【朝礼】管理職が、今こそ若手社員に教えるべき4つのこと

今日は特に、若手社員を部下に持つ管理職の皆さんにお伝えしたいことがあります。

新年度に入り約1カ月が過ぎました。最初は熱心に若手社員に向き合っていた管理職の皆さんにも、「このままの指導法でよいのか」と迷いが出たり、「部下とコミュニケーションが取りにくい」といったネガティブな気持ちが出始めたりする時期かもしれません。

そこで今日は、当社の管理職として若手社員に教えるべき4つのことを、改めてお伝えします。知っていて当たり前と思えるような基本的なことばかりですが、実践できていない若手社員が多いので、ぜひ、できるように指導してください。

1つ目は、部下が「ありがとうございます」と「申し訳ありません」を言えるようにすることです。社外の人に対してだけではありません。上司や先輩、同僚など社内の人に対しても同じです。何かを教えてもらったとき、時間を割いてもらったときはお礼を、迷惑を掛けてしまったときはおわびを。部下が自分のほうから人に頭を下げることができるよう指導しましょう。これは、物事の全てにおける基本です。

2つ目は、部下が率先して動けるようにすることです。例えば、会議の準備や後片付けをするとき、皆で掃除をするとき、来社したお客さまをご案内するときなどは、サッと立ち上がり、進んで行動ができるよう指導しましょう。自分のことばかりでなく、周りにも気を配れるようにします。

3つ目は、部下がリアクションをしっかり取れるようにすることです。呼ばれたら返事をすることはもちろん、呼んだ人のほうを向いて話を聞くことも教えなければなりません。また、質問されたとき、分からなくても黙り込まず、「すみません、分からないので確認します」と返答することも教えましょう。相手のほうを向くこと、相手にリアクションをしっかり返すことなどは、その人との関係性を築いていく上でとても大切です。

そして4つ目は、これまで挙げてきた3つの総括ともいえますが、部下が、「相手のことを考える」という気持ちを持てるようにすることです。仕事は、一人では決してできません。社内外の人と一緒に進めていくものです。自分のことばかりでなく、「相手はどのように言っているか。どう思っているか」ということを必ず考えるよう、部下に繰り返し伝えてください。

これら4つのことは、いわば「人としてできて当たり前」の基本的なことばかりです。しかし、世の中には、できていない人も少なくないのが事実です。当社の社員はそれではいけません。しっかりと実践できるよう、若手社員の頃から、私や管理職の皆さんが指導することが必要です。

そして、部下は管理職の言動をまねします。管理職の皆さんは、4つのことを率先垂範し、部下に実践している姿を見せてください。今から1カ月後、皆さんの部下が今と変わった姿を見せてくれることを、私は期待しています。

以上(2019年5月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】感情を込めろ。ビジネスが広がる

先日、ある会社の窓口担当者の言動を見て、自分たちも改めて気を付けようと思ったことがあるので、皆さんと共有します。

その窓口担当者の会社は、マーケティング関係のコンサルティングを行っており、当社と一緒にクライアント向けの案件を進めています。ここ半年くらいは月に3~4回、メールや電話でやり取りをしてきました。先日、その案件が成功を収めたので、私から窓口担当者にメールを送りました。そのときのことです。

メールには、今回のお礼と、当社が今後考えている展開を簡単にまとめた上で、最後は「当社でお役に立てることもあるかと思いますので、また、ぜひ一緒にやりましょう。一度お打ち合わせをお願いします」という趣旨の文章で結びました。窓口担当者とは、先方の代表や役員も含めた場で、今後一緒にさまざまなビジネスを展開していこうと、何度も話をしていたからです。私としては、窓口担当者からも、同様の趣旨のメールが返ってくるものと期待していました。

ところが、全くそうではなかったのです。窓口担当者から返ってきたのは、「ありがとうございます。必要な場合は、こちらからご連絡します」というそっけないメールでした。

「今後のビジネス展開」は当社側の独りよがりだったのか、先方の意に沿わないことがあったのか。いずれにしても何かしら迷惑を掛けたのかもしれないと、私はおわびのメールを返しました。

結果から言えば、それは私の取り越し苦労でした。おわびのメールを返したその日のうちに、先方の代表から「ぜひ一緒にやりたい」と電話があり、現在は別の案件を共に企画しています。代表は電話口で、窓口担当者が私にそっけないメールを送ったことを、しきりに謝っていました。

皆さんは、この話を聞いて、どう思いますか。皆さんも日ごろ、この窓口担当者と同じようなことを、相手に対してしてはいないでしょうか。

私はこの窓口担当者が、メールに「感情をもっと込める」ことができればよかったのだと思います。窓口担当者は、今後一緒にビジネスを展開することを立場的に即断できなかったのかもしれません。それでも、「私見ですが、一緒にできたらうれしいです」「私も、もっと御社の今後の展開をお聞きしたいです」という「窓口担当者自身の感情」を込めることはできたでしょう。

ビジネス上の付き合いは、気心の知れた友人とのそれとは違います。相手が何を考えているか分からない場合も少なくありません。だからこそ、「ありがたい」「うれしい」「一緒にやりたい」といった感情を込めて接していくことで、その後の関係性が大きく変わってくるのです。

皆さん、今日から、感情をもっと込めて周りと接することを心掛けてみてください。苦手な人は、いつものメールに、「うれしいです」など、一言感情を添えてみましょう。ビジネスの広がりは、その一歩から始まります。

以上(2019年5月)

pj16959
画像:Mariko Mitsuda

上司必読! 部下を伸ばす言葉、ダメにする言葉

書いてあること

  • 主な読者:部下の指導に悩む上司、管理職
  • 課題:モチベーションを引き出すために、どう言葉を掛けて良いかわからない
  • 解決策:「急ぎで働いてもらわなければいけない場合」など、シーンに応じた言葉の掛け方を学ぶとともに、部下がやる気をなくしてしまう言葉を掛けないよう留意する

1 部下を「伸ばす」言葉がある

上司は日ごろから部下を伸ばそう、成長させようと指導しているが、うまくいかずに悩みを抱えていることが多い。

部下を伸ばすためには、まず「部下のやる気を引き出すこと」が鍵となる。そして、部下のやる気を引き出すために上司は、「日ごろから部下に、どのような言葉をかけるか」を考えなければならない。部下の仕事内容・仕事の進め方・進捗状況を一番把握し、部下にとって最も身近な存在なのは、上司だからである。

部下の性格や考え方にもよるが、やる気を引き出す基本は「上司が部下に、信頼を寄せ、関心を示し、期待していることを示す」ことである。

人は「自分が必要とされている、信頼されている」と感じると「嬉しい」「よし、頑張ろう」と思う。特に、「最も身近な存在である上司が自分の仕事をしっかりと見てくれている、期待してくれている」と感じれば、部下は期待に応えようと奮起する。

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上司が信頼・関心・期待を表すことができるのは、褒め言葉や部下を肯定する言葉だけではない。注意を促す言葉に込めることもできる。

例えば、「君の仕事の進め方で、○○の点については少し効率が悪いと思う。少し方法を変えてはどうだろうか?」といったように、より具体的に注意することで、部下は「自分の仕事をしっかりと見てくれているのだな」と感じる。

2 部下を伸ばす言葉の具体例

1)部下が作成した資料の内容が良くないため再作成を命じるとき

このときのポイントは、イメージが違っても頭ごなしに否定するのではなく、部下の意図を聞く姿勢を見せることである。部下は、そうした上司の姿に、上司からの信頼と関心を感じる。

  • 上司の言葉:
  • 「君が作成した△△の資料、○○の部分が私のイメージと異なるんだ。なぜ○○のように作成したか理由を教えてくれないか?」
  • 部下の感じ方:
  • 「作成した資料をしっかりと見てくれている」「自分の考えを聞いてくれる」

