第11回 あずさ監査法人 パートナー・公認会計士の轟 芳英氏/森若幸次郎(John Kojiro Moriwaka)氏によるイノベーションフィロソフィー

かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく、失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し、「イノベーション哲学」を体系化し、皆さまのお役に立ちたいと思います。

第11回に登場していただきましたのは、上場企業からスタートアップ企業までの幅広い監査を主な業務とし、株式上場アドバイザリーを通じて成長企業が組織的経営を行うためのコーポレートガバナンス構築、ディスクロージャーのための社内体制の整備、IPOを見据えた財務諸表監査サポート等を推進されている轟 芳英氏(以下インタビューでは「轟」)です(インタビューは2019年12月時点)。

1 「仕事もそうですが、いつも楽しくないといけないと思っています」(轟)

John

轟さん、本日はお忙しいところ、本当に愛りがとう(愛+ありがとう)ございます!
お話をお伺いすることを楽しみにしておりました。よろしくお願いします。

轟さんは、スタートアップ支援も積極的に行われていますよね。私が作った「エンジェルアクセラレーター」という埼玉県和光市の短期起業家育成プログラムでも、個人的に轟さんにご協力していただきました。私が教えられるのはマインドの部分ですので、スキルの部分は轟さんに多くを教えていただき、大変感謝しております。

轟さんは、お忙しい中、なぜスタートアップ支援に参加されているのでしょうか?

ジョンさん、ありがとうございます。
私は基本的に新しいもの・発想が好きですし、情熱のある若者が好きなのでそういったものに積極的に関わっていきたいという気持ちがあります。監査法人は社会的使命が高い仕事で、どうしても堅い付き合いが多くなりがちなのですが、若者の感覚から刺激を受けたいですね。そういう意味でスタートアップも好きなのだと思います。Johnさんと知り合ったイベントもそうですが、新しい発想の熱意のある人が集まる場に参画していると、楽しいです。


もう1つは、自分の持っている知見を、社会や若い世代に還元したいという思いがあります。私は会計分野のプロフェッショナルとして長年ビジネスの世界にかかわってきたので、そこで培った知見を若い世代に還元したいですね。

John

轟さんのように、情熱を持って、蓄えられた知見を還元してくださる方がいらっしゃるからこそ、次世代が進化していくのだと思います。


そして、素晴らしいキャリアやご経験をお持ちなのに、若者にも優しく、常に自然体で接してくださいます。そして、いつも本当に楽しそうにされていらっしゃるのが印象的です。若者に懸ける想いがあるのでしょうか?

仕事もそうですが、いつも楽しくないといけないと思っています。私は若者に接している時間が楽しいですね。若い世代に何を期待しているかというと、「将来はもっと元気な日本になってほしい」という思いがありますので、将来を担う若い世代に頑張って活躍してもらいたいと思っています。

John

私も同じ想いです。様々な大学などで講演させて頂くことがありますが、学生さん達を少しでも元気にして、将来活躍してもらいたいという想いがあります。轟さんからみて、どのような若者が特に面白いと思われますか?

仕事柄かもしれませんが、感性が研ぎ澄まされているといいますか、自分に無い感性を持っている人に会うと、面白いと思います。

John

確かに、独自の感性を持つ若者は、魅力的ですよね。
次に、轟さんが今取り組んでいるお仕事についてお話していただいてもよろしいでしょうか。

私は公認会計士で監査法人に所属してまして、監査が主な業務です。会計監査という仕事ができるのは、公認会計士の資格を持っている人あるいは監査法人だけです。まず、会計監査について簡単に説明したいと思います。


上場企業は発表する決算の財務諸表に対して、監査証明を付ける必要があります。厳密な表現ではありませんが、わかりやすさを優先して説明しますと、監査証明がないと、会社の経営層が自らの会社の決算について表現をするときに、必ずしも会計について詳しくないこともあり間違ってしまったり、たまにはちょっと見栄を張ったり、一般的でない言葉で表現してしまったりする可能性があります。


上場会社の場合、第三者である株主が投資をしています。投資家が実情をよく知らない会社の財務諸表を見て、「良さそうな会社だ」と思って投資をしたのに、間違っていたり見栄を張ったりした状態であることが分かると、「違ってたの?」「騙された!」などとなってしまい資本市場が縮小してしまいます。


そのため、会社とは独立した第三者の公認会計士が会計監査のプロとして、株主や潜在的投資家に代わって会社の状況をチェックして、「会社が公表している財務諸表などは信じるに足るものですよ」と証明しています。市場で皆さんが株式を買うときに、安心して買えるように証明書を付けるのが、公認会計士の仕事なのです。


私は皆さんが知っているような大きな会社の監査もしていますが、個人的にはこれから上場していくような会社を応援したいですし、若者と一緒に仕事をしたいと思っていますので、今はIPOを準備している会社の会計監査を主に行っています。

John

轟さん、愛りがとうございます。轟さんのような公認会計士の方々が会計監査を行なってくださるお陰で、投資家達は安心して投資を検討することが出来るのですね。


責任重大なお仕事ですし、新人のころは、緊張されたのではないでしょうか?

もちろん緊張しました。先輩たちとチームで仕事をしていましていろいろ指導してもらいましたが、監査する会社の方に依頼や質問をするたびに怖かったです。「若造が適当な質問を…」なんて思われるのではないかとひやひやしていました。

John

監査は同じような仕事内容を繰り返すことが多いのですか? それとも、担当する会社によってプロセスが違ったりするのでしょうか。

公認会計士の良いところは、ずっと同じ会社の監査をしているわけではない点です。仕事としては監査であることには変わりませんが、さまざまなクライアント、さまざまなプロジェクトを担当します。


例えばメーカーの担当になれば、製品がどのように開発され製造されているのか、工場や事業部の管理がどのようになされているのかなどが学べます。私は保険会社も担当しましたが、それまで保険に加入していたものの、保険ビジネスの仕組みは分かっていなかったことに気付きました。保険会社を担当することで、保険の役割や、保険料を集めるところからはじまり、それがどのように運用されているのか、事故後の保険金の支払いなど一連の流れを知ることができました。そのようなことを知るのは、ちょっとした感動ですよね。監査の仕事をしていると、さまざまなビジネスや会社を知ることができます。

John

これから上場を目指す会社を手伝う際も、いろいろなビジネスを理解していることは強みになっていますか? どのようにアドバイスをしているのでしょうか?

コーポレートガバナンスの構築やディスクロージャーのための社内体制の整備に関しては、私の本業の一部になりますので、アドバイスできることはたくさんあります。また、社長や経営層とお話をする中で、「こちらのほうが良いのではないでしょうか」などのちょっとしたアドバイスをすることもあります。
そういう意味では、大企業を知っている公認会計士は、ベンチャー・スタートアップの会社の方々に、将来像を見据えた話ができると言えます。

John

お仕事柄、轟さんはスタートアップの10年先の姿を見ているわけですからね。

そうですね、私は「大きくなった会社はこういう組織になっています」ということを知っていますので。スタートアップの経営者に、大きな会社を目指すなら何をすべきかをコメントすることができます。例えば、50人の会社の社長が従業員にメッセージを発信するのと、1000人、1万人の会社の社長が従業員にメッセージを伝えて組織に浸透させていくのでは、伝える仕組みが違います。従業員が100人になれば、社長の目が届きにくくなります。1000人になったら、フロアも分かれるので、社長だけでは絶対に目が届かなくなります。

John

実際に大きくなった企業の内部を知っている人の言葉は、教わる側もとてもありがたいですよね。今度、「それぞれの企業規模に合わせた社内メッセージの伝え方」をテーマにご教授いただきたいです。私自身もとても興味があります。

先ほど、轟さんは、若いころ先輩方とチームで仕事をしていたというお話がありましたね。今は、轟さんがさまざまな場面で組織を率いる立場にいらっしゃいますが、公認会計士として仕事をする上で、いいチームの作り方やプロジェクトの動かし方について教えて頂けますか。

どのようなチームもそうですが、メンバーそれぞれの個性を理解してチーム作りをして、仕事の分担の振り分けをしていくことが大事だと思います。あとは、風通しのよいチームにしていくということも重要ではないでしょうか。

John

適材適所を意識したチームづくりですね。チームの風通しを良くするために、具体的にどのようなことを心がけていらっしゃいますか。

さまざまなやり方があると思いますが、私のやり方は、メンバーとフランクな付き合いをするというものです。体育会系みたいに上から下まで厳しい関係を作るのも1つのやり方ですし、否定はしません。それでチームが効果的に機能するのであれば、よいと思います。しかし、私の場合、そのやり方は私のキャラに合っていないので、やりません。私は場を盛り上げていくタイプですから、冗談を言いつつ、話しやすい雰囲気を作っています。

John

さすが、轟さん、素晴らしいですね! 普段から話しやすい雰囲気がないと、相談もしにくくなりますし。問題を若手の方が一人で抱える事になると、解決までに時間がかかり、会社にとっても望ましくないと思いますね。轟さんの方法は、若い方々に取っても安心して一緒に働きやすいと思います。

ありがとうございます。若い人たちも、やりやすいと言ってくれたり、一緒に仕事をしたいと言ってくれたりしていますね。嬉しいことです。


自分で言うのも変かもしれませんが、組織内で私は、「パートナー」という肩書がついたことで「雲の上の存在」だと言われ、若い人が近寄り難くなってしまいました。雲の上じゃなくて、若い人みなさんの隣にいますよ、と言いたいです。

John

「I’m your partner.」ですね!

そうですね! まさにそうなのです。私の発言というのは、自分が思った以上に強く受け止められてしまうので、柔らかく言うようにしています。そこが会社勤めの管理職や責任者の怖いところ、気をつけるべき点だと思いますね。

John

パートナーになって、轟さんの中で何か変わりましたか?

責任の重さといいますか、プレッシャーはものすごくあります。逆の意味で言うと、自分の裁量が増えるのは楽しいです。自分で物事を動かせますので。

John

自分の意思決定の範囲が広がることは、モチベーションにも繋がりますね。私も、自分で考えて新しい取り組みを行うことが好きなので、そのお気持ちはよくわかります。

2 「『学問とは自分のためではなくて、世の中で使うもの、役立つものを学ぶものではないか』と思うようになりました」(轟)

John

轟さんが公認会計士になった経緯についてお聞きしたいと思います。なぜ、公認会計士になろうと思われたのでしょうか。

私は平凡な学生時代を過ごしていました。ただ、将来どうしようかなと考えたときに、好奇心は旺盛なので、失礼な言い方になるかもですが、一つの会社でずっと過ごす会社員は向いていなといと思いました。そのときにたまたま出会ったのが、会計や簿記だったのです。

John

会計や簿記が面白いと感じられたのですね。

はい、面白かったですね。高校の数学は覚えることが多くて面白くなかったのですが、小中学校の算数の世界は楽しいと思っていました。数字合わせみたいで、パズルのようですから。簿記の世界も同じで、すごく論理的なので、好きになりました。学生時代は勉強が大嫌いだったのですが、簿記はすんなりと頭に入ってきて、面白かったですね。

個人的な意見を言わせてもらえば、僕らが受けてきた教育は「なってない」と思います。何のために数学を学ぶのか、歴史を学ぶのかといった、学ぶ意味を教えてくれなかったのです。「勉強しなさい」とだけ言われても、「なぜ?」との疑問が生じてやる気にはなれません。私の場合、表立っては反抗していませんが、心の中ですごく抵抗していました。

John

私も10代の時は、「何のために勉強するのか」がわからず、ボクシングや絵画にばかり打ち込んでいる時期がありました。どうして良いのか分からずに、光となる出口を求めていましたね。明確な目標を立てるには、心がワクワク、ドキドキする真の目的が必要ではないでしょうか。


轟さんにとっては、もやもやした中で会計や簿記がしっくりきたのですね。

はい。会計や簿記を学んだときに、これは商店や会社で使うものだし、実際の世の中の役に立っている学問だと分かったのです。

John

勉強が無駄にならないと。自分が学ぶ事によって、世の中の役に立てるんだという実感が得られたわけですね。しかも、会計や簿記は論理的で、轟さんの性格にも合っていたのですね。

そうです。貸借対照表は、左右で数字が一致するので検証もできます。当時は経営が何なのかは分かりませんでしたが、商店や会社が自分たちを表現するものとして数字、簿記を使うということは分かりました。簿記が実際にどのように使われているかも理解していませんでしたが、何のためにこれが存在するのか、ということは分かりました。

John

健康診断表が人の健康状態を表すように、貸借対照表は会社の状態を表しますよね。

そうなのです。そう思ったときに初めて、「学問とは自分のためではなくて、世の中で使うもの、役立つものを学ぶものではないか」と思うようになりました。

John

「自分のためではなく、世の中のために学ぶ」というのは素晴らしいお考えですね。学問は、世の中を見渡すツールだということですね。

その後、公認会計士の資格を取得されたわけですが、これから公認会計士を目指す人達に向けて、良い勉強法や必要な考え方などのアドバイスを頂けますか。

公認会計士は難関資格と言われますので、合格するためには根気強く取り組む必要があります。知りたい意欲、つまりモチベートを高め続けていくことが大切です。試験に受かりたいというモチベートもあると思いますが、私は試験に受かりたいだけではなく、「会計の学問や商業が面白い」というモチベートがありました。簿記は馴染みやすく会計学や財務諸表論は面白かったですし、経済学も世の中のことの分析なのかなと思い比較的面白かったですね。

John

面白いというのはいいことですね。子どもの頃から会計を学ばせることは、ビジネスマインドが養われて良いかもしれませんね。

そうですね。簿記は中学校くらいからみんなに教えてもいいかもしれませんね。

John

学んだ知識を活用してお小遣いのやりくりを考えても面白いかもしれませんし、身近な事と繋げて会計に関する知識を学び、「稼ぐ」という感覚が身につけられると良いと思います。私は3歳の時に、母の作った料理が美味しかったので、それを箱に詰めて近所の小料理屋の大将に売りに行きました。その時の体験が、自分でビジネスを生み出す楽しさや、人を喜ばせることがビジネスに繋がるということに気づかせてくれました。子どもだからといって、ビジネスの話はまだ早いと思わずに、世の中の役に立つ会計などの勉強や体験をどんどんさせてあげたら良いと思います。

3 「世の中やビジネスが変わるきっかけになるような新しいテクノロジーが出てくるという情報は気になります」(轟)

John

現在、轟さんはさまざまな会社を支援されていらっしゃいますが、どのような場面でやりがいを感じますか?

