民間主導で空き家、空き店舗などを活用したまちづくりに取り組む事例

書いてあること

  • 主な読者:空き家・空き店舗を活用して地域を活性化させたい企業や団体
  • 課題:活用するためのアイデアが十分に集められていない
  • 解決策:他地域での成功事例を参考にする

1 空き家、空き店舗、廃校利活用の方向性

一言に空き家、空き店舗、廃校の利活用といっても、建物を管理する事業者が建物をリノベーションし、利用者に貸し出す場合もあれば、利用者自身で建物をリノベーションする場合もあります。以降で紹介する事例は、建物をリノベーションする主体と目的の違いで、次のように整理できます。

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2 空き家の利活用事例

1)尾道空き家再生プロジェクト(広島県尾道市)

尾道空き家再生プロジェクトは、NPO法人尾道空き家再生プロジェクトの代表である豊田雅子氏が、2007年に空き家となっていた「旧和泉家別邸」を購入、修復したことがきっかけで始まった取り組みです。

空き家をリノベーションし、尾道市街の古い町並みや景観の保全などを図るため、空き家に放置されている家財道具のチャリティー蚤(のみ)の市、市民に空き家問題についての理解を深めてもらうためのまちづくり発表会、古い空き家の修復と「坂の町」尾道の暮らしを楽しむ体験型夏合宿などに取り組んでいます。

■NPO法人尾道空き家再生プロジェクト■
http://www.onomichisaisei.com/

2)越後妻有 大地の芸術祭の里(新潟県十日町市)

「越後妻有(つまり) 大地の芸術祭の里」は、NPO法人越後妻有里山協働機構が運営元として、3年に1度開催される「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」の舞台となっている場所です。この場所では、過疎化、高齢化や2004年の新潟県中越地震などの影響で空き家や廃校が増えています。こうしたことから、地域の景観を維持するために、空き家や廃校をリノベーションし、アート作品や美術館として活用しています。空き家や廃校のリノベーションは、大地の芸術祭の会期中に限らず、通年で取り組んでいます。

空き家をリノベーションした施設として、家全体に彫刻刀で彫り込みを入れることでアート作品に再生させた「脱皮する家」や、かやぶき屋根の古民家を「やきものミュージアム&レストラン」に再生させた「うぶすなの家」などがあります。

■越後妻有 大地の芸術祭の里■
http://www.echigo-tsumari.jp/

3 空き店舗の活用事例

1)岩村田本町商店街(長野県佐久市)

岩村田本町商店街では、同振興組合が中心となって空き店舗の活用に取り組んでいます。空き店舗は、住民アンケートによる活用策を基にリノベーションをしており、これまでに、地域コミュニティーの集い場「中宿おいでなん処」、手作り総菜の店「本町おかず市場」、若手起業家の育成施設「本町手仕事村」の他、「岩村田寺子屋塾」「子育てお助け村」などの地域密着型施設を整備しています。

この取り組みの結果、空き店舗数は2000年時点で15店舗でしたが、2015年には2店舗まで減少しています。

■岩村田商店街オフィシャルサイト いわむらだ.こむ■
http://www.iwamurada.com/

2)長浜・黒壁スクエア(滋賀県長浜市)

長浜・黒壁スクエアは、地元企業や長浜市が共同で設立したまちづくり会社の黒壁が、黒壁銀行の愛称で親しまれた古い銀行の建物をリノベーションしたのをきっかけに始まった取り組みです。同社では、ガラス工芸品の販売事業を手掛けており、その売り上げを空き店舗のリノベーション費用などの町並み形成に充てています。

また、長浜・黒壁スクエアのにぎわいを周辺の地域に拡大するため、まちづくり会社の長浜まちづくりが設立され、空き家再生バンクや空き家をリノベーションしたシェアハウスの運営、若者の創業支援などを手掛けています。

長浜まちづくりへのヒアリングによると、「既存店舗のリノベーションを含む空き店舗を活用した出店実績は、2008年からの累計で118店舗となっている」(*1)とのことです。また、来街者数について、黒壁へのヒアリングによると、「2017年が195万9000人、2018年が211万6000人と増加傾向にある」(*2)とのことです。

■黒壁■
https://www.kurokabe.co.jp/

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(*1)長浜まちづくり(2019年11月14日時点)
(*2)黒壁(2019年11月14日時点)

3)なごのや(名古屋市西区)

なごのやは、観光まちづくりに関するコンサルティングや訪日外国人向けツアーオペレーターなどを手掛けるツーリズムデザイナーズが、円頓寺(えんどうじ)商店街の廃業した喫茶店「西アサヒ」をリノベーションし、2015年4月にオープンした複合店舗です。店舗の1階が喫茶・食堂、2階が民宿となっています。1階は喫茶・食堂としての役割だけでなく、アーティストのライブ会場や作品展示の場としても活用されています。

また、2018年4月にはボルダリング施設とゲストハウスを併設した別館をオープンしました。

■なごのや■
https://www.nagonoya.com/

4)沼垂テラス商店街(新潟県新潟市)

沼垂テラス商店街は、旧市場の長屋が連なる沼垂地区のシャッター通りを再生するため、地元の商店主が旧市場全体を買い取り、2014年に管理事務所となるテラスオフィスを設立したのがきっかけで始まった取り組みです。2019年11月時点で雑貨店や飲食店など28の店舗と、管理事務所兼ゲストハウスなど4つのサテライト店舗があります。

空き店舗のリノベーション方法や、新規出店を誘致するための方法などについて、商店街の運営を手掛けるテラスオフィスへヒアリングした結果は次の通りです。

  • 空き店舗は、テラスオフィスで屋根や外壁などを修復し、内部のリノベーションは入居する店舗にお願いしている。リノベーションの費用は、店舗の規模によって異なるものの、例えば1棟を丸ごとリノベーションし、ゲストハウスにした場合は1000万円以上の費用が掛かっている。
  • 新規出店の募集、来訪者の誘致などの情報発信はSNSを中心に行っている。また、商店街のほとんどの店舗が何かしらのSNSツールを利用しており、各店舗の情報発信が相乗効果を生み、情報が広がっている。それをキャッチしたメディア(テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・WEBメディアなど)が取り上げてくれることで、さらに認知度が高まっていると実感している。他にも、外部イベントへの出店によって、知名度アップや新規顧客の誘致につながっている場合もある。
  • 知名度のアップなどによって「沼垂テラス」というブランドが構築されつつあり、この場所で起業したい、出店したいという相談を受けており、空き家のオーナーとの調整を行っている最中である。今後、年に何軒もリノベーションを手掛けるのは難しいものの、1年に1軒程度は実現していけるような目標設定をしている。(*3)
■沼垂テラス商店街■
https://nuttari.jp/

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(*3)テラスオフィス(2019年11月13日時点)

4 廃校の活用事例

1)猟師工房ランド(千葉県君津市)

猟師工房ランドは、狩猟ビジネスを手掛けるTSJが君津市から旧香木原(かぎはら)小学校の体育館と土地を借り受け、同社が改装、2019年7月にオープンした施設です。

君津市では、鳥獣による農作物への被害が大きな問題となっていることや、旧香木原小学校を地域活性化の拠点として有効活用するため、鳥獣被害対策をテーマに民間事業者を公募した結果、TSJからの応募があり施設を貸し付けることになりました。

