損益計算書(P/L)で経営者が見るべき点は?

前回の「創業3年後までに経営者が学ぶべき計数感覚」では、起業家にとって必要な財務知識は何か、また、ビジネス、戦略と財務数値がどのような関係にあるのかを説明しました。ビジネス、戦略と財務数値は表裏の関係にあることをご理解いただけたと思います。

今回からは、具体的に財務数値を見ていきましょう。最初の決算を終えた起業家は自社の決算書を確認しています。ただ、実は決算書をどこからどう見ればよいのか分からない、決算書の数値から何が読み解けるかが分からないという人がいるかもしれません。

そのような人の参考になるように、決算書にある財務諸表の数字をどう見ればよいのか、自社の財務数値を外部の銀行、投資家などはどのように見ているのかを解説します。ぜひ、お手元にご自身の会社の決算書をご用意いただき、具体的に該当箇所を押さえながら読み進めてください。

1 財務諸表とは

財務諸表とは、「諸表」と呼ばれているように、損益計算書(P/L)、貸借対照表(B/S)、キャッシュフロー計算書(C/S)の3つで構成されています。財務3表とも呼ばれています。3つあるのは、それぞれ示している内容が違うからです。

さて、経営者の皆さんは、ビジネスがうまくいっているか否かを把握するために、どんな情報を知りたいですか? 最初に知りたいのは、「もうかっているか否か」のはずです。一生懸命頑張った結果、ちゃんと利益が出たのかどうかを数字で見るのは、ドキドキしつつも楽しい瞬間です。会社のもうけを表すのが損益計算書です。

次に経営者が知りたいのは、「会社の資金繰りは大丈夫か、倒産しないか?」かもしれません。起業すると、人を雇ったり、店舗を借りたり、商品を仕入れたり、備品を購入したりとさまざまな取引が発生し、何かと費用がかかります。ビジネスに必要なお金をどこからいくら調達し、何にいくら使って、今どのような形で所有しているのかを把握しておかなければ、資金繰りが心配で、安心してビジネスを進められません。資金繰りでつまずいて成長機会を逃す、最悪、経営破綻してしまうということは避けなければなりません。期末などの特定の一時点で、お金をどこから調達していて、それをどのような形に変えて現在所有しているのかを表すのが貸借対照表です。

起業家の多くは、自分が練ったビジネスプランを実現するために、攻める(稼ぐ)ことには高い関心を持っていますが、資金繰りがどうなっているのか、期日に返済できるのかといった守りには関心が低いという方も少なくないようです。しかし、従業員を雇う、外部のさまざまなステークホルダーと信用関係を築きビジネスをするということは、大きな責任を伴います。守りをしっかり固めた上で、勇猛果敢にビジネスプランを実現し、ビジネス拡大の目標に向けて攻めていただきたいです!

また、キャッシュフロー経営といった言葉を聞いたことがあるかもしれませんが、黒字倒産といったこともあるように、ビジネスがうまくいっているかどうかを把握するためには、利益だけではなくキャッシュの動きも見ておくことが重要です。損益計算書と貸借対照表を使って加工し、通常1年間の会計期間で、どこでキャッシュを生み出し、何にキャッシュを使ったのかを表しているのがキャッシュフロー計算書です。なじみのない方も多いでしょう。これは、回を改めて丁寧に解説したいと思います。

2 財務諸表の読み方のコツ

それでは、財務諸表を見ていきましょう。といっても、多忙な経営者が各表を上から一行一行見ていく必要はありません。見るべきポイント、見る順番がありますので、その勘所をつかんでください。

また、1期分だけの財務諸表を見ても、それが良いのかどうか、ビジネス上のどのような特徴があるのかは見えてきません。そこで、何度も決算を経験していれば自社のものを3期分、加えて財務状況を公開している(例えば、上場会社)同業他社のものと比べてみるとよいでしょう。

売上が増加しているのか減少しているのか、利益が効率よく生み出されているのか否かは、同業他社や過去の自社財務諸表と比べるとよく分かります。銀行に融資を申し込む際、「3期分の決算書があれば出してください」と言われた経験はありませんか? 「起業したばかりだと言っているのに」とモヤモヤしたかもしれません。これは3期分を見れば、右肩上がりで成長しているのか、右肩下がりで苦戦しているのか、安定しているのか、不安定に増減しているのかのトレンドが分かるので、銀行もビジネスについて評価しやすいのです。

これは投資家も同じことで、3期分の決算が良好に推移していれば、比較的、前向きに投資を考えやすくなります。ということは、創業3年間くらいは、外部の投資家に頼り過ぎた資金計画でビジネスを進めていくことは危険かもしれません。

経営者にとって、単に財務諸表を読めるようになるだけでは意味がありません。財務諸表を読み解いてビジネスを成功に導けるか、外部の読み手(銀行、投資家、取引先)は、財務諸表から何を読み取ろうとしているのかを意識しながら読み進めることが大切です。

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3 もうけを表す損益計算書(P/L)

損益計算書を見る際は、売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益(以下「当期純利益」)の5つを最初に見てください(STEP1)。これは売上高と損益計算書の中で登場する各利益に注目するということです。

1)売上高の見方

売上高は損益計算書の最初の行に登場しますので、トップラインとも呼ばれています。売上は、お客様に提供したモノやサービスの価値がお客様に認められたかどうかを表すので、言うまでもなく大切です。前年度から伸びているのか、市場の伸びやライバル会社の伸びと比較してどうかといった観点で見ます。他社との比較では、上場会社では大き過ぎるし、ライバル会社の財務数値は手に入らないということもあるでしょう。そういうときは銀行に聞いてみるのもよいでしょう。もちろん銀行は個社の数値を他人に口外することはありませんが、たくさんの取引先があるので、同業の中で自社がどのような状況にあるのかといった助言はしてくれるかもしれません。

こうして売上高を見ていると、もっと「分解」したいと思うでしょう。財務諸表を読み始めるといろいろ気になることが出てきます。これこそが経営者が財務諸表を見ることの価値なのです。「売上高は伸びているが手放しで喜んでよいのだろうか? この売上高を『客数×単価』に分けて見てみたいな」と思う人もいるでしょう。

例えば、コンビニエンスストア業界の決算の記事を見ますと、よく既存店売上高が増えたとか減ったとかなどと書いてあります。こういう業態では出店拡大すると売上高は伸びます。売上高が伸びていても店舗数の増加によるもので、店舗当たりの売上高が減少しているのならばビジネスが順調とはいえません。そこで新店開店の影響を排除した既存店の売上高の増減が、ビジネスを評価する上で必要になってくるのです。

また、既存店の売上高が順調に伸びていたとしても、それが来店客数の増加によるものなのか、1人当たりの購買額の増加によるものなのか、経営者なら気になりますね。両方が伸びていればよいのですが、足下のコンビニエンスストア業界は商品開発の努力もあって1人当たりの購買額は増加していますが、来店客数は減っているといわれています。小売業界の勝ち組といわれているコンビニエンスストア業界ですが、課題がないわけではないということが分かりますね。

財務諸表の数字は、ただその数字を眺めてもあまり意味がないのです。その数字を解釈、評価するところに意味があるのです。解釈、評価するからこそ財務諸表を読むことは、PDCAサイクルを回す上でのCに当たるといえます。必要なのは会計の専門知識ではなく、財務諸表の構造や、経営者目線で、それは何を意味するのだろうと考えながら財務諸表を見ることなのです。

2)4つの利益の見方

次に4つの利益を見ていきましょう。それぞれの利益がどのような意味を持つのかを理解すると損益計算書は読みやすいです。もうけの話をするのは楽しいことですし、大事なことですから、大ざっぱに利益というのではなく、どの利益のことなのか、より明確にして話をすべきですね。

損益計算書の上から見ていくと、4つの利益の中で最初に登場するのが売上総利益で、ビジネスの現場では「粗利(あらり)」と呼ばれていたりします。この売上総利益は皆さんが提供しているモノやサービスの稼ぐ力を表しています。

それに続く営業利益は仕入れて、作って、売ってという本業のサイクルの中で生み出された利益。

経常利益は、本業の利益である営業利益に、本業ではないのだけれども、本業に付随して発生する取引の損益を加えたもので、会社の実力を表す利益と呼ばれています。本業に付随して発生する損益とは、借入の支払利息や預貯金の受取利息など主として財務活動による損益のことです。

