17年ぶりのガイドライン改定 パソコン業務による健康問題

書いてあること

  • 主な読者:長時間のパソコン業務がある企業の経営者など
  • 課題:この業務による従業員の健康悪化は問題。どうすれば防げる?
  • 解決策:「片方のまぶたがけいれんする」などの症状は、作業環境が原因である可能性が高い。症状を訴える従業員がいたら、付属のチェックシートを使って改善点を確認する

1 アンケートに見るパソコン業務への対応

長時間に及ぶ「情報機器作業」(パソコンやタブレット端末などを使ったデータ入力、文章・画像の編集、監視などの作業)は、眼精疲労、首・肩こり、腰痛、抑うつ症状など、さまざまな不調を引き起こす恐れがあり、社会的な問題となっています。

しかし、全国の経営者に対して行った独自アンケートによると、情報機器作業による健康悪化への対応を「行っている」のは全体の21.0%にとどまり、「健康悪化が認められるが行っていない」のは36.9%という結果になりました。

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「健康悪化が認められるが行っていない」、最も大きな理由は「どんなことをしたらよいか分からないから」の30.6%、次は「対応を進める上での知識・ノウハウがないから」の25.9%でした。

情報機器作業による従業員の健康悪化に問題意識を持ちつつも、情報不足により具体的な対応策を見いだせない企業が多いことが分かります。

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一方、対応を講じている企業に具体的な対応策を聞いてみたところ、最も多かったのは、「照明・採光の調整・管理」の58.3%、次は「デスク(作業台)や椅子の改善」の56.5%でした。

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必要な対策は作業環境などによって異なりますが、具体策を検討する上で参考になるのは、実に17年ぶりに改定された「情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン」(以下「ガイドライン」)です。

2 17年ぶりに改定されたガイドラインのポイント

ガイドラインは、2002年4月に公表された「VDT(Visual Display Terminals)作業における労働衛生管理のためのガイドライン」を、近年の情報機器の多様化などを踏まえて、17年ぶりに改定したものです。

ガイドラインは、産業医学や人間工学などの知見に基づき、適切な採光条件や作業時間などを具体的に示しており、産業医による職場巡視の際などに、チェックの基準となります。

ガイドラインの改定のポイントは、情報機器作業において、「拘束性のある作業」を健康悪化の最も大きな原因としたことです。拘束性のある作業とは、次の通りです。

  • 【拘束性のある作業の定義】
    1日に4時間以上情報機器作業を行う者であって、次のいずれか
    • 作業中、常時ディスプレイを注視、または入力装置を操作する必要がある
    • 作業中、自身の裁量で適宜休憩を取ることや作業姿勢を変更することが困難である

ガイドラインでは、上記のような作業者に対し、事業者は、適切な作業環境管理などの他、配置前および1年に1回、「業務歴」「既往歴」「自覚症状の有無」「眼科学的検査」「筋骨格系検査」について健康診断を実施することとしています。

これら情報機器作業に関する健康診断は、一般的に「VDT健診」などと呼ばれます。VDT健診では、受診者ごとに眼や首・肩などに関するアドバイスや、作業環境の改善点の指摘などを行ってくれることが多いようです。

■情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン(厚生労働省「職場における労働衛生対策」ページの「情報機器作業」にアップされています)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei02.html

3 パソコン業務が原因かどうかを見分けるには?

VDT健診を実施している医療機関へのヒアリングによると、「VDT健診を依頼する企業や、情報機器作業による健康悪化を訴える人はかなり増えている。ただし、拘束性のある作業に従事して、健康悪化の症状を訴えている人でも、本当に作業環境の改善が必要なレベルではない場合も多い」(*)とのことです。

(*)2019年12月13日時点

では、どのような症状がある場合に、VDT健診を受診したり、作業環境の改善が必要になったりするのでしょうか。同医療機関へのヒアリングによると、次の自覚症状がある場合、作業環境の改善項目が見つかる可能性が高いとのことです。

  • 【作業環境などが要因となっている可能性が高い症状】
    次のいずれかの症状が、睡眠をしっかり取った翌日も改善しない場合
    • 午後にかけて、眼の奥に痛みを感じる
    • 午後にかけて、眼を開けていたり、物を見るのがつらい
    • 片方のまぶたがけいれんする

上記のような自覚症状を訴える従業員がいたら、原因となっている作業環境を洗い出し、改善していきましょう。

4 【チェックシート】あなたの職場の問題点と改善策

ガイドラインなどを基に、健康悪化の原因になりやすい作業環境と、その改善策の例をチェックシートにまとめたので、ぜひご活用ください。

なお、産業医業務を受託している企業へのヒアリングによると、「工場など製造現場の執務スペースや、小売業のバックオフィスなどは、照明や採光、デスク(作業台)や椅子などの作業環境が整っていないことが多い。ただし、情報機器の数が多くないので改善されやすい」(*)とのことです。

一方で、「パソコン業務が多い企業では、照明や採光、デスク(作業台)や椅子などは整っているものの、姿勢や連続作業時間など、自助努力で改善できる部分が整っていないことが多い」(*)とのことです。

(*)2019年12月13日時点

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5 ノートパソコンでの作業は特に注意

前述した産業医業務を受託している企業へのヒアリングによると、「最近は、フリーアドレスで、従業員がノートパソコンを使う事業所が増えている。ノートパソコンでの作業は姿勢が悪くなりやすい」(*)とのことです。

(*)2019年12月13日時点

日本人間工学会「ノートパソコン利用の人間工学ガイドライン」によると、ノートパソコンでの作業の際には、次のような点に特に注意が必要とされています。

  • ノートパソコンを狭いデスク(作業台)に置いたり、資料を横に置きながら作業したりすることで、ねじれ姿勢になりやすい
  • ノートパソコンはディスプレイとキーボードが一体化しているため、前かがみになり、眼との距離が近くなりやすい
  • キーが小さかったり、作業スペースが十分でない場合、手首が外側へ曲がった窮屈な姿勢になったり、手首に対して指先側が外側へ曲がりすぎたり(尺側変位)、手首から先が上方向(背屈)あるいは下方向(掌屈)に曲がりすぎたりしやすい

このような状況で作業している従業員が見られる場合は、正しい作業姿勢を図解したチラシなどを用いて、自助努力による姿勢改善を促しましょう。

また、キーボードが小さすぎると感じる従業員のために、外付けキーボードを用意しておくのもよいでしょう。

以上(2020年1月)

pj40040
画像:pixabay

徳川家康(武将)/経営のヒントとなる言葉

「勝事(かつこと)ばかり知(しり)てまくる事をしらざれば害其身(そのみ)にいたる」(*)

出所:「東照公御遺訓」(久能山東照宮ウェブサイト)

