【かんたん所得税(5)】2024年に住宅を購入した人は必見の「住宅ローン控除」

書いてあること

  • 主な読者:2024年中に住宅をローンで購入した人
  • 課題:はじめて確定申告をするが、必要な書類や控除額の計算が分かりにくい
  • 解決策:まずは5つの要件を全て満たすかを確認する。例えば、建ててから6カ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで住んでいるなどがある

1 住宅ローン控除ではじめての確定申告

年末調整だけで済んでいた人が、はじめて所得税の確定申告をする。そのきっかけとして最も一般的なのが、いわゆる「住宅ローン控除」(正式には「住宅借入金等特別控除」)です。しかし、はじめての確定申告は戸惑うものです。また、住宅ローン控除は、控除期間が10年または13年と長いので、毎年、きちんと手続きしなければなりません。

この記事では、2024年中にローンで住宅を購入した人向けに、住宅ローン控除の基本的な手続きや適用要件、事例を用いた控除額の計算などを説明します。

2 確定申告は1年目だけ。2年目以降は年末調整で

住宅ローン控除を受けるには、次の書類を添付した確定申告書を税務署に提出します。給与所得者の場合、住宅に住み始めた年に確定申告をすれば、翌年以降は勤務先の年末調整で大丈夫です。

  • 金融機関等から交付を受けた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
  • 法務局で発行を受ける「家屋の登記簿謄本または抄本」
  • 不動産会社との「売買契約書、請負契約書など」で、家屋の新築年月日または取得年月日、家屋の新築工事の請負代金または取得対価の額および家屋の床面積を明らかにする書類またはその写し
  • 認定長期優良住宅等(詳細は後述)の場合、その証明書等

土地の取得に係る住宅ローンがある場合、土地の登記簿謄本または抄本、売買契約書などで土地等を取得したこと、取得年月日および取得対価の額が明らかになる書類またはその写しが必要です。

確定申告をすると、申告をした年の秋ごろに残りの年数分(9年または12年分)の控除申告書が、まとめて税務署から郵送(確定申告時にe-Taxで電子データによる交付を希望した場合には、e-Tax上で証明書を受け取る)されます。年末調整では、その控除申告書に毎年金融機関から送られてくる残高等証明書の項目を転記し、年末調整の書類と併せて会社に提出することで、2年目以降の住宅ローン控除を受けることができます。

3 全て満たす必要がある6つの要件

1)新築した住宅は省エネ基準を満たしていますか

2024年1月1日以降に建築確認を受けた新築の住宅(不動産会社が中古住宅をリホームして販売する買取再販住宅を含む)については、省エネ基準などを満たさない住宅(以下「一般住宅」。住宅区分の詳細は後述)は、住宅ローン控除の適用を受けられなくなりました。

ただ、次のいずれかのケースに該当する場合には、新築した住宅が一般住宅であっても、借入限度額2000万円かつ控除期間10年間の住宅ローン控除を受けることができます。

  • 2023年12月31日までに建築確認を受けているケース
  • 2024年6月30日までに工事が完了しているケース
  • 取得した住宅が、買取再販住宅ではない中古住宅に該当するケース

2)年末まで住み続けていますか?

新築・取得・増改築(以下「新築等」)の日から6カ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいる必要があります。

3)控除を受ける年の合計所得金額は2000万円以下ですか?

特別控除を受ける各年分の合計所得金額が2000万円以下である必要があります。

4)新居の床面積や用途は適切ですか?

新築等をした住宅の床面積が50平方メートル以上(その年分の合計所得金額が1000万円以下の人は40平方メートル以上)であり、床面積の2分の1以上の部分を自分自身が居住するために使っている必要があります。つまり、賃貸や店舗利用をしていないということです。

5)住宅ローンの借入先・返済期間・利率は適切ですか?

10年以上の分割返済をする新築等のための、一定の借入金または債務(住宅の敷地となる土地を取得するための借入金を含む)である必要があります。一定の借入金または債務とは、例えば、金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務です。しかし、勤務先からの借入金で、無利子または0.2%に満たない利率による場合は該当しません。また、親族や知人からの借入金は全て該当しません。

6)住み始めた年の直前2年間・直後3年間に今まで住んでいた住宅を売って、特例を受けていませんか?

住み始めた年とその直前2年間、直後の3年の6年間に、以前居住していた住宅を譲渡した場合の特例(住宅を譲渡したときに受けられる3000万円の特別控除や軽減税率などの特例)の適用を受けていると該当しません。

4 自分が購入した住宅はどの区分か

住宅ローン控除は、新築等をした住宅を次のように区分しており、一般住宅以外の住宅には一定の評価基準があります。

  • 認定長期優良住宅:長期に使用するための構造設備などが備わっている住宅
  • 認定低炭素住宅:二酸化炭素の排出が抑制できる住宅
  • 省エネ基準適合住宅:日本住宅性能表示基準(外壁などの耐熱性や給湯・照明などの1次エネルギー消費の評価基準)において一定以上の性能を満たしている住宅
  • ZEH水準省エネ住宅:日本住宅性能表示基準(外壁などの耐熱性や給湯・照明などの1次エネルギー消費の評価基準)において一定以上の性能を満たしている住宅。省エネ住宅よりも多くの性能を満たす必要がある
  • 一般住宅:上記以外の住宅

いずれの場合も、居住開始1年目~10年目または13年目において、合計所得金額が2000万円以下の年について適用できます。

5 控除対象年と控除額

1)認定長期優良住宅または認定低炭素住宅の新築等

認定長期優良住宅や認定低炭素住宅を新築等した場合の控除額は、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:31万5000円=4500万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%、中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、

  • 35万円=5000万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)

となります。

2)省エネ基準適合住宅

省エネ基準適合住宅を新築等した場合、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:21万円=3000万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、

  • 28万円=4000万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)

となります。

3)ZEH水準省エネ住宅

ZEH水準省エネ住宅を新築等した場合、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:24万5000円=3500万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、

  • 31万5000円=4500万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)

となります。

4)一般住宅(中古住宅に限る)

一般住宅(中古住宅に限る)に係る住宅ローン控除の控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:14万円=2000万円×0.7%

6 事例で計算してみよう

1)条件

居住者甲は、2024年3月1日に新築のマンション(床面積84平方メートル、省エネ基準適合住宅に該当)を取得し、すぐに住み始めました。

  1. マンションの取得対価:5350万円(消費税10%込み)
  2. 取得資金
    • 自己資金:1250万円
    • 借入金(20年間):4100万円
    • 借入金の年末残高:4062万円

  3. 甲の2024年分の合計所得金額:850万円

2)住宅ローン控除額の算出方法

1.要件の確認

合計所得金額が850万円(2000万円以下に該当)、かつ、床面積が84平方メートル(50平方メートル以上に該当)なので「適用あり」とします。

2.控除額の計算

年末借入金残高は4062万円であり、3000万円を上回っているため、控除額は28万4340円(4062万円×0.7%)ではなく、21万円(3000万円×0.7%)となります。

7 住宅ローン控除の注意点

1)適用除外になるケース

住み始めた年とその直前2年間、直後の3年の6年間のどこかで、居住用財産の課税の特例(住宅の買換えがあった場合の課税の繰延規定や、住宅の譲渡があった場合の3000万円特別控除など)の適用を受ける場合、住宅ローン控除は住み始めた年以後10年または13年間は適用できません。従って、住宅を譲渡または買換える場合は、どの特例が有利なのかを判断しましょう。

2)転勤などで購入した住宅に住めなくなったケース

住宅ローン控除の適用を受けた人が、転勤などやむを得ない事情で住宅に住めなくなった場合、その年以後は住宅ローン控除が受けられません。しかし、その人が再び居住用家屋に住むことになったら、一定の手続きをして適用を受けることができます。一定の手続きとは、計算書や控除額を添付・記載した確定申告書の提出です。

例えば、東京に住宅を購入して住み始めた年以後3年間、住宅ローン控除の適用を受けた人が大阪に転勤となり、その間、東京の家屋は他人に賃貸していたとします。2年後、その人が東京に戻り、元の家屋に再び住み始めた場合、当初の居住開始年からの適用期間(10年または13年間)のうち賃貸していた年の翌年から、再び住宅ローン控除が適用できます。

以上(2024年12月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

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【3分で分かる個人情報保護(6)】個人データを第三者に渡しても良い?

1 個人データの第三者提供には、あらかじめ本人の同意が必要

一般の事業会社が、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供できるのは、次のような場合です。

  1. 法令に基づく場合
  2. 人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
  3. 公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
  4. 国の機関もしくは地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき

なお、そもそも「第三者への提供」自体が利用目的である場合などには、所定の事項をあらかじめ本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置いた上で、個人情報保護委員会へ届け出れば、「オプトアウト」の形で個人データを第三者に提供できます。

オプトアウトとは、あらかじめ本人の同意を得ることなく、個人データを第三者に提供すること(本人から求めがあった場合に、求めに応じて第三者提供を停止することが条件)

です。

注意が必要なのは「要配慮個人情報」を第三者に提供する場合です。

要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見などの不利益が生じないよう、取り扱いに特に配慮を要する個人情報のこと

です。具体的には、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、心身の機能の障害があること、医師等により行われた健康診断の結果などが該当します。要配慮個人情報をオプトアウトの形で第三者に提供することは禁止されており、法令に基づく場合などの例外を除いて、必ず本人の同意を得なければなりません。

実務上、社員の健康情報(健康診断の結果や病歴など、健康に関する個人情報)を健康保険組合に提供する場合などがありますが、健康情報の多くは要配慮個人情報に該当し、そうでない場合も機微な情報が含まれ得ることなどから、要配慮個人情報に準じて取り扱うことが望ましいとされています。あらかじめ利用目的を通知し、社員の同意を得ておくとよいでしょう。

■個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/ryuuijikou_health_condition_info/

2 外国にある第三者への提供は制限されている

個人データを外国にある第三者に提供する場合、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければならず、その際、

  • 当該外国の名称
  • 適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度
  • 当該第三者が講ずる個人情報の保護のための措置

