オンライン診療の動向

書いてあること

  • 主な読者:オンライン診療を検討する医療機関など
  • 課題:オンライン診療に対してどの程度のニーズがあるのか、どのような課題があるのかを知りたい
  • 解決策:本稿では、各省庁の調査結果などから、オンライン医療の実施状況や、利用者の動向などを紹介している。自医院がオンライン診療を実施するか否かの参考材料として活用できる

1 オンライン診療の概要

オンライン診療は、一般的には医療機関と患者の自宅などをインターネットで結び、医療行為またはそれに準じる行為を行うものです。インターネットを経由するため、時間や場所の制約が少なく、外出が困難な高齢者の診療や遠隔地などでの導入・検討が進んでいます。

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、オンライン診療は、「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」である遠隔医療のうち、「医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」とされています。遠隔医療の分類は以下の通りです。

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2 オンライン診療のニーズ、認知

本稿では、各省庁の調査結果などから、オンライン医療の実施状況や、利用者の動向などを紹介します。

1)実施数

厚生労働省の資料「オンライン診療に関するアンケート集計結果」は、実際にオンライン診療を実施している医師を対象にした、オンライン診療を受ける患者数やオンライン診療を実施する際の課題などのアンケート結果を集計しています。

同アンケートにおける、オンライン診療を導入している患者数は次の通りです。

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2)ニーズおよび認識

同省の資料「平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」によると、オンライン診療に対する医療関係者の主なニーズおよび認識などについて調査結果が公表されています。

この調査によると、オンライン診療の実績がある医療関係者の58.3%が、「オンライン診療に対するニーズは少ない」と回答しています。また、オンライン診療の実績がある医療関係者の66.7%が、「オンライン診療を行うメリットが手間やコストに見合わない」と回答しています。

■厚生労働省 平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成30年度調査)の報告書案について■
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000493972.pdf

3)オンライン診療に対する利用者の動向

内閣府「平成29年 高齢者の健康に関する調査結果」では、全国の55歳以上の3000人を対象に実施された、インターネットで医療や健康に関してどのような情報を入手しているのかが示されています。「医療や健康情報のインターネットでの入手」に対する回答結果は次の通りです。

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3 オンライン診療の課題

オンライン診療の課題として一般的に挙げられるものとして、「患者の病歴などの個人情報の安全性を確保することが難しい」「通信環境の不良により患者との適切なコミュニケーションを取ることが難しい」「患者のカメラの光の加減や角度で適切な診断が難しい」「遠隔のため患者が正確な症状を伝えることができない・しない」などの課題があります。

厚生労働省の資料「オンライン診療に関するアンケート集計結果」によると、オンライン診察時のトラブルとして、次のようなものが挙げられています。

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4 医療機関のオンライン診療に対する意欲

医療関係者向けの情報を発信するエムスリーでは、2018年1月30日~2月5日に会員制サイト「m3.com」を通じてオンライン診療についてアンケートを実施しました(回答者数1535人)。

オンライン診療を現在実施しているとの回答は、全体の4%強にとどまり、勤務医の56.5%、開業医の73.4%が実施したいとは思わないと回答しています。一方で、勤務医の36.7%、開業医の20.3%が今後実施する予定または実施したいと回答しています。

なお、このアンケートでは、オンライン診療の普及に対しての賛否も調査しています。それによると、勤務医の42.0%が賛成、10.0%が反対と回答しているのに対し、開業医は21.2%が賛成、20.9%が反対と回答しており、オンライン診療に対する認識に違いがあることが分かります。

■エムスリー m3.com意識調査「『オンライン診療、実施予定・したい』、勤務医36.7%、開業医20.3%」■
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/585294/

5 自治体・医療機関の動向

1)愛知県:オンライン服薬指導

愛知県は、高齢化が進む離島(西尾市の一部、南知多町)や山間地(新城市、東栄町など)が国家戦略特区に指定され、離れた場所にいる患者に、薬の飲み方を指導するオンライン服薬指導に取り組んでいます。

愛知県によると、オンライン服薬指導を実施する薬剤師側には、患者が自宅に居ることで、患者のプライバシーが保たれることや、薬の残量も確認できるなどのメリットがあるものの、システムの操作方法の説明や、画面越しでの服薬指導のために、医療機関で指導するよりも手間と時間が掛かったそうです。

患者側からは、オンライン服薬指導は事前予約が必要で、予約した時間にシステムを起動させることが必須などの手間がかかったそうです。

2)茨城県石岡市:医療相談アプリを試験導入

住民1人当たりの小児科医の数が全国最少といわれる茨城県石岡市は、医師不足を解消する取り組みとして子育て世代を対象とした、医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」の実証実験を行っています。リーバーは、AGREE(茨城県)が提供するアプリです。同アプリは、チャットボット(自動会話プログラム)が問診を行い、回答に沿って医師が市販薬の推奨や、適切な診療科などの情報を提供します。

同市へのヒアリングによると、このアプリの対象となる世代(石岡市内に居住し、0~3歳児のいる世帯)の約30%が既にユーザー登録を済ませているそうです。ユーザー登録が進んでいることの背景として、「日常的にスマートフォンを利用する子育て世代に向けた取り組みであることに加え、ダイレクトメールの送信や、石岡市の広報にアプリの情報を掲載したことなどが挙げられる」とのことです。(*)

一方で、今後の想定される課題として、「増加するユーザーの入退会の管理や、操作方法の分かりやすい説明が挙げられる」とのことです。(*)

また、医師からは「すきま時間」を有効に活用するために、新たにこのアプリで情報を提供できないかどうかの問い合わせを受けているそうです。

________________________________________
(*)茨城県石岡市(2019年9月13日時点)

以上(2019年12月)

pj50475
画像:photo-ac

【朝礼】考えたら行動する。それが基本だ!

今年の4月から偶数月に皆さんと個人面談をしています。12月で5回が終わったわけですが、この面談を通じて、皆さんがさまざまなことを考え、また意見を持っていることが分かりました。

例えば、「業務プロセスを改善したい」「若手の教育をもっと丁寧にやりたい」「業務の平準化を図って、全体の残業時間を削減したい」「資格を取得して、もっと自分のスキルを高めたい」など、とても素晴らしいものです。

ただ、残念なことがあります。それは、私が少し質問をしただけで、皆さんは自分の考えを言えなくなってしまうことです。私は決して難しい質問をしているわけではありません。「資格を取得したい」という人には、「何の資格を取得するのか、いつから勉強を始めるのか」といったことしか質問していません。また、「若手の教育体制を整えたい」という人には、「仕組みができるまでの間、あなたの残業が増えるかもしれませんが、よろしくお願いします」と言うと、「自分の残業が増えるのは嫌です」と答えます。しかし、残業をせずに若手の教育体制を整える具体的な方法を考えているわけではありません。

「『口だけ』で、しっかりと考えていないのだな」と感じます。「何かをやりたい」という気持ちの強さは人それぞれです。「本気でやりたい!」という強いものから、言ってみただけという程度のものまであります。皆さんのお話の多くは、言ってみただけ程度のものだったのでしょう。

しかし、私は、言ってみただけ程度でもいいと思っています。前向きに捉えるなら、何も考えていなければ口にすら出さないはずですから、それほど気持ちは強くなかったとしても、「やりたい!」という気持ちがあるのは確かなはずです。

少し寝坊をした休日。ランニングや買い物など、やりたいことがあるけれど、ダラダラとしているうちに気付いたら夕方になってしまい、結局何もしなかったという経験はありませんか。人は、「面倒だ」「難しい」と感じることほど、勢いで始めてしまわないと、なかなか行動に移すことができません。やりたい気持ちがあまり強くないことについても、これと同じです。

実際に行動をしてみると、やりたい気持ちが高まったり、逆に自分が求めていることではなかったと気付いたりします。結果として、三日坊主で終わるものもありますが、行動を起こさなければ分からないことなのです。

言ってみただけ程度でも、それを行動に移すことさえできれば、それが皆さんの成長のきっかけになります。ここで皆さんにお聞きします。皆さんは、私にいろいろなことを話してくれました。「それで、皆さんは行動しますか、考えているだけで終わりますか?」

次の個人面談は2カ月後です。もちろん、私が個人面談で聞きたいのは、皆さんの本気です。今朝の朝礼をきっかけに皆さんが行動し、やりたい気持ちが高まれば素晴らしいことです。

以上(2019年12月)

pj16985
画像:Mariko Mitsuda

休暇明けに部下が元気に出社してくるための秘訣/若手社員が採用できる、辞めない職場づくりのヒント(4)

1 正月休み明け、上司への審判が下る?

本人に代わって会社と退職の手続きを行う「退職代行」というサービスをご存じでしょうか。2019年は、このサービスが急速に広まった年でした。メールやLINEで依頼するだけで、本人はその瞬間から会社と一切関わることなく退職できるのが、人気の理由のようです。我々、ツナグ働き方研究所が“入社3年目までの若者1000人”に聞いたところ、退職代行を知っていると回答した男子の47.5%が“退職代行を利用したい”という驚きの調査結果が出たほどです。

特に長期休暇の後は、退職代行が活躍しやすい季節です。実家に帰省して親と話したり、学生時代の友人と会ったりすることで、人生について見直すことが多いのです。

最近の若者は、SNSでいろんな人とつながっています。オンライン社会の中で“見て見られて”という生活を送ることで、無意識のうちに他人と自分を相対比較することが習慣化しています。だから久しぶりに会った友人の状況にも敏感。同世代がイキイキ働いている話を聞くと、自分の職場と比較して悶々とします。ただでさえ、あっさり辞めてしまう世代です。急激にモチベーションが下がり、休みが明けても出社することなく退職代行を頼む。こういう展開が容易に想像できます。

職場の若手が、お正月明けにちゃんと出社してくるか。それは彼らがどのようなコンディションで働いていたのかにかかっています。上司にとっては、日々のマネジメントに審判が下るドキドキの2020年仕事始めとなるかもしれません。

年始に元気よく部下が出社してくれることを願わない上司はいないでしょう。前置きが長くなりましたが、本稿では、拙著『なぜ最近の若者は突然辞めるのか』をもとに、若手部下に対して、日ごろからどのようなコミュニケーションを取っておくことが重要なのか、について述べていきます。

2 俄然、注目を浴びる心理的安全性

「心理的安全性」という言葉をご存じでしょうか。他人の反応に怯えたり、羞恥心を感じたりすることなく、自然体の自分をさらけ出すことのできる環境を指す心理学用語です。グーグル(アルファベット社)が、自社のプロジェクト運営研究結果から、「心理的安全性は成功するチームの構築に最も重要なものである」と発表したことから、注目を集めるようになりました。ビジネスシーンにおいて、本来の自分とは大きく異なる仕事用の人格を演じることではなく、普段通りのリラックスした状況で仕事に臨むことができる状態がベスト。そうGAFAの一角をなすITの巨人が言うわけですから、かなりの説得力です。

特に若者にとって、この心理的安全性はとても重要な意味があります。前述のように、いまの若者世代はSNSの中で“見て見られ”という生活に慣れ親しんだことで、過剰なくらい忖度をしがちです。同僚からバカにされないだろうか、上司から叱られないだろうか……。彼らは常にまわりの目を気にしているのです。そんな若者に「自分はここにいていいんだ」「何を言っても否定せずに受け止めてもらえるんだ」という居場所を提供することが極めて重要なのは、言うまでもないでしょう。

では、どうやったら職場の若者に心理的安全性を提供できるのか。

オトナ世代と若者の価値観には大きなギャップがあります。そのギャップを少しでも埋めていくことです。ひと言でいえば「彼らの価値観を理解し、彼らを承認していく」ということに他なりません。

3 理不尽なタテ社会を嫌悪

ここまでも再三述べてきたように、彼らは「SNS村社会」とも呼ぶべきオンライン空間の住人です。SNSを駆使することで、会ったことのない人とも容易につながり、仲間関係が横へ横へと広がっていきます。そこには年上も年下もなく、経営者でも会社員でも、あるいは外国人であっても、個と個でつながっています。

このように、フラットでボーダレスな「ヨコ社会」で生きている若者からすれば、職場や会社という枠組みは、それほど大きな意味を持ちません。まず組織ありきで働くのではなく、なんらかの目的があって集まった人たちという感覚です。ですから仕事の仕方も、上司や先輩の指示で盲目的に動く「上意下達型」ではなく、いろんな人と協力しながら進める「プロジェクト型」を志向します。

そんな若者にとって理想的な上司と部下の関係とはどういうものでしょうか。

彼らが望んでいるのは「仲間」です。人生の先輩と後輩でもなく、ましてや師匠と弟子ではなく、ひとつの仕事を協力して成し遂げる仲間であることを彼らは求めています。

仲間なのだから、どちらかが威張るのはおかしい。困っている相手を助けようとしないのもおかしい。ましてや、どうしていいかわからないでいる部下に対し、「自分で考えろ」とか「いちいち聞くな」などと言う上司は、仲間として不適格だと彼らは判断します。

オトナ世代は、上から降りてきた話はとりあえず受け止めてきたと思います。上司や先輩が言っていることを「上から目線」とは思いませんし、多少の疑問や不満があっても「それが仕事」だと自分を納得させてきたことでしょう。しかし若者たちは、これを理不尽ととらえます。また「自分のほうが上」とばかりに知識をひけらかしたりする上司には、忌むべきタテ社会の象徴として、相当なアレルギー反応を示します。

