1 フレームワークを使って経営計画を整理しよう
経営計画を立案する際、経営者の頭の中にある考えをまとめたり、自社の置かれている状況を客観的に整理したりする必要があります。そうしたときに役立つのが「フレームワーク」です。
フレームワークを使うと、自社の置かれている状況や課題を、特定の枠組み(フレーム)に当てはめて可視化できるので、
課題やリスクの見落とし、あるいは同じような試行錯誤を繰り返すことを防ぎ、効率的に思考を整理することが可能
になります。自社の状況などを、社員や取引先に共有するのにも役立つでしょう。
この記事では、次のフレームワークを一例として紹介します。
- 経営環境分析の基本「SWOT分析」
- 外部環境分析のための「ファイブフォース分析」
- 内部経営資源分析その1「バリューチェーン」
- 内部経営資源分析その2「VRIOフレームワーク」
- 競争・成長戦略策定のための「アンゾフの成長マトリクス」
この他にも、マクロ環境分析のための「PEST分析」や、顧客・競合他社・自社の状況を洗い出す「3C分析」など、さまざまなフレームワークがあります。自社の状況や目的に応じて、使用を検討してみるとよいでしょう。
2 フレームワークの例
1)経営環境分析の基本「SWOT分析」
SWOT分析は、自社の内部環境と外部環境を分析するための基本的なフレームワークです。内部環境分析では、人・営業・技術・設備などに代表される企業内部の経営資源を分析し、また、外部環境分析では、企業を取り巻く業界・競合先の動向などの外部環境を把握して、
- Strength(強み):内部環境×プラス要因
- Weakness(弱み):内部環境×マイナス要因
- Opportunity(機会):外部環境×プラス要因
- Threat(脅威):外部環境×マイナス要因
の4つのグループに分けて、自社にとっての強みと弱みを整理します。SWOT分析を経営戦略の策定に活用する場合は、
- 「強み」を「機会」に活用する
- 「弱み」を克服した上で、「機会」に活用することを検討する
- 統制不可能要因として「脅威」を回避する
ことを目標にしてみましょう。
製造業をイメージしたSWOT分析の例として、次のようなものが考えられます。
SWOT分析を行う際には、業界や自社を取り巻く外部環境をマクロ的な視点から整理する「PEST分析」、そして、顧客・競合他社・自社の状況を洗い出す「3C分析」を行い、その内容を活用すると進めやすいかもしれません。「PEST分析」や「3C分析」については、下記のコンテンツに掲載されています。
2)外部環境分析のための「ファイブフォース分析」
「ファイブフォース分析」は、競合他社と戦うための戦略を検討するためのフレームワークです。業界の魅力度(平均的な収益性の高さなど)に影響を与える競争要因として、
- 業界内の競争関係
- 売り手の交渉力
- 買い手の交渉力
- 新規参入の脅威
- 代替品・サービスの脅威
の5つを挙げ、それぞれの状況を分析します。
競合他社と戦っていくためには、まずは自社の置かれている業界の動向を整理する必要があります。ファイブフォース分析は、外部環境の中でも、特に企業に直接的な影響を与える可能性の高い「ミクロ環境」を中心に整理する際に有効なツールといえるでしょう。ファイブフォース分析は、図表2のように整理します。
3)内部経営資源分析のフレームワーク1:バリューチェーン
バリューチェーン分析とは、企業が製品やサービスを顧客に提供するまでの一連のプロセスのうち、どこで多くの付加価値が生み出されているかを分析するフレームワークです。つまり、
付加価値を基準として自社の強みを検討する分析方法
です。
企業の一連の活動は、
- 主活動(「購買物流」「製造」「出荷物流」「販売・マーケティング」「サービス」)
- 主活動を支える支援活動(「全般的管理(インフラストラクチャー)」「人事・労務管理」「技術開発」「調達活動」)
に分類されます。バリューチェーン分析は、自社のどの活動に強み(あるいは弱み)があるかを知るのに役立ちます。
バリューチェーンは業種や業務内容など個々の企業によって異なりますが、製造業をベースとしたバリューチェーンの一般モデルは図表3の通りです。
4)内部経営資源分析のフレームワーク2:VRIOフレームワーク
VRIOフレームワークは、企業の内部資源の競争優位性を
- VALUE(経済価値)
- RARITY(希少性)
- INIMITABILITY(模倣困難性)
- ORGANIZATION(組織)
という4点から評価するフレームワークです。
VRIOを使うことによって、
自社の経営資源のVALUE(経済価値)にどれだけ希少性があり、模倣が困難で、そしてそれを組織全体で使いこなせているのか
を整理し、可視化することができます。
4点の中で軸として考えるのはVALUE、つまり自社が持っている経営資源の経済価値です。企業がその経営資源を保有することで収入が増加する、もしくは支出が減少することから、VALUE(経済価値)は「強み」の源泉と位置付けることができます。
しかし、同様の「強み」を他社も保有していたり、簡単に保有できたりする場合、その「強み」は、競合他社に対して「強み」とはいえないでしょう。さらに、その「強み」を最大限活かしていくためには、それを可能にする組織体制が求められます。
3 他社に打ち勝つための戦略の考え方
自社が事業を行う製品・市場領域を決定した後は、その製品・市場領域において、いかに競合他社よりも優位に事業を展開し、どうやって利益を獲得するかを考えていきます。そのための取り組みの方法や方向性を定めるものが競争戦略です。
ここでは、基本となる3つの競争戦略と、自社の事業領域を定める「アンゾフの成長マトリクス」を紹介します。
1)基本となる3つの競争戦略
競争戦略として広く知られているのが、次の「コストリーダーシップ戦略」「差異化戦略」「集中戦略」という3つの基本戦略です。
2)競争・成長戦略策定のための「アンゾフの成長マトリクス」
アンゾフの成長マトリクスとは、自社のドメイン(主力事業の領域)に基づいて
- どのような製品・市場領域で事業を行うか
- 専業・多角化を図るか
といった点を検討するためのフレームワークです。戦略は、既存製品・新製品と既存市場・新規市場の4つの組み合わせのマトリクスに基づいて検討することが基本となります(これは「成長ベクトル論」とも呼ばれています)。
アンゾフの成長マトリクスの内容は、次の通りです。
以上(2025年2月更新)
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画像:pixabay