第16回 五反田バレーPR四天王の仕事術5か条/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

自社をPRしたいと思っても、どのように行えばよいのか迷ってしまうことがありませんか。今回は、そのお悩みを解決すべく、今話題の五反田バレーを代表する4社のスタートアップ企業で活躍するPRの達人たちに「PRの仕事術」についてお聞きしたことを仕事術としてまとめました。ぜひ、皆様のご参考になれば幸いです。

今回、インタビューさせて頂いたのは、五反田バレーのPR四天王の4名です。
五反田バレーとは、新たなスタートアップの集積地として注目を集める五反田のスタートアップが集まり、設立された一般社団法人です。

  • 中村ガクトさん (株式会社マツリカ、 株式会社Pathee)
  • 鈴木章子さん(Safie – セーフィー株式会社 広報/PR)
  • 柳澤 芙美さん (株式会社ココナラ 広報・PRリーダー)
  • 野澤 真季さん (freee株式会社 広報)

 ご多忙の中、皆様、ご協力頂き、愛りがとうございました!(愛+ありがとう)

1 そもそもPRの仕事内容とは?

PRの語源はPublic Relations(パブリックリレーションズ)で、企業や団体が社会と良い関係を構築し、自身に対しての理解や信頼を得るための活動のことをいいます。企業や事業内容などを外部に向けてアピールすることはもちろんですが、闇雲にアピールするのではなく、事業成長に繋がるように心がけています。営業や人事の前段階を構築しているという自負を持って取り組んでいるのです。

また、ステークホルダーとの関係づくりにおいても、自社と関わって良かった、応援したくなると思ってもらえるようにすることや、社員のモチベーションアップを図ることなども重要であると考えています。さらに、世の中の意見を社内に反映するために、世間で話題になっていることや他社のサービスについても情報収集を行い、社内で共有します。

2 五反田バレーPR四天王の仕事術 5か条

  • 社内の人脈をどんどん頼るべし!
  • 積極的に社内に共有すべし!
  • 狙ったカテゴリーで認知度を上げるべし!
  • メディアの方々を味方につけるべし!
  • 市場が同じで競合にならない企業と連合を組むべし!

それでは、各項目について具体例を入れながら解説します。

1.社内の人脈をどんどん頼るべし!

自社の技術を伝える際に専門知識が必要になる場面も多くあります。その際は、社内の技術者(エンジニア)に積極的に協力をお願いしています。具体的には、メディアキャラバン(メディア関係者と直接面会し、商品説明や取材提案等を行うこと)に同行してもらったり、技術に関する記事を書いてもらったりすることがあります。また、新技術や聞きなれない専門用語についての質問に答えてもらうことで、PR担当者が自社製品の理解を深める手助けをしてもらう場合もあります。

PRの仕事は他の部署の方々からすると、何をしているか分かりにくいと思われがちです。そのため、ポジションや経験年数などにとらわれず、ランチを共にしたり、1on1ミーティングを行ったりすることで、各部署の状況を把握し、目的に合ったリリースができるような工夫もしています。
特に、経営陣とのコミュニケーションの量を増やすために、週に1回程度、定期的にミーティングを行い、インタビューの内容確認や今後のPRの方向性などについて話し合うようにしています。一人でPRを担当している場合もあるため、経営陣と率直に話ができるスタートアップならではのカルチャーには助けられているそうです。

さらに、社員のSNSをフル活用することで、自社の勢いを表現することもあります。一斉に自社製品について投稿してもらったり、自社情報をシェアしてもらったりする方法は、この時代に合っていると思います。しかし、投稿は不特定多数の人々の目に触れ、後から読み返すことも可能であるため、自社の信頼が失墜しないよう言葉遣い等の表現や業界ごとのカルチャーの違いにも注意を払う必要があります。

普段、このように社内の人脈を頼る機会が多いため、逆に相談をされた場合には、できる限り即対応するように心がけているそうです。もちろん、自分自身がメディアに出ることもあります。
株式会社ココナラの柳澤(記事内では古川)氏はご自身のインタビュー記事で最高PV数を記録しました。

●苦手な仕事を「できない」と言ってみたら「何が」変わったのか

2.積極的に社内に共有すべし!

自社のビジョンや行動指針を分かりやすくまとめ、会議室やオフィスなどに掲示することで、どの社員でも体にこれらが染み付くようになり、自然と誰でも自社のビジョンが言えるようになります。
freee株式会社では、来客用の飲料水のラベルにfreeeの価値基準を入れています。取材にお越し頂いた際にもこのラベルから話題が広がり、企業文化についても触れて取材してもらえることもあります。

freeeの価値基準を入れた来客用の飲料水のラベルの画像です

また、Safie株式会社では、CEOやデザイナーと共に、創業からの流れやサービスを作る過程での失敗や成功などのストーリーを本にして社員に伝え、同じ価値観・方向性で仕事ができるように企業カルチャーの醸成と浸透を促進しています。このように社員に創業の精神を受け継いでもらうための工夫も行っています。
他にも「映像から未来をつくる」というビジョンを具現化するため、このダイアグラムにある7つのバリューを『チーム「Safie」が大切にしていく価値観・行動規範』として共有し、社内のあちらこちらに掲示しています。
こうした活動は、自社のみならずステークホルダーの皆様とwin-winになることができるサービスを生み出し、繁栄が続く仕組みづくりのプロセスの一環であり、アイデアを実現する際の意思決定及び行動時に立ち返ることができる指針としています。

fSafie株式会社のダイアグラムの画像です

3.狙ったカテゴリーで認知度を上げるべし!

PRというと、とにかく露出頻度を高めようと考えるかもしれませんが、そうではなく狙った市場で有名になれるように計画していくことも重要です。つまり、「○○といえば自社」と世間に想起してもらえるような存在になるのです。CEOがメディア受けしやすい人物の場合は、「カテゴリーの第一人者」として認知されるようにすればいいでしょう。そのためには、あえて媒体を選ぶことも必要です。さらに、ネットでのインタビューなど、後から読み返せるものを複数行う場合には、エピソードが被らないようにするなどの配慮を行います。

また、株式会社ココナラでは、複数の企業と共に「一般社団法人シェアリングエコノミー協会」を設立し、代表の南章行氏が理事に就任することで、「シェアリングエコノミー=ココナラ 南CEO」と認知されるようになりました。このように、協会等の団体を通してカテゴリーでの認知度を高めることで、そのカテゴリーに興味のある記者の方との出会いが増えるといったメリットもあります。

新しいサービスを提供する場合は、自分たちで新しいカテゴリーを生み出し、広めることもできます。Safie株式会社は、サービスの「クラウド録画カメラ」という概念自体が一般的に伝わりにくかった時期があり、自社コンテンツの説明物を作り込んだり、類似サービスとの比較をしたりし、その情報をブログやSNSで発信したり、イベントの展示会に積極的に参加したりすることで、「クラウド録画カメラ」という概念を広めてきました。また、AIに詳しい著名人とCEOの対談をセッティングしたり、「映像・視覚」の歴史を深掘りした情報を発信したりすることで、多くの方にサービスへの興味を持ってもらうきっかけづくりに取り組んでいます。

4.メディアの方々を味方につけるべし!

メディアキャラバンを行う際には、記者の方が興味を持っている分野・領域をまずヒアリングしてから提案を行うようにします。また、相手の要望にマッチする企業や人物、情報を知っていた場合はご紹介させていただくようにしています。

記事を書いたり、イベントを行ったりする場合は、準備段階で記者の方の意見を聞くことで反応を見たり、使った方がいいキーワードを教えていただいたりすることもあります。このように積極的に記者の方を巻き込んでいくことで、記事にしていただきやすくなります。

また、取材から次の取材まで期間が空くこともありますので、他社のPR担当者と記者の方をシェアするために共にランチミーティングをしたり、同じ業界の数社で勉強会を行って記者の方々を集めたりもしています。freee株式会社では、同じ業界の数社と共にフィンテック勉強会を行いましたが、チームとなって価値を高めることで注目されやすくなります。

記者の方が記事にしやすいかどうかも重要になってくるため、行政との連携や地元の活性化に繋がったりする点をアピールしたり、難しい専門用語を使わずに説明することや、ユーザーのストーリーを伝えたりすることも大切になります。

ココナラのご利用事例の画像です

株式会社ココナラでは、HPにご利用事例としてユーザーのストーリーを載せたところ、「この人に取材したい」などピンポイントでのお問い合わせをいただくようになりました。

もちろん、一度取材して頂いた方には頻繁な連絡を欠かさないようにします。また、フリーランスのライターの方は専門分野があり、さまざまな媒体で記事を書かれている場合もあります。そのため、例えば「副業」が専門のライターの方には、「副業」関連の情報をお渡しすると、毎回異なる媒体で取り上げてもらうこともあります。取材をしてた相手がどのような属性があるかを見極めて、情報提供していくことが大切です。

5.市場が同じで競合にならない企業と連合を組むべし!