私は単純で小さなことでも感動するタイプなので、仕事で携わる多くの会社でやりがいを感じます。
本当なら、既に大企業からスタートアップまで様々な会社を見てきているので、公認会計士になった頃と比べると、新しく担当するクライアントから得られるものは小さいし、喜びも少ないはずなのですが、実際はそうではありません。

轟氏の画像です

例えば、メーカーのビジネスモデルや業務内容については過去の経験上、このメーカーであればこうだろうと、ある程度想定できてしまいます。「大人の変な先入観」で見てしまうわけですね。でも実際にその会社に行ってみると、「在庫管理はこうしているのか」「この商品はこうやって出来ているのか」といった、細かいことかもしれませんが、知らないことや、感動があります。ですから、いまだにどのような仕事でも、やりがいを感じます。

John

それはとても素晴らしいことだと思います。経験を重ねるごとに、感動するポイントは変わっても、常に新鮮な驚きがある。心がピュアなのですね。

ありがとうございます。そうですね、おそらくピュア、単純だと思います。
ただし、感動のレベル感は会社によって異なります。イノベーションのような、全く新しい世界を見聞きたときのほうが、感動のレベルは圧倒的に大きいですね。例えば、Fintech、宇宙ビジネス、5Gを使った動画ビジネスといった、今までになかった世界の将来像を知ったときには、監査そっちのけで話を聞いてしまいます。

John

轟さんご自身でクライアントを発掘することもあると思いますが、どのようにして良いスタートアップ企業を見つけていらっしゃるのですか?

一番多いのは、信頼できる知り合いの方に紹介していただくケースですね。自分の目利きは完璧だとは思っていませんので、いろいろな人の話を聞きます。そして、「そういう考え方もあるのか」と感じたものを、自分なりに幾つか重ね合わせていくと、この分野は面白そうだとかスケールしそうだとかというのが見えてくるのです。

John

今はどのようなビジネスが1番面白いと感じられますか。

Fintechや、AIを使ったビジネスなどに興味がありますが、個人的に今、1番面白いと思っているのは宇宙ビジネスです。

私は子供の頃から宇宙に対して憧れがありましたし、つい数年前までは宇宙の分野は国を挙げて研究をしている段階で、ビジネスとは程遠いものでした。ところが、イーロン・マスク(スペースXの共同ファウンダー兼CEO)などが出てきて、宇宙の分野に新興企業が携わる時代が少し出てきたときに、私は「絶対にこれだ」と思いました。

これまで、電力会社やガス会社などのインフラ産業の監査も担当してきましたが、そうしたインフラ産業の世界にもいずれはベンチャーやスタートアップが入ってくる時代が必ず来ると思っていました。実際に現在はそのような時代になってきていますが、壮大な夢物語みたいな宇宙の分野にベンチャーがビジネスとして取り組みはじめたのはわくわくしています。

John

私も宇宙プロジェクトに携わったことがあり、未来を作ってると思うととてもワクワクしますが、膨大な資金が必要ですので、事業化させることは非常に難しいですね。

サステナブルにならないとビジネスとしては成り立ちません。今は、新たなビジネスがいろいろと出てきていていますが、その中でも、例えばシェアリングビジネスはみんなが便利に継続して使えるといったサステナブルだからこそ広がっているのではなかいと思います。


宇宙分野も、かつては皆がビジネスから程遠い世界だと思っていました。しかし、イーロン・マスクが出てきた後にマネタイズのモデルがいくつか出てきてますので、私は宇宙ビジネスもいよいよサステナブルになると思いました。

John

宇宙ビジネスは今はステップ1で、これからが本番、夢がありますね。

先ほど、スタートアップを発掘する際も、いろいろな人から話を聞くようにしているとおっしゃっていましたが、情報収集する際に一番気をつけている点は何でしょうか。

既成概念で物事を考えるのでなく広くいろいろな方の話を聞き面白いと思えることを見つけるようにしています。特に、単純に自分の興味でもありますが、世の中やビジネスが変わるきっかけになるような新しいテクノロジーが出てくるという情報は気になります。例えば、5Gによって通信速度が格段に変わるという話を聞くと、どのように生活やビジネスに影響するのかが気になります。

4 「誠実でも、アグレッシブでないとダメですよね」(John)

John

轟さんがお手伝いをしてIPOまでたどり着いた会社については、最初から会社の組織づくりなどを手伝われていたのですか?

そういう会社もありますし、途中から手伝っている会社もあります。

John

スタートアップを手伝っていて感じた、良い会社とはどのような企業でしょうか。また、上場したほうがよいのか、中堅でオーナーシップを保ったまま経営したほうがよいのか、判断が難しいですよね。

会社の経営者がどこを目指すのかによると思います。オーナー企業のまま上場しなくても、資金調達が円滑で、ブランド力もあり、海外への足がかりもあるという会社は、良い会社だと思います。

一方で、IPOを行うことで新規にマーケットに出ていった会社は、信頼・信用が上がるので、新規の取引や人材募集の際に大きく有利になり、IPO前とは全然違うのではないかと思います。

以前、IPOのお手伝いをしたある社長に、「上場して何か変わりましたか?」と聞いたときに、その社長が1番嬉しそうに言ったのは、「従業員が喜んだことです」でした。ある従業員は、「親から、『一流大学に入れたのに、よく知らない、いつ潰れるか分からないベンチャーに勤めてたけど、上場会社に勤めることになったんだ』と、すごく喜んでくれました」と言っていたそうです。考え方はそれぞれだと思いますが、上場会社には、上場しているという信頼度がある。上場すると、会社のステージが変わるのですね。

John

上場=持続可能になると、家族は思うのでしょうね。「上場会社なら、リストラや倒産はほとんどない。安心だ」というように。

まさにそうですね。親御さんだけでなく、従業員の配偶者も喜ぶそうです。IPOした社長からそうした話を聞くと、「やはり会社が成長しIPOするってことはいいな」と思います。

John

そういう見方もありますね。本当は会社の大きさではなく、その人にとって本当に仕事が楽しくて、自分の価値を活かせて、働きに見合った対価がもらえているかどうか。それが大切だとは思うのですが。

そうですね。価値観だと思います。昭和の時代からの人たちは、世の中の大きな存在として大企業があり、いわゆる「3高」の時代でした。でも今は時代が変わっていますから、その価値観が合わなくなってきています。

John

逆に、IPOがうまくいかなかった会社の失敗から学んだことはありますか? 例えば、公認会計士の目線で見て、このようにやればよかったのでは、と思うこともあるのでしょうか。

よく話していることですが、IPOが目的になってしまうと失敗だと思います。真の目的意識が薄いまま「IPOができるときにしておくべき」と考えるのは、会社、創業者、社会またマーケットにとっても、メリットはないと思います。それよりも、本当にIPOが必要で、IPOのメリットをしっかりと分かった上で、IPOをしたほうがよいと思います。IPOには、やるべき時期というものがあります。

John

IPOは出来るからするというものではなく、目的を達成するために必要だからするものなのですね。ちなみに、「やるべき時期」にきた会社とは、どのような会社だとお考えですか。

次のステップに行くために資金や人材といったリソースが必要な会社だと思います。それには、将来のビジネスの種がちゃんと会社の中にあることが重要です。「今はこのビジネスで会社が回っているけれど、ここの開発の部分に資金や人材を加えると売り上げが10倍に膨らむ」という将来像を描けていることが必要になるわけです。

会社にとっては、特に資金調達のための多様なツールを持っているのは有効なことです。金融機関から借入による資金調達もできるし、IPOをしてマーケットからの資金調達もできるという、「武器」をたくさん持っている方が、会社としてはよいわけです。

John

ビジネスの将来像を描けていないと、IPOがプラスに働かない可能性もありますね。どのような会社がIPOをすると、デメリットが強く出てしまうと思われますか。

会社にIPOをするメリットがあるのか分からないのに、ブームに乗ってIPOをした会社や、投資家にどうしてもIPOをするべきだと言われてIPOをした会社などですね。次のビジネスがない、もしくはあっても不確実性が高い会社がIPOをしてしまう場合です。IPOをする前のビジネスだけでその後が続かない会社は、頭打ちになってしまいます。

John

ナンバー2以下がどんどん辞めていって会社が不安定な状態になってしまったり、いろいろなアライアンスを組んで無理矢理プレスリリースを出すけれども、何もサービスは生まれないという会社もありますね。

たくさんの上場支援をされてきた轟さんが感じた、上場できるスタートアップ企業の条件を教えていただけますか。

会計士目線でいうと、経営者の誠実性は絶対に必要な条件だと思います。いい加減な人は、ビジネスの管理にしても、人との付き合い方にしてもいい加減になりがちです。こういう会社は、どこかでほころびが出てくると思います。ただし、誠実性と保守的であることとは違うと思います。

John

経営者は、誠実かつ、アグレッシブという二面性があると良いですね。私も父から「仕事には誠実さが大切である」と教わりながら育ちました。経営者に誠実性がなければ、その企業は本当の意味で社会に貢献することは難しいとも思います。中小企業の経営者にも、有名ではなくても誠実に働いている方々がいらっしゃいますし、経営者として素晴らしいことだと思います。

そうですね。そして、経営者や会社、製品やサービスの魅力も大切です。取引というのは、1人がお金を払って、1人がお金をもらうわけですよね。お金をもらう人が嬉しいというのは分かりやすいと思いますが、お金を払う人にどのような喜びがあるのかというのが大切だと思います。お金を払った人も喜べないと、ビジネスは成立しないわけです。例えば、私はAppleの商品をたくさん愛用してますが、買っただけで嬉しいです。こういう買う人も喜ぶ製品やサービスを創れる人・会社は、やはり魅力的なのだと思います。

John

使いたい、身につけたいと思わせる魅力を自社サービスに与えられるということは凄いことですよね。「買っただけで嬉しい」と感じさせるなんで、人を幸せにする魔法みたいです。魅力を生み出す能力は、経営者に取って重要ですね。

そうです。上場できるスタートアップ企業の経営者は、まさに魅力的なのです。誠実性があって、魅力的なことを話す経営者には、私も惹きつられますし、周りの人たちも惹きつけられることで社内外によいチームができています。こうした会社・チームには、「将来、IPOまで行けるな」と思わせるものがあります。

John

成功するスタートアップ企業のファウンダーやCEOは、皆さん尖っていて、一度会うだけで忘れられなくなる強い印象を与えてくれますね。

魅力的ですし、こだわりもありますし。確かに忘れられないですね。

対談の画像です

5 「潜在意識の中にビジネスやオープンイノベーションのマインドを植え込まないと、変わらない」(轟)

例えば、語弊があるかもしれませんが、大阪の商人は面白おかしくお金を稼ぎますよね。ビジネスはあれでいいと思うのです。

John

ワイワイガヤガヤというイメージでしょうか?

そうです、ワイワイガヤガヤ、楽しくでいいと思います。日本人の一部には、お金を稼ぐのは悪みたいな考え方がまだあると思います。そういう考え方はナンセンスだと思っています。

John

私の実家は自営業をしており、世のため、人のためのビジネスであれば、お金は後からついてくるという考えがあります。「まずはギブ、ノーテイク」くらいの感覚でお客さんのために尽くすと、自然と後からお金や名誉など、様々なものが返ってくるものだと思います。

私もそれがビジネスの基本だと思っています。私の父は銀行員で堅いと言われる仕事でしたが、祖父母は自営業をやっていました。今のJohnさんの話は、祖母が言っていたことと似ています。祖母は、いま儲からなくても「みんなのためにできることをやってれば、必ず返ってくるから、それでいいのよ」と言っていました。

John

そうですね。そうしていれば、同じ感覚を持つ仲間もたくさん出来ますね。

大人になって、IPOなども見るようになってビジネスのことを知ったら、「おばあちゃんの言っていたのは、これだ!」と思うようになりました。祖母はビジネスを理論的に学んでいたわけではないと思いますが、ちゃんと商売の基本が身に付いていましたね。

John

おばあさまは何のご商売をされていたのですか?

