SNSでバズることで商品が爆発的に売れるのが日常茶飯事の今、ネーミングの難度はかつてないほど上がっている。心の琴線に触れ、かつ商品やサービスが長く愛される極意とは。ヒットしている商品やサービスをピックアップし、ネーミングの背景や狙い、決定プロセスを探る。
【中堅社員のスピーチ例】「ありがとう」でストレスが減る
おはようございます。今日は、私の最近の勤務態度について反省を述べさせていただきたいと思います。最近、私は仕事をため込んで夜遅くまでの残業が続き、イライラする日々を送っていました。おそらく皆さんにも、私のイライラが伝わって、不快な思いをさせてしまったと思います。本当に申し訳ありません。
一方、今はどうなのかと言うと、とても気持ちが落ち着いています。仕事が山場を超えたからというわけではありません。上司から「ストレスを感じたときこそ、これを心がけなさい」という極意を教わったからです。
それは、「ありがとう」をたくさん人に伝えるというものです。例えば、先輩が仕事を教えてくれた。後輩が仕事を手伝ってくれた。外部の清掃員さんが手すりやトイレを掃除してくれた。こうした1つ1つのコトについて、「ありがとう」と言葉に出して、感謝を伝えるのです。
「なんだかうさんくさい」「親や学校の説教みたい」と思うかもしれませんが、実は「感謝」を意識すると、自身のストレスが軽減されるというのは、科学的にも証明されていることです。海外の心理学者ロバート・エモンズ氏が「ちょっとしたことでよいので、感謝できることを5つ書き、それを続けてもらう」という実験を行ったところ、感謝できることを毎日考えたグループは、何もしなかったグループに比べて幸福感が高くなり、身体的な不調も減少したといいます。
正直に言うと、私も最初、上司から「ありがとう」をたくさん人に伝えなさいと言われたときは、不満でした。今思い起こすと恥ずかしいですが、「私は毎日、夜遅くまで仕事をしているのに、何を人に感謝しろというのか。私こそ、もっと感謝されるべきだ」と、思っていたのです。誰かに、何かを「してやっている」という意識が強いから、こういう思考になってしまうわけですが、嫌な気持ちで仕事に向かうから、当然ストレスはたまる一方です。
ですが、あえて「してやっている」という意識から離れて、「していただいている」ことに目を向けてみると、実は自分は意外と恵まれているのだということに気付きました。先輩も後輩も支えてくれるし、清掃員さんのおかげでオフィスも清潔に使える。こう考えると、何だか肩の荷が下りた気分になり、それまでよりも穏やかな気持ちで仕事に向かうことができたのです。仕事量そのものが減るわけではありませんが、気持ちが落ち着いてくると、「まぁ、頑張ってみるか」と仕事に対する向き合い方も変わってきます。
もし、皆さんの中に仕事でストレスを抱えている人がいたら、まずは自分に何かをしてくれた人のことを思い起こしてください。そして、その人に「ありがとう」を伝えてみてください。最初は少し恥ずかしいかもしれませんが、続けていくと、次第に感謝を伝えている自分のほうが、心地よい気分になっていきます。
以上(2024年9月作成)
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画像:Mariko Mitsuda
【中小企業の予算(3)】実用的な予算管理にするための「予算」と「予測」の使い分け
書いてあること
- 主な読者:予算管理を自社に取り入れたい、あるいはしっかり取り組みたい経営者
- 課題:予算と予測の違いがあやふやで、現場の担当者でも明確にその違いを答えられない人も多い
- 解決策:予算は「こうなりたい」という目標、予測は「こうなるだろう」という見込みである
1 予算と予測の違いを正確に答えられますか?
