【PDFで印刷可能】総務のお仕事 12カ月 一目で分かる「月別実務リスト」

人事部、経理部、法務部など、バックオフィス専門の部署がないことが多い中小企業では、経営者や管理職も例外なくこうした実務を行います。しかし、不慣れな上に、片手間で処理することが多いので、どうしても抜け漏れが生じがちです。

一方、こうした実務は法令で定められたものが多く、放置しておくと思わぬペナルティを受けることがあります。

これを避けるために、

「人事労務」「会計・税務」 「法務・その他総務」の主なお仕事を月別にリスト化した「月別実務リスト」

を作成しました。下記からPDFでダウンロードできますので、印刷してご活用ください。


こちらからダウンロード

なお、このPDFは次のコンテンツを再編したものです。興味のある月の業務だけを知りたい場合、こちらをご確認ください。

以上(2026年4月作成)

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画像:日本情報マート

経営のヒントとなる言葉(松下幸之助)

「雨が降れば傘をさす」(*)

出所:「功のために大切なこと 松下幸之助が直接語りかける」(PHP研究所)

冒頭の言葉は、

「ビジネスにおいては、その時々の状況に応じて、当たり前のことをしっかりと行うことが重要である」

ということを表しています。

あるとき、松下氏は、新聞記者から事業の成功の秘訣について尋ねられました。その際に答えたのが、この「雨が降れば傘をさす」という言葉です。

人間は誰でも、雨が降ってくれば傘をさし、寒くなれば厚着をするものです。こうした当たり前のことを、松下氏は「天地自然の法則」と呼んでいます。

これをビジネスに当てはめると、「仕入れた(もしくは製造した)商品に適正な利益を乗せて販売し、その代金を顧客から回収する」ということになります。しかし、ことビジネスとなると、この当たり前のことが行われていないこともしばしばみられます。

例えば、「売り掛けで商品を販売したものの、顧客がなかなか代金を支払わない」といった場合、「『代金の支払いを督促すると相手の機嫌を損ねてしまい、今後の取引によくない影響を及ぼすのではないか』と考えて支払いの督促をしなかった」「他社との競争に勝つために無理な値下げをした結果、企業としての体力を著しく消耗してしまった」といったケースは少なくありません。

こうしたことに対し、松下氏は、「自身がビジネスに対して強い信念を持っていれば、常に当たり前のことを行うことができる」と述べています。

一般的に、顧客に商品を買ってもらう企業は、顧客よりも弱い立場にあると考えられがちです。だからこそ、先に述べたように代金の督促をためらったり、顧客が他社に流れないように無理な値下げを行ったりします。

しかし、自身がビジネスに対して強い信念を持っていれば、「自社の商品やサービスを買うことによって、顧客にはこのようなメリットがある」ということを、顧客に対して自信を持って伝えることができます。つまり、ビジネスに確固たる信念があれば、顧客と対等な立場で、そして他社の動向を過度に気にすることなく、当たり前のことを行うことができるのです。

1929年、松下氏は松下電気器具製作所の経営理念を次のように定めました。

「産業人タルノ本分ニ徹シ社會(しゃかい)生活ノ改善ト向上ヲ圖(はか)リ世界文化ノ進展ニ寄與(きよ)センコトヲ期ス」(**)

すなわち、同社では、自社の役割は「生産・販売活動を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化の進展に寄与すること」であるとしています。

その後、同社はパナソニック株式会社となりますが、現在に至るまで、常にこの考え方を基本に置いて事業を進めてきました。このような揺るぎない信念に基づき、当たり前のことをきちんと行っていくことこそが、大きな成功につながるのです。

【本文脚注】

本稿は、注記の各種参考文献などを参考に作成しています。本稿で記載している内容は作成および更新時点で明らかになっている情報を基にしており、将来にわたって内容の不変性や妥当性を担保するものではありません。また、本文中では内容に即した肩書を使用しています。加えて、経歴についても、代表的と思われるもののみを記載し、全てを網羅したものではありません。

【経歴】

まつしたこうのすけ(1894~1989)。和歌山県生まれ。尋常小学校中退。1918年、松下電気器具製作所(現パナソニック株式会社)設立。

【参考文献】

(*)「成功のために大切なこと 松下幸之助が直接語りかける」(松下幸之助(述)、

PHP総合研究所経営理念研究本部(編著)、PHP研究所、2009年3月)

(**)パナソニック株式会社ウェブサイト」(パナソニック株式会社)

「私の履歴書 経済人1」(五島慶太、杉道助、堤康次郎、新関八洲太郎、原安三郎、

松下幸之助、山崎種二、石坂泰三、出光佐三、伊藤忠兵衛、大谷竹次郎、高碕達之助、遠山元一、日本経済新聞社、2004年6月)

「雨が降れば傘をさす 松下幸之助に学ぶ本物の経営」(中博、アチーブメント出版、2009年3月)

