営業最強フレーズ集 番外編1 年末年始休暇に入る前に掛けておきたい一言

来年も、御社にとっても弊社にとってもさらに良い年にしましょう!

「年末のご挨拶に……」の時期が来た

月に一度、お客様と連絡を取ることをルールにしている営業担当者は少なくありません。お客様とコミュニケーションを取り、刻々と変化するニーズを捉えるためには、メールだけのやり取りではなく、実際に直接会話をすることが大切です。

特に必ず連絡を取りたいのは、4月や10月といった期の変わり目や、年末年始休暇など長い休みに入る前です。4月や10月に連絡をするのは、人事異動の有無やお客様の方針を確認するためです。年末年始休暇の前に連絡するのは、1年の感謝の気持ちを伝えるとともに、“来年のこちらの行動を宣言する”という意味があります。

“年明けスタートダッシュ”を宣言する

通常、3月決算の企業は年末から2月頭にかけて、予算取りを行います。つまり、こちら側の提案が通るかどうか、ある程度の感触はこの時期に分かります。

確度が高いときは、相手の上層部からの差し戻しなどに備え、最後の詰めに入ります。一方、確度があまり高くないときは、相手の予算取りまでの時間を考慮しつつ、こちらとして提案を継続するか、来年度に持ち越すかを決定します。

いずれにしても、年末年始休暇の前に年明けのこちらの活動を宣言しておきます。そして、年明けに「年末にお伝えしていた件ですが」と連絡すれば、いきなり営業の本題からスタートすることができます。

営業担当者の願いを一言に込める

とはいえ、年末年始休暇の前は相手も忙しいので、長々と説明するのは得策ではありません。また、行事が盛りだくさんな年末年始を挟むと、相手がこちらの話の内容を忘れてしまうかもしれません。

それでもなお、「長い休みに入っても、あなた(の会社)のことを忘れずにちゃんと考えますよ」ということを印象付けておきたい……。こうした営業担当者の願いを込めた一言が、冒頭で紹介したフレーズです。互いにWin-Winになる良い提案をし、それを実現したいという前向きな言葉で締めくくっておけば、相手も気持ちよく“宣言”を受け止めてくれるでしょう。

来る20XX年は……

ここで重要なのは、前向きな言葉を使うということです。誰しも、1年の終わりは気持ち良く締めくくり、来る新年を新たな気持ちで迎えたいと思うものです。

1年の間には、さまざまな出来事があったことでしょう。中にはトラブルもあったかもしれません。たとえどのようなことがあっても、自分の会社と関わりを持ってくれた相手には、感謝の気持ちを伝え、気持ち良く新しい年を迎えてもらうようにしなければなりません。それが、会社を代表して相手と話をしている営業担当者の重要な役割といえるでしょう。

20XX年。本稿を読む全ての営業担当者にとっても良い年にしましょう!

以上(2018年8月)

pj70084
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営業最強フレーズ集 困ったとき編3 「担当者間で握っておこう」と言われたときの一言

その件、論点を整理したいのでメールで送っておいてください

営業担当者の「外交機密」

ビジネスでは、契約書には定められていない条件に基づいてサービスが提供されることが意外と少なくありません。同様に、本来ならば契約書の疑義事項に該当し、正式な協議が必要であるところを、双方の担当者が暗黙の了解で条件を取り決めているケースもあります。

以上は、俗にいう「担当者間で握っている」、つまり「担当者間で独自の運用をしている」状態です。

文書にすると仰々しいことですが、営業の現場で担当者やごく一部の関係者しか知らないルールは無数に存在します。ベテランの営業担当者になると、相手の上司の合意が得られるか微妙な条件は明文化せず、担当者レベルの「握り」を前提に商談を進めることだってあるのです。

「握り」は時に必要か?

「そこを握っておかなければビジネスが前に進まない……」というケースは少なくありません。それが社会や会社のルールに反する内容であってはいけませんが、“柔軟な運用”といえるレベルであれば、ビジネスをスムーズに進めるために仕方のないことだともいえます。

もし、相手から「握り」を持ち掛けられたら、条件はもちろんのこと、担当者の人間性までよくよく考えて対応を検討するようにしましょう。少しでも迷ったら、上司に相談することも忘れてはなりません。

備えは怠らない

相手と「握る」ことになっても、口約束しかしていない状態は問題です。その時はよいかもしれませんが、ビジネスは、いずれ必ず見直しが入ります。また、わずか数カ月後に人事異動があり、担当者やその上司が変わることだってあります。