管理会計における「予測」という言葉を聞いたことはありますか。また、何のための数値なのか正確に答えられますか。
実は、予測を作っている担当者でも、十分に答えられる方はそう多くありません。なぜなら、実務の中では予測は漠然としていて、位置づけが難しいものだからです。この点を理解した上で、予測について、予算との違いも含めて考えていきましょう。
予算が「こうなりたい」という目標(理想や期待を含めた数値)
であるのに対し、
予測は「こうなるだろう」という見込み(現実的な数値)
です。そのため、予算と予測は一致するとは限りません。
期が進むと実績が出てきますが、一般的に実績は予算とずれてきます。このため予算(目標)を達成するためには、予測(見込み)を明らかにしなければなりません。予算(目標)と予測(見込み)の数値にズレがあれば、目標達成に向けて先の行動計画を変更することとなります。
具体的に3月決算の会社を例に、半期予測について考えてみましょう。
まずは、4月から9月までの月次決算の実績を出します。さらに、この時点の最新情報をもとに、10月から翌3月までの売上や利益を予測します。
これらの実績と予測を足し合わせると年度の予測の数値を出すことができます。この予測と年度初めに立てた予算を比較して、年度の予算と半期の予測との間にどれくらいの差があるのかを計算することができます。これをもとに、予算が達成できるように残り半年の行動を修正していきます。
ちなみに、4月から6月までの実績が出た時点で行う予測を第1四半期時点予測(1Q時点予測)、12月までの実績が出た時点で行う予測を第3四半期時点予測(3Q時点予測)といい、より頻度を増やして予測と予算のズレを把握する会社もあります。
2 予算(目標)と予測(見込み)の使い分け
予測は日々刻々と変化していきます。年度が始まり時間が経過するにつれて不確定要素は減り、
より現実的な年度の着地見込みが見えてくる
のです。ここに予測を作成する意味があります。
決算直前になって予算(目標)と予測(見込み)に差がある場合だと、挽回が難しいかもしれませんが、半年たったあたりであれば、残り半年の行動を変えていけば予算達成が望めるということもあります。やはり、早めに「予算(目標)」と「予測(見込み)」のズレを把握することが大事になります。
これを、わかりやすくダイエットを例にして考えてみましょう。「現在体重は60キロ。6カ月後の年末までに55キロ(5キロ減量)にする」という目標を立てたとします。
目標を達成するためには、具体的な計画(運動やジムに通うことで3キロ、食事制限で2キロ減量するなど)や、進捗管理(1カ月ごとの体重把握など)も重要です。
ダイエットスタートから1カ月後で、0.7キロ減量の実績が出たとします。このペースを維持した場合の年末の見込みは0.7キロ×6カ月で、最終的に4.2キロ減量なので、55.8キロとなり、目標が達成できないことが明らかになります。
そこで、翌月以降からは0.9キロ減量できるように行動計画(ダイエット内容)を変更し、目標達成を目指します。例えば、運動の量を増やします。そうすると年末の見込みは、0.9キロ×残り5か月(=4.5キロ)で、最終的に5.2キロ(最初の月の0.7キロ+4.5キロ)減量なので、54.8キロとなり、目標が達成できます。
予算管理でいえば、最初に立てた目標が予算に当たり、1カ月ごとの実績を加味した上での見込みが予測に当たります。ダイエットの例と同様、1カ月置きに予測(見込み)を見直した上で、定期的に予算(目標)と予測(見込み)のズレを把握し、予算(目標)を達成できるよう行動を修正していきます。
3 修正予算はあくまで予算、予測とは別物です
予測の説明をすると、「予測は修正した予算のことでしょうか」という質問を受けることがあります。結論から言うと、
予測と修正予算は全くの別物
です。
予算は達成したい目標なので、期の初めに立てた予算は一度決めたら変えないことが原則です。しかし、会社が置かれている状況に大きな変化があった場合には、予算を変えざるを得ません。例えば、急激な円安の進行や会社の方向性が変わったというような場合には、もとの予算を目標とし続けることは、むしろ無意味になってしまいます。
このような場合には、なるべく早く予算を修正して、それを新しい目標とします。その上で、従業員に対して新たな予算について、変更点やその背景などを含めて伝える必要があります。この新たな予算が「修正予算」と呼ばれるものです。
このため、修正予算は期の初めに立てた予算と同類であり、予算は目標という位置づけですので、修正予算も目標に当たります。
やはり、理想や期待を込めたものであり、現実的な数値である予測(見込み」とは異なります。修正予算と予測が混同されがちなのは、年度の途中で作成される共通点があるためですが、その性質は大きく異なる点は意識するようにしましょう。
以上(2024年9月作成)
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画像:thanksforbuying-Adobe Stock
労務トラブル発生時の対応と予防策~中小企業のためのリスクマネジメント~
労務トラブルを未然に防止し、安心して働き続けられる職場づくりのトラブル予防策をはじめ、万が一、労務トラブルが発生してしまった場合でも、迅速かつ円満な解決を目指すための対応策について考えます。
2024年11月施行!「フリーランス新法」中小企業が確認しておきたいポイント
新法では、企業がフリーランスに業務委託をする際に守らなくてはいけない事項などが定められています。とくに資本金が1千万円に満たず、今まで「下請法」の適用がなかった中小企業にとっては、新法対応のための社内制度をゼロから作り上げる必要があり、負担が大きいといえるでしょう。そこで今回は、フリーランスと取引をする場合のポイントと法改正対応についてご説明いたします。
公的年金シリーズ 第1弾 退職前に知っておきたい老齢年金の基礎知識
公的年金を理解した上で、生活に困らない老後を迎えるためには、若いうちから無理のない範囲で自助努力をしておくことが老後を生き抜くための最善策になると思われます。そこで、今回は老齢年金の基礎知識を中心に自助努力のための方法をいくつか紹介していきます。
産業別にみる外国人雇用の特徴と注意するポイント
令和5年10月末現在、厚生労働省より公表された「外国人雇用状況の届出状況のまとめ」によると、我が国における外国人労働者の数は、2,048,675人(前年比225,950人増)と初めて200万人を超えて過去最高を更新し、今後もさらに増加していくことが見込まれています。そのような中でこの度は、予定されている技能実習制度の廃止と新制度の概要を説明した後、主に現場で働く労働者が多い産業別の外国人雇用の特徴や注意するポイントについてご説明いたします。
災害時に使える“税の特例”。損金算入できるのは?