2)部下に1人で急ぎの仕事を遂行してもらうよう指示するとき

このときのポイントは、上司がなぜ部下に急ぎの仕事を依頼するのかをきちんと説明し、「助けてもらいたい」という気持ちを表すことである。部下は、上司に頼られ期待されていることが分かり、「よし、それならば私がサポートしよう」と意欲的に取り組む。

  • 上司の言葉:
  • 「××の資料をどうしても今日の5時までに完成させなければならないのだが、私は□□をしなければならないので時間がない。急ではあるが、今日の4時までに××の資料を作成しておいてくれないか?」
  • 部下の感じ方:
  • 「自分を信頼して任せてくれている」「上司ができない理由を教えてくれている」

3)部下のミスや不注意によってトラブルが発生したため、再発防止を命じるとき

このときのポイントは、トラブルの再発防止について部下に考えさせるチャンスを与えることである。部下は、上司からの信頼・関心・期待を感じ、トラブルを素直に反省するとともに、前向きに仕事に取り組む。

  • 上司の言葉:
  • 「今回のトラブルについて、今後同じようなトラブルを避けるためにはどうしたら良いと思う?」
  • 部下の感じ方:
  • 「自分に考えさせようとしてくれている」

3 部下を「ダメにする」言葉もある

上司の言葉一つで部下がやる気出るのと同じように、上司の言葉一つで部下がやる気を失い、ダメになってしまうこともある。身近な存在である上司だからこそ、ささいな言葉一つで、部下は、「この人にそう言われるということは、自分はもうダメなのかもしれない」と誤解し、やる気や自信を失う恐れがある。

上司と部下はあくまでもビジネス上の関係であり、友人関係ではない。仕事を遂行するため、そして部下の能力をより向上させるために、上司は、時には部下を注意したり叱ったりすることもある。しかし、上司のせっかくの本意を誤解し、部下がやる気を失ってしまうようではもったいない。

部下がやる気を失ってしまうのは、前述した「部下を伸ばす言葉」の逆で、「上司から信頼も関心も寄せられず、期待もされていないと感じてしまった場合」である。

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部下が「信頼・関心・期待が寄せられていない」と誤解するのは、上司に叱られたときばかりではない。

仕事を依頼するときの「君は与えられた仕事を終わらせてくれればいいから」「とりあえず、適当に進めておいて」などのような言葉で「余計なことはするな、と言われているのか?」「面倒だから丸投げした感じだな」と受け取り、やる気を失うことがある。

また、たとえ褒められたとしても、「最近いいじゃない」などの抽象的な表現だけでは、「適当におだてているだけなのではないか」と誤解してしまう部下もいるだろう。叱るときだけではなく、仕事を依頼するときや褒めるときなども、上司は、「信頼・関心・期待を寄せていない」と部下に思わせてしまうような言葉を避けたほうがよい。

4 部下をダメにする言葉の具体例

部下に注意するときや部下の理解を確認するときなど、シーンに応じて「信頼・関心・期待が感じられないと部下が誤解しがちな上司の言葉の例」「部下の感じ方」「上司の本意」「良い上司の言葉」を確認してみよう。

1)部下が作成した資料の内容が良くなかったとき

部下をダメにするのは、誰かと比べて否定する言葉である。今、目の前にいる部下にフォーカスした言い方に変えることがポイントとなる。

  • 良くない上司の言葉:
  • 「君が作成した資料、全然イメージと違うからもういいよ。A君に頼むから」
  • 「A君だったら、君が作ったような資料は作成しないと思うよ」
  • 部下の感じ方:
  • 「ほかの人と比較され、『自分は劣っている』と言われている」ように感じる。
  • 上司の本意:
  • 悔しさを感じ「もう一度私にやらせてください」と言ってほしい。
  • 良い上司の言葉:
  • 「君が作成した△△の資料、どうしてもイメージと異なるんだ。なぜ○○のように作成したか理由を教えてくれないか?」

2)部下の仕事を上司自身が代わりに行ったり、ほかの部下に振ったりするとき

部下をダメにするのは、「もういい」などの見放すような言葉である。割り振りを変えるときは、その理由を説明することがポイントとなる。

  • 良くない上司の言葉:
  • 「もう◇◇についてはやらなくていいから」
  • 部下の感じ方:
  • 「もう任せてはくれないのかな」と上司からの信頼や期待がなくなってしまったように誤解する。
  • 上司の本意:
  • ××の件で忙しそうだから、◇◇を担当してもらうのは無理だろう。
  • 良い上司の言葉:
  • 「君は今××の件で手一杯だろうから、今回は私が(あるいはA君が)やるよ」

3)仕事について部下が理解しているか確認したいとき

部下をダメにするのは、「当然分かるよね?」など「No」と言うことができないような言葉である。部下の意見や考えを聞き出す言い方に変えることがポイントとなる。

  • 良くない上司の言葉:
  • 「君なら当然分かるよね?」「君はもう当然できているよね?」
  • 部下の感じ方:
  • 「分からない、できていないと答えたら怒られる」という強迫観念にとらわれる。また、「上司は、自分が分かっていない、できていない、と思っているのかもしれない」と上司からの信頼を得られていないように感じることもある。
  • 上司の本意:
  • 理解しているかどうか、どのように考えているのか聞いてみよう。また、自分の言葉で説明させることによって自分自身の頭の中を整理してもらおう。
  • 良い上司の言葉:
  • 「□□について君の意見を聞かせて欲しい」

5 部下一人ひとりと真剣に向き合う勇気

「伸ばす言葉」「ダメにする言葉」のどちらも、「信頼・関心・期待をどのように上手に伝えるか」がポイントとなる。ただし、部下は個々の性格や考え方が違うので、上司の言葉に対する受け止め方もそれぞれ異なる。信頼・関心・期待を寄せられていると感じるポイントも違う。そこで、部下一人ひとりと真剣に向き合わなくてはならない。

一方、部下は、部下一人ひとりと真剣に向き合おうとする上司の姿勢を感じるだけで、「自分たち部下に関心を寄せ、考えてくれようとしている」と思い、それに応えようと努力するはずである。

部下を伸ばすために大切なのは、上司が、日ごろから部下一人ひとりと真摯に向き合い「部下のやる気を引き出す言葉」をかけることである。そうすれば、部下のやる気を引き出すだけではなく、上司と部下との間で強い信頼関係を築くことができるだろう。

また、時と場合によっては、上司は言葉を選ばず、部下を厳しく叱ったり指導したりしなければならない。厳しくするときには厳しくする。上司のそうした真摯な姿勢に部下は、「自分に向き合ってくれている」と尊敬と感謝の気持ちを抱くのである。

最後に、やる気を引き出し部下を伸ばす「魔法の言葉」と、やる気を失わせ部下をダメにする「避けたほうがよい言葉」を紹介する。上司は、適度に部下に「魔法の言葉」をかけ、部下のやる気を引き出していくことが大切といえよう。

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以上(2019年5月)

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画像:pixabay

創業初期の停滞を打開するスキルとマインド

創業後3年以内の企業の経営者(経営陣)は、企業経営に何度も携わった経験がある一部の人を除けば、経営者として未熟な状態にあるといえるかもしれません。

創業前は、経営者として自立できるように一定の準備をしていた人たちも、いざ創業した後は、目先のことで手いっぱいとなり、本業に集中できなかったり、本を読む時間が取れなかったりすることがあります。