当期純利益は、最終的な利益を表しており、損益計算書の最後に登場することから売上高を指すトップラインの逆で、ボトムラインと呼ばれたりします。

売上高と4つの利益を見ると、モノやサービスそのものに稼ぐ力はあるのか(売上総利益)、本業で利益を残せているのか(営業利益)、支払利息など財務面が業績の足を引っ張っていないか(経常利益)、最終的に利益を残せたのか(当期純利益)が確認できます。また、売上高に対する各利益の割合を見ると、効率よく利益を上げることができているか、過去あるいは他社との比較において自社の生産性を評価することができます。

3)売上高と4つの利益の間に投じた費用の見方

売上高と4つの利益を見たら、次に売上高と各利益の間でどのような活動にどれだけの費用を投じたのかを見ていきます(STEP2)。

売上高と売上総利益の間には「原価」があります。原価とは、「モノやサービスを作るのにかかった費用」です。モノやサービスのプライスは適切に設定されているか、原価が適正な水準にあるのかを確認しましょう。

売上総利益と営業利益の間には、「販売費及び一般管理費」があります。販管費とも呼ばれます。これを見ると、作ったモノやサービスを販売したり、会社組織の運営管理をしたりするのにどれだけ費用がかかったのかが分かります。ここには起業された皆さんの役員報酬を含む人件費や、広告宣伝費などが含まれます。起業当初は、ご自身のビジネスを社会に認知してもらうために、ついつい身の丈以上に販管費をかけてしまうことがあるようです。販売および組織の管理に関する費用が売上に見合っているかは、営業利益を見てチェックしましょう。

営業利益と経常利益の間には「営業外損益」があります。本業ではないが、ビジネスをやっていると付随して発生してしまう損益のことで、代表的な項目には支払利息があります。支払利息は借入を行っている会社には必ず登場する項目です。営業利益と経常利益の差を見れば、財務体力の状況が推測できます。営業利益に比べて経常利益が著しく減少している会社は、支払利息の負担が重たいのかもしれません。現在は限りなく0%に近い市場金利の影響で、支払利息の負担が比較的小さく感じられるかもしれませんが、金利上昇局面では、利息支払いの負担が重くのしかかります。起業されたなら、ご自身のビジネスの周辺のみならず、金利の動向など経済全体の状況にも関心を持つことが肝要ですね。

最後が経常利益と当期純利益の間ですが、ここには特別損益と税金があります。税金は必ず支払わなければなりませんね。取引の都度、税金の支払いがあればよいのですが、税金は一定期間分をまとめて支払うことになります。従って、このための資金はしっかり確保しておかなければなりません。どの程度の税額になるかは、月次の損益計算書を見る習慣があれば、概算の費用を見積もっておくことが可能です。

特別損益は、反復継続して発生するわけではなく、一時的、臨時的な損益を指します。起業されたばかりの経営者の方には身近ではないかもしれませんが、自社所有していた本社の建物を売却したり、リストラで人員整理を行ったりといったケースなどが考えられます。

損益計算書の読み方について順を追って見てきましたが、大きく3つのSTEPで見ていただくと、効率よく読み解くことができるでしょう。

STEP1で、売上高と4つの利益を見てもうかっているかの外観をつかみ、STEP2で、なぜそのような利益が出ているのかを、各利益の間にある売上原価、販売費及び一般管理費、営業外損益、特別損益と税金から分析しましょう。最後にSTEP3として、それぞれの中の項目を一つ一つ見ていくと効率的でしょう。

とはいえ、全ての費用の項目を見ていく必要はないでしょう。売上高の数値に比べて3桁違う費用は、売上の1%にも満たないということです。経営全体に対するインパクトは僅少ですね。大きな費用からその妥当性を検証していくとよいでしょう。自社のビジネスはどのような活動に、どのような費用がかかっているのかがより正確に把握することができるでしょう。また、こうした習慣が、問題の早期発見に結びつきます。

まずは、ご自身の会社の月次の損益計算書を見ることから習慣づけることが大切です。

損益計算書の読み方を示した画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年7月23日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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第9回 コーワーキングスペース利用の3つのベネフィット/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

皆さま、こんにちは。いつも私のコラム「イノベーションフォレスト」を読んでくださり、SNSでシェアしていただき、愛りがとうございます(愛+ありがとう)。また、最近スタートした「イノベーションフィロソフィー」という新企画では、起業家をはじめ、イノベーションを起こしている方々と対談をさせていただいております。ぜひそちらもご拝読くださいませ。

さて、世界一のイノベーションの聖地であるシリコンバレーや世界中の大都市だけではなく、アントレプレナー・エコシステム(EE)が、エンジニアが多い地域にも急速な勢いでできてきています。日本でも急展開しているWeWorkなどのコーワーキングスペースは、世界中にも同じようにたくさんできており、そこには、フリーランスやスタートアップだけではなく、大企業のオープンイノベーション担当者、新規事業開発者の方々も入居しています。

特にサンフランシスコやシリコンバレーなどのコーワーキングスペースなどを訪れると、世界のビッグフォーなどの公認会計事務所や、著名ベンチャーキャピタルファームなども入居しています。日本人から見ればあり得ない環境で世界の人々が働いていると、カルチャーショックを受けるかもしれません。また、そこでは、ライバルと思っていた企業の社員たちが同じ食堂でランチをしていたりします。

コーワーキングスペースで働くベネフィットは、私が考えるに3つあります(まだまだたくさんあると思いますが、今日は3つ書かせていただきます)。

1 自分と違う会社や業種の方々と知り合える可能性が高まる

通常の会社員なら、自分の家と会社の往復になり、決まった人としか仕事をしないことが多いでしょう。しかし、コーワーキングスペースで働いていれば、自由に出入りが可能なところも多いため、知らない人と出会える可能性が高まります。

実際に、コーワーキング(一緒に働く)までいかなくても、カフェスペースや休憩室などで、こちらから思い切って話しかけてみれば、違う会社の人とも知り合えるでしょう。ぜひ、自分からご挨拶してみてはいかがでしょうか。すぐにビジネスにつながるかどうかを考えるよりも、一言ご挨拶をしたら、まずは新たな出会いを楽しみましょう。この出会いが、いつかあなたの人生を変えるかもしれません。すてきな出会いがあることを願っております。

2 自分が普段行くイベント以外のイベントに参加できる

通常なら自分の仕事と関係があるイベントや学会しか参加しないと思います。しかし、コーワーキングスペースでは、毎日のように誰かがイベントを主催しているので、Facebookのイベントページなどで行きたいイベントをチェックしていなくても、急にその場で、面白いイベントに出会えて参加できる可能性が高まります。

私がco-chapter directorを務めるStartup Grind Tokyoも、渋谷のPlug and Playで毎月イベントを開催しています。自分が普段行かないイベントに参加して、新しい刺激や出会いを得ることは、ビジネスだけではなく、人生にとっても新しいインスピレーションになると思います。

3 イノベーションを起こす仲間ができる

新しもの好きや、言ってみれば社内では変わり者と思われている存在の方々が、コーワーキングスペースに入居したり、イベントに来ていたりします。何かやらかしてみたい、世界を変えたいなど熱く高い志を持っている方もいらっしゃるでしょう。そのような方々と交流することで、同じ志を持つ仲間を見つけることができるかもしれません。

以前、テキサスのCapital Factoryという巨大インキュベーターの中にあるコーワーキングスペースを見学させていただいたときに、床に、某大手の飛行機会社やIT企業のロゴがありました。壁にはオバマ前大統領がそこを訪れた写真とサインがありました。

今、日本でも起業家の応援を投資家、弁護士、会計士だけではなく、政治家も行ってくださる状況になってきてうれしい限りですし、コーワーキングスペースに行けば、日本を良くするイノベーションを起こしたい人々が増えてきていると感じています。それが世界をより良くすることにもつながると思います。

皆さまと世界のどこかで、また日本のコーワーキングスペースでお会いできることを楽しみにしております。

いつも愛りがとうございます。森若幸次郎ことジョンがお届けいたしました。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年7月23日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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リファラル採用は企業変革の絶好のチャンスです!〜中小企業は知らない人を採ってはいけないという社会情勢を知る〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、リファラルリクルーティング株式会社の代表取締役である白潟敏朗さんです。

今年の1月に白潟さんが出版された【知らない人を採ってはいけない 新しい世界基準「リファラル採用」の教科書】が発売後すぐに、Amazonの会社経営、マネジメント・人材管理、人事・労務管理の3分野で1位となるほどの人気。これも時代が正しい方向に進もうとしている結果と感じました。中小企業における採用のあり方を掘り下げることにフォーカスして今回はお伝えできればと思います。

まずは白潟さん作成の自己紹介シートと同社HPをご覧ください。

白潟氏の自己紹介シートを示した画像です

なんと解りやすい自己紹介シートなんでしょうか。。。。伝わる伝える技術の大切さがこの1枚で理解できます。さすが29年間で12,600社のコンサルを手がけられた実績の証と思いますね。物腰柔らかながらも伝えるべきことはキチンと伝え、伝わる。経営者経験も20年となり、7社の経営に携わってこられた白潟さんに、中小企業にとって大きな課題である人材採用面での大切な情報を余すところなく伺ってまいりました。私自身も企業間を取り巻く情勢状況を理解出来、大変勉強になった次第です。是非、ご期待下さい!!

