【朝礼】「部下が成長しない」と嘆く前にやるべきこと

先日、国によって小学校の座席の並べ方が違うという話を聞き、とても面白かったので紹介します。まず、日本では、教師が前に立ち、子供たちは皆、教師のほうを向いて座ります。基本的に教師が発言し、子供たちは、教師の話を聞いて教わるか、教師の問いに答える形で授業が進みます。

一方、フランスでは、座席を円形に並べ、子供たちは皆、互いの顔が見えるように向かい合って座ります。教師がその真ん中に立ち、問いを投げると、子供たちが主役となって皆で大いに議論して授業を進めるのだそうです。

また、イギリスでは、教室に幾つかの大きなテーブルがあり、子供たちは5~6人で座ります。分からないことがあれば、同じテーブルの子供同士で話し合い、助け合いながら授業を進めていくそうです。

同じ国でも学校の方針などで座席の並べ方はさまざまかもしれませんが、国によってこれだけ違いがあるということに、私はとても驚きました。

注目したいのは、「座席の並べ方」という環境づくりを工夫し、子供たちにさまざまな学びの「働きかけ」をしている点です。

例えば、子供たちが皆で大いに議論するフランスでは、幼いうちから自分の考えを持ち、主張することを学ぶことができます。テーブルごとに助け合うイギリスの場合、チームワークを覚えられます。また、日本では、人の話を聞いて、教わるといった、大切な姿勢が身に付いていきます。

会社と学校は、もちろん違います。しかし、人を育てていく、人が成長するよう「働きかけ」をしていくという意味では、通じる部分があると私は考えています。

特に、部下を指導する管理職は、部下への「働きかけ」の仕方を考えなければなりません。

私は四半期に一度、皆さん一人ひとりと面談をしていますが、管理職から部下について聞く話は、残念ながら良くない内容が少なくありません。しかも、毎回同じようなことで困っているように聞こえます。そこで、管理職の皆さんに尋ねます。

「部下が自分で考えない」と嘆く管理職は、部下が自分の頭で必死になって考える環境をつくってきましたか。すぐに答えを教えてしまっていませんか。「部下が意見を言ってくれない」「何を考えているか分からない」と言い続けている管理職は、部下が意見を言う機会をしっかりつくってきたでしょうか。忙しいということを理由にして、部下のことを放ってきてはいませんか。

部下がいつまでたっても変わらないということは、管理職が管理職として成長していないということです。100通りの「働きかけ」で部下が成長しないのであれば、管理職は、工夫して、101通り目にチャレンジしなければなりません。

仕事の中で一番難しく、そして一番大切なのは「部下を育てる」ことです。管理職の皆さん、自分の部下への「働きかけ」を、改めてもう一度、考えてみてください。

以上(2019年2月)

pj16945
画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】「マニュアル」は超えるためにある

私は経営者仲間や皆さんから、「既成概念などにとらわれず、本当にお客様のためになることを考えている」と言ってもらうことがあります。とてもありがたいことですが、実は、昔からそういう考えを持っていたわけではなく、きっかけは学生時代のアルバイトで大失敗したことにあります。今日は、皆さんにその話をしたいと思います。

大学生の頃、私はテーマパークの係員としてアルバイトをしていました。主に、パレードなどがあるときに、お客様を誘導するのが仕事です。

ある日のことです。その日はパレードで大混雑で、営業時間が過ぎた後も辺りは騒然としていました。出入り口付近で列をなして帰ろうとしているお客様を誘導していると、子供を抱えて猛烈な勢いで逆走してくる1人の中年男性が見えました。その人は、一度退場したにもかかわらず、また無理に入場しようとしているのです。「もう今日は終わりです。すみませんが入れません!」と私が全力で止めに入ると、その男性が怒鳴り返してきました。「子供の靴が片方ないんだ! 中に入って探してもいいだろう!」

私の対応は、本当にひどいものでした。「でも、一度出た人は、もう入れない規則なんです。入れるかどうか、上の人に聞かないと……」と途方に暮れてしまったのです。見かねたアルバイトの先輩が、「どうぞ入ってください! 手分けして一緒に靴を探しましょう!」と男性を招き入れ、1時間後に無事、靴を見つけることができました。

私は、自分が恥ずかしくてなりませんでした。日ごろから「お客様が第一」と考えてアルバイトに励んでいるつもりでしたが、とっさに、「マニュアル通りに規則を守らなくては。何かあったら後で叱られる」と思ってしまったのです。

この大失敗があったおかげで、私は自分が「自分視点でしかものを考えていない」ことに気付くことができました。だからこそ、本当にお客様や相手の立場に立っているかを、常に自問自答するようになったのです。

皆さんも、日ごろ、私の失敗と同じようなことをしていないでしょうか。お客様が困っているときや、難しい要望を言ってきたとき、「マニュアルでは禁止されているから」と断っていませんか。

確かに、当社にはお客様対応のマニュアルがあります。しかし、マニュアルが全てではありません。お客様の状況などによって取るべき対応は異なります。むしろ、現実のビジネスでは、マニュアル通りにいかないことが多いでしょう。

お客様のことを一番分かっているのは、日ごろ、現場でお客様と接している皆さんです。皆さんが本当にお客様のことを考えて、「こうしたほうがよい」と思うのであれば、ぜひ、その通りに行動してください。たとえ、それがマニュアルに沿っていなくても、否定したり叱ったりすることはありません。逆に、お客様のことを考え、マニュアルを超えてくれた皆さんに感謝し、その判断を、私は心から支持します。

以上(2019年2月)

pj16944
画像:Mariko Mitsuda

注目される民泊ビジネス

今回はシェアリングエコノミーの中でも、2020年に開催される東京五輪に向けて話題になっている“民泊”についてお伝えしていきます。

米国のAirbnbを筆頭に、さまざまな企業が民泊関連サービスの市場に参入しています。ただし、民泊を提供する場合は、日数の制限など業法との兼ね合いが問題となるなど課題もあります。

1 従来の宿泊業と民泊の違い

民泊とは、“有償で自宅などを貸し出し、人を泊める”ことです。遠方から来た友人を無料で自宅へ泊めることはよくある光景ですが、近年、日常での関係性がない他人を、有償で自宅(一般住宅)に宿泊させる、つまり宿泊業ではないものの、事業として宿泊サービスを提供する動きが起こってきました。

日本でも農家などが都会の若者などを受け入れて農業体験と宿泊をセットにした“農泊”が話題になっています。海外ではシェアリングエコノミー人気の中、転勤で住むことのできない自宅を使って収益化を図りたい人や、副業で収入を増やしたいという思いを持つ人を中心に、民泊事業が普及。「インターネット上で空き部屋と泊まりたい人をマッチングするサービス」として、日本へも上陸しました。

日本国内では、ホテルや旅館へ泊まるのが主流。民泊を選ぶユーザーは、価格の安さや他の宿泊者との交流を求める層、すなわち若い旅行客や学生などが多く、外国人も少なくありません。一方で、民泊は騒音やゴミ出しなど、近隣住民や管理者とのマナー感覚のギャップがしばしばトラブルに発展することもあるようです。