4 仲間的な上司が持つファシリテーション思考

「仲間的な上司」と言われても、しっくりこない人もいるでしょう。そんな友達みたいな関係性で組織マネジメントができるわけがないと感じる人もいるでしょう。

もう少し補足すると、強烈なリーダーシップで組織を引っ張るというより、サポートシップでチームを支援する意識のことを指しているのです。ファシリテーション思考ともいえます。

分かりやすい事例で言うと、青山学院大学陸上部監督の原晋氏。フレンドリーな指導に定評があり、体育会系にありがちな部員の上下関係も廃しました。トータルでの目標タイムを決めて各選手に割り振るのではなく、個々の選手がどのくらいのタイムで走りたいかを会話しつつ、その積み上げで目標タイムを作っていく、という話を聞いたことがあります。こうした上から目線ではなく横から目線、もっと言うと下から目線のコミュニケーションで、チーム内の自発的活動性を高めているのです。箱根駅伝4連覇という成果が、若者のハートを掴んでいる何よりの証拠でしょう。

仲間的な上司像の輪郭を具体的にしてみると、こんな感じでしょうか。

  • 細かく口を出すのではなく、スタッフに権限を与えてくれる
  • スタッフの成功やプライベートの充実、健康に関心を示してくれる
  • 良い聞き手であり、情報共有を円滑にする良いコミュニケーターである
  • チームをサポートするために必要な専門的技術やスキルを持っている
  • 組織への帰属意識を高めるために明確なビジョンを掲げている

5 承認は最強のコミュニケーション

ここからは「承認」についてのメソッドを解説しましょう。ポイントは至ってシンプル。コミュニケーションの「質より量」を意識することです。最近の若者は雑談が苦手だとか、興味のない話をしたがらないなどといわれます。みなさんの職場にも、黙々とデスクに向かっていて「話しかけないでオーラ」が出まくっている若者がいるかもしれません。

しかし若者は人と関わることが嫌いなわけではありません。面倒なタテの人間関係が苦手なだけで、「居心地のいいフラットな人間関係」自体は強く求めています。むしろ、インスタグラムでフォロワーが、自分の投稿に何も反応しなくなると不安でたまりません。職場でも「見てもらえているか」どうかを、かなりセンシティブに捉えています。だからこそ、承認の第一歩は、こまめなコミュニケーションから始まるのです。

これは、褒め方にも共通するポイントです。

例えば、いつもしかめっ面で怒ってばかりの厳しい師匠が、最後の最後で「よく頑張ったな」とポツリ。またしかめっ面で歩き出す師匠の背中を、目に涙を浮かべた弟子が追いかけていく……。若者はこんな「ドラマティックな光景」は望んでいません。渾身の大褒めよりむしろ「プチ褒め」が望まれています。

部下の長所を見つけて褒めるのが理想ですが、「プチ感謝」でも十分効果的。例えば報連相には必ず「ちょい足し」して返す。言葉はなんでも構いません。「よくなったな」と褒めてもいいし「大変だったろう」と共感してもいいし「助かったよ」と感謝を伝えてもいいでしょう。

褒めることは、相手を承認することに直結する最強のコミュニケーション。オトナ世代はフェイスブックやインスタグラムでいいね!を押し合う若者世代に対して、ぜひ意識的に取り組んでいただきたいですね。

6 レスポンスも素早くこまめに

若者からの報告や相談がメールであったとき、「ちゃんと答えないとマズいから、後にしよう」なんて1日寝かせたりした経験はないでしょうか。プレイングマネージャーだったりすると、自分の仕事も忙しいので、なかなかすぐには返答できない場面もありますよね。そんなときは、素早くベストな回答をしようとせず、一言だけも即レスしておけばOKです。

若者はノーレス状態に「あれ?」と思ってしまいます。「何か変なこと送っちゃったかな」「もしかして自分は軽く見られているんじゃないか」などと勝手に不安になったりします。この価値観に大きな影響を与えているのが、いうまでもなくラインです。既読スルーが許されないのは「SNS村社会」の典型的なマナーのひとつ。彼らはとりあえずであろうがレスを怠りません。スタンプひとつでも必ずリプライします。そのくらい、とりあえず一言返すことは重要なのです。少なくともオトナ側の事情で寝かせたりするより、よっぽどマシに見えるはずです。

「ありがとう」とか「後で返すね」と送るだけで、相手には「ちゃんと見てるよ」というメッセージが伝わります。レスポンスも、相手を承認する重要な行為なのです。繰り返しますが、職場においても「既読スルー」は許されません。

7 名前で呼ぶ効能

自分の名前が呼ばれたとき、自分のことを呼んだ人に対して好感を抱くことは、心理学においてネームコーリングという効果で知られています。人間は無意識に自分の名前を好ましいものとして捉えているため、名前を呼ばれると自分に好意があるのではないかと考えるのです。

部下を名前でちゃんと呼ぶ。めちゃくちゃ簡単ですが、これだけでも承認欲求を満たすことになるのなら、実践しない手はありません。例えば会議中、「今、○○さんが言ってくれたみたいに……」などと、わざわざ名前を添えて発言する。挨拶も「おはよう」じゃなく「○○さん、おはよう」。なにか業務をオーダーするときも「あのさ、これお願い」じゃなく「○○さん、これお願いね」。普段の会話の中に、部下の名前を差し込んでいく。この繰り返しが、相手の存在をしっかりと認めることにつながるのです。

また許されるのであれば、あだ名で呼び合うようにするのも効果的。SNSの中でいくつものハンドルネームを使い、キャラを確立している若者からすると、どんなふうに呼ばれるかは、個性や自意識と直結しているのです。

あの面白法人カヤックでも、新人にあだ名をつけることが文化として根付いているとのこと。名字が武田なら「鉄也」とか、名字が浅利なら「ボンゴレ」とか、ものすごく安直ではあるらしいのですが、確実に親近感が増します。

8 まとめ

連休明けなどは、職場の若者が辞めやすい時期。年始に部下が元気よく出社するためにも、上司としては日ごろから、次のようなコミュニケーションを心がけるべき。

  • 職場の若者に心理的安全性を提供することがとても重要
  • そのためには、職場の若者の価値観を理解・承認することが必要
  • 上から目線ではないファシリテーション思考を心がける
  • 質より量のコミュニケーション(プチ褒め・プチ感謝の実践)
  • レスポンスも素早くこまめに
  • 名前をちゃんと呼ぶことでも承認感は高まる

以上(2019年12月)
(執筆 平賀充記)

pj90143
画像:NDABCREATIVITY-Adobe Stock

豊臣秀吉(武将)/経営のヒントとなる言葉

「信長公は勇将なり、良将にあらず。剛の柔に克つことを知り給ひて、柔の剛を制することを知られず」(*)

出所:「名将名君に学ぶ 上司の心得」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

  • 「部下から恐れられるような態度を取っていては、良いリーダーとはいえない。リーダーは、部下の心情、部下の視点に配慮することが求められる」

ということを表しています。

秀吉は織田信長に仕え、こまやかな心配りや機転の良さによって、頭角を現したことで知られ、こうした秀吉の特性は次のエピソードにも見られます。

ある日、秀吉は信長から、城の薪代がかさんでいるため、節約を図るように命じられて、薪奉行を任されます。それを受けて、秀吉は台所で使用する薪代や、暖房として必要な薪代などについて関係者に話を聞き、使用量を調べたところ適正量であり、薪代がかさんでいるのにはほかの原因が考えられました。

秀吉は次に薪の流通経路に着目しました。すると、薪の生産地から城に運び込まれる間に、多くの中間業者が存在し、マージンを受け取っていることが明らかになったのです。また、一説によると、秀吉の前任の薪奉行は中間業者から賄賂を受け取っていた可能性もあるようです。

そこで、秀吉は中間業者を通さない新たなルートで、薪を調達することを思い付きます。そうすれば、前任の薪奉行が不正を働いていたことは公になることはありません。秀吉は、領内の村を訪ねて回り、薪として使用できる古い木を無料で城まで運び、古い木と引き換えに苗木を渡すという交渉を取り付けました。この秀吉のやり方に信長は満足しました。また、「不正が明るみに出ないように」という秀吉の配慮に対して、前任の薪奉行も感謝したようです。

秀吉は「主である信長の命令にさえ応えられればよい」「自分さえ手柄を立てられればよい」という上下関係の視点だけではなく、前任の薪奉行、領内の村など多くの関係者が満足するようにうまく利害を調整しています。

秀吉の成功には、信長に取り立てられて力をつけていったという側面だけでなく、自ら周囲の人をうまく巻き込んで、もりたててもらったという見方ができるのではないでしょうか。

秀吉は低い身分から後に天下人にまで出世を果たしますが、こうした過程で秀吉は自分が臣下の立場で感じた、リーダーに対する思いを、自らがリーダーになった際に生かしています。

例えば、冒頭の言葉は主君であった信長の非情な性格について秀吉が言及したものの一部で、信長は恐れられこそすれ愛されることがなかったリーダーであり、こうした信長の性格が明智光秀の裏切りを招いたと、冷静に分析しています。

また、信長に仕える以前の主であった松下之綱の下を、将来性が無いと感じて去る際に、次のような言葉を残したとされています。

「およそ主人たる者、一年使ひ見て、役に立たぬ時は暇を遣はし、家来としては、三年勤めて悪ししと知らば、暇を取ること、法なり」(**)

秀吉は多くの臣下を抱える主となった後も、“臣下の心情”“臣下の視点”に配慮して接したことで、竹中半兵衛、黒田官兵衛など、多くの才能ある将を引き付けたのかもしれません。

リーダーはリーダーであり、部下とは同じ立場に立てるわけではありません。リーダーに求められるのは、組織を健全に保つため、律するべき部下を律し、引き上げるべき部下を引き上げるということです。リーダーはミスを犯した部下を叱責しますが、その目的はその部下に同じミスを犯さないように気付いてもらうためです。一方、良い仕事をした部下を引き上げますが、その目的は、その部下のやる気を高め、組織全体に良い影響を与えるためです。決して、リーダーの個人的な好き嫌いによって、部下への処遇や評価が変わるわけではありません。

こうしたリーダーの姿勢は、マネジメントの基本ですが、さらに部下への配慮や気遣いというエッセンスを加えることで、その効果を高めることができます。

部下は、リーダーと部下の置かれている立場が異なることを理解しています。だからこそ、リーダーの部下への配慮や気遣いを感じた部下は、そうしたリーダーの姿勢に応えたいと思い、一生懸命に仕事に取り組んでくれるでしょう。

部下への配慮や気遣いとは、部下のためだけではなく、リーダーを助け、結果的に組織の発展へとつながるものだといえるでしょう。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

とよとみひでよし(1537〜1598)。尾張国(現愛知県)生まれ。織田信長の下に仕え、後に天下統一を実現。

【参考文献】

(*)「名将名君に学ぶ 上司の心得」(童門冬二、PHP研究所、2007年5月)
(**)「戦国武将のひとこと」(鳴瀬速夫、丸善、1993年6月)
「戦国武将のマネジメント術 乱世を生き抜く」(童門冬二、ダイヤモンド社、2011年3月)

以上(2019年12月)

pj15147
画像:Josiah_S-shutterstock

売上の計上時期が変わる!? 新たな収益認識基準とは

書いてあること

  • 主な読者:大企業を取引先にもつ中小企業の経営者・経理担当者
  • 課題:2021年4月1日以後に開始する事業年度から、中小企業を除くすべての企業は、新しい収益認識基準を適用しなければならない
  • 解決策:従来の会計基準の違いや、ポイント、中小企業が注意すべき点を解説

1 新しい収益認識基準の公表

企業会計基準委員会(日本における会計基準の設定主体。以下「ASBJ」)は、2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、合わせて「本会計基準等」という)を公表しました。

本会計基準等における新たな収益認識基準は、上場・非上場企業であるかを問わず、中小企業を除く全ての企業に適用されることになります。なお、2018年4月1日以後に開始する事業年度より任意で適用が開始され、2021年4月1日以後に開始する事業年度からは強制適用されます。

本会計基準等の適用により、収益の認識単位・金額・タイミングが変わる可能性があり、これに対応するためには、企業の収益認識に及ぼす影響の把握と、正しく収益認識を行うための事前準備が必要となります。

本稿では、収益認識基準が新しくなった背景を解説したうえで、新たな収益認識基準のポイント及び中小企業に想定される主な影響を紹介します。

2 新たな収益認識基準が公表された背景

従来の日本における収益認識基準は、企業会計原則の損益計算書原則において「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準がこれまで開発されていませんでした。

一方、国外では、国際財務報告基準(以下「IFRS」)を策定している国際会計基準審議会(以下「IASB」)と、米国における会計基準を策定している米国財務会計基準審議会(以下「FASB」)が、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表しました。

これらの状況を踏まえ、2015年3月に開催されたASBJ会議において、日本における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、その後2016年2月に適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という)が公表されました。この意見募集文書に寄せられた意見等を踏まえ審議が進められ、2017年7月20日に収益認識に関する会計基準等の公開草案を公表し、当該公開草案に対して寄せられた意見等について検討が行われてきました。

そして、2018年3月26日開催のASBJ会議において、企業会計基準第29号及びその適用指針第30号(以下、合わせて「本会計基準等」)が承認され、本会計基準等が同年3月30日付で公表されました。

