経営者のためのリスクマネジメントの心構え

書いてあること

  • 主な読者:自社を取り巻くリスクを知りたい経営者
  • 課題:多種多様なリスクがあり、何から対策をすればよいか迷う
  • 解決策:本稿ではリスクの洗い出し、リスク管理の実施などリスク対策について紹介しているので、参考にする

1 リスクの捉え方

地震や台風などの自然災害、火災、サイバー犯罪など、企業は災害・事故・事件によって組織基盤に大きなダメージを被る可能性があります。また、為替の変動、株主代表訴訟や製造物責任訴訟、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、労働災害、背任、横領、インサイダー取引など、企業を取り巻くリスクはさまざまです。

リスクは、事業目的の達成を妨げるような事象が発生する危険性や不確実性として捉えられます。経営環境が変化する中、企業の存続・成長を図るためにリスクを的確に把握し、その発生の可能性を低減し、また発生した場合の損失の最小化、早期復旧および再発防止に努める不断の努力が重要です。そして、経営環境の変化に対応していくためには、最高責任者として経営者が統括する、全社的なリスクマネジメントシステムを構築することが求められます。

2 リスクマネジメントシステムを構築するための考え方

1)経営トップの関与

企業活動からリスクを全て排除することはできません。そこで、企業を取り巻くリスクと上手につきあうこと、つまり、「リスクを適切に管理する」ことが必要になります。まずは、経営トップがこのことを正しく理解し、自らが先頭に立ちトップダウンで進めることが肝心です。

2)組織としてのノウハウの継承

リスクの内容は各事業によって異なり、同じ事業でも時期や周囲の環境などによって異なってきます。従って、リスクを効果的に管理していくためには、まず、部署ごとに想定されるリスクを洗い出し、認識・確認することが重要になります。

また、リスク管理の実践に当たっては、マニュアルのメンテナンスやその教育の徹底が不可欠です。マニュアル作成当初の姿勢やリスク管理体制を継承していくためには、経営に近い部署の担当者がその任に当たり、企業規模によっては専任部署を設置することが望まれます。

担当者や担当部署は、企業全体を見渡したリスク管理の構築を行い、日常的にはリスクの予防対策や従業員への教育訓練を実施し、緊急事態には経営トップの補佐として、リスク管理の中枢として活動することが求められます。

3)一貫した体制構築と対応

リスク管理の最大の目的は、可能な限りリスクを排除することであり、もし、実際にリスクが顕在化したとしても損害を最小限に抑えることにあります。そのためには、さまざまなリスクに対し、日常的な対応をおろそかにしないことが重要です。

ただし、日常の管理だけに目を向け過ぎ、リスクの防止だけが強調され過ぎると、かえって過信につながりかねません。

3 リスク管理体制の確立

1)全社的潜在リスクの洗い出し

まず、全社的潜在リスクの洗い出しを実施します。社内に潜在するリスク要因の多様さを認識させ、意識を高めるとともに、リスクの防止に取り組ませます。その上で、全社的なリスク管理対応能力を高める「リスク管理マニュアル」を作成します。従業員の誰もが迅速で正しい判断と行動が取れるように、「必要なこと」と「必要でないこと」を明確に示すことが重要です。

経営幹部には、リスク管理の知識と意識を高める継続的な「リスク管理セミナー」を実施します。これにより、経営幹部のちょっとした判断ミス・連絡ミス・対応ミスが大きなリスクを招いてしまうことを自覚させます。

2)継続的な「シミュレーショントレーニング」の実施

初期対応の判断ミス防止策としての継続的な「シミュレーショントレーニング」を実施し、どう判断し、どう行動すべきか、ケースごとに具体的に習得させます。必要に応じて、経営トップのマスコミ対応を高める定期的な「メディアトレーニング」を実施し、マスコミ関係者への正しい対応の仕方を理解させます。

リスク管理で大切なことは、予測できる、あるいはその逆に予測できない事態が起きたときの対処法を考えておくことです。例えば、リスクが発生しても対応できるよう、次のような体制を整えておくことが必要となります。

  • リスク管理マニュアルの整備
  • 全社的な対応方法の統一
  • 責任窓口の明確化

3)リスク管理の効果的な実施

リスク管理マニュアルの通りにうまく事が運ぶとは限らないので、マニュアルで想定しない事態が起きる可能性も認識しておかなければなりません。

リスク管理を効果的に実施するためには、次のような対策が求められます。

  • 従業員のリスクに対する感性が敏感となるような教育や啓発を行う
  • 当初は小さな事故や事件と判断される場合も大事件に発展することもあるので、事故発生の場合には、極力情報を収集し、重大性を意識して対応する
  • 事故が発生した場合、地元住民、行政、マスコミにすべてを隠さず情報公開する

リスク管理を実効性のあるものとするためには、適切な方法と頻度で評価・検証することが重要となります。評価・検証の実施に当たっては、第三者機関を利用することも考えられ、評価を通じて得られた問題点や改善点などは、審議を経て、フィードバックされなければなりません。また、社会情勢の変化や他社事例なども是正・改善のための有力な情報源となります。

4 リスクコミュニケーションの重要性

世の中のあらゆる事象には、利便性とともにリスクが潜んでいます。従って、そのリスクを回避するために、企業は、事象の持つ利便性とリスクを広く一般に伝え、ともに対応を考える必要があります。

このように、事象の持つポジティブな側面だけではなく、ネガティブな側面についての情報もリスクはリスクとして公正に伝え、関係者がともに考えることのできるコミュニケーションのことを、「リスクコミュニケーション」といいます。

リスクコミュニケーションは、関係者の参加を促し、発展させながら、リスクの理解とリスクへの対処方法ついての双方向の交流を進めることといえます。そして、リスクコミュニケーションでは、どのような結果になるかではなく、意見交換の過程でどのような関係を構築していくかが重視されます。

リスクコミュニケーションの流れを整理すると、大きく次の形態に分けられます。

  • 社内のリスクコミュニケーション
  • 外部(取引先や行政など)とのリスクコミュニケーション
  • 消費者や顧客とのリスクコミュニケーション

これらは、平常時から心掛けるべきコミュニケーションです。リコールや事故などのリスクの発生時には、マスメディアなどとのコミュニケーションの不備が二次的なリスクを発生させたり、損害を必要以上に拡大させることがあります。マスメディアなどは社会の理解を得るための重要な関係者であり、誠実に対応することが望まれます。

リスクコミュニケーションを効率的かつ効果的に進めるために、経営トップがリスクコミュニケーションを理解し、基本方針と責任体制を確立し、戦略的に取り組むことが重要です。

5 参考ウェブサイト

リスクマネジメント協会では、リスクマネジメントに関連した情報の提供・相談や各種セミナー・交流会を開催しています。また、ウェブサイトでリスクマネジメントに関連する書籍および推薦書籍を紹介しています。

それぞれ、企業を取り巻くリスクとリスク管理について多くのヒントを与えてくれるものであり、参考になるでしょう。

■リスクマネジメント協会■
https://www.arm.or.jp/

以上(2018年3月)

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画像:alphaspirit-shutterstock

ビジネスで役に立つ上手な花の贈り方

顧客や取引先への贈り物として、「花」を思い浮かべる人は多いでしょう。花には配慮したほうがよいマナーが多く、価格も比較的高価ですが、あえて花を贈ることで相手の印象に残りやすくなります。ビジネスを円滑に進めるためのコミュニケーションの一環として、上手な花の贈り方を紹介します。

1 4つのポイントで押さえるマナー

多くの企業が下期を迎える10月は、人事異動や新規開店が相次ぎます。このタイミングで、相手の好みを踏まえた花を選び、マナーを守って届けることができれば、相手は「自分のことを大切に思い、これだけの手間をかけてくれた」と好感を抱いてくれるでしょう。また、お見舞いやお悔やみの場合、失礼のないようにこちらの気持ちを伝えたいものです。

以降では、以下の4つのポイントを踏まえたシーン別の花の贈り方を紹介します。

お花を贈る際の迷いがちなポイントを、贈る相手、贈るタイミング、花の種類、予算のポイントに分けて説明した画像です

2 開業・開店祝い、移転祝いなど

1)どこへ届けるのか?

通常は、相手のオフィスや店舗に届けます。ただし、開業・開店レセプション、竣工式、創立記念パーティーなどが行われる場合は、会場に花を届けることもあります。オフィスや店舗のスペースの関係で、花を受け取らないようにしている企業もあるので、事前に確認しておきましょう。

2)いつ届けるのか?

