株式会社、事業協同組合、SPCの特徴

書いてあること

  • 主な読者:新しい事業主体で新規事業を検討している経営者
  • 課題:そもそもどういう視点で事業主体を選べばいいのか分からない
  • 解決策:株式会社、事業協同組合、SPCに関するメリット・デメリットをまとめる

1 組織形態ごと(株式会社、事業協同組合、SPC)の概要

1)株式会社

株式会社は、「会社法」に基づいて設立される組織で、株式を発行し、その代金である出資金を元手として事業を行い、利益追求を目指すものです。最低資本金1円以上で設立することができます。また、株式会社の機関設計などによっても異なりますが、取締役1名のみでも設立することができます(注)。

(注)例えば、定款により、全ての株式について譲渡制限が設けられている株式会社(株式譲渡制限会社)の場合、取締役会を設置せず、取締役1名で、監査役の設置も任意とすることができます。

2)事業協同組合

事業協同組合は、「中小企業等協同組合法」に基づき設立される組織で、組合員である中小企業などが相互扶助の精神に基づき協同して事業を行い、経営の合理化・効率化、取引条件の改善などにより経済的地位の向上を目指すものです。4人以上の中小企業者などによって設立され、組合員の事業を補完・支援するための事業を実施します。

従来は、同業種の事業者により設立されるケースがほとんどでしたが、異なる業種の事業者が連携して設立し、それぞれの技術やノウハウなどの経営資源を有効に活用して新技術開発や新分野開拓に取り組むケースもあります。

3)SPC

特定目的会社(Special Purpose Company、以下「SPC」)は、「資産の流動化に関する法律」に基づいて設立される組織です。SPCは、特定の資産の購入資金を投資家(特定出資)あるいは金融機関からの借り入れ(特定借り入れ)で調達し、原資産保有者(以下「オリジネーター」)から資産の譲渡を受けます。そして、その資産から得られるキャッシュフローや資産価値を裏付けとした資産対応証券を発行して、資金調達を行います。

SPCによる証券化のスキームは次の通りです。なお、SPCの目的は資産流動化のための「器」としての機能を果たすことに限定されており、資産の管理・処分に係る業務など、資産流動化に係る業務やその付帯業務を営むことは認められておらず、それらの業務は外部の会社(資産管理受託者)に委託しなければなりません(注)。

(注)資産流動化法上、資産管理受託者は、信託会社など(信託会社または信託業務を営む銀行その他の金融機関)に加え、「不動産(土地もしくは建物またはこれらに関する所有権以外の権利)」など、特定資産のうちの一定の資産については、オリジネーターまたは当該資産の管理および処分を適正に遂行するに足りる財産的基礎および人的構成を有する者が、資産管理を行うことができますが、実際は、信託会社などが資産管理受託者となることが多いようなので、本稿では、資産管理受託者を「外部の会社」としています。

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2 株式会社のメリット・デメリット

1)メリット

1.所有と経営の分離

株式会社は、企業の所有者(株主)と経営を分離することができます。議決権を持つ株主が経営をすると、経営の客観的な評価ができず、経営者の独断・独走を許す危険性があります。そのため、所有と経営を分離して、株主は経営を客観的に評価する立場に置くことで、経営の健全性を構造的に保つことを目指すことができます。

2.有限責任

株式会社の株主が負うべき責任は、その出資額を限度とし、その金額以上の責任(損失)を負うことはありません。

2)デメリット

1.税務上の優遇措置が少ない

事業協同組合やSPCと比較すると、税務上の優遇措置が少なくなります(詳細は後述)。また、株式会社の場合、配当金の支払いは利益処分項目であるため、法人税法上損金に算入することはできません。

3 事業協同組合のメリット・デメリット

1)メリット

1.高い信用度

事業協同組合は行政庁の認可を受けた中間法人であるため、その社会的地位や公益的役割により信用度は高くなります。

2.公平で平等な組織

事業協同組合は、総会(最高意思決定機関)の議決権が出資額に関係なく1人1票与えられます。よって、株式会社のように出資額で議決権を占有できないため、公平で平等な組織といえます。

3.有限責任

事業協同組合の組合員が負うべき責任は、その出資額を限度とし、出資をした金額以上の責任(損失)を負うことはありません。

4.主な税制面のメリット

事業協同組合は株式会社などに比べて税制上の優遇措置が多くなされています。例えば、事業協同組合の法人税率は次の通りです。

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また、事業協同組合が出資者から徴収した加入金(持分調整金)は益金不算入であったり、組合の事業を利用した分量に応じて支払う事業利用分量配当を損金に算入できたりするため、その分利益を抑えることができます。

この他にも、代表理事の変更などにかかる登録免許税、事業所や倉庫にかかる固定資産税の非課税などの優遇措置などもあります。

2)デメリット

1.設立手続きが煩雑

事業協同組合は、行政庁の管理監督下に置かれるため、高い信用度を得られる半面、その手続きが煩雑となっています。例えば、設立手続きは、おおむね株式会社の5倍の書類が必要になるといわれています。

2.組合員になれるのは中小企業者など

事業協同組合は、中小企業者などの事業の近代化・合理化と取引条件の改善などを目的とした組織であるため、組合員になれるのは原則中小企業者などに限られています。なお、中小企業者などとは業種ごとに定義されており、例えば製造業では、資本金3億円以下または従業員数300人以下の法人・個人事業主などに限られます。

3.出資総額に制限がある

事業協同組合は、平等の原則を保持するため1組合員の出資は出資総額の4分の1までという制限が設けられています。

4 SPCのメリット・デメリット

1)メリット

1.SPCの資産の信用力のみに依拠した資金調達ができる

SPCは、オリジネーターの信用力ではなく、SPCの資産の持つ信用力(資産の価値や、資産から生み出されるキャッシュフロー)が借り入れの条件となります。そのため、オリジネーターの財政状態が良くない場合でも、SPCの資産が持つ信用力が高ければ、有利な条件による資金調達を受けることができます。

2.倒産隔離

SPCについては、投資家はあくまで特定資産の収益性に対して投資しているため、SPCをオリジネーターの倒産リスク(オリジネーターが倒産した場合に、オリジネーターの債権者にSPCの特定資産を差し押さえられるなど)から切り離されていなければなりません。そのため、一般的にSPCには法的な対抗要件の具備や、人的遮断(取締役を第三者とするなど)の処置がされます。

3.オリジネーターの財産指標の改善

SPCを組成することで、オリジネーターの貸借対照表から当該資産をオフバランスすることができ、総資本利益率や自己資本比率といった財務指標を向上させることができます。特に、含み益のある資産をSPCに売却することで、オリジネーターの潜在的な企業収益力を損益計算書上に顕在化することができます。

4.主な税制面のメリット

SPCは、一定の要件を満たせば利益の配当額を損金算入できるため、課税される利益が少額になります。そのため、均等割など多少の税金は発生しますが、投資不動産から得られた収益のほとんどを投資家に配当することができます。これは、SPCが資産流動化という特定の目的のためにのみ存在する「器」としての存在にすぎないため、税制上もこれに適合した課税上の取り扱いをする措置(ペイ・スルー課税)を取ったものです。

この他にも、一定の要件を満たせば不動産取得税や登録免許税などについても軽減の措置があります。SPCに対しての軽減措置は次の通りです。

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2)デメリット

1.設立手続きが煩雑

SPCのスキームおよび事業計画について詳細に記載した「資産流動化計画」の策定や、その他業務開始に必要な書類の作成およびそれらの内閣総理大臣への届け出など、設立手続きが煩雑であり、設立段階までに相応の時間を要します。

2.コストが掛かる

SPCの設立は複雑なスキームとなるため、オリジネーター、SPC、資産管理受託者などに対する報酬の他、スキーム全体をアレンジするアレンジャー(金融機関や専門家など)に対する仲介手数料などのコストが必要となる場合があります。

3.大規模な事業以外には不向き

SPCは手続きが煩雑で、コストも掛かるため、「オフィスビルや賃貸マンションといった不動産の取得・開発」「発電設備の取得・運用」といった巨額の資金が必要で、一定のリターンも見込める大規模な事業のほうが、費用対効果が見込みやすく適しているといわれています。

5 組織形態を選ぶ際のポイント

1)経営権の所在

「誰に経営権を持たせるのか」「経営に参画するのは誰か」など、経営権が誰に所在するのかによって、最適な組織形態は異なります。例えば、複数の中小企業が共同で事業を行うような場合、公平で平等な経営ができる事業協同組合が適しているといえるでしょう。

一方、事業に参加する複数の企業の中の有力企業が事業のかじ取りを担ったほうがいい場合や、自治体や金融機関などさまざまな組織の参画を目指す場合は、株式会社やSPCが適しているといえます。

2)どれくらいの資金が必要で、出し手は誰か

事業に必要な資金の額や、資金の出し手によっても、最適な組織形態は異なります。例えば、事業に当たって地域で調達できない金額の資金が必要であったり、資本提携などを理由に資金の出し手を地域の企業に限定できない場合、資金の出し手に制限がなく、多額の資金を集めやすい株式会社やSPCが向いているでしょう。

なお、ここでは、新規事業開始に当たって事業主体となる組織として、株式会社、事業協同組合、SPCを新設することを前提に組織形態を選ぶ際のポイントを紹介しました。しかし、既存組織の中で新規事業を行う場合は、異なる問題が発生することがあります。例えば、既存の株式会社が新規事業として行う場合、「新規事業に関する倒産隔離の問題はどうするのか」「出資者が新規事業に関する経営権の取得を望んだ場合、株式を持つことで既存事業を含む株式会社全体の経営権を持つことになる」といったように、さまざまな課題が発生する可能性があるため、注意をする必要があります。

以上(2019年6月)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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画像:pixabay

第1回 ナーブ株式会社(NURVE,Inc.)代表取締役 多田英起氏/森若幸次郎(John Kojiro Moriwaka)氏によるイノベーションフィロソフィー

かつてナポレオン・ヒルは、偉大な多くの成功者たちにインタビューすることで、成功哲学を築き、世の中に広められました。私Johnも、経営者やイノベーター支援者などとの対談を通じて、ビジョンや戦略、成功だけではなく失敗から再チャレンジに挑んだマインドを聞き出し「イノベーション哲学」を体系化し、皆様のお役に立ちたいと思います。

今回、記念すべき第1回に登場していただきましたのは、不動産事業にVRを活用しイノベーションを起こしている「ナーブ株式会社」の代表取締役、多田英起氏(以下インタビューでは「多田」)です。

1 「10代の頃、アメリカに行こうと思って」(多田)

John

記念すべき第1回の対談者になってくださり、多田さん、愛りがとう(愛+ありがとう)ございます。多田さんはメディアに数多く登場されていますよね。今回は、これまでになかったような内容のお話をしたいと思います。他ではなかなか聞けない泥臭い内容でいきましょう! まずは、起業のきっかけからお聞かせください。

多田

起業のきっかけですよね……。実は僕、目立ちたくないというか、あんまり社長になりたくなかったんですよ。

John

そうなんですか、それは驚きですね。では、子供のころは何になりたかったのですか?

多田

正直言って、何もなかったかもしれません(笑)。

John

でも、高校生の時から、やはり多田さんはアメリカを見ていましたよね。以前に多田さんにお会いした時、お姉さんが優秀だと言っていたじゃないですか。お姉さんは、何をしていた方なのですか?

多田

姉が優秀でできない弟(僕)で……。姉は国立大学から大学院、大企業に入りました。本当に優秀で……。そうそう! 僕がアメリカに行った理由は、姉と比較されたくなかった。同じフィールドで戦いたくなかったからです(笑)。

John

そうなんですね。アメリカはボストンでしたよね。

多田

18歳から20歳までボストンで、最初はNortheasternという大学へ行き、その後Wentworth Institute of Technology(ウェントワース工科大学)へ行きました。その後UC(カリフォルニア大学)を経て、アメリカで金融系の会社で働いていました。

2 「世界のトップの人たちと関わりたい」(John)

John

大学は何の授業が楽しかったですか?

多田

僕は高校時代は勉強を一切しませんでした。しかし、アメリカの大学で勉強することは本当に楽しすぎました。印象的だったクラスは、「Any question?」という質問から始める先生がいて、授業が始まったら最初から「Any question?」(何か質問ありますか?)と言われたことです。「Any question?」と聞かれても、そもそもまだ何も習っていないし……しかし、(他の学生は)バンバン手を上げるわけですよ。そして、どんどん授業が進んでいく。恐ろしいことに僕は勉強をしていないので、単語すら何一つ分からないわけです。質問が何か分からない。単語も分からないし、意味も分からないし、答えている答えの内容も分からない。分からないだらけで、何にもならない無駄な1時間。早く帰りたいって思っていました。

John

そういうの、海外の大学でありましたね。1週間で分厚い教科書を数冊読んでいかないと授業についていけないという感じでしたね。私は、英語で5教科で受験し、シドニー大学に入学しました。図書館の席をとるために並んでまで勉強する学生が多かったです。私の勉強の仕方は、全部のチャプターのサマリーをざっと見て、自分で先生になったふりをして、7割ぐらいを、自分の言葉で簡単に英語で説明できるようになるまで勉強するというやり方でやっていました。

多田

なるほど~Johnさん、その勉強方法良さそうですね。

John

レクチャーというか人前でプレゼンするのが昔から好きでした。「先生になったふり」をするのが良いと思います。チャプターごとの理解度が7割ぐらいで授業に出て先生の話を聞けば、一瞬で理解度が8割ぐらいまで分かるようになります。そして、テスト前にもう一回見たら9割ぐらいになるという具合です。結果として、テストを受けたら7割ぐらい点数がとれるという感じです。私も高校まで全然勉強してなかったし、すごく苦手でした。だけど、いつもリーダー的な存在で、仲間と遊ぶのが大好きでした。

多田

なるほど。僕はJohnさんと違って、全くリーダーの真逆だから、その感じは分からないな~(笑)。

John

いや、僕も最初から社長になりたいとは思っていなかったですよ。世界のトップの人たちと関わりたい。世界のトップの人たちとたくさん対談したり、政治家や宗教家、文化人などのトップの人たちを結び付けて、世界により良いインパクトを与えたいと思っています。

多田

なるほど。すごいですね。逆に僕は世界のトップを取りたいです。いや、世界を取りたいわけではなくて、世界を変えたい。変えたいだけです。世の中を変えてみたいっていうのはありますよね。変えたほうが面白いじゃないですか。

3 「本当に会いたい時に、会いたい人物に会える」(多田)

John

多田さんは、人にも恵まれてますよね。

多田

はい、おかげさまで、僕の場合、神様が僕の味方になってくれているのかなと思うことが多いです。やることなすこと全部うまくいくような感じです。ですので、本当に会いたい時に会いたい人物に会えるとか。振り返ってみたら、「あの瞬間あの人に会っていなかったらゲームは終わっていたよね」という出来事がたくさんあるわけです。

John

そういうのすごくありますね、会いたい人は、目の前に寄ってきません? いきなり現れませんか?

