実は看板(社名)に偽りはなかった〜株式会社真面目さんは経営に、対クライアントに、社内に、かなり真面目でした!〜/岡目八目リポート

 年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、株式会社真面目の代表取締役である平川アズサさんです。

 まずは写真と同社HPをご覧ください。

株式会社真面目。う~ん、失礼ながら社長やHPの雰囲気からは、「どこが真面目なの?」と思わず指摘したくなってしまいます。そしてそれは、私だけではないはず。特に、同社HPのメンバー紹介は、社長以下全員がくるくる回転しているのですから……。

思わず笑ってしまいます(笑)。

こうご紹介できるのも、今回の株式会社真面目は、経営面、対クライアントの姿勢、そして何より社長の平川さんの社員を大切にする姿勢が本当に【真面目】で、それが社名になっていると感じたからです。

この記事をお読みいただいている皆さんにとっても、株式会社真面目の【姿勢】から何かヒントになることがあればと思い、同社社長の平川さんにお話を伺いました。

真面目の看板を示した画像です

1 真面目な姿勢の一端を

1)株式会社真面目の「真面目」な経営のお話

現在10名のメンバーと一緒に会社を切り盛りしている平川さん。会社の概要について聞きましたら、まず、次の3つをお話しいただきました。

  • 現在7期目で、6期までは毎年200%以上の成長を遂げている(単月にいくら売り上げる!などの細かな売上目標は特にないにもかかわらず)
  • 信組から都銀、政府系金融機関まで、「ぜひお付き合いを!」と言われている
  • 創業以来、一度も経営危機に陥ったことがない

この3つを見ただけでも、なかなかの経営手腕であることが分かります。しかしながら平川さんは、会社設立から現在に至るまで、経営に関して何か特別な勉強をしたことも、起業前から経営に携わったこともありません。いきなりスタートした会社経営ながら、危機に陥るような課題もなくここまで順調に成長されているというから驚きです。これも平川さんが事業について真面目に真摯に考え続けている証しだと感じます。

2)株式会社真面目の「真面目」な対クライアントの姿勢

株式会社真面目の主たる事業は映像制作です。聞いて驚くのは、業界では当たり前である【営業職】が同社にはいないことです。平川さんいわく、「仕事を【取りに行く】ことは一切しない。それでも、大手企業からも普通に【相談】が舞い込む。困ったら『真面目さんに聞いてみよう!』という流れができている」のだそうです。

そうは言いつつも、【コンペ】が当たり前の映像制作の世界です。先方から相談された事案であっても、コンペには参加します。6期目だった昨年(2018年)は、コンペの熾烈(しれつ)な戦いの中で【全戦全勝】という素晴らしい結果を残しています。この「負けなし」という結果にも、クライアントファーストの心意気、真面目な姿勢での取り組みがうかがえ、プロセスから結果へつながっていると感じます。

こうした「真面目」さが感じられる事例を幾つかご紹介しましょう。

・人材系大手企業の場合

最初は社内イベント用の短い映像制作を依頼され、翌年にはこれに加えてイベント全体の企画について提案するよう依頼される。そしてコンペに参加し、ライバル5社との戦いを勝ち抜き、前年に比べて数十倍の受注額を獲得。さらに翌々年には、イベントの運営まで任されることになり、受注額はさらに数倍に上昇! その大手企業グループ各社に株式会社真面目の仕事ぶりと、クオリティーの高さが伝わり、受注の輪が広がっている。

・カラオケシステム配信会社の場合

カラオケムービーのバックに流れる“かっこいい”コンテンツ映像の相談を受ける。スポーツ選手とカラオケムービーを掛け合わせる提案を行い、単発だった取引から、見事にシリーズ化が決まり、格段に取引が増える。

・某百貨店の場合

インバウンド向け“日本のおもてなし感”を新しいカタチで表現したいという相談を受ける。そこから縦型のサイネージを百貨店に設置し、全国各地を回って撮影した【日本】を意識できる映像を展開。こちらも、継続的におもてなし動画を発信し続けるほど、評価を得ている。

こうした事例から、平川さんたちは真面目にクライアントに向かい合い、良い意味で、期待を裏切る効果と結果を、クライアントにもたらせているのだと感じます。

3)株式会社真面目の「真面目」な社内・社員への姿勢

映像制作は、クオリティーが求められる厳しい世界です。こうした世界にあって、「社員のやる気をどのように引き出しているのですか?」と平川さんに聞いてみました。その答えは、「『何をやりたい?』と社員に質問すること」というものでした。

指示された仕事やディレクションが決まった仕事ばかりだと、社員であるクリエーターのテンションやモチベーションは維持することが難しい。クリエーティブな作品も生まれなくなってしまうかもしれません。そこで平川さんは、社員の“クリエーター魂”を尊重し、「何をやりたい?」との質問を投げかけているのだそうです。

そして、やりたいことを聞くだけではありません。ここがすごいのですが、たとえ何の収益を生まなくとも、社員がやりたいことや、つくりたい作品を【映像化】するところまでやり遂げるのが株式会社真面目です。

そうしてつくった映像は、近しい人に見てもらって評価をしてもらいます。たとえ仕事につながらなくとも、この社員の【やりたいこと】をつくること、そういう行動を起こすことで、会社全体のクオリティーレベルの担保にもつながっていると平川さんは話します。

一見、無駄と思えることが決して無駄にはなっていません。平川さんと社員とのこうした関係性から、社員の自覚や自立心と、社員に仕事を安心して任せられる環境が生まれ、それが、会社全体の仕事の質や生産性の高さにつながっていると感じます。

社内の集合写真を示した画像です

2 株式会社真面目の起業、映像制作に至る経緯について

平川アズサさんの経歴を示した画像です

平川さんに、これまでの人生における今の仕事へ通じるヒントや、今に至る経緯について質問してみました。

1)小学校、中学校時代の思い出は、どのような感じですか?

平川さんのご回答

『小学校低学年から学級委員を任されていました。自分から手を挙げるタイプではなかったのですが、なぜか不思議と先生から指名される感じがありました。私は、人の話を聞くときはしっかりとその人の目を見て話を聞く、下を向いて人の話を聞かないという【習性】がありましたので、自信があるように見えたのかもしれません。なんの自信もなかったのですが、先生から指名されると、「はい! やります!」とすぐに答える。断らない。そんな子供時代でした』

こうした平川さんの【習性】が、今の会社経営にも通じると思いました。できるかできないかということで悩む前に、「やってみる精神」、それが積み重なっていると感じました。

平川さんのご回答

『実は、いじめられっ子でした。中学生のときには生徒会役員をやっていたり、早々と高校入学が決まったりして、割と目立っていたことが原因だったのかもしれません。そこで、どのようなことがあってもネガティブな顔をするのではなく、常に笑顔を心掛けるようにしていました。すると不思議と運気が上がることを経験しました』

今の平川さんも、口角を上げて常に楽しい雰囲気を出し続ける、本当に笑顔のすてきな方です。周りへの良い影響を醸し出すことで、またさらに、平川さんの【笑顔エネルギー】に引き寄せられる良い人が集まってきている、そんな気がします。

2)モデル、女優業から、なぜ映像制作の道へ進んだのでしょうか?

平川さんのご回答

『20代前半まで、モデル、女優業をやっていました。競争の激しいその世界で頭一つ抜け出すには、何か【希少性】がないといけない、自分には何ができるだろうと自問自答を続けて、【台本が書ける女優になろう】と決めました。周りにも台本を書こうと思っている人は多かったのですが、実際に書く人は限られ、書き続ける人はさらに少なく、そして最後まで書き上げる人はほぼいない。私は2年をかけて脚本を書き上げ、周囲の人に出来栄えを聞いて回りました。そうすると、【面白い】という反応をいただくことができました。

そこからまた周囲に声を掛けて、映画撮影にチャレンジすることになったのです! 周囲のカンパと、休日を活用した映画制作で、制作すると決めてから完成までに1年。映画が完成しました。女優、脚本、映画制作とここまで自力で経験してみましたが、最後までできなかったのが映像編集でした。そこで、この自分にできなかった編集というものを自分の職業にしようと決断して、映像制作の会社へと転身したのです』

20代半ばから映像制作の会社に入社した平川さん。慣れない業界用語は難しい。しかも、研修など全くない世界です。そうした中で平川さんは、一つ一つをクリアして自分のものにしながら、着実に成果を出し、成長されていったそうです。加えて、子供の頃からの【習性】であった「下を向かないこと」、これが効いてこの映像制作の会社でも【抜てき】されることになります。例えば、平川さんは、入社3カ月で制作監督の仕事を任されたことがあるそうです。ここでも尻込みすることなくやり切り、周囲から認められる存在になりました。

この映像制作の会社で培ったさまざまなことがきっかけとなり独立を意識し始め、30歳を目前に決意を固め、平川さんは株式会社真面目の設立へ向かうこととなりました。

平川アズサさんの近影を示した画像です

3 株式会社真面目の今、そして未来像について

1)普段の平川さんの仕事ぶりについて

ここで、最近の「48時間のタイムスケジュール」から、平川さんの仕事ぶりを見てみましょう。

  • 朝4:30起床→5:00に会社に集合し、そこから八王子のスタジオへ(平川さん自らワンボックスカーを運転するそうです)
  • この八王子のスタジオにて21:00までミュージックビデオの撮影
  • 22:00過ぎに帰社、そこから翌日の打ち合わせ
  • 24:00帰宅の途へ
  • 帰宅後も翌日(日付が変わっているので当日?)の資料の確認後、3:00に就寝
  • 朝7:00に起床
  • 午前中はクライアント訪問前にオンラインでミーティング
  • そこからクライアント訪問
  • 午後は採用面接、その後、前日の映像チェック
  • 23:00に帰宅

社長業、運転手、クライアント対応、面接官、クリエーティブディレクターなどなど、平川さんは多種多様なことをやり切っています。平日は全力で仕事に取り組み、会社と社員に向き合う。平川さんは、そのような毎日が本当に楽しいと語ります。

なんでもない私や、価格もカタチもないアイデアに何百万円、何千万円も投資していただいているクライアントに、感謝しかないです」と笑顔で語る平川さん。こうして、クライアントの喜びが自分たちの喜びになっているところが、平川さんたちの素晴らしさの一つです。まさに、「【無心】に事業に向き合い結果がついてくる」のだと思います。平川さんの仕事ぶりから株式会社真面目の今が垣間見える気がしました。

2)発信力を大切にしていて、SNSをうまく活用している

ご紹介でさまざまな企業の方とお会いする際に、平川さんが心掛けているのが、Facebookの友達申請やメッセージです。平川さんたちには、クライアントとのコミュニケーションにも工夫があります。例えば、クライアントのご担当者の誕生日や記念日に動画メッセージを送って気持ちを伝えています。また、会社のFacebookページを小まめに投稿することで、会社の活動を発信しているそうです。

●株式会社真面目のFacebookページ
https://www.facebook.com/majime.co/?epa=SEARCH_BOX

同社のFacebookページからも、平川さんのコメントからも、社員との家族的な付き合い、関係性を感じることができます。平川さんは、「社員が好きです、家族みたいなもの」とも。

ただし、この家族主義的関係性を維持する上で平川さんが決して目をそらしていないのが、「手を抜く人や一生懸命さを欠く人は、自然に離脱していく」ということです。会社経営はきれいごとではありません。家族主義だからこそ、よそよそしくすることなく、つらくても伝えるべきことを正面からきちんと話す。そこが結局、株式会社真面目の家族的な環境につながっているなと思います。

最後に、株式会社真面目の未来について平川さんに尋ねてみました。すると真っすぐな一言が返ってきました。

社員の子供が入社したくなる会社づくりです!