花を届ける時期の目安は次の通りです。いずれの場合も、開業・開店日や移転日などを必ず確認しておきましょう。花を受け取れる人がいる日時に届けるのがポイントです。

  • 開業・開店祝い:開業・開店日の1週間前~当日
  • 移転祝い:移転から2週間以内
  • 竣工祝い:完成日前日が望ましいが、移転を伴う場合は移転から1~2週間後
  • 創立記念日:式典などがない場合は記念日の1週間前~当日
  • 開業・開店レセプション、竣工式、創立記念パーティー:開催日前日または当日

3)どんな花か?

開業・開店や移転などの場合、相手は準備で忙しいため、飾り付けや水やりなどの手間が少ない花を贈るとよいでしょう。花の色は、相手のコーポレートカラーなどに合うものを選ぶのが一般的です。ただし、赤など火(火事)を連想させる色の花はタブーとされています。

また、実際に花がどこに飾られるかを想定すると、種類を絞り込みやすくなります。相手のオフィス、店舗の広さなどにもよるため一概には言えませんが、選び方の例としては、次のようなものがあります。

  • カウンターやテーブル: 胡蝶蘭(こちょうらん)、アレンジメントフラワーなど
  • オフィスや店舗の通路、コーナー:そのまま床に置ける観葉植物など
  • 道路に面した1階入り口、会場ホールの廊下:スタンド花など

4)予算は?

花を贈る際の予算の目安は次の通りです。ただし、実際の予算は相手との関係性などによって変化します(以降、予算の記述において同様)。

  • 開業・開店祝い:1万~5万円
  • 移転祝い:5千~3万円
  • 竣工祝い:1万~5万円
  • 創立記念日:1万~5万円

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3 送別会など

1)どこへ届けるのか?

相手のオフィスや自宅に花を届ける場合もありますが、送別会などに招待されているときは、持参して直接本人に渡します。自宅に届ける場合は、異動で引っ越しする場合もあるので、事前に確認しておきましょう。

2)いつ届けるのか?

花を届ける時期の目安は次の通りです。

  • 栄転・就任祝い:正式に辞令が出たことを確認した後、仏滅を避けて1週間以内
  • 退職祝い:退職日の直前、送別会がある場合はその当日

3)どんな花か?

花束やアレンジメントフラワーを贈るのが一般的で、種類は相手の好みに合わせます。事前に好みの色などを聞いておくか、日ごろ身に着けている装飾品などを参考にするとよいでしょう。

オフィスに届けたり、送別会に持参したりする場合は、相手は自宅に花を持ち帰ることになります。帰宅中に邪魔になったり、目立ちすぎたりしない花を選び、形が崩れにくいラッピングを施すようにします。自宅に花を届ける場合は、花束やアレンジメントフラワーの他に鉢物などを贈ることもあります。ただし、マンションなどはスペースが限られているため、大きい花は避けたほうが無難です。

4)予算は?

花を贈る際の予算の目安は次の通りです。

  • 栄転・就任祝い:2万~5万円
  • 退職祝い:5千~1万5千円

4 ビジネスでつながりのある人へのお見舞い

1)どこへ届けるのか?

お見舞いの相手が入院している病院に持参します。ただし、感染症予防対策で花の持ち込みを禁止しているところもあるので、注意しましょう。

2)いつ届けるのか?

入院直後や手術前後は避けましょう。病状が落ち着き、回復に向かい始めた頃に持参するのが理想的です。

3)どんな花か?

病室はスペースが限られているため、小さめの花を選びます。また、水やりの手間が少ないアレンジメントフラワーなどを選ぶとよいでしょう。ちなみに、次のような花は一般的にタブーとされていますが、お見舞いの相手が特に好きな花であれば問題はありません(相手との親密度合いによります)。

  • 鉢植え:根があり、「根付く」=「寝付く」を連想させるため
  • 輪菊と小菊:葬儀・お供えに使われる花であるため
  • 白やブルーの花:葬儀・お供えに使われる花の色であるため
  • 赤い花:血の色を連想させるため
  • 下向きの花:頭が落ちていることから、「首が落ちる」を連想させるため
  • 散りやすい、またはひと息に散る花:「命が散る」を連想させるため
  • 香りの強い花:患者の気分が悪くなることがあるため

4)予算は?

花を贈る際の予算の目安は、5千~1万5千円です。

5 ビジネスでつながりのある人へのお悔やみ

1)どこへ届けるのか?

一般的な仏式であれば、通夜・告別式の場合は斎場に届け、初七日から四十九日、四十九日を過ぎてからの法事や命日では基本的に自宅に持参します。

2)いつ届けるのか?

花を届ける時期の目安は次の通りです。

  • 通夜・告別式:開催時刻の約2時間前(告別式の場合、通夜と同じ斎場であれば通夜に届ける)
  • 初七日から四十九日:特に決まりはないが、ご家族が落ち着いてから
  • 四十九日を過ぎてからの法事や命日:法事や命日の前日まで

3)どんな花か?

お悔やみの際は、次のような花が望ましいとされています。

  • 通夜・告別式:原則持参はしない(不幸を待っていたと思われるため)。斎場に届ける場合はスタンド花か花輪(斎場の指示に従う)
  • 初七日から四十九日:アレンジメントフラワーなど
  • 四十九日を過ぎてからの法事や命日:アレンジメントフラワーなど(ご家族と親しい場合は、仏壇や墓前に供えられる花束も可)

四十九日までは、トゲのあるバラを避け、白一色の花を贈り、四十九日を過ぎてからは時間の経過に応じて淡い色の花も入れていくのが一般的です。近年は斎場をバラで彩る「バラ葬」など、タブーに関係なく本人が好きだった花を贈るケースも増えていますが、亡くなられた相手のご家族と特別に親しい関係でなければ、マナーを守るのが基本です。

4)予算は?

花を贈る際の予算の目安は、1万~3万円です。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2017年12月25日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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「割賦販売法」改正で加盟店に求められる対策

 クレジットカードは身近な決済手段として普及する一方で、偽造カードの利用、通販サイトなどへの不正アクセスといった不正利用も急増しています。そこで、クレジット取引等を対象に、事業者が守るべきルールを定めた「割賦販売法」が改正されます。

 本稿では、改正点の中でも、加盟店に求められる対応を中心に紹介します。法改正の詳細については、割賦販売法の条文およびクレジット取引セキュリティ対策協議会の公表資料「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画-2017-」(以下「実行計画」)、経済産業省の公表資料などをご確認ください。

      

  • クレジット取引セキュリティ対策協議会「クレジットカード取引におけるセキュリティ対策の強化に向けた実行計画-2017-」
    http://www.j-credit.or.jp/security/document/
  • 1 加盟店におけるセキュリティ対策が「義務化」

    法改正によって、加盟店には「クレジットカード番号等の不正利用の防止」などが義務付けられます。例えば、小売店・飲食店などの対面取引加盟店では、施行日までにICカードに対応した決済端末(以下「IC対応端末」)を導入しなければなりません。また、ネット通販などの非対面取引加盟店では、「実行計画」上、2018年3月末までにネット取引でのなりすまし対策などが求められます。

    加盟店によっては、想定外の多額の費用が必要になる可能性もあるため、今のうちに自社がするべきことを確認しておくことが大切です。本稿では、改正割賦販売法対応に要する期間や費用の「目安」について、日本クレジット協会、POSレジメーカー、決済代行会社などへのヒアリングを基に、紹介していきます。なお、導入する機種やサービスといった個別の事情によって、所要期間や費用は大きく変動しますので、本稿で紹介する期間・費用は、あくまでも「目安」としてお読みください。

    2 「非保持化」「PCI DSSへの準拠」とは何か

    クレジットカード番号等の不正利用の防止の他に、加盟店は「クレジットカード番号等の適切な管理」すなわち「カード情報の漏えい対策」をしなければなりません。そこで、加盟店ではカード情報の非保持化、または、PCI DSS(Payment Card Industry Data Security Standard)への準拠が必要です。

    1)非保持化とは

    非保持化とは、「自社保有の機器・ネットワークにおいて、カード情報を保存・処理・通過しないこと」です。

    これは、カード情報を電磁的なデータとして保存したり、やり取りしたりできないようにすることです。一時的であっても、電磁的なデータの保持は認められず、カード情報を保存する場合、それらの情報は紙のレポートやクレジット取引に係る紙伝票のみで保持することになります。

