【とくぎん阿波おどりクラブ】新年互礼会で初演舞!

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令和7年1月10日開催の「新年互礼会」で、とくぎん阿波おどりクラブが阿波おどりを初披露しました!

当クラブは、普段は徳島大正銀行で勤務しているメンバーで構成されており、今年で結成7年を迎えます。

今回は、初披露を記念して、阿波おどり会館専属連「阿波の風」の踊り子としても活躍する西村匡矢さんにインタビューを行いました。

 

―とくぎん阿波おどりクラブはどんなクラブですか?
阿波おどりを通じた地域貢献や活性化につながる活動を行っており、取引先の慰問や各種イベント等に参加して阿波おどりを披露しております。毎年8月に開催される徳島市の阿波おどりには、『とくぎん連』という連名で銀行として参加しております。有名連に所属しているメンバーもおりますが、新入行員として参加し、阿波おどりの魅力に惹かれ、入連してくれたメンバーも多数在籍しております。徳島市の阿波おどりに参加する際は、演舞場というコースを踊り流すのに対し、クラブでは、主に舞台等で男踊りや女踊りの構成と鳴物による演出で、躍動感や艶やかさを表現する「魅せる踊り」がメインとなっております。

―新年互礼会での初披露はいかがでしたか?
企画のお話をいただいて、大きな舞台、大勢のお客さまの前で踊りを披露することに不安と緊張しかありませんでした。県外からお越しになるお客さまは、初めて阿波おどりを観られる方もおられたと思います。有名連には到底及びませんが、私たちが阿波おどりのすばらしさを伝えたい、自分たちが今の実力でできることを精一杯やろうという気持ちで、約3ヶ月間業務終了後に集まって練習を重ねてまいりました。本番は失敗もなく無事に終わりましたが、まだまだ伸びしろを感じる出来でした。貴重な経験をありがとうございました。またどこかで阿波おどりを披露できる機会があれば、さらにパワーアップしたとくぎん阿波おどりクラブを観ていただけたらと思います。

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▲女踊り

 

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▲男踊り

 

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とくぎん阿波おどりクラブメンバーの、普段の仕事の様子

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▲女踊り 太皷地 綾香さん
『とくぎん連』に参加し、阿波おどりの魅力に惹かれた1人です。この魅力が伝わるように踊りたいです。」

▲鳴り物 久保 慧さん
「仕事も阿波踊りも精一杯頑張ります。」

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▲鳴り物 西村 匡矢さん
「仕事でも阿波おどりでも地元徳島のために精一杯がんばります」

▲鳴り物 齊藤 直子さん
「笛を担当しています。腕前はまだまだですが、見てくださる方にも楽しんでもらえたら嬉しいです。」

徳島大正銀行には、「とくぎん阿波踊りクラブ」というクラブが存在します。このクラブは、阿波おどりという伝統文化を受け継ぎ、その魅力を広めるための活動を行っています。阿波おどりは、徳島県の象徴的な文化であり、地域の活性化や観光振興にも寄与しています。今後とも、文化の承継を発展に向けた取り組みを続けていきます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

 

▶ 新年互礼会リポートはこちら!

以上(2025年2月作成)

【賃金データ集】 基本給のモデル支給額

【賃金データ集】シリーズとは?

【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。

この記事で取り上げるのは「基本給」です。

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なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。

こちらからダウンロード

1 基本給の位置付け

基本給は賃金の中心となるものです。厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」によると、毎月きまって支給する給与が総額人件費(労働費用総額)に占める割合は66.9%です。なお、厚生労働省「令和2年就労条件総合調査」によると、毎月きまって支給する給与から時間外労働手当などを除外した場合、基本給と諸手当の割合は、それぞれ基本給85.1%、諸手当14.9%となっています。

基本給を中心とする賃金支給額は主に「1.企業の賃金支給能力(コスト)」「2.労働力の市場価値」「3.他社の支給額」「4.雇用をめぐるトレンド」「5.従業員の生活保障」「6.従業員の貢献度」「7.利益分配」といった7つの要素を加味して決定されます。

2 基本給の決定要素

基本給を中心とした賃金の決定要素については、現状「職務・職種など仕事の内容」「職務遂行能力」などを重視する企業が多いといえます。

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3 厚生労働省の統計資料によるモデル支給額

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4 情報インデックス(この記事で紹介したデータの出所)

この記事で紹介した統計資料は次の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。

■就労条件総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/11-23.html

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■賃金構造基本統計調査■
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/chinginkouzou.html

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■賃金事情等総合調査■
https://www.mhlw.go.jp/churoi/chingin/

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以上(2025年2月更新)

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画像:ChatGPT

【業務効率化】業務マニュアルの作成はマニュアル化しやすい業務から進める

1 なぜ、業務マニュアルを作成するのか?

皆さんの職場では、業務がマニュアル化されているでしょうか? もし、マニュアルがない場合、次のようなときに苦労をした経験はありませんか?

  • 本来の担当者が病欠のため、そのフォローをしなければならない
  • 新入社員に作業手順を早く習得してもらいたい
  • 異動・退職に伴い後任者へ業務を引き継がなければならない

