元プロ野球選手が解説 「データ野球」に基づく人事評価

書いてあること

  • 主な読者:人事評価を行う経営者や人事担当者
  • 課題:現状の人事評価制度だけでは十分に機能しなくなってきている
  • 解決策:現代野球のデータを重視した評価制度を参考に、自社の目的を明確にし、目的と一致した評価指標を設定する

1 あなたの会社の人事評価制度は、本当に適正ですか?

誰にいくらの給料を支払うべきか。誰にどのポジションを任せるべきか。どうやって優秀な新卒社員を採用するか。他社の優秀な社員を、どのようにして我が社に迎え入れられるか。

経営者にとって、人事の仕事は最も重要であり、最も難解です。それは、ビジネスにおいて最も不確定要素が多い“ヒト”という資源を扱うからに他なりません。そういう観点から考えると、カネやモノという資源は意外なほど扱いやすく思えてきます。製造能力が2倍になる機械を導入し、正しく扱いさえすれば、2倍の製造能力を期待できるのに対し、ヒトへの投資は時に“生産”能力を10倍にすることさえあり得ます(ただし、2分の1になるときもあります)。ヒトへの投資はいつも不確定要素が多く、扱うことが難しい。だからこそ、“ヒト”を制する者がビジネスを制することができます。

そして、この“ヒト”という資源のみを使って勝負する世界があります。それは、スポーツです。試合に勝つために、誰にどのポジションを任せ、どのようにパフォーマンスを引き出し、どうやって相手に勝つか。使える資源はヒトのみ。速く走れるシューズ、速く泳げる水着などのモノへの投資は規制され、勝利をカネで買う八百長はスポーツ界ではタブーです。そんなヒトのみを使うスポーツだからこそ、ビジネスに活かせるヒントが多く隠されています。今回は、人事という仕事をスポーツという側面から見ていきましょう。

2 プロ野球球団における、人件費とは?

私は2007年から2012年まで横浜ベイスターズ(現DeNA)でプレーした経験から、プロ野球の世界に明るいです。よってここでは、野球、とりわけプロ野球を例にとって話を進めていきます。

プロ野球球団は、大きく分けて3つの部署があります。観客動員、グッズ売上など、ビジネスサイドを担当する事業部と、選手の年俸、チーム構成、ドラフト戦略、トレード、解雇など、人事サイドを担当する編成部と、監督、選手を中心に試合に勝つことを使命とする現場の3つです。

チーム構成は編成部の仕事です。現状の戦力の特徴(例えば先発、中継ぎ投手などの役割に加えて、スピード系、コントロール系などの特徴など)を把握し、それらが偏らないようにバランスよくチームを編成していきます。そのために、誰を解雇し、誰をドラフトで獲得するかを考え、空いている枠は外国人やトレード、FA選手で埋めていきます。一方、用意された戦力を駆使して戦う現場の監督は、用意された食材をもとに最高の料理を作るシェフのような立ち位置といえます(もちろん、シェフには食材をリクエストする権限があります)。

そして、誰にどのくらいの給料を支払うかという年俸を決めるのも、編成部の仕事です。球団を経営するという観点から見ると、選手に支払う報酬は「人件費」とは少し異なります。それは、選手は球団が収益を上げるうえでの「商品」という見方もできるためです。とはいえ、活躍や貢献の評価に応じて報酬が変動するところや、特定の数字に対して支払われるインセンティブ契約、重大な過失(注)を犯した際に発生する報酬の減額などは、人件費の概念に近いです。故に編成部は、選手に支払う総年俸をどれだけ抑えられるかという任務も請け負います(いわゆる、人件費を抑えるという行為です)。

(注)ここでいう重大な過失とは、民事・刑事事件などのことで、プレー中のミスのことではありません。そちらは、翌年の報酬に反映されます。

3 プロ野球における相対評価と絶対評価

さて、誰にどのくらいの年俸を支払うかを、どうやって決めたらよいでしょうか。15勝した先発投手と、30本の本塁打を打った選手と、3割の打率を残した選手のうち、誰が1億円の年俸を支払うのに最も適しているでしょうか。

2008年、私の在籍していた横浜ベイスターズは、ダントツの最下位に沈みました。しかし、チームの4番バッターであった村田修一は本塁打王を獲得し、3番バッターであった内川聖一(現ソフトバンク)は、右打者歴代最高打率の3割7分8厘で首位打者を獲得しました。打撃部門の2タイトルを占めましたが、チームはダントツの最下位です。こういう場合、あなたが編成部長だったとしたら、いくらの年俸を支払うでしょうか。