約2500坪の土地に狩猟大学校、キャンプ場、ドッグラン、バーベキュー場があります。施設は、君津市内で捕獲された鹿やイノシシを加工した食品、工芸品の販売に利用されているだけでなく、有害鳥獣の駆除、狩猟ビジネスに取り組みたい市内の若者が、狩猟の知識や技術を学ぶ場所としても活用されています。

■廃校施設を活用した地域活性化の拠点「猟師工房ランド」■
http://maruchiba.jp/sys/data/index/page/id/18829

2)潮の杜(宮崎県日南市)

潮の杜は、マリンスポーツ用品の販売などを手掛けるレジェンドが、廃校となった旧日南市立潮(うしお)小学校を活用し、起業支援や地域交流の拠点として2014年4月にオープンした施設です。校舎は地域の団体が教室やワークショップを開くための場だけでなく、日南市鵜戸(うど)地区の地域おこしにつながる起業支援の場として活用されています。起業支援は、空き教室の提供だけでなく、経営に関するノウハウ提供やインターネットでのPRなどのサポートもしています。

また、グラウンドはオートキャンプ場として活用されており、宿泊も可能です。

■潮の杜■
https://www.ushio.co/

5 その他の事例

ヤマキウ南倉庫(秋田県秋田市)は、インテリアやグラフィックなどのデザイン制作を手掛けるSee Visionsが、不動産事業を手掛けるヤマキウの旧倉庫を改装し、2019年6月にオープンした複合施設です。倉庫内にはスーパーマーケット、雑貨店、美容院など10の店舗と6つのオフィス、コワーキングスペース、ホールがあります。

同社は、秋田市南通亀の町のエリアリノベーションに以前から取り組んでおり、閉店した居酒屋を改装したバル(軽食喫茶店)やベーカリーなどを開店した実績があります。

■ヤマキウ南倉庫■
https://yamakiu-minamisoko.com/

以上(2020年2月)

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画像:photo-ac

【朝礼】道を切り開くのは「上司」ではない。自分だ

先日、当社の若手・中堅社員にアンケートをとりました。内容は、「将来、当社がもっと輝くために、改善すべき点は何か?」というものです。普段、思っていることや考えていることを、正直に答えてほしかったので、あえて匿名でのアンケートにしました。

すると、若手・中堅社員のさまざまな不満が明らかになったのです。今日は、そのアンケートの結果を基に、皆さんにお話しします。腹が立つ人や耳が痛いと思う人もいるかもしれませんが、現状を真摯に受け止めてください。

回答の中で特に多かったのは、「自分たちが日ごろ頑張っているのだから、上司にももっと仕事をしてほしい」「上司には、部下の頑張りをもっと分かってほしい」「上司にはちゃんと判断してほしい」といった、上司に対する不満や要望でした。皆さんは、これを、どのように感じますか。

本当に至らない上司が多いのか、それとも若手・中堅社員が分かっていないだけなのか。もちろん、それも問題なのですが、私が気になったのは、別のことです。「若手・中堅社員は、将来も、この会社を動かしていくのは上司だと思っているのか。自分たちでどうにかしてやろうとは思わないのだろうか」。そう危機感を覚えたのです。

若手・中堅社員に聞きます。「能力の高い、ちゃんとした上司がいて、それに従う」のが、皆さんにとっての「将来、当社が輝いている姿」なのですか。本当にそれでいいのでしょうか。

誤解を恐れずに言います。若手・中堅社員の皆さん、当社は、「上司ありき」の会社ではありません。社歴も役職も関係ありません。上司がふがいないなら、「自分たちで会社を変えてやる」と行動を起こしてください。「これを自分たちにチャレンジさせてほしい」と、ぜひ、手を上げてほしいのです。若手・中堅社員のチャレンジを、私は心から応援し、バックアップします。

もちろん、至らない上司には、私から指導しますが、上司が変わるのを待たないでください。変わるのは、上司の指示に従うだけだった若手・中堅社員の皆さんです。大切なのは、「上司がどうするか」ではなく、「将来に向けて、自分がどうしたいか」です。

また、上司の皆さん。実情はどうであれ、あなた方の部下は、「上司本願」で物事を捉えています。若手・中堅社員には、自分で考え、行動し、道を切り開いていく力を付けてもらわなければなりません。その機会を創るのが上司の仕事です。将来を担っていく若手・中堅社員が、上司を基準に物事を捉えているのは、皆さんが部下のやる気や成長の機会を奪ってきた結果ではないでしょうか。私は、それが部下の「上司が変われば会社が良くなる」という考えの根本にあると思います。

そして、もう一度言います。若手・中堅社員の皆さん、これから会社を変えていくのは、皆さん自身です。今、この時から、立ち上がってください。

以上(2020年2月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】審議書は新たなチャレンジのチケット

先日、とある上司と部下のコンビ、ここではAさんとBさんとしておきますが、その2人のデスクの前を通りかかったときのことです。書類を前に、2人で難しい顔をしながら話し合っていたので、何の件なのかと思って聞いてみると、審議書を作成しており、上司のAさんから部下のBさんに対して修正の指示をしているとのことでした。

部下のBさんはついこの前入社したばかりだと思っていたのに、審議書を作成するようになったのだなと思うと、頼もしく感じました。

ちなみに皆さんは、審議書と聞いて、どのようなイメージを持つでしょうか。もし、「手続き、根回し、面倒」というイメージを持っていて、「できれば審議書なんて作りたくない」と考えているのだとしたら、ビジネスパーソンとしてはあまりに物足りません。

審議書の目的は、会社の想定を超えたレベルでビジネスをすることにあります。投資であったり、新規契約であったり、何かあれば会社に大きな影響がある内容だからこそ、審議書を通して、複数の人間がさまざまな角度から、この取り組みには問題がないかを確認するのです。

審議書が承認されれば、チャレンジはお墨付きだといえます。しかし、この点を意識していない人からは、会社にとって想定内のビジネスについての審議書しか挙がってきません。例えば、当社の今月の取締役会に上程された、パソコン入れ替えに関する審議書がそうです。

この審議書の内容は、リース期間の終了に伴い、今と同スペックのパソコンを調達するというものでした。確かに審議書は上程されましたが、単に前例踏襲のための手続きであり、全くチャレンジしていません。それでは、いつまでたってもビジネスチャンスは訪れないでしょう。

働き方改革を進めている当社にとって、パソコン入れ替えは千載一遇のチャンスです。デスクトップをノートにしたり、ファイル管理方法を見直したりすれば、フリーアドレスやリモートワークなど、働き方改革が加速します。

しかし、その審議書はパソコンを調達できるギリギリの時期に上程されたので、もはや新たな計画を検討する猶予はありませんでした。結局、その内容のまま承認されることになりました。

この例で上程された審議書が、いけないわけではありません。パソコンの入れ替えのための手続きとしては、要件を満たしています。しかしそこまでのことで、私から見ると本当に物足りません。

審議書が承認されたら、新たなチャレンジをするための“公式チケット”を手に入れたのと同じです。今年度、皆さんは何枚のチケットを手に入れたでしょうか?