1 リファラル採用をコンサルティングすることになったワケ~中小企業を取り巻く採用情勢、企業経営者との対話から生まれる~

1)減り続ける労働人口

開口一番 白潟さんから飛び出したのは、労働人口の減少の現実。2030年には何も対策を打たなければ、今より644万人の人手不足が生じる(出所:パーソル総合研究所より)。外国人の受け入れ、高齢者・主婦の社会復帰等で、一定はこの労働人口不足の【手当】は可能だと思うが、深刻な人手不足が日本を支えている中小企業にボディーブローのように効いていくことが、これから現実味を帯びていくことは明白です。

2)人材採用業界における中小企業の現況

マーケットサイズ(求人広告・職業紹介)が1兆円を超えたのがおおよそ10年前(出所:人材サービス産業の近未来を考える会作成資料9ページ)。現状何が起こっているか?

  • 求人広告に掲載してもまったくと言っていいほど人が来ない、応募がない(儲かるのは求人広告会社ばかり)
  • 求人広告の内容が自社の実態とかけ離れた【誇張】で打ち出し、採用のミスマッチが後を絶たない
  • たまに採用に至っても、質の低い人材しか来ない(すぐに辞めてしまう)
  • 登録している人材の中には経歴詐称をしている人材も(質の担保ができない)
  • 紹介会社に依頼して年収の35%の手数料を払える中小企業は少なくなってきている

ますます肥大化する人材採用マーケット、売上、利益が絶好調な収益構造にそろそろ綻びが出始め、賢明な経営者ほど自社の利益をある意味、対価なく貢いでいるだけのような構造を疑問視するようになっていると、白潟さんは話します。

3)コンサル業界ではやらないエリア戦略から見えてきたこと

50歳で一念発起し、トーマツ イノベーション(現ラーニングエージェンシー)の社長を後進に譲り、中小企業経営者を元気にする!を天命と誓い白潟総合研究所株式会社を起業した際、中小企業の集積している場所として当初八丁堀町駅近くに事務所を構えていました。その時の思い出話として、コンサルティング会社がやらない顧客開拓手法のエリア戦略にチャレンジしたそうです。

  • ご近所への開拓するのに、飛び込みを選んだ白潟さん、ありがちなことでは誰も取り合ってくれない、門前払いの連続、そこで名刺をA3サイズに巨大化して手渡す。社長がいなくても必ず社長にその巨大名刺が行き渡り、社長への面談確率を上げていたそうです。実際の名刺はこちらです。

白潟総合研究所株式会社の名刺を示した画像です

  • 社長と面談が叶った時に、営業新人でも誰でも簡単に経営課題を確認できるツールも作成。それは経営課題を予め印刷した大きなカード(トランプのような、ソリューションカードと名付けていらしゃいました)。こちらを7枚、社長の目の前に提示し、徹底的に課題を聞いていったそうです。

ソリューションカードの画像です

このエリア戦略について、白潟さんは笑顔で『うまくいきませんでした。』と話されていましたが、中小企業経営者との徹底的な対話から、一番の課題が【人が採れない、良い人が採れない】ということでした。前職時代から、社長の身内が入社したいと思わない会社はだめ!と言っていたそうですが、この課題を事業化、新規事業として、そして【新会社】として設立したのがリファラルリクルーティング株式会社となった経緯です。経営者への課題に向き合う姿勢大切ですね。

2 リファラル採用が全てうまくいっている。なぜか、その内容とは?

白潟さんから衝撃的なコメントがあったのが、『今まで、リファラル採用のお手伝いをしてきた中小企業で上手く行かなかった(採用に至らなかった)会社は1社もありません。』という事実。

なぜか? それは以下の【リファラル採用がうまくいく3つの前提条件】をご覧ください。

リファラル採用がうまくいく3つの前提条件を示した画像です

  • 社長と会社を好きな社員がいる
  • 嘘をつかない
  • 社長が耳の痛い提案を聴ける

まずはこの3つを会社の代表である社長が約束できるか? そこを見極め、確認できた時にだけ、採用のコンサルティングに進むそうです。ある意味うまくいくことに納得感がありますね。

リファラルリクルーティングについて詳細をお伝えしていきたいと思います。

1)リファラルリクルーティング≠コネ入社ではありません

リファラルリクルーティングを説明した画像です

社内外の信頼できる人脈からの紹介・推薦による採用活動のことなんですね。

2)リファラルリクルーティングの位置づけについて

リファラルリクルーティングの位置づけを説明した画像です

多様化する採用活動、その中でもダイレクトリクルーティングの中に分類されています。ウォンテッドリー等のソーシャルメディアが発達して行く中でリファラル採用も利便性、効率性がアップしたと言えます。

3)リファラル採用の誤解と適切な理解

リファラル採用のよくある誤解と適切な理解を説明した画像です

上記の中で大切に思ったのは、友人知人を口説くわけではない、その友人の先にいる友人や知人ということ。また自分で口説かなくて良い、会社主催のイベントに連れてくるだけでもOK。個人戦ではなく団体戦ということ。

4)リファラル採用の王道プロセス

リファラル採用の王道プロセスを説明した画像です

リファラル採用の唯一のデメリットが上記に記載されています。それは、求職者が入社意向であっても、テストでNG、面接でNGの場合。ここで大切なのは、テストでNGであっても、面接でNGであっても、必ず社長との面接までは実行すること。そして決して、不合格通知をださないこと。社長名の感謝の手紙、誠意を伝える。ここを失敗すると、声を掛けてくれた社員までが辞めてしまう恐れもあり、慎重にする。

5)実際にコンサルティングのイメージと費用について(標準例)

リファラル採用の具体的な推進手順を説明した画像です

標準6カ月でコンサルティングを行い、9回の訪問で2名以上の採用へ。その後の自力自走で採用を継続していくというイメージです。

このコンサルティングの中で、アピールブックの重要性、まさに嘘をつかないこと。出来ていないことは出来ていない、課題の全て、現状の事実を最初から隠すことなく求職者に伝える、入社してバレてしまう課題を入社前にキチンと見える化。しかし、会社が変革していこうとする中期経営計画と入社後の個人への能力開発を見える化することで期待をもって入社してもらう。

3 白潟さんの今後の展開、インタビューを終えて

1)白潟さんの事業の展開、今後について

前職時代に顧客社数が8,000社までマーケットを創った白潟さん、50歳からまたゼロからのスタートから現在顧客数は250社へと5年で成長させていらっしゃいます。今後の事業展開についても伺いました。

白潟総合研究所のHPにも掲載していますが、今後の展開は、親→子→孫の形態で会社を設立していきます。いわば総合店と専門店を同時に経営し顧客に向き合うこと。』

もう少し詳しく伺いますと、今回の主テーマである、リファラルリクルーティング株式会社は孫にあたります。白潟総合研究所は親に。今年1月、ソーシャルメディアを活用した採用コンサルティングの会社としてソーシャルリクルーティング株式会社を設立しています。こちらも孫の位置づけであり、今後も経営者の採用に関する課題に対応する事業を新会社化していく、その孫と親の間に【採用総合研究所】を設立、これが子にあたる位置づけに。