以上(2026年3月更新)

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画像:日本情報マート

新入社員のための「給与&社会保険」の基礎知識(2026年4月号)

新入社員として働き始め、最初の給与が振り込まれたとき、すべての人が「給与明細」を受け取ります。給与明細を見る際、最初に目を向けるのはいわゆる「手取り額」でしょう。「手取り額」を見ると「思っていたより少ない」「なぜこんなに引かれているのか」といった違和感を覚える人も少なくありません。その理由は、これまでに給与明細の見方や、税金・社会保険について詳しく学ぶ機会がほとんどなかったからです。本冊子では、新入社員に向けて給与明細の全体像を中心に、税金や社会保険について解説します。


2026年「賃上げ」に対する経営者300人の本音。御社はどうする?

1 2年連続で賃上げする企業は86.0%!

今年も「賃上げ」に関する話題が世間を賑わせています。足元では「春闘の賃上げ率が3年連続で5%超」となる見込みですが、一方で「中小企業の賃上げ疲れ」を指摘する声もチラホラ……世の経営者はどのように考えているのでしょうか?

昨年に引き続き、経営者289人を対象に、賃上げに関する緊急アンケートを行いました(2026年3月17日から3月24日まで)。

今回は、「2026年度に賃上げを実施する」という企業が全体の37.0%、そのうち

「2年連続(2025年度・2026年度)」で賃上げを実施するという企業が、なんと86.0%

もいました。

ちなみに、2年連続で賃上げすると答えた企業の2025年度(昨年度)の賃上げ率は、「3%以上」が最も多かったです。

2年連続で賃上げを実施する?

2 賃上げを実施するか否か、何を基準に判断する?

ここからは、2026年度の賃上げの方針についての回答結果を紹介します。

まずは、賃上げをするか否かを判断するために重視する情報についてですが、「自社の業績」が圧倒的に多くなっています。「物価高など社員の生活」「最低賃金の改定」を気にする企業も多く見受けられました。

判断基準となる情報は?

3 賃上げする企業が求めている情報は?

では、具体的にどれだけの企業が賃上げをするのでしょうか?

具体的にどれだけの企業が賃上げをするのか?

「2026年度に賃上げを実施する」という企業は37.0%(このうち86.0%が2年連続での実施)で、「2〜3年以内に実施する」という企業は12.1%となっています。

また、賃上げする企業が、賃上げの原資を確保するために実施している施策としては、「値上げ(価格転嫁)などによる収益向上」が最も多く、さらに「業務効率化などによるコスト削減」が続きます。

賃上げする企業が求めている情報は、「社会保険料への影響に関する情報」「助成金や賃上げ促進税制」に関する情報でした。少しでも賃上げの負担を軽減したいというところでしょう。

また、経営者が賃上げについて相談する相手は、「自社の取締役」が最も多く、「顧問の税理士」がこれに続きます。

4 どうやって、どの程度の賃上げをする?

賃上げの手法や賃上げ率はどうでしょうか?

賃上げの手法や賃上げ率は?

賃金の範囲としては、「基本給のみ」が最も多いですが、基本給の他に手当や賞与も上げるという企業が続きます。かつては、基本給は上げず、手当や賞与を上げて対応する企業が多かったですが、2026年はそれよりも踏み込んだ賃上げを検討する企業が増えています。

具体的な賃上げ率は、「2%以上」が最も多いですが、「5%以上」と答えた企業も少なからずいて、賃上げに対する意気込みがうかがえます。

賃上げの手法については、ベースアップで実施する企業が最も多く、定期昇給が続きます。両方を行うという企業も多いようです。

5 賃上げ「しない企業」の経営者が考えていることは?

これまでとは逆に、賃上げをしない企業の状況を紹介します。

賃上げをしない企業の状況は?

なぜ、賃上げをしないのかについては、「業績の先行きが不透明だから」が圧倒的に多くなっています。前述した通り、賃上げをするか否かを判断するために最も重視される情報は「自社の業績」でした。やはり、業績が伴わない賃上げは難しいということでしょう。

どうなったら賃上げをするのかについては、これまで同様に業績が重視されていて、「業績好調が続くと確信できたとき」が圧倒的に多くなっています。

以上(2026年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【動画で学ぼう】入社3~5年目の中堅社員に必要な意識改革

中小企業にとって中堅社員は組織の要であり、皆さんの成長こそが企業の成長につながります!「半歩先行く中堅社員」シリーズは、そのためのエッセンスをまとめた15本のシリーズです。
今回、新たに動画版の公開をスタートしましたので、ぜひ、参考にしてみてください。

1 仕事があるのに「休日出勤」したらいけないの?

中堅社員は、部下から見られる存在である。安易に残業や休日出勤をする前に、チームの生産性を向上させることを考えよう!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


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2 「働き方改革」の第一歩は、今でも「整理整頓」

オフィスは「公の場所」である。自分のデスクなどはもちろん、共用スペースも整理整頓をすると、生産性の向上につながる!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


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3 料理と後片付けは別々にやろう!