こうした状況を放置するのは好ましくありません。第1回で紹介した「経営の停滞要因」の多くは、経営者自身の能力不足が招いているといっても過言ではないのです。

創業後こそ、経営者としてスキルアップを継続的に図っていくことが欠かせません。第2回はそうしたスキルアップのために何をすべきか、そのマインドや行動を含めて紹介します。

1 成功体験で「てんぐ」になるのが最も危険

創業後、事業が順境であっても逆境であっても、経営者はスキルアップの努力を欠かしてはなりません。私(著者)の経験からいえば、事業が傾くきっかけの多くは、一時の成功体験で自信過剰になった経営者が「てんぐ」になってしまうことだからです。

創業直後から事業がうまくいって、周囲に“もうかっているアピール”をしていた経営者が、しばらくすると苦境に陥ることがあります。また創業後順調に推移していたので、新規事業を始めたところ、大赤字で破綻したなどの事例は枚挙にいとまがありません。

経営者が自分の経営能力を過信し、判断を誤ったことが事業失敗の原因になっているのです。会社勤めの頃は上司からあれこれと指導を受ける立場だったのが、独立開業すると、基本的に誰からも束縛や強制をされることがなくなります。そのため、創業した途端に「一国一条の主」という意識が強くなり、他者からの指導やアドバイスを受けられなくなってしまうこともあります。そうなると、経営者としてのスキルアップを図れなくなり、事業も停滞が続いてしまうことがあります。事業を長期にわたって継続できる経営者は、「謙虚にスキルアップを図る」という姿勢を持ち続けています。

では、経営者に求められるスキルにはどのようなものがあるのでしょうか。次章で確認してみましょう。

2 経営者に必要なスキルとマインド

1)ビジネスモデル構築

誰に、何を、どのように売るのか、ビジネスで利益を上げる仕組みを練り上げることです。どんなプロダクト(商品・サービス)をつくり、どの市場に売っていくかといった戦略策定も含みます。

2)情報収集

ビジネスモデルを構築するためには、有効な情報を収集することが欠かせません。情報収集源は、新聞・雑誌・テレビなどのメディア、インターネット、書籍などがありますが、最も有効なのは、自分で見聞きしたものや人から直接得る「一次情報」です。

3)行動力

理想的な事業計画を策定しても、行動が伴わなければ何も実現しません。「誰が、何を、いつまでにやるのか」を決めて、計画的に実行することが重要です。

4)マーケティング

業況が不振な中小企業の大半は、マーケティングをしっかりとしていません。せっかくいい商品やサービスを持っているのに、ターゲットとする顧客に周知できていない、あるいはうまくクロージングできていないといった問題点が見られます。

5)メンタル(マインド)の強さ

経営者には、何があっても心が折れない強さが求められます。同じような事業をやっていても、逆境に直面して簡単に諦めてしまう経営者がいる一方で、「なんとしても乗り越える」という意識を持って粘り強く改善を図る経営者もいます。

長年にわたって事業を続けている経営者は、必ずといっていいほど危機に直面しています。そんなときでも決して諦めずに、自分や自社を客観的に見て、解決策をひねり出し実行しています。

6)マネジメント

経営者には、経営全般をマネジメントする能力が求められます。人材のマネジメントをはじめとして、経営企画、プロジェクトの管理、資金の管理、危機管理など、幅広い要素が含まれます。

このように多岐にわたるのが「経営能力」の構成要素です。ところが創業後3年以内の企業の経営者は、経営能力が発展途上の状態だといえます。経営者がこれらの要素で構成される経営能力を高めていくことで、難局を乗り越えて事業を繁栄させることができます。

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3 経営者としてのスキルやマインドを向上させる方法

経営者としてのスキルやマインドを継続的に向上させることは、事業の繁栄につながります。具体的には、次のような行動によってスキルやマインドを向上させることができるでしょう。

1)事例に学ぶ

日ごろから意識すれば、経営の参考になる多くの経営者や企業の事例があることに気付きます。例えば、メディアで取り上げられる企業事例を見ると、商品・サービスがユニークで、「なるほど。こんなやり方があったか!」と、目から鱗(うろこ)が落ちるようなものがあります。

日本国内に限らず海外の事例も探すと、経営に役立つヒントがたくさん得られます。必ずしもメディアに登場していなくても、地元で有力な企業がどのようなことをしているかを調べると、多くのことを学べます。

なお、企業事例について見るときは、「ビジネスモデル」に着目することをお勧めします。どんなビジネスの仕組みによって稼いでいるのかを分析して頭にストックすると、自分のビジネスに役立てられる知識となります。

2)人から一次情報を得る

メディアなどで公開されている情報は二次情報(他者を通して間接的に得られた情報)ですが、さらに有効なものは直接得る「一次情報」です。特に他の経営者やお客様などから直接話を聞くと、よりリアルな情報を得られるので、経営に役立つ確率が高いといえます。

人から話を聞く方法は、次のようなものがあります。

  • 経営者が体験談やノウハウを話す講演を聞きに行く
  • 経営者が集まる会合や勉強会などに参加する
  • お客様(または顧客ターゲット層)にインタビューする

3)支援団体や専門家を活用する

中小企業を支援する組織や団体は全国各地に多数あります。例えば、各都道府県や市区町村、商工会議所や商工会などは、地域内の中小企業に対して、情報提供や経営相談などを行っています。これらの機関のホームページを見ると、「中小企業支援」といったページがあり、各種支援策が書かれています。

全国的な機関では、「独立行政法人中小企業基盤整備機構」(中小機構)が、経営相談や各種イベントを開催している他、全国に7カ所ある「中小企業大学校」が経営者向けのセミナーや研修を行っています。

中小機構は、各都道府県に設置されている「よろず支援拠点」のサポートもしています。「よろず支援拠点」とは、国が設置した経営相談所です。各分野の専門家が登録されており、無料で相談や支援を受けられるのが特徴です。「○○県よろず支援拠点」で検索すれば、問い合わせ先が出てきます。

この他、金融機関なども経営者向けの講演会やセミナーなどを積極的に開催しているので、活用してみるとよいでしょう。こうした場に参加することで、同じ悩みを持つ経営者とのつながりができる可能性もあります。

4)インプットしたノウハウを経営に生かす

得られたノウハウや情報は、「ためになった」で済ませるのではなく、自社の経営のために生かすことが経営改善のポイントとなります。繰り返しになりますが、創業後3年までの期間は、経営が不安定もしくは停滞していることがほとんどといっても過言ではありません。

経営者(経営陣)は、「自分たちはまだまだ未熟者である」と認識し、スキルアップに励むことが停滞を打ち破り、事業を繁栄に導くために重要です。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年4月24日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

【電子メールでのお問い合わせ先】
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(株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

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待ったなしの副業解禁の時代をひもとく〜現代の遣唐使 他社留学を事業化するエッセンス社の米田さんに聞く〜/岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が今回紹介するのは、エッセンス株式会社の社長である米田瑛紀さんです。

2019年4月、副業・兼業の解禁やリモートワークの推進など、激動の「働き方多様化時代」が始まっています。米田さんは、その最先端を担っていて、経済産業省におけるワーキンググループの委員にも選出されています。

大企業の優秀な人材をスタートアップ企業へ期間限定で送り込む「他社留学」の他、「現代の遣唐使」に見立てて「地方人材を東京へ送り込む」ことを事業化するなど、幅広く人材を活性化し「人財」にする活動をされています。

1 副業人財で決まりましたよ!