このようなとき、握っている事柄に注目が集まると、「いつ、誰が、どのように決めたんだ?」ということが必ず議題に上ります。こうなった時、口約束だけではきちんと経緯を説明することができず、信ぴょう性もありません。

そこで、相手から「握り」を持ち掛けられたときに実践したいのが今回の最強フレーズです。このフレーズを使い、メールの平文であっても、「握り」の内容を形に残しておくのです。

基準を持つ

柔軟にやり方を変えることで、ビジネスがスムーズに進むことはよくあります。特に営業には、臨機応変な姿勢が強く求められます。

ただし、柔軟に運用することと、ルールに違反することは全く別です。相手からルールに違反する「握り」を求められた時は、きっぱりと断る強さも持たなければなりません。断りのフレーズには、「それは当社としてはお引き受けしかねます。次回、上司も同席の上、ご相談させてください」といったものがあります。

以上(2018年8月)

pj70083
画像:Mariko Mitsuda

営業最強フレーズ集 困ったとき編2 既存のお客様から減額要請を受けたときの一言

とても残念です。なぜ、当社がこうしたお話を受けるのですか?

減額要請された営業担当者は……

営業活動は良い話ばかりではありません。中でも営業担当者が“ビビる”のは、既存のお客様からの減額要請です。

減額要請を受けたとき、法人営業の営業担当者は真っ先にこう考えます。「減額要請に従わなければ、今後は契約を解除されてしまうかもしれない」。

次は何が原因だったのかに思いを巡らせます。「お客様が不満に思うことを何かやってしまったのだろうか……」。

そして、この問いかけは、真面目な営業ほど思い当たる節が多いのは皮肉なものです。なぜなら、真面目に営業をしていればお客様と接する機会が増え、接する機会が増えれば要望をたくさんもらうようになります。ビジネスなので、そうした中には十分にお客様の要望に応えられない事案もあります。これが減額要請の原因だと思い込んでしまうことがあります。

減額要請には理由がある

お客様が減額要請をしてくる背景は2つです。1つは言ってみただけといった類いのもので、もう1つはお客様のほうで全社的なコスト削減を進めているなど明確な理由があるものです。

いずれにしても、理由を聞かずに減額要請を受け入れるようでは失格です。減額要請を受け入れるべきか否かを検討するために使えるのが、冒頭で紹介した営業最強フレーズです。

自信を持って正面から向き合う

最初に「とても残念」と伝えるのは、「普段、きちんとサービスを提供しているのに、減額要請を受けるなんて心外だ」という思いを伝えるためです。真面目な営業担当者が口にすれば効果てきめんなこともあります。お客様が言ってみただけの場合、逆に「失礼なことを言ってすみませんでした」と謝罪してくることもあります。

一方、相手に明確な理由がある場合は、それを聞き出しやすくなります。こちらがビビらずに真正面から向き合えば、お客様もそれに応じなければならないと考えるからです。

減額要請を受ける理由として多いのは、全社的にコスト削減を進めている、他社が割安なプランを提案してきている、そもそもサービスにそれほどの価値を感じなくなった、といったものでしょう。

仕方がない場合もある

ビジネスなので、明確な理由がある減額要請は受け入れざるを得ないこともあります。ここで妙な交渉をすると、本当に契約が無くなることもあります。

また、減額要請の際はお客様の不満点や不足点を聞き出すチャンスです。それを解消するような新しい商品・サービスを提案すれば逆に喜ばれ、結果的に増額になる可能性もあります。営業の現場では、ピンチとチャンスは隣り合わせであることを忘れてはいけません。

以上(2018年8月)

pj70082
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営業最強フレーズ集 フォロー編2 疎遠なお客様に“御用聞き”したいときの一言

最近他社では○○と聞いたのですが、御社ではどのようにご活用されているのでしょうか?

ニーズを聞き出す“御用聞き営業”

お客様が来年度の予算取りを始めるこの時期は、新しい提案をする絶好のタイミングです。提案をしっかり検討してもらうためには、お客様の状況やニーズを、きちんと把握しておかなければなりません。そのために必要なのが、“御用聞き営業”です。

御用聞きとは、お客様の注文を聞いて回って受注することをいいます。以前は百貨店から酒屋まで御用聞きを行っていましたが、ビジネススタイルの変化とともに、最近はあまり聞かなくなってきました。

