【朝礼】正しい優先順位を付けて価値ある仕事をしよう

複数の仕事を同時に進めるとき、しばしば課題となるのが優先順位の付け方です。皆さんに、なぜ優先順位を決められないかを聞くと、「そもそもどれが重要な仕事なのかを判断できない」などの意見が出てきます。しかし、私から言わせると、これは単なる言い訳です。

ここで、優先順位付けと共通する部分が多い、片付けを例に考えてみましょう。皆さんは、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんを知っていますか。彼女の片付け術の特徴は「残すものを選ぶ」という考え方です。

片付けといえば捨てることに目が行きがちですが、近藤さんは「ときめくものだけを残すこと」を勧めています。ときめくというのは、その服を着ると自信が持てるなど、前向きな気持ちになれることを指します。ときめくものを残すことで、自分のモチベーションが上がるというのです。

また、片付けの最中には、ときめくのか、そうではないのか、迷うものも出てきます。その際に重要になるのが、片付けのゴールです。「夜7時、キッチンで、家族全員が協力して、夕食を準備する生活を送る」など、ゴールを具体的にイメージすることで、それを実現するために何を片付けるべきなのかが明確になります。

近藤さんの片付け術を実践した人は、自分がときめくものや、求める生活が明確になることで、不要なものを買わなくなり、再び散らかってしまうという事態を防げると感じるようです。

片付けと仕事はそのまま比較できませんし、仕事の優先順位付けの基準は「ときめくものだけを残すこと」とは違い、状況によってさまざまな判断があり得ます。しかし、皆さんは優先順位を決める基準をどれだけ意識して、日々の仕事に取り組んでいるでしょうか。

例えば、仕事においては、最も収益につながる、最も時間がかかるなどの基準がありますが、これらは過去の経験を基に判断することになります。つまり、優先順位を正しく付けられないのは、これらの経験を積み重ねていないからです。仕事のゴールを考えて、それに向かって最もよい結果が得られるようにという視点ではなく、「目先にあるので」「やりやすいから」という理由で仕事に取り組み、根拠ある行動を避けているのです。

「過去の経験にとらわれず、感じたままに行動する」ことも、時には大切です。ただし、基準となる過去の経験が何もない状態ならば、どれくらい新しいのか、どれくらいリスクがあるのかを測ることができず、無謀な挑戦になるだけです。

正しい優先順位付けは全ての社員に必要ですが、特に管理職が間違えた優先順位で指示を出せば、部下はムダな動きをします。加えて、目先の仕事や、やりやすい仕事を優先するということは、管理職としての責任や人件費に見合わない仕事を優先することになります。管理職の皆さん、正しい優先順位を付けてチームを率い、会社に貢献する働きをしてください。

以上(2019年3月)

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画像:Mariko Mitsuda

社内提案制度において提案の量・質を確保するための重要なポイント

書いてあること

  • 主な読者:社内提案を取り入れている企業の経営者
  • 課題:良い提案がない。提案自体なかなか挙がってこない
  • 解決策:ノルマ制やインセンティブ、評価制度の確立などによって提案を出しやすい雰囲気作りが必要

1 社内提案の意義

社内提案制度を導入して、社員の多様な知識を経営に生かそうと試みる企業が多くあります。社内提案制度の対象となる事柄は、些細な業務改善から新規事業の立案までさまざまです。いずれの場合も、社員の多様な知識を提案という形でうまく吸い上げ、適切に選別し、実際に行動に移すことができれば、社内提案制度は企業にとって有益な取り組みになります。

一方で、社内提案制度を導入したものの提案の件数が集まらなかったり、提案はそこそこ集まってくるものの、“中身のある提案”が出なかったりなどの問題を抱える企業が少なくありません。こうした問題が生じる理由はさまざまですが、提案の量と質を確保するために重要となるポイントを押さえることで、解決できる部分も少なくありません。

本稿では、「日ごろ、顧客と接している営業部門の社員の感覚をマーケティングに生かす」「製造部門の社員が感じている製造工程のムダ・ムラ・ムリを改善して生産性を高める」といったレベルの提案を募るケースを想定し、提案の量と質を確保するためのポイントについて解説します。

2 提案の量を確保するためのポイント

1)ノルマ制の導入

提案の量を確保する上で、最も効果的だといえるのはノルマ制です。具体的には「1人1日1件」「グループで月30件」といったルールを設けて、社員に提案の提出を求めます。

ノルマ制が導入されたことに反発し、提案の提出を拒む社員が出てくることも想定されますが、提案の提出は業務の一環であることを繰り返し社員に伝えると同時に、管理職がきちんとノルマを守って率先垂範することで、社員もそれに倣うようになってくるでしょう。

2)提案を提出したくなる雰囲気づくり

管理職などが積極的に声掛けをして、社員が社内提案を提出したくなる雰囲気をつくることが大切です。具体的には、良い提案を出してくれた社員を皆の前で賞賛したり、ある提案を取り上げ、それをさらに深掘りするためのミーティングを開催し、社内提案制度に対する社員の意識を高めるなどの方法があります。

とはいえ、管理職が絶えずそのような働きかけを社員にするのは難しい面があり、しつこく言い過ぎると社員が嫌がってしまうこともあります。そのため、「月曜日の朝礼」など、社内提案制度について通知する日を決めておくとよいでしょう。

3)インセンティブを与える

せっかく提案を提出しても、それが何の評価にもつながらないようでは、社員は提案をする気がなくなってしまいます。そのため、何らかの方法で社員の提案を評価する仕組みを取り入れることが重要です。

分かりやすい方法は、金銭的なインセンティブを与えることです。例えば、提案1件について100円(100件提案したら1万円)を「提案手当」などの名目で支払う方法があります。ただし、この場合、とにかく提案を出して手当を稼ごうとする社員が出てくる可能性があります。これを回避するためには、提案を評価して点数をつけ、高い点数を獲得した提案や実現に至った提案に対して、「提案手当」を支給したりするとよいでしょう。

