りそなグループのコンサルティング・ファームとして、コンサルティング、会計・法律問題に関する相談や経営情報の提供、ビジネスセミナー運営など幅広い経営支援を行っている、
りそな総合研究所(以下インタビューでは「りそな総研」)。
めまぐるしく情勢が変化する昨今、りそな総研には、中小企業からどのようなお悩みがよせられているのでしょうか。代表取締役社長・氷坂 智晶氏(ひさか ともあき。以下「氷坂」)に、お話を伺いました。
※インタビュー担当:りそなCollaborare事務局(以下「事務局」)
1 多くの中小企業経営者が抱えるのは、「事業承継」や「人」に関するお悩み
事務局
本日は、お忙しいところ誠にありがとうございます。
中小企業をさまざまな方面から支え続けるりそな総研さまに、中小企業支援に対する思いなどをお伺いします。よろしくお願いいたします。
まず、りそなCollaborareの読者に向けて、改めてりそな総研さまについてご紹介ください。
氷坂
りそな総研では、主に2つの事業を運営しています。
1つは、会員さま向けの経営支援サービス、もう1つがコンサルティングサービスです。
コンサルティングサービスの方では、年間で約850件のご相談を受けています。 2-3年前までは年間650件ほどでしたので、約30%増加している状況です。
経営課題が多様化・複雑化する中、経営相談のニーズが高まっているのを感じています。
事務局
ありがとうございます。
りそな総研さまは、長らく中小企業の経営支援をし、多くの中小企業から経営相談を受けてこられました。ご相談事として、どのような内容のものが多いのでしょうか。
氷坂
「経営計画に関するご相談」が約25%、次いで「後継者・事業承継に関するご相談」が約20%です。
また、近年急増しているのが「人事に関するご相談」で、これも約20%を占めています。
経営計画に関しては、現状分析や中期経営計画の策定、経営計画の実行支援を行なっています。
事業承継に関しては、自社株をどのように後継者へ承継していくか、株主構成をどうするか、後継者へ引き継ぐ上で持株会社やグループ会社の方向性といった組織再編のご相談ですね。家族経営の場合は、オーナーの個人資産をどう分散するかといったご相談までお受けしています。
人事については、人事制度の構築・改定、人事制度をどう組織へ定着化させるかという「定着化支援」、また、昨今の働き方改革への対応でお悩みのケースも増えています。
これは事業承継と人事の両面ですが、経営者教育やサクセションプランの策定、管理者層まで広げた教育といったご支援も、ご希望に合わせて行なっています。
コンサルティング案件は約850件とお伝えしましたが、2019年度はまだ終わっておりませんので、このペースですと1000件を超えるかもしれません(インタビューは2020年2月27日時点)。
事務局
1000件は素晴らしいですね。中小企業の経営者から、かなり多くのご相談を受けてご対応されていることがよく分かります。
2 ビジネス界でも”ワンチーム”がキーワードに。ESを重視する企業が急増中
事務局
働き方改革など、社会の流れに合わせてご相談内容も変化していくのですね。
氷坂
そうですね。時代による変化は感じます。
例えば経営相談や人事の相談に関しても、「経営理念やビジョンを策定したい」といった声や、「会社が将来どのような姿を目指すのか言語化したい」といったご相談が増えている点は特徴的です。
不安定な情勢の中、会社として目指す方向を定め「ワンチーム」になりたいというお客さまが増えているものと考えられます。
それに付随して、若手社員の定着やES(Employee Satisfaction)、いわゆる従業員満足度の向上に注目が集まってきています。
企業の従業員に対して意識サーベイを行い、その結果を元に今後の人事制度や育成計画を立てていくというコンサルティングサービスを行っているのですが、スタートアップの企業や、世代交代をして2代目経営者になった企業などから特に要請や問い合わせが来ることが多いですね。
例えば、次のようなご相談などがあります。
「経営者にはなったが、自分より社歴の長い社員が多く、みんなの考えを知りたい」
「若い世代に適切なポジションを与えてあげたい、世代間のギャップを埋めたい」
企業により目的はさまざまですが、サーベイで自社内の状況を把握し、次のアクションを考えたいという経営者が増えているのです。