今回インタビューを行った4社の共通点として「五反田バレー」が挙げられます。新たなスタートアップの集積地として注目を集める五反田。その五反田のスタートアップが集まり、ベンチャー・スタートアップ企業が社会課題を解決し、より豊かな未来を創っていくことを目指して設立されたのが一般社団法人五反田バレーです。
五反田の企業の慢性的な課題であったエンジニア採用などを解決するために、分かりやすく五反田の魅力を伝えるにはどうすればよいのかを五反田の広報コミュニティで話したことがきっかけとなって社団法人の設立に至りました。

設立後は、各社のPR担当者の持つメディアリストを出し合い、一覧を作って手分けして連絡をすることで、当初から注目を集めることができました。「五反田から逃げるな」という意思を込め、法人名にも「五反田」を入れたことで、メディアに取り上げられるたびに自然と五反田という地域も取り上げられるようになりました。
また、課題であったエンジニア採用に関しても、五反田バレーの企業で集まって大型イベントを開催したり、五反田バレーとしてメディアに掲載された情報を人事担当者が活用したりと、一社ではできなかったアプローチを行えるようになりました。

さらに、社団法人化し、問い合わせ窓口を設置したことで、メディアの方が問い合わせしやすくなるだけでなく、その内容に適した企業とマッチングさせることもできるようになり、お互いにとって良い関係を築けています。実際に、この窓口からの問い合わせがきっかけとなって、株式会社Patheeの中村ガクト氏は、テレビ東京「出没!アド街ック天国」〜五反田〜への出演が決まりました。

まず、チームとして注目を集め、その後マッチした媒体を通して企業PRを行う。「五反田バレー」はそこに参画している企業の成長だけでなく、若者が働きたくなる場所として地域の活性化にも貢献する素晴らしい仕組みとなりました。

株式会社Pathee 朝のミーティング風景の画像です

3 五反田バレーのPR四天王の皆様の仕事のやりがい

鈴木章子さん(Safie – セーフィー株式会社 広報/PR)

これまでの世界になく、みんなが知らなかった新サービスを、たくさんの方に知って頂くためのストーリーを考え発信することで、会社の成長に繋がった時に喜びを感じます。

中村ガクトさん(株式会社マツリカ、株式会社Pathee)

スタートアップは、ビジネスモデルやサービスの概念自体が世の中に浸透していないこともありますが、ビジネス側とエンジニア側を繋ぎ、PRが正しく世の中にメッセージを発信することでビジネスの急成長に寄与することができます。更に、メディアなどに取り上げられたことで、社員の周りの人(家族や友人)に「いい会社で仕事してる」と思ってもらえることもやりがいの一つです。

野澤 真季さん(freee株式会社 広報)

メディア掲載などを通して社員のテンションが上がった時や、自社が社会の進化を担っていると感じられるような発信ができた時にやりがいを感じます。「広報」だけでなく、社員全員でPR活動ができていることが、私の喜びです。また、第一に広報である自分自身が会社を大好きであることを大切にしています。

柳澤 芙美さん (株式会社ココナラ 広報・PRリーダー)

「シェアリングエコノミー」など、自分が共感した新しい概念を打ち出すことで、社会へのインパクトを与えることができるということにやりがいを感じます。

今回は、PRの5つの仕事術を取り上げましたが、いかがでしたでしょうか。
PRにかける情熱と工夫、そして「自分一人、一社ではできないこと」を知っているからこそ、チーム一丸となって働きかけることによって大きな力が生み出されてきたことが伝わってきたのではないでしょうか。事業成長に繋がるPRを行うためのヒントとなることを願っています。

ご協力頂いた、PR四天王の皆様、愛りがとうございました!

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年3月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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【決算編】棚卸資産の会計処理

決算書(貸借対照表)の棚卸資産はどのような過程で、どのような金額が計上されているのでしょうか? 決算処理フローに沿った、期末における棚卸資産の会計処理(仕訳)と、棚卸資産に関する会計のポイントを解説します(本記事で対象とする棚卸資産とは、商品のことです)。

なお、期首・期中の会計処理(仕訳)については、以下の記事をお読みください。

1 決算時における棚卸資産の会計処理(仕訳)

    A社は決算を迎え、決算日における在庫(以下「期末棚卸資産」)の数量と単価を正確に把握して、期末棚卸資産の評価を行います。そして、正確な期末棚卸資産を基に、売上原価を算定します。

会計上、期末棚卸資産の評価に関する主な決算処理は次のプロセスで行われます。

図表1の画像です

1.商品有高帳などの書類から期末棚卸資産の金額を集計する

まず、商品有高帳などから決算日における期末棚卸資産の数量を把握します。そして、次のいずれかの方法で算出した金額を取得価額とみなして期末の帳簿価額とします。

図表2の画像です

なお、本事例では個別法を用いて期末棚卸資産を評価します。その場合、A社の期末棚卸資産の評価額は次のようになります。なお、期首~購入・販売時の棚卸資産の事例については、「期首・期中編」を参照ください。

図表3の画像です

2.実地棚卸を行い、帳簿上の数量と比較して減耗損の計算をする

帳簿上の数字だけでは、紛失や盗難などによる減少を把握することはできません。そのため、実際に期末棚卸資産の数量を数えて(実地棚卸)、帳簿上と実際の期末棚卸資産の数量の差額を期末棚卸資産の評価額に反映させます。

実地棚卸を行い、帳簿上の期末棚卸資産の数量(図表3)と実際の期末棚卸資産の数量が一致しない場合には、減耗損を把握して、帳簿上の期末棚卸資産の数量を調整し、実際の期末在庫数量に合わせます。

例えば、A社が決算日に実地棚卸を行った結果、実際の期末棚卸資産の数量は商品αが8個、商品βが10個だった場合には、減耗損を次の通り計算します。

図表4の画像です

3.期末棚卸資産の単価の評価(原価法と低価法)

期末棚卸資産の単価を評価する方法には、「原価法」と「低価法」の2つがあります。

●原価法

原価法とは、期末棚卸資産の単価を、上記の個別法・先入先出法などで算出した単価とする方法をいいます。

●低価法

低価法とは、期末棚卸資産の単価を、原価法による単価と、期末時点の時価とを比較して、いずれか低いほうの金額とする方法をいいます。

大企業などが適用する会計基準(「棚卸資産の評価に関する会計基準」)では、低価法の採用が強制されています。ただし、中小企業が適用する会計基準(「中小会計指針」「中小会計要領」)では、原価法と低価法の選択適用が認められています。しかし、原価法を採用した場合でも、時価が著しく下落し、回復の見込みがない場合には、評価損を計上しなければなりません。

例えば、原価法を採用しているA社が決算日に期末の在庫の時価を調べた結果、前期から売れ残っていた商品αの時価が4万円だと判明した場合(時価が著しく下落、かつ回復の見込みなし)には、評価損を次の通り計算します。

図表5の画像です

4.売上原価を算定する

売上原価は次の算式で計算されます。なお、減耗損や原価法などによる評価損については、発生原因ごとに売上原価、営業外費用、特別損失(災害など臨時の事象が原因で発生し、多額である場合など)のいずれかに該当します。なお、本事例では売上原価に該当するものとします。

図表6の画像です

売上原価を算定したのち、損益計算書では売上総利益(売上高-売上原価)が計算され、貸借対照表には期末の棚卸資産が「棚卸資産(資産)」として計上されます。

図表7の画像です

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2 棚卸資産に関する会計のポイント

1)取得時の付随費用の計上漏れ

棚卸資産を取得した際に、取得原価に含めなければならない付随費用の会計処理には注意が必要です。付随費用は棚卸資産の取得のために支払った諸費用をいいます。

付随費用は、商品の性質や購入取引の流れによって異なるため、具体的にどのような費用が該当するのかを商品ごとに把握しておかなければなりません。状況とのバランスなどを考えながら、自社の適正な在庫数量を考えることが大切です。

また、税務上では付随費用が少額(棚卸資産の購入金額のおおむね3%以内の金額)であれば、取得原価に算入しなくてもよいため、その処理には注意が必要です。

2)未着品・預け在庫などの計上漏れ

期末に棚卸資産を集計する際に注意したいのが、未着品・預け在庫といった決算日に自社の倉庫にない棚卸資産です。

未着品とは決算日前に注文したものの、翌期以後に入荷される棚卸資産をいいます。

また、預け在庫とは外部の倉庫業者や外注先に預けている棚卸資産をいいます。これらの棚卸資産は、決算日に自社の倉庫に商品がないため、集計忘れが起こりやすく、その結果、期末棚卸資産の計上漏れにつながります。また、商品の取引の流れを正確に把握していなかったり、業務の引き継ぎがされていなかったりする場合もあるため、自社の倉庫以外にも棚卸資産がある可能性を認識する必要があります。

以上

(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年3月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

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2020年2月開催のオンラインカンファレンス成功秘話〜たった2日の準備でオンライン化を実現〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、松林大輔さん((株)ストリートスマート社 代表取締役)です。

働き方改革元年と言われた、2017年に第1回の【働き方を考えるカンファレンス】を設立1年未満の一般社団法人が開催し、大いに、良い意味で波紋、波及効果を招いた団体が、at will work。その代表理事が松林さんです。
このカンファレンスも今年4回目、予定通り開催されようとしていました、2日前までは。しかし、当日は新型肺炎の影響下、カンファレンス会場の虎ノ門ヒルズには関係者のみ、会場を埋め尽くすはずの聴衆のみなさんはオンラインでの参加、オンラインカンファレンスという新たな発信を見事にやりきった、松林さんに、団体のこと、カンファレンスのことについて話を伺いました。

●at Will Work
●カンファレンスサイト

本文の前に、私自身のテレワークに関してお話しておきたいと思います。
フリーランスになって6年目、独立当初からカフェが事務所、仕事場であり応接、面談場所、テレビ会議の場所、東京・大阪を行き来しながら、安価にもしくは無料で活用できるITツールのZoom、whereby、Chatwork、G Suite等々を駆使して時間場所を気にしない、不自由さを感じない、まさに意志を持った働き方(at will work)を体現できていると思っています。さらにここ最近、私が主催するイベントや研修会では、You Tubeライブを活用して場所にこだわらない配信も2年ほど前から実践しています。私自身からするとこのテレワークに騒いでいる世間には今更感を感じています。
写真の通り、

今回のインタビューも実はテレビ会議で大阪にいらっしゃる松林さんと東京にいる私とをつないで行っていました。テレワークによる恩恵も享受、理解しておりこのラクチンな働き方の動きはもう後戻りはしないと思います。