2 宿泊に関する業法の整理

宿泊を業として行う、すなわち、有償で人を泊まらせるとなると、なんらかの業態に分類されることとなります。従来は厚生労働省が主管となり旅館業法が制定されていましたが、民泊が登場したことで、宿泊業に関しては、現在では次の3つの業法のいずれかの規制を受ける整理となっています。

 1)旅館業法
 2)民泊新法
 3)特区民泊

以降で、それぞれについて見てみましょう。

1)旅館業法

旅館業法における宿泊とは、「寝具を利用して人を宿泊させること」と定義されています。例外として、ネットカフェなどは旅館業法で定義する宿泊を提供している施設には当たらないこととなっています。ネットカフェの椅子はあくまでソファ、ブランケットは寒さ対策ということで、「うっかり眠ることはあっても、元来は寝具もなく宿泊目的で貸し出していない」という整理です。

旅館業法では現在、宿泊を提供する施設は次の3種に区分されており、いずれかに該当すると都道府県知事の許可を得る必要があります。また、宿泊料の他、みなし宿泊料と呼ばれる休憩料、寝具賃貸料、寝具等のクリーニング代、光熱・水道費、室内清掃費などを顧客から受領する場合にも、旅館業法区分の許認可が必要です。

施設別の施設基準などを示した画像です

施設別の施設数の推移をを示した画像です

種別としては旅館営業の施設数が最も多いものの、家族経営や地方の旅館は、特にバブル崩壊後にその経営が厳しくなったこともあり、その数は減少傾向にあります。

2)民泊新法

民泊は、旅館業法で定める施設基準などには合致しない施設、既存の一般住宅で、空き部屋に布団を敷いて人を宿泊させるなどしており、どのように規制するのかという問題が出てきました。

そこで、専用施設の運営ではなく、一般住宅を利用して人を宿泊させる事業について新法が成立しました。これが住宅宿泊事業法、通称・民泊新法(2018年6月15日施行)です。

この法律にのっとって申請をした場合、「届出住宅」となり、消防法令上、防火対象物として分類されます。旅館業法で定められている施設基準ほどではありませんが、ホテルや旅館並みの防火設備(火災報知器、スプリンクラー等)を整えなければなりません。

この法律では宿泊日数が年間上限180日間、有償かつ反復利用が条件となります。特区民泊(詳細後述)では2泊3日以上という下限が存在しますが、民泊新法では1日から可能です。

民泊新法では、次の2つの種類が存在します。

1.家主居住型

住宅提供者が、住まいの一部を貸し出す形態です。最大のメリットは、このタイプかつ宿泊室が50平方メートル以下であれば、防火対象物の対象外とみなされることです。防火設備が不要なことは、民泊開業のハードルを大きく下げるでしょう。また、清掃などの管理を委託する義務もないため、費用負担が軽い半面、洗濯や掃除といったケアが必要になります。

180日制限を鑑みても、気軽に趣味や交流目的で民泊をやってみたい人に向いた制度といえるでしょう。

2.家主不在型

家主が不在のまま、貸し切り状態で貸し出しをする形態です。管理人がいないため、騒音などが発生しやすく、近隣住民とのトラブルのもととなる場合があるようです。また、このタイプは清掃などを管理会社へ委託することとなっています。

こちらにも180日制限があるので、長期出張時の自宅やセカンドハウスなど、長期間家を空けているが少しでも運用益を得たい人に向いていると考えられます。

3)特区民泊

旅館業法の特例を活用した特定の地域で運営が可能な制度で、東京都大田区、神奈川県、愛知県、大阪府と大阪市などが対象となっています。居室の床面積が25平方メートル以上、最低宿泊日数が2泊3日以上という制限があるので、「1泊2日の週末モデル」などを行いたい人にはハードルがやや高くなっています。

趣味かつ副業などで民泊を提供するのであれば、家主同居型が恐らく適していると思われます。一方、事業として民泊を成り立たせて、恒常的に収益を上げていくにはどうしたらよいのでしょうか。

民泊新法にのっとれば、例えば投資家が民泊専用で住宅を借り上げ運用するとしても、稼働率は年間50%が上限となっています。となると、旅館業法の簡易宿所の許認可取得が現実解となってきます。

 また、大手民泊サイトAirbnbでは、2018年6月、民泊収益性改善アドバイスを開始しています。民泊新法による180日制限を超えても運営できるよう、賃貸物件として貸せるようにするなどの支援を行っています。こうした専門家のコンサルティングなどを受けて、収益の改善を図っていく方法もあるかもしれません。


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3 民泊事業に関連するトピックス

1)民泊関連ビジネス

民泊に関連するビジネスは、民泊自体やマッチングサービスを提供するだけにとどまりません。例えば、清掃や受付対応などは家主不在型の施設を運営する場合に大きな課題となるので、これを解決するためのビジネスにも注目が集まっています。例えば、家事代行、無人受付システム、スマートロックなどの関連ビジネスがあります。

2)新たなビジネスモデル

 FinTech(フィンテック)では、QRコード決済などの勃興に対してApple PayやGoogle Payのように、複数のサービスを束ねるプラットフォーム型ビジネスが出現しました。民泊においても同様の動きが出てきています。

その1つが、“ホステルパス”です。株式会社Little Japanが運営し、登録してあるゲストハウスであれば、月額料金の中で泊まれるというもので、回数制限などはありますが、家とよく行く場所が離れている人にとっては注目のビジネスモデルです。

現在、首都圏では多くの宿泊施設が建設されており、一部では供給過多との指摘もあります。しかし、多くのインバウンドが来日する2020年の東京五輪の開催期間中は、宿泊施設が不足するとの予測もあります。

また、インバウンドの中には、日本の日常を体験したいというニーズもあり、民泊への関心は高いものと思われます。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年1月30日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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日本の【欲しい】を作り出し世界へつなげて広げたい! 日本発グローバル企業を増やす。/杉浦佳浩の岡目八目リポート

年間1000人以上の経営者と会い、人と人とのご縁をつなぐ代表世話人 杉浦佳浩氏。ベンチャーやユニークな中小企業の目利きである杉浦氏が、今回紹介する面白い起業家は大村晶彦さんです。

●運営しているメディア【セカイコネクト】
http://world-conect.com/

●会社HP
http://couxu.jp/

 大企業のグローバル化もまだまだ道半ばというところ。中小企業のグローバル化はもっと出遅れ感があると思います。その課題を解決するために起業したCOUXU(コーク)の大村さんについてお伝えしたいと思います。全く英語もできなかった生粋の体育会系サッカー少年が30カ国を飛び回って奮闘し、中小企業の海外進出をサポートしています。その状況をリポートしていきます。

1 低コストで海外への販路開拓を届けたい

サラリーマン時代、私は、複数の得意先社長から海外展開、海外での販路拡大について嘆きに近いお話を伺った経験があります。それは、「○○主催の海外展示会」に、中小企業にとっては大きな予算を投資して実際に行ってみたが、しかし……」というお話。確かに名刺の枚数は集まるものの、さまざまな問題があるようです。

例えば、「本当に興味ありの集客が現地でできていない、興味ありの先にどうやってコンタクトを開始していいの?」「サンプル出荷の方法は?」「継続的取引に進むには?」など本来必要な情報が乏しく、主催者側(相手国&日本側)の「開催した」という経験値だけの満足に終わっていることが多いと聞きました(主催者側がそう望んでいないとしても、多大なコストの割には結果が出ていない現実)。