魚屋です。地域にある昔ながらの個人商店の魚屋でした。

John

そうでしたか、私がお会いしたことのあるスタートアップ企業のファウンダーは、親御さんが経営者が多いですね。やはり遺伝もあるのかもしれません。ビジネススクールに行くのも良いですが、商売をしている親御さんの姿を間近で見て育つことが、1番勉強になるのかもしれませんね。ノウハウだけではなく、ビジネスに対する考え方も伝わりますし、良い時悪い時も肌で感じることが出来ます。

そうですね。遺伝と環境が大きいと思います。それを考えると、どうしても教育に行き着きます。IPOを増やしたいと言っていても、それを実行するのは人間です。IPOを目指すような商売感覚を持った経営者が増えていかないと、IPOは増えません。そういうマインドを持った人たちの裾野を広げていかないと、良い経営者も出てこないと思います。

John

IPOの話が、小学校、中学校のときから当たり前のように出てくることは、普通の環境だとなかなかないですよね。自分の親が上場企業の社長という人は、ほとんどいないわけですから。だからこそ、今IPOに関わっている自分たちが、若い人たちにIPOの話を伝えなければいけないと思います。

そういう意味でも、教育というのは重要です。我々が持っているIPOの知見を若い世代に伝えたいのですが、「時代が変わらないと難しいのでは……」という懸念もあります。
というのも、今の若い世代の両親は会社員であることが多く、スタートアップ企業に対する理解が必ずしもあるとは言えません。もちろん会社員として働くことも大いに成長の機会がありますが、せっかく本人に起業マインドがあってもご家族が反対して終わってしまうのは大変残念です。私たちが何もアクションを起こさなければ2世代、3世代分くらい時間が経たないと、日本は変わらないのではないかとも思います。そこで、若い世代でちょっと尖った人たちのために、とにかく私たちでIPOを盛り上げ認知度を上げていきたいのです。

John

よく分かります。それで私もエンジェルアクセラレーターを作ったのです。若い人たちに、「みんな賢いけど、ただ周囲から良いって言われるから大手企業に行くの?」と問いかけるわけです。「それが本当にやりたいことなの?自分たちで会社を作れるかもしれないよ、試してみたらどう?」と。若い人たちに起業するチャンスを与えたいし、誰もが挑戦できるカルチャーを、この日本で作りたいです。ダメだったらそれでいい。でも、まず試してみる、ということをやってみてもらいたいのです。もしかしたらできるかもしれないし、できなくてもやり続ければいいのです。一人一人が本当に望む事に挑戦できる社会を作りたいですし、自分自身の人生を切り拓き「人生の上場」を目指して欲しいと、若者に伝えたいと思っています。

ただし、そのための教育としては、単に起業家になれば良いというわけではなく、「世の中をよりよくするため」に、起業家となるのだということを教えることも大切だと思っています。そのため、エンジェルアクセラレーターでは、「愛のあるリーダーの育成」を目標として掲げました。経営者になるということは、責任も伴うのだということを自覚し、自らの人間性を磨いていくことも大切だと思います。

轟さんは、起業家育成は、どのような教育を、何歳くらいから始めればよいと考えられていますか。

私が教えられるのは、ビジネスマインドと会計です。ビジネスマインドという感性を教えるのは、幼稚園、小学校くらいから必要ではないでしょうか。

これは聞いた話なのですが、米国にはビジネスの絵本があり多くのお子さんが読んでるそうです。レモンを加工してレモネードにして高く売っていく、という話だったと思います。そういうマインドは、幼稚園から教えておく必要があると思います。

John

その絵本は、人を喜ばすと見返りがあるということを教えているのかもしれませんね。自分で価値を生み出すことが大事で、待っているだけでは何も変わらない。前に進む精神を教えているのが素晴らしいと思います。そして、子供のころにたくさんの成功事例、成功体験をさせてあげたいですね。

そう思います。そしてその成功体験を持った上に、しっかりとした知識が必要ですね。

John

それがあると鬼に金棒で、日本人もビジネスマンとしてのレベルが上がります。それだけでなく、人間力が育ち、留学する人も増えるでしょうね。
私は山口県下関市出身ですが、同じ山口県出身の吉田松陰先生の松下村塾は、現代でいうアクセラレーターだったと考えています。実際に松陰先生が教えたのはたった2年程でしたが、高杉晋作、久坂玄瑞、伊藤博文をはじめとする多くの人財を輩出していますし、海外に留学した門下生もいます。海外に出ていくマインドというのは、若い頃しか植え付けられないと思うのです。

大企業でオープンイノベーションについて講演させていただくこともあり、幹部の方ともお話をさせていただきますが、社会人だけではなく、やはり若者、そして子どもの教育から考えていかないと、日本は変わらないと思います。

インタビューする森若氏の画像です

子供の頃から潜在意識の中にビジネスやオープンイノベーションのマインドを植え込まないと、変わらないですよね。大企業の会社員になってベンチャーの発想でプロジェクトを回すときにも、ビジネスやオープンイノベーションのマインドが潜在意識にあれば、きちんと取り組めるのではないでしょうか。

John

その通りですね。ビジネスやオープンイノベーションのマインドが潜在意識にあれば、会社員になっても、中小企業の跡取りをしても、スタートアップを起こしてもいいのです。自分の性質や情熱を活かして、世のため人のために力を発揮すること。そして、それを共に喜んでくれる家族や仲間がいれば、「人生の上場」を果たすことが出来ます。社会的な上場という成功も素晴らしいですが、自分達の目指すビジョンを達成をすることも素晴らしいことです。

6 「私はイノベーションのきっかけは好奇心だと思います」(轟)

John

それでは、最後に、轟さんにとって、イノベーションの哲学とは何かを教えてください。

その質問はとても難しいですね。表現すると長くなってしまうのですが、私はイノベーションのきっかけは好奇心だと思います。好奇心が、今はない、次の何かにつながっていくのではないでしょうか。

ただ、それだけではイノベーションは生まれないとも思っています。見たものを、現実のものに置き換えることが必要です。これには、「世の中を良くしたい」「楽しさを演出したい」といった、物事へのこだわりが関わってくると思います。好奇心から入って、「これは面白い」「空間が心地よい」などと感じたことに対して、それを実現するためのこだわりが必要だと思います。

John

その通りですね。テクノロジーとマーケティングが掛け合わされ、世界中のユーザーに広まる事でイノベーションが起きると思います。人が使えないテクノロジーは、ただのテクノロジーですからね。

そうなのです。先ほどの宇宙ビジネスの話ではないですが、研究で終わってしまうのではもったいないと思います。

John

それを使えるまでに落とし込まないといけないということですよね。

そうです。その実用化、普及までのこだわりです。社会に貢献したり、社会に影響を与えたりといった、そのこだわりが重要ですよね。イノベーションとは、皆が使えて、面白い、楽しい、楽になった、社会の効率がよくなるといった、そういうものですよね。シェアリングなどもそうです。

言葉にするのが難しいのですが、自分が面白い、楽だと思っているものも、他の人が面白い、楽だとは思わないかもしれない。それが面白い、楽だと皆が思うように改良し広めることが必要だと思います。イノベーションは、いわば「好奇心の一般化」ということでしょうか。

John

好奇心を自分だけのものにせず、こだわりを持って大衆に浸透させていくことで、社会に影響を与えるイノベーションになるのですね。

ここでいう「一般化」はゼネラルではなくて、ポピュラーの意味です。好奇心にこだわりを持って、それを人気あるものに育て上げる。やはり、好奇心だけでもなく、こだわりも必要です。こだわりを持って一般の人たちに普及させることが大事なのだと思います。

John

「好奇心の一般化」。シンプルで分かりやすいですね。確かにそう思います。

今日は、お忙しいところ、たくさんのお話を聞かせて頂き、とても勉強になりました。
愛りがとうございました!

轟氏のイノベーションの哲学を示した画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

リモートワークで完結できるオンライン経理部の作り方

「働き方改革」や新型コロナウイルスの影響により、「在宅勤務」の導入が急務となっている今、バックオフィス業務の在り方そのものが事業継続のカギを握っています。

なぜならバックオフィス業務が企業の「心臓」とも言える基幹部分だからです。

エンジニアやデザイナーといったクリエイター部署は比較的「在宅勤務」への移行がスムーズに進む一方で、従業員の給与計算や会社のお金を扱う人事・経理といった部署は、部分的に移行ができたとしても、完全な在宅勤務はできないといった声を多く聞きます。

中でも経理は企業の基幹部分とも言える部署なだけに、その在り方についてはテコ入れし難い「要塞」と化している企業も少なくないのではないでしょうか。

ではなぜ経理部門はこうも要塞化してしまうのでしょうか?
この記事では、これまで100社以上の経理業務をオンライン化してきた中で見えた「要塞化された経理部」を「オンライン経理部」へ変えるために、企業が手放すべき3つのポイントについてお伝えします。

1 人の手による作業を捨てる

実は企業の経理部は、定期的に業務改善や変更を取り入れています。
 その一つが「システム変更」というものです。事業の展開スピードに合わせて、使いづらくなった会計システムを最新のシステムに変更します。

しかし、変わるのはシステムだけであって、担当者の負担や業務にかかる時間はさほど効率化できていないのが実情です。

より機能的なシステムを入れたのに、なぜ効率化が進まないのでしょうか。理由は簡単で、単に道具を変えただけで、その使い方そのものを変えないからです。

「業務フロー」は、システムが変わるたびに見直すべきですが、これをやらない企業が多く見受けられます。そもそもそれって本当に必要なフローでしょうか? と問いかけてみてください。

例えば「入力」作業。同じような内容の入力を、複数のシステムやツールへ入力している経理担当者の話を何度か聞いたことがあります。「なぜそうしているのか」を聞いたところ、入力した内容の整合性を図るため客観的にチェックする必要があるとのこと。さらに「なぜその必要があるのか」を聞いたところ、次のような答えが返ってきました。

  • 人間がやることだからどこかにミスが潜んでいるはず
  • ミスを無くすために別の角度からチェックが必要
  • 前任者から業務を引き継いだときからこのやり方だった

システムを変えるとき、真っ先に見直すべきはこのような「人の手」による業務フローではないでしょうか。

今やあらゆるシステムにはAIの学習機能が備わっています。一度の入力で、複数のレポートへ反映させることも簡単です。「人の手」によるミスを無くしたいのであれば、いかに「人の手」を加えないで済むフローを作るかが、システム移行を成功へと導くカギになるのです。

2 デスクを捨てる

「自分のデスクに行かなければ仕事ができない」。この状況が属人化という壁を強固なものにしているのは事実です。そもそも「自分のデスク」には何(どのような情報)が集まってくるのでしょうか?

クラウドシステムの導入に併せ、「自分のデスク」には何が集まるのかを整理して、デスクに行かなくても必要な情報が集まる仕組みを作りましょう。

ここで忘れてはいけないのが「自分が誰かのデスクに届けているもの」の存在です。「自分のデスク」は必要なくなったけど、「別の誰かのデスク」に集まるようになってしまうのでは本末転倒です。大切なのは「デスク」に依存しない仕組みを作ることです。

例えば、経理のメイン業務である債権・債務の管理で考えてみましょう。

債務管理では、支払請求書はメールやWebで受け取り、インターネットバンキングで支払うようにすることで、インターネット環境さえあれば「誰でも」「いつでも」「どこにいても」、債務管理に関する全ての工程が可能になります。

債権管理でも同様に、クラウドシステムを使って請求書を発行し、インターネットバンキングを通して入金を確認する仕組みに変えるだけで、自分のデスクではなくても債権・債務の業務が完結します。

「みんながバラバラの場所で仕事をしていたら、不正防止やセキュリティはどうなるの?」という心配の声もよく耳にします。確かに「人の目」による抑止力はそれなりの効力を持っていますので、管理する側の人にとっては心配になって当然ですね。

しかし、多くのクラウドシステムには「権限管理機能」がついているので、業務に携わる人の職責に応じて、利用できる機能を絞ることができます。

また、インターネットバンキングも、振込先口座登録ができる権限、振込登録ができる権限、承認できる権限を分けることができます。

この「権限管理機能」が、これまでの「人の目」の代役を担ってくれます。「権限管理機能」をしっかり整備して使うことで、内部統制やセキュリティ対策にも耐えられる仕組みが構築できるのです。

メールマガジンの登録ページです

3 小口現金を捨てる

自分のデスクを無くしても「金庫」の管理が残ってしまうと、完全なオンライン化は不可能です。そもそも何を現金で支払っているでしょうか?

従業員の経費精算の他に、光熱費、通信費といった払込伝票による支払いを現金で支払っている、といった企業が多いのではないでしょうか。今や経費精算はクラウドツールを使っている企業が増えてきましたが、最後の「支払い」を現金で精算しているといった企業が少なくないのです。

なぜそのようにしているかというと、営業職のようにほぼ毎日のように支出がかさむ従業員への負担軽減のため、都度精算してあげたいというのが一番の理由のようです。

このような場合、小口現金からの精算を無くす方法は2つあります。

1つはクレジットカードの支給です。
法人契約のクレジットカードには、従業員ごとにクレジットカードを発行することができるサービスがあります。経費精算が多い従業員へは会社からクレジットカードを支給することで、経費精算というフローそのものを無くすことができ、従業員のお財布事情にも優しい仕組みとなります。

また、光熱費やその他払込票で支払うタイプの支出は、全てクレジットカード決済に変えることで、現金の支払いを無くすことができます。

もう1つは、振り込みによる経費精算です。
経費精算が多い従業員へは給料振込とは別に週次で精算するなど、精算のタイミングを増やしてあげることで自己負担を軽減することができます。

更にクラウド経費精算ツールを使って経費精算することで、たとえ振込手数料がかかったとしても、小口現金を管理するよりもはるかにメリットがあります。

なぜなら、一度の利用・入力でその後の転記作業が無くなるからです。転記作業が無くなるということは、そこに必要だったチェック作業も無くなるので、これまで転記とチェック作業に要していた作業時間が、まるっと効率化されます。

クラウド経費精算ツールもクレジットカードを利用した場合と同様に、従業員が入力した内容をそのまま会計ソフトに取り込み、費用計上し、更には振込データまで作ることができます。

小口現金を無くすということは、その管理に要していたリソースとリスクの両方を改善することができるということになります。

4 まとめ

今回お伝えした3つの「手放すべきポイント」さえ押さえることができれば、場所や人に依存しない「オンライン経理部」は簡単に構築できます。

実はこの3つのポイント、何も目新しいものではありません。
更に言うなら、企業の担当者も十分に「手放した方がいい」のを分かっているのです。
分かっているのに手放せないのには「セキュリティの強化」「属人化の払拭」「内部統制強化」という壁があるからではないでしょうか。

人の手を離れ、業務を完全にシステムへ寄せることで、セキュリティが保たれるのか。
これまで属人化により成り立っていた業務を、AI技術と協働することで業務は維持されるのか。
完全に業務をオンライン化できても、内部統制は適正に維持できるか。

私の経験から言うと、どれもできます。
まずは、今世の中に公開されているクラウドシステムを知るところからはじめてみてください。その一歩が「オンライン経理部」のプロローグとなるでしょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

第18回 【後編】営業育成のプロが教える「成果が上がる営業組織作りの8のポイント」(後編ではポイントを4つご紹介)/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

セールス・イネーブルメントとは、「営業成果を出し続ける営業パーソンを育成する仕組み」のことで、「営業の成果起点の人材育成」という考え方です。前編の「営業が抱える課題の解決にセールス・イネーブルメントがどう役立つのか」に続き、今回の後編では「実際にセールス・イネーブルメントの仕組みをどのように整備し、動かしていくのか」を山下貴宏氏に解説していただきます。

    山下貴宏
    株式会社R-Square & Company 代表取締役社長/共同創業者
    著書「セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方」(かんき出版)

1 イネーブルメントプログラムの整備

前編では、「営業目標設定の重要性」「顧客視点での営業プロセスの標準化」について述べてきました。では、具体的に営業育成に向けたイネーブルメントプログラムとはどういうものかを見てみましょう。

1)セールス・イネーブルメントの柱

そもそも「人が何かができるようになるステップ」とはどのようなものでしょうか。
大きく3つのステップを理解しておく必要があります。

人が何かができるようになるステップを説明した画像です

  • ①学習する:成果に向けて必要な知識やスキルを学びます
  • ②実践・適用する:学習した知識やスキルを日々の業務に適用して使えるようにします
  • ③効率的に動く:動き方を習得したのち、さらに効率的に動けるようにします

イネーブルメントは、この成果までのステップに即してプログラムを整備します。

イネーブルメントの柱を説明した画像です

  • 学習する→「トレーニング」
  • 実践・適用する→「コーチング」
  • 効率的に動く→「ツール/ナレッジ」

そして、全体の進捗管理は「システム」を使って可視化します。

例えば、トレーニングは以下のようなプログラム体系です。

トレーニング例を説明した画像です

2)体系化された実践的なコンテンツはどう作るか?