ここでは、2つの評価が鍵となります。それは、相対評価と絶対評価です。相対評価はいわゆるマーケットプライスのことで、他球団との比較から、46本の本塁打を打ち、なおかつ114打点を稼いだ人にはどれくらいの年俸が支払われるべきか、という相場が算出されます。プロ野球の歴史上、選手の年俸はほとんどが相対評価で決定されてきました。だからこそ落合博満(日本人初の3億円プレーヤー)は選手時代、自らの年俸を上げることに執念を燃やしました。自らの年俸が増えれば、それが前例となって相対評価の基準が上がり、野球選手の価値の向上につながるからです。

この相対評価から算出した年俸に影響を与えるのが、絶対評価です。チームの成績は球団の収益に大きな影響を及ぼすため、人件費の上限に制限が発生します。故に、相対的な評価額(マーケットプライス)が高かったとしても、チーム成績などの絶対的な理由から、相対的な評価額よりも減額提示をされることがあります。

こういうことが続けば、選手としてはマーケットに売り出したほうが高く評価されるわけなので、時期が来たら自らをマーケットに売り出します(結果的に、前述した2選手はFAで他球団に移籍しました)。結果、強くて富める球団はより強くなり、弱くて貧しい球団はより弱くなります。資本主義の縮図のような構造を、ここでも垣間見ることができますね。

しかし、この構造に風穴を開けた球団があります。それが、メジャーリーグのオークランドアスレチックスです。

4 ヤンキースの3分の1の予算で、最高勝率を記録したチーム

1)野球=27個のアウトを取られるまでは終わらない競技

「マネーボール」という映画が話題になって久しいですね。ビリー・ビーンというGMが独自の方法で球団を経営し、全く新しいチーム構成をほぼ“発明”に近い形で作り上げました。

2002年、アスレチックスの総年俸は4000万ドルで、総年俸1位のニューヨークヤンキースは1億2600万ドル。約3分の1の人件費にもかかわらず、アスレチックスは全30球団中最高勝率・最多勝利数を記録しました。果たしてビリー・ビーンは、何を“発明”したのでしょうか? それは、データを中心にしたチームと戦略作りです。

野球の歴史は長らく、打者を評価する指標は打率、本塁打、打点の3つに、盗塁を加えた4つが中心でした。しかし、その4つが本当に「勝利」に貢献する指標なのかを疑ったビリー・ビーンは、ビル・ジェイムズが唱えたセイバーメトリクス論にたどり着きます。これは、データを統計学的見地から客観的に分析し、選手の評価や戦略を考える分析手法です。

ここでは、野球を「27個のアウトを取られるまでは終わらない競技」と定義付けています。そして、アウトにならない限り攻撃は続き、4つの塁を進塁すれば得点が入る性質上、「アウトにならない能力」と「多くの塁に進む能力」を、打者にとって最も重視すべき能力と位置付けました。その能力を評価するために、出塁率+長打率=OPS(On-base Plus Slugging)という指標を採用したのです。その一方で、盗塁やバントといった戦略を「リスクの割にはリターンが少ない戦略」とし、使用をほぼ禁止に近い状態にしました。投手に関しても独自の指標を採用し、徹底しました。

2)データに基づいたチームと戦略作り

選手をさまざまなデータで評価していくことは、今では当たり前となっていますが、当時は革新的でした。どの時代もそうですが、新しすぎるものは受け入れられません。当時のビリー・ビーンも例に漏れず批判の的となりました。

データ上、勝利への貢献度が低い選手は、スター選手であってもトレードで他チームに放出しました。代わりにトレード先のチームから、OPSが高く、年俸の安い若手選手を大量に獲得し、起用しました。当然、チーム関係者からは「スターを放出してまで獲得した、この無名選手たちは何者だ?」と、疑問や不満の声が上がります。

ドラフトでも、「肩が強い」「足が速い」といった能力よりも、徹底して出塁率と長打力といったデータを重視し、データの取れていない不確定な高校生には一切目もくれませんでした。「勘」や「経験」を頼りにするスカウトの話には一切耳を貸さず(それどころか、大半を解雇し)、逆にハーバード大卒のポール・デポデスタを右腕につけ、徹底したデータ戦略にかじを切りました。

多くの批判を受けましたが、自分の信じたやり方を貫いた結果が、前述した通りです。データを使ったチーム、戦略作りが一般化した現在、出塁率の高い選手は市場原理に則して、価格が高騰しています。よってアスレチックスの「低予算で勝率の高いチーム」戦略は別のやり方を余儀なくされています。かなり割愛しましたが、興味のある方はぜひ「マネー・ボール 完全版」(マイケル・ルイス、中山宥訳、早川書房、2013年4月)を読んでみてください。

5 目的と一致した評価指標とは?

