【賃金データ集】地域別のモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは地域別の「基本給」です。

総額人件費の内訳と「基本給」の位置付け

なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 都道府県ごとの賃金格差

 賃金支給額は、産業の集積度合いや人口などによって地域ごとに格差があります。厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、東京都を100.0(43万4300円)とした場合の道府県ごとの賃金比率は、東京都に次いで高い神奈川県の89.5%(38万8700円)から最も低い青森県の65.2%(28万3000円)まで、24.3ポイントの差があります。

2 厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

都道府県別、性別の賃金支給額

鉱業、砕石業、砂利採取場~電気・ガス・熱供給・水道業まで

情報通信業~金融業、保険業まで

不動産業、物品賃貸業~生活関連サービス、娯楽業まで

教育、学習支援業~サービス業(他に分類されないもの)まで

3 東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額1

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額2

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額3

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額4

東京都労働相談情報センターの統計資料によるモデル支給額5

4 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は次の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■賃金構造基本統計調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

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■中小企業の賃金事情■
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/toukei/koyou/chingin/

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以上(2025年8月更新)

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画像:ChatGPT

【オーナー企業の事業承継(2)】経営権の承継とオーナー個人の相続

1 オーナーか個人か。立場で異なる2つの事業承継問題

事業承継では代表の座を移すことに加えて、経営権(オーナーが所有する自社株式など)を円滑に承継させなければなりません。これはオーナーにとって、

  • オーナー経営者の立場では、経営権の承継の問題
  • 個人としては、オーナー個人の相続問題

といった違いがあります。従って、自社株式の円滑な承継のためには、オーナーの相続についてもスムーズに行われるよう事前の対策が必要なのです。

2 経営権の承継の問題とは

株式会社の場合、会社法上、定款の変更や役員の選任といった経営に関する重要な事項の決定には、株主総会で承認されなければなりません。承認に必要な議決権の割合は、決定事項に応じて会社法に定められています。もし、オーナーや意思を同じくするオーナー以外の株主(家族や役員など)だけで、承認に必要な議決権の割合を確保できていないと、

オーナーや取締役会で重要事項を決定しても、株主総会で承認が得られない可能性

が出てきます。従って、事業承継対策の1つとして自社株式が分散するのを避けることが大切です。後継者が会社の重要事項を決定できるように、後継者と意思を同じくする後継者以外の株主(家族や役員など)に、持株比率(議決権)を集約しておく必要があります。これが経営権の承継の問題です。

なお、承認に必要な議決権の割合ごとの決議内容等は次の通りです。

承認に必要な議決権の割合ごとの決議内容

経営の安定化のためには、最低でも議決権の2分の1超、理想は議決権の3分の2以上の確保が必要です。また、社外株主(オーナーと意見を異にする可能性のある株主)に議決権の3分の1超を保有させないことです。

また、オーナーの個人所有の土地や建物などを会社が賃借して事業に使用している場合や、経営上重要なオーナー所有の財産(自社株式以外)がある場合には、これらの資産も後継者に承継しておいたほうが経営の安定化につながります。

3 経営権の承継の問題対策:株式の集約・分散防止

1)譲渡制限株式

株主が自身の所有する自社株式を譲渡しようとする場合には、会社の承認を必要とする旨を定款に定めることができます。この株式を譲渡制限株式といいます。この場合の会社の承認とは取締役会設置会社においては取締役会、未設置会社においては原則株主総会の承認となります。

譲渡制限株式を譲渡する場合の手続きは次の通りです。

  • 譲渡制限株式の株主が株式を他人に譲渡しようとするときは、会社に対し、その株数、譲受人の氏名・名称等を明示して、これを承認するか否かの決定を請求します(会社法第136条、第138条第1号)。
  • 会社は、譲渡承認の請求を受けたときは、2週間以内に株主総会または取締役会においてこれを承認するか否かを決議し(会社法第145条第1号)、その結果を承認請求者に通知します(会社法第139条)。
  • 会社が譲渡を承認しない旨を決定したときは、会社がこの株式を買い取るか、または買取人を指定します(会社法第140条)。なお、会社が株式を買い取るとき、会社は40日以内に、また、買取人を指定したときは指定買取人は10日以内に、買い取る旨およびその株式数を承認請求者に通知しなければなりません(会社法第145条第2号)。

2)株式の売渡請求権

譲渡制限は相続や合併などの一般承継による取得には適用されません。このため相続や合併などにより、譲渡制限株式を相続した株主に対して会社がその株式を売り渡すよう請求できる旨を定款に定めることができます(会社法第174条)。なお、この売渡請求は相続などがあったことを知った日から1年以内に、株主総会の特別決議を経て請求する必要があります(会社法第176条第1項)。

