1 いよいよ中小企業でも、ストレスチェック制度が義務に!
ストレスチェック制度とは、
社員が所定の質問に答えて自身のストレス状態を把握する「ストレスチェック」や、高ストレス者に対する「医師による面接指導」などの一連の施策のこと
です。現状、社員数が常時50人以上の会社は、年1回以上、ストレスチェック制度を実施する義務があります。これまでは常時50人未満の会社については現状努力義務でしたが、昨今のメンタルヘルス不調の増加などを受けて、
常時50人未満の会社においても、2025年5月14日から3年以内に、ストレスチェック制度の実施が「義務化」
されることになりました。
そのような状況となりましたので、中小企業も今のうちから義務化に向けた準備を進める必要があります。ただ、注意しなければならないのは、「健康診断と違って社員に受検を強制できない上に、受検結果も社員の同意がないと取得は不可」などストレスチェック制度特有のルールがあり、場当たり的に取り組むと法令違反や実務の抜け漏れが起きかねないという点です。
そこで、この記事では、
ストレスチェック制度で最低限押さえるべき47項目の実務チェックリスト
を紹介します。ストレスチェック制度を実施する前に、この記事の実務チェックリストを確認してみてください。
なお、厚生労働省では、ストレスチェック制度の実施が全企業で義務化されることを受け、「小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル」を公表していますので、こちらもご確認ください。また、ストレスチェック制度の実施に当たって疑問や悩みがある場合は、労働者健康安全機構の「ストレスチェック制度サポートダイヤル」などもご利用ください。
厚生労働省「『小規模事業場ストレスチェック制度実施マニュアル』を公表します」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_69680.html
労働者健康安全機構「ストレスチェック制度サポートダイヤル」
https://www.johas.go.jp/sangyouhoken/helpline/tabid/1008/Default.aspx
2 これだけは押さえる! 実務チェックリスト47項目
ストレスチェック制度を実施する際は、次のチェックリストを実務の抜け漏れ防止にご活用ください。
チェックリストは、こちらからダウンロードできます。
(図表)【ストレスチェック制度の実務チェックリスト47項目】
| 区分 | 項目 | チェック |
| 会社の 現状 |
常時50人以上の社員(パート等や派遣社員を含む)がいますか?(50人以上いる場合、現時点でストレスチェック制度の実施は義務。50人未満の場合も、2025年5月14日から3年以内に実施は義務になります) | |
| ストレスチェック制度の対象になる社員を雇用していますか?(正社員、所定労働時間が正社員の4分の3以上かつ1年以上雇用見込みがあるパート等) | ||
| ストレス チェック |
実施者は決まっていますか?(医師・保健師、研修を修了した歯科医師・看護師・精神保健福祉士・公認心理師) | |
| 実施事務従事者(実施者の補佐役)は決まっていますか?(会社の労務担当者(直接的な人事権を持たない者)など。衛生推進者や安全衛生推進者の選任義務のある50人未満の事業場は、当該者を担当とすることが望ましい) | ||
| 実施者と実施事務従事者は社内に周知されていますか? | ||
| ストレスチェックの受検は努力義務になっていますか?(受検を強制するのは違法) | ||
| ストレスチェックの受検をどのように社員に勧奨するか決まっていますか?(書面、メールなど) | ||
| 実施時期と頻度は決まっていますか?(年1回以上。定期健康診断などの時期に合わせることも可) | ||
| 実施媒体は決まっていますか?(書面、ICTなど。併用も可) | ||
| 質問項目(調査票)は決まっていますか?(厚生労働省「職業性ストレス簡易調査票(57項目)」など) | ||
| 質問項目に「性格検査」「適性検査」「うつ病検査」などが含まれていませんか?(ストレス状態の把握が目的なので、目的に関係ない項目は除外) | ||
| ストレスの程度の評価方法や高ストレス者の選定方法・基準は決まっていますか?(厚生労働省「労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度実施マニュアル」など) | ||
| 社員に提供する受検結果の内容は決まっていますか?(ストレスの特徴・傾向、ストレスの程度、医師による面接指導の要否は必ず通知) | ||
| 実施者から社員への受検結果の提供方法は決まっていますか?(書面、メール、ICTで受検する場合は受検終了後に画面に表示するなど) | ||
| 受検結果が他人に類推されないように配慮していますか?(「高ストレスの社員だけに、職場で受検結果を配布する」などの方法は不適当) | ||
| 会社が実施者から受検結果を取得する場合、社員から同意を得るようになっていますか?(同意がなければ、受検結果の取得は不可) | ||
| 受検結果の取得について、社員から同意を得る方法は決まっていますか?(書面、メールなど。衛生委員会の合議などで包括的に同意を得るのは不可) | ||
| 受検結果を誰が保存するか決まっていますか?(実施者、実施事務従事者、会社(社員から同意を得た場合)) | ||
| 受検結果をどこに保存するか決まっていますか?(社内サーバー、キャビネット、委託先である外部機関の保管場所など) | ||
| 受検結果を何年保存するか決まっていますか?(会社が保存する場合、5年間(義務)。実施者などが保存する場合も5年間が望ましい) | ||
| 第三者に見られないよう、受検結果の管理体制を整えていますか?(システムへのログインパスワードの管理、キャビネットの鍵の管理など) | ||