1 一般社団法人at will workのこと概要と活動について

1)2016年発足当初のこと

at will workの発足について、お伝えしておきたいこと。それは松林さんが起業した会社、(株)ストリートスマートの事業内容が大きく影響しています。同社は、Google社のクラウドツールであるG Suiteを企業や学校に導入支援することを大きな柱としています。その事業活動自体が、働き方の変革を先取りしたものであり私自身もその恩恵を大きく享受している一人です。この事業を通じてGoogle社とも近しい関係にあり、Google社が世界的な活動として展開していたのが、Womenwillの活動でした。そこに松林さんも賛同し、私も応援させていただき、大阪でのイベントは会場を私が提供させていただくお手伝いをいたしました。そのGoogle側の中心人物だった藤本さんが、女性のみに囚われることなく、性別、職種、多様な働き方全般にアクセスできるような団体の構想をもった時に、社内での活動に限界を感じ、新しい枠組み創設する、その実現のためにat will work設立に至ります。
このあたりの詳細は、当時の記事を参考までに。藤本さんの記事はこちらです。

2)2017年1回目のカンファレンスを開催 ヒヤヒヤしかし神風が吹きました

3年前に1回目のカンファレンス、その時、鮮明に覚えているのが開催1ヶ月ほど前の時点で、松林さんからの連絡でした。それが、『杉浦さん!開催まであと少しなのに参加申込みが100名にも到達していません!やばいです。。。』というもの。結果から申しますと、600名のカンファレンスルームが満席になりました。
それが開催前月の日経ほか、政府、首相の働き方改革断行の年であるという堅い意思表示によるものでした。
2017年初めの記事はこちらです。この発表のあたりから一気に参加申し込みが殺到し、設立1年未満の団体でありながら虎ノ門ヒルズのカンファレンス会場が満席となりました。
当日は50名を超えるスピーカー、当時経産大臣だった、世耕さんまでお越しいただいて盛り沢山な一日でした。
【人と企業の「これからの働き方」や「理想の働き方」を考え、実現する】をテーマに開催に至りました。
当日の詳細はこちらをご覧ください。
開催翌日には、団体の背中を押すような記事も出てますます活動に勢いがでました。日経の記事はこちらです。

3)活動を通じて発信してきたこと 変化への気付き

at Will Work が目指すのは「働き方の選択肢がある社会」。そこを、当初から5年間限定での活動と決めて運営しているのも大きな特徴に思います。時代が変わろうとうするところに固執しないで変化を創出できれば自分たちの活動は終わりを迎える。潔い、心地よい活動と思います。2017年以後のテーマと特徴を以下に。

・2018年→「働くを定義∞する」 詳細はこちらです。

個人だけではなく会社もまた様々。歴史を紡いできた会社もあれば、新しく産声をあげたばかりの会社もあります。人と同じように、また会社も様々なのです。そこには多くの”ものさし”が存在しています。その”ものさし”は決して一つだけではありません。だからこそ自分が持っている”ものさし”と違うと戸惑い、不安になるのではないでしょうか。at Will Work が目指すのは「働き方の選択肢がある社会」
それは個人も、会社も、社会にも選択肢があることを指しています。その選択肢は実に様々なのではないでしょうか。そして同時に、働き方自体も様々であると私たちは考えます。(サイトから)

・2019年→「働くをひも解く」 詳細はこちらです。

2019年のカンファレンスは、5回実施するat Will Work の真ん中である3回目になります。これからの働き方を考えていく中で、“だからこそ”大事なことは今までの働き方を知ることだと考えました。新しいことだけを追い求めるのではなく、続けていくこともあるはず。例えば、リモートワークやフリーアドレス、WeWorkなどの新しいオフィスの形態が増えていますが、そもそも“オフィス”はなぜ必要だったのか、どのような歴史を歩んできたのか、その歴史をひも解くことによりオフィスのあり方を考えていくことができるのではないでしょうか。(サイトから)

働くと経営課題の画像です

・2020年→働くと経営課題~ 企業の経営戦略・実践のリアルから学ぶ~」 詳細はこちらです。

リモートワークやフリーアドレスなどの新しいオフィスの形態が増えていますが、それらは本当にマネジメントにおける課題解決に繋がっているのか、また繋げていくにはどのようにしていくのがいいのでしょうか。
そのような経営課題に直結する働き方のテーマについて実際の現場でどのように取り組みが行われているのでしょうか。2020年のカンファレンスでは「働き方改革関連法」「マネジメント」「働く場所の柔軟性」「データで見る働き方改革」「人材難への対応 」などのテーマに、これらの課題に真剣に取り組む経営者の皆様から学び、次の新しい世界をどうやって創っていくのか、様々な角度から考えるカンファレンスを実施したいと思います。(サイトから)

4)過去4回の開催から松林さんが感じたこと気付いたことをお聞きしました。

政府が働き方改革という言葉の発信を開始してからはや4年が経過しましたが、2019年から関連の法案も施行され始め、ようやく企業においての取り組みが大企業を中心に始まってきたなと感じています。働き方改革推進の取り組みにおいて、初回開催した時はどういう方向性で実施していくかという情報収集のレベルでしたが、制度設計についての相談、取り組みで出てきた課題についての相談などの具体的なお話が増えてきたと感じています。
今後はより実践的なレベルでの事例の共有などがこれまで以上に世の中に求められてくるのではと考えています。

2 オンラインカンファレンス開催を実践してみる

1)カンファレンス2日前にオンライン開催を決定

今年のカンファレンス、開催日まで1週間前、松林さんと話す機会がありました。その時、『来週は予定通り開催します、入り口でマスクを配布し、アルコール消毒液を常備して。』という感じでしたが、その後カンファレンス終了後のネットワーキング(交流会)パートの中止、お昼のお弁当の配布も中止となっていき、ついに開催2日前にオンラインによる開催が決定しました。

カンファレンス風景の画像です

【当日のカンファレンスの風景】
決定と同時に参加申し込みの皆さんに発信されたメッセージは以下です。

【カンファレンスをオンライン配信にて実施致します】
当カンファレンスは公式発表のタイムテーブルどおりに開催致しますが、すべての参加者の皆様にオンライン配信にてカンファレンスのセッションを視聴いただく形に変更致します。そのため、会場にはお越しいただけませんので、ご理解いただけますと幸いです。(オンライン配信の閲覧は、チケットをお申し込み頂いた方限定です)

オンライン視聴の方法につきましては、当カンファレンス開催時刻の2020年2月20日10:00までに、チケットお申し込み時にご登録頂いたメールアドレスに、カンファレンスの様子をご視聴いただける動画の限定URLを送付させて頂きます。(動画配信はYouTube Liveを予定しております)

※動画配信における禁忌事項について
カンファレンス動画に関しましては、転送禁止、録画・撮影や保存の禁止、チケット購入者以外の動画の閲覧はご遠慮ください。禁忌事項に関する違反が発覚した場合には、法的処置を取らせていただく場合もございますのでご注意ください。

【カンファレンスの録画映像を期間限定で公開します】
上記のリアルタイムでのオンライン配信に加えて、カンファレンスの映像を1週間の期間限定で録画配信させていただく予定です。こちらの詳細につきましても後日ご連絡差し上げます。(こちらのカンファレンス映像につきましても、閲覧はチケットをお申し込み頂いた方限定です)

※リアルタイム配信はネットワーク環境により、見られないなどの可能性もありますので、その場合は録画配信でご覧ください。一部、リアルタイム配信と録画配信で内容が異なる場合があります。

以上です。

【当日の配信画面】
映像は約3種類。登壇者、スライド、そしてその組み合わせです。下記の様な形で表示されます。

当日の配信画面の画像です

背景は黒と白、またはその中間から選べるのですが今回白背景のスライドがほとんどだったので、コントラストをはっきりさせるために黒にしました。またスライドが見えやすい様に並べていますが、これも真横にしたり大きさを変化させたり、スライドの中にワイプ(テレビでよくみるスタジオの方の様子が見える様に抜くやつですね)でも表示できます。いくつかテストした結果、この比率と位置(こうすることでどこを見ればいいか迷わない箇所)に決定しました(代表理事の藤本さんの“オンライン配信”でのカンファレンス開催の選択肢とはより抜粋)。

無事に配信でのトラブルもなく、視聴された方々からも好印象の評価を得て終了できました。
開催報告についてはこちらを御覧ください。

2)オンライン開催が全て有効だとは言えない

トークセッションが主体のこのカンファレンス、すごくわかり易い表現を松林さんが話されたのが、視聴者がテレビスタジオに集まって番組を配信して臨場感がある、スタジオに参加した人が普段のカンファレンス参加者、テレビを見ている人が今回の配信を視聴している感じ。今年に限って言えば、スタジオ参加者のいない中での対談番組が配信されているイメージ。
テレビ局でしか出来なかったことが、現在は、簡易カメラ、パソコンとWi-Fiさえあれば最低限の放送局ができてしまうという時代、YouTuberの存在からもオンラインカンファレンスのハードルが実は低かったという感想をもちました。
しかし、全てオンラインに置き換わるか? そこはそうでも無いと感じます。
ピッチのような【ライブ感】が命のような場面、その場にいることが大きな意味をなすものについては、オンラインのみでは伝わらないのも同じ。これも過去からのテレビ番組の構成と親しいと思います。
オンラインに向くもの、向かないものこれを使い分けることが大切と感じます。
今回のカンファレンスでオンライン配信の裏方として大活躍されたHOT SCAPE社前野さんも当日早速、オンライン配信についてのコメントを発信されています。こちらを御覧ください。
その翌日にも【新型コロナウィルスに対するイベント開催(LIVE配信を終えて)】をコメントされています。