しかし、お客様と定期的にコミュニケーションの機会が持てる御用聞きは、むしろ現在にこそ求められるのかもしれません。

疎遠なお客様の本音は……

最近、疎遠になっているお客様はいないでしょうか。そうしたお客様は、営業担当者のことをあまりよく思ってはいないかもしれません。お客様は、「最初はあれだけ熱心に連絡してきたのに、取引がスタートしたら途端に連絡をしてこなくなった。釣った魚に餌をやらないということか」と感じているかもしれないからです。

一方、このようなお客様であっても、この時期には連絡してみたいと思うのが営業担当者の性(さが)というもの。疎遠な分、もしかすると、新しいニーズが生じているかもしれないからです。そのようなときに使ってみたいのが、今回のフレーズです。

新しい情報で話を引き出す

疎遠になっているお客様に御用聞きするときは、お客様にとってプラスになり、かつお客様のニーズを聞き出しやすい、新しい情報を用意しましょう。

「お客様の同業他社の最近の動向」などは、お客様にプラスになりやすい情報です。

また、同業他社の具体例を挙げれば、「やっぱり他社もそうなんだ。実はうちでも……」と、お客様のニーズにつながる話を引き出せるかもしれません。そこには、きっとアップセルのチャンスもあるでしょう。時には、こちら側が思いもよらないニーズを聞けるかもしれません。

節目には疎遠なお客様にも御用聞き!

「何かご注文はありませんか?」と聞くだけが“御用聞き営業”ではありません。お客様の話を聞いて事例を集め、その中からお客様に関係しそうなことを伝え、お客様の潜在的なニーズを明らかにして“注文を取る”。これが“御用聞き営業”です。

できるだけお客様とは疎遠にならないようにしたいと営業担当者は思いますが、時間には限りがあるもの。どうしても密に連絡を取れないお客様も出てきます。疎遠になったお客様に対しては、期首や期末、年末年始などの節目は連絡するチャンスです。新しい事例を携えて、“御用聞き営業”にチャレンジしてみましょう。

以上(2018年8月)

pj70080
画像:Mariko Mitsuda

営業最強フレーズ集 フォロー編1 契約がスタートしたときに伝える一言

これから、より一層、全力を尽くします!

ほっと一息。しかし、油断は禁物!

「商談をつつがなく成立させ、契約をまき、入金がある」。営業担当者にとって何事にも代え難い至福のときだといえるでしょう。

同僚と飲みに行ったり、定時に帰宅して家族に喜びを報告したり、一人カフェで感慨にふけったりと、この幸せな時間の過ごし方は人それぞれです。

何事にも区切りが大事です。営業活動が一段落したこの時期、しっかり休んでリフレッシュすることは、次も良い仕事をするために不可欠だといえるでしょう。

ただし、油断は禁物です……。

「商談成立」前後の局面の変化

ここに至るまでの間、営業担当者はお客様のことを考えに考え抜いてそのニーズを探り、こちらの話を聞いてもらうための関係作りに努めてきたはずです。

お客様も同じです。これからお付き合いするかもしれない相手(自社のこと)とギクシャクするのは得策ではないため、好意的に接し、良い関係を築こうとします。

お互いが歩み寄る商談の場では、良い意味で“なぁなぁ”の取り決めもあったでしょう。前に進むために、担当者同士で“握っておく”こともあるからです。

しかし、一度商談が成立すると状況は一変します。なぜなら、局面は交渉から契約の履行に変わったからです。

真摯な姿勢をアピールしよう

当然のことですが、商談の成立後にお客様が求めるのは、契約通りのサービス提供と、きめ細かなアフターフォローです。場合によっては、こちら(自社のこと)の姿勢が厳しく管理されることもあります。

にもかかわらず、営業担当者がいまだに喜びに浸ったままの状態だと、「おいおい、大丈夫か?」とお客様は不安になります。

こうしたことが無いように、お客様に伝えておきたいのが今回のフレーズです。「ありがとうございます!」と感謝の気持ちを伝えた後に、「ここからがスタートですね。これまで通り、密に連絡を取り合いましょう」と続けて、こちらが緊張感を切らしていないことを伝えるのです。

本当の戦いはこれからだ!

今回、新たに獲得できたお客様は、これまでどこの会社と取引していたのでしょうか?

もしかすると、同業他社と取引していたところに自社がうまいこと食い込んで、リプレイスできたのかもしれません。これはうれしいことです。

ただし、自社がサービスを提供する立場になった瞬間から、今度は同業他社に狙われることになります。同業他社の営業をかわし、お客様と長期にわたる関係を築くためにアフターフォローは不可欠です。そして、それは商談成立直後のフレーズから始まっているのです。

以上(2018年8月)

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営業最強フレーズ集 クロージング編4 成約できた! そのとき、すかさず尋ねる一言

どの点を一番ご評価いただいたのでしょうか?