4 経営権の承継の問題対策:種類株式の活用

会社法では定款に定めることにより、権利の内容が異なる複数の株式を発行することを認めています。前述の譲渡制限株式もそのうちの1つですが、この他、議決権制限株式や拒否権付株式(黄金株)、取得条項付株式などを活用すると後継者に議決権を集中させたり、逆に未熟な後継者の議決権行使を抑制したりすることができます。なお、種類株式の活用に関する詳細については、以下のコンテンツをご参照ください。

5 オーナー個人の相続問題とは

通常、相続が発生すると

  • 相続人全員で遺産分割協議を行う
  • 分割の内容を記した遺産分割協議書に署名なつ印をする
  • 相続した財産の名義変更を行う

ことになります。この分割協議は相続税の申告期限(相続発生後10カ月)以内をめどに行われますが、相続人全員の合意を必要とするため、しばしば協議が難航することがあります。いわゆる「争続」の発生です。特にオーナーの相続財産は自社株式や会社で使用する資産の占める割合が高いことが多いので、これを後継者に集約しようとすると、他の相続人の相続する資産とのバランスが崩れ、合意を形成するのに難航しがちです。

事業承継では、オーナーに万一のことがあった場合に、こうした「争続」を避け円滑に経営を後継者に承継するため、遺言を残しておくことも一法です。

6 オーナー個人の相続問題対策:遺言の作成

1)公正証書遺言

公正証書遺言とは、遺言者が証人2人以上の立ち会いの下、公証人の面前で、遺言の内容を伝え、それに基づいて、公証人が遺言者の意向を文章にまとめて作成するものです。公証人は裁判官、検察官などの法律実務に携わってきた法律の専門家で、法律的に見てきちんと整理した内容の遺言を作成します。そのため、要件の不備で遺言が無効になるのを避けることができるため、3種類のうちで最もお勧めの遺言書です。また、原本が公証役場に保管されるため、遺言書の破棄や、隠匿や改ざんの心配もありません。なお、公正証書遺言の作成に当たっては手数料が必要になります。

公正証書遺言

2)自筆証書遺言

自筆証書遺言とは、遺言者が自筆で遺言内容の全てを書くものです。もし、要件に不備があれば遺言全体が無効になる場合があるので、慎重に作成しましょう。作成に当たっての注意点は次の通りです。

  • 図表などを含む全文を自筆する
  • 年月日の日付を自筆する
  • 氏名を自筆する
  • 押印は認印・母印でも有効だが、実印が望ましい
  • 加除訂正箇所は、その箇所に押印の上署名が必要
  • 封印をするのが望ましい

なお、民法改正により、財産目録については自筆ではなく、パソコンでも作成できます。また、法務局に遺言書を保管でき、その遺言書については、家庭裁判所の検認も不要となります。

3)秘密証書遺言

遺言者が、遺言の内容を記載した書面に署名押印をした上で、これを封じ、遺言書に押印した印章と同じもので封印し、公証人および証人2人の前にその封書を提出し、自己の遺言であることを証明してもらう方法です。遺言の内容を誰にも明らかにせず秘密にすることができますが、公証人がその内容を確認できないため、自筆証書遺言と同様に要件に不備があれば遺言全体が無効になりますし、家庭裁判所の検認も必要です。

7 オーナー個人の相続問題対策:遺留分への対応と民法の特例

1)遺留分と遺留分侵害額請求権

民法では遺言の内容にかかわらず、相続人の最低限の相続分を保障するために「遺留分」が定められています(民法第5編第8章)。遺留分は、相続人のうち、配偶者、子、直系尊属(被相続人の父母)にだけ認められており(兄弟姉妹は対象外)、その割合は法定相続割合の2分の1(直系尊属のみが法定相続人のときは3分の1)です。なお、遺留分算定の基礎となる財産は、

(相続開始時点で被相続人が有していた財産の価額)+(生前贈与した財産のうち、相続開始前1年以内に贈与した一定の財産の価額)-(債務の価額)

となります。なお、相続人に対する生前贈与については、特段の事情がない限り、相続開始前10年以内(2019年6月30日以前に発生した相続にしては無期限)の贈与について、遺留分算定の対象となります。オーナーが遺言を作成し、後継者に対して自社株式や事業用資産を集中して相続させたり(遺贈)、生前に贈与したりすると、他の相続人の「遺留分」を侵害する場合があります。遺留分を侵害された相続人は、遺贈や生前贈与を受けた後継者に請求して遺留分を取り戻す権利が認められています。これを「遺留分侵害額請求権」といいます。遺留分侵害額請求権を行使された後継者は、遺留分に相当する金銭を支払わなければならないため、多額の資金調達を強いられたりすることがあります。このような事態を避けるため遺言の作成に当たっては、専門家とも相談の上、他の相続人の遺留分に十分配慮しなければなりません。

