社員の多様性を育む「パラレルキャリア」

書いてあること

  • 主な読者:「パラレルキャリア」について知りたい経営者
  • 課題:どんなメリットがあるのか。本業に支障が出ないか懸念している
  • 解決策:パラレルキャリアを認めることで、優秀な人材の流出を防ぐ可能性がある

1 自己成長・自己実現の手段が多様化してきた

1)2枚目の名刺を持つ時代

「ちょっと待ってください。実は私こんなこともやってまして」

朝活や交流会などで名刺交換をするとき、こう言いながら2枚目の名刺を差し出してくる人が増えてきました。今話題の「パラレルキャリア」を実践している人です。

パラレルキャリアとは、ピーター・F・ドラッカーがその著書である『明日を支配するもの—21世紀のマネジメント革命』において紹介した考え方です。この著書の中でパラレルキャリアは、組織よりも人間の寿命のほうが長くなった時代の生き方の1つとして、「これまでの本業を続けながら、パラレルキャリア(第二の仕事)を持つこと」が紹介されています。現在、パラレルキャリアというワードは多義的に用いられていますが、大きな特徴として次の2つを挙げることができます。

  • 副業やダブルワークとは異なり、必ずしも収入を第一の目的としていない
  • パラレルといってもキャリアが完全に並行するわけではなく、相互に作用し合う

2)マズローの欲求5段階説との関係

パラレルキャリアが注目される理由の1つは、働き方が多様化し、1つの会社に40年以上も所属し続けるスタイルにとらわれなくなってきたからです。代わって、社外にも活動の場所を持つことで可能性を見いだし、自己実現を果たそうと考える人が増えているのです。この状況を、人のモチベーションの在り方を示したマズローの欲求5段階説で示すと、次のようになります。

画像1

マズローの欲求5段階説における最も上位の欲求は「自己実現欲求」です。従来は本業として勤める会社で出世して周囲から認められ、「やりたいことをできる権限を持つ」ことが、自己実現欲求を満たすための有力な手段と考えられていました。「出世が何より」という時代のキャリア形成の在り方です。

今でも、出世はビジネスパーソンが大成するための手段であることに変わりはありません。しかし、パラレルキャリアを実践する人にとって、自己実現の場所は本業として勤めている企業に限定されません。そのため、地域おこしのためにNPOに参加して汗をかいたり、プロボノとして自分が持っている能力を社会に還元したりと、出世以外の方法により、自己実現を果たそうとする人が増えてきました。

2 並行するキャリアをつなぐもの

1)本業への影響をどう考えるべきか?

こうしたパラレルキャリアについて、企業のマネジメント層とパラレルキャリアを実践している従業員の間で認識の相違が生じやすいのは、本業への影響です。

例えば、人手不足に悩む中小企業の経営者は、従業員が週末の活動で張り切り過ぎて本業に支障を来し、場合によっては退職してしまうのではないかと懸念を抱くでしょう。確かに、パラレルキャリアを実践している従業員の中には、本業ではなく、自分の興味のあることや成し遂げたいことに注力するために退職するケースもあります。しかし、全体から見ればまだ少数派であり、そもそも本業をおろそかにしてもよいという甘えもありません。むしろ、本業とパラレルキャリアで得た知見を融合させ、それぞれのレベルを高めていこうと考えるのが一般的です。

パラレルキャリアにおけるキャリアは、本業とそれ以外の二者択一ではなく、相互に作用し合うものであると考えることができます。以降で、その関係を確認してみましょう。

2)イノベーション思考

例えば、パラレルキャリアの一環として参加するNPOや研究会には、立場や意見が異なる様々な人が集まってきます。そこで地域おこしなど自分の目的を達成するためには、互いの考え方を理解することから始めなければなりません。程度の差こそあれ、参加者は意欲にあふれた人たちです。こうした中で相手の意見を聞き、自分が主張すべきところは主張しながら物事を進めていくことで、これまでにない新しい発想が生まれてくることがあります。こうした経験は自ら積極的に発想をする訓練になり、上司から与えられた仕事を受け身でこなすだけのスタイルを改めるきっかけになります。

3)リーダーシップ

本業である勤め先の役職には、一定の公式な権限が与えられています。それでも人を動かすことは難しく、指示を出しても快く従ってくれない部下もいます。公式な権限があっても発揮するのが難しいリーダーシップを、NPOなどで実現するのは至難です。皆が自分の確固たる意見を持っている場においてリーダーシップを発揮するためには、より深く相手のことを知り、相手の立場に立って自分の意見を伝えなければなりません。また、他人の話をよく聞き、受け入れることで自身の思考の幅が広がると同時に、他者を受け入れる「寛容性」も養われます。

4)人脈

パラレルキャリアを実践することで、通常の活動の中ではなかなか知り合うことのできない人と同じ釜の飯を食いながら、“濃い付き合い”をすることができます。知り合う仲間は、国会議員、弁護士、主婦など実に様々です。こうした人脈を本業で使うことに抵抗を感じる人は少なくありませんが、いざというときに頼れる存在であることに変わりはありません。また、日ごろから多様な人と付き合うことで、これまでのネットワークではアンテナに引っかかってこなかった分野の情報を素早くキャッチすることができます。

3 最大のメリットはリテンション?

1)人材不足と多様性の確保

企業が従業員のパラレルキャリアを認めることで得られるメリットは様々ですが、特に中小企業における最大のメリットはリテンション(優秀な人材の流出を防ぐ施策)かもしれません。前述の通り、ある意味で“滅私奉公”的な会社への貢献意識が変化している中で、従業員が出世とは異なる別の自己実現の方法を取り入れ始めています。

働き方改革の影響もあり、従業員の多様な働き方が社会的に容認されつつある昨今、パラレルキャリアを実践している従業員、あるいは意識している従業員にとって、パラレルキャリアを認めてくれる企業と、抑制しようとする企業では、評価は大きく分かれます。当然ながら、自分がやりたいことを認めてくれる企業で働きたいと思うでしょう。

人材不足と多様性の確保への対応は、規模を問わず日本の企業がこれから長期的に向き合っていかなければならない重要な経営課題です。その対策の1つとして、従業員のパラレルキャリアを認めることは検討に値するかもしれません。

2)“拡張OFF-JT”から始めてみる

パラレルキャリアから中小企業が学ぶ根本的なことは、働き方に対する従業員の意識の変化です。パラレルキャリアに取り組んでいない従業員であっても、本業という枠から少し外れたところで学び、刺激を受けたいと考えている人はたくさんいます。

そこで、いわゆる「OFF-JT」を充実させることは、従業員の意向に沿うと同時に企業にとってもメリットがある取り組みかもしれません。OFF-JTは職場外で行われる本業に関係するテーマの研修です。これを拡張して、ボランティア研修や他社への就業体験など、本業と少し離れたメニューを取り入れたり、そうした活動を人事考課の中で評価する“拡張OFF-JT”は、従業員の自己実現をサポートする仕組みとなるでしょう。

また、“拡張OFF-JT”によって企業が従業員の本業以外の活動に理解を示し、サポートすれば、従業員は「この会社は古い」といきなり退職することなく、企業ともう1つの活動の両立を目指すことでしょう。

以上(2019年4月)

pj00245
画像:pixabay

誰よりも印象に残る 花の贈り方

書いてあること

  • 主な読者:顧客や取引先に花を贈りたい経営者
  • 課題:どんな花がふさわしいか、どのように贈るのかなどのマナーが分からない
  • 解決策:お祝い事やお見舞いなど、シチュエーションに応じたマナーがあるので、それを押さえる

1 ビジネスで花を贈る意味

ビジネスではコミュニケーションの一環として、顧客や取引先に贈り物をすることがあります。贈り物の定番といえば花ですが、花を贈る際には配慮すべきマナーが多く、比較的高価でもあることから、近年は花以外の商品を贈り物に選ぶ会社が増えているようです。

