社員がメンタルヘルス不調に陥ると、離職や生産性の低下につながりかねず、企業の法的責任が問われる事態に発展する可能性もあります。また、社員個人にとっても、治療が長期化しやすく、再発率が高いことから社会復帰の難しさにつながる等、労使ともに深刻な影響が考えられることから、メンタルヘルス対策は企業の喫緊の課題として重要性を増しています。
義務化で何が変わる? 事業者が知っておくべき「熱中症対策」の新常識
熱中症は、本格的に暑くなる真夏(7月~8月頃)に多発するイメージがありますが、体がまだ暑さや湿度に十分に慣れていない梅雨時期にも発生しやすく、十分な注意が必要です。従業員の方が安全に働くためにも、事業場での熱中症対策は欠かせません。
【債権回収】テレワークでも失敗しない与信管理~20のチェックリスト付き
1 与信管理と債権回収を必ずセットにする
テレワークでも、与信管理で行うことは同じです。
「テレワークなので、厳重に!」と強化したいところですが、やり過ぎると取引開始までに時間がかかったり、現場での負担が大きくなったりして活動が定着しない
恐れがあります。テレワークだからこそ、
与信管理はシンプルに進めることがポイント
です。
社内に与信管理に留意する雰囲気を定着させることも大切です。そのためには、与信管理のプロセスを「見える化」する必要があります。与信管理の内容をデータ化して担当者で共有する、オンライン会議の場で取引先の状況を発表するといった具合です。こうして、社員が与信管理を身近な業務として認識できるようにするわけです。
また、与信管理と債権回収が分断されていてはいけません。「おかしいな」と感じたら、即座に行動できるように、
- 支払いが滞ったら、3日以内に催促メールを出す
- それでも回収できなければ、内容証明郵便を送る
などをルール化します。時間がたつほど債権回収は困難になるので、先々を見据えた回収計画や対応を事前に決めておきます。与信管理は「転ばぬ先のつえ」ですが、実際に問題が顕在化した場合に即座に行動できなければ意味がありません。
こうした内容を踏まえた上で、以降では与信管理で正しい情報を得るためのポイントと、テレワークでも使える与信管理「20のチェックリスト」を紹介します。
2 正しい情報を得ることが与信管理の第一歩
1)代表者同士で面談する
多くの会社では、営業担当者の情報収集が与信管理の重要な一部となっています。しかし、物価高や人材不足など経営環境は、かつて経験したことのないレベルで変化しており、営業担当者が収集できるレベルの情報では判断が難しくなっています。こうした中、事業方針を大きく転換する企業もあり、それを営業担当者の報告だけで判断するのは難しいです。だからこそ、自社と取引先の代表者同士が面談し、状況を共有することはとても大切です。
2)営業担当者レベルでは、スマートフォンの番号などを交換する
テレワークでは、気軽に取引先を訪問できません。取引先もテレワークをしている場合はなおさらです。つまり、訪問を前提とした営業担当者の情報収集は機能しにくいということです。
そこで、訪問の代わりにオンライン会議や電話で情報を収集します。スマートフォンの番号を交換したり、SNS(Facebookなど)のメッセージ機能を使ったりして、連絡を取れるようにしましょう。こうしたつながりは、ビジネスとしての訪問からプライベートに少し近づく行為ともいえるため、相手と良い関係が構築できていなければなりません。
3)もらいにくかった資料も提出してもらう
長く取引している相手の場合、決算書や事業計画書などの提出を求めないことがあります。「そうした書類がなくても信頼していますよ」という、こちらの信頼を暗に伝えるためです。
しかし、テレワークで与信管理を徹底するには、決算書や事業計画書は、ぜひ、提出してもらいたい資料です。「このようなときなので、お願いします」と依頼すれば、相手もむげに断ったりはしないでしょう。
4)信用調査サービスを利用する
自社だけでは収集できない情報を得たり、客観的に相手を分析したりするために、信用調査サービスを利用するのも1つの方策です。信用調査サービスはさまざまで、調査リポートを提出してくるサービスの他、SNSの投稿内容などを分析して、危険な場合にアラームを出して知らせてくれるサービスもあります。取引規模などに応じて、信用調査サービスを選択、利用するとよいでしょう。
3 テレワークでも使える与信管理「20のチェックリスト」
ここまでの内容も踏まえた、テレワークでも失敗しない与信管理をするためのチェックリストを紹介します。取引前と取引中でそれぞれ10項目、合計で20項目あります。
1)取引前のチェックリスト10
取引前に確認したいチェックリストは次の通りです。
- 与信管理規定は整備されており、社内で周知徹底されていますか?