非常に明快なお返事を、すてきな笑顔でいただきました! 株式会社真面目の「真面目」な取り組みが、さらに発展されると感じ入るインタビューでした。

社内の集合写真を示した画像です

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年6月27日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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第8回 ハーバード流(イノベーションを起こすための)モチベーションUP 3つのポイント/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

皆さま、こんにちは。いつも私のりそコラのコラムを読んでくださり、SNSでシェアしていただき、愛りがとうございます(愛+ありがとう)。

私はこれまで日本全国約20都市にて、【愛】のあるアントレプレナーシップ教育を通してイノベーション創出のために尽力してきました。例えば、各大学や企業、病院にて講演したり、ワークショップを主催してきました。それだけではなく、インキュベーション施設やアクセラレータープログラムを作ったり、シリコンバレー視察ツアーを企画して大学教授、大学生、スタートアップ起業家、中小企業のオーナー社長、大企業の方をお連れしたりしました。

2016年10月に山口大学で「志 ~イノベーション道場~」を開設、2017年4月に銀座エリアでGlobal Innovator Program(GIP)を開校、2018年7月に英語によるオンラインアクセラレーター「Silicon Valley Dojo」を開始、2018年11月に理化学研究所の中で加速アクセラレーターを開講。そして、2019年1月には「Angel Accelerator」などを開講しました。Angel Acceleratorについては、「日本各地にシリコンバレー流アクセラレーターを作り、地方創生イノベーションを起こすには? Angel Acceleratorの講義内容大公開!」で詳しくご紹介していますので、ぜひ、ご覧ください。

さて、これら全てのプログラムの中でも、講義の際に、私は生徒の意識を高めるために3つのことについて熱く伝え続けてきました。どのような企業に対しても経営コンサルティングをするときはいつもそうですが、私は常に仕事のときもこれらの3つのことを大切にしています。この3つのことは、全て【P】という文字から始まるのです。今回のコラムでは、この3つのことを中心にお伝えしていきたいと思います。

この「3つのP」を提唱したのは、ハーバードイノベーション・ラボ(テクノロジー&起業センター)の初代革新教育フェローのトニー・ワグナー博士です。私自身、ハーバードビジネススクールで学んだ後に、ワグナー博士のTEDトーク(2012年)を拝見し、ご著書「未来のイノベーターはどう育つのか」を拝読して、この3つのPが今の日本にとって一番大切なことだと気付き、実際にハーバードイノベーション・ラボにも伺ったことがあります。

私の講演では、クイズ形式で「イノベーションを起こすために必要なモチベーション。このモチベーションを高めるために必要な3つのPとは何でしょうか?」という具合で質問して、当たるまで、手を挙げて答えていただきます。

参加する生徒にはどんどん間違っていただきながら、正解したら、全員で拍手をして、みんなの前で褒めることをしています。会場のオーディエンスや生徒たちも、なかなか3つ全てを正解できないので、どんどん手が挙がって白熱して、盛り上がります。

もうワグナー博士のTEDトークをご覧の方は分かるかもしれませんが、ここで改めて質問します。

皆さんは、3つのPは何だと思いますか?

ヒントは、「皆さんが子供に『勉強しなさい!』と伝えても、子供はやる気がなかなか出ないとき、どのように勉強してもらえるように話しかけるか」です。

親が子供に勉強させたいと思う最大の理由は、「将来、良い学校に進学し、良い会社に就職して、良い人生を歩んでほしい」と考えるからです。ですが、その親の想いが強すぎて、子供に、「とにかく勉強しなさい!」と伝えても、子供は、何のためにそこまで勉強しなければいけないのか分からないかもしれません。

それは、上司が、「売り上げのために働いてください」と部下に伝えても、部下の気持ち(モチベーション)は下がる一方なのと同じことかもしれません。親や上司の伝え方に問題があるというよりは、子供や部下にそもそも自主性がないからではないか、ということは置いておいて、どう伝えれば、人々のモチベーションは上がるのでしょうか?

相手が子供でも部下でも、失敗させないように、親や上司はかばうことをします。しかし、それでは、真の自信はつきません。真の学びとは、自らチャレンジして、失敗したときにこそ学べるのです。成功したときからではなく、失敗したときに、人はなぜ失敗したかを考えます。

ワグナー博士は、真の若手のイノベーターたちは、実は内的なものに動機付けされることを発見しました。ここに改めてご紹介しましょう。

ワグナー博士による「ハーバード流イノベーターを育てる3つの鍵」

  • 専門性(知識)

  • クリエーティブな思考力

  • モチベーション

その中でもワグナー博士は、最も大切なものは3.のモチベーションだとしています。モチベーションには外因性と内因性の2種類がありますが、より大切なのは、内部モチベーションです。

質問. 内部モチベーションが持つ3要素「Pから始まる言葉」とは、何でしょうか?(答えを見ずに考えてください)

正解は、

 

【Play「遊び」】

【Passion「情熱」】

【Purpose「目的」】

の3つです。

遊び(Play)とは発見を目的とする学習で、子供は遊び(Play)によって情熱(Passion)を注ぐ対象を見つけ、それを追い求めるようになる。それがやがてもっと意義深い目的(Purpose)へ発展していく』(トニー・ワグナー博士)

実際、日本全国20都市くらいでこの質問をしてまいりましたが、最初のPlay(遊び)を答えられた人はわずか数人しかいませんでした。多くの人は、勉強や仕事のことを楽しい、ワクワクするものと思っていないようです。

仮に、難しい真面目な仕事だとしても、チャレンジしていることにドキドキして、遊び以上にワクワクする人が増えれば、日本は元気になるのではないでしょうか。実際に私は、1時間の講演では、3つのPについて、詳しくはお話しできませんが、2カ月から4カ月のアクセラレーターなどでは、一つ一つのPに対して、講義内容を変えて、内部的にモチベーションが上がっていくように、生徒たちに寄り添いながら授業を進めています。

例えば、私の講義では、Play(遊び)の講義の際には、自分が一番ワクワクする夢について考え、ビジネスとしての目標設定から、ビジョン策定を促しています。そして、Passion(情熱)の講義では、シリコンバレーの成り立ちや、スタートアップの経営の仕方、Yコンビネーターが送り出したユニコーン企業についてなどを門下生に伝えることで、Born Globalな発想で、常に世界視野で物事を考える癖を植え付けます。最後に、Purpose(目的)の講義では、起業家に必要なアントレプレナーシップ(起業家精神)だけではなく、経営者にステージアップする上で必要なリーダーシップ教育を行い、ビジョンをどう経営に落とし込んでいくかについても一緒に学びます。

子育てでも、学校でも、企業でも、イノベーターを育てる上では、「私たち一人一人がイノベーターになることで、良いロールモデルになること」が重要であると、ワグナー博士は言っています。

教える側がリスクを取ることが大事で、革新の価値や特性を、身をもって示すことが必要です。そのためには、我々一人一人が、3つのPを大切にし、行動することで、社会貢献をすることが重要だと私は信じています。読者の皆さまも、この3つのPであるPlay「遊び」、Passion「情熱」、Purpose「目的」を広めて、日本を、そして世界を一緒に良くしましょう!

いつも愛りがとうございます。森若幸次郎ことジョンがお届けいたしました。

以上

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「パートナーシップ」をベースにして強い組織をつくる

現在、人材確保は重要な経営課題の1つです。「人手不足」が叫ばれている一方で、転職する若者が増えているなど人材の流動化が進んでいます。また、必ずしも自社で人材を雇用しなくても、外部の企業や人へ委託できる環境も整ってきました。

企業が繁栄するためには、こうした状況を踏まえて、チームの活性化を図ることが不可欠です。

1 強いチームをつくるために欠かせないパートナーシップ

成長する企業は、従業員やスタッフなどのメンバーが高いパフォーマンスを発揮しています。特に業歴の浅い中小企業では、経営者の人材のマネジメントが業績を左右しますが、人材のマネジメントで失敗している経営者も少なくありません。

中小企業の経営者が犯しやすい過ちは、「人材は自分の手足として動く人」と認識してしまうことです。大企業のように中間管理職が大勢いる組織であればともかく、小さな企業は、従業員が「社長のために働かされている」という思いを抱いた瞬間から働かなくなるでしょう。優秀な人材ほど、職位の上下による指揮命令で動くのではなく、自分の役割を果たすために努力しようとするからです。

経営者としての強いリーダーシップは必要ですが、「パートナーシップ」の考えをベースにしたマネジメントが必要です。つまり、従業員を重要なパートナーとして認識することです。

もっとも、チームはしばしば崩壊の危機に直面します。例えば、経営者と役員の意見が合わずに大ゲンカすることはしばしばあります。しかし、互いが納得できるやり方を見いだしてミッションを果たそうと努めることで、強いチームになれる可能性が出てきます。

理想は、スポーツの強豪チームのように、メンバーは監督による統率に従うだけではなく、一人ひとりが自分で考えて成果を発揮する“自立型”のチームをつくることです。

2 “人間的魅力”と“ビジョンへ向かう姿勢”が最高の人材を引き寄せる

人手不足で首都圏の飲食店などはスタッフを確保することがとても難しくなっています。しかし、そうした中でも優秀な人材を確保し、うまくマネジメントしている経営者はいます。

東京都内でイタリアンバルを経営するAさんは、3年ほどで4店舗出店して、どの店も行列ができるほど繁盛しています。Aさんは、多くの優秀なスタッフを集めることに成功しています。

Aさんの年齢は40歳で、常に穏やかな表情で会話がゆったりとしていて、相手を包み込む雰囲気です。「懐が深い」という印象を持ちます。店としてのビジョンを掲げて、それがスタッフにも浸透しています。

先日は、店に客として通っていた人が、「ここで働かせてください」と志願したそうです。実は飲食店での勤務経験があり料理ができる人で、Aさんの人柄と店のスタッフが生き生きしているのを見て働きたくなったそうです。

人材を確保し最高のチームをつくりあげるためには、人間的魅力を磨くとともに、ビジョンに向かう姿勢を示すことが重要です。


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3 社外の協力者もチームのメンバー

1)頼りになる社外の協力者を見つけるには

最近は、外部委託を活用する企業が増えています。また、事業のプロジェクトごとに、各分野の専門家(企業)と提携することも一般的になっています。システム開発会社が、案件ごとに外部のSEと契約するのが典型的な例です。

このような社外の協力者も、自社を支えてくれるチームの貴重なメンバーと認識して、うまく付き合うことが重要です。社外の協力者の例を挙げると、次のような人(企業)が考えられます。

  • 共同で研究開発をする先
  • 商品仕入先
  • 製造委託・試作品開発委託先
  • Web制作・コンピューターシステム開発委託先
  • マーケティング(営業)委託先
  • 外注先(協力企業)
  • 人材派遣会社(シェアリングエコノミーを含む)