しかし、贈り物として花が選ばれにくい今だからこそ、あえて花を贈ることで、こちらの気持ちを相手に伝えやすくなる面もあります。シチュエーションや相手の好みを踏まえた花を選び、マナーを守って届けることができれば、相手は「自分のことを大切に思い、これだけの手間をかけてくれた」と好感を抱いてくれるでしょう。花を贈る相手がこれから関係を強化していきたい営業先である場合、そのオフィスに自社の立て札が付いた花を飾ってもらうことで、きれいな花と一緒に自社の存在を印象づけることができます。

本稿では、ビジネスで顧客や取引先に花を贈る際の基本的なマナーを踏まえた上で、さらに一歩進んで相手の印象に残りやすい花の贈り方のテクニックを紹介していきます。

2 4つのポイントで押さえるマナー

1)マナーを理解するための4つのポイント

花を贈る際のマナーはさまざまですが、次の4つのポイントを押さえればマナーの勘所が分かります。

画像1

ここからは、花を贈る際の具体的なマナーを確認していきましょう。相手が「法人」か「ビジネス関係者(顧客や取引先の社長、担当者など)」かによって、花を贈るシチュエーションは異なります。ここでは代表的な4つのシチュエーションを紹介します。

2)法人のお祝い事(開業・開店祝い、移転祝い、竣工祝い、創立記念日など)

1.どこへ届けるのか?

相手のオフィス、店舗などに届けるのが一般的です。開業・開店レセプション、竣工式、創立記念パーティーなどが行われる場合は、会場に花を届けることもあります。なお、オフィス、店舗のスペースの関係などで花を受け取らないようにしている企業もあるので、事前に確認しておきましょう。

2.いつ届けるのか?

花を届ける時期の目安は次の通りです。

  • 開業・開店祝い:開業・開店日の1週間前〜当日
  • 移転祝い:移転から2週間以内
  • 竣工祝い:完成日前日が望ましいが、移転を伴う場合は移転後1〜2週間後
  • 創立記念日:式典などがない場合は記念日の1週間前〜当日
  • 開業・開店レセプション、竣工式、創立記念パーティー:開催日前日または当日

いずれの場合も、開業・開店日や移転日などを必ず確認しておきましょう。ポイントは、花を受け取れる人がいる日時に届けることです。

3.どんな花か?

開業・開店や移転などの場合、相手は準備で忙しいため、飾り付けや水やりなどの手間が少ない花を贈ります。また、実際に花がどこに飾られるかを想定すると、種類を絞り込みやすくなります。

  • カウンターやテーブル:胡蝶蘭(こちょうらん)、アレンジメントフラワー(以下「アレンジメント」)など
  • オフィスや店舗の通路、コーナー:そのまま地面に置ける観葉植物など
  • 路面に面した1階入り口、会場ホールの廊下:スタンド花など

これはあくまで一例なので、相手のオフィス、店舗の広さなどによって臨機応変に贈る花を決めましょう。

また、花の色はコーポレートカラーなど相手のイメージに合うものを選ぶのが一般的です。ただし、赤など火を連想させる色の花はタブーとされているので注意しましょう。

4.予算は?

相手との関係性などによって変化するため一概には言えませんが(以降、予算の記述において同様)、花を贈る際の予算の目安は次の通りです。

  • 開業・開店祝い:1万円〜5万円
  • 移転祝い:5千円〜3万円
  • 竣工祝い:1万円〜5万円
  • 創立記念日:1万円〜5万円

3)ビジネス関係者のお祝い事(栄転・就任祝い、退職祝いなど)

1.どこへ届けるのか?

ビジネス関係者のオフィスや自宅に届ける場合もありますが、送別会などに招待されているときは、直接持参して本人に渡します。

2.いつ届けるのか?

栄転・就任祝いの場合は、正式に辞令が出たことを確認した後、仏滅を避けて1週間以内に届けます。退職祝いの場合は退職日の直前、送別会がある場合はその当日に届けます。自宅に届ける場合は、転居を伴うこともあるため注意しましょう。

3.どんな花か?

花束やアレンジメントを贈るのが一般的で、種類は相手の好みに合わせます。事前に好みの色などを聞いておくと、花が選びやすくなります。好みを聞きにくい場合は、日ごろ身に着けている装飾品などを参考にするとよいでしょう。

オフィスに届けたり、送別会に持参する場合は、自宅に花を持ち帰ることになるので、帰宅中に邪魔になったり、目立ちすぎたりしない花を選びます。また、形が崩れにくいラッピングを施すようにします。自宅に花を届ける場合は、花束やアレンジメントの他に鉢物などを贈ることもあります。ただし、マンションなどの場合、スペースが限られているため大きい花は避けましょう。

4.予算は?

花を贈る際の予算の目安は次の通りです。

  • 栄転・就任祝い:2万円〜5万円
  • 退職祝い:5千円〜1万5千円

4)ビジネス関係者のお見舞い

1.どこへ届けるのか?

お見舞いの相手が入院している病院に持参します。ただし、感染症予防対策で花の持ち込みを禁止しているところもあるので、注意しましょう。

2.いつ届けるのか?

入院直後や手術前後は避けましょう。病状が落ち着き回復に向かい始めた頃に持参するのが理想的です。

3.どんな花か?

病室はスペースが限られているため、コンパクトな花を選びます。また、水やりの手間が少ないアレンジメントなどを選ぶとよいでしょう。

なお、次のような花は一般的にタブーとされています。ただし、タブーであっても、お見舞いの相手が特に好きな花であれば問題はありません。また輪菊と小菊以外の菊の花は結婚式などで使われるものも多く、こういった花は選択肢に加えても大丈夫です。

  • 鉢植え:根があり、「根付く」を連想させるため
  • 輪菊と小菊:葬儀・お供えに使われる花であるため
  • 白やブルーの花:葬儀・お供えに使われる花の色であるため
  • 赤い花:血の色を連想させるため
  • 下向きの花:頭が落ちていることから、「首が落ちる」を連想させるため
  • 散りやすい、またはひと息に散る花:「命が散る」を連想させるため
  • 香りの強い花:患者の気分が悪くなることがあるため

4.予算は?

花を贈る際の予算の目安は、5千円〜1万5千円です。

5)ビジネス関係者のお悔やみ(一般的な仏式の場合)

1.どこへ届けるのか?

通夜・告別式の場合は斎場に届け、初七日から四十九日、四十九日を過ぎてからの法事や命日では基本的に自宅に持参します。

2.いつ届けるのか?

花を届ける時期の目安は次の通りです。

  • 通夜・告別式:開催時刻の約2時間前(告別式の場合、通夜と同じ斎場であれば通夜に届ける)
  • 初七日から四十九日:特に決まりはないが、ご家族が落ち着いてから
  • 四十九日を過ぎてからの法事や命日:法事や命日の前日まで

3.どんな花か?

お悔やみの際は、次のような花を贈るのが望ましいとされています。

  • 通夜・告別式:原則持参はしない(不幸を待っていたと思われるため)。斎場に届ける場合はスタンド花か花輪(斎場の指示に従う)
  • 初七日から四十九日:アレンジメントなど
  • 四十九日を過ぎてからの法事や命日:アレンジメントなど(家族と親しい場合は、仏壇や墓前に供えられる花束も可)

四十九日まではバラを除く白一色の花を贈り、四十九日を過ぎてからは相手が亡くなられてからの年数に応じて淡い色の花も入れていくのが一般的です。近年は斎場をバラで彩る「バラ葬」など、タブーに関係なく本人が好きだった花を贈るケースも増えていますが、亡くなられた相手のご家族と特別に親しい関係でなければ、マナーを守るのが基本です。

4.予算は?