その枚数は、皆さんのチャレンジのバロメーターです。新年度、積極的にチャレンジする皆さんの姿勢が、審議書として上程されてくることを楽しみにしています。

以上(2020年2月)

pj16993
画像:Mariko Mitsuda

「ほめる」って本当に必要ですか?/部下のやる気を引き出す「ほめ方」(1)

書いてあること

  • 主な読者:「ほめる」のが苦手、「ほめ下手」なリーダー(経営者・部下を持つ上司)
  • 課題:叱られた経験がほとんどない、若手社員との良好な関係を築くために「ほめ下手」を解消したい
  • 解決策:本連載を通じて「ほめる」ことができるリーダーへと進化できる。今回は、なぜ「ほめる」ことが必要なのかを解説

1 ダメ出しの達人から「ほめる達人」へ

「働き方改革」が叫ばれて久しい現在、長時間労働や休日出勤が横行している企業は減ってきていると思います。ところが、就業時間を短くし、お休みもしっかり与えているのに、「離職する社員が減らない。特に若手の離職が止まらない……」という悩みを抱えるリーダーは多いようです。

どうすれば社員が辞めずに、やる気を高めて仕事に取り組んでくれるのかと悩む中で、「ほめる」ことが課題解決につながるのではと考えて、我々、一般社団法人 日本ほめる達人協会(以下「ほめ達」協会)に研修を依頼する企業の担当の方が、引きも切らずいらっしゃいます。

私は、今でこそ「ほめ達」協会を設立して活動していますが、もともとはダメ出しの達人でした。転機となったのが、家業のホテル経営で人材定着に悩んでいたところ、ダメ出しの逆、「ほめて、認めて、アドバイスして」というやり方に変えた途端、驚くほど社員が成長し、辞めなくなり、ホテルの業績も上がる経験をしたことでした。

「ほめる」ことで、なぜこれほどの成果が上がるのか。不思議で仕方なかった私は、12年前から「ほめる」効果についての研究を始めました。すると、脳科学、コーチング、カウンセリング、NLP(神経言語プログラミング)、ファシリテーション、心理学、TA(交流分析)などと関連づけて、「ほめる」効果を説明することができました。それらの理論を体系立てて、誰もが、すぐに、再現性を持って実践できるように整理したものが、「ほめ達」研修なのです。今回の連載では、「ほめ達」研修の内容の中から、重要なポイントをえりすぐってご紹介してまいります。

2 「ほめる」ことで、アドバイスを受け止められるようになる

今どきの若手社員は、親や大人から叱られた経験がほとんどない人が多いのです。叱られることに慣れていないため、社会に出て、ちょっと注意されただけで、「非難された、中傷された、パワハラだ」と感じます。成長のために必要な、ストレス耐性が弱いのです。ストレス耐性とは、周りからのフィードバックをアドバイスとして受け止め、それを成長のバネに変える力です。言い換えると、若手社員はアドバイスというボールを受け取る構えができていない、手が体の後ろに回っている状態です。その状態で、リーダーがいきなりボールを投げると、若手社員はうまくボールをキャッチできずに、体や顔に当ててしまい、「痛い!」という反応を示します。

ですから、リーダーは一手間かけて、まず若手社員が受け止めたくなるようなボールを投げることで、手を体の前に出させ、受け止める準備をさせることが必要なのです。そして、この構えを作らせるために、まず相手に投げる緩いボール、これが「ほめる」という行為なのです。

例えば、「君は、こういうところ頑張っているよね」「この部分が成長したよね」「会社に対して、このような貢献をしてくれているよね」と伝えた上で、「あと、惜しいところは……」と続ける必要があります。ほめて、認めて、アドバイス。この順番が大切です。「いやぁ、面倒臭い時代になったなぁ……」とお嘆きの方もいらっしゃるかもしれませんが、今の時代には必要なことです。

そして、「ほめる」ことは若手社員の離職防止にとどまりません。「ほめる」ことを正しく理解して、実践していくと、職場での人間関係がうまくいくだけでなく、夫婦関係、親子関係(子育て)など、身近な人との関係性が改善したという声が「ほめ達」研修の受講生から寄せられています。

3 「ありがとう」の反対は

ここで、私たち「ほめ達」協会が、「ほめる」をどのように定義しているかを説明させていただきます。

私たちが定義する「ほめる」とは「価値を発見して伝える」ことです。おだてたり、おべんちゃらを使ったり、相手の心地いいことだけを伝えたりということではありません。

そして、「価値を発見して伝える」対象は、「人・モノ・出来事」です。「人・モノ・出来事」の「価値を発見して伝える」ことができるようになると、ビジネスパーソンとしての能力、スキルが一気に上がります。今回の連載では、このスキルのうち、特に「人」に関わる部分についてお伝えしていきます。

まず、価値を発見するということにおいて、最初に知っていただきたいことがあります。それは、「ありがとう」の反対は何か? ということです。考えたことはあるでしょうか。

「ありがとう」の反対は、「当たり前」です。家族がいて、当たり前。家族は自分の世話をしてくれて、当たり前。自分や家族は健康で、当たり前。仕事はあって、当たり前。社員は出社してきて、当たり前。予算は達成されて、当たり前。

そう、当たり前だと思った瞬間に感謝はなくなり、価値を感じられなくなるのです。当たり前だと、ついつい思ってしまうことに意識を向けて、言葉や感謝を伝える。これも「ほめる」の本質の一つであり、重要なポイントの一つです。

4 「心の報酬」が必要な時代

「働き方改革」では解決されない課題、それを解決するのが「働きがいの創造」です。これからのリーダーには、この「働きがいの創造」という能力が求められます。では、そのためには何が必要か、その答えが「心の報酬」です。お金ではない報酬、出世や肩書ではない報酬、それが「心の報酬」であり、「ほめる」ことと深く結び付いています。

「心の報酬」には、大きく二つのものがあります。一つは「成長の実感」、もう一つが「貢献の実感」です。まず「成長の実感」ですが、今ときの若手社員は、成長の実感を求めながら、それを得られないという状況に苦しんでいます。なぜ、成長の実感を求めるのか、それはそのように育ってきたからです。今の若い人は、「ゲーム世代」で、物心ついたときからゲームをして育ってきました。そして、ゲームとは、つまるところ「成長を実感させることで時間やお金を消費させるもの」だといえます。成長して、レベルが上がって、倒せなかった敵を倒せるようになる、使えなかった道具が使えるようになる、行けなかった町に行けるようになる。成長することで自分の世界が広がる。ところが、実社会では、そのような実感を得ることがほとんどない。ですから、「成長実感の演出」というものも「心の報酬」を考える上では重要になってきます。

そして、二つ目が「貢献の実感」です。東日本大震災以降、特に若い人の貢献欲求が高まっているようです。仕事はそこそこなのだけれども、休みの日にボランティアですごく活躍している、実際には活動まではしていないけれども、誰かの役に立つ仕事がしたいと考えている人が非常に多いのです。しかし、よく考えてみると、本業においても、誰の役にも立たない仕事などありません。リーダーが自分たちの仕事の再定義をして、自分たちの仕事の意義を説き、自分たちの仕事と顧客や社会とのつながりを伝えることができれば、若手社員の貢献欲求も満たされていくはずです。

そして、実はこの「成長の実感」と「貢献の実感」の二つよりも、もっと手軽で価値の高い「心の報酬」があります。私たちの周りにもうすでにありながら、なかなか光が当たっていないものです。次回は、このすぐに使えて、効果が高い「心の報酬」を取り上げます。次回以降は、より実践的な内容になりますので、ぜひお楽しみに。

※「心の報酬」について、もっと詳細にお知りになりたい方は、拙書最新刊『リーダー必読!「ほめ達」の極意 やる気を引き出す「心の報酬」』(PHP研究所)も併せてお読みください。

以上(2020年2月)

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「上司」世代のための働き方改革/若手社員が採用できる、辞めない職場づくりのヒント(6)

