政治・経済・スポーツ……2024年の主な出来事を振り返ろう

2024年を振り返って

早いもので、2024年も終わりが近づいてきました。今年はどのような出来事があったのでしょうか? 次の図表を見ながら1年を振り返ってみましょう。なお、12月の出来事は、2024年11月22日時点で予定されている内容です。

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2024年は、元日から「令和6年能登半島地震」が発生し、8月8日にも日向灘を震源とする地震発生に伴い、南海トラフ地震臨時情報が発表されるなど、大きな災害がありました。また、政治面では日本・米国それぞれのリーダーが交代となり、経済面では、記録的な株価の変動や、マイナス金利解除に伴う17年ぶりの利上げ実施などが、世間を騒がせました。

一方で明るいニュースも多く、スポーツ面では、大谷翔平選手が大リーグ史上初となる50本塁打50盗塁の快挙を達成し、ナ・リーグMVPを受賞するという大記録を打ち立てました。佐渡島の金山が登録に向けた運動開始から27年越しの世界文化遺産登録となるという出来事もありました。12月には、日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞が控えています。

2025年の干支は巳(み)です。巳、つまり蛇は、脱皮を繰り返すことから「変化と再生」の象徴とされています。先行きが不透明な時期が続きそうですが、どんなことが起こっても、蛇のようなしなやかさと賢さをもって対応できるように準備をしておきましょう。

以上(2024年12月作成)

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【ハラスメント対策】社員が取引先にハラスメントをしたらどうする?

書いてあること

  • 主な読者:取引先から「ハラスメント」を指摘された場合の対応を知りたい人
  • 課題:社内のハラスメントは対策していたが、社外については対応が漏れていた
  • 解決策:社内のハラスメントと基本は同じ。ただし、取引先との丁寧な連携を忘れない

1 対策が漏れがちな取引先へのハラスメント

ハラスメントは社内だけの問題ではないし、こちらが被害者になるとも限りません。例えば、自社の社員が取引先の社員などにハラスメントをしてしまったら、その相手との取引が停止する恐れがあることはもちろん、噂が広がることで、業界内での会社の信用も地に落ちます。

にもかかわらず、多くの会社では、社外のハラスメントへの対策が漏れがちです。そこで、この記事では、社外のハラスメントへの対応について紹介します。基本は社内の場合と同じですが、社外の場合、

取引先と丁寧に連携を取りながら対応を進める必要

があります。例えば、取引先の社員を事情聴取する場合、必ず取引先の担当部署の承諾を得なければなりません。基本的な対応の流れは次の通りです。

  1. 事実確認:ハラスメントの事実があったか否かを確認する
  2. 取引先へのフォロー:事実があった場合、謝罪など必要なフォローをする
  3. 行為者に対する措置:必要に応じて配置転換や懲戒処分などの措置を講じる
  4. 再発防止に向けた措置:ハラスメント研修などの再発防止措置を講じる

また、法令上、セクハラ(セクシュアルハラスメント)については、自社の社員が取引先の社員に対してハラスメントを行った疑いがあって、これについて取引先から事実確認や再発防止などに関する必要な協力を求められた場合、これに応じる努力義務があります。

加えて、セクハラとパワハラ(パワーハラスメント)については、自社の社員と役員が取引先の社員に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施など必要な配慮をする努力義務があります。

2 事実確認

1)事情聴取

事実確認では、関係者(被害者・行為者・目撃者など)への事情聴取を行います。社外のハラスメントの場合、被害者と目撃者は基本的に社外の人間ですから、聴取を行うには取引先の担当部署の承諾が必要です。また、取引先の担当部署が立ち会いを希望する場合は応じます。

事情聴取の内容は、録音するのがベストですが、難しい場合は聴取の内容を書面(供述録取書)にまとめ、その内容を供述者に確認してもらい、内容に間違いがなければ署名をしてもらうことが大切です。そうすることで「言った、言わない」の問題を回避できます。

行為者の当時の言動(実際に何と言ったかなど)は、できるだけ具体的に聞き取ります。実際に体験した者でなければ語れない内容ほど、信用できるからです。

行為者に事情聴取をする場合、「言い訳は聞きたくない」などと対応せず、本人の言い分も十分に聴くことが大切です。弁明の機会を与えないと、手続きが不適切として行為者を処分できなくなる恐れがあるからです。

ハラスメントに関する事情を知っている行為者以外の社員が自社にいる場合、行為者や被害者が接触する前にできるだけ早く事情を聴取します。ただし、プライバシーにも配慮が必要(特にセクハラ事案)ですので、事情聴取のために必要な範囲を超えて、行為者や被害者の情報(ハラスメントの詳細な状況、行為者や被害者の性的嗜好など)を開示することは控えるべきです。

行為者の事情聴取の結果について、取引先が開示を求めてきた場合は応じます。これは、事実確認の他、被害者がメンタルヘルス不調になった場合の休職措置などにも利用されます。

2)客観的証拠の収集

メールやライン、録音、携帯電話の発着信履歴などの客観的な証拠(物証)を集めておくことは重要です。行為者や被害者の供述(人証)が信用できるか検討する上で、供述の内容と客観的な証拠が矛盾している場合、慎重な検討が必要になります。

客観的な証拠を集める際は、自社のサーバー内にある行為者のメールのデータは保存しておき、行為者にも当時の客観的な証拠があれば提出するよう求めます。また、取引先が客観的な証拠を持っている場合、開示してもらうよう依頼します。