花を贈る際の予算の目安は、1万円〜3万円です。

3 相手に合わせた対応で差をつける

1)マナーの先にあるもの

シチュエーションにもよりますが、マナーを守って花を贈るだけでは、相手の印象に残りにくいことがあります。他にも同じように花を贈っている会社がある場合、通り一遍のマナーを実践するだけでは目立たないからです。また、マナーが正しいからといって、相手が多忙なときに花を贈ってしまうと、かえって相手に不快感を与えることもあります。

もちろん、まだ知り合って間もない企業相手であれば、通常のマナーに従って花を贈るほうが無難です。しかし、ある程度関係の深い会社とさらに関係強化を図りたいのであれば、マナーの基本を押さえた上で、相手に合わせた柔軟な対応を行っていくことが重要です。そのヒントを紹介します。

2)「どこへ届けるのか?」に生かせるポイント

開店祝いなどの場合、相手の新店舗のスペースは、贈る花の種類や大きさを選ぶ上で重要なポイントです。とはいえ、相手が開店準備で多忙なときに、「花を贈りたいのですが、どのくらいのスペースがありますか?」とはなかなか聞けないものです。

しかし、例えば支店を複数持っているような企業が相手であれば、「○○社様の新店舗となると、たくさん花が届きそうですね?」というような聞き方をすると、「はっきり分からないけど、□□店舗のときはこのくらい届いたね」と返答してくれる場合もあります。さらに「新しく出される店舗も、□□店舗くらい大きいんですか?」というように会話を続けていくと、新店舗のおおよそのスペースが分かることがあります。ビジネス関係者との会話を工夫し、不快感を与えないように情報を聞き出していくことで、贈る花の種類や大きさをある程度絞り込めるかもしれません。

3)「いつ届けるのか?」に生かせるポイント

開店祝いなどで花を贈る場合、できるだけ他社よりも早く花を届けて、相手に好印象を与えたいと考える人もいるでしょう。しかし、贈るのが早すぎると、開店前に花がしおれてしまったり、相手の受け入れ準備ができておらず、置き場所に困ってしまったりすることもあるでしょう。

こうした場合は、花を贈る日程を少し遅らせてみるのも1つの手段です。例えば、開店祝いでは、開店日当日に新店舗を直接訪問すれば、店舗のスペースや、現状他社から届いている花の数を把握することができます。花屋の中には即日配送を行っているところもあり、店舗の状況を確認してすぐに手配をすれば、開店日当日中に花を届けられる場合もあります。相手に花が届くのが他社より後でも、それがスペースにぴったり合い、なおかつ目を引くきれいな花であれば、相手に与える印象は変わってくるでしょう。

4)「どんな花か?」に生かせるポイント

1.花の種類ではなくデザインを工夫する

「法人のお祝い事といえば胡蝶蘭」など、花には贈る用途に応じた定番があります。しかし、定番は無難である分目新しさがなく、他社からもたくさん花が届く場合は埋もれてしまいます。こういうときは、花のデザインを工夫して他社と差をつけてみましょう。例えば、胡蝶蘭の中には「化粧蘭」と呼ばれるものがあります。これは専用のパウダーを使い、お祝いの文字や季節感のある絵で花を彩った胡蝶蘭です。オリジナルのロゴマークやメッセージを付けられるところもあるので、特別感を演出するのに適しています。

画像2

画像提供:アートグリーン

2.花器を工夫する

一般的な花器は鉢、スタンド、花瓶などですが、他にもさまざまな種類があります。例えばフレームの中に花を入れ、絵画のように壁に掛けて観賞できる「フレームアート」というフラワーギフトがあります。フレームアートは、壁に掛けるため邪魔になりにくく、水やりが不要で半永久的に枯れないプリザーブドフラワーが使用されていることが多いため、相手が長い間飾ってくれる可能性があります。デザインも鉢や花瓶に花を生けるより目立ちやすいため、相手の興味を引くことができるでしょう。

【フレームアート】

画像3

画像提供:日比谷花壇

3.花言葉を添える

相手の好きな色や花の種類が分からず、何を贈ればよいか決まらない場合は、自分から相手への尊敬や感謝の気持ちをストレートに伝えられる花言葉で花を選ぶ方法もあります。例えば退職祝いで贈る花の場合、「白いバラ:心からの尊敬、清純、相思相愛、素朴、約束を守る」「グロリオーサ:栄光、勇気」「スイートピー:門出、優しい思い出」といった花言葉があります。

そして、送別会などで、「白いバラの花言葉は『心からの尊敬』です。これからもご指導をお願いいたします」と一言添えたり、メッセージカードなどに書いて花と一緒に相手に渡すとよいでしょう。

4.家族の好みを聞いてみる

ビジネス関係者のお祝い事で花を贈る際、いきなり「花を贈りたいのですが、好きな花や色は何ですか?」と聞かれても、いまいちピンとこないことがあります。

こうした場合、家族の好きな花や色を聞いてみるのも1つの手段です。自宅に花を持ち帰る場合、水やりなどは家族がすることになりがちです。また、「自分だけでなく家族のことも気遣ってくれた」という印象を相手に与えることにもつながります。

もちろん、ある程度相手と関係性ができていることが前提になりますが、こうした方法で花の好みを聞き出してみるのもよいでしょう。

以上(2019年4月)

pj00224
画像:pixabay

部門別業績評価の方法

書いてあること

  • 主な読者:複数の事業を手掛ける企業の経営者
  • 課題:事業ごとの損益や問題点を把握したい
  • 解決策:部門別業績評価を導入し、縦割りで管理する

1 部門別業績評価制度の導入

企業が成長して複数の事業を行うようになると、全体の損益計算書を見るだけでは事業部門間の損益のバラツキに気付かず、企業が抱える問題点を明確につかめなくなりがちです。

例えば、A部門の業績は良いが、B部門の業績は悪い場合、全体の損益計算書だとA部門とB部門のプラスマイナスが相殺されます。そのため、いずれの部門もそこそこの業績を上げていると間違えた判断をしてしまう恐れがあります。

こうならないように部門ごとの業績を管理する必要があります。「部門別業績評価制度」と呼ばれるもので、同じ部門内における商品別(X・Y・Z)の業績についても適用できます。部門別評価のイメージ図は次の通りです。

画像1

2 部門別業績評価制度の組織編成ポイントと留意点

1)区分の仕方

部門別業績評価制度の区分の仕方はさまざまですが、大まかには「商品(製品)別」「販売先別」「地域別」などとなります。どの区分が適切かは、業種・業態・商品の市場特性・販売組織などによって異なります。部門そのものを商品別にしている企業もあれば、地域別にしている企業もあります。

商品別・販売先別・地域別で事業本部を組織している企業のイメージ図はそれぞれ次の通りです。

画像2

大企業はもとより、中小企業でも事業部制の組織体制であることが多くあります。こうしたところでは、商品別・販売先別・地域別で部門を区分しています。また、この区分により業績に対する責任を持つことにつながります。

単一または同じカテゴリーの商品しか販売していない企業であれば、販売先別や地域別に部門を区分してもよいでしょう。しかし、複数の商品を販売している企業は、商品別の組織が適しています。

商品別に部門を区分する場合、指揮命令・財務・商品開発・営業・人事労務などが明確になります。これは、資材などへの投資判断、在庫管理、営業マニュアルの作成、販売や代金回収・人材教育など、現場のマネジメントが容易になることを意味します。

2)「縦割り」で管理する

商品別で部門を区分した場合、いわゆる縦割りの組織運営となります。縦割りの組織による運営のメリットは次の通りです。

  • 部門長への権限委譲が進む。一方で、経営者は全社的な意思決定に注力できる。
  • 業績の測定が容易で、業績責任が明確になる
  • 分権組織として部門長は部門ごとに包括的な権限を行使することができる
  • 商品企画、仕入れ、生産、販売などの各担当職能間の対立が生じることなく、良いコミュニケーションを維持できる
  • 構成メンバーは常に部門の仕事・課題・目標が何であるかを知りやすく、それに対する自分の責任もよく分かるようになる
  • 管理者は販売、生産、仕入れ、在庫管理、財務管理に至る広範囲の管理能力を修得でき、幅広い人材の育成が可能になる