1 昭和な働き方よ、サヨナラ

2020年4月から、働き方改革関連法の大きな柱である法改正が施行されます。いわゆる「同一労働同一賃金」の導入です。非正規社員と正社員との不合理な待遇差を解消するのが狙い。すごくざっくり説明すると、均等・均衡待遇原則に沿って、働き方が同じであれば同一の待遇にしなさい、働き方に違いがあれば、違いに応じてバランスをとって待遇差を解消しなさいということです。

働き方改革は、安倍政権が「一億総活躍社会」を実現するために推進されている改革。一億総活躍社会とは老若男女一人一人の多様な個性を尊重し、社会で活躍できるような社会のことを指しています。戦後から発達してきた日本型雇用慣行では、“働き盛りの男性正社員が長時間労働し、女性は専業主婦として家庭を守る”というスタイルが主流でした。一億総活躍社会を目指すための働き方改革は、「正社員至上主義」や「長時間労働」といった旧来型システムとの決別を意味しています。

2016年9月に安倍首相が「働き方改革実現推進委員会」を立ち上げ、2019年には「残業時間の上限規制」を柱とした労働関連8法案が改正されました。そのラストピースが「同一労働同一賃金」の導入というわけです。

2 職場マネジメントの転換点

働き方が大きく変革していけば、当然のことながら、今までのオトナの常識は通用しなくなります。つまり働き方改革は、日本型雇用慣行が染みついた世代の働き方やマネジメントにも、変化の必要性を突き付けているのです。

そもそも本稿シリーズでは、拙著「なぜ最近の若者は突然辞めるのか」をもとに、職場における若者のトリセツについて解説してきました。「SNS世代の若者」側にフォーカスし、彼らの価値観を理解したうえで1対1コミュニケーションの在り方について示唆してきました。しかし、もはや「最近の若者は……」と眉をひそめている場合ではなく、変わらなければいけないのは自分たちだったりするわけです。

本稿では、「働き方改革」というパラダイムチェンジを余儀なくされる職場の上司が、どうあるべきかを俯瞰(ふかん)的に論じてみましょう。そういった視点から、「昭和なメンタリティ」に改めてフォーカスしてみると、それはそれでオトナの常識にもたくさんの「?」があります。

3 そもそもマネジメントがイケてなかった

自戒の念も含めて客観的に評価すると、日本の管理職(特に大企業のホワイトカラー層)のマネジメントは、そもそもイケてないという事実に直面します。

日本型雇用慣行といわれる雇用システムは、「終身雇用」「年功賃金」「企業内組合」というシステムで成り立っていました。このシステムは、企業と労働者の運命共同体的関係を育んできました。企業側は「うちの会社に就職したら一生安泰」という安心・安定を保障する一方で、労働者側は「雇って(=守って)もらっているわけだから、会社の都合で、なんでもやります。どこでも転勤します」と忠誠を誓う。家族のような絆で結ばれた関係性であることから、メンバーシップ型雇用ともいわれます。家族だから無理も通ります。そこには戦略的なマネジメントもなければ、モチベーションを高めるコミュニケーションも必要ありません。上司からすると、めちゃめちゃ楽な職場です。

その結果、本来必要とされるマネジメントスキルが昭和世代の上司には熟成されませんでした。もっというと、メンバーシップ型雇用の社会は、マネジメント力やコミュニケーション力を磨かなければならないという自覚の芽生えさえも摘んでしまいました。

4 働き方改革は「働き方開国」

昭和世代の上司をめちゃくちゃにこき下ろしているように聞こえるかもしれませんが、グローバルな視点で見ても、日本のマネジメントはかなり楽チンだと言わざるを得ません。

仮に上司が「今週の土曜、出社して課内研修しよう」と提案したとします。昭和の日本では、内心「え?」と思いながらも「分かりました!」と答える部下が大半でした。でもアメリカでは、100%「WHY?」という声が返ってきます。土曜出社する意味や目的をきちんと理解してもらう説明能力が必要になります。「いいからやれ!」と高圧的な要求をしたり、「言われたことしかやらない!」と嘆いたりするのは、グローバルな社会では通用しません。

インドネシアで、現地ワーカーを指揮する日本人マネジャーの研修を手掛ける人材コンサルタントに話を聞いたときのこと。「遅刻せずにちゃんと来い!」と言っても、遅刻の概念から説明しないといけないと教えてくれました。朝の出社定時を2時間以上過ぎてもお昼前に来れば遅刻じゃないと思っているインドネシア人が少なくないからです。

現地でのマネジメントにおいて、特に「物差し」「理由」「メリット」を語ることが重要だと聞いたときに、ピンとくるものがありました。これって、本シリーズで取り上げてきた「今どきの若者」に対峙するのに必要なコミュニケーションに似ていませんか。つまり扱いにくい今どきの若者は、働き手のグローバルスタンダードなんです。ガラパゴス化したこれまでの常識をリセットしてマネジメントを変える。昭和世代の上司にとっては「働き方開国」でもあるのです。

5 働く場所と時間がほどけていく

働き方改革やグローバル化に加え、テクノロジーの進化も職場マネジメントに大きな変化をもたらしています。ソフトバンクが大型投資したことで注目を集めた「WEWORK」は、シェアオフィス事業の寵児(ちょうじ)。ノマドワーカーが集うコワーキングスペースを提供して一気に成長しました。

オフィス機器や通信技術の発達によって、シェアオフィスやサテライトオフィスが広まっています。今までの企業組織は、当然ですが物理的な働く場所でした。しかしわざわざ職場まで行かなくても仕事ができる時代になってきたのです。テクノロジーは、働き手をオフィスから解放しつつあります。

テレワーカーが増えてきたら、会議も面談もオンライン上で行う機会が増えていきます。モニター越しのコミュニケーションになじめない管理職も少なくないでしょう。働きぶりが見えないなかで、どうやってマネジメントすればいいのかと戸惑う声もよく聞きます。

6 ギグワーカー社会

物理的な距離が離れていくだけではありません。今、アメリカでは「ギグワーカー」という働き方が注目を集めています。ギグとは、そもそもジャズやロックのミュージシャンが一晩限りの契約でライブ演奏に参加することを指していました。そこから転じて「ギグワーカー」という言葉が生まれ一般化したようです。

例えば、サラリーマン兼ブロガー兼ウーバーイーツ配達員兼ユーチューバー。こんなふうに、1つの会社に依存せず、1つの仕事にとらわれず、空いた時間を使って複数の仕事をこなしていく働き方です。我々、ツナグ働き方研究所の調査でも、単発バイトをやっている属性のトップは学生ではなくて社会人でした。副業、いや複業が一般化している証です。

こういう流れを後押しするのがインターネットです。先述の「ウーバーイーツ」の募集、テレビCMで知名度を上げたスキマバイトアプリ「タイミー」など、オンライン上でさっくりギグワークが見つかるようになってきました。1DAYワークやスポットワークのマッチングサービスが多く登場したおかげで、会社や職場という境界線がどんどん曖昧になってきています。

7 問われるエンゲージメント

ギグワーカー的な働き方は、いやが上でも一企業組織への帰属意識を弱めます。だからこそ企業側にとっては、従業員の帰属意識を高めていくような取り組みが必要になってきます。そのキーワードが「従業員エンゲージメント」。エンゲージメントとは、従業員の会社に対する愛着心や思い入れといった意味です。このような感情は多くの場合、会社側の努力もあって初めて従業員側に生じるものです。そのためには個人と組織が対等の関係性で、互いの成長に貢献し合うことが肝要だとされています。