こうした事態を改善するために、この記事では、業務マニュアルを作成する際のポイントを紹介します。しっかりした業務マニュアルがあれば、

作業手順が明確になり、人によって生じる業務の品質を均一化でき、属人化もなくせる

はずです。

一方で、現場では、

  • 通常業務で手一杯なので、業務マニュアルを作成する時間は取れない
  • わざわざマニュアルを作らずとも、業務は回せている

というかもしれません。そのままでは、業務マニュアルを作成する機運は高まらないのです。このジレンマを解消していく方法を探っていきましょう。

2 まずは、マニュアル化できそうな業務を考えてみる

1)マニュアル化に向くのは「非属人的な業務」

業務マニュアルの作成は、スモールスタートが成功の秘訣です。まずは、マニュアル化の負担が小さい業務を対象に検討しましょう。

例えば、人事の業務を例に挙げると、次のように分けられます。

  • 採用
  • 労務管理
  • 社員教育 など

さらに、採用であれば次のような業務に分けられます。

  • 求人票の作成
  • 人材紹介会社から紹介された求職者の選定
  • リアル・オンラインでの採用面接
  • 求職者への合否通知 など

このうち、マニュアル化の対象は「非属人的な業務」です。非属人的な業務とは、

何度か経験すれば誰でも同じ成果を出せるものや、状況に応じた選択肢がパターン化されているもの

です。逆に、社員個人の経験や知識を基に感覚的な判断が求められる「属人的な業務」はマニュアル化に向きません。

2)マニュアル化による効果などを明らかにする

マニュアル化する業務を絞り込んだら、個々の業務を対象に、

マニュアルの利用者、マニュアル作成の締め切り日、マニュアル化による効果

を明らかにし、優先度の高いものから作成します。具体例は次の通りです。

  • 利用者:人事部のメンバー
  • 締め切り日:○○○○年○月○○日
  • 効果:人事の業務時間が○○時間短縮される、引き継ぎが円滑になる

3 マニュアルの作成ポイント

1)小さくまとめてから肉付けをする

マニュアルの作成で陥りがちなのが、一度に全てを網羅した完璧なマニュアルにしようとすることです。これを避けるためには、

マニュアルの単位を小さく整理すること

が大切です。小さくまとまっていれば、マニュアルを利用する人にも分かりやすく、後日、更新する際の手間も少なくできます。

単位に分ける場合、まずマニュアル化する業務と、その作業手順を書き出して、重要度の高いものから内容を肉付けしていきます。

2)業務を短く簡潔にまとめる

マニュアル作成の前提は、マニュアル化する目的、つまり、経営者の思いが共有されていることです。これがないと、

マニュアル通りにやっているはずなのに、会社の理念とは異なる対応

が出てしまうわけです。

この前提が満たされていることを条件に、

マニュアルは短く簡潔に、専門用語をできるだけ使わずに作成

しましょう。作業手順が箇条書きになっていても構いません。具体例は次の通りです。

1.箇条書きで、一目で分かる場合

  • エクセルを開く
  • 求職者数と採用者数のデータを入力する。対象は先々月、先月、当月の3カ月間
  • ツールバーの「挿入」から「折れ線」を選択して、折れ線グラフを作成する
  • 折れ線グラフを「採用実績報告書」に挿入する

2.文章で、一目では分かりにくい場合

エクセルを開いて、先々月、先月、当月の3カ月間の求職者数と採用者数のデータを入力し、ツールバーの「挿入」から「折れ線」を選択して折れ線グラフを作成して、「採用実績報告書」に挿入する

一目では分かりにくい場合には、文章と併せて、作業中の画面キャプチャなどの画像も添付すると、業務の流れをよりイメージしやすくなります。

3)全体の構成などを検討する

マニュアルの全体の構成や内容を検討します。担当者でなければ分からない“難所“やありがちなミスを入れると良いでしょう。ミスや抜け漏れがないかを確認するために、チェックリストも用意しておきましょう。

4)作成時のルールを決める

複数のメンバーが共同でマニュアルを作成する場合はルールが必要です。具体的には、

  • 保管場所やファイル名
  • フォントの種類やサイズなどの記述・レイアウト

などについてあらかじめルールを決めておきましょう。

4 マニュアルを実際に使ってもらおう

マニュアルが形になったら、

若手社員やその業務を引き継ぐ予定の後任者にマニュアルを使ってもらい、問題なく業務が進められるかどうか

を試してみましょう。

マニュアルの作成担当者は分かりやすく作成したつもりでも、業務に慣れていない人がマニュアルを見たり、実際に作業をしたりすると分かりにくい箇所が出てくるかもしれません。指摘を受けつつ、こうした点を改善することで使いやすいマニュアルになります。

以上(2025年1月更新)

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画像:yelosmiley-Adobe Stock

【値上げに成功する交渉術(6)】相手を手玉に取る禁断の交渉テクニック

1 「策士策に溺れる」にならないように

今回は、より実践的な内容として交渉の場ですぐに使えるテクニックを紹介します。テクニックを駆使すると、驚くほど相手が動揺して交渉を有利に進められることがあります。一方、交渉慣れした相手はこちらのテクニックを逆手に取って、

そういうテクニックを使っても無駄ですよ。正々堂々とやりましょう

などと指摘しながら、局面をひっくり返しています。

テクニックは諸刃の剣であることを認識し、最も効果的と思われる局面で使ってください。では、交渉で使える6つのテクニックを紹介します。

2 “間(沈黙)”をうまく使う

沈黙に耐えられず、ついついくだらない話をしてしまうことはありませんか。

人は“間”に弱いものであり、この“間”を交渉でうまく使うことができます。基本は、

相手から厳しい要求をされたときに、こちらが“間”を取る

のです。そうすると、沈黙に耐えられなくなった相手が「今の要求は厳しすぎたでしょうか?」などと譲歩の姿勢を示してくることがあります。

ポイントは、こちらが“間”を取る際、相手に「聞き取りにくかったのかな?」であるとか、「こちらが有利で相当、追い込んでいるな」などと思われないことです。前者は大きな声ではっきりと同じことを繰り返されるだけですし、後者であれば一気に攻めてきます。そのため、

“間”を取るときは、メモを取る(実際は取っていなくてもいい)、遠くを見る

などのしぐさをしましょう。余裕があるなら、相手が厳しい要求を出してきたときに「そらきた。そこは予想していたよ」というこちら感情が伝わるしぐさをするのも悪くありません。

なお、相手が“間”を取ってくるようなら、こちらも黙って付き合えばよいのです。それでも状況が変わらなさそうなら、「本日はこれ以上の進展がなさそうですので、日時を改めましょう」といって交渉を打ち切ってしまえばよいのです。

3 良い警官と悪い警官

良い警官と悪い警官は、最もポピュラーな交渉のテクニックです。昔の刑事ドラマの取調室のシーンを思い出してください。

  • 刑事A:「おまえがやったんだろ!」と容疑者を激しく責め立てる
  • 刑事B:刑事Aを「まぁまぁ」と制し、容疑者に「かつ丼食うか?」と優しく接する

これが良い警官と悪い警官の基本です。一人が「これは150万円です」と相手に厳しい要求をしますが、もう一人は「それは難しいでしょう。せめて100万円まで当社も努力しないと」などと相手の味方のように振る舞います。この場合、こちらの主張は100万円でも十分な水準であり、150万円はいわゆる「アンカー」です。