3 従来の会計基準との主な違い

従来から多くの企業が契約(または受注)単位で収益を計上しています。一方、新たな収益認識基準では、その契約の中に複数の履行義務(顧客に対して、財またはサービスを提供する約束)がある場合、その履行義務ごとに収益認識の「単位」「金額」「タイミング」(詳細は後述)を判断することになります。例えば、製品の販売に付随して、無償で修理を行うなどのアフターサービスを付けた場合、製品の単価とアフターサービスの単価ごとに売上の単位・金額・タイミングを認識することが考えられます。

4 新たな収益認識基準のポイント

新たな収益認識基準の基本原則は、約束した財またはサービスの顧客への移転を、当該財またはサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額によって収益の認識を行うことです。また、この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することになります。

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1)ステップ1:契約の識別(単位)

顧客との契約を識別します。本会計基準等では、顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用されることになります。

2)ステップ2:履行義務の識別(単位)

契約における履行義務を識別します。契約において、顧客へ提供することを約束した財またはサービスが所定の要件を満たす場合には、別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区別して識別することになります。

3)ステップ3:取引価格の算定(金額)

取引価格を算定します。変動対価または現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整を行い、取引価格を算定することになります。

4)ステップ4:取引価格の配分(金額)

契約における履行義務に取引価格を配分します。契約において約束した別個の財またはサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分します。独立販売価格を直接観察できない場合には、独立販売価格を見積もることになります。

5)ステップ5:収益認識(タイミング)

履行義務を充足したときに、または充足するにつれて収益を認識します。約束した財またはサービスを顧客に移転することによって履行義務を充足したとき、または充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識します。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足されます。

5 重要性等に関する代替的な取扱い

本会計基準等においては、これまで行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性(財務諸表の期間比較や、他社比較が可能なこと)を大きく損なわせない範囲で、IFRS第15号における取扱いとは別に、次の個別項目に対する重要性の記載等、代替的な取扱いを定めています。なお、重要性の判断については、公認会計士などの専門家が判断することになります。

1)契約変更(上記ステップ1関係)

契約変更による財またはサービスの追加が、既存の契約内容に照らして重要性が乏しい場合の処理の取扱いがあります。

2)履行義務の識別(上記ステップ2関係)

提供することを約束した財またはサービスが、顧客との契約の観点で重要性に乏しい場合には、当該約束が履行義務であるかについて評価しないことができます。

3)一定の期間にわたり充足される履行義務(上記ステップ5関係)

工事契約について、契約における取引開始日から、完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができます。また、受注制作のソフトウエアについても、工事契約に準じて同様に適用することができます。

4)一時点で充足される履行義務(上記ステップ5関係)

商品または製品の国内の販売において、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転されるときまでの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転されるときまでの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができます。

5)履行義務の充足に係る進捗度(上記ステップ5関係)

一定の期間にわたり充足される履行義務について、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない場合には、当該契約の初期段階で収益を認識せず、当該進捗度を合理的に見積もることができるときから収益を認識することができます。

6)履行義務への取引価格の配分(上記ステップ4関係)

履行義務の基礎となる財またはサービスの独立販売価格を直接観察できない場合で、当該財またはサービスが、契約における他の財またはサービスの付随的なものであり、重要性に乏しいと認められるときには、当該財またはサービスの独立販売価格の見積方法として、残余アプローチ(契約における取引価格の総額から、契約において約束した他の財またはサービスについて、観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積もる方法)を使用することができます。

7)契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分(上記ステップ1、2及び4関係)

一定の要件を満たす場合には、複数の契約を結合せず、個々の契約において定められている顧客に提供する財またはサービスの内容を履行義務と見なし、個々の契約において定められている当該財またはサービスの金額に従って収益を認識することができます。

6 中小企業に想定される影響

新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず、中小企業を除く全ての企業に適用されることになります。なお、中小企業においては、「中小企業の会計に関する指針」が適用されることになりますが、今後、当該指針の見直しが行われることも考えられます。

その場合には、事前に顧客との契約を見直し、企業内の管理体制を整備することが求められます。企業の会計・経理担当者は、収益の認識に関して「契約の識別」をするために法務担当者と連携しながら、契約の成立時点を契約書等に照らして確認しておくことが必要です。

また、「履行義務の識別」をするためには、契約書の条項に照らし、顧客に提供することを約束した財またはサービスのそれぞれについての履行義務を、あらかじめ確認しておくことも必要になります。

さらには、企業が想定する実態に合った収益認識を行うために、取引先と契約内容(契約条項など)を見直すことが必要となるかもしれません。

例えば、上記「ステップ1:契約の識別」の段階においては、そもそも契約の成立が特定されない限り、企業は収益を認識することができません。現行では、実務上個々の取引契約書や受注書・注文書によって企業の代表者名義による書面を取り交わしていない場合には、新しい収益認識基準に基づく収益認識にあたっては契約の識別が困難になる可能性があります。仮に、取引基本契約書が存在するのであれば、個々の取引契約の成立を容易に説明できる契約条項を織り込んでおくことが必要です。

また、そもそも企業の代表者名義による書面を取り交わしていないような場合には、契約の識別を容易に行えるように客観的な証拠を残す工夫が必要であると考えられます。上記「ステップ2:履行義務の識別」の段階においては、財またはサービスの給付対象だけでなく、それに付随して提供される財またはサービスの約束(販売インセンティブやポイントの付与など)等も含めて履行義務を特定しておくことが必要となります。

さらに、大企業との取引がある中小企業については、「中小企業の会計に関する指針」の見直しの有無にかかわらず、上記のような契約の見直し等を求められる可能性も考えられます。

以上(2019年12月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 伏見健一)

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画像:photo-ac

第14回 海外スタートアップと日本国内で連携する方法とは?/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

皆さま、こんにちは。いつも私のコラムを読んでくださり、SNSでシェアしていただき、愛りがとうございます(愛+ありがとう)。今回は、海外スタートアップと日本国内で連携する方法をお伝えしたいと思います。

1 グローバルに成長するための5つの方法

グローバルにビジネスを成長させようと考えたら、どのように海外進出したら良いかと社内会議を繰り返し、海外アドバイザーの意見を聞き、現地視察に行って現地パートナーを見つけるか、自社で海外法人を立ち上げるかという方法が一般的でしょう。

あるいは、海外の企業を買収して、短期から中期の成長につながる経営を目指したり、海外のスタートアップ企業に投資して、長期的なリターンを見込んだりする企業も少なくありません。

もう一度まとめます。グローバルに成長するためには、以下の4つが主に日本企業で行われているビジネスの進め方です。

No.1 海外の現地パートナー企業と連携
No.2 海外法人を立ち上げ
No.3 海外の企業を買収
No.4 海外の企業に投資

これらに加えて、全く新しいビジネスのやり方であるNo.5をご紹介します。それは、

No.5 日本に進出したい海外のスタートアップ企業と連携

という方法です。

では、どのようにすれば有望な海外のスタートアップ企業を見つけて、連携することが可能になるのでしょうか?

また、日本に進出しようとしている海外のスタートアップ企業は、日本企業に何を求めているのでしょうか?

これらの点を、私もメンターを務めている「Startupbootcamp Scale Osaka」を例に紹介します。お互いのニーズが上手く重なり合う時に、より良いシナジー効果が生み出され、お互いの成長につながります。

2 Startupbootcamp Scale Osakaとは?

最近、大阪でもStartupbootcamp Scale Osakaという世界18都市で開催されているスタートアッププログラムが始まりました。私もメンターを務めており、英語で海外から来たスタートアップ企業にメンタリングしております。

Startupbootcamp Scale Osakaの目的は、全世界のスタートアップ企業と開催都市のパートナー企業との協業を支援することです。そのために、特定のテーマに特化した(業界特化型)アクセラレーションプログラムを提供しています。それぞれの業界に適したメンターやパートナー、投資家のグローバルなネットワークを提供し、スタートアップの急速な事業拡大を促進します。

ビジョンは、「大阪にて、グローバルなスタートアップの日本参入をサポートすること」です。トップテクノロジー企業を日本に誘致することで、関西のイノベーションエコシステムをさらにグローバルに成長させ、関西に世界の人々がビジネスを展開しに来ることを目指しています。

「新しい市場参入プログラム」としても活用されるStartupbootcampは、グローバルで成長しているスタートアップを引きつけて、世界各地でブートキャンプを行うことにより、その都市にある大企業と連携できる機会を設けるためのプログラムを特別に設計しています。

日本で最初のプログラムであるStartupbootcamp Scale Osakaは、巨大なマーケットである日本への効果的な参入を促すために始まりました。

Startupbootcamp Scale Osakaを示した画像です

3 世界中から選りすぐりのスタートアップだけを大阪へ招待

Startupbootcamp Scale Osakaにおけるスタートアップの選定については、厳選されたプロセスがあります。第1回のプログラムには、世界中から455社の申し込みを受け取った後、パートナーと共に13社のスタートアップをプログラムに招待しました。

レイターステージのスタートアップ企業を受講生としてターゲットにしており、投資を提供したり、スタートアップ企業からエクイティを取得したりせずに、無料でオフィススペースやメンタリングのセッティングを行います。

このことで、世界中からスケールアップを目指す良いスタートアップを引きつけることができます。

また、投資を求めているスタートアップがいた場合は、信頼しているベンチャーキャピタルの紹介も行います。例えば、パートナー企業である阪急電鉄株式会社(業務代行者:阪急阪神不動産株式会社)と株式会社JR西日本イノベーションズはコーポレートベンチャーキャピタル部門を有しています。

4 どのように支援するのか?

Startupbootcamp Scale Osakaのプログラムでは、重要なストラテジックアドバンテージ(戦略的優位)を提供することで、資金援助を受けたスタートアップの日本進出を支援しています。

1)パートナー企業

さくらインターネット株式会社、株式会社JR西日本イノベーションズ、株式会社電通、日本たばこ産業株式会社、阪急電鉄株式会社(業務代行者:阪急阪神不動産株式会社)、株式会社三井住友銀行、株式会社読売新聞大阪本社の大企業7社が我々のパートナー企業です。これらの企業はスタートアップとの実証実験やパイロットプロジェクトを実施するためにプログラムに参加しています。これによってスタートアップが国内で顧客を獲得することが可能になります。

2)専門家によるビジネス開発サポート

チーム内にシニアビジネスデベロップメントの専門家がおり、スタートアップと提携して日本でのビジネス開発を支援しています。このサポートは非常に実践的であり、スタートアップが日本でできるだけ早く市場シェアを獲得することを目的としています。

3)ワークショップやメンタリング

日本を拠点としている70人以上の起業家や専門家のノウハウとネットワークを提供するワークショップやメンタリングプログラムがあり、プログラム中に各スタートアップが様々な日本固有の課題に直面した際に、各々に合わせた解決方法をチームで考案します。

4)大学との連携

一流の地元大学と連携し、スタートアップが日本でのチームを立ち上げる際に、学生や卒業生とつながることのできる機会を提供します。

5)ネットワーキングの提供

グローバルRainmaking InnovationとStartupbootcampのネットワークを用い、多くのノウハウやネットワーキングを提供してスタートアップをサポートします。

6)コワーキングスペース

12週間のプログラムの期間中、スタートアップはGVH#5で無料のコワーキングスペースを利用できます。GVH#5は、梅田駅から数分の大阪中心部にあるスタートアップコワーキングスペースです。

7)チームスタッフ

大阪にあるStartupbootcamp Scale Osakaチームはフルタイムで働き、スタートアップが上記のすべてに最適にアクセスできるよう支援します。

5 日本にいながら海外のスタートアップとの連携の重要性

筆者は、国内の大企業と国内のスタートアップ企業の連携によるオープンイノベーションも重要だが、海外から日本に進出したいレイターステージのスタートアップ企業と国内の企業が連携することにより、世界のイノベーティブなサービスやプロダクトの日本での成長をサポートすることも、新しい価値を生み出し、日本および世界の経済の発展に繋がると確信しています。

ぜひ、そのような目線を持って、グローバルに成長するための新しい方法として海外のスタートアップ起業にも注目して欲しいと思います。

皆さん、最後まで読んでくださり、愛りがとうございます(愛+ありがとう)。森若幸次郎ことジョンがお届けいたしました。

●Startupbootcamp Scale Osaka のサイト
https://www.startupbootcamp.org/accelerator/scale-osaka-jp/

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年11月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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やさしく知りたい! 組織内再編でグループ体制をどう変える?