総合店(白潟総合研究所)でありながらも、専門店として対応ができる、親→子→孫という発想で、組織開発、人財育成、売上アップ、業務改革、経営管理と現時点でこれだけの【子】の研究所のイメージをお持ちです。この事業展開を継続、発展していく先、30年後には【お客様の数、シンプルな方法論の数、コンサルタントの質で世界No1.のコンサルティングファームになる】というビジョンを掲げていていらっしゃいます。日本が強くなる、活気ある中小企業経営者のために。私も微力ですがご一緒できますようにと願い、この白潟さんの想いに共感しています。

また今月(2019年7月)には私にとっても念願の大阪に拠点を構えることに。

2)インタビューを終えて

経営コンサルティング業界29年、しかも圧倒的な数の経営者と向き合ってこられた白潟さん。ご実績からすると少しくらい上から目線の部分もあるかと思いますが、そんなことは微塵もなく。物腰柔らかく、素人でも解りやすい口調で終始笑顔で接してくださいます。

経営者の課題を傾聴し、見える化したところから事業開発にまでもっていかれるスピード感には感心というより驚きのレベルです。

今回は、中小企業の経営を圧迫し、結果を出せていない、採用事情についてリポートさせていただきましたが、採用レベルのお話ではなく、経営者の変革、組織の変革、会社の変革を行う上で相当のチャンスと理解しました。

社長の親戚や社長の奥さんの友人、得意先等々社長をとりまく人脈から魅力がなければそれは大きな問題、課題、その解決にリファラル採用が決め手になるように思いました。まさに【知らない人は採ってはいけない】と。

白潟さんに感謝です。

以上(2019年7月作成)

経営力を高める財務マネジメントのポイント

「社長。ここ3カ月の売上はいくらでしたか?」

この質問に正確に即答できる経営者は、意外と少ないものです。「昨年よりは少ないのではないだろうか」「仕事が忙しいから増えていると思う」などと、大雑把(ざっぱ)な返答しかできないことが珍しくありません。マーケティングや戦略立案に強い経営者でも、会計や数字のことになると苦手意識があるからです。

ところが、それと矛盾するようですが、経営者が抱える不安の大半はお金のことです。お金のことが常に心配なのに、数字については苦手意識が強いために目を背けてしまいがちで、いわゆる「どんぶり勘定」で経営をし、とてもリスキーな状態といえます。

事業活動には多くの要素がありますが、とても重要なのが「お金を回す活動」、つまり財務マネジメントや資金調達です。

1 財務マネジメントの重要性

経営に関する計数感覚とは、経営活動が企業の財務へ与える影響を考えることができて、早めに手を打てる能力だといえます。

「会計や財務は税理士など専門家に任せるもの」と考える人は少なくありません。しかし、税務申告や月次試算表の作成は税理士に依頼するとしても、財務マネジメントは経営者自身が行うべきです。

なぜなら、投資や資金調達など、重要な経営判断は経営者自身が下すからです。例えば、新規投資を行うには、投資を何年で回収するかという観点や採算確保の見通しなど、数字に基づく検討が欠かせません。

投資はスピードが重要なので、経営者は短時間で企業業績や財務に与える影響を判断して、戦略的に意思決定をする必要があります。

また、売掛金の回収よりも買掛金や経費の支払いサイトが短い場合は、売上が伸びれば伸びるほど、資金繰りがタイトになることがあります。その場合は、半年~1年先までの資金繰りを考えて、早めに資金調達をしておくことが重要です。

経営者にとって重要な財務マネジメントは、企業の実態を数字(お金)で把握して経営を改善することであり、経営者が把握すべき重要な数字は、収益構造、資産負債状況、資金繰りの3つです。以降で確認していきましょう。

2 収益構造のチェック

1)業績の振り返り

収益構造分析の第一歩は、売上・利益の推移と経営環境や事業活動の振り返りです。数年前から直近までの売上高を確認して、傾向や背景を分析します。売上が多かった年(月)の要因は何だったのか、などを振り返ります。過去の実績を振り返ることで、今後実行すべきことが見えてきます。

2)部門別収益の分析

次に自社の事業部門(商品・サービス)別の収益状況を分析します。創業後数年経過した企業の大半は、複数の事業や商品・サービスを展開しています。ところが、どの事業(商品・サービス)が、どれくらいの収益になっているのかを、経営者が正確に把握していないのが実態です。

そこで、ぜひ実行していただきたいのは、それぞれの売上、原価、経費を計算して、表を作成することです。経費のうち、複数の事業部門の間に共通していて分けるのが難しいものは度外視すればよいでしょう。

3)原価・経費の分析

最後に、原価や経費の内容のチェックです。これは次の観点で分析していきましょう。

1.原価率や経費(一般管理費)を業界平均値と比較する

一般的な業種であれば、日本政策金融公庫のホームページにある「小企業の経営指標」にデータが掲載されています。

●日本政策金融公庫「小企業の経営指標」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/sme_findings2.html

2.経費の中で無駄なものはないかをチェックする

個別の経費を見て、無駄な支出がないかをチェックします。逆に広告宣伝費など、もっとかけたほうが収益に寄与するものがないかも分析します。過去の支出額が妥当かどうかを検証して、今後の活動に生かします。


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3 資産負債状況の把握

資産負債状況とは、決算書の貸借対照表に記載されているような資産と負債のバランスです。重要なことは、貸借対照表の数字と実態を比較して把握することです。

貸借対照表では、各勘定科目の実態をチェックしてください。例えば、「売掛金」が300万円として、その中に回収が見込めないものが30万円あれば、実態の売掛金は270万円です。

負債の部では、役員や身内からの借入があれば、事実上、返済については緩やかに考えることができます。

こうして資産負債の実態を把握すれば、実質の自己資本(純資産)がいくらなのかを算出できます。自社の実質自己資本を把握すると、安全性を客観的にチェックできます。

4 資金繰りのチェック

資金繰りは企業経営において非常に重要なことです。近い将来の資金繰りを予測して、早めに手を打つことで資金の枯渇を防ぐことが可能になります。

資金繰りを予測するために「資金繰り表」を作成しましょう。直近の実績と、半年~1年先の入出金を月別に計上して、月末の現預金残高を予測します。

資金繰り表は、保守的に作成することがポイントです。入金予測は、「間違いなく入ると見込める金額」をベースに計上します。将来の売上を予測するのは容易ではありませんが、過去の実績も勘案しながら検討しましょう。支出についても同様です。

もし「3カ月後に資金不足になりそう」と判明したら、すぐにでも資金を増やす行動が必要です。「資金繰り表を作るのは大変」と思っている人も多いですが、一度作ってみれば慣れるものです。ぜひ定期的に作成して、資金繰りの問題を事前に察知しやすい環境にしましょう。

5 資金繰りのピンチを乗り切る方法

創業後数年を経過した企業の経営者であれば、「資金繰りのピンチ」に直面したことがあるのではないでしょうか。

「今月末が厳しい」「機械が壊れたのに修理代が足りない」「お金が減ってきてなんとなく不安だ」など、緊急性や深刻度はそれぞれですが、経営者であれば必ずといっていいほど経験するものです。

資金繰りのピンチを乗り切るためには、次のようなキャッシュを増やす行動が不可欠です。

キャッシュを増やす行動を示した画像です

「当たり前のこと」といえる内容ですが、どれを行うべきか検討して早急に実行することが重要です。また、例えば「融資を受ける」とした場合でも、金融機関融資、カードローン、オンラインレンディングなどがあります。また、上表にはありませんが、ファクタリングという方法もあります。経営者は資金調達方法を理解し、いざというときに使える準備をしておくことが大切です。

万一、「崖っぷち」のピンチに直面した場合は、コストを思い切って削減しなくてはなりません。資金繰りのためには、関係先にお願いして支払いを待ってもらうことも選択肢の1つですが、言うまでもなく信用低下につながるので極力避けたいところです。

そうした事態になる前に、先の資金繰りを予測して早めに対策を講じることが、事業継続のためには不可欠です。

6 融資を活用してビジネスを加速させる

経営をしていると、「お店を増やしたい」「設備を更新したい」「売掛金回収までのつなぎ資金が必要」など、まとまった資金が必要になる場面に直面することがあります。

経営者の中には「借金は怖いからしたくない」と考える人もいますが、適正な範囲であれば、怖いことはありません。ビジネスを加速させるために、融資を積極的に利用することをお勧めします。