証拠は事情聴取の前に収集するのが望ましいですが、事情聴取まで時間がない場合などは、事情聴取の後も(聴取内容を踏まえて)積極的に証拠の収集を続ける必要があります。

3)確認した事実関係の認定と評価

事情聴取が終わったら、「ハラスメントの事実があったか否か」を認定します。被害者と行為者の言い分が食い違ったり、客観的な証拠がなかったりして認定が難しい場合は、専門家(弁護士)に相談します。

事実関係の認定をしたら、認定した行為者の言動が、社内のハラスメントの基準などに照らして悪質なのか、それともそこまで悪質とは言えないのかを判断します。

3 取引先へのフォロー

悪質なハラスメントがあった場合、速やかに取引先に謝罪し、必要な措置を講じます。場合によっては訴訟などの法的な紛争に発展することもありますので、その準備も必要です。行為の内容が悪質とも適正とも言えない「グレーゾーン」のケースもあるでしょうが、その場合も謝罪はすべきでしょう。

また、行為者の処分についてですが、処分の内容や理由を取引先に伝える義務まではないと思われます。処分は自社の人事などに関することですし、関係者のプライバシー保護は加害者に対しても必要だからです。

なお、冒頭でもお話しした通り、セクハラについては、取引先から事実確認などについて必要な協力を求められた場合、これに応じる努力義務があります。当然ですが、協力を求められたことを理由に、取引先に対し契約解除などの不利益な取扱いをするのはNGです。

4 行為者に対する措置

悪質なハラスメントがあった場合、行為者に対する注意・指導、人事上の処分(配置転換など)、懲戒処分などを検討します。

グレーゾーンの行為の場合、懲戒処分は難しいかもしれませんが、注意・指導などの対応はすべきでしょう。そうしないと、グレーゾーンの行為者は「自分は正しい」と思い込み、同じような言動を繰り返す恐れがあります。ですから、「今回はハラスメントに当たらないと判断したけれど、次は違う判断になるかもしれないから、言動を改めたほうがいい」と伝えます。

なお、懲戒処分を行うためには、就業規則など社員の服務規律を定めた文書において、ハラスメントが懲戒事由に当たる旨の規定を整備しておく必要があります。

5 再発防止に向けた措置

社内だけでなく、取引先など社外の人に対するハラスメントもあってはならない旨を社内に周知します。ハラスメント防止規程や防止方針の該当条文をピックアップして説明したり、弁護士事務所などに依頼してハラスメントに関する研修を実施したりするとよいでしょう。

また、コンプライアンスに関するアンケートなどを実施し、「社外の人間への迷惑行為を見たことがあるか」「取引先から相談を受けたことがあるか」といった実態も調査するのもよいでしょう。

6 自社の社員がハラスメントを受けたら?

自社の社員が取引先からハラスメントを受けた場合の対応についても紹介します。自社の社員が取引先からハラスメントを受けたと相談してきた場合、基本的には、社内のハラスメント対応を参考にします。社内のハラスメントとの主な違いは、次の2点です。

  1. 社外の人間である行為者への事情聴取が難しい
  2. 自社が被害者の社員に対して安全配慮義務を負っている

1.については、ひとまずは相談者と目撃者に事情聴取を行い、違法な迷惑行為が確認できる場合、取引先に対応を求めるようにします。ただし、その後の取引の問題もあるので、取引先との連携は丁寧に行うようにします。

また、被害を訴える社員がメンタルヘルス不調で休職した場合は、その社員の申告が事実かを確認する必要があります。そのため、行為者の事情聴取の結果について、取引先に開示を求めることを検討します。

2.については、自社の社員が取引先からハラスメントを受けた場合、相談先や相談体制を定めてあらかじめ社員に周知しておくなど、ハラスメント被害に対応する体制を整備することが望ましいとされています(厚生労働省「職場におけるハラスメント関係指針」)。

なお、裁判例では、小売業の接客時の顧客からの苦情対応に対して相談体制を整えていたことを理由の1つとして会社の安全配慮義務違反を否定したもの(東京地裁平成30年11月2日判決)や、教諭が保護者から理不尽な言動を受けたことについて、校長が教諭に対して保護者に謝罪するよう求めたことを不法行為と判断したものがあります(甲府地裁平成30年11月13日判決)。

7 社員がフリーランスにハラスメントをしてしまったら?

最後に、社員がフリーランスにハラスメントをしてしまった場合の対応について紹介します。 2024年11月1日から、フリーランスに対しても、社員と同様のハラスメント防止措置を講じることが義務化されるからです。

フリーランスは社外の人間ですが、個人であるため、ここまで紹介したような「取引先との連携」は基本的に必要ありません(仲介事業者がいる場合などを除く)。通常のハラスメント防止措置(下記1.から5.)を、フリーランスにも適用すれば大丈夫です。

  1. ハラスメントの方針(ハラスメントを行ってはならない旨など。就業規則等の文書(例:ハラスメント防止規程)に規定)の明確化、周知・啓発
  2. ハラスメントに関する相談窓口の設置・運用
  3. 事実確認、被害者に対する配慮のための適正な措置、行為者への適正な措置と再発防止に向けた措置の実施
  4. 相談者や行為者のプライバシーを保護、相談したことや事実関係の確認に協力したこと等を理由として不利益な取扱いを行ってはならない旨の周知・啓発
  5. 業務体制の整備など、マタハラ等の原因や背景となる要因を解消するための措置の実施

ただし、自社が実施するハラスメント防止措置の内容については、フリーランスと契約を締結する際に、書面などで明確に本人に伝えておくようにしましょう。例えば、

相談窓口の担当者・連絡先などを明らかにしていない場合、ハラスメント事案が発生した際、フリーランスが外部のユニオンなどに駆け込んで、問題が大きくなること

などが予想されます。フリーランスは社員のように、社内規程などをいつでも確認できるわけではないので、こうした伝達については、ある意味社員以上に慎重になる必要があります。

以上(2024年11月更新)
(監修 弁護士 田島直明)

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【管理会計】見えない人件費、役割に付随する仕事も想定して判断せよ!