なお、その場にいない上司を悪い警官にすることもできます。「私はいいのですが、上司が頑固で説得できるかどうか……」などといって、その場にいない人をうまく使います。

4 ドア・イン・ザ・フェイス(高い→低い)

最初に示した条件から譲歩を重ねます。相手にお値打ち感を与え、こちらの柔軟な姿勢を示すテクニックです。やり方は単純で、最初に150万円で提示し、そこから120万円、110万円と下げていくイメージです。

難しいのは最初の提示です。この例の場合、150万円という水準が相手にとって全く検討に値しないレベルだと意味がありません。ましてや、焦って値下げをすると「もともと上乗せして提示しているのだろう」と足元を見られ、その後の交渉がやりにくくなります。要求を引き下げていくドア・イン・ザ・フェイスは、こちらとしても心理的に楽なものですが、実施する際は相手の状況をしっかりと調べてからにしましょう。

なお、金額などの条件を引き下げる際は、

最初に大きく、その後は小さく

が基本です。こうして、「最初に誠意を見せてできるだけ頑張った。もう、これ以上は難しい」といった状況を演出するためです。ただ、相手がいわゆる「ハード型」の交渉をする場合、お構いなしでどんどん値下げ要求をしてくるので注意が必要です。

5 フット・イン・ザ・ドア(低い→高い)

先ほどのドア・イン・ザ・フェイス(高い→低い)とは逆のパターンです。つまり、少しずつ要求を引き上げながら、“合意感”を演出するテクニックです。

例えば、

「最初の2週間はお試し期間です」などといって商品を置いてもらい、そこから本契約にもっていく

というテクニックです。あまりやりすぎると、相手に「またか」と不誠実な印象を与えてしまうので、注意が必要です。

このフット・イン・ザ・ドアを値上げに使う場合は、

  • 初年度は10%の値上げ、次年度以降は15%の値上げ
  • 1000個までは10%の値上げ、それ以降は15%の値上げ

といったように交渉することになるでしょう。

6 その場で結論を出さない

その場で重要な判断を下し、それを相手に伝える人は多いです。交渉の場はプレッシャーがかかるので早く解放されたいですし、その場で決めたことが覆らないように相手との合意として明示しておきたいからです。

しかし、冷静になって振り返ってみると、その場で下した判断は、

  • 交渉から逃げたいので譲歩をした
  • 自分をよく見せようと譲歩をした
  • とにかく合意しなければならないという雰囲気になり譲歩をした

といった内容になっていることがあります。

ですから、それが重要な局面の判断であればあるほど、たとえ全権委任されていても、一度、持ち帰って検討するようにしましょう。ただ、毎回持ち帰って検討していると、相手から「優柔不断な人だ」とか、「この人は自分で決められないのか?」などと思われるので、持ち帰る口実は用意しておきましょう。例えば、

  • この件は当社の社長の関心も高いので、一度、報告しなければならない
  • 次の予定があるので、本日はこれで失礼します

などといった具合です。

7 相手を怒らせる

最後は禁断のテクニックです。通常、交渉の相手を怒らせることはありません。しかし、

相手がかたくなで、こちらが示したデータに反応しないような場合、わざと相手を怒らせて事態を打開する

こともあります。これが通用するのは、

  • 相手は頑固だが、真摯に交渉に向き合っている
  • 相手の交渉依存度が高い

という条件が満たされた場合です。

相手が真摯に交渉に向き合っているなら、一度怒らせて、交渉を打ち切ってみます。時間がたって冷静になった相手が「もしかすると、自分の主張は無茶なのか? あるいは前提が間違えているのか?」と考えてくれたらしめたものです。相手が真摯なら、双方にとって良い結果を目指しているはずですから、改めて交渉を開始することができます。

また、相手がこの交渉を成立させたいと強く思っていなければなりません。こうした状態を、交渉依存度が高いといいます。逆に、相手の交渉依存度が低いと、「自分を怒らせるなんて失礼だ。この交渉は決裂でいい」となり、交渉は終わってしまいます。

この相手を怒らせるというのは、それ以外に打開策が見当たらないようなケースでの最終手段なので、こちらも交渉決裂の覚悟を決めておかなければなりません。

以上(2025年2月更新)

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【入社1年目の教科書】損益計算書の利益はどこにいった?

書いてあること

  • 主な読者:損益計算書の構造や読む際のポイントが知りたい新入社員
  • 課題:他の財務諸表よりはとっつきやすいが、なぜ、利益が5つもあるのか分からない
  • 解決策:損益計算書は5つの利益の意味を知り、キャッシュとの不一致を意識する

いよいよ財務諸表を読むぞ! 先輩が「損益計算書は売上から費用を引いて利益を出す単純な構造だから簡単だよ」って言ってたな。確かに足し算と引き算の連続なので計算は分かるけど、なんで利益が5つもあるのかな。それに、利益の分だけお金があるなら、うちの会社はすごいお金持ちだけど、本当かな?

1 まずは損益計算書を見てみよう

損益計算書とは、

会社がもうかったか損をしたかを示す財務諸表

です。少し難しく説明すると、会計期間の売上、費用、利益の状況を示した財務諸表となります。英語では「Profit and Loss Statement」と表記されるので、「PL」「P/L」と略されたりします。

早速、損益計算書を確認してみましょう。

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注目していただきたいのは、損益計算書が、

収益-費用=利益

の繰り返しになっていることです。この計算を繰り返して、会社がどれくらいもうけたのか、あるいは損をしたのかを示しており、計算の過程で、

5つの利益

が登場します。項目の説明は後ほどしますが、まず、この5つの利益が何を意味するのかのイメージをつかんでください。

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一番上の売上高から費用を引いていき、利益を求める構造になっていることがよく分かりますね。

