マーケティングの基礎知識~マーケティングの4P編~

書いてあること

  • 主な読者:マーケティングを活用して利益を増やしたい経営者、経営戦略担当者
  • 課題:マーケティング手法に関する知見が足りない
  • 解決策:まずはマーケティングの4Pに基づく視点で戦略を練る

1 マーケティングの定義

日本マーケティング協会では、マーケティングについて、次のように定義しています。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である

企業活動におけるマーケティングとは、企業の利益を増加させることを目的としています。これを実現するために、顧客にとってより良い製品やサービスを、顧客が買ってくれそうな価格を付け、効率的かつ顧客の手元に届きやすい流通経路で販売し、顧客にとってより訴求力のあるプロモーションを行う一連の活動を指しているといえるでしょう。

■日本マーケティング協会■
https://www.jma2-jp.org/

2 マーケティングの4Pとは

マーケティングの手法や考え方にはさまざまなものがありますが、基本の1つとされているのが「マーケティングの4P」です。

マーケティングの4Pとは、顧客にとってより良い製品やサービスを、適正な価格で、効果的な販売チャネルによってより多く販売し利益を得る、ということを実現するための4つの要素です。これら4つの要素は一般的に次のように呼ばれます。

  • Product(プロダクト=製品) 
  • Price(プライス=価格) 
  • Place(プレイス=流通) 
  • Promotion(プロモーション=広告などによる販売促進活動)

3 Product(製品)戦略

1)新製品に重要なアイデアの発想

製品開発にまず重要なのは「アイデア」です。アイデアを生み出す方法としては、顧客のニーズから発想する「ニーズ的発想」と、企業内にある技術などのシーズ(種)から発想する「シーズ的発想」があります。 

ニーズに合った製品を開発するために、まずは「ニーズ的発想」によるアイデアを整理して、ターゲットとする顧客や、製品の活用シーンなどを明確にします。例えば、エアコンの場合であれば、アイデア整理方法としては次のように、5W1H方式を用いるとよいでしょう。

  • 誰が(Who):一人暮らしのビジネスパーソンが
  • いつ(When):外出しているときに(自宅にいないときに)
  • どこで(Where):自宅で
  • 何を(What):エアコンを
  • なぜ(Why):エアコンの消し忘れを防ぐために
  • どんなふうに(How):人の存在を感知し、誰もいなければ自動的に電源が切れる

製品開発に関するアイデアを生み出す際に「ニーズ的発想」と「シーズ的発想」のどちらか1つの方法のみで十分ということではありません。両方の発想方法から顧客のニーズに応える製品の開発を考えることが必要です。

2)製品のライフサイクル

人の一生と同様に、アイデアを基に製品化され、市場に投入された製品にも「一生」があります。これを「製品のライフサイクル(PLC=プロダクト・ライフサイクルと呼ぶこともあります)」といいます。製品のライフサイクルは、導入期、成長期、成熟期、衰退期に分けられます。

導入期では、市場に製品が投入されたばかりの頃で、その製品に対する認知度がそれほど高くないため、製品の普及は比較的スローペースで進みます。

成長期では、製品の普及が進み、その価値が認められるようになり、次第に売り上げは伸びていきます。競合製品も次々と投入され、競争が活発化します。

その後、製品がある程度まで普及してしまうと成長が緩やかになり、成熟期に入ります。さらに、代替品の登場などによってますます成長が衰退することになれば、市場から消えていくといった衰退期を迎えるケースもあります。

製品のライフサイクルに基づくマーケティング活動の特徴は次の通りです。

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4 Price(価格)戦略

価格は、企業にとっての目的である「利益」に直結する要素であり、顧客にとっては購買の意思決定を促す重要な要素となります。価格の決定には、大別すると次のような方法があります。

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1)費用重視型

原価のみを基に、一定の額の利益を上乗せして価格を決定する方法です。機械的かつ簡単に価格を設定できるため、販売品目が多岐にわたっている小売業などで用いられる傾向があります。

2)競争重視型

競争相手となる競合他社製品の価格を参考にしながら、自社製品の価格を決定する方法です。例えば、生鮮食品やガソリンなど均質化が進んでいる製品は、価格以外の面で競争相手と差異化を図ることが難しいことから、この方法を用いることが多いようです。

3)需要重視型

顧客の値ごろ感(「この製品がこのくらいの値段だったら購入してもいいな」と顧客が思う値段)を調査し、それに合わせて価格を決定する方法です。顧客の心理的な特徴を考慮した価格設定を「心理的価格設定」といいます。顧客の心理に基づく価格設定方法の例は次の通りです。

5 Place(流通)戦略

製品がメーカーから顧客の手元に届くまでには、「生産者(メーカー)→卸売業者→小売業者→顧客」のプロセスを経ます。このようなメーカーから顧客への製品の流れを流通チャネルといいます。

Place(流通)の大きな目的は、顧客が必要なときに、必要な製品が必要な数量、必要な場所にあり、顧客の手に入れやすさを実現することです。

1)流通チャネルの種類

1.開放的流通チャネル

製品を扱う流通業者を制限しないことによって、幅広く販売する方法です。

この方法は、顧客側から見ると、どの店でもその製品を買うことができることになります。購入頻度の高い日用雑貨や飲料などの製品に用いられることが多くあります。

2.選択的流通チャネル

流通業者を選別して販売する方法です。家電などのアフターサービスが必要な製品や高いブランドイメージを確立したい化粧品やアパレル製品などに適用されます。選別した小売業者などに、メーカーから販売員を派遣したり、販売ノウハウを伝授したりするケースもあります。

3.排他的流通チャネル

特定の流通業者に限定して販売する方法です。メーカーの意図を明確に反映させたい製品などに有効で、高級車や高級ブランド品などに用いられます。

排他的流通チャネルの代表的な手法として知られているのが、「メーカーによる系列化」です。系列化は、メーカー側から見れば流通における自社の意思を浸透させやすい、というメリットがあります。また、流通業者側から見ればノウハウを提供してもらえたり、支援してもらえたりするというメリットがあります。

2)流通における垂直的マーケティングシステム

流通チャネルは、メーカー・卸売業者・小売業者がチームを組んで協力し合い、製品をより効率的に多く販売するという「垂直的マーケティングシステム」の考え方から、次のような3タイプに分類されることもあります。

1.管理型

メーカー・卸売業者・小売業者がそれぞれ独立していますが、メーカーがリーダーとなり、卸売業者や小売業者に対して販売促進活動に関してさまざまな支援を行います。

2.企業型

1つの企業(あるいは企業グループ)が生産・卸売り・小売りの全てを行います。

3.契約型

フランチャイズチェーンやボランタリーチェーンなど、メーカー・卸売業者・小売業者が契約を結んで協力体制で販売活動を行います。

垂直的マーケティングシステムの場合、メーカー・卸売業者・小売業者が協力し合いながら流通体制を整えることによって、情報の共有化が進むという大きなメリットが得られます。特に、小売業者から収集される「性別・年齢層・地域による購買行動などの顧客情報」が共有化できます。

