目次
1 中堅社員の成長が会社のこれからを決める
皆さんの会社の中堅社員は頼れる存在に育っていますか? 中堅社員の成長は、会社の今後に影響します。その理由は、主に4つ挙げられます。
- 会社の戦力の底上げを図るためには、中堅社員の「伸びしろ」が重要になる
- 中堅社員は、ベテラン社員と若手・新入社員とのつなぎ役として欠かせない
- 中堅社員と年齢などが近い若手・新入社員の成長にも影響する
- これから先、今の中堅社員が会社を動かす幹部になる可能性がある
自分で仕事を回せるようになってきた中堅社員に対して、細かくあれこれ口出しするようなメッセージの伝え方は反発を招きかねません。経営者のメッセージは、テーマを絞って、
経営者が伝えたい思いや、中堅社員に期待していることを明確
にする必要があります。
また、メッセージを伝える際は、単なるお説教にならないよう、親しみやすく具体的な事例を交えるとよいでしょう。この記事では、中堅社員の成長を促す経営者のメッセージの例を4つ紹介します。
2 「自分で考え行動する」ことを伝える
会社のこれからを担う中堅社員を成長させるには、若手・新入社員の頃のように、上司に言われた業務をこなすだけの状態から変わってもらう必要があります。経営者は中堅社員に、「会社と自身の成長のために、自分で考えて行動する」ことを伝えましょう。この思いを伝えるには、中堅社員が失敗を恐れずに行動できるよう、その背中を押す内容が好ましいです。
ただし、単に「自分で考えて行動せよ」と言うだけでは、中堅社員は何をしてよいか分かりません。そこで、著名なアスリートの言葉など、身近で具体的な事例を引用しながら、中堅社員に自発的な行動への意欲を持ってもらうことが大切です。
【文例:イチロー氏の言葉を引用して背中を押す】
元メジャーリーガーのイチロー氏は、こんな言葉を残しています。「“準備”というのは、言い訳の材料となり得るものを排除していく、そのために考え得るすべてのことをこなしていく、ということですね(*)」。私がこの言葉で印象的なのは、「誰かに言われたからやった」ではなく、「自分が納得できるまで考え、動く」という姿勢です。
皆さんももう、「上司に言われたからやった」という段階ではないはずです。「なぜこの仕事をするのか」「もっと良いやり方はないか」を自分で考え、動く。その積み重ねが、3年後・5年後の皆さんを大きく変えます。まず小さなことでいい。自分の判断で一歩踏み出す習慣をつけてみてください。
【参考文献】
(*)「イチロー流 準備の極意」(児玉 光雄 (著)、青春出版社、2017年9月1日)
3 「周りのことを考える」ことを伝える
中堅社員は、ベテラン社員と若手・新入社員とのつなぎ役として貴重な存在です。ですから、自分や目の前のことだけでなく、周りのことも考えるようにしてもらいたいものです。
こうした場合は、「お客さまに対するのと同じような丁寧さで、次工程の担当者が仕事を進めやすいようにする」という趣旨の「次工程はお客さま」など、中堅社員にとっても身近な事例を用いるとよいでしょう。
【文例:「次工程はお客さま」という言葉を使って周りへの配慮を促す】
「次工程はお客さま」という言葉があります。お客さまに対して行うのと同じような丁寧さで、次の工程の担当者が仕事を進めやすいようにするという趣旨の言葉です。「次工程はお客さま」を意識していない人は、例えば誰かに仕事を頼む際、自分が分かっていることは相手も分かっているはずだと思って、雑に仕事を振ってしまいます。逆にこれを意識している人は、相手が前提を知らない可能性を想定し、必要な背景や経緯も一緒に伝えるように心がけます。
後輩は、皆さんが思っている以上に、皆さんの仕事ぶりから学ぼうとしています。皆さんが「次工程はお客さま」と思って丁寧に仕事をしていれば、後輩もそれに倣うでしょう。逆に、雑なところを見せてしまえば、後輩も「それが普通なんだ」と受け取ってしまいます。皆さんが後輩に仕事を頼むときなどはぜひ、「次工程はお客さま」を思い起こしてください。
4 「教えることが自分の学びにつながる」ことを伝える
若手・新入社員は、自分と年齢の近い中堅社員の後ろ姿を常に見ていますし、中堅社員を相談相手に求めるケースも多いでしょう。新入社員の離職率を下げるためにも、中堅社員の存在は重要です。中堅社員にとっても、後輩の面倒を見る経験は、部下を持つ立場になったときに必ず役立ちます。
そこで、ともすれば自分の仕事にかかりきりになりがちな中堅社員に対して、後輩に教えることが自分自身の学びにもなるということを伝えましょう。押し付けがましくならないよう、世界的に知られる学習法など、身近な事例を交えて伝えるとよいでしょう。
【文例:ファインマン・テクニックの話を通して「教える意義」を伝える】
皆さんは「ファインマン・テクニック」というものをご存じですか? ノーベル物理学賞を受賞したリチャード・ファインマン氏が考案した学習法で、「物事を、子どもにも分かるような簡単な言葉で説明できないなら、本当に理解しているとはいえない」という考え方が根幹にあります。
後輩から「なぜそうするんですか?」と聞かれて、うまく答えられなかった経験はありませんか。それは教える力が足りないのではなく、そこがまだ「なんとなく分かっている」止まりだということです。後輩への説明は、自分の知識を本物にするための最良の機会です。ぜひ積極的に後輩の質問を受けてみてください。
5 「将来の自分の姿をイメージする」ことを伝える
今の中堅社員はこれから先、会社を動かす幹部になる人たちです。今から将来の自分の姿をイメージすることで、長期的な視点で「自分には何が足りないのか」「今、何をすべきか」を考えることができるようになります。
とはいえ、毎日同じ環境で仕事をしているだけでは、将来の姿というのはなかなか見えてきません。そこで、未知の環境に身を置くことで見えてくるものとして伝えてみてはいかがでしょうか。著名な宇宙飛行士のエピソードを引用してみるのも手です。
【文例:野口聡一氏のエピソードを引用して「将来」をイメージしてもらう】
宇宙飛行士の野口聡一氏は、2022年にJAXAを退職し、57歳で民間の研究者へと転身しました。定年まで勤めれば安定した生活が見込めたはずですが、野口氏は「自分の価値観やアイデンティティーを他人に委ねてはいけない」と考え、新しい環境に飛び込むことを選んだそうです。野口氏はこう語っています。「新しい『宇宙』に飛び込む勇気を持てば、必ず新たな気の合う仲間や、面白くて夢中になれるものに出合える(*)」。ここでの「宇宙」とは、未知の環境のことです。
将来の自分の姿は、今の仕事の延長線上だけでイメージするものではありません。新しい環境に身を置いてみることで、初めて「自分はこうなりたい」という軸が見えてくることもあります。皆さんも、いつもと違う仕事の進め方を試したり、知らない分野の人と話したりする中で、将来の自分のヒントが見つかるかもしれません。ぜひ、「未知への一歩」を意識してみてください。
【参考文献】
(*)「ダイヤモンド・セレクト 息子・娘を入れたい会社2023」(ダイヤモンド社、2022年12月)
以上(2026年7月更新)
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