多田

はい、突然現れる(笑)。

John

全部たまたまの出会いが運命になっていると思います。その人と仕事しようとか最初から思って近づいたことは一度もなくて。全部、偶然でいい人としか出会っていない。

多田

そう、偶然ですよね。

John

こちらが「今日あの人何してるんだろうな」と思っていたら、連絡が来たりします(笑)。

多田

そういう意味では、資金調達の時の話がいい例でした。その時は、投資契約の3日前までいっていました。あと3日で1億円が振り込まれるというタイミングで真夜中に電話がかかってきて、いろいろあって、結局、そこで(話が)無くなってしまったのです。

そうしたら、ちょうどその前に断られたVCさんから、お客さまを紹介したいという軽い訪問の予定がありまして。その軽い訪問をしてくれた時に、「実は投資契約の3日前に事件が起こりまして、入金まで見えていたものがいきなり無くなってしまいました」という話をしたら、そのVCの方が、「じゃ、検討しましょうか」と言ってくれて、そこで改めて検討してもらうことができて、出資してもらえました。

多田氏と森若氏の対談の様子を撮影した画像です

4 「交渉よりも大切なことは、何度も何度も資料を見せてダメ出ししていただくこと」(多田)

John

多田さん流VCの方との交渉テクニックはありますか?

多田

VCさんの場合、僕は交渉というより無償のコンサルタントだと思っていて、シード期はたくさん相談をしました。特に、すごく優秀なVCさんにはとことん食いついていったほうがいいと思います。その間に自分の考え方や“イケてない”ところ、知らないところなどを全部見てくれますよね。「この辺は心配だ」「これが分かりにくい」などと教えてくれます。

「君の行動とビジョンが異なってる」とも言ってくれますので……。例えば「これをやってくれたらお金出します」という話が他からあったとしても、「それが君のビジョンと何の関係があるの?」「君、何やりたいんだっけ?」と指摘してくれたりします。

John

素晴らしい投資家の方ですね。

多田

はい、その方はとても優秀な方で、シリコンバレーとイスラエルにしか投資をしていない担当の方です。初めて会った時に「申し訳ないけど、日本は担当していないから投資できないよ」と言われました。

それからお付き合いが始まったのですが、最初は僕が作った40枚の資料を5秒で読み捨てられたりしてました(笑)。「面白いけどね、全然ダメ」という感じで。その2日後ぐらいに、またアポを取って「また来ました!」と行くわけです。そうすると、またポイッて捨てられてしまう。その繰り返しで、最後に「ああ、よくなったね」と言ってもらうことができて、その資料をベースに大手VCさんに出資してもらえるようになったりしました。

John

多田さんの粘り強さもすごいですね。

多田

本当にいいファウンダーは、ビジネスモデルがシャープになっていきます。VCさんたちは、「ソリッドになる」という言い方をしますね。例えば、Facebookで考えてみると、今から(Facebookを)つくっても間に合わないことは誰でも分かるじゃないですか。ということは、すなわち「時系列」が存在していて、多分、Facebookがつくられなかったとしても、3年後ぐらいまでに誰かがFacebookっぽいものをつくっていて、そうするとFacebookの市場は存在しなくなっていたはずで。

Lyftもそうですよね、Uberも。あのタイミングでやっていたからいいのであって、いまからLyftをつくりますって言われても……。なので、そういう「タイミング」はすごく重要だと思っています。すなわち自分がアイデアを思いついて、それで成功するには、必ずタイムリミットがある。今思いついてなくても、誰かが近い将来きっと同じアイデアを思いつく。どれほど長くても5年とか。短ければ3年で。

John

急がないと、誰かがやりますからね。

多田

そう。だから、右往左往している時間はないので一直線に走るしかない。それを応援するのがVCだと言われました。

John

最高に良い話ですね。多田さんのアドバイザーにはどんな方がいらっしゃいますか?

多田

うちの会社は、アドバイザーはいませんが、不動産テックのCOOやCFOをやっていたようなVCの方は、とにかく僕が泣き言を言いまくれる良い相談相手です。あとは、もう一人、僕を普通に叱ってくれる人がいます。「君は誰とでも議論したいだろ? それが人としてダメ!」と教えてくれました。

VCさん相手なので、本来は泣き言を言ってはいけないのですけど、正しいことを高速で言ってくれるので、泣き言も言える。「だから分かってるんですけど、僕だってね、つらいんですよ」というようなよく分からないことを話してるんです(笑)。

John

その人たちは会社の中に顧問としていらっしゃるのですか?

多田

2人とも社外取締役です。顧問には元リクルートの人を入れています。この人は僕の営業面の相談役としてアドバイザーをしてもらっています。

John

営業のアドバイザーはどうやって見つけられたんですか?

多田

顧問を紹介してくれるサービスを使って見つけました。結局、(起業家の)相談役になれるのは、とても優秀でスタートアップのCEOができるような人じゃないとダメなのではないかと思います。

John

つまり、「やってみたら、自分もスタートアップのCEOをできるけど、今VCやってるよ」という方ですね?

多田

そうです。しかも、経歴的にも、CEOをやったことがあるというレベルじゃないと難しいですよね。ちゃんと過去にやったことのある人。

5 「イノベーションは、新しいものを起こすことではなくて、『普通のことをつくること』」(多田)

多田

Johnさんは、お知り合いの方が多くて顔が広いですよね。

John

はい、おかげさまで、たくさんの素晴らしい方々に恵まれております。VC、起業家、アクセラレーター、インキュベーター、行政、大学などさまざまなジャンルの仲間がいます。趣味が多いからかもしれません。だから、言ってみれば「何の業界」という枠が自分にはなく「ノージャンル」なのですよね。文系理系も関係ない。私は、講演もしますし、アクセラレーターもつくる、企業のコンサルティングやシリコンバレー視察ツアーなども行います。芸術も好きなのでラップも出しますし、絵も描きますし、詩も書きます。

多田

才能に恵まれたんでしょうね。

John

いやいや、才能は、全員あるじゃないですか。

私の場合、昔から、全部が中途半端だと言われてコンプレックスでした。どのような仕事に就こうか、いろいろと考えたりもしました。でも、やっていることは一貫して、「人と一緒に楽しくやる」ということであり、「世界中の人々にとって、日本にとっていいかどうか」で仕事を決めます。私の志は、Innovations for a healtheir life。日本語では「世界中の人々のより健やかな人生のためにイノベーションを起こす」です。

多田

やはり、(Johnさんと僕は)太陽と月みたいですね(笑)。

John

ああ、そうかもしれないですね(笑)。

多田

僕は、一点突破主義です。うちの姉に勝ちたかったので、勝てる方法があるとすれば一点突破主義しかないと思ってきました。

John

お姉さんの存在がすごく大きいですよね。でも、お姉さんからすれば、「(弟は)すごい。自分で会社やっているのは本当にすごい」と思っているんでしょうね。

多田

はい。すごく応援してくれます。姉は常識人。それに対して僕は、常識を疑い、壊してしまいます。

アメリカに行き、常識=(イコール)その人が生まれ育った環境での経験値だと思いました。やはり国が違うと常識も違ってきます。例えば、ある国の人と待ち合わせをしたら、冬のボストンで1時間以上も待たされたんです。連絡も来ないし、死にそうだと思うくらい寒くて、何だと思っていたら、平気な顔をして来たんです。僕が「今日のアポって2時じゃなかった?」と聞いたら、「1時間ぐらいの遅刻でそんなことを言ってくるのは器が小さい人間だ、大成しないぞ」と言われて驚きました。それだけ常識は違う。

だからきっと、常識は、新しい経験をすると常識じゃなくなる。今はスマホがないと生きていけないじゃないですか、だけど、スマホがない時代は、みんな、スマホがなくても生きていた。

John

確かに。スマホがなくなっても生きることはできますね。

多田

そう、スマホがなくなっても生きていける。しかも、スマホがない時代は、スマホができたらいいなと思ってもいなかったんです。それはそれで世界は成立していました。それが常識だったんですよ。だけど今は、スマホがないと結構つらいじゃないですか。だから、人の常識は変わりいくものだと思います。今みんながつくっているものがうまくいったら、明日の当たり前になるというだけの話。だから、イノベーションは、新しいものを起こすことではなくて、「普通のことをつくること」なのだと思います。

John

「イノベーションとは、未来の当たり前をつくる」。それは、製品であってもそうだし、考え方、常識でもそうですね。

多田

本当にそれだけだと思います。だからあんまりすごいイノベーティブな、全くこれまでにないものを生み出すというよりは、「こんな社会になればみんな幸せになる」というところだけでイノベーションは起こるのではないか。僕は、勝手にそう思っています。

John

私の場合、物事について、社会的な評価を基準にしていません。ファッションに関しても絵に関しても、歌に関しても。自分の心で決めています。

日本の枠の中だけでというのは、あまり楽しくなく、ワクワクしないかもしれません。何か危なっかしいものや、クセが強いけれど光るものがある若者などのほうが好きです。これは全て、僕の勝手な持論です。まだ売れてないし社会はまだこの歌手や画家の存在に気づいてない……。でも自分は知っていて、応援したい。今の社会の基準で既に選ばれているものよりも、まだ選ばれていないものが待つ可能性が好きです。ダイヤモンドの原石、一人一人がギフテッドで、みんなの才能を応援したいです。

6 「誰がつくってるんだろうって。本当に気になって。会いに行って。そして一緒に住んじゃう」(John)

多田

Johnさんは「自分」がありますよね。僕は逆に「自分」がないです。僕は“ガジェッター”なんです。

John

多田さんは、何かのファンとかあります?

多田

ないです。これを言うと人に興味がないと思われてしまうかもしれないですけど……。別に人に興味がないわけではなくて、自分に興味が全くないのです。自分がどう思う、とかは興味がなくて、とにかくガジェット好きで、面白いおもちゃとか。ガチャガチャしたものが好きなんです。

例えば、キックスターターで新しいおもちゃを買ったりします。全く使えないものもありますけど(笑)。そういうものは、新しくて僕をワクワクさせてくれますよ。届いた日は一緒に寝ます(笑)。

キックスターターのものは、出来上がらないことも多々あります。夢が大きすぎるんでしょうね。「自分で排出した二酸化炭素を、中で酸素に換えてくれる」というものがあって、確かに学術的に考えてみたら絶対にできそうにないのですけれど。でも、できそうかどうか、そういうことは関係ないじゃないですか。そんなことを言ったら、水素エンジンだって誰もできないと言ったんじゃないかと思います。燃料電池だって僕が高校時代には、できないと習いました。意外とうまくいったら面白いなと思って買いますけど、ダメな例も少なくないですね(笑)。惜しいですね。ナイスチャレンジ! 大丈夫。いつかはみんな成功しますよ!

John

やはりお金が足りないから、みんな最後までつくれないんでしょうか?

多田

いや、夢が大きすぎたんじゃないですか。さすがに。でも、本当によく思いついたな、発想がまず面白いなと思います。

John

そういう人、実際に近づいたりするんですか?

多田

いや、僕はモノが届けば十分です。

John

つくっている人に近づきたくなりません?

多田

それはないかな~。

John

僕はそっち(会いに行く)なんですよ。

多田

お金は出したい。応援したい。

John

僕は絶対、会いに行きます。我慢できなくなって。そういう人を見つけた瞬間。国をまたいででも行きます(笑)。

多田

でも、やはりそれ(会いに行く行動力)なんだろうな、僕が足りないと言われているところ(笑)。

John

いやいや、そんなことはないです。僕は、誰が作ってるのか本当に気になります。会いに行って、そして一緒に住んじゃうんですよ。

多田

それは僕も少し似ていますね。届いた時、一緒に寝るのと一緒です。モノが好きか人が好きかの違いでしょうか?