これだけITの技術革新もあり、国と国の壁が低くなっている中で、わざわざ海外の展示会に出掛けなくても、ニーズがあるかどうか分からない相手と商談をするムダを省き、低コストで海外展開したい中小企業のお手伝いをしているのがCOUXUです。

その仕組みは次の通り、とてもシンプルです。

  • COUXUは30カ国2000社を超える現地バイヤー(商社)企業とつながっている
  • 上記のバイヤー企業が毎月100件以上の【日本の欲しいモノ】のリクエストをCOUXUにぶつけている
  • 【日本の欲しいモノ】リストをITを駆使して、会員化している日本の中小企業にCOUXUが開示している
  • 海外現地バイヤーとのやり取りについて、COUXUがアドバイス、いわば教育・トレーニングに近い手伝いをしている。例えば、海外の商習慣(英会話、英語でのメールのやり取り)、海外セールス、サンプル出荷の方法、貿易開始(実務の手順)などを、会員となった中小企業にトレーニングをするといった内容

セカイコネクトの画像です

海外と商談できる人材が中小企業にはほとんどいません。この現状と向き合い、中小企業が“自力自走”で海外展開できるようにと、COUXUはセカイコネクトを運営しています。

この活動を始めて5年。実際に貿易業務が始まった会社の中には、売り上げ規模で数億円となった中小企業も。また、現地バイヤーとの太いパイプから、貿易のみならず【進出】に関する現地調査などの依頼もCOUXUに寄せられており、国内の多様な業種業界の企業、2000社を突破する取引が実現しています。

日本企業の理想的な海外販路開拓の画像です

2 大村さんの起業ストーリー

5年という短期間で、国内外でこれだけの実績を作った大村さん。さぞかし語学も堪能で海外経験も豊富だった?と思いきや、小中高と一貫してサッカーにのめり込み、千葉県でべスト4の経験もあるそうで、大学も英語や海外とは遠い感じの体育大学だったそうです。

そうした中、大学時代、体育会系の“タテ社会”になじめず、『なんで生まれた年が1年違うだけで、こんなに違うの? 納得できない』と運動系の世界を離れて、アルバイトを10も20も経験。気付けば20歳でお酒も飲めないながらバーテン、そしてバーの経営へ。大学卒業時の2010年はリーマン・ショック後の就職氷河期。どうしようかと思いながら飛び込んだ世界が飲食関連。新規業態の店舗運営を1年目から任され新卒の中でも1位の成績!

しかし、スーツを着る仕事に憧れを持って1年で退職。次に入った会社がアリババマーケティング。大村さんは、ここで海外販路開拓の面白さに出合います。英語もできない状態でしたが、すぐに頭角を現し、ここでも成績で1位となったそうです。25歳のときに、『自分でやったほうがもっとお客さんを喜ばせることができる』と感じるようになり、26歳の誕生日にCOUXUを設立、今に至ります。

最近では、なじめなかった体育大学で、OB起業家として講演も行ったとのこと。お話を伺っていて、常に【今に疑問を持ち、常識を疑い、新たな道を好んで選択する】ということに突っ走る、そんな感性をお持ちだと思いました。

3 起業後の紆余(うよ)曲折、順風なんて一度もなかった

以前に一度、大村さんに質問したことがあります。それは、『海外現地バイヤーを2000社も抱えていたら、自分たち自身で貿易をすればもっともうかる会社になるのでは?』という質問です。大村さんの答えは、『自分たちだけ儲けることならいくらでもやれると思っています。しかし、それだったら大手商社と同じこと。それでは、何のために事業をやっているのか、そもそもの理念、起業動機と食い違ってきます。当初、自分たちが食べていける部分だけ取り組みましたが、現在は全くやっていません。日本の中小企業のグローバル化を目指すこと、そこにフォーカスしています』ときっぱり。

思いは十分でスタートしたものの、起業以来順風ではありませんでした。

  • 起業当初のメンバーが出社したら早々に離脱したのが判明
  • 当初の中心メンバーだったミャンマー人のトゥヤ氏が、諸事情あり本国へ帰国
  • 日本の中小企業のためと思って事業をしていたところ、バイヤーから発注、入金完了後に、日本側の中小企業が破綻、バイヤー側に迷惑を掛けてしまう
  • COUXUの業態自体が他に類を見ないため、経験者もほぼいない。そこに入社して来てくれたメンバーの戸惑い、離脱が続いた時期もあった

収益先行をさせず、じっくり真のお客さん基点を追求してきたからこその逆風、そこをしのいできたからこそ、現在海外留学生インターンを含めると20人近くまでになり、日本を含む10カ国のメンバーが集う会社に成長しています。余談ですが、以前の大村さんのパソコンには日章旗のラベルが貼ってありました。心底、日本のためを意識しているからこそだと思いますね。

4 10カ国のメンバーとともに、全国の中小企業を世界へコネクトする

まさに生きるか死ぬかの生命線上も、綱渡りのように活動してきた中、現在はメンバーも増え、売り上げも安定して伸びてきたそうです。これからのCOUXUの戦略についてもお伺いしました。

・海外でムーブメントを起こす
 これまでの【世界の欲しい】に、日本の製品をマッチングさせるだけでなく、海外現地で、大学や学生との連携を加速し、【現地で、日本の「欲しい」のムーブメント、トレンドを起こす】ことを実践していきます。そもそも気付いていない人々に、日本の良さをもっと訴求できる仕組みを構築していくことにチャレンジします。

・プロモーション動画を海外留学生が製作
 日本の良いものを世界で発信していく際に日本人目線より大切なのは、現地の人々の目線です。日本人が動画製作しても日本人の感性でしかありませんが、海外留学生たちが、自分たちの母国へ売り込むためのプロモーション動画を製作しSNSで発信すれば、訴求力が違ってきます。まさに国境を超えるお手伝いをします。

その他にもアイデアが満載の大村さん、日本発のグローバル企業を多種多様に輩出していこうとしています。本当に楽しみですね。

最後に、COUXUの思いを言葉にしたものを、HPより抜粋します。


COUXUの目指す“セカイ”
世界中の企業にとって“なくてはならない”日本企業を創造する
『COUXU(コーク)株式会社は、日本企業が低コストで誰でも簡単に海外への販路開拓できるプラットフォームを実現しております。
日本の人口減少や、国外の商品が流通量増加が進むにつれ、小売店や問屋に下ろすのも限界が近づいています。
対して、アジアを中心に日本の商品を求めている海外企業は多く存在します。
ですが、現状日本にはゼロから海外への販路開拓を行えるだけの“具体的な情報”が存在しません。
「英語ができない」「海外との取引の経験がない」企業様でも、手軽に商品を届けられる情報を提供しております。
今後も世界に手を広げ続け、海外において日本製品を手に取りやすい環境を作り続け、日本企業が国際企業になるためのシルクロードを開拓していくことが私たちの使命と考えております。』

COUXUが掲げる上記の世界が実現することを願ってやみません。

杉浦さんと大村さんの画像です

以上(2019年1月作成)

現役公認会計士・税理士が解説。上手な相談・依頼の方法

公認会計士は、一般的には「会計士」の名称で知られている国家資格(公認会計士法に基づく)で、約3万人が登録しています。同様に、税理士も国家資格(税理士法に基づく)で、約8万人が登録しています。