こんにちは、弁護士の松下翔と申します。

会社を設立して間もない頃は、売上や利益を確保し、事業を軌道に乗せるために注力することになりますが、事業がうまく軌道に乗り始めると、会社の組織固めや組織作り、グループ体制の拡大・構築を考えなければいけない段階がやってきます。

つまり、他社と連携してシナジー効果により更なる成長を見込むためにM&A(Mergers and Acquisitions)を検討すべきか、新規事業を始めるために他社に出資するなどして資本提携を考える必要がないか、などです。

そこで、このシリーズでは、会社が成長する過程で知っておきたいグループ体制構築のために必要な、会社間の関係性に関する基礎知識を紹介します。第1回は組織内再編、第2回はM&A、第3回は事業出資を扱う予定です。

1 グループ会社とは

会社の成長過程において、さまざまな理由から会社の事業を1つの会社で行わずに、いくつかのグループ会社に事業を分散して行っていくことがあります。この理由は、税務上のメリットがあるほか、推進している事業の経営判断を早めて業務を迅速に執行する、第三者と資本提携して事業を行っていくため、リスクの高い新規事業を本業になるべく影響を与えない形で進めていくためなど、さまざまです。

そして、グループ会社に事業を分散する理由によって、その会社に対してどの程度の影響力(支配力)を及ぼしていくのがよいかの判断が変わってきます。本稿では、グループ会社として、法律や企業会計基準で定められていて、特に重要である完全子会社、連結子会社、非連結子会社、関連会社を取り上げます。

まず、これらの会社がどのようなものであるかを説明します。

なお、グループ会社という用語は、法律上定義はなく、一般的には会社間に直接または間接的に資本関係がある企業を指します。この点に関して次の記事が会社の関係性を整理する一助になりますので、ご確認ください。

会社の種類と定義を解説した画像です

会社の種類と定義を解説した画像です

これらのグループ会社が組織内再編においてどのように利用されているのか確認していきましょう。

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2 グループ体制の構築~組織内再編において

組織内再編とは、企業価値を向上させるために会社の組織内部におけるグループ体制を再構築することをいいます。そのために、事業のポートフォリオを再構築したり、事業の一部を分社化して業務執行の意思決定を迅速化したり、持株会社化によるガバナンスを強化したりします。

組織内再編は会社の業務最適化が大きな目的であるため、以下のような場合に行われることが多いといえます。

  • 親会社事業を分離して子会社化する(スピンオフといわれます)場合(=会社の「事業」を別会社とする場合)
  • 例えば、商品販売部門が売上・利益の拡充に、商品製造部門が製品の改良や新製品の開発に注力するための会社を設立したり、重複作業を最小限に抑えるために管理部門を包括的に行う会社を設立したりする場合(=会社の「業務」を別会社とする場合)

では、これらの場合にどういった会社間のつながりとしていけばよいのかを説明します。

1)「事業」を別会社とする場合

A.会社間のつながり

親会社の経営方針に従って事業を行っていくべきではあるものの、一つ一つの事業執行の意思決定を全て親会社に委ねると、スピード感を持って対応していくことが難しい場合があります。そのため、親会社の「事業」を分離して子会社化する場合があります。

この場合、親会社としては、きちんと子会社の経営をハンドリングできる体制にしておく必要があるため、子会社をできる限り影響力を及ぼすことができる形にしておくことになります。このような理由から、上記の場合には子会社を「完全子会社」にすることが多いといえるでしょう。

ただ、最近は、事業を分離化するにあたって、親会社からの意向が反映される状況を維持しながらも、新しい視点・戦略で当該事業を拡大させるために、代表者個人や他の会社からの出資を受け入れたりすることもあります。その場合には、当該子会社を「連結子会社」にすることもあるでしょう。

このように、会社にとって重要な事業を分社化する限りは、親会社の影響が十分に及ぶ状況で子会社化をする必要がありますので、「完全子会社」もしくは「連結子会社」という形が利用されます。

なお、一部の事業だけでなく、会社の事業を全て別々の会社にして、責任の所在を明確化し、会社内部における事業間の競争力の強化を図るという方法をとっている会社も多くみられます(いわゆる「カンパニー制」)。

B.子会社化する際の方法

子会社(完全子会社を前提とします。)化をする際の方法については、いくつか考えられますが、以下のいずれかによる場合が多いでしょう。

  • 既存の会社に「会社分割(吸収分割)」または「事業譲渡」によって事業を移管する
  • 新設の会社に「会社分割(新設分割)」によって事業を移管する

なお、承継される純資産額が軽微である小規模な組織再編については、簡易組織再編という会社法上の手続きを採用することで株主総会決議を省略できる場合がありますので、かかる手続きを取ることができるかを検討する必要があります。

また、税務上、適格組織再編成の要件を満たせば、課税繰延べが可能になりますので、この点についても留意する必要があります。

2)業務分野ごとに別会社とする場合

A.会社間のつながり

いくつかの事業を複合的に行うようになると、事業ごとに管理部門や販売・調達部門の担当者を設置して、生産・製造から販売部門までをワンストップで行う方法を採用する場合があります。

しかし、この方法は、同様のスキルを持つ人材を事業ごとに配置する必要が生じますので、人材不足であることが多い成長途上の会社において、限りある人材のリソースをより適切に配置するためには適切な方策とはいえない場合があります。

そこで、業務を効率的に行っていくために、業務分野に特化した会社を設立する(例:製品の開発だけを行う会社、製造された自社製品の販売・マーケティングだけを行う会社等)ことがあります。これにより、業務の効率性を高めることができると共に、業務における責任の所在を明確化することができ、親会社としては業務の包括管理を行うことができるようになるといえます。

このような組織内再編において利用される子会社の形は、かかる組織再編が親会社の業務を切り出すという側面が強いため、親会社と一体の会社としておく必要がありますので、「完全子会社」にすることがほとんどです。

なお、業務分野を切り出して別会社とする場合においては、当該業務によっては、勤務形態や給与体系等の労働条件を変更することが望ましい場合も少なからず存在します。そのため、労働条件を変更する手続きが必要になる場合もあるでしょう。具体的な方法は本稿では割愛しますが、従業員から個別の同意を得たり、就業規則を変更したりするといったいくつかの方法から検討することになります。

B.子会社化する際の方法

なお、子会社(完全子会社を前提とします)化をする際の方法については、上記「1)『事業』を別会社とする場合」と同一になります。

以上の通り、組織内再編においては、会社がもともと行っている事業・業務を別会社で行うために実施される場合がほとんどですので、会社間の関係は、親会社と完全子会社もしくは連結子会社となる場合がほぼ全てといえます。

一方、次回取り上げる予定の「M&A」や「事業出資」においては、会社の資本政策や長期的な経営計画等によって会社間の関係は、会社によって大きく変わってくるといえます。

そのため、戦略的に持分法の適用を受けない形で出資をするといった方法も出てきます。次回はこのようなことも含めて、M&Aについて説明をしていく予定です。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年11月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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第7回 株式会社エニタイムズ(Anytimes Inc.) 代表取締役 角田千佳氏/森若幸次郎(John KojiroMoriwaka)氏によるイノベーションフィロソフィー

かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく、失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し、「イノベーション哲学」を体系化し、皆さまのお役に立ちたいと思います。

第7回に登場していただきましたのは、「新しいご近所お手伝いコミュニティ」であるANYTIMES(エニタイムズ)を展開しておられる株式会社エニタイムズの代表取締役、角田千佳氏(以下インタビューでは「角田」)です。

1 「弊社のCtoCのアプリに、『場所の概念』を加えた新しい事業ができるのではないかということで、まずは美容系のスキルに絞った『シェアサロン』の事業を始めることになりました」(角田)

John

早いもので、この対談企画も第7回です。毎回、素晴らしい方をお迎えしておりますが、今回は、株式会社エニタイムズの角田さんにお越しいただきました!

角田さん、本日はお忙しいところ、本当に愛りがとう(愛+ありがとう)ございます! 楽しみにしておりました!

角田さんは現在、イタリアと日本の2拠点を中心に生活されているんですか?

角田

2年ほど前にイタリアの方と結婚し、イタリアと日本の2拠点生活をしています。夫は場所や時間にとらわれない多岐にわたる仕事をしております。私自身も、今後さらに、固定観念や社会の枠にとらわれない働き方をしたいと思っています。これは、まさにエニタイムズという事業で実現しようとしていることでもあります。

John

角田さんはユニークなキャリアをお持ちですね。慶應大学を卒業された後、野村証券、サイバーエージェントを経て、エニタイムズを起業されました。 今、仕事の面で新しくチャレンジしていることはありますか?

角田

はい。あります。少しご説明させていただきますね。

エニタイムズというサービスは、CtoCで、対面のスキルのシェアリングエコノミーサービスなのですが、やはり課題があります。例えば、知らない人とアプリで出会い、家の掃除を頼んだり子供を預けたり、それからペットを預けたりするのは、結構ハードルが高いですよね。そうした課題がある中で、ポイントになるのは「信頼」と「場所」ではないかと考えています。日本人は「場所」に信頼を置く国民性があり、場所があることで安心につながり、その場所の雰囲気にもかなり影響されます。

であれば、弊社のCtoCのアプリに、「場所の概念」を加えた新しい事業ができるのではないかということで、まずは美容系のスキルに絞った「シェアサロン」の事業を始めることになりました。

John

サロンでは、どのようなターゲットにサービスを提供されるのですか?

角田

お客さま側のターゲットは、特に働いている女性です。カテゴリーとしては、ネイルやまつ毛エクステ、ヘアカット、整体の他、ヨガやバレエなどです。そうしたさまざまな美容系のカテゴリーのサービスが、1つの大きなスペースにギュッと集まっているサロンです。「髪切りたいなぁ」「ネイルしたいなぁ」という人からしてみると、1つの場で全てのサービスを一度に受けられるのです。

例えば、私はバレエが好きで、多いときは週5日レッスンに行きます(笑)。そうしたときに、1つの場所で、バレエのレッスンやネイルの施術、ヘアカット、まつ毛エクステなどを受けることができて、しかも仕事の執務スペースもありますので、仕事もできます。こうした場所は、やはり便利ですよね。

また、施術者(プロ)側、にフォーカスしているのも特徴です。美容関連の仕事をしている方は、低賃金・長時間労働だったりするケースも多いと思います。そして、独立しようとしてもなかなかハードルが高く、人気の青山エリアなどに出店しようとすれば、かなりの家賃です。最初のうちは借入も難しいです。そうなると、独立を諦め、結局はどこかの店舗に所属して、低賃金で、長時間労働せざるを得ないという状況が、一部にはあるようです。

今回のサロンは、そういった美容関連のプロの方々が、費用を抑えて独立(初期にかかる費用は0)して、自分らしい仕事を実現/挑戦できる場所、そして、コミュニティにもなります。さまざまなカテゴリーがありますので、例えばネイリストさんが、「このヨガの先生いいよ」とお客さまに教えてあげたりというように、お互いにお客さまを紹介し合うこともできます。1つのカテゴリーの方々のみが集まっていると競合してしまいますが、さまざまなカテゴリーがあるからこそ、実現できることだと考えています。

●複合型シェアサロン「Qnoir」が青山にオープン(10/1リリース)
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000048919.html

2 「私は『こういう父みたいな働き方ができたらいいな』と思っていました。もしかしたら、そういう意味では、気付かないうちに影響を受けていたかもしれません」(角田)

John

角田さんは、子供のころから起業を目指されていたのでしょうか?

角田

全くそうではありません。起業することを考えるようになったのは、実は、起業する1カ月前のことでした。

John

そうだったのですね。お父さまはどのような仕事をされているのでしょうか?

角田

父は30歳くらいのころに仲間と起業して、今もその仕事を続けています。スポーツ関係です。トレーニング機器や設備などの輸入販売の仕事です。

John

やはりお父さまが起業されていましたか! 私がこれまでお会いした起業家の方々も、ご家族に起業家の方が多く、交渉や経営の仕方、人脈の築き方などをDNAとして受け継いでいるようでした。

ご両親は、角田さんが起業されたことに対してどのような反応でしたか?

角田

父は結構苦労したようで、私が起業したことに対して、最初はかなり心配していました。

John

お父さまは、東京で起業されたのですか?

角田

東京です。かなり大変だったという話は、後になって聞きました。私からしてみると、父はずっとスポーツが好きで、自分の好きなことを仕事にしていて、とても楽しそうに働いているというふうに見えていました。仕事だけでなく、休日には必ず家族で旅行に出かけたり、長期間の旅行に行ったりもしていました。私はそうした父の姿を見て、自由に働いていて、しかも自分の好きなことを仕事にしていて、本当に「いいな」と思って育ったのです。

私も弟もスポーツをやっていましたので、いろいろな相談にも乗ってくれましたし。そうしたこともあって、私は「こういう父みたいな働き方ができたらいいな」と思っていました。もしかしたら、そういう意味では、気付かないうちに影響を受けていたかもしれません。

John

素晴らしいことですね。お父さまはきっと喜んでくださいますね!

角田

ありがとうございます。そういうことを、父にはあまり言っていないですけど(笑)。

John

お母さまはどのような方ですか?

角田

母は数学科出身で、もともとプログラマーでした。とある銀行のATMのプログラミングのチームの一員でした。ただ、まだ企業で働いていた父の転勤に合わせて、すぐに結婚退職したと聞いています。


母は、やはり仕事をしたいという思いがあったのか、私が小学生になったころに、数学の教員免許もあるので、近所の子供や私たちの友人から勉強を教えてほしいという声がかかりました。それで家で学習塾を開いたのです。ほぼボランティアに近い、地域の学習塾です。

John

なるほど。もしかすると、家事代行など「自分の持っているスキルをシェアする」という発想は、子供のころに見たお母さまの持っている能力が誰かの役に立っている姿が潜在意識にあったのかもしれませんね。お母さまは今、角田さんの頑張っている姿を見て、どのようにおっしゃっていますか?