冒頭の言葉は、

  • 「敗北から学び、逆境を乗り越えた者が、最終的に大きな成功をつかむ」

ということを表しています。

織田信長(おだのぶなが)、豊臣秀吉(とよとみひでよし)とともに、戦国の三英傑の1人に数えられる家康。「鳴かぬなら鳴くまで待とう時鳥(ほととぎす)」という言葉でも知られ、三英傑の中でも特に忍耐強い武将というイメージがあるかもしれません。

しかし、生来の家康は、実はとても気が短い人物だったといわれています。家康の気の短さを象徴する戦(いくさ)の1つに、武田信玄(たけだしんげん)と対峙した三方ヶ原(みかたがはら)の戦い(1572年)があります。

この戦で、家康は上洛を目指す信玄が、敵である自分の居城を攻めずに素通りしようとしたことに腹を立て、兵力差があるにもかかわらず、武田軍に攻撃を仕掛けてしまいます。結果は大敗、家康は多くの家臣を失いながら、命からがら城へと逃げ帰ります。自分の短気な性格のせいで大きな敗北を味わった家康は、後年この戦での憔悴(しょうすい)した姿を肖像画として描かせ、自分への戒めとして生涯離さなかったといわれています。

信玄の死後、家康は同盟を結んでいた信長とともに武田氏を滅ぼし、大大名となりますが、本能寺の変(1582年)で信長が討たれると、その家臣である秀吉への臣従を余儀なくされます。しかし、家康はその立場を受け入れ、10年以上もの間、自分が天下を取るチャンスを虎視眈々(たんたん)と待ち続けたのです。

家康の中には、「気の短さを克服しなければ、三方ヶ原の戦いのような敗北を再び味わうことになる」という思いが少なからずあったのでしょう。過去の敗北を決して忘れまいとする家康の姿勢は、次の言葉からもうかがい知ることができます。

「こころに望(のぞみ)おこらば困窮したる時を思ひ出(いだ)すべし」(*)

秀吉の死後、家康は関ヶ原の戦い(1600年)で、秀吉の家臣だった石田三成(いしだみつなり)を倒し、征夷大将軍に任命されます(1603年)。武家としてトップの地位を手に入れた家康でしたが、豊臣家とこれに従う多くの大名が依然として天下取りの障害となっていました。そこで家康は、豊臣家を滅ぼす大坂冬の陣・夏の陣(1614年・1615年)までの間、再び忍耐の時期を過ごすことになります。

家康は征夷大将軍に就任した時点ですでに60歳を超えていました。「人生50年」といわれたこの時代に、高齢の身でチャンスを待ち続けるのは、勇気のいる選択だったかもしれません。しかし、短気な性格のせいで失敗した経験を忘れず、耐え忍んだことが、最終的に家康を天下人に押し上げ、250年以上にわたる江戸時代の礎を築いたのです。

ビジネスでも、競合の動きを見るためなど、あえて「待ち」に徹し、耐え忍ばなければならないときがあります。しかし、経営者にとって「待ち」に徹するというのは、ある意味、行動を起こすよりもつらいことです。

行動を起こせば、それに応じて何らかの結果が返ってきます。結果が良ければ「自分の行動は正しかった」、悪ければ「改めるべきところがあった」と振り返ることができるでしょう。

一方、「待ち」に徹するというのは、競合の動きなどに目を光らせながら、将来の成功のための下準備を進めることです。この下準備は、短期的に結果を出すためのものではないため、経営者は「『待ち』に徹するという選択が本当に正しいのか」について、確信を持つのが難しいのです。これはとても怖いことです。また、経営者が大きな行動を起こさない状態が続けば、「なぜ社長は動かないんだ……本当に大丈夫なのか?」と言い出す社員も出てくるでしょう。

そうしたとき、経営者に試されるのは「自分の直感を信じ抜く勇気」です。経営者がこれまでの人生で培ってきたビジネスの経験値は、並大抵のものではありません。たとえすぐに答えが見えなくても、自分の信じたタイミングが来るのを待つのです。

忍耐はいつか実を結びます。成功をつかんだときは、経営者は社員の手を取って「『待ち』に徹したかいがあった」と喜びを共有しましょう。社員は思うはずです。「この社長についてきてよかった」と。そのときこそ、「ここまで一緒に耐えてくれてありがとう」と、社員に心からの感謝を伝えることを忘れてはなりません。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

とくがわいえやす(1542〜1616)。三河(みかわ)国(現愛知県)生まれ。豊臣秀吉(とよとみひでよし)没後に関ヶ原の戦いにおいて東軍を率いて、石田三成(いしだみつなり)と対戦し、勝利。征夷大将軍に任じられ、江戸幕府を開く。

【参考文献】

(*)「東照公御遺訓」(久能山東照宮ウェブサイト)

以上(2020年1月)

pj15180
画像:Josiah_S-shutterstock

【朝礼】「裏メニュー」が出てくる関係の作り方

私は、旅行をしたときや、新しいお店で食事をするとき、積極的に地元の人や店員に話しかけるようにしています。

先日の出張でもそうでした。次のアポイントまで少し時間が空いたので、私は小さな川沿いの道を歩いていました。そのときはまだ、私にとって何の変哲もない小川です。少し歩いて喉が渇いたので、私は川沿いにあるカフェに入りました。そのカフェには小さな美術館が併設されていて、ちょっと変わった空間でした。

コーヒーを注文するとき、「美術館が併設されているなんてすてきですね」と、店員に話しかけたところから会話が始まりました。その店員は、なんと美術館の館長で、小川や展示物のことをいろいろと教えてくれました。例えば、小川には、秋になると鮭が帰ってくるそうです。また、川辺には季節ごとに美しい花が咲き、展示物はそうした自然をモチーフにしているとのことでした。

館長の話を聞いたことで、何の変哲もなかった小川が、一気に特別なものになりました。鮭が帰ってくる様子や、季節の花が咲き誇る景色を想像するのは楽しいものです。同じ時間を同じ場所で過ごすとしても、経験に格段の深みが増すことが分かると思います。

飲食店でも同じです。「おいしいですね」「丁寧な接客をありがとう」と伝えることで、店員はお店の歴史や大切にしていることを教えてくれたり、ちょっとしたサービスをしてくれたりします。

皆さんの中には、店員に気軽に話しかける私の姿を、“オヤジ臭い”と言う人がいます。店員が女性の場合は余計に、「私がその店員と話したいだけ」だと思うのでしょう。そう言われると、私は「なんて発想力がないのだ。もったいないな」と思ってしまいます。

日本では、黙っていても金額なりのサービスが受けられます。しかしそれは、マニュアル通りの、何の変哲もないサービスです。一方、いきつけの飲食店で「裏メニュー」が出てくることがありますが、いきなり出てくるわけではありません。店員と仲良くなり、「作ってほしい」「食べてみたい」などと、こちらからお願いしたからこそ出てくる、特別なサービスなわけです。