多田氏と森若氏の対談の様子を撮影した画像です

7 「やるべきは『笑って馬謖(ばしょく)を褒める』だったでしょうね」(多田)

多田

僕は、本当に月なんだと思います。僕が太陽的なポジションになると、ダメになってしまうのですよね、部下が。理由は、僕が理論的に詰めてしまうからです。

例えば、「だって、忙しいって言うけど、今やってる内容からしたら、これとこれをアウトソースする。で、このアウトソースに関わる時間て2時間ぐらいじゃない? で、この2時間を君が今捻出できないとすると、それってどういうことなのか分からないなぁ」というふうに、部下に言ってしまうので(笑)。

別に、僕は普通に考えて理論的に正しいことしかしゃべってないです。それを、アドバイザーがしゃべれば「まぁそうですよね、ありがとうございます」となりますが、それを社長という立場で僕がしゃべると、部下は「社長に詰められた」となるわけですよね。

John

普通ですよね。「効率化するのは、あなた(部下)にとっても良いことがあるのですよ」という、むしろ良いことを言ってるんですけどね。私もおせっかいで、人に指示などを、よく出しているらしいです。「それでは人は育たない」とアドバイスを頂いた経験もあります。

多田

そう。やはり、三国志で言うと、劉備(りゅうび)がいるときの諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)は、力があるのですよね。強いわけですよ。

だけど、劉備がいなくなって諸葛亮孔明が上になったとき、当時はかなり優秀な武将がこれでもかというくらい次々と現れたわけですが、それから15年ぐらいたって、諸葛亮孔明が「何でこんなに人(優秀な部下)がいないのだ」と嘆きますよね。泣いて馬謖(諸葛亮孔明の部下)の首を斬ったりするじゃないですか(注:馬謖は、優秀な部下だったが、諸葛亮孔明の命令に背いて独自の戦術を展開して失敗したため、諸葛亮孔明が泣く泣く馬謖を斬ったとされている)。

それは結局、諸葛亮孔明が一番の問題なんです。それはなぜかというと、諸葛亮孔明が先に「山に登るな」と言ってしまったからです。そうではなくて、あれは諸葛亮孔明が(馬謖に)「山に登ったらどう思う?」とちゃんと聞かなきゃいけなかったんだ、と、ある人に言われました。

最初に「山に登ったらどう思う?」と聞いてみる。そうすれば優秀な人(部下)だったら自分で考えられたはずなのに、諸葛亮孔明が「登るな」って言ってしまった。そういうことが、人をダメにすると、ある人から言われて、なるほどと思いました。

僕は、諸葛亮孔明ほど有名じゃないし強くないし頭もよくないですけど、あのレベルのすごい人でも、そういう間違いをしてたんですよね。日本では、「泣いて馬謖を斬る」は、「泣いて馬謖を斬るようなつらい時があっても、判断すべきことがある」というような意味で伝わってますが、もともとの故事からすると、実はそれ、もう少し違うんじゃないかと思います。経営として考えると、あの斬るシーンではなくて、教えたシーン、ここが一番大きな問題であると、僕の先輩が教えてくれました。

John

すごく良い話ですね。多田さんは、歴史から学んでいますね、人間関係など。教えてくれたのは、どういったご関係の方なのですか?

多田

僕の飲み友達です。僕、飲み友達で、10年以上仕事関係がない人が多いですね。出資してもらったことも、一緒に仕事したこともないです。ただ、そういう関係のほうが、素直に、等身大に相談できる気がします。会社のことを知ってる人がいると、やはり、話していいことと、いけないことが出てくるじゃないですか。でも、全然関係ない人は、困っている時に話しやすいし、すごく大きな世界観から言ってくれる気がします。「分かるけどさ、君みたいなこと言う人ってさ、大体失敗することって同じでさ」みたいな(笑)。

John

褒めてくれたり、けなしてくれたりですね。私も、そのようなメンターがいてすごく大切な存在です。

多田

これまで自分が学んできた「泣いて馬謖を斬る」というシーン、この意味は「つらくても決断すべきである」と勉強してその通りに覚えていましたけど、そうではない見方があった。教えてもらって、「経営者はこう見るんだ」と思いました。確かに馬謖を斬ったシーンだけとらえれば諸葛亮孔明が正しかったかもしれないですが、馬謖を斬ったことで、「諸葛亮孔明に逆らってはいけない」ということが、全員に浸透してしまったのだと思います。

本当は、あの事態を(馬謖が)引き起こしてしまったとしたら、多分、諸葛亮孔明がやるべきは「笑って馬謖を褒める」だったでしょうね。諸葛亮孔明が「オッケー、ナイストライ、生きててよかった」という一言をちゃんと言えていれば、「一緒に頑張ろう」という思いが部下に伝わって、「失敗しても認められるんだ」と部下が思える。そういう話だったと思っています。

John

多田さん、素晴らしいですね。そういう話は、会社でもするのでしょうか?

多田

僕は会社ではしゃべらないようにしています。僕がしゃべると部下が緊張してしまうので、僕は静かにしています(笑)。

John

多田さんは、朝礼はどうしていますか?

多田

全社的にやってますよ。ビジョンはちゃんとしゃべりますが、それ以外はしゃべりません。ビジョンはパワーポイントまで落とし込んでいます。本当にやりたいことは何か。これをかなえてほしい。こういう話までしかやらないです。夢と、エコシステムとかの話ですかね。

John

数字については社員さんとどのように話しますか?

多田

僕は数字の話はしないです。もうかるかもうからないかを聞きたいわけではない、お金は後から付いてくると僕は思っています。何が狙いで、何がどう評価されるかということは社内で伝えていきますけどね。例えば、「プレユニコーンの規模になっている会社は、日本にこれだけの会社(数社)しかない」「そうした中で当社が認められているということは、みんなの仕事が認められたということだよ」といった話は社内でします。

John

多田さんの会社では、数字の話は、誰の仕事なのでしょうか?

多田

そこはCOOと、営業部長の仕事です。そこはもう、僕は(人の仕事を)取ってはいけないと思っています。うちの社外取締役からも、「多田君、もういいんだよ。しゃべらないでおきなさい。それでも120%主張してるから」と言われました(笑)。名言だと思います。僕が自分でしゃべろうとしなくても、もう既に人から見たら120%ぐらい自己主張が終わっているのでしゃべらなくていいって言われて(笑)。

8 「1個のことをやると、本当にいろんなパターンがポンポン出てくるんですよね」(多田)

多田

僕は苦労している人が好きです。一緒に働きたい人も苦労している人です。失敗したり、苦労したりしている人が、どうにかして成功させようと努力する過程って、やはり力があると思います。

あまり成功してキラキラして、exitして2周目ですというCOOとかに興味はないですね。こう言っては失礼ですが、タイミングや他の人が優秀で乗り切ることができた例が、結構あると思うんですよね。それよりは、失敗して悔しい思いをしてくれている人のほうが、僕は好きですね。

John

私の大好きな先輩方も苦労された方々しかいないかもしれないですね。はたから見たら「ただ善い人」や「もうかってる人」に見えるかもしれないですが、やはりすごく努力して成功されていらっしゃいます。仕事的にも人間的にも優れた方々です。

多田

起業して、「事業」というジャンルはまだまだ深いなぁと思いました。コンサル時代にやっていた内容や、見えていた内容よりもずっと深い。起業して事業をやっていると、自分でいろいろなことを下に掘り進めていくじゃないですか。それで新しい発見がたくさんあります。今までこれほど深く掘ったことはありませんでしたし、誰もが掘れないくらいまで掘れるわけですよ、自分の事業では。そうすると、また新しいものが見えてきます。これはすごくいい経験だと思います。一つのことをやると、本当にいろいろなパターンが出てきますよね。結局、それはそれですごく価値を生む気がします。

多田氏の画像です

9 「最初から『育ててもらおう』というつもりでは成功しない」(多田)

John

アクセラレーターについてお聞かせください。日本のスタートアップのエコシステムを強くしていく上でどのようなことが必要だと思いますか。コーワーキングスペースやアクセラレーターが増えていますが、今からスタートアップを行う人たちは、そうしたところに入ったほうがいいのでしょうか。それとも、自力でいい人脈をつくったほうがよいでしょうか?

多田

最近のスタートアップについては、アクセラレーターに育ててもらうのではなく、自分たちで完成した後、大企業とコラボレーションするときに使うほうが、僕は正解だと思います。やはり日本の場合、参入障壁は高いと思いますが、それを大企業のアクセラレーターで超えることができるので、そうした方法は積極的にやったほうがいいと思います。

でも、最初から『育ててもらおう』というつもりでは成功しないと思います、そもそも(笑)。授業じゃないですし、そういうのは勘違いだろうと言いたくなります。やはり、自分で苦労はしようよと思います。

スタートアップだったら、やはりVCに持って行って本気で挑め、という感じでしょうか。アクセラレーターは今、なんとなく軽いイメージがあります。誰にでも「いいねいいね」と褒めてくれる感じがします。

でも、VCの場合、本当に良くなければ連絡が来なくなるなど、本当にハードな反応を受けますよね。シビアな反応をもらったほうが、人は成長すると思います。

多くのアクセラレーターは大企業の看板が付いていますが、そこに採択されたからといって、自分の実力が付いたように勘違いするのは違うかなと思います。

今、山のようにアクセラレーターがあり、いろいろなところと組むことができますが、それに甘えて成功するイメージを持つのはよくないですよね。本当は、もっと、スタートアップを自分たちで考えて自分たちでつくり上げていって、ある一点まで玉になっていったところで、「大企業さんいかがですか? 僕たちはこれを死ぬほどやりたいんです、一緒に世界を変えましょう」というのだったら大企業を使うべきだし、大企業も受け入れると思うのですが。

John

それは、多田さんのおっしゃる通りですね。私も先日、自身で立ち上げたアクセラレーターをやりました。有名大学の学生や大企業で働いている人たちが授業受けに来てくれました。大企業に就職するタイプじゃない人、スタートアップをどのようにつくっていくかまだ分からない人向けに、2カ月で8回、私だけではなくて他の先生方にも起業する時に必要なことを教えに来ていただきました。授業を受けることは誰でもできますが、そこで終わらずに実際に会社を起こして、経営して、軌道に乗せることが重要です。最後は自力でやった人しか、勝ち上がれないのだと思います。先生は自分しかいない。また、アクセラレーターに入るのなら、外国のアクセラレーターに2~3週間行ってそこでマインドを変えて、世界に出るきっかけになればいいのかもしれませんね。

多田

何か物足りないです。学んだ気になってしまう気がします。アクセラレーターは、学ぶのではなくて仕掛けることが大切だと思います。経営者は、常にそうじゃないですか。何かしらの戦略があって、仕掛けるための武器がアクセラレーターだと思うんですよ。

僕はそう思っているので、「アクセラレーターに育ててもらう」ような発言が出た時点で、アクセラレーター任せになるので、それはうまくいくわけないと思ってしまいます。

John

5月に4日間だけ、ルクセンブルクでアクセラレーターブートキャンプがあります(本稿掲載時には終了しています)。ルクセンブルクで活躍する主要VCやエンジェル投資家から学べます。私はこれに行こうと思いまして。今年シリコンバレーで設立したスタートアップが採択されたので行ってきます。今後、日本でもこうしたアクセラレーターがつくれればいいなと思います。ブートキャンプの4日間のように、短期間でやるほうがいいのかなと思ったりします。

10 「イノベーションの哲学は、『本当に困っているものを見つける』」(多田)

John

最後に、多田さんのイノベーションの哲学をお聞きしたいと思います。今回のこの対談のタイトルは「イノベーションフィロソフィー」です。私は、このりそなCollaborare(通称りそコラ)というメディアで、もう一つの連載コラム「イノベーションフォレスト」を持っています。イノベーションを起こす生態系をつくるという思いを込めて、イノベーションの森というシリーズ名にしています。

一方、今回の対談は、「イノベーションの哲学」です。多田さんが考える、今からイノベーションを起こしていくための核というか、哲学というか、そうしたものを教えてください!

多田

イノベーションを起こす……。全ての人が、自分が本当に欲しいものを実は知らないということが根幹にあると思っています。人に、「困っていることはなんですか?」と聞いても、多分、本当に困っていることは出てこないで、もう少し表面的な話になってしまうと思います。そう考えると、本人でも気がつかない「本当に困っていることをかなえてあげた時」に多分、恐ろしくイノベーションが起こるんですよね。極端なことを言うと、解決するまで「困っていることだったかどうかも誰も分からない」くらいのことが、イノベーションを起こすのではないかという感じです。

例えば、1週間のレシピで考えてみましょう。食事のレシピは、テクノロジーを使って、自動で1週間分考えてほしいじゃないですか。でも、人は途中で違うメニューをつくりたくなる。そうして違うメニューをつくった時も、最初の想定とは違う残りの野菜の消費期限を自動的に教えてほしい。そういうふうに自動で適正に軌道修正してほしいじゃないですか。そしてそういうことを永遠に繰り返しながら、足りない野菜などを朝、自動的に届けてくれたら最高だと思いませんか。それを、今は、人が「なんとなく」でこなしていますよね。でも本当は、その「なんとなく」を深掘りすると、「実はあなた、本当は困ってないですか?」ということが分かるのだと思います。

そう考えているので、「本当に困っているものを見つけた時にイノベーションは起こる」という気がします。

John

多田さんのイノベーションの哲学は、「本当に困っているものを見つける」。どうやって見つけるのでしょうか?

多田

とにかく、僕は深掘りするのが一番分かりやすいと思います。自分が一番近い問題であるかどうか、やはり深掘りできるかどうかで決まると思います。要は自分の興味ですよね。興味ないことは愛せなくて深掘りもできないと思います。

John

興味から体験に入るということですか?

