エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルへの対応が求められる中、小規模な事業所や中小企業でも取り組める省エネ診断事業が注目を集めています。国の支援を活用すれば、費用負担を抑えて専門家による診断を受けることが可能です。
Just another WordPress site
エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルへの対応が求められる中、小規模な事業所や中小企業でも取り組める省エネ診断事業が注目を集めています。国の支援を活用すれば、費用負担を抑えて専門家による診断を受けることが可能です。
社員本人の労働条件や処遇について、その社員の親が本人に代わり、会社に苦情を申し立ててくることがあるのをご存じでしょうか? 例えば、社員の配属先や人事評価に対する不満を会社にぶつけてきたり、社内の人間関係に口を出してきたりといった具合です。
社員本人の労働問題に介入してくる親を、この記事では「会社版モンスターペアレント」
と呼ぶことにします。
一般的に、モンスターペアレントとは、学校に対して理不尽な要求を繰り返す親を指す言葉です。少子化が進み、親が昔よりも子どもに対して過干渉になったことなどが原因といわれますが、子どもが社会人になった後もその過干渉が続き、会社版モンスターペアレントになってしまうケースがあるのです。ハラスメントに対する規制などが強化され、かつてより社員の権利が主張されやすくなったことも、こうした状況に拍車をかけているといえるでしょう。
会社版モンスターペアレントは、相手方が社員の親ということで、会社としても強く出にくい面がありますが、押さえておきたいポイントは、
労働契約は会社と社員本人との間で成立するものであるため、親は、当該労働契約に関しては第三者に他ならず、原則として労働条件に介入することはできない
ということです。社員の親の話を真摯に聞くのは大切ですが、親が何を言ってきたとしても、最終的には「会社と社員本人の問題」であるということを念頭において対応しましょう。
この記事では、会社版モンスターペアレントの具体的なケースとその対応例を3つ紹介します。
新入社員のAさんは、入社して半年間が経過し、業務にも慣れてきました。Aさんの上司(課長)も頼もしく思っていましたが、あるとき、Aさんの親から、
「うちの息子のAが毎日遅くまで残業していると聞きました。同期の子は残業がないと言っているのに、Aばかり残業させるのはおかしいです!」
と電話がかかってきました。会社はどのように対応すべきでしょうか?
前述した通り、
労働契約は会社と社員本人との間で成立するものであるため、親は、当該労働契約に関しては第三者に他ならず、原則として労働条件に介入することはできません。
つまり、この事例の場合、Aさんの労働条件について、会社が当事者ではないAさんの親と交渉する必要はありません。ただし、
Aさん本人が会社に直接言い出せない不満や不安を、親が代弁している可能性は考慮
する必要があります。親のクレームをただ門前払いするだけでなく、Aさん本人との対話を通じて、根本的な問題(Aさん自身の不満、会社への不信感、コミュニケーション不足など)を特定し、解決に努める必要があります。具体的には次のステップで進めることが考えられます。
会社としては、
「Aさんの労働条件については、Aさんご本人と会社の間の労働契約に関する事項ですので、Aさんご本人からの申し出でなければ、詳細なご説明は致しかねます。一般的に、労働時間や残業は、業務の必要性に応じて発生するもので、部署や担当業務、進行度合いによって異なります。同期の方と全く同じ時間になることはありません」
などと、労働契約の当事者がAさん本人である旨、本人からの申し出でなければ詳細な説明をすることができない旨をAさんの親に伝えます。
親からの連絡があったことをAさん本人に伝え、Aさん自身の残業に対する認識や不満等を直接ヒアリングします。Aさん自身が残業について不満を持っている場合、その内容を真摯に聞き、適切な労働時間管理が行われているか、課長からAさんに対する業務の配分が正当といえるものかを確認します。労働時間管理や業務の配分に問題がないと判断した場合、業務の必要性に応じた残業命令は会社の業務命令権の範囲内であり、不当ではないことをAさんに説明します。また、労働時間や残業に関する規定が就業規則等に明記されていることを、必要に応じてAさんに説明します。もちろん、労働時間管理や業務の配分に問題があると判断した場合は、速やかに是正する必要があります。
親から会社に対し頻繁に電話があり、会社の業務に支障をきたす場合は、迷惑行為である旨を伝えます。それでも繰り返される場合は、弁護士に相談し、法的措置を検討します。
新入社員Bさんの給与や評価について、Bさんの親が、
「うちのBは毎日遅くまで頑張っているのに、給料が同期より低いと聞きました。評価も納得がいかないと。正当な評価をして、もっと給料を上げるべきです!」
と、会社に苦情を申し立ててきました。会社はどのように対応すべきでしょうか?