書いてあること
- 主な読者:地震や台風などの自然災害の被害を受けた企業の経営者、税務担当者
- 課題:自然災害により生じた損失や費用の取り扱いなどの税金に関する特例措置を知りたい
- 解決策:被災により滅失・損失した資産や、撤去などに要した費用などは損金に算入できる
1 災害が起きる前に、できることをざっくり把握
地震や台風などの災害によって社屋が損傷・倒壊などの被害を受けると、想定外の修繕費や、被災者に対する見舞金など、災害時特有の費用が発生します。これらの費用には、通常時とは違って損金(税務上の費用)の額に算入できるケースがあります。ただし、災害直後の優先順位として、税務周りの対応はそれほど高くはなく、後回しになってしまいます。もし、
特例を知らずにいつも通りの処理をしていたり、申告をしなかったりすると、受けられる特例措置などを受けずじまいになることも
あります。
受けられる特例の取りこぼしがないよう、事前に税務上の取り扱い(損金にできる費用や申告・納期限の延長など)をざっくり把握しておきましょう。
2 「法人と個人で共通」する災害時における税務上の取り扱い
1)災害により滅失・損壊した資産など
法人の有する商品、店舗、事務所などの資産が災害により被害を受けたことに伴い、次のような損失または費用が生じたときは、その損失または費用の額は損金に算入されます。
- 商品や原材料などの棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資産が災害により滅失又は損壊した場合の損失の額
- 損壊した資産の取壊し又は除去のための費用の額
- 土砂その他の障害物の除去のための費用の額
2)復旧のために支出する費用
法人が、災害により被害を受けた固定資産(以下「被災資産」)について、支出する費用に係る資本的支出と修繕費との区分については、次の通りとなります。資本的支出とは、原状回復を超えて資産価値を高めるための支出などをいいます。資本的支出に該当する支出は、資産として計上し、減価償却を通じて損金に算入します。一方、修繕費はその支出の額が損金に算入できます。
- 被災資産について、その原状を回復するための費用は修繕費となります。
- 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水または土砂崩れの防止などのために支出する費用について、修繕費とする経理をしているときは、この処理が認められます。
- 被災資産について支出する費用(1または2に該当するものを除きます。)の額のうち、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合、その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経理をしているときは、この処理が認められます。
3)従業員などに支給する災害見舞金品
法人が災害により被害を受けた従業員や親族などに対して、一定の基準に従って支給する災害見舞金品は、福利厚生費として損金に算入されます。また、法人が自己の従業員などと同等の事情にある専属下請先の従業員などまたはその親族などに対して、一定の基準に従って支給する災害見舞金品についても、同様に損金に算入されます。事業を営む個人においても同様に取り扱われます。
4)災害見舞金に充てるために同業団体などへ拠出する分担金など
法人が、所属する同業団体などの構成員の有する事業用資産について災害により損失が生じた場合に、その損失の補填を目的とする構成員相互の扶助などに係る規約などに基づき、合理的な基準に従って同業団体などから賦課され、拠出する分担金などは、その支出する事業年度の損金に算入されます。
5)申告・納付期限について
1.個別指定による期限延長
納税地を管轄する税務署長に対し、災害等のやんだ日から相当の期間内に「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出した場合には、その承認を受けることにより、税務署長等が指定した日(災害等のやんだ日から2カ月以内)まで申告・納付などの期限が延長されます。
災害等のやんだ日とは、申請者に特別な事情がある場合を除いて、客観的に見て、申告・納付などの期限延長の申請をした人が、申告・納付などの行為をするのに差し支えないと認められる程度の状態に復した日となります。例えば、交通の途絶があった場合には、交通機関が運行を始めた日などが災害等のやんだ日になります。
2.地域指定による期限延長
2011年3月11日に発生した東日本大震災のときには、地域を定めて申告・納付期限を延長する対応が取られました。例えば、福島県の一部の地域については、申告・納付期限が2011年3月11日以降に到来するものが、2015年3月31日まで延長されました。