- 電子契約の導入など、業務効率化を進めていますか?(与信管理から契約までの負担を軽減するためです)
- 相手と知り合った経緯に違和感はないですか?(飛び込み営業、付き合いの浅い人からの紹介などは要注意です)
- 取引の契約を交わす前に、日経テレコンや週刊誌などを検索し、違和感のある記事はないことを確認しましたか?
- 信用調査サービスを使って事前に調査しましたか?
- 可能であれば同業他社などからの情報を得て、違和感のある噂などがないことを確認しましたか?
- 相手の代表者などと面談しましたか?(取引中も定期的に面談できたら理想的です)
- 取引開始について、社内の3名以上が同意をしていますか?
- 技術やサービスの水準に問題はないですか?
- 取引に当たり、きちんと契約を交わしていますか?
2)取引中のチェックリスト10
取引中に確認したいチェックリストは次の通りです。
- 取引の実態に応じて、「見積書、注文書、注文請書、納品書、検収書、請求書、領収書」などのデータを残していますか?
- 自社内のミーティングで、与信管理や新規取引先の話題を共有していますか?
- 決算書や事業計画書などの情報を収集していますか?
- スマートフォンの番号などを交換し、すぐに連絡を取れる状態になっていますか?
- 定期的にオンライン会議をしていますか?
- 電話やオンライン会議の際、相手の言動に違和感はないですか?
- たまに訪問して、相手の状況を確認していますか?
- 納品が正当な理由なく遅延していませんか?
- 支払いが正当な理由なく遅延していませんか?
- 問題が顕在化した際、すぐに債権回収ができる体制になっていますか?
4 自社も与信管理される立場である
最後に補足をします。取引は相手ありきのことであり、自社も相手から与信管理をされています。つまり、この記事で紹介した内容の裏返しで、相手も自社の与信管理を強化したいと考えているはずです。そうした取引先とより良い関係を築くためには、互いの与信管理に快く協力するという視点を忘れてはなりません。
また、万一の際、即座に債権回収をせずに相手の復活を待つという判断をすることもあります。こうした判断の前提は「信頼」ですので、そうした意味でも日ごろの付き合い方が重要になってきます。
以上(2025年7月更新)
pj60222
画像:Mariko Mitsuda
中小企業の成長戦略を支援! 新事業進出補助金・成長加速化補助金のご紹介
中小企業新事業進出補助金では、新規事業の新市場性や付加価値、有望度などが重視され、中小企業成長加速化補助金では、企業の中長期的なビジョンと経営力、地域への波及効果などが重視されます。新市場・新事業参入を目指すなら「新事業進出補助金」、大規模な売上拡大を狙うなら「成長加速化補助金」が有効です。
自社は優遇措置を受けられる「中小企業」に該当するのか?