頼りになる社外の協力者とは出会いをきっかけに、事業が一気に飛躍することもあります。しかし、「電話営業に乗って仕事を依頼したら、うちに合わなかった」など、失敗することが多いのも事実です。

自社にマッチする協力者と出会うためには、信頼できる人から紹介してもらう方法がお勧めです。日ごろから、人脈の中で信頼できる人へ「○○の仕事をお願いできる人を探している」と、求める人物(企業)像を具体的に伝えておくと、良い出会いのチャンスが広がります。

2)クラウドソーシングの活用

クラウドソーシングなど、フリーランスや主婦などに、定額でリモートワークを依頼できるサービスが複数登場しています。

いずれも一般的な外部委託と比較して、低料金で依頼できるのが特徴です。試験的に依頼して、継続するかどうか検討することもできるので、失敗しても痛手は少なくて済みます。

これらのサービスを活用すれば、Webサイトから比較的簡単に仕事の発注ができる、人材を雇用するよりも低コストで導入できる、といったメリットがあります。発注できる仕事の内容も多岐にわたっています。社内で不足している人材やノウハウを、スピーディーに低コストで補うことが可能です。

3)社外の協力者とのチーム力を高めるために

社外の協力者を交えたチームが良い成果を上げるためには、「目標の明確化」「言葉の共通化」「進捗管理」を意識することが重要です。この3つのポイントを押さえて事業やプロジェクトを進めることによって、高い成果を発揮することができます。

1.目標の明確化

成果を上げるには、事業やプロジェクトにおいて最終的に何を達成するのかという、目標を明確にすることが不可欠です。目標は、達成したい数値(金額)などを具体的に決めて、チームメンバーに周知することが重要です。

2.言葉の共通化

社外の協力者と仕事のやり取りを行う際に、互いに使用する言葉(用語)を定義しておきましょう。例えば、機械を販売する企業が「ユーザー」という言葉を使う場合、製品を購入するエンドユーザーを指すのか、機械を操作する現場の作業員を指すのかを定義しておかないと、誤解するリスクがあります。

また専門用語は、社外の協力者が意味を理解できるように、しっかりと解説してから使用することを徹底しましょう。

3.進捗管理

特に社外の協力者が複数いる場合、進捗管理を徹底しないと、迷走して目標に到達できない可能性があります。「いつまでに誰が何をやるのか」を定めたスケジュール表を作成し、チームメンバーと共有する必要があります。

事業やプロジェクトの責任者は、仕事を頼んだままにするのではなく、計画通りに進んでいるかチェックし、遅れている場合は遠慮なくスピードアップを促すことが重要です。

以上

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第2回 株式会社スマートドライブ 代表取締役(CEO) 北川烈氏/森若幸次郎(John Kojiro Moriwaka)氏によるイノベーションフィロソフィー

かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく、失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し、「イノベーション哲学」を体系化し、皆さまのお役に立ちたいと思います。

第2回に登場していただきましたのは、「NEXTユニコーン調査」で31位にランクイン(2018年10月時点)しているMaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス)の寵児(ちょうじ)「株式会社スマートドライブ」の代表取締役(CEO)、北川烈氏(以下インタビューでは「北川」)です。

1 「アメリカや中国のユニコーンは“目線感”が1桁も2桁も違う」(北川)

John

この対談は、スタートアップのCEOや大企業の方の「イノベーション哲学」をまとめ、今まさに活躍している人はもちろん、次の世代の担う方にお役立ていただけるのではと思って始めた企画です。北川さんがお2人目となります。

お忙しいところ対談をご快諾いただき、愛りがとう(愛+ありがとう)ございます。今日は初対面ですが、楽しくお話ししましょう!

北川

ははは(笑)。ぜひ、よろしくお願いします!

John

さっそくですが、「すごい!」と思ったことは、御社が「NEXTユニコーン調査」で31位にランクインしていることです。まずは、そこからお聞かせください。

北川

分かりました!

John

CB Insightsの調べだと、未上場ながら、企業価値が10億ドル(1ドル=110円換算で1100億円)以上のユニコーンが世界中に356社あって、アメリカでは178社で、中国では92社となっています(2019年1月時点)。

北川さんのスマートドライブもネクストユニコーンと呼ばれていますが、アメリカや中国にユニコーンが集中している現状についてどのようにお考えですか?

北川

実際に我々も去年深センに出張所を開設したので、現地のユニコーン企業と話す機会もあります。そこで強く感じるのは、アメリカや中国のユニコーンは“目線感”が1桁も2桁も違うということです。上場を急がずに、未上場のうちから数百億円の売り上げを達成し、ユーザー数も数億人を獲得するというレベルでチャレンジしています。

John

確かにすごいですね。そのあたりも深センを選んだ理由なのですか?

北川

深センを選んだ理由は2つあります。1つは、我々の事業が、中国もそうですが、東南アジアと相性が良いことです。我々は車からさまざまなデータを集めていますが、それを活用すると渋滞の解消などに生かすことができます。東南アジアにはまだ渋滞が激しい地域が多いので、相性が良いのです。

John

なるほど。確かに東南アジアは相性が良さそうですね。渋滞の解消もできたら最高です。

北川

はい。もう1つの理由は、先ほど申し上げた“目線感”が違う環境に我々も身を置きたいということです。現地(深セン)のスタートアップは「中国でNo.1になれば、世界でもNo.1!」といった発想でビジネスをしています。創業5年など、我々と同じまだまだ若いスタートアップでも、従業員が数千人、資金調達も数百億円以上などを実現しており、実際にユニコーンになっている企業が何社もあります。そうした中で刺激を受ければ、我々の“目線感”も高いところで維持されますよね。

John

素晴らしいですね。先端の環境に身を置くことは、とても大事です。北川さんにとって深センが大きな意味を持つことはよく分かりました。そうした深センに行くきっかけをつくってくださったアドバイザーはいらっしゃったのですか?

北川

もともと「深センって面白いな」と思ってはいました。そのうち、当社の株主であるFoxconn(フォックスコン)がオフィスを深センに移したり、別の株主である産業革新機構(現INCJ)と、日中経済連盟のイベントに参加するため深センへ行ったりと、いろいろとご縁がつながって、深センに決めました。去年(2018年)のことです。

John

最近のことなのですね。現地には何回ほど行って決めたのですか?

北川

それが1回行って、その場で決めました(笑)。今は、オフィスを間借りさせてもらっているので、自社オフィスではないのですが。

John

北川さん、即断即決とは素晴らしい行動力と決断力ですね。ところで、中国での会社登記は、かなり大変だと聞きますね?

北川

はい、大変です。深センに限ったことではないのですが、中国の外資規制では、外資が50%以上を持てないことになっています。それから、お金を引き出すのが結構大変だったりもします(笑)。

John

となると、中国の方との共同出資になりますか?

北川

はい、その通りです。ただ、中国には資本以外にもデータを海外のサーバーに持ち出せないなどの規制もあって、最近は東南アジアの別の地域に出ることも検討しています。

John

それは素晴らしいですね。私は4月にマレーシアに行きましたが、ライドシェアにとても活気がありますね。スマートドライブがGrab(グラブ)やUber(ウーバー)など、ライドシェアのサービスとアライアンスを組む可能性については、どうお考えですか?

北川

我々の事業は、基本的に車から集まったデータを解析してさまざまなインサイトを出すので、車がどこにあるのかを管理したり、事故リスクに応じて毎月保険料が変わる保険を設計したり、車の価値の毀損に応じて毎月リース料を変えたりなど、データに基づいたサービスが提供できます。

John

なるほど。

北川

そのため、ライドシェアのようなサービスを全てスマートドライブの名前でやるというよりも、ライドシェアだけではなく「移動」に関するサービスの裏方に回って、解析したデータを提供するというポジションもあると思っています。

2 「まだやっていないことを急に別の地域でやるよりも、我々の強みを生かせるビジネスを展開したい」(北川)

John

今、ライドシェアは世界的にも新規参入が多いですよね。どの会社と一緒にやるのがよいなど、お考えはあるのですか?

北川

やはり東南アジアに可能性を感じます。Uberなど欧米のサービスは基本的に、元タクシードライバーがライドシェアのドライバーになるケースが多いのですが、東南アジアでは何の仕事もしていなかった人が、「Grabのタクシードライバーになると稼げるぞ!」ということで、借金をして車を買ってドライバーになるケースもあります。実際、ドライバー数はどんどん増えています。そうした地域のほうが、車の状態や運転の評価などに関するデータを使ったビジネスが展開しやすいのではないかと思います。

John

なるほど。また、ユニコーンになるには100億円、200億円の調達をしないと1000億円の価値に成長するのは難しいと思いますが、この点はどうお考えでしょうか。

北川

そうですね。我々は今30億円弱ですね。

John

これは、日本だったら「わー、すごい!」「ネクストユニコーン」ということになりますが、グローバルにスケールしていくには、お金の面でいえば、一気に100億円を入れてくれる人が必要じゃないですか。

北川

そう思います。もちろん調達額が全てではありませんが、深センのベンチャーがあれだけ一気に成長できるのは、ある意味、利益度外視で投資できるキャピタルがある点は大きいと思います。深センのベンチャーだと、それこそ数百億円集めてやっているので、そういう出し手がいるというのは、やはり日本とは違うのかなと思います。

John

今後、そういう規模を狙っていくのでしょうか?

北川

調達するお金だけではないですが、深センに拠点を設けているのには、事業拡大に向けてさまざまなオプションを検討したいという意味合いもあります。香港などは、やはりファイナンスとしてもとても機能しているエリアですしね。

John

今後の目標は、どうお考えですか?

北川

ケース・バイ・ケースです。早めに上場すればお金が集まりやすいのはありますが、上場時期を含めていろいろな選択肢についても常に考えています。大事なのは事業を本質的に伸ばすための意思決定をしていくことかと思います。

John

社員や日本の株主はどのように思っているのでしょうか。さまざまなところが株主になっていますよね。

北川

はい。我々はかなり恵まれていると思います。(株主は)早く小さく上場するよりも、事業価値を最大化することを応援してくれているので、そうした意味では、「上場圧力」が強いわけでは全くないですが、事業を拡大させていく上でIPOなり、そういうものはいつかのタイミングで必要になると思っています。

John

なるほど。今、グローバルに見ると、スマートドライブのコンペティターは4~5社くらい存在するように思いますが、いかがですか?

北川

グローバルでいうと、一部はかぶるものの、“ド競合”はあんまり存在しないという認識です。

もともと、僕が創業したときですら車に制御ポートにデバイスを付けて、「健康診断します」といったアプリを開発している会社が海外で10社以上ありました。でも、それは、BtoBで展開したほうが普及するのではないかと思ったのが発端です。今の我々のように、プラットフォームを展開していて、日本や東南アジアに強みを持っている会社はほとんどないと思います。思い当たるのは1~2社くらいでしょうか。

John

東南アジアでのサービスは、まだ展開されていないですよね?

北川

今年(2019年)から始める予定です。

John

おぉ~、それは素晴らしいことですね! そういったときのローカリゼーション(局地化。その地域やエリアに最適なビジネスを展開)は、どのように進めていくのですか?