ただし、留意点がないわけではありません。XYZ事業本部のケースで考えてみます。

XYZ事業本部の中で縦割りの意識が強まりすぎると、事業本部の運営に問題が生じます。XYZ事業本部の規模拡大によって、X・Y・Zの組織規模も拡大したり、当初はX商品課だったものが部に昇格したりします。また、それぞれの組織が自己利益を追求するのは止むを得ないことですが、X商品部の利益追求行動がY商品部の損失に直結するようでは、事業本部全体としてのマネジメントが効かないことになります。

マネジメントは、X・Y・Zの商品部ごとに実行するのが一般的です。しかし、組織は商品部ごとの縦割りであるにもかかわらず、実際の現場は地域ごとに区分されているケースも少なくありません。商品別で事業本部を組織している企業で、複数地域に進出している例は次の通りです。

画像3

こうしたケースでは、各支社ごとに、各商品のマネジメントを行う人材が必要になります。つまり、東京支社にX・Y・Zの各商品部のマネジャークラスが在籍することになります。

仮に、東京支社のX商品部に属するマネジャーが、XだけでなくY・Zのいずれの商品、また関連するマネジメントについても精通していれば、東京支社のX・Y・Zのマネジメントはこの者一人で行うことができます。

各支社で同様の人材を配置できれば、マネジャークラスの人件費が1支社当たり3分の1で済みます。しかし、現実には、事業部で扱う全商品のマネジメントができる人材がいるケースはまれなようです。

3)権限と責任

組織単位の管理者・リーダーの職務と責任、特に達成すべき業績基準がはっきり示されなければなりません。

商品別で事業本部を組織している企業のイメージ図は次の通りです。このように商品別に部となっていれば、部長がその部の責任を負います。もちろん、職務遂行に必要な権限が委譲されていなければなりません。

画像4

4)セクショナリズムの台頭

XYZ事業本部長は、各商品部が健全な競争をしてほしいと願うでしょう。部が創設された時点であれば、健全な競争状態にあるのかしれません。しかし、時間の経過とともに、セクショナリズムが台頭するようになります。

その原因は「部長同士の人間関係が良好でない」「X商品部とY商品部の業績に格差がある」「X商品市場は好況である一方で、Y商品市場は不況など環境があまりに違いすぎる」といったようにさまざまです。

セクショナリズムが深刻化すると、必要な情報の共有が行われなかったり、事業本部内で不健全な競争が起きるようになります。分かりやすいところでは、部同士での顧客の奪い合いが起こることがあります。見えないところでは、インフォーマルな場において他の部を悪く言うことなどが代表的な事例です。

こうした状況に陥らないようにするには、一般的には「トップマネジマント(上記の例では、XYZ事業本部長)の実行」「公正な人事評価」「組織改革」が必要といわれています。

5)チームとは

チームとは、それぞれ得意とする技能、知識を持っている人が集まり、目標に向かって共に働くことで、最近ではプロジェクトチームとかタスクフォースといった組織形態がこれに該当します。

一般的には縦割り組織単位内(図表5ではXYZ事業本部)の役割分割です。事業本部をまたぐようなチームが組織される場合は、社長直轄のチームとなることが多いようです。

チームの場合、チームリーダーの権限、意欲、能力、リーダーシップがチームの業績に大きな影響力を持っています。商品別で事業本部を組織している企業で、チーム制を実施している例のイメージ図は次の通りです。

画像5

3 部門別業績管理会計

1)部門別業績管理会計とは

業績を管理するには、業績そのものを測定・把握しなければなりません。業績管理は、管理会計の領域で、日常の経営活動および目標を管理者が設定します。管理会計は、目標達成のための組織の活動を調整、統制するための会計情報を月次など定期的に確認するための必要な取り組みです。

2)部門別損益計算ルール

部門別に利益を測定・把握するためには、「売り上げや原価がどこに、どの範囲で帰属するのか、経費はどこの負担になるのか」といった損益計算のルールが必要です。この計算ルールは、あらかじめ業績に対する責任のある管理者に周知徹底されていなければなりません。部門別損益計算ルールを決める場合の留意点は次の通りです。

1.関係者の合意

関係者の大多数が、「業績管理上の約束」だと割り切って、納得した上で実施されなければなりません。

2.目的の明確化

業績管理の目的をはっきりさせます。目的は次の通りです。

  • 経営者が正しい判断、適切な経営方針を打ち出すため
  • 部門と部門管理者の業績が明確化されることにより、責任体制の強化と組織の活性化を図れるようにするため
  • 部門別に意思決定を迅速・適切にし、機動力を発揮するため

3.関係者の参画

本部や会計部門だけでなく、支社など現業部門の関係者も参加して、ルールを作ります。関係者の参画により、納得性が高まり、生産や販売などの実情に合ったものになります。

4.ルールの継続

実情に合わなくなったり、実施して不都合が生じた場合を除き、一度決めたルールはなるべく変更しません。

3)売上総利益と振替価格

部門別損益計算ルールの第一は、売上総利益の把握です。売上総利益は略して「総利益」または「粗利益」ともいわれます。経営活動の最終的な利益は税引後当期利益ですが、その源泉は、この総利益です。総利益の計算が部門別損益計算にとって最大の難関で、これが解決されれば損益計算ルールは、半ば完成したといってよいでしょう。

1.売上高の把握と売上原価

部門別損益計算は、同一期間内にその部門で実現した収益から、それに対応して発生した費用を差し引いて利益を計算します。収益とは売上高のことで、主な費用が売上原価です。

  • 計算区分=業績把握単位

これは売上高の把握だけでなく、業績管理会計そのものの課題です。本社各部、工場、支社などのプロフィットセンターおよびコストセンターがそれぞれ計算単位になります。

  • 純売上高

得意先に出荷・納品し、計上された総売上高から、返品と値引きを控除したネット(正味)の売上高が本来の売上高です。部門別の純売上高の誤差を最小限にすることが必要です。

  • 外部売上高と内部売上高

外部売上高は、企業外部の得意先に対して売り上げた通常の売上高です。内部売上高は、本社から支社などへの社内取引による売上高です。この社内取引による利益は、管理会計上の利益であるため、決算時にはこれを除去する必要があります。

総売上高の次は、これに対応する売上原価を計算します。小売業の場合は「売上原価=期首商品棚卸高+当期商品仕入高−期末商品棚卸高」です。

この際、部門別での在庫の把握が必要になります。実地棚卸しは毎決算期末としても、帳簿棚卸しは毎月または3カ月ごとに行う必要があります。

2.社内振替価格の設定

社内振替価格(移転価格)は社内取引に用いる売買価格です。この社内振替価格の決め方が業績管理成否の決め手になります。社内振替価格の設定には、主に2つの方法があります。

1つは市価基準であり、もう1つは原価基準で原価を基準とするものです。いずれの方法をとるかは、それぞれの企業の実態によって異なりますが、市場価格と原価の間の適切な価格を設定する必要があります。

4)利益と直接損益

売上総利益の次は、管理・販売費の計算で、業績管理の目的に合った計算区分が必要です。

1.管理可能費と管理外経費

管理可能費とは、各部門の構成メンバーが自ら使用したことが分かる費用で、当該部門の管理者の責任において管理可能な費用です。

管理外経費は、管理不能費とも呼ばれ、当該部門に発生する直接費ですが、管理者の管理不能な費用です。

2.管理可能利益

売上総利益から管理可能費を控除したものを管理可能利益といいます。部門の構成メンバーの協力で活動した成果であり、管理者の責任に帰す利益です。

管理可能費は、別の観点からみれば、ほとんど変動費とみなすことができます。売上高から変動費を控除したものは、限界利益といわれます。

変動費、固定費、限界利益という概念は利益計画などに利用されます。業績評価損益計算書のイメージ図は次の通りです。

画像6

3.直接利益

管理可能利益から、直接人件費を含めた管理外経費を差し引いたものを直接利益といい、その部門で発生する直接費の全てを控除した利益です。

4.経常利益

部門別業績評価は、直接利益を中心に行われるべきで、本社費など共通費の配賦は必ずしも必要ではありません。本社費の配賦をしないで業績管理の効果を上げている企業も少なくありません。本社費を配賦しない理由は次の通りです。

