売れる営業の5つの条件

1 販売だけではない営業担当者の仕事

営業活動の中心は販売ですが、そこに至るまでには次の活動も不可欠です。これらの活動は数字には表れませんが、優れた営業担当者はその重要性を十分に理解して取り組んでいます。

  • 関係者との良好な関係構築など、商品を販売しやすい環境をつくり上げる
  • つくり上げた環境を活かし、顧客に適切な提案をする

このような機能を「商品販売」「関係構築」「情報収集」「アラーム」に分類した場合、それらの関係図は次の通りです。

画像1

「商品販売」機能の活性化は、営業担当者の最終目標です。この機能を十分に発揮するためには、「関係構築」「情報収集」「アラーム」の3つの機能が欠かせません。また、「関係構築」「情報収集」「アラーム」機能から「商品販売」機能に向かう途中に、最後の壁が立ちはだかっていることが分かります。最後の壁を突破できなければ、「商品販売」機能を十分に発揮することは難しいのです。

本稿では、「商品販売」「関係構築」「情報収集」「アラーム」の各機能について確認した後、最後の壁を突破するための考え方を紹介します。

2 「商品販売」機能

「商品販売」機能とは、取り扱う商品を販売することであり、営業活動の中心です。ただし、営業担当者は営業成果として売り上げのことだけを考えていればよいわけではありません。「商品販売」機能を十分に発揮するために、営業担当者は「関係構築」機能などにも積極的に取り組まなければなりません。

一方、「関係構築」機能などが不十分であっても、コンスタントに成果を上げる営業担当者がいます。こうした営業担当者は、「事前準備が不十分でも、最後の壁を突破する力が強い」「本当に重要な場面で、上手に『関係構築』機能などを発揮している」のです。あるいは、たまたま自社の商品などを求めている顧客をタイミング良く訪問するなど、強運の持ち主であることもあります。いずれにしても、他人がまねをすることは難しいスタイルです。

営業の基本は、あくまでも「関係構築」「情報収集」「アラーム」の各機能を十分に発揮することです。

3 「関係構築」機能

1)「関係構築」機能とは

「関係構築」機能とは、社内外を問わず、関係各所と良好な関係を構築する活動です。もし営業担当者が、「営業成果は自分の手柄。だから、社内でも社外でも一匹おおかみでいい」と考えているのなら改めましょう。顧客の要求が高度になっている現在、営業担当者だけの力には限界があります。少し乱暴な言い方ですが、「利用できる相手は利用する」姿勢が必要で、そのためには周囲との関係構築が重要となるのです。

営業担当者が「関係構築」機能を発揮すべき主な相手は次の通りです。

2)社内との関係構築

1.上司との関係

上司との関係を良好に保って信頼を獲得します。上司の信頼が得られれば自分の提案などが承認されやすくなり、営業の幅が広がります。

2.他の営業担当者との関係

他の営業担当者の好成績をうらやむだけでは前に進みません。自分よりも優れた営業担当者と積極的に情報交換を行い、そのノウハウを自分のものにしていきましょう。

3.他部門との関係

製造部門、経理部門など他部門との連携を深めましょう。営業部門と製造部門の連携がスムーズなら、少々厳しい納期にも製造部門が対応してくれるでしょう。

3)顧客との関係構築

1.窓口担当者との関係

既存顧客や見込み客から見て、営業担当者は常に頼れる味方でなければなりません。営業担当者は複数の顧客を担当しますが、顧客に「自社は○○さんが担当している営業先の1つ」と意識させては失格です。あたかも専属の営業担当者であるかのように振る舞い、「○○さんは、いつも自社のことを考えてくれる面倒見の良い担当者だ」と思わせることが重要です。

2.窓口担当者の上司の存在を意識する

営業担当者は、「自分の取引相手は顧客の窓口担当者」と考えてはいけません。窓口担当者の背後には、上位の意思決定権者がいます。その存在を常に意識しておきましょう。

3.窓口担当者の上司と商談する際のポイント

窓口担当者の上司と商談できる機会は限られています。その貴重な機会を無駄にしないよう、臆せずに自信を持って提案していきましょう。営業担当者の自信ある姿は相手に安心感を与え、信頼へとつながっていきます。

4)業界団体との関係構築

1.業界団体との関係

多くの業界には、いわゆる「業界団体」があります。必要に応じて業界団体との関係を構築しておくと、業界全体の動きが把握しやすくなります。

2.業界団体との関係構築のポイント

業界団体との関係を構築する上で注意が必要なのは、業界団体はあくまでも公平・公正な立場の組織であるということです。無理に取り入ろうとすれば、かえって不信感を抱かれます。まずはこまめに連絡するなど、自社の存在、自社の取り組み、自分の名前を覚えてもらうようにしましょう。

5)他社との関係構築

1.競合先との関係

競合先を意識し過ぎるのは問題です。競合先の営業担当者もあなたと同じ悩みを抱えているはずです。一線を引く必要はありますが、営業担当者レベルで適度に良好な関係を築き、情報交換ができる関係になるのは有意義です。

2.類似商品の販売企業との関係

直接の競合先には当たらないものの、同業界で類似した商品を販売している企業があります。こうした先を気に留めない営業担当者が多いようですが、これは残念なことです。顧客層が異なる(競合先ではない)分、ざっくばらんに情報交換ができますし、信頼関係が強まれば、互いに見込み客を紹介し合う間柄に発展することもあります。

6)友人・知人などとの関係構築

営業担当者の優劣は情報の収集・分析力にあります。社内や顧客などから得られる情報は、営業担当者には不可欠です。さらに、家族・友人・知人など営業担当者の私的な人脈から得られる情報もあります。また、セミナーや趣味などで広げた人脈を大切に育むことも非常に重要です。

4 「情報収集」機能

1)「情報収集」機能とは

「情報収集」機能とは、幅広く適切な情報を収集することです。営業担当者が収集すべき情報は多岐にわたります。「顧客との関係構築」が発揮されていれば、比較的スムーズに情報収集できるでしょう。「情報収集」機能に取り組み始めた当初、集まってくる情報は“点”にすぎないかもしれません。しかし、“点”は少しずつ連続して“線”となり、何本も“線”が引かれることで、最後は大きな“面”となります。“面”となった情報は営業戦略の方向性を確認し、必要に応じて修正していく際の羅針盤となります。

目標は、全ての情報が自分(自社)に集まるような体制を整えることです。そのために、例えば、次のような情報の収集に取り組みましょう。

2)商品情報の収集

1.同業他社の商品情報の収集

同業他社の商品情報も徹底的に収集します。一通りの情報は他社のウェブサイトなどから収集できます。

2.自社商品と他社商品の比較

自社商品と他社商品の機能などの違いをまとめた一覧表を作成することは非常に重要です。ただし、これは多くの営業担当者が実践していることなので、そこで一歩踏み込んで、顧客の窓口担当者とその上司の立場で、自社商品と他社商品について必要な情報を整理してみましょう。その際の視点は次の通りです。

  • 窓口担当者

窓口担当者は、複数の企業の商品を比較し、どの企業の提案が最も上司に報告しやすいかを考える傾向があります。また、自分と相性が良く、自分の意図を正確に理解してくれる営業担当者を好みます。窓口担当者が興味を示すのは、各社の商品の機能や価格などを一目で比較できるような資料です。

  • 窓口担当者の上司

窓口担当者の上司(この説明では以下「上司」)は、ある程度の権限を持ち、企業全体の利益を常に考えて判断しています。誰でも知っているようなメリットや機能は、既に窓口担当者からの報告で把握しています。

上司が興味を示すのは、他社の動向、商品導入後に自社が他社より優位に立てる点です。また、「費用対効果」についてもシビアなので、上司は価格に見合ったメリットを知りたいと考えています。

3)業界情報の収集

業界団体のウェブサイトや業界紙などを確認し、業界の動向を把握します。規制強化・緩和など業界の方向性を左右する重要な情報は、必要に応じて業界団体に直接問い合わせて確認します。この確認作業は、業界団体との関係構築にもつながります。

4)顧客情報の収集

1.ウェブサイトや業界紙などを通じた基本的な情報の継続的収集

業界団体のウェブサイトや業界紙などから、顧客に関する基本的な情報を収集します。例えば顧客の窓口担当者からの連絡で、「先月、当社は新しい顧客管理システムを導入したんですよ」などと、事後報告を受けるようでは失格です。顧客より先に連絡し、「御社は新しい顧客管理システムを導入されたようですね」と先手を打つようでなければなりません。これは電話が先か後かの時間的な違いではありません。先手を打って連絡することで、窓口担当者が「この営業担当は自社のことをよく理解している。信頼できるな」と考えるようになるのです。

