッケージに表示された封入リストのいずれか1品を、プラモデル同様に紙箱に詰めて見えないようにして販売するものもあります。

2)プラモデル・フィギュアの分類:モチーフ別

1.スケールモデル

実在もしくは実際に計画されたもの(航空機・車両・艦船・建物など)を縮小サイズで再現したプラモデル・フィギュアです。

2.架空モデル(注)

アニメ・ゲーム・特撮などに登場する、架空のもの(人物・ロボット・航空機・車両・艦船・建物など)をモデルとするプラモデル・フィギュアです。

(注)本稿における便宜上の名称です。キャラクターモデルなどと呼称される場合があります。

3)プラモデル・フィギュアの分類:製造方法・規模別

1.インジェクションキット

鋼鉄製の金型を使った射出成形により製造されるタイプのプラモデルです。量販店や玩具店など販路が広いもの、玩具菓子、ゲームセンターの景品(プライズ)など、比較的安価なフィギュアの部品も同じように作られています。

金型や射出成形機への初期投資が高額になりがちな一方で、金型の耐久性が高く、製造工程の自動化がしやすいため、大量生産によるスケールメリットが得られるという特徴があります。

2.ガレージキット

製造規模が小さなプラモデルの総称です。シリコンゴムで原型を型取りし、溶かした材料(樹脂)を型に流し込むことで部品を製造する「レジンキャストキット」や、樹脂の代わりに融点が低い金属を材料とする「メタルキャストキット」など、少量生産に適した製造方法が採用されています。また、製造数量が少ないフィギュアの部品も同じように作られています。

ガレージキットは、大型の機械や金型などが不要で初期投資が安価な一方で、生産性や型の耐久性が低く生産コストが高くなりがちなため、高価でも買い手が付く希少性の高いものを作るのに適しています。初期投資が低いことに加え、大手メーカーが手掛けないニッチな分野を狙うことで市場開拓ができるため、新興プラモデル・フィギュアメーカーの多くはガレージキットの生産・販売を通じて市場に参入しています。

2 分類別に見たメーカーの特徴

1)総合玩具メーカー

プラモデルやフィギュアだけでなく、さまざまな玩具の生産から流通までを自社グループで手掛けています。幼児向け玩具など多品種展開を狙ってアニメや特撮番組などの版権を取得していることが多いため、プラモデル・フィギュアは架空モデルが主となっています。

資金・生産力・販売力といった経営資源が豊富なため、アニメや特撮番組などの企画段階から「製作委員」などとして参加し、迅速な版権取得や商品化を可能としています。総合玩具メーカーには、バンダイナムコホールディングスやタカラトミーなどがあります。

2)模型メーカー

プラモデル・フィギュアの専業メーカーで、もともと木製模型の製造業として創業している企業が多く見られます。専業メーカーとして一定の販路を確保していることからインジェクションモデルが主となっています。社内に蓄積されているノウハウ・資料などの面でスケールモデルを主に生産していますが、ハセガワやファインモールドのようにスケールモデルのノウハウを活かしたリアル性の高い架空モデルの生産を手掛けるケースもあります。模型メーカーには、タミヤ、ハセガワ、青島文化教材社などがあります。

3)模型店発祥のメーカー

模型店が、常連のプラモデル制作者(モデラー)が持ち込んだ原型や顧客の要望を基にガレージキットやフィギュアなどを製品化して市場に参入し、その後生産委託先を確保するなどして規模を拡大しているケースです。架空モデルに強みを持っていますが、ピットロードやボークス子会社の造形村のように、スケールモデルを手掛けているケースも見られます。模型店発祥のメーカーには、ウェーブ、海洋堂などがあります。

4)その他の企業

その他、フィギュアの企画・生産・販売を目的に設立された企業(アルター、マックスファクトリーなど)や、イベント企画など異業種の企業が参入した企業(グッドスマイルカンパニーなど)もあります。

また、出版社や編集プロダクションの中には、KADOKAWAのように自社が版権を所有する作品のプラモデル・フィギュアの企画・開発を手掛けるケースも見られます。

3 製造・販売などに関する主な差異化策

1)製品の鍵を握る質の高い「原型」

高価格帯を中心に、フィギュアの一大購買要因となっているのが、フィギュアの原型となる模型を作成する「原型師」です。原型師は、フィギュアメーカーに所属しているケースと、フリーの原型師がメーカーと原型製作契約を締結しているケースがあります。大手フィギュアメーカー、特にガレージキットの生産・販売を発祥とする企業は、有力な原型師を擁しているのが一般的です。

一方、3DCAD(3次元コンピューター製図)の高度化に伴って、従来は人の手で実際に造形する必要があった高度な原型製作がコンピューター上でできる「3Dモデリング」も一般的になっています。3Dモデリングの場合、「原型をゼロから製作する必要がない」「修正が速やかにできる」「ソフトウエアの機能によって原型を生産用のパーツ図面に分解するのが容易」といった、原型の設計スピードが速いという特徴があります。

2)交流空間

フィギュアのリピーター獲得に当たっては、消費者のロイヤルティーを高めることが重要です。プラモデル・フィギュアメーカーにおいては、その一環として、メーカーと消費者の交流空間の整備を進めています。

交流空間としては、従来からメーカー直営の模型店がありましたが、近年ではさまざまな形態の空間が登場しています。例えば、ボークスでは、京都府京都市の旧霞中庵竹内栖鳳記念館を改装した「天使の里・霞中庵」を運営しています。同施設では、同社製フィギュアの工房、ショップ、喫茶室、撮影スポットなどを設ける他、特定フィギュアの所有者のみ来館可能(予約制)にすることで、顧客満足度を高めるようにしています。

3)海外展開

1.生産拠点

プラモデルメーカーの生産拠点の多くが国内、特に大手メーカーの本社や工場が集中している静岡県に所在します。これは、主なマーケットが国内であることに加え、射出成型機など自動化が進んでおり人件費の割合が低い、下請企業のネットワークが構築されていることなどが背景にあります。ただし、総合玩具メーカーや一部の模型メーカー(タミヤなど)では、海外でも生産しているケースが見られます。