ここで重要なのは、「これまでの評価指標は、本当の目的に貢献する指標なのか?」という目で見られるかどうかです。

そもそも、本当の目的とは何なのでしょうか。ビジネスはスポーツと違い、勝ち負けという概念が曖昧です。どちらかが勝つとどちらかが負けるというスポーツと違い、「両者とも勝者」があり得るのがビジネスです。目的を明確にしやすく、かつ選手への浸透も容易であり、競合の数も限られているスポーツのほうが、ビジネスよりも戦略を作りやすいといってもいいでしょう。だからこそ、評価の指標も設定しやすいのです。逆にいうと、ビジネスにおいても目的を明確に定めることができれば、評価の指標も設定しやすくなります。

そして、目標が明確になったら、今使われている評価の指標が目的と一致しているのかどうか、いま一度考え直してみましょう。長年の経験、信頼という解釈の陰で、実は貢献度が低いベテラン社員がいるかもしれません。暗い、ネガティブといった印象にとらわれて低い評価を受けている若手社員が、本来は秀でた部分を持っているにもかかわらず、それを評価できる指標がないために見落とされているかもしれません。そうした観点から見たときに、新たな人事の可能性が開けてきます。

6 数字は、誰のためのものか?

ただし、忘れてはならないのは、どうしても数字にした評価ができないこともある、ということです。アスレチックスの例でいうと、OPSはあくまでビリー・ビーンが当時目指した経営の観点、つまり「低予算で高勝率のチーム作り」における指標です。実際の試合では、数字以外の貢献は無数に存在します。

足の速い選手が一塁で大きいリードをとり、投手にプレッシャーをかけたとします。ランナーが気になる投手は打者への勝負がおろそかになり、甘く入ったボールを痛打されます。これは、ランナーによる貢献なのでしょうか、打者の能力によるものなのでしょうか。データはランナーによるプレッシャーをカウントできません。

経験の浅い若手投手がピンチを招き、たまらず野手がマウンドに集まります。データ上の能力は低いですが、チームメートからの信頼の厚い三塁手が投手を激励します。それに勇気づけられた若手投手は、そのピンチを切り抜けます。若手投手は、「間違いなく、あの先輩に声をかけてもらったおかげだ」と言っても、それはデータに反映されず、その先輩はその年に解雇されるかもしれません。

そしてもう1つ忘れてはならないのは、人事評価の指標は経営者にとって重要な指標であっても、現場の選手や社員にとっては役に立たない指標である、ということです。マウンドに立つ投手にとっては、このバッターのOPSが.970だという数字よりも、3球目にカーブを振ってくる確率が78%だという数字のほうが、はるかに価値が高いのです。

これはビジネスの場面でもよく起こることです。成約率が20%の営業マンに対し、「君の成約率は20%だから、みんなの平均値である40%になるように努力するように」と伝えたとします。しかしながら、本人にとっては成約率の数字よりも、具体的にどこが課題なのかということを言われるほうが、はるかに価値が高いのです。経営判断としての指標と、現場が目の前の成果を上げるための指標は、違うのです。

私はこの指標、つまり選手が試合で使える指標、情報とは何かを研究するために、1年間アナリストとして分析活動をやりました。これはこれで面白い分析結果が手に入ったのですが、それはまた機会があれば書かせていただくことにしましょう。

優勝するために自由に選手をトレードしたり、降格、解雇ができたりするプロ野球と、連綿と続く営利活動の中で個々への評価を下し続けなければならない企業とでは、指標に対する概念も評価の仕方も違います。ただ、この一連の話を通して、「我が社の目的としているものは何か?」「目的のために貢献しているかを評価するための指標は、今のままでよいのか?」と考える機会になったなら、それは本望です。(敬称略)

以上(2020年4月)

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知的財産の価値評価の考え方

書いてあること

  • 主な読者:自社や他社の知的財産をビジネスに活用したい経営者
  • 課題:知的財産の価値の評価手法が分からない
  • 解決策:3種のアプローチによるそれぞれの評価手法について理解する

1 知的財産の概要

1)知的財産の重要性

知的財産とは、人々の工夫や発見、営業上の信用など、人間の知的な活動から生じる財産を指します。主な知的財産としては次のようなものが挙げられます。

1.知的な創造物

  • 発明(独創的なアイデア) 
  • 考案(物品の形状や構造)
  • 意匠(物品のデザイン)
  • 著作物(音楽、小説、絵画など)

2.営業上の標識となるもの

  • 商号(企業が事業活動を行う時に使う名前)
  • 商標(商品やサービスを示す文字、デザイン)