  • 本社費は部門の権限や努力ではどうしようもなく、部門の管理者の責任外のもの
  • 公平な配賦基準が見出せない
  • 配賦額の計算、業績資料への反映にコストがかかる
  • 社内のコンセンサスが得られない

しかし、本社費配賦が可能ならば業績管理の目的からも実施すべきです。本社費を配賦する理由とメリットは次の通りです。

  • 業績評価や成果配分のためには直接利益で十分だが、その部門の収益性は、現実に発生している管理・間接費および金利を負担した経常利益によって判断されるべきである
  • 経営者は、本社費負担後の収益性によって各部門と企業の経営戦略の意思決定ができる
  • 各部門にどれだけの直接利益を上げればよいかの目安を与え、業績評価基準の裏付けにもなる。特に、直接利益の低い部門は、本社費の配賦により黒字から赤字になる場合があり、部門の構成メンバーに企業全体の利益に対する感覚を養わせることができる
  • 本社費の効率化の引き金になる
  • 管理・間接部門は、ライン部門に対して中枢管理機能と諸業務集中処理サービスを提供する。このサービスには、対価を支払う必要がある

本社費を各部門に負担させる配賦基準には次のようなものが考えられます。

  • 売上高(または総利益)基準

売上高の実績により、本社費を配賦する方法です。固定費である本社費を売上高や総利益で負担するのは無理があり、実務上も良い方法ではありません。

  • 資産・残高基準

棚卸資産・売上債権などの流動資産または、固定資産残高を加えた資産残高による配賦であり、資産残高を圧縮させる方向に働くメリットがあります。

  • 人員割り

その部門に所属する従業員数を基準として配賦します。単純明快で理論上も、実務上も優れた方法です。人員割りが人員増加を抑え、生産性を向上させる刺激になります。

  • 人件費基準

人員構成などで各部門間の格差が大きいときは、人員割りに替えて、人件費を配賦基準とします。人員割りのメリットを備えた優れた方法です。

  • 使用実績基準

業務サービス費は、部門ごとの使用実績が把握できれば、直接賦課します。

これらの方法のうち会社の実情により、1つの方法、または必要に応じていくつかの方法を組み合わせて本社費を配賦します。

4 業績評価と目標設定

1)業績評価の目的

業績評価は、組織を基礎とし、管理会計により測定した業績を次の経営目標に役立たせるためのものであり、定量的な指標が中心になります。測定された管理可能利益や直接利益の数値をほかの基準値と比較して分析検討することです。

業績評価の基準には、次のようなものがあります。

  • 投入した経営資源

投下資本、設備(生産能力、売場面積など)、従業員など、ヒト・モノ・カネをどれだけ投入したかによって利益が決まります。

  • 時系列分析

時系列の比較です。対前期比、対前月比などからはじまり、中長期の傾向から将来の予測をしたりします。

  • クロス・セクション分析

同業他社、社内他部門・他部署との比較です。

  • 標準値比較

客観的な標準値を設定しておき、これと比較します。

  • 目標・計画あるいは予算対比

業績に関する経営目標、部門目標との比較です。年度計画あるいは、年度予算と実績との比較や差異分析も必要です。

このような比較分析により、業績評価が行われ、評価の結果は次の目標設定、計画策定、戦略・戦術上の意思決定に活用されます。

2)業績評価基準

部門管理者の業績責任は、その職務権限によってコントロールできる範囲のものでなければなりません。業績評価は、管理可能な指標によって行い、収益、費用、利益および、投下資本(資産)などを責任者が管理できる部分と管理できない部分に区分し、明示する必要があります。

こうして明示された業績管理指標により、各責任者は目標を示し、計画を立てて実行し、統制することになります。 

業績管理指標すなわち評価項目の定義と利益責任の所在の例は次の通りです。

1.利益額

  • 粗利益=売上高−売上原価(期首商品棚卸高+当期商品仕入高−期末商品棚卸高)
  • 管理可能利益=粗利益−管理可能費
  • 直接利益=管理可能利益−直接人件費・そのほかの管理外経費
  • 経常利益=営業利益−支払利息など

2.利益率

画像7

3.生産性(パーヘッド効率)

画像8

  • 【利益責任の所在(業績評価項目)】
  • 係長以下:(個人別)粗利益・管理可能利益(グループ別)・商品利益率
  • 課長:管理可能利益・直接利益・生産性
  • 部長:営業利益・売上高総利益率・生産性
  • 事業本部長:経常利益・売上高経常利益率・総資本経常利益率

3)業績目標の設定

業務管理は業績目標の設定と年度計画策定・予算編成から出発し、年度末の業績評価で一巡します。目標設定は業績評価基準に組み込まれている管理指標が中心になります。

目標値を実現するための年度計画は、売上高から始まって損益計算ルールで決まっている収益・費用・利益の各段階にわたり、具体的で実行可能なものでなければなりません。また、目標設定、計画設定は各部門自らの責任のもとになされたものでなければなりません。従って、トップ・ダウンと、ボトム・アップの積み上げとのフィード・バック方式が業績管理を成功させる必要条件です。

部門別に業績を管理すれば、経営者が各部門の状況を把握できるだけでなく、従業員も売上高や利益といった数字をより身近に感じることができます。部門別に適正な業績目標を設定し、適正な評価結果を人事考課に反映させることで、従業員の売上高や利益に対する意識をより高めることができるでしょう。

以上(2019年4月)

pj00222
画像:pixabay

【朝礼】新入社員に伝えたい「冷静な頭脳と温かい心」

新入社員の皆さん、当社に入社してくれてありがとうございます。ここにいる皆さんは、新しい生活への期待に胸を膨らませていることでしょう。そこで今日は、皆さんに、これからの社会人生活で大切にしてほしいことをお話しします。

皆さんは、これから先、どのような社会人になりたいと考えていますか。私は、皆さんに、何事に対しても、「自分はこうしたい」「これがやりたい」という意志を持ち、自分で物事を決めていける人になってほしいと思っています。自分の意志で、「自分事」として取り組めば、どのような仕事でも、必ず、面白くやりがいのあるものになるからです。

しかし、ビジネスについて知識の少ない皆さんは、「自分はこうしたい」「これがやりたい」ということが、まだ考えられないかもしれません。そこで、皆さんにお願いしたいのは、「冷静な頭脳と温かい心」を持つことです。

この「冷静な頭脳と温かい心」は、イギリスの経済学者であるアルフレッド・マーシャル氏が、「経済学者に必要なもの」として示したものです。経済学には、物事を冷静に、理論的に分析し、把握する頭脳が必要。そして、世の中の人を思いやり、皆の生活を良くしようという温かい心も忘れてはならない。こうした意味が込められています。

仕事も同じです。「自分はどうしたいか」を考える土台として、まず、ビジネスを分析し、把握する力が必要です。これが、「冷静な頭脳」です。

皆さんが「冷静な頭脳」を身に付けるには、必死で勉強するしかありません。ビジネスはどのような仕組みで動いているのか。商品やサービスがどのようにつくられ、どのようにして売り上げが上がり、利益が生み出されるのか。本を読み、ニュースや新聞で情報収集し、上司や先輩の話を聞いて、ビジネスの基本をしっかり学んでください。皆さんの社会人生活は、学ぶことから始まります。

そして、忘れてならないのは「温かい心」です。「自分はこうしたい」「これがやりたい」ということを決めるときは、「どうすれば世の中の人のためになるか」ということを軸にしてもらいたいのです。皆さんには、当社がどのような会社に見えるでしょうか。会社なので、もちろん利益は追求しますが、それだけではありません。当社は、世の中を、人々の生活を、今よりももっと良くすることを本気で考える会社です。このことを、常に忘れないでいてください。

私は高校時代、授業で経済学者マーシャル氏が示した「冷静な頭脳と温かい心」のことを聞き、雷に打たれたような衝撃を受けました。それまで考えたこともない視点だったからです。そのとき、自分が社会に出る際には、「冷静な頭脳と温かい心」を持ち、世の中を良くすることを本気で考え、実践しようと決心しました。

皆さんは、今日から当社の大切な仲間です。一人ひとりが「冷静な頭脳と温かい心」を持ち、一緒に世の中を良くしていきましょう!