3 提案の質を確保するためのポイント

1)提案しやすいテーマを設定する

提案の質を高めるためには、社員が提案しやすいテーマを設定することが重要です。

例えば、製造部門と営業部門や経理部門を比較して考えてみましょう。製造部門からは提案が出やすく、またその内容も優れていると評価されることが多い理由の一つは、製造部門では「歩留り」や「5S」など改善すべきポイントが明確で、QCなどの手法も確立されており、提案が他部門に比べ比較的容易なためです。

一方、営業部門や経理部門の場合、製造部門のように改善すべきポイントが明確になりにくい面があり、具体的な手法が確立されている分野も限られます。そのため、単に「提案を提出してください」と指示しても、営業部門や経理部門は何を提案すればよいのかイメージしにくいものです。

この問題を解決するために、次のように提案する内容を明確にして、社員に通知する必要があるでしょう。

  • 新規営業先を毎月10件獲得するために、現在の営業活動で見直すべき点を提案してほしい
  • 営業利益率を○○ポイント引き上げるために必要な施策を提案してほしい
  • 営業の成功事例と失敗事例を共有するための仕組みを提案してほしい
  • クレームを月間○件に抑えるために必要な取り組みを提案してほしい
  • 経費請求の手間を軽減するための仕組みを提案してほしい
  • 経理業務を効率化するために必要なシステムを検討してほしい
  • 経理業務を進める上で感じているムダ・ムラ・ムリを教えてほしい

上記は一般的な内容を列挙した一例ですが、実際に社員に提案の内容を示す際は、企業の事業方針などに即したものにする必要があります。そのため、管理職が社員に対して部門の方針はもとより、全社的な事業方針についてもきちんと説明し、進むべき方向性や問題意識を共有しておかなければなりません。

2)提案評価の体制

提案の質を高める上で、提案を評価する人の力量も重要です。

例えば、社員からの提案を社長自ら評価する場合、社長が社員からの提案の全てに目を通すのが難しいことがあります。そのため、集まってきた提案を選別し、ある程度件数を絞り込んだ後で社長が評価するといったことになります。

問題は、社長に提出する提案をどのように選別するかです。社長に提出する前に各部門の部長クラスが評価する方法もありますが、それでは部長クラスの負担が大きくなりますし、視点が偏る恐れがあります。とはいえ、一般に製造部門からの提案を営業部長が正しく評価することは適任ではありません。

そのため、提案評価の体制としては、各部門の管理職クラスが参加する「提案委員会(仮称)」を設置し、同委員会が中心になって、複数人が目を通しつつ、役割分担をして提案を評価するとよいでしょう。

ただし、例えば全社的なコスト削減活動の場合、管理職が各部門の利益代表者になってしまい、自部門にとって有利な提案ばかりを取り上げてしまうことが懸念されます。 また、管理職は業務に精通している一方で、自身の考えや感覚に合わない提案を排除してしまうかもしれません。しかし、排除された提案の中には、これまでにない斬新なアイデアが隠れている可能性があります。そこで、「提案委員会(仮称)」には、各部門の管理職の他に若手社員や、経営企画室など客観的な視点で提案を評価する社員を加えることが非常に重要なポイントです。

3)評価基準

提案の評価基準は企業によって異なりますが、主要な項目はあらかじめ設定しておくことで評価がしやすくなります。例えば次のような項目を設定し、5段階で評価する方法もあります。

  • 事業方針に合致しているか
  • 数字などが具体的に記載されているか
  • 新しい発想が盛り込まれているか

この他、「提案委員会(仮称)」が提案を評価しやすくするために、フォーマットやカテゴリ、表記ルールはきちんと決めておくとよいでしょう。

4)フィードバックしながら、提案しやすい雰囲気をつくる

「提案委員会(仮称)」を通じて社長に上がってきた提案については、社長は必ず目を通し、その提案について評価できるポイント、見直したほうがよいポイントを明らかにした上で、その提案をした社員にフィードバックします。社長から直々にフィードバックを受けた社員は、次回以降、その内容を踏まえて提案を提出してくるようになるため、質も上がっていきます。

また、社長からのフィードバックは、必要に応じて提案者の氏名を隠す形で全社的に共有するとよいでしょう。質の高い提案は、社長や管理職にとって耳の痛い話であることが少なくありません。そうした提案であっても、きちんと社長が目を通し、なおかつコメント付きで全社で共有するようになれば、社員は安心して提案を出すことができるでしょう。

5)実行に移す

社員から提出された提案のうち、効果が見込めるものは実行に移していくことが重要です。いくら提案を提出しても、一向にそれらが実現されないようでは、社員はやる気を失ってしまいます。そのため、小さなことでも良いので、具体的な行動を起こし、それを社員に見せることが重要です。そのやり方には次のようなものがあります。

  • 実際にプロジェクトとして始動させる
  • 提案を提出した社員に、社長や役員が話を聞く場を設ける
  • 社長から、管理職に対して検討を指示する

4 企業事例:サトーホールディングス「三行提報」

社内提案制度の成功例として知られている企業に、サトーホールディングスがあります。サトーホールディングスは、自動認識技術を使用した商品の開発、製造、ソリューションの開発、インテグレーションを提供する企業で、アジア、オセアニア、米州、欧州など、グローバル展開している東証一部上場企業です。

サトーホールディングスが行っている取り組みは「三行提報(さんぎょうていほう)」(「企業を良くする創意・くふう・気付いた事の提案や考えとその対策の報告」の略称)と呼ばれるもので、1976年から実施されています。「三行提報」が開始されたのは、創業者である佐藤陽氏が労働争議によって倒産の危機にひんした際、「社員の声に耳を傾けるようにすれば、こうした問題が起こらないだろう」と考えたことがきっかけとなっています。そのため、経営側が社員の声に耳を傾ける姿勢を持つことが「三行提報」の一つの特徴となっています。

「三行提報」では、社員は100文字以上127文字以内(英語の場合は上限が150ワード)の短文で業務改善や営業のアイデアなどをまとめて提出し、それがデータベースに蓄積されます。また、その中から選ばれた約50件が社長にプリントされて渡されると同時に、幹部にも電子データで送られる仕組みになっています。また、50件に選ばれなかった「三行提報」についても、有用と判断されるものは、各部署のナレッジリーダーに展開され、判断を任せられる仕組みになっています。

「三行提報」はサトーホールディングスに深く根付いており、より良い製品・サービスを実現するための原動力となっているようです。

以上(2019年3月)

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画像:pixabay

ホワイト企業財団は、日本の次世代に残るべき企業を認定しています。〜デジタルガバメントによる未来の士業の在り方について〜/杉浦佳浩の岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介する面白い起業家は、五味田匡功さんです。

●団体HP【ホワイト財団】
https://jws-japan.or.jp/

1 足元の状況を再確認

少しかための話となりますが、五味田さんを紹介する前に、足元の状況について確認したいと思います。

2018年11月1日に内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室が発表している、【デジタル・ガバメントの取組状況について~ワンストップサービスの実現に向けて~】をご存じでしょうか?