次章で、それぞれの項目の意味を説明していきます。説明ばかりで退屈かもしれませんが、全て大切な内容なので、できるだけ覚えてください。

2 損益計算書の項目

1)売上高

売上高は、商品・製品・サービスなどを販売することで得た売上の総額です。売上高は会社の収益力を確認する最も基本的な数値で、会社のおおよその規模を示します。

2)売上原価

売上原価は、小売業の仕入原価や製造業の材料費など、商品の調達や製品の製造に必要な費用です。また、社員がサービスの提供や製品の製造に直接関係する業務(工場のラインなど)に従事している場合、その人件費も一般的には売上原価になります。

3)売上総利益

売上総利益は、「売上高-売上原価」で求めるもので、「粗利(あらり)」とも呼ばれます。売上高に対する売上総利益の割合が高いほど、その会社ならではの付加価値の高い商品・サービスを販売しているといえます。

4)販売費・一般管理費

販売費・一般管理費(以下「販管費」)は、旅費・交通費、広告宣伝費、減価償却費などの諸経費です。また、社員が商品・サービスの販売を間接的にサポートする業務(経理・総務など)に従事している場合、その人件費も一般的には販管費になります。

5)営業利益

営業利益は、「売上総利益-販管費」で求めるもので、会社がメインとしている「本業」でどれだけもうかっているか、もしくは赤字になっているかが分かります。損益計算書を見る際は必ず確認したい利益です。

6)営業外収益・費用

営業外収益・費用は、本業以外の投資・財務活動によって生じた収益や費用です。営業外収益には預貯金の受取利息や受取配当金などが含まれます。また、営業外費用には支払利息などが含まれます。

7)経常利益

経常利益は、「営業利益+営業外収益-営業外費用」で求めるもので、本業以外の投資・財務活動までを勘案した利益です。今はあまりいませんが、「経常(けいつね)」と呼ぶ人もいます。営業利益が赤字なのに、経常利益で黒字になっている会社もあるので、なぜ、そのような状態になっているのかを分析してみましょう。

8)特別利益・損失

特別利益・損失は、会社の経常的な経営活動とは直接関係のない、臨時的、偶発的に生じた収益や費用です。特別利益には固定資産の売却益などが含まれます。また、特別損失には自然災害や訴訟による損失などが含まれます。

9)税引前当期純利益

税引前当期純利益は、「経常利益+特別利益-特別損失」で求めるもので、臨時的、偶発的に発生する収益と費用までを考慮した利益です。

10)法人税、住民税及び事業税

法人税、住民税及び事業税は、会社が支払う税金です。

11)税引後当期純利益

税引後当期純利益は、「税引前当期純利益-法人税、住民税及び事業税」で求めるもので、会社が処分可能な最終利益です。税引後当期純利益は、会社の財務体質強化のために内部留保に充てられたり、新たな設備投資に使われたりする原資となります。

3 損益計算書の利益はどこにいった?

損益計算書に関する最大のポイントは、

損益計算書の利益に相当するお金が、会社の金庫や銀行口座にあるわけではない

という驚愕(きょうがく)の事実です。「えっ?」と思うでしょうが、損益計算書の利益は帳簿上のものにすぎません。細かなことはさておき、ここでは、

  • ビジネスは「掛け」が多く、実際にお金をもらったり払ったりするのは数カ月先になる
  • 損益計算書では、請求書を発行した時に売上になり、請求書を受領した時に費用になる

ことを覚えてください。例えば、4月に100万円の請求書を発行し、支払期日を5月末にした場合、

4月に売上が100万円計上されますが、実際にお金をもらうのは5月末になり、1カ月のズレが生じる

ということです。そして、このズレにより「黒字倒産」という奇妙な現象が起こります。黒字なのに倒産してしまうのは、

損益計算書は黒字なのに、実際のお金はマイナスになっている状態

を指しているわけです。ここを押さえていれば、かなり上級です!

では、「掛け」の規模ってどれくらいなのとか、会社にはいくらのお金(キャッシュ)があるのとか、というのは、別の財務諸表である貸借対照表とキャッシュフロー計算書を読めば分かります。

4 【質問】売上と利益のどれを重視する?

最後に皆さんに質問です。

「売上高、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、税引後当期純利益」の中で、最も重視するのは何ですか?

この質問に対する答えは、損益計算書を読む理由や立場によって違います。例えば、

その会社の本業の状態を知りたいのであれば、営業利益を重視する

ことになります。あるいは、銀行の立場だと、

借入金の返済原資となる税引後当期純利益を重視する

ことになるわけです。

「自分は何のために損益計算書を読むのか?」という目的を持つと、損益計算書の見え方が違ってきます。また、損益計算書に限らず、財務諸表は単年度のものだけでは良し悪しを判断することはできません。理想的には、当期、前期、前々期の3期分を比較してみると、状況がより分かりやすくなります。

以上(2024年12月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【値上げに成功する交渉術(5)】交渉前の最終確認と交渉中のバイアス排除

1 準備に勝るものはない

交渉で理不尽と思えるほど強引な相手と遭遇しても、それが相手のスタイルだと見抜ければ問題はないのですが、実際は交渉中に冷静であり続けることは難しく、腹を立てたり、恐れたりしてしまいます。

この問題は自身の性格(カッとなりやすい性格、ビビりな性格など)とも関係するため、完全に解決できません。できることは、

入念な準備をして、交渉中の自身の客観性を増すこと

です。準備をすれば交渉に対する自信も出てくるので、その場を俯瞰(ふかん)しやすくなります。では、どのような準備をすればよいのでしょうか。具体的な項目を確認していきましょう。

2 自社に関する交渉前のチェック項目

交渉に対する自社の方針、姿勢として、以下が明確になっているかをチェックしてみましょう。不明確なものがあれば、改めて検討します。

  • 交渉の目的は明確か
  • 交渉の方針は経営戦略に合致しているか
  • 交渉関係者は整理されているか
  • 交渉の論点は整理されているか
  • 自社の交渉依存度は高いか、低いか
  • BATNA(代替案)と留保価値は設定されているか
  • BATNAと留保価値は、交渉依存度とバランスが取れているか
  • 交渉する自分(たち)の権限はどこまでか
  • 相手と合意に至るための複数の選択肢を、交渉シーンに応じて柔軟に考えているか
  • 自社の案で合意できた場合、それを実行する際の難所は何か