多田

興味があるから、「どうしても何とかしてあげたい。なんでなんだろう」と考えていくのだと思います。

僕の信念として、「人はみんなバカじゃない」という定義があります。誰しも、それなりに努力していて、それなりにやっているにもかかわらず解決されていないことがあるんです。すなわち、誰もが本質的課題に行き当たらずにその手前側を解決しているだけなのではないかと。だから、「これは本質的課題じゃない」という定義を置いてあげて、この本質的課題を探しに行く。見つかる時もあれば、見つからない時もあるとは思うのですが。

あとは、どういう社会にしたいかという思いですよね。いろいろな概念があり、考え方や視点もさまざまな中で、本当に、自分が、他のみんなが幸せに生きるためにはどうしたらいいのかっていうことを考える……。

「絶対にこういう社会ができれば、幸せになる」という信念が持てるものに関しては、人は投資できると思います。きっと、もうかるもうからない、はやってるはやってないでビジネスをしていくのではなく、「本質的に人間は何に困っているのだろう。それを解決しよう」というのがイノベーションではないかと思います。例えばUberもそうじゃないですか。Uberのイノベーションはシンプルですが、とてもイノべーティブだと思います。

John

Uberで一番すごいと思うのは、「win-win-win」になっていることです。Uberもwinでパッセンジャーもwin、ドライバーもwinですからね。

多田

全員がwin-win-winになるためには、そういう本質課題を解決して「三方よし」が可能なんだと思います。

John

三方よしの真ん中に課題があって、みんなで解決しようとしていますからね。

多田

それが本質課題ではなくて、単に例えばUberよりも利用勝手の良いアプリケーションをつくって、ドライバー還元を増やそうとした瞬間に、三方よしにはならなくなってしまいますよね。それは多分、どちらかだけを有利にすることになってしまいます。

John

お金の価値観も不思議なものですよね。

多田

もうかるように他社よりたくさん売ろうとしたり、とにかく値段を下げたりすると、三方よしではなくなってきます。そして利益が無くなってくると、ユーザーに対して良いものを提供できなくなるなど、何かしら負の要素が出てきてしまいますよね。

要はみんなが同じ方向を向けなくなってしまうということです。でも、真ん中に課題がある限りは、みんな同じ方向を向いて気持ちよく仕事ができるということですから。イノベーションというのは、気持ちよく仕事をするための、一つの本質課題をどのように解決するかということなのかもしれないです。

John

多田さんそれはすごく素晴らしいですね。「win-win-win」で真ん中に問題があるというのは。

今日は、多田さんとお話しさせていただくことができて、本当に良かったです。「win-win-win」なビジネスモデルをつくらなければ、と改めて思います! ユーザーだけではなく、関わる人全てにメリットを与えるビジネスをつくらないと長続きしないと、僕は思っています。多田さん、愛りがとうございます!

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年5月31日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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大型設備投資の際の資金調達方法

書いてあること

  • 主な読者:事業のための設備投資を検討している経営者
  • 課題:具体的な資金調達方法を知りたい
  • 解決策:借り入れや社債の発行などによる社外の外部調達手段は選択肢が豊富。社内で調達するより多額の金額を調達できる

1 設備投資資金の調達方法

資金調達の方法を検討する際のポイントには次のようなものがあります。それぞれの資金調達にはメリットとデメリットがあります。資金調達をする目的やその時々の金融情勢を考慮した上で、手段を選ぶようにしましょう

  • 誰から資金調達するのか?
  • どれくらいの期間(短期・長期)
  • 何の目的(設備投資、運転資金など)
  • どれだけの量(金額)

ここでは、調達額が大きくなる設備投資資金を想定します。社内からの調達、社外からの調達の双方に触れますが、中心は選択肢が豊富で多くを調達しやすい外部からの調達のほうです。

2 誰から資金を調達するか?

1)社内から調達:内部資金

内部資金はこれまでの企業活動によって蓄積された資金であり、努力の結晶でもあります。代表的なものは、内部留保です。内部留保は、利益準備金などとして企業に留保された資金であり、株主への配当金を除いたものを示します。

この他にも、資金調達コストが掛からず、運用可能な資金を調達するという意味では、「遊休不動産の売却」「経費の削減」なども考えられます。

内部資金のメリットは、「調達に関わる事務が社内で完結すること」などです。一方、デメリットは、「基本的に既存の経営の延長線であるため、多額の資金を調達するまでに時間が掛かる」ことです。金額によっては、次の外部資金と合わせて調達します。

2)社外から調達:外部資金

外部資金は、金融機関、投資家、既存取引先など、社外から調達する資金です。主な方法としては、次のようなものが挙げられます。

  • 金融機関からの借り入れ(間接金融)
  • 新株や社債の発行、クラウドファンディング(直接金融)
  • 公的機関からの資金調達(助成金や補助金受給)
  • 債権の早期現金化(流動化)

外部資金のメリットは、「資力がある団体・企業・人から十分な金額を調達しやすく、内部資金に比べて調達までの時間が掛からないこと」「大手金融機関と取引することは一定のブランドにつながること」です。一方、デメリットは、「調達の手続きが社内で完結しないため交渉や事務の手間が掛かること」です。

3 金融機関からの借り入れ(間接金融)

1)間接金融とは

資金の出し手(この場合は、預金者)と資金の取り手(資金を調達する企業、以下同じ)の間に金融機関を挟むことから、「間接」とされる資金調達の方法です。多くの企業にとって最も一般的な資金調達の方法でしょう。

資金の取り手は、資金調達時に貸し手の金融機関のみを交渉相手とすればよいため、比較的手間が掛からないのがメリットです。一方、資金調達時の条件が資金の取り手と金融機関の力関係に左右されるというデメリットがあります。

金融機関からの借り入れは借入期間によって、短期借入金(借入期間が1年以内)と長期借入金(借入期間が1年を超える)に大別されます。

2)動産担保融資

動産担保融資とは、動産を担保とする融資で、担保となる動産によって借入期間が異なってきます。この方法では、資金の取り手の事業力に評価の重点を置いて動産の担保価値を評価するため、「経営能力は高いが不動産など一般的な担保が乏しい」という資金の取り手であっても、十分な金額の資金調達ができる可能性があります。

近年、法律の整備、融資の保証制度など支援施策の充実、評価ノウハウの蓄積によって、使い勝手が良くなってきている資金調達の方法です。

4 新株や社債の発行(直接金融)

1)直接金融とは

投資家や企業の関係者などの資金の出し手から直接資金を調達するため、「直接」が付く資金調達方法です。返済までの期間は、長期間または事実上無期限です。一方で、直接金融による資金調達に当たって会社法などの法令に基づく義務が資金の取り手に課されることから、調達コストや管理の手間が掛かります。

2)新株の発行(増資)

資金の取り手が新たに株式を発行(増資)し、投資家、自社の経営者や取引先といった関係者などに引き受けて(購入して)もらう資金調達方法で、多額かつ長期の資金を必要とする際などに利用されます。この方法では、返済期限の定めがない資金の調達が可能です。一方、資金調達時やその後に株主管理の手間やコストが掛かったり、経営に介入されやすくなったりします。

主な新株の発行による資金調達方法は次の通りです。

1.縁故募集

発行した株式を、資金の取り手の経営者や取引先などの関係者(縁故者)に引き受けてもらう資金調達方法で、一般的な直接金融による資金調達の方法です。引受先を限定するため、株主管理の手間やコストが比較的少なくて済み、元来から信頼関係がある先が株式を取得することから、経営への介入も抑えることができます。

一方、機関投資家や不特定多数の投資家への割り当てに比べて、資金の出し手の資力が乏しい傾向があるため、多額の資金調達に向いていない場合があります。

2.ベンチャーキャピタル、中小企業投資育成株式会社への割り当て

発行した株式を、中小・ベンチャー企業への投資を専門的に行っているベンチャーキャピタルや中小企業投資育成株式会社に割り当てて資金調達する方法です。

資力がある機関が出資することから比較的多額の資金調達ができ、出資を受け入れた後に機関が派遣する専門家による支援が受けられる場合があります。一方、資金の出し手から一定の利益を出すことを要求される傾向があります。

3.事業会社への割り当て

発効した株式を、事業会社に割り当てる資金調達方法です。

大規模な事業会社から出資を受けることで、多額な資金調達ができ、また業務提携という形で人的支援やネットワークの共有など経営全般に影響を受けることになります。

4.不特定多数の投資家に割り当て

株式の購入を希望する不特定多数の投資家に対して、新株を割り当てる方法です。この方法は、証券取引所(金融商品取引所)への上場時に合わせて行われるのが一般的ですが、非上場の資金の取り手がこの方法で資金調達をするケースもあります(注)。

知名度や信用力がある資金の取り手であれば、特定の人・企業に偏らず、さまざまな投資家から多額の資金を調達できます。一方、株主管理の手間やコストが膨大で、資金の取り手が自社単独で勧誘する場合は、引受先を開拓するのにも手間やコストが掛かります。

(注)なお、証券取引所に上場していない企業の株式(いわゆる「未公開株」)については、当該株式の発行会社以外の企業が投資家に対して購入を勧誘することは、日本証券業協会の自主規制ルールに基づき、原則として禁止されています。

5.種類株式の発行による資金調達

ここまで紹介した方式で株式の発行による資金調達を行う場合、いずれの方式でもネックとなるのが「株主の経営への介入」です。

そこで考えたいのが、種類株式の発行による資金調達です。種類株式は、剰余金・残余財産の配当(配分)・議決権の行使など株主の権利に関して標準的な地位が与えられている普通株式と異なり、「配当が優先的に行われる代わりに議決権の行使が制限される」「1株当たりの議決権が普通株式の10倍」など標準的な地位にない株式のことをいいます。

この種類株式を発行することで、「資金調達はしつつ、経営への影響を抑える」といった資本政策が可能となり、資金の取り手は事業の幅を広げつつ経営の自由度を維持することができます。資金調達を考える際の選択肢の1つとして考えてみてもよいでしょう。

3)社債の発行

資金の取り手が新たに債券を発行し、投資家、自社の経営者や取引先といった関係者などに引き受けて(購入して)もらう資金調達方法で、新株発行と同様に多額かつ長期の資金を必要とする際に利用されます。一種の借り入れであり、定期的な利払いや一定期間後に返済することが義務付けられている点が、新株の発行と異なります。

金融機関からの借り入れと比較すると、資金の取り手が金利や返済期間などの条件を任意に決められます。一方で、調達や管理のコスト・手間が掛かり、資金調達後の条件変更も困難です。

1.発行される社債の種類

資金の調達に際して発行される社債の種類には、次が挙げられます。

  • 普通社債(SB、事業債)
  • 新株予約権付社債(WB、ワラント債)

普通社債(SB、事業債)とは、利回りと満期における元金の返済を約束した社債です。

新株予約権付社債(WB、ワラント債)とは、普通社債に新株予約権が付加された社債です。新株予約権は一定の期間内に一定の価格で、所定の数量の株式を購入できる権利です。新株予約権の権利行使時に、新株の払込価額を社債金額で払い込む、つまり代用払込が認められる場合は、旧来の転換社債(CB)と同様の社債(転換社債型新株予約権付社債)になります。

2.調達方法:少人数私募債

50人未満の投資家や企業などに対して、資金の取り手が社債の購入申し込みの勧誘を行う調達方法です。法的な義務が少ないため、調達や管理の手間が少なくて済み、調達コストを抑えられます。一方、調達に当たっては法的な義務を限定するための要件が厳しく、対象者数が限られるため、多額の資金を調達しにくい傾向があります。

3.調達方法:公募債

不特定多数の投資家や企業などに対して社債の購入申し込みの勧誘を行う調達方法です。少人数私募債に比べて勧誘人数や募集金額の制約が少ないため、多額の資金を調達しやすい傾向があります。一方で、資金の取り手に課される法的な義務が多く、調達や管理の手間やコストが掛かります。

4)クラウドファンディング

インターネットを通じて資金の取り手が案件を提示し、その案件に関心を持った不特定多数の人から小口の資金を集める資金調達方法です。

クラウドファンディングは資金の出し手に対する金銭的な対価が発生しない「寄付型」、製品・サービスを提供する「購入型」、金銭的な対価が発生する「金融型」の大きく3つに分類されます。また、金融型には、投資(ファンド)型、貸付(融資)型、株式投資(エクイティ)型があります。

設備投資の資金調達は、比較的多額の資金が調達しやすい金融型のクラウドファンディングで行われることが多いようです。また、新店舗の内装・機器など必要な資金が少額で、顧客づくりを資金調達と並行して行い、かつ市場調査も兼ねて実施する場合は、サービス利用券などを対価とする購入型のクラウドファンディングで資金調達することがあるようです。

5 公的機関からの資金調達(助成金や補助金受給)

1)企業の資金調達を支援する施策の活用による資金調達

官公庁、政府系金融機関、地方自治体などの公的機関では、「中小企業の経営支援」「特定産業の育成」「地域経済の振興」などの政策課題を解決するために、企業の資金調達を支援する施策を講じています。

2)政府系金融機関などからの融資

日本政策金融公庫など、政府系金融機関や公的機関が提供している融資を利用して資金調達する方法です。融資を受けるに当たっては、公的機関に直接申し込む方法と、金融機関を通じて申し込む方法があります。

この方法は、金利が金融機関より低い、返済期間が長期、担保が不要なことが多いという傾向があります。一方、資金調達に当たって多量の書類をそろえる必要がある、融資の要件が厳しい、融資中の条件変更(金利の引き下げ、返済期間の延長など)が困難であるという傾向があります。

3)公的機関による債務の保証

全国各地に設けられた信用保証協会などの公的機関が、資金の取り手の融資返済の保証を行う制度です。この制度を利用して債務の保証を受けた資金の取り手に万が一の事態が生じ、返済が滞った場合は、公的機関が資金の取り手に代わって金融機関に返済します(信用保証協会の保証割合は原則として借入金額の80%)。公的機関による債務の保証そのものに資金調達の機能はありませんが、資金調達に当たっての信用補完に活用できます。