顧客の好みや購買傾向が多岐にわたっている現代では、流通チャネル内において、いかに「顧客情報」をスムーズに流通させるかが重要なポイントになります。

6 Promotion(プロモーション)戦略

プロモーション活動は、主に次のように大別されます。

1.人的促進

人による販売促進活動のことを指します。

2.広告

新聞、雑誌、テレビなどの有料媒体を使い、広告主のメッセージを顧客に伝えるものです。「人手」によるものではないことから、「非人的促進」とも呼ばれることもあります。

3.販売促進

店頭での陳列や店内での陳列広告、製品サンプルの無料配布など、顧客に対して、購買意欲を促進するような活動の全てをいいます。

以降では、プロモーション活動における考え方や評価方法などについて見ていきます。

1)広告効果測定

広告によるプロモーション活動が中心の場合、広告がどれだけの人の目に触れ、どれだけの人に接触したかという「広告効果測定」が重要になります。あまり効果が上がっていないようなら、早い段階で軌道修正する必要があるからです。

広告効果測定の方法としては、「地域限定トライアル広告」という方法があります。これは、試験的に特定の地域に限定して広告を発信し、広告が発信された地域での顧客の購買行動などを、広告が発信されていない他地域と比較する方法です。

また、広告が発信された後、製品についての顧客の認知度について聞き取り調査を行うなどの方法もあります。

広告効果を測定する際の調査項目としては、次のものがあります。

  • 広告到達測定:広告を知っているかどうか
  • 広告内容理解:広告の内容(製品についてなど)は理解したか
  • 広告好意度:広告に対して好意を持ったか
  • 製品購買意向:その製品を購入したか

2)ABC分析を販売促進活動に活用する

販売促進活動は、非常に手間が掛かるものです。店頭でサンプル無料配布を行う、クーポン券を発行するなどさまざまな手法がありますが、どれもかなりの労力やコストを要します。また、顧客のニーズに即した販売促進活動を行わなければ、訴求力に欠けてしまいます。

そこで、参考として、効率的かつ訴求力の高い販売促進活動を行う1つの考え方として、ABC分析に基づく販売促進活動を紹介します。

ABC分析とは、複数あるものを、A・B・Cのランクに分けて評価する分析方法です。例えば、自社の製品を「売り上げへの貢献度」によって3段階に分けて、次のように評価する方法が考えられます。

  • A群:売り上げの80%を占める製品群
  • B群:売り上げの20%程度を占める製品群
  • C群:売り上げに影響を及ぼしていない、ほとんど貢献していない製品群

ABC分析によって、自社が注力すべき製品群が分かり、販売促進計画を検討することができます。

7 マーケティングの4Pのまとめ

これまで、マーケティングの基本ともいえる4Pの手法や考え方を見てきました。マーケティング活動を行う上では、4Pの要素がそれぞれ単独で存在するわけではなく、より良い形に組み合わせて、「顧客満足度を高める」「利益を増加させる」ことを実現しなければなりません。

顧客の「製品やサービスに対する選択の自由度」は高まっています。顧客は豊富な種類の製品の中から、機能や品質、価格などを比較検討し、「本当に欲しい製品を厳選」して購買するようになっています。

企業は常に、顧客に選択される製品やサービスを開発して販売しなければなりません。

企業には顧客それぞれのニーズに合った、あるいは顧客それぞれに訴求力のあるマーケティングがますます求められているのだといえるでしょう。

以上(2019年12月)

pj70019
画像:pexels

オンライン診療の動向

書いてあること

  • 主な読者:オンライン診療を検討する医療機関など
  • 課題:オンライン診療に対してどの程度のニーズがあるのか、どのような課題があるのかを知りたい
  • 解決策:本稿では、各省庁の調査結果などから、オンライン医療の実施状況や、利用者の動向などを紹介している。自医院がオンライン診療を実施するか否かの参考材料として活用できる

1 オンライン診療の概要

オンライン診療は、一般的には医療機関と患者の自宅などをインターネットで結び、医療行為またはそれに準じる行為を行うものです。インターネットを経由するため、時間や場所の制約が少なく、外出が困難な高齢者の診療や遠隔地などでの導入・検討が進んでいます。

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、オンライン診療は、「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」である遠隔医療のうち、「医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」とされています。遠隔医療の分類は以下の通りです。

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2 オンライン診療のニーズ、認知

本稿では、各省庁の調査結果などから、オンライン医療の実施状況や、利用者の動向などを紹介します。

1)実施数

厚生労働省の資料「オンライン診療に関するアンケート集計結果」は、実際にオンライン診療を実施している医師を対象にした、オンライン診療を受ける患者数やオンライン診療を実施する際の課題などのアンケート結果を集計しています。

同アンケートにおける、オンライン診療を導入している患者数は次の通りです。

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2)ニーズおよび認識

同省の資料「平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」によると、オンライン診療に対する医療関係者の主なニーズおよび認識などについて調査結果が公表されています。

この調査によると、オンライン診療の実績がある医療関係者の58.3%が、「オンライン診療に対するニーズは少ない」と回答しています。また、オンライン診療の実績がある医療関係者の66.7%が、「オンライン診療を行うメリットが手間やコストに見合わない」と回答しています。

■厚生労働省 平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成30年度調査)の報告書案について■
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000493972.pdf

3)オンライン診療に対する利用者の動向

内閣府「平成29年 高齢者の健康に関する調査結果」では、全国の55歳以上の3000人を対象に実施された、インターネットで医療や健康に関してどのような情報を入手しているのかが示されています。「医療や健康情報のインターネットでの入手」に対する回答結果は次の通りです。

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3 オンライン診療の課題

オンライン診療の課題として一般的に挙げられるものとして、「患者の病歴などの個人情報の安全性を確保することが難しい」「通信環境の不良により患者との適切なコミュニケーションを取ることが難しい」「患者のカメラの光の加減や角度で適切な診断が難しい」「遠隔のため患者が正確な症状を伝えることができない・しない」などの課題があります。

厚生労働省の資料「オンライン診療に関するアンケート集計結果」によると、オンライン診察時のトラブルとして、次のようなものが挙げられています。

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4 医療機関のオンライン診療に対する意欲

医療関係者向けの情報を発信するエムスリーでは、2018年1月30日~2月5日に会員制サイト「m3.com」を通じてオンライン診療についてアンケートを実施しました(回答者数1535人)。

オンライン診療を現在実施しているとの回答は、全体の4%強にとどまり、勤務医の56.5%、開業医の73.4%が実施したいとは思わないと回答しています。一方で、勤務医の36.7%、開業医の20.3%が今後実施する予定または実施したいと回答しています。

なお、このアンケートでは、オンライン診療の普及に対しての賛否も調査しています。それによると、勤務医の42.0%が賛成、10.0%が反対と回答しているのに対し、開業医は21.2%が賛成、20.9%が反対と回答しており、オンライン診療に対する認識に違いがあることが分かります。

■エムスリー m3.com意識調査「『オンライン診療、実施予定・したい』、勤務医36.7%、開業医20.3%」■
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/585294/