角田

父よりも母と仕事の話をよくします。いちエニタイムズの依頼者ユーザーとしても頻繁に使ってくれて、母世代の目線からのフィードバックをくれたり、常に、「何か私に協力できることがないか」と楽しみながら協力してくれています。創業当初は、弊社のパンフレットをご近所の方に配ったりして、手伝ってくれてもいましたね。

John

素晴らしいお話ですね。

3 「(小学生のころに)誰かの役に立つような仕事ができたらいいなと思いました」(角田)

John

角田さんは国連の国際公務員になりたかったそうですが、それはなぜでしょうか。

角田

きっかけは小学生のころで、本やニュースを通じてそうした職業があることを知りました。当時、国連難民高等弁務官をされていて、難民の支援などをされていた緒方貞子さんに感銘を受けたのです。緒方さんは世界でご活躍されていて、難民の支援をされているのを知って興味を持ちました。緒方さんはとても強い方で、そして現場主義の方です。国連というある意味で官僚的な組織の中で、それを壊し、それこそイノベーションを起こしました。自分の信念に従った意思決定をしたり、実際にとても危険な内戦をしている地域に足を運んで直接現地の人たちと話をしたり、そうした緒方さんの行動力にも感銘を受けました。
(緒方貞子さんは2019年10月22日にお亡くなりになりました。ご冥福を心よりお祈りいたします)

John

そうしたことを小学生のときに知って、角田さんはどのように思われたのですか?

角田

まず、歴史の授業などで確かに戦争について勉強していて、もう終わったものだと思っていましたが、まだ今この時間にも戦争が続いているところがあるということが衝撃でした。人類はこれだけ何度もさまざまな戦争をして、反省をして、平和が大切だと言っていますが、それでもいまだにどこかで戦争が起きている。そのことに、ショックを受けました。

そして、日本では今は戦争がありませんが、自分と同じ日本人女性が内戦などの現地に行って難民支援をしているということも衝撃だったのです。内戦や紛争をすぐに終わらせることはできないかもしれませんが、そこで、被害に遭った難民の支援をしているということに感銘を受けました。そうした誰かの役に立つような仕事ができたらいいなと思いました。

John

それは小学校何年生のころですか?

角田

小学校4年生か5年生ぐらいです。

John

かなりしっかりと自分の考えを持っている小学生だったのですね。

4 「やはり私にとってはチャレンジしないことがリスクで、せっかくやりたいと思ったことやアイデアがあるのであれば、それをやらなかった後悔のほうが大きいだろうと思っていました」(角田)

John

角田さんは起業されて、何年目ですか?

角田

今年(2019年)の5月で7年目です。

John

もう7年も経つのですね。素晴らしいです! 起業するに当たって、不安はありませんでしたか?

角田

むしろ、始めないほうが不安でした。要は、「何がリスクか」ということではないでしょうか。これはいろいろな方も言っていますが、やはり私にとってはチャレンジしないことがリスクで、せっかくやりたいと思ったことやアイデアがあるのであれば、それをやらなかった後悔のほうが大きいだろうと思っていました。

John

そうですよね。多くの人は「リスク」と言いますが、何をリスクと言っているのでしょうね?

角田

分からないですよね。例えば、よく、「大企業、一部上場企業の正社員になることが、リスクが少ない」という声を聞きますが、もしその大企業に何かあったときには、自分自身の力だけではどうにもできないですよね。むしろ、私はそのほうが怖いです。自分自身でどうにもできないことが怖いと感じます。

それに加えて、自分自身にスキルがないと、それはリスクだと思いましたので、起業しました。

John

どのようなタイミングで起業されたのでしょうか? CtoCという言葉は、そのときからありました?

角田

いえ、全くありませんでした。それどころか、スタートアップという言葉さえ知らなかったぐらいです。「こういう仕組みがあったら便利なのではないか」と思い、それで(エニタイムズというサービスを)つくりたいと思ったのです。

大学を卒業して、就職し、一人暮らしを始めたころ、私は地域のつながりの希薄化というのを感じていました。同時に、働き方に関する疑問も感じていました。大学生のときに思い描いていたのと、大学卒業後に大企業で働いたときの働き方と、大きくギャップがあったのです。

John

どのようなギャップがあったのでしょうか?

角田

自分がいた会社に限ったことではなく、世の中の社会人を見ると、仕事に本当に苦しんでいる人があまりにも多かったのです。もちろん人によるとは思いますが、「仕事に対してネガティブな感情を持っている人がたくさんいる」というのが目につきました。

John

どのようなことに対してネガティブなのでしょうか?

角田

会社そのものに対してもそうですし、自分の上司や同僚に対して、とてもフラストレーションを溜めていました。仕事が終わってお酒を飲みに行くと、周囲の人たちが話している内容が耳に入ってきますよね。そういうときに、仕事や職場の文句、悪口を話している人がすごく多かったのです。

それがとてもショックでした。社会人全般的にそういう人が多いように感じたのです。学生時代はそうしたことに全く気付いていませんでした。私は特に、父を見ていましたので、そこで初めて「父は他の社会人の方と結構違う」と思ったのです。働き方も、父は他の方と違うというのに気付きました。それほどまでに文句や悪口を言うのであれば、それを会社や上司に伝えたり、仕事を変えることはできないのか?と思いました。

John

よく分かります。私も、例えばお店で接客してくださる方の表情などを見たときに「仕事が楽しくないのだな」と感じることがあります。一体、なぜなのだろうかと。

角田

働き方に加えて、接客の仕事の内容自体にも問題があるのかもしれませんね。

John

仕事が楽しくなさそうな人たちを見ると、寂しく感じます。角田さんも同じではないでしょうか。

角田

そうです。驚きました。本当に悲しくなりましたし、「どうして自分で自分を苦しめているのだろうか?」というふうに思いました。


誰にも「転職してはいけない」とは言われていませんし、しかも転職先がないわけでもない。転職先はあると思います。ですので、それほど不満があって苦しいのなら、転職してもいいのではないでしょうか。しかし、皆、それをしない。一体、何に皆はそれほど縛られているのだろうと思いました。(縛っているのは)考え方や固定観念、社会の枠なのかもしれません。学生時代には見えていなかった社会の枠や知らなかった社会のルールのようなものを知りました。例えば、「転職をするのはネガティブだ」「上司が間違えていると思っても指摘できない」といったことです。

John

皆が何かストッパーを掛けられているのが、怖いですよね。そこで、角田さんは違和感を覚えてサイバーエージェントの子会社の立ち上げ期に加わったわけですね。どのような職種だったのでしょうか?

角田

PRです。どちらかというとWeb PRですが、当時Web PRは確立されていませんでしたので、手探りでその子会社をつくった社長がいたのです。その方は学生時代にインターンでお世話になった方です。ほぼPRの経験のないメンバーでしたので、私も入って驚きました(笑)。野村証券という大企業の場合、正攻法みたいなものが決まっていて、自分が取り組む範囲も詳細に決まっていたのですが、Web PRの仕事は、内容が確立されていなかったこともあり、さまざまなことをやらせてもらうことができました。

John

エンジニアはいたのですか?

角田

一人もいませんでした。PRの経験がある人もいませんので、手探りでつくっていくので、一人ひとりが個人事業主のような感じでした。私としては、ゼロから1をつくる仕事をしたかったので、とてもやりがいがありました。しかも、皆、楽しんでゼロから1をつくっていました。社長も含めて、まだ正社員が3、4人だったのですが、一人ひとりが独立していました。当時は、社長が33歳くらいで、若い会社でしたね。

角田氏と森若氏の対談の画像です

5 「『変化をしに行く』という思いの上で、事業に取り組む決断をしたのです」(角田)

John

それで、そのPR会社はどこまで成長したのでしょうか?

角田

現在の具体的な数字は存じ上げないのですが、恐らく(社員が)30人ぐらいに増えて、とてもうまく行っているみたいですね。

John

そこで何を一番学びましたか?

角田

やはり、「自由な発想」というのをとても学んだと思います。ゼロから1をつくるのには、自由な発想が必要じゃないですか。ただ、そのときに、逆に「自由って何だろう」ということにもぶつかりました。何か枠があってその中で考えるのであれば、それまでも経験がありました。しかも、細かいルールに従って決められた仕事のみをすることを3年間トレーニングされていましたので、(枠がなくなると)どこからどこまでを考えていいか分からない。何をしていいか分からない。そうした状態になってしまったのです。

しかし、私はもともと、自由に考えたいタイプでしたので、割とそこは柔軟に順応することができました。それで、自由に考えることができるようになったのです。それでも自由な発想というのは難しいですよね。PR自体も初めてで、しかも世の中にもWeb PRの事例もほとんどなかった時代でした。

また、私は多くの失敗を重ねましたが、それを経験にしてまたチャレンジできる、そういった会社でした。とても感謝しております。

John

何をPRしていたのでしょうか?

角田

一般家庭に並ぶ食品からファッション、化粧品、レストラン、車など、ありとあらゆる分野の商品がありました。プレスリリースやメディアプロモートだけでなく、今でいうインフルエンサーマーケティングも行っていました。そして、当時は飛び込み営業もプランニングも、制作も、もうとにかく考えつくことは全部やりました。

John

角田さんは、当時、どのように飛び込み営業をされたのですか?

角田

私は広告代理店の担当でした。一度仕事が始まって、良い結果を出していくと、入館カードをいただけるようになりますので、まずは机を1つずつ回って。本当に飛び込み営業ですよね。「こんにちは」「お仕事中、失礼します」と言って回りました(笑)。もちろん、「忙しいので」と言われることがほとんどでしたが、資料を見せながらPRをしていきました。

John

「この資料で飛び込み営業をしてうまくいった!」というような事例などはありますか?

角田

資料はあまり関係なかったかもしれません。正直、広告代理店の方が、PR1年目の私よりもPRに詳しいこと、経験豊富なことが多かったのです。ですので、逆に、教えていただくことも多くありました。

ただ、そのPR会社でしかできないことも幾つかありました。ですから、逆にその点を相談していただいて、そこから学んで、そのニーズに合わせてプランや資料をつくったりしていました。ヒアリングさせていただいて、それに合わせたものをつくっていくことのほうが多かったですね。それが後々のエニタイムズという会社の名前にもつながっていくことになります。

John

どういうふうにつながっていったのでしょうか?

角田

エニタイムズの会社の名前は、進化論のダーウィンの言葉からきています。「最も強い者が生き残るのではなく、 最も賢い者が生き延びるのでもない。 唯一生き残るのは、変化できる者である」という言葉があると思うのですが、その通りで、やはり変化は大事だと思います。

大学から野村証券へ、野村証券からサイバーエージェントへと、それぞれ大きな変化がありましたし、サイバーエージェントで自由にやらせてもらう中でも、かなり自分自身が変化していかなければ、生きていけないのだと分かりました。そうした経験から、変化というものの重要性を、身をもって学んだのです。

起業して自分でやっていくのであれば、世の中の流れはとても速いですし、特にインターネットの流れは速いものです。とにかく、そうした速い流れに合わせて変化していくことが大事です。今回始めることになったシェアサロンの事業も、「変化をしに行く」という思いの上で、事業に取り組む決断をしたのです。

John

角田さん、素晴らしいですね!!

スタートアップブームが来る前に起業された角田さんですが、大学時代は法学部でしたよね。私も文系なのですが、自分自身がエンジニアになったり、プログラミング言語が分かったり、マシーンを直せないと良い経営者にはなれないのではないかと、昔は不安でした。角田さんの中で、そのような不安はありましたか?

角田

恥ずかしながら、それ以前のところでした。もしかしたら、今ですと、自分がエンジニアでなければスタートアップを経営するのは難しいのかな、と思うのかもしれませんが、そういうことさえも知らなかったのです。しかも、エンジニアを採用しなければならないということも分かっていませんでした。難しいウェブサイトじゃないですし、大丈夫かなと思っていたのです。事業計画書だけは立派にできていましたので。

実は私、サイバーエージェント出身と言いながら、エンジニアという職種の方と話したことさえもなかったですし、お会いしたこともありませんでした。当時は、エンジニアとデザイナーがどこからどこまでの仕事をするのかさえ、分かっていませんでした。例えば、デザイナーにしても、当時は紙のデザイナーもウェブのデザイナーも同じデザイナーだと思っていました。ですので、最初のウェブサイトのデザインを紙のデザイナーにお願いしてしまったり。そのデザインを、プログラマーに見せたら、「これはできない」と言われました(笑)。それくらい、本当に何も分かっていない状態でした。

また、初めてウェブサイトをつくらなければならない、どれくらいの金額でつくれるのか聞きに行こうということで、「システム開発会社」と検索して、上位に出てきた東京にある企業数社に聞くといった感じでした(笑)。大体いつも、グーグル検索さんに助けられていますね。

そうして見つけた企業に訪問して見積もり依頼をすると、「このサイトは1年はかかる」と。思っていた以上に時間がかかる上に、金額も想定をはるかに超えた回答でした。

さらに、そもそも打ち合わせで使われている言葉も分からないことだらけでした。そのとき一緒に起業した友人がいるのですが、その友人も金融出身で全く経験がなかったので、2人とも、毎日新しい言葉を学んでいくという状況でした。プログラミングの言語があることもそこで初めて知りました。

グーグル検索で、「ワイヤーフレーム」を調べたことも覚えています。打ち合わせのときに、「ワイヤーフレームください」と言われて、「ワイヤーフレーム」という言葉も知らなかったので、調べたのです。それも一番上に出てきたサービスが「無料でワイヤーフレームがつくれる」と書いてありましたので、そのサービスでワイヤーフレームをつくりました。そのときのワイヤーフレームが今でも残っており、現在のサービスの根幹となっています。

6 「この何もない、しかも、資金もショートしそうな会社に、なぜこのvaluationがつくのか、その根拠となるロジックも分からなく、少々困惑しました」(角田)

John

起業されて、システム会社を選ぶときは、どうされたのでしょうか?