ESサーベイに関してはデータの蓄積も進んでおりますので、当社としても深掘りし、よりよいサービスに進化させていく方針です。
事務局
「ワンチーム」、確かにそうですね、そうしたことが今後はますます重要になると思います。
多くの中小企業を支援するりそな総研さまがES事業に注力されるというのは、非常に興味深いです。それほど、ニーズが高まっているのですね。
氷坂
そうなのだと思います。ESという観点で言いますと、もう1つ意識の高まりを実感したシーンがあります。
当社では後継者育成・幹部層の育成などを目的とし、東京・大阪の2拠点で毎年マネジメントスクールを運営しております。 今年で33年め、卒業生は約2500名にのぼります。
毎年プログラムの最後では、皆さんから、「経営者としての決意発表」をしていただくのですが、今年は多くの方が「これから、ESに力を入れていきます」と宣言されたのです。
これは、過去のスクールではあまり耳にしたことがありません。
ES向上に取り組む企業はますます増えていくと思います。なぜなら『どう組織をまとめてくか』というのは経営者の永遠の悩みですから。
3 目指すのは、強い会社づくり・人づくりに向け、寄り添うコンサルタント
事務局
りそな総研さまではさまざまな規模・業種の企業で、幅広いお悩みに応えていらっしゃいますが、そのために特別に取り組んでおられることはありますか。
氷坂
りそな総研は「強い会社づくり・人づくり」をお手伝いするパートナーでありたいと考えています。中小企業の経営者に「寄り添うコンサルタント」の集団でありたいのです。
そのために当社で取り組んでいることは、大きく3つあります。
1つめは、コンサルタントの増員と早期育成です。
先ほどお伝えしたように、コンサルティング案件はこの数年で大幅に増えているため、こちらもコンサルタントの人員数も質も強化していかなくてはなりません。
しかし、闇雲に人数を増やすのではなく、先ほど申し上げた「強い会社づくり・人づくり」のパートナーという意識もしっかりと一人ひとりに浸透させていく必要があります。また、コンサルタントを増やしても、若手とベテラン層でスキルに開きがあっては意味がありません。
「暗黙知」になりやすい、ベテランのコンサルタントのスキルや知見、経験値を、いかに若手に受け継いでいくかが重要だと考えています。
そこで当社では、2016年に暗黙知の共有化プロジェクトを立ち上げました。熟練のコンサルタントが持つノウハウやツールを中堅層・若手に受け継ぎ、コンサルタントの早期育成できる体制を整えています。
2つめは、コンサルタントの生産性向上です。
コンサルティングは、基本的にはオーダーメイドの対応なのですが、当社ではコンサルティングの工程を見える化し、コンサルティング作業・ツールの標準化等の取り組みを通じて、生産性向上を図りました。
3つめは、あらゆるお悩みに対応するための、適切な外部パートナーの選定です。
私たちはお客さまのパートナーとして、どのような経営課題のご相談にも「できない」とは言いたくないのです。その為に、あらゆる分野に対応できるよう、150社を超える外部パートナーとアライアンスを組んでいます。
例えば、人事戦略や制度設計などコアな部分はりそな総研のコンサルタントが担い、管理者教育、外国人人材雇用など付随的な部分は、その分野に特化した外部パートナーへ依頼するような形をとっています。
りそな総研のコンサルタントは「プロジェクトの総合プロデューサー」のようなイメージですね。
これらの3つの施策を組み合わせて、多様化し、急増している経営者のご相談に対応している状態です。
4 時流を読み、常に経営者のパートナーでありつづける
事務局
ここで改めて、りそな総研さまのコンサルティング・ポリシーについて教えていただけますか。
氷坂
お客様が永続的に成長できる「強い会社づくり・人づくり」のパートナーとして、いっしょになって真に解決すべき課題と解決方法を見出し、お客様自らも解決する能力を身に着ける事ができる、寄り添うコンサルティングが私たちの目指す姿です。
私たちのコンサルタントは、単にきれいな制度を作って終わりにはしません。経営幹部の方や管理者層とチームを組んで、現状を丁寧にヒアリングし、課題を抽出していきます。そしてディスカッションを重ね、理念やビジョン、進むべきゴールをお客さまと共に設定していくのです。