3 相手に関する交渉前のチェック項目

同様に交渉に対する相手の方針、姿勢の「想定」をチェックしてください。これらの中で想定していないものがあれば、改めて分析してみてください。

  • 相手の業界動向などを分析しているか
  • 相手が重視している行動規範はどのようなものか。それは自社と相性が良いか
  • 交渉する相手の属性を調べたか(職種、出身校、実績など)
  • 相手の交渉関係者は整理されているか
  • 相手の交渉依存度は高そうか、低そうか
  • 相手のBATNAと留保価値は想定しているか
  • 相手の姿勢は強気か、弱気か
  • 相手の感情はどのような状態か(高揚、怒り、恐れなど)
  • 交渉する相手の権限はどこまでか
  • 相手の案で合意することになった場合、それを実行する際の難所は何か

4 業界動向の分析で使えるフレームワーク

1)フレームワークの関係性

相手の業界動向を分析する際は、フレームワークを使うと便利です。相手の業界動向の分析は値上げ交渉に行うものですが、交渉の直前に復習することをお勧めします。

いろいろなパターンがありますが、フレームワークの関係性をまとめたイメージは次の通りです。

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この他、相手先の経営者や交渉の担当者のSNSをチェックしておくと、相手が大事にしている行動規範が想像できたり、共通の知り合いが見つかったりすることがあります。共通の知り合いがいたら、相手の状況をやんわり探ってみることもできます。

2)フレームワークの解説

上の図にあるフレームワークの解説は次の通りです。

・PEST

「Politics(政治)」「Economics(経済)」「Society(社会)」「Technology(技術)」の視点から、事業環境を分析するフレームワークです。ここでご紹介する中では最も視野が広いフレームワークです。政策や景気動向も分析するため、足元だけではなく、将来についても想定することになります。

・5Forces(5つの力)

「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」「新規参入の脅威」「代替サービスの脅威」「業界内の競争状態」の視点から、その業界の競争状態の激しさを分析するフレームワークです。結果は「大・中・小」で示したりします。売り手の交渉力が強いときは「大」といった感じです。

なお、ここでは「外注先」を含めて6つの力としています。相手と自社のBATNAを考える際、他の外注先を常に意識することは大切です。

・3C

「Customer(顧客)」「Competitor(競合)」「Company(自社)」の視点から、経営資源や戦略、ニーズなどを分析するフレームワークです。分析は「顧客→競合→自社」の順番で行うことで、自分本位な結果を導かないようにします。相手の立場で検討する場合、自社を、相手にとっての顧客などとして想定します。

・Value Chain(バリューチェーン)

事業活動を「主活動(購買や製造、販売、アフターサービスなど)」と「支援活動(人事や労務など)」に分けて、生み出されている付加価値を分析するフレームワークです。相手の付加価値に大きな影響を及ぼす提案は受け入れてもらいにくいので、この辺りも意識しながら交渉の内容を検討しましょう。

・PPM

「花形(スター)」「金のなる木」「問題児」「負け犬」の視点から、市場の成長性や占有率を分析するフレームワークです。金のなる木で得た収益を問題児に投資して、花形に導くというのが1つの考え方です。

・SWOT

「Opportunities(機会)」「Threats(脅威)」「Strengths(強み)」「Weaknesses(弱み)」の視点から、外部、内部の環境を分析するフレームワークです。これまでの分析を、

  • 外部(Opportunities、Threats):PEST、5Forces、3C
  • 内部(Strengths、Weaknesses):Value Chain、3C、PPM

といったように組み込むこともできます。

5 交渉環境を整える

「いつ、どこで交渉するのか」という、交渉環境を整えることも重要です。サッカーでホームとアウェーがあるように、値上げ交渉も相手のオフィスより自社のほうがリラックスできます。今どきは、オンラインで交渉することもあるでしょうが、オンラインだと「相手の圧力」を感じずに済むので、交渉に慣れていない人は、オンラインを申し入れるのも悪くありません。

また、一般的ではありませんが、

相手が嫌がらせをしてきたり、高圧的な態度(ハード型というよりも脅し)を取ってきたりすること

もあるので注意しましょう。

この他、相手が難しい専門用語を使ってまくしたててくることが想定されるなら、専門的な知識を持った第三者に同席してもらうのもよいです。

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6 バイアスを排除する

交渉中はバイアスの排除を心掛けましょう。バイアスとは先入観や偏りのことで、私たちは無意識のうちにたくさんのバイアスの影響を受けています。例えば、

  • 相手が高学歴だったら、「論理的に違いない」と感じる
  • 相手が体の大きなこわもてだったら、「交渉も強そう」と感じる

といったことです。そして、相手がたまたま理路整然と話をしてきたら、「やはり、この人は頭が良い!」などと思ってしまいます。

「グロービスMBAで教えている交渉術の基本」(*)などを参考にすると、交渉中に気を付けたいバイアスには次のようなものがあります。

  • 確証バイアス:自分の考えと同じ意見やデータだけを熱心に支持する
  • 反射的な拒絶:客観的な検証などはなく、とにかく反射的に相手の提案を低くみる
  • 役職への固執:その場で一番偉いのは自分なので、自分の意見が正しい
  • 立場固定:交渉の局面が変化して合理性を失った主張でも、それを変えない
  • 勝利への固執:勝つことに固執して相手を否定し、ゼロサムゲームを展開する
  • 嫉妬・妬み・憧れ:自分より優れた人を避ける、あるいは無条件に近い状態で従う
  • 印象管理:意見や態度の一貫性を取り繕うために、非合理的な判断をする
  • サンクコスト:既に発生したコストを、将来の判断をする際に考慮する
  • グループシンク:集団浅慮。「合意しなければ」と強迫観念に支配される

値上げ交渉の目的は「値上げ」ですが、バイアスにとらわれると、

  • 相手を恐れてしまい、主張できない
  • 相手を「すごい」と思い、相手の主張を必要以上に受け入れてしまう
  • 相手を「嫌い」と思い、相手の主張が合理的でも一切受け入れたくなくなる

といった状況に陥りかねません。そこで、次のことを心得てバイアスを排除しましょう。

  • 相手と自分とでは行動規範が異なる。そもそも重要視する価値観や使う言葉さえ違うのだから、こちらの言葉が届きにくいのは当然
  • 人と問題を切り離す。値上げを受け入れないのは目の前の相手ではなく、相手の企業の方針である
  • 交渉の目的を再確認。必ず合意しなければならない交渉なのか、決裂してもよいのか