上記の20、21ページが以下になります。

ステップ1:手続の見直しを示した画像です

ステップ2:企業が有する従業員情報の新しい提出方法に係る構想を示した画像です

本資料「ステップ1:手続の見直し」冒頭には、次のように記載されています。

  • 各種申請・届出手続をマイナポータルからオンライン・ワンストップで実施できるサービスを平成32年度(資料に和暦で掲載されています)から順次開始できるよう検討を進める。具体的な対象手続等は関係府省の状況等も踏まえ、精査の上、決定する。
  • 現在、手続ごとに必要な情報の提供を求めているが、申請・届出手続のオンライン・ワンストップ化を行い、マイナポータルを通じて各種手続に必要なデータを行政機関等のシステムに連携。

あくまで、私の主観ですが、「各種申請・届出手続をマイナポータルからオンライン・ワンストップで実施できる」というくだり。これは、来年から企業と行政(政府)とを直接結ぶということを意味しているのかもしれません。これって税理士、社労士、司法書士、行政書士など、士業の皆さんの主たる業務である【手続き業務】が減っていく可能性があるのではないかと認識しました。

他方、日本再興のための【成長戦略】を政府が策定し、日本経済が景気回復を経て長期的に安定した成長を実現していくのに、内外の潜在需要を顕在化しつつ民間投資を喚起する成長戦略を行い、労働生産性を高め潜在成長力を強化することが不可欠であるとしています。「働き方改革元年の今年、企業も、より本格的に取り組まなければならないのだ」と個人的に感じます。

こうした世の中の動きを相当以前から先取りし、社労士事務所で先進的な活動をされているのが五味田さんなのです。また、次世代に残したい企業を【ホワイト企業】と定義し、それを世に広めるための財団(一般財団法人 日本次世代企業普及機構・ホワイト財団)を設立し、奮闘されています。

では、五味田さんの紹介を始めましょう。

2 お会いして10年と少し。常に先進性を持った社労士事務所経営を目指して

現在38歳の五味田さん。お会いしたのは、五味田さんが27歳の頃だったと思います。その頃から先進的な考えをお持ちであり、事務作業一辺倒な士業の方が多い世界で、五味田さんのことを、良い意味で異質に感じたことを今も鮮明に覚えています。

五味田さんは和歌山県南で育ち、ご実家の事業を弟さんに任せて、自分は別の事業家になる意志を早めに固めて大阪の大学へ。たくさんの事業を数字面から見る、研究できるということに引かれ、会計事務所に入りました。そこで、会計事務所の世界を見聞きし、競合ひしめく中での独立は成功確率が低いことを実感します。そこで大型事務所の少ない社会保険労務士(社労士)の世界で独立を決意、猛勉強の末、社労士と中小企業診断士の資格にW(ダブル)で合格します。

会計事務所の新規事業の一つとして社内独立を果たし、その後自身の事務所を開業。この社労士と中小企業診断士のWライセンスを生かして人事・労務設計を行い、多数の企業サポートを実践しています。

社労士事務所の看板を掲げながらその領域は多岐にわたり、事業設計、補助金申請、資金調達、企業の【経営企画】的立ち位置にまで広げています。

3 20代後半からの事務所経営のコンセプトを簡単に

五味田さんに、20代後半からの事務所経営について、そのコンセプトを尋ねてみました。

まず、初期。この頃は助成金、補助金を経営者に徹底的に知らせることにしたと言います。そのときに大切にしていたのは、経営者のサポートだけをするのでなく、「経営者が従業員を大切にしているか?」「人を大切にする経営者が伸びる!」ということを信念に置くこと。この信念に基づき、サポートを多数行っていたそうです。

次に、5年ほど前。この頃から企業の組織コンサル、経営コンサルを前面に押し出すようになりました。時には、理念の確認、中期経営計画立案、事業の組み立て、商材拡販に至る事業領域全般に関わるところまで深く、クライアントファーストの目線で取り組んでいました。

そしてここ最近は、開業以来磨き上げてきた一流のノウハウを誰でも活用できるようにしています。例えば、士業未経験者であってもすぐに一人前化できるように、多様なコンサルティング領域をコンテンツ化し、「どのタイミングでどうクライアントに提供していくか?」を、マーケティング手法を使って所員に活用できるように仕組み化したそうです。

4 社労士業界と今後について。そして、ホワイト財団設立の経緯について

五味田さんに、社労士事務所の名前の由来について尋ねたことがあります。五味田さんの事務所の名前は【ソビア社会保険労務士事務所】です。この「ソビア」とはいったい何か?