に関する情報を、本人に提供しなければなりません。

この他にも押さえるべきポイントは多岐にわたります。そのため、ガイドライン(通則編)とは別に「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」が定められています。興味のある方は確認してみてください。

■個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_offshore/

3 第三者提供については記録を残す

個人データを第三者に提供したとき、または第三者から個人データの提供を受けるときには、次の事項の確認および記録の作成を行わなければなりません(保存期間は原則3年)。

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この他にも押さえるべきポイントは多岐にわたります。そのため、ガイドライン(通則編)とは別に「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」が定められています。興味のある方は確認してみてください。

■個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_thirdparty/

以上(2024年12月更新)

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【かんたん所得税(4)】見逃したら損をする。所得税の負担を減らす方法を教えます

書いてあること

  • 主な読者:所得税の負担を減らすために「所得控除」について確認したい人
  • 課題:所得控除は種類が多く計算も複雑なのでとっつきにくい
  • 解決策:所得控除は15種類ある。自身に適用されそうなものから確認する

1 見逃していませんか? 自分が受けられる所得控除

所得税の計算のベースとなる「所得」から控除できる「所得控除」を使うと、所得税の負担は減ります。所得控除は15種類で、その内容は、

  • 物的所得控除:医療費や保険料など特定の支払いなどが対象
  • 人的所得控除:家族構成や個人の状況が対象

に大別されます。

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物的所得控除と人的所得控除いずれも、対象となる親族や支払いについて、どの時点の状況で判断するかがポイントとなります。

物的所得控除における同一生計親族(生活費の出どころが同じ親族。詳細は後述)への支出の判定は、原則、控除をうけられる事由が発生した時または支払い時の状況で行います。例えば、親族に係る医療費を支払った場合、受診時または医療費の支払い時のどちらかの時点で、その親族が同一生計の状況に該当していれば、医療費控除の対象になります。

人的所得控除における配偶者や親族の年齢の判定、同一生計であるかまたは障害者であるかの判定などは、原則として、その年の12月31日の現況で行います。

いずれにしても、所得控除は種類が多く、税制改正も頻繁なので見逃してしまったり、分かっていても計算が面倒なので無視してしまったりする人も少なくありません。しかし、これはもったいないことです。この記事で15種類の所得控除を分かりやすく説明しますので、確認してみてください。

2 物的所得控除について説明

1)雑損控除

1.適用要件

雑損控除は、納税者本人や同一生計親族(総所得金額等が48万円以下の者に限る)が持っている「生活に通常必要な資産」について、災害・盗難・横領による損失が生じた場合に適用できます。ただし、詐欺、強迫による損失や保証債務の履行による損失などは適用対象外です。

同一生計親族とは、同じ家屋に住んでいる場合は、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められるケース(例:二世帯住宅)を除いて、同一生計とされます。また、日常生活を共にしていなくても、単身赴任の場合や生活費の送金が行われている場合(仕送り学生など)も、同一生計とされます。

生活に通常必要な資産とは、居住用家屋、家財、衣類、現金、時価30万円以下の宝石・書画・骨董品などです。

2.控除額

イ.損失の金額:被害直前の時価-被害直後の時価-保険金等の額+後片付け費用等

ロ.足切限度額:総所得金額等×10%

ハ.イ.-ロ.=雑損控除額

なお、損害を受けた資産が減価償却資産(減価償却の対象となる資産)である場合、上記イ.損失の金額を、次の算式により計算した金額とすることができます。

損失の金額=取得価額から減価償却累積相当額を控除した金額-被害直後の時価-保険金等の額+後片付け費用等

また、損失の金額のうち災害関連支出の金額がある場合には、「雑損控除額」と「災害関連支出の金額-5万円」のいずれか多いほうの金額が控除額となります。

2)医療費控除

1.適用要件

納税者本人または同一生計親族の医療費を支払った場合に適用できます。同一生計親族に所得要件はありません。また、未払いの医療費は対象となりません(実際に支払った日の属する年分の医療費となります)が、クレジットカードにて医療費を支払ったときは、そのカードを決済した日において医療費の額に含めることになります。

2.控除額

イ.支払った医療費の額-医療費を補填する保険金等の額

ロ.10万円(総所得金額等が200万円未満の場合には、「総所得金額等の合計額×5%」)

ハ.イ.-ロ.=医療費控除額(200万円限度)

3.医療費控除の対象となるものの具体例

  • 医師、歯科医師に対する医療費
  • 薬局からの医薬品の購入費
  • 病院等への通院費(電車・バスなど)
  • 入院費用(部屋代、食事代など)
  • あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師に対する施術費

4.医療費控除の対象とならないものの具体例

  • 人間ドックや健康診断のための費用(一定の例外を除く)
  • 美容整形手術のための費用
  • ドリンク剤、ビタミン剤などの購入費用
  • 医師や看護師に対する謝礼
  • 差額ベッド代(一定の例外を除く)、診断書作成料
  • メガネ(一定の治療用を除く)、コンタクトの購入費用

5.セルフメディケーション税制

納税者本人または同一生計親族が特定一般用医薬品等(ドラッグストアなどの領収書に★マークや但書などがされているもの)を購入し、かつ、その年中に健康の保持増進・疾病の予防への取り組みとして、一定の健康診断や予防接種などを行っているときに受けられる医療費控除です。

その年中の特定一般用医薬品等の購入費の合計額のうち、1万2000円を超える部分の金額(8万8000円を限度)が控除の対象です。ただし、上記1.~4.の医療費控除との併用はできません。

3)社会保険料控除

1.適用要件

納税者本人または同一生計親族の社会保険料を支払った場合に適用できます。社会保険料の範囲は、健康保険料、国民健康保険料、介護保険料、雇用保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料などです。給与などから控除される場合を含み、未払いの社会保険料は対象となりません。

2.控除額

支払った金額

4)小規模企業共済等掛金控除

1.適用要件

小規模企業共済等掛金を支払った場合に適用できます。小規模企業共済等掛金の範囲は、小規模企業共済法の共済契約の掛金、確定拠出年金法の個人型年金加入者掛金、心身障害者扶養共済制度の掛金です。未払いの小規模企業共済等掛金は対象となりません。

2.控除額

支払った金額

5)生命保険料控除

1.適用要件

一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料を支払った場合に適用できます。ただし、保険金受取人は納税者本人または親族とするものに限り、年金受取人は納税者本人または配偶者とするものに限ります。未払いの保険料は対象となりません。

2.控除額

生命保険料の控除額は次の通りです。

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旧契約分と新契約分の両方を適用する場合、旧契約分と新契約分のそれぞれの計算を行い、控除額を合算しますが、一般生命保険料と個人年金保険料の控除額の上限はそれぞれ5万円となります。

また、一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の3つを合わせた控除額の上限は12万円です。

6)地震保険料控除

1.適用要件

納税者本人または同一生計親族の、居住用家屋や家財の地震などによる損害を保険目的とする地震保険料を支払った場合に適用されます。地震などによる損害とは、地震・噴火・津波を直接の原因とする火災、損壊、埋没、流失によるものをいいます。未払いの保険料は対象となりません。また、旧長期損害保険契約の損害保険料も地震保険料控除の対象となります。

2.控除額

支払った金額(地震保険の場合は、5万円限度。旧損害保険契約(2006年12月31日以前の契約で一定の損害保険)の場合は、1万5000円限度)

7)寄附金控除

1.適用要件

特定寄附金を支払った場合に適用されます。特定寄附金の具体例は次の通りです。未払いの寄附金は対象となりません。

  • 国または地方公共団体に対する寄附金
  • 公益社団法人、公益財団法人等に対する寄附金のうち財務大臣が指定したもの
  • 日本学生支援機構・日本赤十字社・社会福祉法人・学校法人等に対する寄附金(学校の入学に関するものは除く)
  • 認定特定非営利活動法人に対する寄附金
  • 政党等に対する寄附金で、公職選挙法または政治資金規正法により報告されたもの
  • 特定新規中小会社への払い込みにより取得した株式の取得金額(エンジェル税制、限度額800万円)

2.控除額

特定寄附金の額(総所得金額等の合計額×40%を限度)-2000円=寄附金控除額

3 人的所得控除について説明

1)障害者控除

1.適用要件

納税者本人、同一生計配偶者や扶養親族が障害者である場合に適用できます。同一生計配偶者とは同一生計の配偶者のうち、合計所得金額が48万円以下である人をいいます。扶養親族とは同一生計の親族等(配偶者を除く)のうち、合計所得金額が48万円以下である人をいいます。障害者とは、障害者手帳の交付を受けているなど精神または身体に障害がある一定の人をいいます。

2.控除額

1人につき27万円(特別障害者は40万円、特別障害者で同居の同一生計配偶者または扶養親族がいる場合は75万円)。なお、特別障害者の具体例は次の通りです。

  • 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態にある人
  • 身体障害者手帳に1級または2級の記載がある人
  • 常に就床を要し、複雑な介護を要する人

2)ひとり親控除

1.適用要件

納税者本人がひとり親である場合に適用されます。

2.ひとり親の意義(次の要件の全てに該当する人をいう)

  • 夫または妻と死別または離婚しているか生死不明、または未婚である人(事実婚の人を除く)
  • 総所得金額等が48万円以下である同一生計の子がいる人
  • 納税者本人の合計所得金額が500万円以下である人

3.控除額

35万円

3)寡婦控除

1.適用要件

納税者本人が寡婦である場合に適用されます。上記2)のひとり親に該当しない女性で、一定の要件に該当する人が対象です。ひとり親控除と混同されやすいですが、大きな違いは、

寡婦控除が過去に結婚をしていることを前提としている一方、ひとり親控除は結婚の有無を前提としていない点や、寡婦控除は女性のみが対象ですが、ひとり親控除は男性・女性ともに対象となっている点

です。

2.寡婦の意義(次のいずれかの要件に該当する人をいいます)

  • 夫と離婚し、その後婚姻をしていない人のうち、扶養親族(障害者控除参照)がいる人で、合計所得金額が500万円以下である人
  • 夫と死別し、その後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人のうち、合計所得金額が500万円以下である人