遺留分と遺留分侵害額請求権

2)遺留分に関する民法の特例

民法では、被相続人の生前に、遺留分を有する相続人が自分の遺留分を放棄することが認められています。ただし、そのためには、それぞれの相続人が自分で家庭裁判所に申し立てをして許可を受けなければなりません。これらの作業負担が大きいことや、家庭裁判所による許可・不許可の判断が相続人ごとにバラバラになる可能性があることなどから、自社株式の分散防止対策としては利用しにくいものとなっています。そこで、「中小企業の経営の承継の円滑化に関する法律(経営承継円滑化法)」では、一定の要件を満たす中小企業の後継者が、オーナーの遺留分を持つ権利者全員が合意し、所要の手続きを経ることで、遺留分に関する民法の特例の適用を受けることができるよう定められています。この特例を受けるための一定の要件と所要の手続きは次の通りです。これらを満たすことにより、「除外合意」と「固定合意」の適用を受けることができます。

「除外合意」と「固定合意」の適用

1.除外合意

除外合意とは、

後継者が旧オーナーからの贈与により取得した自社株式の全部または一部について、その価額を遺留分を算定するための価額に算入しない旨を合意すること

をいいます。

除外合意

2.固定合意

固定合意とは、

後継者が旧オーナーからの贈与により取得した自社株式の全部または一部について、遺留分を算定するための財産の価額に算入すべき価額を、当該合意時における価額とする旨を合意すること

をいいます。固定合意により、将来の遺留分侵害額請求権に対応した価額を合意時点の価額に固定することができ、将来の相続発生に備えての資金対策などが立てやすくなります。原則として、遺留分の価額の算定時期は相続開始時点です。しかし、この場合、後継者がオーナーの生前に自社株式の贈与を受けて事業を引き継ぎ、会社の業績を向上させ、株価が上昇すると、相続時にその株価の増加分が遺留分算定財産に加算されてしまいます。すなわち、後継者が経営努力をすればするほど遺留分侵害額請求の対象財産が増加してしまうという矛盾した結果となってしまいます。そこで、譲渡を受けた株式の価額を後継者とその他の推定相続人との間で合意した価額で固定し、経営努力による価額の上昇分を後継者に取得させることとしたのがこの固定合意です。

固定合意とは

以上(2025年8月更新)

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画像:soo hee kim-shutterstock

「確定拠出年金」の見直しが企業に与える影響とは?

2025年6月13日に成立した「年金制度改正法」が企業にどのような具体的な影響を与えるのか、そして企業が今後、福利厚生制度や退職給付制度をどのように見直していくべきか、深く掘り下げて説明します。

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育児・介護企業法の2025年10月改正に伴う就業規則等見直しのポイント

育児・介護による離職防止をさらに一歩進めるため、育児・介護休業法の段階的な改正が予定されています。2025年10月施行の改正内容は、仕事と育児の両立を可能とする措置を義務付けるもので、早期の準備が必要です。

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貴社の「未来」を育む! 中小企業のための指導者採用・育成術

中小企業における指導者人材の必要性を再確認しながら、理想的な人物像の明確化、効果的な採用の工夫、現場での育成設計など、限られたリソースでも実践できる方法を具体的にご紹介します。

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省エネ対策の第一歩! 「省エネ診断」と「省エネ最適化診断」のご紹介

エネルギー価格の高騰やカーボンニュートラルへの対応が求められる中、小規模な事業所や中小企業でも取り組める省エネ診断事業が注目を集めています。国の支援を活用すれば、費用負担を抑えて専門家による診断を受けることが可能です。

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ウチの子に残業させるな! 会社版モンスターペアレントへの対応

1 社員本人の労働問題に、親が介入してくる?

 社員本人の労働条件や処遇について、その社員の親が本人に代わり、会社に苦情を申し立ててくることがあるのをご存じでしょうか? 例えば、社員の配属先や人事評価に対する不満を会社にぶつけてきたり、社内の人間関係に口を出してきたりといった具合です。

社員本人の労働問題に介入してくる親を、この記事では「会社版モンスターペアレント」

と呼ぶことにします。

一般的に、モンスターペアレントとは、学校に対して理不尽な要求を繰り返す親を指す言葉です。少子化が進み、親が昔よりも子どもに対して過干渉になったことなどが原因といわれますが、子どもが社会人になった後もその過干渉が続き、会社版モンスターペアレントになってしまうケースがあるのです。ハラスメントに対する規制などが強化され、かつてより社員の権利が主張されやすくなったことも、こうした状況に拍車をかけているといえるでしょう。

会社版モンスターペアレントは、相手方が社員の親ということで、会社としても強く出にくい面がありますが、押さえておきたいポイントは、

労働契約は会社と社員本人との間で成立するものであるため、親は、当該労働契約に関しては第三者に他ならず、原則として労働条件に介入することはできない

ということです。社員の親の話を真摯に聞くのは大切ですが、親が何を言ってきたとしても、最終的には「会社と社員本人の問題」であるということを念頭において対応しましょう。

この記事では、会社版モンスターペアレントの具体的なケースとその対応例を3つ紹介します。

2 (事例1)残業について苦情を言ってくる親

1)ケース

新入社員のAさんは、入社して半年間が経過し、業務にも慣れてきました。Aさんの上司(課長)も頼もしく思っていましたが、あるとき、Aさんの親から、

「うちの息子のAが毎日遅くまで残業していると聞きました。同期の子は残業がないと言っているのに、Aばかり残業させるのはおかしいです!」

と電話がかかってきました。会社はどのように対応すべきでしょうか?