一方、フィギュアメーカーの多くは、人件費が安いアジア地域の国々に所在する自社工場や委託先工場で生産しています。これは、フィギュアの生産に当たっては組み立てや彩色など人手が必要で自動化が難しい工程が多く、生産コストに占める人件費の割合が高いためです。品質を維持するため、海外で生産を手掛ける各社においては、日本から技術者を派遣したり、定期的に生産現場のチェックを行ったりしています。

2.販売網

総合玩具メーカーは、自社で販売網を構築しています。これは、次に挙げるような背景があるためです。

  • キャラクターを前面に打ち出した玩具ビジネスを手掛けるに当たって、自社グループでキャラクターブランドのマネジメントを直接行う拠点を設ける必要がある
  • 海外の大手玩具メーカーを買収して販売網を自社グループに取り込んでいる

一方、模型メーカーやフィギュアメーカーの多くは、米国などの有力市場を除けば、各国の有力な模型流通業者や日本のアニメ・ゲームの取り扱いに強みを持つ専門店に販売代理店となってもらい、流通を肩代わりしてもらっています。これは、総合玩具メーカーほど流通網を構築する経営資源がないことや、自社で拠点を設けるほどの流通量が見込めないことが背景にあります。例えば、タミヤは、米国やドイツに営業・代理店支援を行う拠点を設ける一方で、流通については各国の代理店や合弁会社を通じて行っています。また、ボークスは米国の販売拠点としてショールームを設けています。

日本のプラモデル・フィギュアを巡っては、少子高齢化などによって国内市場の縮小が懸念されている一方で、クールジャパンを象徴するものとして海外で高く評価されています。この点を踏まえると、成長著しいアジアなど海外市場の開拓は急務といえます。プラモデル・フィギュアメーカー各社では、英語など外国語のウェブサイトを設けて海外の消費者やバイヤーにアピールするなどして、海外市場開拓に注力しています。

4 市場規模

プラスチックモデルキットの出荷金額および産出事業所数の推移は次の通りです。

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2017年のプラスチックモデルの製造品出荷額は204億7400万円で、2016年と比べて7.8%増加しています。産出事業所数もわずかであるものの増加傾向が見られます。

以上(2020年7月)

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ESCO事業の概要

書いてあること

  • 主な読者:ESCO(Energy Service Company)事業者の活用を検討している経営者
  • 課題:ESCO事業者とどのように契約してよいか分からない
  • 解決策:2種類の契約形態を理解するとともに、政府の主な補助制度の内容を押さえる

1 ESCO事業とは

ESCO(Energy Service Company)事業は、工場やビルの省エネルギー診断、改修計画の立案、設計・施工管理といった直接工事に関わるサービスとともに、資金調達、改修後の運転管理、会計分析を含む包括的なサービスを提供することによって、実現した省エネルギー効果の一部を報酬として受け取るサービス事業です。

ESCO・エネルギーマネジメント推進協議会によると、ESCO事業者は、次のようなサービスを組み合わせて提供しています。

  • 省エネルギー診断に基づく省エネルギー提案
  • 提案実現のための省エネルギー設計および施工
  • 省エネルギー導入設備の保守・運転管理
  • エネルギー供給に関するサービス
  • 事業資金のアレンジ
  • 省エネルギー効果の保証
  • 省エネルギー効果の計測と検証
  • 計測と検証に基づく改善提案

ESCO事業では、全ての費用(建設費、金利、ESCO事業者の経費)を省エネルギー改修によって実現する光熱水費の削減分などで賄うことを基本としています。契約期間終了後の光熱水費の削減分は全て顧客の利益になります。

2 ESCO事業の契約形態

ESCO事業の最大の特徴は「省エネルギー効果の保証(パフォーマンス契約)」です。ESCO事業者は、パフォーマンス契約を締結することで保証リスクを負うことになるため、保証リスクを軽減するべく、顧客に最適な技術提案をすることになります。顧客は、パフォーマンス契約の締結によって、省エネルギー効果の達成が確実になります。

ESCO事業者と顧客が締結するパフォーマンス契約には、次の2つの形態があります。

1.ギャランティード・セイビングス契約

  • 顧客が事業資金を調達し、省エネルギー設備は顧客の自己資産となる。
  • 初年度に省エネルギー改修工事に掛かる費用の支払いが発生するため、顧客の初期投資負担が相対的に大きくなる。

2.シェアード・セイビングス契約

  • ESCO事業者が事業資金を調達し、省エネルギー設備はESCO事業者の資産となる。
  • 顧客は省エネルギー設備のオフバランス化(資産の外部化)が図れる。
  • 省エネルギー改修工事に掛かる費用はサービス料(償却費込み)として支払うため、顧客は初期投資を必要とせず、費用負担の平準化が図れる。

ESCO・エネルギーマネジメント推進協議会ウェブサイト公表資料によると、パフォーマンス契約の2つの形態の比較イメージは次の通りです。

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3 国内のエネルギー供給の状況

2018年7月に閣議決定された第5次エネルギー基本計画では、2030年に実現を目指すエネルギーミックス水準として、電源構成比率を、再生可能エネルギー22~24%、原子力発電20~22%、化石燃料56%とすることが掲げられています。また、省エネルギー化によって、実質エネルギー効率35%減の改善を目指すとしています。

足元では、東日本大震災を背景に一部を除く原子力発電所は稼働を停止しており、国内の電力はおおよそ8割を火力発電で賄っている状況です。火力発電の燃料(石油、石炭、天然ガス)は、そのほとんどを輸入に依存しています。原子力発電所については、再稼働の是非が議論されており、安全で安定的なエネルギー供給体制の確保については不透明な状況が続いています。

一方、2016年4月から、参入が規制されてきた低圧部門(家庭や商店など)の電力小売り自由化が始まり、2020年4月には、電力会社が独占してきた発送電の分離が義務付けられました。こうした状況は、省エネルギーを売りにするESCO事業の追い風になるものと考えられます。

4 ESCO事業に関する主な補助制度

ESCO事業に関する主な補助制度として次の2つが挙げられます。それぞれ公募期間や予算額があるため留意が必要です。

1)エコリース促進事業補助金(環境省補助事業)

エコリース促進事業は、一定の基準を満たす再生可能エネルギー設備や産業用機械、業務用設備等の幅広い分野の低炭素機器をリースで導入した際に、リース料総額の1~5%を補助する制度です。また、東北三県(岩手県、宮城県、福島県)における補助率は10%となっています。