    なお、次の手法を採用すれば、仮に自社外への情報漏えいが発生したとしても、窃取された情報が無価値なため、結果として悪用防止につながります。

    • トークナイゼーション:自社システムの外で不可逆な番号等に置き換え、自社システム内ではクレジットカード番号を特定できないようにすること
    • トランケーション:自社システムの外でクレジットカード番号を国際的な第三者機関に認められた桁数を切り落とし、自社内では特定できないようにすること

    2)PCI DSSへの準拠とは

    自社でカード情報を電磁的なデータとして保持する場合、PCI DSSへの準拠が必要です。PCI DSSとは、クレジットカード会員データを安全に取り扱うことを目的として、国際カードブランド5社が共同で策定したセキュリティ基準です。

    ただしPCI DSSへの準拠には、準備に半年~数年程度、費用は数百万~数億円かかる場合もあります。PCI DSSへの準拠は負担が重いといえるため、非保持化を進める加盟店が多くなるでしょう。

    3 加盟店に求められる対応一覧

    加盟店の形態に分けて必要な対応を整理すると、次のようになります。なお、ここでは「クレジットカード番号等の適切な管理」をする方法として、非保持化への対応のみを紹介します。

    加盟店の対応は少し複雑です。対面取引加盟店と非対面取引加盟店に分け、導入している決済端末の状況も踏まえた上で、それぞれの対応を一覧にまとめて紹介しています。

    IC対応端末への置き換え・切り替えは対面取引加盟店だけが必要であり、ネット取引でのなりすまし対策は非対面取引加盟店だけが必要です。一方、非保持化への対応は、対面取引加盟店・非対面取引加盟店の双方で必要です。

    以降では、より具体的な対応について紹介しますが、詳細はカード会社、POSレジメーカー、決済代行会社などにご確認ください。

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    4 対面取引加盟店に求められる対応

    対応が必要なのは、「IC対応端末を導入していない」「カード情報を非保持化していない(またはPCI DSS準拠していない)」加盟店です。対応の期日は法改正の施行日(「実行計画」上の最終目標は2020年3月末)までですが、後述する補助金を利用する場合、さらに早い対応が必要です。

    1)IC対応端末への置き換え・切り替え

    決済専用端末(CCT)を単独で設置している場合、IC対応端末への置き換え・切り替えが必要です。カード会社などに連絡をして、IC対応端末に置き換えてもらいましょう。なお、自ら購入する場合の費用は、1台当たり4万~8万円となります。POSシステムと決済端末を連動させている場合や、カード処理機能を持ったPOSレジを設置している場合も、IC対応端末への置き換え・切り替えが必要です。

    読者の中には、この機会に、カード処理機能を持ったPOSレジ(POSレジ本体にICチップの読み取り機能が備わっているタイプ。付属機器として暗証番号入力用パッドが付いているもの)への置き換えや切り替えを検討する方もいるかもしれません。ちなみにカード処理機能を持ったPOSレジを購入する場合の費用は、1台当たり10万~40万円となります。

    なお、消費税軽減税率制度に対応するためレジを導入し、併せてIC対応端末を導入する場合、軽減税率対策補助金を利用できることがあります。補助金を利用する場合、代金支払いを済ませた上で、事務局宛の補助金の交付申請(2018年1月31日消印有効)が必要です。申請期間や補助対象の詳細は下記のサイトで確認するようにしてください。

    また、各種クレジットカード、銀聯カード、各種電子マネー、J-Debitを共通の端末(本体端末+リーダライタ+暗証番号入力用パッド)で取り扱い可能なサービスも提供されていますので、この機会に検討してみるのもよいかもしれません。

    2)非保持化への対応

    決済専用端末(CCT)を単独で設置し、端末からカード会社や決済代行会社などの外部のサーバーに直接カード情報を送っている場合は、非保持化対応は完了しています。

    POSシステムと決済端末を連動させている場合も、IC対応端末から外部のサーバーに直接カード情報を送る仕組み(例:決済専用端末連動型)を採用することで、非保持化対応は完了します。

    ただし、非保持化の仕組みを導入するために、自社のPOSシステムの改修が必要な場合があるので注意しましょう。改修にかかる期間は2~4カ月程度、費用は数十万~数百万円となります。POSメーカーなどに相談し、カード処理機能を持ったPOSレジの置き換え・切り替えや、システムの改修の有無などを早めに確認しておきましょう。

    5 非対面取引加盟店に求められる対応

    対応が必要になるのは、「カード情報を非保持化していない」「なりすまし対策をしていない」加盟店です。なお、非対面取引加盟店の対応は「実行計画」上、2018年3月末が目標です。対面取引加盟店よりも、早めの対応が求められます。

    (注)本稿では、決済代行会社(PSP)傘下のインターネット加盟店につきご説明します。

    1)非保持化への対応

    PCI DSSに準拠している決済代行会社などが提供するサービスを導入することで対応します。非保持化への対応で注意すべき点は、カード情報を自社保有の機器・ネットワークで「保存」していなくても「通過」している可能性があることです。その場合、不正アクセスやマルウェアによりカード情報を窃取されるリスクが高くなります。

    例えば、顧客の商品購入時、決済代行会社のサイトに遷移させてカード情報を入力してもらっているのであれば、非保持化対応は完了です(この方式を非通過型(リンク型)といいます)。

    一方、自社のサイト(ドメイン)内でカード情報を入力してもらい、それを決済代行会社に送信しているのであれば、情報が自社内を通過している状態なので非保持化対応が必要です。

    ただし、自社のサイト(ドメイン)内でカード情報を入力してもらう場合であっても、決済代行会社が提供する「トークン方式(JavaScript使用の非通過型決済)」を導入していれば、非保持化対応は完了です。

    サイトのシステム要件などによっても異なるものの、非保持化のサービスを導入する場合、期間は2週間~1カ月程度、費用は10万円程度となります。なお、決済サービス自体を利用するのに、月額利用料・決済手数料・トランザクション料などが必要になります。

    2)ネット取引でのなりすまし対策

    ネット取引でのなりすましを防止するために、3Dセキュア(本人認証サービス)、セキュリティコードによる本人確認などの各種セキュリティ対策を導入する必要があります。具体的な対策を検討する際には、加盟店の業種・商品などに応じた対策とする必要がありますので、契約している決済代行会社やクレジットカード会社に、ぜひ相談してみましょう。

    6 セキュリティ対策が不十分な加盟店は、加盟店契約が解除されてしまう恐れも

    加盟店に課せられる義務「クレジットカード番号等の不正利用の防止」と「クレジットカード番号等の適切な管理」に違反した場合であっても、法令上の罰則は設けられていません。ただし、加盟店が義務を果たさない場合は、カード会社から義務を果たすよう要請があり、加盟店がこの要請に応じない場合は、将来的にクレジットカードの取り扱いができなくなる可能性があります。

    また、義務を果たしていない加盟店の情報は、日本クレジット協会加盟店情報交換センターに報告することが義務付けられているので、現在契約のない他のカード会社などにも情報が共有されます(注)。

    (注)日本クレジット協会加盟店情報交換センターは、悪質加盟店を排除し、クレジット取引の健全な発展と消費者保護に資することを目的として、加盟店情報の共同利用を行っています。また、改正割賦販売法第35条の17の8第4項では、必要に応じてカード会社(アクワイアラー)などが取るべき措置の例示として、加盟店契約の解除を規定していることにも留意しなければなりません。

    さらに、加盟店契約を締結または改定する際の参考とすべき一般的なモデル契約条項と、既存契約に関する解釈指針を示すため、経済産業省では2017年7月に「クレジットカード加盟店契約に関するガイドライン」を公表しました。

    このガイドラインでは、セキュリティ対策が不十分な加盟店に関して不正利用による被害が発生した場合、加盟店が損失を負担する規定が設けられています。これを受け、カード会社などが、既存の加盟店契約の見直し作業を進展させ、ガイドラインで示されたモデル契約条項の内容を契約に反映させる動きが今後予想されますので、加盟店としては、より一層偽造カード対策やネット上でのなりすまし対策などの不正利用対策に注力していく必要があるものといえるでしょう。

    以上

    ※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2017年12月8日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

    ※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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    inquiry01@jim.jp

    (株式会社日本情報マートが、皆様からのお問い合わせを承ります。なお、株式会社日本情報マートの会社概要は、ウェブサイト https://www.jim.jp/company/をご覧ください)