2)対応例

前述した通り、

労働契約は会社と社員本人との間で成立するものであるため、親は、当該労働契約に関しては第三者に他ならず、原則として労働条件に介入することはできません。

つまり、この事例の場合、Aさんの労働条件について、会社が当事者ではないAさんの親と交渉する必要はありません。ただし、

Aさん本人が会社に直接言い出せない不満や不安を、親が代弁している可能性は考慮

する必要があります。親のクレームをただ門前払いするだけでなく、Aさん本人との対話を通じて、根本的な問題(Aさん自身の不満、会社への不信感、コミュニケーション不足など)を特定し、解決に努める必要があります。具体的には次のステップで進めることが考えられます。

1.親への対応

会社としては、

「Aさんの労働条件については、Aさんご本人と会社の間の労働契約に関する事項ですので、Aさんご本人からの申し出でなければ、詳細なご説明は致しかねます。一般的に、労働時間や残業は、業務の必要性に応じて発生するもので、部署や担当業務、進行度合いによって異なります。同期の方と全く同じ時間になることはありません」

などと、労働契約の当事者がAさん本人である旨、本人からの申し出でなければ詳細な説明をすることができない旨をAさんの親に伝えます。

2.Aさん本人への対応

親からの連絡があったことをAさん本人に伝え、Aさん自身の残業に対する認識や不満等を直接ヒアリングします。Aさん自身が残業について不満を持っている場合、その内容を真摯に聞き、適切な労働時間管理が行われているか、課長からAさんに対する業務の配分が正当といえるものかを確認します。労働時間管理や業務の配分に問題がないと判断した場合、業務の必要性に応じた残業命令は会社の業務命令権の範囲内であり、不当ではないことをAさんに説明します。また、労働時間や残業に関する規定が就業規則等に明記されていることを、必要に応じてAさんに説明します。もちろん、労働時間管理や業務の配分に問題があると判断した場合は、速やかに是正する必要があります。

3.親からクレームが繰り返される場合の対応

親から会社に対し頻繁に電話があり、会社の業務に支障をきたす場合は、迷惑行為である旨を伝えます。それでも繰り返される場合は、弁護士に相談し、法的措置を検討します。

3 (事例2)給与や評価に関する不満を言ってくる親

1)ケース

新入社員Bさんの給与や評価について、Bさんの親が、

「うちのBは毎日遅くまで頑張っているのに、給料が同期より低いと聞きました。評価も納得がいかないと。正当な評価をして、もっと給料を上げるべきです!」

と、会社に苦情を申し立ててきました。会社はどのように対応すべきでしょうか?

2)対応例

給与や評価は会社の経営判断と人事裁量に属する事項ですので、まずは、労働契約の当事者であるBさん本人と会社の問題であることをBさんの親に伝えます。もっとも、Bさん本人が会社に直接言い出せない不満や不安を、Bさんの親が代弁している可能性も考慮する必要があります。具体的には次のステップで対応します。

1.親への対応

会社としては、

「一般的に、給与や評価については、当社の評価制度に基づき、業務実績や貢献度を総合的に判断して決定しております。Bさんの個別の評価内容については、Bさんご本人と会社の間の労働契約に関する事項ですので、Bさんご本人以外にはお伝えできません。Bさんご本人には、評価面談を通じてご説明しておりますので、ご不明な点があればご本人から改めてご相談いただくようお伝えください」

などと、Bさんの給与や評価に関する情報は開示できない旨をBさんの親に伝えます。

2.Bさん本人への対応

親からの連絡があったことをBさんに伝え、Bさん自身の給与や評価に対する認識・不満等を直接ヒアリングします。その上で、会社の評価制度や賃金決定の仕組みについて、Bさんに丁寧に説明し、疑問点を解消する機会を設けます。親からの給与や評価に関する苦情は、多くの場合、社員自身が会社の評価基準や自身の評価理由を十分に理解していないことが原因です。