知的財産の中には第三者が簡単に模倣できてしまうものがあります。しかし、発明の成果などを無制限に第三者が模倣して利用できるとなると、人や企業が費用や労力をかけてつくり出す意味がなくなってしまいます。また、長年の積み重ねで消費者から信頼を受けてきた商品のデザインなどを模倣したものが市場に出回ると、消費者は安心してその商品を選ぶことができません。こうした第三者による模倣への対策のために知的財産の創作者に与えられる法的な権利が知的財産権です。

知的財産権は、それぞれの保護対象に応じて、特許法、実用新案法など個別の法律によって保護されています。知的財産権のうち、特許権・実用新案権・意匠権・商標権の4つは「産業財産権」と呼ばれています。

2)知的財産の活用

知的財産は保有しているだけでは意味がありません。知的財産は、ビジネスに結びつけることでその価値を発揮するものです。具体的には、次のような方法によります。

  • 市場に参入障壁を築き、自社の優位性を確保する
  • 他者とライセンス契約を結び、実施料収入を得る
  • 知的財産を担保に融資を受ける

知的財産は、「他者による模倣などを受けた際の対抗手段」ですが、そうした「受け身」的な対応だけでは、競争が激化するビジネス社会では生き残っていくことはできません。知的財産を積極的に活用することで、自社の収益性を高めることが重要です。

3)知的財産の価値評価の重要性

特許などの知的財産について従来型の「権利による保護」という観点だけではなく、積極的にビジネスに活用していく必要性がますます高まっています。知的財産の活用において、「知的財産権の売買」「資金調達」「M&A」などの場面では、知的財産の価値評価が必要不可欠です。

知的財産をビジネスに活用するためにも、企業にとっては「自社が有する知的財産の金銭的価値はどの程度なのか」という点が重要となります。

しかし、現在のところ、知的財産の価値に関する評価方法が確立していないために、優れた知的財産を持ちながら、知的財産による資金調達などができない企業があると指摘されています。また、企業以外にも、裁判所や金融機関などが企業の資産価値などを算出する際にも知的財産の価値評価は必要となります。

知的財産の価値を評価する際の考え方としては、主にコストアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3種が用いられます。

それぞれの考え方には一長一短があり、実際に評価を行う際には、それぞれのケースに合わせて有効な手法を選択します。また、複数の手法による評価を行い、その結果を比較検討して最終的な評価を決定することもあります。

2 知的財産の価値評価の手法

1)コストアプローチ

コストアプローチは、知的財産を取得するために要した費用額から、知的財産の価値を評価しようとする考え方です。

コストアプローチには、主に次の2通りの方法があります。

  • 原価法
  • 再構築費用法

コストアプローチは、取得に要する(要した)費用を価値評価の基準としていることから、比較的客観性があるといえます。

しかし、「コストに含める範囲によって価値が大幅に変化する」などの問題があります。

2)インカムアプローチ

インカムアプローチは、知的財産が将来生み出すと予測される利益などから、知的財産の価値を評価しようとする考え方です。

インカムアプローチには、主に次の4通りの方法があります。

  • 計画キャッシュフロー法
  • 単純DCF法
  • リスクを考慮するDCF法
  • オプション理論ベース

インカムアプローチは、知的財産が持つ収益力を反映した手法だといえます。現在、知的財産の価値評価において最も一般的に用いられているのは、このインカムアプローチです。

しかし、「収益予測が困難であり、不確実性が高い」「主観や経験的判断に陥りやすい」などの問題があります。

3)マーケットアプローチ

マーケットアプローチは、評価される資産に類似する資産取引を調査して知的財産の価値を評価しようとする考え方です。

マーケットアプローチには、主に次の2通りの方法があります。

  • 批准アプローチ
  • 残差アプローチ

マーケットアプローチは、実際の取引価額を基準とするため、客観性や信頼性があるといえます。

しかし、特に技術をはじめとした知的財産に関しては、取引当事者間の秘密事項として外部に取引価額などの情報が出てこないことが多いため、参照できる適切な事例がほとんど存在しないという問題があります。

3 企業の知的財産に関連する活動をサポートする機関

1)日本弁理士会

現在、国内には知的財産の価値を客観的に評価する大規模な機関はありません。知的財産の価値評価に際しては、「知的財産関連の専門部署や関連企業を設置し、企業が独自に評価を行う」「ノウハウを持つ弁理士に依頼して個別に評価を行う」ことが一般的です。しかし、評価者によって評価が大きく異なっているのも事実です。

そこで、日本弁理士会では、弁理士が関与する知的財産の価値評価について客観性および妥当性の向上を図ることを目的として、知的財産価値評価推進センターを設立しました。同センターは直接的に知的財産の価値評価を行うわけではありませんが、適切に価値評価を行うための情報をまとめるなどしています。