仕事の進め方は、「ストライプ型」と「ソリッド型」がある。中堅社員は、ストライプをソリッドにしよう!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


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4 仕事が遅れるのは、“速さ” の問題にあらず

仕事を抱え込み過ぎてはいけない。うまく部下に振っていく能力が中堅社員には求められる。仕事は信号機のイメージで把握しよう!

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5 コーラとコーヒーを一緒に売るのは正しいのか?

「アイデア出し」は積極的に行おう!同時に、思い付きレベルを脱し、何が最も効果的であるかを検討できるビジネス力を養おう。

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


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6 「原点回帰」と言って格好つけるな!

軽率に「原点回帰」を口にしない。原点回帰を進めるならば、必ずアクションプランとセットにしよう!

(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)


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動画制作
アーティスソリューションズ
https://www.artis-sol.co.jp/index.html

以上(2026年3月作成)

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画像:Eriko Nonaka

【業種別データ】水産食料品製造業の動向

2023年の水産食料品製造業は、事業所数・出荷額ともに前年をやや下回る一方、現金給与総額や従業者1人当たり給与は増加しております。原材料費比率は約70.7%と高く、付加価値率は低下傾向にあります。分野別では海藻加工品や冷凍食品が増収となる一方で、品目間の差が広がっております。コスト高や需給変動への対応、生産効率の向上が引き続き重要な課題となっております。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の水産食料品製造業の事業所数は4857事業所(対前年比98.7%)、従業者数は13万1494人(対前年比98.5%)、製造品出荷額等は3兆7839億8800万円(対前年比98.3%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は27人(対前年比99.8%)、現金給与総額は8000万円(対前年比101.9%)、原材料使用額等は5億5100万円(対前年比100.2%)、製造品出荷額等は7億7900万円(対前年比99.6%)、付加価値額は2億700万円(対前年比97.8%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は295万円(対前年比102.1%)、製造品出荷額等は2878万円(対前年比99.8%)、付加価値額は764万円(対前年比98.0%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は70.7%(対前年比100.6%)、同付加価値額比率は26.5%(対前年比98.2%)、同現金給与総額比率は10.3%(対前年比102.3%)となっています。

【0920 水産食料品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)水産缶詰・瓶詰製造業

2023年の水産缶詰・瓶詰製造業の事業所数は113事業所(対前年比99.1%)、従業者数は4500人(対前年比100.3%)、製造品出荷額等は1兆119億2600万円(対前年比101.0%)となっています。

【0921 水産缶詰・瓶詰製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)海藻加工業

2023年の海藻加工業の事業所数は685事業所(対前年比99.6%)、従業者数は1万6103人(対前年比100.4%)、製造品出荷額等は3848億5500万円(対前年比103.0%)となっています。

【0922 海藻加工業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)水産練製品製造業

2023年の水産練製品製造業の事業所数は518事業所(対前年比99.2%)、従業者数は1万9802人(対前年比96.7%)、製造品出荷額等は4113億8800万円(対前年比98.4%)となっています。

【0923 水産練製品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)塩干・塩蔵品製造業

2023年の塩干・塩蔵品製造業の事業所数は535事業所(対前年比99.1%)、従業者数は1万2093人(対前年比97.2%)、製造品出荷額等は2752億2000万円(対前年比98.7%)となっています。

【0924 塩干・塩蔵品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)冷凍水産物製造業

2023年の冷凍水産物製造業の事業所数は621事業所(対前年比99.5%)、従業者数は1万8357人(対前年比102.0%)、製造品出荷額等は8130億8600万円(対前年比101.2%)となっています。

【0925 冷凍水産物製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

7)冷凍水産食品製造業

2023年の冷凍水産食品製造業の事業所数は576事業所(対前年比96.2%)、従業者数は1万7598人(対前年比98.6%)、製造品出荷額等は7265億5500万円(対前年比97.6%)となっています。

【0926 冷凍水産食品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

8)その他の水産食料品製造業

2023年のその他の水産食料品製造業の事業所数は1809事業所(対前年比98.7%)、従業者数は4万3041人(対前年比97.5%)、製造品出荷額等は1兆609億6000万円(対前年比94.7%)となっています。

【0929 その他の水産食料品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【水産食料品製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

副業社員は、複数の会社で雇用保険に加入できる? できない?

1 副業社員の労働保険はどうなる?