最初に、私のキャリアでターニングポイントになった出来事を紹介します。今から20年ほど前、当時懇意にしていた得意先の方から、ドラッカーさん(ピーター・ドラッカー)の音源を聞かせてもらったことがあります。その音源の中に、ドラッカーさんが来るべき将来に必要な人材像についてコメントしている場面がありました。

詳細なことまでは覚えていないのですが、当時のドラッカーさんが、「1社に帰属し自身の関わる仕事だけのプロフェッショナルの時代は確実に終わる」ということと、「多様性の時代が来る。その際には、いろんな業界、企業、職種、コミュニティーと対話ができる器用なビジネスパーソンが重宝される時代となるだろう」というようなことを予言的に話していたことは鮮明に覚えています。

これらドラッカーさんのお話に衝撃を受けた当時の私。幸いにして20代で全く違う業界へ2度の転職経験があり、さらに、私はあらゆる業種と関わりのあった損保会社で仕事をしていました。そうしたことから、ドラッカーさんのメッセージを、「まさにドラッカーさんが私に言ってくれている」と自分勝手に誤解? 曲解?して受け取り、それが根拠のない自信となって現在に至るまでパワーをもらっています。

会社員時代、就業規則の関係により私は金銭的な副業経験をしたことは一度もありません。しかし、当時から社外へ求め始めたネットワークのおかげで、莫大な【情報】と【信用】を手に入れることができました。金銭以上のものを【副業】として得られたといっても過言ではないと今まさに感じ、感謝しています。

これからの時代を生き抜く上でも、副業は大切な意味を持っていると思っています。

そろそろ冒頭のタイトル、【副業人財で決まりましたよ!】に戻りたいと思います。【副業人財で決まりましたよ!】。これは、私がインタビューに伺った際に、米田さんが席に着くなり、ニコニコ顔で語ってくださった言葉です。

今から数カ月前、懇意にしている上場会社の社長さんから、「杉浦さん! ここ6カ月ほど、社長マターで幹部人材を探しているけれど採用できなくて困っています! どこか採用の支援をしてもらえる会社を紹介してください!」と依頼を受け、すぐに米田さんにお願いしたものでした。

そこから2カ月もたたないうちに、米田さんから「副業人財をご導入いただくことが決まった」との報告をいただき、少し不思議な感じでした。役員級での採用要請でしたので、私は常勤の候補が当たり前と思っていましたが、この副業でジョインされた方は元マイクロソフトでマーケティングを担当したこともあり、現在は世界的によく知られるマーケティング会社の超有名人だそうです。

もしこのハイスペックな方を説得し、100%のコミットで転職要請するには、いったいいかほどの年俸を準備することになるのでしょうか。そして、どれくらい先にジョインすることとなるのでしょうか。

恐らく、企業側が想定している額をはるかに上回る金額が必要で、しかも、候補の方の状況によっては、実際にジョインするのはしばらく後になるかもしれません。企業にとっては、かなり難しく現実的ではない状況になるでしょう。

「常勤採用の発想から企業側も転換をしたほうが良いですよ」。そう米田さんは話します。「副業人財」としてジョインしてもらえば、ハイスペックな方を週1もしくは月数回程度で味方にすることができ、企業のレベルアップが図れます。依頼主の社長にとっては良いことずくめです。

米田さん率いるエッセンス社では、「戦略設計図を描けるプロ(人財)をそろえている」という点で、他社にはない価値を企業に提供できるとしています。また、人材を探している企業に寄り添い、「足りないピースは何か」「どこなのか」といった点も掘り下げていく【丁寧なチューニング】も、大きな強みといえるでしょう。

米田さんの姿勢から、「副業だからこそ人財の適材適所をしっかり考えることの大切さ」を目の当たりにした次第です。案件の数にこだわるのではなく、チューニングの丁寧さとクオリティーの部分に、エッセンス社が「何を重要視しているのか」がうかがえます。

2 水面下でも動き出している大企業の「他社留学」という研修スタイル

次にご紹介するのは「他社留学」という取り組みです。1万人以上を抱える大企業では、仮に自分が必死で努力したり、運を味方につけたりしたとしても、役員にまで上りつめることは本当に大変です。昨今、大企業でも役員の若返りにチャレンジしているとはいえ、20代で役員会に出るチャンスは皆無といってもよいくらいです。

しかし、エッセンス社ではその経験を20代でかなえる取り組みも実施されています。実は私がご紹介した会社はまさに社員数1万人以上で、「有能な若手人財をつなぎ留めておく施策はないか?」と探しているところでした(大概の場合、期間限定の海外研修ってことが多いですね……)。そこでその会社には、期間限定で他の会社に留学するという「他社留学」を若手社員に経験させてみることを紹介しました。

当初、まずは、その会社の1名を、あるスタートアップ企業に留学させることにしました。その結果、

  • 自社(大企業)のリソースの大きさ、ポテンシャルを認識できた
  • スタートアップ企業の役員会に参加することで経営側の考え方を学ぶことができた

ということだそうです! そこで、現在は3年目の他社留学をスタートしており、非常に効果が出ているといいます。

例えば、他社に留学することで、現業の【引き出し】が増え、課題解決力や視座が高まり、価値観も広がる。そして何より、「マインドが変わる=自立心が育まれる」ことが大きいと思います。

私が会社員時代に感じていた、【企業研修】の意味のなさ。研修に際して、会社が多額の投資をしてくださったことには感謝していましたが、「座学→眠い→体験値が低い→研修期間を過ぎればすぐに消えてゆく」。こうしたことの連続でした。だからこそだと思いますが、私には、エッセンス社の他社留学事業は大企業にとって「本当に社員を変えることのできる」画期的な【研修事業】と映りました。

企業が副業解禁に向かう場面でも、この他社留学は意味あるものだと感じます。自分が勤めている会社のことしか知らないという純粋培養では、企業側が副業解禁しようとしても、社員たちは何も分からない、変わらない、一歩も前へ進めない。そんな状況かもしれません。他社留学は、そうした社員の背中を押す施策と感じます。

●エッセンス社の他社留学に関する説明はこちら
http://nanasan.essence.ne.jp/

他社留学事業を説明した画像です

3 【現代の遣唐使】地方と東京をつないでいく

米田さんの思いは、「地方活性化」にも及びます。米田さんは、その思いを「現代の遣唐使」という表現で話してくださいました。飛鳥時代から平安時代にかけ、日本の礎(技術、政治、文化、宗教)に大きな影響を与えたのが、日本から「唐」に派遣されていた「遣唐使」です。遣唐使も、まさに「有能な人財を全く見たこともない世界に送り込むことで成長の機会を得られる」という制度でした。米田さんは、「現代の遣唐使」になぞらえて、地方の企業から東京の企業へ社員を送り込み、学びの機会を創出するという事業にもチャレンジされています。

例えば、青森県六ヶ所村に所在する日本原燃株式会社の例を見てみましょう。同社の2017年度の売り上げは2600億円超、従業員数も2700人を超えています。今回、この地元の超優良企業である日本原燃社から、都会にあるユニリーバ・ジャパン社の人事や、サイボウズ社の総務にと、日本でも先端的な取り組みをしている企業で「現代の遣唐使」が実施されたそうです。

既成概念の中で硬直した企業組織、若い世代が違和感を持っても過去の事例の中では発言すらはばかられる。日本原燃社では、こうした状況を打破すべく、「現代の遣唐使」を導入したのかもしれません。社員は、東京の企業で、全く違った組織運営の在り方や、仕事への取り組み方について現場で学ぶことができます。最先端の取り組みを行っている企業で経験した実績を、遣唐使となった社員が自社に持ち帰ることで、実際に、社内が大いに活性化しているそうです。

「現代の遣唐使」では、「既にある良きもの」をどんどん都会から持ち帰り、地方で生かしていくことがポイントです。今まで、地方へ有能な都会人財を送り込むことで活性化を生むケースは見受けられました。「都会人財が地方へ行く」という一方通行ではなく、双方向、特に地方から都会への遣唐使制度の中に、地方活性化の早道があるかもしれないと感じました。