3.給与・評価制度に問題がある場合の対応

会社の人事評価制度や賃金規定の内容が不明確な場合、不公平感が生じやすいです。社内でも、制度や規定の内容を確認し、不明確な部分があると判断した場合、改訂を検討します。また、仮にBさんが「同期と比べて不公平」と感じている場合、それが性別、年齢、雇用形態などによる不当な差別(例:賃金における男女差別)に該当しないかを確認し、該当する可能性がある場合、速やかに是正する必要があります。Bさんの業務実績や貢献度に見合わない評価や給与であると会社が判断する場合、評価の見直しや今後の成長に向けた具体的なフィードバック、目標設定など、改善策を検討し、Bさん本人に説明します。

4 (事例3)異動に関する要求をしてくる親

1)ケース

新入社員Cさんの親が、Cさんの体調不良や業務への不満を理由に、異動について、

「うちのCは今の部署での仕事が合わないようです。精神的に参ってしまっているので、すぐに部署を異動させてください! それが無理なら、もう辞めさせます!」

と、苦情を申し立ててきました。会社はどのように対応すべきでしょうか?

2)対応例

異動命令は会社の業務命令権に基づき行われるものであり、また、会社を退職するか否かは社員本人が決定する事項です。まずは、これらの事項は、労働契約の当事者であるCさん本人と会社の問題であることを伝えます。もっとも、事例1と2と同様に、Cさん本人が会社に直接言い出せない不満や不安を、Cさんの親が代弁している可能性も考慮する必要があります。具体的には次のステップで対応します。

1.親への対応

会社としては、

「異動については、Cさんご本人の意思を加味しながら、会社の人事権に基づき判断しております。また、退職についても、Cさんご本人からの正式な申し出が必要です。いずれにしましても、Cさんご本人と会社の間の労働契約に関する事項ですので、Cさんご本人と直接面談して対応を検討させていただきます」

などと、異動や退職は、親がCさんに代わって要求できるものではないことを伝えます。

2.Cさん本人への対応

親からの連絡があったことをCさん本人に伝え、Cさん自身の異動や退職についての意向を直接ヒアリングします。会社は、業務上の必要性やCさんの心身の状態・業務状況・家庭事情等を考慮して、異動を検討します。会社が異動の必要がないと判断した場合、その旨を、理由と併せてCさんに伝えます。その際に、Cさん自身が退職を希望した場合、法律(民法や労働法など)や社内規程に則り、適切な手続き(退職届の提出、退職日の調整など)を進めます。なお、Cさんに退職を促す場合(退職勧奨する場合)、強要とみなされないよう慎重に行う必要があります。不適切な退職勧奨は、不法行為として損害賠償の対象となる可能性がありますので、留意が必要です

(監修 のぞみ総合法律事務所 弁護士 曽田駿希)

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画像:友紀 寺崎-Adobe Stock

【朝礼】伊能忠敬、50歳の再出発! 勉強するのは何歳からでも遅くない

【ポイント】

  • 伊能忠敬は50歳で隠居してから学問の道を志し、弟子とともに日本地図を完成させた
  • AIが業務を肩代わりしてくれるようになり、私たちは「学び直し」の時間を作れる
  • いくつになっても知的好奇心を忘れず、学び続ける姿勢が、未来を切り開く原動力となる

今日は、ある歴史上の人物の生涯から、学び続けることの意義について考えてみたいと思います。紹介するのは、伊能忠敬(いのうただたか)です。彼は、江戸時代後期に日本全国を歩いて測量し、弟子とともに日本で初めての正確な実測地図を完成させたことで知られています。

伊能忠敬の人生で特に注目すべきは、彼がこの偉大な地図作りの旅に出た年齢です。なんと、彼は50歳で家業を息子に譲って隠居した後、本格的に天文学や測量学の道を志しました。そして、55歳で測量の旅に出発し、そこから実に17年もの歳月をかけて、全国を歩き続けたのです。彼が亡くなったのは73歳。地図が完成したのは、彼の死後、弟子たちの手によってでした。

この伊能忠敬の生涯は、私たちに非常に力強いメッセージを送ってくれます。それは、「勉強するのは何歳からでも遅くない」というものです。彼は若い頃から学問、特に算術や天文学に強い関心を持っていましたが、家業の経営に忙しく、本格的に学ぶ時間はなかなか取れませんでした。しかし、隠居という人生の転機を迎え、時間ができた時に、彼は迷わず長年の夢だった学問の道を選んだのです。当時50代という年齢で、新たな分野に飛び込み、しかも当時の最新の知識と技術を習得し、それを実践して歴史に残る大事業を成し遂げた彼の情熱と行動力には、ただただ驚かされます。

近年、私たちの業務環境は目まぐるしく変化しています。特に、生成AIをはじめとする新しいテクノロジーの進化は目覚ましく、これまで人間が時間を割いて行っていたルーティンワークや情報整理の多くを、AIが肩代わりしてくれるようになってきています。伊能忠敬は隠居してようやく自由な時間を手に入れましたが、私たちは今、この瞬間にもそれができるわけです。もし、これまで「時間がないから」と諦めていたこと、あるいは漠然と「いつか学んでみたい」と考えていたことがあるなら、今こそがそのチャンスかもしれません。

これまで興味があった分野の深掘りでも、あるいは全く新しい挑戦でも構いません。伊能忠敬のように、いくつになっても知的好奇心を忘れず、学び続ける姿勢こそが、私たちの仕事や人生を豊かにし、未来を切り開く原動力となるはずです。

以上(2025年9月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

3歳を過ぎても時短勤務OK? 10月施行の子育ての新ルール!