自分が「冷静さを失ってきたかも」と感じたら、トイレ休憩などを申し出て、席を立つとよいでしょう。ただし、相手の目の前でため息などはつかないようにします。「こちらが冷静になろうとしている」ことを見透かされ、逆手に取られてしまうことがあるからです。

いかがでしょうか。今回の記事で交渉前にチェックしておくべき項目と、交渉中に、バイアスにとらわれないようにするための心構えがお分かりいただけたと思います。

【参考文献】

(*)「グロービスMBAで教えている交渉術の基本」(グロービス(著)、ダイヤモンド社、2016年6月)

以上(2025年2月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【値上げに成功する交渉術(4)】強引な交渉相手と当たってしまったらどうする?

1 交渉はセオリー通りに進まない

交渉にはさまざまなセオリーがありますが、実際のビジネスでは、全く理屈が通じない強引な交渉相手と対峙するケースがよくあります。一方的で強引な交渉はセオリーと反するはずなのに、なぜ、このようなことをするのでしょうか。

交渉に対する知識や経験の違いもありますが、それ以上に、

その交渉に対する価値基準や、交渉依存度が違う

ことに起因しています。こちらがプラスサム型の交渉(Win-Winになる交渉)を目指しても、相手が「値上げなんてけしからん!」と、ゼロサム型の交渉(Win-Loseになる交渉)を展開してくると、全く話がかみ合いません。加えて相手が強引だと、いいようにやられてしまうことがあります。

このようなとき、どうしたらよいのでしょうか。詳しく見ていきましょう。

2 「ハード型」と「ソフト型」の交渉スタイル

1)ハード型とソフト型とが対峙したらどうなる?

交渉にはハード型とソフト型とがあります。文字通りの交渉スタイルで、

  • ハード型:自分の条件に固執して敵対的に接し、自分の勝利のために相手に譲歩を迫る
  • ソフト型:状況に応じて自身の条件を見直して友好的に接し、双方の利益を目指す

といった具合です。ハード型とソフト型とが対峙した場合、ソフト型はハード型の攻撃を受け続けて圧力に屈してしまうか、交渉そのものが決裂しまうことが多いです。ハード型の交渉担当者は、ただ自分の条件を実現したいだけなので、交渉の局面も作れません。

次の文章を読んでください。

1つのオレンジを取り合っている姉妹がいます。姉も妹も、「自分がオレンジを丸ごともらう!」と言って一歩も譲りません。姉妹がけんかせずにオレンジを分け合うには、どうしたらよいでしょうか?

これは「オレンジの交渉」と呼ばれる有名なケースですが、仮にこの姉妹がハード型とソフト型の交渉を行ったらどのようになるでしょうか。一例を示すと、次のようになります。

画像1

妹のハード型は強烈で、これをやられると姉としては譲歩せざるを得ません。言い争っている最中に母親を呼ばれたら、「お姉ちゃんなのだから我慢しなさい!」と一蹴されるか、「けんかするならおやつはなし!」と、オレンジを取り上げられてしまうことが明らかだからです。

2)ハード型への対策

リアルのビジネスで、相手がハード型の交渉を展開してくることは珍しくありません。実際は、言動は穏やかでも、取引関係の優位性を押し出すなどして、一向に条件を変えない「隠れハード型」が多いでしょう。相手がハード型の交渉を展開できるのは、例えば、

  • 自社:相手は大切なクライアントであり、何とか良い結果を導きたい
  • 相手:相手は単なる業者であり、交渉が決裂しても他に依頼すればよい

といった具合に、根本的な違いがあるからです。こうなってしまうと対策は難しいですが、方法としては、

  • 双方の上司の同席を求めて、交渉当事者をけん制する
  • 力のある第三者に仲裁を依頼する
  • 客観的な基準を提示して交渉の論点を広げる
  • アンオフィシャルな場も利用して、相手とコミュニケーションを取る
  • 交渉を長引かせて、相手の交渉担当者の態度が変わるのを待つ

などがあります。いずれにしても、

交渉依存度が低く、しかもハード型で臨んできそうな相手とは交渉しない

というのが正解かもしれません。

3 なぜ、ソフト型が存在するのか

ここまで読んで「そのような状況ならばハード型で交渉すればよい」と思った人もいるでしょう。しかし実際は、ソフト型の交渉を展開する人も数多くいます。理由としては、

  • 交渉で勝ち過ぎると(自分の条件を通し過ぎると)、後に悪影響が出る
  • 交渉に至る前から良好な関係が築かれている

が挙げられます。

1)勝ち過ぎると恨まれる?

企業間取引は継続が前提です。いかに交渉とはいえ、取引相手を完膚なきまでにたたきのめしてしまったら、やられた側は嫌な気分になり、その後の関係に支障が出ます。もちろん「コレはコレ、アレはアレ」と区別するのが大人ですが、人の感情はそう簡単ではないのです。

そして、やられた側は、そのことを同業他社などに話すでしょう。「こちらは誠意を見せたのに、全く聞いてもらえず、高圧的に打ち切られた」といった具合にですが、こうした話は尾ひれが付いて広まります。ハード型とは、ある意味で相手にけんかを売るようなものですが、

交渉が終わってもけんかは終わらない

ということです。

ですから、賢い交渉担当者がハード型の交渉を展開することは少なく、むしろ相手に花を持たせながら、こちらの条件を上手に通していきます。これはつまり、

  • 相手にとって悪くなく、自分にとって願ってもないほどの交渉結果を引き出す(*)
  • 交渉では、相手に「勝った」気分になってもらうことが大切だ(**)

ということを実践しているというわけです。

2)日ごろの関係性は交渉を超える?