2.窓口担当者を通じた情報収集

業界団体のウェブサイトや業界紙などから収集できない情報は、積極的に窓口担当者に連絡して確認しましょう。窓口担当者と良好な関係を構築できていることが前提ですが、窓口担当者は自分が採用した取引先を上手に使いたいと考えているので、そのために必要な情報は提供してくれることが多いのです。

3.人脈を活かした情報収集

家族や友人などから貴重な顧客情報を収集できることもあります。友人の学生時代の後輩が顧客企業に勤めているなどのケースは意外とあるものです。

5)他社情報の収集

1.ウェブサイト、窓口担当者などからの情報収集

一通りの情報は、他社のウェブサイトなどから収集可能です。より踏み込んだ詳細な情報は、顧客の窓口担当者から収集できることもあります。窓口担当者は、自分の立場を維持するためにも、自分が選択した取引先に一番でいてほしいと考えます。そのため、同業他社について「先日、○○社さんがこんな提案をしてきたよ」などといった貴重な情報を教えてくれることがあります。窓口担当者がこうした情報を教えてくれたときは、素直に感謝しましょう。

2.窓口担当者から情報収集する際の注意点

顧客の窓口担当者が情報を提供してくれるとはいえ、それに頼り過ぎることは禁物です。窓口担当者はこちら側の情報収集力を疑い、「実は何も知らないのではないか」と考えます。一度そのように思われてしまうと、信頼を回復することは容易ではなく、最後は取引を打ち切られるといった最悪のケースもあり得ます。

3.同業他社からの情報収集

同じ業界に属している企業は情報の宝庫です。積極的に情報交換しましょう。

5 「アラーム」機能

1)「アラーム」機能とは

「アラーム」機能とは、業界・顧客・他社などのちょっとした変化も見逃さず、自社のチャンスになる場合も危機になる場合も必ず上司に報告する活動です。この「アラーム」機能が発揮されなければ、「情報収集」機能は意味がありません。

例えば顧客の窓口担当者が、「先日、○○社さんが来て、新しいサービスの提案をしてくれたよ」と貴重な情報を教えてくれたにもかかわらず、何の対策も講じず、上司にも報告しない営業担当者がいたとします。

最悪の場合、この営業担当者は取引先を○○社に奪われてしまいます。また、最悪のケースは回避できたとしても、顧客の窓口担当者は「○○社の提案内容を教えているのに、今の取引先から何のリアクションもない。もしかすると、自社にとってあまり良くない取引先なのではないか」と信頼を失う結果になりかねません。

こうしたことがないように、営業担当者は業界・顧客・他社などのちょっとした変化も見逃してはなりません。例えば、次のような変化には注意が必要です。

2)業界の動き

1.顧客が属する業界で新たな規制強化(緩和)が実施された

自社商品が規制強化(緩和)に対応しているかを即座に確認しましょう。自社商品は既に対応しているが、他社商品はまだ対応していないのであれば大きなビジネスチャンスです。逆の場合は危機であり、早急な対応が求められます。

2.業界団体が、業界標準のサービス構築を進めている

自社商品が業界標準になるチャンスである半面、他社商品が業界標準となれば、多くの顧客を失う危険性があります。

3)顧客の動き

1.顧客からの連絡が途絶えている

頻繁に連絡のあった顧客から、プッツリと連絡が途絶えたら危険信号です。こちらから連絡して状況を確認しましょう。

2.顧客が同業他社のことについて質問してきた

顧客が同業他社を必要以上に気にし始めたら危険信号です。「同業他社から提案がきているのか」「その提案はどのような内容か」を素直に質問し、対策を講じましょう。

3.顧客が突然、訪問したいと言ってきた

通常は営業担当者が顧客を訪問するものです。にもかかわらず、顧客のほうが訪問を申し出てきたら、大きな危機かもしれません。落ち着いて訪問の理由を聞いてみましょう。

4.顧客が値下げ要請をしてきた

値下げ要請は危険信号ですが、大切なのは値下げの金額だけではありません。顧客が値下げを要請してきた理由です。顧客企業内でコスト削減の対象となったのか、他社が自社を下回る価格で提案をしてきているのかを確認しなければなりません。場合によっては、窓口担当者が“言ってみただけ”ということもあります。値下げ要請を受けると、多くの営業担当者は慌てますが、こんなときこそ冷静に対応しなければなりません。

5.顧客がまともに話を聞いていない

営業担当者としての信頼を失っている危険性があります。一から関係を構築し直す必要があるかもしれません。

6.顧客の窓口担当者が異動になった

状況に応じてチャンスにもなりますが、前提として認識しなければならないのは、新たな窓口担当者は、自社商品に何の思い入れもないということです。そのため、取引先を変更したり、それまでの提案の差し戻しを求めることがあります。

一方、前任の窓口担当者になかなか採用してもらえなかった商品を、仕切り直しで提案するチャンスでもあります。いずれにしても、慎重に一から関係を構築し直さなければなりません。

7.顧客の主要な営業エリアで大きな事件や事故があった

顧客への影響が心配です。プレスリリースやインターネットから必要最低限の情報を入手しておきましょう。ただし、こちらから質問することは控えます。

8.顧客の窓口担当者が、訪問前の事前の資料提出を求めている

これまで提出してきた提案書などが、窓口担当者のイメージ通りでなかった場合は危機です。半面、窓口担当者が“本気”で上司に商品導入を進言しようとする際も、同様の動きが見られます。その場合はチャンスです。

9.商談の場に窓口担当者の上司、あるいはさらに上役が出席すると言っている

顧客は営業担当者の提案を本気で検討する姿勢を見せています。大きなチャンスであるため、臆することなく、自信を持って提案しましょう。

10.門前払いが多かった見込み客が、話を聞きたいと言っている

商品を導入したいのか、情報収集だけをしたいのかは微妙です。ただし、見込み客との関係を深めるチャンスであることに違いはありません。

4)他社の動き

1.他社が新しい商品を開発した

新商品に関する情報を収集し、特徴・機能を整理しましょう。仮に自社商品よりも優れているようであれば、その点は素直に認め、顧客から質問されれば事実を伝えます。

2.新たな競合先が誕生した

危機であるかチャンスであるかは分かりません。「強力なライバル」になる可能性と「頼れる提携先」になる可能性の両方があるためです。「関係構築」機能と「情報収集」機能を発揮させ、状況を見守りましょう。

3.顧客から他社の悪評を頻繁に耳にする

顧客の言葉は受け流し、悪評の事実関係の確認を急ぎましょう。決して、顧客と他社の悪口で盛り上がってはいけません。

6 「Win-Win関係創造」機能

1)「Win-Win関係創造」機能がブラックボックスを解き明かす

営業では「商品販売」機能が注目されがちですが、実際は「関係構築」「情報収集」「アラーム」の各機能も欠かせません。そして多くの営業担当者は、このことは頭では理解しています。事前準備を周到に行うだけでは営業成果に結びつかないこと、あるいは事前準備をおろそかにしては、コンスタントに営業成果は上げられないことを知っているのです。

実際、多少のビジネスセンスのある営業担当者は、事前準備として「関係構築」「情報収集」「アラーム」の各機能を発揮しています。にもかかわらず、なかなか「商品販売」機能に結び付かないのは、事前準備から最終目標である販売に向かう途中に立ちはだかる最後の壁を突破することができないからです。最後の壁は営業のブラックボックスといえ、それを解き明かす鍵となるのが、「Win-Win関係創造」機能です。「Win-Win関係創造」機能の発揮のイメージは次の通りです。

画像2

2)「Win-Win関係創造」機能の基本は想像力

「Win-Win関係創造」機能の基本は、「関係構築」「情報収集」「アラーム」の各機能によって明らかになった状況を確認し、自社と顧客の双方にメリットがあるWin-Winの関係をじっくりと想像してみることにあります。要はWin-Winの関係が構築できるように、さまざまな仮説を立ててみればよいのです。

営業担当者が立てた仮説がそのまま実現することは少ないかもしれません。しかし、仮説を立てて検証するという一連の思考を何度も繰り返すことで、「Win-Win関係創造」に近づくことができます。こうした創造のための想像力(仮説立案とその検証)が研ぎ澄まされてくれば、最後の壁を打ち破るための本当の営業力が養われていきます。

  • ケーススタディー

次のような場面に遭遇した際、あなたはどのような仮説を立てますか。

    • 自社:顧客にシステムの一部を販売している。
    • 顧客C社:自社の既存顧客であり、ライバル社とも取引関係にある。
    • ライバル社:競合先。顧客C社にシステムの一部を販売している。
    • 同業他社:自社とライバル社のいずれとも競合関係にない同業他社。自社の営業担当者は、同業他社の営業担当者と関係を構築している。