日本政策金融公庫「新規開業パネル調査」(2016年12月)によると、創業から年数が経過するにつれて、金融機関等からの借入残高(1企業当たり)が増えています。

この調査結果は、創業して事業経営を進めていくうちに、運転資金や設備資金の必要性が高まっていることを示しています。

金融機関等からの借入残高(1企業当たり)を示した画像です

創業後3年以内において資金調達が必要となる理由はさまざまですが、融資の主な使途の例として、次のようなものが挙げられます。

融資の主な使途の例を示した画像です

創業後年数が経過すると、必要な資金の種類が増える傾向にあります。収益アップや生産性向上など効果が見込める投資であれば、「今は資金が足りないからやめておこう」と考えるよりも、融資を利用して事業を加速させるほうが賢明です。

融資を申し込む際には、次の3つのポイントについて、金融機関などの担当者に説明できるようにしておくことが重要です。

1.最近の業績を説明できるか

最近の業績について、数字できちんと説明できるようにしましょう。前述の「2 収益構造のチェック」で解説した分析を行って、説明資料として準備しておくことが望ましいといえます。

2.資金使途とその効果はどうか

融資の使い道(資金使途)は、具体的に説明する必要があります。何にいくら使って、その結果どのような効果が得られるのか、十分に検討しておきましょう。

3.無理なく返済できるか

融資を受けた後の返済能力は、融資の審査において重要なチェックポイントです。うまく説明するためには、資金繰り表や事業計画書を準備することが有効です。特に新規出店など大きい設備投資の場合は、投資内容の詳細や収支見通しを盛り込んだ事業計画書を作成することが不可欠といえます。

7 補助金・助成金を活用する

補助金・助成金には、大きく分けると国や自治体が実施する補助金(東京都などでは「助成金」の名称になっています)と、厚生労働省関係の雇用に関する助成金があります。

いずれも、基本的に返済不要の資金が得られる制度です(利益が大きく出た場合などには返金を求められることがあります)。中小企業にとってありがたい制度ですが、次の2つの点に留意が必要です。

1つ目は、それぞれ政策目的があり法律や規定が定められているので、その厳守が求められることです。万一違反すると、罰則を適用されることもあります。

2つ目は、特に補助金は「完全後払い」であることです。つまり、先に資金が提供されるのではなく、自己資金(または融資など)で支出して、事業が完了した後に支給されるものです。

これらを理解した上で、自社の事業計画や雇用見通しと照らし合わせて、合致する制度があれば、積極的に活用しましょう。補助金・助成金の募集情報は、中小企業基盤整備機構のWebサイトの「支援情報ヘッドライン」というページで検索することができます。

●中小企業基盤整備機構「支援情報ヘッドライン」
https://j-net21.smrj.go.jp/snavi/support

首尾よく補助金・助成金を活用できると、さまざまなメリットがあります。主に次の3点が挙げられます。

1.返済不要の資金が調達できる

返済が不要の資金を調達できるので、余裕を持った事業運営ができます。

補助金の場合、例えば「上限1000万円。補助率3分の2」という制度であれば、計画遂行に1500万円かかった場合に、その3分の2の1000万円が支給されることになります。

2.考えていた計画を実行するきっかけになる

以前から考えていた新規事業の計画があっても、先延ばしになって実行できていないことがあります。事業内容が補助金の趣旨に合っていれば、応募して採択(審査に合格すること)されることにより、計画を実行に移すことができます。補助金応募時に作成した事業計画書の通りに事業を進めることで、期間内に目標としていた成果を出せる確率が高まります。

3.採択企業としてブランド力アップにつながる

補助金の多くは、採択者発表の際に、採択された企業名と事業テーマがWebサイト上に公開されます。補助金に採択された事実は、事業内容が評価された証しです。自社のホームページなどで「○○補助金採択事業」と掲載することで、企業のブランド力が高まる効果が期待できます。なお、雇用に関する助成金は要件を満たせば利用可能といえますが、補助金は申請しても必ず採択されるわけではありません。

補助金の審査にパスするためには、「公募要領」をよく読んで理解することが重要です。特に「審査項目」(または「審査の視点」)の欄は、審査基準を示していますので、申請書を書くときに意識して記入しましょう。補助金によっては、「認定経営革新等支援機関」など専門家の協力を得ることが必須のものもあります。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年7月9日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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創業3年後までに経営者が学ぶべき計数感覚

起業したての経営者は、温めてきたビジネスプランで「0→1」を実現することに夢中でしょう。苦労は多いですが、夢の実現に向けた取り組みは楽しく、充実した日々を過ごしていることと思います。

一方、ビジネスでは“お金”がついて回ります。創業資金、業容拡大に伴う追加投資資金や、日々の増加運転資金などの金策は避けては通れません。しかし多くの経営者は財務や会計の専門家ではないので、起業したての経営者は数字のことで苦労します。

経営者が経理担当のような細かい財務や会計の知識を得る必要はありません。経営者は、経営者の立場と視点で財務や会計に向き合えばよいのです。このシリーズでは、起業から1~3年の経営者に注目し、経営者に必要な財務・会計の知識を紹介していきます。

1 起業した経営者に必要な財務の知識

起業後は定期的に決算を行って税務申告をします。もちろん、社内外の専門家に任せればよいのですが、経営者が内容を知らないでは済まされません。また、資金調達では、調達先がベンチャーキャピタル(以下「VC」)であっても、銀行であっても、将来の財務予測を含めた事業計画書の提出が求められます。

では、経営者は簿記や会計を学ばなければならないのでしょうか。答えは「No」です。経営者は多忙です。特に起業から1~3年の間、経営者はビジネスを軌道に乗せるための大変な時期を過ごします。現場で陣頭指揮を執りつつ、バックオフィス(業務)も行う経営者が簿記を覚える機会損失は大きなものです。それよりも大切なことを紹介していきます。

2 ビジネスプラン(経営戦略)と財務数値は表裏一体

起業したとき、どのような想いがあったでしょうか。市場にどのようなニーズがあるかを考え、どのようなお客様に、どのような価値を提供しようかと考え抜き、ビジネスプランを具体化していったはずです。

では、そうして生まれたビジネスがお客様に認められているか否かを、どうやって検証しますか? 売上や、それを分解した「お客様の数×客単価」で確認し、検証するのではないでしょうか。

また、売上を確保するためには、さまざまな活動が必要です。具体的には人を雇う、広告を打つなどの活動には経済的犠牲が伴います。これが費用です。

同様に、ビジネスを始めるには一定の投資も必要です。店舗を構える、工場を建てる、車両を持つなどです。これが会社の資産となります。資産を持つには資金が必要で、この資金をどのように調達するかを表したものが負債、純資産となります。

このように財務諸表は、突然どこからか登場した数字の羅列ではなく、経営者である皆さんが練ったビジネスプラン、戦略を数字で表現したものなのです。だからこそ、財務数値は経営者に責任があるのです。

ビジネスプラン、戦略と財務の関係を示した画像です

ビジネスプランと財務数値は車の両輪ではなく、表裏一体の関係です。ビジネスの表はビジネスプランです。お客様が喜んでくれるワクワクするようなプランが、こちらが何と言っても大事なのです。ただ、その裏では一つ一つのビジネス活動にひも付いて数字が動いているのです。経営者はこの関係をしっかりと理解しなければなりません。

3 決算書の財務諸表は経営者の成績表 PDCAのCの肝

決算で作成される財務諸表は、経営者の1年間の成績表です。ビジネスの提供価値が市場、お客様に果たして認められたのか(売上の問題)、価値を提供するための活動は適正だったか(費用の問題)、資金繰りに問題はないか(貸借対照表上の問題)。こうしたことが財務諸表で検証できるのです。

「年に1度(あるいは数回)の決算時に検証できてもね……」と考える経営者がいるかもしれませんが、その通りなのです。1年に1度(あるいは数回)では検証の価値がありません。そこで、実際には月次など、より短いサイクルで検証し、その結果に基づいて経営戦略を練り直す必要があります。また、ここまでの話が納得いただけたなら、こうした財務数値が迅速に経営者に届くことが必要だということもご理解いただけるでしょう。

よく「PDCA(Plan-Do-Check-Action)のサイクルを回す」と聞きますが、果たしてどのようにしてPDCAサイクルを回していけばよいのでしょうか。お客様の声を聴くなどいろいろあるでしょうが、短いサイクル、高い頻度で、定期的に検証するのは難しいものです。そこで、戦略、ビジネスの実行の結果が表れる財務数値を使って検証することが有効なのです。ビジネスシーンでよく登場するPDCAですが、「C(Check)」を行うには、財務諸表が読めなければなりません。

