【賃金データ集】諸手当のモデル支給額

書いてあること

  • 主な読者:賃金体系や賃金支給額の見直しを考えている経営者
  • 課題:自社の賃金体系や賃金支給額が妥当か分からない。判断基準が欲しい
  • 解決策:統計資料における同規模・同業種の企業のデータなどを参考にする

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは雇用形態別の「諸手当」です。

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なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 諸手当の位置付けと概要

1)諸手当の費用の位置付け

諸手当は、基本給ではカバーしきれない従業員の個別の事情(住居形態、家族の有無、担当職務など)を賃金支給額に反映する機能を果たしています。また、近年は人材採用難の対策としてユニークな手当を整備する企業が出てきています。

2)諸手当の概要

諸手当にはさまざまな種類がありますが、

  • 業績関連:従業員の業績達成に対する意欲を喚起するための手当
  • 職務関連:従業員が担当する業務に関連する手当
  • 勤務関連:従業員の通勤や勤務実績に関連する手当
  • 生活関連:従業員の生活を補助するための手当
  • その他:上記に分類されない手当

に大別することができます。

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2 諸手当の潮流

諸手当には、基本給ではカバーしきれない従業員の個別の事情を、賃金支給額に反映する機能があります。基本給そのものを改定せずに諸手当で調整するのは、「賃金管理が煩雑になるのを防ぐ」「基本給の引き上げに応じて、自動的に賞与(一時金)や退職金の算定基礎額が上昇するのを防ぐ」といった理由からです。

こうした事情は現在も大きく変わっていないものの、最近は手当を統廃合する動きが活発になっています。企業には、「業績に応じて賃金支給額を変動させたい」という思いがあるため、生活関連の手当のように、企業業績に関係のない属人的な手当を縮小・廃止するケースがあるのです。

ただし、職務関連の手当については、手当による調整ではなく、基本給に組み入れたり、賞与に上乗せしたりするケースがあります。これは、従業員の担当業務の難易度をきちんと評価し、処遇に反映する企業の姿勢を示すためです。

3 厚生労働省、中央労働委員会の統計資料によるモデル支給額

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4 東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

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5 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は以下の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■就労条件総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23.html

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■賃金事情等総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/churoi/chingin/

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■中小企業の賃金・退職金事情■
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/toukei/koyou/chingin/

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以上(2024年5月更新)

pj17908
画像:ChatGPT

【債権回収】信用調査会社を与信管理に活用する

書いてあること

  • 主な読者:取引先の与信管理について信用調査サービスを利用したい経営者
  • 課題:信用調査会社のサービス内容や注意点を知りたい
  • 解決策:多様な情報が収集できるが、うのみにするのは危険。自社の情報と合わせたり、複数の信用調査会社を利用したりして総合的に判断する

1 信用調査会社を利用するメリット

与信管理では情報収集が大切です。信用調査会社を利用するなどして情報を収集しましょう。信用調査会社は、調査対象となる会社について「相手と直接面談をして情報を収集する」「取引をしている金融機関や仕入れ先・取引先から評判を聞き取る」「登記簿謄本などを取り寄せる」などの方法で調査し、報告書にまとめます。報告書の記載事項はおおむね次の通りです。

商号、設立年月日、資本金、所在地、代表者氏名、株主構成(主要株主など)、代表者の評価(経歴など)、沿革、事業内容、取得認証、行政処分情報、設備や事業所などの不動産明細、従業員数、取扱商品と仕入れ先/取引先、金融機関との取引状況、業績および業況、財務分析、決算書、信用評点

また、信用調査会社に依頼して、こちらが知りたいことをヒアリングしてもらうこともできます。コストは掛かりますが、取引規模が大きい相手の場合、信用調査会社の活用を検討したいものです。