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AI活用とAIビジネス化のポイント

前回は、AI(Artificial Intelligence : 人工知能)を活用した中小企業の事例をお話しさせていただきました。今回は、中小企業がAIを利用するに当たって考えるべきことをまとめます。AIを単なる道具として利用するだけではなく、AIを使った新たなビジネス展開についても考えていきましょう。

1 AIの発展と普及に伴う可能性

これまでのAIの具体的な活用事例を見ると、Webブラウザやスマートフォンの中で使われる便利な機能という領域を超え、乗用車の自動運転や介護用のロボットなど、現実の世界での動的な機能の裏側でAIが活用されるようになっていくということです。

このことは、AIが単なるソフトウェアの域を超え、ハードウェアも含めた世界に広がることを意味します。現実の世界における動的な機能の利用では、ハードウェアとしての安全性が求められ、品質の高いハードウェアとAIが組み合わされる必要があります。こうなると、モノづくりに定評がある日本の製造業は、AIの普及とともに大きな役割を期待されるようになるでしょう。

製造業だけではありません。現実の世界でAIを活用したサービスが増えていくと、サービスそのものの内容や質が問われるようになります。そうなると、日本のサービス業における「おもてなし」の考え方や、ある業務に特化したベテラン社員の知見を生かした、横並びではない部分が差別化のポイントとなります。

日本の中小企業が抱える人手不足をAIで補いつつ、自社が持つ独自の強みをAIで増幅させることで、これまでとは異なる立ち位置を築くことができます。そういう意味で、AIの発展と普及は、日本の中小企業にも大きなチャンスをもたらす可能性があります。

2 AIを利用する目的の明確化

一方で、AIは決して万能ではありません。AIを使った数々のソリューションが提供されつつある今でも、どのようなことでも処理し、解決してくれるAIはありません。また、AIと呼ばれる範囲も広く、人間が与えたルールにのっとって動きや判断を行うレベルもあれば、機械学習や深層学習(ディープラーニング)など大量のデータの分析に基づいて振る舞うレベルもあります。

つまり、AIというのは、あたかも人間と同様の知能を持っているかのように振る舞う道具の総称でしかありません。AIを利用したら、ビジネスが必ずうまくいくというような代物ではないのです。時折、社長から「うちもAIを使って新しいことをやるぞ!」と指示された方が、「何をやればいいでしょうか?」と相談をしにくることがあります。しかし、これはちょっと的が外れています。

本を整理したいから、本棚を作りたい。本棚を作りたいから、大工道具を使う。棚を固定したいから、金づちでクギを打つ。これと同じことがAIの活用でも成り立ちます。ビジネス上の課題解決やアイデア実現という目的があってこそ、何のためにAIを活用するのかが明確になるわけです。

3 良質な大量のデータが必要

最近、ニュースなどで話題になっているAIは、機械学習や深層学習(ディープラーニング)といった技術・手法が用いられており、これには大量のデータが必要です。いわゆるビッグデータがこうした技術・手法を支えています。優れたアルゴリズムを備えていても、データがなければ何もできません。少ないデータだと、判断にバラつきが生じ、頼りになりません。AIは、かなりしつこく教え込まないと使い物になりません。つまり、目的に応じた良質なデータを大量に与えなければなりません。

既に良質なデータを大量に保有しているという企業は少ないでしょう。そのため、目的を明確化した上で、その目的を実現するのに必要なデータを定め、徐々にデータを蓄積していくところから始めましょう。少々時間を要しますが、データがなければ始まりません。ここで重要なのは、取れるデータを闇雲に蓄積するのではなく、有効なデータを取る方法を考えることです。顧客や社員に負荷をかけずにデータを取ることができるオペレーションの実現は、とても難しいですが、欠かせない検討です。

また、できる限り正しいデータを取れる仕組み、そして正しいデータを選ぶ仕組みも必要です。誤ったデータが入っていると、AIも誤ったことを覚える恐れがあります。昨年、Microsoftの人工知能チャットボットTayが、一部のユーザーから意図的に人種差別や性差別、陰謀論などを教え込まれ、暴言を繰り返すようになり、ニュースとなりました。誤ったデータで学習してしまうと、サービスや業務で正しく判断することが難しくなります。そのため、データについては、恣意性や主観が入りにくい客観性のあるデジタルデータをいかにして取るかが大事ですし、誤りやノイズを取り除く仕組みも不可欠です。

なお、機械学習や深層学習(ディープラーニング)をエンジンとして提供しているサービスには、既にたくさんの利用者のデータが蓄積されています。それを利用することができるため、自社で地道にデータを蓄積する必要はありません。実現したい目的が比較的一般的な内容であれば、こうしたサービスを利用するほうが、簡単かつ速やかに成果を出すことができるので、世の中に提供されているAIサービスをこまめにチェックしましょう。

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4 注意点:ブラックボックス問題

機械学習や深層学習(ディープラーニング)を活用する際、一点、留意しておくことがあります。通常のITシステムは、人間がロジックを考え、コードを書き、それに沿って動いているので、処理の結果の理由が分かります。仮に、間違った処理の結果が出た場合でも、なぜそうなったのか、どこを直せば正しくなるのかが分かります。

しかし、機械学習や深層学習(ディープラーニング)の判断結果の場合、なぜそういう判断をしたのか、理由が分からないことがあります。そのため、間違った判断結果が出た場合、簡単に直せないことがあり、さらに正しいデータを渡して学習させていく必要があります。

つまり、機械学習や深層学習(ディープラーニング)によって導かれた判断をうのみにすることはとても危険ということです。業務やサービスで利用する際も、精度を上げていく努力と、一定程度誤りがあるかもしれないという許容が必要です。クリティカルな判断を要する場面では使わない、あるいはあくまでも参考情報として扱うのが妥当でしょう。こうした話に失望してしまうかもしれませんが、人間自体、完璧な判断などできないわけなので、こうした点を理解した上で、ビジネス上の効果を引き出すことを考えるのが現実的です。

5 中小企業のAI戦略の方向性

中小企業が、機械学習や深層学習(ディープラーニング)などのAIを活用し、目的を実現するためにはどうしていくべきでしょうか。目的が一般的であれば、AIサービスとして提供されている可能性があるため、そういったサービスがないか確認してみましょう。

例えば、前回ご紹介した通り、営業、宣伝、会計などは、多くの企業が共通的に抱えるテーマなので、続々とAIサービスが登場しています。まずはそういったサービスの利用を考えるべきでしょう。

独特の目的であれば、AWS、Microsoft、Googleなどが提供するプラットフォームを使って取り組みを進めていく価値があるかもしれません。一つ考えておきたいのは、取引先や関係会社と共同で取り組む意味があるか、その可能性はないか、ということです。

ある目的を実現するためにデータを蓄積しようとする際、取引先や関係会社が取得・保有できるデータが自社にとっても有効な場合があります。相手も、こちらが取得・保有できるデータに魅力を感じるかもしれません。垂直統合型の大企業などであれば、自社のみでバリューチェーン上の各種データを蓄積できますが、中小企業の場合、それは困難です。目的の実現のために他社のデータが有効であれば、それを検討・調整してみるとよいでしょう。

「あったらいいな」を想像し、実現する。大勢の社員を抱える大企業では発想し得ない、中小企業ならではのアイデアをAIの活用が実現に導くかもしれません。AIを身近な道具として捉え、AIが皆さまのビジネスの成長を加速させるエンジンとなることを願います。

以上

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2017年10月31日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

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お客さま第一を徹底する~小宮一慶の社長コラム

ビジネスを成功させたいなら、経営者は社内でお客さま第一を徹底することがとても大切ですが、放っておくと会社は、お客さまよりも自分たちの都合を優先する「内部志向」に陥ります。さらに問題なのは、自社が「内部志向」になっていることに気づいていない場合も少なくないことです……。

1 小さなことからも垣間見える「内部優先」

小さなことからも、お客さま第一か内部志向かを垣間見ることができます。以前、「研修中」と書かれた若葉マークのワッペンをつけさせて、新人に接客のトレーニングをさせているファミリーレストランを見たことがあります。これでは、お客さまも気を遣いますし、場合によっては、「新人なので許してほしい」というようにも受け取れます。

「なぜ、そんなことをしているの?」と私が尋ねたところ、社員から返ってきた答えは、「新人なので、周りにいるスタッフがすぐにフォローできるようにするためです」というものでした。