2024年1月1日に発生した能登半島地震についても、富山県、石川県の申告・納付期限を延長する対応が取られ、例えば、富山県、石川県のうち、石川県七尾市、輪島市、珠洲市、羽咋群志賀町、鳳珠群穴水町・能登町を除いた地域については、申告・納付期限が2024年1月1日から同年7月30日までに到来するものが、2024年7月31日まで延長されました。
なお、地域指定された地域に納税地がある個人または法人については、特段の手続きを経ることなく、自動的に申告・納付の期限が延長されます。
また、申告・納付期限延長措置の終了に関しては、各地域の復興などの状況を踏まえ、順次、国税庁のウェブサイトなどで告示されます。そのため、地域指定に関する情報は定期的に確認するようにしましょう。
3.顧問税理士が被災した場合
顧問税理士が被災した場合には、税理士自身が事務所に入れないことや、避難所に避難していることがあります。このような場合には期限までに申告ができないことが想定されますので、上記1の「災害による申告、納付等の期限延長申請書」に必要事項を記載し、納税地を管轄する税務署長に提出し、その承認を受けることにより、税務署長等が指定した日(災害等のやんだ日から2カ月以内)まで期限が延長されます。
6)延滞税・利子税・加算税
災害等により国税の納期限が延長された場合には、その延長された期間については、その国税に係る延滞税および利子税は課されません。
また、申告・納付などが適正に行われない場合に課される加算税については、認められた延長期限内に申告を行えば課されません。なお、加算税とは、申告・納付が遅れた場合に、通常の納付額に加算して課される罰金的な性格を有する税のことをいいます。例えば、期限後に申告が行われた場合に課される無申告加算税や、源泉徴収税額が期限後に納付された場合に課される不納付加算税などがあります。
2 「法人」に対する災害時の主な税務上の取り扱いについて
1)取引先に対する災害見舞金など
法人が、その得意先などの慶弔、禍福に際して支出する費用は、慰安、贈答その他これらに類する行為として、交際費として取り扱われ、一定の金額以上については損金に算入することができません。ただし、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の復旧過程においてその取引先に対して行った災害見舞金の支出、事業用資産の供与などのために要した費用は、交際費などに該当しないものとして全額損金に算入されます。
2)取引先に対する売掛金などの免除など
法人が、その得意先などの債権を合理的な理由がなく免除した場合には、原則として得意先などに対して寄付金を支出したものとして取り扱うことになり、一定の金額以上については損金に算入することができません。ただし、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として売掛金、貸付金などの債権を免除する場合には、その免除することによる損失は、寄付金または交際費等以外の費用として、全額損金に算入されます。また、既契約のリース料、貸付利息、割賦代金の減免を行う場合および災害発生後の取引につき従前の取引条件を変更する場合も、同様に取り扱われます。
3)取引先に対する低利または無利息による融資
法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目的として低利または無利息による融資を行った場合における、通常収受すべき利息と実際に収受している利息との差額は、寄付金に該当しないものとされます。
取引先の復旧過程における復旧支援を目的として行われる融資は、取引先の復旧支援をすることにより、自らが被る損失を回避するためのものとして一定の経済合理性を有すると考えられるため、寄付金に該当しないものとされます。
4)自社製品などの被災者に対する提供
法人が、不特定または多数の被災者を救援するために緊急に行う自社製品などの提供に要する費用は、寄付金または交際費などに該当しないもの(広告宣伝費に準ずるもの)として損金に算入されます。災害という緊急性のある中において、倫理的・社会的要請により自社製品の提供が行われることが考えられますが、これは、国が被災者を支援することと同様の側面があり、また、広告宣伝費に準ずる性質を有するとも考えられるため、寄付金に該当しないものとされます。
5)災害による損失金の繰越し