書いてあること

  • 主な読者:感覚だけではなく、定量的な基準や根拠を持ってビジネスの判断をしたい人
  • 課題:認識できている「数字」や「役割」だけに基づいて判断してよいのか?
  • 解決策:会社が負担する総額人件費は年間給与の1.5〜2倍、担当外の仕事もたくさんある

1 質問:売上高より低い人件費なら“お得な採用”?

年間売上高が600万円の新規取引先を獲得しました!

人手が足りなくなるので、「年収480万円(月額給与30万円×12カ月+賞与60万円×2回)」で人材を採用しようと考えています。単純に、

600万円−480万円で120万円のプラスである

ということで、採用を進めてよいでしょうか。こうしたシーンに直面することはよくあるので、判断の基準をご紹介します。

2 「見えない人件費」とその正体

人件費には、社員が認識していない「見えない人件費」があります。例えば、法定福利費(健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料、雇用保険料など)や、法定外福利費(通勤手当や住宅手当など)があります。これらをすべて合計した人件費を総額人件費と呼び、

総額人件費の目安は年間給与の1.5~2倍程度

といわれます。年収480万円の社員の総額人件費は720万円以上です。

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3 売上の全てが利益になるわけではない

利益にも注目しましょう。売上高から売上原価(仕入原価など)を差し引いたものが売上総利益、売上総利益から販売費及び一般管理費(以下「販管費」)を差し引いたものが営業利益です。多くの場合、人件費は販管費から支払われるので、

売上総利益が人件費よりも少なければ、営業利益は赤字

となります。仮に総額人件費を720万円、600万円の売上高の40%が仕入原価とした場合、

1200万円=720万円/0.6

の売上高がなければ総額人件費を賄うことはできません。上の数式の「0.6」は、本ケースの売上総利益率です(60%(1-0.4))。

4 ABCで人件費を配賦する

「配賦」についても知っておきましょう。例えば、製品Aの販売を担当する社員の人件費は、全額が製品Aの販売に振り向けられるわけではありません。通常、他の商品の販売や事務作業などもしているからです。

配賦とは、

複数の部門・製品・業務などにまたがって発生する費用を、各部門・製品・業務などに適正に費用配分すること

であり、原価計算ではある基準を持って行われます。いくつかの方法がありますが、知っておいてほしいのはABC(活動基準原価計算)です。

ABCとは、アクティビティ(活動)を基準として原価を計算する手法です。例えば、検品作業にかかる費用は次の算式で算出します。

検品作業の費用=1時間当たりの人件費×製品1個当たりの時間×出荷個数

1時間当たりの人件費を3000円、製品1個当たりの時間では検品作業が15分、その他作業が10分の場合、出荷個数が100個(例1)と50個(例2)の計算は次の通りです。

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ここでは話を単純にしていますが、人件費に限らず原価を配賦するためのイメージがつくかと思います。

5 練習問題

(問題1)

年間給与などが500万円の人の総額人件費を賄える売上はどのくらいですか?

なお、総額人件費は年間給与の1.5倍、売上高に対する仕入原価の割合が50%とします。

(問題1の回答)

総額人件費は「500万円×1.5」で計算します。また、総額人件費を賄うことができる売上は、「750万円/50%」で計算します。

問題1の答え:1500万円=750万円/0.5

上の数式の「0.5」は、本ケースの売上総利益率です(50%(1-0.5))。

(問題2)

製品Aの販売にかかる利益を算出するため、ABCに基づいて人件費の配賦を行います。どのような情報が必要ですか?

(問題2の回答)

この記事で紹介してきた内容に基づくと、

  • 販売に関するアクティビティ

と、各アクティビティに関する、

  • 1時間当たりの人件費
  • 製品1個当たりの時間
  • 出荷個数

となります。なお、この例では「製品1個当たり」を基準にしていますが、「製品10キログラム当たり」など、費用の発生実態に合わせて基準を変更しましょう。

以上(2024年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【かんたん消費税(7)】インボイスの保存は絶対条件「仕入税額控除」の内容と計算方法

書いてあること

  • 主な読者:インボイス制度で大きな影響を受ける仕入税額控除について知りたい経営者
  • 課題:仕入税額(仮払消費税)がどのように算出されているのか分からない
  • 解決策:一定の要件を満たす会社は仕入税額が全額を控除できる。それ以外の会社は「個別対応方式」か「一括比例配分方式」のいずれかで仕入税額控除

1 インボイスでなければ消費税で損をする?