給与や評価は会社の経営判断と人事裁量に属する事項ですので、まずは、労働契約の当事者であるBさん本人と会社の問題であることをBさんの親に伝えます。もっとも、Bさん本人が会社に直接言い出せない不満や不安を、Bさんの親が代弁している可能性も考慮する必要があります。具体的には次のステップで対応します。
会社としては、
「一般的に、給与や評価については、当社の評価制度に基づき、業務実績や貢献度を総合的に判断して決定しております。Bさんの個別の評価内容については、Bさんご本人と会社の間の労働契約に関する事項ですので、Bさんご本人以外にはお伝えできません。Bさんご本人には、評価面談を通じてご説明しておりますので、ご不明な点があればご本人から改めてご相談いただくようお伝えください」
などと、Bさんの給与や評価に関する情報は開示できない旨をBさんの親に伝えます。
親からの連絡があったことをBさんに伝え、Bさん自身の給与や評価に対する認識・不満等を直接ヒアリングします。その上で、会社の評価制度や賃金決定の仕組みについて、Bさんに丁寧に説明し、疑問点を解消する機会を設けます。親からの給与や評価に関する苦情は、多くの場合、社員自身が会社の評価基準や自身の評価理由を十分に理解していないことが原因です。
会社の人事評価制度や賃金規定の内容が不明確な場合、不公平感が生じやすいです。社内でも、制度や規定の内容を確認し、不明確な部分があると判断した場合、改訂を検討します。また、仮にBさんが「同期と比べて不公平」と感じている場合、それが性別、年齢、雇用形態などによる不当な差別(例:賃金における男女差別)に該当しないかを確認し、該当する可能性がある場合、速やかに是正する必要があります。Bさんの業務実績や貢献度に見合わない評価や給与であると会社が判断する場合、評価の見直しや今後の成長に向けた具体的なフィードバック、目標設定など、改善策を検討し、Bさん本人に説明します。
新入社員Cさんの親が、Cさんの体調不良や業務への不満を理由に、異動について、
「うちのCは今の部署での仕事が合わないようです。精神的に参ってしまっているので、すぐに部署を異動させてください! それが無理なら、もう辞めさせます!」
と、苦情を申し立ててきました。会社はどのように対応すべきでしょうか?