北川

まずは現地のスタッフを雇うことですね。東南アジアは日本の企業のプレゼンスが非常に高いので、現地の日本企業が日本語でサービスを使いたいというニーズが結構あります。

John

あぁ~、いいですね。

北川

それから、我々はリスク分析をしてダイナミックに保険料を変えるような場合も、自分たちが保険を設計するのではなく、「アルゴリズムを保険会社に提供する」という裏方のポジションです。だから、現地語に翻訳する必要がないという部分もあるのです。

John

例えば、Grabとの連携で考えられていますか? Grabはソフトバンクの資本も入っているので、いろいろと話がしやすそうですよね。日本人のメリットですね(笑)。それから、Lyft(リフト)は、楽天が筆頭株主ですよね。

ただ一方で、Uberも既に150カ国以上に進出していますよね。可能性がある会社はたくさんありますが、やはりUberの規模は“半端じゃない”ですね。

そうした意味では、どことアライアンスを組むかは重要な判断ですね。

北川

そうですね。さまざまな可能性がありますが、やはり我々に地の利があるのは東南アジアだと思います。

John

東南アジアの拠点はどちらですか? やはり深センですか?

北川

深センももちろんそうですが、他にも候補があります。例えば、タイなど車が多い地域は好ましいですね。逆に、インドネシアやベトナムはバイクも多いので、検討するのはもう少し先のフェーズになるかもしれません。

John

スマートドライブのサービスを、バイクで使うことはできないのですか?

北川

いえ、できるのですが、少し使い方が違ってくると思います。まだやっていないことを急に別の地域でやるよりも、我々の強みを生かせるビジネスを展開したいですね。

3 「ユーザーの生の声をどのように拾っていくかが大事」(John)

John

データを使って渋滞が解消されたら素晴らしいですね。北川さんもシリコンバレーに行かれたことがあると思いますが、毎日、渋滞があります。あの渋滞は、どうすれば解決できると思いますか?

北川

シリコンバレーは少し毛色が違いますが、例えば日本の場合だと、皆が同じところに行くので、移動が集中して渋滞の原因になってしまいますよね。

John

なるほど。分散させればよいということですね。

北川

そうです。例えば、我々の得意とするデータ分析技術は、混雑などのピーク分析と相性が良いですので、「このまま進むと渋滞するから、ちょっと遠回りだけど、こっちの道から行ったほうが早く着きますよ」と伝えて分散すれば、ある程度、渋滞は回避できると思います。

John

日本では都心に住んでいると渋滞をイメージしやすいですが、一方で鉄道のインフラが機能しているので、世界的に見ればそこまでひどい渋滞ではないですよね。それに比べて、ベトナムやマレーシアの渋滞はかなりですよね。あれも解決できるのでしょうか?

北川

できると思います。

John

それができたらすごいですね! そういうサービスも展開されていくのでしょうか?

北川

日本では渋滞の予測をしている組織があって、そうしたところに我々のデータを提供したりしています。こうした取り組みはどんどん進めたいですね。

John

他にも何か応用できそうな気もしますが。

北川

はい、実際にそれに近い話があります。当社の株主で日本GLPという物流施設を持っている会社があります。日本、ブラジル、中国、インドではシェアNo.1です。

物流施設では、バースと呼ばれる荷物を積み卸しするスペースが混みます。なぜかというと、今は荷物を積むのも卸すのも早い者勝ちというルールなので例えば朝一などにトラックが一斉に倉庫に来てしまうからです。それをまずは現状の混雑状況を可視化しつつ、各々の倉庫の状況に合わせた形でバースの予約という方向に導いていくサービスをリリースされているのですが、そこに当社の技術を組み合わせて、物流施設に着くとチェックインを自動で行なったり、将来的には混雑を予測して、「今行くと混むから、ちょっと待ったほうがよい」といったように通知できるようにしていこうと思っています。

John

おぉ~、すごいですね。リリースされたサービス名は、何というのですか?

北川

「トラック簿(ぼ)」といいます!

John

分かりやすいネーミングでよいですね!その「トラック簿」に、スマートドライブの技術が生かされているということですね。素晴らしい。

北川

ありがとうございます!!

John

あとは、大きな規模の会社と協業する場合には、ユーザーの生の声をどのように拾っていくかが大事ですね。

北川

それは、大きなテーマですね。「トラック簿」もそうですが、我々は裏方に回ることが多いので、フロントは物流施設や保険会社、リース会社になります。そうしたフロントの会社に、ある意味、第三者的に声を吸い上げていただき、それを参考にして、さらに開発する感じですね。

4 「意思決定は、どちらを正解にしたいかという想いが大切」(北川)

John

「トラック簿」は、先方が提案してくれたのですか?

北川

いえ。「トラック簿」は、一緒にアイデアを出しました。

John

すごいですね。新しい会社との協業というのは、当然ながら経験がないわけじゃないですか。どこと組むかというのは大きな決断だと思いますが、そうした決断力はどこで養われたのですか? やはり、親御さんの影響が大きいのでしょうか?

北川

そうかもしれません。

John

北川さんのお父さまは、グラフィックデザイナーでしたよね。ご商売されている家系で育ち、見えないものに対してどんどん決断をしていくようになったということなのでしょうか。

北川

まぁ、「自由な家庭」だったことは確かですね(笑)。

John

私も親が商売をやっているので分かります。見えないことも決断して、だんだん形になっていくものですからね。

今の北川さんを形成した、生い立ちや幼い頃のエピソードなどはありますか? 例えば、「自由な家庭」の「自由」というのは具体的にどういうことなのか、気になります!

北川

まず、何かを「ダメ」と言われたことがありませんし、「こういうことをやりなさい」と言われたこともありません。自分で決める癖があったので、あまり人に相談したことがありません。大学院に行ったときも、留学したときも、会社をつくったときも全部そうですね。基本的に全部自分で決断してきたのですが、そうした決断力が身に付いたのは親のおかげなのかもしれません。

John

大切なことを自分で決めてきたのですね。すごいな~。今は、会社の方々や、株主さんに相談されているのですか?

北川

もちろん関わる人には相談します。ただ、「どうしたらいいと思う?」といった相談はしないですね。「こういうことをやろうと思いますが、どうですか?」といった感じです。あくまでも、自分で決めていると思います。

John

メンターやアドバイザーはいらっしゃるのですか?

北川

決まったメンターはいませんが、その都度詳しい人に聞いています。

John

シリコンバレーの Y Combinator (Yコンビネーター。シリコンバレーに本拠地を置く世界No.1の実績を誇るアクセラレーター)に出資しているエンジェル投資家のロン・コンウェイ氏が「投資をするときに一番大切なのはチーム! チーム! チーム!」とおっしゃられており、そのチームの中でもメンターの存在がとても大事だと言っています。シリコンバレーのスタートアップのピッチデック(プレゼン資料)を見ると、CEO、CTO、CFO、CMO、COOの5人が記されており、そこにメンター陣がいて、各分野のアドバイザーとなっていますね。

もしかしたら、これからそうした人とのつながりが大切になっていくかもしれないですね。さらにグローバルにスケールするとき、中国のアドバイザーでありつつ、さらに技術的な面でアドバイスができるとか。

北川

そうですね。そういう意味では業界や分野に特化したスキルを持っている方に、アドバイスを求めるということは結構あります。

John

今までさまざまなことをご自身で決断される中で、どちらに行くか、つまりAかBか、はたまたCかDかEか。これを決める、いわば決断のポイントはあるのでしょうか?

北川

感覚なのですが、意思決定にはあまり差がないと思っています。皆さんもそうではないかと思うのですが、迷うのはだいたい48対52のような選択肢じゃないですか。「48だと思っているけど、もしかしたら55くらいになるかもしれないな」というような話なので、どちらが正解なのかは、正直に言えば、あまりないと思っています。

それよりも、自分がどちらを正解にしたいのかという意思が大切だと思います。「今は40だけど、これから70にしたい」と思えるかどうかという感覚で決めていますね。

John

そうした意思決定に後悔はないということですね。

北川

そうですね、「こうしておけばよかった」というのはないですね。

北川氏の画像です

5 「僕は『移動』がサービス業になると思っています」(北川)

John

次は起業のきっかけについてお伺いします。ボストンへ留学に行かれてましたよね。そこで起業のきっかけがあったのですか?

北川

学部のときに海外を見てみたいなと思って、ボストンに1年間だけ交換留学に行きました。ただ、そうした制度はなかったので、行きたかった大学の教授に頼み込んで、1年間、籍を置かせてもらいました(笑)。

John

何を学ばれたのですか?

北川

コンピューターサイエンスです。その後、東大の大学院に行っても感じたのですが、研究というものは、社会に実装されるまでが長いのです。もちろんそれはそれで素晴らしいのですが、僕は研究のように完全にゼロから何かを生むよりも、「あるものをより広げる」とか、「何かエッセンスを加えて新しいものをつくる」とか、そういうほうが向いているなと感じました。だから、研究者ではなく、事業をやることにしたのです。

John

勉強以外に海外で学んだことはありますか? 印象に残っていることなどがあれば教えてください。

北川

強く印象に残っているのは、とても頭が良い同級生に関することです。彼は「こういう研究をしたい」と言って、いつも、ホールの入り口の椅子に金曜日の夜からずーっといました。そして、寝ないで、金曜日の夜から月曜日の朝までやりたいことに没頭するのです。それで月曜日の授業は全部休むのですが(笑)。

そういうことを別に誰もとがめないし、だからといって単位をもらえないということもなくて。素養がある人をひたすら伸ばそうとするようなところはありましたね。

John

素晴らしいですね。天才を、ちゃんと天才として扱う。アーティストみたいな感じですね。そこは日本とは全然違うかもしれませんね。

北川

そうです、そうです。その人が何を生むかは分からないのですが。

とにかく、「1つのことにガーッと取り組んで、他は何もしない」という人にはかなわないと思う経験でしたね。

John

なるほど。北川さんが研究者ではなくて、ビジネスパーソンになろうと思ったのも、そうした経験が影響しているのでしょうか?

北川

研究というものは要素がとても限られているというか、やはり「本当に世の中にないものをつくり出していく」という孤独に対する覚悟や、才能は、僕にはあまりないなと感じました。しかし、ビジネスは “総合格闘技”のような面があるので、一つ一つのスキルがそれほど高くない僕でも、何かを言い続けていたらできるかもしれないと思いました(笑)。見えないものをうまく形にしていくような総合力の勝負だったら、僕が出せる価値もあるかなと思って。

John

何年くらい先まで未来を見ていますか?