3)カンファレンスその後について

このカンファレンスの成功を自分たちだけのノウハウとするのではなく、早速に【オンライン配信ノウハウを伝えるオンラインイベント】と題して、3月6日に開催、このスピード感もオンラインだからこそですね。
またこのイベントの様子も、You Tubeにてご覧いただけます。是非、オンラインカンファレンスにご興味ある方にはご覧頂きたいと思います。オンライン配信ノウハウを伝えるオンラインイベントの動画はこちらです。
松林さんからは、展示会もオンライン化し始めていると教えてもらいました。ユーザベース社のオンライン展示会についても御覧ください。
時間と場所の制限を外す、情報を伝える部分だけをオンラインで、人と人とのコミュニケーション、ネットワーキングはオフライン、リアルイベントは無くならないし、必要であると思います。オンとオフの組み合わせでさらに人と人のコミュニケーションの向上に繋がる社会へと変化していくと感じます。

4)最後に松林さんからのメッセージを

私たちにたくさんの相談が来ていることを考えても、イベントや展示会などのオンライン配信化はこれまで以上に加速していくと思います。企業データのクラウド化も促進され、テレワークなどの働き方の選択肢もさらに広がると思います。杉浦さんがおっしゃるように全てがオンラインに切り替わることはないので、オンライン・オフラインをうまくバランスよく活用するということがあらゆる組織において求められることとなる時代になりました。やったことのないことに取り組むことは大変だと思いますが、失敗を恐れてやらないのではなく、改善しながらチャレンジしていく風潮に世の中が変わり働き方がよりよく変わっていくことを願っています。

働き方にも通じたこの団体の活動概要と共に、オンラインカンファレンスのあり方についてリポートいたしました。

働くと経営課題の画像です

以上(2020年3月作成)

採用ブランディング実践編〜自社のらしさを伝えきる/激動の2020年を勝ち抜く採用戦略(4)

世界中を震撼させる新型コロナウイルスの影響によって、日本の労働市場は大混乱に陥っています。空前の人手不足から一転、内定取り消し報道が相次ぐなど採用環境も激変。今後の見通しも不透明な状況です。
仮に厳選採用時代が到来したとして、一人ひとりのパフォーマンスが及ぼす影響度は高まりますから、自社のカルチャーにフィットした人材を採用することは極めて重要になってきます。
そういった意味でも今回お伝えする「採用ブランディング」は、こうした不透明な採用環境だからこそ、取り組むべき価値があるテーマだと言えるかもしれません。というわけで連載4回目の本稿は「採用ブランディング」の実践編。求職者が惹かれる魅力因子について、また自社の「らしさ」を伝える手法について、具体的に解説していきます。

1 オンラインリクルーティングの時代へ

新卒の就活を例にとって、求職活動の行動心理を見てみましょう。

  • 学生は企業側のいろいろな活動の目的を重視しています。
  • だからこそ、興味を持った企業のWEBコンテンツをよく見て研究しています。
  • そして、その思いに共感すれば、学生は企業規模に関係なく会いたいと思っています。
  • ただし、中小零細企業の場合はできるだけ早い段階で会いたいと思っているようです。

彼らの思考や行動の特徴は、上記の4点です。

特に1.の目的確認と2.のWEBチェックは、最近デフォルトになってきたと言っていいでしょう。自社の魅力を言語化し採用ホームページを拡充することが極めて重要であることを物語っています。
また、3.と4.にあるように、少しでも興味を持った企業とはとにかく早く会いたいと考えるのは、会うことでその企業の雰囲気を体感したいからに他なりません。逆に企業側からすると、自社の「らしさ」を体現したオフィスなどのリアル空間は、採用ブランドを高めてくれるアピールポイントにもなりうるわけです。
 しかし今回の新型コロナウイルス対策として説明会や面接がオンライン化すると、リアルな空間で企業の「らしさ」を伝えることができなくなります。そうなるとブランディングにおける採用ホームページの役割は、ますます重要になっていきそうです。

採用ホームページは、大手求人メディアの定型フォーマットより、はるかに自由度が高いぶん、「らしさ」や「魅力」を存分に伝えることができます。しかし逆に貧弱なつくりだったりすると、他の企業より劣って見られる可能性も多々あります。そういう意味では諸刃の剣とも言えるツールなのですす。
 いずれにせよ、これから押し寄せるオンラインリクルーティング時代には、自社の思いを語る上で、クリエイティブの質が明暗を分けていくことになりそうです。

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2 ブランディングには青臭い議論が不可欠

では、どうやって自社の魅力を見つけていけばよいのでしょうか。
自社の「らしさ」を再発見し、ブランディングにつながる魅力を再定義する。この作業には、経営層を巻き込んだ青臭い議論が不可欠です。「自分たちの社会的意義は?」「大事にしている価値は?」「事業の特徴は?」「仕事の魅力・面白さは?」「環境のよさ・働きがいは?」「どんなメンバーが活躍している?」「現状の課題は?」「今後、どうなりたい? どうあるべき?」などなど、徹底的に語り合いながら、自社の魅力を洗い出していきましょう。

議論する上での指針として、求職者の琴線に触れる企業の魅力=採用ブランドの源泉をカテゴライズしてお伝えしおきます。自社の魅力を整理するフレームワークとして、参考にしていただければと思います。

自社の魅力を整理するフレームワークの画像です

いずれにせよ「自分たちが何者なのか」という定義を自分たち自身で把握していなければ、自社の魅力を正しく伝えることはできません。採用ブランディングとは、自分たちが何者なのかを改めて見つめ直す作業なのです。

3 採用候補者の志向も科学する

採用ブランディングの目的が、自社の「らしさ」を再定義して、そのカルチャーにフィットした人材を採用することだとすると、自社にフィットするであろう人物についてもイメージを持っておく必要があります。
 「キャリア・アンカー」という言葉をご存知ですか。アメリカの組織心理学者エドガー・シャインによって提唱された概念で、自らのキャリアを選択する際に、最も大切な(どうしても犠牲にしたくない)価値観のことです。
 シャインは主なキャリア・アンカーを「管理能力」「技術的・機能的能力」「安全性」「創造性」「自律と独立」「奉仕・社会献身」「純粋な挑戦」「ワークライフバランス」の8つに分類しました。この価値観について、補助的な言葉を付加して分かりやすく解説しましょう。

  • 「管理能力」=マネージャー志向
    スケールの大きな仕事をしたい。組織を動かし人をリードしたいタイプ
  • 「技術的・機能的能力」=スペシャリスト志向
    専門分野のエキスパートとして活躍したい。「その道の大家」になりたいタイプ
  • 「安全性」=安定志向
    将来が見通せる安心がほしい。一つの仕事を続けていきたいタイプ
  • 「創造性」=アントレプレナー志向
    「新しい」「創る」といった言葉に反応する。起業化タイプ
  • 「自律と独立」=独立志向
    自分のペースで仕事をしたい。納得できるやり方で進めたいフリーランスタイプ
  • 「奉仕・社会献身」=社会貢献志向
    人の役に立ちたい。社会に貢献したいタイプ
  • 「純粋な挑戦」=チャレンジャー志向
    高い山があれば登りたい。不可能を可能にしたい。チャレンジしたいタイプ
  • 「ワークライフバランス」=ワークライフバランス志向
    仕事と生活全体のバランスが大切。個人や家族を尊重してほしいタイプ

自社にフィットするのは、どんな志向を持ったタイプなのか。あるいは社内で活躍している人材は、どんな志向を持ったタイプなのか。上記のキャリア・アンカーを参考にして、思い描いてみてください。

繰り返しになりますが、採用ブランディングの真の目的は、自社の魅力を再定義し、共感してくれる人材を集め、カルチャーにフィットした人材を採用することです。自社の「らしさ」と採用候補者の「らしさ」が重なった点に、採用成功というゴールが待っているのです。

次回は、争奪戦が激化しているエンジニア採用について取り上げます。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年3月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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【期首・期中編】棚卸資産の会計処理

棚卸資産とは、商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの資産(不動産会社が販売目的で所有する不動産を含む)をいいます。棚卸資産を取得したときや販売したとき、どのように損益に影響するのか? 事例を用いて期首・期中における棚卸資産の会計処理(仕訳)と、在庫管理のポイントを解説します(本記事で対象とする棚卸資産とは、商品のことです)。

 なお、決算処理フローに沿った、期末における棚卸資産の会計処理(仕訳)については、以下の記事をお読みください。

1 期首・購入・販売時の会計処理(仕訳)

    【期首に保有する棚卸資産】

    小売業を営むA社は、期首に100万円(商品α10個、単価10万円)の棚卸資産を持っています。

期首の貸借対照表上の「棚卸資産(資産)」勘定には、前期末の棚卸資産の金額が記載されています。

図表1の画像です

    【期中に購入した棚卸資産】

    A社は、期中に商品β100万円(50個、単価2万円)を掛けで仕入れ、運送費など1万円を負担しました。

棚卸資産を取得したときには、取得原価を算定して、次の仕訳を行います。このとき、忘れやすいのが運送費や保管料など(付随費用)の集計です。付随費用は、その物品を購入してから、自社の商品となるまでに必要な費用をいい、自社の棚卸資産の取得原価に含めなければなりません。

また、商品有高帳などに取得数量などの記録を行います。

図表2の画像です

棚卸資産を取得したときには、損益計算書の「仕入(費用)」勘定に計上し、直接「棚卸資産」勘定を増減させる仕訳は行いません。そのため、貸借対照表上の「棚卸資産(資産)」勘定に変動はありません。

図表3の画像です

なお、商品有高帳などへの取得数量・販売数量の記録方法には、「継続記録法」と「棚卸計算法」の2つがあります。

●継続記録法

継続記録法とは、棚卸資産を取得したときには取得数量を、販売したときには販売数量を継続的に記録し、棚卸資産の在庫数量を常に帳簿上に反映しておく方法です。

●棚卸計算法

棚卸計算法とは、棚卸資産を取得したときには取得数量を記録しますが、販売したときには記録を行わず、期末に実地棚卸を行って期末の在庫数量を把握します。在庫数量から取得数量を差し引くことによって、間接的に販売数量を計算する方法です。