2 信用調査会社が提供するサービス

1)代表的な信用調査会社

代表的な信用調査会社には「帝国データバンク」「東京商工リサーチ」があります。この2社は全国規模のネットワークがあり、全国の企業を対象に信用調査を行っています。その他にも、「リスクモンスター」「東京経済」などがあります。また、「アラームボックス」のようにインターネット上のSNS、ブログや口コミなどの中から、対象企業の信用情報を収集し、サービスの利用者に通知するサービスもあります。

■帝国データバンク■

https://www.tdb.co.jp/

■東京商工リサーチ■

https://www.tsr-net.co.jp/

■リスクモンスター■

https://www.riskmonster.co.jp/

■東京経済■

https://www.tokyo-keizai.co.jp/

■アラームボックス■

https://alarmbox.co.jp/

2)データベースサービス

信用調査会社は、独自に調査した企業情報をデータベース化して、インターネットなどを通じて有料で提供しています(日経テレコンなどでも利用できます)。閲覧できる情報の価格は、簡易なものならば1件当たり1000~2000円程度、少し充実したものなら数千円~5万円程度です。

ただし、データベースサービスで公開されている情報は、最新の情報とは限りません。新しい情報が必要な場合は、信用調査会社に依頼して報告書を更新してもらいます。こうした依頼をするには、基本料金(数件分の無料閲覧ができる場合あり)と実費が掛かります。

3)継続的に情報を入手する

会社の経営状態は常に変化します。与信管理を行う際は対象となる会社について継続的に情報収集をする必要があります。信用調査会社では、こうしたニーズに応えるために、希望した会社の情報を、継続的に提供するサービスを用意しています。

例えば、帝国データバンクの「インターネット取引先管理サービス C-モニタリング」の場合、取引先の変化や動向などを電子メールで通知します。こうしたサービスを利用すれば、常に取引先の最新動向が把握できます。

■帝国データバンク「インターネット取引先管理サービス C-モニタリング」■

https://www.tdb.co.jp/lineup/c-moni/

4)その他のサービス

信用調査会社は、企業信用調査サービスやデータベースサービス以外にも取引先の信用状況の把握に役立つさまざまなサービスを提供しています。

例えば、与信管理に活用できるサービスとしては、独自の手法に基づいて算出した倒産確率に関するデータや、海外企業に関する企業信用情報などを提供しているケースがあるので、必要に応じて利用を検討してもよいでしょう。

3 信用調査の活用ポイント

1)信用評点を過信しない

一般的に信用評点は大企業に甘く、中小企業や業歴が浅い企業には厳しくなりがちです。また、調査に非協力的な態度を取る場合や、決算書を公表しない企業は、信用評点も厳しくなりがちです。総合的な評価を端的に示している信用評点は分かりやすい評価基準ですが、うのみにするのは避けましょう。

2)自社が保有している情報と合わせて読み解く

報告書を見る際、代表者の経歴、会社の沿革、株主構成などに不審な点や不自然さがないかなどを、自社との取引内容や窓口担当者(営業担当者や購買担当者など)からの情報と照らし合わせて読み取るようにしましょう。

そして、「おかしい、変だ」と感じたことがあったら、そのままにせず、営業担当者に確認させるなど徹底的に調査しましょう。また、手元にある信用調査書が古い場合は、信用調査会社に依頼して最新の情報を収集するようにします。

3)複数の信用調査会社の信用調査書の利用を検討する

信用調査会社の調査員の経験・資質・能力などによって、調査結果にばらつきが出てくるケースがあります。また、同じ会社の調査を複数の信用調査会社に依頼すると、調査結果に大きな違いがあることもあります。

そのため、取引額が大きな取引先など、特に重要な会社の信用調査では、複数の信用調査会社の利用を検討してみてもよいでしょう。

以上(2024年5月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【労基署の臨検】送検される会社は全体の何パーセント? 労働基準監督年報で確認してみた

書いてあること

  • 主な読者:労働基準監督署の臨検監督について知りたい経営者、人事労務担当者
  • 課題:自社に調査が入る可能性や、送検される可能性がどのぐらいあるのか分からない
  • 解決策:厚生労働省「労働基準監督年報」でおおよその傾向を理解する。2022年のデータによると、調査が入る可能性は4.49%、送検される可能性は0.02%

1 ウチの会社にも労働基準監督署がやって来る?