消費税は、「預かった消費税(仮受消費税)」から「支払った消費税(仮払消費税)」を差し引いて計算します。これを「仕入税額控除」といいますが、インボイス制度が導入されてから(2023年10月1日以後)は、

「適格請求書発行事業者」から発行してもらったインボイスを保存することが、仕入税額控除の条件

になっています。適格請求書発行事業者とは、国税庁に適格請求書発行事業者の登録をした事業者です。

相手が適格請求書発行事業者でも正確なインボイスをもらえなかったり、相手が適格請求書発行事業者の登録をしていなかったりする場合、仕入税額控除が受けられず、皆さんが損をすることがあるのです。

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インボイスは大事なものですから、紛失しないように保存方法も決めておきましょう。このタイミングで電子帳簿保存法にも対応し、インボイスの電子保存を検討してもよいかもしれません。

2 仕入税額控除が楽々な会社とは?

仕入税額控除には、「原則課税」と「簡易課税」とがありますが、ここでは原則課税に注目します。なお、簡易課税は課税売上高が5000万円以下など、一定の要件を満たす企業が採用できる、仕入税額控除の計算を簡単にした仕組みです。

さて、原則課税に話を戻します。【簡易】課税という制度があるくらいなので、仕入税額控除の計算は複雑なのですが、実は、次の2つのいずれの要件も満たす会社は全額控除が認められています。規模がそれほど大きくなく、厳密に計算しなくても影響は軽微と考えられているからです。

  1. 課税売上高が5億円以下
  2. 課税売上割合(売上高に対する課税売上高の占める割合)が95%以上

全額控除が認められてない場合、「個別対応方式」か「一括比例配分方式」で計算しなければなりません。このようにさまざまな計算方法のある仕入税額控除の全体像をまとめると次のようになります。

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3 「個別対応方式」と「一括比例配分方式」

1)個別対応方式とは

仕入税額控除の基本は次の通りで、これを最も厳密に行うのが個別対応方式です。

  • 課税売上に対応する仕入で発生した仮払消費税:全額控除する
  • 非課税売上に対応する仕入で発生した仮払消費税:控除できない
  • 課税売上と非課税売上に共通した仕入で発生した仮払消費税:一定割合だけ控除する

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2)一括比例配分方式とは?

一方、一括比例配分方式は個別対応方式よりは楽です。なぜなら、一括比例配分方式では仮払消費税を3つに区分することなく、

仮払消費税の全額に課税売上割合を掛けた金額を仕入税額控除額とする

ことができるからです。

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ただ、一括比例配分方式は、一度採用したら最低2年間は変更できないので注意してください。事務負担が楽だからといって安易に一括比例配分方式を採用すると、仮に翌期は個別対応方式のほうが納税額が減る場合でも、個別対応方式は採用できなくなってしまいます。

4 その他仕入税額控除の特例

仕入税額控除の計算にはさまざまな特例があり、これを見逃すと税務調査で指摘を受けることがあります。主な特例を紹介するので、ご確認ください。

1)課税売上割合の著しい変動(土地の売却など多額の非課税売上が発生したときなど)

高額で長い期間使い続ける固定資産は、取得した事業年度の状況(課税売上割合)だけで、仕入税額控除の金額を決定することが不合理なケースがあります。そのため、課税売上割合が直近3年間のもの(通算課税売上割合)と比べて、

  • 著しく増加した場合には、仕入税額控除額を加算する
  • 著しく減少した場合には、仕入税額控除額を減算する

という一定の調整をします。

例えば、普段は売上のほとんどが課税売上に該当する会社なのに、たまたま、ある事業年度に土地などを売却したために多額の非課税売上が生じて課税売上割合が著しく変動するケースなどが該当します。

この調整は、固定資産を取得した事業年度を含めて3年間のうちに行われる可能性があります。そのため、多額の設備投資をした場合は、その後の課税売上割合の推移に注意し、仕入税額控除の調整もれによって税務調査で指摘されないようにしましょう。

2)固定資産の転用(固定資産の取得から3年以内に、使用用途を変更したときなど)

課税業務用に使用する目的で固定資産を購入した場合、個別対応方式で仕入税額控除を計算すれば、仮払消費税は全額控除できます。逆に、非課税業務用に使用する目的で固定資産を購入した場合、個別対応方式で仕入税額控除を計算すれば、仮払消費税は一切控除できません。

しかし、固定資産は比較的長い間使い続けるにもかかわらず、取得した事業年度の用途だけで仕入税額控除の金額を決定するのは不合理なケースがあります。そのため、取得した固定資産を、3年以内に

  • 課税業務用から非課税業務用に用途変更した場合は、仕入税額控除額を減算する
  • 非課税業務用から課税業務用に用途変更した場合は、仕入税額控除額を加算する

という一定の調整をします。

多額の設備投資をした場合は、その後の用途変更の可能性に注意し、仕入税額控除の調整もれによって税務調査で指摘されないようにしましょう。

以上(2024年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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教育訓練給付金の拡充

2024年10月から、雇用保険の「教育訓練給付金」が拡充されました。教育訓練給付金は、厚生労働大臣指定の教育訓練を受講、修了した労働者に、受講費用の一部が雇用保険から支給される制度です。厚生労働省は、拡充により、労働者の主体的なスキルアップやリスキリングにつながることを期待しています。本稿では、教育訓練給付金の基本的なしくみと、今回の拡充のポイントについてお伝えします。