現在、自社とライバル社は顧客C社にシステムの一部を販売しています。自社とライバル社は競合関係にありますが、顧客C社に関しては一応、営業上のすみ分けができており、直接的な競合関係にはありませんでした。

ところが、顧客C社の業界に直接関係する新法が施行されることになって状況が一変します。顧客C社は新法に対応した新システムの導入を検討し始めました。その一環として複数のシステム業者と取引している現在の体制を見直し、取引先を一本化することも検討しています。

ライバル社はいち早く新法に対応した新システムを開発し、活発に営業活動を展開しています。当然ながら、顧客C社にも積極的にアプローチしています。

また、このケーススタディーで「関係構築」「情報収集」「アラーム」の各機能を発揮した結果は次の通りです。

1.「関係構築」機能

    • 私は自社の営業部長とのコミュニケーションは良好で、かなり信頼されている。
    • 私が同僚の営業担当者に聞いたところ、最近、ライバル社の営業が活発らしい。
    • 私がライバル社の営業担当者に聞いたところ、最近、新法に関する問い合わせが多いらしい。
    • 私は顧客C社の窓口担当者と非常に良好な関係を築いている。

2.「情報収集」機能

    • 私が調べた結果、顧客C社の業界では、新しい業界指針が出るらしい。
    • 顧客C社の窓口担当者は、私にこう言っていた。「現在、複数の取引先に自社システムの構築をお願いしているが、できれば一本化してコストを削減したい」
    • 私は同じ業界の同業他社から、次のような情報を入手した。「ライバル社が新法に対応した新しいシステムを開発したらしいが高価格のようだ」

3.「アラーム」機能

    • 顧客C社の窓口担当者の上司から私に直々に連絡があり、会いたいと言ってきた。その際、システムを一手に引き受けた場合の見積もりを提示してほしいと求められた。新法への対応が前提のようだ。
    • そういえば先日、顧客C社の窓口担当者は、私に今のシステムがもう少し安くならないかと尋ねた。本気とは思わなかったが、どうやら自社の価格競争力を確認しているようだ。
    • 顧客C社の窓口担当者は、訪問前に資料だけ送ってほしいと言っている。

例えば次の仮説が立てられるのではないでしょうか。

    • 顧客C社の業界では、新法への対応が重要な課題となっている。近々、業界指針が出るらしく、急いで対応しなければならないようだ。
    • 顧客C社は、新法対応とコストダウンのため、取引先の一本化を図っているようだが、それに対応できる企業は限られてくる。
    • そこで、現時点で有力な選択肢の1つとなっているのが、ライバル社の開発した新システムなのだろう。
    • ただし、同業他社からの情報通り、ライバル社の新システムは高価格らしい。顧客C社の窓口担当者とは良好な関係を築いているはずなのに、わざわざその上司から連絡があり、見積もりが欲しいというのは迷っている証拠だ。
    • いずれにしても、顧客C社は新法に対応したシステムを一手に引き受けてくれる取引先を探していることは間違いない。しかも事前に資料提出まで要求しているところを見ると、商談の場に上位の役職者が出席するかもしれない。

この仮説が妥当であるか否かは分かりません。しかし、このような仮説を立てた営業担当者は、上位の役職者が出席するかもしれない商談をチャンスと捉えることができます。そして、顧客C社のシステムを一手に引き受けるために、新法に対応できるシステムを提案するでしょう。

また、顧客であるC社との交渉では価格が1つのポイントとなることも分かっているため、事前に自分の上司である営業部長に通常よりも低価格で提案をすることの承認も得てあります。顧客C社から見ると、この提案は求める要求の多くを満たすものであり、十分に検討に値するでしょう。

最終的に、顧客C社に自社システムを導入できるか否かは分かりません。もしかすると、ライバル社が大幅な値下げをしてくる可能性もあります。仮にライバル社が大幅な値下げをして、自社が顧客C社を失うことになったとしても、それは営業担当者の責任ではありません。自社のシステムがライバル社より価格競争力で劣っていたための結果であるからです。

営業担当者が臆する必要はありません。大切なことは、継続して「関係構築」「情報収集」「アラーム」の各機能を発揮して営業の事前準備を行い、常に「Win-Win関係創造」機能を発揮するといった、正しい営業のプロセスを踏んでいればよいのです。これを続けていけば、いずれは最終目標である「商品販売」機能が高まるでしょう。

7 スランプのときこそ基本に立ち返る

本稿では、営業という仕事を改めて見直すために、営業担当者に求められる機能を「商品販売」「関係構築」「情報収集」「アラーム」「Win-Win関係創造」の5つに分けて紹介してきました。

これらは営業の基本ですが、スランプに陥った営業担当者は、得てして営業の基本を忘れてしまいがちです。大切なのは、スランプのときこそ基本に立ち返ってコツコツと営業活動を展開していくことなのです。

また、「商品販売」機能は、一足飛びに達成できるものではありません。田畑を耕すように事前準備を進め、出始めた芽が枯れないように育て、慎重に収穫までこぎつけなければなりません。

営業の仕事は毎日続くものです。そして、営業の仕事には高いモチベーションとその維持が求められます。このような仕事だからこそ、正しいアプローチを常に継続し、それを自信につなげていきましょう。今は数字が上がっていなくても、正しいアプローチを続けてさえいれば、必ず成約(収穫)のときが訪れます。

以上(2019年10月)

pj70087
画像:photo-ac

【朝礼】ゴルフ界の「スマイルシンデレラ」に学ぶこと

2019年8月、ゴルフの全英女子オープンで、渋野日向子(しぶのひなこ)選手が優勝しました。日本勢としては、実に42年ぶりのことです。

渋野選手のトレードマークは、あの「笑顔」で、「スマイルシンデレラ」と呼ばれています。優勝後のインタビューでも、「世界でも笑顔は共通。笑顔で努力すれば結果に出ると思った」という趣旨の発言をしていたのが印象的でした。

渋野選手については、「真剣な表情と笑顔、オンとオフの切り替えができている」「プレー中にお菓子を食べ、ギャラリーとハイタッチをするなど、自然体。自分をリラックスさせるようコントロールする方法を知っている」と報道されていました。しかし、私はそうしたことよりも、渋野選手の笑顔から、「絶学無為(ぜつがくむい)」という禅語を連想したのです。

「絶学無為」とは、学びに学んで学び尽くして、もはや学ぶことのない、自然な、淡々とした悟りの境地といった意味です。心底学んで自分自身の中で消化し、しっかりと取り込んでいる人は、飄々(ひょうひょう)としていて、その苦労や学びが消えてしまっているように見える。苦労や学びを、まるで感じさせない。そうした意味でも使われることがあります。

私は、渋野選手のことを詳しく知っているわけではありませんが、渋野選手の笑顔や自然体は、想像を絶する努力を重ね続けてきた人だけができる、いわば「絶学無為の笑顔」に思えたのです。

学びや努力を、「苦労している」と人に思われたり、人に苦労話を言いたくなったりするうちは、「本物」とはいえないのかもしれません。まだまだ未熟な状態なのでしょう。

ビジネスの世界でも同じです。私たちは、日々、仕事に活かせる能力や技術、考え方などを学ぶ努力をします。学んでいる姿を見せて、周りに対して「学ぶ意識を浸透させる」という良い影響を与えることも必要ですが、自分が学んでいることを人にひけらかすようではいけません。

大切なことは2つで、1つは、社内だけで満足するのではなく社外でも通用するよう学ぶこと。そしてもう1つは、どれほど努力をしても、おごらず、「上には上がいる」という謙虚な気持ちを持ち続けることです。人にもよりますが、本当に努力している人ほど、「自分はまだまだ足りない」と言います。逆に、それほど努力していないときほど、「こんなに頑張っているのに」と言いたくなるものです。

「絶学無為」の境地にたどり着くのは、並大抵のことではありません。一生かかっても、たどり着けるかどうか分からないくらいです。私たちにできるのは、「自分はまだまだ足りない」という気持ちを持ち、一歩一歩学び、努力し続けていくことではないでしょうか。

渋野選手の「絶学無為の笑顔」から、私は謙虚に努力し続けようと改めて思いました。皆さんは、あの笑顔に、何を学ぶでしょうか。

以上(2019年10月)

pj16976
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】台風のときに守ってほしい2つのルール

先日の台風の際、交通機関が乱れて時間通りに出社できないなど、皆さんはそれぞれ、大変だったと思います。今日は、今後こうしたことが起きたとき、当社の社員はどのように行動すればよいのかを、改めて皆さんにお伝えします。