公認会計士は監査および会計の専門家、税理士は税務のスペシャリストです。例えば、税務書類の作成を請け負ったり、会社の財務状況や税務に関する相談先になったりします。頼れる公認会計士・税理士の見極め方や依頼のポイントは何か。現役公認会計士・税理士に聞いてみました。

なお、弁護士や社会保険労務士(社労士)への依頼の仕方を解説したコンテンツもあります。併せてご活用ください。

1 公認会計士の主な業務

1)監査業務

企業の財務諸表について、第三者の立場から内容などを確認して、「適正」(内容が正しい)であるかどうかの意見を表明します。監査は公認会計士の独占業務になります。監査が義務づけられているのは、上場企業など、一部の企業などに限られていますが、最近では、一定規模の医療法人や社会福祉法人に新たに監査が義務づけられるなど、監査に対する社会的期待が高まっています。

2)コンサルティング業務

経営全般にわたるコンサルティングを行います。M&Aや組織再編といった専門分野に直接関係するテーマだけではなく、経営戦略の策定、生産管理システムの開発・導入など、それぞれの公認会計士が、自分の得意分野を生かしたコンサルティングを行っているケースもあります。

3)税務業務

税務に関する業務です。公認会計士は、税理士登録し、税理士会に入会すれば、後述する税理士と同じ業務を行うことができます。

2 税理士の主な業務

1)税務書類の作成

企業が税務署に提出する、法人税などに関する申告書などの書類を作成します。また、社長個人の所得税や相続税の申告書などの作成依頼も多く引き受けます。税務書類に記載すべき事柄は細かく、また計算も複雑です。例えば、税額控除などを受ける場合の添付資料など、事細かく決められています。正確かつ、自社にとって最適な税務書類を作成するためには、税務に関する幅広い知識が必要です。また、これらの業務を税理士に依頼することで、経営者の事務負担は軽減されます。

2)税務の代理

企業に代わって、確定申告書の提出や税務調査の立ち会い、税務署の更正・決定などに不服がある場合の申し立てなどを行います。例えば、税務調査では、具体的にどういった点が調べられるのかなどを踏まえた事前準備から、調査後の交渉・税務書類の作成まで対応します。税務調査に慣れている経営者は多くありません。調査中、どういったことを話せばいいのかなどのアドバイスも行います。

3)会計業務

財務諸表などの決算時の資料や月次試算表などの月々の財務関係の資料を作成します。また、定期的に訪問を受け、財務資料の内容について報告してもらうことで、自社の現状を正確に把握することができます。

4)コンサルティング業務

税務面を中心としたコンサルティングを行います。税額試算、納税対策に関するテーマが多くなりますが、企業の資金繰りや経営戦略・組織再編などのコンサルティングも行います。「こんな設備投資を考えているのだけど、税優遇を受けられる制度はないか?」などの相談に乗ってくれます。

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3 企業から公認会計士・税理士に寄せられる相談・依頼ベスト5

1)会計処理、決算処理の相談・依頼

最も多いのは、会計処理、決算処理の相談・依頼です。財務諸表や月次試算表などの作成の他に、例えば、「この売上は今期分として計上してよいのか」「この支出は全額を費用処理してよいのか」といった会計処理に関する相談を受けます。

2)事業承継や相続に関する相談・依頼

事業承継や相続に関する相談・依頼です。事業承継や相続を円滑に進めるために、さまざまなテーマの相談・依頼を受けます。例えば、自社株式の評価、相続税の納税資金の確保の方法、社長の財産分割案の策定やアドバイスなどを求められます。

3)経営改善・資金調達などに関する相談

資金繰りや財務状況の改善、金融機関からの借り入れに関する相談です。また、グループ再編やM&Aなどの事業再編に関して支援することもあります。

4)経営管理面での財務・税務に関する相談

経営管理上の財務・税務に関するさまざまな相談を受けます。例えば、財務分析に基づく事業計画の策定、設備投資を検討する時の収支計画の策定などを行います。また、各種税額控除など税制優遇制度の活用に関する相談などもあります。

5)社内業務の委託・依頼

日々の経理事務や従業員の給与計算など、企業の“お金まわり”の業務の受託や、個別処理に関する相談を受けます。

4 公認会計士・税理士に相談・依頼する際の4つのポイント

1)過去資料を準備する

会計処理・決算処理を初めて依頼するケースで考えてみましょう。

まずは、これまでの決算書類など、過去の資料を準備します。公認会計士・税理士によっては、過去の仕訳データをもとに、「部門別・取引先別売上高の推移」など、これまでは作成できなかった細かな資料を提供してくれることがあります。そのため、こうしたデータも公認会計士・税理士に提供できるよう準備しておくとよいでしょう。なお、準備する資料は過去3~5年程度が目安です。

2)会計の責任者が同席する

具体的な会計処理や決算処理について、経営者が把握していないケースがあります。そのため、現在の業務フローや会計上の課題などを熟知している会計の責任者が同席すると、話がスムーズに進みます。

3)要望事項を明確にする

依頼する業務やスケジュールなど、要望事項を整理しておきます。例えば、決算処理・会計処理だけではなく、記帳代行や給与計算なども併せて依頼するのかといった点です。また、月次試算表の作成など、月々の業務については、「翌月10日までに提供してほしい」といった、具体的なスケジュールも決めておきましょう。

4)依頼のタイミングに注意する

会計処理、決算処理は期首から依頼するとスムーズに進みます。期中に依頼する時は、申告書の提出期限など、法令で定められているスケジュールに注意しましょう。

5 気になる相談料。公認会計士・税理士に相談・依頼するといくらかかる?

1)事前に確認し、比較してみる

公認会計士・税理士の報酬は、それぞれの事務所によって違ううえに、顧客の企業規模などによっても違います。

ここでは、一応の目安を紹介しますが、実際は、事前にその事務所のホームページで確認したり、電話で尋ねたりするようにしましょう(報酬の他に、依頼内容によっては収入印紙代、交通費などの実費が必要になる場合があります)。

2)顧問料

多くの事務所では、顧問契約を交わし、定期的な税務相談、月次財務資料の提供、決算業務、申告業務など、税務・会計に関する業務を包括的に受託しています。

年間の顧問料は、「月額顧問料×12カ月+決算処理などにかかる料金(月額顧問料の4~5カ月程度)」で計算することが一般的です。金額は企業規模や受託業務の内容によって年間50万円前後~数百万円と幅があります。中小企業の場合は、年間50万円~200万円程度が目安になります。

この他、月額顧問料1万円などの格安の事務所もあります。ただし、「他の事務所では毎月提供している資料が、四半期ごとの提供となる」といったように、サービス内容に制限があることが多いので、利用を検討する時には注意しましょう。

3)スポット料金

事業承継や組織再編など、単発の業務について発生する料金です。報酬額は内容によって大きく変わります。そのため、話し合いのなかで依頼する業務の内容と報酬額をしっかりと決め、契約書を締結して書面に残すようにしましょう。