3.控除額

27万円

4)勤労学生控除

1.適用要件

納税者本人が勤労学生である場合に適用となります。勤労学生とは働きながら、所定の学校に通っている学生のうち、合計所得金額が75万円以下である一定の人をいいます。

2.控除額

27万円

5)配偶者控除

1.適用要件

控除対象配偶者がいる場合に適用できます。控除対象配偶者とは同一生計配偶者(障害者控除参照)のうち、納税者本人の合計所得金額が1000万円以下の場合の配偶者をいいます。

2.控除額

配偶者控除の金額は次の通りです。

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なお、老人控除対象配偶者は、控除対象配偶者のうち、年齢が70才以上の人をいいます。

6)配偶者特別控除

1.適用要件

同一生計配偶者(障害者控除参照)で、合計所得金額が48万円超133万円以下の人がいる場合に適用できます。ただし、納税者本人の合計所得金額が1000万円を超える場合には、配偶者特別控除の適用はありません。

2.控除額

配偶者特別控除の金額は次の通りです。また、納税者本人の合計所得金額が900万円超950万円以下、950万円超1000万円以下の場合には、配偶者特別控除額が段階的に縮小されます。

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7)扶養控除

1.適用要件

控除対象扶養親族を有する場合に適用となります。

2.扶養親族の種類

イ.控除対象扶養親族

扶養親族(障害者控除参照)のうち、年齢が16歳以上の人をいいます。

ロ.老人扶養親族

控除対象扶養親族のうち、年齢70歳以上の人をいいます。

ハ.特定扶養親族

控除対象扶養親族のうち、年齢19歳以上23歳未満の人をいいます。

ニ.同居老親等

同居している老人扶養親族のうち、納税者本人または配偶者の父母・祖父母をいいます。

3.控除額

扶養親族の態様別控除額は次の通りです。

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8)基礎控除

1.適用要件

合計所得金額が2500万円以下の納税者本人が適用できます。

2.控除額

基礎控除額は次の通りです。

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以上(2024年12月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

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【人事はつらいよ】妊娠した女性社員を気遣って業務を軽くしたのにマタハラ?

1 体調を気遣って業務を軽くしただけなのに……

A課長は、部下の女性社員Bさんから「妊娠したので、いずれ産休(産前・産後休業)をいただくことになります。日程は改めてご相談します」と報告を受けました。A課長は「Bさんがいつ休んでもいいようにしなければ」と部署内の業務体制を見直し、ある日、Bさんに言いました。

「Bさんの担当業務は他の社員に割り振ることにしたから、今日からは負担の少ない簡単な業務だけやってくれればいいよ。いつ休んでも大丈夫だから、遠慮なく言ってね」

しかし、Bさんの反応は、A課長の思っていたものとは違いました。

「課長、妊娠したとは言いましたが、私は働ける状態です! なぜ私に何の相談もなく、仕事を取り上げてしまうんですか? 産休を取られると迷惑だから、嫌がらせをしているんですか? それってマタハラ(マタニティハラスメント)です!」

A課長は釈然としません。

「Bさんを気遣っただけなのに、なぜマタハラなんて言われなきゃいけないんだ? 無理に働いておなかの子に何かあったら、それこそ問題じゃないか。納得いかない……」

2 就業に支障がない状態で業務を変更すると、マタハラ?

「マタハラ(マタニティハラスメント)」とは、

女性社員の妊娠・出産・育児に関する嫌がらせのこと

です。法的には、男性社員の育児に関する嫌がらせ「パタハラ(パタニティハラスメント)」や、介護に関する嫌がらせ「ケアハラ(ケアハラスメント)」を含めた、

「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント」

の一種で、会社は男女雇用機会均等法と育児・介護休業法にのっとって、これらのハラスメントを防止する義務があります。

マタハラ、パタハラ、ケアハラは、

  • 制度等の利用への嫌がらせ型(産休などを利用する(した)ことによる嫌がらせ)
  • 状態への嫌がらせ型(妊娠などによって就業状況が変わったことによる嫌がらせ)

に分けることができ、マタハラの場合、例えば次のような言動が当てはまります。

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こうした言動のせいで、女性社員が産休などの制度を利用できなかったり、会社に居づらくなったりして就業環境が害されるとマタハラ(違法)になり、女性社員から民法に基づく損害賠償などを請求される恐れがあります。一方で、

上司などの言動が、客観的に見て業務上の必要性(業務分担や安全配慮など)に基づくものであれば、マタハラにならない

とされています。

さて、冒頭のA課長の「妊娠したBさんに、簡単な業務だけを命じる」という対応は、マタハラになるのでしょうか。内容自体は、図表の「状態への嫌がらせ型」の「2.妊娠などをしたことによる嫌がらせ」に近そうですが、A課長は妊娠したBさんを気遣っただけで、嫌がらせの意図はありません。判断が難しいですが、上の業務上の必要性の問題に照らすと、

  • Bさんが妊娠前後を通じて就業状況が変わらず就業に支障がない場合、妊娠を理由に勝手に業務を変更するとマタハラになる恐れがある(業務上の必要性がないため)
  • Bさんが妊娠してから、妊娠に由来する体調不良により早退や欠勤が続いているといった事情がある場合、業務を変更してもマタハラにならない(業務上の必要性があるため)

と考えられます。ただ、Bさんが体調不良の場合でも、「就業場所をオフィスから自宅に変更すれば、テレワークで今の業務を続けられる」ケースなどがあるので、慎重な判断が必要です。

3 女性社員と相談した上で対応すれば、基本的にOK

マタハラの問題には注意が必要な一方で、法令上、女性社員の業務内容や労働時間を必ず見直さなければならないケースというのもあります。具体的には、

  • 妊娠した女性社員から請求があった場合、軽易な業務に転換する義務(労働基準法)
  • 女性社員が妊娠中・出産後の健康管理について医師から指導を受けた場合、その指導事項を守れるよう必要な措置を講じる義務(男女雇用機会均等法)
  • 3歳未満の子を養育する社員(男性社員も含む)が請求した場合、所定外労働を免除する義務、または所定労働時間の短縮措置などを実施する義務(育児・介護休業法)
  • 小学校就学前の子を養育する社員(男性社員も含む)が請求した場合、1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働、深夜労働を免除する義務(育児・介護休業法)

などがあります。

いずれも基本的には、女性社員から請求を受けた上で対応するので、結局のところ、

妊娠・出産・育児で女性社員の業務を変更する場合、本人と相談した上で方向性を決めればトラブルになりにくい

といえます。ただし、業務を変更する場合、

降格や賃金の引き下げといった「労働条件の不利益変更」の問題

に注意が必要です。

過去に、会社が妊娠した女性社員を軽易な業務に転換した際、管理職から降格させてトラブルになった事例があります(最高裁第一小法廷平成26年10月23日判決)。最高裁判所は、

  • 原則として、妊娠中の軽易な業務への転換を理由に、降格させることは違法である
  • ただし、「当該女性社員が自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する場合」または「降格させずに業務を変更すると、円滑な業務運営や人員配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、当該措置が法の趣旨・目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき」は違法でない

との考えを示していて、この裁判では、会社が事前に「職場復帰後も女性社員を管理職に復帰させる予定がない旨」を本人に説明していなかったことなどから、降格は違法と判断されました。

つまり、会社が女性社員と業務の変更について相談する場合、

「女性社員に不利益はないか」「不利益がある場合、どのような内容なのか。また、不利益を避けられない理由は何か」などを明らかにして、本人に説明する必要がある

ということです。

近年は、育児・介護休業法の改正が続いていて、妊娠・出産・育児と仕事を両立するハードルは昔よりも下がってきています。だからこそ、会社がその両立を妨げないよう、マタハラ対策はしっかり進めておく必要があります。

以上(2024年12月更新)
(監修 弁護士 八幡優里)

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【3分で分かる個人情報保護(5)】個人データの漏えい等が発覚したら、どうすればいいの?

1 個人データの漏えい等が発覚したら関係各所に連絡、報告

個人データが漏えい、滅失、毀損してしまったときや、そのおそれがあるときに備えて、関係各所に連絡、報告できる体制を整えておく必要があります。

1)社内における報告および被害の拡大防止

責任ある立場の人に報告する手順や連絡手段の他、休日や深夜などにおける対応についても細かく定め、周知することで、誰もが同じような対応が取れるように整備することが重要です。

2)事実関係の調査、原因の究明、影響範囲の特定、再発防止策の検討および実施

一連の流れでの対応となります。再発防止策を講じるには、どうして漏えい等事案が発生したのか、何が問題だったのかなど細かく事案を調査した上で検討する必要があります。

3)個人情報保護委員会への報告および本人への通知

個人の権利利益を侵害するおそれが大きく、一定の要件に該当する漏えい等事案については、個人情報保護委員会への報告および本人への通知が義務化されたので注意が必要です(詳しくは次章をご覧ください)。

なお、ここでいう個人データの「漏えい等」とは、「漏えい」「滅失」「毀損」の3つの総称です。

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2 個人情報保護委員会へ報告しなければならない場合とは?

個人の権利利益を侵害するおそれが大きく、一定の要件に該当する漏えい等事案とは、

  1. 要配慮個人情報が含まれる個人データの漏えい等
  2. 不正に利用されることにより財産的被害が生じるおそれがある個人データの漏えい等
  3. 不正の目的をもって行われたおそれがある個人データの漏えい等
  4. 個人データに係る本人の数が1000人を超える漏えい等

のことです(「報告対象事態」といいます)。

個人情報保護委員会への報告を要する事例として次のような場合が挙げられます。

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個人情報保護委員会への報告は、「速報」と「確報」の2段構えで対応します。個人情報取扱事業者は報告対象事態を知った時点からおおむね3~5日以内に「速報」を、また、報告対象事態を知った時点から30日以内(不正の目的をもって行われたおそれがある個人データの漏えい等の場合は60日以内)に「確報」をあげなければなりません。

実際の報告は、原則として、個人情報保護委員会のホームページにある報告フォームから次の1から9までに掲げる事項を入力して行います。速報時点での報告内容については、報告をしようとする時点において把握している内容を報告すれば足ります。

  1. 概要
  2. 漏えい等が発生し、または発生したおそれがある個人データの項目
  3. 漏えい等が発生し、または発生したおそれがある個人データに係る本人の数
  4. 原因
  5. 二次被害またはそのおそれの有無およびその内容
  6. 本人への対応の実施状況
  7. 公表の実施状況
  8. 再発防止のための措置
  9. その他参考となる事項

■個人情報保護委員会「漏えい等の対応とお役立ち資料」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/leakAction/

(注)マイナンバーが含まれている場合と、そうでない場合で報告フォームの入り口が異なります。

3 本人への通知は「いつまでに」「どうやって」行う?