一般的には、継続記録法で、取得と販売の都度記録を行い、期末に実地棚卸を行う方法が多く採用されています(継続記録法と棚卸計算法の併用)。

    【期中に販売した棚卸資産】

    A社は期中に仕入れた商品β10個を単価15万円で販売しました。

商品を販売したときは、次の仕訳を行います。また、商品有高帳などに販売数量などの記録を行います。

図表4の画像です

棚卸資産を売却したときには、損益計算書の「売上(収益)」勘定に計上し、直接「棚卸資産」勘定を増減させる仕訳は行いません。そのため、貸借対照表上の「棚卸資産(資産)」勘定に変動はありません。

図表5の画像です

なお、商品有高帳などに記録する際の販売単価の計算方法には、個別法・先入先出法などがありますが、それぞれの方法には決算の期末在庫の評価方法と関連するため、詳細は後日公開予定の「決算編」で解説します。

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2 在庫管理のポイント

1)保管コストと廃棄・陳腐化リスク

棚卸資産を保管するためには倉庫などが必要となります。保管コストの主なものには、倉庫の賃借料や在庫管理の担当者に係る人件費などがあります。

そのため、在庫が増えると、新たに倉庫などを借りる必要が出てくるため、賃借料が増加し、担当者も増やさなければならないため、人件費も増加します

また、在庫を長期間保管しておくと、商品自体が時代遅れになって想定していた販売価格では売れなかったり、時間経過による劣化が生じたりします。その場合、陳腐化による評価損を計上したり、商品を廃棄したりしなければならず、利益を減少させることになります。在庫が多ければ多いほど、このリスクは増加します。

2)財務コスト(金利)

在庫には、金利が掛かる(財務コスト)という考え方があります。例えば、棚卸資産を取得するために、銀行からキャッシュを借り入れたとします(借入利子の発生)。もし、棚卸資産がすぐ販売できれば、借り入れたキャッシュをすぐに返済することができ、支払わなければならない借入利子を払わなくて済みます。ただし、いつまでもその棚卸資産を販売することができない場合、現金が無く、いつまでも借入金を返済することができず、借入利子を払い続けなければなりません。

逆に、もし棚卸資産の取得に充てるための現金を銀行預金に預けた場合には、預入利子を受け取ることができます。ただし、棚卸資産の取得のために現金を使ったため、その分の預入利子を受け取ることができません。棚卸資産を在庫として持ち続けると、受け取ることができるはずの預入利子分、損をしていることになります。

このような在庫には利子が掛かっているという考えから、在庫が多ければ多いほど、この財務コストが大きくなります

3)在庫過少リスク

上記のようなコストやリスクだけを見て在庫を減らす一辺倒ではいけません。逆に、在庫が少な過ぎると、次のようなリスクやコストが生じます。

  • 販売機会を失う
  • 在庫を少なめに調整することを意識し過ぎて、少ロットの発注を増やしてしまい、かえって発注費(輸送費や事務作業に係る人件費など)がかさんでしまう
  • 大口の発注による値引きを受けることができず、単価が上がる

そのため、会計上の数値と営業上の状況とのバランスなどを考えながら、自社の適正な在庫数量を考えることが大切です。

以上

(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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”シェアリングエコノミー”で稼いだ所得。税金のルールはどうなる?

近年、「シェアリングエコノミー」と呼ばれる個人で始められるさまざまなビジネスが増え、それに伴い給与以外の収入を得ている人も多くなっています。この記事では、フリマアプリによる個人間の売買など、シェアリングエコノミーのような新しい取引に関する所得税法上の留意点などを解説します。

1 意外に忘れやすい従業員の所得税確定申告

勤務先が1カ所で、かつ、給与所得・退職所得(以下「給与所得等」)以外の所得がない従業員は、基本的には所得税の確定申告をする必要はありません。なぜなら、年末調整によって所得税の精算ができるからです。しかし、副業などによって、その年の給与所得等以外の所得の金額が20万円を超えると、翌年の3月15日(2019年分の確定申告については、新型コロナウィルス感染症の感染拡大の影響を受け、2020年4月16日に延長)までに所得税の確定申告をしなければなりません。

今まで年末調整のみで確定申告と無縁だった人が、新たに給与所得等以外の所得を得たことにより、申告義務が発生したことに気付かず、確定申告書の提出が遅れたり、未提出のままとなってしまったりするケースが少なくありません。

2 シェアリングエコノミーに関する取引と所得税法上の取り扱い

いわゆるフリマアプリやインターネットオークションによる個人間の売買、民泊、仮想通貨、カーシェアリングなどの取引が広がっています。もし、これらの取引で得た年間所得が20万円を超えると、原則、所得税の確定申告をしなければなりません。

ここでは、これらの取引に関する所得税法上の取り扱いを紹介します。なお、取り扱いが明確でない取引もあるため、税理士などの専門家に相談するようにしましょう。

1)フリマアプリやインターネットオークションによる個人間の売買

フリマアプリやインターネットオークションによる個人間の売買により生じた所得は、基本的には譲渡所得(詳細は後述)に該当します。しかし、自分の生活内で利用していた家具や着なくなった衣服など(以下「生活用動産」)の売買により生じた所得については、所得税は課税されません。ただし、生活用動産であっても、1単位当たりの金額が30万円を超える貴金属や美術品の売買により生じた所得は課税されます。一方、当初から転売を目的として購入した資産の売買により生じた所得については、所得税が課税されるものと考えられます。

2)民泊による不動産の貸し付け

不動産を民泊によって貸し出したことにより生じた所得は、原則として所得税が課税されます。国税庁においては、個人が空き部屋などを有料で旅行者に宿泊させるいわゆる「民泊」は、一般的に、利用者の安全管理や衛生管理、また、一定程度の観光サービスの提供などを伴うもので、単なる不動産賃貸とは異なり、その所得は、不動産所得(詳細は後述)ではなく、雑所得(詳細は後述)に該当する旨、注意喚起しているので留意しましょう。

3)カーシェアリングによる自家用車の貸し付け

カーシェアリングアプリやウェブサイトなどを介して、自家用車を貸し出したことにより生じた所得は、基本的には雑所得に該当すると考えられます。

4)家事・育児代行や技術の提供などリソースの提供

プライベートレッスンや、家事・育児代行などリソース(人手など)の提供によって生じた所得は、基本的には雑所得に該当すると考えられます。

5)仮想通貨の売買

ビットコインをはじめとする仮想通貨の売買や使用によって生じた所得は、原則として雑所得に該当します。

ただし、仮想通貨を売却せずに保有している場合における含み益に関しては、課税されません。


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3 確定申告を忘れてしまった場合

確定申告をしなければならない人が確定申告をすることを忘れてしまった場合には、期限後申告という形で申告をすることができます。

期限後申告をした場合には、原則として、納税額の15%相当額の無申告加算税が課されます。また、納期限の翌日から納付する日までの間において、納税額の年8.9%(納期限の翌日から2カ月を経過する日までの期間については、年2.6%)により計算される延滞税が課されます。このため、確定申告の対象とされる副業などによる所得がある場合において、確定申告期限までに確定申告をせず、期限後申告をしたときは、別途、ペナルティーが課される点に留意する必要があります。

もし、確定申告の提出を忘れていたことに気付いたときは、なるべく早く申告書を提出するようにしましょう。

4 (参考)給与所得以外に生じる主な所得

所得税には、給与所得等以外に事業所得・不動産所得・利子所得・配当所得・雑所得・譲渡所得・一時所得・山林所得の計10種類の所得があります。

ここでは、副業などにより、給与所得等以外に生じる主な所得として、「譲渡所得」「不動産所得」「雑所得」の内容を紹介します。

1)譲渡所得

譲渡所得とは、資産の譲渡により生じる所得をいいます。
譲渡所得に係る所得税の計算方法は、譲渡した資産の種類により異なります。不動産・有価証券以外の資産に係る譲渡所得は、他の所得と総合して所得税を計算します(以下「総合課税」)。

一方、不動産・有価証券の譲渡による譲渡所得は、他の所得と分離して所得税を計算します(分離課税)。不動産・有価証券の譲渡による譲渡所得に対する税率は、原則として15%(復興特別所得税0.315%および住民税5%を合計すると、計20.315%)です。
譲渡所得の計算方法は、次の通りです。

譲渡収入-(取得費+譲渡費用)

総合課税の場合は、上記により計算した金額から特別控除額(限度額:50万円)が控除されます。このため、総合課税の対象となる譲渡による利益が50万円以下の場合には、譲渡所得は生じないことになります。

2)不動産所得

不動産所得とは、不動産の貸し付けにより生じる所得をいいます。
不動産所得は、総合課税により所得税を計算します。不動産所得の計算方法は、次の通りです。

不動産収入-必要経費

不動産所得については、事前に、青色申告の承認申請書を提出することにより、青色申告特別控除(最高65万円)などの特典を受けることができます。

3)雑所得

雑所得とは、利子所得・配当所得・不動産所得・事業所得・給与所得・退職所得・山林所得・譲渡所得・一時所得のいずれにも該当しないその他の所得をいいます。雑所得は、総合課税により所得税を計算します。

雑所得の計算方法(公的年金等以外)は、次の通りです。

収入金額-必要経費

毎年確定申告を行う必要がある個人事業主等に比べ、給与所得者は確定申告をすることを忘れることも珍しくないと思われることから、注意が必要です。

また、年末調整の対象外である医療費控除などの適用を受けるために確定申告を行う場合には、副業などによる所得の金額が20万円以下であっても、確定申告の所得計算にその金額を含める必要があります。

以上

(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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新型コロナウイルスで注目されるオンライン採用!/激動の2020年を勝ち抜く採用戦略(3)

世界中を震撼させる新型コロナウイルスの影響によって、日本の採用市場も大混乱に陥っています。もっとも影響が大きいのは、これからピークを迎えていく新卒の就活シーンです。