1 基本的なしくみ

教育訓練給付金の対象となる厚生労働大臣の指定訓練は、約16,000講座もあります。オンライン受講や夜間・土日受講が可能なものもあり、厚生労働省の検索システムで探すことができます。

約16,000の講座は、レベルや訓練期間、給付手続きなどの違いにより、「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」「一般教育訓練」の3種類の給付金に分かれます。主な講座は次のようになっています。

教育訓練給付金の対象となる主な講座

※厚生労働省「教育訓練給付制度」より引用

2 拡充された給付金

3種類のうち「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」の給付金が、2024年10月から拡充され、給付率は次のようになりました。

「専門実践教育訓練」「特定一般教育訓練」の給付率

※厚生労働省「教育訓練給付制度」より引用

「専門実践教育訓練」の給付金は、2024年9月30日以前に受講開始した場合、最大で受講費用の70%(年間上限56万円)でした。これに対し、2024年10月1日以降に受講開始し、修了後の賃金が受講開始前と比べて5%以上アップした場合には、受講費用の10%(年間上限8万円)が追加支給され、給付率は合計80%(上限64万円)となります。

例えば、訓練期間2年間、入学料10万円、6か月ごとの受講料が各40万円で、修了後資格を取得したケースを想定します。給付金は、拡充前だと合計112万円ですが、拡充後は、賃金5%アップの条件を満たせば、さらに16万円が追加され計128万円となります。

「特定一般教育訓練」の給付金は、2024年9月30日以前に受講開始した場合、最大で受講費用の40%(上限20万円)でした。これに対し、2024年10月1日以降に受講開始し、資格を取得して就職した場合には、受講費用の10%(上限5万円)が追加支給され、給付率は合計50%(上限25万円)となります。

訓練期間3か月、入学料5万円、受講料25万円のケースでは、拡充前の給付金は12万円でしたが、拡充後は、資格を取得して就職した場合に3万円が追加支給され、計15万円となります。

3 さいごに

教育訓練給付を受けるには、雇用保険の加入期間など細かい条件があります。詳しくは、厚生労働省のサイトを参考にしてください。

従業員のスキルアップは、企業にとっても大きな武器となります。教育訓練給付金について、従業員に積極的に周知することをお勧めします。ご不明の点は、ハローワークへお問い合わせください。

※本内容は2024年11月11日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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ヘッドライトの使い方とその重要性(2024/12号)【交通安全ニュース】

活用する機会の例

  • 月次や週次などの定例ミーティング時の事故防止勉強会
  • 毎日の朝礼や点呼の際の安全運転意識向上のためのスピーチ
  • マイカー通勤者、新入社員、事故発生者への安全運転指導 など

秋から冬は日の入りが早くなり、夜が長くなっていきます。また、この時期の薄暮時間帯(日の入り時刻の前後1時間)は夕食準備の買い物や子供の帰宅の時間帯と重なり、歩行者への一層の注意が必要です。視界が悪くなる薄暮から夜間にかけての運転で欠かせないのがヘッドライト。そこで今号では、ヘッドライトの使い方と重要性について考えます。

ヘッドライトの使い方

1.薄暮時間帯における事故防止

◆令和元年から令和5年の5年間における死亡事故発生状況を分析した結果、次のことが明らかになりました。

死亡事故発生状況

  • 日の入り時刻と重なる17時台から19時台に多く発生している
  • 薄暮時間帯には、自動車と歩行者が衝突する事故が最も多く発生しており、事故類型別では、横断中が約8割を占めている
  • 横断中の、特に横断歩道以外の横断における歩行者の約7割に法令違反がある

死亡事故発生状況

出典:警察庁「薄暮時間帯における交通事故防止」
https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/hakubo.html

◆薄暮時間帯に死亡事故が多い理由としては、周囲の視界が徐々に悪くなり、自動車や自転車、歩行者などの発見がお互いに遅れること、距離や速度が分かりにくくなること、などが挙げられます。

◆薄暗くなる前からヘッドライトの「早め点灯」を行い、自分の車の存在を周囲に知らせるとともに、速度を落として歩行者の予想外の動きにも対応できるようにしましょう。

2.ヘッドライトはこまめに切り替えを

【ヘッドライトの保安基準】

ヘッドライトは、ハイビーム(上向き)とロービーム(下向き)を切り替えて使います。ヘッドライトの照射範囲は、ハイビームで前方100メートル、ロービームで前方40メートルの距離にある障害物を確認できる性能を有することとされています。

【ハイビーム/ロービームの切り替え】

ヘッドライトの使い方については「道路交通法」で規定されており、交通量の多い市街地などの通行時を除きハイビームにし、対向車とすれ違うときや、前の車に追走するようなときは、ロービームに切り替えることとされています。視界確保のためにはハイビームでの走行が望ましいのですが、他車や歩行者がいるときは眩惑などの原因となります。交通状況に応じて切り替えを行いましょう。

3.ヘッドライトの眩しさの危険性

ヘッドライトの眩しさにより周囲の自動車等の発見が遅れ、事故に繋がったケースが2021年までの10年間で300件以上発生しました※。眩しさの危険性に対し、以下の対策が挙げられます。

  • 交通状況に応じてハイビームとロービームの切り替えを適切に行うこと
  • 整備不良による光軸のズレなどを防ぐために点検整備をきちんと行うこと

このほか、ライトの向きを自動調整する「オートレベリング機能」も対策の一つです。この機能は今後、全ての新車(自動二輪車等を除く)に対し装備することが義務づけられました(適用は令和9年以降)。

オートレベリング機能

※出典:国土交通省「自動車のヘッドライトのオートレベリングの装備を拡大します!」
https://www.mlit.go.jp/report/press/jidosha10_hh_000311.html

この義務化はヘッドライトの眩しさが事故の要因になりうることが顕在化した結果ともいえます。もちろん、オートレベリング機能の有無にかかわらず、ライトの眩しさが周囲に及ぼす影響に配慮した運転を心がけましょう。

以上(2024年12月)

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画像:amanaimages

【ハラスメント対策】オワハラなどの「就活ハラスメント」を起こさないためには?