個人情報取扱事業者は、報告対象事態を知ったときは、本人への通知を行わなければなりません。対応内容は、個人情報保護委員会への報告とほぼ重なりますが、「いつまでに」「どうやって」の部分が異なります。

本人への通知までの時間的制限は明示されていません。具体的に通知を行う時点は、個別の事案において、その時点で把握している事態の内容、通知を行うことで本人の権利利益が保護される蓋然性、本人への通知を行うことで生じる弊害等を勘案して判断します。

また、本人への通知については、その様式は定められていません。ガイドラインでは、本人にとって分かりやすい形で通知を行うことが望ましいとされており、文書を郵便等で送付することや、電子メールを送信することによって知らせる方法が例示されています。

なお、本人へ通知すべき事項については、漏えい等報告における報告事項のうち、「概要」「漏えい等が発生し、または発生したおそれがある個人データの項目」「原因」「二次被害またはそのおそれの有無およびその内容」「その他参考となる事項」に限られます。

以上(2024年12月更新)

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【かんたん所得税(3)】計算の肝は「分離課税・総合課税」と「損益通算」

書いてあること

  • 主な読者:副業などにより所得税の確定申告が必要になった人、なりそうな人
  • 課題:「分離課税・総合課税」「損益通算」などの内容が難解で分かりにくい
  • 解決策:個別に税率が決まるものと合算し税率が決まるもの、赤字と黒字を相殺できるものとできないものがある

1 分かりにくい「分離課税・総合課税」「損益通算」

所得税の計算で重要なのは「分離課税・総合課税」「損益通算」です。所得税は、所得を10種類に区分して計算しますが、合算できる所得と合算できない所得などがあって、

所得ごとの課税方法(分離課税か総合課税)や、赤字が出た場合の取り扱い(損益通算)

が複雑です。そこで、この記事では分離課税と総合課税、損益通算について説明していきます。

2 所得の種類で異なる「分離課税」と「総合課税」

1)分離課税

分離課税とは、

他の所得と合算せず、それぞれの所得単独で課税標準(所得税計算のベースとなる金額)を計算する方法

です。所得税は、所得が高くなるほど高い税率が適用される超過累進課税が採用されているのですが、分離課税だと適用される税率が一定もしくは低くなります。

分離課税の対象となる所得は全部で7つです。どのようなモノ・サービスにかかるかでも課税方法が異なります。

1.退職所得

退職所得は、退職したときに一時に受け取る所得です。他の所得と合算せずに税額計算をすることで、低い税率により分離課税されます。

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2.山林所得

山林所得は、山林の伐採や譲渡による所得です。上記の退職所得と同様に、他の所得と合算をしないで税額計算をすることにより、低い税率により分離課税されます。

3.分離短期譲渡所得

分離短期譲渡所得は、譲渡年の1月1日時点の所有期間が5年以下の土地・建物の譲渡による所得です。この所得は、以前は短期間で土地等を転売することによる土地の高騰を防ぐために、高い税率により課税されていましたが、現在は所得税・復興特別所得税30.63%、住民税9%により分離課税されます。

4.分離長期譲渡所得

分離長期譲渡所得は、譲渡年の1月1日時点の所有期間が5年超の土地・建物の譲渡による所得です。この所得は、所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%により分離課税されます。

5.株式等の譲渡に係る譲渡所得

株式等の譲渡に係る譲渡所得は、株式等の譲渡による所得です。株式等には、株式や社債、国債や投資信託の受益権などの金融商品が含まれます。この所得は、所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%により分離課税されます。2016年から「上場株式等に係る譲渡所得等の金額」と「一般株式等(上場株式等以外の株式)に係る譲渡所得等の金額」という別個の課税標準とされています。

6.先物取引に係る雑所得等

先物取引に係る雑所得等は、外国為替証拠金取引(いわゆるFX取引)などの一定の先物取引の差金等決済による所得で、事業所得の金額、譲渡所得の金額、雑所得の金額の合計額となります。他の所得と区分し、所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%により分離課税とされます。

7.源泉分離課税

通常の利子所得、配当所得の一部については、その支払いを受ける際、一定の金額が源泉徴収されます。これらについては、その源泉徴収だけで納税が完結する源泉分離課税とされ、他の所得と合算をせず、確定申告の必要もありません。

2)総合課税

総合課税とは、

分離課税以外の所得について、課税標準の計算上合算し、「総所得金額」とする方法

です。また、「総合長期譲渡所得」と「一時所得」については、2分の1相当額を総所得金額に計上します。なお、総合長期譲渡所得とは、所有期間が5年超の資産(土地・建物や株式以外の資産)の譲渡による所得をいいます。

3)所得計算の具体例

2024年分の個人所得が次の通りである場合で見てみましょう。

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2024年分の課税標準の計算は次の通りです。なお、利子所得の金額は原則として源泉分離課税のため計算に含める必要はありません。

  • 総所得金額
    =150,000円(配当所得の金額)+6,458,000円(事業所得の金額)+400,000円(総合短期譲渡所得の金額)+780,000円(総合長期譲渡所得の金額)×1/2+250,000円(一時所得の金額)×1/2+70,000円(雑所得の金額)
    =7,593,000円

  • 分離長期譲渡所得の金額=5,733,000円

3 赤字の所得が出たら、黒字の所得と相殺する「損益通算」

1)損益通算とは

損益通算とは、赤字の所得と黒字の所得の相殺(通算)です。ただし、損益通算が認められる所得は限定されています。具体的には、不動産所得、事業所得、山林所得および譲渡所得(総合課税される一定の譲渡所得のみ)の4つです。

ただし、分離長期譲渡所得または分離短期譲渡所得の金額の計算上譲渡損失の金額が生じた場合には、その損失の金額を他の土地や建物の譲渡所得の金額から控除(以下「内部通算」)できますが、その控除をしてもなお控除しきれない損失の金額は、事業所得や給与所得など他の所得と損益通算することはできません。

また、損益通算しても相殺しきれない赤字を「純損失の金額」といい、一定の要件の下に翌年以後3年内に繰り越すことができます。純損失の繰越控除は、被災事業用資産の損失など白色申告者にも適用される場合を除き、青色申告者の特典です。

2)具体例

2024年分の個人所得が次の通りである場合で見てみましょう。

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2024年分の課税標準の計算は次の通りです。なお、利子所得の金額は原則として源泉分離課税のため計算に含める必要はありません。

1.損益通算

不動産所得の損失は、譲渡所得と一時所得を含めない経常所得(配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、雑所得)の中で損益通算をします。

230,000円(配当所得の金額)+4,891,000円(給与所得の金額)

-600,000円(不動産所得の金額)

=4,521,000円

譲渡所得の損失は、まず譲渡所得の中で内部通算をして、それで通算しきれないときは一時所得と損益通算します。分離長期譲渡所得の金額は、通算の対象となりません。

640,000円(総合長期譲渡所得の金額)-110,000円(総合短期譲渡所得の金額)

=530,000円

2.課税標準の金額

総所得金額の算出に当たり、総合長期譲渡所得の金額と一時所得の金額は、損益通算の後に2分の1を乗じます。

総所得金額=4,521,000円+530,000円×1/2+140,000円×1/2=4,856,000円

4 損益通算の例外

1)生活に通常必要でない資産の譲渡損について

本来、総合課税される譲渡所得の損失は損益通算の対象となりますが、生活に通常必要でない資産(時価30万円を超える宝石、書画、骨董品、美術工芸品、会員権など)の譲渡損は、損益通算できません。

2)不動産所得の損失について

不動産所得の損失は、本来損益通算の対象となりますが、その損失のうち「土地を取得するための借入金の利子」などに相当する金額は、損益通算できません。

3)上場株式等の譲渡損と配当所得について

上場株式等に係る配当等について申告分離課税を選択した場合には、上場株式等の譲渡損を上場株式等に係る配当所得と損益通算できます。

4)居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除について

2025年12月31日までに旧居宅を売却して新たに新居宅を購入し、旧居宅の譲渡による損失が生じた場合です。一定の要件(所有期間が5年を超えることなど)を満たしたら、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得と損益通算できます。さらに、損益通算しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰越控除できます。

5)特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除について

2025年12月31日までに住宅ローンのある居宅を住宅ローンの残高を下回る価額で売却し、譲渡損失が生じた場合です。一定の要件(所有期間が5年を超えることなど)を満たしたら、その譲渡損失をその年の給与所得や事業所得など他の所得と損益通算できます。さらに、損益通算しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰越控除できます。

以上(2024年12月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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画像:unsplash

「ガンプラ」人気で市場が拡大! プラモデルの需要動向

1 プラモデル(特にガンプラ)の需要について

プラモデルは、コロナ禍に伴い外出を控えた人々が、家で楽しく過ごすための手段(いわゆる「巣ごもり需要」)の1つとして注目され、現在も市場規模が拡大しています。

実際の乗り物やアニメのキャラクターなどの様々なプラモデルがある中でも、「機動戦士ガンダム」のアニメや漫画、ゲームに登場するモビルスーツやモビルアーマーと呼ばれるロボットや戦艦などを立体化した「ガンプラ」は、次のような特徴があり、人気があります。

  • スナップフィット:パーツ同士を組み立てる際に、特別な工具や接着剤を使わずに組み合わせることが可能で、手を汚さずに組み立てできる
  • 多色成形:1枚のランナー(パーツが付いている枠)に数種類の色を同時に再現できる。そのまま組み立てるだけでカラフルな仕上がりになるため、塗装する必要がない
  • ブランドの豊富さ:スケール(大きさ)やコンセプトに合わせて複数のブランドがあり、組み立て時間や難易度を考慮しながら商品を選ぶことができる