皆さん、まず何よりも、皆さん自身の身の安全が一番大切だということを、決して忘れないでください。暴風雨のときに無理して出社しようとしたり、電車のホームから人があふれそうなときに、無理して電車に乗ろうとしたりしないでほしいのです。台風などの天災で出社するのが難しいときには、出社しなくてかまいません。ただし、連絡を入れるなどのルールは守ってもらわなければなりません。そこで今後、当社では、次にお伝えすることを台風など天災時のルールとしますので、全員、必ず守ってください。

1つ目のルールは、今お伝えした連絡についてです。出社が難しいときは、必ず連絡を入れてください。その際は、全員で共有しているチャットツールを使いましょう。そうすれば、全員が、「誰が出社できないのか」が分かります。

また、時間は多めに見積もってください。今回の台風では、なるべく早く電車に乗ろうとして、自宅の最寄り駅で何時間も立ち往生した人がいます。体調を崩しかねませんし、時間も無駄になります。そうしたことはやめましょう。「午前中は自宅待機で様子見し、午後1時に出社予定です」などの連絡を入れてくれればよいのです。

2つ目のルールは、日中、「これから台風が来る」というときに守ってほしいことです。私や上司が、「これから台風が来る可能性が高いので、今日はもう帰ってください」と指示するときがありますが、なかなか帰ろうとしない人がいます。これはいけません。必ず私や上司の指示に従って、速やかに自宅に帰ってください。

お客さま向けの仕事が残っているなど、皆さんなりの事情があるのでしょうが、皆さんの身の安全よりも大切な仕事などありません。お客さまや取引先に「これから台風が来るので、全社的に帰らなければなりません」と連絡を入れ、仕事を切り上げてください。台風などの際には、全社的にこうした対応を取るのが当社の姿勢だと、社外の方に説明して分かっていただくのが、皆さんのやるべきことです。

どうしても終わらせなければならない仕事があるときは、周りに助けを求めてください。皆で手分けすればすぐに終わるはずです。そうして全員、速やかに帰りましょう。

皆さん、分かりましたか? 今お伝えした2つのルールはとても重要です。必ず守ってください。上司は部下に、徹底するよう指導しましょう。

また、ルールを守り、皆さん一人ひとりの安全を確保するためにも、日ごろから仕事のやり方や状況を共有しておかなければなりません。具体的にどのような方法が良いか、皆で一緒に考えて、今日から実践していきましょう。

以上(2019年10月)

pj16977
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】君たちは、ジャングルを目指したくはないか?

今、時代はめまぐるしく進化しています。テクノロジーを活用した、現金がなくても決済できる仕組みや、無人店舗が浸透しつつあります。人工知能どころか、それだけでは解決できない定性的な情報を定量化する、人工知能に次ぐ新たな技術の開発も進められています。私たちの業界も、大きく変わっていくのは間違いありません。

当社も、この下期から、新規事業への取り組みを本格化させます。それだけではありません。新しい仕組みもどんどん取り入れていきます。それが、今後もこの会社が生き残り、成長していくために、必要なことだからです。

今日ここに集まっている皆さんには、全社を挙げて、新しいことにチャレンジしていくということを、改めて認識してもらいたいのです。

これまでの当社は、いわば国立公園でした。きれいに人の手で区画整理され、安全で、どこに行けばどのようなエサがあるか分かっており、この中にさえいれば、無事に何事もなく、平和な毎日を生きていける状態でした。

しかし、これから当社が目指すのは、未開の地、ジャングルです。ジャングルでは、区画整理はおろか、敵がどこにいるのか、エサがどこにあるのかさえ全く分かりません。生きていくために、自らエサを探し、ジャングルを開拓していかなければならないのです。陸上だけでなく、空や川、海なども開拓しなければならないかもしれません。ジャングルこそが、皆さんを成長させるのです。

つまり、私たちは、これから、私たち自身の手で、会社の新しい仕組みをつくろうとしているのです。そのためには、皆さん一人ひとりが、「ジャングルを目指す」ことを理解し、自ら開拓者にならなければなりません。

ジャングルは、厳しい世界です。国立公園のような安全な世界とは違います。黙っていても仕事が与えられるわけではありません。言葉を選ばずに言えば、これまでのように、言われたことを言われた通りにやっているだけでは、生き残っていくことは難しいでしょう。

そこで、皆さん一人ひとりに考えてほしいことがあります。皆さんは、この会社を、そして皆さん自身を、どのような姿にしていきたいですか。

将来、どのような姿でありたいと思いますか。そしてそのために、皆さんは、今から、何をしていきますか。ジャングルを生き抜くためには、「意思」が必要です。一人ひとりが、「自分はこうしたい」という意思を持ち、行動していかなければなりません。

もちろん、簡単にできることではないでしょう。私も皆さんと一緒になって考え、議論し、新しいことにチャレンジしていきます。

ジャングルは、とても厳しい世界です。しかし、自ら開拓していけば、皆さんが、未来永劫(えいごう)、誇れる宝物のような世界にもなるのです。私は皆さんの意思と行動を、心から応援します。一緒に、ジャングルを目指しましょう!

以上(2019年10月)

pj16978
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】部下指導に悩める管理職への「たったひとつの処方せん」

管理職の皆さんは、日ごろ、一生懸命、部下を指導してくれています。しかし、なかなか部下が成長してくれないと悩む管理職も多いようです。今日は、そうした悩める管理職に、私から一つアドバイスをお伝えします。それは、「部下には、答えは教えない。答えにたどり着くための方法を教える」ということです。

分かりやすい例を挙げてみましょう。部下が、何かの参考として、書籍やインターネットの中から資料を探そうとしているとき、皆さんの多くは「これを見て」と参考になりそうな資料を渡しています。部下のためによかれと思っているのでしょうが、これでは「参考になる資料はこれだ」という答えを教えているにすぎません。

皆さんが部下に教えるべきなのは、「資料の探し方」です。どのようなキーワードで探すのか、どのような得意分野の人に聞いてみるとよいか。そうしたことを教えるほうが、部下本人のためになります。もっと言えば、「どのようなキーワードで探すのか」ということから部下に考えさせ、大きくズレているようなときにだけ、「自分だったらこのキーワードで探すと思う」とアドバイスするくらいでよいでしょう。

初めから答えを教えてしまうと、部下は自分で考えられなくなります。教えてもらったそのときは、無事に参考資料を手に入れられるでしょうが、「探し方」が身に付いていないので、別のときに、部下は自分で探すことができません。

また、こうしたことが続くと、部下は、管理職に教えてもらったことが全てだと思い込みます。それ以外のこと、それ以上のことにチャレンジしなくなってしまうでしょう。これでは部下が成長するわけがありません。

そうならないために、管理職の皆さんには、常に「相手軸」で考えてもらいたいのです。これは、「相手の立場で考えて、本当にためになるか」という視点です。ここでいう「相手軸」は、皆さんにとっての部下です。皆さんには、本当に部下のためになることを考えてほしいのです。

とはいえ、相手の立場に立つのは簡単ではありません。そこでヒントとなるのは「再現性」です。

今、自分が部下に教えようとしていることは、部下が次に似たようなシーンに出くわしたとき、管理職の力を借りず、部下自らの力で再現できる方法か。部下指導をするときには、常にこの点を考えてみてください。再現性があれば、部下は自らの力で突破できるようになります。部下の成長にもつながるでしょう。

管理職の皆さんに、はっきり言っておきます。部下が、いつまでたっても管理職の力を借りなければならない状態だとしたら、それは管理職の教え方が良くないからです。

管理職の皆さん、今日から、自分の部下指導を見直してみてください。この上半期が終わる頃、皆さんが「部下のこの点が成長した!」と大いに自慢してくれることを期待しています。

以上(2019年10月)

pj16979
画像:Mariko Mitsuda

中小企業も今こそ、SDGsを理解し、実践しましょう!〜CSRとは似て非なるもの、企業成長のために/岡目八目リポート

 年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、SDGsビジネススクール「Start SDGs」を運営している株式会社グローバルイノベーションズの代表取締役である黒岩 賢太郎さんです。

 35℃を超える日々も多くあった今夏、それでもスーツの上着を着ている方々をたくさん見かける丸の内周辺。そこで、左胸の社章と、目につくのが、カラフルな色が散りばめられた【輪っか】、そうです、SDGsのピンバッジ。本当の意味をキチンと理解している方々がどれほどいるのか? そこは解りませんが、着実に浸透しつつあるのも事実、中小企業経営者に尋ねると『うちには関係ないよね〜』という返事も現状かと感じる次第です。

 そこで、中小企業になぜSDGsが今必要か? そこにフォーカスしたいと思います。

1 中小企業とSDGsについて

1)現状について

SDGsの認知度状況を示した画像です

日本における認知度、19%! 主要20カ国における平均が51.6%にかなり出遅れている現状をまず理解しておく必要がありますね。日本だけのお話ではなく世界的な潮流であり、世界共通言語になっていることをまず理解、19%の認知度の多くは大企業、実際380万社と仮定した場合の中小零細企業での現況は、