2)知財総合支援窓口

知財総合支援窓口では、知的財産権制度の説明といった基本的な事項から、知的財産を出願する際の手続き支援など、企業が知的財産に関する悩みや相談を一元的に受け付けています。

以上(2020年4月)

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防災対策チェックリスト/中小企業のためのBCP

1 オフィス内のチェックリスト

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2 災害時の備蓄チェックリスト

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3 社員の安否確認リスト

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4 顧客・取引先の被災状況確認リスト

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5 各種防災訓練・感染症予防のチェックリスト

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以上(2020年4月)

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災害時における税務の特例には、どのようなものがありますか?/中小企業のためのBCP

Q.災害時における税務の特例には、どのようなものがありますか?

A.申告・納付などの期限延長があります。また、顧問税理士が被災したことにより申告できない場合においても、同様の取り扱いを受けられることがあります。

1 申告・納付などの期限に関する特例

1.個別指定による期限延長

納税地を管轄する税務署長に対し、災害などの止(や)んだ日から相当の期間内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出した場合、その承認を受けることにより、税務署長等が指定した日(災害などの止んだ日から 2カ月以内)まで申告・納付などの期限が延長されます。

「災害などの止んだ日」とは、申請者に特別な事情がある場合を除いて、客観的に見て、申告・納付などの期限延長の申請をした人が、申告・納付などの行為をするのに差し支えないと認められる程度の状態に回復した日になります。例えば、新幹線の運行休止など交通の途絶があった場合、交通機関が運行を始めた日などが災害などの止んだ日になります。

2.地域指定による期限延長

2011年3月11日に発生した東日本大震災のときには、地域を定めて申告・納付期限を延長する対応が取られました。

2018年9月6日に発生した北海道胆振東部地震のときも、北海道の一部の地域で申告・納付期限を延長する対応が取られました。

なお、地域指定された地域に納税地がある個人または法人については、特段の手続きを経ることなく、自動的に申告・納付の期限が延長されます。また、申告・納付期限延長措置の終了に関しては、各地域の復興などの状況を踏まえ、国税庁のウェブサイトなどで告示されます。地域指定に関する情報は定期的に確認しましょう。

3.顧問税理士が被災した場合

顧問税理士が被災したら、期限までに顧客の申告ができないことが想定されます。こうした場合、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」に必要事項を記載し、納税地を管轄する税務署長に提出し、その承認を受けることで、税務署長等が指定した日(災害などの止んだ日から2カ月以内)まで期限が延長されます。

2 延滞税・利子税・加算税に関する特例

災害などにより国税の納期限が延長された場合、延長された期間については、その国税に係る延滞税および利子税は課されません。また、申告・納付などが適正に行われない場合に課される加算税については、認められた延長期限内に申告を行えば課されません。

以上(2020年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之、税理士 中川昌紀、CFP(日本FP協会認定) 辻野顕子)

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取引先の被災で、通常とは異なる税務上の取り扱いはありますか?/中小企業のためのBCP

Q.取引先の被災で、通常とは異なる税務上の取り扱いはありますか?

A.取引先に対する支援の一環として行った、災害見舞金や売掛金の免除などは、損金処理することができます。また、金銭以外に自社製品などを提供した場合でも、損金処理することができます。

1 取引先に対する災害見舞金など

通常、取引先などの慶弔、禍福に際して支出する費用(見舞金や香典費など)は、贈答などと同様の行為とされ、交際費として取り扱われ、一定の金額以上については損金処理することができません。

ただし、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程において、その取引先に対して行った災害見舞金の支出、事業用資産の供与などのために支出した費用は、交際費などに該当しないものとして全額損金処理することができます。

なお、こういった災害見舞金などについては、領収書の発行を依頼するのが難しいケースが多いですが、帳簿書類に相手先の名称や所在地、支出年月日などを記載しておけば問題ありません。

2 取引先に対する売掛金の免除など

取引先などの債権を合理的な理由がなく免除した場合、原則、取引先などに寄附したものとされ、一定の金額以上については損金処理することができません。ただし、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援目的で売掛金、貸付金などの債権を免除する場合、その免除したことによる損失(債権免除損など)は、寄附金または交際費以外の費用として、全額損金処理することができます。

また、既契約のリース料、貸付利息などの減免を行う場合や、災害発生後に取引条件を変更する場合も、同様に取り扱われます。

3 取引先に対する低利または無利息による融資

災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として低利または無利息による融資を行った場合、通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、寄附金に該当しないものとされ、全額損金処理することができます。

4 被災者に対する自社製品などの提供

災害時、倫理的・社会的要請により自社製品を被災地などに無償で提供することがあります。これは、国が被災者を支援することと同様です。また、広告宣伝費と同様の性質があるとも考えられるため、寄附金に該当しないものとされ、無償で提供した自社製品の金額は、全額損金処理することができます。

以上(2020年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之、税理士 中川昌紀、CFP(日本FP協会認定) 辻野顕子)

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被災時に、通常とは異なる税務上の取り扱いはありますか?/中小企業のためのBCP

Q.被災時に、通常とは異なる税務上の取り扱いはありますか?