商談相手に、「予算がない」と紋切り型の断り文句を言われ、諦めている人はいませんか。無機質に断られてしまうのは、こちらも決まり切ったマニュアル通りの営業しかできていないからです。相手は予算を持っています。ただ、「私たちにその予算を使おう」と思ってくれていないだけなのです。相手にとって、皆さんは何の変哲もない営業担当でしかありません。早くそこから脱し、特別な存在になりましょう。相手が求めることを考えるのが基本ですが、いきなりビジネスの話をしているようでは駄目で、会話の広がりが大切なのです。どうすればよいのか。そのヒントは、飲食店の店員との気軽な会話にあることも少なくないのです。

以上(2020年1月)

pj16990
画像:Mariko Mitsuda

マーケティングの基礎知識~マーケティングの3C編~

書いてあること

  • 主な読者:マーケティングを活用して利益を増やしたい経営者、経営戦略担当者
  • 課題:マーケティング手法に関する知見が足りない
  • 解決策:マーケティングの3C分析に基づいて戦略を練る

1 マーケティングの定義付け

日本マーケティング協会では、マーケティングについて、次のように定義しています。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である

企業活動におけるマーケティングとは、企業の利益を増加させることを目的としています。これを実現するために、顧客にとってより良い製品やサービスを、顧客が買ってくれそうな価格を付け、効率的かつ顧客の手元に届きやすい流通経路で販売し、顧客にとってより訴求力のあるプロモーションを行う一連の活動を指しているといえるでしょう。

■日本マーケティング協会■
https://www.jma2-jp.org/

2 マーケティングの3Cとは

具体的なマーケティングの手法や戦略を考える際に必要なのが次の「マーケティングの3C」による分析です。

  • Customer(カスタマー=顧客(市場))
  • Competitor(コンペティター=競合)
  • Company(カンパニー=自社)

3Cの視点はマーケティングを行う上で基本となるもので、「顧客(市場)」「競合」「自社」の順番で分析していきます。以降では、3Cのうち「顧客分析」を行う際に役立つ代表的なフレームワークを紹介します。

1)顧客分析に役立つAIDMAモデル

例えば、コーヒーを中心に製造販売している飲料メーカーであれば、次の点などを把握しておく必要があります。

  • どのような属性の顧客(年代・性別・職業など)が
  • どのようなコーヒー(銘柄や微糖・無糖など)を
  • どのようなシーンで
  • どのくらいの頻度で購入しているのか
  • なぜ購入したのか(購入の理由)

これらのことを知るためには、定期的に顧客を対象としたアンケート調査などを行って顧客の生の声を収集し、その結果をデータベース化しておくなどの方法が考えられます。

また、顧客を分析する上では「顧客が製品を認知してから購買に至るまでのプロセス」を把握しておきましょう。この際に役立つのが「AIDMA(アイドマ)モデル」です(「AIDMAの法則」と呼ぶこともあります)。AIDMAモデルとは、顧客が製品を認知してから購入に至るまでの心理的プロセスを段階的にモデル化したもので、次の5段階の心理的プロセスモデルの頭文字をとっています。

  • Attention(注意=注意を引き、目にとまる)
  • Interest(関心=興味を持つ)
  • Desire(欲求=欲しいという欲求が発生する)
  • Memory(記憶=心に刻み、あるいは思い出す)
  • Action(行動=購買という行動に出る)

このAIDMAモデルで顧客がコーヒーを購入するまでのプロセスを考えてみると、次のようになります。

  • Attention「へえ~『○○コーヒー』という商品が発売されたのか」
  • Interest「ダイエットに効果がある成分が含まれているんだ。興味があるな」
  • Desire「どんな効果があるか飲んでみたいな」
  • Memory「そうだ、今日のランチのときに飲んでみようか」
  • Action「よし買おう!」

製品やサービスの種類によって、心理的プロセスには多少の違いがありますが、顧客が何に注意を引かれ、どのように興味を持ち、そしてどのような場面で購買を思い立つかを把握することが大切です。

2)顧客識別に役立つRFM分析

顧客分析の一つの手法として「RFM分析による顧客の識別」があります。これは自社の顧客を、「R:最新購買日(Recency)=最近いつ購入したか」「F:購買回数(Frequency)=どのくらいの頻度で購買しているか」「M:購買金額(Monetary)=いくら使っているか」という3項目で評価するものです。

RFM分析では、それぞれの項目ごとに区分を決定し、段階をつけて評価していく方法が知られています。RFM分析の例は次の通りです。

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例えば、ほぼ毎日来店し、必ず3000円分購入する顧客AのRFMは、R=3日以内(ランク5)、F=20回以上(ランク5)、M=3000円以上(ランク5)であり、顧客AのRFM分析による評価は555(全てがランク5)となります。

RFM分析の評価は「555」が最高で、この評価の顧客は自社にとってかなりの優良顧客といえます。「555」評価の顧客に対しては、末長くリピーターでいてもらうために、「季節のあいさつなどを欠かさず密に連絡を取る」などの「親密度を高め、顧客側が大事にされていると認識できる」方法を用いると効果的でしょう。

このRFM分析では、自社にとっての優良顧客を見極め、いかにして「555(全てがランク5)の顧客」にするかを考察することがポイントです。

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このように、RFM評価を活用すると、顧客ごとの特徴をつかみやすくなります。

例えば、R評価が同レベルの顧客の場合、F評価の高い顧客のほうが、購入頻度が高い傾向にあり、自社にとって良い顧客ということになります。また、F評価は低いもののM評価の高い顧客がいる場合、R評価で比較し、そのR評価の高い顧客に対して優先的にアプローチすることも考えられます。

以上(2019年12月)

pj70020
画像:unsplash

マーケティングの基礎知識~マーケティングの4P編~

書いてあること

  • 主な読者:マーケティングを活用して利益を増やしたい経営者、経営戦略担当者
  • 課題:マーケティング手法に関する知見が足りない
  • 解決策:まずはマーケティングの4Pに基づく視点で戦略を練る

1 マーケティングの定義

日本マーケティング協会では、マーケティングについて、次のように定義しています。

マーケティングとは、企業および他の組織がグローバルな視野に立ち、顧客との相互理解を得ながら、公正な競争を通じて行う市場創造のための総合的活動である

企業活動におけるマーケティングとは、企業の利益を増加させることを目的としています。これを実現するために、顧客にとってより良い製品やサービスを、顧客が買ってくれそうな価格を付け、効率的かつ顧客の手元に届きやすい流通経路で販売し、顧客にとってより訴求力のあるプロモーションを行う一連の活動を指しているといえるでしょう。