信用力のある第三者の保証を受けられることから、金融機関からの融資が受けやすくなります。一方、保証料を支払う必要があるため、普通の金融機関の融資に比べて調達コストが高くなります。

4)省庁、地方自治体など公的機関が実施する助成・補助制度

公的機関が実施する助成・補助制度を活用した資金調達方法です。省庁、地方自治体、官公庁の外郭団体などでは、一定要件を満たした企業に対して政策目標を達成するために助成金や補助金の交付を実施しています。

返済が不要な場合が多いため、有利な資金調達といえます。一方で、提出する書類を整える必要があるなど手続きが煩雑であることに加え、資金の使途が厳しく制限されていて違反時にはペナルティー(助成金・補助金の返還など)が科されます。また、補助金の場合は、交付の前に支出が発生するため、キャッシュフローの検討が必要になります。

6 資産の証券化

1)概要

資産の証券化とは、オリジネーター(原債権保有者)の保有する資産を特定目的会社(TMK、SPC)などの「ビークル」に譲渡し、ビークルが資産の受益権を証券として投資家に販売することにより現金に換える方法です。資金調達の多様化や資産のオフバランス化を進める上で、有力な手段といえます。

2)資金調達の多様化を図ることができる

オリジネーターからみると、資産の証券化には資金調達を多様化できるというメリットがあります。例えば、優良な不動産を持つ企業であれば、証券化を利用することで新たな資金調達の手段を確保できます。

証券化の対象となる資産は、安定的にキャッシュフロー(賃貸収入)を生み出す物件であることが必要であり、具体的には、「賃貸マンション」「小売業の店舗」「工場」「本社ビル」などが挙げられます。

3)資産のオフバランス化を図ることができる

資産を貸借対照表から外すことを「オフバランス化」といいます。資産のオフバランス化により、「総資産利益率(ROA)」「株主資本利益率(ROE)」「自己資本比率」などが改善します。

7 リース取引

1)リース取引とは

リース取引とは、貸手(リース会社)が借手の代わりに特定の物件を購入し、双方が合意した期間(リース期間)に当該物件を使用する権利を借手に与え、借手は使用料(リース料)を貸手に支払う取引です。現在では、金融機関からの借入とは異なる、設備投資資金調達の方法として一般的となっています。

リース取引に適した物件として、次のものが挙げられます。

1.技術革新が急速に進んでいる物件

日進月歩で技術革新が進む物件は、すぐに高性能な製品が開発されるため、数年で取り換えが必要になる場合があります。リースであれば、リース期間満了時に取り換えが行われます。

逆にいえば、技術開発が成熟していて、すぐに大きな技術革新が予想されないものは購入したほうがよいともいえます。

2.高額な物件

高額な物件は一度に支払うのが難しいため、支払いを分割できる方法が望ましく、金額が大きければ金利変動のリスクも大きいため、金利変動に影響されないリースが適しています。支出額が一定であるため、金利上昇によるコスト増を避けることができます。

また、リース期間と物件の使用期間が一致しているため、設備投資資金の支払いと回収のタイミングも近くなり、資金の収支バランスもよくなります。

2)リース取引の分類

1.ファイナンス・リース取引

リース取引を事実上中途で解約できないリース取引であり、借手が物件に関わる費用(物件代金・金利・固定資産税・保険料など)を実質的に負担することになります。

当該物件は購入した場合と同様に使用できるため、実態は賃貸借というより資金調達の性格が強いといえます。

原則売買処理(オンバランス取引)であり、減価償却費を通じて、全額損金処理が可能です。

2.オペレーティング・リース取引

リース期間満了時の物件価値(残価)の査定に基づいて行われるリースであり、当該物件の元本部分から残価を差し引いて、リース料を算出するリース取引です。リース期間の自由な設定が可能であり、中古品市場が活発で一定の相場がある設備(例:自動車)の導入などに適しています。

賃貸借処理(オフバランス取引)であり、支払リース料を通じて、全額損金処理が可能です。

8 設備投資資金調達の際の留意点

1)設備投資資金の調達

設備投資の回収には長期間を要し、この間は資金が固定化するので、それに見合った調達方法を選択する必要があります。金利などの調達コストや自社の財務状況、業績見通しを照らし合わせ、自社に最適な方法を選択するようにしましょう。また、設備投資はタイミングがずれると想定していた効果が得られないこともあるため、調達の容易さ(スピード)の観点からも検討が必要です。

2)設備投資資金調達の手順

1.必要資金の算定、調達方法の検討、返済方法・借入期間の推計

設備計画、資金計画に基づいて必要資金を算定します。次に、社債、金融機関からの借り入れ、リースなどの具体的な借入方法を検討します。社債による調達は中堅・中小企業には困難な場合が多いため、金融機関からの借り入れが中心となります。また、設備投資後の予想利益や減価償却費を考慮しながら、返済方法や借入期間を推計します。設備投資をすると、メンテナンス費など追加の運転資金が必要となる場合もあるので、併せて検討する必要があります。

2.担保の確保

長期借入には確実な担保が必要です。担保には、土地・建物などの不動産を充てるのが一般的です。こうした物的担保と併せて企業の代表者などの人的担保、つまり個人保証が必要となる場合があります。個人保証の他に、親会社などによる法人保証もあります。

3.資金調達コストの検討と借り入れ時期の見極め

長期借入では資金調達コストがかさむため、コストの抑制が重要です。金融機関の貸出金利は、その時々の金融情勢、業績、担保、借入金額、借入期間、取引状況などで決まります。従って、金融緩和期(低金利の時期)を選ぶなど設備投資のタイミングを考えることが大切となります。

3)適切な情報開示が不可欠

前述した、いずれの資金調達方法にも共通するのは、「資金の取り手の信用力が高く返済・リターンが見込める、または資金の取り手の資金需要と政策目標に合致する案件では、資金調達が有利になる」という点です。そして、見込める・合致すると判断する有力な材料が、資金の取り手による積極的な情報開示です。

資金の取り手の情報開示の度合いが高い場合、資金の出し手がリスクやリターンの見極めがしやすくなります。そのため、資金の取り手は資金調達に当たって有利な条件(低金利、多額の投融資など)を資金の出し手から引き出しやすくなります。

逆に情報開示の度合いが低い場合は、リスクとリターンの見極めが難しくなりがちなため、資金の出し手は慎重になります。そのため、資金の取り手は不利な条件で資金調達をせざるを得なくなり、時として資金調達そのものが失敗する場合があります。

具体的に資金の出し手に提示する情報としては、自社の現状、財務データ、事業計画、市場データなどが挙げられます。

以上(2019年5月)
(監修 合同会社gtra and company 代表執行役 公認会計士 朝倉厳太郎)

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画像:pixabay

事業継続に必要な競争戦略

「こんな商品が世の中にあったら売れるだろうな」

経営者は、商品・サービスに関するアイデアをたくさん持っていることでしょう。しかし、素晴らしいアイデアがあっても、考えているだけでは価値はありません。さらに、アイデアを形にしても単発で終わっては、得られる利益は限定的です。

つまり、収益力の高い事業を継続するためには、アイデアを基に「ビジネスモデル」を練り上げることが重要なのです。

1 ビジネスモデルを再構築する

ここではビジネスモデルを、「お客様に満足を提供しながら企業に利益をもたらす仕組み」と定義してみましょう。例を挙げると、次のようになります。

ビジネスモデルの例を示した画像です

優れたビジネスモデルを構築すれば、収益力の高い事業を継続することができます。中小企業は「長時間働いても不安定」という状態に陥りがちですが、ビジネスモデルを工夫すれば、“顧客満足”と“企業収益”を両立することが可能です。

特に、ITを活用すれば容易に複合的なビジネスモデルが構築できるようになっています。最初は小さく始めた事業でも、短期間で大きく成長することが夢ではないかもしれません。

2 ニッチ戦略で市場ナンバーワンの地位を得る

中小企業が生き残るためには、ビジネスモデルの構築に加えて、競争戦略を考えて実行することが重要です。競争戦略とは、「競争環境の中で自社の強みを生かし継続的に収益を上げる方策」です。

シリーズ第3回「競争優位の戦略『ポジショニングとブランディング』」で解説した「ポジショニングマップ」の考え方に加えて、市場をさらに細分化して組み立てるのが「ニッチ戦略」です。大企業など他社が狙わない市場の「隙間(ニッチ)」を狙い、そこで相対的な競争優位性を確保して、収益を狙う戦略です。

競合が少ない市場を選ぶことによって、市場ナンバーワンになることも夢ではありません。ここでは、自社の強みを生かしたニッチ戦略で収益を上げるための考え方を説明します。

ニッチ戦略は、次の3つのステップを踏むと具体化しやすくなります。

●ステップ1 自社の強みを洗い出す
あなたが、創業した頃を思い出してください。自分(または起業メンバー)の強みや特徴を意識して、それを生かした事業を始めたはずです。ところが年数が経過するうちに、こうした強みや特徴についてあまり意識しないどころか、忘れてしまいがちです。今こそ、自社の強み・特徴を再認識することで、ニッチなビジネスを構築することが可能です。

自社の強みや特徴を洗い出す際の視点は、次のようになります。

強みや特徴を洗い出す視点を示した画像です

実際には、これ以外にも多岐にわたる切り口があります。強み・特徴を洗い出すためのコツは、ホワイトボードや大きな紙を準備して、思いつくままに書き出していくことです。経営者が1人で考えるのではなく、従業員と一緒にブレインストーミングをするとたくさんの項目が出てきます。

また、自社の事業について社外の第三者の人にも話してください。「それってすごい強みですよ!」と、社内のメンバーでは気付かなかったことを指摘してくれることがあります。

●ステップ2 マーケットセグメンテーションによるターゲットの絞り込み
 ニッチ戦略立案のためには、市場を細分化して考えること(マーケットセグメンテーション)が有効です。BtoCの事業を例にとると、細分化する切り口は、「地域」「年齢」「性別」「価格」などがあります。

価格と年齢による細分化の例を示した画像です

さらにニッチな市場を想定するには、こうした属性情報だけではなく、「○○が好きな人」「○○したい人」「○○でこうなりたい人」(例:スポーツで健康になりたい)など、ライフスタイルや趣味嗜好などを加味した「コト発想」による細分化が有効です。

例えば、飲食店の場合は、利用するお客様の目的は「利用シーン」で分類することができます。飲食店の「利用シーン」と「業態」でセグメントすると、次のようになります。

価格と年齢による細分化の例を示した画像です

「コト発想」による細分化によって、特徴のある店をつくることが可能です。例えば、あるインド料理店は、ランチタイムは定額でビュッフェ形式の食事を提供、夜は主にミュージシャンを呼んでライブイベントを行うなど、特徴を打ち出すことで安定した売上を上げています。「インド料理」と「ライブ」という意外性のある組み合わせで、人気を博しているのです。

●ステップ3 強み・特徴×ターゲットで事業を構築
自社の強み・特徴を洗い出して市場を細分化し、ターゲットを明確にしたら、その2つを組み合わせた事業を構築します。そのための検討の切り口は、次のようなものが考えられます。

1.新商品・新サービスの開発

市場を細分化しターゲットを絞り込んだら、それに対応する商品・サービスを開発します。その際は、自社が持つリソースを活用できる分野が最適です。例えば、機械部品などの金属製品加工をしていた町工場が、その加工技術を生かして、若い女性向けのアクセサリーの製造を始めるなどです。

2.新たな販路の開拓

同じ商品でも、販売先を変えることで売上が伸びることがあります。例えば、機械を東南アジアへ輸出している企業が、アフリカ諸国の市場へ進出するなどです。

3.市場へ浸透させる

販売先(地域や対象層)を限定することで、その市場ではナンバーワンの地位を得る方法です。例えば、「○○の方限定でご提供します」といった販売方法です。


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3 サブスクリプションモデルのビジネスを組み立てる

ビジネスを、売上・収益の発生頻度の観点で見ると、「単発収入」と「サブスクリプションモデル(定額収入)」とに分類できます。

「単発収入ビジネス」は、単発的・一時的に発生するもので、飲食店など「お客様が欲しいときに商品・サービスを購入する」ものです。「サブスクリプションモデル」は、定期的に決まった金額が入るもので、会員制の英会話スクールなどのビジネスが該当します。単発収入のビジネスは、売上・収益に波があり安定しないことがあります。飲食店を例にとると、12月は忘年会シーズンで繁盛するのに2月や8月はお客様が少ない、といったことがあり、資金繰りに影響します。

それに対して、サブスクリプションモデルでは、定期的に一定の売上が見込めます。分かりやすい例は、有料アプリの月額課金です。アプリを販売している人(企業)には、毎月会員数に応じた収入が入ってきます。

サブスクリプションモデルだけを手掛けている場合は、不安定な収益をカバーする固定収入のビジネスを導入することが有効です。

1)サブスクリプションモデルのメリット

サブスクリプションモデルは、「来月は○○円入る」と、“勝ちが分かった状態”でビジネスを進められることが最大のメリットです。

また、「顧客が増えてもコストがさほど変わらない」ことで、スケールしやすくなります。アプリの月額課金を例にとると、利用者が10人から1000人に増えても、サービスを提供する側のコストはそれほど変わりません。売上が増えてもコストは増えないので、顧客数の伸びに比例するように収益が増えるといえます。

2)サブスクリプションモデルは工夫次第で実現可能

実際にあるサブスクリプションモデルの事例を挙げると、次のようなものがあります。

  • 観葉植物レンタル
  • 月額料金制のWeb制作業
  • 民間資格の会費(家元ビジネス)
  • バーチャルオフィス
  • スポーツジム
  • 会員制勉強会(セミナー)
  • フランチャイズシステム
  • 定額課金制セキュリティーシステム