ソビアを右、左、真ん中の順で読み上げるとアソビとなります。決してふざけた意味ではありません。企業理念に掲げる「Focus on your Dream!=お客様の「夢中」を創り出すお手伝いをし、そして私たちがどの企業様よりも「夢中」で仕事に取り組みたい」ともつながっています。子供の頃、夢中になって、面白がって、時間を忘れて取り組んでいたあの頃のように、クライアントの本業のお手伝いができるようにと、「ソビア」と名付けたそうです。

私は、これまで数多くの社労士事務所の代表の方々に出会ってまいりましたが、これほどまで先進的な活動をしている方はなかなかいません。

また、ここ最近の社労士業界については、五味田さんは次のように述べています。

  • 社労士の資格者は年々増加しています。特に、大手企業退職者や退職者予備軍を中心に、資格ホルダーが増えています。資格者が増えることで競争激化の助長となります。
  • 一方、社労士の顧客となり得る中小企業は減少しています。ニュースその他で周知の通り、後継者難による廃業が後を絶たず、企業数および従業員数が減少しており、この点でも競争が激しくなってきています。
  • 本稿の冒頭で紹介した通り、デジタルガバメントは一層加速しています。給与計算や、入退社手続きなどの事務手続き業務自体がデジタル化の方向にある中で、規模にかかわらず先進的な企業は自社内で完結し、社労士経由での業務が不要になろうとしています。

そもそもITリテラシーが低い社労士も多く、業界の競争激化とマーケットそのものの縮小が大きな課題と感じます。

また、経営者目線、従業員目線の、どちらかに偏った活動をする士業も多いと感じますが、五味田さんは、クライアント企業の満足、クライアント企業経営者の満足、クライアント企業従業員の満足、自事務所所員の満足という全てが満足であって初めて、次世代に残る企業になると考えています。

この次世代に残すべき企業を増やしたい。そこで企業成長を計測する指標を各項目に設定していき、その指標を達成する企業、目指す企業において、会社・経営者・従業員がそれぞれバランスよく指標に到達していれば、その企業を【ホワイト企業】と認定する。こうした「ホワイト企業認定」を実現するために、財団設立の運びとなっていったそうです。

5 自己評価よりも他人評価がこの国の国民性。ホワイト企業は他人評価であることが重要

五味田さんから面白い話を伺ったことがあります。あるとき、「地震などの災害発生時でも、コンビニで整然と並ぶ日本人の礼儀正しさ。それはなぜか、ということを考えたことはありますか?」と五味田さんから質問されました。

五味田さんは、日本人の『他人の目線を気にする国民性』からそうなるんだと思ったと言います。村社会的発想から、他人目線を重要視する、その「他人目線」を良い意味で企業活動に利用できるのでは?と思ったことを、ホワイト財団運営にも役立てているそうです。

これに関連して、私自身も感じるところがあります。ここ最近の人材採用マーケットについては、人手不足、採用難から自己(自社)評価を高くし、過大化・虚実化して採用広告に掲載。そして、それにある意味“だまされた”不幸な人が入社し、数カ月から数年で転職してしまうという悪循環。まさに人材採用マーケットの巨大化というより肥大化で、企業をむしばみ、害悪化していることへの怒りすら感じます。それに対してホワイト企業に認定されるという他人(第三者)評価、客観性があることで人材採用マーケットだけに限らず、企業活動全般の評価も上がります。ホワイト企業として認定された企業は、まさに次世代に残すべき企業としての意味があると感じます。

6 ホワイト企業認定とアワードについて

1)ホワイト企業認定について

ISO、プライバシーマークなど、以前からさまざまな国際的な企業向け資格認定を見てきましたが、ホワイト企業認定がそうした資格と違うのは、認定審査、認定費用が【無料】であることです。費用がかかるのは認定の翌年からの更新費用のみ。お金を払って資格や認定を取得するようなものも世の中には多数存在しますが、ホワイト企業認定はその類ではありません。

しかしながら無料といえども、簡単に認定されるものではありません。認定されるのは、申請する大企業でも半分以下、中小企業だと場合によっては5%程度となっています。ある意味、次世代に残る、変化に耐え得る企業を創出していくためにも、ホワイト企業認定は、まず変化(改革、改善、改良、時には抜本的に)を求められる認定指標となっています。認定を受けた会社の中には、新卒のエントリーが前年の5倍になった会社、各メディアへ認定企業をアピールする等などプラスの効果が得られた会社もあります。詳しくは財団HPをご覧ください。

●団体HP【ホワイト財団】
https://jws-japan.or.jp/

2)ホワイト企業アワードについて

「ホワイト企業アワード」は、2016年に始まりました。大賞、特別賞、ワーク・ライフ・バランス賞、女性活躍部門賞、ダイバーシティ部門賞、CSR部門賞の各部門で表彰するもので、スタートからたった1カ月で142社がエントリーしました。

2017年の第2回では272社が応募、ホワイト制度部門、イクメン支援部門も設定され、13社が受賞しています。2018年には一気に応募が877社となり、11部門27社が受賞しました。今年も第4回のアワードの開催を予定しており(2019年1月末締め切り)、ビジネスモデル、生産性、健康経営、柔軟な働き方、人材育成、働きがいなど10部門のエントリーを募集しました。2019年1月17日時点で、1200社がエントリーをしており、この時点で昨年を大きく上回っています。

五味田さんは、ホワイト財団の活動により、これから激変する社会で変化に耐えながらも成長できる企業を創出、見いだし、認定し、会社、経営者、そこに集う従業員を幸福に導くということを掲げています。また、この財団運営に関わる全国の士業に活躍の場を同時に創出しようとしているところです。五味田さん、三方良しどころでなく、四方八方世の中をホワイト化しようと企画しています。ますます活躍に期待したいと思います。

五味田さん・執筆者の近影の画像です

以上(2019年2月作成)

【朝礼】新入社員に「贈る言葉」はなんですか?