以上(2019年3月)

pj16951
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】時には、「泥臭く」なりなさい

先日、ある経営者と話をした際のことです。以前から彼のビジネスに取り組む姿勢には大いに刺激を受けているのですが、改めて感動したことがあるので、皆さんと共有します。

その経営者は、ブロックチェーンやAIといったテクノロジーに非常に強く、多くのエンジニアを抱え、法人向けに最先端のサービスを提供する会社を経営しています。今回、新しいサービスの構築にチャレンジすることにしたそうで、そのことを私に語ってくれました。

私が改めて感動したのは、新しいサービス構築のために、彼が「面倒なこと」をいとわず、地道に、いうなれば「泥臭く」取り組んでいたからです。彼は全国の関連する業種の会社にアポイントを取って訪問し、どのようなサービスであればユーザーの役に立つのか、一社一社、ヒアリングして回ったのです。それだけではありません。自分たちのテクノロジーをより一層磨こうと、国内外を問わず、第一人者とされる著名な大学教授やエンジニア、起業家に会いに行って教えを乞い、議論し、サービスの質向上に努めていました。時には、3日連続して飛行機の中で夜を明かすほど、経営者自らが世界中を動き回っていたのです。

彼は私に言いました。「このサービスにおいては、ユーザーから、自分たちのものが一番だと言われたい。そのためには、どこの会社よりも、誰よりも、実際に人に会い、話を聞くのは当たり前。私は当たり前のことを実践しているだけです」

皆さんはこれを聞いてどのように感じますか。これまで会ったことのない人や、会ってもらうのが難しいような人に会う段取りをして、実際に会いに行き、話を聞くのは、簡単にできることではありません。なかなかうまくいかないことも多いでしょうし、時間も労力もかかります。要するに、非常に「面倒なこと」なのです。

こうした「面倒なこと」に、どれだけ真摯に、地道に粘り強く取り組むことができるか。大勢の人が「そうした努力にこそ価値がある」のだと分かっているとは思いますが、実際に取り組むことができている人は、そう多くはないでしょう。

皆さんはどうですか。誰にも負けないくらい、「面倒なこと」に地道に取り組んだと胸を張って言えることがありますか。

時と場合にもよりますが、私は、仕事をするなら、一度くらい「面倒なこと」に、苦労して泥臭く取り組むことが必要ではないかと思っています。そうすることで初めて、仕事をする意味や、お客様から感謝されることの喜びを心から実感することができるからです。

冒頭で紹介した経営者の会社には、貴重な情報やノウハウが蓄積されています。「面倒なこと」に地道に取り組んだため、他では手に入れられないものが、集まっていったのでしょう。皆さんも、時には、地道に、泥臭く仕事に取り組むことを意識してください。きっと、皆さん自身の人生にも、大きな価値が生まれるでしょう。

以上(2019年3月)

pj16950
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】新年度を迎える前に一人ひとりに考えてほしいこと

もうすぐ新年度を迎えます。皆さんは、どのような新年度にしていきたいですか。今日は皆さんに、当社が新年度からどのようなことに取り組むかを伝えますので、それを踏まえて、各自、新年度に自分が何をしていくべきかを考えてみてください。

当社は新年度から、さまざまな変化を実現していくことになります。例えば、これまで温めてきた新規事業をいよいよ形にします。営業面でも、既存市場の顧客だけでなく、新しい市場を開拓していきます。そうなると、プロモーションの方法も変えていかなければなりません。今ある商品やサービスの在り方を見直すことも必要です。

そうしたさまざまな新しいチャレンジや変革を実現していくために、働き方改革にも、より本格的に取り組まなければなりません。

そのためには、今までと同じ仕事の進め方では限界があります。改善すべきところは大いに変えていかなければなりません。一つ一つの仕事について、皆さん一人ひとりがスピードアップすることも必要です。

どうですか。ここまで、新年度からやるべきことについて、一部を挙げてみましたが、皆さんは、どのように感じたでしょうか。「正直言って、いろいろと変えていくのは大変そうだ」と尻込みしたくなる人もいるかもしれませんが、私一人や、一部の人間だけでは会社を変えていくことはできません。全員の力が必要です。

そこで、皆さんに真剣に考えてもらいたいのは、「会社を変えることに対して、自分はどのように貢献することができるか」ということです。

例えば、新しいことにチャレンジするため、今までとは違った分野のネットワーク構築に努めようと、より社外に出る機会を増やすという方法もあるでしょう。あるいは、皆が今よりも効率的に仕事が進められるよう、オペレーションの方法を見直したり、新しいツールを学んで導入したりすることで貢献しようと思うかもしれません。

考えられる貢献の方法は人によってさまざまですが、重要なのは、一人ひとりが「今の自分よりも、もう一段上の自分になろう」とすることです。そうして、それぞれが「できること」を増やしていけば、それが全体として大きな変化を生み出す力になるからです。

新しいことにチャレンジしたり、物事を変えたりするのは簡単ではありません。私が皆さんに求めることも、難易度、スピードともにグレードアップしていきます。皆さんは、うまく進められず、壁にぶつかったり、逃げ出したくなったりするかもしれません。そうしたときは、「困っています」と声を出し、周りに助けを求めてください。どうすればよいか、皆で知恵を出し合って考えていきましょう。一人ひとりが「もう一段上」を目指し、そして困ったときは全員で考える。それが当社の進化の仕方です。新年度、全員で、「大いなる進化」を遂げていきましょう。

以上(2019年3月)

pj16949
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】正しい優先順位を付けて価値ある仕事をしよう

複数の仕事を同時に進めるとき、しばしば課題となるのが優先順位の付け方です。皆さんに、なぜ優先順位を決められないかを聞くと、「そもそもどれが重要な仕事なのかを判断できない」などの意見が出てきます。しかし、私から言わせると、これは単なる言い訳です。

ここで、優先順位付けと共通する部分が多い、片付けを例に考えてみましょう。皆さんは、片付けコンサルタントの近藤麻理恵さんを知っていますか。彼女の片付け術の特徴は「残すものを選ぶ」という考え方です。

片付けといえば捨てることに目が行きがちですが、近藤さんは「ときめくものだけを残すこと」を勧めています。ときめくというのは、その服を着ると自信が持てるなど、前向きな気持ちになれることを指します。ときめくものを残すことで、自分のモチベーションが上がるというのです。

また、片付けの最中には、ときめくのか、そうではないのか、迷うものも出てきます。その際に重要になるのが、片付けのゴールです。「夜7時、キッチンで、家族全員が協力して、夕食を準備する生活を送る」など、ゴールを具体的にイメージすることで、それを実現するために何を片付けるべきなのかが明確になります。

近藤さんの片付け術を実践した人は、自分がときめくものや、求める生活が明確になることで、不要なものを買わなくなり、再び散らかってしまうという事態を防げると感じるようです。

片付けと仕事はそのまま比較できませんし、仕事の優先順位付けの基準は「ときめくものだけを残すこと」とは違い、状況によってさまざまな判断があり得ます。しかし、皆さんは優先順位を決める基準をどれだけ意識して、日々の仕事に取り組んでいるでしょうか。

例えば、仕事においては、最も収益につながる、最も時間がかかるなどの基準がありますが、これらは過去の経験を基に判断することになります。つまり、優先順位を正しく付けられないのは、これらの経験を積み重ねていないからです。仕事のゴールを考えて、それに向かって最もよい結果が得られるようにという視点ではなく、「目先にあるので」「やりやすいから」という理由で仕事に取り組み、根拠ある行動を避けているのです。