6 信頼できる公認会計士・税理士を選ぶ3つのポイント

1)経営判断に役立つ助言ができる公認会計士・税理士であるか

相談の背景を理解して複数の対策を提案してくれることは、信頼できる公認会計士・税理士を選ぶ際の大切な条件です。

また、特に税務は、企業にとって、メリットだけではなく、デメリットもあることが少なくありません。公認会計士・税理士に依頼する業務は、専門家でないとわかりにくいこともありますが、こうした点も丁寧に説明してくれて、経営者が最良の判断をできるような助言をしてくれる人を選びましょう。

2)課題解決に適した公認会計士・税理士であるか

公認会計士・税理士といっても、専門分野すべてに精通しているわけではありません。例えば、「法人税には詳しいが、相続税については実務経験が少なく、知識もあまりない」という税理士もいます。そのため、課題解決に必要な経験や知識が豊富な公認会計士・税理士を選ぶことが大切です。得意分野は、事務所のホームページの情報をみたり、直接、公認会計士・税理士にこれまでの実績を聞いたりして確認しましょう。

3)要求するスピードに応えることのできる公認会計士・税理士であるか

公認会計士・税理士に依頼する業務の多くは、スピードが大切になります。例えば、財務状況をタイムリーに把握するためには、月次試算表などの月々の資料は、スピーディに提供してもらう必要があります。

このように、自社が求めるスピードに対応できることも公認会計士・税理士選びでは大切なポイントとなります。

以上

(監修 辻・本郷税理士法人 公認会計士 齊藤泰彰、税理士 安積健)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年1月15日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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法治と徳治をいかに併用するのか〜守屋淳の、ビジネスに生かせる『論語』と『韓非子』(12) 〜

うまく機能する組織、成員が幸せになる組織とはどのようなものか。この難問の答えを、まったく正反対の立場にある『論語』と『韓非子』を読み解きながら、守屋淳が導き出していくシリーズです。

1 覇道と王道の併用

前回、法治と徳治の円環という問題を取り上げましたが、この対処にはいくつか方法があります。

まず、こうした法治と徳治の繰り返しを「仕方がない」とあきらめ、そのなかでの最善を目指すというやり方があります。企業でいえば、

「組織が大きくなれば、業務上の創意工夫や挑戦が減ったり、部門間の協調や協働が少なくなったりといった大企業病にかかるのは、ある程度やむを得ない。ジタバタとその発病を防ごうとするよりも、万一かかってしまったときに、うまく対策を取ることを考えよう」

という感じでしょうか。これはいわば状況対応的な思考になります。

逆に、もう少し根本的なところを考えて、

「こうした法治と徳治の繰り返しに飲み込まれることのない、末永く繁栄が続く組織が作れないのだろうか」

という探求をした動きが、歴史的にはありました。そのいくつかの試みを、ご紹介したいと思います。

前漢王朝において中興の祖といわれている宣帝という皇帝がいます。一般にはあまり有名ではないのですが、かなりの名君であり、彼は皇太子とこんな問答を交わしたことがあります。

宣帝の皇太子である元帝は、やさしい性格で、儒教を好んでいました。彼からすれば、父である宣帝のやり方は、法治の官僚ばかり多く、法によって家臣を支配しているようにしか見えませんでした。

ある日、酒宴の席をかりて、皇太子は控えめな口調で宣帝にこう述べました。

「陛下は、刑罰に頼り過ぎていらっしゃるのではないでしょうか。ぜひとも儒者をもう少し登用なさってください」

宣帝は顔色を変えて、こう言いました。

「漢家、自ずから制度あり。もとより覇王の道、以ってこれを雑(まじ)う(わが漢の王家には、ふさわしい制度がある。それが覇道と王道の併用だ。どうして徳治だけで、周代の政治のまねごとなどしようか)
 だいたい儒者というのは、いま何が必要なのかをまったく理解していない。『昔はよかったが、今はダメだ』というばかりで、人の価値判断を迷わせ、肝心なところをわからないようにしてしまう。どうして任せるに足るであろうか」

そして、ため息をつきながら、こう言ったのです。

「わが漢の王家を混乱に陥れるのは皇太子であろう」――

実際、前漢王朝は元帝の頃から衰えが始まり、その死後40年ほどで、いったん滅亡してしまいました。

そして、ここで述べている「覇道と王道の併用(覇王の道)」こそ、法治と徳治の繰り返しに飲み込まれない組織の形として考えられたものなのです。

時代は下り、宋王朝で宰相を務めた呂蒙正(りょもうせい)にも次のような端的な言葉があります。

  • 国を治むるの道は、寛(かん)猛(もう)、中(ちゅう)を得(う)るに在り(国を治める道とは、寛大さと厳しさ、その中庸を取ることにある)『宋名臣言行録(そうめいしんげんこうろく)』

ここでいう「寛(寛大さ)」とは徳治、「猛(厳しさ)」とは法治のことをそれぞれ意味します。

では、いったい両者はどう併用すればいいのでしょう。まず単純に考えられるのは、「おどし役となだめ役」「父親役と母親役」という言葉があるように、

  • 組織を引き締める厳しいタイプ
  • 逆に愛情深く部下を励ますタイプ

の二人を置いて、円滑な組織運営を図るという形が考えられます。

こうした使い分けは、企業などの組織ではごく普通に見られるものであり、筆者も企業研修で「組織のまとめ方」についての課題を出すと、こうした観点からの回答を書いてくる受講者が少なくありません。

一方、歴史的に見ると、もう少し違った観点から「覇王の道」「寛猛、中を得る」の道を達成しようとした方法がありました。

それは、法治と徳治のどちらかをベースにして、一方を上に乗せるというやり方。

法治をベースにした場合、パイが広がり続けない限り、どこかで行き詰まってしまいます。そうなると、次の二通りの考え方が出てきます。

1)パイの広がりが行き詰まらない形を作って、法治をベースにする
2)パイに限界があるなら、徳治をベースにしてその問題が顕在化しない仕組みを作る

まず、1)に該当すると考えられる例が、古代ローマにあります。塩野七生さんの『ローマ人の物語』でもお馴染みなように、古代ローマは共和政期から帝政期にかけて数百年にもおよぶ繁栄を誇りました。そして、そこで大きな原動力になったのが次の要素でした。

「尽きにくいパイとしての〈権利〉」

われわれはいま、投票するのも、好きなところに住めるのも、結婚相手を選べるのも、旅行するのも皆自由だと思っていますが、古代はそうではありませんでした。

そういった権利は、地位や身分が高ければ持てましたし、低ければまったく持っていないか、その一部しか持てませんでした。前者がローマ市民、後者が奴隷だと思って頂ければわかりやすいと思います。こうした権利の格差は都市にもありました。言葉を換えれば、

「自由=権利の束」

と考えられていたわけです。

そして同時に、こうした権利は、ローマに対して功績をあげていくと手に入るという仕組みにもなっていました。つまり抽象的な「権利」を賞の一つに据えた、と解釈できるのです。

だからこそ、その原資は尽きにくく、ローマ帝国は長い繁栄を享受できたという側面があります。これは中国などにも類例のない、きわめて独創的な手法だと筆者は考えています。