「当社の事業だとサブスクリプションモデルは無理……」と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、どんな業種業態でも工夫次第で構築可能です。

ある経営コンサルタントは、従来はマンツーマンでコンサルティングをしていましたが、クライアントが増えると売上に限界があることに気付きました。そこで、経営者を対象とした会員制の通信講座を構築し、多数の会員を確保することに成功しています。会員は年会費を支払うことで、定期的に経営に関するノウハウや情報が送られる他、セミナーに参加することもできます。

また、サブスクリプションモデルになじまないように思える飲食店でも、お客様が会費を支払えば常に割引価格で食事ができるシステムや、会費制の料理教室などが考えられます。

3)サブスクリプションモデルを構築するためのヒント

サブスクリプションモデルを構築する場合、現状とかけ離れた事業を新たにスタートするのではなく、既存のリソースを活用した内容にするほうが、早期に実現できる上、ブランド力を損なうこともありません。

サブスクリプションモデルを生み出すために、次のような観点で発想してみてください。

1.会費制にできないか

お客様から定期的に会費をもらい、商品やサービスを提供する方法がないか検討しましょう。

独自のノウハウやコンテンツがあれば、月額1000円など会費をとって定期的に提供する方法があります。例えば、スポーツ用品店が、定期的に月額制のランニング教室を開催するなどです。

ノウハウやコンテンツは、インターネットの活用で、広い範囲からお客様を確保できる可能性もあります。ある士業の人は、資格試験に受かるコツについてセミナー動画を撮影し、月額制によってWebサイトで配信しています。

2.お客様をコミュニティー化することはできないか

自社の強みや特徴を生かして、お客様をコミュニティー化する方法が考えられます。例えば、ケーキ屋さんがお菓子作り教室を定期開催すれば、一定数のお客様を生徒として確保できます。参加料金の収入が固定的に入るだけではなく、お店のファンを増やす効果も期待できます。

3.売り切りではなくレンタルはできないか

従来販売していた商品を、レンタルにする方法です。販売すれば10万円の商品を、月額5000円でレンタルするといったやり方です。「所有するよりも借りたほうが何かとお得」と考えるお客様が想定される商品であれば、検討してみてください。

サブスクリプションモデルは、最初の仕組みづくりに高いハードルがありますが、回り始めて損益分岐点を超えると、事業の安定につながります。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年5月22日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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個人情報の取り扱い実務に携わる従業者の監督

個人情報の漏洩事故の調査データを見ると、漏洩事故の多くは、従業員や派遣社員等の関係者の不注意により発生しています。従業員が顧客情報を持ち出してライバル企業に転職したり、顧客情報を不正に取得して名簿業者に売却したりするといった「故意」による漏洩の場合、1事故当たりの漏洩情報の件数が、不注意による漏洩の場合よりも格段に多くなる傾向にあります。

そこでこの記事では、従業員や派遣社員を監督するポイントについて見ていきます。

1 「従業者」の監督

個人情報の保護や情報セキュリティについて考えるときに、第一に注意すべきは「従業者」という概念です。「従業員」や「社員」ではなく、「従業者」という概念を用いるのは、情報セキュリティの見地から、会社で働いている者の全てを監督の対象とするためです。

個人情報保護法ガイドライン(「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」)は、「従業者」を次のように説明しています。

「従業者」とは、個人情報取扱事業者の組織内にあって直接間接に事業者の指揮監督を受けて事業者の業務に従事している者等をいい、雇用関係にある従業員(正社員、契約社員、嘱託社員、パート社員、アルバイト社員等)のみならず、取締役、執行役、理事、監査役、監事、派遣社員等も含まれる

一般的に、「従業員」「社員」という言葉は雇用契約を締結している「労働者」の意味で用いられていますが、情報漏洩を防ぐためには、「労働者」だけでなく、社内で働いている者全てにルールを守らせる必要があります。このため、役員(取締役、執行役、理事、監査役、監事等)や、派遣社員も含めた概念としての「従業者」が用いられます。

2 「人的安全管理措置」を講じる

「従業者」に対し、情報漏洩を防ぐためのルールを周知し、ルール順守を誓約させ、必要な教育を行うことを「人的安全管理措置」や「人的情報セキュリティ」といい、これを講じることが企業には求められます。詳細については、「4つの安全管理措置の概要と押さえておくべきポイント」で紹介しているので、参考にしてください。

3 社内規程で秘密保持に関する記載を設ける

役員なら役員規程、従業員なら就業規則や個人情報保護規程といった社内規程に、個人情報等の秘密保持(個人情報の不正利用禁止や持ち出し禁止等)についての記載を設けます。

ほとんどの企業は、就業規則の服務規律に個人情報等の秘密保持についての記載があるかと思いますが、役員規程に記載のないことがあるので注意が必要です。なお、個人情報保護規程が整備されていれば、個人情報保護規程の適用対象者を「従業者」とすることで、役員にも適用できます。

社内規程は社内ルールであり、個別の合意ではありませんから、「従業者」に周知して明確に意識させることが必要です(これが「教育」の一環にもなります)。

なお、就業規則は労働基準法第106条により周知が義務であり、周知しない就業規則は無効と解されています。従業員(労働者)については、服務規律に違反した場合には懲戒処分ができるとされています。

ただし、懲戒処分は制裁としての「罰」であるため、刑事法における罪刑法定主義と同様の考え方で、いかなる場合にいかなる罰(処分)がなされるかについて、事前に就業規則で定めておくことが必要であると考えられています。従って、就業規則には、どのような行為がどのような懲戒処分(戒告・けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇(または諭旨退職)、懲戒解雇等)に該当するかを明確に記載しておくべきです。

(社内規程の確認ポイント)

  • 社内規程に、個人情報等の秘密保持を求める服務規律の規定があるか。
  • 役員に対しても個人情報等の秘密保持を求める規定があるか(役員規程、個人情報保護規程等)。
  • 社内規程は周知しているか。
  • 情報漏洩行為が懲戒事由に該当することが就業規則に規定されているか。


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4 秘密保持誓約書の締結

社内規程は「包括的合意」といえますが、それだけでなく、個別の合意もして、情報セキュリティの意識を高めておきたいところです。

個別の合意は、「秘密保持契約書」といった契約書(会社側と従業者が共に署名なつ印するもの)でも、「秘密保持誓約書」といった誓約書(従業者の署名なつ印のみ)でも、その効果に大きな違いはありません。一般的には、秘密保持誓約書(以下「誓約書」)を作成することが多いでしょう。

このような誓約書は、入社時に取り付けることが多いでしょうが、社内の情報セキュリティを重視する意識を高めるためには、情報を取り扱う担当者になったときや、役職者に就任したとき、退職時(退職後に顧客情報を返却し、悪用しないという誓約書)など、要所で得ておくことが望ましいといえます。

また、「秘密情報を守ります」というように、秘密保持の対象を抽象的にせず、個人情報、マイナンバー、顧客情報、営業秘密などの重要情報を区別して明確にしておくべきですし、退職後も有効であるという条項を入れておくとよいでしょう。

なお、誓約書は、例えば退職時にいきなり要求すると反発する従業者が出てくることも考えられます。就業規則等の条項に、一定の場合に誓約書を求めることがある旨を明記しておき、社内ルールとして要所で誓約書を取り付ける慣行を確立しておけば、従業者に対して誓約書の提出を求めやすくなります。

5 派遣社員を使用している場合の注意点

派遣社員を使用している企業(派遣社員の派遣先)は、注意が必要です。

派遣先にとっては派遣社員も「従業者」ですから、派遣先における個人情報保護のための社内規程を派遣社員に順守させることは問題ありません。ただし、派遣先が、違反行為に対して懲戒処分をしたり、誓約書を提出しないからといって不利益扱いをしたりすると、それが違法と判断される可能性が高くなります。

派遣社員と雇用契約を結んでいるのは派遣元であって、派遣先ではないので、懲戒等の処分ができるのは派遣元だからです。

 そのため、派遣社員を使用している場合、派遣先は、派遣元と秘密保持契約(NDA)を締結し、その中に、派遣元に誓約書を提出した者だけが、派遣社員としての派遣が許されるといった条項を入れておく必要があります。

派遣社員を利用している場合の関係を示した画像です

6 教育・研修の記録

個人情報保護や情報セキュリティに関する研修を実施した場合は、実施簿や研修のテキスト、受講者のアンケートなどを保存しておくとよいでしょう。

これから取引しようとする相手に対し、就業規則に秘密保持の規定があるか、従業者から誓約書を取り付けているかといった事項だけでなく、十分な社内教育が実施されていることを確認できる資料の提出を求める企業もあるからです。

次回は、従業員の教育・訓練や「モニタリング」などについて紹介します。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年5月17日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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第7回 シリコンバレー流スタートアップイベント参加の流儀/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

皆さま、こんにちは。いつも私のりそコラのコラムを読んでくださり、SNSでシェアしていただき、愛りがとうございます(愛+ありがとう)。

世界一のイノベーションの聖地であるサンフランシスコやシリコンバレーでは、毎日どこかでスタートアップイベントが朝から晩まで開催されています。前回のコラムでご紹介した「Startup Grind」もそのうちの1つですが、この他にもベンチャーキャピタル主催のスタートアップCEOトークやパネルディスカッション、アクセラレーター主催のデモデイ、著名弁護士事務所主催の医療機器イノベーションサミット、スタンフォード大学主催の無料のAIやブロックチェーンの勉強会など、とにかくさまざまなイベントが行われています。

日本でも各地域でイノベーションを起こそうと、スタートアップ支援イベントやミートアップイベントが行われています。開催が東京都内に集中していることは否めないものの、イベントが盛んになるのはとてもよいことだと思います。

さて、皆さんもスタートアップイベントに参加する機会があると思いますが、きちんと目的を持っているでしょうか。特に経営者は忙しい中、時間をつくって参加することになるため、“意味のある参加”にしなければなりません。そこで今月は、「シリコンバレー流スタートアップイベントに参加する際の流儀」について、私なりに書かせていただきます。

1 イベント参加前の流儀~選択~

まず、参加するイベントを決めましょう。皆さんが何を学びたいのか、誰と出会いたいのか、誰(起業家や投資家)の話を聴きたいのか。これによってイベントを選択するのが基本です。

先月のコラムで紹介したStartup Grindのような世界最大規模のイベントでは、8000人を超える起業家や投資家が世界中から集まります。登壇者のレベルもとても高いイベントです。自ら起業し、ユニコーン企業や大企業に育てた起業家や、今も現役で経営しているCEOなどが何十人もスピーカーとして名を連ねているのです。この事実だけでも、イベントは大いに見応えがあるし、大きな刺激を受けることが分かるでしょう。世界の著名なCEOたちと出会えるチャンスがあるイベントに行くことで、自分の目標を世界レベルで見据えることができます。そして何より、自分のマインドを変えることができるのです。

また、私もアンバサダーを務めている「Startup World Cup」(ペガサス・テック・ベンチャーズ主催)のようなイベントに参加するのもよいでしょう。Startup World Cupでは、全世界40地域でピッチ大会が開かれ、シリコンバレーで決勝戦を行います。そして、優勝チームには1億円相当の投資があります。会場では、世界で勝ち上がってきたピッチの達人であるCEOのピッチを生で聴けるので、将来の自分と照らし合わせることもできます。投資家の観点からも、世界のスタートアップの動向を理解することができるでしょう。

構想の段階を終えたシリコンバレーの起業家たちは、自身のスタートアップの実務で学んでおかなければならない重要な法務や財務の知識をイベントから仕入れます。さらに、一緒に事業を大きくしてくれるチームメンバーを見つけるためにイベントに参加する人もいます。とはいえ、イベントで出会った人を、そのときの“ノリ”だけでいきなりチームに入れるのはよくない場合もあるので、そのあたりは臨機応変に対応しなければなりません。

2 イベント参加中の流儀~質問、自己紹介からのアポ取り~

Startup GrindやStartup World Cupのような大きなイベント、50人から100人規模のミートアップ、30人規模の小さな勉強会など、イベントの規模はさまざまで、それに応じて参加目的も違ってくるでしょう。ここでは、シリコンバレーの起業家がイベントで、どのように振る舞っているかについて言及していきます。

シリコンバレーでは、イベントの規模の大小を問わず、起業家は登壇者に向かって手を挙げて質問をします。自分が知りたい質問でもあるし、会場の他の参加者のために質問をする人もいます。彼らは、質問をすることで自分の存在意義を示し、イベントの後に他の参加者から声をかけられやすくしているようにさえ見えます。そして何より、質問することで、登壇者に自らが話しかけやすくしているようです。

また、この点が日本と大きく違うのですが、シリコンバレーでは名刺交換を目的としていない場合が多くあります。連絡先の交換は、「後から『Linkedin』で探して、連絡するよ」くらいで済ませます。そして、相手と自分の時間を大切にする彼らは、その場で、次のアポを取ることもあります。「次回、コーヒーでも飲みながら私のスタートアップについて話したいのだけど、いつがよいですか?」とイベント最後にアポを取り、その場を去っていきます。

3 イベント参加後の流儀~ミーティングのための資料準備、次のステップは「今必要な人脈」の紹介~

アポが取れたら、家かオフィスに戻り、ミーティングに備えてピッチデック(投資家用のプレゼン資料)を修正します。投資家ではなく、協業のため、CTO候補獲得のため、社員獲得のためのミーティングならば、違う資料を準備するでしょう。

シリコンバレーでは既にペーパーレスなので、わざわざプリントアウトして資料を持参することはありません。自分のMacBookで、ミーティング中に説明しながら見せます。そしてミーティングの最後に、「今日の資料をメールするね」と伝えるのです。