4 副業解禁、その時代に必要とされる人財に大切なこと

働き方改革、副業解禁といったように社会が大きく変化していく中だからこそ、「人財」として大切にしなければならないことがあると、私は思っています。

あるスタートアップ企業で部長級以上の会議に出席したときに居合わせた、60歳以上の元商社出身の人生の先輩。この会社で必要なことへの言及は全くせず、終始、自分の経歴を一生懸命プレゼンするだけでしたが、結果として、その方は多額の報酬要求をされました。こうした、過去の人脈を頼り、電話一本で「この会社の社長と会え!」などと言う、強引な顧問の時代もそろそろ終わりに近づいていると感じます。

米田さんも、これから副業解禁時代を生き抜くためには、【再現性】と【マインド】という2つのキーワードが特に重要だと話します。

米田さんの会社で中核事業の一つである、プロ人材の紹介サービス事業である【プロパートナーズ事業】には、大企業で現役として働いている方や引退した方が「プロ候補」としてたくさん面談に訪れるそうです。しかし、そのうちの80%以上はお引き取りを願うのだそうです。

【再現性】と【マインド】という2つのキーワードを持っていない、それがお引き取りを願う理由だと米田さんは言います。有名企業に所属していただけ、肩書があるだけで、現場で実践してきたビジネススキルや成功体験を持ち合わせていない。また、やってきた仕事は単に所属企業のルーティンワークで、自社以外に持ち出して活用したり、再現できたりするものは何一つない。そんな方が少なくないと言います。

加えて、【マインド】もなく「大企業にいた」という上から目線で、そのことが地方の中小企業の現場では全く役に立たないことを理解していないようです。「自分が何に、どうしたら役に立てるか?」を必死で考える言葉が出る、そして行動する。そうした他者貢献のマインドがあってこそ副業ができるのです。【再現性】と【マインド】。この2点がないと、副業時代を生き抜くことは難しいと米田さんは話します。

●エッセンス社のプロパートナーズ事業に関する説明はこちら
https://www.essence.ne.jp/propartners

プロ人材の活用の広がりを説明した画像です

【再現性】と【マインド】。この2つを意識し、多様化し、激変していく世の中で活躍できる人材が「人財」となり、地方と都会の両方が活性化することを願いたいと思います。

以上(2019年4月作成)

創業後3年までに陥りやすい苦境と要因

創業する人たちは、夢や目標を持って第一歩を踏み出します。「不便なサービスを使いやすくしたい」「地域社会に貢献したい」「子どもたちに良い未来を与えたい」「これまでよりも収入を増やしたい」「成長する会社にしたい」などさまざまです。

こうして夢や目標のためには苦労もいとわないと決意して創業するのですが、創業後に待っている現実は、想像していたよりもはるかに大変なことが分かります。日本政策金融公庫の創業融資のアンケートでは、約90%の経営者が何らかの悩みを抱えています(日本政策金融公庫「2017年度新規開業実態調査」)。経営に問題があるのはある意味で当然かもしれませんが、その“深さ”や“大きさ”が想像を超えるということでしょう。

経営者はこうした問題をどのように対処していけばよいのでしょうか。主に創業3年以内の企業を想定し、筆者の経験を交えつつ紹介していきます。

1 最大の悩みは顧客・販路開拓

前述した日本政策金融公庫「2017年度新規開業実態調査」を、もう少し詳しく見てみましょう。「開業時に苦労したことおよび現在苦労していること」という質問に対して、「特にない」と答えたのは9%にすぎません。逆にいうと、91%の企業が何らかの苦労を抱えていることになります。

開業時に苦労したことおよび現在苦労していることのアンケート結果を紹介した画像です

現在苦労している割合が高いのは、「顧客・販路の開拓」「資金繰り、資金調達」「従業員の確保」の順となっています。まずは、自分たちの製品やサービスの販売先を確保しなければなりませんし、収益が安定するまでは運転資金の調達が生命線となります。さらに、そうした状況であっても、将来への投資として設備資金が必要なことがあるなど、営業や調達に関する経営者の手腕が試されます。

また、特徴的なのは、従業員に関する苦労が開業時よりも開業後のほうが高くなっていることです。企業の成長に応じて従業員の確保や教育が必要となります。また、上のグラフからは読み取れないものの、創業メンバーとトラブルになることも珍しくありません。

2 創業後の苦境期を乗り切ることの意義

創業後にたどる軌跡は企業によって千差万別です。「創業後なかなか売上が上がらず赤字が続いている」というケースがあれば、「創業当初は順風満帆で期待通りの収益を得られたのに、3年目に入った頃から減速し、ついに赤字に転落した」というケースもあります。いずれにしても、創業後3年以内の企業は不安定な状態が続いているケースが多く、この時期をどのようにして乗り越えるかが企業存続の鍵を握ります。

創業後3年以内の苦境期を何とか乗り切ることができれば、その経験は経営者にとって大きな糧になります。企業経営ではその後も問題が続きますが、それに対処する「企業維持力」が備わってくるのです。

事業経営は、「軌道に乗って安定すればその後は盤石」というような右肩上がりの曲線を描くことは少なく、「山あり谷あり」となるのが実情です。谷に落ちたときにうまく脱出できることが、長く続く企業となるためには不可欠だといえます。

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3 経営の停滞要因を分析して打開策を講じる

1)早急な打開策が必要

創業後3年以内の時期に、「経営状態が思わしくない」と感じていたら、早急に打開策を講じる必要があります。特に中小企業においては、経営の停滞は資金残高の減少に直結します。この時期に停滞するということは、資金繰りが「待ったなし」という状態であることが多いので、時間的な余裕があまりないかもしれません。

万一、停滞が続いて資金が底をつくようなことになると、倒産や廃業という事態になりかねません。一刻も早く有効な方策を考え、実行する必要があるでしょう。

2)停滞要因となる経営上の問題点とは

まずは、冷静に停滞を招いている要因を探ってみましょう。中小企業の経営の構成要素を大まかに分けると、「経営戦略・経営者」「マーケティング」「組織・人材」「運営管理」「財務管理」の5分野となります。創業後間もない企業は、これらの一部、あるいは全てに問題を抱えていることが少なくありません。

では、具体的にどのような問題が生じるのか。創業後に停滞している企業が抱える問題点の例をまとめると次のようになります。

開業時に苦労したことおよび現在苦労していることのアンケート結果を紹介した画像です

創業後3~5年で経営が停滞している企業は、特に「経営戦略・経営者」「マーケティング」「財務管理」に問題を抱えているケースが多いものです。まずは、どこに停滞要因があるのかを探ってみましょう。

3)安易に場当たり的な方策に走らない

停滞要因を特定できたら、打破するためのアイデアを何とかひねり出して実行に移していきます。とはいえ、効果的な解決策がなかなか思いつかず、苦境期が長く続くことも珍しくありません。

業況が停滞し資金が減少してくると、「早く何とかしなければ」と焦ります。すると、畑違いでも手っ取り早く稼げそうなことに注力する、どこからか高い利率のお金を借りるなど、場当たり的な方策に走りがちです。例えば、安易に利率の高い融資を利用するなど、短期的な解決策をとるのは危険です。当面の急場をしのぐことができても、経営改善策がなければすぐに資金が枯渇してしまいます。

4)創業時の事業計画を振り返る

厳しいときにヒントを与えてくれるのが、創業前に作成した「事業計画書」です。事業計画書を書いたとき、どのような熱い思いで、どのような世界を実現したいと考えていたのかを思い出してください。相当な期間をかけて事業計画を練り上げたはずです。