5 自治体・医療機関の動向

1)愛知県:オンライン服薬指導

愛知県は、高齢化が進む離島(西尾市の一部、南知多町)や山間地(新城市、東栄町など)が国家戦略特区に指定され、離れた場所にいる患者に、薬の飲み方を指導するオンライン服薬指導に取り組んでいます。

愛知県によると、オンライン服薬指導を実施する薬剤師側には、患者が自宅に居ることで、患者のプライバシーが保たれることや、薬の残量も確認できるなどのメリットがあるものの、システムの操作方法の説明や、画面越しでの服薬指導のために、医療機関で指導するよりも手間と時間が掛かったそうです。

患者側からは、オンライン服薬指導は事前予約が必要で、予約した時間にシステムを起動させることが必須などの手間がかかったそうです。

2)茨城県石岡市:医療相談アプリを試験導入

住民1人当たりの小児科医の数が全国最少といわれる茨城県石岡市は、医師不足を解消する取り組みとして子育て世代を対象とした、医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」の実証実験を行っています。リーバーは、AGREE(茨城県)が提供するアプリです。同アプリは、チャットボット(自動会話プログラム)が問診を行い、回答に沿って医師が市販薬の推奨や、適切な診療科などの情報を提供します。

同市へのヒアリングによると、このアプリの対象となる世代(石岡市内に居住し、0~3歳児のいる世帯)の約30%が既にユーザー登録を済ませているそうです。ユーザー登録が進んでいることの背景として、「日常的にスマートフォンを利用する子育て世代に向けた取り組みであることに加え、ダイレクトメールの送信や、石岡市の広報にアプリの情報を掲載したことなどが挙げられる」とのことです。(*)

一方で、今後の想定される課題として、「増加するユーザーの入退会の管理や、操作方法の分かりやすい説明が挙げられる」とのことです。(*)

また、医師からは「すきま時間」を有効に活用するために、新たにこのアプリで情報を提供できないかどうかの問い合わせを受けているそうです。

________________________________________
(*)茨城県石岡市(2019年9月13日時点)

以上(2019年12月)

pj50475
画像:photo-ac

【朝礼】考えたら行動する。それが基本だ!

今年の4月から偶数月に皆さんと個人面談をしています。12月で5回が終わったわけですが、この面談を通じて、皆さんがさまざまなことを考え、また意見を持っていることが分かりました。

例えば、「業務プロセスを改善したい」「若手の教育をもっと丁寧にやりたい」「業務の平準化を図って、全体の残業時間を削減したい」「資格を取得して、もっと自分のスキルを高めたい」など、とても素晴らしいものです。

ただ、残念なことがあります。それは、私が少し質問をしただけで、皆さんは自分の考えを言えなくなってしまうことです。私は決して難しい質問をしているわけではありません。「資格を取得したい」という人には、「何の資格を取得するのか、いつから勉強を始めるのか」といったことしか質問していません。また、「若手の教育体制を整えたい」という人には、「仕組みができるまでの間、あなたの残業が増えるかもしれませんが、よろしくお願いします」と言うと、「自分の残業が増えるのは嫌です」と答えます。しかし、残業をせずに若手の教育体制を整える具体的な方法を考えているわけではありません。

「『口だけ』で、しっかりと考えていないのだな」と感じます。「何かをやりたい」という気持ちの強さは人それぞれです。「本気でやりたい!」という強いものから、言ってみただけという程度のものまであります。皆さんのお話の多くは、言ってみただけ程度のものだったのでしょう。

しかし、私は、言ってみただけ程度でもいいと思っています。前向きに捉えるなら、何も考えていなければ口にすら出さないはずですから、それほど気持ちは強くなかったとしても、「やりたい!」という気持ちがあるのは確かなはずです。

少し寝坊をした休日。ランニングや買い物など、やりたいことがあるけれど、ダラダラとしているうちに気付いたら夕方になってしまい、結局何もしなかったという経験はありませんか。人は、「面倒だ」「難しい」と感じることほど、勢いで始めてしまわないと、なかなか行動に移すことができません。やりたい気持ちがあまり強くないことについても、これと同じです。

実際に行動をしてみると、やりたい気持ちが高まったり、逆に自分が求めていることではなかったと気付いたりします。結果として、三日坊主で終わるものもありますが、行動を起こさなければ分からないことなのです。

言ってみただけ程度でも、それを行動に移すことさえできれば、それが皆さんの成長のきっかけになります。ここで皆さんにお聞きします。皆さんは、私にいろいろなことを話してくれました。「それで、皆さんは行動しますか、考えているだけで終わりますか?」

次の個人面談は2カ月後です。もちろん、私が個人面談で聞きたいのは、皆さんの本気です。今朝の朝礼をきっかけに皆さんが行動し、やりたい気持ちが高まれば素晴らしいことです。

以上(2019年12月)

pj16985
画像:Mariko Mitsuda

豊臣秀吉(武将)/経営のヒントとなる言葉

「信長公は勇将なり、良将にあらず。剛の柔に克つことを知り給ひて、柔の剛を制することを知られず」(*)

出所:「名将名君に学ぶ 上司の心得」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

  • 「部下から恐れられるような態度を取っていては、良いリーダーとはいえない。リーダーは、部下の心情、部下の視点に配慮することが求められる」

ということを表しています。

秀吉は織田信長に仕え、こまやかな心配りや機転の良さによって、頭角を現したことで知られ、こうした秀吉の特性は次のエピソードにも見られます。

ある日、秀吉は信長から、城の薪代がかさんでいるため、節約を図るように命じられて、薪奉行を任されます。それを受けて、秀吉は台所で使用する薪代や、暖房として必要な薪代などについて関係者に話を聞き、使用量を調べたところ適正量であり、薪代がかさんでいるのにはほかの原因が考えられました。

秀吉は次に薪の流通経路に着目しました。すると、薪の生産地から城に運び込まれる間に、多くの中間業者が存在し、マージンを受け取っていることが明らかになったのです。また、一説によると、秀吉の前任の薪奉行は中間業者から賄賂を受け取っていた可能性もあるようです。

そこで、秀吉は中間業者を通さない新たなルートで、薪を調達することを思い付きます。そうすれば、前任の薪奉行が不正を働いていたことは公になることはありません。秀吉は、領内の村を訪ねて回り、薪として使用できる古い木を無料で城まで運び、古い木と引き換えに苗木を渡すという交渉を取り付けました。この秀吉のやり方に信長は満足しました。また、「不正が明るみに出ないように」という秀吉の配慮に対して、前任の薪奉行も感謝したようです。

秀吉は「主である信長の命令にさえ応えられればよい」「自分さえ手柄を立てられればよい」という上下関係の視点だけではなく、前任の薪奉行、領内の村など多くの関係者が満足するようにうまく利害を調整しています。

秀吉の成功には、信長に取り立てられて力をつけていったという側面だけでなく、自ら周囲の人をうまく巻き込んで、もりたててもらったという見方ができるのではないでしょうか。

秀吉は低い身分から後に天下人にまで出世を果たしますが、こうした過程で秀吉は自分が臣下の立場で感じた、リーダーに対する思いを、自らがリーダーになった際に生かしています。