成約が取れたその瞬間から……

「やった!成約できた!」。クロージングの場面で相手から、「導入することに決めました」と言われたそのとき、営業担当者のテンションは一気に上がります。成果を素直に喜び、相手と、支えてくれた周囲の人々に感謝しましょう。

ただし、浮かれてばかりはいられません。相手(相手の会社)との関係は、今まさに、ここがスタート地点。しっかり関係を築き、長く取引をしてもらえるようにするのも、営業担当者の大切な役目です。

そこで、営業がうまくいったときは相手に感謝の気持ちを伝えた後で、すかさず冒頭で紹介した最強フレーズを使ってみましょう。そうして成約が取れたその瞬間から、相手のニーズをヒアリングするのです。

“ラブラブな状態”のチャンスを生かす

相手も「導入することに決めました」という良い返事をするときは、営業担当者が喜んでくれるので、断る場合に比べ気持ちがいいものです。

しかも、じっくり考えたり上司に説明したりした直後なので、相手の頭の中には、プレゼンした内容が鮮明に残っています。営業担当者とも気持ちが近づいている“ラブラブな状態”ともいえるでしょう。

そうしたときこそ、相手から、「気に入っている点」や、「将来的にはもっとこうしたい」という今後のニーズを聞き出すチャンスです。

“関係強化ツール”になる

相手が教えてくれた「気に入っている点」「今後のニーズ」は言わずもがな、相手との関係を強化するのに役立ちます。

例えば、今後、相手が気に入っている点に関する情報を、「お耳に入れておきたいことがあります」と伝えることができます。相手は「この営業担当者は自分を大事にしてくれる」と感じてもらえるでしょう

アップセルにも生かせます

もちろん、相手の「気に入っている点」「今後のニーズ」はアップセルの提案にもつながります。

もっというと、アップセルに向けた提案の結果がどうであれ、「継続して提案する」という姿勢そのものが大切です。「釣った魚にエサはやらない」のでは、相手はいつか離れていってしまいます。「導入時にご評価いただいた点をさらに強化するご提案を持ってまいりました」と言えるよう、成約が取れた今のうちから種をまいておきましょう。

どこまでも続く道をつくろう

営業活動は「売ったら終わり」ではありません。売った瞬間がスタート、そこから“道”が始まります。どこまでも続く長い道にするのか、すぐに行き止まりになってしまうのか。全ては営業担当者の“腕次第”と心得ましょう。

以上(2018年8月)

pj70078
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営業最強フレーズ集 クロージング編3 最終的に断られたとき、付け加えたい一言

参考までにお聞かせください。どこが一番ネックになったのでしょうか?

へこんでばかりはいられない

もうすぐ上期も終わります。そろそろ、成果が上がったもの、そうでないものと、上期の営業の成否が出てくる頃でしょう。

これまで紹介した最強フレーズを使っても、残念ながらうまくいかない場合もきっとあります。検討してもらった結果、最終的に断られると営業担当者としては意気消沈するでしょう。

断られてしまうのは残念なことですが、そこから学べることもたくさんあります。営業担当者なら、「凹んで終わり」ではなく、成果が上がらなかったことを、次の“営業の肥やし”にしましょう。

そういう意味で使えるのが、冒頭で紹介した最強フレーズです。クロージングのときには、こうしたフレーズを使って“次に生かす”ことも考えてみましょう。

相手が断る理由はさまざま

断られたことを次に生かすには、「相手が断る理由」がポイントです。これを相手に尋ねるのには、2つの意味があります。

1つ目は、「他の営業先に使える」ことです。相手が断る理由はさまざまです。「予算が下りなかった」「タイミングが合わなかった」「プレゼン内容が、イマイチ、ニーズに応えていなかった」「(相手の)上司の壁を突破できなかった」。こうした理由は、他の営業先に当てはまることも少なくありません。

他の営業先に生かすには

相手が教えてくれた「断る理由」を踏まえて、他の営業先には、次のような対策を取ると結果が変わってくるかもしれません。

「おおよその予算と、予算取りの時期をあらかじめ確認する」「プレゼンした後も、相手のニーズから外れていないか何度か連絡をして確認する」「相手が社内でどのように話を進めているか、途中経過を確認する」など。

例えば「タイミング」が理由だったら?