異動命令は会社の業務命令権に基づき行われるものであり、また、会社を退職するか否かは社員本人が決定する事項です。まずは、これらの事項は、労働契約の当事者であるCさん本人と会社の問題であることを伝えます。もっとも、事例1と2と同様に、Cさん本人が会社に直接言い出せない不満や不安を、Cさんの親が代弁している可能性も考慮する必要があります。具体的には次のステップで対応します。
会社としては、
「異動については、Cさんご本人の意思を加味しながら、会社の人事権に基づき判断しております。また、退職についても、Cさんご本人からの正式な申し出が必要です。いずれにしましても、Cさんご本人と会社の間の労働契約に関する事項ですので、Cさんご本人と直接面談して対応を検討させていただきます」
などと、異動や退職は、親がCさんに代わって要求できるものではないことを伝えます。
親からの連絡があったことをCさん本人に伝え、Cさん自身の異動や退職についての意向を直接ヒアリングします。会社は、業務上の必要性やCさんの心身の状態・業務状況・家庭事情等を考慮して、異動を検討します。会社が異動の必要がないと判断した場合、その旨を、理由と併せてCさんに伝えます。その際に、Cさん自身が退職を希望した場合、法律(民法や労働法など)や社内規程に則り、適切な手続き(退職届の提出、退職日の調整など)を進めます。なお、Cさんに退職を促す場合(退職勧奨する場合)、強要とみなされないよう慎重に行う必要があります。不適切な退職勧奨は、不法行為として損害賠償の対象となる可能性がありますので、留意が必要です
(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 曽田駿希)pj00783
画像:友紀 寺崎-Adobe Stock
仕事を確実に任せることができる部下は現場の核とも言える存在です。もし、辞めてしまうと大きな痛手ですよね。周りへの影響も大きく、下手をすれば、それが引き金となり退職の連鎖が起こるかもしれません。
いま、ビジネスパーソンの間で「AI」が急速に浸透している。一部ではAIと対話して仕事を進めることが、すでに当たり前になっている。しかし一方で、「AIなんて仕事の役には立たない」「使ってみたけど、期待外れだった」という声も聞こえる。
「それは使い方の問題。AIの力を引き出すには適切な“聞き方”が必要です」。そう語るのは、グーグル、マイクロソフト、NTTドコモ、富士通、KDDIなどを含む600社以上、のべ2万人以上に発想や思考の研修をしてきた石井力重氏だ。
近年、動画やドラマを倍速視聴する人が増えている。タイムパフォーマンスの向上には確かに有効な視聴方法だが、この風潮に内科医の著者は警鐘を鳴らす。倍速視聴のリスクと、そこから抜け出す方法とは。
血液がドロドロで、心筋梗塞や脳梗塞になりやすい人の「見た目」の特徴に迫ります。「顔」と「足」のある部位に出ているサインとは? ジャーナリストの笹井恵里子氏が聞きました。
今日は、ある歴史上の人物の生涯から、学び続けることの意義について考えてみたいと思います。紹介するのは、伊能忠敬(いのうただたか)です。彼は、江戸時代後期に日本全国を歩いて測量し、弟子とともに日本で初めての正確な実測地図を完成させたことで知られています。
伊能忠敬の人生で特に注目すべきは、彼がこの偉大な地図作りの旅に出た年齢です。なんと、彼は50歳で家業を息子に譲って隠居した後、本格的に天文学や測量学の道を志しました。そして、55歳で測量の旅に出発し、そこから実に17年もの歳月をかけて、全国を歩き続けたのです。彼が亡くなったのは73歳。地図が完成したのは、彼の死後、弟子たちの手によってでした。
この伊能忠敬の生涯は、私たちに非常に力強いメッセージを送ってくれます。それは、「勉強するのは何歳からでも遅くない」というものです。彼は若い頃から学問、特に算術や天文学に強い関心を持っていましたが、家業の経営に忙しく、本格的に学ぶ時間はなかなか取れませんでした。しかし、隠居という人生の転機を迎え、時間ができた時に、彼は迷わず長年の夢だった学問の道を選んだのです。当時50代という年齢で、新たな分野に飛び込み、しかも当時の最新の知識と技術を習得し、それを実践して歴史に残る大事業を成し遂げた彼の情熱と行動力には、ただただ驚かされます。