■日本マーケティング協会■
https://www.jma2-jp.org/

2 マーケティングの4Pとは

マーケティングの手法や考え方にはさまざまなものがありますが、基本の1つとされているのが「マーケティングの4P」です。

マーケティングの4Pとは、顧客にとってより良い製品やサービスを、適正な価格で、効果的な販売チャネルによってより多く販売し利益を得る、ということを実現するための4つの要素です。これら4つの要素は一般的に次のように呼ばれます。

  • Product(プロダクト=製品) 
  • Price(プライス=価格) 
  • Place(プレイス=流通) 
  • Promotion(プロモーション=広告などによる販売促進活動)

3 Product(製品)戦略

1)新製品に重要なアイデアの発想

製品開発にまず重要なのは「アイデア」です。アイデアを生み出す方法としては、顧客のニーズから発想する「ニーズ的発想」と、企業内にある技術などのシーズ(種)から発想する「シーズ的発想」があります。 

ニーズに合った製品を開発するために、まずは「ニーズ的発想」によるアイデアを整理して、ターゲットとする顧客や、製品の活用シーンなどを明確にします。例えば、エアコンの場合であれば、アイデア整理方法としては次のように、5W1H方式を用いるとよいでしょう。

  • 誰が(Who):一人暮らしのビジネスパーソンが
  • いつ(When):外出しているときに(自宅にいないときに)
  • どこで(Where):自宅で
  • 何を(What):エアコンを
  • なぜ(Why):エアコンの消し忘れを防ぐために
  • どんなふうに(How):人の存在を感知し、誰もいなければ自動的に電源が切れる

製品開発に関するアイデアを生み出す際に「ニーズ的発想」と「シーズ的発想」のどちらか1つの方法のみで十分ということではありません。両方の発想方法から顧客のニーズに応える製品の開発を考えることが必要です。

2)製品のライフサイクル

人の一生と同様に、アイデアを基に製品化され、市場に投入された製品にも「一生」があります。これを「製品のライフサイクル(PLC=プロダクト・ライフサイクルと呼ぶこともあります)」といいます。製品のライフサイクルは、導入期、成長期、成熟期、衰退期に分けられます。

導入期では、市場に製品が投入されたばかりの頃で、その製品に対する認知度がそれほど高くないため、製品の普及は比較的スローペースで進みます。

成長期では、製品の普及が進み、その価値が認められるようになり、次第に売り上げは伸びていきます。競合製品も次々と投入され、競争が活発化します。

その後、製品がある程度まで普及してしまうと成長が緩やかになり、成熟期に入ります。さらに、代替品の登場などによってますます成長が衰退することになれば、市場から消えていくといった衰退期を迎えるケースもあります。

製品のライフサイクルに基づくマーケティング活動の特徴は次の通りです。

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4 Price(価格)戦略

価格は、企業にとっての目的である「利益」に直結する要素であり、顧客にとっては購買の意思決定を促す重要な要素となります。価格の決定には、大別すると次のような方法があります。

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1)費用重視型

原価のみを基に、一定の額の利益を上乗せして価格を決定する方法です。機械的かつ簡単に価格を設定できるため、販売品目が多岐にわたっている小売業などで用いられる傾向があります。

2)競争重視型

競争相手となる競合他社製品の価格を参考にしながら、自社製品の価格を決定する方法です。例えば、生鮮食品やガソリンなど均質化が進んでいる製品は、価格以外の面で競争相手と差異化を図ることが難しいことから、この方法を用いることが多いようです。

3)需要重視型

顧客の値ごろ感(「この製品がこのくらいの値段だったら購入してもいいな」と顧客が思う値段)を調査し、それに合わせて価格を決定する方法です。顧客の心理的な特徴を考慮した価格設定を「心理的価格設定」といいます。顧客の心理に基づく価格設定方法の例は次の通りです。

5 Place(流通)戦略

製品がメーカーから顧客の手元に届くまでには、「生産者(メーカー)→卸売業者→小売業者→顧客」のプロセスを経ます。このようなメーカーから顧客への製品の流れを流通チャネルといいます。

Place(流通)の大きな目的は、顧客が必要なときに、必要な製品が必要な数量、必要な場所にあり、顧客の手に入れやすさを実現することです。

1)流通チャネルの種類

1.開放的流通チャネル

製品を扱う流通業者を制限しないことによって、幅広く販売する方法です。

この方法は、顧客側から見ると、どの店でもその製品を買うことができることになります。購入頻度の高い日用雑貨や飲料などの製品に用いられることが多くあります。

2.選択的流通チャネル

流通業者を選別して販売する方法です。家電などのアフターサービスが必要な製品や高いブランドイメージを確立したい化粧品やアパレル製品などに適用されます。選別した小売業者などに、メーカーから販売員を派遣したり、販売ノウハウを伝授したりするケースもあります。

3.排他的流通チャネル

特定の流通業者に限定して販売する方法です。メーカーの意図を明確に反映させたい製品などに有効で、高級車や高級ブランド品などに用いられます。

排他的流通チャネルの代表的な手法として知られているのが、「メーカーによる系列化」です。系列化は、メーカー側から見れば流通における自社の意思を浸透させやすい、というメリットがあります。また、流通業者側から見ればノウハウを提供してもらえたり、支援してもらえたりするというメリットがあります。

2)流通における垂直的マーケティングシステム

流通チャネルは、メーカー・卸売業者・小売業者がチームを組んで協力し合い、製品をより効率的に多く販売するという「垂直的マーケティングシステム」の考え方から、次のような3タイプに分類されることもあります。

1.管理型

メーカー・卸売業者・小売業者がそれぞれ独立していますが、メーカーがリーダーとなり、卸売業者や小売業者に対して販売促進活動に関してさまざまな支援を行います。

2.企業型

1つの企業(あるいは企業グループ)が生産・卸売り・小売りの全てを行います。

3.契約型

フランチャイズチェーンやボランタリーチェーンなど、メーカー・卸売業者・小売業者が契約を結んで協力体制で販売活動を行います。

垂直的マーケティングシステムの場合、メーカー・卸売業者・小売業者が協力し合いながら流通体制を整えることによって、情報の共有化が進むという大きなメリットが得られます。特に、小売業者から収集される「性別・年齢層・地域による購買行動などの顧客情報」が共有化できます。

顧客の好みや購買傾向が多岐にわたっている現代では、流通チャネル内において、いかに「顧客情報」をスムーズに流通させるかが重要なポイントになります。

6 Promotion(プロモーション)戦略

プロモーション活動は、主に次のように大別されます。

1.人的促進

人による販売促進活動のことを指します。

2.広告

新聞、雑誌、テレビなどの有料媒体を使い、広告主のメッセージを顧客に伝えるものです。「人手」によるものではないことから、「非人的促進」とも呼ばれることもあります。

3.販売促進

店頭での陳列や店内での陳列広告、製品サンプルの無料配布など、顧客に対して、購買意欲を促進するような活動の全てをいいます。

以降では、プロモーション活動における考え方や評価方法などについて見ていきます。

1)広告効果測定

広告によるプロモーション活動が中心の場合、広告がどれだけの人の目に触れ、どれだけの人に接触したかという「広告効果測定」が重要になります。あまり効果が上がっていないようなら、早い段階で軌道修正する必要があるからです。