書いてあること

  • 主な読者:就活生に対して行われる「就活ハラスメント」を防ぎたい人
  • 課題:就活ハラスメントが起きた場合のリスクや、防止のポイントを知りたい
  • 解決策:就活生が精神的な苦痛を受けたら、民法の「不法行為」になる。就活ハラスメントの種類を押さえて、ハラスメント防止方針などで社員に周知徹底する

1 「就活ハラスメント」の規制強化の動きがある

「就活ハラスメント」とは、会社から就活生に対して行われる、

  • 「内定を出すから」と言って、他社の選考を辞退するよう要求する
  • インターンシップやOB・OG訪問などの後、食事やデートに執拗に誘う

などの嫌がらせのことです。

会社は、職場におけるハラスメントについては一定の防止措置を講じる義務を負っていますが、就活ハラスメントについては現状、「(ハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等をする際に)同様の方針を合わせて示すのが望ましい」というレベルにとどまっていて、各社の対応にバラツキがあります。一方で、足元では厚生労働省が

就活ハラスメント防止に関する企業向けサイトや、就活生向けの悩み相談室を立ち上げる

など、啓発に力を入れています。

就活生は応募する会社について知人と情報交換したり、SNSのグループに参加したりしています。規制強化の動きがある中で、「自社が就活ハラスメントをしている」との情報が出回ったら、そのような会社に応募しようとする学生はいなくなってしまうかもしれません。

ハラスメントにもいろいろありますが、今、経営者が注目すべきものの1つに就活ハラスメントがあるのです。改めてリスクや防止策を紹介します。なお、前述した厚生労働省の取り組みについてはこちらのURLをご確認ください。

■厚生労働省「今すぐ始めるべき就活ハラスメント対策!」■

https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/syukatsu_hara/enterprise/

■厚生労働省「ハラスメント悩み相談室」■

https://harasu-soudan.mhlw.go.jp/

2 就活ハラスメントの4つの種類

1)オワハラ(就活終われハラスメント)

就活生の内定辞退を回避するための嫌がらせです。

  • 「内定を出すから」と言って、他社の選考を辞退するよう要求する
  • 他社の選考と日程が重なることを知りながら、内定者懇親会に連れ出すなど、他社での就活を妨害する
  • わざと採用面接を先延ばしにして、他社の選考を受けにくくする
  • 内定を辞退しようとした場合、「ふざけるな」「嘘つきだ」と罵る。または「訴える」「内定を辞退するやつだと他の会社に言いふらす」などの発言をする

2)就活セクハラ(就活生に対するセクシュアルハラスメント)

就活生に対する身体的な接触や言葉による性的な嫌がらせです。

  • 不必要に体に触る
  • 「内定を出すから」と言って性的な関係を要求し、拒否・抵抗した場合、選考から落とす
  • 性的な冗談を言う、恋愛経験などを尋ねる
  • オンラインの採用面接で、体全体や部屋の様子などを見せるよう要求する
  • インターンシップやOB・OG訪問などの後、食事やデートに執拗に誘う

3)圧迫面接

就活生のストレス耐性や状況判断能力を試すため、採用面接で必要以上に否定的な発言をしたり、嫌な態度を取ったりする嫌がらせです。

  • 採用担当者の質問に就活生が回答した際、正当な回答かどうかに関係なく否定する
  • 「それで?」「理由は?」といった発言を必要以上に繰り返し、回答をできなくさせる
  • 就活生の適性に関係なく、「ウチの会社には向いていない、通用しない」と言う
  • 就活生の発言中にため息をつく、携帯電話を触るなど、あからさまに嫌な態度を取る

4)その他

1)から3)以外の就活ハラスメントとしては、次のようなものがあります。

  • 「男のくせに覇気がない」「女はすぐ辞めるから困る」などと、差別的な発言をする
  • 結婚したり妊娠したりした場合に、会社を辞めるかどうかを聞く
  • 内定した学生に、内定者でつくるSNS交流サイトに毎日の書き込みを強要する。書き込みをしないと「やる自信がないなら辞退しろ」など、威圧的な態度を取る
  • インターンシップに参加した学生に対し、人格を否定するような暴言を吐く

3 就活ハラスメントのリスク

1)就活生が精神的な苦痛を受けた場合、民法の「不法行為」になる

就活ハラスメント自体を規制する法令はありませんが、就活生が精神的な苦痛を受けた場合、

民法の「不法行為」(故意・過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害する行為)

になり、ハラスメントを行った社員は損害賠償を請求される恐れがあります。また、会社も就活生から使用者責任を問われ損害賠償を請求される恐れがあります。

また、言動によっては刑法が適用される可能性もあります。

  • オワハラ:内定を辞退しようとした就活生に「訴える」「内定を辞退するやつだと他の会社に言いふらす」などと発言する(脅迫罪)
  • 就活セクハラ:不必要に体に触る(強制わいせつ罪)
  • 圧迫面接、その他:人格否定や差別的な発言をする(名誉毀損罪や侮辱罪)

2)会社のイメージが低下し、採用ができなくなる?