  • SDGsについて対応、アクションを行っている:1.2%→45,600社
  • SDGsについて対応、アクションを検討している:0.2%→7,600社
  • SDGsについて知っているが、特に対応はしていない:5.8%→22.04万社
  • SDGsという言葉を聞いたことがあるが内容は知らない:8.0%→30.4万社
  • SDGsについて全く知らない:84.2%→319.96万社

全く知らない会社が300万社を超えていることになること、またこの出遅れ感をなんとかしないといけないという課題感の大きさとともに、SDGsを指標にしたビジネスは中小企業にとって大きなチャンスが眠っている事を知らない会社が多すぎると黒岩さんは話します。

2)なぜ中小企業に必要か? を知る

滋賀銀行における【SDGs融資】についてのリリースを示した画像です

上記は、昨年日経新聞でも大きく取り上げられた、滋賀銀行における【SDGs融資】についてのリリースです。これは国内金融機関初の事例であり、金融面でのSDGsの大切さがクローズアップされた事象のスタートとなります。金融関係会社はほぼSDGs宣言をしている状況下において、今後ますます増えてくる事が予想されます。

もう少し大局的な目線でお伝えしますと、大企業と繋がりがある、自社の商売の根幹をなす中小企業も少なくないと思いますが、ほぼ全ての大企業がなぜSDGsに取り組むのか? SDGsを真正面から取り入れようとしているそこも大切ですし、そう本心から実践に向かっている会社も存在します、その一方で、大企業と機関投資家の関係も見過せません。

ESG投資をご存知でしょうか? 「ESG投資とは、環境・社会・企業統治に配慮している企業を重視・選別して行なう投資のことです。ESG評価の高い企業は事業の社会的意義、成長の持続性など優れた企業特性を持つと言えます」。そこに、世界の投資家が重視し始めているという状況があります。「世界最大規模の公的年金基金もESG投資を採用しており、ESGを考慮した運用は、今後重要度が高まると考えられます」。実際、「世界最大の年金基金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)では2017年に1兆円規模のESG投資を2017年に開始。今後3兆円まで増やす予定」とのこと(以上、大和証券HPより引用)。

大企業の株価がこの投資により大きく変化するリスク、そこから事業の大転換、変革も今後確実に起こってくる、その変化対応のためにも中小企業がSDGsを理解し、時代の先を読み解く力が必要であると黒岩さんは強く語ります。この変化を知ることで自社の先々の事業のあり方、あるべき姿を認識するキッカケに繋がります。

CSRもとても大事ではありますが、SDGsは事業の継続、発展、収益化にそもそも直結するものであり、過去にあったISOブームの次元が高いヴァージョンですとも黒岩さんは話します。

このゴールにおいて自社事業と関連する17のゴールを事業に落とし込むことで、事業の発展に繋げていく。中小企業におけるその具体的な事例について、黒岩さんにお聞きしました。

1. フロムファーイースト株式会社[第1回SDGsビジネスアワード大賞受賞企業]

使われれば使われるほど、売れれば売れるほど環境改善に繋がり、収益から森林を増やす100%無添加・自然素材の化粧品を販売。

米ぬかや小麦ぬかなど廃材になりそうな材料で製造し、皮膚にも優しく、有益微生物が排水までも綺麗にする商品を開発。

このSDGsビジネスであったからこそ、大手百貨店を中心に約800店舗の取り扱いへと拡大している。

2. 株式会社エコシステム[第2回SDGsビジネスアワード大賞受賞企業]

大量生産・大量消費型社会が生んだ産業廃棄物の瓦。形状の特異性などから最終処分場でも受け入れを敬遠されがちであり、処分費も高額になってきている中、瓦廃材を粉砕し、透水性特殊舗装製品や複合コンクリート製品としてアップサイクル商品を開発。

世界共通言語のSDGsビジネスだからこそ、今では南米との取引も加速している。

3. 会宝産業株式会社[第2回ジャパンSDGsアワード「SDGs推進副本部長(外務大臣)表彰」受賞企業]

自動車解体業という枠を超えて自動車リサイクルを事業に。車輌仕入れから解体・部品管理・販売までを一元管理できるシステムを屋台骨に、世界約90カ国とネットワークを形成し、ものをつくるのが「動脈産業」で、つくったものを循環させるのが「静脈産業」とするならば静脈産業のパイオニアとして地球環境と世界経済のために、その輪を広げています。

※上記だけではなかなか伝わらないと思います。上記企業のHPなどを是非ご覧くださいませ。

2 黒岩さんがSDGsを取り組むようになったワケ

1)自身の事業への疑問

阪口氏との出会いから5年、別の事業を経営しつつ勉強し、このSDGsビジネス普及に関する取り組みを決心し、行動に移して1年ほどという黒岩さんですが、なぜこの短期間で事業化に踏み込んで行えたのか。その部分についてお聞きしました。

長らくセールスプロモーションの業界に身を置いてきました。クライアントが喜んでもらうことを主眼にやってきましたが、自分の事業が【売り込み】に終わっている、例えばツールの販売に終わっている。お金の世界に喘いでいる自分に息苦しさを感じていました。未来に繋がる事業を模索している自分がいたと黒岩さんは話します。

2)阪口氏、平本先生との出会い

その頃に私の紹介で、黒岩さんにお繋ぎしたのが阪口竜也さんでした。阪口さんについてはこちらの記事をご覧ください(出典 2017年7月アナザーライフの記事より)。阪口さんは2017年の第1回SDGsビジネスアワード大賞の受賞者であり、私とは15年近いお付き合いです。当時のリリースはこちらです。

100年後の地球や子供達のことを本気で考え、実行している阪口さんに出会って、大きな衝撃だったと話す黒岩さん、自分がやってきたことで未来に繋がる事業はなにか? と考えた時にいろんな事業アイデアが生まれてきたそうです。

上記の資料で言うと3番(SDGsの考えを発展させる)、4番(SDGsを実践する)この部分が、黒岩さんが思いついた部分、その実現を話し始めた頃に阪口さんが、日本の最先端、早期のうちからSDGsに取り組んで来られた、金沢工業大学の平本先生を紹介してもらって、直接指南をいただけることになったそうです。平本先生の研究室のHPはこちらです。

そこで先生から、SDGs市場はこれから形成の段階にはいっていくところ、現在は、【理解】と【定義】が必要、市場を創造する前の段階、啓蒙活動をしていく必要性を促されたそうです。

そこから、黒岩さんは自身でSDGsビジネス普及に関する学びを平本先生から直接受け、イベントにも積極的に参加、昨年の12月からSDGs普及に関する講座、スクールの開講に向けて一気に舵を切りました。それから3カ月で準備も完了しスクールの開始へ。このスピード感で準備できたのはまさに元々本業であった、セールスプロモーションの仕事をやってきたからだそうです。

例えば、ある頭髪美容系メーカーにおいては、美容サロンへの教育ツールの開発、社内イベントの実施、美容師向けのカットコンテスト、Webプロモーションと、セールスプロモーションと言っても多岐にわたる経験、実績があってのこと、その経験がこのスクールの立ち上げに見事に活きているそうです。

3 SDGsビジネスプログラムをスタートして、そして今後

1)SDGsビジネスプログラム募集開始から見えてきたこと

最初にこちらの動画をご覧ください。

この動画は全国6箇所でスタートしたSDGsビジネスプログラムでの実際の状況です。第1期目の応募関係の数値から見えてきたこと。問い合わせ社数439社、申込者数107社うち大企業が12社(大企業の中には世界に名だたる有名ブランド、ナショナルブランド企業も参加しています)、残りの95社が中小企業とのことです。全国各地からの申込みがあり、大きな広告費も掛けていない中でのこの反応には黒岩さん自身がびっくりしたそうです。さらにびっくりするのは、中学生や高校生の発言が参加する大人以上に真剣にこのSDGsの取り組みへの理解と実践について考えていること。学生さんのプレゼンから参加する大人達の表情、スクール参加への意気込みも変わり真剣さもましていったそうです。面白いですね(学生さんの参加は無料で対応しているそうです)。

加えて、平本先生のプログラムが圧倒的であることが大きいとも黒岩さんは語ります。単純な座学のみのスタイルではなく【自発的】にどう実践するか? そこに持ち込める特殊の手法を用いたワークショップ形式の内容となっていること。そこが大きい。バックキャスト・トレードオフ・ボーダレス・トリプルボトムラインなどSDGsならではの新規事業企画要素を取り入れていたりしています。面白いことに、SDGs講師業の方も受講にきているという事実があるのは、圧倒的である事を物語っているのではないかと思います。