補助金申請は環境省から指定を受けた指定リース事業者が行います。補助金は指定リース事業者に交付されますが、リース契約時に補助金全額をリース料低減のために充当するという内容の特約などを交わすことが条件となります。対象リース先は、家庭(個人)、個人事業主、中小企業(資本金3億円以下の企業)であることが要件です。

2)エネルギー使用合理化等事業者支援補助金(経済産業省補助事業)

エネルギー使用合理化等事業者支援事業は、既設の工場・事業場などにおける先端的な省エネルギー設備の導入について、「技術の先端性」「省エネルギー効果」「費用対効果」を踏まえて、政策的意義が高いと認められ、交付規程および公募要領の要件を満たす事業に対して補助対象経費の3分の1以内(エネルギーマネジメント事業者を活用する場合は補助対象経費の2分の1以内)を補助する制度です(中小企業者等の場合)。

以上(2020年7月)

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結婚の形が多様化する時代の結婚式場業の動向

書いてあること

  • 主な読者:結婚式場業
  • 課題:足元では新型コロナウイルス感染症のまん延に加え、長期的に婚姻件数が減少しており、厳しい経営環境に置かれている
  • 解決策:オーダーメード型の結婚式の提案、ナシ婚に対応した写真撮影のみのプランの提供などにより、ナシ婚やおもてなし婚といった多様なニーズを取り込んでいく

1 結婚の多様化が結婚式場業に与える影響

現在、結婚の形は多様化しています。生涯未婚の人、パートナーがいても入籍しない人、婚姻届の提出はするものの結婚式を挙げない(ナシ婚)人などが増えています。また、初婚年齢が上昇し、再婚割合が増えていることも、近年の特徴といえます。

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婚姻件数が減少していたり、ナシ婚の人が増えていたりすることなどから、ホテル、寺社・教会、結婚式専門の施設(一般の結婚式場、欧米風のゲストハウスなどを含む。以下「結婚式場」)など多数の事業者が存在する結婚式場業は、利用者獲得をめぐる競争が激しくなっています。

また、2020年は新型コロナウイルス感染症のまん延から、挙式のキャンセルも増えています。東海地方を中心に結婚式場や貸衣装店を運営するラビアンローゼは2020年4月に民事再生手続の開始を申し立てました。利用者獲得をめぐる競争が激化する中で、新型コロナウイルス感染症のまん延によって、苦しい経営状況に置かれる結婚式場業は少なくないと考えられます。

2 結婚式場業に関連するデータ

1)結婚式場業の事業所数と従業者数の推移

結婚式場業の事業所数と従業者数の推移は次の通りです。

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2016年の事業所数の合計は1435事業所、従業者数は5万4人、1事業所当たりの従業者数は35人となっています。

2)1事業所当たりの年間売上高など

1事業所当たりの年間売上高などは次の通りです。

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売上高・取扱件数・従業者数合計などについては年によって増減があるものの、1件当たりの売上高は増加傾向にあります。

3 結婚式のニーズに関するデータ

1)結婚式の費用総額などの推移

結婚式の費用総額などの推移は次の通りです。

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費用総額は年によって増減があるものの、近年の招待客数は減少傾向、結婚式の招待客1人当たり費用は増加傾向にあります。これは晩婚化の影響で、金銭的に余裕があり、結婚式への列席経験が豊富な利用者(新郎・新婦)が増えているためとみられます。このような利用者は「画一化されたプランではなく、自分たちらしい結婚式を挙げたい」「親しい人たちに日ごろの感謝を伝えたい、おもてなしをしたい」といったこだわりがあるとされています。こうしたこだわりの結婚式はおもてなし婚などと呼ばれ、招待客1人当たり費用の増加などに影響していると考えられます。

2)披露宴・披露パーティー会場の利用動向の推移

披露宴・披露パーティー会場の利用動向の推移は次の通りです。

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結婚式場は装置産業といわれ、恵まれた立地、最新の設備、文化的な魅力などを兼ね備えた施設(ハード)を有する業者が有利です。この基本はいつの時代も変わりませんが、特に景気が好調だった時代は「派手婚」と呼ばれる豪華な結婚式が話題を集め、大規模な宴会場などを備えた一般の結婚式場、ホテルなどのニーズが高まりました。

一方、いわゆるバブル経済が崩壊した1990年代ごろから、「アットホームなオンリーワンの結婚式を挙げたい」という人が増え、ゲストハウスなども結婚式会場として選ばれるようになり、現在では一般の結婚式場、ホテル、ゲストハウスが結婚式会場の代表格です。

現在、結婚式場のスタイルが多様化する一方、結婚式場全体の市場は縮小しています。大手の結婚式場では、減少する利用者を全方位的に獲得するため、自らゲストハウスなどを新設したり、買収によって多様な施設を確保したりするなど、ハードの拡充を図っています。

しかし、最近ではハードを整備するだけでは個別化・多様化するニーズに応えることは難しく、プランニングなどソフト面での充実や、ナシ婚といった結婚式を挙げない人のニーズを喚起するような取り組みが求められています。

以降では、ハードの整備に頼ることなく、個別化・多様化するニーズへの対応や、ニーズ喚起といった課題に取り組む企業事例について紹介します。

4 個別化・多様化するニーズに対応する取り組み

1)オーダーメード型の結婚式の提案

個別化・多様化するニーズに対応する方法の1つとして、オーダーメードの結婚式の提案などがあります。従来は結婚式を挙げることが決まると、結婚式場を選び、結婚式場専属のウエディングプランナーと相談して、結婚式のプランを決定するのが一般的でした。

しかし、こうした方法では、衣装や演出の方法が限られ、画一的な結婚式となりがちです。そのため、結婚式に対してこだわりを持つ人を中心に、フリーのウエディングプランナーを雇って、会場や衣装などを個別に契約するオリジナルの結婚式を挙げる動きが少しずつ広がっています。

こうした動きに対応して、結婚式場においても、オーダーメード型の結婚式の提案に力を入れている企業があります。テイクアンドギヴ・ニーズでは、会場選びの段階から全てオーダーメードで企画する「オートクチュールデザイン」というプランを用意しています。このプランでは、ウエディングプランナーを中心に、プロのメーキャップアーティストなど、さまざまな分野の専門家がチームとなって、利用者のニーズを実現していきます。

