1 他人事ではない「個人情報保護法」
2 「個人情報保護法」の目的は? 「個人情報」って何?
3 個人情報を取得・利用するときのルールは?
4 個人データの取り扱いに関するルールは?
5 保有個人データについて問い合わせや苦情が来たら?
6 おことわり
1 他人事ではない「個人情報保護法」
どんな会社でも、お客様や取引先、社員などの個人情報を取り扱います。昨今は会社の規模や業種を問わずランサムウエアが猛威を振るっていますが、そうしたサイバー攻撃を受けるなどして個人情報の漏洩等が発生した場合に、知らなかったという言い訳は通用しません。
一方で、個人情報の重要性は分かっているけど、「個人情報保護法」に基づく個人情報の取り扱いルールについては、正直よく知らないという人も多いはずです。
そこで、この【3分で分かる個人情報保護】シリーズでは、「個人情報保護法」について前提知識のない一般社員の人向けに、社会人として身に付けておきたいベーシックな内容を、それぞれコンパクトにまとめて紹介します。コンプライアンス教育の一環として、また、より深く掘り下げて専門的な知識を身に付けるための第一歩として、ぜひお役立てください。
2 「個人情報保護法」の目的は? 「個人情報」って何?
まず、押さえておきたいのは、個人情報保護法とは何のための法律なのか、そもそも個人情報とは何なのかです。簡単に言うと、
- 個人情報保護法:「お客様をはじめとする個人の権利・利益を守ること」「個人情報を上手に活用してサービス品質の向上や業務効率化につなげること」を目的とした法律
- 個人情報:生きている人の情報で、その人を特定できることになる全ての情報
です。
次のコンテンツで、両者のもう少し詳しい説明と、個人情報をどのように取り扱わなければならないのか、最低限守るべきルールを10のチェックポイントとともに紹介します。
3 個人情報を取得・利用するときのルールは?
個人情報を取り扱う際は、個人情報保護法に基づく取得・利用のルールを守らなければなりません。例えば、
- 個人情報を取得するときは、不正の手段により行ってはならない
- 個人情報を利用するときは、利用目的をできる限り特定しなければならない
などの決まりがあります。
次のコンテンツで、個人情報を取得・利用するときのルールを紹介します。
4 個人データの取り扱いに関するルールは?
特定の個人情報を、コンピューター上で検索できるようにしたものや、紙媒体で整理・分類し、目次や索引を付けているもののことを「個人情報データベース等」といいます。そして、
個人情報データベース等を構成する個人情報のことを「個人データ」
といいます。個人データを取り扱う際は、個人情報保護法に基づく保管・管理のルールや、第三者提供のルールを守らなければなりません。例えば、
- 個人データを個人情報取扱事業者(会社)が自ら取り扱う場合、データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去しなければならない
- 個人データの取り扱いを外部に委託する場合、委託先が個人情報保護法などで定められている適切な「安全管理措置」を講じているか、あらかじめ確認しなければならない
などの決まりがあります。個人データを自ら取り扱うのか、外部に取り扱いを委託するかなどによって、守るべきルールが変わってくるので注意が必要です。
次のコンテンツで、個人データの取り扱いに関するルールを紹介します。

個人情報保護法を基に、個人情報を取り扱う際の基本ルールをまとめたシリーズです。今回は、個人データの漏えい等の報告等に関する対応について紹介します。
5 保有個人データについて問い合わせや苦情が来たら?
会社が保有する個人データのことを「保有個人データ」といいます。正確な定義は、
個人情報取扱事業者(会社)が、開示、内容の訂正、追加または削除、利用の停止、消去、第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有するもの
です。会社は、保有個人データを安全に管理するだけでなく、必要に応じてデータに関する社員からの問い合わせ等にも対応しなければなりません。例えば、
- 本人(または代理人)から「利用目的の通知」の求めや「開示」の請求があったら対応しなければならない
- 保有個人データの取り扱いに関する苦情の申出先を定め、本人の知り得る状態(ホームページへの掲載、本人の求めに応じて遅滞なく回答を行う等)にしておかなければならない
などの決まりがあります。
次のコンテンツで、保有個人データについての問い合わせ等への対応を紹介します。
6 おことわり
【3分で分かる個人情報保護】シリーズの記事では、分かりやすさを優先し、個人情報保護法や各種ガイドラインの条文を基に、その趣旨を逸脱しないかたちで意訳している部分があります。正確な条文は、法やガイドラインをご確認ください。
なお、法やガイドラインでは、「仮名加工情報」「匿名加工情報」「個人関連情報」の取り扱いに関する義務も規定されていますが、本シリーズでは割愛します。
以上(2024年12月作成)
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酒酔い歩行者は要警戒!(2025/1号)【交通安全ニュース】
活用する機会の例
- 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