また、「誰に、何を、どのようにして売るか」「広告宣伝はどうするか」といったことに関しても、さまざまなアイデアがあったはずです。創業志望者のほとんどは、創業前に事業計画書を作りますが、いざ創業した後はその内容を忘れ、目の前の活動に翻弄されてしまうことが多いのです。

事業計画を練っていた頃に考えていたアイデアを思い出してみると、「いいことを考えていたのに実行していない」というものがたくさんあるはずです。苦境のときこそ、改めて事業計画を見直し、未着手のアイデアを実行に移してみましょう。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年4月10日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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キャッシュフロー計算書(CF)から読み取る経営情報

第3回では、「キャッシュフロー計算書」を取り上げます。キャッシュフロー計算書を読むことで、経営活動の種類別資金収支や、会計上の利益のうち、現金化されている部分などを把握すると、適正な資金繰りや資金計画の立案などに役立ちます。

なお、キャッシュフロー計算書は貸借対照表や損益計算書とのつながりを押さえることが大事なので、以下のコンテンツも併せてお読みください。

1 キャッシュフローとは「キャッシュ」の収支

キャッシュフロー計算書(CF)とは、貸借対照表と損益計算書に続く第三の財務諸表であり、金融商品取引法の開示規制を受ける上場会社などに作成が義務づけられています。中小企業にはキャッシュフロー計算書の作成義務はありません。

キャッシュフローとは、キャッシュ(Cash)の流れ(Flow)、つまり資金収支のことです。キャッシュフロー計算書では、1事業年度中のキャッシュの流入額と流出額、結果としてのキャッシュ増減額が表示されます。キャッシュフロー計算書での「キャッシュ」には、手許現金(硬貨や紙幣など)、要求払預金(普通預金や当座預金など)だけでなく、容易に換金が可能であり、かつ、価格変動リスクが低い短期投資(取得日から満期日または償還までの期間が3カ月以内のもの)も含まれます。

キャッシュフロー計算書のポイントを示した画像です

キャッシュフロー計算書を見ることで、会社がどの活動からお金を増やしたか、または戦略的にお金を使ったか、そして、資金の増減結果が分かります。

2 資金収支を3つに色分けする

キャッシュフロー計算書では、会社の経営活動を、営業、投資、財務の3つの活動に区分し、それぞれの活動ごとにキャッシュフローを表示するとともに、結果として、1年間でキャッシュが増えたか減ったかを表示します。

営業活動キャッシュフローには、経常的な損益計算の対象である取引の他に、法人税等の支払額、投資活動および財務活動以外の取引によるキャッシュフローが表示されます。

営業活動では、収入が支出を上回る、つまり営業活動キャッシュフローはプラスであるべきです。営業活動キャッシュフローがマイナスの場合には、所有資産の売却代金や、借入金調達などで資金繰りをしなければなりません。

投資活動キャッシュフローには、固定資産の取得と売却、貸付金の貸付けと回収、投資有価証券の取得と売却によるキャッシュフローを計上します。設備投資などに積極的に資金を支出すれば、投資活動キャッシュフローはマイナスとなり、固定資産を売却することで投資活動キャッシュフローはプラスとなります。

財務活動キャッシュフローには、営業活動と投資活動を維持するための資金調達および返済によるキャッシュフローが計上されます。借入金や増資などで資金調達をすれば、財務活動キャッシュフローはプラスとなり、積極的に債務の圧縮を進めるならば、財務活動キャッシュフローはマイナスとなります。


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3 「利益」はOpinion、「Cash」はFact!

損益計算書での「利益」と手許に残る「お金」にズレがなければ、利益管理だけで経営のかじ取りは可能です。

しかし、損益計算書の収益や費用は現金の出入り(現金主義)ではなく、会計的な事実が発生したときに発生主義で計上しなければなりません。そのため、収益から費用を差し引いて求める利益と同額の資金が残っているとは限らないのです。

例えば、商品や製品を出荷すれば、売上代金の回収に関係なく売上高が計上されるため、損益計算書の売上高と、キャッシュフロー計算書の売上収入は一致しません。

また、損益計算書の売上原価とは、仕入れた商品のうち売上計上した商品の原価です。仕入れた商品が売れ残ったならば、その商品の仕入代金は費用に計上されず、在庫として資産に計上されます。売上原価と商品仕入に係る支出は一致しないのです。

翌期分の販売管理費を前払いすることもあれば、当期分の販売管理費が期末時点で未払いになっていることもあります。損益計算書の販売管理費とキャッシュフロー計算書の販売管理費支出は同額ではありません。結果として、収益から費用を差し引いて求める「利益」と同額の「資金」が、手許に残っているとは限らないわけです。

「利益はOpinion、CashはFact」という言葉の通り、損益計算書の利益は多少調整することができますが、資金の動きは繕えません。損益計算書の利益だけで会社の業績を評価するのではなく、キャッシュフロー計算書で会社の資金力を判断することが大事なのです。

4 「利益」と「資金」が一致しない5つの理由

もうかってもお金がないことを「勘定合って銭足らず」といいます。そのような事態を招かないために、損益計算書の「利益」とキャッシュフロー計算書の「資金」のズレを生む5つの原因を押さえておきましょう。

1)信用取引(ツケ売りとツケ仕入れ)

「信用取引」では、売掛金で回収を待たされる代わりに、買掛金で支払いも待ってもらえます。ツケで売り上げた場合でも商品を出荷すれば、売上高と利益が計上されます。

しかし、売掛金を回収するまで、または手形が期日落ちするまで資金は増えません。売上代金を現金回収するまで、売掛金や受取手形は「絵に描いた餅」なのです。

反対に原材料や商品をツケで仕入れた場合には、支払期日まで買掛金の支払いを猶予してもらえるので、資金繰りが楽になります。

2)棚卸資産(在庫)

当期に仕入れた商品、または製造した製品が全て当期中に売却され、売上代金を無事回収すれば棚卸資産に投資したお金を回収できます。しかし、実際には、商品仕入に投資した金額を売上入金という形で回収し、現金化するには時間を要します。

しかも、通常、売上代金の回収期日よりも先に、商品仕入代金の支払期日が到来することがほとんどです。このような場合には、売上に係る入金の前に、支払代金を用立てしなければなりません。

3)元金返済

借入金に対する支払利息は損益計算書の費用に計上されますが、借入金の元金返済は費用ではないので損益計算書に計上されません。諸費用を支払った後の当期純利益から追加的に元金返済額の資金が流出するのです。

4)設備投資

設備投資では購入時に資金が流出しますが、購入価額は一時の費用になりません。資産ごとの耐用年数に応じた減価償却費を計上することにより、購入後の事業年度で徐々に費用化されます。同時に、減価償却費は資金流出を伴わない費用であるため、耐用年数にわたって購入時の資金流出額を会計的に回収していくのです。

5)法人税等の納付

前事業年度の決算に係る法人税等の納期限は、原則として、当事業年度開始の日から2カ月以内であるため、法人税等は後払いです。つまり、当事業年度に支払われる法人税等は前事業年度の法人税等になります。このことから、利益と支出に期間的なズレが生じることになります。

以上

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第6回 世界最大級の起業家コミュニティStartup Grind、渋谷でシリコンバレーを体感しよう!/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

皆さま、こんにちは。いつも私のりそコラのコラムを読んでくださり、SNSでシェアしていただき、愛りがとうございます(愛+ありがとう)。今月は、シリコンバレー発祥で、世界120カ国、350都市、100万人の起業家をつなぐイベント「Startup Grind」についてご紹介します。スタートアップ起業家、中小企業、大企業のオープンイノベーション担当者もたくさん、そして、これから起業を考えてる学生もたくさん参加しています。

help others, give first, make friends」を理念としているStartup Grindは、日本の起業家や中小企業の経営者にとって、さまざまな刺激と気付きを与えてくれるでしょう。イベントの趣旨や第一線で活躍するゲストスピーカーなど、Startup Grindの魅力を皆さまにお届けします!