例えば、冒頭の言葉は主君であった信長の非情な性格について秀吉が言及したものの一部で、信長は恐れられこそすれ愛されることがなかったリーダーであり、こうした信長の性格が明智光秀の裏切りを招いたと、冷静に分析しています。

また、信長に仕える以前の主であった松下之綱の下を、将来性が無いと感じて去る際に、次のような言葉を残したとされています。

「およそ主人たる者、一年使ひ見て、役に立たぬ時は暇を遣はし、家来としては、三年勤めて悪ししと知らば、暇を取ること、法なり」(**)

秀吉は多くの臣下を抱える主となった後も、“臣下の心情”“臣下の視点”に配慮して接したことで、竹中半兵衛、黒田官兵衛など、多くの才能ある将を引き付けたのかもしれません。

リーダーはリーダーであり、部下とは同じ立場に立てるわけではありません。リーダーに求められるのは、組織を健全に保つため、律するべき部下を律し、引き上げるべき部下を引き上げるということです。リーダーはミスを犯した部下を叱責しますが、その目的はその部下に同じミスを犯さないように気付いてもらうためです。一方、良い仕事をした部下を引き上げますが、その目的は、その部下のやる気を高め、組織全体に良い影響を与えるためです。決して、リーダーの個人的な好き嫌いによって、部下への処遇や評価が変わるわけではありません。

こうしたリーダーの姿勢は、マネジメントの基本ですが、さらに部下への配慮や気遣いというエッセンスを加えることで、その効果を高めることができます。

部下は、リーダーと部下の置かれている立場が異なることを理解しています。だからこそ、リーダーの部下への配慮や気遣いを感じた部下は、そうしたリーダーの姿勢に応えたいと思い、一生懸命に仕事に取り組んでくれるでしょう。

部下への配慮や気遣いとは、部下のためだけではなく、リーダーを助け、結果的に組織の発展へとつながるものだといえるでしょう。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

とよとみひでよし(1537〜1598)。尾張国(現愛知県)生まれ。織田信長の下に仕え、後に天下統一を実現。

【参考文献】

(*)「名将名君に学ぶ 上司の心得」(童門冬二、PHP研究所、2007年5月)
(**)「戦国武将のひとこと」(鳴瀬速夫、丸善、1993年6月)
「戦国武将のマネジメント術 乱世を生き抜く」(童門冬二、ダイヤモンド社、2011年3月)

以上(2019年12月)

pj15147
画像:Josiah_S-shutterstock

売上の計上時期が変わる!? 新たな収益認識基準とは

書いてあること

  • 主な読者:大企業を取引先にもつ中小企業の経営者・経理担当者
  • 課題:2021年4月1日以後に開始する事業年度から、中小企業を除くすべての企業は、新しい収益認識基準を適用しなければならない
  • 解決策:従来の会計基準の違いや、ポイント、中小企業が注意すべき点を解説

1 新しい収益認識基準の公表

企業会計基準委員会(日本における会計基準の設定主体。以下「ASBJ」)は、2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、合わせて「本会計基準等」という)を公表しました。

本会計基準等における新たな収益認識基準は、上場・非上場企業であるかを問わず、中小企業を除く全ての企業に適用されることになります。なお、2018年4月1日以後に開始する事業年度より任意で適用が開始され、2021年4月1日以後に開始する事業年度からは強制適用されます。

本会計基準等の適用により、収益の認識単位・金額・タイミングが変わる可能性があり、これに対応するためには、企業の収益認識に及ぼす影響の把握と、正しく収益認識を行うための事前準備が必要となります。

本稿では、収益認識基準が新しくなった背景を解説したうえで、新たな収益認識基準のポイント及び中小企業に想定される主な影響を紹介します。

2 新たな収益認識基準が公表された背景

従来の日本における収益認識基準は、企業会計原則の損益計算書原則において「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準がこれまで開発されていませんでした。

一方、国外では、国際財務報告基準(以下「IFRS」)を策定している国際会計基準審議会(以下「IASB」)と、米国における会計基準を策定している米国財務会計基準審議会(以下「FASB」)が、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表しました。

これらの状況を踏まえ、2015年3月に開催されたASBJ会議において、日本における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、その後2016年2月に適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という)が公表されました。この意見募集文書に寄せられた意見等を踏まえ審議が進められ、2017年7月20日に収益認識に関する会計基準等の公開草案を公表し、当該公開草案に対して寄せられた意見等について検討が行われてきました。

そして、2018年3月26日開催のASBJ会議において、企業会計基準第29号及びその適用指針第30号(以下、合わせて「本会計基準等」)が承認され、本会計基準等が同年3月30日付で公表されました。

3 従来の会計基準との主な違い

従来から多くの企業が契約(または受注)単位で収益を計上しています。一方、新たな収益認識基準では、その契約の中に複数の履行義務(顧客に対して、財またはサービスを提供する約束)がある場合、その履行義務ごとに収益認識の「単位」「金額」「タイミング」(詳細は後述)を判断することになります。例えば、製品の販売に付随して、無償で修理を行うなどのアフターサービスを付けた場合、製品の単価とアフターサービスの単価ごとに売上の単位・金額・タイミングを認識することが考えられます。

4 新たな収益認識基準のポイント

新たな収益認識基準の基本原則は、約束した財またはサービスの顧客への移転を、当該財またはサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額によって収益の認識を行うことです。また、この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することになります。

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1)ステップ1:契約の識別(単位)

顧客との契約を識別します。本会計基準等では、顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用されることになります。

2)ステップ2:履行義務の識別(単位)

契約における履行義務を識別します。契約において、顧客へ提供することを約束した財またはサービスが所定の要件を満たす場合には、別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区別して識別することになります。

3)ステップ3:取引価格の算定(金額)

取引価格を算定します。変動対価または現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整を行い、取引価格を算定することになります。

4)ステップ4:取引価格の配分(金額)

契約における履行義務に取引価格を配分します。契約において約束した別個の財またはサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分します。独立販売価格を直接観察できない場合には、独立販売価格を見積もることになります。

5)ステップ5:収益認識(タイミング)

履行義務を充足したときに、または充足するにつれて収益を認識します。約束した財またはサービスを顧客に移転することによって履行義務を充足したとき、または充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識します。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足されます。

5 重要性等に関する代替的な取扱い

本会計基準等においては、これまで行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性(財務諸表の期間比較や、他社比較が可能なこと)を大きく損なわせない範囲で、IFRS第15号における取扱いとは別に、次の個別項目に対する重要性の記載等、代替的な取扱いを定めています。なお、重要性の判断については、公認会計士などの専門家が判断することになります。

1)契約変更(上記ステップ1関係)

契約変更による財またはサービスの追加が、既存の契約内容に照らして重要性が乏しい場合の処理の取扱いがあります。

2)履行義務の識別(上記ステップ2関係)

提供することを約束した財またはサービスが、顧客との契約の観点で重要性に乏しい場合には、当該約束が履行義務であるかについて評価しないことができます。

3)一定の期間にわたり充足される履行義務(上記ステップ5関係)

工事契約について、契約における取引開始日から、完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができます。また、受注制作のソフトウエアについても、工事契約に準じて同様に適用することができます。

4)一時点で充足される履行義務(上記ステップ5関係)