また、このように完全なオーダーメード型でなくても、ウエディングプランナーが利用者のニーズを細かく聞き取りながら、希望の結婚式を実現する動きは活発になっています。

2)シニアを対象とした結婚式の提案

現在、晩婚化が進んでいるだけでなく、婚姻件数に占める再婚の割合も増加しており、シニア世代の結婚も増えています。従来は、年齢を気にして、結婚式を挙げることをためらっていたシニアが多かったものの、最近では「節目をきちんとお祝いしたい」というニーズも出てきています。しかし、シニアが求めるプランは少ないのが現状です。

全国で多数の結婚式場業を運営するレックでは、「小さな結婚式」のブランド名で、「大人の挙式プラン」といった少人数向けの結婚式プランを提供しています。晩婚や再婚であるため、若い人ほど華美な結婚式を挙げるのは気が引ける、年齢相応の衣装にしたいといったニーズに応えています。

3)ナシ婚に対応したプランの提案

老舗結婚式場の目黒雅叙園では、結婚式を挙げずに記念写真のみを撮影する「フォトウエディング」を提供しています。目黒雅叙園のウェブサイトによると、料金はドレスなどの衣装のレンタルや着付け・ヘアメーク、撮影などの料金を含めて平日限定で8万8000円(1カットのみ・税別)からとなっています。

また、キリフダが提供する「プライダル」も目黒雅叙園と同様の取り組みといえます。「プライダル」では老舗の結婚式場やホテルなどで写真撮影と身内だけの食事会をセットにしたサービスを提供しており、提携先の会場には八芳園や、ザ・プリンスパークタワー東京などが登録しています。

こうしたプランの提供は、従来型の結婚式を挙げる必要は無いと考える人や、再婚であるなどの理由から結婚式を挙げることをためらっていた層のニーズを獲得しています。

以上(2020年7月)

pj50153
画像:pexels

発酵食品に関する基礎的な情報

書いてあること

  • 主な読者:発酵食品に関する情報収集をしたい経営者
  • 課題:どのような団体に情報収集、取材などをして良いのか分からない
  • 解決策:発酵食品は業界団体、大学等で研究している機関がある

1 発酵食品とは

1)「発酵」とは

発酵は、微生物(カビ、菌、細菌など)の作用により有機物(米、牛乳、野菜など)が分解され、新しい物質(酒、ヨーグルトなど)が生成される作用のうち、栄養が体内に吸収されやすくなるなど、人体に良い影響を与えるものをいいます。同様の作用として腐敗も挙げられますが、こちらは食中毒など、人体に悪影響を与えるものをいいます。

近年では、食品製造に限らず、医薬品や化学物質(燃料など)の生成などの工業分野でも用いられるようになっています。

2)発酵食品とは

発酵食品は、発酵によって原材料を変化させた食品のことをいいます。例えば、「米、水+コウジカビ=日本酒」「牛乳+乳酸菌=ヨーグルト、チーズ」などが挙げられます。

食品を発酵させることで、「長期間の保存が可能になる」「風味が増す」といった効果があります。これは、発酵によって、「有機物が変質し、腐りにくくなる」「アミノ酸など風味に影響する物質が生成される」などの作用が生じるためです。

なお、発酵食品の製造と食品の腐敗は紙一重であることが珍しくありません。例えば、日本酒の「火落ち」は、乳酸菌の一種である「火落ち菌」が繁殖して醸造中の酒を白濁させて風味を悪くするという、一種の「腐る(腐造)」現象です。また、一部の発酵食品にみられる独特の香りや風味が人によっては「腐っている」と感じさせるものであることも、発酵食品の製造と食品の腐敗が紙一重である象徴といえるでしょう。

3)主な発酵食品

発酵食品は、数千年前から製造されてきたほど歴史が古く、また微生物はさまざまな環境で生息していることもあり、米国アラスカ州のような厳寒の地から、東南アジア諸国のような熱帯の地に至る世界中でみられます。

主な発酵食品としては、次のようなものが挙げられます。

  • 酒類:日本酒、焼酎、ビール、ワインなど
  • 乳製品:ヨーグルト、チーズなど
  • 水産加工品:くさや、なれずし、かつお節など
  • 肉類加工品:ドライソーセージ(サラミなど)、火腿(かたい・中国のハムの一種)など
  • 調味料:味噌、しょうゆ、酢、みりん、塩麹など
  • その他:パン、一部の漬物(キムチ、らっきょう漬けなど)、納豆など

このように、発酵食品は多様であり、原材料も、「穀類(米、麦など)」「イモ(サツマイモなど)」「肉類(豚肉など)」「乳類(牛乳など)」「その他有機物」などさまざまです。また、発酵食品は、地域土着の微生物を使うことで差異化が図りやすいため、地元の特産品として売り出しやすい特徴を持っています。

以降では、発酵食品の関連団体や研究機関、参考文献について紹介していきます。

2 発酵食品に関連する機関

1)関連団体について

発酵食品の関連団体としては、「発酵食品の製造業者の団体」「業界の一部が発酵食品に関わっている団体」「発酵に関連する分野が含まれる学会」などがあります。ここでは、「関連学会・機関」「業界団体」に分けて紹介します。

2)関連学会・機関

関連学会・機関は次の通りです。

1.日本醸造学会(東京都北区)

https://www.jozo.or.jp/gakkai/

醸造に関する学会です。醸造に関するセミナーやウェブ講習をはじめ、毎月発行している学会誌などを通じて、醸造に関する研究成果を公表しています。

2.日本生物工学会(大阪府吹田市)

https://www.sbj.or.jp/

生物工学に関する研究の発表や支援などを行っている学会です。もともと醸造関係の学会として発足した経緯があるため、学会誌などを通じて、発酵食品に関する発表を行っています。

3.日本農芸化学会(東京都文京区)

https://www.jsbba.or.jp/

化学的な観点から生命現象や食品などについて考える「農芸化学」に関する学会です。ウェブサイト上の「年次大会講演発表データベース」では、キーワードや発表者名などで発表内容、発表者名や所属団体などを検索できます。また、農芸化学関連の研究室などもウェブサイトで検索できます。