BANDAI SPIRITS(東京都港区)が2023年12月に、18~59歳のプラモデル・フィギュアユーザー1000人を対象に行ったインターネット調査「BANDAI SPIRITS大人アンケート調査」によると、プラモデル・フィギュアを購入したきっかけとして多かったのは、

「好きなアニメやマンガのキャラクターに興味を持ったから」「自分1人でも始められるから」「作る楽しみや作りごたえがあると思ったから」など

で、好きな作品の立体物を自分の手で組み立てられる楽しさに需要があるとうかがえます。

■BANDAI SPIRITS「BANDAI SPIRITS大人アンケート調査」■

https://www.bandaispirits.co.jp/press/2024/240220.php

2 プラモデルの出荷金額などの動向

1)プラスチックモデルキット(プラモデル)製造業の産出事業所数・出荷金額など

プラスチックモデルキット製造業の産出事業所数と出荷金額の推移、並びに都道府県別の事業所数と出荷金額は次の通りです。

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また、プラスチックモデルキットの生産、販売数量、販売金額、月末在庫の推移は次の通りです。

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プラスチックモデルキットの産出事業所数と出荷金額は、静岡県が日本一となっています。静岡県は、プラモデル産業の源流となる木製模型飛行機の製造が盛んで、戦後木製からプラスチック製へと素材を変え、自動車・飛行機などの模型を中心に生産を拡大。その後も、スロットレーシングカーやキャラクター商品などをヒットさせ、プラモデルの一大産地となっています。

ガンプラも、静岡市葵区にある「バンダイホビーセンター」が生産拠点となっており、BANDAI SPIRITSによると、1980年の「1/144ガンダム」から始まり、2024年3月末時点までで約7億8745万個のガンプラを生産しています。また、今後の安定的な生産体制を確保するため、バンダイホビーセンター本館に近接する敷地内で新工場を建設する計画もあり、2026年度に新工場が本格稼働した際には、2023年度と比べて約35%の増産が可能になる見込みだそうです。

2)売上高の推移

ガンダムシリーズ(ガンプラ以外の商品・サービスを含む)の売上高の推移は次の通りです。

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ガンダムシリーズのグループ全体の売上高は、2020年3月期の781億円から、2024年3月期に1457億円と、5年間で187%も成長しています。その背景には、国内外で映像配信プラットフォームが普及し、多言語対応も進んだことで、ガンダムシリーズの認知度が向上し、新規ファンの獲得につながったことなどがあるようです。

また、海外展開も進んでおり、BANDAI SPIRITSのプレスリリースによると、2020年の発売40周年の時点で、ガンプラの年間販売額の5割が海外での売上とされています。組み立て体験会や現地モデラーによるプラモデル講習会などで認知を拡大させており、特に北米と中国市場を重点に置いているといいます。

3 プラモデルの製造・販売ルートについて

1)プラモデルの製造企業の事例

日本国内における主なプラモデルの製造企業を紹介します。

1.BANDAI SPIRITS(東京都港区)

プラモデル、フィギュア・ロボット、一番くじ、アミューズメント景品などの企画・開発・製造・販売を行っており、ガンプラは同社が手掛けています。

ガンプラ以外のプラモデルでは、「BEST HIT CHRONICLE」というシリーズ名で日清食品のカップヌードルや、ソニーのPlayStation、SEGAのセガサターンをプラモデルで再現した商品があります。

■BANDAI SPIRITS■

https://www.bandaispirits.co.jp/

2.壽屋(東京都立川市)

国内、海外のコンテンツ権利者から、人気アニメ、ゲーム、映画のキャラクターなどのライセンスを取得し、プラモデルやフィギュアなどの製造・販売を行っています。顧客のニーズを素早く社内へ反映できる「製販一貫体制(商品の開発から販売までを全て自社のみで担う体制)」を大きな強みにしており、国内に直営店が3店舗ある他、米国にも事業所を置いています。

また、創業地である立川市の活性策として、マラソンへの協賛や、社員が小学校に出向いてプラモデルの作り方を教える「出張プラモデル教室」なども実施しています。

■壽屋■

https://company.kotobukiya.co.jp/

3.青島文化教材社(静岡県静岡市)

2024年10月31日で創業100周年を迎え、乗用車・トラック・スーパーカーなどの自動車や艦船模型のプラモデルを中心に製造・販売を行っています。塗装や接着剤不要で組み立てることができ、安価な「ザ・スナップキット」や、群馬電機(群馬県みどり市)が手掛ける販促機器「呼び込み君」をプラモデル化した「スーパーサウンド『呼び込み君』ミニ」などが人気です。

また、ベネリックデジタルエンターテインメント(東京都千代田区)が運営するメタバース(インターネット上の仮想空間)の商業施設「そらのうえショッピングモール」に開設するホビーショップの第1弾に、同社が採用されています。実店舗ではスペースの制約から売り場に全ての商品を並べることが難しいですが、メタバースであればこうした問題も解消されます。

■青島文化教材社■

https://www.aoshima-bk.co.jp/

4.タミヤ(静岡県静岡市)

車やバイク、飛行機などのスケールモデル(縮尺に基づいて忠実に再現した模型)を製造・販売する模型メーカーです。フラッグシップ拠点として、東京都港区に「TAMIYA PLAMODEL FACTORY TOKYO」を2024年5月にオープンし、小学生向けに、ものづくり・プログラミングの学びを提供する「タミヤロボットスクール」などのイベントを展開しています。

■タミヤ■

https://www.tamiya.com/japan/index.html

5.ハセガワ(静岡県焼津市)

飛行機、船、自動車などの乗り物、架空のキャラクターモデル、輸入品プラモデルなどの販売を手掛けており、特に飛行機や旧車のスケールモデルに定評があります。入門向けプラモデルとして、接着剤不要/接着剤必要/本格派の3段階のシリーズをそろえており、接着剤不要のシリーズには乗り物だけでなく、オフィス家具やレトロ自販機のミニチュアなどユニークな商品もあります。

■ハセガワ■

http://www.hasegawa-model.co.jp/

2)ガンプラの製造工程について

BANDAI SPIRITSのウェブサイトによると、ガンプラ製造工程の流れは次の通りです。

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3)プラモデルの流通経路について

プラモデルの流通経路の例は次の通りです。

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メーカーが問屋(メーカーから商品を仕入れて小売業へ販売する事業)を通じて玩具店、家電量販店、模型店などへ提供する形態もありますが、インターネット通販サイトによる販売も今では盛んになっています。

また、ガンプラは、玩具店や家電量販店の玩具コーナーでの販売に限らず、Bandai Namco Groupの公式通販サイトである「プレミアムバンダイ」や、ガンプラの総合施設「ガンダムベース」など、自社直営での販売にも注力しています。

4 プラモデル業界の外部環境分析

プラモデル業界を取り巻く環境について、ビジネスフレームワークのPEST分析を基に触れていきます。

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政治の面では、政府が製造業を対象に、再生プラスチックの使用拡大に向けた計画を策定するよう義務づける方針を固め、「資源有効利用促進法」の改正に向けた検討を始めており、今後、パーツやランナーの再利用に向けた動きが進むことが想定されます。

経済の面では、コロナ禍による巣ごもり需要がきっかけでのプラモデルブーム再燃をはじめ、インバウンド消費の拡大や、キダルト層を取り込むための商品展開などによって、市場が拡大しています。一方で、原材料価格や包装資材の高騰、物流コストの上昇を受けて、値上げを実施する動きもあります。

社会の面では、プラモデルは個人の趣味としてだけでなく、ものづくりの楽しさを学ぶために学校の授業で採用されたり、医療機関でリハビリプログラムに取り入れられたりするなど、利用シーンや用途が拡大しています。その一方で、需要に供給が追い付かない背景から、ネットオークションやフリマサイトでの高額転売が問題になっています。

技術の面では、ガンプラは他のプラモデルと比べて色分けや組み立てやすさの面で、他のプラモデルよりも手に取りやすいメリットがあります。また、イベントなどを通じてランナーや海洋プラスチックごみを回収し、商品の一部、もしくは全体にリサイクル素材を使用したプラモデルも製造・販売しています。

5 参考:紙資材について

ここでは、プラモデルの箱に使われる「色板紙」のデータを取り上げます。

黄・チップ・色板紙の生産数量、販売数量、販売金額、月末在庫などの推移は次の通りです。

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以上(2024年12月作成)

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画像:Sutthisak-Adobe Stock

【人事はつらいよ】病気の社員をサポートしたいのに、社内での情報共有が違法?

1 社員の体調を思えばこそ、情報共有したいのに……

最近、元気がないAさん。上司のB課長が心配して理由を聞いてみました。最初は「大丈夫です」としか言いませんでしたが、B課長が「でも体調が悪そうだよ?」と聞くと、Aさんはしばらく沈黙した後、小さな声で答えました。「実は○○という病気なんです。でも重い病気じゃないので大丈夫です。放っておいてください」

ある日、出張に出ることになったB課長は、Aさんの先輩であるCさんに伝えました。

「ここだけの話だけど、Aさんが○○という病気らしい。Cさん、私が出張に出ている間、Aさんのことを気遣ってあげてくれ。具合が悪そうだったら早めに帰すようにね」

数日後、B課長が出張から帰ると、Aさんが詰め寄ってきました。どうやらB課長の出張中、Cさんが、体調の優れないAさんを帰そうとした際に、「B課長から病気については聞いているから」と口を滑らせてしまったようです。

「なんで病気のことを勝手にCさんに話したんですか? 知られたくなかったのに……。個人情報を勝手に話すなんて非常識です!」

B課長はAさんの気持ちも分かる一方で、どこか釈然としません。

「病気が機微な情報なのも、知られたくないのも分かる。でも、私が出張中、Aさんに万が一のことがあったら困るから、Cさんにだけ伝えてフォローをお願いしたんだ。それもダメなのか? 個人情報は社員の健康よりも大事なの?」

2 個人情報と社員の健康、結局どちらが優先?