角田

結局、システム会社さんには頼みませんでした。そもそも自分たちがクラウドソーシングのようなサービスをやろうとしていたので、クラウドソーシングやフリーランスの方に頼もうと決めました。そして、1人のフリーランスの方に頼むことに決めました。その方は、紹介の紹介の紹介のような感じで、もう一人の共同創業者が、見つけてきてくれました。ここで最初の大失敗、サイトが完成しないということが起こります。

John

予定通りに進まないと、資金繰りが……と思いますよね。調達しなければ、と。一体、どうされたのですか。

角田

エニタイムズというサービスをつくるのにも時間はかかりますので、実は、もう一つ、同時に会社を立ち上げていて、PR関係などの仕事をたまに受けたりしていました。その他にも、地域活性化、商店街の活性化に興味がありましたので、その関係の取り組みもしていました。私の実家は久我山なのですが、久我山の商店街をもっと盛り上げるようなサービスができないかと思い、アプリをつくり始めたりもしていました。結果的に、その後、良いアプリができたのですが、最初の資金調達のタイミングでそれは全部リリース前に閉じることになりました。

エニタイムズのウェブサイトの最初のリリース時は、プレスリリースだけ出していました。プレスリリースを書いて、さまざまなメディアに送り、ビジネスモデルが面白いと興味を持ってくださったメディアから取材の話をいただいたりしていました。

John

当時からプレスリリースに「シェアリングエコノミー」と書かれていたのですか?

角田

書いていません。そのときは、「生活密着型クラウドソーシングサービス」と言っていました。なぜかといいますと、そのとき、シェアリングエコノミーと検索しても何も出てこなかったのです。誰も分からないという状態でした。そこで、一番近かった言葉がクラウドソーシングだったのです。ですので、「生活密着型クラウドソーシングサービス」ということであれば、見てくれるのではないかと思いました。

John

ちょうどクラウドワークスやフリーなどがリリースされていて、分かる人は分かるという状況でしたよね。

角田

そうですね。そう思ってプレスリリースを出して、それであればメディアも興味を持ってくれるかと思っていました。そうしたら、ある1社が興味を持ってくださったのです。それで、取材記事を出していただきました。

John

なるほど。PR会社の経験が生きているお話ですね。

角田

リリースを出すかどうかはかなり迷いました。ウェブサイトに改良の余地がありましたので、この状態で出していいのかと(笑)。それで、実はリリースはしているのに友人にはあまり話さない、というような感じでした(笑)。恥ずかしかったのです。

John

そうだったのですか。資金調達は、そのときが初めてですよね? どのような経緯でしたか?

角田

最初は、弊社にお問い合わせをいただきました。

valuationの具体的な数字も書いてありましたので、驚きました。その「中途半端な状態」でウェブサイトをリリースしたのが2013年の10月で、投資の話をいただいたのが12月でしたので、とにかく驚きました。この何もない、しかも、資金もショートしそうな会社に、なぜこのvaluationがつくのか、その根拠となるロジックも分からなく、少々困惑しました。

John

いろいろと分からない状態で、決断を行わなければならなかったのですね。どのようにして、値付けが合っているのかを確認したのですか? 心の中では不安でも、「分からない」とは言えませんよね。

角田

分からなかったのでグーグルで調べました(笑)。分かる友人も知り合いも、当時は周りに全くいなかったのです。私も、そもそもスタートアップとは、というようなところから勉強を初めました。

そしてどう考えてもこのvaluationでは、今、少し生き延びたとしても、厳しいと考えました。しかも、不安定なウェブサイトの状況ですし。会社としても、共同創業者の役員がアメリカに引っ越して会社員をしている状態で、それを「何をしているのですか?」と指摘されているような状態で(笑)。

それで「3カ月待ってください」という話をして、その3カ月で一気にウェブサイトを改善して、valuationをあげて資金調達をしようと考えたのです。3カ月経った段階で、もう一度交渉させてくださいませんかという話をさせてもらいました。

John

ウェブサイトを改修するエンジニアはどのように確保したのでしょうか?

角田

クラウドソーシングのとあるサービスを使って探しました。

John

支払いはどうされたのですか?

角田

エニタイムズの資本金がまだギリギリ残っていましたので、そこから支払いはできました。なので、本当にショートする直前で、3カ月だけと決めていました。

John

そして、プロダクトがよくなり、3カ月後に調達も無事に行えたのですね。

角田

はい。できました。

そのベンチャーキャピタルさんには、とてもお世話になっています。今もそのベンチャーキャピタルさんのオフィスの隣にあるラウンジを利用させてもらったり、どんな状況下でも常にご支援いただいています。

7 「うまくいっているときは同じ考え方の人が多いほうが売上は伸びやすいのかもしれませんが、逆に、何かあったときは、多様な考え方があったほうが乗り越えられると思います」(角田)

John

最初は角田さんが、お一人で事業をされていたのですか?

角田

今は社員がいますが、最初はクラウドソーシングや、フリーランスのエンジニアの方の力を借りながらでした。

その後、最初の資金調達をしたころに、1人目の社員が入社しました。また、私の義妹がちょうどその時期に、働き方についていろいろと思うところもあり、サービスにもとても共感してくれて、入社してくれたのです。

John

義妹さんもエンジニアですか?

角田

エンジニアではなく、それ以外の広報、営業、カスタマーサポート、経理、人事など全ての業務を一緒に立ち上げてくれました。

John

今も会社にいらっしゃいますか?

角田

はい。今は育休に入っていまして、もうすぐ復帰する予定です。広報から、営業から、ライティングから、全部ゼロからの立ち上げです。その後、人事、経理などもやってもらう必要が出てきたので、一通りやってもらっています。本当にとても助かっています。

John

いつごろ、最初のエンジニアを採用されたのでしょうか?

角田

最初の資金調達の2年後ぐらいですね。それまでは全部アウトソーシングなどでした。その業務委託をお願いしていた人の中から、正社員としてオファーしたいと思う人が出てきたのです。それで、正社員になってもらいました。そのエンジニアは、今も在職しています。

John

今、外国人の社員の方は、何人ぐらいですか?

角田

外国人メンバーは現在4名いて、中国や、カナダ、フィリピン出身です。

John

素晴らしいですね。どのようにして、外国の方がジョインするようなスタートアップになったのでしょうか?

角田

もともと知り合いだったケースや、紹介などで、加わってもらったというケースもあります。

John

なぜ外国人エンジニアの方が必要なのでしょうか?

角田

外国人ということを意識していたわけではありません。たまたまです。必要としている条件に合う人を採用していったら、外国人メンバーの方が結果的に多くなっていました。

John

「日本人だ、外国人だ」というふうに見ていないのですね。それは素晴らしいことですね。

角田

そうですね。国籍も性別なども関係なく、さまざまな方が入社してくれています。

John

社内の言語は何語ですか?

角田

人や内容によって変わります。日本語の場合も、英語の場合もあります。

John

ビザの発行も手伝ったりしたのでしょうか?

角田

手伝ってあげた人もいれば、もともと持っている人もいましたし、両方ありました。

John

ビザの発行を手伝うということは、一緒にずっとやっていこうという覚悟があるからで、その覚悟を決めるのはすごいことですよね。なぜそこまで思えるのでしょうか? 世の中には、社員が100人いても200人いても外国人を1人も雇っていない企業も多いと思います。

角田

私はもともと、国籍や性別などを気にしません。むしろ、いろいろな考え方やバックグラウンドなどを持っている人がいればいるほど、良い状態だと感じます。

また、うまくいっているときは同じ考え方の人が多いほうが売上は伸びやすいのかもしれませんが、逆に、何かあったときは、多様な考え方があったほうが乗り越えられると思います。

John

素晴らしいですね! 私も講演では、「Diversity of ideas」が大切だと伝えています。

角田

1つのことに集中して同じ環境にいると、良い部分もあるのですが、知らず知らずのうちに、視野がどんどん狭くなってしまうこともあります。実はすぐそばに答えがあるのに、それが見えなくてとても残念な結果になってしまうということもあります。しかし、そういうときに、違う見方を持って視野を広げてくれるメンバーがいてくれるのは、本当に大切なことだと思っています。

弊社ではシステム開発・運用を行っていますので、その資産をつくる人というのはとても大切で、弊社のメンバーはほとんどがエンジニアです。そこに投資をしていくべきだと思っています。

森若氏の対談の画像です

8 「エニタイムズの利用がきっかけになって、実は起業することになったという人も出てきており、そういう“プチ起業”のお手伝いができるといいなと思っています」(角田)

John

エニタイムズのサービスは、誰がお客さまで、誰を幸せにしているサービスなのか、詳しく教えていただけますか?

角田

大きく2パターンあります。1つ目は日常のちょっとした用事を依頼したい人です。もう1つは、空き時間を使って仕事をしたいという人。この2パターンの人がいます。例えば、独立したいと思っても、1人でフリーランスとして働くというのはハードルが高い。副業したいと思っても、どうすればいいのか分からない。そうした人たちでも、エニタイムズのサービスであれば、気軽にチャレンジすることができます。エニタイムズの利用がきっかけになって、実は起業することになったという人も出てきており、そういう“プチ起業”のお手伝いができるといいなと思っています。

John

なるほど。ユーザーの声から何が分かりますか?

角田

本当にさまざまな属性のユーザーさんに使っていただいていますが、副業で使われる方が最近増えてきています。副業としての使い方が、とてもいいと言っていただいています。

John

フィードバックはどのような形で届くのですか?

角田

お問い合わせメールに感想を送ってくださる方もいますし、後は、不定期でユーザーインタビューもしています。その他に、私自身がヘビーユーザーの1人なのです。利用する際は自分の名前を隠して使っていまして、いろいろなユーザーさんとマッチングさせてもらっています。そうすると、生の声がとても聞けるのです。エニタイムズの中の人としてではなく、1ユーザーとして、「このサービスってどうなんですかね」と聞くと、かなり素直に答えてくださいます。

John

いい声もありますが、耳が痛い声もありますよね。心が折れそうになったりしないですか?

角田

そうですね。特に最初のころは、耳が痛い声のほうが圧倒的に多く、特に毎回ウェブサイトが使いにくいと言われていまして……。

John

どのような点が使いにくかったのですか?

角田

根本的すぎる部分なのですが、ウェブサイトが動かないですとか、初めはそうした内容が多かったですね。それに加えて、「どうやってマッチングしたらいいのか分からない」「仕組みがよく分からない」といった声もいただきました。しかし、「コンセプトは好きなので使っている」という声も多く、どうやってこのコンセプトと仕組みをウェブサイトやアプリを通して分かりやすく伝え、実現できるのか、ということを日々考えて改善につなげております。

John

そうだったのですか。そのような声も大切ですね。料金設定はどのような仕組みですか?

角田

ユーザーのマッチングについては、基本的に、2者間で値付けをします。例えば、仕事をしたい人が「3000円で家の掃除をします。交通費込です」というチケットを出していたら、それに対して、依頼者が購入申請をします。そこで、「3000円だと高い」と感じたら、交渉することができます。そうして料金を変更して、マッチングすることができます。

John

チップはないのでしょうか?

角田

チップのような機能を付けたいと思っているのですが、まだ実装はできていません。以前より、「サンキューチップ」という名称まで考えています。

John

アメリカもそうですが、レストランやバーで提供されるような値段が決まっていないサービスがありますよね。提供側が本気でやってくれたら、こちらも後から、きちんと払うじゃないですか。そう考えると、日本にもチップ制があればいいと思います。個性豊かなおもてなしやサービスを提供してくれる人には、チップを渡せるサンキューボタンがあればいいですよね。390円でも、1000円でもいいのですが、お金を手軽に送ることができて、さらにUberのように5段階評価ができれば、もっと多くの人が、マニュアル化されたサービスではなく、ユニークなサービスを提供するようになると思います。

角田

ありがとうございます。そうですよね。今後検討させていただきます。エニタイムズの評価機能は、3段階に加えて、コメントをするようになっていて、必ずその評価をしないと、完了できない仕組みになっています。先ほどお話ししたサンキューチップの機能はまだありませんが、ユーザー同士で工夫して、チップのようなやり取りをされることもあるようです。

例えば、「今回はありがとうございました。今回、たくさんサービスもしてくださいましたので1000円追加でお支払いさせていただきます」というような形で、エニタイムズを通して追加で指名リクエストをしてお支払いをされたりしております。他にも、これが結構多いのですが、お金ではなくて、お菓子を渡しているケースなどがあるようです。チャットの内容などを拝見していると、「お菓子のプレゼント、ありがとうございました」というようなやり取りをされているのを見かけます。

John

ヘビーユーザーが多いサービスは何でしょうか?

角田

掃除です。7割ほどを占めています。最初のころに、いろいろなカテゴリーの中でも家事代行に絞っていたので、現在でも掃除のサービスを利用される方が多くいらっしゃいます。しかも、掃除をお願いされる方はリピートされるので、週に1回来てくださいというように定期的に利用される方も多いです。

John

料金はどのくらいで、どのような方が掃除に行くのですか?

角田

大体2時間で、交通費込みで4000円~5000円ほどですね。掃除に行く方は、50代~60代の女性で、専業主婦だった方が多いです。

John

今、ユーザーは5万人以上いらっしゃいますよね? その方々はどのようなきっかけでサービスを知ったのでしょうか? 