こうして関係が出来上がっていくのですが、大切なのは人脈を紹介してもらうことです。「皆さんにとって今一番必要な人脈を紹介したい」と相手に思わせることができたら、ミーティングは100点満点です。シリコンバレーの起業家は、これを期待しているのです。

皆さんのイベント参加が成功するように、この「シリコンバレー流スタートアップイベント参加の流儀」を役立てていただければ幸いです。

いつも愛りがとうございます。森若幸次郎ことジョンがお届けいたしました。

以上

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働き方改革に【IT参謀】は必須です!〜GM総研 加藤さんに参謀1万人輩出計画を聞く〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、株式会社グッドマネジメント総合研究所(GM総研)の代表取締役 IT参謀である加藤利彦さんです。

●会社HP
https://www.gmsouken.co.jp/

“働き方改革元年”とはいうものの、中小企業には専門家がおらず、導入に踏み切ったIT関連のシステムが本当に必要なのかを正しく判断することができません。それに、そもそも価格が適正なのかも分からないといった問題を抱えています。

大企業でも、情報システム歴が長いベテランの存在が、かえって生産性を低下させてしまうことがあるようです。ベテランは知識こそ豊富ですが、現場からは離れているため、現場が本当に求めているシステムを選定することが難しいようなのです。

こうしたITにまつわる課題の解決に尽力し、本質的な業務改革を目指しているのがGM総研の加藤さんです。

1 いきなり怒ってしまった10年前

今回、インタビューをしている中で、加藤さんは「10年前、(杉浦さんに)社内見学会に来てもらったとき、『なんで挨拶もなにもないの? どうなっているの?』と杉浦さんから怒られました」と言われ、懐かしい出来事を思い出しました。当時、加藤さんは株式会社EC studio(現:Chatwork株式会社)の常務取締役で人事部門を管掌していました。私が初めて加藤さんと出会ったのは、この社内見学会の出来事から遡ること数年前、加藤さんがまだ20代半ばの頃だったと記憶しています。

そのとき私が怒った理由は、常識の違いからでした。当時の加藤さんの会社には、電話も、FAXも、コピー機も、資料関係のファイルもありませんでした。当然、名刺に電話番号が書かれておらず、「会社としてあり得ない」と感じる状態でした。今でこそ多くの会社でペーパーレスが進みつつありますが、10年前、あそこまでなにもない状態は、その頃私が勤務していた会社とはかけ離れていて、まさに働き方の【常識】が違っていたのです。

この点が腹落ちしないまま、半日ほど社内見学会に参加しましたが、やはり驚きの連続でした。私の常識では、訪問時には挨拶するのが当たり前です。しかし、ドアを開けて『こんにちは!』と入室しても、誰からも返事がなく、顔をこちらに向けることもなく、社員は皆、パソコンに向かっているだけでした。『なんだ!』と、思わず怒ってしまいました。

当時のその会社は、加藤さんを含め、創業メンバー全員がいきなり起業して参集していました。その頃のメンバーにとって、過去から脈々と続いている企業形態の常識は【非常識】と映っていたようです。そして、「不必要なことはやらない」と決め、ここからコミュニケーションの新しい在り方にたどり着きました。常識を変えることには勇気がいりますが、当時のメンバーは、企業の在り方や、運営についての経験値が低かったため、逆にダイナミックな改革ができたのかもしれません。

2 IT活用の大切さを広めるためにリアルの世界へ

我々から見ると【非常識】な世界で働いていた加藤さん。当時、加藤さんの本業は、ITツールの販売やシステムの導入支援を、インターネット上で行うことでした。現在はかなり普及してきたGoogle社のG Suiteの、日本最初の販売パートナーにもなっています。

先ほど紹介した「10年前の社内見学会」で、私はITツールの必要性を感じました。ちょうど加藤さんも講演などの活動が活発化していました。【リアル】な活動を通じてさまざまな気付きやニーズを得る中で、加藤さんは新しい道に進むことを決めたのです。

子会社を設立すると同時に円満に独立し、GM総研の前身となるチャットワークアカデミーを設立しました。加藤さんは、クライアント企業に実際に赴いて【リアル】に触れつつ、ITツールの導入支援、活用コンサルティング、講演、ITツールの開発を主たる事業として活動していくことになります。

3 IT参謀計画を考え始めたワケ

実際に加藤さんがIT活用コンサルティングで対応してこられた企業から、お客様の評価や声を集めてみました。

1)広告代理店の声:100人規模

これまで、社員に伝わっていると思っていたことが実は伝わっていないことが分かりました。優れたメンバーが集まっているのに、ベクトルが合っていないために効率が悪く、意思疎通も図れず、トラブルの連続でした。

ITを上手に使って、社内に情報発信することで自分たちの進むべき道を整理することができました。社員などからのフィードバックを反映していくうちに、組織全体のまとまりが明らかに強くなりました。そこから大きくスケールし、大幅な増収を達成しています。

リアルは確かに必要です。しかし、それに固執せず、IT活用による利便性の享受も重要であると感じます。

2)複数店舗ある美容院の声:7店舗

教育カリキュラムをオンライン化できたことで、1人当たり約200時間かかっていた教育・研修を、約60時間に短縮することができました。教育・研修に必要だった交通・宿泊費を大幅に削減できました。「スタッフが自分で勉強してくれる、しかも成長スピードが速い!」という、好循環が生まれています。リアルな教育は、デジタルでは伝えられない難しいことを重点に教えるものと位置付け、リアルとデジタルを使い分けています。

今までの当たり前(常識)が、非常識となった事例といえます。場所、移動コスト(時間と交通費)を圧縮できるのもIT化の恩恵と感じます。

3)ロジスティックの声:1600人規模

日本各地に倉庫があるため、幹部の交通・宿泊費だけで年間3000万円のコストがかかっていました。そこで、テレビ会議やチャットなど、ITでコミュニケーションを上手に取ることで現場に行く回数が半減し、年間1500万円のコストダウンに成功しました。そして何より嬉しかったのは、家族が待つ家に頻繁に帰れるようになったことです。

社長、事業責任者、SVの方々が全国を飛び回ることも多いですね。これから到来する5Gの世界観では、さらに移動が激変する可能性を感じます。

4)経営コンサルの声:100人規模

紙の資料が多く、管理が非常に大変でした。Googleの機能を使うことで、紙をテキストデータ化し、クラウドで管理するようになりました。管理が楽で、検索すればすぐ見つかるようになったのです。一般的に、物を探す時間は年間160時間あるそうです。100人なら1万6000時間となります。これが半減し、それを人件費で換算したら、すごい効果になります。また、紙を使うことがほとんどなくなったので、コピー・インク代も年間500万円ほど削減できています。

社員同士で『あのペーパーってどこにあるの? ないなら印刷して!』という会話が本当に無駄に感じます。見えないコストとしては、これだけ都心の家賃高騰の中、なにも生まない書類専用のロッカー。私の懇意な会社でもクラウドシフトを行い、事務所の有効面積が30%以上空きスペースが増え、事務所移転を考えなくて済むようになりました。

このような事例が増えていくにつれて、加藤さんは、IT活用コンサルティングを自身の会社の限られたリソースだけで展開し、ノウハウを自社だけのものとしていることに疑問を感じるようになりました。「これでは国内にある数多くの企業のお役立ちにはつながっていないのでは? ここ数年でITの壁をブレイクスルーしておかないと、次代に残すべき企業までが消失してしまうのではないか」と。

そこで加藤さんは、自分が行ってきた業務【IT参謀】をどうすれば広められるかということを、ここ数年考え始めました。そして、この記事冒頭の課題感(中小企業と大企業の人財不足)解消に動くことを、今年(2019年)になり、意思決定したそうです。加藤さんが注力しておられる、そのIT参謀を増やすプロジェクトのサイトはこちらです。

●IT参謀
https://www.gmsouken.co.jp/sanbou/

4 実際にIT参謀へチャレンジされた方々の声も

加藤さんが定義する【IT参謀】について、もう少し詳しく紹介します。ここでは、非公開の同社プロジェクトサイトからの抜粋をご紹介します。もちろん、加藤さんの了承を得ています。

IT参謀のプロジェクトサイトの画像です

●加藤さんのブログからの引用

・IT参謀の概要:IT・クラウドと言っても、カテゴリーが広すぎるため基本的には、ITコミュニケーションとIT実務に絞っています。1日に400個のWEBサービスが生まれていると言われています。それらを追いかけるのではなく(不可能…)、オールマイティを目指さず、効果が出せるツールを絞って徹底活用できる様にサポートしていく流れになります。

業務とは、大きく2つしか無いと考えています。それは、コミュニケーションと実務です。コミュニケーションは、報告・連絡・相談・指示・会議。実務は、作業・企画・集計・設計・分析などです。その2つをスムーズに効率化するには多様なツールを使わずに、極力1つずつのツールにします。推奨しているのは、ChatworkとG suiteです。ほとんどの場合、既に多様なツールに翻弄されています。電話、FAX、付箋、メール、メッセンジャー、◯◯管理システム、◯◯管理ツール、日報ほにゃらら…見ないといけないものが多いのは大変です。それだけで無駄な時間が発生します。G suiteでもコミュニケーションは出来ますが人の脳の中で、コミュニケーションと実務を分け、ツールも、コミュニケーションと実務を分けることでコミュニケーションはChatworkを見て実務はG suiteを見るという風土を作れば脳が混乱せず、スムーズに業務を回すことができます。実際に、コミュニケーションと実務が混在するオールマイティな業務システムサービスではどこに何の情報があるのか分からない。

検索してもコミュニケーションの事と実務の事が混在して表示され混乱するし、結局探す時間が長いという不満をよく聞きます。コミュニケーションと実務の情報をクラウド化することで探すという行為を検索するという行為に変えられます。それだけで探す時間を半分以下にできます。さらに、コミュニケーションツールと実務ツールを分けることでコミュニケーションと実務の混在による混乱が無くなりさらに探す時間を短縮できます。それだけでも大きな効果を得ることが出来ます。

このように大きな概要としてはコミュニケーションと実務のクラウド化をツールを絞って実現することが基本的な進め方になります。そしてそのサポートをする人のことをIT参謀と呼んでいます。

このサポートの人財が世の中に広がることで、生産性向上が具現化していくと感じます。また働き方改革の横にセット化されている、副業・兼業の世界観もこのIT参謀が担えるように感じます。

実際にこのプロジェクトに参画された【参謀】の皆さんの声も以下に。

・OA機器販売事業

☆申し込んだ理由、経緯

OA機器の販売とITサポートの仕事は相乗効果がありそうなので、ITサポートの仕事をやってみたかったがどう事業を進めて良いのか迷っているうちに事業を立ち上げられないままになっていた。そこでIT参謀の存在を知り、サポートいただくことで事業立ち上げが加速した。

☆実際にどう習得できたか

会員サイトでITサポート事業の準備、立ち上げ方、考え方、運用を学びながら不明な点や、疑問点、悩みなどはメッセージでサポートを受けながら事業の立ち上げを進めた。2ヶ月ほどで運用まで軌道に乗せることができ、収益化しています。今後は社内から、ITサポート事業のメンバーを増やすフェーズに入っています。

☆お客さんの集め方

異業種交流会の運営をしており、交流会のメンバー及び紹介から毎月IT活用の勉強会を開催し沢山の方に参加頂いています。そちらでITサポートのベネフィットを実感いただくことを起点にご契約を頂いています。

☆どれぐらいの期間でどれぐらいのお客さんができたか

2月のIT活用勉強会の初開催でいきなり2社契約をいただきました。その後は各回数社の皆さんからご相談をいただき、既存のお客様からの依頼も含め2ヶ月で10社のご契約を頂いています。

☆お客さんから言ってもらえて嬉しかったこと

◯◯をしてみたいが、どう進めればいいのか…というところの解決きっかけになりました! と言って頂きます。またITに関して情報提供したことを実践頂き役に立ちました! と言って頂くことに喜びを感じます。

IT参謀のプロジェクトサイトの画像2枚目です

5 IT参謀の未来へ

このようにIT参謀が増え、1万人となったときには、日本の企業が本物の生産性向上につながっていくものと感じます。私からも某インフラ系大企業にIT参謀プロジェクトをご紹介し、同社社員の参謀化が静かに始まろうとしています。

IT参謀の皆さんがコミュニティー化、プラットフォーム化していくことで、プロジェクト単位のシゴト感が広まります。それによって多様な働き方、ひいては生き方にまで良い影響となっていくことを願います。

最後に加藤さんに、「いつもなぜ黒っぽい服装なんですか?」と尋ねてみたところ、『自分自身は黒子(くろこ)であると認識しています。クライアント企業が引き立つイキイキした活動になるためにも私は黒子に徹する』とすてきな回答をいただきました!

杉浦氏・加藤氏の画像の画像です

以上(2019年5月作成)

競争優位の戦略「ポジショニングとブランディング」

今回からは、起業後の停滞から脱するための取り組みを解説します。それには、自分たちの存在意義、つまりミッションを再確認することが、停滞から脱するための第一歩となります。その上で、自社のポジショニングを考え、ブランド力を高めていくことになります。

1 ミッションを確認し自社の存在意義を高める

1)ミッションの重要性

ミッションは多義的に使われるキーワードですが、ここでは「企業が果たすべき社会的使命」と定義します。さらにいえば、「企業が存在する理由」であり、「企業が目指す理想のゴール」でもあります。

「中小企業がミッションを掲げるなんて大げさだ」と思う人がいるかもしれませんが、それは違うでしょう。むしろ競合に埋もれないためにも、中小企業こそミッションを明確にし、「自社は○○の役に立っている」と宣言すべきです。

ミッションは、「世界を変える」など大それたものでなくてもよく、狭い地域や社会の困り事を解決する内容でも問題ありません。大切なのは、経営者だけではなく、組織全体がミッションをきちんと認識することです。

2)ミッションを再確認する

ミッションを再確認するために、次の質問に答えてみてください。

1.社会(または地域・市場)が求めていることは何ですか?