- 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
- マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など
年末年始は、忘・新年会などの宴会が多いシーズンです。改めて「飲酒運転」が悪質危険な犯罪行為であることを、ドライバーの皆さんは強く意識する必要があります。一方で、酒に酔った歩行者の想定外の行動にも注意する必要があります。そこで今月号では、酒酔い歩行者を中心に、夜間の歩行者事故防止対策について考えます。
夜間における歩行中死者数の特徴
警察庁の「令和5年における交通事故の発生状況について」によると、「65歳未満」の歩行中死者数については、「横断中」が最も多く、次いで多いのは「路上横臥※」となっています。特に路上横臥についてはその大半が夜間で、しかも「飲酒あり」が8割を超えています(図1)。
※出典:警察庁「令和5年における交通事故の発生状況について」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/bunseki/nenkan/060307R05nenkan.pdf
※道路上に泥酔、居眠り等で横たわっていた時に事故が発生した類型
最新の統計として警察庁の「令和6年上半期における交通死亡事故の発生状況」をみても、夜間における65歳未満の歩行中死者数で最も多いのは「路上横臥」となっており、そのうちの7割近くは「飲酒あり」でした。次に多い「横断歩道以外横断中」でも「飲酒あり」が5割を超えています(図2)。なお、これら2類型の死者数はともに前年の同時期に比べ増加しています。
※警察庁「令和6年上半期における交通死亡事故の発生状況」
https://www.npa.go.jp/publications/statistics/koutsuu/jiko/R6kamihanki_bunseki.pdf
特に路上に横たわっている人は気づきにくく、また気づけても人か物かの区別がつきにくいことがあり、通過の直前で人だとわかっても既に手遅れ、というケースもありえます。
夜間に飲食店などの多い場所やその周辺を走行するときは、歩行者への注意はもちろんですが、「酔って路上に横たわっている人がいるかもしれない」と考えるなど、路上横臥者の存在も意識する必要があります。
夜間における歩行者事故防止の要点
- 酒に酔った歩行者は、周囲の状況が把握できない、警戒心がない、歩行が不安定で急にふらつく・つまずくなど、予測できない動きをすることがあります。ライトのハイビームとロービームを適切に切り替え、早めの発見に努めましょう。また歩き方が不自然な歩行者を見つけたら、その動きに注意し、そばを通過するときはスピードを落として十分な側方間隔をとりましょう。
- 夜間は速度超過になりがちといわれています(交通の教則第6章第3節)。こまめにスピードメーターを確認し、繁華街や市街地、生活道路では特に意識してスピードを落としましょう。
- 暗い夜道、歩行者からは車のライト部分しか見えていないことが多いため、距離感や車速の判断が難しく、車が接近していても横断してしまうことがあります。歩行者をみつけたら「横断してくるかも」と予測しましょう。
コラム 生活道路における速度規制強化について
令和8年9月1日より、中央線(センターライン)などのない、いわゆる生活道路については、最高速度がすべて時速30キロに制限されます。
従来、生活道路については歩行者や自転車の安全確保のために、標識等で規制速度を設けたり「ゾーン30」の区域を設けるなどのさまざまな対策が講じられてきましたが、全国の道路にそうした対策を講じるよりも、法令により一律に制限をかけるほうが適切と判断され、法令改正に至ったものです。施行までには、まだ期間がありますが、今のうちから生活道路では時速30キロ以下で走行する習慣をつけることをお勧めします。
以上(2025年1月)
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【人事はつらいよ】社員が2週間の無断欠勤……音信不通なのに解雇不可ってどういうこと?
1 2週間以上も無断欠勤しているのに解雇できないの?
A社の社長は悩んでいます。これまで真面目に働いてくれていた社員のBさんが、ここ数日、無断欠勤をしているのです。電話をしても応答がなく、自宅にも行ってみましたが留守でした。遠方に住んでいるBさんの家族にも連絡しましたが、誰も行方を知りません……。
2週間たっても連絡が取れず、限界と判断した社長は、就業規則にのっとってBさんを解雇することに決め、解雇通知書(解雇する旨を社員に通知する書類)を作成しました。ですが、ここで問題が……。Bさんの行方が分からないので解雇通知書を本人に届けられません。そこで、社長はBさんの家族を頼ることにしました。
「申し訳ありませんが、Bさん本人と連絡が取れないため、この解雇通知書をご家族にお預けします。もしもBさんから連絡がありましたら、本人にお渡しください」
Bさんの家族に何とか了承してもらい、これで一段落かと思われましたが、しばらくしてA社に一本の電話が入りました。電話の主は、Bさんの代理人を名乗る弁護士。どうやら家族の前に現れたBさんが、解雇通知書を渡されて憤慨し、弁護士に相談したようです。弁護士が言うには、「Bさんの家族に解雇通知書を預けても、Bさん本人に通知したことにはならない。だから解雇は無効だ」とのこと。社長は釈然としません。