北川

うーん。面白いのが、(起業したての)当時は5年、10年先を思い描いていました。実際、事業を進めていくと、「なんか面白いやつがいるぞ」ということで、次々と情報が入ってきましたし、いろいろな機会もいただきました。そうすると、より先のことが思い描けるというか、解像度が上がっていく感じなのです。そういう意味で考えると、「何年先」という明確な期間はないですが、実際にビジネスを進めていくことでより先が見通せますし、より解像度が上がっていく感覚はありますね。

John

私自身、CBインサイトやマッキンゼーなど、未来を予測する情報がありますけど、そうした情報を見るのが好きで、パリやイスラエルの交通はどうなるのかと想像して楽しんでいます。去年イスラエルに、ある有名な投資家の先輩と行ったときに、ジェフリーズというニューヨークの証券会社がやっているイベントに参加しました。そのとき、GMはいるしUberもいるし、有名な会社のエグゼクティブクラスがイスラエルまで来て、同じパネルで未来のモビリティについて語っていました。モビリティの仕事をしている人が同じパネルで語ることって素晴らしいじゃないですか。日本もこういうふうに大企業、スタートアップ問わずに同業者、ライバルなどと語り合ったらよいなと感じました。

でも、当たり前ですが、結局、どんなにすごい方々でも、2030年とか2050年といった未来は分からないのですよね。

北川

そこも海外留学で1つ学んだことがあります。僕が留学していたのは技術系に強い学校なのですが、未来を予測しすぎるなという校風がありました。未来のことは自分で考えて創っていくという発想です。別の切り口でいうと、皆がこうなるだろうという未来が実現されると思っています。未来ありきというか、「皆がそう思ったら、実際に未来はそうなる」という世界があると思っています。

John

それは、すごく深い考えで素晴らしいですね。

北川

例えば、ロボットと聞いてイメージするのは「ドラえもん」だったりしませんか? それは、皆が小さい頃から目にしていて、ロボットといえばドラえもん、という世界が来ると思っているからですよね。これって少なからず実現すると思っています。ドラえもんは1つの例ですが、僕は「こういう世界ができたらいいのではないか」というものを、ちょっとずつ啓蒙していけるといいなと思っています。

John

そういう意味でいうと、車、バイク、公共の乗り物、PMV(パーソナルモビリティ・ビークル)の可能性ってどうなのでしょうか。私の故郷は下関なのですが、地方は1人に1台の軽自動車がありますね。4人家族なら一家に4台も車がありますが、移動手段として必要なのです。ただ、軽自動車じゃなくてもいいかもしれないとも思います。もっと小さくていいし、その人その人に合ったオーダーメードの車があったらいいですよね。

北川

はい。そう思います。

John

東京であれば、タクシーがたくさん走っているからUberはいらないかもしれないですよね。ただ、決済の面とか、ルートの面とかこれから変わるところはあるかもしれません。電車もそうですよね。インフラとしてはいいのですが、たくさん路線があって大変です。こうしたものがもっと便利になればいいと思う一方で、大切な人的サービスもある。この前、知り合いが電車の中で体調が悪くなったのですが、車掌さんが本当に丁寧に対応してくれました。逆に、こういう人的サービスはUberにはないかもしれないですね。緊急事態の対応を学んでいるプロというのは、やはり安心です。

北川

僕は「移動」がサービス業になると思っています。例えば、自動運転の技術が本当に確立されたら、移動という体験自体にそれほど差は出ないと思います。渋滞もどんどんなくなっていくでしょう。

そうしたときに、なぜトヨタの車を買うかといえば、車内がとても快適だったり、サービスが充実していたりということで選ばれると思います。ホテル選びに近づく感じですよね。移動は、空間とか体験を売るサービスになるということです。

6 「AIの会社が車をつくる時代になっている」(John)

John

そもそもなぜ「移動」に、一番、人生を懸けようと思ったのですか?

北川

「大きいテーマをやりたい」という思いが根底にあります。それから、僕自身、移動に対する苦痛があります。朝の通勤・通学ラッシュ、車の渋滞とかが苦手です。乗り物に酔ったりするので、あまり車に乗りたくないというのがあります。人類は移動に結構な時間を取られていますが、そこの苦痛は取り除かれていないなと思いました。

それが、今後、何十年先かもしれないですが、コネクテッド化や自動運転で移動が大幅に良くなりそうですね。そこにスマートドライブが存在することで、そうした変化のスピードが上がり、より素晴らしいサービスが実現されたら面白いなと思っています。

John

それは素晴らしいですね! 渋滞の解消やサービスももちろんですが、もう1つ大事なのが高齢者の事故の問題です。自動運転が進めば、高齢者の方が運転しなくてもよくなりますね。

北川

自動運転の技術が進めば、そうなりますね。ただ、それはかなり先でしょうね。それと、完全に自動運転される車に突然シフトするわけではなく、今のように人が運転する車と混在する期間がありますよね。

John

完全に自動運転できる車、そこまで進化したら最高ですね。

北川

そうなると、移動が移動ではなくなるというか、この空間というか、部屋がそのまま移動する感覚です。移動がサービス業になって、やはり体験や、ブランドが大事になりますよね。

John

最高に楽しいですね! 去年、パリのVIVA Technologyで見ましたが、AIの会社が140億円くらい調達して車をつくっていました。それに試乗させてもらったのです。中は会議室みたいになっていました。中央にテーブルがあって、4人で乗って、おしゃべりもできる。こんな素晴らしいものをつくった人がいるのだなと思いました。しかも、AIの会社が車をつくる時代になっているということを感じました。

北川さんは、今、世界で注目している会社などはありますか?

北川

自動車をつくるところは、やはり自動運転のアルゴリズムをつくる会社がたくさん出てきているので、どこが勝つかなと思っています。ただ、アルゴリズムが競合優位性の領域では、結局、大きいところがより勝ちやすい世界かなと思っています。例えば、画像認識などのAIやディープラーニングの技術なら、どれくらいのデータを集められるか、優秀なエンジニアを採用できるかが肝なので、GAFA以外が勝つのは本当に難しいですよね。そうやって考えると、僕は例えばライドシェアでいえば本命はUberだと思っています。

John

なるほど~。ところで、「移動」に人生を懸けている中で、資金調達での苦労話などはありますか?

北川

我々の事業はデバイスもハードウエアもつくっていきますので、初期に資金が必要で、売り上げが立つのが結構先だったりします。よくある“死の谷”が深いのです。売り上げも立っていないのに、より大きな資金が必要になり、その資金を正当化するには、ある程度のものをつくらなければならなくて。そのギリギリのところで、個人でお金を借りて、数千万円をつなぎ(資金)で入れたこともありますし、初期の段階は特に苦労しました。そうした状況でしたので、創業から2年くらいは給料がほぼゼロでした。

John

(個人で入れた)数千万円はどのように工面されたのですか?

北川

知人から借りたりしました。増資など守秘義務に関わるところは社外の人には言えませんので、「もう、とにかく理由は言えないけど貸してくれ!」という感じで(笑)。

John

それは返せたのですか?

北川

はい。その後、資金調達がうまくいきましたので、しっかり返すことができました。

John

やはり、皆さん、そういうご苦労がありますよね。それで、これならいけるなと、死の谷から抜け出し始めたと感じたのはいつごろですか?

北川

ちゃんとしたパートナーや、実際に我々の製品を使ってくれるクライアントが付き始めたときですね。絵に描いた餅ではなく、実ビジネスとして認めていただいて、優秀な人も入ってきてくれて、資金も集まってきた。ただ、そうなったのは、本当に少し前のことです。もちろん、創業メンバーや、社員にも支えられました。

John

本当にチームの存在は、とても大切ですよね。北川さんのリーダーシップがあって、たくさんの素晴らしい方々がジョインされて、今後ますます楽しみですね。

北川氏と森若氏2人の画像です

7 「『愛』があれば自然にイノベーションが起こる」(John)

北川

僕もJohnさんにぜひ、お聞きしたかったことがあります。Johnさんの、グローバルイノベーション創出という発想は、どこから生まれたのですか?

John

やはり、日本を爆発的に良くしたいことですね。豊かさを取り戻すためには、「愛」しかないと思います。今は、日本でもスタートアップや起業が盛んになってきていますが、本当は、「愛」があれば自然に起業家が生まれ、世界をより良くするイノベーションも起こると思います。加えて、正しいリーダーシップや決断が必要ですが、そういうものが失われている気がします。となると、やはり日本に必要なのは愛のあるイノベーションと思うのです。

北川

なるほど。「愛」あるイノベーションですね。

John

イノベーションを誰が起こすかといえば、すぐに思い浮かぶのは若者ですが、それだけでは大きなイノベーションを生み出せないということに気付いて、大企業のオープンイノベーションやアクセラレーター、インキュベーターなどエコシステムを整えようとしています。

日本国内だけで見れば整っているように思えますが、グローバルなアクセラレーターやアントレプレナーシップの教育をできる人がいなければ、若者や子供がグローバルに育つことはない。となると、(海外に)出ないといけないですよね。出なければいけないというのは、義務ではなくて、2~3カ国に住むのが当たり前という感覚です。

私自身も経験しました。19歳からオーストラリアに単身留学で7年半いましたが、やはり、イノベーションを起こすのはアメリカが中心なのだな、と気付きました。1から100にするのがハーバード、ゼロイチはシリコンバレーであることも分かりました。ハーバードのエグゼクティブコースやスタンフォードやバークレーのVCコースに行ったり、アクセラレーターに直談判して入れてもらったりしました。

北川

Johnさん、すごい行動力ですね! シリコンバレーだけではなく、他の地域も見ているのですか?

John

やはりグローバルにスケールする大切さが分かったのですが、シリコンバレーだけ学んではいけないと思って、イスラエル、フランス、フィンランド、エストニア、中国、ルクセンブルクなどに行き始めました。ルクセンブルクは1人当たりのGDPが世界1位なので、最終的な国策や経済的な戦略について学び、将来的には政府のアドバイザーといった存在になりたいと思っています。また、そういった目線で日本を復活させることが私の原動力です。

世界中の人がほどほどに生きることができる社会というのは、自分自身が起業家になって、コーファウンダーやコーメンバーがいて、一緒にコアとして働く社会ができたらすてきなのではないかと思っています。

北川

なるほど。とても素晴らしいですね。

John

りそコラ(りそなCollaborareの通称)のようなメディアを通してスタートアップの人たちと話す中で、実ビジネスのトップ層にもどんどん近づいていくことができると思います。それで、そうした人が集まってパネルができたらすごいことだし、グローバルに日本人のプレゼンスを上げていくことにもつながると信じています。“グローバルジャパニーズ”を増やしたいですね!

北川

ぜひ、やりたいですね!

John

私たちは、日本人であることも大事にしたい。華僑というのは世の中にたくさんいるので、私たちも“和僑”を世界に広めたいですね。アメリカでの日本人プレゼンスを上げて、日本人が絡むスタートアップをシリコンバレーから世界中に展開できるような、そういう体制を早くつくりたいです。

何か楽しいことや、大きな偉業を成し遂げたい。100年後、1000年後に、「ああ、クレージーJohnっていう面白いやつがいたな」というふうになれたら最高ですね!

北川

Johnさん、素晴らしいですね!

John

1人だけが目立つ時代ではなく、同じ会社だけでなくてもいいので、皆で変えていけるような良いコミュニティーをつくりたいですね。見えないけれど勝手につながっている、それが本当のエコシステムだと思いますし、外国人もたくさん入ってきてもよいでしょう。そうした社会にしたいと思っております。

森若氏の近影です

8 「99%を愚直にやりきった残りの1%にイノベーションがある」(北川)

John

対談も終わりに近づいてきました。最後に、ぜひ、北川さんの「イノベーションの哲学」についてお聞かせください。そもそもイノベーションとは何か、なぜそれを起こさないといけないのか。いわば、ご自身の中にあるパッションですよね。

北川

そうですね。他の方もおっしゃっていることですが、僕にとってイノベーションとは、何か新しいものが天から降ってきたというよりも、99%は既にあるもの、他と変わらないものです。それで、「99%を、普通の人よりも愚直に、精度をものすごく高めてやりきる」。これができて初めて、残りの1%に、自分と違う領域の人たちから学んだことが生かされると思います。

例えば、グラフィックデザイナーである父は我々のビジネスとは全く関係ないですが、学ぶことはとても多かったです。他にも、服をつくっている知人、音楽をやっている知人などから学ぶこともありました。

そうした本質的なところを別の角度から見るときに、自分の専門領域に新鮮な形で還元されるという体験があります。全然違ったエッセンスがたまたま融合して、とんでもない成果になったり、我々にしか創造できない価値になったり。それが事業のコアになったこともあります。

John

素晴らしいですね。99%を愚直にやりきった先にイノベーションが見えるということですね。マラソンレースというか長距離の障害物競走みたいですね。そして、この対談記事を、北川さんのお父さまがご覧になったら、きっとお喜びになりますね!