更にはこの「Start SDGs」はスクールの域を超えてマルチステークホルダーパートナーシップの形成が起こりつつあり、既に受講者企業同士で連携や新会社設立の話にもなってきているそうです。

2)今後の展開について

第1期目のプログラムの実施から、次への展開も見えてきた黒岩さんに今後について聞きました。

今回は座学、ワークショップによる【通学制スクール形式】で実施していますが、誰でもどこにいてもいつでもeラーニング形式でSDGsビジネスを学べる【オンラインスクール】、企業ごとに個別でスクール対応をする【社内実践スクール】、企業ごとに、社員と会社のエンゲージメントを高める側面からや働き方改革の文脈でも【社内浸透イベント】、企業がSDGs宣言を展開し、ブランディング広報・PRを具体的に行動できるように【宣言企画】や【宣言ツール製作】のお手伝いを行っていくそうです。

また、小学校でも今年からSDGsの授業が義務化されたこと、今後中学校、高校、大学へと教育プログラムの中でマスト化していくことに対応するため、【教育者向けプログラムの開発】を行い、今年の11月頃には実施に移りたいと話します。加えて、まだまだ遅れている、日本の女性社会活躍問題、男性の意識改革も含めて女性向けのプログラム開発も来年1月スタートに向けて準備中だそうです。

SDGsの実践のためにも、阪口さんのような、事業そのものがSDGsと関連する事業者、SDGsの取り組みを加速できる協力事業者とも連携していく構想とともに、学生や子供達がもっとビジネス社会と関われる機会の実現に向けた【マッチングプラットフォーム兼オンラインサロン】も具現化しようとしています。

過去に培ったセールスプロモーションの力量を思う存分、将来世代のために、未来創造のために役立てていこうとされています。私も心から楽しみにしています。

最後に黒岩さんから一言、想いを

私は、日本とともに世界を変えられると信じて努力しています。
次世代を担う子供達の100年後の未来を守れると。
SDGs…これ程までに一つのキーワードのもとに人々が動く事象があったでしょうか。
SDGsの重要な点は、ビジネスを通じて様々な社会課題を解決していくという事です。
誰でも変革者になれます。
SDGsを通じて同じ志を持った人は全て同志になります。
これまで出会わなかった、交えなかった人達と行動を共にする事ができます。

はじめてSDGsを知った人の中には、貧困をなくそうと聞いて「いやいや海外の話で、日本はないでしょ?」と思われる人もいるかもしれません。
しかし、日本の子供の7人に1人が貧困といわれています。
親の都合で1人で食事をとる子供も貧困です。
「仕事だから仕方ない」で本当に良いのでしょうか。

他にも、熱波・寒波・大規模洪水・高温少雨など日本をはじめ世界各地で深刻な災害をもたらしている気候変動など、様々な社会課題もあります。
ちなみに、世界最大手の保険会社であるアクサのCEOは「今後、世界の平均気温が4℃上昇したら損害保険ビジネスは崩壊する」と宣言しています。
「自分は関係ない」で本当に良いのでしょうか。

改めて、なぜこの事業に取り組むのか。
私は、SDGsを指標として実践に移せるビジネスだからこそ、日本とともに世界を変えられると信じているからです。

その想いの中で、
金沢工業大学 経営情報学科・SDGs推進センターの平本先生と出会いました。
平本先生はSDGsをビジネスに落とし込むロジックと手法をお持ちになられていました。
このロジックと手法を、もっと多くの人に知ってもらいたいという想いが湧き上がりました。

そして、昨今SDGsの広まりに伴って、SDGsのコンサルタントと銘打って、確かな知識・経験がない方による表面的な表現だけの支援が目立つようになったと各所から声が聞こえるようになりました。
こうした状況を否定して新たな対立構造を生み出すのではなく、実際の社会変革の経験に基づいた知識・経験の共有が今後は特に必要であると考え、SDGsを確かな知識のもとに実践に移していける人物を各地で育てていくべく、本スクール化について平本先生に監修いただくとともに企画・実行する運びとなりました。

そして、SDGs・社会課題に対する有識者への登壇依頼が殺到している状況下において、休日も全く取得できずにご家族と過ごすこともままならない程に多忙な処遇の解決。
そして、確かな知識と経験を積んだ学生に対する無償活動支援の強要を阻止すると共に、当スクールでは選抜された学生・若者に対しての受講料は無償化し、次世代を担う希望に社会で活躍できるステージを提供していくこと、女性の活躍への正当なる評価実現も当スクールの運営目的としました。

学ぶだけのスクールの域を超え、SDGsを指標としたその先にある「実践」を第一に弊社及び私は活動して参ります。

●SDGsビジネススクール「Start SDGs」
https://www.startsdgs.com/

以上(2019年9月作成)

【朝礼】「他責」の自分に気付いた管理職こそが成長できる

おはようございます。今朝は管理職の皆さんに集まってもらいました。変化の激しい時代、今後の我が社の成長には、管理職の皆さんの頑張りが欠かせません。そこで、私から皆さんにお伝えしたいことがあります。耳の痛い話かもしれませんが、これは私から管理職へのエールです。

先日、大学生時代の友人たちと食事をしました。皆、それなりのポジション、つまり、ある程度の権限を持って組織を回す管理職クラスになっていました。彼らは恐らく、並々ならぬ努力の末、今のポジションを手に入れたのでしょう。私は、そんな彼らをとても尊敬しています。

一方で、一つ気になったことがありました。それは、彼らが口々に自分ではなく、「若手」のことを語っていたことです。内容はさまざまで、「若手にもっと頑張ってほしい」といったものから、「若手の教育にもっと時間とコストをかけるべき」といったものまでありました。

私は彼らの意見自体はもっともだと思いましたが、一方で、「そういう皆さんはどうなの?」と疑問に感じました。若手に頑張れと言うのなら、「管理職はその何倍も頑張り、なおかつ若手が頑張れる環境をつくっているのだよね?」とか、若手の教育の話をする前に、「管理職は経営者から見て十分に勉強しているのか?」と思うのですが、彼らから「自分」に関する発言は出てきませんでした。つまり、彼らの話は「他責」に終始し、「自責」の要素が欠けてしまっていたのです。

この話は、若手のことだけではなく、自分の上司に対しても同じことです。管理職が、「うちの役員は頭が固くて……」とため息をつく姿をよく見かけます。それはそれで一つの感じ方ですが、やはり思うのは、「そう言うあなたは、何をしているのですか?」ということなのです。

管理職は情報への感度を高め、これだというものについてトライ&エラーを繰り返しながら、実行しなければなりません。権限とは、そのためのものです。しかも、今は環境の変化が激しく、昔と同じやり方では、ほぼ通用しません。ダーウィンの「唯一生き残るのは、変化できる者である」という言葉を、今まさに管理職は肝に銘じるべきでしょう。厳しい言い方ですが、多くの管理職は、自分の上司や部下のことを、あれこれ批判している余裕はないはずです。上司や部下の意見に流されて、都度ポジションを変えることも論外です。

管理職が下から上司を仰ぎ、上から若手を見る時代は、もう終わります。皆さんはこれまでよりも簡単に上を追い越すことができますし、逆に、簡単に下に追い越されてしまいます。今すぐ、自分の権限で具体的な行動を起こさなければならないのです。もしかすると、「失うものが多いと思っている」ことが他責につながっているのかもしれません。しかし、誠実に活動している限り、皆さんがビジネスで失うものは何もないのです。たとえ失敗しても、次で取り返せばよいことです。皆で、さらなる成長を目指しましょう。

以上(2019年9月)

pj16972
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】ラグビーに学ぶ。君たちは、勝ち方を知っているか

もうすぐ、ラグビーワールドカップが、この日本で始まります。ラグビーファンはもちろん、ラグビーをよく知らなくても、4年前のワールドカップで、日本代表が強豪南アフリカ代表を倒したあの劇的勝利は、記憶に残っていることでしょう。

今回の日本代表の活躍も、とても楽しみです。

4年前、日本代表を率いていたのは、エディ・ジョーンズ氏です。彼のやり方には賛否両論ありそうですが、24年ぶりにワールドカップで白星を挙げ、南アフリカ戦をはじめ、3勝という輝かしい成績を収めたのは誰もが認めるところです。

当時の日本代表の快進撃にはさまざまな要因がありますが、大きかったのは、ジョーンズ氏が「勝ち方を知っていた」からだと私は思っています。ジョーンズ氏は、よくインタビューなどで、「日本人の体格は小さいが、正しく努力すれば勝つことができる」と言っていました。だからこそ、体の大きな選手がボールを持って向かってくるのを守るラグビーではなく、常に自分たちでボールを保持して回し続け、攻め続けるスタイルを貫いたのだといわれています。そして、攻め続けるラグビーを実現するために、ジョーンズ氏は、選手たちに相当なハードワークを課したのです。