トレーニングは、以下のようなサイクルを回しながら、自社オリジナルの物を提供します。外部トレーニングを活用してももちろん問題ありませんが、下記のサイクルで作成したコンテンツ(プレゼンのトレーニングプログラムなど)が自社に最もフィットして実践的です。

コンテンツ開発の流れを説明した画像です

3)社長や特定のマネージャーに依存せず、育成プログラムを社内循環させる

イネーブルメントプログラムは、ハイパフォーマーのノウハウを体系化して営業組織に循環させます。いわば、社内のベストプラクティスを営業全体で共有し、実践するモデルです。これを、システムを活用しながらPDCAサイクルを回していきます。
特定の社長のノウハウやマネージャーに依存すると、そこからスケール(拡張)しません。イネーブルメントのサイクルが回ると、ベストプラクティスが共有されるだけでなく、育成と成果の効果検証ができるようになっていきます。

また、イネーブルメントチームのメンバーは、必ずしも営業経験者とは限りません。またその必要もありません。それでも、現場の営業に価値が出せます。それはなぜか? 営業は多くの場合、他チームの営業がどのような活動をしているかが見えていません。具体的な営業ノウハウを知る機会も限られます。イネーブルメントチームは営業組織を横断し、知見を体系化して提供します。「他の営業チームが見えていない、売るための実践ノウハウを体系的に整理して提供できるところ」にイネーブルメントチームの価値があります。

イネーブルメントが社内で循環しているイメージを説明した画像です

2 イネーブルメント構築の5つのフェーズ

1)特に重要なのは最初の2つ

イネーブルメントを構築するために5つのステップがあります。

イネーブルメントの構築を説明した画像です

イネーブルメントは、「成果起点の育成」とお伝えしてきましたが、その視点から最初の2つのステップが特に重要です。ここで、取り組みが軌道に乗るかどうかがみえてきます。
最初のステップは、営業データの収集と整備です。端的にいうと、SFAの活用です。
営業パーソンごとの「達成率」「パイプライン件数と金額」「平均商談日数」「平均受注件数と金額」などが見えている必要があります。これらの指標をもとに育成テーマを設定していきます。データドリブンです。以下の3つを実践するだけで組織の営業活動が変わります。

SFAを説明した画像です

2)営業役員のイニシアチブ

セールスイネーブルメントは、テーマは育成ですが、管轄は営業に本来あるべき取り組みです。進め方としてのお勧めは、年度の営業役員の「重点取り組み事項」の1つとして盛り込むことです。
育成に取り組む必要のない営業組織というのに出会ったことはありません。育成は継続的に取り組むべき重要テーマの企業が多いはずです。
プログラムの成果を継続しオーナーシップを示していくためにも、営業役員のイニシアチブにすることをお勧めします。

そして、イネーブルメント担当者をアサイン(任命)しましょう。イネーブルメントの取り組みは本格化すると相当な業務量になります。片手間でできる業務ではありません。「いい取り組みだから、今の業務に加えてよろしく」で兼任を続けると、どこかで立ち行かなくなります。ある程度形になってきたら、専門組織化をお勧めします。

森若氏の近影の画像です

営業役員のイニシアチブについて説明した画像です

3 営業チームの作り方(イネーブルメント組織をどう作るか)

イネーブルメントチームをどのように整備していくか。
ここでは、「組織配置」と「イネーブルメントチームのメンバーのスキル要件」という観点から整理します。

1)イネーブルメントチームの組織配置

イネーブルメントチームの組織配置を説明した画像です

イネーブルメントチームの配置オプションは大きく3つあります。実際は、上図のオプション1とオプション2が現実的です。欧米の企業では6~7割がオプション1を選択しています。理由は簡単で、イネーブルメントチームは営業を支援する組織であるため、営業の配下に置かれます。

企画部門など営業直下以外で置かれる場合は、営業以外の顧客Facing部門も支援対象とするような場合です。SEやカスタマーサポートなどが含まれます。営業の配下にあると指揮命令系統の性質からコミュニケーションコストが高くなる。この場合は組織横断で支援した方が効率的であるため、企画部門に集約されるケースが多いです。

2)イネーブルメントチームのメンバーのスキル要件

イネーブルメント組織は、組織横断的な動きが求められます。育成スキル/マインドはもとより、マネジメント視点、ステークホルダーとの折衝能力など求められるスキルが多岐にわたります。私(山下氏)の過去の経験や他社事例を見ると、以下のようなスキル要件が求められます。

イネーブルメントチームのメンバーのスキル要件を説明した画像です

3)イネーブルメントメンバーを社内輩出する仕組み

イネーブルメントメンバーを確保することは実は難しいです。営業も理解し、育成も理解し、マネジメントもわかる、という人材はほとんどいません。例えば、先進企業は以下のようなローテーションサイクルを回して、自社ベストマッチしたイネーブルメント人材の育成を始めています。参考にするとよいでしょう。

イネーブルメントメンバーを社内輩出する仕組みを説明した画像です

4 最後に

前後編にわたって、近年注目を集めているセールス・イネーブルメントについてみてきました。
旧来の育成と混乱してしまう方が多いですが、最後にイネーブルメントである取り組みと、そうではない取り組みをまとめて終わりにしたいと思います。

端的にまとめると以下のようになります。育成が一過性で終わることはありません。継続して育成の精度を上げていく1つのアプローチとして、ぜひ、イネーブルメントに取り組んでいただきたいと思います。

イネーブルメントであるもの/ないものを説明した画像です

山下氏の近影の画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

【弁護士座談会】起業家や経営者向け:資金調達トラブルを防ぐために知っておいたほうがよいこと

スタートアップやベンチャーにとって資金調達は非常に重要です。しかし、お金、信用にかかわることだけにトラブルになると取り返しがつかないダメージを負うことになりかねません。

そこで、スタートアップやベンチャー支援を行っているのぞみ総合法律事務所の市毛由美子弁護士、川西拓人弁護士、劉セビョク弁護士に、資金調達トラブルに関することについてお話ししていただきました。起業家や経営者にとっては「耳の痛い話」もあるかもしれませんが、これからのビジネスにおいて少しでもご参考になりましたら幸いです。

1 創業メンバーの仲違いによるトラブルが資金調達に影響を及ぼす場合がある

りそなCollaborare事務局(以下「事務局」)

コロナ禍の影響で、資金調達に関する弁護士への相談内容に変化はありますか?

市毛弁護士

資金調達に絞った話ではありませんが、コロナ禍以降、テナントの賃料減免、雇用問題、ベンダーに対する支払い延長のご相談などが増えています。例えば支払い延長については、「不可抗力」事由にコロナ禍の状況が含まれるか否かが法的論点になり得ます。不可抗力条項の適用が難しい場合もありますので、その際の免責については「お願いベースの交渉」をせざるを得ないことなります。

劉弁護士

そうですね。
また、現状ではコロナ関連の制度融資等への需要が増えている一方で、スタートアップのエクイティ・ファイナンスはコロナ禍でストップしているケースが多いです。ただし、コロナ禍以前から進行していた投資案件は、直接面談が難しいという支障はあるものの、コロナ禍以降も粛々と進められている印象です。

川西弁護士

最近というよりも一般的なスタートアップの場合になりますが、資金調達やお金がらみで言いますと、やはり創業メンバーの仲違いによるトラブルが多いです。例えば、成長過程で離脱した創業メンバーが離脱後も株式を持ち続けているケースです。新規の資金調達時には、こうした経営に関与しない者が一定の株式を持っていることが障害となり得るのです。

劉弁護士

対策としては、株主間契約を締結し、一定の事由が生じた場合には会社や残りの創業メンバーが離脱者から株を買い取ることができる旨の「買戻条項」を設けておくことが考えられます。しかし、買取価格が明確でない場合など、裁判手続きになじまないことがあります。また、VC(ベンチャーキャピタル)が絡むレベルの会社であれば株主間契約が締結されますが、そうでなければ株主間契約は締結されていないことも多いです。

「買戻条項」は弁護士が作成に携わったほうが望ましいですが、買取価格の算定方法は業種や業態によって適正かどうかが異なるので、一律の解はありません。プロの会計士による算定であっても、客観的に公平ではないとして揉めるおそれも十分にあります。そこで、「どちらが選任した会計士を登用するか」といった内容も、あらかじめ株主間契約に含めるケースも多くなっています。

また、エンジェル投資家のような個人投資家の場合は、出資額そのものを買取価格にしたりすることもあります。ただし、会社が傾いているときでも出資額での買い取りが必要になりますので、出資額による買い取りであれば必ずしも負担が小さいということではありません。

2 スタートアップの「リスクやトラブル」は事前に専門家などに聞いておく

事務局

資金調達に際して、起業家や経営者が事前に把握しておくべきリスクやトラブルにはどのようなものがありますか?

劉弁護士

いくつかありますが、例えば、持株比率による決定事項(特別決議、普通決議、取締役会レベルなど)を認識した上で、株の分配を行うことです。投資家の経営への介入度合いの事前調整(持株比率調整や種類株の発行)も必要です。不用意に過大な持株比率を認めると、後の関係解消に本当に苦労することが多いです。

市毛弁護士

時系列的なお話をさせていただきますと、起業家や経営者が弁護士にご相談してくるのは、ビジネスのスタート時(創業時)ではなくビジネスが成熟した後になります。スタート時はそもそも揉めるほどの出来事がありませんが、この「スタート時にリスクをマネジメントしておかなかったこと」が、ビジネスが成熟した時期のトラブルを発生させる原因になっていることが少なくありません。

そのため、「弁護士への無料相談」などを使って、スタートアップやベンチャーで起きやすい法務事象やトラブルを前もって知っておくことが大切です。

事務局

確かにそうですね。スタート時に「後から起きそうなトラブル」を想定するのは難しいと思いますので、事前に弁護士や先輩経営者などのアドバイスを受けることが大事ですね。

3 契約書の「危ない条項」は立場によって異なる

事務局

資金調達に関して、将来、事業のスピードを損なうおそれがある契約書上の「危ない条項」はどのようなものでしょうか?

市毛弁護士

仰っている「危ない条項」かどうかは、経営陣の立場と投資家の立場とで違います。事業のスピードを損なうような条項は、概して出資者のリスク低減のために必要な条項です。よって、出資者にとってはリスク回避のために必須条項である契約条項が、経営陣にとっては事業のスピードを損なうリスクのある条項になります。そのどこにバランスを求めるかはそれぞれ、具体的な事情によって変わってくると思います。

川西弁護士

そうですね。
一般的に、VCとの投資契約において「定款変更、役員変更、組織再編、事業譲渡、重要な借入、資産処分、新株発行、決算期変更等」が投資家の承諾事項や一定期間以前の通知事項や事前承認事項とされているケースが多いです。投資家から投資を受ける以上は、「事業の運営に一定の制限がかかる」ことは認識しておくべきでしょう。

メールマガジンの登録ページです

 

4 いざというときの資金調達方法は……

事務局

「トラブル」とは少し話が変わりますが、いざというときのために、どのような資金調達方法を確保しておくのがよいでしょうか?

市毛弁護士

資金調達として一般的なのは、デッド(負債)とエクイティ(出資)です。デッドに関しては、金融機関からの借入や融資枠の設定、エクイティに関しては、第三者割当(新たな資本参加の他の既存株主からの追加出資による支援も含む)が一般的な方法です。

川西弁護士

現実的には、親族等からの資金や代表者個人資産の現物出資が最後の砦となりますが、あまり望ましいことではないと思います。日ごろからの綿密な資金繰り管理を心がけることが非常に重要です。

5 大変なのは人の感情や気持ちが大きくかかわるトラブル

事務局

これまでの弁護士としてのご経験の中で、「この資金調達トラブルは大変だった」というトラブルはありますか?