2 制度は性悪説、運用は性善説

さて、もう一つの2)の方です。問題となるのは徳治が必然的に孕んでしまう、

  • 有徳者が続かない
  • 有徳者が心変わりする
  • 現場の暴走を止められない
  • 先輩の悪事を表に出せない

といった問題点をどう処理していくか、という点。この問題に関しては、次のような指摘があります。

《ある程度まで「人を疑う心の制度化」が必要だ。どういう制度かというと、いざ、悪人が出たときには機能するが、普段は、人を信用している証拠として形式的にしか機能しないという、なかなかバランスが微妙な制度である》『誰のための会社にするか』ロナルド・ドーア 岩波書店

《制度は性悪説、運用は性善説》『交渉術』佐藤優 文藝春秋

後者の引用は、多額の裏金を扱う情報機関の職員が不正をしていないかを、どうチェックするのか、という内容からの指摘ですが、簡単にいえば、資金を自由に扱わせる代わりに、定期的に非常に厳しいチェックを入れるというもの。つまり、

「基本的には信用をベースとした徳治で組織を運営する。しかし、いざ問題が出たときに、それが取り除けるような法治的な制度や保険を事前に作っておき、それを発動させる」

という仕組みを作ればよい、という話なのです。

では、会社においても、これと似たような仕組みを作っておけば万事うまくいくか、といえば、残念ながらそうとは限りません。これは、次のような問題と関わってきます。

「どんな制度も、それを使う側によき人間がいなければ、うまく機能しない」

現代においては、一定規模以上の企業になれば「コンプライアンス室」や「外部取締役」といったお目付役が、当たり前ですが存在しています。しかし、和の組織特有の「なあなあ」の状態に取り込まれてしまい、

「権力者がどうしようもないため、組織がボロボロになっているが、わが身可愛さで誰も首に鈴をつけにいけない」
「本来は、組織の膿(うみ)を出し切ってしまわなければならないのに、お世話になった先輩を裏切れず、問題が先送りになってしまう」

といった状態に陥りがちなのです。実際、某大手メーカーの外部取締役のほとんどが、社長のゴルフ友達といった実例もあるわけです……

筆者は先日、会社の立て直しを専門とする方とお話をしたのですが、こんな興味深い指摘をされていました。

「業績が悪くてどうしようもなくなった会社というのは、なかに入ってみると、不思議と皆仲がよくて職場の和が保たれているんです。それは、とても不思議な光景ですよ」

繰り返しになりますが、どんな素晴らしい仕組みを作っても、それを運営する側に人を得ていなければ、残念ながら宝の持ち腐れになってしまうのです。徳治をベースにしたよき組織を構築・維持したければ、その要は人材の選抜と育成にある――これが、最終的な結論として浮かびあがってくるのです。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年1月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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第3回 シリコンバレー流 エレベーターピッチを名刺交換や自己紹介に活かす方法/イノベーションフォレスト(イノベーションの森)

新年あけましておめでとうございます。森若 幸次郎ことジョンです。1月は新年会がたくさんあり、名刺交換をすることが多いです。会社名やビジネスの内容を一生懸命に伝えて自分を印象づけようとしますが、なかなか難しいものです。

そこで参考にしたいのがシリコンバレーの起業家です。彼らはわずか45秒で投資家の興味を引くことができます。今回は、シリコンバレーの起業家はどのような話し方(プレゼンテーションと考えてもらって問題ありません)をするのかについて学んでいきましょう。

世界一のイノベーションの聖地といえばシリコンバレーですが、この地域が栄えた理由の1つに、スタンフォード大学の発展があります。スタンフォード大学の研究開発の素晴らしさはもちろんですが、この他に、教授や研究者がベンチャー、スタートアップを起こして大成功を収めたり、卒業生も大企業に就職せずに起業したりしていることをご存じでしょうか。その数が、世界のどの大学よりも圧倒的に多いのです。

そして、そのスタンフォード大学よりも成功するスタートアップを生み出すのが、シリコンバレーに無数にあるアクセラレーターなのです。それもそのはず。アクセラレーターとは、既に起業しているスタートアップのえりすぐった者を、大成功するために鍛え抜く特別な短期プログラムなのです。まさに「シリコンバレー仕込みのビジネスをスケールするための強化特訓」といえるでしょう。

シリコンバレーにあるアクセラレーターの中でも、群を抜いてユニコーン企業を生み出し続けているのがYコンビネーターです。2005年に設立されてから今までに、1900社以上のスタートアップを育て、時価総額は10兆円を超えています。特に近年はユニコーン企業を続々と生み出しています。

世界最高峰のスタートアップ養成塾といえるYコンビネーターでは、投資家への3分間ピッチのフォーマットとして、7つの最重要事項を示しています。本当にとても大切なことなので、読者の皆さんもこの7つを意識したピッチをしてみてください。

  • Problem:世界が抱える問題
  • Solution:自分たちのビジネスでどう解決するか
  • Market Size:市場規模
  • Traction:トラクション (ユーザー数、クライアント数)
  • Unique Insight:ユニークな洞察
  • Business Model:ビジネスモデル、お金の稼ぎ方
  • Team:自分たちのチームだからできる理由

起業家は、これらの事項を投資家に対して3分間という短い中でピッチして、興味を引かなければなりません。シリコンバレーでは、どのような場面でそうしたピッチが行われているかというと、例えば「デモデイ」が挙げられます。

アクセラレーターは通常3カ月から6カ月あり、最終日に必ずデモデイというイベントが設けられます。受講生たちは、デモデイに招待された投資家たちの目の前で、3分間にこれら7つの事項をスライド形式で、実際にプロダクトを見せながら(まさにデモンストレーション)、真剣に語り尽くすのです。受講生には伝えたいことが山ほどありますが、ポイントを7つの事項に絞ってピッチし、投資家の興味を引こうとします。

私は、Yコンビネーターでは投資家養成のコースを受けましたが、Googleから寄付をいただいているblackboxという他のアクセラレーターも受講したことがあります。blackboxでも、Yコンビネーターと同じように3分間のピッチを徹底的に仕込まれました。

ピッチには、3分ピッチ(デモデイ用)と45秒ピッチの2種類があり、この45秒ピッチのことをエレベーターピッチと呼びます。エレベーターで投資家に会ったときに、起業家は45秒で自分たちのビジネスについて投資家に興味を持っていただき、次のアポにつなげなくてはなりません。

シリコンバレーの投資家は忙しい。その貴重な時間を自分たちのために費やしてもらう、つまり、もう一度会ってもらうために、起業家は必要なことを凝縮して伝えなければならないのです。情熱があることやビジョンがあることは大切ですが、シリコンバレーの起業家全てが世界のどの地域の起業家よりも情熱があるし、ビジョンも大きいのは間違いありません。

そこで際立つためには、やはりYコンビネーターの7つの事項を45秒でピッチするのが効果的です。45秒のときは、4から6までの事項を省いて、最後に「もう少し聞いてみたいですか?」と伝えるとよいとblackboxのピッチ担当の先生に習いました。

45秒エレベーターピッチ

  • Problem:世界が抱える問題
  • Solution:自分たちのビジネスでどう解決するか
  • Market Size:市場規模
  • Team:自分たちのチームだからできる理由

いかがでしたか? シリコンバレーの起業家になったつもりで、今年から名刺交換するときに、「社会には、このような問題があり、それを私たちのこのようなテクノロジーで解決しています。市場規模はこれくらいで、自分たちだからできているんです」と、いつもと違う内容と熱量で話してみたらいかがでしょうか。きっとこれまでとは違う新しい仲間が見つかるはずです。