1 知っていますか? 「中小企業」の定義
税制優遇や補助金、助成金を受けるための要件の1つに、
「中小企業」であること
と示されていることがあります。この「中小企業」という言葉は、法律によって定義が違うことをご存じでしょうか。ある法律では中小企業の要件に該当していても、別の法律では該当しないため、補助金や助成金、税制優遇を受けられないことがあります。
そこで、この記事では、中小企業基本法、産業競争力強化法、法人税法、租税特別措置法、会社法で示されている中小企業の定義を整理します。自社がどの法律なら「中小企業」に該当するのか確認してみましょう。
なお、法律ごとに「会社」「法人」「企業」のように用語が異なるため、この記事でもそれぞれの法律に合わせて表記します。
2 法律ごとの中小企業の定義を確認しよう
1)まずは全体像を把握しよう
まずは、中小企業基本法、産業競争力強化法、法人税法、租税特別措置法、会社法で示されている中小企業の定義の全体像を把握してみましょう。資本金、従業員数、業種等によって中小企業の要件が異なることが分かります。

2)中小企業基本法
中小企業基本法では、業種によって中小企業の定義が違います。まず、中小企業の要件を満たすかどうかの基準は次の2点です。
- 資本金の額または出資の総額
- 常時使用する従業員の数
次に、下記の図表で「資本金の額または出資の総額」「常時使用する従業員の数」のいずれかを満たしていれば、中小企業基本法における中小企業に該当するといえます。

なお、別の業種に属する複数の事業を行っている場合は、「主たる事業」が属する業種で判断します。主たる事業は、直近1事業年度の決算書において、売上高などが最も大きい事業になります。
3)産業競争力強化法
産業競争力強化法では、従業員数が2000人以下で、中小企業に該当しない企業を「中堅企業者」と定義しています。例えば、製造業の場合は常時雇用する従業員数が300人以上、2000人以下かつ、資本金が3億円超の企業が中堅企業者と定義されます。
また、中堅企業の中でも、次の要件を満たす企業は「特定中堅企業者」と定義されます。
- 賃金(常時使用する従業員1人当たり給与等支給額)が業種別平均以上
- 常時使用する従業員数の年平均成長率(3事業年度前比)が業種別平均以上
- 直近3事業年度のうち、いずれかの事業年度が、中堅企業者の業種別平均以上の売上高成長投資比率であること
4)法人税法
法人税法では、中小企業に該当する法人を中小法人等と規定しています。中小法人等に該当するためには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 普通法人のうち、資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であること
- 資本または出資を有しないもの
- 公益法人等または協同組合等
- 人格のない社団
ただし、次の要件に該当する法人を除きます。
- 資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人等による完全支配関係(簡単に言うと、100%の支配)があること
- 複数の大法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人等)に発行済株式の全部を直接、もしくは間接的に保有されていること
5)租税特別措置法
租税特別措置法では、中小企業に該当する法人を中小企業者と規定しています。中小企業者に該当するためには、次のいずれかの要件を満たす必要があります。
- 資本金の額もしくは出資金の額が1億円以下であること
- 資本または出資を有しない法人(公益財団等)については、常時使用する従業員数が1000人以下であること
ただし、次の要件に該当する法人等を除きます。
- 発行済株式の総数または出資の総額の2分の1以上を同一の大規模法人に所有されていること(発行済株式は、自社の株式または出資を除いた分が対象)
- 発行済株式の総数または出資の総額の3分の2以上を複数の大規模法人に所有されていること(発行済株式は、自社の株式または出資を除いた分が対象)
また、「適用除外事業者(前3事業年度の平均所得金額が15億円超の中小企業者)」に該当する場合も、優遇措置の対象から除かれます。
なお、大規模法人とは、中小企業者の要件に該当しない法人または大法人(資本金の額または出資金の額が5億円以上の法人)による完全支配関係がある法人等をいいます。
6)会社法
会社法では、中小企業の定義がなく、大会社のみが規定されています。次のいずれかの要件を満たせば大会社に該当します。逆に言えば、次のいずれの要件も満たさない場合は、便宜上、中小企業(大会社以外の会社)といえます。
- 最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上
- 最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上
また、会社法における大会社は、決算公告や内部の組織について規定があります。会社法における大会社と非大会社(中小企業)の分類は次の通りです。

大会社では、取締役会の内部統制義務(注)がある、会計監査人を置かなければならない、決算公告は、貸借対照表と損益計算書の開示が必要といった規定があります。
これに対して、非大会社では、監査役会と会計監査人の設置は任意、決算公告は貸借対照表のみとしていますが、自社が発行する株式の一部または全部を自由に譲渡可能な公開会社(定款で株式の譲渡制限を設けていない会社をいいます)の場合は、3人以上で構成する取締役会を設置する必要があります。
(注)株主から経営を委ねられた取締役会が主体となり、取締役の業務が会社法や自社の定款にのっとり、適切に行われているかどうかチェックするための体制をいいます。大会社かつ取締役会設置会社の要件に該当する場合に内部統制義務があります。
以上(2025年6月更新)
(監修 税理士 石田和也)
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画像:pixabay
法令違反しているかも!? 闇バイトの募集と誤解されない「SNSでの求人募集」の仕方
インターネットやSNS等で労働者を募集する際には法律違反とならないように、必ず”6情報”(①求人者・労働者の募集を行う者の氏名又は名称、②住所(所在地)、③連絡先、④業務内容、⑤就業場所、⑥賃金)を記載することを念頭に置き、求人広告を作成するようにしましょう。
【管理会計】赤字の注文でも変動費が低ければ利益がでる~「限界利益」を覚える
1 質問:製造原価よりも安い注文はお断りするべきか?