市毛弁護士

経営方針について意見が合わず、株主の一部が経営からも手を引き、出資を引き上げるという場面がありました。「手を引いてもらう株主に、どのような納得感を与えるか」が交渉上の課題であり、難しい点でした。

川西弁護士

冒頭にもお話ありましたが、創業メンバーの一人が株式を持ったまま事業から離脱したケースです。当該創業メンバーが転職した先から、もともとの会社の技術情報流用が疑われる新製品が販売され、紛争となったことがあります。

事務局

両方ともとても大変そうなトラブルです……。
やはり、ビジネスは人と人との話なので、感情や気持ちが大きくかかわってくるトラブルが一番やっかいなのかもしれません。

6 起業家・経営者自身が自ら学び、志を持つ

事務局

色々とお話しいただき、ありがとうございました。
最後に、これから起業する人へのメッセージをお願いします。

劉弁護士

現在は、スタートアップのCEOには意思決定における瞬発力だけではなく、リーガル等の面も含めた実務への理解が求められている印象です。実務能力が低い、あるいは実務について勉強不足であったりすると、トラブルが起きやすいように感じます。大変だとは思いますが、法務、財務などに関する情報収集や専門家との人脈づくりが非常に重要ではないでしょうか。

また、何か信用にかかわるトラブルを起こしてしまうと、次の資金調達時に問題となるケースも少なくありません。そうしたことも最初から意識しておくのがよいでしょう。

市毛弁護士

インテグリティ(誠実さなど)、倫理観(コンプライアンス意識を含めて)、リスクマネジメント能力、ガバナンス力といった点は「経営者資質」として、企業が成長し上場した後もずっと問われるところです。これらの点について、スタートアップだから足りていなかったという言い訳は通用しません。悪いレッテルを貼られる前に、これらの点についても勉強して投資家から「良い評価」を獲得することが大切です。

先に挙げた「経営者資質」が無いと判断されてしまっていると、特に上場時などには創業者は第一線から引かざるを得ません。この点については、創業者自身が、創業当初から意識を持つべきだと痛感しています。

川西弁護士

資金調達の条件やメリット・デメリットを、財務担当者まかせにせず経営者自ら理解しておくことが重要です。

また、コロナ対応融資は、仮に無利息であっても融資である以上、返済期限があることを認識しておかなければなりません。補助金申請も、要件を十分に確認し、「結果として不正な申請」とならないよう注意が必要です。

世の中全体がインテグリティ(誠実さなど)を追求する中で、やはりリーガル面のリスクは過小評価すべきではありません。経営者にもビジネス面での決定力だけでなくリーガルリテラシーを含む総合的な見識が求められていると思います。

事務局

日ごろからスタートアップやベンチャー支援を行っている先生方だからこその貴重なメッセージ、本当にありがとうございます。

りそコラでは、起業家や経営者のお役に立てるよう、スタートアップ・ベンチャー向けの法務や財務・会計などの実務系コンテンツを数多く掲載しております。少しでも皆さまのお役に立てますよう、今後もそうしたコンテンツを増やしていく方針です。よろしくお願いいたします。

以上

(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 市毛由美子、川西拓人、劉セビョク)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2021年5月21日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

即日の資金調達ができるかもしれないファクタリング。どういう会社を選ぶかがポイント

今、私たちは、未曾有の状況下にあります。新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言。それに基づく営業自粛、売上大幅減。正直なところ、今後の見通しが立てられない、運転資金が尽きてしまうといった会社も多いと思います。

こうした中で注目されている資金調達法の一つが「ファクタリング」です。ファクタリングは簡単に言うと、請求書などの売掛債権をファクタリング会社に買い取ってもらい、本来の入金日よりも早くキャッシュを手に入れられるサービスです。

深刻なキャッシュ不足に悩む中小企業の経営者や個人事業主にとって、ファクタリングは魅力的であるものの、デメリットやリスクがないか心配、どういうファクタリング会社(業者)がおすすめか分からなくて不安という方もいるでしょう。

そこで本記事では、ファクタリングについてメリットデメリットを整理した上で、最近特にニーズが増えているオンライン完結型のファクタリングなど、事例を紹介したいと思います。経営者の皆さまの資金繰りに、少しでもお役に立てれば幸いです。

なお、ファクタリングの会計処理については本サイトの下記記事をご参照ください。

1 ファクタリングとは

ファクタリングには、冒頭で紹介した売掛債権を買い取ってくれるサービスと、売掛債権を保証してくれるサービスとがあります。この記事で紹介するのは「買い取ってくれる」サービスです。保証してくれるサービスについては、本サイトの下記記事をご参照ください。

早くキャッシュが手に入る(現金化できる)という大きなメリットがある一方で、ファクタリング会社によっては手数料が高い、場合によっては取引相手にファクタリングを利用したことを知られてしまうなどのデメリットもあります。

ただし、こうしたデメリットは、どのファクタリング会社のサービスを利用するかで回避できなくもないのです。そのことをお伝えするに当たり、まずは、ファクタリングの仕組みと、メリットデメリットを整理してみましょう。

2 図解:2社間ファクタリングと3社間ファクタリング

ファクタリングには、登場するプレイヤーによって「2社間」のものと「3社間」のものがあります。2社間は、自社とファクタリング会社で売掛債権のやり取りが完結するもので、3社間は自社とファクタリング会社の他に、売掛先(取引相手)も登場します。

ファクタリングの仕組みを説明した画像です

3 ファクタリングのメリットとデメリット

3社間は2社間に比べて、現金化するまでに時間がかかる場合があります。ただし、手数料は2社間よりも比較的安い傾向です(ファクタリング会社によります)。どちらが良い悪いではなく、メリットデメリットを整理した上で利用を検討することが大切です。

1.ファクタリングのメリット

  • 早く現金化できる。特に2社間の場合、即日現金化が可能なこともある
  • 担保、保証人が必要ない
  • 売掛先が倒産しても回収する義務を負わない
  • 2社間の場合、売掛先にファクタリング利用を知られる可能性は低い

2.ファクタリングのデメリット

  • 手数料が高い。特に2社間の場合、3社間よりも高い傾向にある
  • 3社間の場合、現金化に時間がかかる場合がある
  • 3社間の場合、売掛先にファクタリング利用を知られる
  • 2社間の場合でも、売掛先にファクタリング利用を知られる可能性が0%ではない

メールマガジンの登録ページです

4 どういうファクタリング会社が一般的におすすめか

ファクタリングを検討する際に悩むのは、どのサービスを使うかです。最近ではファクタリングニーズの高まりを背景に、主に個人向け(給料ファクタリング)ではありますが、悪徳業者のニュースも聞こえてくるため、慎重に選ぶことが大切です。

一番重要なのは、やはり「信頼性」です。ファクタリング会社をいくつか挙げ、経営者仲間やメンターに評判を確かめてみるのもよいでしょう。Q&Aサイトを使って、おすすめのファクタリング会社を匿名で多くの人に尋ねている経営者もいるようです。

一概には言えませんが、次のようなところは、比較的、信頼性が高いと思われます。

  • ホームページで手数料、運営会社情報、代表者情報などをしっかり開示している
  • 銀行や、中小企業向けにサービスを提供している大手企業と連携している

5 ファクタリング会社の事例 注目は非対面のオンライン完結型

コロナ禍において存在感を増しているのが、オンライン完結型のファクタリングです。申し込みから入金まで全てオンラインでできるので、書類にハンコを押したり面談したりする必要がありません。スピーディーで手軽な資金調達として注目されているのです。

その代表例とされるサービスがOLTAで、法人でも個人事業主でも、早ければ即日、数十万〜数百万円を現金化することができます。売掛先に知られる可能性の低い2社間ファクタリングで、手数料は2〜9%と業界でも低い水準です。

銀行や大手企業などとの連携を増やしていることなどもあり、OLTAへの問い合わせは増えているようです。4月20日〜5月6日には、新型コロナウイルス感染症に伴う資金繰り支援として、初回手数料無料キャンペーンを行いました。

その他、オンライン完結型のファクタリングには、freee「請求書ファイナンス」Chatwork「Chatwork 早期入金」(両方ともOLTAと協業)、LENDY「LENDYファクタリング」などがあります。

先ほど、手数料が高い、取引相手に利用したことを知られるといった「ファクタリングのデメリット」を挙げましたが、オンライン完結型であれば、こうしたデメリットを回避できる可能性があります(サービスによります)。

6 ファクタリングの「後」に経営者がやるべきこと

コロナ禍を経験し、多くの経営者は改めてキャッシュの大切さをかみ締めています。明日、1週間後、1カ月後の会社経営や店舗運営、雇用を支えるのはキャッシュであり、それがなければ、売掛金があっても立ちいかなくなります。

困ったときはファクタリングなどの資金調達法を利用し、とにかく現状を乗り切っていくことが大切ですが、肝心なのはその後です。今後、支払いに窮することのないよう、資金繰りを改めて見直してみなければなりません。

現在、盛んにアフターコロナ、ウィズコロナと言われています。そうした世界では、さらに一歩進んで、お互いに「全て即時決済、即時振り込み」をするのが理想的ともいえるでしょう。経営者同士が相手と自分、両方のキャッシュを考えて行動する「優しい世界」が、今後は普通になっていくのかもしれません。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月21日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

パン&高級食パン市場 ”高級”には異業種からも参入アリか?

書いてあること

  • 主な読者:パン市場への参入を検討している事業者
  • 課題:人気の高い食パン市場に参入したい。とはいえ、異業種の場合、高級食パン市場の参入に際して、どのような準備が必要かが分からない
  • 解決策:本稿では、ノウハウがなくても、異業種から高級食パンのFCに加盟して参入している事例なども紹介しているので、参考にできる

1 パン製造小売業の業態について

1)パン製造小売業の分類

日本標準産業分類によると、主として食パン、コッペパン、菓子パンなどの各種のパン類を一般消費者に販売する事業所は、製造小売と製造小売でないものに分類されます。パン製造小売業は、インストアベーカリーとも呼ばれており、各種のパン類を製造し、パンの販売も製造と同じ場所で行う事業所をいいます。

高級食パンを手掛けている企業(4章で事例を紹介します)は、主にパン製造小売業に分類されるため、本稿では、パン製造小売業に関する業態やデータを見ていきます。

2)製造工程による分類

パン製造小売業は、主に次の2つの形態に分けられます。

1.オンプレミス型

原材料を仕入れて、パン生地の製造から焼き上げまでの全ての工程を同じ店舗内で行う方式です。スクラッチ方式やコンプリート方式とも呼ばれています。

生地の製造から手掛けるため、職人の確保やミキサー、生地加工機械などの設備が必要ですが、その店舗独自の製品開発が行いやすく、顧客の好みに合わせた商品が提供できます。

2.ベークオフ型

パン生地工場で作られた冷凍の生地を仕入れて、店舗で焼き上げて販売する方式です。

既に出来上がった生地を使うため、店舗で商品のアレンジがしにくい半面、オンプレミス型と比べて、ミキサー、生地加工機械などの設備が不要なので、コストを抑えられます。

3)パン製造小売業に関するデータ

総務省・経済産業省「経済センサス-活動調査」、経済産業省「工業統計調査」によると、パン製造小売業の事業所数、従業者数、年間商品販売額は次の通りです。

パン製造小売業の事業所数など

また、総務省「家計調査年報」によると、パンへの1世帯当たりの年間支出金額の推移(総世帯)は次の通りです。

パン年間支出金額の推移

パン製造小売業の事業所数、年間商品販売額が増加傾向にあります。パンを主食とするケースが増え、需要が拡大していることがうかがえます。

4)パン製造小売業で必要な許認可について

サンドイッチやハンバーガーなどの調理パンを作らず、焼いたパンの小売りのみを行う場合は、菓子製造業の許認可になります。一方で、調理パンを作る場合や、イートイン形式の店舗を開業する場合には、菓子製造業と飲食店営業の許認可が必要です。併せて、食品衛生責任者の選任も必要です。

2 パン製造小売業の業界分析

パン製造小売業の外部環境を、ビジネスフレームワークの「PEST分析」と「ファイブフォース分析」に沿って考えます。

PEST

ファイブフォース分析

パン製造小売業は薄利多売のビジネスモデルであることや、同業他社との競争が激化することで倒産を余儀なくされる事業者も増えています。こうした中で、他店舗との差異化や、パンを贈答用として購入する需要を取り込むため、原材料にこだわった高級食パンを手掛ける企業・店舗があります。

以降では、高級食パンを手掛ける企業や店舗について、販売している高級食パンの概要やFCの新規加盟について紹介します。

3 高級食パンを手掛ける企業・店舗の事例

1)高級食パンを手掛ける企業・店舗のポジショニング

ここでは、新聞記事やニュースリリースを基に、高級食パンを手掛ける企業や店舗を紹介します。なお、紹介する事例は、展開する地域や高級食パンの需要で、次のように分けることができます。

ポジショニング

2)T.H.S(埼玉県越谷市)

居酒屋やラーメン店などをFC展開しているT.H.Sでは、純生食パン工房「HARE/PAN(ハレパン)」を運営しています。

ハレパンが販売している純生食パンは、卵を使わず作られているため、アレルギーのある人でも安心して食べられるようになっています。

FCの加盟について、同社にヒアリングした結果は次の通りです。

  • FCは、飲食店経営の有無を問わず加盟を受け付けており、飲食業以外の業種のFC加盟も多い。
  • 物件は自己所有、賃貸を問わずオーナー自身で確保し、パン製造のための作業場と販売スペースを合わせて19坪程度は必要になる。
  • 物件の立地調査(周辺に既存店舗が無いかどうかなど)、物件の内装工事、店舗の開業までは3カ月程度を見込む必要がある。

3)銀座仁志川(東京都中央区)

高級食パン製造販売店「銀座に志かわ」を全国展開する同社では、商品を1種類、1サイズのみに絞り、「水にこだわる高級食パン」を販売しています。仕込みの際に、独自のアルカリイオン水を使うことで柔らかさを引きだしています。

同店舗で販売する食パンは、そのまま食べるだけでなく、お酒のおつまみや和食と合わせた食べ方をウェブサイト上で提案しています。また、贈り物や手土産用として食パンを購入する顧客の拡大を狙い、食パン専用の風呂敷も販売しています。

4)ジャパンベーカリーマーケティング(神奈川県横浜市)

ベーカリーの開業支援の中でも、特に製パン未経験者を対象としており、開業前準備から店舗デザイン、販促、開店後のサポートまでを一貫して手掛けています。

同社の代表取締役社長かつベーカリープロデューサーの岸本拓也氏は、全国で変わった店名の高級食パン専門店をプロデュースした実績があり、静岡県では、「夜にパオーン」(静岡県袋井市)や「すでに富士山超えてます」(静岡市葵区)などの店舗があります。

5)IFC(東京都新宿区)

IFCでは、焼きたて食パン「一本堂」を運営しています。一本堂では、日常的に食べる食パンを想定し、プレーンな食パンだけでなく、レーズンや小豆の入ったデザート系食パンや、食パンと相性の良いジャムも取り扱っています。