骨太で実践的な採用戦略を提供する本連載では、前回、採用戦略策定の第一歩ともいうべき「採用ブランディング」の重要性について解説させていただきました。連載第3回目の本稿はその後編として採用ブランディングの具体的ノウハウについて述べるつもりでした。
しかしながら、昨今の状況を鑑み内容を変更し、新型コロナウイルスへの対応策となりうる【オンライン採用手法】についてお届けいたします。

1 説明会も面接もヤバイ

政府は2月26日、新型コロナウイルス感染症対策本部を開き、大規模なスポーツや文化イベントなどについて、今後2週間程度、中止か延期、または規模を縮小するよう要請する公式見解を示しました。呼応するように、大物ミュージシャンのコンサート中止の報が飛び交うなど、たくさんの人が集うイベントの中止が相次いでいます。

例年2月後半から3月にかけては、新卒向けの大規模な合同企業説明会が開催されます。これらの就活イベントは総じて中止となり、さらには企業が個別に主催する会社説明会も続々と中止が決定されています。

また、今後の選考プロセスも不透明感でいっぱいです。感染拡大のリスクが高い行為として、「対面での人と人との距離が近い接触(手を伸ばしたら届く距離)」「会話などが一定時間以上続き、多くの人と交わされる環境」が挙げられていますから、「対面での採用面接」はかなり危険度が高いシチュエーションと言わざるをえません。

2 WEBシューカツ推進委員会

とはいえ、今年度は東京オリンピック開催年でもあり、就活のスケジュールを変更するのが容易でないことも事実です。そういった状況下で、急速に企業の間で広まっているのがオンライン(=WEB)を活用した採用です。
HRテックといわれるサービスの一角として、昨今台頭してきたオンラインでの説明会やWEB面接などに切り替える企業が急増しているのです。

こうした企業側の対応だけでなく、無償でのサービス提供に踏み切るHRテック企業の動きもあります。中には「企業の責任として、少しでも就活生の不安を軽減させたいと考え、Webシューカツ推進委員会を発足します」というテック企業連合も登場しています。

3 水面下で広がっていた非対面採用

オンラインでの企業説明会は、一般的にウェビナー(Webinar)と呼ばれています。ウェビナーは “ウェブ(Web)” と “セミナー(Seminar)” を合わせた言葉で、その名のとおり動画を使ったセミナーをインターネット上で実施することをいいます。一方的に情報を伝えるだけではなく、昨今では音声通話やチャットを活用して質問もできるようになっています。

また、WEB面接とは、Skypeなどのインターネットを介して行われる面接全般のことを指します。WEBカメラを通してリアルタイムに行われるライブ式と、撮影した動画を専用のプラットフォームに投稿する動画投稿形式の2つがあり、各企業が自社の採用戦略に合わせて使い分けています。

実は、こうしたオンラインを駆使した動画面接サービスは数年前からありました。人材サービス大手のマイナビが実施した調査によると、WEB面接を経験した就活生は、2019年卒では11.5%、2020年卒では20.2%。この1年で倍増するくらい注目は高まっていました。
日程が合わなかったり、地方在住で面接に来るのが大変だったり、“今まで会えなかった就活生”とオンラインでなら出会えるというメリットもあり、徐々に広まっていたのです。

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4 やっぱりリアルには勝てない?

そうした側面がありつつも一気にブレイクしていかないのは、やはり「非対面」であることに対する懸念が拭いきれないからです。特に、商社や飲食・小売りといった対面を重視する業界では、採用プロセスのオンライン化が進んでいない傾向にあります。
我々、ツナグ働き方研究所の取材でも「やっぱり実際に会ってみないと人物の見極めができないのでは?」という採用担当者が多く存在しました。

学生側の受け止め方も、実はまだ抵抗感のほうが強いようです。ある就活サービス大手の調査では、「採用プロセスのWEB化を望むか」という質問で、会社説明会については約50%が「望む」と回答。「望まない」の約20%を抑え、WEB化歓迎の傾向ですが、面接は「WEB化を望まない」が過半数という結果に。選考というプロセスにおいては、企業と同様にリアルな対面でのシチュエーションを望む傾向が強いようです。

5 緊張というハードルを下げる効果も

端末の準備や場所の設定などWEB面接に臨む環境面で不安があるという声もあります。しかし今の就活生は、そもそもデジタルネイティブ世代。日常ではYouTubeなど動画サイトを中心に情報収集や発信をしています。一度経験することで、オンラインならではのメリットを体感する学生もいます。
WEB面接を経験したある学生に取材したところ「リアルな面接の場だとガチガチに緊張してしまうけど、オンラインの動画だとあまり緊張せずにすんだ。ちゃんと自分を出せて納得のいく面接ができました」と話してくれました。
リアルコミュニケーションに委縮しがちな彼らにとって、WEB面接のほうが、自然体で臨むことができ、本来の自分をアピールできるというのは一理あります。

かくいう私も、参加予定だったセミナーがZoomというWEB会議システムで開催されることに急遽変更され、先日オンラインでのセミナー受講を初体験しました。もちろんリアルな場での臨場感には及びませんが、講師や他の受講者とのコミュニケーションは思ったよりスムーズでした。チャットだと人目を気にせずにすむので、むしろ質問をしやすいなど、先述の学生の気持ちがよく分かりました。

確かに、面接官が候補者の緊張をほぐすのは、面接における重要命題です。面接官研修などでは、「選考のための質問スキル(情報収集力)」「自社を魅力づけるプレゼンスキル(情報伝達力)」と同じくらいのウエイトで「候補者の緊張をほぐす場づくりスキル(信頼関係構築力)」についてのレクチャーが行われます。このことからも、緊張のあまり実力が発揮できない学生たちの「素」をチェックすることが、どれほど重要かが分かります。

6 デジタルアレルギーを乗り越えるチャンス

加えて言うと、今まで面接官が面接の役割自体が低下しているという向きもあるのです。
リアル面接の神話が崩れてくるとなると、オンライン化を阻む最後の壁は、企業側のデジタルサービスへのアレルギーだけになってきます。

デジタル音痴の私がまさにそうです。先述の受講セミナーがオンライン開催に変更されると聞いたとき、正直気が進みませんでした。どうやってシステムにログインすればいいのか、音声はどうすれば聞こえるのか、などなど考えると憂鬱な気持ちになりました。
しかし経験してみると、非対面への懸念はかなり払拭され、デジタルへの距離感も一気に縮まりました。

時に人と企業との「結婚」にも例えられる就職活動。新型コロナウイルス感染という非常事態を機に、消極的な選択としてWEB面接を利用することになった企業も、その体験によって、今後は積極的な選択としての利用に変化していくケースが多々あるはずです。そういった意味において、2020年は「面接の常識が変わった年」と、歴史に刻まれることになるかもしれません。
いま検討中の企業、それでも対面がいいと考えている企業、さまざまだとは思います。今回の危機を採用革新の好機と捉え、ぜひチャレンジしていただきたいと思います。

次回こそは、採用ブランディングの実践編をお届けいたします。

以上

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仲人を頼まれた時の準備とスピーチの参考事例

書いてあること

  • 主な読者:部下から仲人を頼まれた経営者、上司
  • 課題:引き受けるに当たり、役割や心構えを知りたい
  • 解決策:結納から会場のセッティング、スピーチまで役割は多岐に渡るので、段階ごとに役割を把握する

1 仲人の役割

現在では、仲人を立てて結婚するカップルは少なくなっているようですが、経営者は立場的に仲人を頼まれることもあるでしょう。

本稿では、仲人を務めるためには、何に気を配り、どのような「役割」を果たせばよいのかを中心に紹介します。

なお、本稿では、結納や結婚式での礼儀作法に関する事柄については割愛しています。

2 仲人を引き受ける前に考えておきたいこと

1)仲人に必要な心構え

仲人とは、本来、お見合いから結婚式・披露宴にまで関与して結婚の仲立ちを務める存在を指します。仲人は、結婚に深く関わる存在であり、結婚する当人たちの双方、少なくとも片方をよく知っている必要があります。

また、結婚式・披露宴のほとんどは円満に進むとはいえ、当日に至るまでに意見の食い違いやトラブルが発生しないとも限りません。また、結婚後もトラブルがあると、仲人は当人たちや親から相談される可能性があるでしょう。

従って、仲人を引き受ける際は、「当人たちをよく知っていること」「親を説得してでも、結婚する当人たちの意見を尊重できること」「婚約解消という事態にも冷静に対処できること」などの心構えを持っておく必要があります。

2)婚約解消などのトラブルへの対処も必要

仮に婚約解消などのトラブルが発生した場合、仲人には、断られた側を気遣いながらも、冷静にしかるべき「事後処理」を行う役目があります。

婚約解消が法的に認められるのは、「相手が著しく経歴を偽っていた」「婚約中に相手が他の異性と関係した」「相手からひどい侮辱、虐待を受けた」「相手が再起不能の傷病を負って、正常な結婚生活ができなくなった」などとされています。

婚約解消を希望しているのであれば、仲人は当人や親と相談しながら、話し合いを進めることになります。婚約解消の場合、「婚約披露に要した費用」「結婚の準備に使った費用」「結婚のために職場を辞めた場合の損害」「婚約解消によるショックで病気になった場合の治療費や精神的苦痛に対する慰謝料」などが必要になる場合があります。

婚約解消は繊細なトラブルであり、かつ金銭の損害などが生じる場合は、話がこじれることも想定されます。弁護士に相談するなどして、対応するとよいでしょう。

また、婚約解消にともない、「これまで互いに交換した結納品、結納金、家族書、履歴書、写真、プレゼントなどを返却し合う」「関係者へ婚約解消の旨を連絡する」などの事後処理も必要になります。

3 仲人に求められる「役割」

1)仲人に求められる役割

結納の儀、そして、結婚式会場のセッティングまで、無事、結婚式を迎えるまでに仲人が果たすべき仕事は、「調整役」「アドバイス役」などと決して少なくありません。ここではそれらを、各段階に分けて紹介します。