就活生がSNSに「就活ハラスメントを受けた!」と書き込んで、それが拡散されれば、ハラスメントが横行している会社だと見られ、会社のイメージは低下します。また、大学のキャリアセンターなどでは、就活ハラスメントに関する就活生からの相談を受け付けているので、大学に定期的に求人を出している会社の場合、今後の大学との関係にも影響が出るかもしれません。

就活ハラスメントに関する就活生からの相談は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)でも受け付けていて、就活ハラスメントをした会社には、助言や指導が入ることがあります。現状、会社名などが公表されるルールはありませんが、規制強化の動きには注意が必要です。

4 就活ハラスメントの防止のポイント

1)「会社と就活生は対等」という意識を持つ

就活ハラスメントが起きやすい会社は、就活生に対して「雇ってやる」「試してやる」といった上から目線の態度を取っているケースが少なくありません。雇用が懸かっている就活生は、こうした会社の態度に強気に出られず、それが就活ハラスメントの問題を深刻化させるのです。

会社として就活生に適性があるかを見極めることは大切ですが、入社した場合は、会社も労力を提供してもらう立場になるわけですから、常に「会社と就活生は対等」という意識を持って採用活動に臨むことが大切です。

2)「業務上必要ない対応」「行き過ぎた対応」を洗い出して排除する

就活ハラスメントが違法になる(民法の不法行為などに当たる)場合、次の1.か2.に該当している可能性が高いです。

  1. 会社の対応(採用面接での質問など)が、業務上必要ない
  2. 業務上必要があったとしても、行き過ぎている

就活セクハラなどは1.に当てはまりますし、オワハラや圧迫面接などは「内定辞退を防ぎたい」「就活生のストレス耐性や状況判断能力を試したい」という会社の思惑があったとしても、2.に該当する可能性が高いです。

逆に1.と2.に該当しなければ基本的に違法にはならないので、2章で紹介したような言動を排除していった上で、就活生への対応の仕方を模索していきましょう。例えば、

  • 就活生を内定者懇親会に連れていきたいのであれば、オワハラにならないよう本人のスケジュールを考慮する。就活セクハラ(個人的な食事やデートの誘い)にならないよう時間を区切り、2人以上の社員で参加し、個室はできるだけ避ける
  • 場の雰囲気を和ませたいのであれば、就活セクハラ(性的な冗談など)や差別的な発言(「男は○○だから、女は○○だから」など)に該当しないジョークを織り交ぜる
  • 就活生のストレス耐性や状況判断能力を試したいのであれば、圧迫面接という形ではなく課題などを与えてみる

といった具合です。

3)社内のハラスメントの防止措置を、就活ハラスメントにも適用する

繰り返しになりますが、現状、就活ハラスメントについては特に防止措置が義務付けられていません。一応、

若者雇用促進法に基づく事業主等指針に、会社は就活ハラスメントに対して「必要な注意を払うよう配慮する」取組を行うのが望ましいという記載がありますが、具体的な措置の内容は定められていない

という状況です。

一方で、社内のハラスメント(社員・役員が社員に対して行うハラスメント)については、労働施策総合推進法などにより、次の4つの防止措置が義務付けられています。この防止措置の対象範囲を、就活ハラスメントにも拡大すれば、トラブル防止につながるでしょう。

  1. ハラスメントの方針(ハラスメントを行ってはならない旨など。就業規則等の文書に規定)の明確化、周知・啓発
  2. ハラスメントに関する相談窓口の設置、運用
  3. ハラスメントに関する相談があった場合の事実確認、行為者の処分、再発防止策の検討
  4. プライバシーの保護、相談者などに不利益な取扱いをしない旨の周知徹底など

1.については、「会社として就活ハラスメントを許さない」旨と具体的な言動の内容を、ハラスメントの方針に書き加え、社員に周知徹底します。加えて、外部の専門家(弁護士など)に依頼して、採用活動や面接、OB・OG訪問、インターンシップを担当する社員向けにマニュアルを作成したり、就活ハラスメントに関する研修を実施したりするのもよいでしょう。

2.については、選考に先立って、ハラスメントに関する相談窓口の連絡先を、就活生と共有します。万が一、就活ハラスメントが発生しても、相談を受けた後で迅速に対応すれば、大きなトラブルに発展するのを防げるかもしれません。社内の相談窓口で就活ハラスメントに対処できるかが不安な場合、外部の相談窓口を利用するとよいでしょう。

3.と4.については、基本的に社内のハラスメントでの対応と同じです。

以上(2024年11月更新)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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管理職なら押さえておきたい「重要労働判例」のポイント解説(2024年12月号)

労務トラブルは急に起こるものであり、正しい労務管理をしないと、思わぬことで訴訟に発展する場合があります。労働問題では判例の考えが解決に役立つので、トラブルの防止の観点から、管理職なら知っておきたい重要労働判例を厳選して紹介します。本冊子は、重要労働判例を解説する企画の第3弾です。2018年10月号の第1弾および2020年11月号の第2弾では掲載できなかった労働判例に加え、令和以降の最新判例のなかで特に重要なものを10件セレクトしました。