私はラグビーについてそれほど詳しくはありませんが、ジョーンズ氏のやり方は、実に理にかなっているように思えます。「勝てる方法」を考えた。そして、「そのために必要な準備」を徹底した。この2点に尽きるのではないでしょうか。

「勝てる方法」を考えるだけでは、「勝ち方を知っている」とはいえません。勝てる方法を実現するために、必要な準備を実際にやってこそ、「勝ち方を知っている」といえるのです。

ビジネスの世界も同じです。例えば営業活動で言えば、まず、「顧客を獲得できる方法」を考えます。どのような順番で話を持っていき、どのような提案をすれば、どのような難所をクリアすれば顧客を獲得できるのか。そして「そのために必要な準備」として、どのような情報を収集し、どのような資料を提出し、日ごろ、誰とどのようにコミュニケーションを取っていくか。これらを実践して初めて、「勝つ」ことができるのです。

皆さんの仕事の進め方はどうですか。行き当たりばったりで考えなし、単なる前例踏襲だったりはしませんか。失注して悔しいのなら、うまく進められなくて苦しいのなら、「勝てる方法」を考え、「そのために必要な準備」をしなければなりません。ただがむしゃらに、これまでと変わらないやり方を繰り返しても、きっと勝つことはできないでしょう。あえて厳しい言い方をすれば、それは、正しい努力ではありません。考えること、準備することを放棄した、思考停止も同じです。

皆さん、今の仕事を、改めて振り返ってみてください。「勝てる方法」も、「そのために必要な準備」も、日々担当している皆さんだからこそ、考え、実践できるはずです。「勝ち方」を知れば、皆さんは、必ず、「勝てる」のです。

以上(2019年9月)

pj16973
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「管理職予備軍」の中堅社員に伝えたい2つの話

今日は、入社3年目から5年目までの中堅社員の皆さんに集まってもらいました。皆さんは、これから先、我が社を背負って立つ存在です。中には、管理職となって部下を育て、組織を率いていく人もいるでしょう。皆さんは、「管理職予備軍」ともいえるのです。

管理職には、一般社員とは違った意識や働きが求められます。よく、「立場が人を育てる」と言いますが、いざ管理職になってから意識や働きを変えようと思っても、なかなかうまくはいきません。「管理職予備軍」である皆さんには、今のうちから管理職になる準備をしておいてほしいのです。そこで、私はこれから皆さんに、2つの話をします。ぜひ、今のうちから、管理職としての心構えを学んでください。

1つ目の話です。先日、学生時代の友人が初めて本格的な舞台の脚本を書いたので、私は仲間と一緒に見に行きました。舞台の素晴らしさもさることながら、私は一緒に見ていたある仲間の姿に感心したのです。舞台はコメディーだったので、随所に笑いどころがありました。彼は、笑いどころでは真っ先に、とても気持ちの良い明るい声で笑い、素晴らしい演技には惜しみない拍手を送っていました。つられて周りの観客も笑い、手をたたくようになり、会場は大いに盛り上がったのです。舞台後、脚本家の友人や役者が、「笑い声で場が盛り上がってやりやすかった。本当にありがとう」と口々に言っていたのが印象的でした。

私の仲間の楽しみ方は、「役者たちが演じやすい場をつくった」のでしょう。管理職にも、同じことが求められます。明るく前向きな場をつくるのは管理職の仕事です。管理職が前向きな言動でハツラツと仕事をしていれば、組織はポジティブになるでしょう。逆に後ろ向きで文句ばかり言っていれば、ネガティブな組織になってしまいます。管理職は、言動一つにも、「場をつくる」という責任があることを忘れてはなりません。

ただし、いつも、単に盛り上げていればいいというわけではありません。組織には、時に、立ち止まって考えることや足元を固めることも必要です。ここでお伝えしたいのが2つ目の話、世界的に有名なF1レーサーが言っていたことです。

彼いわく、「レーサーにとって一番大切なのはブレーキを踏む判断力」なのだそうです。その力があるからこそ、レーサーは、自分を信じて、時速何百キロものスピードを出すことができます。組織にも、ブレーキは必要です。ブレーキを踏むことができればこそ、組織は思い切って前に進めるのです。管理職は、必要とあらば率先して組織のブレーキにならなければなりません。そのためには、目の前の見えるところだけを見るのではなく、広くて高い視点を持つ努力が必要です。

中堅社員の皆さん、今日、私は管理職として大切な心構えを、2つお話ししました。皆さんが、一日も早く管理職となり、一緒に我が社をつくっていく未来を、私は心から待っています

以上(2019年9月)

pj16974
画像:Mariko Mitsuda

中小企業には【共感ブランディング】が必須です!〜時間軸を超え、深みのある共感が事業承継にも有益なワケ/岡目八目リポート

 年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、株式会社ドットライフの代表取締役である新條隼人さんです。

 私の愛読誌である『Wedge』。その2019年8月号には、いつも気付きを与えてくださる一橋大学名誉教授の野中郁次郎先生が、【「三つの過剰に」に陥った平成の日本企業 今こそ共感や直観による経営を取り戻せ】の文章を寄稿されていて、私自身感銘を受け、まさに【共感】させていただきました。その共感の深さを追求し、時間軸を超えていくブランディングを提供しているのが今回の新條さんです。中小企業における【共感ブランディング】について掘り下げ、事業承継にも有益なお話と捉えて今回はお伝えできればと思います。

1 新條さんの事業の一つanother life.について

1)私のこともすてきな記事にしてくださいました

上記は私の2年前の記事。53歳のときに今回の新條さんが運営されているサービス【another life.】にて記事にしてくださいました。記事掲載サイトはこちらです。

新條さんとは2年ほどのお付き合いで、スタートアップの世界では投資家であり、事業開発のお兄さん的存在の山口豪志さんのご紹介で知り合いました。そこからすぐにもう一度お会いしたいと思い、アポイントを入れさせていただいたことが鮮明です。

その理由は、収益性が見えない事業をよくここまでやりきっている、それでいて自信にあふれ、これからの世の中で大切な無名の個人の人生ストーリーにフォーカスし共感を生み出していることに、私自身も気付かせてもらったこと。2度目にお会いした際に私のプロフィールをお伝えしたところ、その場で『杉浦さんのインタビューがしたい』と仰ってくださいました。すぐにインタビューを表参道のカフェで実現し、この記事につながりました。インタビューのときに感じたこと、それは私の人生を丁寧に何度も掘り返してもらっている感覚、新條さんの優しいトーン、言葉遣いでありながら、私の人生ストーリーで記憶のかなたに忘れ去っていたことまで力強く呼び戻してくださったと感謝しています。深掘り感、その感性の深さに驚くばかりでした。

程なくして、私の記事が公開、その途端、大反響となりました。最近会っていなかった方々からは久しぶりに会いたいとか、全く会ったこともない方からは感動しましたという感想を寄せてもらったことから、私自身が感動したことも。

杉浦氏、新條さん、ご紹介者の山口さんの画像です

実際に、このanother life.の特徴は、読了率が圧倒的に高いこと、しかも5000文字を超える記事も多数ありながら、記事全文を読了する人が70%を超えていること。不特定多数の大量の人々に訴求するマスメディアの発信とは全く異なるものであり、点と点である人と人、個人と個人を深い共感で結びつけていく、そんな特徴があります。しかもその共感が時間軸をはるかに超えていき、テレビの世界で見られるその場の【瞬間風速】【はやり、すたり】にやきもきする視聴率競争とは遠い世界のWebメディアという位置づけで、実際私の記事リリースから2年近く経過した今年の春ごろに、記事への感想を寄せていただきました。それがこちらです。

『こちらのanother life.を読ませていただきました。人と人をつなぐことの価値を感じるひとりとして、共鳴の想いで鳴く如くメッセージを差し上げました。まことにありがとうございました。私もこれからも人と人のつながりを大切にします。信頼する気持ちや安心感、挑戦する想いを持ち歩みます。あらためてこころさせていただく記事でした。敬意と感謝をこめて』

まさに点と点がつながったことを感謝し、確信するコメントをいただきました。

2)日本の国境問題、その意識することの大切さもストーリーから

このanother life.を内閣府総合海洋政策推進事務局も注目をし、記事の作成をした経緯があります。ほとんどの日本人が意識から遠い、国境の問題。離島での人口減少問題。そこに住む人々の人生ストーリーを共有することからの共感、今まで意識することのなかった離島での生活や人生ストーリーから、日本の現実に意識を向けることにもつながっています。