相手に「断る理由」を尋ねるもう1つの意味は、同じ相手に対して、「次回からの営業に使える」ことです。

例えばタイミングが合わなかったからという理由だったら、「今度からは○○様にタイミングよく新サービスをご案内したいと思っています。例えばどのようなタイミングがよろしいですか?」、あるいは「それでは、次回からは次年度の予算を決めるタイミングでご案内できればと思います。その時期はいつごろですか?」と尋ねてみましょう。

一度断られてからが本当の営業スタート

確かに今回は断られたかもしれませんが、少なくとも「相手とやり取りをした」という実績は残ります。新規の営業であれば特に、相手との関係はまだ始まったばかりなのです。

「一度断られてからが本当の営業スタート」くらいの気持ちで、少しでも相手の社内の状況をつかみ、次に生かしましょう。

以上(2018年8月)

pj70077
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営業最強フレーズ集 クロージング編2 最後の最後に背中を一押ししたいときの一言

全力で取り組みますので、ぜひ当社にお任せください!

最後の最後に背中を一押しするものは?

商品・サービスのメリット、自社の優位性、これまでの実績、他社導入事例……。これらできることを全てやり尽くしたプレゼンの後、最後の最後に相手の背中を一押しするのは「熱意」です。

なぜなら、熱意は相手に「よし、この人になら任せても大丈夫だろう」と思わせることができるからです。“安心感”を与えられるといってもいいかもしれません。

そこで、プレゼンの最後や、後日改めて状況確認の連絡をしたときなどに、冒頭の営業最強フレーズを使ってみましょう。これは相手を大船に乗った気持ちにさせる、まさに最強のフレーズです。

相手が最後に見るものは……

商品・サービスに価値があること、適正な金額であること、メリットが感じられることなどは大前提として重要ですが、最後には、相手は「人」を見るものです。

営業担当者があまりに自信がなさそうだったり、ネガティブな発言を繰り返したりするようでは、相手は不安になります。「この人に任せても大丈夫だろうか」と。

相手は、営業担当者を通して(営業担当者の)会社を見ています。営業担当者に対する不安は、「この会社に任せても大丈夫だろうか」という会社全体への不安につながります。

自信を持って「全力で取り組むので、当社に任せてもらいたい」と背中を押せるようになりましょう。

前向きなフレーズを入れれば効果アップ

「全力で取り組む」というフレーズの前に、もっと具体的な言葉を入れてもよいでしょう。例えば、ヒアリングで出てきたキーワードなどが効果的です。「御社が地域で一番の企業になるために」「5年後に御社の新しいビジネスが日本一になるように」というように。

そのときは、大きな視点で捉えたフレーズ、前向きなフレーズ、将来を見据えたフレーズを入れるように心掛けましょう。相手に、「この人(会社)となら、一緒に前に進むことができる」と思ってもらうことが大切です。

“とってつけた感”はNG

ただし注意したいのは、“とってつけた感”です。今まではそれほど一生懸命でもなかったのに、最後になって突然、熱意を見せても相手には響きません。逆に不信がられます。

アプローチの段階から、しっかりと相手のことを調べ、考え、「本当に相手のためになることを提案しているんだ」と誇りを持って営業していなければならないのです。

クロージングだけの最強フレーズはない!

クロージングは、いわば営業の集大成です。クロージングのときだけ最強のフレーズを使っても意味はありません。これまで、いかに誠実に熱意を持って営業してきたかが問われます。「価値ある商品・サービス×相手を思う日ごろからの熱意」こそが成果を上げる秘訣です。

以上(2018年8月)

pj70076
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営業最強フレーズ集 クロージング編1 商談を前に進めたいときの一言

もし導入していただけるとすると、いつからになりますか?

いよいよクロージングの段階に

上期も終わりに近づいてきました。そろそろ目標達成に向けて、ラストスパートを掛けていきたいところです。これまでプレゼンしてきた相手に改めて働き掛け、成約につなげていきましょう。

この段階では、「ご提案内容はいかがでしたか?」「ご検討状況を教えていただけますか?」と相手に聞くことになりますが、すぐにうれしい返事を聞けるとは限りません。「まだ検討していない」と言われることも多いでしょう。