副業にはさまざまな労務管理のルールがあります。労働保険(雇用保険・労災保険)の場合、

雇用保険については、65歳以上など一定の要件を満たす社員に限り、複数の会社での加入を認める「雇用保険マルチジョブホルダー制度」

というのがありますし、労災保険についても押さえておきたい特有のルールがあります。

この記事では、副業特有の労働保険のルールを取り上げます。ポイントは、次の5点です。

  • 雇用保険は原則として1社で加入する
  • 65歳以上の社員は一部、複数の会社で雇用保険に加入できる
  • 雇用継続中でも離職証明書の作成が必要になるケースがある
  • 労災保険給付の申請には自社と副業先の両方が携わる
  • 疾病による労災は自社と副業先の両方の負荷で判断することがある

2 雇用保険は原則として1社で加入する

学生などの例外を除き、次の2つのいずれにも該当する社員は、必ず雇用保険に加入します。

  • 週の所定労働時間が20時間以上(注)であること
  • 雇用見込みが31日以上あること

(注)2028年(令和10年)10月1日より、週の所定労働時間が「10時間以上」の労働者にも雇用保険が適用されるようになります。

役員は、原則として雇用保険に加入できません。しかし、経営業務以外の業務にも携わり賃金が支払われる「兼務役員」については、所轄ハローワークの認定を受ければ加入できます。

社員や役員(以下「社員等」)が副業する場合、雇用保険は原則として「主たる賃金が支払われる会社(一般的には、賃金が最も多い会社)」で加入します。つまり、

原則として複数の会社で同時に雇用保険に加入することはできず、1社で加入する

ということです。

3 65歳以上の社員は一部、複数の会社で雇用保険に加入できる

原則として、雇用保険は1社で加入します。しかし、例外として雇用保険マルチジョブホルダー制度があります。これは、高齢社員の就業機会を増やすための制度で、次の3つのいずれにも該当する社員に限り、複数の会社で雇用保険に加入できます(兼務役員への制度適用については特に定めがないため、所轄ハローワークなどに要相談)。

  • 1.複数の会社で雇用され、年齢が65歳以上であること
  • 2.複数の会社のうち2つの会社(どちらも週の所定労働時間が5時間以上20時間未満)について、週の所定労働時間の合計が20時間以上であること
  • 3.複数の会社のうち2つの会社について、それぞれ雇用見込みが31日以上あること

図表1は、3つの会社で雇用される65歳の社員への制度適用のイメージです。

制度適用のイメージ

社員が3つの会社の中から、制度の対象となる会社を2つ選択します。C社は雇用見込みが31日以上ないので対象外ですが、A社とB社が週の所定労働時間と雇用見込みの要件を満たします。そのため、社員はA社とB社、2つの会社で雇用保険に加入できます。

なお、雇用保険は通常、強制加入(加入要件を満たす社員は必ず加入しなければならない)ですが、マルチジョブホルダー制度の場合は任意加入(社員が加入するかどうかを自分で決められる)です。加入を希望する場合、

社員本人が「マルチジョブホルダー雇入・資格取得届」などの必要書類を、自分の住所を管轄するハローワークに提出(提出期限はなし)

します。この際、

社員が制度の対象として選択した2つの会社は、それぞれ社員からの依頼に基づいて、書類の事業主記載事項(賃金や週の所定労働時間など)を記入する必要があります。また、手続き時には賃金台帳や出勤簿、雇用契約書などの確認資料(コピー可)の添付も必要となりますので、それらの書類を社員本人に交付

します。

雇用保険料については、雇用保険の資格取得日から発生し、2つの会社がそれぞれ納付義務を負います。社員からの保険料徴収(給与天引き)、保険料納付(年度更新)などの実務は、通常の社員と変わりません。

被保険者となった社員は、通常の社員と同様、雇用保険給付を受けられます。ただし、給付を受けるには2つの会社で同時に支給要件を満たさなければなりません。例えば、介護休業給付(介護休業中、賃金が支払われない場合に支給)の場合、2つの会社で原則として「直近2年間に被保険者期間が12カ月以上あること」などの要件を満たし、かつ同時に介護休業を取得する必要があります。

なお、マルチジョブホルダー制度の書類に提出期限はないものの、資格取得日は届出日となります。届出前に遡って加入はできないため、社員に対して早めに届け出ることを伝えるのが望ましいでしょう。

4 雇用継続中でも離職証明書が必要になるケースがある

社員が副業先を退職するなどして、雇用保険マルチジョブホルダー制度の対象から外れる場合、雇用保険の被保険者資格も失われます。その場合、

社員本人が「マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届」などの必要書類を、自分の住所を管轄するハローワークに提出(被保険者でなくなった日の翌日から10日以内)

します。この際、

社員が雇用保険加入時に制度의対象として選択した2つの会社は、それぞれ社員からの依頼に基づいて、書類の事業主記載事項(退職日や退職理由)を記入

します。また、

社員から依頼があった場合、2つの会社でそれぞれ「離職証明書」を作成

する必要があります。雇用が継続しているほうの会社も、社員に退職日などを確認して離職証明書を作成しなければなりません。

なお、マルチジョブホルダー喪失・資格喪失届や離職証明書は、社員が退職したほうの会社と、雇用が継続しているほうの会社とで記入方法が異なります。詳細は次の申請パンフレットをご確認ください。