近年、私たちの業務環境は目まぐるしく変化しています。特に、生成AIをはじめとする新しいテクノロジーの進化は目覚ましく、これまで人間が時間を割いて行っていたルーティンワークや情報整理の多くを、AIが肩代わりしてくれるようになってきています。伊能忠敬は隠居してようやく自由な時間を手に入れましたが、私たちは今、この瞬間にもそれができるわけです。もし、これまで「時間がないから」と諦めていたこと、あるいは漠然と「いつか学んでみたい」と考えていたことがあるなら、今こそがそのチャンスかもしれません。
これまで興味があった分野の深掘りでも、あるいは全く新しい挑戦でも構いません。伊能忠敬のように、いくつになっても知的好奇心を忘れず、学び続ける姿勢こそが、私たちの仕事や人生を豊かにし、未来を切り開く原動力となるはずです。
以上(2025年9月作成)
pj17229
画像:Mariko Mitsuda
2025年10月1日から、育児・介護休業法の改正により、全ての会社に「柔軟な働き方を実現するための措置等」が新たに義務付けられます。これは、
「3歳以上小学校就学前の子」を育てる社員に対し、「短時間勤務」「テレワーク」などの措置を講じる制度
です。現行法でも、会社は3歳未満の子を育てる社員に対し、短時間勤務などの措置(所定労働時間の短縮措置等)を講じる義務を負っていますが、今回の改正内容である
「柔軟な働き方を実現するための措置等」の場合、会社が2つ以上の措置を実施し、社員がそのうち1つを選択して利用できる仕組みになっている点
が異なります(図表1)。

さて、今回の法改正により、特に中小企業では「制度導入の手間」「代替要員の確保」「職場内の不公平感」など、現実的な課題がつきまといます。「ウチは人手不足だから無理」などと尻込みしてしまうかもしれませんが、少子高齢化と人手不足が加速する今、労働力を確保する上でも、働きやすい環境整備は必須。会社としての姿勢が問われる大事な局面といえます。
この記事では、制度の概要を整理した上で、実際に起こり得る現場の課題とその対応策をご紹介します。
2025年10月1日から、会社は図表2の5つの措置のうち、2つ以上の措置を整備・実施する義務を負います。社員は会社が講じた措置の中から、1つを選択して利用することができます。なお、4.の特別休暇と5.のテレワークは、原則時間単位で利用できるようにする必要があります。
ちなみに、2025年4月1日からは、「3歳未満の子を育てる社員のためにテレワークを導入すること」が努力義務化されており、5.のテレワークと混同するかもしれませんが、
5.のテレワークは、「3歳以上小学校就学前の子」を育てる社員が対象で、取り組みは義務(措置の1つとして選択する場合)
となります。

なお、措置は2つ以上実施する必要がありますが、
必ずしも会社全体で内容を統一する必要はなく、業務の性質や実施体制に照らして、事業所単位や事業所内のライン単位、職種ごとに決めてもよい
とされています。
制度導入時の注意点は次の通りです。
柔軟な働き方を実現するための措置等を講じるに当たって、会社は、
改正法の施行(2025年10月1日)よりも前に、過半数労働組合(ない場合は過半数代表)の意見を聴く義務
を負います。既に社内で導入している制度(テレワークなど)を「柔軟な働き方を実現するための措置等」として選択することは可能ですが、その場合も、職場のニーズを把握するため、過半数労働組合等への意見聴取は必須となっています。
会社は、選択した制度(以下「対象措置」)について、
社員の子が3歳になるまでの間に、面談等により対象措置の内容を個別に周知し、利用の意向を確認する義務
を負います。具体的には、図表3の内容に沿って行います。なお、対象措置の利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。

では、これらの制度を導入したときに、実際の職場ではどんな問題が起きるのでしょうか。次章では、現場で想定される課題を挙げ、それぞれの対応策を見ていきます。
短時間勤務制度を導入した場合、当然ながらその分の労働時間が減ります。1日8時間働いていた社員が6時間勤務になれば、2時間分の仕事を誰かが補う必要があるわけです。しかし、小規模事業者では「代替要員がいない」「残業では補えない」という声も多く聞かれます。
まずは「業務の棚卸しと再分配」から始めましょう。短時間勤務制度を利用する本人が抱えている業務の棚卸しをして、チーム内での再分配を検討します。思い切って「やめる業務」を決めることも必要です。