1 10月から始まる「新しい働き方」に備えよう

2025年10月1日から、育児・介護休業法の改正により、全ての会社に「柔軟な働き方を実現するための措置等」が新たに義務付けられます。これは、

「3歳以上小学校就学前の子」を育てる社員に対し、「短時間勤務」「テレワーク」などの措置を講じる制度

です。現行法でも、会社は3歳未満の子を育てる社員に対し、短時間勤務などの措置(所定労働時間の短縮措置等)を講じる義務を負っていますが、今回の改正内容である

「柔軟な働き方を実現するための措置等」の場合、会社が2つ以上の措置を実施し、社員がそのうち1つを選択して利用できる仕組みになっている点

が異なります(図表1)。

会社が実施する措置の内容

さて、今回の法改正により、特に中小企業では「制度導入の手間」「代替要員の確保」「職場内の不公平感」など、現実的な課題がつきまといます。「ウチは人手不足だから無理」などと尻込みしてしまうかもしれませんが、少子高齢化と人手不足が加速する今、労働力を確保する上でも、働きやすい環境整備は必須。会社としての姿勢が問われる大事な局面といえます。

この記事では、制度の概要を整理した上で、実際に起こり得る現場の課題とその対応策をご紹介します。

2 会社に求められる「いずれか2つ以上の措置」

2025年10月1日から、会社は図表2の5つの措置のうち、2つ以上の措置を整備・実施する義務を負います。社員は会社が講じた措置の中から、1つを選択して利用することができます。なお、4.の特別休暇と5.のテレワークは、原則時間単位で利用できるようにする必要があります。

ちなみに、2025年4月1日からは、「3歳未満の子を育てる社員のためにテレワークを導入すること」が努力義務化されており、5.のテレワークと混同するかもしれませんが、

5.のテレワークは、「3歳以上小学校就学前の子」を育てる社員が対象で、取り組みは義務(措置の1つとして選択する場合)

となります。

柔軟な働き方を実現するための措置等

なお、措置は2つ以上実施する必要がありますが、

必ずしも会社全体で内容を統一する必要はなく、業務の性質や実施体制に照らして、事業所単位や事業所内のライン単位、職種ごとに決めてもよい

とされています。

制度導入時の注意点は次の通りです。

1)意見聴取

柔軟な働き方を実現するための措置等を講じるに当たって、会社は、

改正法の施行(2025年10月1日)よりも前に、過半数労働組合(ない場合は過半数代表)の意見を聴く義務

を負います。既に社内で導入している制度(テレワークなど)を「柔軟な働き方を実現するための措置等」として選択することは可能ですが、その場合も、職場のニーズを把握するため、過半数労働組合等への意見聴取は必須となっています。

2)個別の周知・意向確認

会社は、選択した制度(以下「対象措置」)について、

社員の子が3歳になるまでの間に、面談等により対象措置の内容を個別に周知し、利用の意向を確認する義務

を負います。具体的には、図表3の内容に沿って行います。なお、対象措置の利用を控えさせるような個別周知と意向確認は認められません。

個別の周知・意向確認

では、これらの制度を導入したときに、実際の職場ではどんな問題が起きるのでしょうか。次章では、現場で想定される課題を挙げ、それぞれの対応策を見ていきます。

3 中小企業における現場の課題とその対応策

1)代替要員がいない! 短時間勤務制度の落とし穴

1.課題

短時間勤務制度を導入した場合、当然ながらその分の労働時間が減ります。1日8時間働いていた社員が6時間勤務になれば、2時間分の仕事を誰かが補う必要があるわけです。しかし、小規模事業者では「代替要員がいない」「残業では補えない」という声も多く聞かれます。

2.対応策

まずは「業務の棚卸しと再分配」から始めましょう。短時間勤務制度を利用する本人が抱えている業務の棚卸しをして、チーム内での再分配を検討します。思い切って「やめる業務」を決めることも必要です。

最近では、短時間・短期間の業務を請け負う「スキマ人材サービス」も普及しています。育児期間中だけ、業務の一部を外部委託するという考え方も現実的です。

あとは、「短時間正社員制度の導入」という方法もあります。代替要員を現行の正社員以外からも募るという考え方です。パート等の処遇を改善し、一定時間の労働で、責任ある業務を担ってもらう仕組みを検討してみましょう。