法人の各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額のうち、棚卸資産、固定資産などについて、災害により生じた損失に係るもの(以下「災害損失欠損金額」)がある場合には、その事業年度が青色申告書を提出しなかった事業年度であっても、その災害損失欠損金額に相当する金額は、その各事業年度において損金に算入されます。
なお、2018年4月1日前に開始する事業年度において生じた災害損失欠損金額の繰越期間は9年となります。
6)災害損失の繰戻しによる法人税額及び地方法人税額の還付
災害のあった日から同日以後1年を経過する日までの間に終了する各事業年度又は当該災害のあった日から同日以後6月を経過する日までの間に終了する中間期間(以下「災害欠損事業年度」)において生じた欠損金額のうち、災害損失金額に達するまでの金額(以下「災害損失欠損金額」)がある場合には、その災害欠損事業年度開始の日前1年(青色申告書である場合には前2年)以内に開始した事業年度(「還付所得事業年度」)の法人税額のうち災害損失欠損金額に対応する部分の金額について、還付請求することができます。
また、災害損失の繰戻しによる法人税額の還付が行われる場合には、地方法人税の還付金の額に相当する金額として、法人税の還付金の額の10.3%に相当する金額が合わせて還付されます。
7)義援金を支払った場合
1.県の災害対策本部や義援金配分委員会に対して支払った義援金
「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金に算入されます。
2.日本赤十字社に対して支払った義援金
法人が、日本赤十字社の「令和6年能登半島地震災害義援金」口座に対して支払った義援金は、「国等に対する寄附金」に該当し、その全額が損金に算入されます。
ただし、日本赤十字社に対して支払った義援金であっても、例えば、日本赤十字社の事業資金としてのものなど、最終的に地方公共団体に拠出されるものでないもの(財務大臣が指定する寄付金に該当しないものに限ります)については、「特定公益増進法人に対する寄附金」に該当し、特別損金算入限度額の範囲内で損金に算入されます。
3 「個人」に対する災害時の主な税務上の取り扱いについて
1)個人が支払いを受ける災害見舞金
個人が支払いを受ける災害見舞金で、その金額がその受贈者の社会的地位や贈与者との関係などに照らし、社会通念上相当と認められるものについては、課税しないものとされています。
2)低利または無利息により生活資金の貸付けを受けた場合の経済的利益
災害により臨時的に多額の生活資金を要することとなった役員または従業員などが、使用者からその資金に充てるために低利または無利息で貸付けを受けた場合に、その返済に要する期間として合理的と認められる期間内に受ける利息相当額の経済的利益は、課税しないとされています。これは、災害を受けた人の担税力を考慮した措置といえます。
3)被災事業用資産の損失の繰越し
事業を営む個人のその年の前年以前3年以内の各年において生じた純損失の金額のうち、棚卸資産、固定資産などについて災害により生じた損失に係るもの(以下「被災事業用資産の損失の金額」)がある場合には、その損失の生じた年に青色申告書を提出していなかった場合であっても、その被災事業用資産の損失の金額に相当する金額は、その年分の総所得金額等の計算上控除することとされています。
4)義援金を支払った場合
1.県の災害対策本部や義援金配分委員会に対して支払った義援金
「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
2.日本赤十字社に対して支払った義援金
「特定寄附金」に該当し、寄附金控除の対象となります。
以上(2024年9月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
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画像:Potstock-Shutterstock
【規程・文例集】「防災管理規程」のひな型
書いてあること
- 主な読者:防災対策を見直すに当たって「防災管理規程」のひな型が欲しい経営者
- 課題:具体的に何を定めればよいかが分からない
- 解決策:防災管理体制と各担当者の職務、消防計画、設備管理、防災訓練などを定める
1 能登半島地震が起こった今年、改めて防災を考える
2024年1月1日に発生した能登半島地震は、痛ましい数多くの被害をもたらし、100以上の事業所が廃業を決断するに至りました。また同年8月には、宮城県の日向灘にてマグニチュード7.1の大地震が発生。多くの被害を出すとともに、南海トラフ地震に影響する可能性があるとし、気象庁から南海トラフ地震臨時情報(巨大地震注意)が発表されました(注)。