財務諸表の具体的な内容、財務諸表のどこをどう見ればそうした検証ができるのかは、次回以降で説明していきます。

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4 予測財務諸表を含む事業計画書の作成には経営者の魂を込める PDCAのPの肝

VCや銀行がビジネスプランについて興味を持ってくれたようなのに、ミーティングの終盤で「長期の事業計画書を出していただけませんか」などと言われ、「また堅いことを言ってきたな」と肩を落とすのは、経営者の“あるある”でしょう。

経営者はげんなりするかもしれませんが、VCや銀行としては、「ストーリーとしてのビジネスプランは面白い。経営者はこのビジネスでどれくらい売れると考えているのだろう? 今後どれくらい資金が必要だと考えているのだろう? 何年くらいで投資を回収するつもりでいるのだろう?」と、よりビジネスの内容を理解しようと興味を持っていることもあります。

ところが、経営者の中には「そんなのやってみないと分からないだろう。最終形が分かるビジネスなんてない」と受け止めてしまうことがあるようです。お互いにとって好ましくないコミュニケーションですね。

財務数値はビジネスプランによって決まります。VCや銀行は事業計画書の財務数値に表れる経営者の想いを詳細に読み取りたいと考えているのです。「なるほど、2年後に人員増強するのか。5年後には設備更新が必要なのだな……」といった具合です。

従って、事業計画書を用意してくださいと言われたら、実はチャンスかもしれません。財務数値からビジネスプラン、戦略をより詳細に読み取ろうと考えているのですから、ここは経営者の魂を込めて作成したいところです。そう、事業計画書の作成には経営者の魂を込めなければならないのです。

どのような活動をして(費用をかけて)、それだけの商品やサービスをいくらの値段でどれくらい売ろうと考えているのか(売上)、そのためにどのような投資がいつ必要になるのか、借り入れはどれくらいで返済できる予定か(これが決まらないと何年の融資をしてよいかも決まりません)は、経営者でなければ語れません。これを事業計画書に落とし込むのです。

一方、社内外の財務や経理の専門家に指示すれば、経理的には正しい事業計画書ができるでしょう。しかしそれは、どこにでもあるような「毎年〇〇%成長していく予定です」といった事業計画書になってしまうことがあり、VCや銀行などに「見る価値がない」と判断されてしまうかもしれません。

仮に、経営者自らが作成しない場合でも、前提条件は示しましょう。財務予測は経営者が練りに練ったビジネスプランを反映した前提条件の設定が全てなのです。また、他人が表計算ソフトで作った表の印刷物は、なぜその数字になったのか計算式がよく分かりません。事業計画書に盛り込む財務予測には、作成の前提条件が分かる一表を添付することをお勧めします。前提条件が全てだと申しましたが、これは財務諸表がどのようなメカニズムで作成されているのかが分からないと、なかなか現実には難しいですよね。この点も、次回以降で説明していきます。

しっかり書類は提出しているのに、その先に話が進まない、あるいはそういう経験のある経営者は、ぜひこの観点でご自身の会社の事業計画書を見直してみてください。

事業計画書作成における財務予測は、自らが考えたビジネスプランを可視化、定量化したものです。利益が少ない、資金がかかりすぎるなどの問題点を発見し、戦略を練り直すという作業を繰り返すことで、戦略の妥当性、有効性を検証し、ビジネスプランを磨き上げていくのが予測財務諸表を作成する意義です。

5 最後に

一見、経営者が手掛けるビジネスとは離れたところにありそうな財務の世界ですが、PDCAサイクルを適切に回していくためにも重要な役回りを果たしていることがお分かりいただけたでしょう。また、「財務数値をうまく使えばビジネスプラン、戦略の成功確率を上げられそうだ」「経営課題の早期発見に使えそうだ」など、何かお感じいただけたところはあったでしょうか。

次回以降は、財務諸表がどのようなもので、どう読めばよいのか、どういうメカニズムで作成されているのかを回を分けて解説していきます。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年7月9日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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5G時代到来! やがて当たり前になるVRなどのXR技術

「恐竜が東京の街中を歩いている」「トップアーティストが自室で自分だけのライブを開催している」。こんな夢のような世界が、テクノロジーの進化によって仮想体験できるようになっています。

こうした体験を可能にする技術が「VR(Virtual Reality)」と「AR(Augmented Reality)」です。目の前にないモノや人、景色などをあたかも実際にあるように見せる技術で、これまでは主に映像やゲーム用コンテンツで使われてきました。しかしここにきて、教育や医療などの分野で使われ始め、新たなビジネスやサービスを創出する技術として注目されています。

 仮想世界を再現する技術にはどのようなものがあるのでしょうか。ここではVRやARなどの技術の特徴を整理するとともに、エンターテインメント分野以外の活用事例を紹介します。

1 仮想世界を再現する技術の種類

あたかも現実のような世界を再現する各種技術をまとめて「XR(Extended Reality)」と呼びます。XRに含まれる各種技術の主な違いと、利用可能なデバイスを見ていきましょう。

1)VR(Virtual Reality/仮想現実)

モノや人、景色などを含めて、仮想世界を構成する全ての要素をコンピューターで制作しています。コンピューター・グラフィックス(CG)や3D技術を駆使し、仮想空間内で使われる物体(オブジェクト)や映像などを制作します。

VRを含むXRを使った映像は、体験者が臨場感を得やすくするため、ゴーグル型の専用デバイス(ヘッドマウントディスプレー)を使って表示するのが一般的です。体験者が上を向けば上空の映像が、下を向けば足元の映像が表示され、体験者の視線に合わせて映像もリンクするのが特徴です。なお、ヘッドマウントディスプレーは市販されている他、コンテンツによってはスマートフォンやタブレットなどでも映像を体験できます。

2)AR(Augmented Reality/拡張現実)

コンピューターで制作したオブジェクトを、実世界に重ねて映し出すのが特徴です。背景となる世界が仮想的に作られたものではない点がVRと異なります。例えば、目の前にある観光施設にスマートフォンを向けると、施設の変遷を映像とテキストを使って画面上で説明するなどの用途に使われています。ナイアンティックなどが提供するゲームアプリ「Pokemon Go」で、実世界にモンスターが現れる技術としても使われています。

ARによる仮想世界を体験するには、VR同様に専用のヘッドマウントディスプレーを使う他、コンテンツによってはスマートフォンやタブレットでも体験できます。日常でも違和感なく使えるメガネ型のAR専用デバイスの開発も進んでいます。

3)MR(Mixed Reality/複合現実)

実世界と仮想世界がより密接に連携するのが特徴です。実世界にあるモノの形状や位置を把握し、その形状や位置に応じて仮想オブジェクトを正確に配置できるようにしています。ARよりも高い精度でオブジェクトを実世界に割り当てることができます。

具体的な活用はこれからとなるものの、グーグルやフェイスブックなどの大手企業が活用に向けて動き出しています。中でもマイクロソフトは2019年2月、MRの利用を想定したゴーグル型デバイス「Microsoft HoloLens 2」を発表しました。大型試作機を実寸サイズで確認したり、構造物の保守点検業務に用いたりすることなどが見込まれています。

4)SR(Substitutional Reality/代替現実)

実世界に過去の映像などを映し出すのが特徴です。体験者はあたかもそこに本物があるように錯覚し、現実なのか仮想なのか分からなくなる世界を作ります。

MR同様、具体的な活用はこれからとなります。しかし、高いリアリティーを再現できることから、本物に近い体験を容易にできる技術として注目されています。なお、SRを体験できるデバイスも、ヘッドマウントディスプレーが想定されています。

2 XRの新たな活用事例

1)従業員研修の満足度向上に

VRやARは、教育分野での利用が進んでいます。とりわけ目立つのが従業員研修用途です。機器の操作方法を、あたかも目の前に機器があるような環境で学べるのがメリットです。操作方法を口頭で聞いたりマニュアルを読んだりして覚えるよりも効率よく学べます。研修時間の短縮や研修担当者の負荷軽減などの効果も見込めます。その他、営業担当者向けの商談マニュアルや飲食店向けの接客マニュアルを、VRを使った映像として研修に用いるケースもあります。