4月になると、当社に新入社員が入社してきます。そこで今日は、新入社員を迎えるにあたり、皆さんにお願いしたいことがあります。

皆さん、新入社員に「贈る言葉」を、それぞれ選んでみてください。著名な経営者の名言、映画や漫画のセリフなど、どこで使われた言葉でもかまいませんが、2つ条件があります。1つ目は、前向きな言葉を選ぶことです。新入社員は、これから社会に出て新しい生活をスタートさせます。明るく第一歩を踏み出せるよう、前向きな言葉で応援しましょう。

2つ目は、その言葉を選んだ理由や思いを明らかにすることです。たとえ著名な経営者の名言を選んだとしても、それは、その経営者の言葉にすぎません。そこに皆さんが選んだ理由や思いを乗せることで、言葉が「温度」を持ち、より新入社員の心に響くようになるのです。もちろん、皆さん自身が考え出した言葉でもかまいません。

参考までに、私が新入社員に贈ろうと考えているのは、「おもしろおかしく」という言葉です。これは、堀場製作所の創業者である堀場雅夫氏の有名な言葉で、堀場製作所の社是でもあります。

どのような仕事でもつまらないものはない。徹底的にやり抜くこと、チャレンジし続けることで、仕事は「おもしろおかしく」することができる。人生の大部分を費やすことになる仕事を「おもしろおかしく」することで、人生をも豊かにできる。そうした思いが込められた言葉です。

新入社員には、社会人としてスタートを切るその日から、こうした思いを持ってほしいと心から願っています。ただし、私が「おもしろおかしく」を選ぶ理由はそれだけではありません。新入社員にこの言葉を贈るには、迎える側である私たち自身も、「おもしろおかしく」なければならないと思っているからです。

右も左も分からない新入社員は、いわば真っ白なキャンバスです。そのキャンバスにどのような色をのせ、どのような絵を描けるかは、本人の頑張りもさることながら、会社を創っている私たちの影響が大きいのは間違いありません。

誰もが新しいことや面白いことにチャレンジできる会社。前例にとらわれず自由に意見が言える、しかし責任は一人ひとりがしっかり果たそうとする会社。困ったときは皆で議論し、助け合える会社。何よりも、一人ひとりが「仕事が楽しい」と思える会社。そうした会社であればこそ、新入社員は、「おもしろおかしく」を実現できるのだと私は考えます。

私の言う「おもしろおかしく」は、新入社員に仕事への向き合い方を伝えると同時に、一人ひとりが「おもしろおかしく」働くことのできる会社にすることを、新入社員とここにいる皆さんに約束する言葉でもあるのです。

あと約1カ月で、新入社員が入社してきます。さあ、皆さんは、どのような言葉で新入社員を迎えたいでしょうか。

以上(2019年2月)

pj16947
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】質問力を高めるために必要な3つのこと

現在、社会人が改めて勉強する「大人の学び直し」や、就労と学びを循環させる「リカレント教育」が注目されています。語学や会計、プログラミング、文章の書き方など内容はさまざまですが、意外と人気があるのは「インタビューの仕方」なのだそうです。

上手に質問できるようになりたい、相手から話を引き出したい。そうした理由で、実際にインタビューをする仕事に就いていない人も、多く受講しているようです。部下ともっとコミュニケーションを取りたい管理職や、顧客のニーズをしっかりヒアリングしたい営業担当者などが、インタビューのプロから「質問力」を高める秘訣を教わりたいのかもしれません。

質問力はビジネスの基本です。ビジネスは、社内外の相手が何を考えているか、何を実現したいかを知り、調整しながら、互いにとって良い結果となるよう進めていく必要があるからです。

しかし、これができない人が少なくありません。皆さんの中にも、自分の質問力に自信のない人がいるのではないでしょうか。そこで、質問力を高めるために必要な3つのことを紹介します。

まず、一番大切なのは、相手に関心を持つことです。相手のことを「知りたい」と思わなければ、質問したいことも思い浮かばないでしょう。世の中に、自分と全く同じように考える人はいません。相手の考えを知れば、皆さん自身の世界も広がります。そう捉えて、相手に関心を持ちましょう。

次に実践したいのは、「なぜ」という質問をすることです。何事にも必ず理由があります。相手の考えていることや状況を知るには、「なぜ」の部分が最も重要です。

場合によっては、「なぜ」を聞くことで、相手の考えや要望より、もっと良い方法が探せることもあるでしょう。「なぜ」と聞くのを怖がってはいけません。

そして、3つ目に必要なのは、掘り下げることです。これは、「なぜ」と聞くのに似ています。相手の話に対して、「具体的には?」という質問をして掘り下げていくのです。「それについて具体的にどうするのがよいと考えているのか」「具体的に何が必要なのか」。こうした質問をして掘り下げることで、相手も、考えを深めたり整理したりすることができるでしょう。

先日、私はある雑誌の企画でインタビューを受ける機会がありました。そのときのインタビュアーがとても質問上手だったことが印象に残っています。「どのような状態が理想なのか」「なぜそう思うのか」「その状態を実現するために、具体的に今、何が必要なのか」「そのために実践していることは何か」。こうした質問をしてもらえたおかげで、自分でも曖昧だった自分自身の考えを、言葉にして整理することができました。

皆さんも、ぜひ、3つの方法を実践してください。質問力が高まれば、皆さんの世界も、ビジネスの可能性も、きっと広がるでしょう。

以上(2019年2月)

pj16946
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「部下が成長しない」と嘆く前にやるべきこと

先日、国によって小学校の座席の並べ方が違うという話を聞き、とても面白かったので紹介します。まず、日本では、教師が前に立ち、子供たちは皆、教師のほうを向いて座ります。基本的に教師が発言し、子供たちは、教師の話を聞いて教わるか、教師の問いに答える形で授業が進みます。

一方、フランスでは、座席を円形に並べ、子供たちは皆、互いの顔が見えるように向かい合って座ります。教師がその真ん中に立ち、問いを投げると、子供たちが主役となって皆で大いに議論して授業を進めるのだそうです。

また、イギリスでは、教室に幾つかの大きなテーブルがあり、子供たちは5~6人で座ります。分からないことがあれば、同じテーブルの子供同士で話し合い、助け合いながら授業を進めていくそうです。

同じ国でも学校の方針などで座席の並べ方はさまざまかもしれませんが、国によってこれだけ違いがあるということに、私はとても驚きました。

注目したいのは、「座席の並べ方」という環境づくりを工夫し、子供たちにさまざまな学びの「働きかけ」をしている点です。

例えば、子供たちが皆で大いに議論するフランスでは、幼いうちから自分の考えを持ち、主張することを学ぶことができます。テーブルごとに助け合うイギリスの場合、チームワークを覚えられます。また、日本では、人の話を聞いて、教わるといった、大切な姿勢が身に付いていきます。