商品または製品の国内の販売において、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転されるときまでの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転されるときまでの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができます。

5)履行義務の充足に係る進捗度(上記ステップ5関係)

一定の期間にわたり充足される履行義務について、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない場合には、当該契約の初期段階で収益を認識せず、当該進捗度を合理的に見積もることができるときから収益を認識することができます。

6)履行義務への取引価格の配分(上記ステップ4関係)

履行義務の基礎となる財またはサービスの独立販売価格を直接観察できない場合で、当該財またはサービスが、契約における他の財またはサービスの付随的なものであり、重要性に乏しいと認められるときには、当該財またはサービスの独立販売価格の見積方法として、残余アプローチ(契約における取引価格の総額から、契約において約束した他の財またはサービスについて、観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積もる方法)を使用することができます。

7)契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分(上記ステップ1、2及び4関係)

一定の要件を満たす場合には、複数の契約を結合せず、個々の契約において定められている顧客に提供する財またはサービスの内容を履行義務と見なし、個々の契約において定められている当該財またはサービスの金額に従って収益を認識することができます。

6 中小企業に想定される影響

新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず、中小企業を除く全ての企業に適用されることになります。なお、中小企業においては、「中小企業の会計に関する指針」が適用されることになりますが、今後、当該指針の見直しが行われることも考えられます。

その場合には、事前に顧客との契約を見直し、企業内の管理体制を整備することが求められます。企業の会計・経理担当者は、収益の認識に関して「契約の識別」をするために法務担当者と連携しながら、契約の成立時点を契約書等に照らして確認しておくことが必要です。

また、「履行義務の識別」をするためには、契約書の条項に照らし、顧客に提供することを約束した財またはサービスのそれぞれについての履行義務を、あらかじめ確認しておくことも必要になります。

さらには、企業が想定する実態に合った収益認識を行うために、取引先と契約内容(契約条項など)を見直すことが必要となるかもしれません。

例えば、上記「ステップ1:契約の識別」の段階においては、そもそも契約の成立が特定されない限り、企業は収益を認識することができません。現行では、実務上個々の取引契約書や受注書・注文書によって企業の代表者名義による書面を取り交わしていない場合には、新しい収益認識基準に基づく収益認識にあたっては契約の識別が困難になる可能性があります。仮に、取引基本契約書が存在するのであれば、個々の取引契約の成立を容易に説明できる契約条項を織り込んでおくことが必要です。

また、そもそも企業の代表者名義による書面を取り交わしていないような場合には、契約の識別を容易に行えるように客観的な証拠を残す工夫が必要であると考えられます。上記「ステップ2:履行義務の識別」の段階においては、財またはサービスの給付対象だけでなく、それに付随して提供される財またはサービスの約束(販売インセンティブやポイントの付与など)等も含めて履行義務を特定しておくことが必要となります。

さらに、大企業との取引がある中小企業については、「中小企業の会計に関する指針」の見直しの有無にかかわらず、上記のような契約の見直し等を求められる可能性も考えられます。

以上(2019年12月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 伏見健一)

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【朝礼】理想の姿を描けば、なすべきことが見えてくる

ここ数カ月、私は知り合いの経営者に勧められて、「経営道場」なるものに参加しています。ここでは、受動的に学ぶのではなく、能動的にあるべき「理想の姿」を追求していきます。そして、理想の姿を実現するために足りていない部分を認識し、それを埋めるために最も効果的な取り組みを検討、実行します。

この一連の流れを繰り返す、こんなシンプルな経営道場での活動を通じて、私はとても重要な2つの気付きを得ました。今朝は、それを皆さんにお伝えします。

1つ目の気付きは、「『理想の姿』を持つ」ことの大切さです。経営道場の参加者は、向上心あふれる経営者ばかりなので、仕事についての理想の姿を熱く語ることができます。理想の姿を実現したいという思いは、日々の活力になります。

皆さんはどうですか。仕事でもプライベートでも結構です。「理想の姿」はありますか?

もしかすると、仕事について理想の姿を持つことは難しいかもしれません。私や上司の指示に従うことに慣れ過ぎていて、自由に発想することが苦手になっているかもしれないからです。

では、「皆さんに、仕事上の課題はありますか?」という質問ならどうですか。

こちらのほうが答えやすいのではないでしょうか。謙遜もあるかもしれませんが、自分の至らない部分、つまり課題を挙げるのは比較的、簡単なことでしょう。

問題は、皆さんが挙げた課題のほとんどが、改善に向かっていないと思われることです。それはなぜか。厳しい言い方かもしれませんが、課題について深く考えていないからです。この朝礼のように、課題の解決を約束するような場でなければ、「何となく、このままではいけない」と思っている程度のものについて、さも自分が思い悩んでいる重要な課題として話していないでしょうか。

ここで、経営道場で学んだ、重要な2つ目の気付きが活きてきます。それは、「自分を疑う」ことです。経営道場で私も熱く理想の姿を語りました。しかし、他の経営者から突っ込んだ質問をされると言葉に詰まってしまいました。考えているようで、実は表面的なところしか捉えていなかったのです。そこで、何度も何度も「それは本当に自分の理想なのか?」と自分に問いかけた結果、表面的な部分がそぎ落とされていき、本当の理想に近づけたのです。

理想が明確になると、今、克服しなければならない課題も分かります。課題を公式化すると、「理想-現実=課題」となります。本気で願う「理想の姿」から、正しい「現実」を引き算した結果が、今、取り組むべき本当の課題なのです。

ビジネスでは正しい課題設定が重要です。ただし、足元を見るだけでは正しい課題は見つかりません。思いつきレベルの課題でお茶を濁すのは、論外です。本当に重要な課題は、「理想の姿」を描くことで見つかるものなのです。

以上(2019年11月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】勝ちたければ、やるべきことはひとつ

今日は皆さんに、私が知っているある2人の話をします。2人とも、私がよく行くビリヤード場で一緒にビリヤードをする人です。その2人の話から何を感じるか、それぞれ考えてみてください。

1人は、ビリヤードを始めてまだ2カ月とほぼ初心者なのですが、とても研究熱心です。ビリヤードのプロの動画を何度も何度も見て正しいフォームを一から覚え、ビリヤード場で繰り返し練習しています。思うように玉を突けないときは、プロの動画を改めて見直したり、ビリヤードの上手な人に頭を下げて教えてもらったりしています。やみくもに自分の突き方だけを押し通そうとせず、素直に教えを聞き、自分の良くない点を改善しようとしているのです。

こうした姿勢でビリヤードに取り組む彼は、まだ始めてたった2カ月ですが、どんどん腕を上げ、時にはビリヤード歴の長い人に勝つこともあるくらいです。

一方、もう1人は、かれこれ、もう2年以上ビリヤード場に通っている人ですが、言葉を選ばずに言えば、実に下手で、誰かに勝っているのをほとんど見たことがありません。研究熱心な彼とは違い、練習したり誰かに教わったりするわけでもないので、一向に上達する気配もありません。単にビリヤードをすること自体が好きなのかと思っていましたが、本人はとても負けず嫌いな性格で、「勝ちたい」といつも言っています。負けると悔し涙を浮かべることもあるくらいです。