また、1つひとつの課題やテーマに対して”プロジェクト型”で取り組み、共に解決していくので、お客さま自身が課題抽出から解決というプロジェクトの一連の流れを体感することができるのです。
この方法ですと、少しずつ会社の中にノウハウや知見が蓄積されるので、自走できる組織を目指していただけるというメリットも大きいと考えています。
りそなグループでは、地域、地域でお客さまの交流会を定期的に開催しているのですが、そうした場で、ありがたいことに「氷坂さん、貴社のコンサルタントのおかげで本当に助かっています。ありがとう」とたくさんの経営者から言葉をかけていただくのです。
それも、ベテラン・若手にかかわらず、多くの当社コンサルタントの名前を挙げてくださいます。
中小企業の経営者は、経営上の重大な決断をお一人でされるシーンが多々あります。
「親身になって話を聞いてくれる人がほしい」
「誰かに決断を後押ししてほしい」
りそな総研のコンサルタントは、経営者のそうした想いに応える存在でありたいですし、お客さまからお褒めの言葉をいただくと、そういうコンサルタントが育ってくれているのかなと感じ、私もとてもうれしいです。
事務局
経営者の方から実際に「ありがとう」と言ってもらうのが、一番うれしいことですね!
5 会員に向けた豊富なコンテンツも魅力。今後はSDGsの領域でもサービスを展開予定
事務局
貴社のもう1つの事業である、会員さま向けサービスの内容と、その賢い活用方法について教えていただけますか。りそなCollaborareの読者の皆さまにも参考になると思います。
氷坂
りそな総研では、会員の皆様に向けてさまざまなサービスをご用意しています。
例えば、経営のさまざまなシーンで必要となる契約書や会社規則などのフォーマットを豊富に取り揃えた「書式ナビ」。 会員さまはこれらのフォーマットを無料でご活用いただけます。
他にも、税理士・会計士・弁護士・社会保険労務士などに無料で相談ができる「相談サービス」も需要が多いです。
書式ナビからダウンロードした就業規則を各社でアレンジし、法務上問題ないかというリーガルチェックを当社相談室の弁護士にお願いする。ーそんな使い方も可能です。
また、新入社員研修・管理者研修、各種ビジネスセミナー、著名人を講師に招いた朝食懇談会や定例講演会などコンテンツも豊富にご用意しており、こちらも会員価格でご利用いただけます。
規則や制度、或いは人材育成の事をこれから整えていくという会社や様々な経営情報をアップデイトしたい企業の皆様には非常にお役に立つと思います。
ぜひ、使い倒していただきたいです(笑)
事務局
「書式ナビ」と士業の方への「相談サービス」を合わせて活用するのは、良いですね。忙しい中小企業経営者の場合、雛形と頼りになる専門家の両方があるのは、とてもうれしいのではないかと思います。
今後、新たに増やしていきたいサービスなどはございますか?
氷坂
先ほども触れましたが、ES向上のための従業員意識調査を軸としたサービスは、今後注力していきたい分野の1つです。
また、今、正にオリジナルサービスとして深堀りを始めているものが「SDGsコンサルティング」です。
SDGsの理念は理解できるものの、実際にどのようにSDGsの概念を経営に反映させ、新たなプロフィットにつなげていくのかという点でお悩みの企業は多くいらっしゃいます。
私たちもまだ深堀りしている最中で、確固とした答えを持っているわけではありませんが、りそなグループは、他社に先駆けSDGsに取り組んできたという自負があります。そうした自社の体験も活かしながら更に深堀りをすすめ、SDGsのご相談にはお応えしていきたいですね。
加えて、コンサルティングだけでなく、会員サービスでもSDGsに関する種々のセミナーを企画し、SDGsの意識そのものを浸透させていくサポートをできたらと考えています。
それから、経営人材の育成についても更にテーマを広げていきたいですね。具体的には、30年以上に渡って続けている「後継者育成」をテーマとしたマネジメントスクールに加え、中小企業経営者の多くが悩まれている「ファミリービジネスの永続」や、“日本で一番大切にしたい会社”のような「ES経営」をテーマとした経営人材育成プログラムにも取り組んでいきたいです。
取り組みたいことはたくさんあります。
6 氷坂氏、自ら、自社のコンサルタントに経営相談。その感想は?