角田

今、6万3000人くらいです。弊社の場合、まだ広告は打っていません。そうすると、口コミか、メディアを見てのどちらかの方法で知っていただくケースが多いです。メディアを見てという場合ですと、圧倒的にテレビをご覧になってという方が多いです。特に、50代~60代の方がテレビを見てというパターンが多く、「テレビを見て登録しました」というヘビーユーザーの方もいらっしゃいます。

エニタイムズが始まって間もないころに登録されたユーザーの中には、以前、家事代行会社で働いていて、フリーでやりたいと思ったので登録したという方もいました。プロフィールにも書いていらっしゃることがあります。

9 「これまでにも、『サービスを絞る』という話は何度も出てきましたが、結局なぜ絞らずに広げてやっているかというと、私たちは、スキルを循環させたいからなのです」(角田)

John

掃除に次いで、どのようなサービスが人気なのですか?

角田

その次は、料理です。

John

美味しい、あるいは口に合わない、というようなこともあるのでしょうか?

角田

あります。そのため、料理は、掃除に比べると利用される方は少ないです。ただ、同じ料理でも、作り置きしてほしいというニーズもあれば、料理を教えてくださいというニーズもあります。教えてくださいというニーズの場合は、口に合わないというふうにはなりにくいですよね。

その他には、家具の組み立てのご依頼が多いです。家具の組み立ては、意外と大変じゃないですか。かといって(家具店の)組み立てサービスを利用すると、結構値段が高いです。もう少しお手ごろな値段で家具の組み立てをお願いしたいと考えるユーザーさんからのニーズがあります。

John

例えば、不動産屋さんに家を探しに行くのって結構手間が掛かると思いますが、代行サービスとして、「家探し」などもありますか?

角田

そういえば、そういうマッチングをされているケースもあったと思います。ただ、かなりレアなケースですね。

他によくあるニーズとしては、英会話も多いです。語学レッスン系は結構多く、私もイタリア語レッスンをエニタイムズでマッチングして、月に3回ぐらいやっています。

John

向こうは驚くのではないですか(笑)。「社長が来た!」と言われるときもありますか?

角田

たまにあります(笑)。一度、偶然知り合いの投資家の方とマッチングしたことがありました。カフェで事業企画の相談をしたいといったご依頼でした。

John

そういうマッチングもできるのですか? エニタイムズは素晴らしいですね!

角田

ありがとうございます。

今、課題になっているのが、新規ユーザーさんがチケットをつくっても、まだ評価がないのでマッチングしいにくいということです。ですので、新規の方の場合は、サービスを利用したい側から「こういうことしてくれませんか?」というリクエストが上がってくる機能があるので、そこに対して応募してもらうといいかなと思っています。その流れですと、新規の方でもマッチングができて、それで評価を貯めて、もともと出しているサービスチケットにも購入申請が入ってくるようになると思います。

John

そこまでできるのですね。全てのC to Cの完全なプラットフォームを目指しているということでしょうか?

角田

そうなりたいですし、そうしたいのですが、まだ課題はあります。今お話したような細かい課題がたくさんあるのと、アプリでマッチングして、実際に人と会うというのは、まだまだ抵抗感があると思います。

John

確かに、まだネットでの出会いに抵抗感がある人もいるでしょうね。

角田

個人の本人確認は、今、任意で行っていますが、その精度を高める取り組みなども考えられると思います。現状は、本人確認書を提出していただいて、それをこちらで確認して、プロフィールと内容が合致していれば本人確認マークを表示しています。しかし、リスクを最大限減らす取り組みは、もっと必要なのではないかと思っています。

John

規制の関係で運転代行は難しいと思いますが、まるでサービス数の多いUberのようですね。

角田

ありがとうございます。ただ、そのために難しいことも多いです。通常は1つに集中するのだと思いますので。

John

サービスを絞らない理由は何でしょうか。現在、何種類くらいのサービスがありますか?

角田

80種類以上あるという状態です。これまでにも、「サービスを絞る」という話は何度も出てきましたが、結局なぜ絞らずに広げてやっているかというと、私たちは、スキルを循環させたいからなのです。


このサービスは、依頼者になることもあれば、仕事を提供する側になることもあります。地域の中でスキルを循環させて、自分が得意なことは提供者側になり、苦手なことは依頼者側になる。ということを実現したいのです。そうすると、さまざまなサービスがマッチングしないと、循環が生まれません。例えば、家事代行に絞っていたら、依頼者側か提供側かの、どちらかにしかならないですよね。しかし、カテゴリーを広げれば、両方になることができて循環が起きるので、地域の中の助け合いに役立つと考えたからです。

John

1回使った後に、エニタイムズ上でやり取りをせずに、ユーザー同士で直接やり取りをする可能性もありますよね。それに対してはどう思われますか?

角田

基本的には、安心安全のため、直接契約を禁止しています。しかし極論を言えば、私たちは、弱い緩やかなつながりをエニタイムズを通じてつくろうと思っていますので、もしエニタイムズの中で信頼関係が生まれて、そこから派生して、強いつながりができれば、むしろそれはそれで私たちの本望です。

もちろん、それだけではビジネス的には問題があります。しかし、例えば、家事代行を頼んだ方に、その後に英語のレッスンを頼むわけではないですよね。英語のレッスンを頼みたいときは、またエニタイムズに戻ってきて、英語の先生を探すというふうになると思います。

John

とても大きな考えですね! 海外のコンペティターといいますか、参考になるC to Cのサービスはありますか?

角田

TaskRabbitなどが近いと思います。ただ少し違うのは、TaskRabbitは、仕事する側のユーザーを全員バックグラウンドチェックやスクリーニングをしている部分です。しかしさまざまな対面サービスのC to Cという形のビジネスなので、そこが近いかなと思います。

10 「今後は、さらに『信頼』をどのように蓄積していくのかという課題について考えていきたいと思います」(角田)

John

これからエニタイムズを、どのように成長させて、どこまでを目指しているのでしょうか?

角田

エニタイムズというサービスは軸であり、それは変わりません。ただし、これだけではなかなか時間もかかっていますし、障壁も高いので、その解決策の仮説の1つとして、今回シェアサロンの事業も始めました。シェアサロンという場所を通じて信頼を培っていきます。今後は、さらに「信頼」をどのように蓄積していくのかという課題について考えていきたいと思います。

John

グループをターゲットにしてはどうでしょうか。グループや友人と使ってもらうなど。

角田

実は今もあります。アカウントは1つですが、友人同士で2人で行くというようなことも、女性の方で結構いらっしゃいます。

John

2人であれば、訪問するときも不安がなくなりますね。2、3回繰り返したら慣れていただけるでしょうね。

エニタイムズのシステム手数料は15%ということですが、それはどのように決めたのでしょうか?

角田

類似サービスの相場は20%程度でした。ただ、現在の子育てや家事代行系になってくると30%以上というサービスも多いです。サービス開始当時はUberなどもまだほとんど認知されていない時期でしたので、クラウドソーシング系のサービスも参考にさせていただきました。そうすると大体15%~30%の間に設定されているところが多かったので、参考にさせていただきました。

John

多言語対応はされていますか?

角田

そうですね、英語はもう対応していて、スマホを英語の設定にしている方は、英語で表示されます。ただ、投稿されている内容に関しては自動翻訳をしていませんので、日本語が多くなります。やはり、日本語が分かる方でないと、現状マッチングは難しいと思います。

John

では、英語ができる日本人や、日本に住んでいる外国人が英語で登録していれば、海外から来た人も活用できるわけですね。

角田

そうですね。たまにそうしたマッチングもありますが、まだ少ないです。

11 「変わることと、『愚公移山』という2つは、矛盾するようでいて、しかし、私は両方とも大切だと思います」(角田)

John

最後の質問になります。人々を幸せにするためにさまざまなスキルを共有していき、世の中にイノベーションを起こしたいという思いで、角田さんはこれまでに新しいチャレンジをたくさんしてきたと思います。角田さんにとっての自分が一番大切にしているイノベーションの哲学とはどのようなことですか?

角田

難しい質問ですが、やはり「変化する」ということが自分の中で、とても大事だと思っています。ただ、この変化することと同時に、一見矛盾するように聞こえるかもしれませんが、もう1つ大切にしていることがあります。それは「愚公移山」(ぐこういざん)です。この言葉は、会社を立ち上げるときに、自分の中で、掲げました。時代に合わせて変化していくことも大事なのと同時に、信念をブラさないということも大事です。何事も、成し遂げようとしたときに、簡単に成し遂げられるものでもないと思っています。

John

「愚公移山」は、大きなことでも根気よく努力し続ければ必ず成功するという意味ですね。難しい言葉ですが、この言葉はどういう経緯で知ったのですか?

角田

共同創業をした親友から、創業時に聞きました。その友人のお母さまが、家に「愚公移山」という書を飾っていたようなのです。そのお母さまも実は起業家です。それで、彼は子供のころから「愚公移山」を言われ続けていたという話を聞きまして、心に響きました。


サイバーエージェント時代、私はゼロから1をつくるということをほんの少しかじっただけですが、それでもとても時間がかかりました。さらに起業時は、自分でビジョンを携えて本当のゼロからスタートしていくということですし、しかもやろうとしていることは世の中に前例がないことでした。シェアリングエコノミーという言葉もないぐらいでしたので、さらに時間はかかるだろうと。


しかし、信念を貫きたいと思っています。やろうとしていることが間違っている、違うと気づいたら変わるべきですが、そうではない限り、一歩ずつ地道に積み重ねていくことが重要だと思っています。変わることと、「愚公移山」という2つは、矛盾するようでいて、しかし、私は両方とも大切だと思います。

John

本当のchallengeってadjustmentですからね。進化し続けながら、チャレンジし続けながら、自分たちも変わりながら、時代と共に一緒に成長していくことが大事です。そうでなければ、ただ努力していても成功しないですし、誰のためにもなりません。本当のシェアリングエコノミーを、ぜひ提供してください!


今日は、スタートアップの経営者の方にヒントになるお話がたくさんあり、とても勉強になりました!


素晴らしいお話をたくさんお聞かせいただき、本当に愛りがとうございます!

角田氏のイノベーション哲学を示した画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年11月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

【弁護士監修】危ない取引先の見分け方

日ごろからスタートアップ支援をされているのぞみ総合法律事務所の3名の弁護士に、創業間もない時期に抱えがちな法務トラブルと、それを避けるための方法や対応についてお話しいただいた内容をまとめたシリーズです。

第3回のテーマは、危ない取引先の見分け方です。

1 弁護士が教える危ない取引先を見分けるポイント

りそなCollaborare事務局(以下「事務局」)

第2回「売掛金の回収や出資者とのトラブルをどう解決するか?」のお話から、やはりお金に関するトラブルも多いことが分かりました。しかし、起業後間もない経営者の場合、危ない取引先かどうかを見分けることが難しいように思います。そのような経営者の方へのアドバイスとして、「ここだけはチェックしておかないとダメ!」といったポイントはありますか?

市毛弁護士

まず、有料ですが信用調査会社が提供する信用情報を確認するのがよいでしょう。ただし、企業によっては信用情報が出てこないことがあります。その場合は、対象企業の登記簿から代表者の住所を確認し、その住所の不動産の登記簿を取ると、自宅不動産を所有しているかどうかが分かります。

代表者の持家の場合は、さらに登記簿上抵当権がついているか否かが分かります。抵当権がついていたら、被担保債権の額(実際には担保権設定時で根抵当等の枠の場合もある)や債権者の名称(金融機関か個人か等)が明らかになります。借入はそれだけではないかもしれませんが、時には競売申立がされていたり、債権回収機関に債権譲渡されていたり等の登記事項から、信用状況が推定できる場合もあります。

清永弁護士

抵当権の話でいうと、抵当権者はつまり債権者ですよね。その債権者が銀行などの金融機関ではなく、見たことも聞いたこともないような先であることもあります。不動産の登記を確認することによって、例えば「信用できない先から2億円を借りていた」ことが明らかになった場合、注意したほうがよいかもしれません。

市毛弁護士

一概にはいえませんが、抵当権者(債権者)として消費者金融などが含まれている場合も、注意が必要かもしれません。金利が高い先から多くのお金を借りているということは、資金繰りがうまくいっていない恐れがあります。

第2回「売掛金の回収や出資者とのトラブルをどう解決するか?」でお話ししたことですが、仮に、取引開始時だけでなく、売掛金が回収できないといった場合も、なるべく早い段階で代表者の不動産は調査すべきです。

取引先が多重債務状態だと判明した場合、公正証書や確定判決等の債務名義があれば他の債権者よりも先に差押に動くのが法的回収の第一歩です。これらの債務名義がない場合には、担保を積んで「仮差押」という選択肢もあります。そうした対応を取るためにも、情報は早く入手したほうが勝ちなのです。なお、破産宣告に至った場合には、差押、仮差押をしたとしても、対象財産は破産財団を構成し管財人の管理下に移りますので、一般債権者は優先弁済を受けられるわけではない点も注意を要します。優先弁済を受けたいのであれば、抵当権等の担保権設定が必要です。

2 もしかして要注意人物!? こんな言動の相手には気をつけよう

事務局

いや~、参考になりますね。相手の“人となり”から、「危ないかも?」と感じることもあります。この辺りはどうですか?