そうしたときに使ってみたいのが、冒頭で紹介した「クロージング」での営業最強フレーズです。

「まだ検討していない」と言う背景は……

クロージングの段階で必要なのは、「相手の背中を押す」「最終的な決断を促す」などのように、商談を進めるための一言です。

相手が「まだ検討していない」と答えるのは、「検討しようと思ってはいたが後回しになっている(忘れている)」という場合が少なくありません。

これに対して「導入してもらえるならいつか?」という質問をすれば、相手は活用シーンや予算を考え、採用することを具体的にイメージしてくれるようになります。「使うとすると(相手の会社の)営業強化月間である○月かな」「上期の予算では難しいので下期になると思う」などのように。

成約までの手続きを確認してダメ押し

“仮の話”とはいえ、導入時期を答えてもらうことができたら、そこからさらに背中をもう一押ししましょう。例えば、今後の実務的な手続きについて、次のように“仮のスケジュール”を確認してみるのです。

「仮に○月にご活用される場合は、その1カ月前までには発注していただくことになります」「まず契約書を交わし、それに基づいて発注書を出していただくという流れです」

こうして「それでは、この案件は○月までに決めましょう」というコンセンサスが得られれば、相手はその時期を目指して検討しやすくなります。

期限を区切るもう1つの意味

具体的に期限を区切るのは、相手を動かすためだけではありません。「A社が難しかった場合は、次にB社に提案を」など、こちら側も戦術を立てやすくなります。

また、他への販売状況や内部のリソースの状況などによって、提案内容などは変わってきます。期限を区切るのは、そうしたリスクを避けるという意味もあるのです。

“家に帰るまでが……”

クロージングに苦手意識があったり、おろそかにする営業担当者は少なくありません。“家に帰るまでが遠足”と同じ、“クロージングまでが営業”です。最後まで気を抜かず、しっかり果実を収穫するようにしましょう。

以上(2018年8月)

pj70075
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営業最強フレーズ集 アプローチ編3 忙しい相手に少しだけでも時間を割いてもらいたいときの一言

一つだけ、お耳に入れておきたいことがあります

営業担当者と相手との間には……

今年度もいよいよ大詰めです。計画達成に向けてラストスパートをかけつつ、将来の有力な見込み客を獲得するために、営業活動に一層力が入る時期です。年度末の営業では、“予算消化”で思わぬ成果が上がることもあります。

しかし、基本的には相手も忙しく、アポイントが取りにくい時期です。「今は時間がないので、年度が替わってからにして!」と門前払いされる先が増えることも覚悟しなければなりません。年度末は、「年度末に何とか成果を上げたい!」という営業担当者と、「忙しくて営業の相手をしている暇はない……」という相手の間に、いつも以上に大きなギャップが生まれる時期なのです。

ギャップを埋める言い方

営業担当者と相手とのギャップを埋めるには、相手に「忙しくても聞く価値がある」と感じてもらうことが肝要です。そんなとき、ぜひ試してみたいのが冒頭の営業最強フレーズです。このフレーズには二つのエッセンスが隠されています。

一つ目は、「一つだけ」が示す希少性。あれもこれもではなく、たった一つに絞り込まれた情報に、相手は「何か特に重要な話かも=聞く価値がありそう」と感じます。

二つ目は、「お耳に入れておきたい」というプレミア感。お耳に入れるとは、内緒話の感覚です。相手は、ある情報を自分だけが知ることができる状況に優越感を覚えます。

これは大勢が参加するパーティー会場のヒソヒソ話に似ています。大勢の中からわざわざ自分に近寄ってきて、しかも耳元でそっと情報を伝えてくれたら、誰でも悪い気はしません。これと同じ心理で、相手も営業担当者の話を「聞いてあげてもいいよ」という気になるのです。

「一つだけ」に秘められた別の機能

「一つだけ」と言うのには、もう一つ理由があります。相手に「短い時間で済む=それなら聞いてみようか」と思ってもらえる確率が高くなるからです。

ただでさえ忙しい年度末。営業の話を聞く時間は取りにくいですが、「自分だけに重要な情報を“短時間で”教えてくれるならいいかな」と感じる人は少なくありません。

言葉を付け足せば「聞く価値」を高められる

今回は年度末を想定して説明しましたが、冒頭の営業最強フレーズは、時期を選ばずに使える便利モノです。

例えば、「今年の12月から義務化されるストレスチェックに関連して、一つだけ、お耳に……」といったアレンジをすれば、相手はますます興味を持ってくれるでしょう。

このように、会ってもらうのが難しいアプローチの段階では、「時期に応じたキーワード」「相手の仕事内容」などをしっかりと捉え、「聞きたい」と思わせるプレミア感を演出することが成功の秘訣です。

以上(2018年8月)

pj70065
画像:Mariko Mitsuda