A.被災した資産の損失や、原状回復のための費用など、災害を理由に生じた損失や費用の中には、それぞれが生じたときに一括で損金処理することができるものがあります。

1 災害により資産が滅失・損壊した場合の損失

商品、店舗、事務所などの資産が災害により被害を受けたことで、次のような損失・費用が生じたときは、その損失・費用の額は損金処理することができます。

  • 商品や原材料などの棚卸資産、店舗や事務所などの固定資産などの資産が災害により滅失、または損壊した場合の損失の額
  • 損壊した資産の取り壊し、または除去のための費用の額
  • 土砂その他の障害物の除去のための費用の額

2 復旧のために支出する費用

被災した固定資産(以下「被災資産」)について、支出する費用に係る「資本的支出」(原状回復を超えて資産価値を高めるため、固定資産として計上しなければならない支出)と修繕費(損金処理することができる支出)の区分については、次の通りです。

  • 被災資産について、原状回復のために支出する費用は修繕費となる
  • 被災前の効用維持のために行う補強工事費用について、修繕費とする経理をしているときは、税務上もこの処理が認められる
  • 被災資産について支出する費用(上記1.と2.に該当するものを除く)の額のうち、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、税務上もこの処理が認められる

3 社員などに支給する災害見舞金

災害により被害を受けた社員やその親族などに対して、一定の基準に従って支給する災害見舞金については、福利厚生費として損金処理できます。

4 災害損失欠損金の繰戻し還付

災害が発生した事業年度の欠損金(税務上の利益がマイナスであること)のうち、棚卸資産、固定資産、繰延資産に対して生じた損失(その災害が原因のものに限る)の額を災害損失欠損金といいます。この災害損失欠損金については繰戻し還付という制度を受けることができます。これは、災害が発生した事業年度の前事業年度(青色申告の場合、前々事業年度も対象)に生じた所得について法人税の納税を行っている場合、その納税額のうち災害損失欠損金の範囲内で、還付を請求できるという制度です。

以上(2020年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之、税理士 中川昌紀、CFP(日本FP協会認定) 辻野顕子)

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災害時の財務対策として、最初に何を考えるべきですか?/中小企業のためのBCP

Q.災害時の財務対策として、最初に何を考えるべきですか?

A.災害により事業がストップした場合、事業再開までに必要な資金はいくらかを把握し、その資金はどうやって充当・調達するのかを事前にまとめておく必要があります。

1 事業再開のために必要な資金の把握

財務対策は、被災直後に表立った問題となりにくいため、後回しにされがちな災害対策です。しかし、防災や減災に対する具体的な対策は取っていても、いざ災害が起きると想定外の被害が生じ、復旧費用などで資金繰りが急速に悪化する恐れもあります。

また、災害により事業がストップした場合も、人件費などの支払いはしなくてはなりません。こうした場合、復旧過程においては資金が必要になります。

一般的に、緊急時において、月商(月の売上高)の1カ月分を目安に準備しておくとよいといわれていますが、実際は業種や資産の所有状況など、会社ごとの事情や災害規模によって異なります。今、会社が被災し、事業がストップした場合、再開までに必要な資金(事業がストップした場合の運転資金(キャッシュフロー)と復旧に必要な資金)はいくらかを、正確に把握しておかなければなりません。

例えば、中小企業庁「中小企業 BCP策定運用指針」の財務診断モデルでは、必要事項を入力することで、災害時におけるキャッシュフローや復旧費用が予測できます。

2 事前に確認したい4つの資金

1.自己資金(現金預金)

定期預金などのように、払い戻しに一定の手続きが必要なものは別途把握しておきましょう。また、小口現金の紙幣が被災により破れたり、燃えたりした場合、損傷状況によって価値が全額、半額、失効の3パターンに分かれます。業種などにもよりますが、現金の保有は少額に抑えるのが無難です。

2.受取保険金

加入している保険が、どのような被災状況時に活用でき、どの程度の期間で保険金が支払われるのかを把握しておきましょう。

3.有価証券などの資産売却による資金

決算期だけでなく定期的に時価を把握し、どの程度の資金になるのかを把握しておきましょう。また、売却手続きや、売却時に考慮しなければならない特有の背景などもまとめておきましょう。