最近では、短時間・短期間の業務を請け負う「スキマ人材サービス」も普及しています。育児期間中だけ、業務の一部を外部委託するという考え方も現実的です。
あとは、「短時間正社員制度の導入」という方法もあります。代替要員を現行の正社員以外からも募るという考え方です。パート等の処遇を改善し、一定時間の労働で、責任ある業務を担ってもらう仕組みを検討してみましょう。
社員が対象措置を利用することで、そのフォローに回る他の社員などから「また早退か……」「こっちは残業なのに……」など心ない発言がされたり、本人を無視するなどの行為に出たりすることがあります。対象措置を利用した社員が会社に居づらくなるような言動は、
「妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント」に該当する恐れ
があります。会社はこのようなハラスメントについて防止措置を講じる義務を負っていますから、上のような空気が生まれる前に、社員を教育する必要があります。
まずは「社員研修」を実施し、「対象措置の利用は権利であり、サポートし合うのが企業文化である」ということを社内に周知しましょう。弁護士やコンサルティング会社などが、ハラスメント防止研修を随時実施しています。短時間のeラーニングでも構わないので、制度導入前に行いましょう。
また、「管理職の意識改革」も大切です。管理職が対象措置の利用に否定的・消極的だと、それが職場全体の空気に影響します。対象措置の利用について、「嫌みを言わない」「制度を利用しやすくする」ことが管理職の責任であると、社長が明確に伝えましょう。
加えて、「相談窓口の整備」についても見直しましょう。会社はハラスメントに関する相談窓口を設置する義務を負っていますが、社内の窓口だけでは対応できる自信がなければ、外部の専門家(弁護士や社労士)への相談窓口も用意しておくと、社員は安心できます。
対象措置の内容を社内に周知した場合、「自分もテレワークを使いたい」「小学生の子どもでも対象ですか?」といった声が、社員から寄せられる可能性があります。ただ、
「柔軟な働き方を実現するための措置等」の対象は、「3歳以上小学校就学前の子」を育てる社員
であり、対象外の社員の声まで聞いていくと、対応しきれない、説明がつかないといった混乱に陥る恐れがあります。また、「〇〇さんは使えて、自分は使えないのはなぜか?」という不公平感にもつながりかねません。
まずは、「対象者や利用要件を明記した社内ルールを整備」するようにしましょう。制度の内容や申請の流れだけでなく、「対象は3歳以上小学校就学前の子を育てる社員」といったように、誰が使えるのかを明確にします。
次に準備したいのは「社員向けQ&A」です。事前に社員から寄せられそうな質問(例:「テレワークって週何回まで?」「事務職でも使える?」「副業中でも使える?」など)を想定し、あらかじめ答えを用意しておくと、混乱を未然に防げます。
こうした一連の取り組みの中で大切なのは、
会社が対応可能な範囲をはっきりさせること
です。例えば、「当社ではテレワーク制度は現在対象外」「短時間勤務制度のみ導入予定」といったように、できること・できないことを明確にします。曖昧な表現を避け、「検討中」よりも「〇年〇月に再検討予定」と記載するほうが誠実です。
今回の法改正は会社の規模を問わないため、一見「中小企業泣かせ」と思える内容かもしれません。しかし、考え方によっては「柔軟な働き方ができる職場です」とアピールする絶好のチャンスでもあります。子育てや介護を抱える優秀な人材にとって、「働き続けられる会社かどうか」は、採用時の大きな判断基準になっています。
大切なのは、完璧な制度整備ではなく、「まずできることからやってみる」こと。1つの制度を導入すれば、確実に職場の雰囲気や社員の安心感は変わります。中小企業ならではの小回りを利かせて、人に優しい働き方を実現していきましょう。
以上(2025年9月作成)
pj00781
画像:Bfinity-Adobe Stock
あらゆる仕事には締め切りがあり、スケジュール管理は仕事の基本です。とはいえ、スケジュール管理を苦手とする人は大勢います。スケジュール管理ができない理由として、仕事の見込み時間が甘いなどが考えられますが、「先延ばしにしてしまう」というのも1つです。