会社と学校は、もちろん違います。しかし、人を育てていく、人が成長するよう「働きかけ」をしていくという意味では、通じる部分があると私は考えています。

特に、部下を指導する管理職は、部下への「働きかけ」の仕方を考えなければなりません。

私は四半期に一度、皆さん一人ひとりと面談をしていますが、管理職から部下について聞く話は、残念ながら良くない内容が少なくありません。しかも、毎回同じようなことで困っているように聞こえます。そこで、管理職の皆さんに尋ねます。

「部下が自分で考えない」と嘆く管理職は、部下が自分の頭で必死になって考える環境をつくってきましたか。すぐに答えを教えてしまっていませんか。「部下が意見を言ってくれない」「何を考えているか分からない」と言い続けている管理職は、部下が意見を言う機会をしっかりつくってきたでしょうか。忙しいということを理由にして、部下のことを放ってきてはいませんか。

部下がいつまでたっても変わらないということは、管理職が管理職として成長していないということです。100通りの「働きかけ」で部下が成長しないのであれば、管理職は、工夫して、101通り目にチャレンジしなければなりません。

仕事の中で一番難しく、そして一番大切なのは「部下を育てる」ことです。管理職の皆さん、自分の部下への「働きかけ」を、改めてもう一度、考えてみてください。

以上(2019年2月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「マニュアル」は超えるためにある

私は経営者仲間や皆さんから、「既成概念などにとらわれず、本当にお客様のためになることを考えている」と言ってもらうことがあります。とてもありがたいことですが、実は、昔からそういう考えを持っていたわけではなく、きっかけは学生時代のアルバイトで大失敗したことにあります。今日は、皆さんにその話をしたいと思います。

大学生の頃、私はテーマパークの係員としてアルバイトをしていました。主に、パレードなどがあるときに、お客様を誘導するのが仕事です。

ある日のことです。その日はパレードで大混雑で、営業時間が過ぎた後も辺りは騒然としていました。出入り口付近で列をなして帰ろうとしているお客様を誘導していると、子供を抱えて猛烈な勢いで逆走してくる1人の中年男性が見えました。その人は、一度退場したにもかかわらず、また無理に入場しようとしているのです。「もう今日は終わりです。すみませんが入れません!」と私が全力で止めに入ると、その男性が怒鳴り返してきました。「子供の靴が片方ないんだ! 中に入って探してもいいだろう!」

私の対応は、本当にひどいものでした。「でも、一度出た人は、もう入れない規則なんです。入れるかどうか、上の人に聞かないと……」と途方に暮れてしまったのです。見かねたアルバイトの先輩が、「どうぞ入ってください! 手分けして一緒に靴を探しましょう!」と男性を招き入れ、1時間後に無事、靴を見つけることができました。

私は、自分が恥ずかしくてなりませんでした。日ごろから「お客様が第一」と考えてアルバイトに励んでいるつもりでしたが、とっさに、「マニュアル通りに規則を守らなくては。何かあったら後で叱られる」と思ってしまったのです。

この大失敗があったおかげで、私は自分が「自分視点でしかものを考えていない」ことに気付くことができました。だからこそ、本当にお客様や相手の立場に立っているかを、常に自問自答するようになったのです。

皆さんも、日ごろ、私の失敗と同じようなことをしていないでしょうか。お客様が困っているときや、難しい要望を言ってきたとき、「マニュアルでは禁止されているから」と断っていませんか。

確かに、当社にはお客様対応のマニュアルがあります。しかし、マニュアルが全てではありません。お客様の状況などによって取るべき対応は異なります。むしろ、現実のビジネスでは、マニュアル通りにいかないことが多いでしょう。

お客様のことを一番分かっているのは、日ごろ、現場でお客様と接している皆さんです。皆さんが本当にお客様のことを考えて、「こうしたほうがよい」と思うのであれば、ぜひ、その通りに行動してください。たとえ、それがマニュアルに沿っていなくても、否定したり叱ったりすることはありません。逆に、お客様のことを考え、マニュアルを超えてくれた皆さんに感謝し、その判断を、私は心から支持します。

以上(2019年2月)

pj16944
画像:Mariko Mitsuda

日本の【欲しい】を作り出し世界へつなげて広げたい! 日本発グローバル企業を増やす。/杉浦佳浩の岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が、今回紹介する面白い起業家は大村晶彦さんです。

●運営しているメディア【セカイコネクト】
http://world-conect.com/

●会社HP
http://couxu.jp/

 大企業のグローバル化もまだまだ道半ばというところ。中小企業のグローバル化はもっと出遅れ感があると思います。その課題を解決するために起業したCOUXU(コーク)の大村さんについてお伝えしたいと思います。全く英語もできなかった生粋の体育会系サッカー少年が30カ国を飛び回って奮闘し、中小企業の海外進出をサポートしています。その状況をリポートしていきます。

1 低コストで海外への販路開拓を届けたい

サラリーマン時代、私は、複数の得意先社長から海外展開、海外での販路拡大について嘆きに近いお話を伺った経験があります。それは、「○○主催の海外展示会」に、中小企業にとっては大きな予算を投資して実際に行ってみたが、しかし……」というお話。確かに名刺の枚数は集まるものの、さまざまな問題があるようです。

例えば、「本当に興味ありの集客が現地でできていない、興味ありの先にどうやってコンタクトを開始していいの?」「サンプル出荷の方法は?」「継続的取引に進むには?」など本来必要な情報が乏しく、主催者側(相手国&日本側)の「開催した」という経験値だけの満足に終わっていることが多いと聞きました(主催者側がそう望んでいないとしても、多大なコストの割には結果が出ていない現実)。

これだけITの技術革新もあり、国と国の壁が低くなっている中で、わざわざ海外の展示会に出掛けなくても、ニーズがあるかどうか分からない相手と商談をするムダを省き、低コストで海外展開したい中小企業のお手伝いをしているのがCOUXUです。