4.金融機関などからの調達資金

災害時などに利用できる、(政府系)金融機関や信用保証協会の制度があります。事前に融資条件や手続きを把握しておきましょう。また、オーナーは経営者個人からの借入も考えられます。

以上(2020年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之、税理士 中川昌紀、CFP(日本FP協会認定) 辻野顕子)

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【座談会】建物の損壊や商品の損傷……復旧に必要な資金を把握していますか?/中小企業のためのBCP

――災害時に起こりがちな税務・財務上の問題について教えてください。

税理士A
まず想定されるのは、オフィスなどの建物の損壊、商品や車両の水没や損傷といった会社が保有する資産の被害です。被災直後には損壊度合いがそれほどひどくないように感じられても、その後の余震などにより損壊する危険性があるとして、行政から建物への立ち入りを禁止されることもあります。こうした場合、営業や操業自体が完全にストップしてしまいかねません。

税理士B
他には、人に関する問題もあります。例えば、社員の住居が損壊したり、浸水したりした場合、出勤どころではないでしょう。社員がいなければ、通常の営業活動ができず、会社に大きな影響を与えます。

会社によっては、被災した社員に日常の生活を少しでも早く取り戻してもらえるよう、災害見舞金を支給するケースも出てくるでしょう。

――資産が被害を受けた場合、会社が早期に復旧するためには、日ごろからどのような準備をしておくべきですか?

税理士A
災害の規模や被災状況によって異なるため一概にはいえませんが、まず被災した場合に必要となる資金を把握しておくことは必須です。BCPを策定する際も、最悪のケースまでを想定しておかなければならないでしょう。

例えば、オフィスなどの建物の被害は、取り壊して建て直す場合が、最も資金が必要になるケースだと思います。その他の資産(商品や固定資産など)についても新品を購入した場合、いくら必要なのかを把握することが、対策を講じる上での1つの基準になります。

また、外部の資金調達先について、災害時に受けられる融資の条件や手続きを事前にまとめておくなど、被災時の混乱の中でも、できる限りスムーズに融資を受けられるように準備をしておくことはとても大切です。

――災害見舞金の支給に当たって、注意すべきことはありますか?

税理士B
会社としては、建物などの資産の修繕や、流通網などの原状回復に資金が必要になるため、社員に災害見舞金を支給するケースは、あくまで余裕があればの話になります。

災害見舞金は支払った会社側で損金処理することができますし、受け取った社員側にも源泉所得税は課されません。

ただし、災害見舞金を支給する際は、被害を受けた社員に一律に、一定の基準に従って支払う必要があります。特定の社員だけに支給した場合には、給与などの扱いを受ける恐れがあるからです。

なお、こうした基準を設けるに当たっては、災害見舞金規程などを事前に作成しておくのが理想ですが、被災後に作成した場合でも税務上の問題はありません。

――BCPや災害対策に本気で取り組もうとしている経営者に対して、アドバイスをお願いします。

税理士A
まずは、1カ月でどのくらいの資金が必要なのかを正確に把握しておくことが大切です。損益計算書の損益だけでなく、キャッシュフロー計算書を作成し、資金状況を月次ベースで把握するのです。その数値を経営者だけでなく、役員などとも共有します。

また、保険に加入している場合は、保険の内容を整理して、被災したときにどの程度の保険金がもらえるのかも確認しておきましょう。

実際に被災したときには、現場は混乱し、また、資料の紛失なども起こり得ます。税務・財務に限ったことではなく、どれだけ事前に準備をしているかが、その後の事業継続に大きな影響を及ぼすことを認識しておきましょう。

以上(2020年4月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之、税理士 中川昌紀、CFP(日本FP協会認定) 辻野顕子)

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画像:Maslakhatul Khasanah-Shutterstock

休業手当を支払うのはどのようなケースですか?/中小企業のためのBCP

Q.休業手当を支払うのはどのようなケースですか?