| ストレスチェックを外部に委託する場合、外部機関に「サービス内容事前説明書」の作成・提出を求め、内容について説明を受けていますか?(実施体制・実施方法・料金体系・面接指導・情報管理など。社員数が常時50人未満の場合、原則外部委託を推奨) | ||
| 医師に よる 面接指導 |
面接指導を実施する条件は決まっていますか?(ストレスチェックで高ストレス者に該当し、実施者が必要と認めた場合) | |
| 面接指導の申し出を、誰が、いつ、どのように社員に勧奨するか決まっていますか?(実施者が望ましく、ストレスチェック終了後概ね1カ月以内、書面、メールなど) | ||
| 面接指導は医師のうち、誰が実施するか決まっていますか?(産業医、地域産業保健センターの医師など) | ||
| 社員が面接指導を申し出る方法は決まっていますか?(書面、メールなど) | ||
| 面接指導をいつ、どこで実施するか決まっていますか?(申し出後概ね1カ月以内、社内や地域産業保健センターの個室など) | ||
| オンラインで面接指導を実施する場合、対応方法などを検討していますか?(衛生委員会などでの審議、社員への周知、面接環境の整備など) | ||
| 面接指導の実施時期、実施場所を社員に通知する方法は決まっていますか?(書面、メールなど) | ||
| 就業上の措置について、いつ、どのように医師から意見を聴取するか決まっていますか?(面接指導後概ね1カ月以内、書面、メールなど) | ||
| 面接指導の結果を記録・保存する体制が整っていますか?(会社が記録し、会社が5年間保存(義務)) | ||
| 就業上の 措置 |
措置の内容(労働時間の短縮、配置転換など)の決定方法は決まっていますか?(社員との話し合いで決定するよう努める。産業医などが同席するのが望ましい) | |
| 措置の実施、変更、解除などについて、関係者と連携する体制が整っていますか?(産業医などに随時相談する、職場の管理監督者に措置の目的や内容を説明するなど) | ||
| 社員のストレス状態が改善した場合の方針は決まっていますか?(産業医などの意見を聴いた上で、通常の勤務に戻すなど) | ||
| 集団ごとの集計・分析 | ストレスチェックの受検結果を集団(部、課など)ごとに集計・分析していますか?(実施は努力義務) | |
| 集団ごとに集計・分析する場合、個人が特定されないよう配慮していますか?(集団は10人以上とするなど。集計・分析の単位が10人を下回る場合には、個人が特定される恐れがあるため、原則として集団分析結果の提供を受けてはいけない) | ||
| 集計・分析結果の活用方法は決まっていますか?(結果を基に、ストレスチェックの実施者などから職場改善について意見を聴くなど) | ||
| 集計・分析結果を記録・保存する体制が整っていますか?(会社が記録し、会社が5年間保存するのが望ましい) | ||
| 相談窓口 | ストレスチェック制度に関する情報開示や苦情対応のための相談窓口がありますか?(社内の労務担当者、外部機関など) | |
| 情報開示の請求や苦情の申し立て方法は決まっていますか?(書面、電話、メールなど) | ||
| 窓口担当者の守秘義務について、社内に周知していますか? | ||
| 就業規則 など |
ストレスチェック実施方針を定め、表明しましたか?(ストレスチェック制度の実施目的、実施要領、個人情報の保護など) | |
| ここまでの内容を就業規則(ストレスチェック実施規程など)に落とし込みましたか?(ストレスチェック制度の実施方法の詳細、受検結果の取扱いなど) | ||
| 制度全般において、社員に不利益な取扱いが生じないルールになっていますか?(ストレスチェックを受けない社員や受検結果が良くない社員の評価を下げるなど) | ||
| ストレスチェック制度の実施に当たり、社内にて意見聴取を行いましたか?(常時50人以上の場合は衛生委員会など。50人未満の場合は社員から広く意見を募るなど) | ||
| 就業規則については、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)の意見を聴取した上で、労働基準監督署に届け出て、社内に周知しましたか? | ||
| その他 | ストレスチェックの実施後、所轄労働基準監督署への報告が必要なのを知っていますか?(心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書。常時50人未満の会社は現状不要だが、社員数のカウント方法に要注意) |
(出所:日本情報マート作成)
最後(その他)の「心理的な負担の程度を把握するための検査等報告書」については、常時50人未満の会社は現状提出不要ですが、社員数のカウント方法に注意が必要です。
ストレスチェックの「50人」は、正社員と、所定労働時間が正社員の4分の3以上かつ1年以上雇用見込みがあるパート等が何人いるかで判断しますが、心理的な負担の程度を把握するための検査等報告書の「50人」は、
ストレスチェックの対象者のように契約期間や週の労働時間によるのではなく、常態として使用されているかどうかで判断するので、労働時間が短いパート等も対象になり得る
からです。
なお、この報告書は、
「電子政府の総合窓口(e-Gov)」によるオンラインでの提出(電子申請)が原則義務化
されているので注意が必要です。
厚生労働省「労働局・労働基準監督署への申請・届出はオンラインをご活用ください」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/denshishinsei.html
以上(2026年4月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)
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画像:takasu-Adobe Stock