4.日本食生活学会(東京都文京区)

https://www.jisdh.jp/

食生活に関する学会です。研究大会・集会や学会誌の発行を通じて、研究成果の発表を行っています。

5.日本家政学会(東京都文京区)

http://www.jshe.jp/

家事や育児など、家政学に関する学会で、発酵食品に関する発表もされています。

6.日本発酵文化協会(東京都目黒区)

http://hakkou.or.jp/

発酵食品の開発や普及を支援する団体です。同協会が開催する発酵教室では、さまざまな発酵食品の基本的な製造方法を学ぶことができます。

3)発酵食品に関連する業界団体

1.全国発酵乳乳酸菌飲料協会(東京都新宿区)

https://www.nyusankin.or.jp/

発酵乳・乳酸菌飲料の製造・販売に関する業界団体です。乳酸菌の働きや、食生活と健康に関する情報を発信しています。

2.日本乳業協会(東京都千代田区)

https://www.nyukyou.jp/

乳業の業界団体です。乳製品に関する情報発信などを行っています。

3.日本酒造組合中央会(東京都港区)

https://www.japansake.or.jp/

日本酒・焼酎の全国団体です。酒税の保全および酒類業の取り引きの安定を目的としており、酒類業界の振興や消費者向けの情報提供などを行っています。

4.全国醤油工業協同組合連合会(東京都中央区)

https://www.soysauce.or.jp/(注)

醤油業界の全国団体です。同じく業界団体である日本醤油協会などと共同で運営する「しょうゆ情報センター」のウェブサイトなどを通じ、業界内部や消費者に向けた情報発信などを行っています。

(注)URLは「しょうゆ情報センター」のものです。

5.全日本漬物協同組合連合会(東京都江東区)

https://www.tsukemono-japan.org/

漬物業界の全国団体です。漬物に関する情報発信を行っている他、各地の漬物協同組合の上位団体として、各種委員会の取りまとめや、製造従事者の技能レベルを認定する「漬物製造管理士制度」を運営しています。

6.全国味噌工業協同組合連合会(東京都中央区)

http://zenmi.jp/

味噌業界の全国団体です。味噌に関する情報発信を行っている他、原材料を安値で安定して確保できるシステムづくりを進めています。

7.チーズフェスタ

https://www.cheesefesta.com/

チーズ普及協議会と日本輸入チーズ普及協会が共同開催している、チーズに関する総合イベントです。同フェスタでは、チーズを使った料理のグランプリ「チー1」を開催しており、上位作品についてはレシピを公開しています。

4)大学

一般的に、発酵食品に関する研究を行っている大学の学部・専攻としては、農学部、工学部、理学部などに設けられた「応用生命学」「醸造学」「食品科学」「農芸化学」などが挙げられます。ただし、専攻名などに「醸造」「発酵」と付いていても、発酵食品の研究を行っていないケースは少なくありません。これは、微生物の研究が進んだ結果、発酵を食品以外の分野(医薬品製造、燃料生成など)に活用する研究にシフトし、以前は手掛けていた発酵食品の研究を行わなくなったためです。

発酵食品に関する研究を行っている主な大学は次の通りです。多くの大学では産学連携の窓口を設けています。共同研究や受託研究の依頼をする際は、まずこうした窓口に協力を打診して、自社が求めている分野の適切な研究者を紹介してもらうようにしましょう。

1.秋田県立大学 生物資源科学部応用生物科学科食品醸造グループ

http://www.akita-pu.ac.jp/bioresource/DBT/

秋田県産の豊富な農畜水産物を活用した発酵食品の研究・開発を行っています。

2.石川県立大学 生物資源環境学部食品科学科

https://www.ishikawa-pu.ac.jp/undergraduate/food_science/

分子レベルから、製造・加工・流通の技術や方法、栄養や衛生の問題など、食品に関する幅広い研究を行っています。

3.大阪大学 大学院工学研究科生物工学専攻

https://www-bio.eng.osaka-u.ac.jp/

戦前から醸造学の研究を行っており、今日では国内におけるバイオテクノロジー研究のトップランナーです。

4.鹿児島大学 農学部 焼酎・発酵学教育研究センター

http://shochu.agri.kagoshima-u.ac.jp/honkaku/

地場産業である焼酎などの発酵食品の製造や、微生物そのものに関する研究を行っています。

5.岐阜大学 応用生物科学部応用生命科学課程食品生命科学コース

http://www.abios.jpgu-u.ac.jp/lifescience/

素材から流通に至る食品に関する広範な研究を行っています。

6.京都大学大学院 農学研究科産業微生物学講座

http://www.sangyo.kais.kyoto-u.ac.jp/

微生物の有する潜在能力を活用したモノづくりに関する研究を行っています。

7.東京農業大学 応用生物科学部醸造科学科、大学院 農学研究科醸造学専攻

http://www.nodai.ac.jp/academics/app/fer/ (応用生物科学部醸造科学科)
http://www.nodai.ac.jp/nodaigs/major/agri/fermentation/ (農学研究科醸造学専攻)

醸造を専門とする学科・専攻で、多くの酒造関係者を輩出してきた名門です。

8.広島大学 工学部第三類生物工学プログラム発酵工学課程

https://home.hiroshima-u.ac.jp/hakko/

酒類総合研究所に隣接している地の利を活かし、酒造などさまざまな分野の発酵に強みを持っています。

9.別府大学 食物栄養科学部発酵食品学科

https://www.beppu-u.ac.jp/course/nutrition/ferment/

地場産業である酒類(日本酒、焼酎など)や調味料(味噌、醤油など)のメーカーとのつながりに強みを持っています。

10.三重大学 生物資源学部、大学院生物資源学研究科

http://www.bio.mie-u.ac.jp/

生物資源の持続的生産を目指した開発や利用に関する研究を行っています。

11.名城大学 農学部応用生物化学科応用微生物学研究室

http://www-agr.meijo-u.ac.jp/labs/nn008/

発酵や醸造、微生物の活用に関する研究を企業と連携しながら行っています。

12.山梨大学 ワイン科学研究センター

http://www.wine.yamanashi.ac.jp/

地場産業であるワインの醸造や、醸造・発酵に役立つ微生物の研究を行っています。

13.酪農学園大学 農食環境学群食と健康学類

https://www.rakuno.ac.jp/department/agriculture/food.html

地場産業である酪農に関連した発酵食品の研究・開発などを行っています。

5)研究機関

発酵食品に関する研究は、大学の他、国や地方自治体などが運営する技術支援機関でも行われています。こうした機関では、自ら研究を行う他、共同研究・受託研究の形で企業などに対する技術支援や、検査・試験機器の貸し出しや検査・試験の代行などをしています。