産業心理学者が記した「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」(*)によると、さまざまな調査において、「約95%の人が物事を先延ばしにすることがある」「約4人に1人が先延ばしが慢性的になっており、自分の特徴の1つである」と回答しています。
先延ばし癖は、心理学や行動経済学などの分野でも関心を集めており、
先延ばし癖の改善策の1つとして挙げられるのが、モチベーションのコントロール
です。高いモチベーションを保てれば、物事を先延ばしにすることなく、適切に対応できます。
前述した「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」によると、モチベーションを左右するのは、「価値の大きさ」「努力が報われる大きさ」「時間の長さ(遅れの大きさ)」です。実際、日々の仕事においても、
と感じる仕事は、先延ばしにしてしまう人が多いはずです。
そこで、以降では、「価値の大きさ」「時間の長さ(遅れの大きさ)」「努力が報われる大きさ」の各要素に注目しながら、先延ばし癖を改善するための行動として
を紹介します。
組織への貢献度や緊急度が高い重要な仕事であっても、あまり自分が得意とすることでない場合、着手する気になれないものです。こうしたケースの改善策として、締め切りが目前に迫っている場合は別ですが、あえて少しだけ先延ばしにし、他の重要度の高い仕事と組み替える方法があります。こうすることで、結局何にも着手できない状態を防ぐことができます。
ただし、組み替える場合は、仕事の優先順位を正しく付けていることが前提です。組織への貢献度や緊急度が低い仕事ばかりに取り組んで達成感を得ることがないようにしましょう。
「すぐやらなくても大丈夫」など、時間の余裕がある仕事は先延ばしにしがちです。しかも、余裕があることを言い訳にして、自分を甘やかしてしまいます。
これを避けるには、「週の後半頑張れば間に合うだろうから、前半は違う仕事に取り組もう」とぼんやりと先延ばしするのではなく、何時間先延ばしにするのか、着手しない間にどのような仕事に取り組むのかを、具体的にイメージします。
ある喫煙習慣に関する研究では、被験者に毎日1箱たばこを吸い続けるよう求めたところ、本数を減らす指示をしていないのに、全体的な喫煙量が徐々に減ったという結果があります。これは毎日同じ本数を吸い続けなければならないと自覚したことで、自制心が働くわけです。
何時間先延ばしにし、その間どんな仕事に取り組むのかを具体的にイメージすると、「優先度の低い仕事に取り組んで、無駄な時間を過ごしている場合ではない」と認識することができます。また、先延ばしをしたことで起こるかもしれないトラブルやミスについても具体的にイメージするとよいでしょう。
「自分には難し過ぎて解決できない」など、努力が報われないと諦めを感じる仕事は、先延ばしにしがちです。これを避けるためには、仕事を小分けにして取り組みます。
1つの固まりだと難しく感じる仕事でも、小分けにしてみると、思っていたよりも簡単だったということがあります。また、小分けにして1つずつ終わらせることで、進歩を感じられ、達成感が生まれます。
この際、取り組みやすい課題から少しずつ始めてみるのがコツです。例えば、企画書の作成に着手するなら、「グラフだけでも完成させる」などの視点で取り掛かります。
先延ばし癖を克服することは簡単ではなく、改善策に取り組んでも劇的にスケジュール管理がうまくいくとは限りません。効果がすぐに表れないと、モチベーションを保つのが難しいと感じるかもしれませんが、諦めてはいけません。
人は年齢を重ねるほど、先延ばしにすることが減るという研究結果があります。これは年齢を重ねて物事の因果関係が理解できるようになることで、若い頃は無意味に感じていたことにも、意味を見いだせるようになるからだと考えられています。
任せられた仕事の中には、なぜ自分が取り組まなければならないのか、その目的を理解するのが難しいものがあるかもしれません。その場合、自分で考えることに加え、上司に相談して、目的やスケジュールを組み立てる際の難所などについて確認しましょう。上司はより高い視点から仕事を捉えているため、気付きを得られるはずです。
また、上司はスケジュール管理を教えるということにとどまらず、部下により多くの経験を積ませるようにします。経験に基づく広い視点は、計画倒れにならないスケジュール管理につながるでしょう。