厚生労働省「雇⽤保険マルチジョブホルダー制度の申請パンフレット」
https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000838543.pdf

5 労災保険給付の申請には自社と副業先の両方が携わる

労災保険は、適用事業に雇用されている全ての社員に適用されます。事業場単位で保険に加入し、賃金を受け取るすべての労働者が自動的に対象となるため、被保険者という概念はありません。

原則として、役員は労災保険に加入できませんが、中小事業主等に該当する経営者などは、所轄都道府県労働局長の承認を受ければ特別加入できます。また、兼務役員の場合、経営業務以外の業務中に発生した業務災害と通勤災害について、労災保険が適用されます。

また、副業する社員等が本業先から副業先へ移動する場合(事業場間の移動)も、労災保険法上の「通勤」です。この区間で事故に遭った場合、移動先(副業先)の労災保険により通勤災害として保護されます。

副業している社員等が労災により傷病を負った場合、通常の社員等と同様、労災保険給付を受けられます。ただし、一部の給付を除き、

自社と副業先の賃金額の合計を基に支給額が算定される

という点が通常と異なります(特別加入の経営者などは、厚生労働大臣が具体的な額を定めるため対象外)。

労災保険給付のイメージ

社員等が労災保険給付(一部を除く)を申請する場合、労災が発生したほうの会社は、申請に当たって傷病の発生状況、賃金の支払い状況、休業状況などを申請書に記入します。ただし、社員等が副業している場合、支給額を正確に算定するため、

労災が発生していないほうの会社も、賃金の支払い状況などを、申請書の別紙に記入しなければならないケース

があります。具体的には、次の保険給付の場合です。

  • 休業(補償)等給付:療養のために働けず、休業が通算3日以上となった場合に支給
  • 障害(補償)等給付:社員等の傷病が治癒し(症状固定を含む)、一定の障害が残った場合に支給
  • 遺族(補償)等給付:社員等が亡くなった場合、遺族に対して支給
  • 葬祭料等(葬祭給付):社員等が亡くなった場合、葬儀を執り行う者に支給

6 疾病による労災は自社と副業先の両方の負荷で判断することがある

脳出血やうつ病などの疾病は、負傷の場合と違って労災の発生状況が分かりにくいため、自社と副業先の両方について社員等の負荷を評価し、労災に当たるかを判断します。具体的には、

まずそれぞれの会社で社員等の負荷がどの程度あったかを評価し、1つの会社の負荷だけでは労災に当たると認定できない場合、複数の会社での負荷を総合的に評価して判断

します。社員等が泣き寝入りになってしまうことを防ぐためです。

労災認定する際のイメージ

なお、労災保険料率を上下させる「メリット制」については、あくまで業務災害が発生した事業場のみが影響を受けます。

以上(2026年3月更新)
(監修 社会保険労務士 柴田充輝)

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画像:takasu-Adobe Stock

【規程・文例集】「副業取扱規程」のひな型

1 副業は「原則禁止」から「原則容認」へ

働き方改革の影響もあり、社員の副業を検討する会社が増えています。厚生労働省「モデル就業規則」でも、以前は「原則禁止」とされていた副業が、「原則容認」というスタンスに変わってから久しくなっているので、皆さんの会社でも、副業を希望する社員が増えていると思います。

とはいえ、

副業を無制限に認めてしまうと、過重労働や情報漏洩のリスクがあるので、「原則容認」のスタンスは守りつつ、就業上のルールを「副業取扱規程」などで定める

ことが大切です。例えば、次のようなルール作りが考えられます。

1)副業を禁止・制限するケース

副業を禁止・制限するケースとして、

  • 長時間労働や深夜労働などによって労務提供に支障がある場合
  • 同業他社など、自社の利益を害する恐れがある業種・業務の場合
  • 副業に関する業務上の指示に従わない場合

などを定め、副業を希望する社員に対しては「副業許可届出書」などの提出を義務付けます。

2)労働時間管理

厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(以下「ガイドライン」)では、副業時の労働時間管理について、

  • 自社と副業先の労働時間は、原則として通算しなければならない(注)
  • ただし、いわゆる「管理モデル」を適用する場合、自社と副業先がそれぞれ時間外労働の上限を設定し、社員がその範囲内で働けば、互いの実労働時間を把握しなくてもよい

というルールを定めています。ただし、管理モデルを適用するには、副業開始前に、自社の時間外労働の上限などを社員に通知しておく必要があります。また、副業・兼業先に対して、直接または社員を通じて、管理モデルを適用することを提案する必要があります。

(注)2026年2月現在、割増賃金を算定する際の労働時間の通算義務については、今後撤廃する方向で政府内での議論が進められています(現状は、管理モデルを適用しない限り義務)。