Startup Grindは、知識や経験のシェアを通じて、事業の更なる発展を目指しています。シリコンバレーでは、毎年グローバルカンファレンスが盛大に2日間開催され、世界中から8000人以上もの起業家や投資家が集まります。

登壇者は、シリコンバレーの著名な起業家やトップのベンチャーキャピタリスト、ハーバードビジネススクールの教授までさまざまです。スタートアップのブースやネットワーキングが充実していることも特徴で、大いににぎわっています。

シリコンバレーから世界に広がっているこのStartup Grindが、実は日本に上陸しているのをご存じですか? 毎月、渋谷にあるPlug &Play Shibuya powered by 東急不動産にて、Startup Grind Tokyoとして開催されているのです。

Startup Grind Tokyoは、Startup Grindの日本唯一のチャプターで、毎月、著名な起業家や成功を収めた経営者また投資家などをお招きします。最初の1時間は、チャプターディレクターとゲスト起業家が対談します。その後の30分間は会場の参加者からゲスト起業家への質問タイム、さらにその後の30分間はネットワーキングタイムとなります。YouTubeに対談の様子がアップされますが、質問タイムは完全にオフレコなのでアップされません。参加者はゲスト起業家から直接貴重なアドバイスなどを受けることができ、これがStartup Grind Tokyoの大きなメリットの1つです。

対談の写真です

私自身、シリコンバレーでStartup Grindに参加したこともあり、Startup Grindが大好きです。憧れのトップ起業家などを生で見ることができたり、挨拶をすることができたりしたこともあります。

実際に、日本にStartup Grindを持ってきた宇敷珠美氏とも、シリコンバレーのStartup Grindで昨年お会いすることができました。シリコンバレーで当時私が開催していたStartup Fireにもお越しいただき、日本に帰国するたびに交流させていただいて、今年1月には、コーチャプターディレクターとしてジョインさせていただく運びとなりました。

今年の2月、3月のイベントでは、インタビュアーとして、ゲスト起業家の方と対談させていただきました。

対談の写真です

2月に対談させていただいたゲストスピーカーは、スピーカーとして、シリコンバレーをはじめ世界中で活躍されるMICHELLE E. MESSINA(ミシェル・E・メシナ)氏です。ミシェル氏は、エンジェル投資家として、また、数々の事業を手掛ける起業家、起業家精神やスタートアップ事業の促進、エコシステム・アーキテクチャに携わる作家として幅広く活躍されています。

ミシェル氏は、65カ国で事業開発サポートを行った経験からスタートアップへの成長支援をされており、特に、ピッチ(短時間で行うプレゼンテーションの一種)指導を行う専門家として著名です。企業のピッチ指導を担当し、Microsoft Imagine Cup 2017を含むStartup Grind 2017&2016など、多数のイベントにて、数多くの企業を優勝に導いた実績があります。

そんなミシェル氏に、シリコンバレーのスタートアップの話や日本のスタートアップへのアドバイスを聞きながら一番印象に残った彼女のメッセージを、ここでシェアさせていただきます。彼女が大切にしているのは、「ワークライフバランスではなく、ワークライフブレンド」だそうです。アントレプレナー(起業家)にとって、人生もビジネスもバランスを取るのが良いのではなく、「どう上手に自分たちなりにブレンドする(種類の違うものを混ぜ合わせる)かが大切」ということでした。

このことは、起業家の他にも、働く全ての人に参考になる考え方なのではないでしょうか。

対談の写真です

ミシェル氏のベストセラー本「Decoding Silicon Valley」にサインをいただきました。シリコンバレーのことがよく理解出来るので、おススメです!

いつも愛りがとうございます。森若幸次郎ことジョンがお届けいたしました。

●Startup Grind Tokyo
https://startupgrind.tokyo/

●Startup Grind TokyoのFacebookページ
https://www.facebook.com/startupgrind.tokyo/

以上

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4つの安全管理措置の概要と押さえておくべきポイント

個人情報保護法第20条では、「個人情報取扱事業者は、その取り扱う個人データの漏えい、滅失又はき損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければならない」とされています。

具体的には、個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」の「8(別添)講ずべき安全管理措置の内容」(以下「ガイドライン」)に、講じなければならない措置や当該措置を実践するための手法例が示されています。

ガイドラインを基に、中小規模事業者(従業員数100人以下の個人情報取扱事業者)の視点から、どのような対応が求められるのか確認していきましょう。

1 基本方針の策定

ガイドラインでは、「個人データの適正な取扱いの確保について組織として取り組むために、基本方針を策定することが重要である」とされています。基本方針の策定や公表は義務ではありませんが、個人データの取り扱いに係る規律の整備や安全管理措置を講じるためにも、基本方針を策定しておくことが大切です。実際、個人情報保護方針(プライバシーポリシー)として、基本方針を公表している会社も多いですが、これが会社としての姿勢を示すものになります。

基本方針に定める項目の例として、ガイドラインでは「事業者の名称」「関係法令・ガイドライン等の遵守」「安全管理措置に関する事項」「質問及び苦情処理の窓口」等を挙げています。これらの事項を網羅するのが望ましいといえます。

個人情報保護方針の内容を示した画像です

2 個人データの取り扱いに係る規律の整備

ガイドラインでは、「取り扱う個人データの漏えい等の防止その他の個人データの安全管理のために、個人データの具体的な取扱いに係る規律を整備しなければならない」とされています。

個人データの取得、利用、保存、提供、削除・廃棄などの段階ごとに、取扱方法、責任者・担当者およびその任務などについて定めた「個人情報取扱規程」を策定することが考えられます。

なお、ガイドラインでは、中小規模事業者に対しては、「個人データの取得、利用、保存等を行う場合の基本的な取扱方法を整備する」という手法が例示されているものの、詳細な規程を策定することまでは求めていません。

例えば、「利用目的を特定し、同意を得て個人情報を取得する」「取得した個人情報を利用目的の範囲内で使う」「取得した個人情報について安全管理措置などを講じて適切に保管する」「取得した個人情報について本人から開示請求等があったら対応する」といった個人情報保護法の基本をルール化し、後述する安全管理措置でより具体的なルールを定めるとよいでしょう。

(注)中小規模事業者とは、従業員の数が100人以下の事業者です。ただし、その事業の用に供する個人情報データベース等を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数の合計が過去6カ月以内のいずれかの日において5000を超える者と、委託を受け個人データを取り扱う者は、中小規模事業者には含まれません。

3 組織的安全管理措置

ガイドラインでは、組織的安全管理措置として、次に掲げる措置を講じなければならないとされています。

  • 組織体制の整備
  • 個人データの取扱いに係る規律に従った運用
  • 個人データの取扱状況を確認する手段の整備
  • 漏えい等の事案に対応する体制の整備
  • 取扱状況の把握及び安全管理措置の見直し

中小規模事業者以外の個人情報取扱事業者に対しては、措置の内容に応じた手法が細かく例示されています。一方、中小規模事業者における手法の例示を見ると、中小規模事業者は最低限、次の対応をすればよいと考えられます。

  • 個人データを取り扱う従業者が複数いるならば、その責任者を決めておく
  • ルール化した個人情報保護法の基本に従って個人データを取り扱っているか、責任者が確認する
  • 情報漏えい等が発生したときの、従業者から責任者への連絡体制をあらかじめ決めておく
  • 個人データの取り扱いについて、責任者が年に1回は点検し、必要に応じて見直す