「Bさんと連絡が取れないから家族に頼んだのに、『本人に通知しなければ解雇できない』とはどういうことだ? 本人と連絡が取れるまでずっと待っていないといけないのか?」
2 「客観的合理性」と「社会的相当性」がカギ
労働契約法により、会社が社員を解雇する(労働契約を一方的に解消する)には、
- 客観的に見て解雇はやむを得ないといえるだけの理由がある(客観的合理性)
- 社員の行為に照らして、解雇を選択することが適当であるといえる(社会的相当性)
の2つの要件を満たさなければなりません。過去の裁判例(東京地裁平成12年10月27日判決)では、このルールを無断欠勤に当てはめた上で、
無断欠勤が「2週間以上」続くことが、解雇が有効と認められるための1つの目安である
という判断がされており、多くの会社がこれにならって就業規則などを整備しています。ただ、実際は無断欠勤が2週間以上続いていても、解雇が無効になるケースがあります。
例えば、
解雇予告や解雇予告手当の支払いなど、解雇の手続自体に問題があるケース
がそうです。労働基準法には、社員を解雇する場合、少なくとも解雇する日の30日前に解雇予告をする必要があり、30日を待たずに解雇する場合、短縮する日数分の解雇予告手当を支払わなければならないというルールがあります。
難しいのは、
解雇予告や解雇予告手当の支払いは、原則として社員本人に通知しなければ、効力を生じない
ことです。無断欠勤の場合、欠勤開始から2週間が経過した後に解雇予告などを行うため、
- 解雇予告手当を支払わなければ、欠勤開始から44日(2週間+30日)後
- 解雇予告手当を支払えば、最短で欠勤開始から14日(2週間)後
に解雇が成立することになります。しかし、解雇を成立させるには、社員を解雇するという会社の意思表示を、書面などで社員本人に到達させなければなりません。
冒頭の事例では、A社の社長が、Bさん本人と連絡がつかないという理由で、遠方に住んでいるBさんの家族に解雇通知書を預けています。実は、社員の家族に解雇通知書を預けても、解雇を成立させられるのは、
社員本人が家族と同居していることが明らかなケースなどに限定
されていて、遠方に住んでいる別居の家族に預けた場合は効力を生じません。ですからこの場合、「Bさんへの解雇通知が適正に行われていないので、解雇は無効」ということになります。
3 連絡が取れなければ、公示送達や内容証明郵便を使おう
では、社員本人と連絡が取れるまで解雇は一切認められないのかというと、そうではありません。こうした場合の対策として、
公示送達や内容証明郵便を使って解雇を通知する
という方法があります。
公示送達は、相手の所在が不明で意思表示が到達しない場合、簡易裁判所に意思表示の公示送達の申立てを行って裁判所の掲示板に掲示し、その旨を官報などに掲載すれば、意思表示が相手に到達したとみなされる制度です。社員を解雇する場合の公示送達の流れは次の通りです。
内容証明郵便は、郵便を出した内容や発送日、相手が受け取った日付などを郵便局が証明するサービスです。無断欠勤が続く社員の自宅に解雇通知書などを内容証明郵便で送れば、社員が受け取った時点で、社員を解雇するという会社の意思表示が到達したとみなされます。なお、過去の判例には、
内容証明郵便が本人不在で届かず、留置期間の経過により戻ってきたとしても、不在配達通知書の記載等から通知の内容が十分推知できたり(内容の推知可能性)、受領しようとすれば内容証明郵便を受領できたり(郵便物の受領可能性)する場合、遅くとも留置期間の満了時点で意思表示が到達したと認められる
としたものがあります(最高裁第一小法廷平成10年6月11日判決)。とはいえ、それなりに条件が厳しいので、状況にもよりますが、自宅訪問、電話、ショートメール、SNS、住民票調査(弁護士に依頼)など、可能な限り連絡を試みるのがよいでしょう。
4 無断欠勤の理由によっては解雇が無効になることもある
社員側に無断欠勤が続いてもやむを得ない正当な理由がある場合、解雇の手続が適正に行われていても無効になることがあります。具体的には、
- 傷病にかかっている、逮捕されているなどの理由で、欠勤の連絡ができない
- 社内でハラスメントなどの被害を受けていて、出勤が苦痛になっている
といったケースです。
社員の事情を正確に推し量るのは難しいですが、社員の同僚や上司、家族などに「最近、変わったことがなかったか」をヒアリングするなどして、可能な限り情報を収集するようにしましょう。仮に、社員が上のようなケースに該当する可能性が高い場合、解雇通知を出さずに休職制度を適用するなどして様子を見ます。
また、公示送達などを使って解雇を通知した後で、音信不通になっていた社員と連絡が取れるようになった場合、無断欠勤の理由を確認し、その理由によっては解雇の撤回を検討します。会社が解雇の意思表示を一方的に取り消すことはできませんが、社員が同意した場合については撤回が認められています。
解雇はトラブルが起きやすい分野です。特に無断欠勤の場合、社員とコミュニケーションが取れない関係で一層トラブルのリスクが高まりますが、「会社としてやるべきことはやった」と言えるよう、手続のポイントを押さえておきましょう。
以上(2024年12月更新)
(監修 みらい総合法律事務所 弁護士 田畠宏一)
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