発酵食品に関する研究を行っている主な研究機関は次の通りです。

1.農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構) 食品研究部門(茨城県つくば市)

http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/nfri/

食に関わる科学と技術に関するさまざまな研究を企業などと行っている機関です。同研究所では微生物の高度利用やパン酵母遺伝子などの研究成果をデータベースなどの形で公表しています。

2.酒類総合研究所(広島県東広島市)

https://www.nrib.go.jp/

酒に関する各種研究・調査や分析・鑑定などを行っている機関です。研究成果についてはデータベースなどの形で公表しています。

3.食品産業センター(東京都港区)

https://www.shokusan.or.jp/

食品産業に関する各種調査、研究・開発の支援などを行っている機関です。食品加工に関するガイドラインや、特産食品に関する情報提供、食品製造の衛生管理に関する研修会などを手掛けています。

4.日本醸造協会(東京都北区)

https://www.jozo.or.jp/

日本酒・醤油・味噌など醸造に関する調査・研究を行っている機関です。酵母など醸造に使用する資材の供与、分析・検査の代行、技術者・技能者の育成、技術指導などの形で醸造業者を支援しています。

以上(2020年7月)

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資材購買コストを削減するための処方箋

書いてあること

  • 主な読者:購買担当者、購買担当者を任命する経営者
  • 課題:資材に関する専門的な知識がより一層必要になっている
  • 解決策:「適切な品質」「適切な価格」「適切な納期」「適切な数量」「適切な購入先」の5つを知ることが重要である

1 企業活動における購買の役割

企業活動における「購買」とは、事業に必要な資材・製品・設備を外部から調達することを指します。資材・製品・設備などの他に、外部のサービスを利用することも購買に含まれます。企業規模によって異なるものの、企業には購買担当者が存在し、営業担当者や製造担当者からの要望により、必要な資材を調達しています。

近年では、企業の社会的責任として環境問題への対応が求められる中で、大手企業が中心となって「グリーン調達」が一般的になっていますが、その中心となっているのは購買担当者です。 

また、経営環境の変化は激しさを増しており、これまでと同じ資材購買のやり方では、成果を上げることが難しくなっています。資材購買コスト削減の基本は、それまでと同品質の資材を低コストで調達することですが、これを実現するためには資材に関する専門的な知識や、豊富な調達先を持つ購買担当者の存在が重要になります。

本稿では、資材購買コストの削減に注目し、これを実現するためのポイントを簡単にまとめていきます。

2 資材購買計画の立案とコスト削減策の検討

資材購買コストの削減を図るためには、「適切な品質」「適切な価格」「適切な納期」「適切な数量」「適切な購入先」の5つを知ることが重要です。そのためには、資材購買計画を立案し、自社の購買の実態を把握する必要があります。資材購買計画の立案方法は次の通りです。

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資材購買計画とは、購買に際して要する予算などを決定する計画であり、生産計画・資材購買方針を前提にして立案されます。生産計画は、自社製品の生産量などの他に、生産形態(見込み生産か受注生産か)などによってもその内容は異なります。

また、資材購買方針を立案する際は、購買条件などが記載されている資材購買の規定などのマニュアルを参考にするとよいでしょう。こうしたマニュアルは、社内の購買条件などが記載されており、資材購買方針を立案する際に役立ちます。

資材購買計画を整理することで、自社の資材購買の現状を客観的に把握することができるため、次の点を検討しやすくなります。

  • 購買先や購買方法を変更する余地があるか否か
  • 購買先を変更する場合、変更先にはどこがあるのか
  • 変更先との価格交渉のラインをどの程度に設定するか

3 資材購買コスト削減のポイント

1)購買担当者の意見を取り入れた資材購買

中小企業では、営業担当者や製造担当者などからの要望を購買担当者がまとめ、資材の仕様・規格・品質や在庫状況を確認した上で複数の購買先から相見積もりを取ります。その結果、自社にとって最も条件のよい購買先に発注します。最も条件のよい購買先を検討する際は、例えば次の基準を参考にします。

  • 企業信用力:財政状態だけではなく、災害時の事業継続性なども検討する
  • 資材の品質:業界標準と比べた品質水準などを検討する
  • 納期:業界標準および発注ロットに見合った納期であるかを検討する
  • 価格:業界標準および発注ロットに見合った価格であるかを検討する

基本的に、購買担当者は営業担当者や製造担当者の要望に従って資材を発注するため、「多品種少量の資材を使う」「単価の高い特殊な資材を使う」など設計段階で生じるコスト増大要因に対処することが難しくなります。この場合、購買担当者は、資材を可能な限り安く調達できる購買先を探すくらいしかできません。もちろん、これは非常に重要なことですが、この取り組みだけでは資材購買コスト削減の効果が限定的なものになってしまいます。

そこで、営業担当者や製造担当者が要望する資材を決定する場に購買担当者も参加し、主に次の点から、購買担当者の視点も踏まえて資材購買の方針を決定するようにします。

  • 資材点数の削減
  • 資材の材料、品質、形状などの標準化
  • 製造担当者が要求する資材より、安価で質の高い代替資材の採用

この場合、購買担当者の知識と経験が非常に重要になります。営業担当者や製造担当者は、「自分が製品を販売し、あるいは製造して売り上げを上げている」との自負があります。そのため、購買担当者もそれなりの準備をして説明しないと、資材点数の削減などに関する提案をなかなか受け入れてもらえません。

例えば、購買担当者は生産計画や資材購買方針を説明することで、営業担当者や製造担当者から理解を得られる場合があるでしょう。

とはいえ、資材購買計画とは異なる購買も時には必要であり、購買担当者は営業担当者や製造担当者の意見には十分に耳を傾け、柔軟に対応する姿勢が必要です。また、企業は購買担当者に日本能率協会が主催する「調達プロフェッショナル認定者」(詳細は後述します)の試験を受けさせるなどして、その育成に努めることが重要です。