その仕組みは次の通り、とてもシンプルです。

  • COUXUは30カ国2000社を超える現地バイヤー(商社)企業とつながっている
  • 上記のバイヤー企業が毎月100件以上の【日本の欲しいモノ】のリクエストをCOUXUにぶつけている
  • 【日本の欲しいモノ】リストをITを駆使して、会員化している日本の中小企業にCOUXUが開示している
  • 海外現地バイヤーとのやり取りについて、COUXUがアドバイス、いわば教育・トレーニングに近い手伝いをしている。例えば、海外の商習慣(英会話、英語でのメールのやり取り)、海外セールス、サンプル出荷の方法、貿易開始(実務の手順)などを、会員となった中小企業にトレーニングをするといった内容

セカイコネクトの画像です

海外と商談できる人材が中小企業にはほとんどいません。この現状と向き合い、中小企業が“自力自走”で海外展開できるようにと、COUXUはセカイコネクトを運営しています。

この活動を始めて5年。実際に貿易業務が始まった会社の中には、売り上げ規模で数億円となった中小企業も。また、現地バイヤーとの太いパイプから、貿易のみならず【進出】に関する現地調査などの依頼もCOUXUに寄せられており、国内の多様な業種業界の企業、2000社を突破する取引が実現しています。

日本企業の理想的な海外販路開拓の画像です

2 大村さんの起業ストーリー

5年という短期間で、国内外でこれだけの実績を作った大村さん。さぞかし語学も堪能で海外経験も豊富だった?と思いきや、小中高と一貫してサッカーにのめり込み、千葉県でべスト4の経験もあるそうで、大学も英語や海外とは遠い感じの体育大学だったそうです。

そうした中、大学時代、体育会系の“タテ社会”になじめず、『なんで生まれた年が1年違うだけで、こんなに違うの? 納得できない』と運動系の世界を離れて、アルバイトを10も20も経験。気付けば20歳でお酒も飲めないながらバーテン、そしてバーの経営へ。大学卒業時の2010年はリーマン・ショック後の就職氷河期。どうしようかと思いながら飛び込んだ世界が飲食関連。新規業態の店舗運営を1年目から任され新卒の中でも1位の成績!

しかし、スーツを着る仕事に憧れを持って1年で退職。次に入った会社がアリババマーケティング。大村さんは、ここで海外販路開拓の面白さに出合います。英語もできない状態でしたが、すぐに頭角を現し、ここでも成績で1位となったそうです。25歳のときに、『自分でやったほうがもっとお客さんを喜ばせることができる』と感じるようになり、26歳の誕生日にCOUXUを設立、今に至ります。

最近では、なじめなかった体育大学で、OB起業家として講演も行ったとのこと。お話を伺っていて、常に【今に疑問を持ち、常識を疑い、新たな道を好んで選択する】ということに突っ走る、そんな感性をお持ちだと思いました。

3 起業後の紆余(うよ)曲折、順風なんて一度もなかった

以前に一度、大村さんに質問したことがあります。それは、『海外現地バイヤーを2000社も抱えていたら、自分たち自身で貿易をすればもっともうかる会社になるのでは?』という質問です。大村さんの答えは、『自分たちだけ儲けることならいくらでもやれると思っています。しかし、それだったら大手商社と同じこと。それでは、何のために事業をやっているのか、そもそもの理念、起業動機と食い違ってきます。当初、自分たちが食べていける部分だけ取り組みましたが、現在は全くやっていません。日本の中小企業のグローバル化を目指すこと、そこにフォーカスしています』ときっぱり。

思いは十分でスタートしたものの、起業以来順風ではありませんでした。

  • 起業当初のメンバーが出社したら早々に離脱したのが判明
  • 当初の中心メンバーだったミャンマー人のトゥヤ氏が、諸事情あり本国へ帰国
  • 日本の中小企業のためと思って事業をしていたところ、バイヤーから発注、入金完了後に、日本側の中小企業が破綻、バイヤー側に迷惑を掛けてしまう
  • COUXUの業態自体が他に類を見ないため、経験者もほぼいない。そこに入社して来てくれたメンバーの戸惑い、離脱が続いた時期もあった

収益先行をさせず、じっくり真のお客さん基点を追求してきたからこその逆風、そこをしのいできたからこそ、現在海外留学生インターンを含めると20人近くまでになり、日本を含む10カ国のメンバーが集う会社に成長しています。余談ですが、以前の大村さんのパソコンには日章旗のラベルが貼ってありました。心底、日本のためを意識しているからこそだと思いますね。

4 10カ国のメンバーとともに、全国の中小企業を世界へコネクトする

まさに生きるか死ぬかの生命線上も、綱渡りのように活動してきた中、現在はメンバーも増え、売り上げも安定して伸びてきたそうです。これからのCOUXUの戦略についてもお伺いしました。

・海外でムーブメントを起こす
 これまでの【世界の欲しい】に、日本の製品をマッチングさせるだけでなく、海外現地で、大学や学生との連携を加速し、【現地で、日本の「欲しい」のムーブメント、トレンドを起こす】ことを実践していきます。そもそも気付いていない人々に、日本の良さをもっと訴求できる仕組みを構築していくことにチャレンジします。

・プロモーション動画を海外留学生が製作
 日本の良いものを世界で発信していく際に日本人目線より大切なのは、現地の人々の目線です。日本人が動画製作しても日本人の感性でしかありませんが、海外留学生たちが、自分たちの母国へ売り込むためのプロモーション動画を製作しSNSで発信すれば、訴求力が違ってきます。まさに国境を超えるお手伝いをします。

その他にもアイデアが満載の大村さん、日本発のグローバル企業を多種多様に輩出していこうとしています。本当に楽しみですね。

最後に、COUXUの思いを言葉にしたものを、HPより抜粋します。


COUXUの目指す“セカイ”
世界中の企業にとって“なくてはならない”日本企業を創造する
『COUXU(コーク)株式会社は、日本企業が低コストで誰でも簡単に海外への販路開拓できるプラットフォームを実現しております。
日本の人口減少や、国外の商品が流通量増加が進むにつれ、小売店や問屋に下ろすのも限界が近づいています。
対して、アジアを中心に日本の商品を求めている海外企業は多く存在します。
ですが、現状日本にはゼロから海外への販路開拓を行えるだけの“具体的な情報”が存在しません。
「英語ができない」「海外との取引の経験がない」企業様でも、手軽に商品を届けられる情報を提供しております。
今後も世界に手を広げ続け、海外において日本製品を手に取りやすい環境を作り続け、日本企業が国際企業になるためのシルクロードを開拓していくことが私たちの使命と考えております。』