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職場に貼って使える 職場ポスター「その自転車の運転 罰則対象です!」

印刷して職場に掲載できるポスターです。

今回は、道路交通法の改正で、2024年11月から罰則が強化された「自転車の危険運転」についてまとめました。


こちらからポスターのPDFをダウンロードできます。自転車で通勤したり、業務で自転車を使用したりする社員がいる場合、職場に貼ってご活用ください

こちらからダウンロード

以上(2024年12月作成)

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【かんたん消費税(6)】消費税の計算は「原則課税」か「簡易課税」で行う

書いてあること

  • 主な読者:消費税の計算がどのように行われているのか知りたい経営者
  • 課題:消費税は独自の計算方法で計算される。利益が出なくても納税額は発生する
  • 解決策:課税取引を集計し、預かった消費税から支払った消費税を引いて納税額を計算する

1 赤字でも納税が必要な消費税

消費税は物を売ったり買ったりした場合などに課税されます。会社が赤字でも納税しなければならないケースもあります。また、一つ一つの取引ごとに課税されるかどうかを判断し、独自に消費税を計算しなければならないので、非常に手間もかかります。

経営者としても、ある程度、消費税の計算方法を理解していないと、決算のときに想像以上の納税が発生して納税資金に困る場合もあります。この記事では消費税の計算方法についての概要を説明します。

2 計算は「原則課税」と「簡易課税」の2つ

1)差額を納税する

消費税の納税額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算します。預かった消費税を「仮受消費税」、支払った消費税を「仮払消費税」と呼びます。

  • 仮受消費税:物を売ったり、サービスを提供したりした場合に預かる消費税
  • 仮払消費税:物を買ったり、サービスの提供を受けたりした場合に支払う消費税

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2)2つの計算方法

納税額の計算方法には、原則課税と簡易課税とがあり、次のように異なります。

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簡易課税の特徴は、実際に支払った仮払消費税の額に関係なく、仮受消費税に一定割合を掛けたものを仮払消費税とみなすことです。仮払消費税の詳細な集計が不要なので簡単ですが、適用を受けるには、

  1. 基準期間の課税売上高が5000万円以下
  2. 期日までに簡易課税を適用する旨の届出書を提出している

といった要件を満たす必要があります。そして、1.の要件を見れば、簡易課税が小規模な会社を対象にしていることがお分かりいただけるでしょう。

3 原則課税による計算の流れ

ここでは、多くの会社で行われている原則課税に注目し、計算の流れをざっくりと解説します。経営者が詳細な計算の流れを知る必要はありませんが、「課税標準とは何か」「仕入税額控除とは何か」といったことは、イメージできるようになると理想です。

1)計算の流れ

原則課税では、仮受消費税から仮払消費税を差し引いて納税額を計算します。ただし、帳簿上の残高を単純に差し引くのではなく、

税法に従って正しく計算し直した上で納税額を計算

します。具体的には、以下の流れで計算されます。

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2)課税標準額に係る消費税額の計算(申告する仮受消費税)

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課税標準額とは、

申告する「仮受消費税」のベースとなる金額

です。消費税の取引は「課税取引」「不課税取引」「非課税取引」「免税取引」の4つに分かれるので、

実際に消費税が発生する「課税取引」の税込金額

を集計します。重要なのは、

取引が課税取引に該当するかどうかの判断

です。商品の売上などだけでなく、建物などの資産(非課税取引となる土地などを除く)を売却したものも含めます。

次に、実際に集計した課税取引の税込金額を税抜金額にします。具体的には、

「課税取引」の税込金額×100/110

と計算します。つまり、税抜にしているということで、これを「課税標準額」と呼びます。課税標準額は、1000円未満は切り捨てです。

ここまできたら、

1000円未満の端数を切り捨てた課税標準額に消費税率を掛ける

ことで、課税標準額に係る消費税額(申告する仮受消費税)が計算できます。なお、消費税率は、原則として10%ですが、軽減税率が適用される取引は8%です(説明の便宜上、税率は国税と地方消費税の合計としています)。

3)仕入控除税額の計算(申告する仮払消費税)

仕入控除税額とは、

申告する「仮払消費税」の金額で、仕入れや支出に係る消費税額

です。具体的には、

(国内の課税取引(仕入)の税込金額×10/110)+輸入消費税

と計算します。なお、消費税率は、原則として10%ですが、軽減税率が適用される取引は8%です(説明の便宜上、税率は国税と地方消費税の合計としています)。

詳細は割愛しますが、実際の仕入控除税額の計算はとても細かく、一定の条件のもとに「仮受消費税からそのまま全額控除できるケース」と「全額控除できないケース」とがあります。

4)返品等や貸倒れがあった場合

取引では返品を受け付けて消費者に返金することがあります。とはいえ、販売時に預かった消費税は国に納付しているのに、返金を消費税込ですると、納税者(つまり自社)は損をします。そのため、

返品等で返金をする場合は、返金に含まれている消費税を仮受消費税から控除

できます。

また、物を販売して売掛金を計上したものの、入金されずに貸倒れとなった場合も返品の際と同じ考え方とします。つまり、

貸倒れた金額に含まれている消費税を仮受消費税から控除

できます。

以上をまとめると、最終的には、

仮受消費税-仮払消費税-(返品・値引・貸倒金額に含まれる消費税)

によって、国に納付すべき金額が計算されることになります。

以上(2024年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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