人や企業が困っていること、求めていることを具体的に考えます。求めていることの切り口には次のようなものがあります。

  • 安心・安全(不安なく過ごしたい)
  • 便利さ(効率化・時間短縮)
  • 豊かさ(満足感・快適)
  • パーソナライズ化(人と違う特別感)
  • 楽しさ(笑い・ゲーム感覚)
  • 不自由さ(ハンディキャップ)

2.上記の1.に対してあなたの企業が提供できる解決方法は何ですか?

自社の商品・サービスを提供されたお客様が得られる価値のことです。

3.実現したい理想の社会はどのようなものですか?

自社の商品・サービスを通じて実現したい理想の社会の姿のことです。

あなた(自社)が、この3つの質問に明確に答えられたのなら、問題はないでしょう。一方、答えが曖昧だったり、ぶれていたりするようなら、改めてミッションを決める必要があります。

3)ミッションは対外的にアピールすることが重要

ミッションは、組織に浸透させることはもちろんのこと、会社案内や名刺、ホームページなどにも掲載します。ミッションを対外的にアピールすることは、自信と覚悟を示すことになり、認知度や信用度が高まります。

ミッションをアピールすることで、社会や市場が自社のことを「○○の会社だ」と認知してくれるようになれば、企業の収益アップに寄与するでしょう。当然、対外的にミッションを掲げている以上、その内容を大きく逸脱するような活動はしてはいけません。経営者も従業員も、ミッションを意識しながら活動することが求められます。

2 ポジショニングを追求して優位に戦う

1)市場における存在位置を明確化

ミッションを明確にした上で、自社のポジショニングを検討します。ポジショニングとは、市場における自社の存在位置を明確にすることです。「ポジショニングマップ」などのフレームワークを使うと分かりやすいでしょう。

よほど目新しいビジネスでない限り、競合は存在します。駅前に立地する居酒屋であれば、その周辺にある多くの飲食店やファストフード店までもが競合関係になり得ます。お客様に自社を選んでいただくためには、競合する企業の商品・サービスと比較して、「価値がある」と判断してもらわなければなりません。

しかし、他の競合先と同じ市場で、類似する商品・サービスを提供していると、真っ向勝負になり、非常に不安定な経営状態になってしまいます。それを避けるためには、ポジショニングを徹底的に追求して、自社の立ち位置を明確にしなければなりません。

2)ポジショニングの例

ここで、ポジショニングの例を紹介しましょう。エステサロンを経営しているAさんは、3年前に東京都内に開業して1人で営業していますが、固定客を多数確保して安定した収益を上げています。

エステサロンは、痩身やフェイシャルなどさまざまな業態があり、全国展開している大手もたくさんあるので、競争がとても激しいビジネスです。

そのような中で、Aさんの店舗の特徴は、エステ機器や手を使った施術をするだけではなく、その場で体幹トレーニングなどの運動をしてもらうことで、健康的に痩せるためのサービスを提供していることです。Aさんは、スポーツインストラクターの経験があり、そこで培ったフィジカルトレーニングの技術を生かしているのです。

こうした工夫で、価格競争が激化している中にあっても、客単価が約1万円と高単価を確保しています。Aさんの店舗のポジショニングを表すと次のようになります。

店舗のポジショニングを示した画像です

この2つのポジショニングマップは、「お客様の年齢と価格設定」と「お客様の志向と業態」という軸を用いています。Aさんの店舗が、競合が少ないポジションを狙っていることは一目瞭然です。

まず、「お客様の年齢と価格設定」を軸にした場合、大手エステサロンとの競合状態が分析できます。ポジショニングマップから、大手エステサロンとの競合を避け、中年層をターゲットにして中価格の設定にしていることが分かります。

次に、「お客様の志向と業態」を軸にした場合、大手エステサロンの他、他業態(リラクゼーションサロン、整体)との競合状態が分析できます。ポジショニングマップから、リラックスする施術ではなく、効果(痩せる・美しくなるなど)を目的とした施術で、「美と健康を両立させたい」という層をターゲットにしていることが分かります。

3)ポジショニングの切り口

競合先は誰かを考え、どのような切り口で差別化を図れば競合が少ないポジションを確保できるかを検討します。ポジショニングマップの軸(切り口)は、業種業態でさまざまなものが考えられますが、例えば次のようなものがあります。

  • 価格
  • 商品・サービスの特性
  • 顧客層
  • 地域
  • 顧客の志向
  • 販売・流通方法

また、ポジショニングを考える際に重要なのは、「他社がやっていないこと(あるいは、他社がやっているが自社に明確な競争優位性があること)」です。商品やサービスの独自性や魅力を高めることが一つの方法ですが、それ以外でも「エリア限定」「年代を絞る」「商品を限定する」などの方法が考えられます。ポジショニングを追求すると、次のような効果が期待できます。

  • 価格競争に巻き込まれない
  • 収益が安定する
  • 事業継続の確率が高くなる

ポジショニングは一定ではありません。環境や顧客ニーズの変化に応じて、タイムリーに考え直す必要があります。停滞している企業は、ポジショニングが不明確であったり、市場に合っていなかったりすることがあります。自社のポジショニングを徹底的に追求してみましょう。


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3 ブランディングで価値を高める

1)中小企業こそブランディングが必要

ミッションとポジショニングが明確になったら、ブランディングによって「ブランド力」を高めます。ブランド力は、かつては大企業特有のものと捉えがちでしたが、今ではスタートアップでも積極的に広報を行う時代です。

ブランドとは、牧場主が自分の家畜に焼き印を押すことで、他の人の家畜と区別していたことに由来する言葉という説があります。現在では区別するだけではなく、「価値あるもの」としての認知度という意味で使われています。中小企業も、自社の存立基盤を明確にして商品・サービスを際立たせることで、ブランド力が高まるのです。

ブランディングの効果の一つは、見込み客や周囲から認知してもらえることです。「あの企業は○○で有名だ」「○○を買うならあの店」というように、商品・サービスを購入する場面で思い起こしてもらう存在になれば、「指名買い」が起こり、リピーターも増加します。

2)ブランディングの効果的方法

効果的にブランディングするための方法はさまざまありますが、次のようなものがお勧めです。

1.ニッチでもナンバーワンになる

限られた分野でいいのでナンバーワンになることです。例えば「看板の効果的な付け方なら日本一です」など、他の企業が言っていない文言を使うなどして、話題性を提供すると効果があります。

●ニッチビジネスで成功するために必要な視点とマインド
https://resonacollaborare.kalep.net/posts/30059/

2.継続的な情報発信

ホームページやブログ、SNSなどで継続的に情報発信することが有効です。ポイントとしては、「宣伝になりすぎないようにする」ことです。役に立つ情報や面白い動画など、見る人が興味を持ってくれる内容がベストです。その中でさりげなく「うちは○○でナンバーワン」といった情報を盛り込むといいでしょう。

●本当に必要? コーポレートサイト制作のすゝめ
https://resonacollaborare.kalep.net/posts/30130/

3.紹介してもらえる仕組みづくり

自分(自社)で「うちは頑張っています」と主張しても、簡単には信用してもらえません。他の人から「あの企業はすごいよ!」と紹介してもらえると、信用が高まります。紹介をしてもらうためには、人脈を大切にすることです。

人脈はさまざまですが、既存のお客様や関係者、従業員との付き合いを大切にすることが第一です。また、受注があれば迅速丁寧に対応することで、満足度が高まり、いい口コミ効果が期待できます。

●人付き合いが苦手な社長でも人脈は構築できる
https://resonacollaborare.kalep.net/posts/29431/

●せっかく構築した人脈。長く維持するには?
https://resonacollaborare.kalep.net/posts/29435/

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年5月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】inquiry01@jim.jp

(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

ご回答は平日午前10:00~18:00とさせていただいておりますので、ご了承ください。

【朝礼】無理が通れば道理が引っ込む

日々、私たちは“常識”を意識しながら生活しています。常識とは、「明文化されていないが、多くの人が一般的と感じるルール」のことなので、皆が常識人であれば、心地よい社会になるはずです。しかし、現実はそうなっていません。なぜなら、常識はとても主観的なものだからです。

例えば、ビジネスで利用するメールの文面は、分かりやすい例の1つです。とても丁寧にメールを書く人は、メールといえども礼儀を尽くすことが常識だと考えています。一方、用件だけを簡潔に書く人は、できるだけ文章量を減らして分かりやすくすることが常識だと考えています。どちらも相手のことを気遣い、自らの常識に従って行動しているだけですが、この2人がメールでやり取りをしたら、お互いに相手のことを「非常識だ!」と感じ、衝突してしまうかもしれません。

このように、常識は個人ごとに大きく違います。加えて、時代の流れによっても変わっていきます。メールの例でいえば、今どきはメールよりもチャットで連絡を取る機会が増えています。スピードと手軽さが優先されるチャットでは、あいさつ抜きで用件を伝えることが珍しくありません。その代わり、感情を示すアイコンなどを多用して、相手に誤解を与えないように配慮します。また、1回の投稿が長文にならないように、あえて短文に分けるなどします。これらは、チャットを使う際の1つの常識ですが、メールしか知らない人にとっては想像できないルールでしょう。

メールの文面に関する常識だけを意識していたら、自分としては常識的に振る舞っているつもりでも世の中の流れから取り残され、的を外した議論をしてしまうことになりかねません。これはとても恐ろしいことです。もし、我が社がそうなってしまったら、変化の激しい現在を勝ち抜くことはできません。

皆さんは、「無理が通れば道理が引っ込む」ということわざを知っていますか。このことわざは、「無理を強引に押し通すと、道理にかなった正しいことは行われなくなる」という悪い意味で使われることが多いのですが、私は少し違った見方をしています。ビジネスでは、自分の常識には当てはまらないこと、つまり「無理ではないか?」と思うことに多々遭遇します。そうしたとき、私はこのことわざを思い出し、客観的に考えるようにしています。私の常識では「無理」でも、外の世界では既に別の「常識」になっていることがあるからです。

「非常識」と思えることに直面すると、反射的に目を背けてしまいがちです。しかし、これまで触れたことのない非常識の中にこそ、新しい発想のもとや、これまでとは違う切り口のビジネスチャンスが眠っていることがあります。皆さん、恐れずに外の世界に飛び出してください。そして、この会社にとっての「非常識」をどんどん持ち込んでください。皆さんが持ち込む新しい刺激が、組織を強くしていくのです。

以上(2019年5月)

pj16957
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】働き方改革の極意は、植木屋さんの「手入れ」にあり

知り合いの経営者が、以前、植木屋さんでアルバイトをしたことがあるそうで、とても興味深いことを教えてくれました。

皆さんは、植木屋さんの仕事で、「手入れ」というものがあるのを知っていますか。「手入れ」というのは、簡単に言うと、植え込みの中に手を入れ、ゴミを取り除いてきれいにすることです。文字通り、植え込みの奥にまで“手を入れて”作業するので、枝やトゲなどで手は傷だらけになります。当然痛みもあります。そうして痛くて傷だらけになっても、しっかりと手を入れて作業しないと、きれいにならないのだそうです。

会社も同じだと、知り合いの経営者は言います。「会社も、問題のあるところに自ら入り込み、たとえ痛い思いやつらい思いをしても、どうにかしようとしなければ、きれいにならない」。そうした思いで、社員の意識改革や業務改善に取り組んでいると話してくれました。

私は、その思いにとても共感しています。組織が変わっていくということは、時に大きな痛みを伴います。特に、自分たちの問題のあるところをつまびらかにし、真っ向から向き合っていくのは、簡単ではありません。私も皆さんも、一人ひとりが皆、痛くてつらい思いをするでしょう。それでもなんとかしようとしなければ、会社は変わることはないのです。

私は、この植木屋さんの話を聞き、会社を変えていく決意と覚悟を、改めて固めています。

今年度から、私たちは、会社を新しく変えようと取り組んでいます。特に重要なのは、働き方改革をしっかりと実践するための、全業務の見直しです。当社には、これまで築いてきた40年の歴史があります。諸先輩方の教えを守り、踏襲しながらも、新しくすべきところは、思い切って変えていかなければなりません。

業務を見直すに当たって、今、皆さんにお願いしているのは、当社の全ての業務を洗い出し、一つ一つの業務にどれだけ時間とコストがかかっているかを明らかにすることです。

皆さんの中には、これまで所要時間を“なあなあ”に見積もったり、コスト感を持たずに仕事をしてきた人もいるでしょう。業務の洗い出しをするだけでも、自分の至らなさに直面し、既に「痛い」「つらい」と感じているかもしれません。

しかし、これから先は、もっと痛くてつらいはずです。業務の問題点をあぶり出し、「時間がかかり過ぎだ」「この業務自体必要ない」「新しいやり方に変えるべきだ」といった議論をして、一つ一つ見直すことになるからです。新しいオペレーションを覚えるのも、簡単ではないでしょう。

それでも、私たちは、前に進み続けます。痛くてもつらくても、会社の未来は、自分たちで創っていかなければならないからです。新しい元号「令和」に変わった今、当社の「手入れ」も、待ったなしです。皆さん、どうか一緒に、私たちの会社を変えていきましょう!

以上(2019年5月)

pj16956
画像:Mariko Mitsuda