2)購買先の絞り込みとその際の留意点

購買先の選定に当たっては、複数の購買先候補から見積もりや試作品を入手して、十分に比較検討します。

また、購買先を絞り込んで大量に発注することでスケールメリットを得ることもできます。

ただし、購買先を絞り込み過ぎると、その相手に何らかのトラブルが生じた場合の対処が難しくなります。信用調査を徹底するとともに、災害時の事業継続計画(いわゆる「BCP」)などにも注意する必要があります。東日本大震災では、自動車部品をはじめとして、多くの部品メーカーが被災したことによりサプライチェーンが分断され、大手自動車メーカーなどで生産ラインの停止に追い込まれるといった影響が出ました。こうした事態を防ぐためには、メーンの購買先と地理的に離れた場所に、サブの購買先を確保するなどの対策が必要となります。

3)一括購買を検討する

社内の情報共有は資材購買コスト削減において非常に重要です。例えば、各工場の在庫情報を本社が一元管理できるようになれば、工場間で資材の融通が可能になるため、無駄な発注がなくなります。

また、各工場の発注を一本化することでスケールメリットが得られる可能性があります。ただし、場合によっては遠方からの納品となって、従前よりも物流費が上昇する恐れがあるので注意が必要です。

4)購買先と交渉する際のポイント

資材購買コストに限らず、値下げ(コスト削減)交渉の窓口となった担当者は、上長に指示された通りにコスト削減をすることばかりに意識が向きがちです。そうした担当者は、値下げ交渉をせざるを得ない自社の状況や値下げ幅の設定根拠などを相手に十分に説明せず、繰り返し値下げ要請だけをしがちです。

しかし、理由はどうであれ、値下げを依頼される購買先は自社に対して少なからず不信感を抱くものです。過去にも値下げをしたことがある場合はなおさらです。

そのため、値下げ交渉の窓口となった担当者は、誠意ある姿勢で相手と交渉しなければなりません。その際、該当する資材の市況なども話題になるはずなので、そうした意味で、購買担当者には資材に関する専門的知識の他、コミュニケーション能力や交渉力も求められます。

4 情報を活用するための体制整備

1)社内イントラネットなどで情報を収集

購買は単に購買担当者だけで完結する業務ではなく、営業担当者や製造担当者などさまざまな部門とのやり取りが必要になります。そのため、社内イントラネットなどを使って社内の情報がしっかりと共有できる体制を整えることが不可欠です。こうした情報システムでは、資材に関する全ての情報を一元管理するのが望ましいでしょう。

2)社外のマーケットプレイスへの参加

現在、資材調達に関するさまざまなウェブサイトが開設されています。業界団体や複数の大手企業が合同で開設したマーケットプレイス(MP)は参加企業が多いことから、従来よりも低コストで資材が購買できる可能性があります。実際に売買取引をしなくても、地域やロットによる資材の相場観を知ることができます。

また、オフィス備品や消耗品を中心に扱うECサイトの「カウネット」では、複数の調達先から一括で見積もりを取ることができる商談機能や会計システムと連携できるシステムを提供しています。こうしたサービスの利用を検討することで、購買業務の手間を削減できるかもしれません。

このように、購買担当者は社外のMPにも精通し、必要に応じて参加することが重要です。また、MPの運営者が「資材購買コストの削減セミナー」などを開催することがあるので、購買担当者は積極的に参加するようにしましょう。参加者は、同じような課題を抱えた企業の購買担当者であり、お互いに情報を交換するなどしておけば、そこで形成した人脈は後々も役に立つでしょう。

5 最も重要な購買担当者の育成

資材購買コストの削減において購買担当者が果たす役割は非常に大きなものです。特に、限られた従業員が購買を担当している中小企業では、いかに購買担当者の知識レベルを向上させ、経験を積ませるかが重要になります。

そのため、企業は購買担当者に次に紹介するような資材購買関連の資格取得を奨励しましょう。次に挙げる資格取得を目指すのは、一部上場クラスの企業の購買担当者が中心ですが、中小企業の購買担当者が取得しても十分に役立つものです。

1)日本能率協会「調達プロフェッショナル認定者」

日本能率協会では、購買・調達業務のプロフェッショナルとして必要とされるスキルを習得した者を、調達プロフェッショナル認定者(Certified Procurement Professional、以下「CPP」)として認定する資格試験を実施しています(試験方法は、コンピューターを用いた、いわゆる「CBT」)。

「CPP資格 公式サイト」によると、CPP資格の種類などは次の通りです。

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2)日本資材管理協会「資材管理士」

日本資材管理協会では、資材・購買部門の実務担当者を対象に、資材管理士の資格認定を行っています。この資格を取得するには、日本資材管理協会が実施する資材管理士専門コースを受講し、受講後に、所定のリポート審査に合格することが必要です。日本資材管理協会ウェブサイトによると、資材管理士の試験概要は次の通りです。

  • 時期:毎年約3カ月間のうち、十数回にわたる講義が実施されます
  • 費用:会員は16万円(1名・税込み)
    非会員は19万5000円(1名・税込み)

以上(2020年7月)

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古物営業法の概要と古物商などの開業手続き

書いてあること

  • 主な読者:古物営業に関する事業への参入を検討している事業者
  • 課題:事業に参入するために必要な手続きや関連法が分からない
  • 解決策:古物営業法の概要を把握し、必要な手続きに関する知識を得る

1 古物営業法とは

古物営業法は、盗品等の売買の防止、被害品の早期発見により窃盗その他の犯罪を防止し、被害を迅速に回復することを目的として、古物の取引に係る営業について規制するものです。

古物とは、一度使用された物品、新品でも使用のために取引された物品、またはこれらのものに幾分手入れをした物品をいい、次の13品目に分類されています(古物営業法施行規則第2条)。

  • 美術品類(書画、彫刻、工芸品等)
  • 衣類(和服類、洋服類、その他の衣料品)
  • 時計・宝飾品類(時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類等)
  • 自動車(その部分品を含む)
  • 自動二輪車および原動機付自転車(これらの部分品を含む)
  • 自転車類(その部分品を含む)
  • 写真機類(写真機、光学器等)
  • 事務機器類(レジスター、タイプライター、計算機、謄写機、ワードプロセッサー、ファクシミリ装置、事務用電子計算機等)
  • 機械工具類(電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具等)
  • 道具類(家具、じゅう器、運動用具、楽器、磁気記録媒体、蓄音機用レコード、磁気的方法または光学的方法により音、影像またはプログラムを記録した物等)
  • 皮革・ゴム製品類(カバン、靴等)
  • 書籍
  • 金券類(商品券、乗車券および郵便切手並びに古物営業法施行令第1条各号に規定する証票その他の物)(注)