つまり帰属意識は、縛り付けるのではなく、むしろさまざまなギグワークを支援することで醸成されていくわけです。さまざまなコミュニティーでの仕事を通して育まれる個人のアイデアや知見を活かしていこうというスタンスが求められているのです。

だとしたら、これからは、他社と人材を共有するくらいの意識でいるほうがよくはないでしょうか。働き手を縛り付けずに、あちこちの壁を乗り越えていってもらい、自社にとっても他社にとっても、いい結果をもたらしてくれる。会社間や職場間を自由に行き交う若者たちを上手にシェアすることが、企業として勝ち残る重要なポイントになるのではないでしょうか。

8 職場のプラットフォーム化

そう考えると令和の職場では、人材を抱え込むのではなく、オープンソースとして共有するスタンスが必要になるでしょう。人材を自社から逃がさないように縛ろうとするのは、全くもってナンセンス。職場がプラットフォームのような構造になっていくと捉える視座が問われるでしょう。

同一労働同一賃金導入によって、一連の働き方改革関連法案が出そろう2020年。法改正というトピックを機に、本稿では日本における働き方の変化について俯瞰的に論じてみました。働き方のスタンダードが変われば、当然ながら職場マネジメントにも変化が求められます。

しかも幾つかの観点を検証してみたところ、時代の流れは、上司が理解しがたいと感じていた若者世代の価値観にフィットしているという事実にたどり着いてしまいました。

冒頭でも述べましたが、「最近の若者は……」と眉をひそめている場合ではなく、変わらなければいけないのは自分たちなのです。

結局のところ、今「働く」に対する価値観が問われているのです。そのパラダイムチェンジこそが、職場マネジメントを円滑にする最大のレバレッジなのではないでしょうか。

以上(2020年2月)
(執筆 平賀充記)

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画像:NDABCREATIVITY-Adobe Stock

織田信長(武将)/経営のヒントとなる言葉

「人を用ふるの者は能否を択ぶべし。何ぞ新故を論ぜん」(*)

出所:「戦国武将のひとこと」(丸善)

冒頭の言葉は、

  • 「部下(家臣)の能力を見極めて、適材適所で仕事を任せることが組織づくりの要である」

ということを表しています。

信長は従来の因習や決まり事などを打ち破り、独創的な発想で政治に取り組みました。その1つに有名な、楽市・楽座令の発布が挙げられます(楽市・楽座令の発布は信長以外の戦国大名によっても行われましたが、特に信長が発布したものが有名です)。

楽市・楽座令の発布は戦いによって荒廃した市場の復興や、新設市場・新城下町の繁栄を目的としたものです。信長は既得権を廃止し、参入障壁を取り除くことで、自由競争を促しました。

また、戦いにおいても、信長は当時の最新兵器である鉄砲を導入するなど、常に新しい取り組みによって、天下統一まであと一歩というところまで上り詰めました。

信長の躍進を支えた要因の1つに、部下との密なコミュニケーションがあったといわれます。次の言葉からも信長がそれを重視していた一端をうかがい知ることができます。

「およそわが命ずるところ便(びん)ならざるものあらば、即ち来たりこれを争え。われまさに改めんとす」(**)

この言葉は家臣の柴田勝家(しばたかついえ)に越前国(現福井県)を任せた際に宛てた書状に記されたものです。独創的な発想に優れていたものの、家臣に対して、時には冷酷な処罰を下したとされる信長は、どちらかと言えばワンマンなイメージが強いのではないでしょうか。しかし、この言葉からは信長が何でも独断するのではなく、家臣の意見に耳を貸すリーダーであることが分かります。

ちなみに、信長は長きにわたって仕えた家臣である佐久間信盛(さくまのぶもり)とその息子が本願寺を攻略できなかったことに対して怒り、折檻(せっかん)状を書いて、追放しています。その折檻状の中には、信盛親子が武力をもって期待通りの働きができないならば、謀略を巡らし、足りない部分については、信長に報告して意見を求めるべきであるのに、それすらしないとして、信盛親子の無策を断じています。

もしかすると、信盛親子があらかじめ信長に状況を報告し、策を相談していれば、追放されることはなかったかもしれません。

生き馬の目を抜く戦国時代、判断の遅れは命取りになります。特に、領地が広がるにつれて、信長1人では全ての領地の状況を把握し、つつがなく治めることは不可能です。

そのため、信長の命令を順守することが前提ではあるものの、勝家には北陸方面、豊臣秀吉(とよとみひでよし)には中国方面などのように、信長は信頼できる家臣に領地を任せました。それによって、いち早く情報を収集し、新たな発想の源泉や判断材料としたのでしょう。

結局、信長は家臣の明智光秀(あけちみつひで)の裏切りに遭い、天下統一の夢を果たすことができませんでした。光秀が信長を裏切った理由は定かではありませんが、信長と光秀の間で、組織としてのビジョンや戦いの目的が共有できていれば、事態は違う展開を見せていたかもしれません。

戦国時代のような、日常的に命の危険にさらされている場合、組織においては裏切りはもとより、少しの足並みの乱れも許されません。組織一丸となって敵に当たる必要があるものの、そのためには家臣おのおのが組織としてのビジョンや戦いの目的を理解し、そこに意義を見いださなければ、命を賭して戦うことはないでしょう。

現代のビジネスにおいては、戦国時代のように命を賭すといったような極端な場面に遭遇することはありません。しかし、組織が一丸となって困難な状況を打開する場面はたくさんあります。そうしたときに必要となるのは、リーダーが日ごろから部下の話に耳を傾けることでコミュニケーションを図り、組織のビジョンを部下に理解してもらうことです。

信長のエピソードからは、迅速な情報収集と部下への接し方という、現代の経営にも通じるリーダーの在り方を学ぶことができます。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

おだのぶなが(1534~1582)。尾張国(現愛知県)生まれ。尾張国を統一し、天下統一を図る。本能寺の変にて自害。

【参考文献】

(*)「戦国武将のひとこと」(鳴瀬速夫、丸善、1993年6月)
(**)「心に響く勇気の言葉100」(川村真二、日本経済新聞出版社、2011年11月)
「信長公記 現代語訳」(太田牛一(著)、中川太古(訳)、KADOKAWA、2013年10月)
「戦国武将の名言に学ぶ」(武田鏡村、創元社、2005年8月)

以上(2020年2月)

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画像:Josiah_S-shutterstock

【再監修】押さえておくべき企業の決算対策

経営が軌道に乗り、利益が出るようになってくると、経営者の悩みの1つに「税金」が加わります。

企業にかかる税金のうち、最もポピュラーなのは、1年間の企業の業績(利益)に対してかかる法人税でしょう。

経営者は「利益」を上げるために頑張るといっても過言ではありませんが、実際に、利益が出始めると、今度は法人税等の負担が大きくなってきます。そうなると、利益をいかに抑えるかという「決算対策」も経営者の課題として避けては通れないものとなるのです。

決算対策とは、「利益を抑えること、つまり損金を増やすこと」とも言い換えられます。ただし、損金は、税務上の費用のことであり、会計上の費用とは完全に一致しません。そのため、決算対策を検討する際には、正確な税務の知識が必要になります。