個人情報保護法では、

「要配慮個人情報」という取り扱いに注意を要する極めて機微な個人情報については、原則として本人の許可を得ずに、第三者に提供してはならない

とされています。社員の健康に関する情報であれば、次のようなものが要配慮個人情報に該当します。

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一方、労働契約法には、

「安全配慮義務」といって、社員が安全で健康に働けるよう配慮すべきという会社の義務

が定められています。体調の優れない社員を早く帰らせたり、軽い業務に転換させたりするのもこの義務の一環で、当たり前ですが、見て見ぬふりをするといった対応は許されません。

冒頭のAさんの事例は、詰まるところ「要配慮個人情報の保護と安全配慮義務はどちらが優先されるのか」という問題なのですが、ざっくり言うと、

どちらも同じくらい重要で、原則、両立させなければならない

ということになります。

3 社員の許可を得て、必要最小限の情報のみを共有する

社員の病気について本人の許可なく、第三者に提供していいのは、例えば、

社員が病気で倒れ、医師に病名を告げないと生命の危険がある

など、緊急性の高いケースに限定されます。逆にこうしたケースでなければ、本人の許可なく、第三者に話すべきではありません。ですから、冒頭の「B課長がAさんの許可なく、病名をCさんに伝える」という対応は、たとえAさんのためであっても法令違反になる可能性があります。

では、要配慮個人情報の問題をクリアしつつ、安全配慮義務を果たすにはどうすればよいのでしょうか。ポイントは、

社員本人の許可を得て、業務をサポートする上で必要最小限の情報のみを共有すること

です。細かい説明は一旦置いておいて、まずは図表2を見てください。冒頭のB課長が、Aさんからサポートに必要な情報をヒアリングする際の会話の例です。

画像2

図表2の会話の赤字部分に注目してください。重要なのは次の3点です。

  1. どんな病気かではなく、労務を提供できる状況かを確認することを意識する
  2. 会社には安全配慮義務、社員には自己保健義務があることを伝える
  3. 必要最小限の情報を、必要最小限の社員にのみ共有する

1.どんな病気かではなく、労務を提供できる状況かを確認することを意識する

図表2では、B課長がAさんの病気の話を聞いて、まず「仕事をするのに支障がないか」を確認しています。前述した通り、要配慮個人情報は極めて機微な情報です。「どんな病気か」という視点で情報を収集しようとすると、不要な情報まで詮索してしまう恐れがあるので、「労務を提供できる状況かを確認する」という意識で、必要最小限の情報のみを収集します。

2.会社には安全配慮義務、社員にも自己保健義務があることを伝える

図表2では、仕事への支障について話したがらないAさんに対し、B課長が安全配慮義務と自己保健義務の存在を伝えています。要配慮個人情報は、本人の許可なく収集できないので、自発的に話してもらう必要がありますが、「話したくないなら話さなくていい」というスタンスだと情報を得られないので、「社員の健康を守る」ことに対する会社の本気度を伝えます。

3.必要最小限の情報を、必要最小限の社員にのみ共有する

図表2では、B課長が「Cさんには病気のことを話さず、Aさんをフォローする上で必要な措置だけを話す」と言っています。社員のサポートに支障がなければ、病気に関する情報は話しません。必要な措置について共有する相手も、社員のフォローに関わる人だけに限定します。共有する情報量や相手が増えてしまうと、社員の病気に対する臆測が飛び交ったり、腫れ物に触るような雰囲気が広がったりする恐れがあるからです。

今回は少し難しい問題を取り上げました。社員の健康を守ることは会社の義務ですが、そのために知られたくない個人情報が周囲に伝わり、会社に居づらくなってしまうようなことは避けなければなりません。逆もまたしかりです。

以上(2024年12月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 平田圭)

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画像:metamorworks-shutterstock

【朝礼】来たる巳年は「周囲を呑み込む気迫」を持とう

【ポイント】

  • 蛇には、「たとえ小さな存在であっても、自分は人には負けない」という気迫がある
  • 「自分が正しいと思うことについては、堂々と主張する気迫」を持ってほしい
  • 仮に主張が受け入れられなくても、「自分に何が足りなかったのか」を学ぶことができる

皆さん、おはようございます。12月になり、今年も残すところあとわずかです。少し気が早いですが、来年の干支は「巳(み)」、つまり蛇です。蛇というと、おどろおどろしい模様の毒蛇などをイメージして、身構えてしまう人もいるかもしれません。ですが、蛇は嫌われることも多い一方、多くの土地で、霊性をそなえた神聖な存在として扱われてもきたのです。

そんな蛇にまつわることわざに「蛇は寸にして人を呑(の)む」というものがあります。「蛇は一寸ほどの小さなものでも、すでに人を呑もうとする気迫がある」という意味です。本来は、優れた人物が、幼い頃から抜きんでた才能を示すことの例えとして使われるのですが、今回はそこではなく、「一寸の蛇」という部分に注目してください。

一寸は約3センチメートル、人を呑み込めるような大きさではありません。ですが、それでも蛇は「たとえ小さな存在であっても、自分は人には負けない」という気迫を持ち、堂々としているのです。どうでしょう、少し蛇に対するイメージが変わってきたのではないですか?

さて、私が来年、皆さんにぜひ意識していただきたいのが、「周囲を呑み込む気迫」を持つことです。皆さんの誰もが、上司や顧客の意見、会議の雰囲気などに流され、自分の言いたいことを主張できずに終わってしまった経験があると思います。かくいう私自身にもあります。

ですが、周囲に流されるばかりでは、皆さんの成長はそこで止まってしまします。だからこそ、自分が正しいと思うことについては、勇気を出して堂々と主張してほしいのです。もちろん仕事ですから、単なるわがままになってはいけませんし、皆さんの主張が常に受け入れられるとは限りません。ですが、それもまた皆さんが「自分に何が足りなかったのか」を学び、成長するチャンスです。

蛇は、脱皮を繰り返すことから「変化と再生」の象徴とされています。「自分はこれを成し遂げたい」という気迫を持って仕事に臨み、失敗してもめげずに立ち上がる。2025年はそんな「挑戦を繰り返す年」にしてください。来年、気迫のある皆さんに会えるのを楽しみにしています。

以上(2024年12月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【かんたん所得税(2)】利子や配当など10種類ある所得の概要とそれぞれの課税方法

書いてあること

  • 主な読者:所得税の「所得」について確認したい人
  • 課題:不動産の売買など、これまでとは違う所得があるが、どうしたらよいか分からない
  • 解決策:所得には10種類あるので、自分の所得が何に該当するかを確認する

1 あなたの所得は何所得? 10種類ある所得。

所得を得る方法は実にさまざまです。そこで所得税では、所得を次の10種類に区分し、それぞれの性質に見合った形で納付税額を計算します。

利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得、一時所得、雑所得

保有している不動産を売却した、保険金の満期返戻金を受け取った、個人事業を始めたなど、人生のうちに幾度とないような所得が発生したときには、まず自身の収入がどの所得に該当するのか認識することがはじめの一歩です。

この記事では、この10種類ある所得の具体例を確認した上で、計算方法や課税方法について説明します。自身の所得に該当する(該当しそうな)項目を抜粋して読んでみてください。

2 利子所得

1)利子所得とは

利子所得には、次のようなものが該当します。

  • 公社債(国債、地方債、社債)の利子
  • 預貯金(銀行預金、JA貯金など)の利子
  • 合同運用信託(金銭信託、貸付信託など)の収益の分配
  • 公社債投資信託(中期国債ファンドなど)の収益の分配
  • 公募公社債等運用投資信託の収益の分配

2)非課税とされるものの代表例

1.障害者等のマル優などの利子

障害者等については、所定の手続きを取れば、元本350万円以下の少額預貯金等の利子、元本350万円以下の公債の利子が非課税となります。

2.財形貯蓄の利子のうち一定のもの

給与所得者の勤労者財産形成貯蓄(財形貯蓄)のうち、財形住宅貯蓄と財形年金貯蓄については、合わせて元本550万円までの利子が非課税となります。

3.納税準備預金の利子

納税準備預金が、税金の納付を目的として引き出された場合の利子が非課税となります。

3)利子所得の金額

利子所得の金額は、受け取った利子の額(源泉徴収前の金額)となります。

4)課税方法

利子所得になるものは、国内所得の場合、その支払いを受けるときに20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率で源泉徴収され、それで所得税や住民税の課税関係が完結するため、確定申告をする必要はありません。これを、源泉分離課税といいます。

なお、国債、地方債、公募公社債など一定の特定公社債等の利子は源泉分離課税の対象から除外され、原則として申告分離課税の対象となっています。申告分離課税とは、他の所得とは分離して個別で課税計算をすることをいいます。

3 配当所得

1)配当所得とは

配当所得には、次のようなものが該当します。

  • 法人から受ける剰余金、利益の配当
  • 剰余金の分配(出資に係るものに限ります)
  • 基金利息
  • 投資信託(公社債投資信託及び公募公社債等運用投資信託を除きます)の収益の分配
  • 特定受益証券発行信託の収益の分配

2)非課税とされるものの代表例

1.オープン型の株式投資信託の特別分配金

これは、事実上元本の払い戻しに相当するため非課税となります。

2.障害者等のマル優などの収益の分配

少額預貯金などの利子には、一定の株式投資信託の収益の分配も含まれます。

3.財形貯蓄に係る収益の分配のうち一定のもの

財形貯蓄の利子には、一定の株式投資信託の収益の分配も含まれます。

4.非課税口座内の少額上場株式などに係る配当所得(新NISA:成長投資枠)

年間240万円を上限として非課税口座で取得した上場株式等の配当などは、非課税となります。また、下記5.つみたて投資枠との併用が可能です。なお、一生涯で非課税とされる限度額が設定されており、1200万円(成長投資枠の非課税限度額)となっています。

2024年1月に、上記の上限額の拡充や、非課税となる保有期間が廃止され恒久化されるという改正が行われました。2023年以前にNISA口座を保有している人については、口座を開設している金融機関にて自動的に新NISA口座が開設されているため、上記の非課税枠が適用されます(下記5.について同じ)。