(注)古物営業法施行令第1条各号に規定される航空券、興行場・美術館・遊園地・動物園・博覧会の会場等の入場券、収入印紙、プリペイドカード等をいいます。

なお、大型機械類(船舶、航空機、鉄道車両、工作機械その他これらに類する物)は、古物営業法の規制対象から除外されます(古物営業法施行令第2条)。

2 古物商・古物市場主の営業許可申請

1)古物商・古物市場主とは

古物商とは、古物の「売買」「交換」「委託を受けて売買」「委託を受けて交換」を行う営業のことをいいます。また、古物商間の古物の売買または交換のための市場を経営する営業のことを古物市場主(いちばぬし)といいます。

古物商、古物市場主の営業を行うためには、都道府県公安委員会の許可を受けなければなりません(古物営業法第3条)。

なお、複数の都道府県に展開しようとした場合、従前は、営業所もしくは古物市場が所在する都道府県ごとに許可を受けなければなりませんでした。しかし、2020年4月の古物営業法の改正法施行により、主たる営業所もしくは古物市場の所在地を管轄する公安委員会の許可を受ければ、その他の都道府県に営業所もしくは古物市場を設けるときに、所在地を管轄する公安委員会に届出書を提出すればよいことになりました。

2)許可申請書類

古物商、古物市場主の許可を受けようとする者は、その主たる営業所または古物市場の所在地を管轄する公安委員会に対して、次に掲げる事項を記載した許可申請書を提出しなければなりません(古物営業法第5条)。

  • 氏名または名称および住所または居所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 主たる営業所または古物市場その他の営業所または古物市場の名称および所在地
  • 営業所または古物市場ごとに取り扱おうとする古物に係る国家公安委員会規則で定める区分
  • 管理者(注)の氏名および住所
  • 行商(露店を出すことを含む)をしようとする者であるかどうかの別
  • その営業の方法として、取り扱う古物に関する事項を電気通信回線に接続して行う自動公衆送信(公衆によって直接受信されることを目的として公衆からの求めに応じ自動的に送信を行うことをいい、放送または有線放送に該当するものを除く)により公衆の閲覧に供し、その取引の申込みを国家公安委員会規則で定める通信手段により受ける方法を用いるかどうかの別に応じ、当該古物に関する事項に係る自動公衆送信の送信元を識別するための文字、番号、記号その他の符号またはこれに該当しない旨
  • 法人にあっては、その役員の氏名および住所

(注)古物商または古物市場主は、営業所または古物市場ごとに、業務を適正に実施するための責任者として、管理者1人を選任しなければなりません(古物営業法第13条第1項)。

3)許可申請に必要な添付書類

古物営業の許可申請に必要な添付書類は次の通りです。

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住民票は、本籍地(外国人の場合国籍等)が記載されたものでなければなりません。

市区町村長の証明書は、「成年被後見人、被保佐人、破産者で復権を得ないもの」に該当しないことを証明するためのもので、本籍地の市区町村長が発行します。各市区町村の戸籍課などで扱っています。

誓約書は、古物営業法第4条(許可の基準)に反しない旨を誓約する書面です。個人の場合で申請者本人が営業所の管理者を兼ねるとき、または、法人の場合で代表者や役員の中に営業所の管理者を兼ねる者がいるときは、管理者用の誓約書のみ添付すればよいとされています。

経歴書は、最近5年間の略歴を記載した書面で、本人の署名または記名押印のあるものです。

ウェブサイトを開設して古物の取引を行う場合やオークションサイトに出店する場合は当該ウェブサイトのURL(当該URLを使用する権限があることを証する書面)を届け出る必要があります。

これら以外に、営業所の賃貸借契約書の写し、駐車場等保管場所の賃貸借契約書の写し(自動車の買い取りを行う場合など)の添付が必要な場合があります。

4)許可申請窓口および手数料

古物商・古物市場主の営業許可申請窓口は、古物商の営業所もしくは古物市場の所在地を管轄する警察署(防犯課、生活安全課など)です。

手数料は、古物営業許可申請、古物市場主許可申請ともに1万9000円です。

実際に古物商・古物市場主の営業許可申請をしようとする際には、事前に管轄警察署に問い合わせて、必要書類などを確認しておくとよいでしょう。

3 古物競りあっせん業の届出

1)古物競りあっせん業とは

古物競りあっせん業とは、古物の売買をしようとする者のあっせんをインターネット上で競りの方法により行う営業(いわゆるオークションサイト運営者)のことをいいます。

ウェブサイトを開設し、出品者、入札者により、競り形式で落札するもので、利用者から何らかの対価を徴収するものについては届出が必要です。ただし、バナー広告等により収益を上げるなど、対価を徴収しないものは届出の必要はありません。

なお、古物競りあっせん業の届出手続きは、自ら古物の「売買を行わない」「売買に関与しない」「売買の場のみを提供する」という点で、古物商許可業者がウェブサイトを開設して古物の取引を行う場合やオークションサイトに出店する場合(URLの届出)とは手続きが異なります。

2)届出書類

古物競りあっせん業者は、営業開始の日から2週間以内に、営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する都道府県公安委員会に対して、次に掲げる事項を記載した届出書を提出しなければなりません(古物営業法第10条の2)。

  • 氏名または名称および住所または居所並びに法人にあっては、その代表者の氏名
  • 営業の本拠となる事務所その他の事務所の名称および所在地
  • 法人にあっては、その役員の氏名および住所
  • 競りの方法その他業務の実施の方法に関する事項で国家公安委員会規則で定めるもの

3)古物競りあっせん業の届出に必要な添付書類

古物競りあっせん業の届出に必要な添付書類は次の通りです。

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これら以外に、「競りの中止命令」(古物営業法第21条の7)を受けた場合に対応するため、24時間、警察からの連絡が可能な部署、担当者名、連絡先を届け出る必要があります。

4)届出窓口

古物競りあっせん業の届出窓口は、営業の本拠となる事務所の所在地を管轄する警察署(防犯課、生活安全課など)です。手数料はかかりません。

実際に古物競りあっせん業の届出をしようとする際には、事前に管轄警察署に問い合わせて、必要書類などを確認しておくとよいでしょう。

以上(2020年7月)

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