ここでは、スタートアップ企業など起業後あまり時間がたっていない企業でも活用できる基本的な決算対策の概要を紹介します。

1 基本的な決算対策

1)中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)の利用

中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは、取引先の予期せぬ倒産による連鎖倒産から中小企業を守るために作られた共済制度です。急に取引先が倒産して売掛金が回収できなくなったような場合に、お金を貸してもらえます。この共済に支払う掛け金が利益を抑える損金(税務上の費用)となるので、有効な決算対策となります。

掛け金は月額5000円から20万円までで、1年分の一括支払いも可能です。さらに12カ月以上掛け金を納付していれば、解約した場合に掛け金の納付月数に応じて掛け金総額の75~100%が戻ってきます。

中小企業倒産防止共済制度の諸条件を示した画像です

2)賞与の支給

賞与も有効な決算対策の1つとなります。賞与は一般的に役職等に関係なく企業の役員・従業員に支払うイメージですが、税務上は役員に支払うか、従業員に支払うかで取り扱いが異なってきます

役員へ支払う賞与は、事前に税務署へ届出書を提出することが義務付けられています。決算が近くなり、利益が多額に出ている場合などに、役員賞与で不当に利益を減らすことができないようにするためです。届出書に記載している内容と実際の支給内容が一致して初めて、損金として利益を減少させることができます。そのため、届出書に記載している内容と少しでも差異が生じた場合には、その支給額全額が損金とならないので十分な注意が必要です。

一方で、従業員に対する賞与は、事前に税務署への届出は不要です。

実際にその事業年度中に従業員に賞与を支払っている場合はもちろん、決算時点で未払いであっても、次の3要件を満たすことで損金とすることができます。

  • 同時期に賞与を支給する全員に支給額を通知すること
  • 決算を終えた翌日から1カ月以内にその通知した金額を支給すること
  • 未払賞与を決算書に計上すること

従業員に対して賞与を支払えばモチベーションアップも期待でき、経営上の好影響も見込めます。役員賞与と比べて事務手続きは煩雑ではないので、利益が出た場合(見込みとなった場合)には、従業員に対する賞与(決算賞与)を検討してみましょう。

3)少額固定資産の購入

会社が軌道に乗ってきたら、事務所の設備にも投資をしたいと考える経営者は多いのではないでしょうか。設備が充実していれば働く人のモチベーションも上がりますし、作業の効率も良くなることが考えられます。

では、事業に供する備品などを購入した場合には、利益や税金にどのような影響を及ぼすのでしょうか。

建物、建物附属設備、機械装置、車、器具備品などを総称して「固定資産」といいます。一般的に固定資産は、数年かけて損金処理(減価償却)していきます。つまり、固定資産購入時にキャッシュは一度に出ていきますが、損金にはその一部しか計上できないため、支払金額の割には利益が減少しないという計算上の事象が生じます。

しかし、青色申告法人である中小企業者等は少額固定資産の特例というものがあります。購入価額(付随費用を含む)が一式当たり30万円未満の固定資産については、その購入価額の全額をその事業年度の損金とすることができるのです。

1事業年度中に総額300万円まで適用可能なので、利益が出た場合(見込みとなった場合)には、ノートパソコンやデスクなどの備品を購入し、オフィス環境などを充実させてみてはいかがでしょうか。

4)役員社宅

皆さんは役員社宅という言葉を耳にしたことはありますか。役員社宅とは、法人が居住用物件を賃借して、その法人の役員に貸すことです。法人は役員から一定額の賃料を徴収することが義務付けられています。

役員社宅の仕組み(イメージ)を示した画像です

この役員社宅ですが、法人と役員それぞれにメリットがあります。

法人では支払賃料の一部が損金に計上できるので、法人税を減少させることができます。役員のほうでは通常の金額より安く家を借りることができるので、自分で契約するよりも手元に残るお金は増えます。また、給与として支給されるわけではないので、多額な所得税を納める必要もありません。

現状、役員個人で契約している場合でも、契約更新のタイミングなどで、法人契約に切り替えてみてはいかがでしょうか。

5)生命保険の活用

契約者が法人となり経営者を被保険者とするなどして、生命保険に加入するという決算対策があります。生命保険の主目的である有事の際の備えという意味合いはもちろん、保険の種類によっては保険料の全額を損金にでき、決算対策が期待できます。

ただし、2019年6月に保険料に関する税務上の取り扱いについて改正が行われました。今回の改正では、従来の個別通達が廃止され、「定期保険等の保険料に相当多額の前払部分の保険料が含まれる場合の取扱い等」が新設されました。ポイントは、保険商品の種類ごとではなく、解約返戻率を基準として支払保険料のうち、資産計上すべき割合と損金計上すべき割合が示されたことです。なお、2019年7月8日以後の契約に係る定期保険について適用され、それ以前に契約したものは適用されません。

改正後の保険料に関する税務上の取り扱いを示した画像です

また、返戻金を受け取った場合には、多額の収益が生じる(利益が増える)ことがあるため、新たな対策を講じる必要があります。

このように生命保険は効果的な対策である一方、活用の仕方が難しい決算対策でもあります。保険会社や税理士等に確認して、有利なものを選択するようにしましょう。

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2 専門家と相談し自社に最適な決算対策を

今回は、法人の決算対策の代表的なものについて解説しました。税金は毎年発生するので、今回の対策のうち可能な部分については検討すべきでしょう。ただ、とっさに対応できる決算対策は多くありません。決算直前に対策を思い立っても要件を満たさなかったり、効果が十分に得られなかったりすることもあります。あらかじめ、タックスプランを作成し、それぞれの対策に応じた正確な事前準備が必要です。また、自社に最適な決算対策を講じるには、資金繰りや資産の保有状況などの視点や専門的な知識を要するので、税理士等の専門家に相談されることをお勧めします。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2020年1月31日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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職人からクリエーターに 顧客とともに創る若者が製造業を変える

書いてあること

  • 主な読者:技術力を活かした新商品の開発を成功させたい経営者
  • 課題:顧客のニーズを柔軟に取り入れていく開発手法ができていない
  • ポイント:3人の若き製造業の革命児に聞く、ものづくりの“クリエーター”としての力

1 顧客との連動でサロンのような店に

1)オリジナル紳士靴企画販売「スタジオヨシミ」 吉見鉄平代表取締役

東京・浅草の中心部から600メートルほど離れた場所に、紳士靴のオリジナルブランドショップ「RENDO(レンド)」はあります。遠方からの顧客にとっては決して便利とはいえない場所ですが、紳士靴にこだわりを持つ人たちは、この店でしか味わえない満足感を求めて足を運ぶといいます。

RENDOを運営するのは、「スタジオヨシミ」の吉見鉄平代表取締役。吉見さんが商品の企画・デザインをして、製造は国内の靴職人に依頼しています。オーダーメードは受け付けておらず、既製品の販売と、顧客の要望に応じて素材の一部を変更するなどのカスタムメードを行う「既製品とオーダーメードの中間」までに対応しています。同社の特徴について吉見さんは、「靴をオーダーして、履き心地を試しながら調整し、購入後に修理に持ち込むところまで、全体で満足してもらうところに価値がある」と話します。

吉見さんの店舗運営や靴作りの根底には、店名でありブランド名でもあるRENDOの語源である「連動」の考えがあります。吉見さんは、「靴作りは1人ではできない。工場の職人や顧客など、周りの人たちとつながって動くことでうまくいく、という気持ちが強い」といいます。

例えば、来店者の足を採寸する作業。今では当たり前の作業ですが、創業当初は行っていませんでした。履き心地の良さを求める顧客の要望を聞いているうちに、人によっていろいろな足の形があることに気づき、取り入れることにしました。顧客の足の形に合わせて靴を加工調整するサービスは、現在の同社の大きな売りになっています。