自社の商品(自社工場で製造)が百貨店バイヤーの目に留まり、新規で10万個の注文がありました! 現在、その商品は取引先20社に提供していて、すべて販売単価は700円、製造原価は550円です。
ところが、百貨店の条件は厳しく、
販売単価を500円に値下げしてほしい
と値引きを要請してきました。自社工場の生産能力には余力があって10万個の追加製造は引き受けられそうですが、販売単価が安い。
さて、ここで問題です。単純に、
原価割れで、赤字だ!
と考えるのは正しいのでしょうか。こうしたシーンに直面することはよくあるので、判断の基準をご紹介します。
2 「限界利益」という感覚を持つ
前述した百貨店の案件は、数字だけ見ると原価割れです。しかし、原価の内訳を確認すると評価が変わるかもしれません。仮に、その商品の原価は次の通りとしましょう(話を単純化するため、ここでは、材料費と人件費以外を考慮しないものとします)。
- 変動費:450円。販売個数に応じて増える材料費など
- 固定費:100円。販売個数に関係なく生じる人件費など
例えば、すでに別で生産している売上で固定費が賄われている状態にあり、現在の生産能力で10万個の増産に耐えられるなら(固定費が増えないなら)、商品を1個販売するごとに増える原価は材料費の450円だけです。つまり、百貨店提示の販売単価でも、1個販売するごとに50円(500円-450円)もうかります。これを管理会計の分野では「限界利益」と呼びます。
限界利益=売上高-変動費
この限界利益で固定費を賄うことができれば収支トントンであり、これを「損益分岐点」と呼びます。
3 「損益分岐点」をマスターする
改めて整理すると、
商品の売上高から変動費を引いたものが限界利益で、この限界利益が固定費を上回れば利益が出る
ということです。そして、限界利益と固定費がイコールになるポイントが損益分岐点です。図で確認すると分かりやすいでしょう。

固定費を限界利益率(売上高に占める限界利益の割合)で割れば、損益分岐点になる売上高が分かります。
損益分岐点売上高=固定費÷(1-(変動費÷売上高))
これにより、「この商品が、どのくらいもうけを出しているか」が分かるので、百貨店の注文を受けるか否かについて根拠を持って決められるようになります。念のため補足をすると、販売価格が同じであれば、限界利益率の高いほうが利益を出しやすくなります。
4 練習問題
(問題1)
販売単価が1000円(変動費400円、固定費400円)の商品を、合計で5000個販売しました。この場合の限界利益はいくらですか? また、限界利益率はどのくらいですか?
(問題1の回答)
販売単価の1000円から変動費400円を引くと、1個当たりの限界利益は600円です。その商品を合計で5000個販売しており、商品全体の限界利益は600円×5000個で、300万円となります。また、限界利益率は売上高に占める限界利益の割合なので、60%となります。
問題1の答え:300万円、60%
(問題2)
販売単価が1000円、製造単価が800円の商品があります。製造を外注した場合、外注単価は570円です。この商品を外注するか否かを検討する際に、どのような情報が必要ですか? また、どのような条件の場合に外注しようと思いますか? なお、外注費は全て変動費として取り扱います。
(問題2の回答)
自社の製造単価が800円、外注単価(変動費)が570円の場合、一見、外注すれば230円のコストが削減できると思えます。しかし、自社の固定費が高く、外注すると製造単価が800円を超える恐れがあります。となると、単純にいえば自社の変動費が570円超ならば外注を検討することができます。
問題2の答え:必要な情報は変動費と固定費
以上(2025年6月更新)
(監修 KOSOパートナーズ合同会社 代表社員CEO 公認会計士 朝倉厳太郎)
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画像:pixabay
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