結城弁護士

これまでも少し触れてきた通り、契約書などの内容を固めることで一定のリスクコントロールができますが、そもそも「誰とビジネスをするのか」という、契約に入る前の段階がとても大切です。あらかじめ「この人(企業)は本当に信用できるか」という点を確認する必要がありますが、経営者としての経験が浅い方は、意外にその点を意識していないことが多いと思います。何となく感覚的に「いいな」と思って、「ビジネスを始めちゃいました」というようなことが少なくありません。

そうした状態で弁護士に相談されても、手の打ちようがないこともあるので、とにかく、「相手はちゃんとよく見て選びましょう」ということを、スタートアップの経営者には特にお伝えしたいです。本当に、「ちょっとした紹介」から、相手のことをきちんと調べないまま、勢いよく話を進めた結果、トラブルになるということが少なくないと思います。

市毛弁護士

スタートアップに限ったことではありませんが、経営者としての経験が浅い方、特に、割と年齢が若くて、ビジネスで成功し始めている方を狙って騙そうとする人もいます。例えば、大きな夢を語り、政府関係者や政治家にコネクションがあるということを言って、いろいろな名目で「お金だけを持っていく」という人もいます。こうした人に騙されたという相談が、実は非常に多いです。

清永弁護士

そうですね。話が大きすぎる人は要注意だと思います。スタートアップですから売上は欲しいですし、ビジネスを大きくしたいという思いもよく分かります。しかし、落ち着いて相手を選ぶ、相手を調べて検討するだけの忍耐力というのも必要だと思います。話だけを聞いて、よく調べずに、「それでは、契約を結ばせていただいて……」というのは、本当に危険です。

市毛弁護士

最近相談を受けた例で言うと、○○の権威、ヒット商品の開発実績があるなどと言って近づいてきて、顧問契約を締結し、結果の有無を問わずに多額の費用を支払わされたが、実際は顧問として何もしていなかったというようなケースがありました。

他にも、出資した上で、実質的に会社を支配し、大切な知的財産権や契約上の権利を取られてしまうケースもあります。そういう人が近づいてくる危険性を忘れてはなりません。

清永弁護士

私たち弁護士でも、その相手が悪い人なのかどうか、本当のところは分かりません。ただし、「○○さんとはツーカーの仲で、この間も△△と飲みに行って、あの人はこんな人で……」というように、誰でも知っているような有名人の名前を次から次へと出す人は、引っ掛かるところがあります。本当に親しい友人や知人だったらいいのですが、顔見知り程度で、その関係をひけらかすように話すというのは、裏がある恐れも多いように思います。

結城弁護士

相手の問題だけではなく、こちら側(経営者)が「どうしても売上が欲しい」など何か困っていると、冷静な判断ができなくなったりしますよね。そういうときこそ気をつけなければならないと思います。

清永弁護士

そうですね。それから、先にこちら側がお金を払うような形になっている契約は注意したほうがよいですね。

結城弁護士

あ、そのパターンは結構ありますね。典型的な詐欺師というのは、お金に困っている人からお金を取っていきます。例えば、「お金に困っているのであれば、コンサルティングしますよ」「資金調達をするサポートをするので、最初に動くためのフィーとしてお金を払ってください」などのようにです。困っていたはずなのに、結果的にお金をまた払わされることになります。

そうして払ってしまった後に弁護士のところへ相談に来られても、回収するのは大変です。その前に、「この契約は問題ないのか?」「この人の言っていることは問題ないのか?」と思った段階で弁護士にご相談いただければ、「この取引はやめたほうがいいですよ」などのアドバイスができます。

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3 不安を覚えたときの相談先

清永弁護士

取引しようとする相手に対して、「何かおかしい」「不安だ」と思ったときは、弁護士に限らず経営者仲間やメンター、知人などに相談しましょう。他人の客観的な意見を聴きながら、一度、冷静に考えてみることが重要です。

市毛弁護士

そうですね、第三者に相談するというのは重要です。私たち弁護士も、顧問先のベンチャー企業から「今度、こんなにすごい人、こんなにすごい企業と契約することになりました!」と言われることがあります。弁護士としての経験を通じて引っ掛かる点があったり、顧問先が不安に思っていることがあったりする場合は、「一度会ってみましょうか、場合によっては代理人として交渉しますよ」と提案して、相手と実際に面談し、不審に思う点や、顧問先の不利になる点などがあれば、それを指摘して注意を促す、という関わり方をすることもあります。

もちろん、依頼者との契約内容や相談内容によっても対応できることは異なりますし、弁護士だからといって全ての相手のことを見抜けるわけではありません。ただし、少なくとも、相手の話の内容が矛盾しているなどの点は指摘できます。相手が最初に話していたことと、最後のほうで言っていることのつじつまが合っていないということは、現実には結構あるものです。

また、中小機構(中小企業基盤整備機構)や金融機関の担当者など、スタートアップをサポートしている外部機関のアドバイザーなどに相談されるのもよいと思います。アドバイザーの方々は、たくさんのトラブルケースを見聞していますので、その経験から「その内容ではトラブルになる可能性がある」「○○分野の専門家に相談したほうがいいと思う」など、誰に詳細な相談をしたらよいかということも含めて、相談に乗ってくれるのではないでしょうか。弁護士に相談するのはハードルが高いと思っている方もいるかもしれませんので、まずは、そうした機関にご相談されるのもよいかもしれませんね。

事務局

なるほど、そうした行動は大切ですね。スタートアップの経営者の中には、弁護士に相談するのがベストだと思いつつも、ハードルが高いと感じている人もいるようです。

市毛弁護士

そうした悩みをお持ちの方は、日弁連(日本弁護士連合会)および各地の弁護士会の「ひまわりほっとダイヤル」の利用をお勧めします。これは、電話で弁護士との面談予約ができ、面談時に詳細な相談ができるサービスです。一部の都道府県を除き、初回30分は無料で相談を実施しています。東京都内も、初回30分は無料です。

私の記憶する限りでは、「ひまわりほっとダイヤル」で受けたご相談案件の約75%は無料相談で解決しており、本格的に弁護士が受任する必要がある案件は25%くらいのはずです。ですので、法務について心配事や悩み事があるという場合、まずは気軽に相談していただければと思います。

●ひまわりほっとダイヤル
https://www.nichibenren.or.jp/ja/sme/index.html

事務局

有難うございました。今回も盛り沢山の内容でしたね。読者の皆さんのトラブル回避に少しでもお役立ていただければ幸いです。

次回は、NDA(秘密保持契約書)の注意点についてお伺いします。

以上

(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 市毛由美子、清永敬文、結城大輔)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年11月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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【2019年11月弁護士再監修】消費貸借契約(書面でする消費貸借等)〜民法改正と契約書の見直し(8)

こんにちは、弁護士の當舎修と申します。シリーズ「民法改正と契約書の見直し」の第8回は、消費貸借契約、その中でも特に、民法改正で新たに規定された「書面でする消費貸借」を中心に扱います。

1 現行民法における消費貸借契約

現行民法によれば、消費貸借契約は、1.種類、品質及び数量の同じ物を返還することを約して、2.相手方から金銭その他の物を受け取ることによって、効力が生じるものとされます。

ここで、例えば、A社がB社から1000万円を借り受けることについて、11月1日に契約書(金銭消費貸借契約書)を取り交わし、12月1日にB社からA社に対して1000万円が貸し渡されたとします。

現行民法の規定に従えば、B社からA社に1000万円が貸し渡され、1.と2.の要件がいずれも満たされた12月1日まで消費貸借契約は成立しないこととなります。しかし、このような解釈では不都合が生じる場合があることから、判例上、当事者間で貸し借りの合意が成立した時点(先の例では11月1日に金銭消費貸借契約書が取り交わされた時点)で、実際に金銭等の授受がなくても、有効な契約(諾成的消費貸借契約)が成立したものとして扱われていました。

2 改正民法の概要

1)「書面でする消費貸借」の明文化

前述のような現行民法上の扱いを踏まえて、改正民法では、貸し借りの合意と金銭等の授受がなされた場合(前述1.と2.の双方の要件を満たした場合)に消費貸借契約が成立するという従来の原則を維持しつつも(改正民法第587条)、新たに、「書面でする消費貸借」について、金銭等の引渡しとその返還を合意することにより効力を生ずる旨の定めを設けました(改正民法第587条の2)。

「書面でする」といっても、必ず契約書などを作成しなければならないわけではなく、メール等の電磁的記録による消費貸借も、書面でしたものと見なされます。

一方で、改正民法が特に「書面でする消費貸借」と規定していることからすれば、今後、書面によらない口頭の合意などの場合には消費貸借(諾成的消費貸借)契約の成立が否定されるものと想定されます。また、「借用書」など、貸主の「貸す意思」が書面上に記載されない一方的な書類差入れなどでは、「書面でする消費貸借」と認められない可能性がありますので注意が必要です。

2)目的物授受前の借主による解除等

「書面でする消費貸借」契約が締結された場合でも、借主にとって借入れの必要がなくなったときに借入れを義務付ける必要はないものと解されます。そこで、改正民法上、借主は、貸主から金銭等を受け取るまで、契約を解除することができます。

しかし、貸主において、借主に貸す資金の調達などのために費用を負担している場合など、損害が生じる状況も想定されることから、借主の契約解除によって貸主が損害を受けたときは、貸主は借主にその賠償を請求することができるものとされています。

併せて、借主が借り受けた資金を約定の期限前に弁済した折にも、貸主に損害が生じる場合が想定されることから、借主の期限前弁済によって貸主が損害を受けたときは、貸主は借主にその賠償を請求することができるものとされています。

3)借主が破産手続開始決定を受けた場合の失効

「書面でする消費貸借」契約を締結した場合、貸主は、借主に対して金銭等を貸し渡す債務を負います。しかし、借主が破産した場合にまでこの原則を貫くと、貸主は、返済見込みのない相手に金銭等を渡さなければならないこととなり、貸主に酷な結果となります。

そこで、改正民法は、貸主から借主への金銭等の交付前に借主が破産手続開始決定を受けた場合には、消費貸借契約が失効する旨を規定しています。


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3 契約の見直し

次に、これらの改正民法の規定を踏まえて、消費貸借契約に関する契約書のどのような点について見直しを検討すべきか、見ていきましょう。

1)契約書の作成

前述の通り、今後は、書面によらない諾成的消費貸借契約は効力を否定されるものと考えられます。

書面によらずに合意がなされた場合でも、後に金銭等の授受があれば、その時点で消費貸借契約が成立しますが、借主にとっては、貸主から将来確実に融資を受けるために、金銭等の授受前に「書面」を作成して消費貸借契約を成立させることが重要な意味を持ちます。また、返還時期の定めがない場合には、借主は、相当期間経過後にいつでも返還請求を受ける可能性があることとなりますので、「書面」に返還時期を明記することも望まれます。

一方で、改正民法上、特約がなければ利息を請求することができない旨が明文化されましたので、貸主の側にも利息の特約を「書面」に明記しておくことに意義があると解されます。

なお、書面で消費貸借契約を締結した場合、原則として直ちに効力が生じますが、従来の消費貸借契約のように金銭等の授受の際に効力を発生させたいときは、当事者間でその旨を合意することもできると考えられます。このような合意をした場合には、後に疑義が生じないよう、その旨を契約書に書き込んでおきましょう。

2)借主の資力悪化等による解除

前述の通り、書面で消費貸借契約を締結した場合、貸主は、借主に対して金銭等を貸し渡す債務を負います。改正民法上は、借主が破産手続開始決定を受けない限り、借主の資力が悪化した場合なども、貸主は契約通りに金銭等を貸し渡す債務を負い続けることとなります。

このような事態に備えて、貸主としては、以下のように、一定の場合に契約を解除できる旨を契約書に規定しておくことが望ましいといえます。

貸主は、借主が以下の各号のいずれかに該当したときは、催告をすることなく本契約を解除することができる。この場合において、貸主は、借主に生じた損害を賠償する責任を負わない。

  • 支払の停止又は破産・和議開始・会社更生?続開始・会社整理開始若しくは特別清算開始の申立があったとき
  • 手形交換所の取引停止処分を受けたとき
  • 財産について仮差押・保全差押又は差押の命令・通知が発送されたとき

……

3)損害賠償額の予定

書面による消費貸借契約について、金銭等の授受前に借主が解除した場合、貸主は、借主に対して損害の賠償を請求できますが、損害の発生及び金額については、貸主が証明しなければなりません。しかし、実際には、損害の発生及び金額を証明することはなかなか難しいものです。

そこで、貸主としては、借主が契約を解除した場合について、以下のように違約金を定めておくことが考えられます。なお、違約金の額があまりに高額であったり、当事者間の力関係に基づいて一方的に額を定めたりすると、改正民法第90条または消費者契約法第9条の規定により、違約金の定めが無効と判断される可能性がありますので、注意が必要です。

貸主は、借主が貸付金を受領する前に本契約を解除した場合には、借主に対して違約金〇〇円を請求することができる。ただし、貸主に実際に生じた損害が上記違約金額を上回る場合には、貸主は、借主に対して、実際に生じた損害の賠償を請求できるものとする。

他方、借主としては、契約を解除した場合に、貸主から高額の損害賠償請求を受けることがないように、以下のように規定することが考えられます

借主は、貸付金を受領する前に本契約を解除した場合には、貸主に対し、その損害を賠償する。ただし、借主が貸主に対して賠償する損害の金額は、〇〇円を超えないものとする。

次回は、賃貸借契約について解説いたします。


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民法改正と契約書の見直し

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年11月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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