2)結納の儀

結納とは、正式には、仲人が両家の使者として双方の家を往復し、互いの結納品を送り届けるものです。しかし、現在は両家が一カ所に集まって結納品を取り交わす略式が一般的であり、結納そのものを行わない場合もあります。

1.結納に関する調整事項

「結納品」は地方によって差があるので、両家の出身地のしきたりに応じて調整する必要があります。「結納金」については、女性側に嫁入り支度に必要な費用を確認した上で、男性側に伝えて額を決定するのが妥当といえるでしょう。

次に、結納の儀のときに取り交わす「家族書・親族書」については、特に、親族書はどの程度の親族まで記載するか、両家と打ち合わせをして決めます。さらに、当日の「服装」については、両家の意向を確認した上で仲人夫妻もそれに準じた装いをします。

2.結納品

結納品は、次の9品目が一般的とされていますが、5品目、7品目の場合もあります。なお、地方によっても結納品は異なります。

  • 目録:結納品とその数量を箇条書きにしたもの
  • 長熨斗(ながのし):あわびを長く伸ばしたもの
  • 金(宝)包:結納金
  • 末広(すえひろ):白無垢の扇子
  • 友白髪(ともしらが):麻ひも
  • 子生婦(こんぶ):昆布
  • 寿留女(するめ):するめ
  • 勝男武士(かつおぶし):鰹ぶし
  • 家内喜多留(やなぎだる):清酒を入れた樽ですが、一般的には樽料としてお金を包みます

さらに、結納の儀では「結納品の並べ方」「結納受渡の作法」「仲人口上」などの作法を覚えることも重要になります。

なお、キリスト教の場合、結納の代わりに「婚約式」を行う場合もあります。作法その他については、事前に神父や牧師が細かく教えてくれるので、心配ないでしょう。

3)挙式への準備期間

1.結婚式・披露宴の費用分担

結婚式の挙式の方法や披露宴の規模などは、両家の資産や社会的立場によって意見に食い違いが出やすいところです。仲人としてはよく話し合って、双方にとって納得のいく最善の妥協点を見つけて調整をする必要があります。

2.招待客のバランス

招待客の顔ぶれや、人数の割り振りも、仲人が間に立って調整します。一般的には、両家同数にそろえるのが理想です。

3.式場側との打ち合わせ

当人たちに任せてもよいのですが、同行を求められれば行ったほうがよいでしょう。その場合、式場の「責任者」や「係員」とできるだけ親しくなって良い関係をつくっておくとよいでしょう。

また、挙式から披露宴までを取り仕切る「世話役」、披露宴会場の「受付係」、来賓を控室にお通しする「案内係」などのスタッフとの顔合わせをして、披露宴の進行について、きめの細かい打ち合わせをしておきます。

最後に忘れてはならないのは、急病などにより、式に参加できなくなったときのために、「代わりの媒酌人(仲人)の手配」まで行っておくことです。

4)挙式および披露宴

1.挙式

神前の場合、事前の打ち合わせによって、誓詞(せいし)の奏上や玉串奉奠(たまぐしほうでん)を新郎新婦に代わって仲人が行うことがあります。その他の場合は、神主や僧侶、あるいは神父や牧師から、何をすればよいか当日詳しく説明があります。

2.挙式後の両家親族紹介

挙式後一堂に会した両家親族の紹介役を務めます。あらかじめ、親族についての基本知識と新郎新婦との関係を頭に入れておかなければなりません。

3.来賓の出迎え

会場入り口で来賓への応対あいさつを行います。両家を代表する一人として、風格のある態度、上品な身のこなしが望まれるところです。

4.媒酌人(仲人)のスピーチ

式の冒頭で述べられる媒酌人(仲人)のスピーチは、式の雰囲気を盛り上げる基盤づくりを行う上で重要な役割を担っています。

5.新郎新婦の介添

新郎新婦のお色直しの際には、媒酌人(仲人)夫妻が同行します。特に、媒酌人(仲人)は花嫁の介添人として、お色直しの合間を縫って口にできそうな飲み物や簡単な軽食を用意する、移動の際に衣装を踏んだり、つまずいたりしないよう、階段を下りる際には、1段先に降りて花嫁の手をとって誘導するなどの点に配慮しましょう。

6.来賓の見送り

大役をほぼ終えて、疲れが顔に出やすいところですが、最後まで笑顔を忘れず、来賓一人ひとりに心のこもったお礼の言葉を述べます。

4 媒酌人(仲人)のスピーチ参考事例

1.参列者へのお礼

本日は○○、▲▲ご両家の結婚披露宴にご列席賜りまして、誠に有難うございます。

2.媒酌人としての自己紹介

私はご両家の媒酌を務めることになりました●●でございますが、ふつつかながら一言あいさつを述べさせていただきます。

3.結婚式が済んだことの報告

まず、新郎新婦は先ほど神前において、結婚の儀を滞りなく挙げられましたことを、ここに慎んでご報告申し上げます。 

4.新郎新婦の紹介(両家紹介)

さて恒例によりまして、新郎新婦のご紹介をさせていただくことにいたします。

新郎の○○太郎君は、○○夫・○○子ご夫妻のご長男として、○○年、○県○市にお生まれになりました。○○大学をご卒業後、○○商事に入社され、現在海外営業部に勤務されています。海外営業の第一線でご活躍される前途有望な青年であります。また、ご覧の通りの体格で学生時代はボート部の主将を務めた経験もあり、周囲からの人望も厚い好青年です。

一方、新婦の○○子さんは、○○郎・○美ご夫妻の次女として、○○年、○県○市にお生まれになりました。○○音楽大学をご卒業後、現在はピアノの教師をなさっています。特に芸術の才能に優れていらっしゃる才媛で、ピアノ以外にフルートも演奏なさる他、作詞・作曲もなさいます。ご覧のように誠に相ふさわしいご良縁であると確信いたしまして、私ども夫婦は喜んでお二人の新生活のご出発をお手伝いさせていただいた次第でございます。

5.新郎新婦への今後の支援を願う言葉

若いお二人の新しい門出に当たりまして、媒酌人としてご列席の皆様に今後とも機会あるごとに、いろいろとご指導ご支援賜りますようにお願い申し上げて、媒酌人としてのごあいさつとさせていただきます。

以上(2020年3月)

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製造物責任(PL)法の概要と同法への輸入業者の対応

書いてあること

  • 主な読者:PL法への対応が必要な製造業者や輸入業者
  • 課題:PL対策として何に取り組むべきか分からない
  • 解決策:本稿では、製品事故の未然防止、保険への加入などを取り上げるので、これらを参考に対策を行う

1 PL法の概要

「製造物責任法」(以下「PL法」)は、製造物の欠陥により人の生命、身体または財産に係る被害が生じた場合にメーカーや輸入業者の損害賠償の責任について定めた法律です。

PL法の特徴は、被害者の円滑かつ適切な救済を行うため、企業に過失がなくても製品に欠陥があれば賠償責任を負わせるという点にあります。すなわち、被害者である消費者が救済されやすくするとともに、企業には製品の安全性確保のための努力を促す法律であるといえます。

1)製造物

PL法では、製造物を「製造又は加工された動産」と定義しています。一般的には、工業製品を中心に、人為的な操作や処理がなされた動産を対象とします。未加工の農林畜水産物や不動産、電気やソフトウエアなどの無体物はPL法に定める製造物には該当しません。

2)欠陥

PL法でいう欠陥とは、「当該製造物に関するいろいろな事情(判断要素)を総合的に考慮して、製造物が通常有すべき安全性を欠いていること」をいいます。安全性に関わらないような、単なる品質上の不具合はPL法が定める欠陥には該当しません。

欠陥の類型としては、次の3つがあります。

  • 製造上の欠陥(製品の製造過程で粗悪な材料が混入したり、製品の組み立てに誤りがあったりなどの原因により、製品が設計・仕様通りに作られず安全性を欠くような場合)
  • 設計上の欠陥(製品の設計段階で十分に安全性に配慮していなかったために、製造される製品全体が安全性に欠ける結果になるような場合)
  • 指示・警告上の欠陥(有用性ないし効用との関係で除去し得ない危険性が存在する製品について、その危険性の発現による事故を消費者側で防止・回避するに適切な情報を製造事業者等が分かりやすい方法で与えなかったような場合。表示や取扱説明書中に、指示や警告が適切に示されているかどうかも考慮されます)

3)製造業者等

PL法でいう製造業者等とは、製造物の製造業者、加工業者、輸入業者、および製造物に氏名などを表示した事業者を指し、単なる販売業者は原則として製造業者等には該当しません。ただし、販売業者であっても、OEM製品やプライベートブランドのように、販売業者の名前が前面に出ており、販売業者への信頼によって消費者の商品選択が行われるような場合には、その販売業者はPL法に定める製造業者等に該当します。

また、販売業者の名前が製造物に記載されていなかったとしても、実際の製造業者の名前を出さずに、販売業者が自社の名前で広告を展開するような場合は、販売業者は製造業者等に該当します。こうしたケースは医薬品などでよく見られます。

4)賠償責任

製造業者等が賠償責任を負うのは、製造物の欠陥により、人の生命、身体に被害をもたらした場合や、欠陥のある製造物以外の財産に損害を与えた(拡大損害が発生した)場合です。欠陥のある製造物のみの損害にとどまった場合は、PL法の定めによる賠償責任は発生しません。

5)免責

製造物の欠陥による拡大損害が発生した場合でも、製造業者等が賠償責任を免責される2つの場合が規定されています。

1つは、製造物の引き渡し時点の科学技術の水準では製造物に欠陥があることが分からなかった場合です。これは例えば、製造当時は危険はないとされていた物質が、後になって発がん性を持った物質であることが判明した場合などがあります。