研究熱心な彼と、上手ではない彼は、「勝ちたい」という気持ちは同じです。しかし、気持ちは同じでも、それを原動力にして実際に行動に移したかどうかで、その先は大きく違ってきます。

研究熱心な彼は、勝ちたいと思うからこそ、研究し、練習したり教わったりするのは当たり前だといつも言っています。これには非常に共感しますし、彼の本気度合いが伝わってきます。

その一方で、本人はどう考えているのか分かりませんが、上手ではない彼が「勝ちたい」と言っていても、とても本気には思えません。「勝ちたい」と言う割に、勝つための努力や工夫をしようとしていないからです。負けて悔し涙を浮かべるのも、「誰かに負けてしまう」という事実を、感情的に嫌がっているようにしか見えないのです。

ビリヤードは単なる遊びですが、この2人の行動は、仕事にも通じるところがあると思います。皆さんも、日ごろ仕事で、「こうすればいいのに」「もっとこうしたい」などといろいろと言うことがあるでしょう。果たして、皆さんの「こうしたい」は、どれだけ本気で言っていることなのでしょうか。皆さんは、「こうしたい」ことを、実際にどのような行動に移しましたか。

口であれこれ言うのは簡単です。誰でもできることです。大切なのは、その先に、実際に具体的な行動に移したかどうかです。皆さん、「口だけ」は早く卒業してください。行動が全てです。皆さんの本気の行動を期待しています。

以上(2019年11月)

pj16982
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】自分の「人付き合いルール」を持つ意味

先日、とても尊敬しているメンターの方から、人付き合いについて大切なことを教えてもらいましたので、それを皆さんに共有します。

実は、私は最近、仕事上で協業する可能性がある人との人間関係に困っていました。相手は悪い人ではないし、仕事で協業できそうなことも多いのですが、言動を見ているとどこか違和感があり、なんとなく打ち解けられずにいたのです。

そうした折、メンターの方とお会いする機会があったので、相手の実名は出さずに、私の心持ちだけを打ち明けてみました。するとメンターの方は、私にこう尋ねたのです。

「あなたが、『付き合わない』と決めているのは、どのような人ですか?」

正直に言えば、これまで私は、そうした視点で考えたことはありませんでした。「どのような人と付き合いたいか」と聞かれたら、恐らくすぐに答えることができたでしょう。しかし、「どのような人とは『付き合わない』のか」という問いかけに、私は答えることができませんでした。

メンターの方は続けて言いました。「経営者ともなると、多くの人と出会います。だからこそ、『こういう人とは付き合わない』というルールを持っておくことが、あなた自身と会社を守ることにつながります。『付き合わない』というルールに当てはまる人に出会ったら、早いうちに、お付き合いをお断りするのがよいでしょう。ただし、謙虚な気持ちで丁寧にお断りすることです」

私は、どのような人とは「付き合わない」のかをじっくりと考えてみました。私にとって大切なのは、やはり、「人」です。特に、社員や部下を大切にしていないと感じる人とは、たとえ仕事上のメリットがあっても、付き合いたくありません。当社の社員である皆さんのことも大切にしてもらえないような気がするからです。それが私の人付き合いのルールなのだと、初めて実感しました。

恐らく、私は今回、そうした点で相手に違和感を持ったのでしょう。その人との協業の話は、お断りしました。ただし、これはあくまでも私の主観です。実は社員や部下を大切にする人なのに、私が未熟で、そのことに気付けなかっただけなのかもしれません。そう考えると、メンターの方が言う「お断りは、謙虚な気持ちで丁寧に」というのも、よく分かる気がしたのです。

今日お伝えしたことは、皆さんには、まだピンとこないかもしれません。しかし、「こういう人とは付き合わない」という自分のルールを決めておくことは、皆さん自身が「どのように仕事をしていきたいか」「どのような人生を送りたいか」につながっていくのではないでしょうか。

ちなみに、尊敬するメンターの方は、「人の時間を大切にしない人とは付き合わない」と決めています。遅刻の他、自分勝手に仕事を進め、周りへの配慮がない人も該当するそうです。そうした方にお付き合いいただけることに感謝し、自分を顧みる軸にしようと、改めて感じました。

以上(2019年11月)

pj16983
画像:Mariko Mitsuda

【規程・文例集】「私有スマートデバイス取扱規程」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:最新法令に対応し、運営上で無理のない会社規程のひな型が欲しい経営者、実務担当者
  • 課題:法令改正へのキャッチアップが難しい。また、内規として運用してきたが法的に適切か判断が難しい
  • 解決策:弁護士や社会保険労務士、公認会計士などの専門家が監修したひな型を利用する

1 私有スマートデバイスを業務に利用する「BYOD」

スマートフォンやタブレット端末などの携行可能な情報通信機器(以下「スマートデバイス」)が普及し、従業員が私有スマートデバイスを業務に利用する「BYOD」(Bring Your Own Device)という考え方が広まっています。

従業員にとってBYODは、使い慣れたスマートデバイスで、自ら導入したアプリケーション(アプリ)やクラウドサービスを利用し、いつでもどこでも業務を行えるという面で大きなメリットがあります。例えば、次のような行為を日常的にしているビジネスパーソンは少なくないのではないでしょうか。

  • 私有のスマートフォンで顧客に連絡し、訪問のアポイントメントを取る
  • 私有のスマートフォンにインストールした名刺管理アプリで顧客情報を管理する
  • 私有のタブレット端末で会社のサーバーにアクセスし、メールを確認する
  • 自宅で私有のタブレット端末を使い、見積書を作成する
  • 出張先のホテルで私有のタブレット端末を使い、翌日の会議の資料を作成する

会社にとってBYODは、従業員の業務効率化や組織の生産性向上、機器の導入や使い方の教育に掛かるコスト抑制などが期待できる半面、ルールを定めなければ、重要な情報の紛失・漏洩にもつながる危険性をはらむ悩ましい課題です。

BYODを有効活用するためには、私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する際の取り扱いと情報管理について定めた規程の策定や、業務に利用する場合の注意点についての教育を受ける機会を設ける必要があります。

本稿では、コンピュータソフトウェア協会が公表している「私有スマートデバイス取扱規程サンプル」「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【新規】」「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【機器追加】」「私有スマートデバイス利用解除申請書サンプル」(注)を基に、私有スマートデバイス取扱規程のひな型について紹介します。

■コンピュータソフトウェア協会「『BYOD』導入検討企業向け情報提供ページ」■
https://www.csaj.jp/activity/support/sample/byod.html

(注)コンピュータソフトウェア協会「私有スマートデバイス取扱規程サンプル」「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【新規】」「私有スマートデバイス利用許可申請書サンプル【機器追加】」「私有スマートデバイス利用解除申請書サンプル」は、クリエイティブ・コモンズライセンス「CC BY-SA 2.1 JP 」によって許諾されています。

BY-SA

ライセンス証  https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/
リーガルコード https://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.1/jp/legalcode