(注)8月15日17時に「特別な注意の呼びかけ」は終了しています。
日本においては、地震に限らず、様々な災害が発生します。万一の際、社員の安全や自社の資産を守るための拠り所となるのが防災管理規程です。もし、防災管理規程をまだ作成していないようであれば、これを機に検討してみましょう。防災対策に関する情報をまとめた行政機関のウェブサイトもあります。参考にしてください。
■内閣府「企業防災のページ(内閣府防災担当)」■
https://www.bousai.go.jp/kyoiku/kigyou/
■東京都防災ホームページ「防災ブック」■
https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/1028036/
2 防災管理規程のひな型
以下で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容は異なります。規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
【防災管理規程のひな型】
第1条(目的)
本規程は防災管理の徹底を期し、災害における人的・物的被害を最小限にとどめるために必要な事項について定める。なお、本規程でいう災害とは、火災、地震、暴風雨、洪水などに起因する災害をいい、労働災害、交通事故、テロ、ミサイル、感染症は除く。
第2条(適用範囲)
本規程は、消防法などの関連法令に基づき全社に適用する。
第3条(防災管理体制)
会社は、防災管理の推進・維持のため、次に定める管理者および会議体を置く。
- 全社防災対策本部長
- 地域防災対策責任者
- 防火管理者
- 火元責任者
- 防災対策本部
- 防災対策委員会
- 自衛消防隊
第4条(全社防災対策本部長の任命および職務)
1)全社防災対策本部長は、本社に置くものとし、総務部長がその任に当たる。
2)全社防災対策本部長は、全社的な防災対策の統括をするものとする。
第5条(地域防災対策責任者の任命および職務)
1)地域防災対策責任者は、拠点ごとに置くものとし、労働安全衛生法に基づいて選任した総括安全衛生管理者とする。ただし、総括安全衛生管理者を置かない拠点においては、労働安全衛生法に基づいて選任した安全管理者などの中から会社が個別に指名する。
2)地域防災対策責任者は、拠点における防災対策の統括をする。また、災害に際しては臨機応変な処置を講じるとともに、速やかに全社防災対策本部長に状況を報告しなければならない。
第6条(防火管理者の任命および職務)
1)防火管理者は、拠点ごとに置くものとし、法的資格者の中から全社防災対策本部長が任命する。また、防火管理者を置かない場合は、地域防災対策責任者が防火管理者の職務に準じて防火管理事項を実施・推進するものとする。
2)防火管理者は火災の予防および災害の防止を図るため、次の職務を誠実に行うものとする。
- 消防計画の作成および変更
- 建物、火気使用設備器具、危険物施設などの検査および危機管理
- 避難通路および避難設備などの維持管理
- 消防用設備などの点検および整備
- 火気の使用または取り扱いに関する監督
- 収容人員の管理
- 消火、通報および避難などの訓練の実施
- 従業員などに対する防災意識の啓発
- 火災およびその他の災害に対応できる体制、対策の維持管理
- その他、防災管理上必要な業務
3)防火管理者は前項の職務を遂行するに当たり、必要に応じて第7条に定める火元責任者および建物・諸設備などの点検を行う者(以下「設備点検員」)を任命するものとし、消防管理上必要な命令および指示をしなければならない。
第7条(火元責任者の任命および職務)
1)火元責任者は、各部門の責任者もしくはそれに準ずる従業員の中から防火管理者が任命する。
2)火元責任者は、防火管理者の命令および指示に従い、防火措置の実施、確認、その他の責任を負うものとする。
第8条(防災対策本部および活動)
会社は、重大な災害が発生した場合、本社に防災対策本部を置き、対策を決定する。また、必要に応じて、防災対策本部の決定した対策を講じるための全権を委嘱した役員を被災地に派遣する。
第9条(防災対策委員会)
1)防災対策委員会は、拠点ごとに置く。
2)防災対策委員会の委員長は、地域防災対策責任者とする。
3)防災対策委員会は、防火管理者、火元責任者、設備点検員、拠点内の各部門から任命された1名以上で構成する。
4)防災対策委員会は、原則として2カ月に1度開催する。
第10条(防災対策委員会の活動)
防災対策委員会は、主として次の事項に関する審議を行い、必要な事項を実施・推進する。
- 消防計画の立案
- 防災に関する諸規程の立案