2)ハラスメントの温床に? 「ズルい」「甘えてる」の空気

1.課題

社員が対象措置を利用することで、そのフォローに回る他の社員などから「また早退か……」「こっちは残業なのに……」など心ない発言がされたり、本人を無視するなどの行為に出たりすることがあります。対象措置を利用した社員が会社に居づらくなるような言動は、

「妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント」に該当する恐れ

があります。会社はこのようなハラスメントについて防止措置を講じる義務を負っていますから、上のような空気が生まれる前に、社員を教育する必要があります。

2.対応策

まずは「社員研修」を実施し、「対象措置の利用は権利であり、サポートし合うのが企業文化である」ということを社内に周知しましょう。弁護士やコンサルティング会社などが、ハラスメント防止研修を随時実施しています。短時間のeラーニングでも構わないので、制度導入前に行いましょう。

また、「管理職の意識改革」も大切です。管理職が対象措置の利用に否定的・消極的だと、それが職場全体の空気に影響します。対象措置の利用について、「嫌みを言わない」「制度を利用しやすくする」ことが管理職の責任であると、社長が明確に伝えましょう。

加えて、「相談窓口の整備」についても見直しましょう。会社はハラスメントに関する相談窓口を設置する義務を負っていますが、社内の窓口だけでは対応できる自信がなければ、外部の専門家(弁護士や社労士)への相談窓口も用意しておくと、社員は安心できます。

3)「その制度、私も使えますか?」などの声への対応

1.課題

対象措置の内容を社内に周知した場合、「自分もテレワークを使いたい」「小学生の子どもでも対象ですか?」といった声が、社員から寄せられる可能性があります。ただ、

「柔軟な働き方を実現するための措置等」の対象は、「3歳以上小学校就学前の子」を育てる社員

であり、対象外の社員の声まで聞いていくと、対応しきれない、説明がつかないといった混乱に陥る恐れがあります。また、「〇〇さんは使えて、自分は使えないのはなぜか?」という不公平感にもつながりかねません。

2.対応策

まずは、「対象者や利用要件を明記した社内ルールを整備」するようにしましょう。制度の内容や申請の流れだけでなく、「対象は3歳以上小学校就学前の子を育てる社員」といったように、誰が使えるのかを明確にします。

次に準備したいのは「社員向けQ&A」です。事前に社員から寄せられそうな質問(例:「テレワークって週何回まで?」「事務職でも使える?」「副業中でも使える?」など)を想定し、あらかじめ答えを用意しておくと、混乱を未然に防げます。

こうした一連の取り組みの中で大切なのは、

会社が対応可能な範囲をはっきりさせること

です。例えば、「当社ではテレワーク制度は現在対象外」「短時間勤務制度のみ導入予定」といったように、できること・できないことを明確にします。曖昧な表現を避け、「検討中」よりも「〇年〇月に再検討予定」と記載するほうが誠実です。

4 法改正は「労働力確保のチャンス」

今回の法改正は会社の規模を問わないため、一見「中小企業泣かせ」と思える内容かもしれません。しかし、考え方によっては「柔軟な働き方ができる職場です」とアピールする絶好のチャンスでもあります。子育てや介護を抱える優秀な人材にとって、「働き続けられる会社かどうか」は、採用時の大きな判断基準になっています。

大切なのは、完璧な制度整備ではなく、「まずできることからやってみる」こと。1つの制度を導入すれば、確実に職場の雰囲気や社員の安心感は変わります。中小企業ならではの小回りを利かせて、人に優しい働き方を実現していきましょう。

以上(2025年9月作成)

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画像:Bfinity-Adobe Stock

スケジュール管理を阻む「先延ばし癖」を改善

1 スケジュール管理に悩んでいませんか?

あらゆる仕事には締め切りがあり、スケジュール管理は仕事の基本です。とはいえ、スケジュール管理を苦手とする人は大勢います。スケジュール管理ができない理由として、仕事の見込み時間が甘いなどが考えられますが、「先延ばしにしてしまう」というのも1つです。

産業心理学者が記した「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」(*)によると、さまざまな調査において、「約95%の人が物事を先延ばしにすることがある」「約4人に1人が先延ばしが慢性的になっており、自分の特徴の1つである」と回答しています。

先延ばし癖は、心理学や行動経済学などの分野でも関心を集めており、

先延ばし癖の改善策の1つとして挙げられるのが、モチベーションのコントロール

です。高いモチベーションを保てれば、物事を先延ばしにすることなく、適切に対応できます。

前述した「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」によると、モチベーションを左右するのは、「価値の大きさ」「努力が報われる大きさ」「時間の長さ(遅れの大きさ)」です。実際、日々の仕事においても、

  • 自分の成長につながるとは思えない(価値が小さい)
  • すぐやらなくても大丈夫(時間に余裕があるので、問題が切実に感じられない)
  • 自分には難し過ぎて解決できない(努力が報われない可能性が大きい)