事務局
りそな総研さまでは、コンサルティングサービスだけでなく、さまざまなサービスをご用意されているのですね。ご自身がりそな総研さまのサービスを活用されるとしたら、1番に何を相談したいと思われますか?
氷坂
実は私は、経営者としてすでにりそな総研のコンサルティングサービスを利用しているのです(笑)
当社における昨年度の従業員意識調査では、「企業風土」や「組織の風通し」に関する問題が浮き彫りになってきました。
それを受けて、自社のコンサルタントに対して「風通しの改革」のコンサルティングを依頼し、今まさにプロジェクトが進行しています。
コンサルティングサービスとはどういったものなのか、自ら体感してみたいという想いもありました。
非常に興味深いことですが、当社の大阪本社ではこの風通し改革のプロジェクトを、社員全員でりそな総研の未来を考える「未来創生会議」という全社を巻き込んだプロジェクトに発展させ、多くの社員が集まれる日時で9回に及ぶワークショップを開催し、経営の提言という形で社員の声をまとめ風土改革、風通し改革の提言をしてくれました。大変、参考になる提言が多くありました。
東京本社の「風通し改革」コンサルティングの中間発表もこの前あったのですが、その発表の中で、特に私が印象的だったのは、「りそな総研は~~であるべき」という表現ではなく「~~でありたい」という言葉を使っていたことです。
あるべき論だと、反発する方も出てくるかもしれませんし、結果的に風通しを悪くすることにもなりかねません。
しかし、「こうありたい」という理想像をすり合わせていけば、みんな賛同しやすいですよね。
私自身、そうした「ありたい姿」を言語化する部分に悩んでいたため、それを整理してくれた自社のコンサルタントたちにはとても感謝しています。その結果生まれたのが「「強い会社づくり・人づくり」のパートナー」というワードです。
一経営者としての感想ですが、りそな総研のコンサルティングサービスは、やっぱり素晴らしかった!
自信を持っておすすめできます。
事務局
自ら自社のサービスを体験され「すばらしかった」と断言できるのは、すごいことですね!
最後に、ここまで読んでくださった、りそなCollaborareの会員の方々に向けて応援のメッセージをお願いいたします。
氷坂
昨今、世間の情勢が非常に不透明になっています。
米中問題や中東の問題、英国のEU離脱、そして2020年に入ってからは新型コロナウィルスの問題も起こり、なんとなく社会全体にマイナスの空気感が漂っています。
こうした状況の中で、経営者として悩まれるシーンは多々あるものと思います。
しかし、米国同時多発テロがあり世界情勢が緊迫した2001年前後に、そのアメリカからGoogleやFacebookのような、世界を席巻する企業が誕生しているのです。
混沌とした世の中であればあるほど、ビジネスチャンスもあり、大きく羽ばたく企業が生まれる時期でもあります。
りそなCollaborareの会員の皆様は、夢を持って起業されたり、時代に合わせ事業転換をはかられり、という志の高い方々が多いと思います。
私たちは、これからの日本の成長のために、そうした志高い企業に頑張ってほしいと心の底から願っていますし、志を持って挑戦を続ける経営者には可能性は無限に広がると思っています。
今のこの空気感に負けず、明るい未来を信じて信念を持って頑張ってください。お困りのことがあれば、りそな総研が「強い会社づくり・人づくり」のパートナーとして精一杯皆さまをサポートいたします。
事務局
本日はすばらしいお話とメッセージをありがとうございました!
以上
※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年4月20日時点のものであり、将来変更される可能性があります。
※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。
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