上記のような点を踏まえつつ、次章では専門家が監修した、副業取扱規程のひな型を紹介します。前述した「副業許可申請書」のひな型も掲載していますので、併せてご確認ください。なお、厚生労働省のガイドラインについては、次のURLから確認できます。

■厚生労働省「副業・兼業」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000192188.html

2 副業取扱規程のひな型

以降で紹介するひな型は、一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【副業取扱規程のひな型】

第1条(目的)

本規程は、従業員が適切な職業選択を通じ、多様なキャリア形成を図ることを促進することを目的とする。会社は、従業員が就業時間外において、他の会社その他の団体(以下「副業先」)の業務に従事し、または自ら事業を営むこと(以下「副業」)について、本規程に定める条件を満たす限りにおいて、原則として認めるものとする。なお、本規程に定めのない事項は、労働基準法その他の関係法令によるものとする。

第2条(対象範囲)

本規程の適用を受ける従業員は、就業規則第○条に定める、会社と期間の定めがない労働契約を交わした従業員とする。ただし、本業に習熟が必要な新卒入社1年未満の従業員については、個別の教育訓練状況を鑑み、副業・兼業を制限することがある。

第3条(副業の定義)

本規程において「副業」とは、次の各号に掲げる場合をいう。

  • 副業先に雇用される場合
  • 副業先の役員に就任する場合
  • 業務委託、請負契約などに基づき、副業先の業務に従事する場合
  • 自ら起業し、または事業を営む場合

第4条(副業の許可)

1)従業員は、第3条各号に掲げる副業を行おうとするときは、その開始を希望する日の2週間前までに、所定の「副業許可申請書」を会社に提出し、副業の許可を受けなければならない。

2)従業員は、届出内容(業務内容、労働時間等)に変更があった場合、または副業を終了した場合には、速やかにその旨を会社に報告しなければならない。

第5条(許可基準)

会社は、第4条の許可を受けようとする従業員が、次の各号のいずれかに該当する場合、当該従業員の副業を禁止または制限することができる。

  • 長時間労働や深夜労働により、健康を害する恐れ、または本業に支障を来す恐れがある場合
  • 自社の技術上、営業上の秘密が漏洩する恐れがある場合 (生成AI等への不用意な機密入力行為を含む)
  • 同業他社への勤務等、競業行為により自社の利益を不当に害する場合
  • 公序良俗に反する業務等に従事し、会社の社会的信用を損なう恐れがある場合

第6条(副業時における労働時間の取り扱い)

1)会社と他社の双方が雇用関係にある場合、労働時間は通算して管理する。

2)会社は、労働時間管理の事務負担軽減および健康確保のため、厚生労働省ガイドラインに基づく「管理モデル」を適用することができる。この場合、従業員は会社が指定する時間外労働上限時間を遵守し、副業先へもその旨を伝達しなければならない。

3)管理モデルを適用しない場合、従業員は1週間ごとに副業先での実労働時間を会社に報告しなければならない。

第7条(副業に関する報告義務)

1)従業員は、次の各号のいずれかに該当する事由が生じた場合、速やかに会社へ報告しなければならない。

  • 第5条各号に定める許可基準を満たすことができなくなった場合
  • 副業先において、長期欠勤、休職、退職もしくは退任する場合、または副業を廃業等する場合
  • 副業先での業務上の負傷または疾病、事故が発生した場合
  • 通勤中に事故が発生した場合
  • 前各号に準じる事由が発生した場合

2)従業員は、前項の報告に当たって、会社から必要な書類の提出を求められた場合には、速やかに会社に提出するとともに、必要な報告・説明を行わなければならない。

3)副業に関する事故などが労働災害である場合、当該事故などに関する労災保険の適用については、労働者災害補償保険法その他の関係法令によるものとする。

第8条(情報の提出およびAIセキュリティ)

1)会社は、安全配慮義務の履行およびセキュリティ管理のため、必要に応じて副業先での勤務実績や業務内容の報告を求めることができる。

2)従業員は、副業において生成AI等のデジタルツールを利用する場合、自社の機密情報 (顧客情報、独自のノウハウ等)を学習データとして入力してはならず、情報の保護に万全を期さなければならない。

第9条(健康管理、業務の調整等)

1)従業員は、副業を行うに当たって、会社の業務と副業の間に休憩時間を確保する、会社の業務と副業の双方に従事しない休日を確保する等、自らの健康を確保するように努めなければならない。

2)会社は、従業員の副業に関する報告または従業員の状況を踏まえて必要があると判断した場合、従業員に対し、会社の業務の変更、時間外労働の制限、勤務時間および勤務日数等の勤務条件の変更を命じることができる。

3)会社は、通算労働時間が月間一定時間を超える従業員に対し、産業医による面接指導等の健康確保措置を実施し、必要に応じて副業・兼業の制限または中止を命じることができる。

第10条(許可の取消し等)