皆さん、2019年も最高の一年をお過ごしください。最後まで読んでくださり、愛りがとうございます(愛+ありがとう)。森若幸次郎ことジョンがお届けいたしました。

以上

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法治から徳治へ、徳治から法治へ〜守屋淳の、ビジネスに生かせる『論語』と『韓非子』(11)〜

うまく機能する組織、成員が幸せになる組織とはどのようなものか。この難問の答えを、まったく正反対の立場にある『論語』と『韓非子』を読み解きながら、守屋淳が導き出していくシリーズです。

1 信賞必罰の抱える構造的な問題

中国の西安に観光旅行に行かれた方は、おそらく兵馬俑(へいばよう)をご覧になったと思いますが、あのような壮大な遺跡を残したのが秦の始皇帝でした。

彼は約550年間続いた戦乱――日本でいえば、室町時代から今の今まで戦乱が続いていた計算になる――を紀元前221年に収束させ、中国を統一した偉大な人物でした。そして、この統一の力になったのが『韓非子』に象徴される法家を下敷きにした体制だといわれています。

ところが、この秦はたったの15年で滅んでしまうのです。その原因の一つとなったのも、やはり法家の体制だったといわれています。

どういうことなのか。ここには法治の抱える根源的な問題が関わっています。次の一節に端的なように、『韓非子』では信賞必罰によって組織をまとめ、また成果の出せる組織を作ろうとしました。

  • 明主の導(よ)りてその臣を制する所の者は、二柄(にへい)のみ。二柄とは刑徳なり。何をか刑徳と謂(い)う。曰く、殺戮これを刑と謂い、慶賞これを徳と謂う。人臣たる者は、誅罰を畏(おそ)れて慶賞を利とす。故に人主、自らその刑徳を用うれば、則ち群臣その威を畏れてその利に帰す。故に世の姦臣(かんしん)は然らず。悪(にく)む所は則ち能くこれをその主に得てこれを罪し、愛する所は則ち能くこれをその主に得てこれを賞す(名君は、二本の操縦かんによって臣下を統制する。二本の操縦かんとは刑と徳のことだ。では、刑と徳とは何か。殺戮を刑といい、賞を徳という。部下というのは罰を恐れ賞を喜ぶのが常である。だからトップが罰と賞との二つの権限を握っていれば、震えあがらせたり、手懐けたりして、意のままに操ることができる。腹黒い部下は、そこにつけこんでくる。気に入らない相手は、トップになり代わって自分が罰し、気に入った相手には、やはりトップになり代わって自分で賞を与える)『韓非子』

この賞と罰のうち、問題になるのは賞の方なのです。賞にはある構造的問題が内包されています。それは、

「賞を供給し続けるためには原資が必要になる」

ということなのです。

当時、賞の主なるものは土地でした。秦が他国を制圧していったとき、当然、破った敵の土地が手に入るわけですから、それは潤沢にありました。しかし、中国を統一してしまうと新たな土地は手に入りません。しかも、平和になって人口が増えると、よい土地もあらかた払底してしまい賞の原資がなくなってしまうのです。

するとどうなるのか。このシステムは罰の片肺飛行にならざるを得なくなってしまいます。頑張っても恩賞はもらえないのに、ちょっと問題を起こせば厳しい刑罰にさらされてしまう――当然、庶民のなかには「やってられない」という気持ちが蓄積し、それが反乱の頻発という形で噴出、秦王朝は瓦解してしまいました。筆者はこの指摘を、東洋史の師匠である藤高裕久先生に教わったのですが、実は歴史上このパターンは繰り返されてもいるのです。

2 なぜ「成果主義」は失敗したのか

日本で1990年代に「成果主義」が導入された際、先鞭をつけた企業では大混乱が起こり、人事課にいた人から告発本まで出る騒ぎになったことは周知の通りです。

前に「成果主義」と『韓非子』はかなり似ているという点に触れましたが、その問題点の噴出という点でも両者はかなりそっくりなところがあります。

そもそも「成果主義」が取り入れられたのは、バブル崩壊後の日本が不景気の真っ最中。当然、利益の伸びは期待できないような状況でした。つまり、社員が「自分は頑張った」「何とか成果を出した」と思っても、その気持ちに応えられる原資がないまま――そもそも人件費カットのための導入だったという説もありますが――導入されてしまったわけです。

こうなると、「やってられない」という気持ちが鬱積(うっせき)して、まさしく秦王朝の崩壊と同じ形で企業はガタガタになっていきました。

実は、同じような問題に直面して、うまく回避したという歴史的な事例もあります。それが、中国でいえば漢王朝、日本でいえば江戸幕府なのです。

秦王朝が倒れた後、司馬遼太郎さんの小説『項羽と劉邦』で知られる項羽と劉邦が覇権を争い、劉邦が漢王朝を開きます。

この漢王朝も、最初のうちは人口が少なく、潤沢に土地もあったのですが、やがて人口も増えて恩賞の土地は払底していきます。しかしこのとき、王朝側があまり人民を使役しなかったこともあり、民衆は比較的豊かな生活が続けられました。ところが武帝の時代となり、匈奴(きょうど)と呼ばれた遊牧民との戦争に手を染めたあたりから、国庫も枯渇し、民衆も疲弊していきます。

これでは秦王朝の二の舞になりかねない――こうした危機感もあって、重視されるようになったのが『論語』を淵源とする儒教だったといわれています。つまり、

「人は利益ばかり追求するのはみっともない。義(公益)や人の道に生きてこそ、格好いいのだ」

といった価値観を入れることによって、この問題を救おうとしたと解釈できるのです。『論語』でいえば、次の言葉にそれは端的です。

  • 君子は義に喩(さと)り、小人は利に喩る(行動に際して、義(公益)を優先させるのが立派な人間、利を優先させるのはつまらない人間である)『論語』

この施策が比較的うまくいき、漢王朝は、一時の中断をはさんで約400年間という長命な王朝となりました。いわば、賞の原資の払底を、生き方の価値観の問題にすり替えて、うまく乗り切った形なのです。

そして、この経緯をなぞったような形となったのが江戸幕府でもありました。

3 賞の原資の払底をどう乗り越えるか

日本の戦国時代、完全に統一を果たしたのは豊臣秀吉でしたが、彼は文禄・慶長の役を起こします。その意図は壮大で、中国の明王朝を攻め滅ぼした後、インドにまで攻め上ろうというものでした。

なぜ彼はこんなことを企てたのか。一つの理由に恩賞となる国内の土地が払底してしまったことがあるといわれています。要は無理にでもパイを広げることにより、賞の原資を獲得しようとしたわけです。しかし、これは失敗に終わりました。

そして彼の覇業を引き継ぐことになった徳川家康は考えます。賞の原資は非常に得にくい時代になってしまった。さてどうするか――そこで、江戸幕府でも儒教が導入され、官学となっていくのです。ちょうど五代将軍綱吉の頃にこの動きが完成しますが、そこでは武士の位置づけも次のように変わったといわれています。