長年の取引があって相手のことをよく知っており、互いに成果を上げてきているような場合、

交渉以前の問題で、相手のために何とかしてあげたい

という気持ちが働くものです。これは、

交渉が始まる前から、良い結果が出ることがほぼ決まっているケース

です。もちろん、ビジネスですから、相手に値上げを受け入れてもらったら、次にこちらが何かを返さなければなりませんが、ここで分かるのは、

日ごろの関係づくりが自社のピンチを救う

ということです。効率化ばかりを考えていると、コミュニケーションの手数を減らすことを目指したくなりますが、一定の「ムダ」は必要ということです。

【参考文献】

(*)「ハーバード×MIT流 世界最強の交渉術―信頼関係を壊さずに最大の成果を得る6原則」(ローレンス・サスキンド(著)、 有賀裕子(翻訳)、ダイヤモンド社、2015年1月)

(**)「負けない交渉術―アメリカで百戦錬磨の日本人弁護士が教える」(大橋弘昌(著) 、ダイヤモンド社、2007年1月)

以上(2025年2月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

プレゼンテーションを成功させるための3つの事前準備

1 「プレゼン」には万全の体制で挑もう

ビジネスシーンでは、プレゼンテーション(以下「プレゼン」)が頻繁に行われます。しかし、「上手に話せなかったらどうしよう」「自分の提案が的を外していたらどうしよう」など、不安な気持ちが膨らみ、プレゼンに対して苦手意識を持つ人も少なくありません。こうした不安をなくすには、「何が起こっても大丈夫」と思えるよう万全の準備をするしかありません。

この記事では、プレゼンを成功させるための準備のポイントとして、次の3つを紹介します。

  1. 目的の理解:何のためにプレゼンを行うのかを明確に理解する
  2. 内容の精査:何を、どんな方法で伝えるのかを熟考する
  3. 練習の徹底:プレゼン内容をマスターし、本番で成果を出せるようにする

プレゼンは何度練習しても緊張するものですが、本気で準備していれば、「自分はこれだけの準備をしてきたのだ」という自信が出てきて、「失敗したらどうしよう」という不安は軽くなっていきます。結果的に、提案が聞き手に受け入れてもらえるかは分かりませんが、準備した分だけプレゼンの質は向上しますから、まずは上の3つのポイントを順に押さえていきましょう。

2 (ポイント1)目的の理解~何のためにプレゼンを行うのか

プレゼンの準備をするに当たって、最初に押さえておきたいのが「目的の理解」です。

プレゼンのシーンや段階によって、そのプレゼンの目的(ゴール)が変わってくる

ので、ここがブレると後が大変です。

プレゼンを担当する当人は「わざわざ分析しなくても目的なんて明確だ!」と思いがちですが、チーム内で認識の違いが生じていることなどもありますので、

目的の明確化と認識のすり合わせのためにも、プレゼン準備を始める前に状況を整理

しましょう。

1)シーンによる目的の違い

プレゼンが行われるビジネスシーンには、例えば次のようなものがあります。

  • 新規見込み顧客である窓口担当者に対する商品・サービス(以下「商品」)の提案
  • 既存顧客の部門長などに対する新しい商品企画の提案
  • 商品を実際に利用している既存顧客先の従業員に対する商品の利用方法の説明
  • 自社役員に対する新しい商品企画の提案
  • 自社の部門長に対する生産性向上のための業務改善の提案
  • プロジェクトチームのメンバーに対する新商品の営業方針の提示

シーンによって、プレゼンの目的は異なります。例えば、

  • (シーン1)新規見込み顧客に対する商品の提案 → 自社商品の購入を決定してもらうことが目的
  • (シーン2)プロジェクトチームのメンバーに対する新商品の営業方針の提示 → メンバーに営業方針を正しく理解してもらうことが目的

といった具合です。

2)プレゼンの段階による目的の違い

「初めて行うプレゼンなのか」「何度目かのプレゼンなのか」という、プレゼンの段階によっても目的は変わります。例えば、

  • (段階1)新規見込み顧客の窓口担当者に対しての初プレゼン → 自社と自社商品について理解を深めてもらうことが目的
  • (段階2)何度かプレゼンを行っている顧客に対しての最終プレゼン → 意思決定権者に購入を決定してもらうことが目的

といった具合です。

3)プレゼンの目的を理解するためのチェックシート

プレゼン相手や目的などをまとめたチェックシートを活用すると、

メンバーとの認識の不一致を防いだり、次章で説明する「内容の精査」の際にプレゼンの軸がずれるのを防いだりするのに役立つ

でしょう。プレゼンの目的を理解するためのチェックシート(例)を次に示します。

画像1

3 (ポイント2)内容の精査~何を、どんな方法で伝えるのか

次に、プレゼンの内容を精査していきます。最初に整理した目的から軸がずれないよう、「聞き手に効果的に伝える」内容を目指しましょう。

1)伝える内容を検討するための情報収集

1.聞き手の状況

まず、プレゼンの場でこちらの意図がきちんと伝わるように、必要な情報を収集します。

例えば、新規見込み顧客である窓口担当者に対する商品の提案のプレゼンでは、聞き手に、自社商品と同じタイプの他社商品を利用したことがあるか、また利用したことがある場合はその印象について、事前に確認しておけるとベターです。

通常、このようなパターンのプレゼンでは自社商品について説明することが中心のプレゼンになります。しかし、仮に聞き手が他社商品を利用したことがあり、しかも何らかの不満を感じていることが分かっていれば、

他社商品と比較し自社商品の優位性を強調するなど、より効果的なプレゼン内容を用意できる

場合もあります。

2.プレゼンの条件

また、次のような内容についても、事前に先方に確認しておきましょう。

聞き手の人数、プレゼン時間、対面かオンラインか、対面の場合は会場の広さ(聞き手との距離や自分の立ち位置など)、設備(プロジェクター・ホワイトボード・マイクなど)

プレゼン時間が短い場合は伝えたいポイントを絞る、プロジェクターがない場合はフリップを用意するなど、条件に合わせた対応が必要になります。

2)構成の決定

一般的なプレゼンの構成は、「序論・本論・結論」です。詳細は次の通りです。

画像2

また、プレゼンは「『つかみ』が肝心」と言われます。序論の段階で聞き手を引きつけるために、業界の動向などを絡めて「~のような問題があるのをご存じでしょうか?」などの形で疑問を投げかけたり、最初に「今回の提案によって、貴社の抱える問題がスムーズに解決できます」と結論を先に述べたりする方法なども考えられます。