もう1つは、部品・原材料の製造業者等において、その部品・原材料を組み込んだ製造物の製造業者等の指示に従ったために欠陥が発生した場合で、部品・原材料の製造業者等に過失がなかった場合です。この場合、部品・原材料の製造業者等は免責となります。

例えば、下請け業者が、納入先からの規格や仕様などの指示に従って部品を製造したものの、指示に誤りがあったために欠陥が発生する場合などがあります。この場合、下請け業者は免責となります。ただし、下請け業者が、指示に誤りがあることに気付いていながらその誤りを指摘しなかった場合などは、下請け業者に過失があったとして賠償責任を負わされる可能性があります。

免責事由は上記の2つですが、いずれの場合も、免責事由に該当することを製造業者等が立証しなければなりません。

6)民法の適用

安全性に関わらない不具合はPL法に定める欠陥に該当しないため、そうした不具合があってもPL法に基づく賠償責任は発生しません。また、製造物に欠陥があったとしても、拡大損害が発生しなかった場合はPL法に基づく賠償責任は発生しません。

ただし、これはあくまでPL法に基づく賠償責任がないというだけで、こうした場合には民法の瑕疵(かし)担保責任(2020年4月以降は契約不適合責任)、債務不履行責任、不法行為責任に基づいて賠償責任が発生する場合があります。

2 PL法への対応

1)製品事故の未然防止

PL法への対応としてまず考えるべきことは、製品の欠陥をなくし、製品事故を未然に防ぐための対策を講じることです。前述の通り、PL法でいうところの「欠陥」には、製品自体の欠陥だけでなく、指示・警告上の欠陥も含まれます。そのため、製品事故の未然防止を考える際には、その両面から考える必要があります。

1.製品の安全性向上

製品自体の安全性を向上させるべく、設計・製造段階において対策を講じます。その際に留意すべき点は次の通りです。

【設計段階】
  • 技術開発、および安全性試験の強化を進める
  • 販売店や消費者の意見を反映させるシステムを確立する
  • 自主基準を更新し、高度化を図る
【製造段階】
  • 製造マニュアルの見直しを含め、製造工程の改善を図る
  • 外部機関を活用する(民間機関による自主的な認証制度の導入)
  • 企業間の協力体制を整備する(親企業と下請け企業、部品・原材料や産業用機械のメーカーとユーザー、メーカーと販売業者などの企業間や業界単位で安全性チェック体制を整備)

2.表示・取扱説明書の充実

製造物の取り扱いについて消費者に情報を伝達し、誤使用などによる事故の防止を図ります。その際に留意すべき点は次の通りです。

  • 取扱説明書の内容をより一層分かりやすいものにする
  • 危険レベル(危険、警告、注意)の表示などに統一的な基準を導入する
  • 表示事項の優先度、内容および表示方法の見直しを図る
  • 過去の事故やクレームを参考にする

2)社内体制の構築

製品自体の安全性向上に取り組むとともに、安全性確保に向けた社内体制の構築・整備も重要です。社内体制の構築に当たっては、経営者が自ら先頭に立ち、PL対策への取り組みを推進しなければなりません。その際に留意すべき点は次の通りです。

  • 社員教育を徹底し、製品の安全性を重視する社風を作り出す
  • 製品の技術開発、安全性試験の強化を図る
  • 部品や原材料の品質管理を徹底する
  • PL対策部門の設置および専任スタッフを任命する
  • 検査記録などの文書の管理をしっかり行う
  • 消費者のクレームなどを迅速に処理するため、紛争解決体制を整備する

3)保険への加入

細心の注意を払っていても、事故が発生する可能性はゼロにはなりません。万一事故が発生した場合、企業は多額の費用負担を強いられる恐れがあり、それを回避するための手段として、保険の加入があります。

損害保険会社や商工会議所などでは、製造物責任を補償する保険を取り扱っています。

3 輸入業者とPL法

1)輸入業者の責任

製造業者とともに輸入業者もPL法において責任主体となっています(PL法第2条)。この規定の趣旨としては、次の事項が挙げられます。

  • 輸入業者は日本国内における最初の流通開始者または製品供給者である
  • 輸入業者は日本国内の規制を受ける最初の事業者である
  • 外国の製造業者の責任を問うことが実質的に困難である

例えば、商社が米国から玩具を輸入し、国内の流通業者を通じ全国で販売したとします。その玩具に設計上の欠陥があり、玩具を使用していた子供がけがをした場合、商社はPL法の規定に基づき賠償責任を負います。

輸入業者も事故発生の際、製造物責任を負う可能性があることから、製造業者同様、PL法への対策が求められています。

輸入業者は、輸入業者固有のものとして次のような対策を講じる必要があります。

2)製造業者のPL対策の確認

輸入した製品を国内で販売する場合、製造業者がどのようなPL対策を講じているかを確認することが重要です。その際の確認方法として、次に挙げる資料を製造業者から入手するなどしておくとよいでしょう。

  • 製品の設計図・仕様書
  • 各種安全基準の認定証
  • 製造工程表
  • 取扱説明書・警告表示
  • クレーム処理マニュアル
  • PL保険証券の写し

前述の資料だけで不十分な場合、輸入業者は製造業者から直接話を聞くか、製造工場を訪問します。製造業者のPL対策を確認した結果、国内で製品を販売する際に問題となる点が判明した場合には、輸入業者は製造業者に対策の改善を求める必要があります。

3)取扱説明書や警告表示の翻訳

輸入品の取扱説明書や警告表示は、日本の消費者が理解できるように日本語に翻訳する必要があります。この際、「意味・内容を取り違える可能性がある」「日本語として分かりにくい」など、適切な翻訳がなされていないと、「警告・表示上の欠陥」として輸入業者が損害賠償責任を負う可能性があります。

さらに、翻訳が不適切であったために「警告・表示上の欠陥」となった場合、その責任は輸入業者にあると考えられ、製造業者に対して求償できない恐れがあります。

従って、輸入業者が日本語の取扱説明書や警告表示などを作成する場合は、製造業者に内容の確認をとりながら、慎重に作業を進める必要があります。

4)輸入契約の締結

輸入した製品に欠陥があり、事故が発生した場合、PL法の規定により輸入業者は損害賠償責任を負います。輸入業者が支払った賠償金について、輸入業者は、改めて製造業者に損害賠償を求めることができますが、必ずしも賠償金の支払いを受けられるというわけではありません。また、訴訟によって製造業者に損害賠償を請求する場合、製造業者の所在する国と日本との法制の違いなどもあり、手続きも複雑です。

従って、輸入業者が製造業者と輸入契約を締結する際には、次の条項などを盛り込んでおく必要があります。

  • 製品の欠陥により輸入業者が損害賠償請求を受けた場合、製造業者に求償できる
  • 日本国内で発生したトラブルに基づく訴訟については、日本の法制に従う

ただし、契約書に求償権について規定していたとしても、実際に製造業者に支払い能力が無ければ意味がありません。輸入業者は、輸入契約締結に際して、製造業者の企業規模などを考慮するとともに、製造業者は、日本を対象地域とするPL保険に加入することを義務付けておくとよいでしょう。

以上(2020年3月)

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【朝礼】「おみくじ」は、何度でも引ける

もうすぐ新年度がスタートします。新年度、皆さんには、何事にも強い意志を持ち、諦めずに進めてもらいたいと思っています。今日は、その参考になる2つの話をします。

1つ目は「おみくじ」の話です。皆さんは、お寺や神社でおみくじを引くとき、何かこだわっていることはありますか。中には、自分なりのルールを決めている人もいるかもしれません。私の場合、「おみくじは、大吉が出るまで何度でも引く」ことにしています。このやり方を、もう10年以上続けており、今年の初詣では、5回目で大吉を引くことができました。

賛否両論あるでしょうが、私はこのやり方が良いと信じています。「おみくじは一度しか引いてはいけない」と法律で定められているわけではありません。たとえ「凶」など自分にとって良くない内容が出たとしても、そこで悲観して終わってはいけません。「大吉を引く」と自分で決めたら、大吉が出るまで引き続ければいいのです。私にとって大事なのは、「大吉が出た」ことではありません。「大吉が出るまで諦めずに引き続けた、そして大吉を引いた」ことなのです。

陸上競技の桐生祥秀選手が100メートル走で、日本人初の9秒台を記録した際のインタビューで、「大吉が出るまでおみくじを引き続けた」と語っており、同様のエピソードを持つ著名人は他にもいます。「大吉が出るまで引く」のは、ある意味で強い意志の表れともいえるかもしれません。

2つ目の話は、帝人の元会長・社長である長島徹氏のエピソードです。

長島氏が幼い頃、高価だった野球ボールの代わりに何時間もかけて布を巻いて作ったボールが、竹やぶに入ってしまったことがあったそうです。必死に捜しても、なかなかボールは見つかりません。そのとき、長島氏は、神様に「どうぞ諦めさせないでください」と祈ったというのです。「どうかボールが見つかりますように」ではなく、「自分が諦めるという考えを抱くことのないように」と祈ったのです。

「何事も自分の気持ち次第だ」という強い意志の大切さを、幼いながらに体現した長島氏のこのエピソードが、私は大好きです。私も、ビジネスでうまくいかないことがあり、諦めてしまいそうになったとき、心の中で「どうぞ諦めさせないでください」と言っています。祈るというよりは、私自身の意志を、いま一度奮い立たせるために言うのです。

皆さんは、この2つの話を聞いてどう感じるでしょうか。ビジネスの状況は刻一刻と変わります。周りから、いろいろと言われることもあるでしょう。それらに一喜一憂し、右往左往してはいけません。時と場合によりますが、大切なのは、強い意志を持つこと、そして簡単に諦めないことです。そうすれば、必ず道は開けます。新年度、皆さんが自分自身の道を開いていくことを、私は大いに期待しています。

以上(2020年3月)

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画像:Mariko Mitsuda