5.一定の投資信託に係る配当所得(新NISA:つみたて投資枠)

年間120万円を上限として購入した投資信託の分配金などは、非課税となります。なお、一生涯で非課税とされる限度額は1800万円(上記4.成長投資枠と併用した場合も、限度額は同じ)です。

6.未成年者口座内の少額上場株式などに係る配当所得(ジュニアNISA)

18歳未満の居住者が、年間80万円を上限として未成年者口座で取得した上場株式等の配当などは、最長5年間非課税となります。

なお、2024年以降は制度が廃止されるため、新規の口座開設はできませんが、現時点でジュニアNISAの口座を持っている場合には、本人が成人(満18歳)になるまでは上記の非課税枠が適用されます。

3)配当所得の金額

配当所得の金額は次のように計算します。

配当所得=収入金額(受け取った配当の源泉徴収前の金額)-負債の利子の額

4)課税方法

1.上場株式等(持株割合3%未満のもの)の配当など

その支払いを受けるときに20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率により源泉徴収されます。配当所得として確定申告をする場合、この源泉徴収税額は前払税額として精算されますが、上場株式等の配当などについては、その金額にかかわらず確定申告をしなくてもよいという特例があります。この場合には、その源泉徴収税額だけで所得税と住民税の課税関係が完結します。

2.その他の株式等の配当など

その支払いを受けるときに所得税・復興特別所得税が20.42%の税率により源泉徴収されます。配当所得として確定申告をする場合、この源泉徴収税額は前払税額として精算されますが、年間の配当金が10万円以下の少額配当については確定申告をしなくてもよいという特例があります。この場合には、その源泉徴収税額だけで所得税の課税関係が完結します(住民税の徴収は行われないため、金額に関係なく住民税の確定申告は必要になります)。

3.私募公社債等運用投資信託および特定目的信託(社債的受益証券)の収益の分配

その支払いを受けるときに20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率により源泉徴収され、その源泉徴収税額だけで所得税や住民税の課税関係が完結しますから、確定申告をする必要はありません(源泉分離課税)。

4 不動産所得

1)不動産所得とは

不動産所得とは、不動産、不動産の上に存する権利(借地権など)、船舶・航空機の貸付けによる所得です。具体的には、貸家やアパートの家賃収入、駐車場の地代収入などが該当します。不動産所得はあくまで不動産などを貸し付けた場合の所得で、不動産を売却した場合は譲渡所得となります。

2)不動産所得の金額

1.総収入金額

家賃収入、地代収入などを計上します。原則として、契約上の支払日に計上します。ただし、継続記帳等による計算を行っている場合を除き、翌月分の家賃地代を当月末までに受け取る契約となっている場合は、翌年1月分の家賃地代を今年の総収入金額に計上するので注意しましょう。また、原則として全額返還するものとされる敷金や保証金などは預り金であるため、総収入金額に計上しません。

2.必要経費

貸し付けている不動産に係る固定資産税、修繕費、損害保険料、減価償却費、借入金の利子、管理費などを計上します。

3.青色申告特別控除

青色申告者は、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額を計算するときに、青色申告特別控除額として10万円(原則)または55万円(特例。e-taxで申告する場合等は65万円)を差し引くことができます。55万円の特例は、「不動産所得又は事業所得を生ずべき業務を事業的規模(貸家ならおおむね5棟以上、アパート等ならおおむね10室以上など)で営んでいることと、取引内容を詳細に帳簿に記録していること」などが要件とされ、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額の順で合計55万円(e-Taxを使用して確定申告および青色申告決算書を提出期限までに提出する場合などは65万円)を上限として控除します。

4.不動産所得の金額

不動産所得の金額=総収入金額-必要経費-青色申告特別控除額

3)課税方法

不動産所得の金額は、他の所得と総合(合算)して総所得金額を構成し、所得税が課税されます。従って、確定申告が必要となります。

5 事業所得

1)事業所得とは

事業所得とは、農業・小売業・卸売業・製造業・サービス業その他の事業から生ずる所得をいい、次のようなものも事業所得に含まれます。

  • 従業員用アパートの使用料収入(社宅など)
  • 取引先や従業員に対する貸付金の利子
  • 空き箱や作業くずの売却代金などの雑収入
  • 仕入割戻(仕入リベート)
  • 棚卸資産に係る保険金収入
  • 副業などによる収入で、帳簿が保存されているもの

2)事業所得の金額

基本的に不動産所得の金額と同じように計算します。

事業所得の金額=総収入金額-必要経費-青色申告特別控除額

3)総収入金額計算上の注意点

1.棚卸資産の家事消費

棚卸資産を家事のために消費したら、自分自身に売ったものとして所得税が課税されます。この場合、その棚卸資産の通常の販売価額の70%の金額と仕入価額のいずれか高い金額を、総収入金額に計上することとなります。

2.棚卸資産の贈与

棚卸資産を贈与した場合にも、上記1.の家事消費と同様に取り扱われます。

3.棚卸資産の低額譲渡

棚卸資産を通常の販売価額の70%未満の対価で譲渡した場合、その通常の販売価額の70%の金額を総収入金額に計上しなければいけません。ただし、形崩れなどによる値引販売や広告宣伝のための目玉商品としての値引販売の場合は除きます。

4)必要経費計算上の注意点

1.売上原価

棚卸資産の売上原価の金額は、次のように計算します。

売上原価=年初棚卸高+当年仕入高-年末棚卸高

年末棚卸高の評価は、税務署に他の評価方法の届出をしない場合、最終仕入原価法(年末に最も近い日に仕入れた単価を使って、原価を計算する方法)により評価します。

2.家事上の経費・家事関連費

衣食住費、教育費、娯楽費などの家事上の経費は、必要経費に計上することはできません。また、店舗併用住宅の家賃や水道光熱費などのように、業務上の経費と家事上の経費が含まれている経費(家事関連費)については、業務の遂行上必要であることが明らかな部分だけを必要経費に計上します。

3.事業専従者控除

事業を営む者(白色申告者)と同一生計の親族(年齢15歳未満の者を除きます)で、その事業に専ら従事する者(事業専従者)がいる場合は、その事業専従者1人につき原則50万円(配偶者の場合は86万円)を必要経費に計上できます。なお、その事業専従者側では、その金額は給与所得に係る収入金額となります。

4.青色事業専従者給与

事業を営む者(青色申告者)と同一生計の親族(年齢15歳未満の者を除きます)で、その事業に専ら従事する者(青色事業専従者)に対し、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載されている金額の範囲内において給与(退職金は認められません)の支払いをした場合、労務の対価として相当な金額であれば、必要経費に計上できます。なお、青色事業専従者側では、その金額は給与所得に係る収入金額となります。

この規定の適用を受ける場合、その年の3月15日まで(新規開業等の場合には、開業日から2カ月以内)に、上記の届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければなりません。

5)課税方法

事業所得の金額は、他の所得と総合(合算)して総所得金額を構成し、所得税が課税されます。従って、確定申告が必要となります。

6 給与所得

1)給与所得とは

給与所得とは、給料・賃金・賞与(ボーナス)などに係る所得をいいます。

2)非課税とされるものの代表例

  • 出張旅費等
  • 通勤手当(原則として月15万円まで)
  • 制服などの職場上必要な現物給与
  • いわゆる税制適格ストックオプション(株式会社の取締役または使用人が、株主総会の付与決議に基づき株式会社と締結した契約(一定の要件を満たすもの)により付与された株式譲渡請求権または新株式引受権を行使した場合の経済的利益)

3)給与所得金額

給与所得金額は、原則として給与収入金額から給与所得控除額を控除して算出します。

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4)課税方法

給与所得の金額は、他の所得と総合(合算)して総所得金額を構成し、所得税が課税されます。給与についてはその支払いを受けるときに一定の金額が源泉徴収され、確定申告の際には、その源泉徴収税額は前払税額として精算されます。

なお、勤務先に年末まで在職している人は、その年の最後に給与の支払いを受けるときに「年末調整」という手続きで所得税額が精算されるので、原則として確定申告はしなくてよいこととされています。

ただし、給与以外に所得があり、その金額が20万円を超える人などは年末調整を受けた場合であっても、確定申告をしなければなりません。また、給与収入が2000万円を超える場合は年末調整を受けることができず、確定申告をしなければなりません。

7 退職所得

1)退職所得とは

退職所得とは、退職手当、一時恩給など退職により一時に受ける給与に係る所得をいいます。また、次のようなものも退職所得に含まれます。

  • 国民年金法等の社会保険または共済に関する制度に基づく一時金
  • 確定給付企業年金法に基づいて支給を受ける一時金で加入者の退職により支払われるもの(その受給者が負担した保険料がある場合には、その負担した金額を控除します)

2)退職所得金額

退職所得金額は次のように計算します。

退職所得金額=(収入金額(源泉所得税控除前の金額)-退職所得控除額)×1/2

なお、勤続年数が5年以下である役員・公務員等については、「退職所得金額=収入金額-退職所得控除額」となります。退職所得控除額は次の通りです。

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3)非課税

死亡退職金のうち死亡後3年以内に支給が確定したものは、原則として相続税の課税対象とされるため所得税は非課税となります。

4)課税方法

退職所得は、原則として所得の金額の計算上2分の1とするとともに、他の所得と区分する分離課税制度により課税されます。

また、勤務先を退職するときには通常「退職所得の受給に関する申告書」を提出することで、退職所得について正当税額が源泉徴収されるため、原則として確定申告をする必要はありません。なお、上記の申告書を提出しない場合には、退職金の額の20.42%が源泉徴収されます。

8 山林所得

1)山林所得とは

山林所得とは、山林の伐採または立木のままでの譲渡による所得をいいます。ただし、保有期間が5年以内に伐採または譲渡した場合は、事業所得または雑所得になります。なお、土地付きで山林を譲渡した場合には、土地部分は譲渡所得とされます。