広告効果測定の方法としては、「地域限定トライアル広告」という方法があります。これは、試験的に特定の地域に限定して広告を発信し、広告が発信された地域での顧客の購買行動などを、広告が発信されていない他地域と比較する方法です。

また、広告が発信された後、製品についての顧客の認知度について聞き取り調査を行うなどの方法もあります。

広告効果を測定する際の調査項目としては、次のものがあります。

  • 広告到達測定:広告を知っているかどうか
  • 広告内容理解:広告の内容(製品についてなど)は理解したか
  • 広告好意度:広告に対して好意を持ったか
  • 製品購買意向:その製品を購入したか

2)ABC分析を販売促進活動に活用する

販売促進活動は、非常に手間が掛かるものです。店頭でサンプル無料配布を行う、クーポン券を発行するなどさまざまな手法がありますが、どれもかなりの労力やコストを要します。また、顧客のニーズに即した販売促進活動を行わなければ、訴求力に欠けてしまいます。

そこで、参考として、効率的かつ訴求力の高い販売促進活動を行う1つの考え方として、ABC分析に基づく販売促進活動を紹介します。

ABC分析とは、複数あるものを、A・B・Cのランクに分けて評価する分析方法です。例えば、自社の製品を「売り上げへの貢献度」によって3段階に分けて、次のように評価する方法が考えられます。

  • A群:売り上げの80%を占める製品群
  • B群:売り上げの20%程度を占める製品群
  • C群:売り上げに影響を及ぼしていない、ほとんど貢献していない製品群

ABC分析によって、自社が注力すべき製品群が分かり、販売促進計画を検討することができます。

7 マーケティングの4Pのまとめ

これまで、マーケティングの基本ともいえる4Pの手法や考え方を見てきました。マーケティング活動を行う上では、4Pの要素がそれぞれ単独で存在するわけではなく、より良い形に組み合わせて、「顧客満足度を高める」「利益を増加させる」ことを実現しなければなりません。

顧客の「製品やサービスに対する選択の自由度」は高まっています。顧客は豊富な種類の製品の中から、機能や品質、価格などを比較検討し、「本当に欲しい製品を厳選」して購買するようになっています。

企業は常に、顧客に選択される製品やサービスを開発して販売しなければなりません。

企業には顧客それぞれのニーズに合った、あるいは顧客それぞれに訴求力のあるマーケティングがますます求められているのだといえるでしょう。

以上(2019年12月)

pj70019
画像:pexels

オンライン診療の動向

書いてあること

  • 主な読者:オンライン診療を検討する医療機関など
  • 課題:オンライン診療に対してどの程度のニーズがあるのか、どのような課題があるのかを知りたい
  • 解決策:本稿では、各省庁の調査結果などから、オンライン医療の実施状況や、利用者の動向などを紹介している。自医院がオンライン診療を実施するか否かの参考材料として活用できる

1 オンライン診療の概要

オンライン診療は、一般的には医療機関と患者の自宅などをインターネットで結び、医療行為またはそれに準じる行為を行うものです。インターネットを経由するため、時間や場所の制約が少なく、外出が困難な高齢者の診療や遠隔地などでの導入・検討が進んでいます。

厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」によると、オンライン診療は、「情報通信機器を活用した健康増進、医療に関する行為」である遠隔医療のうち、「医師―患者間において、情報通信機器を通して、患者の診察及び診断を行い診断結果の伝達や処方等の診療行為を、リアルタイムにより行う行為」とされています。遠隔医療の分類は以下の通りです。

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2 オンライン診療のニーズ、認知

本稿では、各省庁の調査結果などから、オンライン医療の実施状況や、利用者の動向などを紹介します。

1)実施数

厚生労働省の資料「オンライン診療に関するアンケート集計結果」は、実際にオンライン診療を実施している医師を対象にした、オンライン診療を受ける患者数やオンライン診療を実施する際の課題などのアンケート結果を集計しています。

同アンケートにおける、オンライン診療を導入している患者数は次の通りです。

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2)ニーズおよび認識

同省の資料「平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査」によると、オンライン診療に対する医療関係者の主なニーズおよび認識などについて調査結果が公表されています。

この調査によると、オンライン診療の実績がある医療関係者の58.3%が、「オンライン診療に対するニーズは少ない」と回答しています。また、オンライン診療の実績がある医療関係者の66.7%が、「オンライン診療を行うメリットが手間やコストに見合わない」と回答しています。

■厚生労働省 平成30年度診療報酬改定の結果検証に係る特別調査(平成30年度調査)の報告書案について■
https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000493972.pdf

3)オンライン診療に対する利用者の動向

内閣府「平成29年 高齢者の健康に関する調査結果」では、全国の55歳以上の3000人を対象に実施された、インターネットで医療や健康に関してどのような情報を入手しているのかが示されています。「医療や健康情報のインターネットでの入手」に対する回答結果は次の通りです。

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3 オンライン診療の課題

オンライン診療の課題として一般的に挙げられるものとして、「患者の病歴などの個人情報の安全性を確保することが難しい」「通信環境の不良により患者との適切なコミュニケーションを取ることが難しい」「患者のカメラの光の加減や角度で適切な診断が難しい」「遠隔のため患者が正確な症状を伝えることができない・しない」などの課題があります。

厚生労働省の資料「オンライン診療に関するアンケート集計結果」によると、オンライン診察時のトラブルとして、次のようなものが挙げられています。

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4 医療機関のオンライン診療に対する意欲

医療関係者向けの情報を発信するエムスリーでは、2018年1月30日~2月5日に会員制サイト「m3.com」を通じてオンライン診療についてアンケートを実施しました(回答者数1535人)。

オンライン診療を現在実施しているとの回答は、全体の4%強にとどまり、勤務医の56.5%、開業医の73.4%が実施したいとは思わないと回答しています。一方で、勤務医の36.7%、開業医の20.3%が今後実施する予定または実施したいと回答しています。

なお、このアンケートでは、オンライン診療の普及に対しての賛否も調査しています。それによると、勤務医の42.0%が賛成、10.0%が反対と回答しているのに対し、開業医は21.2%が賛成、20.9%が反対と回答しており、オンライン診療に対する認識に違いがあることが分かります。

■エムスリー m3.com意識調査「『オンライン診療、実施予定・したい』、勤務医36.7%、開業医20.3%」■
https://www.m3.com/open/iryoIshin/article/585294/