FCの加盟について、同社にヒアリングした結果は次の通りです。

  • FCは、飲食店経営や製パン経験の有無を問わず加盟を受け付けている。一本堂は、飲食店経営や製パンのノウハウが無い人のFC加盟がほとんどとなっている。
  • 静岡県内では、磐田市、沼津市、浜松市内に既存店舗があるため、静岡市内であればFCの加盟が可能。
  • 開業費用は、加盟金や物件の内装工事、機材の導入などを含めて総額で1200万円程度を目安としている。
  • 物件は自己所有、賃貸を問わずオーナー自身で確保し、パン製造のための作業場と販売スペースを合わせて10~12坪が必要になる。
  • 物件の審査や改修、機材の導入など、開業までの期間は2~3カ月程度を目安としている。

6)トルタロッソ製パン(東京都港区)

ホテル、レストラン向けの焼成冷凍パンを製造、販売しているトルタロッソ製パンでは、三重県の伊賀市にある直売所で「伊賀のおいしい水を使った高級食パン」を販売しています。

1日50本限定の予約販売で、価格は1本(2斤分)で800円(税別)となっています。

7)ドロキア・オラシイタ(大阪府大阪市)

洋菓子の製造、販売、カフェ、レストランなどの飲食店経営を手掛ける同社では、高級食パン「嵜本(サキモト)」を全国で展開しています。

食パンは卵を使わずに製造しています。曜日限定のメニューの他、2斤サイズに限らず、手土産にも最適な、4枚切り1枚入りの食べきりパッケージも販売しています。

現在、パンを製造する工房付きの店舗、販売のみを行うサテライトタイプの店舗、自社ブランドの「極美ナチュラル」専門店の法人FC加盟店を募集しています。工房付きの店舗の場合、保証金は200万円(カフェメニューを提供する場合は別途相談)、店舗面積は30坪以上(別途ストックヤードが必要)としています。

8)乃が美ホールディングス(大阪府大阪市)

高級「生」食パン専門店「乃が美」、「乃が美はなれ」を全国展開する乃が美ホールディングスでは、パン製造の原材料にバターとマーガリンを併用し、小麦粉や蜂蜜の風味を引き出すことで、おいしさを際立たせています。また、おいしさを保つため、冷凍保存を推奨しており、保存方法をウェブサイトで紹介しています。
FCは既にパートナーシップを結んでいる企業があるため、現在新規の加盟は受け付けていません。

9)パン工房 ル・カルフール-Le carrefour-(北海道帯広市)

帯広調理師専門学校直営のパン工房であるル・カルフールでは、店舗名がそのまま商品名になった高級食パン「Le carrefour(ル・カルフール)」を販売しています。通常の高級食パンが耳まで柔らかいのに対し、ル・カルフールはブリオッシュとデニッシュ生地を使うことで外はサクサク、中はしっとりとした食パンになっています。

以上(2020年5月)

pj59017
画像:unsplash

「ほめ下手」なリーダーは何から始める?/部下のやる気を引き出す「ほめ方」(2)

書いてあること

  • 主な読者:「ほめる」のが苦手、「ほめ下手」なリーダー(経営者・部下を持つ上司)
  • 課題:叱られた経験がほとんどない若手社員と良好な関係を築きたい
  • 解決策:今回は、「二言挨拶」「話の聞き方」などの「ほめる」達人に近づくファーストステップを解説

1 ほめずに「ほめる」!?

「ほめる」ことを一番狭く定義すると、「年下から年上に対して、言葉を使って良いことを言う」ことになります。ただ、この定義に縛られてしまうと、「ほめる」ことがすごく難しく感じられてしまうのではないでしょうか。私たち「ほめ達」協会では、「ほめる」ことを上記の定義に縛られず、
「ほめるとは、価値を発見して伝えること」
と定義しています。

言葉を使わずに「ほめる」ことも積極的に行っています。具体的にはどのようなことか、今回はその内容をお伝えしていきます。実は、もう既に皆さんが、無意識に実践されていることでもあるので、こんなことが「ほめる」ことになるのか!?と驚かれるかもしれません。

これからお伝えすることは、私が研修の中で、参加者の方に、まずはここからスタートしてくださいとお伝えしていることです。ほめずにほめる!「ほめ達!」の極意です。

一つ目は、「二言挨拶」(ふたことあいさつ)。すごくシンプルですが、挨拶に一言加えるということです。「おはよう!今日も元気そうだね」「おはよう、今日は寒いね!」あるいは挨拶の際に相手の名前を呼ぶ。「西村くん、おはよう!」「おはよう! 西村さん」のように。とっさに言葉が出てこない、名前が出てこないような場合には、「あっ! おはよう!」「おお! おはよう」というふうに「あっ!」とか「おお!」という一言を加えるだけでもOKです。その「あっ!」や「おお!」を言う際に、あなたと会えて嬉しい!という気持ちが込められていればいいのです。

あるいは言葉が出なくても、挨拶プラス笑みを加える。挨拶の際に立ち止まり、相手の方を向くというのも、立派な「二言挨拶」となります。パソコンを打っていた手を止めて、顔を上げ、相手の方を向いて「おはよう!」、さらにおへそまで向けて挨拶をする。すると、相手は自分がすごく受け入れられていると感じます。

挨拶とは、私はあなたの存在を認めていますよ、と伝えることです。この「二言挨拶」が実践されている職場や部署には、安心安全な雰囲気が醸成されていきます。「二言挨拶」は、相手の心の居場所を提供することでもあるのです。部署に机と椅子は用意されているけれど、心の居場所を提供しているだろうか。リーダーはこの点を自分自身に問い、ぜひ挨拶から意識して実践してみてください。

2 出会う人を味方につける話の聞き方

さらに、こんなことも「ほめる」ことになるのですよ、というのが「話の聞き方」です。話をしている方と、聞いている方、どちらが相手にメッセージを伝えているのか。話している方が、一方的に相手に伝えているようですが、実は話の聞き方で相手にメッセージを伝えることができるのです。

管理職研修で行うワークがあります。二人一組になっていただいて、片方がもう一人の方に、1分間お話をしていただきます。話し手は、自分が話をしやすい話題を自由に1分間、話し続ける。そして、聞き手は最初の30秒は、熱心にその話を聞いていただきます。

しかし、30秒経過した時点で、私の合図で残りの30秒は、相手(話し手)を完全に無視していただきます。すると、これまでスムーズに話していた人が、無視された瞬間、言葉がうまく出てこなくなります。聞き手の態度が、話し手のパフォーマンスを大きく変えてしまうのです。部下や後輩の報告に対して、要領を得ない話し方だなと思う時、自分の話の聞き方の態度はどうなのか、自分で確認してみてください。

それでは、どのような話の聞き方が良いのか。次に挙げる8つのポイントを心掛けてください。

  • 目を見る
  • うなずく
  • 相槌を打つ
  • 繰り返す
  • メモを取る
  • 要約する
  • 質問する
  • 感情を込める

実は、この8つのポイント、私たちは無意識で行っています。どんな時に行うかというと、大尊敬する人の話を聞く時、大好きな人の話を聞く時です。ただ、常に自分の部下や家族に対しても行っているかと聞かれると、どうでしょうか?

これらの話の聞き方を、ちょっと意識してみるだけで、相手との関係性が驚くほど変わっていきます。特に上記の8つのポイントのうち、「メモを取る」というのは一見すると静かなアクションですが、パワフルな「ほめ仕草」になります。「あっ、そのアイデア面白いね、ちょっとメモしていい?」と言って、実際にメモまで取ると、言われた方は、こんなことでメモを取られるのなら、さらにこんなアイデアや情報もありますよ!となります。

また最近は、年上の部下をお持ちの管理職の方も少なくないと思います。では、年上の人を「ほめる」時にはどうすれば良いのか。例えば、上記の話の聞き方のうち、「質問する」という行動で、相手を「ほめる」ことができるのです。「〇〇さん、どうやってその技術を身につけられたのですか?」「どのような勉強をされてこられたのですか?」「本もよく読まれてますよね、私にオススメの本ってないでしょうか?」「〇〇さんには、若い頃、仕事上の師匠がいらっしゃったのでしょうか? その方からどのようなことを学ばれたのですか?」。

このように質問することによって、「私はあなたのようになりたいと思っています。あなたのことをすごいと認めています、尊敬しています」と伝えることができます。イメージは、試合の後の「ヒーローインタビュー」です。

挨拶や、話の聞き方など、小さなことを少し意識してみる。実は、これが大切なこと。私たちは「微差の積み重ね」の大切さとお伝えしています。さっそく、意識して実践してみませんか。

3 手軽で貴重な心の報酬

第1回では、「心の報酬」の大切さについてお伝えしましたが、今回はさまざまある「心の報酬」のうち、もっとも手軽かつ、もっとも価値の高い「心の報酬」についてお伝えいたします。

それは何かというと「ねぎらい」です。「ほめる」というと何か水準を超えた、しかも、いいことをした時だけに行われるものというイメージだと思います。一方で「ねぎらい」は、して当たり前のことに対して、気づき、共感して、ときには感謝を伝えるもの。「ほめ達」協会は、「ねぎらい」も「ほめる」の中に含めて大いに推奨しています。仕事なのだから、給料もらっているのだから、行われて「当たり前」の行動に対して、気づき、共感して、感謝を伝える。これが「ねぎらう」ということです。部下の仕事をチェックして、間違いがなかった。そのことに対して、ミスがなくて当たり前だから何も言わない。ねぎらいなくミスを見つけた時だけ、注意をする。すると注意を受けた方は、「見張られている」と感じます。

ところが、普段から当たり前の仕事ぶりに対して、感謝や「ねぎらい」を届けていると、注意を受けた時に「見守られている」と感じるものなのです。「ほめる」や「ねぎらう」という行為は、部下に対して、しっかり注意を与えることができる関係性を作るための重要な下準備でもあるのです。

「ありがとう」の反対語は、「当たり前」です。ついつい、当たり前だと思ってしまって見過ごしてしまっていることに気づき、言葉掛けをしてみませんか?

以上(2020年3月)

pj90181
画像:unsplash

いまこそ新卒採用の大チャンスです!/激動の2020年を勝ち抜く採用戦略(7)

世界中を震撼させる新型コロナウイルスの蔓延によって、日本の労働市場は大混乱に陥っています。空前の人手不足から一転、内定取り消し報道が相次ぐなど採用環境も激変。今後、コロナ禍の影響で本格的な不況がやってくるとしたら、当然多くの企業は採用を絞っていくでしょう。

だからこそ、採用の大チャンスなのです。特に新卒採用にはチカラを傾けるべきです。連載7回目の本稿では、「採用においては景気の動向と逆張りすべし」というセオリーについて解説します。多くの企業のみなさまが、この状況に足がすくみそうになる中、それでも積極採用に打って出よう!という勇気を持ってもらえるよう、背中を押してみたいと思います。

1 コロナで採用予定の見直し

2021年春入社の新卒採用に関するあるアンケート調査によると、主要100社といわれる大手企業において、採用予定数を20年春入社より「増やす」とした企業は9社にとどまり、前年調査(23社)から大幅に減少しています。逆に「減らす」は29社と、前年の15社から倍増。この調査結果は4月20日に発表されたもので、新型コロナウイルスの感染拡大によって世界的な景気後退が進むと、採用環境はさらに悪化する可能性もあります。

こうした動きを受けて、「大卒求人倍率」も大きな影響を受けそうです。「大卒求人倍率調査」は、民間企業への就職意向を持つ学生数に対し、全国の民間企業の採用予定数がどのくらいあるのかという倍率を示す指標で、リクルートワークス研究所から毎年公表されています。
その「大卒求人倍率調査」の2021年卒版の公表が遅れることになりました。従来は毎年1月下旬~3月上旬に調査、4月下旬に公表されています。この2021年卒についても、例年通り調査を行ったものの、新型コロナウイルスの感染拡大により企業の採用計画が見直されていることから、再調査に踏み切った模様です。コロナ禍における現状に沿った数値が世に出るのは、6月下旬とのことです。

2 ジェットコースターのような求人倍率

企業のここ直近の動きからも、「新卒採用に対する企業の意欲がここまで景気に影響されるのか」ということを改めて痛感させられます。
ここで少し歴史を振り返ってみましょう。バブル期の絶頂にあった1991年、大卒求人倍率は2.86倍。就職したい学生一人につき3つの選択肢があったわけです。しかしバブル崩壊とともに大卒者の採用環境は悪化、1997年のアジア通貨危機、1998年にかけて大手金融機関破綻などで景気が急速に冷え込み、2000年卒はついに1倍を下回りました。就職超氷河期といわれる時代です。
その後、景気の回復を受け徐々に上昇し2009年卒は2.14倍と2倍を超えました。しかしここでリーマンショックが起きます。後の景気低迷を受け、2012年卒には1.23倍まで低下。ここから再反転し、第2次安倍政権下のアベノミクスもあって直近2020年卒では1.83倍と超売り手市場の様相を呈していました。

3 雇用の調整弁としての役割

なぜ、ここまで新卒採用が景気と切っても切れない関係にあるのか。それは日本型の雇用構造が大きく関係しています。先述のように空前の好況期であったバブル期などは、どこもかしこも採用を増やします。忙しくなり人手が足りなくなるので、自然なメカニズムといえます。
逆に景気が悪化し、企業業績が低迷すれば人手は余ります。とはいえ、ご存知のように日本はリストラが難しい国です。経費を減らし投資などを抑え、あらゆるコストカットに努める中、人件費はなかなか圧縮しにくいのです。
コロナの影響による派遣切りやパート社員の雇止めについての報道も散見されますが、契約期間が決まっている非正規従業員の整理ですら、実は非常にナーバスです。無期契約が前提の正社員の解雇となれば、法律的にも極めて難易度が高い。その結果、既存の社員を減らすのではなく、新しく入ってくる社員数を減らそうという動きが出てきます。こうして新卒採用に影響が出るのです。ある意味で、新卒社員は雇用の調整弁の役割を果たしているといってもいいでしょう。

メールマガジンの登録ページです

4 苦しい時ほどいい人が採れる

このように新卒採用は、景気によってその需給バランスを一変させます。好況期には採用が激化しますから、どうしても相対的にはレベルを下げてでも採用せざるをえなくなり、人材の質が下がることは否めません。逆に、景気後退によって採用が手控えられれば、いい人材が採用市場に残っていることも少なくありません。苦しい時に採用をおすすめするのは、まさに「いい人が採りやすい」からです。