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4 人的安全管理措置

ガイドラインでは、人的安全管理措置として、「従業者に、個人データの適正な取扱いを周知徹底するとともに適切な教育を行わなければならない」とされています。この従業者の教育に関しては、中小規模事業者に対する軽減はありません。

ガイドラインでは、次の手法が例示されています。

  • 個人データの取り扱いに関する留意事項について、従業者に定期的な研修等を行う
  • 個人データについての秘密保持に関する事項を就業規則等に盛り込む

例えば、毎年、個人情報保護に関する研修を実施することや、個人データを故意に外部に漏らすなどした場合には懲戒処分の対象となることを就業規則に定めて、従業者に周知することなどが考えられます。研修のやり方は、全従業者を対象とした講義形式に限りません。部署ごとに個人データの取り扱いに関する責任者からの講話を行うことや、eラーニング、標的型メール攻撃を疑似体験する抜き打ちの訓練など、さまざまな形式が考えられます。

5 物理的安全管理措置

ガイドラインでは、物理的安全管理措置として、次に掲げる措置を講じなければならないとされています。

  • 個人データを取り扱う区域の管理
  • 機器及び電子媒体等の盗難等の防止
  • 電子媒体等を持ち運ぶ場合の漏えい等の防止
  • 個人データの削除及び機器、電子媒体等の廃棄

中小規模事業者以外の個人情報取扱事業者に対しては、措置の内容に応じた手法が細かく例示されています。一方、中小規模事業者における手法の例示を見ると、中小規模事業者は最低限、次の対応をすればよいと考えられます。

  • 個人データを取り扱う従業者以外の者が、のぞき見などをできないように工夫する
  • 個人データが記録されたパソコンやUSBメモリ、個人データが記載された書類などは、施錠できるところに保管して、盗難されないようにする
  • 個人データが記録されたパソコンやUSBメモリ、個人データが記載された書類などを持ち運ぶときは、パスワードを設定したり、封筒に入れた上で鞄に入れたりするなど、すぐに情報が漏えいしないように備える
  • 個人データが記録されたパソコンやUSBメモリ、個人データが記載された書類などを廃棄するときは、廃棄したことを責任者が確認する

6 技術的安全管理措置

ガイドラインでは、技術的安全管理措置として、次に掲げる措置を講じなければならないとされています。

  • アクセス制御
  • アクセス者の識別と認証
  • 外部からの不正アクセス等の防止
  • 情報システムの使用に伴う漏えい等の防止

中小規模事業者以外の個人情報取扱事業者に対しては、措置の内容に応じた手法が細かく例示されています。一方、中小規模事業者における手法の例示を見ると、中小規模事業者は最低限、次の対応をすればよいと考えられます。

  • 個人データを取り扱うパソコンと、それを使える従業者を決めておく
  • そのパソコンには、ID・パスワードの認証を設定しておく(ID・パスワードの共有はしない)
  • OSは常に最新にしておく
  • セキュリティ対策ソフトなどを導入する
  • メールで個人データの含まれるファイルを送信するときは、そのファイルにパスワードを設定する

このように、個人情報を事業で取り扱う事業者(個人情報取扱事業者)は、個人情報保護方針(プライバシーポリシー)を策定し、法令やガイドラインに従って社内ルールを整備し、4つの側面(組織的、人的、物理的、技術的)から安全管理措置を講じることが求められます。

個人情報保護方針の内容を示した画像です

実際に個人データを取り扱うのは従業者になるわけですが、個人情報取扱事業者は、個人情報保護法第21条に基づき従業者に対する監督をしなければなりません。

次回は、個人情報の取り扱い実務に携わる従業者(従業員、派遣労働者等)の監督について紹介します。

以上

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農地所有適格法人の設立~農事組合法人の場合~

書いてあること

  • 主な読者:農業の法人化を検討している事業主
  • 課題:法人化に当たり、どのような形態が向いているのかを知りたい
  • 解決策:農事組合法人は、内部自治が認められており、1つの集落内にある複数の農家が共同出資をして手掛ける「集落営農」を法人化したい場合に適している

1 農業法人の区分と法人化するメリット

1)農業法人と農地所有適格法人の区分

農業法人とは、法人形態で農業を営む農家の総称です。農業法人の区分は次の通りです。

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2)農業経営を法人化するメリット

1.経営意識の転換

農地所有適格法人になることで、農業経営に掛かる経費と家計の明確な区別が必要となり、コスト削減を意識するなど、農家が経営責任に対する自覚を持ちやすくなります。

2.対外信用力の向上

農地所有適格法人には財務諸表の作成が義務付けられているため、経営内容を数値で示すことができ、金融機関や取引先への対外信用力が向上します。

3.農業従事者の福利厚生面の充実

農地所有適格法人になることで、農業従事者の福利厚生を充実させやすくなり、外部からの新規就農者が見込みやすくなります。

4.機械・設備費の削減

経営を一本化することで機械や設備を共有することができ、効率的な利用やコストの削減が可能となります。

5.税制上の優遇

農地所有適格法人の場合、課される法人税が定率課税となる、役員報酬が損金として処理できる、欠損金の繰り越し控除が可能な期間が9年間(個人の場合は3年間)になるなどの税制上の優遇措置があります。

2 農事組合法人の形態を取る農地所有適格法人の概要と設立手続き

1)農事組合法人の概要

農事組合法人の根拠法は「農業協同組合法」(以下「農協法」)です。同法第72条の4において、農事組合法人の目的は「構成員共同の利益増進」とされており、構成員の公平性が重視されます。

農事組合法人(2号)になるためには、3人以上の自ら農業を営む個人または農業に従事する個人(以下「農家」)が共同して出資しなければならず、構成員は全員が原則として農民等(注)でなければなりません。1人当たりの出資額は全体の50%以下とする制限が設けられており、また、議決権は出資額にかかわらず1人1票制とされています。従って、農事組合法人(2号)は、等質的で対等な小規模農家が共同して規模の拡大または経営の効率化を図るといった目的がある場合に適しています。

(注)農民等とは、農事組合法人(2号)の構成員要件として、自ら農業を営む個人または農業に従事する個人の他、農協、農地保有合理化法人、農事組合法人から物資の供給または役務の提供を受ける者が含まれます。

北海道農業経営局農業経営課「農地所有適格法人制度の概要」によると、農事組合法人の概要は次の通りです。

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農事組合法人は、設立時に組合員から1人以上の理事を選任します。それ以外の機関設計や運営については、組合員同士の話し合いによる内部自治が認められており、定款に定める内容の自由度が高いといえます。このため、集落内の複数の農家が共同出資して農産物の生産を行う「集落営農」を法人化する場合に、農事組合法人の形態が選択されることがあります。

農事組合法人は株式会社へ組織変更することができます(農協法第73条の2、同法第73条の3)。一方で、農事組合法人から合同会社・合名会社・合資会社への組織変更は法律上の規定がないため、一度解散の手続きを取る必要があります。

2)農事組合法人の設立手続き

農事組合法人の定款への記載事項は、農協法第72条の16によって規定されています。

農林水産省「農事組合法人設立までの流れ」によると、農事組合法人設立の手続きは次の通りです。

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農事組合法人の設立には、定款の認証や設立時の調査などが不要であり、会社法人である農地所有適格法人の設立に比べて、簡素な手続きで済みます。

農事組合法人の設立を管轄する官公庁は都道府県です。ただし、活動範囲が複数の都道府県をまたぐ場合は所轄の農政局に届け出をします。

また、農地の権利(所有または賃借により農地を耕作する権利)を持つ法人であるため、農事組合法人の設立の際には、各市町村の農業委員会に対して農地の権利の許可を申請する必要があります。

以上(2019年4月)

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