5 自治体・医療機関の動向

1)愛知県:オンライン服薬指導

愛知県は、高齢化が進む離島(西尾市の一部、南知多町)や山間地(新城市、東栄町など)が国家戦略特区に指定され、離れた場所にいる患者に、薬の飲み方を指導するオンライン服薬指導に取り組んでいます。

愛知県によると、オンライン服薬指導を実施する薬剤師側には、患者が自宅に居ることで、患者のプライバシーが保たれることや、薬の残量も確認できるなどのメリットがあるものの、システムの操作方法の説明や、画面越しでの服薬指導のために、医療機関で指導するよりも手間と時間が掛かったそうです。

患者側からは、オンライン服薬指導は事前予約が必要で、予約した時間にシステムを起動させることが必須などの手間がかかったそうです。

2)茨城県石岡市:医療相談アプリを試験導入

住民1人当たりの小児科医の数が全国最少といわれる茨城県石岡市は、医師不足を解消する取り組みとして子育て世代を対象とした、医療相談アプリ「LEBER(リーバー)」の実証実験を行っています。リーバーは、AGREE(茨城県)が提供するアプリです。同アプリは、チャットボット(自動会話プログラム)が問診を行い、回答に沿って医師が市販薬の推奨や、適切な診療科などの情報を提供します。

同市へのヒアリングによると、このアプリの対象となる世代(石岡市内に居住し、0~3歳児のいる世帯)の約30%が既にユーザー登録を済ませているそうです。ユーザー登録が進んでいることの背景として、「日常的にスマートフォンを利用する子育て世代に向けた取り組みであることに加え、ダイレクトメールの送信や、石岡市の広報にアプリの情報を掲載したことなどが挙げられる」とのことです。(*)

一方で、今後の想定される課題として、「増加するユーザーの入退会の管理や、操作方法の分かりやすい説明が挙げられる」とのことです。(*)

また、医師からは「すきま時間」を有効に活用するために、新たにこのアプリで情報を提供できないかどうかの問い合わせを受けているそうです。

________________________________________
(*)茨城県石岡市(2019年9月13日時点)

以上(2019年12月)

pj50475
画像:photo-ac

【朝礼】考えたら行動する。それが基本だ!

今年の4月から偶数月に皆さんと個人面談をしています。12月で5回が終わったわけですが、この面談を通じて、皆さんがさまざまなことを考え、また意見を持っていることが分かりました。

例えば、「業務プロセスを改善したい」「若手の教育をもっと丁寧にやりたい」「業務の平準化を図って、全体の残業時間を削減したい」「資格を取得して、もっと自分のスキルを高めたい」など、とても素晴らしいものです。

ただ、残念なことがあります。それは、私が少し質問をしただけで、皆さんは自分の考えを言えなくなってしまうことです。私は決して難しい質問をしているわけではありません。「資格を取得したい」という人には、「何の資格を取得するのか、いつから勉強を始めるのか」といったことしか質問していません。また、「若手の教育体制を整えたい」という人には、「仕組みができるまでの間、あなたの残業が増えるかもしれませんが、よろしくお願いします」と言うと、「自分の残業が増えるのは嫌です」と答えます。しかし、残業をせずに若手の教育体制を整える具体的な方法を考えているわけではありません。

「『口だけ』で、しっかりと考えていないのだな」と感じます。「何かをやりたい」という気持ちの強さは人それぞれです。「本気でやりたい!」という強いものから、言ってみただけという程度のものまであります。皆さんのお話の多くは、言ってみただけ程度のものだったのでしょう。

しかし、私は、言ってみただけ程度でもいいと思っています。前向きに捉えるなら、何も考えていなければ口にすら出さないはずですから、それほど気持ちは強くなかったとしても、「やりたい!」という気持ちがあるのは確かなはずです。

少し寝坊をした休日。ランニングや買い物など、やりたいことがあるけれど、ダラダラとしているうちに気付いたら夕方になってしまい、結局何もしなかったという経験はありませんか。人は、「面倒だ」「難しい」と感じることほど、勢いで始めてしまわないと、なかなか行動に移すことができません。やりたい気持ちがあまり強くないことについても、これと同じです。

実際に行動をしてみると、やりたい気持ちが高まったり、逆に自分が求めていることではなかったと気付いたりします。結果として、三日坊主で終わるものもありますが、行動を起こさなければ分からないことなのです。

言ってみただけ程度でも、それを行動に移すことさえできれば、それが皆さんの成長のきっかけになります。ここで皆さんにお聞きします。皆さんは、私にいろいろなことを話してくれました。「それで、皆さんは行動しますか、考えているだけで終わりますか?」

次の個人面談は2カ月後です。もちろん、私が個人面談で聞きたいのは、皆さんの本気です。今朝の朝礼をきっかけに皆さんが行動し、やりたい気持ちが高まれば素晴らしいことです。

以上(2019年12月)

pj16985
画像:Mariko Mitsuda

豊臣秀吉(武将)/経営のヒントとなる言葉

「信長公は勇将なり、良将にあらず。剛の柔に克つことを知り給ひて、柔の剛を制することを知られず」(*)

出所:「名将名君に学ぶ 上司の心得」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

  • 「部下から恐れられるような態度を取っていては、良いリーダーとはいえない。リーダーは、部下の心情、部下の視点に配慮することが求められる」

ということを表しています。

秀吉は織田信長に仕え、こまやかな心配りや機転の良さによって、頭角を現したことで知られ、こうした秀吉の特性は次のエピソードにも見られます。

ある日、秀吉は信長から、城の薪代がかさんでいるため、節約を図るように命じられて、薪奉行を任されます。それを受けて、秀吉は台所で使用する薪代や、暖房として必要な薪代などについて関係者に話を聞き、使用量を調べたところ適正量であり、薪代がかさんでいるのにはほかの原因が考えられました。

秀吉は次に薪の流通経路に着目しました。すると、薪の生産地から城に運び込まれる間に、多くの中間業者が存在し、マージンを受け取っていることが明らかになったのです。また、一説によると、秀吉の前任の薪奉行は中間業者から賄賂を受け取っていた可能性もあるようです。

そこで、秀吉は中間業者を通さない新たなルートで、薪を調達することを思い付きます。そうすれば、前任の薪奉行が不正を働いていたことは公になることはありません。秀吉は、領内の村を訪ねて回り、薪として使用できる古い木を無料で城まで運び、古い木と引き換えに苗木を渡すという交渉を取り付けました。この秀吉のやり方に信長は満足しました。また、「不正が明るみに出ないように」という秀吉の配慮に対して、前任の薪奉行も感謝したようです。

秀吉は「主である信長の命令にさえ応えられればよい」「自分さえ手柄を立てられればよい」という上下関係の視点だけではなく、前任の薪奉行、領内の村など多くの関係者が満足するようにうまく利害を調整しています。