しかも素材としての「いい人」というだけではありません。不況の時に採用した人こそ活躍する可能性が高いのです。その理由のひとつは教育環境の違い。不景気の中で厳選して採用された人には、企業の思い入れも強くなりがち。ていねいに手をかけて育成されることが多いために、その後の会社の根幹を支える人材へと羽ばたいてくれることが多々あります。

もうひとつは、新卒社員のマインドセットです。不況期でも採用をやめずに自分を採ってくれた会社への感謝は、大きな原動力になります。今回、内定を取り消された学生を積極的に採用しようという動きも出ました。家電量販店や外食チェーン、小売り専門店を展開するメーカーなど、次々と内定取り消し学生を採用したいと発表がありましたが、こうした会社に就職できた新卒の会社へのロイヤルティは非常に高いはずです。

5 リクルート事件で学んだこと

ここまで声高に述べてきたのは、実は、筆者である私の実体験もあってのことです。私は会社のピンチに入社した人材たちが活躍人材になることを目の当たりにしてきたのです。
私は1988年、新卒でリクルートに入社しました。人事課に配属され新卒採用の仕事に就きましたが、その年にリクルート事件が起きました。毎日のように面接をし、内定者と熱い思いを語り合っていたのですが、事件を受け、日に日に内定辞退者が出ました。結果的に入社してきたのは約半分でした。いまでも当時のことはハッキリ覚えています。

しかし、逆にいうと内定者の半分が残って入社してくれたのです。1988年といえばバブルに向かう売り手市場の時代。ほかにも入れる企業はいくらでもあったでしょう。
結果として、私の一期下に当たる代は活躍人材を多く輩出しました。少なくとも簡単には辞めませんでした。自分の代よりも入社した人数は少なかったものの、10年くらい経った時点での在籍人数は逆転していました。

いまとなっては、リクルートはグローバル規模にビジネスを展開する企業になりました。あの事件があった上でも入社してきた社員のパワーが、その一助になっている。私はそう確信しています。

6 いかなる時も人に投資する会社

このコロナ禍で先の見えない景気に足がすくむ中、採用に積極的に打って出るのは非常に勇気が要ります。しかし、ここで決断をして採用に投資し、社員全員で耐え忍んで頑張れば、再び好景気がやってきた時には、大躍進できる可能性もあります。この時期に採用した「人財」たちは、必ずや将来において会社を背負って立つ基幹人材になっていることでしょう。新卒採用においては、景気の動向とは逆張りする。活躍人材を獲得する上で、これは極めて合理的な選択なのです。

結局のところ、人材採用に対しての本気度が、本気度の高い人材を惹きつけるのです。不況でも苦境でも採用をやめない意志を持っている会社は、その時点で「人」を重要視している会社です。それは必ず伝わるのだと思います。

今回は、未来の基幹人材となる新卒採用のススメについて述べましたが、次回はある意味真逆のベクトルで、アフターコロナにおける雇わない人材活用について解説したいと思います。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

テレワーク環境でも新入社員研修を効率化する方法とは?〜集合研修→オンライン研修へ切り替え、習熟度を上げつつ研修時間を1/4へ!〜

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、庄司 啓太郎さん(株式会社スタディスト取締役COO)です。

新型コロナウイルス感染症の影響下、テレワーク!オンライン!とweb会議、クラウドツール導入に重い腰の大企業も、システム導入と距離感のあった中小企業もようやく当たり前化しだしました。しかし、このようなコミュニケーションツールをインフラ化しただけで、企業活動は大丈夫? そうお感じになっている経営者さんも多いと思います。その疑問、課題にお答えできるリリースが先日ありました。
それが、【スタディスト、テレワーク環境でも新入社員研修を効率化 ~集合研修からオンライン研修に切り替え、習熟度を上げつつ研修時間を4分の1に圧縮~】です。こちらがそのリリースです。

今回は、テレワーク環境下、完全オンライン化は難しいと思われがちな【社員研修】において、【習熟度向上】と【研修時間の圧縮】というこの両立し難いテーマを、同時に実現したスタディスト社の考え方~実践方法までをお伝えして参ります。

インタビューも終始笑顔で楽しく。右上が庄司さん

1 人材育成効率を向上させ、育成期間を短縮できる その理論、最適化モデルについて

1)スタディスト社 庄司取締役について

2010年3月に設立したスタディスト社、現在11期目がスタートしましたと庄司さん。同社創業メンバーであり、私とは6年ほどのお付き合いです。マニュアル(標準作業手順書:後ほど詳しく解説します)のクラウド化を提唱し、そのツールとしてTeachme Bizを2013年に展開し始めて7年。当初は、マニュアルのクラウド化に懐疑的だった世の中、マニュアルの存在意義は仕事の再現性を担保するためにとても重要という認識がありつつ、しかしながらそのイメージは、知りたいことがある時、書庫に行って、分厚い重い紙の束から、必要な部分を見つけ出す、それが当たり前の時代が長かった。【その場所に行かないと知ることが出来ない→非効率→場所の制約】、【知りたい部分、知りたいマニュアルを探し出す、誰かに聞く→管理→人の制約】、【いつ更新した?どれが最新?→不明確な更新→時間の制約】、この紙文化により知らず知らずに慣らされてきた【効率化を妨げる制約】を解消するためにもクラウド化したスタディスト社、現在は数千社を超えるユーザーから支持されています。現在は約100名の組織となっていらっしゃいます、私が出会った頃、まだ5~6名でした。。。感慨深いです。

2)ツールだけでは、効果は限定的なのです

web会議テレワークが常態化してきて、それはそれでインフラが整ってきたこと、歓迎すべきです。しかし、効果は限定的と庄司さんは話します。それは、テレワーク型に形式が変わっただけであり、会議の数や時間が従来と変わっていなければ、抜本的な業務変更となっているわけではない。業務プロセス・作業手順を見直す機会にしないと効果は限定的。まさにこの【業務プロセスの見直し】が骨格となります。

ツールだけでは、効果は限定的であることを説明した画像です

この見直しで【質】にフォーカスが移るとき、マニュアルの意味合いが大きくなるということだと思います。

3)人材育成効率を向上させ、育成期間を短縮できる その理論的背景について

ある経営者さんと打ち合わせの際、ご自身のお子さんに話題が及びました、『学校が始まってすぐに休校となっている子供が、与えられた教科書を1カ月で1年分終わったんですよ。好きな教科ってそんなものですね。』と話されていました。これって【予習】を自宅でやっていたことになります。学校の教室で授業を全員一緒に受けてインプットする前に、教材を事前に手にして目を通す、予習をインプットに。学校で今まで行っていたこと、サイクルを【反転】させた方が、知識定着率、スピードも向上するということなのだそうです。昨今You Tube動画を見て見様見真似で、自分でやってみたらうまく行った!ってことを耳にしますが。動画でインプット、実践してアウトプット、反転学習の方が結果も出やすい。この反転学習をスタディスト社では研修に活かしているそうです。

予習→実践のサイクルによる知識定着率向上を説明した画像です

反転学習の効果が実証されつつあるそうで、庄司さんから説明のあった資料には

  • 学習スピードが倍になった
  • 理解度確認では3倍程度の効果
  • 確認テストの合格率が大幅に上昇

このように良いことずくめという結果がでています。

反転学習の効果を説明した画像です

この反転学習の話をお聞きして、私自身のサラリーマン時代、集合研修で関東方面の研修所に集められ、ほとんどが眠い、眠い、研修を数日受けていたことを思い出しました。研修報告には、意義があった、ためになった、明日からの業務に活かしたいと書いていましたが、知っているレベル→すぐに忘れるレベルであったと思います。
ほとんどの企業研修が、知らないことを【知っている】レベルにすることで終わっていることが多い、【できる】【考えるとできる】そのレベルに達していない
スタディスト社では、【できる】が当たり前化しているので、無意識(考えなくても)に、自分でルールを決める、仕事を定義できるという、実践できる、そこから教えられる、改善できるレベルへと自然になっていると庄司さんは話します。

知ることを目的にしない。実践のための育成について説明した画像です

4)できるレベルをぐんぐん引き上げるための最適化とは?

前述の反転学習の理論を活かしながら、スタディスト社のTeachme Bizで全ての研修プログラムが完成できるか? そうではありません。スタディスト社における研修プログラムの【内容】と【手段】の最適化については以下のとおりです。すごく分かりやすいと感じました。

伝えたいことと伝達手段の最適化を説明した画像です

  • 経営理念や基本ポリシー、規則やルール、基本原理については講義、レクチャーの動画を製作準備し、受講者側が視聴する。その後にオンラインミーティングによる対話をして理解レベルを確認する。
  • 業務の手順、実技や実践能力についてはビジュアル型の手順書(Teachme Biz)で予習(インプット)し、実物により確認しながら実践していく(アウトプット)

5)業務の標準化(マニュアル化できる)割合はどのくらい?と思いますか

今までの集合研修において、ハイレベルかつ給与の高い人が準備や研修にはりつき、ものすごい時間を費やしており、それでもなかなか伝わらない、実践できないことで人材育成に苦慮している企業も実際多いと思います。前述で、【理論】と【伝えたいこと】、【伝達手段】について庄司さんに教えていただきました。最後に業務の標準化は業務割合のどの程度できるのか?業務のタイプは何タイプ?についても伺いました。

業務の3タイプを説明した画像です

いろんな業種があり、多様な業務がありますが、A:感覚型、B:選択型、C:単純型、この3つに分類されます。この業務の中でA、B、Cの割合ってどの程度ですか?と質問され、私から5:2:3ぐらいですか?と回答しましたら、全業種の平均でAが13%、BとCで87%を占めているとのこと。

業務のしくみ化を説明した画像です

この87%をしくみ化すべきであると庄司さんは話します。
スタディスト社では、現状社内で共有されているマニュアル(手順書)が4,200を超えているそうです。
【できる】が当たり前化するのも納得です。

2 スタディスト社のオンライン研修を構築した現場の声を聞きました

1)ビジネスイネーブルメント部長の坂野さんへのインタビュー

ビジネスイネーブルメント部長の坂野さんの画像です

【上記の写真が坂野さん】同社のリリースを今一度。
いくつかこの研修プログラム構築にあたって質問させていただきました。

・この研修プログラムを構築されるにあたって、注意した点、難しかった点をお教え下さい。

正直に言うと、Teachme Bizを使っての研修運営は従来から実施していたため、オフラインからオンラインへの切替はかなりスムーズに出来たと思います。ただ、運営の全てをオンラインで、というのは初だったので、オフライン時は設けていなかった終礼等の定期的なオンライン接続によるコミュニケーションは心掛けました。 反転学習を意識して、スムーズに自習ができるように教材を整備し、オンラインでの接続はアウトプットの場(プレゼン、ワーク、ディスカッション等)や、理解度チェックの場にして、習得が不十分な部分はそこでフォローするような形で運営していたので、教える・伝えるにかかる負荷はオフラインの時よりさらに少なくなったと思います。
また、Boot Camp(新人研修)に求められるのは【即戦力化】であり、オンライン、オフラインにかかわらず、「研修で学んだことをいかに現場で実践し、成果につなげてもらうか」ということを最重視して、研修構築しています。会社が求めるスピード感がとても早いので、そのスピードで戦力になってもらえるように研修すること。それが構築する上で注意している点です。

・研修を終えて、参加の方々から印象的な感想、予想外の反応はありましたでしょうか。

何をいつまでにどうすればよいのか明確で、とても初めてオンライン対応をしたとは思えないといわれました。

スタディスト社の実際の研修(トレーニング画面)の画像です

【スタディスト社の実際の研修(トレーニング画面)】

これ(Teachme Bizのトレーニング機能)はいろんな会社のお役に立てますね!とサービスの可能性を実体験として感じているとの話もありました。立ち上がり(各種検定合格までの期間)も通常より1/4へと短くなったことは嬉しい効果でした。

・その他 このトレーニング機能について特長的なこと、研修全般でのご感想についてお聞かせください。

環境の激変で教える内容も大きく変更しなくてはならない状況の中、教材となるSOP(下記に説明資料を添付しています)やコース内容をすぐに更新できるのは本当に楽でありがたかったです。オフラインだと、SOPを教材にしつつもついOJT的に教えていたこともありましたが、オンラインになると自習のための体制整備を優先するので結果、より反転学習も進み、効果的な研修を実施することが出来ました。 新人研修担当としては、急遽オンラインで運営となった時Teachme Bizがなかったらと思うとぞっとします。

SOPを説明した画像です

Teachme Bizのトレーニング機能の良さは学んで欲しいものを一覧化出来て、その出し入れがリアルタイムで行え、かつ、進捗確認もリアルタイムで出来ることなのでオンラインで寄り添いやすさ満点です!