- 防火対象物の防火構造および避難施設並びに消防用設備などの維持管理
- 消防設備の改善強化
- 消火・通報および避難訓練などの立案
- 防災意識の啓発
- 防災予防上必要な教育および消防・避難訓練の計画並びに実施
- 火災の際の隣接防火対象物の応援協定
- その他防災に関する必要事項
第11条(自衛消防隊)
1)自衛消防隊は、拠点ごとに置くものとし、火災のみならずその他の災害発生時に、人的・物的被害を最小限にとどめるための活動を行う。
2)自衛消防隊の隊長は、地域防災対策責任者とする。
3)自衛消防隊の隊長補佐は、防火管理者とする。
4)自衛消防隊には、隊長および隊長補佐の下に次の班を置く。
- 通報連絡班
- 初期消火班
- 避難誘導班
- 応急救護班
- 安全防護班
5)第4項に定める各班には、班長を置く。班長は各部門の責任者、もしくはそれに準ずる従業員の中から地域防災対策責任者が任命する。また、各班の班員は地域防災対策責任者が任命する。班員数については拠点の規模などを勘案の上、防災対策委員会が決定する。
第12条(自衛消防隊の活動)
自衛消防隊は、火災やその他の災害が発生した場合に、所有する組織力や装備を有効に活用して、人的・物的被害を最小限にとどめることを目的に、次の活動を実施する。
- 消防機関への通報
- 初期消火活動
- 人命の救助
- 関係者以外の者の立ち入り禁止処置
- 消防活動の障害となる物件の排除
- 従業員の避難誘導
- 必要な資器材の調達
- その他、人的・物的被害を最小限にとどめることに資する活動
第13条(消防計画)
防火対象物全般にわたる消防計画は防火管理者が企画・立案し、防災対策委員会で決定する。なお、消防計画については消防法など法令の定めるところによる。
第14条(防火点検)
建築物・火気・電気・危険物などにおける各施設の自主点検は、火元責任者が週1回実施し、点検結果は記録して、必要な整備事項があれば地域防災対策責任者に報告し処置するものとする。
第15条(設備管理)
1)消防用諸設備および用水については、火元責任者が管理状況を確認するものとし、防火管理者は巡回点検を定期的に行い、実施状況を監督しなければならない。
2)電気設備、警報設備、避難設備など、専門的な点検を要するものは、防火管理者が点検依頼先を指定し、社内外の専門技術者の点検を受けるとともに、点検結果を記録しなければならない。
第16条(防災訓練)
1)防災対策委員会は防火管理者が中心となり、防災訓練と防災教育の講習会を年1回開催する。
2)従業員は防災訓練並びに防災教育の講習会に参加しなければならない。
第17条(火災予防)
1)社内における指定場所以外の喫煙は厳禁とし、社内外における工事や大量の危険物取り扱いの際の喫煙場所は、事前に防火管理者の承認を受けなければならない。
2)臨時に火気を使用する場合、防火管理者並びに火元責任者の許可を得なければならない。
第18条(災害防御)
災害防御のため、該当者は次の項目に努めるものとする。
- 通報連絡
- 消火活動
- 避難誘導
災害(特に火災)発生において発見者は、所轄の消防署へ通報するとともに、地域防災対策責任者などの関係者もしくはそれに準ずる者に連絡する。連絡を受けた者は、社内放送または口頭連絡により、災害発生を知らせる。
自衛消防隊は、社内放送および連絡に基づき、直ちに消火活動に当たる。
自衛消防隊の誘導により行う。
第19条(安否確認)
従業員は各自、自身と家族の安全措置を講じた後、速やかに所属拠点へ安否情報を報告する。
第20条(災害復旧)
1)地域防災対策責任者は、事業を速やかに回復させるため、次の項目に努めるものとする。
- 勤務環境の整備
- 土地、施設および設備の復旧
- 備品などの調達および修繕
- その他、災害復旧に必要な事項
2)地域防災対策責任者は、応援要員、復旧資材、宿泊施設、食料、復旧日程などの計画を策定し、全社防災対策本部長に報告する。
3)地域防災対策責任者は、復旧計画の実施に当たって、自治体、防災関係機関などと密接な連絡を取りながら復旧を行う。
第21条(罰則)
役員および従業員が故意または重大な過失により、本規程に違反した場合、就業規則に照らして処分を決定する。
第22条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会の承認による。
附則
本規程は、○年○月○日より実施する。
以上(2024年9月更新)
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画像:ESB Professional-shutterstock
さまざまな法人税対策の考え方をとことん分かりやすく整理する
書いてあること