北川

ありがとうございます。父も喜ぶと思います(笑)。

John

いや~、イノベーションフィロソフィー対談の2回目も、素晴らしいお話をお聞きすることができました! 北川さん、愛りがとうございます!

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年6月18日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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収益の安定化に欠かせない「顧客のリピーター化」

事業が繁栄している企業には、共通した特徴があります。それは、次の「ビジネスの繁栄」の公式を実践していることです。

ビジネスの繁栄=ビジネスモデル×競争戦略×マーケティング

ビジネスモデル、競争戦略、マーケティングの3つの要素がバランスよく機能することで、ビジネスは繁栄します。そのため、仮に優れたビジネスモデルと競争戦略があっても、マーケティングを実践しなければ、十分な顧客を確保することが難しくなります。実際、停滞している中小企業は、マーケティングに課題があることが多いといえます。

創業当初はマーケティングについて考えていたはずなのに、いつの間にか優先順位が低くなっていた、ということはないでしょうか。このタイミングで改めてマーケティングについて考え、実践してください。

1 自社に効果的なマーケティングを実践する

ここでは「マーケティング」を、「売る方法を考えて実践すること」とシンプルに捉えています。マーケティングに関する古典的なフレームワークに「マーケティングの4P」があります。

Product(製品)、Price(価格)、Promotion(プロモーション)、Place(流通)という4つの要素の頭文字をとったもので、次のような考え方をします。

マーケティングの4Pの説明を示した画像です

経営者は、日々「どうすれば売れるだろうか?」と考えていますが、効果的なマーケティングを行うためには、4Pを意識して組み立てることが重要です。以降では、マーケティングの4Pのうち、Promotionについて、主な種類や効果的な活用法を解説します。

2 4P:Promotion(プロモーション)の種類と効果的な活用のポイント

「うちは広告を打たなくても、口コミでお客様が来てくれる」という経営者は少なくありませんが、口コミだけの集客には限界があります。より多くの人に自社の商品・サービスに注目してもらうためにはPromotionが必要です。

中小企業が主に取り組むPromotionとしては、次のものが挙げられます。

Promotionの具体例を示した画像です

さまざまな種類があるので迷ってしまいますが、次の3つのポイントを意識することで効果を高めることが期待できます。

1)継続することで忘れた頃に効果が表れる

Promotionは、一度ですぐに効果が表れることは少なく、数カ月~数年と、継続して実施することでようやく反応が出てくることが珍しくありません。また、実施するタイミングによっても効果が違います。

少しだけ着手して「効果がないからもうやらない」と諦めるのではなく、効果を慎重に見極めながらトライ&エラーを繰り返し、一定期間継続してみることが大切です。忘れた頃に効果が表れ、そこから波に乗るケースもよくあります。

2)売上(収益)の一定割合の予算をかける

Promotionは、無料のものから高額のものまでありますが、高ければよいというわけではありません。いきなり高額な広告を打つよりも、低額な方法をうまく活用することで、継続して効果を測定します。

お勧めの方法は、「売上の5%を広告費として使う」など、売上や収益に対して一定割合を予算とすることです。「もうかったからもうやらなくていい」ではなく、「もうかったらその分、さらに広告費をかける」という姿勢が、事業の成長につながっていきます。

3)経路・集客コストを検証してチューニングする

Promotionの効果を測定するには、顧客が自社の商品・サービスを購入した“経路”をヒアリングしてみることが有効です。よく通販にある、「どこで当商品をお知りになりましたか?」というアンケートもこれに該当します。

アンケートをしてみると、「ホームページを見て」「新聞のチラシを見て」など、どの方法が集客に効果があったか分かってきます。効果の高い広告に予算を多く割り振ることができます。

また、かけた予算に対してどれくらいの顧客を獲得できたかを検証することも欠かせません。顧客1人(取引先1社)を確保するのにかかった集客コスト(顧客獲得単価)を計算することで、そのPromotionの採算性が分かるからです。

例えば、リスティング広告に10万円をかけて、5人の顧客が商品を買った場合、顧客獲得単価は2万円です。得られた収益と比較して、妥当と判断できれば「広告費を増額しよう」ということになります。


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3 リピーターを増やす活動サイクル

中小企業の多くは、限られた市場をターゲットにしています。従って、単発の顧客を集める姿勢では限界を迎え、事業の継続が難しくなってきます。

多くのリピーターを確保して、「1人の顧客(1社の取引先)から繰り返し得られる売上(顧客生涯価値)」を増加させることが不可欠です。つまり、ハンター型ではなく、長期に顧客を増やして育てていくファーマー型のビジネスを目指すことが有効です。

ターゲットとする市場からリピーターを確保するためには、図表3のような活動サイクルが求められます。これらの活動を並行して継続的に行うことが、安定した売上をもたらしてくれるリピーターを増やすことにつながります。

リピーターを増やす活動サイクルを示した画像です

それでは、それぞれの活動について効果を発揮するためのポイントを解説します。

1)見込客集客

自社の商品・サービスに興味を抱いて、来店や問い合わせをしてくれる人(会社)を増やすための活動です。見込客は、主にPromotionによって集めます。その際にカギとなるのは、「ポジショニングとブランディング」で解説した「ミッション」「ポジショニング」「ブランディング」の3つの要素を研ぎ澄ますことです。

見込客は、リスト化してアプローチできる状態にします。個人情報を得るのは難しくなりましたが、相手にメリットを感じてもらえるように工夫すれば、十分に集客可能です。なお、個人情報の取得や取り扱いには十分に注意しましょう。

よく行われているのが、チラシに粗品進呈のチケットを付けておき、来店時に連絡先を書いて提出してもらう、Webサイト上で無料の資料(オファー)を提供して名前とメールアドレスを集める、といった方法です。

2)見込客フォロー・購買客(取引先)化

見込客に対してアプローチする際は、「セールス色」が強くならないように注意しましょう。見込客が興味を持ちそうな商品情報を送るなど、信頼関係を築くことが第一です。

3)購買客フォロー

初めて商品・サービスを購入してくれた顧客をフォローします。フォローの方法には次のようなものがあります。自社の商品・サービスに合った方法を採用してください。

  • サンキューレター(お礼状)の送付
  • シーズンレター(誕生日やクリスマスなど)
  • アフターサービス
  • 定期的メンテナンスサービス
  • ニュースレター
  • メールマガジンによる情報提供
  • イベントへの招待
  • 御用聞き営業

4)リピーター化

リピーターは、事業内容や取り扱っている商品・サービスによって想定する内容が異なります。分かりやすい例では、住宅はリピート性が低いものの、飲食店で提供する料理はリピート性が高いといえます。

重要なことは、自社にとってリピーター(固定客)とはどのような人(企業)なのかを定義することです。住宅を販売する工務店であれば「リフォームなどを10年スパンで依頼してくださる世帯」、飲食店では「月に2回以上来てくださる方」などとなります。

4 リピーターを増やすためのヒント

同じような活動をしていても、リピーターが増える企業とそうでない企業が出てきます。実は、その差はちょっとしたことが原因になっているのです。ここでは、リピーターを増やしている企業の活動から、ヒントをお伝えします。

1)“ダサい”チラシや広告が注目を集める?

ごちゃごちゃした手書きのチラシが入っていると、「おや、何だろう」と、つい見てしまったという経験はありませんか?

チラシや広告は、デザイン性に優れたものよりも、“ダサい”ものが目を引くことがあります。多くの人が、デザイン性の高い広告に慣れてしまっているからです。

特に地域に根差す小売店などは、地域ネタや店主の思いなどを書いた手作り感のあるチラシを作るほうが、コストを安くできる上に効果も期待が持てます。

2)定期的な情報提供で親近感を覚えてもらう

お客様は、接触がない企業や店のことはすぐに忘れてしまいます。定期的に接触することが、思い出してもらうためには不可欠です。その方法としては、メールマガジンやニュースレターが有効です。

相手の役に立つ情報を提供することはもちろん、自社のスタッフの顔写真を載せるなどして、親近感を覚えてもらえる内容にするとよいでしょう。私の経験上、商品・サービスの宣伝は2割以下に抑えるくらいがちょうどよいと思います。

3)モノではなくお客様が求める満足を売る

お客様が商品・サービスを購入する目的は、それが欲しいというよりも、その先にある満足を得ることです。例えばレストランの場合、「おいしい料理を食べること」の先にあるのは、「一緒に行った人と仲良くなること」などではないでしょうか。

お客様が求める満足は、千差万別です。個々のお客様が「求める満足」を把握して、それを意識した接客を行うことがリピーター化に直結します。また、お客様の声(購入してくれたお客様の感想)を集めて、チラシやホームページに掲載すると、見込客が「満足した自分」を想像することができます。

4)ストーリーを伝える

見込客が購入することを決めるのは、商品・サービスのスペックや価格だけではなく、その背景にあるストーリーを重視するといわれています。企業がどのような思いで商品を作っているのか、商品開発の秘話など、隠されたストーリーをホームページやチラシに掲載することで、共感を得られる可能性が高まります。

5)製造業こそホームページを充実させる

製造業を営む中小企業のホームページは、情報量が少ないケースが多いものです。しかし、製造業こそホームページを充実させることで、問い合わせを受ける機会が増えます。他の製造業者がホームページを制作していなければ注目が集まりやすいですし、細かな技術情報を丁寧に掲載することで、検索上位に上がることも期待できるからです。

ある機械部品製造の町工場は、製品、技術力、製造可能分野など、自社の特徴や強みをホームページに掲載することで多方面から受注があり、リピーター化することにも成功しています。

6)飲食店や個人向けサービス業は“人”にリピーターがつく

飲食店の場合、顧客がリピーター化するのは、「店主やスタッフのことを気に入ったから」というケースが珍しくありません。同様に美容院など個人向けサービス業も、美容師などの“人”にリピーターがつく業種といえます。

“リピーターがつく人”になる方法は、マニュアル化しにくい暗黙知の世界ともいえますが、1つ挙げるとすれば「お客様のことを覚えること」です。例えば、飲食店に初めて来店したお客様が「○○の食材は苦手」と言ったら、次回は何も言わなくても、それを使わない料理を提供することです。ちょっとしたことですが、お客様は感銘を受けるものです。
お客様のことを覚えて、お客様に合わせてカスタマイズした接客サービスを心掛けることが、リピーター増加につながります。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年6月12日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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経営者の皆さん!社員とコミュニケーション取れていますか?〜会社が明るく、楽しくなる秘訣をVITAさんに聞く〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、等身大株式会社の代表取締役であるVITAこと内藤紗弥花さんです。多くの方々から「VITA(ヴィータ)」で親しまれていますので、ここでも「VITAさん」でご紹介します。

1 人は、いつから働くのが楽しくなくなったのか?