なお、これらのサンプルは、特定の前提条件を想定して作成されており、それぞれの内容が必ずしも参照される各社の状況にそのまま合致するとは限りません。

2 私有スマートデバイス取扱規程のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【私有スマートデバイス取扱規程のひな型】

第1条(目的)
本規程は、私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する際の取り扱いと情報管理について定めるとともに、私有スマートデバイスからの情報漏洩、紛失、盗難、外部侵入などの危機に際しての行動指針を定め、会社の情報セキュリティの維持・向上並びに業務効率の向上を通じて、顧客の信頼を確保することを目的とする。

第2条(適用範囲)
1)本規程は、役員および従業員(以下「従業員等」)に適用されるものとする。
2)会社の業務委託を受けて、会社の情報システムに接続する委託事業者および派遣社員等が、私有スマートデバイスから会社の情報システムへ接続することは原則禁止とする。

第3条(用語の定義)
スマートデバイスとは、スマートフォン、タブレット端末等の携行可能な情報通信機器もしくは会社が判断した機器をいう。

第4条(利用許可)
1)利用許可を得た従業員等に限り、会社の許可条件に従い、私有スマートデバイスで、会社の電子メール、業務で使用する情報資産、顧客情報、業務アプリケーションの使用等もしくは、VPN、有線LAN、無線LAN等へ接続、使用することができる。なお、利用許可の範囲は、会社が認めた所定の範囲とする。
2)従業員等は、業務遂行において私有スマートデバイスを利用しようとする場合、所定の別表第1「私有スマートデバイス利用許可申請【新規】」を提出し、承認を得なければならないものとする。
3)会社は、利用状況等に鑑み、いつでも前項に規定する利用許可を解除することができるものとする。
4)会社は、第2項に規定する利用許可に当たり、許可申請のあった私有スマートデバイスに他の企業の機密情報であって、持ち出し・複製・第三者への開示が禁止された情報が含まれている場合には、従業員等に当該情報を消去させることができる。
5)従業員等は、会社が定めた私有スマートデバイス利用許可申請に記載されている内容および本規程の全てを順守するものとする。
6)従業員等は、会社が実施する私有スマートデバイスに関する教育プログラムを受講し、受講報告書を提出するものとする。
7)従業員等は、業務遂行において私有スマートデバイスを追加する場合、所定の別表第2「私有スマートデバイス利用許可申請【機器追加】」を提出し、承認を得なければならないものとする。
8)従業員等は、退職や業務遂行において私有スマートデバイスを利用する必要がなくなった場合、所定の別表第3「私有スマートデバイス利用解除申請」を提出し、承認を得なければならないものとする。なお、従業員等は利用解除に当たり事前に、利用していた私有スマートデバイスに登録されている会社業務に関する全ての情報を消去するものとする。
9)従業員等は、機種変更などの事由により業務遂行において私有スマートデバイスを変更する場合、初めに別表第3を提出した後、あらためて別表第1を提出し、承認を得るものとする。
10)利用許可を得ていない従業員等は、私有スマートデバイスによる会社の電子メール、業務で使用する情報資産、顧客情報、業務アプリケーションの使用等もしくは、VPN、有線LAN、無線LAN等への接続、使用を一切禁止する。

第5条(費用負担)
1)会社は、従業員等が利用する私有スマートデバイスの通信費用、保守費用、データバックアップ費用、紛失等での再取得費用等を原則として一切負担しない。
2)私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する従業員等は、業務利用部分の通話費用を明確にした請求書を作成し、部門長、総務部門を経由して経理部門に届け出るものとする。その場合、加入電話会社が提供する通話記録の明細書を添付しなければならない。
3)前項の請求分は毎賃金計算期間の末日に締め切り、別途「賃金規程」(省略)に定める賃金支払日に支給する。

第6条(善管注意義務)
1)私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する従業員等は、個人情報保護、不正競争防止、情報管理における一般的な知識の下、法令を順守し、善良なる管理者の注意をもって私有スマートデバイスを管理、運用しなければならない。
2)従業員等は、本規程、その他情報セキュリティに関連する全ての規程等(以下「情報セキュリティ等の規程等」)の改定、変更に注意を払い、常に最新の情報セキュリティ等の規程等を十分に理解するよう努めなければならない。
3)従業員等は、私有スマートデバイスの管理、運用に当たり、業務で利用する情報とプライベートで利用する情報を、明確に分けておかなければならない。
4)従業員等は、私有スマートデバイスを紛失し、もしくは盗難に遭った場合、またはコンピューターウイルスに感染し、もしくはその恐れがあると判断した場合には直ちに上長等に報告しなければならない。

第7条(監査)
1)私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する従業員等は、会社の求めに応じて、情報セキュリティ等の規程等に関する適用状況について、監査を受けなければならない。
2)私有スマートデバイスで会社の情報システムに接続する従業員等は、監査において、デバイスの安全性や設定状態、業務情報の保存状態の開示、これらを確認するための操作に協力しなければならない。

第8条(緊急措置)
1)会社は、会社のデータやプログラム、もしくは情報システム、または顧客のデータ(以下「データ等」)の保護のため必要と判断される場合、従業員等の私有スマートデバイスによる会社の情報システムへの接続を解除することができる。
2)従業員等は、本規程に違反し、もしくはその恐れがあると判断された場合、速やかに私有スマートデバイスの利用を中止し、上長等に報告するとともに、本規程で定められた手順、もしくは上長等の指示にのっとり、私有スマートデバイスにあるデータ等の消去など、適切な処置を講じなければならない。
3)前項の私有スマートデバイスにあるデータ等の消去には、状況に応じて私有スマートデバイスに保存されたプライベートで利用する情報が含まれる場合がある。
4)上長等は第1項および第2項に規定する措置を実施するに際し、合理的かつ有効な措置を従業員等とともに講じなければならない。
5)従業員等が第2項にあるデータ等の消去などを速やかに行わない、もしくはそれらの措置を講じることが困難な場合、会社は強制的にデータ等の消去などを行える権利を有するものとする。

第9条(免責)
従業員等は、業務遂行において私有スマートデバイスを利用するに当たって生じるリスクについて、全ての責任を負うものとし、会社は一切責任を負わないものとする。これには、会社が第8条第3項にある私有スマートデバイスに保存されたプライベートで利用する情報などを消去した場合を含む。

第10条(賠償)
従業員等が本規程に違反し会社に損害を与えた場合、会社は当該従業員等に対して相当分の賠償を求める場合がある。

第11条(罰則)
従業員等が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。

第12条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則
本規程は、○年○月○日より実施する。

(別表第1)

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(別表第2)

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(別表第3)

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以上(2019年11月)

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画像:ESB Professional-shutterstock

私有スマートデバイスの業務利用BYODについて考える

書いてあること

  • 主な読者:私有スマートデバイスを業務で利用する従業員がいる企業の経営者、情報システム部門、管理責任者
  • 課題:従業員の業務効率化や組織の生産性向上は図りたいが、重要な情報の紛失・漏洩は避けなければならない
  • 解決策:実態を把握した上で、リスクの軽減と、従業員の利便性や業務効率化を勘案した対応をしていく