- 主な読者:適法で自社に合った法人税対策をしたい経営者
- 課題:法人税対策といっても、どのような方法があるのか分からない
- 解決策:法人税対策として「所得の平準化」と「税制上の優遇・制限」を知る
1 2つの性質に分けられる法人税対策
利益が増えると、法人税対策への関心度は高まります。ただ
目先の納税額を少なくすることを考えても、長期的にはあまり意味がないものであったり、無駄に資金の支出を増やしているものであったりする
ことがあります。法人税対策は、
- 所得の平準化によるもの
- 税制上の優遇・制限によるもの
ごとに大別されます。それぞれ会社の資金に与える影響や効果や性質を考えた上で、自社に合った対策を講じることが大切です。
この記事では、法人税対策の考え方を紹介します。なお、より具体的に法人税対策を検討したい方は、以下のコンテンツをご参照ください。
2 ひと目で分かる多様な法人税対策
法人税対策の概略をまとめると次のようになります。
1)所得の平準化によるもの
「今年度の税金を少なくする(所得の平準化によるもの)」ということであれば、
- 費用の前倒し計上(さらに資金の支出を伴うものと、伴わないものに細分化)
- 収益の繰延処理
- 資産の評価損の計上
が有効です。これらは今年度の税金を少なくしますが、翌年度以降に反動が出てきます。また、法人税は毎年平均的に所得を計上したほうが、総額の税額は低くなる(詳細は後述)ので、こうした点も考えながら節税対策を検討します。
1.費用の前倒し計上
費用の前倒し計上は資金の支出を伴うものと、伴わないものとに区分されます。
資金の支出を伴うものは、
- 決算賞与の支給、あるいは未払い計上
- 消耗品や固定資産を利用した費用の創出
に区分されます。
また、資金の支出を伴わないものは、
- 優遇税制の利用
- 未払い計上が可能な費用などの確認
に区分されます。
2.収益の繰延べと資産の評価損
収益の繰延べは今年度に入金があったものの、翌年度以降の収益として計上する繰延処理を行うもので、前受収益の計上と、一定の要件を満たす場合の圧縮記帳(一定の方法により得た収益と同じ金額を取得金額から控除するなどして、課税を繰り延べる制度)とがあります。
また、その他に資産の評価損があります。これは年度末時点で保有している資産の評価損(帳簿価額と時価の差額)を認識するものです。
2)税制上の優遇・制限によるもの
「税金の額を永久に少なくする(税制上の優遇・制限によるもの)」ということであれば、
- 税額控除を利用する
- 損金性を否認される費用を減らす
- 特別課税の適用を受けないようにする
- 欠損金繰越控除の期間を有効に活用する
という4つに区分することができます。これらの節税対策は会社に資金の負担を掛けません。一方、前述した資金の支出を伴う法人税対策は、一時的にその期の節税額以上に資金繰りを悪化させるので要注意です。
3 所得の平準化がなぜ法人税対策として効果があるのか
個人の所得税は累進課税(所得が増えるほど税率が大きくなる課税制度)であるため、所得を平準化したほうが税金の総額が少なくなります。一方、法人は一定税率であるため、所得の平準化による節税効果はないと思われがちです。
しかし、法人も資本金が1億円以下であれば、中小法人(資本金の額が5億円以上の大法人の100%子会社を除く)の軽減税率により、2段階の累進課税となっているので、複数年度の所得を累進させる手前の段階でとどめておくことができれば、節税効果が生じます。また、特定同族会社(資本金1億円以下を除く)では、留保金課税が追加発生するので、留保金課税が発生する手前で平準化できれば節税効果が生じます。
4 法人税対策の基本的な進め方
上記で説明した分類に基づいて「法人税対策」を考えた場合、まず行うべきは「税制上の優遇・制限によるもの」です。それらは、適用を受ける、または適用を受けないようにすることで、必ず効果が出ます。
それらを検討して改善の余地がなければ、「所得の平準化によるもの」について考えます。これは、現在手を着けなくても後日にその分の効果が出るものです。後日の節税効果より、現在手を着けたことによる節税効果のほうが大きい場合に検討します。
本稿で紹介したことは当たり前のことともいえますが、これができていないために、払わないで済む余分な税金を払っている場合が多いのです。まず、当たり前のことがきちんとできているかどうかを確かめることから始めましょう。
以上(2024年9月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
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