労働基準監督署(以下「労基署」)による臨検監督(以下「臨検」)とは、

労基署の労働基準監督官(以下「監督官」)が会社(事業場)を訪問するなどして、労働基準関係法令に違反していないかをチェックすること

です。厚生労働省「令和4年労働基準監督年報」によると、2022年中に実施された臨検の状況は次の通りです。

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適用事業場382万3470件のうち、実際に臨検が実施されたのは4.49%、違反があったのは2.93%、司法処分を受けた(経営者などが検察庁に送検された)のは0.02%です。このパーセンテージだけを見ると、自社に臨検が入ったり、送検されたりする可能性は低そうです。ただし、押さえておきたいのは、

2024年4月に「労働時間」「労働条件の明示」など、労働基準法関連の重要な法改正があった関係で、今後、労基署の動きが活発になる可能性がある

ことです。以降では、図表1の労働基準監督年報のデータをもう少し細かくひもといて、労基署の臨検に関する現在の状況を探っていきます。

2 流れをもう一度! 定期監督や申告監督の件数は?

現在の臨検の状況についてイメージがつかみやすいよう、定期監督等(定期監督+災害時監督)と申告監督のフローと件数を整理したのが図表2です。

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前述した通り、司法処分(送検)までいくケースはまれですが、ただ送検されるだけでなく、会社名や違反内容が厚生労働省ウェブサイトで公表されるという、会社にとっては無視できない事態も招きます。

ちなみに、2023年3月1日から2024年2月28日までの公表事案を見ると、

1年間で約400件の会社が、賃金不払いや安全衛生管理の不備などで送検

されています(厚生労働省「労働基準関係法令違反に係る公表事案(2024年3月31日掲載)」)。

■厚生労働省「労働基準関係法令違反に係る公表事案(下記URLのページ中段)」■
https://www.mhlw.go.jp/kinkyu/151106.html

3 どのような業種の会社が臨検の対象になりやすいのか?

臨検の種類ごとに、2022年の実施件数が最も多い業種を見ていくと、

  • 定期監督等(14万2611件) → 建設業(4万9284件)
  • 申告監督(1万6639件) → 商業(2641件)
  • 再監督(1万2278件) → 製造業(4546件)

となっています。重大な労働災害が起きやすい業種や、労働基準関係法令の違反が多い業種は、臨検の対象となりやすいようです。

なお、厚生労働省は各年度の労働に関する施策の方針を示した「地方労働行政運営方針」を公表していますが、2024年度については、

2024年4月より「時間外労働の上限規制」の適用対象となった建設業、自動車運転業務、医師、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)についても監督指導を行っていく旨

が示されています。ただし、こうした事業・業務については、「取引慣行などの関係で個々の事業場だけでは長時間労働の是正が困難な場合がある」とも言っていて、指導については慎重を期して行っていく方針のようです。

業種以外では、会社のライフサイクルなども関係することがあります。例えば、成長期にあり、従業員数を大幅に増やしている企業などは、労務管理が煩雑になりやすく、申告監督などが入りやすい傾向にあるようです。

4 どんな法令違反が指摘されている?

ここまで、調査・臨検の種類やフローなどを中心に紹介してきましたが、

大切なのは、日ごろからきちんと労務管理を行い、調査・臨検を受けることになっても、法令違反なしで完結すること

です。定期監督等と申告監督で法令違反として指摘される項目の上位5つを確認してみましょう。

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定期監督等では幅広い分野で法令違反が指摘されているのに対し、申告監督では賃金不払いが圧倒的に多く指摘されています。定期監督は違反の対象が絞り込まれているわけではないため、全般的に調査され、その中で違反が見つかったりします。一方、申告監督は、

特に退職者から残業手当の不払いなどの申告があるので、賃金不払いに集中しやすい

のです。

以上(2024年6月更新)

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画像:pexels

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