「過去の経験にとらわれず、感じたままに行動する」ことも、時には大切です。ただし、基準となる過去の経験が何もない状態ならば、どれくらい新しいのか、どれくらいリスクがあるのかを測ることができず、無謀な挑戦になるだけです。

正しい優先順位付けは全ての社員に必要ですが、特に管理職が間違えた優先順位で指示を出せば、部下はムダな動きをします。加えて、目先の仕事や、やりやすい仕事を優先するということは、管理職としての責任や人件費に見合わない仕事を優先することになります。管理職の皆さん、正しい優先順位を付けてチームを率い、会社に貢献する働きをしてください。

以上(2019年3月)

pj16948
画像:Mariko Mitsuda

社内提案制度において提案の量・質を確保するための重要なポイント

書いてあること

  • 主な読者:社内提案を取り入れている企業の経営者
  • 課題:良い提案がない。提案自体なかなか挙がってこない
  • 解決策:ノルマ制やインセンティブ、評価制度の確立などによって提案を出しやすい雰囲気作りが必要

1 社内提案の意義

社内提案制度を導入して、社員の多様な知識を経営に生かそうと試みる企業が多くあります。社内提案制度の対象となる事柄は、些細な業務改善から新規事業の立案までさまざまです。いずれの場合も、社員の多様な知識を提案という形でうまく吸い上げ、適切に選別し、実際に行動に移すことができれば、社内提案制度は企業にとって有益な取り組みになります。

一方で、社内提案制度を導入したものの提案の件数が集まらなかったり、提案はそこそこ集まってくるものの、“中身のある提案”が出なかったりなどの問題を抱える企業が少なくありません。こうした問題が生じる理由はさまざまですが、提案の量と質を確保するために重要となるポイントを押さえることで、解決できる部分も少なくありません。

本稿では、「日ごろ、顧客と接している営業部門の社員の感覚をマーケティングに生かす」「製造部門の社員が感じている製造工程のムダ・ムラ・ムリを改善して生産性を高める」といったレベルの提案を募るケースを想定し、提案の量と質を確保するためのポイントについて解説します。

2 提案の量を確保するためのポイント

1)ノルマ制の導入

提案の量を確保する上で、最も効果的だといえるのはノルマ制です。具体的には「1人1日1件」「グループで月30件」といったルールを設けて、社員に提案の提出を求めます。

ノルマ制が導入されたことに反発し、提案の提出を拒む社員が出てくることも想定されますが、提案の提出は業務の一環であることを繰り返し社員に伝えると同時に、管理職がきちんとノルマを守って率先垂範することで、社員もそれに倣うようになってくるでしょう。

2)提案を提出したくなる雰囲気づくり

管理職などが積極的に声掛けをして、社員が社内提案を提出したくなる雰囲気をつくることが大切です。具体的には、良い提案を出してくれた社員を皆の前で賞賛したり、ある提案を取り上げ、それをさらに深掘りするためのミーティングを開催し、社内提案制度に対する社員の意識を高めるなどの方法があります。

とはいえ、管理職が絶えずそのような働きかけを社員にするのは難しい面があり、しつこく言い過ぎると社員が嫌がってしまうこともあります。そのため、「月曜日の朝礼」など、社内提案制度について通知する日を決めておくとよいでしょう。

3)インセンティブを与える

せっかく提案を提出しても、それが何の評価にもつながらないようでは、社員は提案をする気がなくなってしまいます。そのため、何らかの方法で社員の提案を評価する仕組みを取り入れることが重要です。

分かりやすい方法は、金銭的なインセンティブを与えることです。例えば、提案1件について100円(100件提案したら1万円)を「提案手当」などの名目で支払う方法があります。ただし、この場合、とにかく提案を出して手当を稼ごうとする社員が出てくる可能性があります。これを回避するためには、提案を評価して点数をつけ、高い点数を獲得した提案や実現に至った提案に対して、「提案手当」を支給したりするとよいでしょう。

3 提案の質を確保するためのポイント

1)提案しやすいテーマを設定する

提案の質を高めるためには、社員が提案しやすいテーマを設定することが重要です。

例えば、製造部門と営業部門や経理部門を比較して考えてみましょう。製造部門からは提案が出やすく、またその内容も優れていると評価されることが多い理由の一つは、製造部門では「歩留り」や「5S」など改善すべきポイントが明確で、QCなどの手法も確立されており、提案が他部門に比べ比較的容易なためです。

一方、営業部門や経理部門の場合、製造部門のように改善すべきポイントが明確になりにくい面があり、具体的な手法が確立されている分野も限られます。そのため、単に「提案を提出してください」と指示しても、営業部門や経理部門は何を提案すればよいのかイメージしにくいものです。

この問題を解決するために、次のように提案する内容を明確にして、社員に通知する必要があるでしょう。

  • 新規営業先を毎月10件獲得するために、現在の営業活動で見直すべき点を提案してほしい
  • 営業利益率を○○ポイント引き上げるために必要な施策を提案してほしい
  • 営業の成功事例と失敗事例を共有するための仕組みを提案してほしい
  • クレームを月間○件に抑えるために必要な取り組みを提案してほしい
  • 経費請求の手間を軽減するための仕組みを提案してほしい
  • 経理業務を効率化するために必要なシステムを検討してほしい
  • 経理業務を進める上で感じているムダ・ムラ・ムリを教えてほしい

上記は一般的な内容を列挙した一例ですが、実際に社員に提案の内容を示す際は、企業の事業方針などに即したものにする必要があります。そのため、管理職が社員に対して部門の方針はもとより、全社的な事業方針についてもきちんと説明し、進むべき方向性や問題意識を共有しておかなければなりません。

2)提案評価の体制

提案の質を高める上で、提案を評価する人の力量も重要です。

例えば、社員からの提案を社長自ら評価する場合、社長が社員からの提案の全てに目を通すのが難しいことがあります。そのため、集まってきた提案を選別し、ある程度件数を絞り込んだ後で社長が評価するといったことになります。

問題は、社長に提出する提案をどのように選別するかです。社長に提出する前に各部門の部長クラスが評価する方法もありますが、それでは部長クラスの負担が大きくなりますし、視点が偏る恐れがあります。とはいえ、一般に製造部門からの提案を営業部長が正しく評価することは適任ではありません。

そのため、提案評価の体制としては、各部門の管理職クラスが参加する「提案委員会(仮称)」を設置し、同委員会が中心になって、複数人が目を通しつつ、役割分担をして提案を評価するとよいでしょう。

ただし、例えば全社的なコスト削減活動の場合、管理職が各部門の利益代表者になってしまい、自部門にとって有利な提案ばかりを取り上げてしまうことが懸念されます。 また、管理職は業務に精通している一方で、自身の考えや感覚に合わない提案を排除してしまうかもしれません。しかし、排除された提案の中には、これまでにない斬新なアイデアが隠れている可能性があります。そこで、「提案委員会(仮称)」には、各部門の管理職の他に若手社員や、経営企画室など客観的な視点で提案を評価する社員を加えることが非常に重要なポイントです。

3)評価基準

提案の評価基準は企業によって異なりますが、主要な項目はあらかじめ設定しておくことで評価がしやすくなります。例えば次のような項目を設定し、5段階で評価する方法もあります。

  • 事業方針に合致しているか
  • 数字などが具体的に記載されているか
  • 新しい発想が盛り込まれているか

この他、「提案委員会(仮称)」が提案を評価しやすくするために、フォーマットやカテゴリ、表記ルールはきちんと決めておくとよいでしょう。

4)フィードバックしながら、提案しやすい雰囲気をつくる

「提案委員会(仮称)」を通じて社長に上がってきた提案については、社長は必ず目を通し、その提案について評価できるポイント、見直したほうがよいポイントを明らかにした上で、その提案をした社員にフィードバックします。社長から直々にフィードバックを受けた社員は、次回以降、その内容を踏まえて提案を提出してくるようになるため、質も上がっていきます。