東京都の青ヶ島ってどこ? と思いながらも、すてきな人生ストーリーにホロッとするような、勝手に空想の世界で映像が動き出すようなお話の数々。2年前に公開となった、山田アリサさんの記事。山田さんのストーリーはこちらです。人口165人、面積5.98平方キロメートル、東京から358キロメートルの絶海の孤島で育った山田さん、大っ嫌いだった地元で見つけた自分の居場所に共感しました。

そこから2年後にフジテレビの番組セブンルールに、この山田さんがご登場されました。

山田さんのすてきな人生経験がシェアリングされたという証しに感じますね。

内閣府総合海洋政策推進事務局のサイトはこちらです。この離島に住むみなさんへのインタビュープロジェクトを3カ月かけて取り組んだそうです。すごい経験になりますね。

また、このプロジェクトから生まれたお話には、

  • 長崎県の壱岐島で海女として働く女性の取材記事に多数の反響メッセージが届く
    その詳細はこちらです。
  • 漁師など漁業で活躍される方が、Yahooのメディアに転載される
    その記事はこちらです。

3)境遇への共感 点と点が結びついていく

私からは、私以上にすてきな人生を歩んでいらっしゃる方々を、新條さんにご紹介させていただいたりもしています。代表的な3名の方を挙げますと、転職エージェントとしてNHKのプロフェッショナルにも出演された森本千香子さん(森本さんの記事はこちら)、国内初のSDGsアワード2017大賞に輝いた阪口竜也さん(阪口さんの記事はこちら)、ベンチャーキャピタリストからキャリアコンサルタントやラジオのパーソナリティーで活躍の森清華さん(森さんの記事はこちら)がいらっしゃいます。ご縁の広がりが、このanother life.から見ず知らずの方々につながっていくことを体感した次第です(この記事をご覧になった方々から、採用への応募とか、またご縁が広がっているそうです)。

他人の人生を【ジブンゴト】となっていくことで深い共感性、高い価値観を生んでいく、マスメディアから遠い人々にリーチできていることがanother life.の価値と感じます。

最近では、マスメディア側から、このanother life.への歩み寄りも見られるようになり、テレビ局とのタイアップ、新聞とのタイアップの実績もでき始め、メディア×メディアの掛け算となり、クロスメディアの打ち出しにもつながってきました。

新聞とのタイアップ事例を示した画像です

2 起業のキッカケについて

新條さんの会社のミッションと、起業へのキッカケは密接に関係しているように思います。

『やりたいことをやる人生を、あたりまえに』

私たちは、誰もが「自分にとって幸せな人生」を歩むことができるような社会、世界を目指しています。「やりたいことが見つからない」「やりたいことを諦めた」。そんな悩みやモヤモヤを感じている人が、人生経験のシェアリングを通じて、新しい人生を一歩踏み出すキッカケを提供したいと考えています。

このミッションそのものが新條さんがモヤモヤを解き放ち、自身のやりたいことに突き進んだ結果の起業ということになります。

ご実家が和裁やちょうちんを作る【稼業】を営む中で、継ぐな、自分でやりたいことを考えてやりなさいと小さい頃から言われて育った新條さん、0(ゼロ)から価値を何か提供したいと思いつつ、自信や覚悟がなかったそうです。

転機は、大学生のときに母校の高校に講師として2年生と対話の機会があった際、講師である新條さんに救われたという感想が寄せられたそうです。新條さん自身がこの講師体験で得たものは、人がどう生きるかの根幹に価値を提供できたことに対して、やりがいを感じ、また起業という特定の選択肢に縛られることもなく、その都度、目の前にある選択肢を自分で決めて飛び込んでみる。そしていきなり起業でなく、一旦、就職を選択することに。

起業目的で就職した新條さん、1年目でいきなりリーダー格に。しかし、そのまま会社員をやる選択はなく、2年間の会社員時代はとにかく起業資金を作る期間に充てたそうです(ご本人いわく、起業資金目的の就職ではなく、その会社の【人】ベースで選択、まさにやりがい目的でその会社を選択したそうです)。そこで200万円の【資本金】を蓄え、前述のミッションを実現するための【人軸】のストーリーを表現すること、見知らぬ誰かにとってキラッと光る部分にフォーカスを当て、【事例】をキチンと出していくこと、多数の人生経験をシェアリングすることを打ち出していきました。しかも事業、企業活動として成立していくことにコミットしながら。

3 中小企業に共感ブランディングの時代、事業承継にも有効なワケ

1)中小企業での共感ブランディング

採用ブランディングの企業の方ともお会いする機会が多いのですが、見せかけだけを良くする、脚色して打ち出す、さもきらびやかな人生が待っているかのような。現実はかけ離れて、ニセブランドにだまされたと思っても気付くのは入社後、不幸の連鎖を生んでいること、見かけます。このようなブランディング企業に多額の費用を支払い、結果せっかく入社した社員が辞めていくのも事実。なんのために、誰のために会社経営をしているのか? 本当に分からなくなってしまっている経営者もいらっしゃいます。

another life.で共感を呼ぶ人生経験のシェアリングを、中小企業向けブランディングでも活用が進んでいます。嘘のないストーリーを主軸としたマーケティングで、人事、採用、広報へ展開し、企業の組織力強化を底上げするお手伝いをしています。このあたりのことはセミナーでお話をされる場面もあるそうです。

セミナーで話す新條さんの画像です

具体的な採用事例も。
コーヒー専門店に就職 独立 そしてまた人が来る

another life.の記事を見た沖縄で働いていた和田さんが、コーヒー専門店のお話、記事の中に出てくる「人のために生きるのが自分にとっての幸せ」という考え方に衝撃を受け、自分が満足していないと他人を満足させられるわけないよなという気付きを得て、手紙を書き、そこから会う、そこからそこで2年間ストーリーの主と一緒に働き、今般独立へ。茨城県で【ただいまコーヒー】を開店したそうです。人生のシェアリングがリアルに一緒に働く共感を呼び、そこから独立につながる。なんてすてきなことか。さらにその和田さんのストーリーを知った方が、その和田さんのお店で働くという共感の連鎖。就職、就社というような今までの【働く】概念を超えた、嘘偽りのない人生を共に歩みたいと思うからこその、自分で決めた【居場所】となっていると感じます。

この和田さんの記事はこちらです。

和田さんに共感して居場所を決めた神定さんの記事はこちらです。

2)事業承継も共感の時代へ

三重県の町工場に決まっていた内定を蹴って、自身の父が経営する会社に入社することを決めた野見山さん。入社以来退職者は1名も出していないそうです。この野見山さんが活用したのが、another life.とマスメディアです。

野見山さんのanother life.の記事はこちらです。

野見山さんのテレビ動画はこちらです。

Q.マスメディアタイアップ実施後、自社内、社外に変化はありましたか? もしあったならどんな変化、効果があったか教えてください。また、ドットライフ社への期待、上記以外に感じたこと等々教えてください。

A.社外的には、等身大のストーリーを語ったことにより親近感が湧いた等と言われました。
今後の期待としては、今まで世の中で認知されていないけれども、必死に働いている方にスポットを当ててくれると思います。

杉浦氏、新條さんの画像です

4 今後について

another life.や会社が、ニュース配信をしている共同通信社のような存在、しかも【人軸】とした配信を行う事業で、いろんなメディアや企業で活用される事業体を目指したい、前述の国境の島のストーリーのような地方活性化の文脈でも取り組んでいきたい、人生ストーリーを発信していく中で、シンデレラを輩出するようなこと、シンデレラストーリー自体を自分たちで巻き起こすことにもチャレンジしたい、と幅広くお考えです。

新しいことへのチャレンジ、答えのない世界に喜んで飛び込んでいくそのお手伝い、個人が主体の誰かの価値をみんなの価値に変えていく、そこに自分たちの居場所を見いだしていきたいと新條さんは語ります。

私もこの価値観への共感がますます大切な時代に入っていくと感じます。なにかしら新條さんたちとご一緒できるように、私も人軸を大切にしたいと思います。

最後に新條さんから一言、想いを

新規顧客の開拓や採用向けの広報など、中小企業が事業を成長させていくために、PR・ブランディングが大きな力を発揮するシーンは多々あります。一方で、SNS発信をしても反響がない、自社サイトで記事を更新しているが工数的に継続できない、何を発信すればいいか分からないなど、効果を得られぬまま頓挫してしまうことも。another life.では、人軸のストーリー配信と、テレビ・新聞・Webでのメディア配信を通じて、これまでメディアに縁遠かったような中小企業の方々の発信をお手伝いしていきたいと考えています。

以上(2019年8月作成)