VRを活用した研修にいち早く取り組んでいるのが小売業大手のウォルマートです。同社は、接客業務などの研修にヘッドマウントディスプレーを採用し、従業員の研修の満足度を高めています。米国内の各店舗にヘッドマウントディスプレーを配布するなど、VRを積極的に活用していく構えです。

2)手術を間近で見学

医師にとって、難度の高い手術を間近で見学する機会は必ずしも多くありません。とはいえ、日々進化する医療技術を習得するには、多くの“現場”を体験することが欠かせません。

こうした課題を、VRを使って解決する試みが見られます。ヘルスケア事業を展開するジョンソン・エンド・ジョンソンは2018年11月、VRを使った医師向けの研修映像を開発することを発表しました。手術の状況を全方位カメラで撮影するなどして映像を制作し、あたかも目の前で手術を見ているような状況を体感できるようにしています。研修者は映像を何度でも繰り返し見られるため、医療技術を習得しやすくなる他、映像には状況の解説も含まれているので理解度も高まります。

どのような手術方法が適切なのかを検討する事前カンファレンスでVR映像を使えば、より具体的な手術方法を検討し、チームでイメージを共有しやすくなります。実際に開腹してみないと分からない正確な病巣位置も、VR映像で立体的に把握することで、手術中のリスクなどを事前に想定しやすくなります。多くのメリットを得られることから、医療分野ではVRを含むXRを積極的に活用していくのではと考えられています。

3)家具の配置や設計プランを仮想的にシミュレーション

購入した家具を自宅に置いたときのイメージを膨らませやすくするのにARが活用されています。家具メーカーのイケアは、家具の配置をシミュレーションできるサービス「IKEA Place」を提供しています。利用者は自宅に家具を置いたときの状況を、スマートフォンの画面を通して確認できます。家具が思っていたより大きい、家具の色が意外となじまないなど、購入後に起こりがちなギャップを解消するのに役立てています。

これまで図面でしか確認できなかった住宅の設計プランを、VRを使って把握しやすくするサービスもあります。住宅メーカーの積水ハウスは、住居内をVRで再現するサービスを提供しています。図面だけでは把握しにくいスペースの広さや天井までの高さ、空間のゆとりなどを感じやすくしています。VRを使った映像で実際に建設した住居を再現することで、購入予定者の設計イメージを膨らませたり、注文住宅の購入者に住居イメージを事前に体験してもらったりすることが可能です。コンピュータシステム研究所も住宅メーカー向けに、VRで住宅内部を再現する「ALTA for VR」を提供するなど、住宅の販売方法もVRによって変わりつつあるようです。

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3 5Gが仮想世界の利用を後押し

XRは今後、インターネット環境の改善とともにさらに進化すると考えられています。とりわけ、最高伝送速度が10Gbps、遅延が1ミリ秒程度となる通信規格である「第5世代移動通信システム(5G)」の登場によって、大容量映像を低遅延で伝送できるようになると、どこからでもXRを使った映像をリアルタイムに受信して体感することが可能になります。通信技術の進化がXRの進化を後押しし、今後はさらに多くの利用シーンが模索されることになるのです。

新たなビジネスの可能性を秘めているXR。企業は自社のビジネスやサービスを強化する技術の1つとして、今後の動向を注視しておく必要があるでしょう。

以上

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法人間の国際送金サービス

書いてあること

  • 主な読者:海外企業と取引のある事業者
  • 課題:国際送金サービスの事例、留意点を知りたい
  • 解決策:銀行以外でも国際送金サービスを手掛ける企業がある。取引に当たり、ビジネスメール詐欺などの金融犯罪に注意する

1 拡大する国際送金の額

グローバル化の進展によって出稼ぎ労働者を含む移民が増加していることなどを背景に、国際送金の額の拡大が続いています。

世界銀行のデータによると、世界における国際送金の額(送金の受け手国側から集計した額)は、2018年には6894億400万ドル(1ドル=110円で換算すると約76兆円)と過去最高を記録したもようです(2019年4月公表の速報値)。

同じく世界銀行のデータによると、日本への国際送金の額は、2018年には56億3400万ドル(1ドル=110円で換算すると約6200億円)、日本からの国際送金の額は、2017年には52億8300万ドル(同、約5810億円)となっています。

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2 銀行以外で法人間の国際送金サービスを展開している企業事例

1)国際送金とは

国際送金は、国境を超えて現金を物理的に移動させることはまれで、実際には銀行間の「帳簿の付け替え」が行われるかたちが一般的です。

詳細は割愛しますが、国内のA銀行の口座から、海外のX銀行の口座に送金する場合、「送金手数料」「為替手数料」「受取手数料」が発生し、途中に介在する金融機関が多ければ、それだけ時間やコストが掛かることになります。

国際送金サービスの市場は、かつては、銀行や送金専門業者(Money Transfer Operator)の独壇場でしたが、インターネットが普及した近年では、ITを駆使したフィンテック企業の参入も相次いでいます。

以降では、銀行以外で、法人間の国際送金サービスを日本でも展開している企業事例を紹介します。

2)TransferWise(トランスファーワイズ)

TransferWise(英国)は、自社の銀行口座を多数の国に開設しており、送り手が自国のTransferWiseの口座へ入金して指示をすれば、受け手の国にあるTransferWiseの口座から、その時点での為替レートで送金できるというサービスを展開しています。

同社は、手数料計算ツールをウェブサイトで公開するなど、送金に掛かるコストの透明化を図っています。

同社の日本法人トランスファーワイズ・ジャパン(東京都千代田区)は、2016年9月より個人向けサービスを、2018年6月より法人向けサービスを開始しました。

■トランスファーワイズ「法人サービス」■
https://transferwise.com/jp/business/

3)Queen Bee Capital(クイーンビーキャピタル)

Queen Bee Capital(東京都港区)は、「PayForex(ペイフォレックス)」という、銀行間の国際送金ルートを利用し、顧客の資金を海外の銀行口座へ送金するサービスを展開しています。全ての手続きがインターネット上で完結でき、取り扱い通貨は20種類以上、200カ国以上に送金が可能です。送金額によって手数料が異なり、大口の外貨送金手数料は無料となります。

■Queen Bee Capital「PayForex」■
https://www.queenbeecapital.com/payforex/

3 銀行以外の法人間の国際送金サービスを利用する際の留意点

1)1回当たり100万円を超える送金は銀行以外に認められていない

上述したトランスファーワイズ・ジャパン、Queen Bee Capitalの2社は「資金移動業者」として登録を受けています。これは、「資金決済に関する法律」に基づき、銀行等(銀行、外国銀行の日本支店)以外のものが100万円に相当する額以下の為替取引を業として営む場合、「資金移動業者」として内閣総理大臣の登録を受けなければならないためです。

2)法人口座の開設には書類提出が必要

法人口座の開設には、申し込み者が本人であることを証明する書類と、個人番号(マイナンバー)・法人番号の提出が必要となります。これらの必要書類を取りまとめるには、相応の手間が掛かります。

3)金融犯罪に注意

いわゆる「ビジネスメール詐欺」の手口が巧妙化しています。2018年8月には情報処理推進機構(IPA)が、「日本語メールの攻撃事例を確認、あらゆる国内企業・組織が攻撃対象となる状況に」として、注意喚起を行いました。

今後、日本語の文面によるビジネスメール詐欺が増加した場合、海外との取引がない、あるいは英語のメールのやり取りの習慣がない国内の一般企業・組織も被害に遭う恐れがあります。

4 参考

現在、1回当たり100万円を超える送金は銀行以外に認められていません。ただし、2018年秋以降、金融庁の金融審議会において、この規制の緩和に向けた議論が進められています。

2019年5月29日には、金融審議会「金融制度スタディ・グループ」において、「『決済』法制及び金融サービス仲介法制に係る制度整備についての報告≪基本的な考え方≫(案)」が示されました。その中では、資金移動業者を送金額に応じて、「現行の送金上限額を超える高額送金を取り扱う事業者」「現行規制を前提に事業を行う事業者」「数千円または数万円以下の少額送金のみを取り扱う事業者」の3類型に再編することなどが、検討課題として示されています。

報道によると、金融庁は制度化に向けて議論を進め、早ければ2020年の通常国会に関連法改正案の提出を目指しているもようです。

以上(2019年7月)