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外国人採用を円滑に!〜YOLO JAPAN社は在留外国人の生活応援企業です!〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、人手不足が当たり前化している中小企業、言葉の壁がある?コミュニケーションが難しい?と尻込みしている、在留外国人採用、その現実と向き合いながら企業経営者のお役立ちを事業にしている、株式会社YOLO JAPANの加地社長。日本における現状から加地社長が手掛ける事業の概要について話を伺いました。

東京、大阪を毎週行き来している際に感じるのが、東京における外国人の数。中でも日本に住んでいると思われる在留外国人の数がここ数年伸びていることを肌で感じます。加地さんから、東京に住む18人に1人が外国の方ですよと教えてもらってビックリでした。日本全体では46人に1人が在留外国人。当たり前と言えばそうかもしれませんが、2019年に282万人を突破しているこの特定の経済圏はすでに3兆円を超えているそうです。そこにある社会課題に向き合っている加地社長がどのような取り組みをされているかについてまとめたいと思います。

1 外国人雇用の最先端 加地さんの講演録から見えてくること

1)外国人に依存し始めている日本

今から10年前の2009年、日本に住む外国人は、112人に1人の割合。2020年には300万人に到達が確実視されています。農業や漁業においても在留外国人の【人手】がないと成り立たない現実もあります。茨城県においては、農業従事者のうち3人に1人が外国人という事実(YOLO社調べ)、在留外国人なしでは食卓に野菜が並ばないということですね。

在留外国人数の推移を示した画像です

2)【外国人採用トークライブ】で見えてくるもう一つの現実

2019年12月に大阪で開催された外国人採用のイベント、そこに加地さんが登壇しました。参加者の99%が満足したという圧倒的な評価を集めた内容でした。そこで集められた参加者の声を拝見すると。

  • 外国人採用のノウハウが十分理解できた
  • 外国人採用に関する知識が高まった→94.7%
  • 外国人採用意欲が高まった→84.21%
  • 外国人採用が身近に感じられた
  • 外国人を採用する際の注意点

というのが参加者の感想、意見でした。

今後期待する(知りたい)テーマには(複数回答)、

  • 採用試験や面接の方法→42.11%
  • 労使間トラブルの実例、解決法→39.47%
  • 外国人の募集方法→36.84%

この3つが上位を占めていました。回答の内容からも中小企業全体では、これから相当の広がりがあるように感じます。

3)入国から帰国までのデファクトスタンダードを造っていく

外国人が日本に行こう!と決意すると、

このような循環が在留外国人の皆さんが見えている課題感。この課題に向き合う事業を順次造っていくそこに加地さんはコミットしていこうとしています。続いて同社のビジネスモデルについて。

2 YOLO JAPANのビジネスモデルは3本柱で

1)単純な人材サービスではない JOBマッチング 3つの収入マッチングを提供

YOLO JAPANへの登録人材ですが、2019年12月16日に14万人を突破、これは日本における外国人労働者の約10%(同社調べ)に相当するレベル。国別で言うと、これも2019年10月に226カ国を数え、これは国連加盟国数を超えるレベルになってきています。

社名と同じサービス名の【YOLO JAPAN】。これは外国人のための採用メディアの位置付け。そこに3つの収入マッチングを提供しています。

  • YOLOバイト
    日本に来て最初に収入を得る手段であるアルバイト、日本語が出来なくても出来るアルバイトを紹介。実は私も懇意の企業さんが利用されたことがあります。ほとんど日本語が出来ませんでしたが2年近くアルバイト以上の戦力として頑張ってもらった実績があります。
  • 高時給モニター参加サービス
    2017年5月にリリース、電機メーカーの新商品を体感してもらったり、行政の外国人向けアンケート等、すぐにアプローチ出来ない外国人にYOLO JAPANに登録する226カ国14万人のデータベースから企業や市区町村の行政が必要な情報、外国人、市場調査を【モニター】という手段で得られるサービス。
  • インフルエンサー機能
    FacebookやInstagramに企業が拡散したい情報、商材を投稿することで【お小遣い】が稼げるサービス。投稿する外国人を公募の形で企業側に提供するモデル。

この特徴的な3つの人材マッチング事業に加えて、外国人社員の採用も行っています。

YOLO社ならではの登録人材のデータベースの面白いところをいくつか。宗教、結婚の有無、身長、体重、目の色、携帯電話の支払情報、Facebookの友人数、Instagramのフォロワー数まで。これも単なる人材紹介で終わらないという加地社長が大切にしている貪欲な情報収集の一環ですね。

2)外国人へのライフサポートを提供していく

加地社長と話していて、以前から大切にしていたのが、『我々のお客さんはあくまで外国人、採用してくれる企業が顧客ではない』という一言。この発想から、企業に寄り添うのみの人材サービスにフォーカスするのではなく、外国人に日本を好きになってほしい、できるだけ滞在期間を長くしてもらいたいという部分にフォーカスしていました。そこから、離職率の高い外国人人材をどのようにすれば定着してもらえるか?(半年で35%は離職する)という発想に至ります。ある意味儲からないことへのチャレンジ、遠回りとわかっていての生活支援(ライフサポート)の事業化を考えるようになっていきます。

企業の人事部で対応不可能な、出入国の手続き、携帯電話の手配、不動産の契約、日本での生活マナー研修、日本語サポート、特定技能VISAの取得、銀行口座の開設、クレジットカードなどの金融サポート、カウンセリングなどのメンタルケア、学校・子育てなどの生活支援。このようなところに着目して、実際に事業化を実現しています。

  • YOLOモバイル(SIMカード)を2019年10月にスタート、日本特有の2年縛りがなく滞在期間が限られている外国人ユーザーの需要が見込まれる。
  • 問診票サービスを2019年10月スタート、日本語が不自由な外国人でも、病状や怪我の状況を医師に説明できる問診票自動作成サービス、17言語で対応が可能です。

2020年にリリース予定なのは、外国人が入居可能な物件を多数紹介することで、日本に来たばかりの外国人に不動産探しのサポートをする不動産サービス。さらに2つのEラーニングも控えています。【特定技能Eラーニング】と【日本語学習Eラーニング】、合格できれば、正社員化への門戸が広がったり、日本での生活の利便性向上に役立てるサービスを提供予定です。

外国人経済圏の規模を示した画像です

3)外国人消費経済圏リーチを開始する

加地さんが笑顔で話す【YOLO経済圏】これが一番あるべき姿だと。『外国人の代名詞だった観光は労働へと代わり外国人消費へと成長を遂げる』と話します。

消費者へと変化していくことを先取りして、すでに事業提携を発表しているものには次のような企業があります。

  • 銀行口座開設、海外送金→セブン銀行
  • 日本におけるクレジットカード発行→三井住友VISAカード
  • YOLOモバイル→JPモバイルと提携。入国間もない、銀行口座やクレジットカードが無い外国人にも提供可能に。ベトナム語、中国語、英語で申込も多言語化へ

ここからYOLO JAPAN×不動産、YOLO JAPAN×エンタメ、YOLO JAPAN×ウェディング、YOLO JAPAN×旅行と事業展開を繰り出していこうとしています。