これは、単なる理屈でしょう。新人のフォローが目的なら、お客さまには分からないように小さなリボンでもつけて目印にすればいいだけの話です。どうして、「社内の事情」をわざわざお客さまに知らせる必要があるのでしょうか。新人だとお客さまが分かることは、お客さまにも気を遣わせることになりかねません。新人だから料金を安くしてくれるのならまだしも、お客さまに迷惑をかけたり、気を遣わせたりするのは間違いです。

こんなこともありました。時々利用するある宿泊施設で、目覚まし時計の“カチカチ音”がうるさいので、音のしないデジタル時計などに換えたらどうかと担当者に提案しました。翌年同じ宿泊施設に泊まったら、時計がなくなっていました。担当者に理由を尋ねると「今は、皆さんが携帯を持っていますから」と言われました。

つまりは、面倒の種を消してしまったのでしょう。お客さまからすれば、目覚まし時計があったほうが便利なのは言うまでもありません。内部のことだけを考えると、面倒の種をなくすという発想になってしまうのです。

2 お客さま第一がビジネス成功の根本

多くの会社を見てきましたが、小さな会社を大きく成長させた社長たちは、例外なくお客さま第一を徹底した人たちです。お客さまに良い商品やサービスを提供することなしにビジネスが成功しないことは子供でも分かることですが、経営者が率先してお客さま第一をやろうとしない限り、人は弱いもので、どうしても内部を優先しがちです。

繰り返しになりますが、お客さま第一というネジを巻き続けない限り、社内は内部志向になっていくと思って間違いありません。一旦お客さま第一になっても、すぐに元に戻ります。人は易きに流れるのです。しかし、お客さまは敏感です。そのような内部志向の会社からは、お客さまが遠ざかり、業績が低迷するものです。

内部志向の会社は、先の例にあるようにお客さまの都合より、自分たちの都合を優先しがちです。経営者や社員優先、そして、その状態がひどくなって、自分たちだけが金儲けができればそれでいいというような極端な内部志向になると、どんな手を使ってでも儲けようとして、不祥事まで起こしてしまいます。

そこまでひどくなくとも、内部志向の状態がずっと続くと、お客さまのことはないがしろになり、事なかれ主義でどんよりした社風の組織となってしまいます。反応が遅く、お客さまのことなど二の次ということにもなりかねません。

「内部志向」の反対は、「外部志向」です。「お客さま第一」を貫いている会社です。ピーター・ドラッカーが言うまでもなく、企業の価値というのは、企業外部から見た価値が第一義なのです。

3 お客さま第一の会社の特徴

お客さま第一の会社に行くと、すぐ分かる特徴があります。それは働く人の表情が明るいことです。さらには、玄関などで行き先が分からず困っていると、だれかれとなく「お伺いしていますか?」などと声をかけてくれます。

お客さま第一の会社では、やはりお客さまから喜ばれることが多く、そのことが働き甲斐となり、社員同士も切磋琢磨しながら働いているので、みんなの表情はイキイキとしているのです。

一方、内部志向の会社は、会社は自分たちのためにあり面倒を避けたいと思っています。玄関などで行き先が分からず困っていても、うっとうしげな顔をして、見て見ぬふりをされることさえあります。

「お客さまを無視しない」というのは基本中の基本ですが、お客さまの存在や意見を無視しても何とも思わないのです。無関心なのです。お客さまや外部に対する関心や、感謝の気持ちが弱いのです。

お客さま第一の会社を作るには、まず「行動」から変えることですが、このことは、次回に説明しましょう。

以上

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社長は「経営」という仕事を全うする〜小宮一慶の社長コラム

経営コンサルタントの大先輩の一倉定(いちくらさだむ)先生の名言のひとつに「ダメな会社というのは、社長が部長の仕事をし、部長が課長の仕事をし、課長は係長の仕事をし、係長は平社員の仕事をしている。そして、平社員は何をしているかというと、会社の将来を憂いている」というのがあります。それぞれがその地位に応じた仕事をしなければならない、ということなのです。

1 会社は社長で決まる

一倉定先生は次のようにもおっしゃっています。「会社には良い会社、悪い会社はない。あるのは、良い社長、悪い社長だけだ」。私も経営の現場を多く見てきてつくづくそう感じています。

社長の仕事は「経営」です。中小・零細企業の場合は、社長も現場での仕事をしなければなりませんが、それでも社長が経営を行わなければ、会社はおかしくなります。私も10人ほどの小さな会社の経営者をもう20年以上やっています。コンサルティングや講演などの現場での仕事ももちろんやっていますが、それでも、経営を行っているのです。

2 「経営」という仕事と「正しい努力」の積み重ね

それでは「経営」という仕事は、具体的に何を指すのでしょうか。私は、次の3つの要素から成り立っていると考えています。1)企業の方向づけ、2)資源の最適配分、3)人を動かす。経営者は、この3つをきちっと理解した上で、それぞれの能力を高めなければなりません。

私は経営コンサルタントですが、自分では「経営者のコーチ」だと思っています。そして、経営が成功するためには、経営者が、先の3つに関して「正しい努力の積み重ね」を行うことが必要です。それをコーチするのが私の役割だと思っています。

「正しい努力」に関して言えば、たとえば、プロのサッカー選手になりたい人が、毎日卓球を10時間必死で練習しても、Jリーガーにはなれません。それと同じように、経営者として成功するためには、それにふさわしい訓練が必要なのです。この連載では、その「正しい努力」とは何かをお教えできればと考えています。

そして、あとはそれを積み重ねる。コピー用紙一枚一枚の厚さは0.1ミリあるかないかですが、それが500枚、1000枚と積み重なれば、5センチ、10センチの厚さとなります。経営者は、正しい努力とは何かを知って、それを積み重ねていくことが必要なのです。

もうひとつ大切なことは、実践です。頭で理解していても結果を出さなければ誰も評価しませんし、部下もついてきません。逆に、結果が出ないときは、やり方が間違っているのではないかと素直に反省することです。

3 「方向づけ」の能力を高めるには

経営では、「方向づけ」も大切です。方向づけとは、「何をやるか、やめるか」を決めることです。企業でコントロールできない「外部環境」と、自社と他社との相対的な強みや弱みを比較する「内部環境」を分析した上で、ミッションやビジョン、理念に合わせて、やるべきこと・やめるべきことを決めることです。これを言葉で説明するのはそれほど難しくありませんが、実践はとても難しいのです。

経営を「管理」だと思っている人もいるのではないでしょうか。もちろん管理も重要な要素ですが、管理は部長以下でもできる仕事です。経営の本質は「方向づけ」なのです。方向づけを間違って、完璧な管理を行うと、崖っぷちに早く到達するだけです。さらには、お客さまに対しての感度を高めなければなりません。そのためには、社長以下、全社員が「お客さま志向の小さな行動」を徹底することが大切です。お客さまを必ず「さん」づけするとか、電話を3コール以内に取るなどです。経営者が率先してやることが大切です。

4 資源の最適配分……部下が同じことをやっても許せるか

企業における資源とは主にヒト・モノ・カネです。ノウハウや経営者の時間なども大切な資源です。その際に、大切なことは、「公私混同をしない」ということです。上に立つ人が、公私混同をしていたら、下の人はやる気をなくします。社長がプライベートで使う高級車やゴルフ場のために、命を懸けて頑張ってくれる社員はいません。こんな単純なことも分からない社長も少なくないのですが、このことは後の連載で詳しくお話しします。

5 「人を動かす」ための2つの「覚悟」

最後の要素は「人を動かす」です。こちらもとても大切な経営の要素です。同じようなことをやっている会社でも、パフォーマンスが大きく違う会社があります。それは人の動き方が違うからです。人を動かすためには、経営者には2つの「覚悟」が必要です。

ひとつは「指揮官先頭」。先頭に立って行動する覚悟です。もうひとつは「責任を取る覚悟」です。社内で起こったことについては、最終責任は自分にあると常に考えることです。

「方向づけ」「資源の最適配分」「人を動かす」を実践で成功させることが何よりも大切ですが、そのための「正しい努力」とは何かについては、次回以降、それぞれ詳しく説明したいと考えています。皆さんは、それを「積み重ねる」ことが大切ですね。

以上

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AIビジネスの具体的イメージ

前回は、AI(Artificial Intelligence : 人工知能)のあらましということで、AIについて広く、おおまかにお話しさせていただきました。今回は、前回までのAIの流れを振り返りつつ、企業のAI活用事例、特に中小企業がどのようにAI活用を進めているのかについてご紹介していきます。