COUXUが掲げる上記の世界が実現することを願ってやみません。

杉浦さんと大村さんの画像です

以上(2019年1月作成)

【朝礼】ビジネスの答えを最初から求めてはいけない

「ABテスト」というマーケティング手法があります。例えば、インターネットサイトにイベントの「申し込みボタン」を設置するとしましょう。その際、赤いボタンと青いボタンを用意して、どちらの色のボタンがより多く押されるのかを計測します。仮に赤いボタンが多く押されたら、次は人気のなかった青いボタンの代わりに黄色いボタンを設置し、再び赤いボタンと競わせます。これを繰り返すことで、“お客様が押したくなる色”がだんだん分かってくるということです。実際のABテストでは、ボタンの位置や文言などさまざまな条件を組み合わせてPDCAを回し続け、最適な申し込みボタンを見つけていきます。

この例で私が皆さんに伝えたいのは、「最初から、最適な申し込みボタンの色を知っている人はいない。つまり、完成形から始められるビジネスはない」ということです。

ところが皆さんは、失敗を恐れて、初めから完成形を探し求めます。もしかすると、上司の皆さんも「本当にそれで成功できるのか?」などと部下に詰め寄っているかもしれません。しかし、そうしたやりとりに、意味はあまりないでしょう。なぜなら、誰にも完成形は見えていないからです。

とはいえ、とにかく始めようと無策で飛び出すのも問題です。勢いだけのビジネスは、ほぼ失敗するからです。では、どうするのがよいか。それは、「答えを知っている人」に聞いてみればよいのです。

皆さんが好きな色を心に思い浮かべてください。その色を好きなことを知っているのは誰ですか。家族、友人、恋人、同僚など皆さんと親しい人なら知っているかもしれません。この他に知り得る人がいるとすれば、皆さんに「何色が好きですか?」と質問してきた人でしょう。

よく「答えはお客様が持っている」と言いますが、まさにこうした状況を指しているわけです。もちろん、社長である私や上司は、過去の経験や収集した情報を基に指示します。しかし、それはABテストで試される一色を示しているに過ぎません。皆さんはお客様に恐れず質問して答えを聞き、PDCAを回さなくてはなりません。

この活動を継続的に行っていると、皆さんに知見が蓄積されていきます。しかし、その半面、“おごり”も発生します。皆さんは、「自分の考えとお客様のニーズが異なるとき、お客様のほうが間違えている」と考えてしまいがちです。こうした考えを改めるには、謙虚な心を持つしかありません。昭和の歌姫である美空ひばりさんは、『リンゴ追分(おいわけ)』を歌う際の息継ぎについてアドバイスを受けた際、素直にそれを聞き入れました。そして、お客様からより多くの拍手をもらえる息継ぎの歌い方を選んだといいます。

経験は重要ですが、“おごり”はいけません。周囲の声に常に耳を傾け、その内容をPDCAに柔軟に組み込むことができる組織こそが、お客様に選ばれるのです。

以上(2019年1月)

pj16943
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】紹介の輪は、あなたの魅力で広がる

ビジネスは人と人とのつながりです。「人と出会い、意気投合し、一緒にビジネスをする」。ビジネスで必要なのはこれだけだという起業家もいるほどです。どのタイミングで誰と出会い、どれだけ意気投合できるかが、確かに大切なことです。だからこそ、私は積極的に人を紹介します。また、紹介されたときは、できるだけ多くの人と会うようにしています。どこにビジネスチャンスがあるか分からないからです。

このように説明すると、とにかく紹介の件数を増やせばよいと考える人がいますが、実際にはそうはいきません。紹介は、する側にとってもされる側にとっても、非常に難しい行為であり、下手をすると自分自身の信用を失ってしまうこともあります。

このことを知る私は、自分が紹介される側になった場合、紹介してくれる人のメンツを潰すことがないように、いつも以上に丁寧な対応をし、スケジュール調整も速やかに行います。紹介者などは忙しい中、時間を割いて動いてくれているので、その時間を必要以上に奪うことはできないからです。逆に、私が紹介する側になった場合、紹介する人と引き合わせる人の双方が私にとって大事な存在であるわけなので、やはりとても気を使います。「誰に誰を紹介するのか」という根本的なところはもちろん、「人柄は合いそうだが、ビジネスではもしかしたら競合するかも」と思った人は紹介しないようにしています。

しかし、ここまで注意していてもトラブルになってしまうことがあります。私の知人が、A氏にB氏を紹介したところ、B氏が引き起こしたトラブルが原因でA氏とB氏の裁判にまで発展したことがあります。その知人は責任を感じ、A氏に専門家を紹介したり、ビジネス面で別の人を紹介したり、誠心誠意の対応でフォローをしました。もちろん、金銭は一切もらっていません。

これほどまでに紹介は大変なことなのですが、逆にいうと、こうした紹介の大変さを理解している人は信頼できます。別の私の知人に、年間1000人以上の経営者と会う人がいます。経営者から「自分と会ってほしい」という連絡が頻繁に来るそうですが、その知人は「信頼できる人からの紹介でなければ会わない」と決めています。「信頼できる人が紹介する人は信頼できるはずだ」という、とてもシンプルな理由からです。この知人は、自分の周りを信頼できる人で固めることができたからこそ、年間1000人以上の経営者に会うことが可能なのでしょう。

今年、皆さんにすてきな出会いが訪れることを願います。皆さんに魅力がなければ誰かを紹介されることもありません。また、皆さんが誰かを紹介しようと思っても、相手が「◯◯さんの紹介なので会ってみよう」と思ってくれなければ何も始まりません。紹介の輪はそう簡単には広がりません。紹介の重みを知り、そのような機会には真摯に対応することから始めてください。

以上(2019年1月)

pj16942
画像:Mariko Mitsuda