「働く喜び調査2013~2017年」(出所:リクルートキャリア社)の資料を見ていても、ネガティブワードのオンパレード。【楽しい】がなんと15番目に出てくるのです。いったい仕事が楽しくなくなったのはいつからのことなのか……? そう考え込んでしまいそうです。

私は毎日楽しくて楽しくて仕方がないですが(笑)。

この他にも、会社員が「イキイキ仕事していない」と感じることが、残念ながら少なくありません。これでは、働くのはシンドい、ツラいというのが当たり前になってしまうと危惧しています。

そんな重い空気感を数分で一変させ、その場を笑いと笑顔で包み込む講演家、それがVITAさんです。今回は、VITAさんに「会社が明るくなる、楽しくなる秘訣」を伺いました。特に「うちの会社はちょっと暗くて……」と悩んでいる経営者の方には、とても良い刺激になる内容です。

2 「年収6000円ですか?」「いえ、8900円です!」と真顔で

2018年11月、私が登壇させていただいたある勉強会に、VITAさんをお招きしたことがあります。そのときに私は、会場の皆さんに「年収1万円以下の経験がある方はいらっしゃいますか?」と質問させていただきました。そこでたった1人だけ手が挙がったのがVITAさんなのです。

次に問いかけたのが、「年収6000円でしたよね?」でした。それに対してVITAさん、『もう少し多かったです!8900円でした』。この一言で会場がどよめく! 仕事感、働き方関係のセミナーであったこともあり、参加していらっしゃる方々に、「いかにお笑いの世界が厳しいか。そこで頑張ったVITAさんが、いかにすてきか」をお伝えしたいと思い、筋書きのない質問を突然させていただいた次第です。

この質問の後に、VITAさんには一発ネタを幾つか披露していただき、会場の雰囲気が一気に明るくなりました。おかげで皆さんとの交流もスムーズに進み、とても素晴らしい会となりました。感謝しています。

VITAさんとの出会いは、VITAさんが会社を設立されて3カ月後のことで、今から3年前の9月になります。懇意にしていただいている社長さんから、「面白い講演が聞けるから杉浦さんも来たら? 勉強にもなるよ」と声を掛けていただき、参加しました。当時は、「内藤紗弥花VITA」というふうに「本名+芸名」で名乗っていらっしゃったことも懐かしいです。

ここで、等身大株式会社のHPから、VITAさんの略歴を簡単にご紹介しましょう。

●VITAさんの略歴(HPより)

・等身大株式会社 代表取締役。エンターテイナー・講演家。1985年神奈川県三浦市生まれ。「将来は政治家になります」と宣言し、AO入試にて慶應大総合 政策学部に合格。卒業後、突然、よしもと芸人に。全く売れずに、バイト生活すること3年。引退を考えていたころ、友人の言葉に奮起し、なんとか、2010年プチブレイク。「さんまのまんま」、「ぐるぐるナインティナイン」等、計10番組に出演を果たす。引退後は、営業コンサルティング会社にて営業パーソンとしての経験を積み、辛酸をなめる。ある時「あなただから買ったのよ」と伝えてくれた顧客との出会いに「仕事の最大の価値は人」だという信念を持つ。その後、2年間で7業種の営業を体験し、トレーナーとしても経験を積む。現在はエンターテイナー・講演家として活動。中学生から中央官庁管理職までと対象は幅広い。どんな相手でも繋がれるコミュニケーション術や、「等身大力セミナー」(今ある力を最大限に活かして、目の前の人を幸せにする力)を伝え、デビューわずか2年で年間150回の講演、研修の依頼を獲得。セミナーは、元よしもと芸人ならでは。ユーモアを交え、会場内を縦横無尽に動き回る体当たりのスタイルは好評を博し、働く人々の背中を押す。

このような略歴のVITAさん。「年間150回の講演を全力で」。本当にスゴいと感じます。

等身大株式会社の使命を記載した画像です

3 なぜ、VITAさんはお笑い芸人を目指したか?

政治家を目指していたVITAさんが、お笑い芸人へと進んだのはなぜなのか? 「この歩みには、子供の頃からのことが何か影響しているのでは?」と思い、子供の頃や学生時代について伺ってみました。

「目立ちたがり屋さん」。これが、VITAさんの子供の頃の全てと感じました。ただの目立ちたがり屋さんということではもちろんなく、周りに元気を与える、その元気が伝播することが大好きな子供時代だったようです。

「小学校の頃はどんな感じでしたか?」という質問に、VITAさんはこう答えてくださいました。「班長や学級委員長など、『長』がつくものを、とにかくやっていました。学級委員長に初めて立候補したのは、小学校3年生のときでした。そのときに多数決で選ばれた経験、人から信頼を得ることがこれほど気持ちいいのか!と思ったことを、今も鮮明に覚えています。小学校の授業が終わり休憩時間になると、そこは自分の【舞台】。今、授業をしたばかりの先生の物まねをしてクラスメートに「授業」をする【復習】で、自分自身も勉強となり、クラスメートも同様に学習レベルが上がる感じでしたね」

ある意味、教育研修で大切な相手に【伝える・伝わる】技術も、この「物まね授業」あたりから習得できて、一定のレベル感になっていった感じですね。

また、VITAさんは、高校の3年間のうち、2年間も生徒会長だったそうです。これはビックリしますね。1年生の秋口に立候補をして当選。そこから丸2年間、生徒会長を経験したわけですから、VITAさんの行動力、リーダーシップを感じます。

こうした子供時代や学生時代のコミュニケーション力や行動力、リーダーシップを生かし、社会課題を解消すべく政治家を目指したVITAさん。大学入学後も熱心に学んでいたそうです。テーマは学問として浸透し始めていたCSR(Corporate Social Responsibility)や、CSV(Creating Shared Value)。そこにのめり込んで、社会問題、社会企業論を研究しながら、VITAさんは「自分に何ができるか?」「社会へのインパクト、プロジェクトを何で動かすか?」という自問自答を繰り返し、卒業前のゼミの発表で「お笑い芸人になる!」と宣言し、その道へ。ゼミの中で相当珍しいチャレンジであったことを笑顔で振り返ってくださいました。

4 お笑いの世界で学んだこと

「世の中を笑顔にしたい」というプロジェクトを実現するために、VITAさんが飛び込んだお笑いの世界。そこは、生易しいものではなかったそうです。吉本興業が運営するNSC(吉本総合芸能学院)に40万円の入学金を払い込んで入ったVITAさん。同期は当時600人ですが、厳しさに耐えかねて、すぐに100人が去ったそうです。1年目のプログラムに最後まで残ったのは、入学当初の3分の1程度の200人。

言葉にできないほど理不尽とも思える【先輩からの教育】も相当ありながらも、VITAさんは頑張ったのですが、正直、NSC入学時、「私の来るべきところではなかった」という思いもあったと話します。お笑いの世界の上下関係はとても厳しく、本当は優しい先輩たちも、入学1年目のVITAさんたちには、1年間、心を鬼にして厳しいことをあえて実践してくれていたのだそうです。こうしたしきたりや、流儀、お笑いの世界特有の慣習で、VITAさんがメンタル・タフネスとなっていったことも事実。しかし一方で、どこにも売れることが保証されていない現実にも直面したそうです。

NSCへ入学してから1年後、VITAさんはプロのお笑い芸人への道を進みます。VITAさんに、当時のスケジュールを聞いてみました。

●ある2日間のVITAさんのスケジュール

  • 6:30~15:30 カレー屋さんでアルバイト
  • 16:00~22:00 電気店で接客のアルバイト
  • 23:00~4:00 居酒屋でアルバイト
  • 4:30~6:00 睡眠 90分
  • 6:30~15:30 カレー屋さんでアルバイト
  • 16:00~18:00 漫才の相方とネタ打ち合わせ
  • 19:00~21:00 ライブに出てスベル(笑ってもらえない)

とこんな48時間を繰り返していたそうです!

お笑いライブに出演するにも、VITAさんは自らチケットを購入していたそうです。1500円×10枚が最低枚数。これを購入して舞台に上がる権利を得ていたのです。その出演ギャラは、当初は500円もらえればよいほうだったとか。

この芸能生活スタート時点の1年目のギャラ総額が、「年間で8900円」だったそうで、翌年、翌々年と3年間チャレンジするたび少しずつギャラは上がり始めましたが、逆にバイトをする時間がなくなってしまいます。お笑い芸人の最終年には何度も生活が困窮する場面があったそうです。その状況で相方さんから『もう辞めよう』の一言でお笑いを卒業することになったそうです。

VITAさんのお笑い芸人時代のお話を伺っていて、「理不尽がよいとは言えないが、そうした経験をしたことは大きい」と私は感じます。

芸人生活の後、VITAさんが飛び込んだのは営業コンサルティングの会社でした。ビジネス経験が何もなかったことから、現場に入り込み、自ら電話営業などなど幾つも【現場経験】を積み重ね、トレーナーとしても活躍。そこから現在の姿である講演家として、VITAさんは独立します。

持ち前の明るさ+芸人根性+コンサルティング=講演家

というスタイルとなっていると感じます。

VITAさんと著者の近影です

5 年間150回の講演で見えてくる、【今】の課題について

VITAさんが代表を務める会社の社名である【等身大】については、同社のHPにもその想いがこもっていると感じます。

●【等身大力】について(HPより)

「あなたに、会えて良かった」「あなただから、お願いしたい」「あなたの、おかげです」そう言われる「あなた」とは、ありのままの自分を受け入れ、それを輝かせて生きている「人」です。どんなに似たモノやサービスが溢れる時代になっても、たった一つ、差別化できる価値とは、「人」であると私たちは信じています。等身大株式会社では講演や研修をつうじ、まずは、“知る”「自分の素晴らしさに気づくこと」(自己理解)そして、“表す”その能力と社会をつなげるための発信力(コミュニケーション能力)を伝え、行動の変化を促しています。

自分との対話の中で、決して偽りなくイキイキ生きることの大切さ。等身大だからこそ明るくなれる、セルフマネジメントも無理なくできる、自分に向き合える、だからこそ【あなた】【みんな】に優しくなれる。そんな気付きを与えてもらえるのがVITAさんの研修の特徴だと、受講してみて感じます。

それだけではなく、冒頭で紹介したような、蔓延するネガティブな雰囲気の会社や社会の問題に対して、等身大力を広げることで、VITAさんは大学時代に研究してきた課題と向き合っていらっしゃるように私には感じました。

  • 自分と向き合っていない
  • 自分が何がしたいのか? 欲しいものも見つけられない
  • 【個】を生きていない
  • 周りに、耳年増(みみどしま)になっただけ、「青い鳥」を探し続けている
  • 本当の喜びを知らない、見いだせない(風を読むことだけは卓越している)

現在、こんなことが若者だけでなく、それなりの年齢層にも多く見受けられるそうです。この傾向は残念ながらますます増えていく様相を呈しているように思えます。

「生きるとか、働くといったら『VITA』だよな」。【笑顔のアイコン】になりたいと願うVITAさんは、常に最高品質の自分でいることを心掛けています。楽しくないのは、全力で参加していないから。VITAさんの姿勢から強い思いを感じた次第です。

年間150回の講演で、おおよそ2万人もの方々に「等身大力」を伝授し続けながら、将来は等身大力を伝授した「VITAチルドレン」たちと一緒に、「社会に笑顔を届ける仕事を続けたい」と、VITAさんは、まさに大きな大きなVITAスマイルで語ってくださいました!