また、社長からのフィードバックは、必要に応じて提案者の氏名を隠す形で全社的に共有するとよいでしょう。質の高い提案は、社長や管理職にとって耳の痛い話であることが少なくありません。そうした提案であっても、きちんと社長が目を通し、なおかつコメント付きで全社で共有するようになれば、社員は安心して提案を出すことができるでしょう。

5)実行に移す

社員から提出された提案のうち、効果が見込めるものは実行に移していくことが重要です。いくら提案を提出しても、一向にそれらが実現されないようでは、社員はやる気を失ってしまいます。そのため、小さなことでも良いので、具体的な行動を起こし、それを社員に見せることが重要です。そのやり方には次のようなものがあります。

  • 実際にプロジェクトとして始動させる
  • 提案を提出した社員に、社長や役員が話を聞く場を設ける
  • 社長から、管理職に対して検討を指示する

4 企業事例:サトーホールディングス「三行提報」

社内提案制度の成功例として知られている企業に、サトーホールディングスがあります。サトーホールディングスは、自動認識技術を使用した商品の開発、製造、ソリューションの開発、インテグレーションを提供する企業で、アジア、オセアニア、米州、欧州など、グローバル展開している東証一部上場企業です。

サトーホールディングスが行っている取り組みは「三行提報(さんぎょうていほう)」(「企業を良くする創意・くふう・気付いた事の提案や考えとその対策の報告」の略称)と呼ばれるもので、1976年から実施されています。「三行提報」が開始されたのは、創業者である佐藤陽氏が労働争議によって倒産の危機にひんした際、「社員の声に耳を傾けるようにすれば、こうした問題が起こらないだろう」と考えたことがきっかけとなっています。そのため、経営側が社員の声に耳を傾ける姿勢を持つことが「三行提報」の一つの特徴となっています。

「三行提報」では、社員は100文字以上127文字以内(英語の場合は上限が150ワード)の短文で業務改善や営業のアイデアなどをまとめて提出し、それがデータベースに蓄積されます。また、その中から選ばれた約50件が社長にプリントされて渡されると同時に、幹部にも電子データで送られる仕組みになっています。また、50件に選ばれなかった「三行提報」についても、有用と判断されるものは、各部署のナレッジリーダーに展開され、判断を任せられる仕組みになっています。

「三行提報」はサトーホールディングスに深く根付いており、より良い製品・サービスを実現するための原動力となっているようです。

以上(2019年3月)

pj00219
画像:pixabay

【朝礼】新入社員に「贈る言葉」はなんですか?

4月になると、当社に新入社員が入社してきます。そこで今日は、新入社員を迎えるにあたり、皆さんにお願いしたいことがあります。

皆さん、新入社員に「贈る言葉」を、それぞれ選んでみてください。著名な経営者の名言、映画や漫画のセリフなど、どこで使われた言葉でもかまいませんが、2つ条件があります。1つ目は、前向きな言葉を選ぶことです。新入社員は、これから社会に出て新しい生活をスタートさせます。明るく第一歩を踏み出せるよう、前向きな言葉で応援しましょう。

2つ目は、その言葉を選んだ理由や思いを明らかにすることです。たとえ著名な経営者の名言を選んだとしても、それは、その経営者の言葉にすぎません。そこに皆さんが選んだ理由や思いを乗せることで、言葉が「温度」を持ち、より新入社員の心に響くようになるのです。もちろん、皆さん自身が考え出した言葉でもかまいません。

参考までに、私が新入社員に贈ろうと考えているのは、「おもしろおかしく」という言葉です。これは、堀場製作所の創業者である堀場雅夫氏の有名な言葉で、堀場製作所の社是でもあります。

どのような仕事でもつまらないものはない。徹底的にやり抜くこと、チャレンジし続けることで、仕事は「おもしろおかしく」することができる。人生の大部分を費やすことになる仕事を「おもしろおかしく」することで、人生をも豊かにできる。そうした思いが込められた言葉です。

新入社員には、社会人としてスタートを切るその日から、こうした思いを持ってほしいと心から願っています。ただし、私が「おもしろおかしく」を選ぶ理由はそれだけではありません。新入社員にこの言葉を贈るには、迎える側である私たち自身も、「おもしろおかしく」なければならないと思っているからです。

右も左も分からない新入社員は、いわば真っ白なキャンバスです。そのキャンバスにどのような色をのせ、どのような絵を描けるかは、本人の頑張りもさることながら、会社を創っている私たちの影響が大きいのは間違いありません。

誰もが新しいことや面白いことにチャレンジできる会社。前例にとらわれず自由に意見が言える、しかし責任は一人ひとりがしっかり果たそうとする会社。困ったときは皆で議論し、助け合える会社。何よりも、一人ひとりが「仕事が楽しい」と思える会社。そうした会社であればこそ、新入社員は、「おもしろおかしく」を実現できるのだと私は考えます。

私の言う「おもしろおかしく」は、新入社員に仕事への向き合い方を伝えると同時に、一人ひとりが「おもしろおかしく」働くことのできる会社にすることを、新入社員とここにいる皆さんに約束する言葉でもあるのです。

あと約1カ月で、新入社員が入社してきます。さあ、皆さんは、どのような言葉で新入社員を迎えたいでしょうか。

以上(2019年2月)

pj16947
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】質問力を高めるために必要な3つのこと

現在、社会人が改めて勉強する「大人の学び直し」や、就労と学びを循環させる「リカレント教育」が注目されています。語学や会計、プログラミング、文章の書き方など内容はさまざまですが、意外と人気があるのは「インタビューの仕方」なのだそうです。

上手に質問できるようになりたい、相手から話を引き出したい。そうした理由で、実際にインタビューをする仕事に就いていない人も、多く受講しているようです。部下ともっとコミュニケーションを取りたい管理職や、顧客のニーズをしっかりヒアリングしたい営業担当者などが、インタビューのプロから「質問力」を高める秘訣を教わりたいのかもしれません。

質問力はビジネスの基本です。ビジネスは、社内外の相手が何を考えているか、何を実現したいかを知り、調整しながら、互いにとって良い結果となるよう進めていく必要があるからです。

しかし、これができない人が少なくありません。皆さんの中にも、自分の質問力に自信のない人がいるのではないでしょうか。そこで、質問力を高めるために必要な3つのことを紹介します。

まず、一番大切なのは、相手に関心を持つことです。相手のことを「知りたい」と思わなければ、質問したいことも思い浮かばないでしょう。世の中に、自分と全く同じように考える人はいません。相手の考えを知れば、皆さん自身の世界も広がります。そう捉えて、相手に関心を持ちましょう。

次に実践したいのは、「なぜ」という質問をすることです。何事にも必ず理由があります。相手の考えていることや状況を知るには、「なぜ」の部分が最も重要です。

場合によっては、「なぜ」を聞くことで、相手の考えや要望より、もっと良い方法が探せることもあるでしょう。「なぜ」と聞くのを怖がってはいけません。

そして、3つ目に必要なのは、掘り下げることです。これは、「なぜ」と聞くのに似ています。相手の話に対して、「具体的には?」という質問をして掘り下げていくのです。「それについて具体的にどうするのがよいと考えているのか」「具体的に何が必要なのか」。こうした質問をして掘り下げることで、相手も、考えを深めたり整理したりすることができるでしょう。

先日、私はある雑誌の企画でインタビューを受ける機会がありました。そのときのインタビュアーがとても質問上手だったことが印象に残っています。「どのような状態が理想なのか」「なぜそう思うのか」「その状態を実現するために、具体的に今、何が必要なのか」「そのために実践していることは何か」。こうした質問をしてもらえたおかげで、自分でも曖昧だった自分自身の考えを、言葉にして整理することができました。

皆さんも、ぜひ、3つの方法を実践してください。質問力が高まれば、皆さんの世界も、ビジネスの可能性も、きっと広がるでしょう。

以上(2019年2月)

pj16946
画像:Mariko Mitsuda