一方、先延ばしには、悪い効果だけでなく、良い効果もあると説く人もいます。例えば、アイデアを出すといったような、創造性を発揮する類いの仕事の場合、先延ばしによってアイデアの質を高めることができるとの研究もあるようです。
しかし、単に先延ばしをするのではなく、「3時間後に、アイデア出しの時間をつくる」といったように、課題を認識した上で、一旦その仕事から離れて、息抜きをするなど他のことをするのが効果的だとされています。
【参考文献】
(*)「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」(ピアーズ・スティール(著)、池村千秋(訳)、阪急コミュニケーションズ、2012年7月)
「予想どおりに不合理 行動経済学が明かす『あなたがそれを選ぶわけ』」(ハヤカワ文庫 NF)(ダン・アリエリー(著)、熊谷淳子(訳)、早川書房、2013年8月)
「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューオンライン(2017年10月31日)」(ダイヤモンド社、2017年10月)
以上(2025年8月更新)
pj40016
画像:mayucolor-Adobe Stock
DX(デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を駆使した業務プロセスや事業内容の改革)という言葉は、今や日本中の企業に浸透しています。とはいえ、蓋を開けてみると、DXの必要性は理解しつつも、取り組みがなかなか進んでいない中小企業が多いのが実情……。
特に製造業の場合、既存の製造プロセスに依存しがちだったり、長い時間の中で保守的な企業文化が形成されていたりで、なかなかDXに踏み切れていない企業が少なくありません。とはいえ、一口にDXと言っても、その程度や種類は様々。いきなり大掛かりな取り組みを考えるのではなく、自社にできる簡単なことからチャレンジしてみるとよいでしょう。
この記事では、DXを図りたいけれど図れない、そんな中小製造業の経営者のために、
高齢の従業員を多く抱える中、「簡単さ・触りやすさ」を重視した、誰もが扱えるDXツールを開発した企業と、そのツールを導入してDX化に成功した製造業の事例を紹介
します。また、第3章では、製造業のDXの取り組み状況や、製造業が導入できそうなDXツールの例を紹介しているので、併せてご確認ください。
この記事でご紹介するのは、山形県米沢市に本社を構えるZAICOが提供するサービス「zaico」。その名の通り、在庫管理のアプリケーションです。

zaicoは、スマホで二次元コードを読み込んだり、はかりに物品を載せたりするだけで在庫管理ができるサービスで、累計18万社以上(2025年5月時点)が導入しました。しかし、ZAICOの目標は、ただ単に企業の在庫管理をDX化することではありません。今回お話を聞いた広報チームの皆さんは、
在庫管理を効率化するのではなく、在庫管理を“なくす”のが、zaicoの使命
と、熱い想いを語ってくれました。
サービス開発のきっかけ、製造業にzaicoを導入する手順やメリット、そして、中小製造業のDX化にかける熱い想いとは……!? ZAICOが描く未来の展望を追います。
zaicoのサービスは、代表取締役・田村壽英(たむら としひで)氏の実家の家業である、山形県米沢市の「田村倉庫」から始まりました。
家業は当時2億円の借金を抱えており、厳しい経営状況でした。エンジニア出身である田村氏が、何かできることは無いかと模索する中で、倉庫内の在庫管理を、熟練メンバーの経験と勘に依存した、昔ながらの方法で続けていることが問題点だと分かりました。
田村氏はそこで、
「在庫管理をデジタル化して、困っている父親の助けになりたい」
「作業が楽になれば、従業員のおばちゃんも喜んでくれるはず!」
との思いで、エクセルなどの既存ソフトの導入を検討し始めます。しかし、今度は「デジタル管理に慣れていない高齢の従業員たちが、複雑すぎて使いこなせない」という問題が出てきました。
そんなとき、田村氏がふと休憩時間に彼らを見ると、従業員たちは皆夢中でスマホを眺めています。
「スマホで簡単に使えるアプリであれば、皆が使ってくれるのでは……?」
そう考えた田村氏は、