と感じる仕事は、先延ばしにしてしまう人が多いはずです。

そこで、以降では、「価値の大きさ」「時間の長さ(遅れの大きさ)」「努力が報われる大きさ」の各要素に注目しながら、先延ばし癖を改善するための行動として

  • あえて先延ばしにする
  • 具体的にイメージする
  • 仕事を小分けにしてみる

を紹介します。

2 あえて先延ばしにする

組織への貢献度や緊急度が高い重要な仕事であっても、あまり自分が得意とすることでない場合、着手する気になれないものです。こうしたケースの改善策として、締め切りが目前に迫っている場合は別ですが、あえて少しだけ先延ばしにし、他の重要度の高い仕事と組み替える方法があります。こうすることで、結局何にも着手できない状態を防ぐことができます。

ただし、組み替える場合は、仕事の優先順位を正しく付けていることが前提です。組織への貢献度や緊急度が低い仕事ばかりに取り組んで達成感を得ることがないようにしましょう。

3 具体的にイメージする

「すぐやらなくても大丈夫」など、時間の余裕がある仕事は先延ばしにしがちです。しかも、余裕があることを言い訳にして、自分を甘やかしてしまいます。

これを避けるには、「週の後半頑張れば間に合うだろうから、前半は違う仕事に取り組もう」とぼんやりと先延ばしするのではなく、何時間先延ばしにするのか、着手しない間にどのような仕事に取り組むのかを、具体的にイメージします。

ある喫煙習慣に関する研究では、被験者に毎日1箱たばこを吸い続けるよう求めたところ、本数を減らす指示をしていないのに、全体的な喫煙量が徐々に減ったという結果があります。これは毎日同じ本数を吸い続けなければならないと自覚したことで、自制心が働くわけです。

何時間先延ばしにし、その間どんな仕事に取り組むのかを具体的にイメージすると、「優先度の低い仕事に取り組んで、無駄な時間を過ごしている場合ではない」と認識することができます。また、先延ばしをしたことで起こるかもしれないトラブルやミスについても具体的にイメージするとよいでしょう。

4 仕事を小分けにしてみる

「自分には難し過ぎて解決できない」など、努力が報われないと諦めを感じる仕事は、先延ばしにしがちです。これを避けるためには、仕事を小分けにして取り組みます。

1つの固まりだと難しく感じる仕事でも、小分けにしてみると、思っていたよりも簡単だったということがあります。また、小分けにして1つずつ終わらせることで、進歩を感じられ、達成感が生まれます。

この際、取り組みやすい課題から少しずつ始めてみるのがコツです。例えば、企画書の作成に着手するなら、「グラフだけでも完成させる」などの視点で取り掛かります。

5 先延ばしが良い効果を生むことも?

先延ばし癖を克服することは簡単ではなく、改善策に取り組んでも劇的にスケジュール管理がうまくいくとは限りません。効果がすぐに表れないと、モチベーションを保つのが難しいと感じるかもしれませんが、諦めてはいけません。

人は年齢を重ねるほど、先延ばしにすることが減るという研究結果があります。これは年齢を重ねて物事の因果関係が理解できるようになることで、若い頃は無意味に感じていたことにも、意味を見いだせるようになるからだと考えられています。

任せられた仕事の中には、なぜ自分が取り組まなければならないのか、その目的を理解するのが難しいものがあるかもしれません。その場合、自分で考えることに加え、上司に相談して、目的やスケジュールを組み立てる際の難所などについて確認しましょう。上司はより高い視点から仕事を捉えているため、気付きを得られるはずです。

また、上司はスケジュール管理を教えるということにとどまらず、部下により多くの経験を積ませるようにします。経験に基づく広い視点は、計画倒れにならないスケジュール管理につながるでしょう。

一方、先延ばしには、悪い効果だけでなく、良い効果もあると説く人もいます。例えば、アイデアを出すといったような、創造性を発揮する類いの仕事の場合、先延ばしによってアイデアの質を高めることができるとの研究もあるようです。

しかし、単に先延ばしをするのではなく、「3時間後に、アイデア出しの時間をつくる」といったように、課題を認識した上で、一旦その仕事から離れて、息抜きをするなど他のことをするのが効果的だとされています。

【参考文献】

(*)「ヒトはなぜ先延ばしをしてしまうのか」(ピアーズ・スティール(著)、池村千秋(訳)、阪急コミュニケーションズ、2012年7月)

「予想どおりに不合理 行動経済学が明かす『あなたがそれを選ぶわけ』」(ハヤカワ文庫 NF)(ダン・アリエリー(著)、熊谷淳子(訳)、早川書房、2013年8月)

「DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューオンライン(2017年10月31日)」(ダイヤモンド社、2017年10月)

以上(2025年8月更新)

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