2)山林所得の金額

山林所得の金額は次のように計算します。

山林所得の金額=総収入金額-必要経費-特別控除額-青色申告特別控除額

1.総収入金額

山林の譲渡金額を計上します。

2.必要経費

山林は、長期間育成した上で譲渡するものですから、譲渡した山林についてかかった植林費、取得費用、管理費、伐採費、譲渡費用など、その山林の育成から譲渡までの費用の累積額を計上します。

なお、譲渡した山林を15年前の12月31日以前から所有していた場合は、一定の概算経費率による方法で必要経費を計算することができます。

3.特別控除額

総収入金額から必要経費を差し引いた金額と50万円のいずれか低い金額となります。

4.青色申告特別控除

青色申告者は、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額の順で、合計10万円を控除することが認められています。なお、山林所得については55万円の控除が適用されません。

3)課税方法

山林所得は長年の育成の成果が一時に実現するものであることから、税負担の緩和を図るため、他の所得と区分する分離課税制度を取り、他の所得に比べて低い税率により課税されます。

9 譲渡所得

1)譲渡所得とは

譲渡所得とは、土地・建物、書画・骨董品、株式などの譲渡による所得をいいます。ただし、次のものは譲渡所得とはなりません。

  • 棚卸資産の譲渡による所得(事業所得となります)
  • 山林の譲渡による所得(山林所得、事業所得、雑所得となります)

2)非課税とされるものの代表例

  • 生活に通常必要な動産(家具、衣類、時価30万円以下の宝石・書画・骨董品など)の譲渡
  • 国、地方公共団体等に対する贈与
  • 国、地方公共団体等に対する重要文化財の譲渡
  • 相続税の物納による譲渡
  • 新NISA(成長投資枠)にかかる少額上場株式等の譲渡
  • 新NISA(つみたて投資枠)にかかる投資信託の譲渡
  • 未成年者口座(ジュニアNISA)での少額上場株式等の譲渡

3)譲渡所得の区分

譲渡所得は、次の5つに区分されます。

  1. 分離短期譲渡所得:土地・建物等の譲渡で、譲渡年の1月1日における所有期間が5年以下のもの
  2. 分離長期譲渡所得:土地・建物等の譲渡で、譲渡年の1月1日における所有期間が5年超のもの
  3. 株式等に係る譲渡所得:株式等(ゴルフ会員権を除きます)の譲渡
  4. 総合短期譲渡所得:上記以外の資産の譲渡で、譲渡時の所有期間が5年以下のもの
  5. 総合長期譲渡所得:上記以外の資産の譲渡で、譲渡時の所有期間が5年超のもの

4)譲渡所得の金額

1.分離短期譲渡所得

総収入金額-(取得費+譲渡費用)

2.分離長期譲渡所得

総収入金額-(取得費+譲渡費用)

3.株式等に係る譲渡所得

総収入金額-(取得費+委託手数料等)

4.総合短期譲渡所得

総収入金額-(取得費+譲渡費用)-50万円特別控除額

5.総合長期譲渡所得

総収入金額-(取得費+譲渡費用)-50万円特別控除額

なお、上記4.と5.における50万円特別控除額は総合短期譲渡所得と総合長期譲渡所得の全体で50万円の控除であり、先に総合短期譲渡所得から控除します。

5)総収入金額

資産の譲渡代金を計上します。なお、その計上時期は、原則としてその資産の引き渡しの日になります。

6)取得費

1.原則

土地や骨董品などの減価しない資産は、その資産の取得価額が取得費となります。建物、車両運搬具、工具器具備品などの減価する資産は、その資産の取得価額から価値の減少分(減価償却費など)を控除した金額が取得費となります。

2.相続等により取得した資産

相続、遺贈、個人からの贈与により取得した資産の取得費は、原則として元の所有者の取得費を承継します。

3.「5%基準」

上記の金額が収入金額(譲渡代金)の5%に満たない場合、資産の取得価額が不明である場合には、収入金額の5%を取得費とすることができます。

7)譲渡費用

資産の譲渡に際して支出した仲介手数料などを計上します。なお、資産の保有期間中の固定資産税、支払利息、修繕費などその資産の維持や管理のためにかかった費用は譲渡費用とはなりません。

8)内部通算

上記4)の譲渡所得の金額を計算した結果、赤字(譲渡損)の譲渡所得が生じた場合には、他の黒字(譲渡益)の譲渡所得から控除することができます。ただし、その赤字と黒字の相殺(内部通算)は、分離課税と総合課税のそれぞれの中でしか行うことができません。例えば、分離短期譲渡所得が赤字の場合には、分離長期譲渡所得の黒字と相殺することはできますが、総合課税の黒字とは相殺することはできません。また、株式等に係る譲渡所得については、内部通算の対象となりません。

9)課税方法

1.分離短期譲渡所得

他の所得と区分して分離課税により所得税・復興特別所得税30.63%、住民税9%の税率により課税されます。

2.分離長期譲渡所得

他の所得と区分して分離課税により所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%の税率により課税されます。

3.株式等に係る譲渡所得

他の所得と区分して分離課税により所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%の税率により課税されます。

4.総合短期譲渡所得

他の所得と総合(合算)して総所得金額を構成し、超過累進税率により所得税が課税されます。

5.総合長期譲渡所得

所得金額の2分の1を他の所得と総合(合算)して総所得金額を構成し、超過累進税率により所得税が課税されます。

10)住宅の譲渡に係る特例など

居住していた住宅を譲渡した場合には、短期所有、長期所有に関係なく、原則としてその譲渡益から3000万円を控除することができます(居住用財産を譲渡した場合の3000万円特別控除)。つまり、住宅の売却益は3000万円まで無税ということです。

また、土地などが国や地方公共団体に強制的に買い取られたような場合には、5000万円を控除することができます(収用交換等の5000万円特別控除)。

11)株式等に係る譲渡所得

1.株式等の範囲

株式(株式引受権等を含みます)、法人の出資者持分、新株予約権付社債、特定株式投資信託の受益証券など

2.取得費

  • 購入した株式:購入価額(購入手数料を含みます)
  • 払込みにより取得した株式:払込価額
  • 税制適格ストックオプションの適用を受けた株式:払込価額

3.課税関係

株式等に係る譲渡所得の金額は、「上場株式等」とその他の「一般株式等」に区分して計算します。なお、上場株式等のうち特定口座に保管が委託されている上場株式等の譲渡による譲渡所得の金額は、証券業者が計算するため、納税者自身が所得計算を行う必要はありません。株式等に係る譲渡所得の金額は、他の所得と区分して分離課税により確定申告をするのが原則ですが、特定口座内の上場株式等の譲渡のうち、源泉徴収ありを選択したものについては、確定申告をしないことも認められています(確定申告不要制度)。

12)ゴルフ会員権

ゴルフ会員権の譲渡については、株式形態のものも預託金形態のものも、いずれも譲渡所得として総合課税されます。

13)公社債等

公社債(新株予約権付社債を除きます)、公社債投資信託や公募株式投資信託の受益証券、貸付信託の受益証券などの譲渡による所得については、2016年から課税となり、株式等に準じた課税方法が取られています。

なお、取得時に支払った経過利子や譲渡時に受取った経過利子の額は、それぞれ取得価額や譲渡対価に含まれます。

10 一時所得

1)一時所得とは

一時所得とは、上記2~9のいずれにも該当しない一時的な所得をいい、次のようなものが含まれます。

  • 懸賞の賞金品、福引の当選金品(業務上のものは除きます)
  • 競馬の馬券の払戻金、競輪の車券の払戻金など(営利を目的とする継続的行為から生じたものを除きます)
  • 生命保険契約等に基づく満期返戻金(業務上のものは除きます)
  • 損害保険契約等に基づく満期返戻金
  • 法人からの贈与により取得する金品(業務上のものは除きます)
  • 遺失物拾得により受ける報労金など
  • 固定資産税や住民税の前納報奨金(業務上のものは除きます)

2)非課税とされるものの代表例

  • 国内宝くじの当選金
  • ノーベル賞の賞金など
  • 相続、遺贈、個人からの贈与により取得する金品
  • 心身または資産(棚卸資産等は除きます)に加えられた損害を補てんする性質の損害保険金や損害賠償金

3)一時所得の金額

一時所得の金額=総収入金額-支出した金額(その収入を得るために直接要した金額に限る)-50万円特別控除額

4)課税方法

一時所得の金額は、所得金額の2分の1を他の所得と総合(合算)して総所得金額を構成し、超過累進税率により所得税が課税されます。

11 雑所得

1)例示

1.公的年金等

  • 国民年金や厚生年金
  • 勤務先からの退職年金 
  • 確定給付企業年金法に基づく年金

2.公的年金等以外

  • 友人に対する貸付金の利子
  • 学校債や組合債の利子
  • 所得税の還付加算金
  • 生命保険契約等の年金
  • 株主優待券など
  • 副業などによる収入で、帳簿が保存されていないもの(年間の収入金額が300万円を超える場合で、事業実態がある場合には事業所得に該当)

2)雑所得の金額

1.公的年金等

収入金額-公的年金等控除額

2.公的年金等以外

総収入金額-必要経費

3.雑所得の金額

雑所得の金額=1.+2.

1.の公的年金等控除額は、国税庁「公的年金等の課税関係」にまとめてあります。公的年金等にかかる雑所得以外の所得に係る合計所得金額ごとに控除割合と控除額が異なりますので注意しましょう。

3)課税方法

雑所得の金額は、他の所得と総合(合算)して総所得金額を構成し、超過累進税率により所得税が課税されます。なお、雑所得のうち一定のものについては、その支払いを受けるときに一定の金額が源泉徴収されますが、その源泉徴収税額は、確定申告の際には前払税額として精算されます。

4)生命保険契約等に基づく年金

生命保険契約や損害保険契約による年金については、公的年金等には含まれず、公的年金等以外となりますので注意が必要です。これらの年金については、次のように計算します。

  1. 本年中に受けた生命保険等の年金(A)(総収入金額に計上)
  2. (A)×(保険料総額/年金支給総額)(必要経費に計上。小数第2位未満切り上げ)

以上(2024年12月更新)
(監修 税理士 石田和也)

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