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画像:photo-ac

【朝礼】「変化」は自ら起こすもの

先日、私は大学の頃の友人と、大学時代の思い出の地を巡ってきました。実に30年ぶりに、校舎の中と、その周辺の街を歩いてみたのです。

懐かしさと同時に、新しく変わった校舎や街並みに、大きな衝撃を受けました。

中でも印象に残ったのは、大学周辺の飲食店が、ほとんど新しく変わっていたことです。私たちは、「思い出の地巡り」の締めくくりとして、当時よく通っていた何軒かの店で乾杯しようと思っていましたが、それらの店はただの一軒も残っていませんでした。

唯一残っていたのは、昼ごはんをよく買いに行ったパン屋さんだけです。そのパン屋さんも、店名を含めて30年前とは様子が全く違っており、おしゃれなベーカリーカフェに変わっていました。私たちは、30年たつと飲食店がこれほどまでに入れ替わり、変化するのかと、時代の流れを実感しつつ帰ってきました。

それぞれの飲食店で事情はさまざまでしょうが、唯一パン屋さんが30年たっても残ることができたのは、時代とともに移りゆく学生たちのニーズやライフスタイルに合わせて、自分たちも変化してきたからかもしれません。私は、このパン屋さんの姿から、当社も、これから変化していかなければならないと改めて強く感じました。

ただし、パン屋さんと当社では、大きく違う点があります。それは、「パン屋さんは外から変化がやってくる」という点です。

そのパン屋さんは大学のそばにあるため、毎年、多くの学生が新しく入学し、そして卒業していきます。つまり、「顧客」も含めて、「常に外から変化がやってくる」環境にあるのです。

一方、当社はそうではありません。新入社員を定期的に採用してはいませんし、顧客が毎年、定期的に入れ替わるようなこともありません。外から大きな変化がやってくるわけではない当社は、「中から変わっていく」しかないのです。

皆さん、自分の周りを見回してみてください。当社は設立30年以上ですが、30年前と全く同じ進め方をしている仕事、変わらない商品があるはずです。長く続いているのは大いに誇れる素晴らしいことですが、ただ漫然と前例を踏襲しているだけで、本当は変わらなければならないのに変わっていないとしたら、それは大きな問題です。

「日に新た(ひにあらた)」。これは、昨日とは違う今日という意識を持ち、日々新しい自分になることで成長していけるという趣旨の言葉で、松下幸之助氏が好んで使っていたものです。松下氏は、社員が全く同じことを続けているだけだと、厳しく叱ることもあったといいます。

当社も同じです。皆さん一人ひとりが、「中から、自分たちから変わっていこう」という意識を持ち、日々変化していくことで成長できるのです。

この朝礼が終われば、昨日とは違う新しい一日が始まります。皆さん、今日から変化を意識し、当社に新しい風をぜひ起こしてください。

以上(2019年7月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「笑顔」と「笑い声」の準備はできていますか?

皆さん、おはようございます! 本日は良い雰囲気でビジネスを進めるための、ある秘訣について話したいと思います。皆さんは、日々の営業の場面で、「今日はトークの調子がいい!」とか、逆に「調子が悪い」と感じるときがあるでしょう。

トークの調子の良しあしは、準備したシナリオ通りに話せたか否かで決まるわけではありません。例えば、相手と丁々発止の議論ができ、その中で、当初は想定していなかったアイデアが浮かんで提案の幅が大きく広がったときなどに、「トークの調子がいい!」といえるのです。

では、トークの調子がいい状態はどのようにすればつくれると思いますか。私は「相手に気持ちよく話をしてもらうこと」と、「自分が気持ちよく話をすること」、この2点に尽きると思います。

恥ずかしいことですが、私は一度だけ商談中に居眠りをしたことがあります。疲れていたこともありますが、何より相手の話が単調だったのです。居眠りしたのは一瞬でしたが、相手は見逃しませんでした。相手は私の反応を探ろうと全神経を集中させているのですから、気付いて当然です。

次の瞬間から相手の雰囲気がガラッと変わりました。「私に聞く気がない」と判断した相手は、さらに単調な口調となり、早口にマニュアル通りの説明をして、そそくさと帰っていきました。もしあのとき、私が相手に気持ちよく話をしてもらう配慮ができていたら、より良い提案を受けられていたかもしれません。

逆に、良い例もあります。ご縁があってインターネットメディアの対談に参加したときのことです。そのときの対談相手の言葉がとても印象的だったのです。彼は、「周りの人たちは、常に笑顔と笑い声を絶やさず、餅つきの合いの手のように盛り上げてください。そうすることで私たちは気持ちよく対談できます。結果として、それが良い内容に結び付くのです」と言いました。その人が対談に慣れていたこともありますが、アドバイス通りにした結果、確かにその場は非常に盛り上がり、中身の濃い対談ができました。

関係者の中には、仕事として笑顔をつくり、笑い声を発し、合いの手を入れていた人もいたはずです。全員が心を込めていたわけではないでしょう。しかし、それでも、人は周りの笑顔や笑い声から力をもらい、前向きになれるものです。実際、私もそうでした。

多くの人は商談前に、「シナリオ作りも含め、事前準備を怠らないように」と教えます。とても大事なことですが、私はここに、「笑顔」と「笑い声」も準備するようにしています。プロのアナウンサーは、本番前に鏡の前でニーッと歯を出して笑顔の練習をするそうですが、これと同じです。実践してみれば分かりますが、「笑顔」と「笑い声」には、皆さんが考えている以上の効果があります。皆さんの「笑顔」と「笑い声」は相手にも伝わり、とても良い雰囲気でビジネスを進めることができます。ぜひ、試してください。

以上(2019年7月)

pj16965
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】部下が成長するベストタイミングを逃さない

皆さんは、「信じる」ということの意味をどのように捉えていますか。私は、「信じる」とは、相手の人間性についてはもちろんのこと、相手の実力をも信じることだと考えています。

分かりやすく、スポーツに例えてみましょう。サッカーチームに、性格はとても良いが実力は三流の選手がいたとしたら、その彼にエースストライカーを任せることはできないでしょう。点を取ってくれるとは思えないからです。逆に、実力は一流だが性格に難がある選手がいたらどうでしょう。やはりエースストライカーを任せることはできません。ひねくれたプレーをして、せっかくのチャンスを台無しにしてしまうかもしれないからです。

偉大な成績を残して現役を引退したイチロー選手のように、一流と呼ばれる選手は、人間性と実力を兼ね備えています。だからこそ周囲は「信じる」ことができるのです。

さて、ここで管理職の皆さんに質問します。

「信じられる部下を育てていますか?」

注意してほしいのは、私は「部下を信じていますか?」とは聞いていないことです。皆さんの仕事は部下を信じるだけではなく、信じられる部下を育て、その上で信じることです。人間的に未熟な部下には、仕事に取り組む姿勢を教え、技術的に未熟な部下には、スキルアップの機会を与えなければなりません。それも、適切なタイミングで部下の成長を後押しする必要があります。

私が課長だった頃、上司からの信頼を強く感じた出来事があります。私は大きな商談を担当していて、最終コンペまでこぎ着けました。その当日、上司は次の言葉で私を送り出してくれました。

「楽しんできなさい!」

その上司は人の何倍も準備をする人でした。通常なら直前まで私を指導し、「とにかく慎重に!」と送り出したはずです。それなのに「楽しんできなさい!」と言われたので私は驚きましたが、すぐにその言葉は私への信頼の証しだと分かり、やる気が倍増したのを覚えています。当時、私は本当に入念にコンペの準備をしていました。後から聞いた話ですが、上司はそのことを同僚から聞いていたこともあり、私を信頼してくれたようです。

「啐啄同時(そったくどうじ)」という言葉があります。「啐(そつ)」はひな鳥が卵の内側から殻をたたく状態、「啄(たく)」は親鳥が卵の外側から殻をたたく状態を示します。親鳥は、ひな鳥がいよいよ殻を破って外に出るタイミングを見逃さず、その手助けをしているのです。

先ほど例に挙げたコンペのとき、上司から「とにかく慎重に!」と言われていたら、私はそれほど上司からの信頼を感じなかったはずですが、まさに上司の絶好のタイミングの一言でやる気が倍増しました。部下は一気に成長しません。しかし、ブレークスルーのタイミングは必ずあります。上司はそれを見逃さず、「啐啄同時」でサポートすることが大事なのです。

以上(2019年7月)

pj16966
画像:Mariko Mitsuda