3 各地で誕生させる就労インバウンド施設

1)2019年9月にYOLO BASEが誕生

2019年11月23日、日本では勤労感謝の日。加地さんは外国人限定の勤労感謝フェスがあっても良いのでは?となかなかオモシロイアイデアを実行に移しました。

外国人のみが出られるミスコン(YOLO KAWAII AWARD)、演歌や日本のバンド曲を熱唱する歌唱大会(YOLO MUSIC KARAOKE AWARD)、各国のおつまみが勢揃い約20種類の中からグランプリを競うYOLO FOOD AWARDと、アワードあり、日頃の疲れを癒やす【足湯ブース】が出現したりと、在留外国人のための勤労感謝、労いの場を開催したのも単に人材ビジネスで終わろうとしない表れに感じます。

●外国人就労者向け勤労感謝フェスを大阪で開催 世界のフードや音楽、日本の足湯で日頃の疲れを吹き飛ばす!
https://www.yolo-japan.co.jp/news-release/5481

これもネットのみでなく、リアルな場の大切さを感じているからでもありますね。

このフェスが行われたのが2019年9月にオープンしたYOLO BASE。こちらは、2年前から準備を重ねてきたプロジェクト、南海電鉄との連携から業務スキルの習得と、知識・語学の習熟、実務経験の増進を図るというもの。

日本での就労機会をリアルに応援していこうとする加地さんの覚悟とも思える施設です。

●YOLO BASE
https://yolo-base.com/ja/

2)外国人と出会える場を各地に創造していく

オープンから3カ月を経過して、YOLO HOTELでは、現在日本人と外国人の宿泊の割合は20:80の割合と加地さんの思惑通りになっています。2週間連泊のツワモノも出現しており、外国人による口コミ評価も上昇中とのことです。受付やスタッフ全員が外国人、宿泊も外国人という交流がスタートしています。

このYOLO BASEを早い段階で全国4カ所に展開したいと話す、加地さん、YOLO BASE間でバスが発着する、YOLO BASEから全国各地への長距離バス、空港バスが発着することを目標にしています。

今後は地方の有力企業、鉄道会社、地方銀行と連携しながら在留外国人生活応援企業として確固たる地位を築いていきたいと笑顔で話します。世界の人々の笑顔が集まる企業へと成長を期待しています。

加地さんと杉浦さんの近影画像です

以上(2020年1月作成)

「書式・雛型」集を使った経営者の時短術!

経営者は多忙です。特に中小企業の経営者は、トップセールスや製品開発の指揮など、本来、経営者がやるべき仕事に加え、契約書や就業規則の作成といった一部のバックオフィス業務に時間を取られます。

もし、自社に必要な書式・雛型がすぐに使えて、しかも不明な点を専門家に相談することができれば、とても便利だと思いませんか?

今回は、りそな総合研究所が会員向けに提供している『e-書式ナビくん』についてご紹介します。『e-書式ナビくん』は、りそなCollaborare会員のお客様(創業応援パックをご利用中のお客様を含みます)であれば、初年度手数料無料で利用できます(『e-書式ナビくん』はりそな総合研究所の会員サービスです。りそな総合研究所の会員サービスは、「創業応援パック」のサービス内容に含まれています)。

1 経営者のバックオフィス業務削減につながる『e-書式ナビくん』

中小企業では、契約書や就業規則の作成といった一部のバックオフィス業務を経営者が担っています。契約書については、契約内容を決定するのは経営者であるため深く関与せざるを得ませんが、あくまでも意思決定であり、書面の作成は社員に任せたいところです。

また、就業規則は、契約書とは違った意味で経営者が関与します。「社員が10人を超えると就業規則が必要になる」ことは、多くの経営者は認識しており、雛型を利用して就業規則を調整します。要注意なのが、最新の法令改正への対応です。最近では、働き方改革関連法の施行で規定の内容が大きく変わっているので、これを踏まえたものにしなければなりません。

『e-書式ナビくん』には、次のようなメリットがあり、バックオフィス業務を削減したいという経営者のニーズに応えるサービスです。

1)1万6000種類以上の書式・雛型を公開

『e-書式ナビくん』で公開されている書式・雛型は、1万6000種類以上です。ビジネスでよく利用する「契約書・内容証明」「人事・労務」「株主総会・取締役会」などの分類別に、関連する書式・雛型が公開されています。

2)法的に正確かつ最新の内容を反映

『e-書式ナビくん』で公開されている書式・雛型は、法的な正確性や最新性が保たれており、安心して利用できます。就業規則の場合、2019年4月から施行された働き方改革関連法に対応した雛型が公開されています。なお、法令改正後、書式・雛型の修正までにはタイムラグが生じる場合があります。

3)作成時のポイントを記載

『e-書式ナビくん』で公開されている書式・雛型は、作成時のポイントが盛り込まれています。秘密保持契約書の場合、非課税文書であるため印紙が不要である旨や、秘密とする情報はどのようにして定義するのかなどのポイントが簡潔に記載されていて、作成時の参考になります。

2 『e-書式ナビくん』の利用のイメージ

『e-書式ナビくん』を利用する場合、下記ページにアクセスし、りそな総合研究所の会員番号とパスワードを入力してログインしてください。ログイン後、下記ページに出てくる『ご利用規約』をお読みいただき、【同意して専用ページへ】ボタンをクリックしていただくと、『e-書式ナビくん』の専用ページへお進みいただけます。

●『e-書式ナビくん』
https://www.rri.co.jp/soukei/formnavi.html

必要な書式・雛型を探す場合は、キーワードを入力して検索するだけでなく、「契約書作成の基本ポイント」「社内規程作成支援サイト 人事・労務Navi」などのページについてもご覧ください。

例えば、「契約書作成の基本ポイント」では、商品販売・売買、サービス提供など各種契約に関連する書式・雛型がまとまっています。一般的な内容だけでなく、業種別や業態別の特徴などを反映したものも公開されています。商品販売・売買などに関連する契約書であれば、一般的な売買基本契約書(継続的取引・個別契約なし)の他、サイバーモール出店契約書やオンラインショッピングサイト利用規約などがあります。

●契約書作成の基本ポイント(イメージ)

契約書作成の基本ポイント(イメージ)画像です

また、「社内規程作成支援サイト 人事・労務Navi」では、「これだけは揃えるべき、必須の規則・規程」として就業規則とともに、整備すべき給与規程やハラスメント防止規程など8種類の規程の書式・雛型がまとまっています。

「契約書作成の基本ポイント」「社内規程作成支援サイト 人事・労務Navi」では、「間違いやすい用語」「従業員への意見聴取とは?」などのように契約書や就業規則の中で頻出する用語や考え方の解説などもあるので、作成時に間違いやすい点や見落としがちな点についても分かります。

●社内規程作成支援サイト 人事・労務Navi(イメージ)

社内規程作成支援サイト人事・労務Navi(イメージ)画像です

3 会社の成長に合わせて専門家の活用も検討しよう

書式・雛型は便利ですが、あくまで一般的な内容を定めたものです。会社が成長するに従って、ビジネスの規模や内容の変化などにより、書式・雛型を利用するだけでは十分に対応できない事態も出てきます。

そこで、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談して、自社の個別事情に対応した契約書や規程を作成しましょう。

もし、契約書や規程の作成でお困りのことがあれば、りそな総合研究所の「相談サービス」を活用してください。これは法律問題に関するご相談への対応や関連資料などをご紹介するサービスです。

この他にも、りそな総合研究所では、経営者の皆様のさまざまな悩みや困り事を解決するご支援をしています。経営でお困りのことがあれば、お気軽にお問い合わせください!


以上

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