《私の名利ではなく、普遍的な人の道の実現者として武士を位置づけようとする思想が、いわゆる(儒教的)士道論である》『武士道の逆襲』菅野覚明 講談社

名利とは、名誉と利益のこと。そもそも戦国時代の武士というのは、

「自分の利益を念頭に動いていた戦闘者」

に他なりませんでした。しかし、利益の原資はきわめて得にくい時代になってしまった。ならば武士の位置づけを変えて、

「公益や人の道のために尽くす為政者」

に転換してしまえと考えたのです。現在われわれは、「武士道」と聞くと、「ずるい策略を使っても敵に勝って、自分の利益をはかるための道」とは基本的に考えません。やはり「気高い義や人の道に生きるための指針」といったイメージになるわけです。こうしたイメージはこの時点から出来上がっていったのです。

ちなみに、似たような動きは商家でも起こりました。綱吉の治世であった元禄時代といえば、暴風雨の中、海路でみかんを江戸に運んだという伝説のある紀伊国屋文左衛門に端的なように、一発勝負で大儲けといった商売も盛んでした。しかし、そういった豪商の多くは一代で身上(しんしょう)をつぶしてしまったともいわれています。

そして、この後の時代から商家では「家訓」が作られるようになります。そこに書かれている内容は、一言でいえば「道徳と信用を重んじて、末永い商売を目指しなさい」ということなのです。

つまり、当時の日本は管理貿易をしていたこともあり、市場のパイの広がりが期待できませんでした。ならば、信用をもとに商売を末永く続けることに意味を見出していこう――そんな方向に舵を切ったと見なせるわけです。

パイが広がりにくい時代、どのような価値観で処していくのかという問題は、法治と徳治の円環として歴史的には処理されてきたのです。(続)

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2019年1月6日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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【朝礼】ビジネスの答えを最初から求めてはいけない

「ABテスト」というマーケティング手法があります。例えば、インターネットサイトにイベントの「申し込みボタン」を設置するとしましょう。その際、赤いボタンと青いボタンを用意して、どちらの色のボタンがより多く押されるのかを計測します。仮に赤いボタンが多く押されたら、次は人気のなかった青いボタンの代わりに黄色いボタンを設置し、再び赤いボタンと競わせます。これを繰り返すことで、“お客様が押したくなる色”がだんだん分かってくるということです。実際のABテストでは、ボタンの位置や文言などさまざまな条件を組み合わせてPDCAを回し続け、最適な申し込みボタンを見つけていきます。

この例で私が皆さんに伝えたいのは、「最初から、最適な申し込みボタンの色を知っている人はいない。つまり、完成形から始められるビジネスはない」ということです。

ところが皆さんは、失敗を恐れて、初めから完成形を探し求めます。もしかすると、上司の皆さんも「本当にそれで成功できるのか?」などと部下に詰め寄っているかもしれません。しかし、そうしたやりとりに、意味はあまりないでしょう。なぜなら、誰にも完成形は見えていないからです。

とはいえ、とにかく始めようと無策で飛び出すのも問題です。勢いだけのビジネスは、ほぼ失敗するからです。では、どうするのがよいか。それは、「答えを知っている人」に聞いてみればよいのです。

皆さんが好きな色を心に思い浮かべてください。その色を好きなことを知っているのは誰ですか。家族、友人、恋人、同僚など皆さんと親しい人なら知っているかもしれません。この他に知り得る人がいるとすれば、皆さんに「何色が好きですか?」と質問してきた人でしょう。

よく「答えはお客様が持っている」と言いますが、まさにこうした状況を指しているわけです。もちろん、社長である私や上司は、過去の経験や収集した情報を基に指示します。しかし、それはABテストで試される一色を示しているに過ぎません。皆さんはお客様に恐れず質問して答えを聞き、PDCAを回さなくてはなりません。

この活動を継続的に行っていると、皆さんに知見が蓄積されていきます。しかし、その半面、“おごり”も発生します。皆さんは、「自分の考えとお客様のニーズが異なるとき、お客様のほうが間違えている」と考えてしまいがちです。こうした考えを改めるには、謙虚な心を持つしかありません。昭和の歌姫である美空ひばりさんは、『リンゴ追分(おいわけ)』を歌う際の息継ぎについてアドバイスを受けた際、素直にそれを聞き入れました。そして、お客様からより多くの拍手をもらえる息継ぎの歌い方を選んだといいます。

経験は重要ですが、“おごり”はいけません。周囲の声に常に耳を傾け、その内容をPDCAに柔軟に組み込むことができる組織こそが、お客様に選ばれるのです。

以上(2019年1月)

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画像:Mariko Mitsuda

【朝礼】紹介の輪は、あなたの魅力で広がる

ビジネスは人と人とのつながりです。「人と出会い、意気投合し、一緒にビジネスをする」。ビジネスで必要なのはこれだけだという起業家もいるほどです。どのタイミングで誰と出会い、どれだけ意気投合できるかが、確かに大切なことです。だからこそ、私は積極的に人を紹介します。また、紹介されたときは、できるだけ多くの人と会うようにしています。どこにビジネスチャンスがあるか分からないからです。

このように説明すると、とにかく紹介の件数を増やせばよいと考える人がいますが、実際にはそうはいきません。紹介は、する側にとってもされる側にとっても、非常に難しい行為であり、下手をすると自分自身の信用を失ってしまうこともあります。

このことを知る私は、自分が紹介される側になった場合、紹介してくれる人のメンツを潰すことがないように、いつも以上に丁寧な対応をし、スケジュール調整も速やかに行います。紹介者などは忙しい中、時間を割いて動いてくれているので、その時間を必要以上に奪うことはできないからです。逆に、私が紹介する側になった場合、紹介する人と引き合わせる人の双方が私にとって大事な存在であるわけなので、やはりとても気を使います。「誰に誰を紹介するのか」という根本的なところはもちろん、「人柄は合いそうだが、ビジネスではもしかしたら競合するかも」と思った人は紹介しないようにしています。

しかし、ここまで注意していてもトラブルになってしまうことがあります。私の知人が、A氏にB氏を紹介したところ、B氏が引き起こしたトラブルが原因でA氏とB氏の裁判にまで発展したことがあります。その知人は責任を感じ、A氏に専門家を紹介したり、ビジネス面で別の人を紹介したり、誠心誠意の対応でフォローをしました。もちろん、金銭は一切もらっていません。

これほどまでに紹介は大変なことなのですが、逆にいうと、こうした紹介の大変さを理解している人は信頼できます。別の私の知人に、年間1000人以上の経営者と会う人がいます。経営者から「自分と会ってほしい」という連絡が頻繁に来るそうですが、その知人は「信頼できる人からの紹介でなければ会わない」と決めています。「信頼できる人が紹介する人は信頼できるはずだ」という、とてもシンプルな理由からです。この知人は、自分の周りを信頼できる人で固めることができたからこそ、年間1000人以上の経営者に会うことが可能なのでしょう。

今年、皆さんにすてきな出会いが訪れることを願います。皆さんに魅力がなければ誰かを紹介されることもありません。また、皆さんが誰かを紹介しようと思っても、相手が「◯◯さんの紹介なので会ってみよう」と思ってくれなければ何も始まりません。紹介の輪はそう簡単には広がりません。紹介の重みを知り、そのような機会には真摯に対応することから始めてください。

以上(2019年1月)

pj16942
画像:Mariko Mitsuda