1 今は第3次AIブーム

昨今、AIという言葉がさまざまなメディアで取り上げられていますが、これが第3次AIブームであることをご存じでしょうか。第1次は1950年代、第2次は1980年代にありました。
第1次は、AIという言葉が生まれ、チェスを指したり、数学の定理証明をしたりするコンピューターがイメージされていました。第1次は、研究者の中での話だったといえるでしょう。

続く第2次は、人間の専門家が持つ意思決定能力を模倣し、それに近しい能力を実現するエキスパートシステム等が目指されました。当時の通商産業省が推進した第5世代コンピューターの開発もこの頃で、多くの大企業も取り組みました。第2次は、国や大企業を中心とした話だったといえるでしょう。

2 第3次は身近なAI

そして2010年代に入った今、第3次を迎えています。第3次AIブームは、1990年代から著しい成長と発展を遂げた機械学習と深層学習(ディープラーニング)が背景にあることは間違いありません。

また、AIブームを下支えしているのは、さまざまなモノがネットワークにつながるようになった“IoT(Internet of Thing)”、大量のデータを扱えるようになった“ビッグデータ”です。つまり、ネットワークにつながったさまざまなモノからデータを取得し(IoT)、それらのデータを大量に処理・蓄積し(ビッグデータ)、その大量データを使って賢くなっていく(AI)ようになったということです。

これらが実現されつつあるのは、コンピューターやネットワークの性能向上と低価格化が進んだためですが、この流れこそ、規模の大小を問わず、企業がAIを手軽に利活用できるようになってきたことを意味します。第3次を迎え、ようやく私たちの身近な話になったといえるでしょう。

人工知能という広い概念の中に、機械学習があり、その手法の1つにディープラーニングがあります。その関係を示した図表です

3 広がるAIサービス

とはいえ、AIの活用事例として取り上げられるのは、大企業や最先端技術に取り組む企業の話ばかりで、まだまだ身近には感じられないかもしれません。しかし、前回ご紹介したチャットボットやRPA(Robotic Process Automation)などは、中小企業でも手が届く価格で提供されています。

例えば、自社のホームページ上に、資料請求や質問を受け付けるチャットのボックスを備え、チャットボットが自動で住所を尋ねたり、質問の答えになるページのリンクを返したりする仕組みを備えている中小企業も出てきています。中小企業が使えるその他のAIサービスを見てみましょう。

・会計系のAIサービス
どのような企業でも会計処理をしなければなりません。中小企業にとっては意外と業務負担が重いもので、課題になっていることでしょう。この業務負担を軽くし、さらにその企業の会計データを基に、AIがアドバイスをしてくれる「クラウド会計サービス」があります。

勘定科目の自動提案といった作業効率に役立つ機能、同業種の企業との比較ができる機能、助成金の申請や融資に関する提案などの機能が備わっています。人間の専門家ほど具体的なアドバイスではないかもしれませんが、社長に気付きを与え、経営判断の材料を提供するサービスとして、中小企業の利用者が増えています。

・営業系のAIサービス
「営業力・販売力の強化」も多くの中小企業にとって大きな課題です。その解決に向けて、Webサイトを設け、試行錯誤を重ねながら、Webマーケティングを含めた取り組みを進めている中小企業も多いことでしょう。しかし、なかなかうまくいっていない、あるいはどこをどうすればいいのかが分からないといった声もたびたび聞こえてきます。

このような場合、AIを用いてWebサイトを分析し、サイト改善の提案までしてくれるサービスがよいかもしれません。Webの専門家のように、サイト改善のポイントとその根拠となるデータを示してくれるので、情報リテラシーが高くなくても、なるほどと思えることでしょう。

なお、Webサイトの分析で、Google Analyticsを利用している中小企業も多いことでしょう。現在、Google AnalyticsでもAIを用いたアシスタント機能が提供され始めています。このアシスタント機能では、Webサイトのパフォーマンスを週次で比較リポートしてくれる他、例えば、あるページに関して、「関連記事を書きましょう」「このページを目立たせましょう」といった助言が提示されます。今後、こうした機能が中小企業のWebサイト運営を高度化してくれるかもしれません。

「営業力・販売力の強化」に向けては、AIを用いた営業支援サービスもあり、AIを用いて精度の高い見込み客を抽出することに強みを持っています。リソースが限られている中小企業の営業部門にとって、見込みが薄いお客さまを回る“無駄足”は避けたいところです。このようなAIサービスも中小企業の生産性向上に貢献するといえるでしょう。

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4 個別課題の解決に向けたAIの利用

これまで紹介してきたAIサービスは、多くの中小企業にとって共通的な課題に応えた汎用的なサービスです。一方、中小企業が個別に持つ課題に対応したAIの利用も、徐々にではありますが、広がりつつあります。

例えば、街のパン屋さんの事例で考えてみましょう。パン屋さんでは、たくさんのパンの種類をしっかりと覚えて瞬時に特定できないと、レジ対応をすることができません。アルバイトの確保も困難で、そのアルバイトにパンの種類を覚えてもらうことを考えると、これはパン屋さんにとっては大きな課題です。こうした課題に対して、下向きにセットされたカメラの下にパンをのせたトレーを置くと、画像処理によってパンの種類を識別し、その価格や個数を把握する仕組みが作られています。これは、どれがメロンパンなのか、どれがカレーパンなのかをAIに学習させ、外見上の違いを瞬時に判断できるようになっています。

5 独自のAIサービスを作るプラットフォーム

自社の、より個別な課題解決や新たなサービス価値の提供のために、AIあるいは機械学習を活用したいと考えている人がいるかもしれません。データの質・量、技術的な知見など満たすべき条件はありますが、中小企業でも、自社の個別の用途に合わせて扱うことができる機械学習のプラットフォームが提供されています。機械学習では、大量のデータを処理できるスペックの高いコンピューターが必要となるため、かつてはかなり高額な費用がかかる取り組みでした。しかし、今ではクラウドサービスとして提供されるようになって、個人でも中小企業でも取り組みやすい状況となりました。

代表的なクラウド機械学習サービスとしては、AWSのAmazon Machine Learning、MicrosoftのAzureML、GoogleのPrediction APIなどがあります。それぞれ異なる特徴があり、利用の目的や環境によって一長一短ありますが、技術的な知見を持っている専門家などに一度、相談してみるとよいでしょう。

大事なことは、単にAIや機械学習を利用することそのものを目的とせず、個別の課題を解決するためのアイデアや新たなサービス価値を作るためのアイデアを実現するために、道具としてAIや機械学習がふさわしいかどうかを考えることです。AIは決して万能ではありません。自分のアイデアが「言語」「画像」「音声」「制御」「最適化・推論」のいずれかに関係するようであれば、AIや機械学習を利用できる可能性があります。

既に、自分のアイデアに近しいAIサービスがあるなら、自分で取り組むことをせず、そのAIサービスを利用するほうがいい場合も少なくありません。その点は十分に考える必要があるでしょう。

もはやAIは遠い存在ではなく、個人や中小企業にとっても手を伸ばせば利用できる道具だということを忘れてはなりません。ビジネスとして成功するには、さまざまな要素が作用するため、決して簡単な取り組みではありません。しかし、AIの利用を臆することなく考えてみることができる時代になっています。AIは、まさに私たちの身近な話になっているのです。

次回は、中小企業がAIを利用するにあたって考えるべきこと、あるいはAIビジネスを始めるにあたって考えるべきことについて整理していく予定です。

以上

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部下を正しく動かす上司のコミュニケーション術

「報連相はまだか?」「なんでそっちの仕事から始めちゃうの?」「仕事に対する姿勢がなってないよ!」など、上司は部下に不満を感じます。一方、部下も「報連相の途中で話を遮るのはやめて!」「『ま、とにかくやってみて』みたいな曖昧な指示で、正しく優先順位がつけられるはずがない!」「働き方を押し付けないでほしい……」など、上司に対して不満を感じています。

1 上司と部下のコミュニケーションのゴールは?

しばしば指摘される上司と部下のコミュニケーション問題。これを解決するにはどうしたらよいのでしょう。

コミュニケーションという言葉を辞書で調べてみると、「互いの意思や考えなどを、言葉や身振りなどによって伝達すること」と説明されています。上司と部下の関係でも、互いの意思や考えなどを伝達し合うことは確かに大切です。しかし、伝えることをコミュニケーションのゴールとしてよいものなのでしょうか?