会社は、従業員に副業を許可した場合でも、次の各号のいずれかの事由が生じた場合、許可の取消し、または条件の変更をすることができる。

  • 第5条各号に定める事由に該当した場合
  • 本規程に定める報告義務または提出義務に違反した場合
  • 第9条に定める命令に違反した場合
  • 前各号に準じる事由がある場合

第11条(懲戒処分)

次に違反した従業員は、就業規則第○条に定める懲戒処分を行うことがある。

  • 第4条の許可を受けることなく、副業を行った場合
  • 副業の内容について、故意に虚偽の報告を行った場合
  • 副業により、会社に実害(秘密漏洩、顧客奪取等)を与えた場合
  • 前各号に準じる事由がある場合

第12条(改廃)

本規程の改廃は、取締役会の承認による。

【副業許可申請書】

副業許可申請書

以上(2026年3月更新)
(監修 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【業種別データ】畜産食料品製造業の動向

2023年の畜産食料品製造業は、事業所数が2687事業所(前年比90.0%)、従業者は16万8471人(96.7%)、製造品出荷額は7兆7310億円(88.6%)と全体はやや縮小しています。一方で原材料費比率は72.9%、付加価値額比率は23.3%と利益率が圧迫されており、部分肉・冷凍肉や一部の乳製品は増収となる品目もあるものの品目間で明暗が分かれています。コスト高や需給変動への対応、中小事業者の収益改善と生産性向上が喫緊の課題です。

1 業界動向

1)業界全体

2023年の畜産食料品製造業の事業所数は2687事業所(対前年比90.0%)、従業者数は16万8471人(対前年比96.7%)、製造品出荷額等は7兆7310億3900万円(対前年比88.6%)となっています。

1事業所当たりの従業者数は63人(対前年比107.4%)、現金給与総額は2億1400万円(対前年比99.1%)、原材料使用額等は20億9900万円(対前年比94.9%)、製造品出荷額等は28億7700万円(対前年比98.4%)、付加価値額は6億6900万円(対前年比108.7%)となっています。

従業者1人当たりの現金給与総額は341万円(対前年比92.3%)、製造品出荷額等は4589万円(対前年比91.6%)、付加価値額は1067万円(対前年比101.2%)となっています。

製造品出荷額等に占める原材料使用額等比率は72.9%(対前年比96.4%)、同付加価値額比率は23.3%(対前年比110.4%)、同現金給与総額比率は7.4%(対前年比100.7%)となっています。

【0910 畜産食料品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2)部分肉・冷凍肉製造業

2023年の部分肉・冷凍肉製造業の事業所数は908事業所(対前年比100.4%)、従業者数は4万7185人(対前年比102.6%)、製造品出荷額等は2兆3055億2000万円(対前年比106.7%)となっています。

【0911 部分肉・冷凍肉製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3)肉加工品製造業

2023年の肉加工品製造業の事業所数は519事業所(対前年比100.0%)、従業者数は3万6399人(対前年比98.8%)、製造品出荷額等は1兆1149億1800万円(対前年比97.9%)となっています。

【0912 肉加工品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

4)処理牛乳・乳飲料製造業

2023年の処理牛乳・乳飲料製造業の事業所数は233事業所(対前年比99.6%)、従業者数は1万7546人(対前年比104.8%)、製造品出荷額等は1兆3537億7800万円(対前年比103.3%)となっています。

【0913 処理牛乳・乳飲料製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

5)乳製品製造業(処理牛乳、乳飲料を除く)

2023年の乳製品製造業(処理牛乳、乳飲料を除く)の事業所数は313事業所(対前年比99.4%)、従業者数は2万3396人(対前年比98.2%)、製造品出荷額等は1兆5488億3000万円(対前年比105.7%)となっています。

【0914 乳製品製造業(処理牛乳、乳飲料を除く)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

6)その他の畜産食料品製造業

2023年のその他の畜産食料品製造業の事業所数は714事業所(対前年比99.4%)、従業者数は4万3945人(対前年比99.7%)、製造品出荷額等は1兆4079億9400万円(対前年比106.3%)となっています。

【0919 その他の畜産食料品製造業】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

2 品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)

品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)は次の通りです。

【品目別・都道府県別出荷金額ランキング(2023年実績)】

(出所:経済産業省「経済構造実態調査(製造業事業所調査)」を基に作成)

3 経営指標

【畜産食料品製造業の経営指標】

(出所:日本政策金融公庫「小企業の経営指標2024」)

(注1)( )内は、調査対象企業数です。

(注2)受取利息を加味できないなど調査項目に限界があるため、「黒字かつ自己資本プラス企業」でも損益分岐点比率が100%を超える場合があります。

以上(2026年3月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【業務効率化】AI時代にも通用するExcelデータ入力の作法

1 もう一度おさらい「総務省統一ルール」

総務省が2020年末に公表した「統計表における機械判読可能なデータ作成に関する表記方法」(通称「総務省統一ルール」)をご存じですか? もともとは各府省を対象として、Excelでデータ入力するときの注意点をまとめたものですが、一般事業者も必見の文書です。