秀吉の成功には、信長に取り立てられて力をつけていったという側面だけでなく、自ら周囲の人をうまく巻き込んで、もりたててもらったという見方ができるのではないでしょうか。

秀吉は低い身分から後に天下人にまで出世を果たしますが、こうした過程で秀吉は自分が臣下の立場で感じた、リーダーに対する思いを、自らがリーダーになった際に生かしています。

例えば、冒頭の言葉は主君であった信長の非情な性格について秀吉が言及したものの一部で、信長は恐れられこそすれ愛されることがなかったリーダーであり、こうした信長の性格が明智光秀の裏切りを招いたと、冷静に分析しています。

また、信長に仕える以前の主であった松下之綱の下を、将来性が無いと感じて去る際に、次のような言葉を残したとされています。

「およそ主人たる者、一年使ひ見て、役に立たぬ時は暇を遣はし、家来としては、三年勤めて悪ししと知らば、暇を取ること、法なり」(**)

秀吉は多くの臣下を抱える主となった後も、“臣下の心情”“臣下の視点”に配慮して接したことで、竹中半兵衛、黒田官兵衛など、多くの才能ある将を引き付けたのかもしれません。

リーダーはリーダーであり、部下とは同じ立場に立てるわけではありません。リーダーに求められるのは、組織を健全に保つため、律するべき部下を律し、引き上げるべき部下を引き上げるということです。リーダーはミスを犯した部下を叱責しますが、その目的はその部下に同じミスを犯さないように気付いてもらうためです。一方、良い仕事をした部下を引き上げますが、その目的は、その部下のやる気を高め、組織全体に良い影響を与えるためです。決して、リーダーの個人的な好き嫌いによって、部下への処遇や評価が変わるわけではありません。

こうしたリーダーの姿勢は、マネジメントの基本ですが、さらに部下への配慮や気遣いというエッセンスを加えることで、その効果を高めることができます。

部下は、リーダーと部下の置かれている立場が異なることを理解しています。だからこそ、リーダーの部下への配慮や気遣いを感じた部下は、そうしたリーダーの姿勢に応えたいと思い、一生懸命に仕事に取り組んでくれるでしょう。

部下への配慮や気遣いとは、部下のためだけではなく、リーダーを助け、結果的に組織の発展へとつながるものだといえるでしょう。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

とよとみひでよし(1537〜1598)。尾張国(現愛知県)生まれ。織田信長の下に仕え、後に天下統一を実現。

【参考文献】

(*)「名将名君に学ぶ 上司の心得」(童門冬二、PHP研究所、2007年5月)
(**)「戦国武将のひとこと」(鳴瀬速夫、丸善、1993年6月)
「戦国武将のマネジメント術 乱世を生き抜く」(童門冬二、ダイヤモンド社、2011年3月)

以上(2019年12月)

pj15147
画像:Josiah_S-shutterstock

売上の計上時期が変わる!? 新たな収益認識基準とは

書いてあること

  • 主な読者:大企業を取引先にもつ中小企業の経営者・経理担当者
  • 課題:2021年4月1日以後に開始する事業年度から、中小企業を除くすべての企業は、新しい収益認識基準を適用しなければならない
  • 解決策:従来の会計基準の違いや、ポイント、中小企業が注意すべき点を解説

1 新しい収益認識基準の公表

企業会計基準委員会(日本における会計基準の設定主体。以下「ASBJ」)は、2018年3月30日に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下、合わせて「本会計基準等」という)を公表しました。

本会計基準等における新たな収益認識基準は、上場・非上場企業であるかを問わず、中小企業を除く全ての企業に適用されることになります。なお、2018年4月1日以後に開始する事業年度より任意で適用が開始され、2021年4月1日以後に開始する事業年度からは強制適用されます。

本会計基準等の適用により、収益の認識単位・金額・タイミングが変わる可能性があり、これに対応するためには、企業の収益認識に及ぼす影響の把握と、正しく収益認識を行うための事前準備が必要となります。

本稿では、収益認識基準が新しくなった背景を解説したうえで、新たな収益認識基準のポイント及び中小企業に想定される主な影響を紹介します。

2 新たな収益認識基準が公表された背景

従来の日本における収益認識基準は、企業会計原則の損益計算書原則において「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準がこれまで開発されていませんでした。

一方、国外では、国際財務報告基準(以下「IFRS」)を策定している国際会計基準審議会(以下「IASB」)と、米国における会計基準を策定している米国財務会計基準審議会(以下「FASB」)が、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic606)を公表しました。

これらの状況を踏まえ、2015年3月に開催されたASBJ会議において、日本における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し、その後2016年2月に適用上の課題等に対する意見を幅広く把握するため、「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という)が公表されました。この意見募集文書に寄せられた意見等を踏まえ審議が進められ、2017年7月20日に収益認識に関する会計基準等の公開草案を公表し、当該公開草案に対して寄せられた意見等について検討が行われてきました。

そして、2018年3月26日開催のASBJ会議において、企業会計基準第29号及びその適用指針第30号(以下、合わせて「本会計基準等」)が承認され、本会計基準等が同年3月30日付で公表されました。

3 従来の会計基準との主な違い

従来から多くの企業が契約(または受注)単位で収益を計上しています。一方、新たな収益認識基準では、その契約の中に複数の履行義務(顧客に対して、財またはサービスを提供する約束)がある場合、その履行義務ごとに収益認識の「単位」「金額」「タイミング」(詳細は後述)を判断することになります。例えば、製品の販売に付随して、無償で修理を行うなどのアフターサービスを付けた場合、製品の単価とアフターサービスの単価ごとに売上の単位・金額・タイミングを認識することが考えられます。

4 新たな収益認識基準のポイント

新たな収益認識基準の基本原則は、約束した財またはサービスの顧客への移転を、当該財またはサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額によって収益の認識を行うことです。また、この基本となる原則に従って収益を認識するために、次の5つのステップを適用することになります。

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1)ステップ1:契約の識別(単位)

顧客との契約を識別します。本会計基準等では、顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用されることになります。

2)ステップ2:履行義務の識別(単位)

契約における履行義務を識別します。契約において、顧客へ提供することを約束した財またはサービスが所定の要件を満たす場合には、別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区別して識別することになります。

3)ステップ3:取引価格の算定(金額)

取引価格を算定します。変動対価または現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整を行い、取引価格を算定することになります。

4)ステップ4:取引価格の配分(金額)

契約における履行義務に取引価格を配分します。契約において約束した別個の財またはサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分します。独立販売価格を直接観察できない場合には、独立販売価格を見積もることになります。

5)ステップ5:収益認識(タイミング)

履行義務を充足したときに、または充足するにつれて収益を認識します。約束した財またはサービスを顧客に移転することによって履行義務を充足したとき、または充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識します。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足されます。