自社倉庫の在庫管理業務を自作のシステムで改善すると同時に、その在庫管理システムを顧客にも無償で提供することで顧客を増やす
ために、アプリの開発に着手しました。

上の画像は、現在のzaicoの元になったアプリ「スマート在庫管理」です。当初はボタン4つだけのシンプルな作りで、誰にとっても分かりやすく、簡単なものになっており、田村倉庫の従業員たちは「これなら触ってみてもよいかも」と、アプリの使用を始めてくれたそうです。
田村氏はそこで、
「簡単さは価値である」
という、現在のZAICOが最も大切にしている価値観に出合いました。今でも同社では、「誰でも触ることができて、シンプルで簡単そうなUI、デザイン」「便利な機能をいかにシンプルに使えるか」という点にこだわって、zaicoサービスの開発が進められているそうです。
つまり、zaicoはその始まりから、
DX化にためらいがちな人々のために作られたサービス
なのです。次は、実際にzaicoを導入した中小製造業の事例を紹介します。

電子機器の製造を主な事業とする、とある製造業の現場では、元々在庫を紙やExcelで管理していたため、ヒューマンエラーが多発していました。その企業は、「正確に在庫管理をしたい!」という理由からzaicoの導入を決めたのですが、いざDX化をしてみると、
など、現場では「正確な在庫管理」という目標以上の効果が表れたそうです。
また、棚卸し時は製造ラインを止めなければならないのですが、zaicoの導入により、
棚卸しのために製造ラインを止める時間が短縮でき、顧客満足度の向上や利益の向上が見込めるようになった
とのことです。
ちなみに、ZAICOが2025年2月に、在庫管理DXが進んでいる企業の在庫管理業務担当者向けに行った調査(複数回答)では、在庫管理のデジタル化によって、
いました。
ZAICOではサービスの導入に当たり、在庫管理の課題の洗い出しから始め、その後トライアル期間を経て、本格的な導入へと至ります。「導入したいけれど、何から始めればよいか分からない」「紙で管理していたものをデータ化する方法が分からない」といった初期段階から円滑な運用まで、伴走しながらDX化を進めていくこともあるそうです。

実は、ZAICO代表の田村氏は、zaicoのことを語る際に、「DX」という言葉を使わないそうです。なぜなら彼の目標は、ずばり、
「在庫管理業務を”効率化”」するのではなく、「在庫管理業務を“なくす”」
ことだから! ZAICOは自社が提供するサービスで、工場や倉庫で“モノの出入り”が自動で記録されるようになる仕組み、例えば部品の在庫を正確に管理・把握し、受発注なども自動化された世界を実現することで、
製造業を営む方々が本業である「ものづくり」に集中し、さらなるイノベーションが生まれ、技術が磨かれる未来
を目指しています。
最後に、ZAICOから中小製造業の方への、熱いメッセージを紹介します。
「私たちはこれまで大企業しか持てなかったような、高度な需要予測や生産計画の情報を、小さな町工場でも活用できるようになる社会を目指したい。また、ビジネスの競争条件がフェアになり、日本経済がより活発化するような仕組みをつくっていきたいと思っています。私たちが目指すのは、“中小企業が主役になれる社会”です!」
2024年10月から11月にかけて、中小企業基盤整備機構(中小機構)が実施したアンケートによると、
2024年時点でDXに取り組んでいる企業は、中小企業全体で18.5%、製造業で20.2%
となっています。

図表1のように、「取組みを検討している」「必要だと思うが取組めていない」と答えた企業が、過半数を占めている状況です。一方で、
DXに取り組んだ中小企業(製造業以外も含む)の81.6%(複数回答)は、何らかの成果を上げている
という結果も出ていて、具体的な成果には、
などが挙げられています。
また、製造業におけるDXツールと、その効果についても簡単に紹介します。

図表2のように、ペーパーレスからAIを使った業務効率化まで、製造業の現場で導入できそうなDXツールは多岐にわたります。自社で有効活用できそうなツールについては、導入を検討してみるのも一手です。
各金融機関などでもDXに関する相談を受け付けている他、自治体も補助金制度などを設けている場合があります。詳細は各金融機関・団体にお問い合わせください。
以上(2025年8月作成)
pj00777
画像:株式会社ZAICO