上司と部下のコミュニケーションについて、上司の立場で考えてみましょう。上司は部下に、「私が言わなくても、必要に応じて自主的に報連相をしてほしい」といった指示をよく出します。この時点で上司は部下に意思や考えなどを伝えていますが、これだけでは仕事はうまくいきません。

ビジネスを進めるために必要なのは部下の具体的な行動であり、この場合は自主的な報連相となります。つまり、上司と部下のコミュニケーションのゴールは、部下に動いてもらうことなのです。

2 上司が部下を動かすために必要な4つのステップ

部下に動いてもらうといっても、独りよがりに動かれては困ります。ビジネスをスムーズに進めるためには、ゴールに向かって正しく動いてもらう必要があります。そのために上司が行うべきことは、「知る、伝える、動かす、正す」の4つです。

部下を動かすコミュニケーションのステップ

目的は「動かす」ことであり、その前段階になるのが「知る」と「伝える」です。また、「正す」は、部下を動かしながら並行して進めます。順番に見ていきましょう。

「知る」とは、部下の性格や仕事に対する姿勢、ビジネスのスキルを把握することです。同じ指示を出す場合でも、「とにかくやってみなはれ!」と背中を押したほうが燃える部下と、「私もサポートを惜しまないので、一緒にやっていこう」と寄り添ったほうが安心する部下がいます。できる上司はこの辺りをうまく使い分けていますが、これができるのは部下の性格などをよく知っているからです。

「伝える」とは、正確で分かりやすい指示を出すことです。忙しい上司は、「ま、とにかくやってみて」「簡単でいいから」といったように、アバウトな指示を出すことがあります。指示をする時点で上司の頭の中にはその仕事の完成形があり、部下もその多くを共有していると思い込んでいるのです。しかし、上司と部下はキャリアが違います。上司には“朝飯前”のことでも、部下には難解であることが少なくありません。この違いを認識し、部下のレベルに合わせて、丁寧に指示をしなければなりません。

「動かす」とは、文字通り、部下に具体的な行動を起こしてもらうことです。部下のことを知り、丁寧な指示を出しても、部下が動いてくれないことがあります。それは部下が、「なぜ、自分が担当しないといけないの?」「それをやることで自分の評価は上がるの?」などといったことを考え、動きをストップしてしまうからです。こうしたことがないように、上司は次の4つのことを必ず部下に伝え、部下の気持ちを刺激してあげましょう。

  • 指示を出した背景は?
  • その仕事はどのような意味を持っているのか?
  • その部下に担当してもらう理由は?
  • 指示を出す上司は、何を考えているのか?

「正す」とは、ビジネスを正しい方向で進めるために部下をサポートすることです。ビジネスには必ずゴールがあります。しかし、スタートからゴールまで一直線に進むことは少ないものです。多くの場合は、揺らぎながら少しずつ前に進んでいきます。揺らぎが大きすぎると必要以上に時間がかかり、ビジネスが進まなくなってしまいます。上司は部下の状況を確認し、軌道修正をしていきましょう。

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3 上司と部下は協力し合う関係

世の中には「二項対立」といわれるものがたくさんあります。二項対立とは、互いに対立や矛盾の関係にあることであり、「利己と利他」「禁煙と喫煙」などが挙げられます。もしかしたら、「『上司と部下』は二項対立の代表格なのでは?」と考えている人がいるかもしれません。

しかし、上司と部下は二項対立ではなく、互いに協力しながら会社の目標を達成する関係です。キャリアや考え方などによって上司と部下にはギャップが生じやすいのも事実であり、それはある程度、仕方のないことです。上司は部下との間にギャップがあることを前提にして、部下を正しく動かすためのマネジメントをしなければなりません。そのポイントは、「知る、伝える、動かす、正す」を意識したコミュニケーションなのです。

以上

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会社を伸ばす社長は、必死に働く〜小宮一慶の社長コラム

シリーズ第1回「社長は『経営』という仕事を全うする~小宮一慶の社長コラム」では、「経営という仕事」について話をしました。1.企業の方向づけ、2.資源の最適配分、3.人を動かす、の3つがその本質です。会社が小さくても大きくても、経営者がこれを行わなければ、会社は成り立ちませんし、会社を大きくしようと思うならなおのことです。

1 経営者は必死で働くべし

もちろん、会社が小さなうちは、経営者であっても、経営という仕事だけでなく、営業や製造などの現場の仕事も必死でやらなければなりません。とにかく、必死で働くことが大切です。

なぜ、こういう話をするかというと、人間は弱いもので、ともすれば楽なほうに流れがちです。もちろん、創業間もないころには、お客さまも少なく、働く仲間もそれほどいないことが多いので、自分や社員の家族の生活を支えるためにも、必死で働くと思います。創業期から、楽をしているなどという創業経営者は少ないでしょうし、それでは成功しないのは明らかです。

しかし、問題は少し軌道に乗り始めたころです。その時期になると、気が緩むものです。私の好きな言葉に、「良好(グッド)は偉大(グレート)の敵である」(*)というのがあります。そこそこ良い状態が、そこからの飛躍を阻害するのです。食べられるようになっても、必死で働く社長でなければ、会社の成長は止まります。一生懸命働く社長がいるからこそ、部下も必死で働いてくれるのです。

成功して楽をしたいと思う人も少なくないと思います。ビジネスで成功すると、確かに経済的には豊かになれます。サラリーマンよりも格段に豊かになる人も少なくありません。自由度も格段に増します。しかし、ある程度になれても、楽をしていてはなかなか成功しないというのも事実です。

私は、よく「なれる最高の自分になる」ということを言います。社長も部下も、仕事で自己実現をすることが大切なのですが、その大前提が「なれる最高の自分」を目指すことなのです。そういった意味でも経営者は、つねに自分のベストを尽くし、「なれる最高の自分」を目指し、それとともに「なれる最高の会社」づくりを行うことが大切なのです。

2 どこまでが仕事か?

どこまでが仕事の範囲かということを考えることも大切です。業界団体の付き合いや経営者仲間の付き合いも大切なことですが、それもほどほどにしておくのが賢明です。最初は会社のためにと思っていても、それらの団体活動に多くの時間をとられる経営者も少なからずいます。そして、それらの中での自分の地位を上げることに重きを置くようになる経営者もいます。「見栄」や「面子」もありますし、格好良いところを見せたいという思いもあるからです。

また、業界団体のための仕事ならまだしも、そういう団体での飲食やゴルフコンペなど、いわば「遊び」も、拡大解釈すれば、仕事の範疇に入ってしまいます。そして、一部の人にとっては、それらのほうが、本来の仕事よりも楽しいのです。

もちろん、人脈づくりや多くのことを経験するということは経営者にとって、とても大切なことです。しかし、それも会社を良くし、業績を上げるためです。遊びを優先して成功するほど、世の中は甘くないのです。

3 「明るく、元気、おおざっぱ、見栄っ張り」の社長が会社をつぶす

私は、経営コンサルタントとして独立してもう20年以上になります。一代で一部上場会社をつくるほど大成功した社長もたくさん見てきた一方、会社をつぶした社長も少なからず知っています。会社をつぶした社長の性格に共通するのは「明るく、元気、おおざっぱ、見栄っ張り」ということです。「明るく、元気」でないと社長など務まりませんから、これらはもちろん問題ではありません。一方、「おおざっぱ、見栄っ張り」は問題です。とくに「見栄っ張り」の人がトップに立つと、経営状況が良くない場合でも、無理をしようとします。

とくに業界団体や、経営者仲間の中で見栄を張ろうとすると、そこそこのお金をかける必要があります。会社の業績が良い時なら、それも十分にやれるかもしれませんが、業績の悪い時も、人によっては借金をしてでも、見栄を張ろうとするのです。それもこれも、社業に専念せず、団体活動などに注力するからそんなことが起こるのです。

「企業は社会の公器」だと、松下幸之助さんはある時に気づかれたそうです。ヒト・モノ・カネを社会から預かり、それらの資源を有効に活用して、それらの資源以上のものを社会に還元するのが会社の使命であり、そのかじ取りを行うのが経営者の仕事です。

もちろん、経営者にも息抜きは必要です。しかし、息抜きや遊びのために仕事をするというのは本末転倒です。会社を良くし、働く人たちを幸せにし、社会に貢献する良い仕事をすることに楽しみを見出せるようになった時から、本物の経営者としての第一歩を踏み出せるというくらいに考えていてちょうどいいと私は思っています。