総務省「統計表における機械判読可能なデータ作成に関する表記方法」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000723626.pdf

対話型の生成AIサービスが飛躍的な進歩を遂げた今となっては、この文書にあるような「機械判読可能なデータ作成」について、さほど気にしなくてもよいのではないかと思う人もいるかもしれません。しかし、

AIの能力を最大限に引き出し、より正確で効率的なデータ処理を可能にするためにも「機械判読可能なデータ作成」は重要です。

以降で総務省統一ルールの中から、データ入力の作法として押さえておきたいポイントを、「8つ」紹介します。修正前後のイメージを交えて説明するので、ぜひご確認ください(修正前=悪い例、修正後=良い例です)。

2 データ入力の作法として押さえておきたい8つのポイント

1)1つのセルには1つのデータだけ

1つのセルに複数のデータが入力されていると、関数を使った計算や昇順・降順の並べ替え、機械判読が正確にできなくなります。すぐに加工編集できるように、

1つのセルに入力するのは1つのデータだけ

にしましょう。

1つのセルには1つのデータだけ

2)数値データは数値属性とし、文字列を含まない

数値データに、「円(通貨単位)」「▲(マイナス表記)」「, (カンマ)」などを文字列として入力すると、Excel上は数値ではなく文字列として扱われるため、関数を使った計算ができなくなります。また、昇順・降順の並べ替えも正確にできなくなることがあります。

数値データは数値属性とし、文字列を含まない

ようにしましょう。

数値データは数値属性とし、文字列を含まない

3)セルの結合をしない

1件のデータは、横1行(または縦1列) で表記し、

セルの結合または不必要な分離は行わない

ようにしましょう。セルが結合または分離されていると、機械判読には適しません。

セルの結合をしない

4)スペースや改行などで体裁を整えない

例えば、「合計」の内数であることを表すのに、本来の情報が「A」「B」「C」であるのに、「A」「B」「□C」とスペースを挿入して体裁を整えた場合、他のデータとうまく結合できなくなります。

また、セルの中で文字を入力中、Windowsの場合「Alt + Enter」で改行できますが、その改行に意味があるのか機械では判断できません。

体裁を整えるためのスペースや改行などは解除(削除)

しましょう。

スペースや改行などで体裁を整えない

5)項目名などを省略しない

例えば、項目の一番上に「鎮静剤A-1」と入力され、その下に「2」「3」「4」と続いている場合、人が見れば「鎮静剤A-」が省略されているに違いないと分かりますが、機械では「2」「3」「4」という項目が何を意味するのか判断できません。見た目が冗長であったとしても、

項目名などは省略せずに全て入力

しましょう。

項目名などを省略しない

6)オブジェクトを使用しない

例えば、「{(左中かっこ)」などのオブジェクトを挿入して体裁を整えても、機械では判別できません。

オブジェクトを削除した上で、それぞれのセルにデータを入力

しましょう。

オブジェクトを使用しない

7)データの単位は別セルに記載

データの単位(物理単位、通貨単位など)は、データ処理に必須です。

単位は数値とは別セルに記載

しましょう。

データの単位は別セルに記載

8)機種依存文字を使用しない

例えば、「①」などの丸囲み数字、「(株)」「(有)」といった囲み文字などは、機種依存文字で、利用者の環境によっては正しく表示されません。

機種依存文字を使用しない

ことを徹底しましょう。

機種依存文字を使用しない

デジタル庁 「e-Gov電子申請 入力可能な文字について」
https://shinsei.e-gov.go.jp/contents/help/notes/letters.html

3 人間の判断が必要な作業は自動化できない

生成AIを使うと、例えば、「売上を地域別に要約して」といった自然言語の指示で、ピボットテーブル作成やデータ分析が可能です。また、テキストの表記ゆれ (例: 大文字・小文字の混在)、数値形式の不一致、余分なスペースといった一貫性のないデータを、AIが自動検出し、修正案を提示してくれるようにもなりました。適切に指示をすれば、結合されたセルのデータを自動的に適切な行や列に展開したり、一つのセル内の複数データを分離したりできるかもしれません。

一方、依然として人間の判断が必要な部分もあります。例えば、数値データ列内の 「***」「X」 (秘匿データを示す特殊記号)はAIも例外的に許容しますが、それが本当に意図されたものか、単なる入力ミスかを最終的に判断するのは人間です。また、AIの回答にはエラー(ハルシネーション) が含まれる恐れもあります。

どのデータが何を意味しているのか、人間の判断が介在しないでも、機械的に正しく読み取れるようにデータを整えておくことが重要です。データが最初から標準化されていれば、後処理や人間によるチェックの手間を大幅に削減し、データ分析全体の効率と品質を向上させることができるでしょう。

以上(2026年3月更新)

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画像:Kaspars Grinvalds-shutterstock