1 私有スマートデバイスの脅威

1)BYODとは

スマートフォンやタブレット端末などの携行可能な情報通信機器(以下「スマートデバイス」)が普及し、従業員が私有スマートデバイスを業務に利用する「BYOD」(Bring Your Own Device)という考え方が広まっています。

従業員にとってBYODは、使い慣れたスマートデバイスで、自ら導入したアプリケーション(アプリ)やクラウドサービスを利用し、いつでもどこでも業務を行えるという面で大きなメリットがあります。

一方、企業にとってBYODは、従業員の業務効率化や組織の生産性向上、機器の導入や使い方の教育にかかるコストの抑制などが期待できる半面、重要な情報の紛失・漏洩の危険性もはらむ悩ましい課題です。

2)情報漏洩が発生すれば企業の責任が問われる

業務用の社有パソコンについては、多くの企業が情報システム部門や管理責任者などを設置し、端末の管理規程や利用マニュアルを整備し、情報セキュリティや個人情報保護に関する教育などの措置を講じ、取り扱いを管理・監視する体制を構築していることでしょう。

一方、従業員の私有スマートデバイスについては、あくまで「私物」であり、企業の管理の範囲外と見なしているケースもあるようです。しかし、仮に、業務にスマートデバイスを利用し、そのことが原因でセキュリティ被害や情報漏洩が発生した場合には、「そのスマートデバイスが社有か、私有か」「利用場所は社内か、社外か」「利用時間は業務時間内か、業務時間外か」などにかかわらず、企業の責任が問われることになります。

3)リスクを認識し、実態に即した対応が求められる

企業がルールを定めなければ、従業員は私有スマートデバイス内に、業務データとプライベートなデータを混在させて保存することになります。従業員のプライベートなデータを企業が管理・監視することは、プライバシーの権利の観点からも現実的ではありませんが、業務データは企業が管理・監視し、守るべき重要な経営資源の1つです。

従業員が、私有スマートデバイスを使って社有パソコンと同等の業務データを取り扱えるという状況は紛れもない事実であり、その状況を看過、黙認することは、業務データの紛失・漏洩などにつながりかねません。

企業は、BYODにおける脅威およびリスクを認識する必要があります。そして、自社のBYODの実態を把握した上で、リスクの軽減と、従業員の利便性や業務効率化を勘案した対応をしていくことが求められます。

2 BYODにおける脅威およびリスクの例

BYODにおける脅威およびリスクの例として次が挙げられます。

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従業員は、私有スマートデバイスを常に持ち歩くため、紛失、水没や落下による故障といった偶発的な事象によって業務データが漏洩、消失する恐れがあります。

また、悪意を持った第三者による盗難、画面ののぞき見、不正プログラムへの感染などによって業務データが漏洩する恐れもあります。

さらに、タッチパネルの反応範囲や反応速度による操作ミス、Wi-Fiの自動接続設定をオンにしておいたことによる不正な無線LANアクセスポイントへの接続、私的に利用するアプリがGPSの位置情報や電話帳データにアクセスすることを知らずにインストールしていたなど、従業員の認識不足が業務データの漏洩につながる恐れもあります。

3 BYOD導入に当たっての検討課題

1)BYODにおけるリスクへの対応

リスクの大きさは、一般的に、脅威の発生確率、脅威が及ぼす影響度の掛け算によって評価できます。

BYODにおけるリスクへの対応を検討する際には、まず、自社にどのような脅威があるのか、実態を把握し、リスクを適切に評価する必要があります。アンケートやヒアリングを実施するなど、私有スマートデバイスの業務利用について従業員の実態を確認し、脅威を洗い出し、その上で、脅威の発生確率や影響度について評価していきます。

リスク評価の結果は、どのような業務をBYODで遂行するのか/しないのかを決める際の1つの判断材料となります。

2)従業員の利便性や業務効率化の勘案

どのような業務をBYODで遂行するのか/しないのかを決める際、重要なのは、リスク評価の結果と従業員の利便性や業務効率化の関係を勘案することです。

リスク評価の結果、仮にリスクが大きいと判断したとしても、リスクに比して、従業員の利便性や業務効率化の効果が期待できることもあり得ます。また、仮に、リスクが大きいという理由で、ある業務をBYODで遂行することを禁止したとしても、隠れて行う従業員が出てくる可能性もあります。

リスクへの対応は、リスク評価の結果と従業員の利便性や業務効率化を比較検討し、経営判断を下すことになります。

3)セキュリティ対策の考え方

BYODにおけるセキュリティの確保は、従業員の意識次第という面は否めません。そのため、BYODにおけるセキュリティ対策を検討する際には、従業員による運用面と企業(情報システム部門)による技術面の2つの側面から考える必要があります。BYODにおけるセキュリティ対策例として次が挙げられます。

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例えば、盗難や紛失は、発生してしまうことを前提に、「端末内に業務データを残さないこと」が情報漏洩を防ぐための基本的な考え方となります。その上で、業務データが残っている可能性を考慮し、「第三者による侵入やデータの窃取を防ぐために端末をパスワードで保護しておくこと」、さらに「万一、端末のパスワードが破られた場合に備えてデータを暗号化しておくこと」が必要といえるでしょう。

4)従業員の私的なデータと業務データの使い分け

BYODで重要なのは、私的なデータと業務データを明確に使い分けることです。これらが端末内で混在して保存されていた場合、万一の際、業務データの情報漏洩を防ぐために、リモートワイプ機能で私的なデータも一緒に消去しなければならなくなります。

また、私的なデータと業務データがクラウドサービスなどの外部記憶域で混在して保存されていた場合、業務データが個人ごとに異なるクラウドサービスに広く拡散し、情報漏洩などが発生した際の原因究明や対策が困難になってしまいます。

業務で利用するアプリやアカウントは、プライベートで利用するアプリやアカウントと別にするなど、「公私を使い分ける」ことを従業員に理解させる必要があります。

5)利用終了時の取り扱いの明確化

従業員が退職したときやスマートデバイスを買い替えたときなどには、それまで使ってきたスマートデバイスを、業務で利用できないようにしなければなりません。その際、顧客情報や業務上知り得た機密情報などが、端末内に残存していないかチェックし、残っていれば削除する必要があります。また、ファイルサーバー、社内ネットワークなどへのアクセス権限も削除します。

ただし、従業員が個人で利用しているクラウドサービスのシステム上に残っている業務データについて、企業側で把握することは困難です。そのため、クラウドサービスについてあらかじめ利用を禁止するか、クラウドサービスのシステムから業務データを削除したことを誓約させるなどの措置が必要です。

6)費用負担

業務目的以外で従業員が自費で購入した有償アプリの取り扱い、スマートデバイス本体の購入代金の負担、通信費の負担などについても取り決めておく必要があります。

例えば、セキュリティ対策製品の導入や業務アプリのインストールなどについては、状況によって企業側の費用負担を考慮する必要があるでしょう。

なお、ビジネス用には050で始まる番号(IP電話)、プライベート用には080/090で始まる番号を簡単な操作で使い分けでき、ビジネスで利用した通話料は企業に請求するサービスもあります。そうしたサービスの利用も検討するとよいでしょう。

以上(2019年11月)

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画像:photo-ac