と自社プロダクトの特長をしっかりお話しくださいました。

2)庄司さんからメッセージ

「業務手順の伝達」は、あらゆる企業の中で脈々と行われています。そしてその方法は、直接口頭で教える、マンツーマンで実践して見せる、研修を開催する、メモを渡す、紙のマニュアルにまとめる、動画に残す等々、多岐にわたっています。
今、企業のワークスタイルも大きな転換期を迎えています。Web会議システムやチャットツールの急激な普及が象徴的ですが、それらはこれまでの会話や会議を遠隔で行っていることと変わりありません。
遠隔にならざるを得ない状況だからこそ、企業の骨格とも言える「業務プロセス」をいかに可視化して共有することができるかが、企業の競争力を左右すると考えています。
企業や業務のあり方が大きく変わる中、当社としても少しでも皆様のお役に立てればと思います。

と語ってくださいました。

庄司さんは、2017年に【結果が出る仕事の「仕組み化」】という本を出版されています。まさに今の世の中を先取りされていたと感じ入ります。
後戻りは許されない、仕事環境の変化。この機会に、【業務プロセス】を見直し、新たな時代に適合する【手順書】への変更をオススメするものです。

以上(2020年5月作成)

これからの採用面接はオンラインが主流に!〜WEB面接:変化を先取りするためのコツ&5か条〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、野澤 比日樹さん(株式会社ZENKIGEN 代表取締役)です。

新型コロナウイルス感染症の影響下、大きく社会構造が変化しようとしている中で、人材採用における【面接】のあり方も今年の3月初旬以降劇的に変化が始まっています。合同説明会等の採用イベントや、一次、二次、最終面接などを対面では行えない状況となり、大企業のみならず、中小企業のWEB面接は必須に。仮に来社を要求した場合には、SNSなどで酷評を拡散されてしまうリスクもあります。今回は、WEB面接の現状、採用プロセスをオンライン化するための短期立ち上げ方法、WEB面接の成功するための秘訣、近未来の採用のあり方までお話しを伺いました。

ZENKIGEN社、野澤さんについては、以前に雑誌WedgeのWeb版(WEDGE Infinity2018年9月25日配信)にて、記事(記事タイトル:「部長が変われば会社が変わる!」採用に革命起こすオトナベンチャー)にしています。まずはそちらをご覧いただけますと野澤さんのご経歴や起業への想いをご覧いただけます。
当該記事はこちらです。

(インタビューもオンラインで)

1 ZENKIGEN社について

1)オモシロイ社名の由来

全機現→ZENKIGENを社名にしている野澤さん。全機現とは人が持つ能力の全てを発揮することを示す禅の言葉から引用しています。多くの大人が全機現する社会は幸せな社会であり、次世代にそんな社会を引き渡したい、それが社名に込めた想いであり、必ず実現していくという意志表明です。
翻って、現状、全機現している大人が少ないことが引き起こしている社会の問題、それも人材の登用、採用のあり方、人事のあり方、会社組織の課題を解消していくことが目下の野澤さんの主戦場です。

2)ありそうでなかったサービス、それはエントリー動画という発想

【スカイプ面接】と言えば、少し前まで一般化していた言葉。これは、海外人材や地方人材など、遠距離での採用面接を行う際に活用されてきました。これを言い換えると【ライブ面接】でした。野澤さんが斬新だったのは【エントリー動画】を採用面接に導入したこと。まさにありそうでなかったオンライン採用サービスがHARUTAKA(ハルタカ)です。
サービスについては、こちらの動画をご覧ください。

・企業側のエントリー動画のメリット

◆時間の制約がなくなる→ライブ面接だと面接官と応募者の時間調整がまず必要となる。エントリー動画だと採用側がいつでも好きな時間に動画を見て選考が可能になる。
◆採用力の平準化、複眼力で採用力がアップ→ありがちな体育会系出身者による、同じ競技出身者の偏った採用傾向はよく聞く話。同様に面接官の偏りにより、なかなか採用側の平準化は難しい。エントリー動画であれば、複数の眼で採用検討できることから面接力アップ、採用力アップにも繋がる。
◆エントリー動画のデータが二次、三次選考に活用できる→エントリー動画で一次選考を受けた場合、その動画で二次、三次選考の面接官が、どういった候補者なのかを確認でき、引き継ぎがスムーズになる。採用選考における効率化、時間短縮にも大いに役立っているそうです。

・学生側のエントリー動画のメリット

◆何度でも撮り直しができる→SNS投稿で、自撮りに慣れている経験値はあるものの、ライブ面接や、リアルの場面ではなかなか緊張しすぎてうまくいかなかった人も多いと思います。動画を何度も撮り直しができることで、自分自身で納得した面接に臨むことが可能になりました。
◆印象が伝わりやすい→リクルートスーツ、統一されたような髪型が昨今問題になってきていますが、エントリー動画で自分の部屋で自由な服装、自由な発言で個性を伝えやすいこともメリットに。
◆外国人の日本語力の見極めに→留学生の大きな壁であった日本語能力の判断。履歴書や検定等の文字だけの成績では実際の会話力、日本語におけるコミュニケーションは今までリアル面談まで判りませんでした。事前に録画された動画を見るだけでこの問題は解消できます。学生側の無駄足や検定結果だけでは伝わらない語学力がエントリー動画を見ただけで判断材料に。

HARUTAKAを導入し、採用力を高めている企業の情報も参考になると思います。以下をご覧ください。

https://harutaka.jp/case

エントリー動画を採用の世界に持ち込んだ野澤さん、デジタル化への大きな一歩だったと思います。
また、エントリー動画には、事前質問を投げかけられる設問の登録機能や、ライブ面接ではチャット文化が当たり前の学生に対応するためのチャット機能がある。この他、応募者管理や採用分析機能をシステムに搭載しています。
まさに採用革命ツールだと思います。

3)採用力が高い企業ほど候補者の【面接体験】を重視、【面接官=会社(会社の顔)】である認識を忘れずに。

こちらのサイトはご存知でしょうか。

Google社で働きたい人はたくさんいるはず。しかし同社は手を抜いていない。単なる採用面接で終わるのでなく『有意義な応募者体験を提供する』と謳っています。

企業において大切なこと、しかし見過ごされているのが、【面接官=会社】ということです。

  • 面接で『この会社には入社したくない』と思った→85%
  • 面接官の不快な態度・言動で入社をやめた→74%
  • 選考中の悪い体験を他人に伝えた→72%

上記は、【マズイ面接官、ファンをつくる面接官】から引用しています。こちら相当に面白いです。採用側の感度を養うためにもおススメです。

https://partners.en-japan.com/special/180326/

採用担当者からすると、目標の応募人数や面接の枠を埋めることを達成することが【仕事】。それはある意味正しいですが、その採用活動に内在している見えないリスクがあることを経営側は常に認識しておくことが大切です。

◆内定辞退者や不合格者から広がる悪い評判はSNSなどで拡散されやすく、特に企業にダメージを与える評判は早くて強烈化しやすい。
◆今後接していく潜在層への採用ブランディングはとても重要。面接の質は採用の要!

・冒頭のGoogle社のサイトの中で、面接担当者用トレーニング チェックリストが良いものですのでご参考まで。

https://rework.withgoogle.com/jp/guides/hiring-train-your-interviewers/steps/interviewer-training-checklist/

・面接の構造化や面接官のトレーニングを実施し、CXを高めるメルカリの採用プロセスも価値あるものです。こちらも。

https://seleck.cc/1335/

2 新型コロナウイルス感染症下、企業側の変化、野澤さんの動き~変化を先取りするためのWEB面接:コツ&5か条について~

1)動きの変化は2020年2月から

ここ最近のトピックスは?とお聞きしますと野澤さんからは『自社資金調達完了とコロナによる採用の変化』と返事がありました。3月18日に発表の資金調達に関してはこちらをご覧ください。
昨年12月に過去最高の受注件数となったZENKIGEN社、通常企業の採用予算、採用スケジュールの観点から毎年年末が売上のピークとなるそうですが、今年は2月中旬から様相が変化し、営業日数も少ない中、12月を超える売上になり、3月も前年同月対比5倍程度の伸びになっているそうです。
変化があったことは、受注件数の伸展だけではなく、今までにない顧客側の【姿勢】の変化というべき事象が起こっているそうです。

  • コロナ発生前→複数のWEB面接サービスとのコンペ、社内プレゼン、その後の検討、検討のステップ。導入の長期化。
  • コロナ発生後→検討終わって、稟議も完了しています。いつから利用できますか?

まさに潮目が変わったと、野澤さんは話します。

2)オンライン活用による採用変革、その短期立ち上げの支援を実行した野澤さん

この潮目が変わったことの、波に乗れるようにと、いちはやくホワイトペーパーの作成を実行し、2月21日にリリースをしています。【採用プロセスにおけるオンライン活用のポイントと、短期立ち上げ支援のご案内】として公開しました。

採用プロセスにおけるオンライン活用の画像です

自社サービスのみならず、連携できる他社のサービスや、同業他社の名前も挙げ、分かりやすくオンライン化への手順を公開しています。業界発展への心意気を感じます。この手順を活用して、サービス(HARUTAKA)導入を3日で、採用プロセスのオンライン化を2週間で実行できる支援を行っています。その詳細(ホワイトペーパー)についてはこちらをダウンロードしてください。

このホワイトペーパーは、3週間で1000回のダウンロード数を超えるほどの反響があったそうです。

支援事項を説明した画像です

ホワイトぺーパーのみならず、新型コロナウイルス感染症緊急対応によるお悩み相談をライブで配信する【「ZENKIGEN」×日本初のCHRO養成講座「CANTERA」による「コロナ危機における人事課題の相談所」】を開催するということで、これもオンラインで開催するという徹底ぶり。こちらで課題感満載の企業人事の皆さんへお役立ち提供をしています。詳細はこちら

3)変化を先取りするためのWEB面接:コツ&5か条について

今後、コロナ情勢が沈静化しても、採用におけるオンライン化の流れは後戻りしないと話す野澤さん。この変化を先取りして早期に採用プロセスを変革していこうとする企業人事セクションの皆さん向けに、【成功するためのコツ】と、先行して【WEB面接をうまく利用している企業様の5か条】という観点でまとめていただきました。

◆【成功するためのコツ】

■話しやすい場作り

いきなり役員面接などは、上層部の方々と面接をするときは緊張しやすくなるため、例えば面接開始前に、人事の方に雑談などをしてもらい、緊張をほぐしてあげる。
また、面接官が普段行うアイスブレイクもオフライン時より長めに行う。

■身振り手振りや表情

候補者のお話に対する反応はオフライン時より伝えにくくなるため、身振り手振りをあえて大きめに取り、意思疎通を図る。
また、表情をよりクリアに見せるため、部屋を明るくする。

■会話のテンポ

通信の関係で、相手が話していることに被ってしまうことがあるため、表情で「はい」や「うん」などを表現し、一呼吸を置いた後にゆっくりと話してあげる。

■リカバリープラン

障害や通信環境により、面接がうまくいかなくなることもある。
例えば他のツールを急遽案内するなど、トラブルが起きた際のマニュアルを用意しておく。

◆【WEB面接をうまく利用している企業様の5か条】

1. 課題認識をするべし

何が課題で、何を解決するためにオンラインで面接を行いたいかを把握しておく必要がある。
例えば、面接のリードタイムが長いや、移動費などのコストがかかるなど。

2. ゴール設定をするべし

何を成し遂げたいのかを明確に設定しておく。
三ヶ月後、一年後にどういう姿になっていたいか、使用状況がどうなっているかを描いておく。
例えば、リードタイムをどれくらい短縮したいか、採用工数や移動費をどれくらい削減したいか、地方候補者の受検率をどれくらい上げたいか、など。

3. 制約条件を把握するべし

人員や予算、スケジュールなど、社内と社外のリソースがどれくらいあり、どこまで実現可能かを把握する。
例えば、エントリー動画の動画を見ることができる人は何人いるのか。
採用の告知に予算をいくら使えるかなど。

4. ソリューションのマッチ度を確認するべし

解決したい課題が、HARUTAKAや他オンラインサービスの提供価値と合致しているか。
例えば、元々1日のリードタイムを短縮したいという目的に対し、WEB面接を導入しても、リードタイムが短縮することはない。

5. 人事が推進力を持って実行するべし(※一番重要)

社内では、「経験不足だから」や、「直接会いたいから」などのバイアスで、WEB面接に対して反対をする人が出てくるケースが多い。
人事が積極的に、WEB面接のやり方や、候補者のどこに注目するべきかなどの説明や案内をしてあげる必要がある。

上記を利用して是非変化を先取りしていただきたいと思いました。

4)テレワーク助成金まとめ

オンライン採用などテレワークを導入するに当たっては、PCなどの機器購入やクラウドシステムの導入費用がかかりますが、次のような助成金制度があります。ご参考になれば幸いです。
条件や申請手順など内容詳細は、各機関へお問い合わせください。

・働き方改革推進支援助成金 (テレワークコース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/telework_10026.html

・働き方改革推進支援助成金(新型コロナウイルス感染症対策のためのテレワークコース)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/jikan/syokubaisikitelework.html

・IT導入補助金
https://www.it-hojo.jp/first-one/

3 近未来の採用のあり方

1)近未来の採用のあり方

オンライン採用面接が当たり前化したその先の実現されるであろう近未来の採用のあり方、その実現されるであろう環境にフィットしたサービスの準備も着々と野澤さんは取り組んでいます。
東大での研究、知見を活かしたAI搭載の面接サポートツール【ZIGAN】です。漢字で表すと、【慈眼】、慈眼とは禅の言葉で『慈しみの眼を持って人を見れば、海のように幸せが溢れる』という意味だそうです。

ZIGANの概要ですが、応募者がHARUTAKAを通じてライブ面接を行う際に、面接官の画面では、応募者の動画データを中心に、【信頼・尊敬】の計測をAIエンジン(ZIGAN)が行った結果が映し出され、面接官のサポートを行う。人に寄り添うAI、分析システムです。
この分析結果を用いることで、面接官のトレーニングを実施でき、候補者との信頼関係構築が行えることで、採用不合格であったとしても、会社ブランディングが棄損しない、面接官=会社の考え方、あり方を実現していきます。

2)野澤さんからメッセージ

 WEB面接という選択肢を考えたことがなかったという会社も多いと思いますが、コロナによってやらざるを得ない時代になりました。実際、3月に入り即導入したいという問い合わせが殺到し、一日のライブ面接の利用数がそれまでの20倍以上になるほど急激にWEB面接の利用が進んでいます。それまで、数年以内にWEB面接の利用が当たり前の時代がやってくることは想定しておりましたが、2~3年前倒しでその時代になったように思います。
このような状況だからこそ我々が社会にお役に立てる時だと社員が一丸となって我々の役割と責任を果たそうとしております。
企業の人事の方は、この機会をチャンスと捉え採用活動自体をアップデートすると決めて、まずは無料ツールからでも「やってみる」ことが採用の競争力をあげることに繋がると思います。そして採用をアップデートすると決めたら何より重要なことは、経営陣や関係する人をやる気にさせ巻き込めるか?という人事担当の方の推進力です。
多くの企業がこの機会に採用をアップデートすることで、候補者・人事担当者双方の感染による心理的不安の解消・移動による交通費等の負担を減らし快適な採用・就職活動ができるようになることを願っております。

とメッセージを寄せていただいた野澤さん。まさにこれからが本番、来たるべき新しい採用面接のあるべき姿を具現化されていくと感じます。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年5月11日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。