【参考文献】
(*)「ビジョナリーカンパニー.2」(ジェームズ・C・コリンズ(著)、山岡洋一(訳)、日経BP社、2001年12月)

以上

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中小企業も狙われる「標的型攻撃」の脅威

  • OSやソフトウェアのバージョン、セキュリティ対策ソフトの定義ファイル(パターンファイル)は常に最新版を利用している
  • 不審なメールの添付ファイルは開かず、URLリンクをクリックしないように社内で徹底している
  • マルウェア(不正プログラム)感染を前提とした内部対策を実施している
  • サイバー攻撃発生時の報告・相談窓口や対応フローが明確になっている

これらができていない中小企業は、いわゆる「標的型メール」の被害を受けてしまう恐れがあります。この記事では、実際に中小企業で起きた情報セキュリティ問題を取り上げ、対策のポイントを紹介します。

1 標的型攻撃とは

標的型攻撃とは、特定の組織をターゲット(標的)として重要情報の搾取を行うサイバー攻撃です。攻撃者は、取引先や関連組織、公的機関等をかたってウイルスを添付した攻撃メールやウイルス感染の仕掛けを施したウェブサイトのURLを記載した攻撃メールを標的組織に送りつけて、パソコンをウイルスに感染させます。その後、パソコンを遠隔操作することで、標的組織内部のシステムやネットワークへの侵入拡大を図り、最終的には目的とする重要情報の搾取を行います。

2 恐ろしい「標的型攻撃」

旅行会社「XYZトラベル」(仮名)。数年前から自社のインターネット予約システムを某有名価格比較サイトに連動したことで売り上げが急成長しています。

ある日、顧客A氏より予約確認メールが届きました。受付オペレーターはメールに添付されたWordファイルを開いて予約内容を確認しましたが、実在しない予約番号でした。予約番号の入力間違いだと思い、メールで予約番号の確認を行いましたが返信が来ません。その後もA氏とは連絡が取れませんでした……。

1カ月後、顧客B氏より「XYZトラベルとのやり取りで使用したメールアドレス宛に迷惑メールが大量に送られてきている。御社で情報漏えいが起きたのではないか?」とのクレームが寄せられました。B氏は用途に応じてメールアドレスを使い分けているので、勘違いではないとのことです。そこで、XYZトラベルのシステム管理者が調査を行いました。その結果、複数の業務端末で不審なファイルが発見され、また外部への不正な通信ログも確認できたため、サイバーセキュリティの専門家であるC氏に正式な調査を依頼することになりました。

C氏は、サーバやネットワーク機器、業務端末のログ等を解析し、その結果をXYZトラベルの経営陣に報告しました。

「今回の調査結果から、御社は『標的型攻撃』の被害にあったと考えられます。標的型攻撃とは、特定の組織が保有する情報を狙って行われるサイバー攻撃のことです。今回はメールの添付ファイルにマルウェアが仕込まれており、マルウェア感染によって外部から業務端末が遠隔操作されていたと思われます。具体的には、顧客情報を格納したサーバから情報が抜き取られて外部に送信されていました。問題のマルウェアは全て駆除できましたが、このまま放置していたら社内の他の機密情報の流出やシステムの破壊の可能性もあったかもしれません。再発防止に向けて、速やかにセキュリティ対策を見直しましょう」

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3 マルウェア感染等を予防する入口対策の実施

まずは、マルウェア感染等を予防する基本的なセキュリティ対策である「入口対策」を徹底しましょう。

OSやソフトウェアの既知の脆弱性(セキュリティホール)を狙ったサイバー攻撃が多く存在します。管理者がソフトウェアバージョンを集中管理して、全社のサーバや業務端末が常に最新版のOS・ソフトウェアを利用している状態にしましょう。また、セキュリティ対策ソフトも管理者が集中管理し、常に最新の定義ファイル(パターンファイル)を適用することで、新しいマルウェアの感染を防ぐようにします。

最近は、メールにマルウェアを添付したり、マルウェアを仕掛けたWebサイトへ誘導したりする手口で、マルウェア感染を狙った巧妙な攻撃メールを送ってくることが増えています。こうした問題への対策として、「差出人アドレス」「メール本文」「URLリンク」「添付ファイル」の4つの観点に注目することで、攻撃メールの多くを見分けることができます。

怪しいメールが届いたとき、どこをチェックすればよいのか? 「差出人がフリーのメールアドレス、ZIP形式で圧縮された添付ファイル、自動翻訳したような本文、差出人と署名が違う」の4つに注目するのが大切であると説明した画像です

「差出人アドレス」が、企業にもかかわらずフリーメールアドレスを使用していたり、実在する組織名に似せたドメインを使用していたり、正規差出人を詐称するために差出人の表示名に実在する人物名を使用していたりする傾向があります。

「メール本文」が、あたかも本物の業務メールであるかのように内容を偽装していたり、受信者の興味を引くような内容を書いてきたりする傾向があります。このとき、英文や自動翻訳をかけたような不自然な日本語の場合があります。

メール本文中の「URLリンク」が、実在するドメインに似たURLリンクであったり、HTML形式メールで表示URLリンクを偽装したりして、マルウェアを仕掛けたサイトへ誘導したり、正規サイトの一部を乗っ取って悪用したりする傾向があります。

「添付ファイル」のアイコンをPDFやWordなどに偽装したり、“お知らせ.pdf.exe”というように二重拡張子で偽装したり、圧縮ファイルにマルウェアを混入したりしてくる傾向があります。

これらの傾向に複数合致するような不審なメールの添付ファイルは開封しない、URLをクリックしないように社内で徹底しましょう。可能であれば、不審なメールが届かないようにメールフィルタリングを行う、ウイルス感染の恐れがあるWebサイトを閲覧しないようにWebフィルタリングを行うなど、システム的な対策がとれるとさらによいでしょう。

厄介なのは、標的型攻撃では、“商品お問い合わせ”や“採用応募について”など、添付ファイルを開かざるを得ないような巧妙なメール文面で攻撃してくるケースが増えていることです。また、特定の組織を攻撃するためだけに作成した新種のマルウェアで攻撃してくる可能性もあるため、標的型攻撃を入口対策だけで完全に防ぎきることは困難といえます。そこで、マルウェア感染を前提に、標的型攻撃に早期に気付き、その後、重要情報にたどり着かせなくする「内部対策」を実施することが重要です。

4 マルウェア感染を前提とした内部対策の実施

標的型攻撃では、マルウェア感染に成功するとバックドア(再侵入するためのネットワーク上の裏口)を仕掛けて、遠隔操作が可能なマルウェアを送り込み、C&C(Command and Control)サーバと呼ばれる外部サーバからの指令によって、侵害を拡大してきます。そこで、業務端末から外部サーバへの直接通信を遮断してプロキシサーバ経由になるようにネットワークを制御した上で、プロキシサーバから外部サーバへの通信を監視するようにしましょう。また、DNSサーバ、メールサーバ、Firewall、Active Directoryなどのサーバや通信機器のログを確認することにより、サイバー攻撃に早期に気付く仕組みを作ることが重要です。

図表2のように、重要情報を格納したDBサーバやその管理端末は、業務端末とはネットワークの分離を実施し、マルウェア感染後の侵害拡大を防止しましょう。業務端末に重要情報を保管しなければならない場合は、暗号をかけておくことで、もしマルウェア感染による情報漏えいを起こした場合であっても、重要情報が簡単には解読できないような対策がとれます。

標的型攻撃を回避するためには、重要情報を格納したDBと業務端末のネットワークを分離することが大切です。この対策を実施した場合のネットワーク構成図の例を紹介した画像です

C氏は、一通りの対策を説明した後、まとめの言葉で締めくくりました。

「標的型攻撃に対しては、入口対策や内部対策など防御の層を重ねて作り、一つの層が破られても別の層で守られるという『多層防御』の考え方で防御することが重要です。また今後、同様のサイバー攻撃が発生した際に、報告や相談ができる窓口を設置し、対応フローを決めておきましょう」

その後、XYZトラベルではマルウェアなどによるサイバー攻撃の兆候がアラートとして上がってきますが、同様の被害は発生していません。

次回は、世界的に猛威を振るうランサムウェアの脅威と対策について解説します。

以上

(監修 エドコンサルティング株式会社 代表取締役 江島将和)

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