VITAさんと著者の近影です

以上(2019年6月作成)

【朝礼】あなたも私も素晴らしい!

皆さんは、自分ができないことや、思いもよらないことを考えている人と出会ったとき、「この人はすごい!」と素直に感じることができますか。恥ずかしいことですが、私が他人のことを素直に認められるようになったのは、それほど昔のことではありません。

それまでは、自分より優れた人に会えば嫉妬をしていました。また、本当に素晴らしい工夫がされている事柄でも、その“からくり”が何となくイメージできることについては、安易に、「たいしたことはない」と低い評価を下しがちでした。逆の場合もしかりです。自分のほうが相手よりも優れていると思えば、必要以上に強気になっていたと思います。

多くの人は、相手との関係性、相手の能力、置かれている状況に応じて自分のポジションを変えながら、「幾つもの自分」を使い分け、なんとかバランスを取っているものです。実際、家族に接するとき、上司に接するときのそれぞれの場面では、部下に接するとき、友人に接するときでは、皆さんの態度は大きく異なるはずです。

こうした立ち居振る舞いは、「自分の軸がない」ようにも映ります。通常、そうした人は高い評価を受けません。しかし私は今では、さまざまなポジションの自分についても、「それはそれで自分の弱さやもろさである」と認めています。その結果、視野が広がり、同時に頼りない自分を受け入れられるようにもなっていったのです。

他人と自分を比較していてもキリがありません。勝ち負けや優劣の判断だけでは、相手と上か下かの関係しか築くことができず、コラボレーションしながら仕事をする関係にはなりにくいでしょう。ビジネスにおいては、他社とのコラボレーションがとても上手な人がいます。そういう人は、自分の考えをしっかり持っていますが、ポジションは中立で目線もフラットです。自分のだけではなく相手の立場から相手の考えを聞く姿勢ができているということなのです。

相手と自分を比べてしまうということは、相手から見ても同じです。私たちが「自分はたいしたことはない」と思っていても、相手は私たちのことを「すごい!」と思っているかもしれません。皆さんがフラットな目線を心掛ければ、もっと深いコミュニケーションが生まれ、新しい仕事が生まれる可能性があります。

最近、「自己肯定」という言葉をよく聞きます。とにかく「今の自分を受け入れよう」との風潮がありますが、大切なのは「ダメなことはダメ」と認めることです。そこで初めて自分と深く向き合い、本当に肯定できる自分になれるのです。

「あなたも私も素晴らしい!」。この朝礼で私が皆さんに伝えたいメッセージです。元号が平成から令和に変わり、新しい時代が始まりました。皆さんにも新しい可能性があります。それを追求し、令和の時代に躍動するために、自分と向き合い、弱さを認める強さを持ってください。

以上(2019年6月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】皆さんの「ストーリー」を聞かせてください

私は若い頃から、ヴィンテージの服を扱っているお店めぐりを趣味にしています。掘り出し物のシャツやユニークなデザインのジャケットなどが発掘できる楽しみはもちろんですが、私が一番ワクワクするのは、店員さんの話を聞いているときです。

ヴィンテージ物を扱っているお店の店員さんは、服などにこだわりを持っている人が多く、私が知らない服にまつわるうんちくなどを教えてくれます。そして、中でも特に、店員さんが目を輝かせて話してくれる一着一着の服との出合いの話は、面白くて仕方ありません。

「店員さんがどのようにしてその服を見つけることができたか」「店員さんにとって、その服にはどのような思い出があるか」という「店員さんと服のストーリー」に恐らく魅せられているのだと思います。

日ごろのビジネスにおいても、ストーリーに魅せられることがあります。商談相手と話をしているうちに、商品を生み出すまでの苦労や工夫といった相手のストーリーが分かり、その商品に対する興味や好感度が一気に高まる。こんな経験を皆さんもしたことがあるのではないでしょうか。

ストーリーに魅力を感じるのは、そこにその人の思いや感情が込められていて、その人の内面も少し分かるような気がするからです。つまり、ストーリーには、共感を呼び、人との距離を縮める効果があるのだと、私は考えています。

私は、皆さんにも、周りの人に自分自身のストーリーを伝えられるようになってほしいのです。そうすることで、周りのさまざまな人との距離が縮まり、皆さん自身の世界も広がっていくはずです。特に、皆さんの中で、お客様など社外の人との関係をうまくつくれないと悩んでいる人がいたら、「ストーリーを伝える」ことをぜひ実践してもらいたいと思います。

難しく考える必要はありません。例えば、日々の仕事の中の出来事で考えてみると分かりやすいでしょう。商品をつくるとき、当社ではどのようにアイデアを出しているのか。皆さん自身はそこにどのような思いを持ち、どのように関わっているのか。苦労したこと、工夫したことは何なのか。商品を使ったお客様から、商品についてどのような感想をもらったことがあるのか、それについて皆さん自身はどのように感じているのか。こうしたことは、全て、皆さん一人ひとりのストーリーなのです。

ストーリーを伝えられるようになるには、訓練と慣れが必要です。そこで皆さんに提案です。明日から順番に、朝礼でスピーチをしていきましょう。テーマは、仕事のことでもそうでなくてもかまいません。皆さんが実際に経験したことと、その経験から何を感じたか、どのような思いを持ったかを発表していきましょう。世界に1つしかない皆さんのストーリーを、ぜひ聞かせてください。楽しみにしています。

以上(2019年6月)

pj16961
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】人とつながるそのコツは

先日、異業種交流会に参加したときのことです。その交流会には、日本人だけでなく、海外のビジネスパーソンもたくさん参加していました。私は大勢の海外の方と話をしたのですが、特に、ある1人の方が印象に残りました。

その方は普段は英国で生活しており、日本語をほとんど話せないようでした。しかし、私に、「ごめんなさい、日本語、話せないです」とカタコトの日本語で言ってくれたのです。一方の私も、英語を話せません。そこで、「I am sorry,I cannot speak English.」と、その方に、つたない発音の英語でお伝えしました。

その方も私も、相手の国の言葉を話せないことを申し訳なく思い、そのことを、「どうにかして相手の国の言葉で伝えようとする」という状況でした。話せないと言いつつ、お互いに相手の国の言葉をなんとか使っていることがおかしくなり、二人で顔を見合わせて笑ってしまいました。

同時に、私はとても温かい気持ちになりました。二人とも、とっさに、母国語ではなく相手の国の言葉で気持ちを伝えようとしたため、言葉を話せなくても、「コミュニケーションを取りたい」という気持ちがお互いに伝わったからです。

その方と私は笑い合って、二人で固い握手を交わしました。その後は、通訳を介しながら、とても有意義な情報交換をすることができました。次回会うときまでに、その方は日本語を、私は英語を話せるようになろうという約束もしました。

皆さんは、この出来事を聞いて、どのように感じますか。私は、今回、人と人とがつながる際の大切なことを1つ学んだような気がしています。

人とつながるには、相手に対して、「あなたのことを知りたい、あなたと仲良くなりたい」「あなたのことを尊重している」という気持ちを持つこと、そしてそれを相手に分かるように行動で示すことが大切なのではないでしょうか。

その方も私も、最初からお互いに母国語だけで話をしていたら、ここまで仲良くならなかったかもしれません。不慣れながらも、「相手の国の言葉で伝えようとした」ため、気持ちがお互いに通じ合い、仲良くなることができた。私は、そのように捉えています。

このことは、日本人同士や社内の人同士でも同じです。「仲良くなりたい」「尊重している」という気持ちを行動で示せば、それはきっと相手に伝わります。特に、「相手が興味を持っていることを話す」「相手と同じキーワードを使って話す」といった行動は、相手に「仲良くなりたい」という気持ちが伝わりやすいかもしれません。

そこでこれから皆さんも、例えば人に会う前には、その人の愛読書や最近興味を持っていそうなこと、キーワードについて情報を集め、「その人と同じ目線で話す」ことを実践してみてください。

大切なのは、「気持ちを示すこと」です。格好をつけず、本気の気持ちを行動で示せば、相手にきっと伝わります。

以上(2019年6月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】今、この瞬間からリアクションをしてください

もうすぐ、2019年度の第1四半期が終わりを迎えようとしています。新年度からスタートした新規事業も佳境に入り、いよいよ本格的に忙しくなってきました。今日は、こうした忙しいときにこそ、皆さんに心掛けてほしいことを伝えます。

皆さん、どうか、日ごろからリアクションをするようにしてください。これが、今日の朝礼で皆さんにお伝えしたい一番大切なことです。

対面での会話や電話、メール、チャットなど、私は日ごろから皆さんとさまざまな手段でコミュニケーションを取っていますが、皆さんのリアクションが総じて悪いのが気になります。現状のように、仕事が忙しくなってくると、皆さんのリアクションはさらに悪くなってしまいます。

もしかしたら、皆さんは、私が皆さんに対して質問や確認、説明をしたときに、「今は他のことで忙しいので、すぐには対応できない」「言っている意味、聞かれている内容が分からない」「答えに迷う」などと感じて、リアクションが悪くなっているのかもしれません。皆さんなりの理由や事情があるのでしょう。しかし、そうした場合でも、「すぐには分からないので確認します」「今は対応できないので、30分後でも大丈夫ですか」「もう一度言っていただけますか」といったリアクションをすることはできるはずです。少なくとも、分かったのか、分かっていないのかくらいは返してもらわなければ困ります。黙ったままや、「既読スルー」はやめましょう。

相手の立場に立って考えると分かりやすいかもしれません。皆さんが質問や確認、説明をしたとき、何のリアクションもなければ、皆さんは不安になりませんか。ちゃんと伝わっていないのではないか、自分の言い方が良くなかったのか、どうすればコミュニケーションを取れるのか、と困ってしまうはずです。コミュニケーションを取り直せば、時間も余計にかかってしまうでしょう。

逆に、リアクションが良ければ、お互いに気持ち良く、話も仕事もスムーズに進みます。「リアクションをする」というのはささいなことに思えるかもしれませんが、とても大切なことなのです。

皆さん、この朝礼が終わったこの瞬間からすぐに、リアクションをすることを心掛けてください。例えば対面であれば、人の話に対しては「はい」と返事をし、分からないときは「分かりません」とすぐに返しましょう。こう言うと、とても当たり前で簡単なことに聞こえるかもしれませんが、皆さんには、そうした当たり前のことさえ、できていないことを認識してください。

このとき大切なのは、相手にリアクションが伝わるように「ハッキリ返す」ことです。相手の顔を見ずに、背中を向けたまま口の中でモゴモゴ言っていても、リアクションをしていることが分かりません。リアクションは、相手に伝わって初めて「返した」ことになるのです。皆さん、私の言っていることが分かりますか。今、この瞬間からリアクションをしてください。

以上(2019年6月)

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画像:Mariko Mitsuda