A.使用者の責に帰すべき事由により休業する場合、休業手当の支払いが必要です。一方、休業が不可抗力によるものと認められる場合、休業手当の支払いは不要です。

1 「使用者の責に帰すべき事由」の考え方

使用者の責に帰すべき事由により休業する場合、会社は休業期間中、社員に平均賃金の60%以上の休業手当を支払わなければなりません。使用者の責に帰すべき事由には、会社の故意・過失による場合はもちろん、不可抗力を主張し得ない全ての場合が含まれます。

休業が不可抗力によるものと認められれば、休業手当の支払いは不要ですが、そのためには次の2つの要件を満たす必要があります。

  • 休業の原因が外部により発生した事故であること
  • 事業主が通常の経営者として、最大の注意を尽くしてもなお避けることのできない事故であること

例えば、オフィスが損壊して事業を行えない、防災気象情報が出ていて、安全のために社員を自宅待機させる必要があるなどの理由で休業する場合、休業手当の支払いは不要となる可能性が高いです。

一方、オフィスに直接的な被害はないが、道路が損壊し資材が届かないなどの理由で操業できずに休業する場合、判断が分かれます。日ごろの備蓄管理の状況、他の調達手段の可能性、災害発生からの期間などによって、休業手当の支払いが必要になる可能性があります。

2 休業手当の負担軽減に役立つ助成金など

1.雇用調整助成金

事業を行えない状態で休業手当を支払うのは、会社にとって負担です。こうした場合、「雇用調整助成金」が役立ちます。

雇用調整助成金は、経済上の理由(停電の影響で営業ができない、新型ウイルスによる感染症の影響で客数が減ったなど)により休業する会社などが受給できます。また、大きな災害などの場合、助成率の引き上げなどの特例措置が実施されることがあります。

2.雇用保険の基本手当

不可抗力による休業の場合、休業手当の支払いは不要です。しかし、給与も休業手当も支払われない状態が続くと、今度は社員の生活が心配です。こうした場合、「雇用保険の基本手当」が役立ちます。

基本手当は会社を離職した社員が受給するものですが、大きな災害の場合、実際に離職していない社員も受給できる可能性があります。後に雇用する約束をして社員を一時離職させる場合も同様です。

雇用調整助成金や雇用保険の基本手当は、災害の状況などによって受給額や受給手続きが変更されることがあります。詳細については、最寄りの労働局やハローワークに確認してください。

以上(2020年4月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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二次災害を防ぐため、社員を自宅待機させることはできますか?/中小企業のためのBCP

Q.二次災害を防ぐため、社員を自宅待機させることはできますか?

A.会社は、社員を自宅待機させることができます。ただし、給与(または休業手当)の支払いについてはケースにより異なります。

1 自宅待機を命じる主な方法は「休業」「休暇」

地震などの場合、建物の損壊などの一次災害が収まったからといってむやみに出歩くと、落下物による負傷などの二次災害に遭う恐れがあります。こうした場合、会社は二次災害を防ぐため、社員に自宅待機させることがあります。主な方法は、会社が休業を命じる方法と、社員が休暇を取得する方法の2種類です。

二次災害の恐れがある場合、会社は強制的に事業をストップしたり、通勤に危険が伴う社員に対し出勤しないよう指示したりするなど、休業を命じて自宅待機させることができます。こうした場合、仮に社員が出勤したいと言っても、会社は自宅待機を命じることができます。なお、自宅待機を命じる場合、休業手当の支払いが必要になることがあります。

社員に休暇を取得させて自宅待機させる場合、就業規則等に基づき、社員に休暇を申請してもらうことになります。休暇は本来、社員が自身の希望に基づいて取得するものなので、休暇を取得するよう社員に強制することはできません。

つまり、会社は社員に対し、休暇の取得を勧めることはできますが、社員がこれを拒んだからといって、懲戒処分など不利益な取り扱いをすることはできません。

なお、社員が休暇を取得して自宅待機する場合、会社がその間の給与を支払う義務があるかは、休暇の種類によって異なります。年次有給休暇の場合、自宅待機中の給与を支払う必要があります。一方、就業規則等で、災害時や病気療養時に付与する特別休暇を設けていて、その間は無給とする規定がある場合、給与を支払う必要はありません。ただし、年次有給休暇と特別休暇の両方を取得できる場合、どちらを取得するかは社員の希望によります。

2 オフィスでの待機命令と就業時間の関係

就業時間中に災害が起きた場合、会社としては、危険が取り除かれるまで、社員をオフィスで待機させることを考えるでしょう。ただし、その待機命令が必ず認められるとは限りません。

社員は労働契約に基づき、就業時間中は会社の命令に従う義務を負っているので、就業時間中であればオフィスで待機するよう命じても問題ありません。一方、就業時間外の行動については、原則として会社が介入することができません。従って、危険があるからといって、終業後もオフィスにとどまるよう命じることはできません。

では、社員に「オフィスにとどまるように要請する場合」はどうでしょうか? 会社としては、社員の安全を確保したいという思いがあります。しかし、災害時、社員は親族や住居が心配で、一刻も早く帰宅したいと考えます。難しいところですが、オフィスでの待機要請にそれほどの強制力はないと考えるべきでしょう。

以上(2020年4月)
(監修 社会保険労務士 志賀碧)

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