5 重要性等に関する代替的な取扱い

本会計基準等においては、これまで行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性(財務諸表の期間比較や、他社比較が可能なこと)を大きく損なわせない範囲で、IFRS第15号における取扱いとは別に、次の個別項目に対する重要性の記載等、代替的な取扱いを定めています。なお、重要性の判断については、公認会計士などの専門家が判断することになります。

1)契約変更(上記ステップ1関係)

契約変更による財またはサービスの追加が、既存の契約内容に照らして重要性が乏しい場合の処理の取扱いがあります。

2)履行義務の識別(上記ステップ2関係)

提供することを約束した財またはサービスが、顧客との契約の観点で重要性に乏しい場合には、当該約束が履行義務であるかについて評価しないことができます。

3)一定の期間にわたり充足される履行義務(上記ステップ5関係)

工事契約について、契約における取引開始日から、完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができます。また、受注制作のソフトウエアについても、工事契約に準じて同様に適用することができます。

4)一時点で充足される履行義務(上記ステップ5関係)

商品または製品の国内の販売において、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転されるときまでの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品または製品の支配が顧客に移転されるときまでの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができます。

5)履行義務の充足に係る進捗度(上記ステップ5関係)

一定の期間にわたり充足される履行義務について、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積もることができない場合には、当該契約の初期段階で収益を認識せず、当該進捗度を合理的に見積もることができるときから収益を認識することができます。

6)履行義務への取引価格の配分(上記ステップ4関係)

履行義務の基礎となる財またはサービスの独立販売価格を直接観察できない場合で、当該財またはサービスが、契約における他の財またはサービスの付随的なものであり、重要性に乏しいと認められるときには、当該財またはサービスの独立販売価格の見積方法として、残余アプローチ(契約における取引価格の総額から、契約において約束した他の財またはサービスについて、観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積もる方法)を使用することができます。

7)契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分(上記ステップ1、2及び4関係)

一定の要件を満たす場合には、複数の契約を結合せず、個々の契約において定められている顧客に提供する財またはサービスの内容を履行義務と見なし、個々の契約において定められている当該財またはサービスの金額に従って収益を認識することができます。

6 中小企業に想定される影響

新たな収益認識基準は、上場・非上場を問わず、中小企業を除く全ての企業に適用されることになります。なお、中小企業においては、「中小企業の会計に関する指針」が適用されることになりますが、今後、当該指針の見直しが行われることも考えられます。

その場合には、事前に顧客との契約を見直し、企業内の管理体制を整備することが求められます。企業の会計・経理担当者は、収益の認識に関して「契約の識別」をするために法務担当者と連携しながら、契約の成立時点を契約書等に照らして確認しておくことが必要です。

また、「履行義務の識別」をするためには、契約書の条項に照らし、顧客に提供することを約束した財またはサービスのそれぞれについての履行義務を、あらかじめ確認しておくことも必要になります。

さらには、企業が想定する実態に合った収益認識を行うために、取引先と契約内容(契約条項など)を見直すことが必要となるかもしれません。

例えば、上記「ステップ1:契約の識別」の段階においては、そもそも契約の成立が特定されない限り、企業は収益を認識することができません。現行では、実務上個々の取引契約書や受注書・注文書によって企業の代表者名義による書面を取り交わしていない場合には、新しい収益認識基準に基づく収益認識にあたっては契約の識別が困難になる可能性があります。仮に、取引基本契約書が存在するのであれば、個々の取引契約の成立を容易に説明できる契約条項を織り込んでおくことが必要です。

また、そもそも企業の代表者名義による書面を取り交わしていないような場合には、契約の識別を容易に行えるように客観的な証拠を残す工夫が必要であると考えられます。上記「ステップ2:履行義務の識別」の段階においては、財またはサービスの給付対象だけでなく、それに付随して提供される財またはサービスの約束(販売インセンティブやポイントの付与など)等も含めて履行義務を特定しておくことが必要となります。

さらに、大企業との取引がある中小企業については、「中小企業の会計に関する指針」の見直しの有無にかかわらず、上記のような契約の見直し等を求められる可能性も考えられます。

以上(2019年12月)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 伏見健一)

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【朝礼】理想の姿を描けば、なすべきことが見えてくる

ここ数カ月、私は知り合いの経営者に勧められて、「経営道場」なるものに参加しています。ここでは、受動的に学ぶのではなく、能動的にあるべき「理想の姿」を追求していきます。そして、理想の姿を実現するために足りていない部分を認識し、それを埋めるために最も効果的な取り組みを検討、実行します。

この一連の流れを繰り返す、こんなシンプルな経営道場での活動を通じて、私はとても重要な2つの気付きを得ました。今朝は、それを皆さんにお伝えします。

1つ目の気付きは、「『理想の姿』を持つ」ことの大切さです。経営道場の参加者は、向上心あふれる経営者ばかりなので、仕事についての理想の姿を熱く語ることができます。理想の姿を実現したいという思いは、日々の活力になります。

皆さんはどうですか。仕事でもプライベートでも結構です。「理想の姿」はありますか?

もしかすると、仕事について理想の姿を持つことは難しいかもしれません。私や上司の指示に従うことに慣れ過ぎていて、自由に発想することが苦手になっているかもしれないからです。

では、「皆さんに、仕事上の課題はありますか?」という質問ならどうですか。

こちらのほうが答えやすいのではないでしょうか。謙遜もあるかもしれませんが、自分の至らない部分、つまり課題を挙げるのは比較的、簡単なことでしょう。

問題は、皆さんが挙げた課題のほとんどが、改善に向かっていないと思われることです。それはなぜか。厳しい言い方かもしれませんが、課題について深く考えていないからです。この朝礼のように、課題の解決を約束するような場でなければ、「何となく、このままではいけない」と思っている程度のものについて、さも自分が思い悩んでいる重要な課題として話していないでしょうか。

ここで、経営道場で学んだ、重要な2つ目の気付きが活きてきます。それは、「自分を疑う」ことです。経営道場で私も熱く理想の姿を語りました。しかし、他の経営者から突っ込んだ質問をされると言葉に詰まってしまいました。考えているようで、実は表面的なところしか捉えていなかったのです。そこで、何度も何度も「それは本当に自分の理想なのか?」と自分に問いかけた結果、表面的な部分がそぎ落とされていき、本当の理想に近づけたのです。

理想が明確になると、今、克服しなければならない課題も分かります。課題を公式化すると、「理想-現実=課題」となります。本気で願う「理想の姿」から、正しい「現実」を引き算した結果が、今、取り組むべき本当の課題なのです。

ビジネスでは正しい課題設定が重要です。ただし、足元を見るだけでは正しい課題は見つかりません。思いつきレベルの課題でお茶を濁すのは、論外です。本当に重要な課題は、「理想の姿」を描くことで見つかるものなのです。

以上(2019年11月)

pj16981
画像:Mariko Mitsuda