3)資料・スライドの内容の決定、作成

プレゼンの構成が決まったら、次に資料・スライドを作成します。資料は、パワーポイントなどを使って作成するのが一般的です。例えば、

  • 拡大している様子を示したいときは右上がりの矢印を大きく見せる
  • アニメーションをうまく使用し動きのある資料にする

など、伝えたいことを図やイラストを使ってイメージさせるように作ると分かりやすいでしょう。

また、資料を作成する際は「情報量」に注意しましょう。例えば、

  • 重要なポイントが一目で分かるレイアウト
  • 1ページに盛り込む内容は1つだけ

などを心掛けて作成します。

画像3

図表3の右側のように、細かい文字や詳しい説明などを資料・スライドに記載すると要点が分かりにくいほか、オンライン会議などで資料を共有する場合、聞き手の環境によっては文字が読みにくいことも考えられます。

重要な点のみ資料・スライドに記載し、それ以外は口頭で説明する準備をしておくと、とっさの質問などにも臨機応変に対応することができます。

4 (ポイント3)練習の徹底~プレゼン内容をマスターする

プレゼン本番で頭が真っ白になってしまったり、焦って大切なことを伝え忘れてしまったりするのでは……という心配を薄めるためには、泥臭いやり方ですが、やはり

本番を想定して、何度も練習を重ねること

が効果的です。

何も見ないでもスラスラと言葉が出てくるようになるまで練習するのが理想ですが、他の業務との兼ね合いで、まとまった練習時間を取りにくい場合もあります。そういうときは通勤電車の中や入浴中など、スキマ時間をうまく使ってプレゼンの練習に充てるとよいでしょう。

練習するときのポイントは、

  • 必ず時間を計ること
  • 話す速度や間の取り方を覚えること

です。限られた時間で話すとなると、誰でも焦りがちになりますが、あくまで「聞き手に伝える」ことを大切にして、ゆっくり・はっきりと話すことを心掛けましょう。

「聞き手に伝わる」プレゼンを行うには、

自分の話し方・立ち方・視線の配り方の癖を客観的に把握し、必要に応じて直していく

ことも大切です。スマートフォンなどを活用して自分の話している姿を録画し、チェックすると、自分の癖を客観的に見ることができます。

また、上司や同僚などの前でプレゼンを行い、印象や直したほうがいい点を教えてもらうのもよいでしょう。その際、質疑応答の時間も設ければ、質問への回答も練習することができます。

以上(2025年2月更新)

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画像:metamorworks-Adobe Stock

【値上げに成功する交渉術(3)】交渉の構造を知って冷静に対処する

1 ふっかけられても冷静でいるには?

交渉では、皆さんも相手も最初に「ふっかける」ことが多いです。例えば、

  • 自社:100万円の値上げで十分なのに、150万円の値上げを提示する
  • 相手:50万円なら値上げを受け入れられるのに、一切値上げには応じないと突っぱねる

という感じです。相手の機先を制し、有利に交渉を進めるためのテクニックですが、それを分かっていても、いざ交渉の場に立つと精神的に追い込まれることがあります。ここでおじけづくと、相手がふっかけてきた金額を基準に交渉が進むので、それは避けなければなりません。

もちろん、最初から双方の落としどころが分かっていれば、100万~50万円を交渉余地とできますが、なかなかそうはいかないのがビジネスです。そこで皆さんは、

交渉の構造を正しく理解し、飛び交う数字に惑わされず、基準を守って冷静に交渉する

ようにしなければなりません。早速、交渉の構造を確認していきましょう。

2 交渉の構造を知る

1)初手は「アンカー(アンカリング)」

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多くの場合、アンカーは交渉初期に相手に示す水準です。その後の交渉を有利に進めるために、本来の要求よりも高い(低い)水準を示します。この図では、オレンジ色が自社、紫色が相手となっています(以降、同様)。右側のオレンジ色のアンカーは150万円、左側の紫色のアンカーは0円で、それぞれがふっかけている状態です。

アンカーは経験などに基づいて設定されることが多く、双方が相手をどう見ているのかも教えてくれます。下手をすれば(ふっかけすぎれば)、その場で交渉決裂もあり得るわけですから、交渉依存度が高い場合は、アンカーも慎重になるのが通常です。

2)本音は「留保価値」

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相手のアンカーに惑わされないためにも重要なのが留保価値です。留保価値とは、それを下回ったら交渉を打ち切る基準であり、いうなれば「本音」です。言葉を変えると、

アンカーとして150万円を示したが、実際は100万円の値上げを達成したい

という状況を表しています。

相手のアンカーに付き合う必要はありません。また、相手の留保価値が分かれば交渉を有利に進められるので、アンカーを逆手に取って相手の留保価値を探ってみましょう。具体的には、

「値上げの余地が全くないというのは厳しいです。それは御社の最終決定ですか?」

などと言って、相手に揺さぶりをかけてみましょう。相手に交渉決裂の覚悟がなければ、何らかの情報を与えてくれることが多いです。

なお、いくら相手の本音が知りたいからといって、こちらのほうから、

「150万円の値上げを提示していますが、実は100万円でもよいのです。そちらはどうですか。本当に値上げを一切受け入れられませんか?」

などと歩み寄るのは早計です。交渉のスタイルには

  • ハード型:自分の条件に固執して敵対的に接し、自分の勝利のために相手に譲歩を迫る
  • ソフト型:状況に応じて自身の条件を見直して友好的に接し、双方の利益を目指す

があって、相手がハード型の場合、

こちらの歩み寄りなどお構いなしに力押ししてくる

からです。詳しくはこちらのコンテンツをご確認ください。

3)双方の留保価値の間が「ZOPA(ゾーパ)」

画像3

明確ではないにしても、相手の留保価値を探りながら交渉をしていきます。そして、こうして分かってくる双方の留保価値の間を「ZOPA(ゾーパ。Zone Of Possible Agreementの略)」と呼びます。この例では、100万~50万円の間がZOPAとなります。

ただ、ZOPAが分かったとしても、

  • 自社:100万円の値上げでないと困る!
  • 相手:50万円までしか受け入れられない!

と主張するだけでは、一向に前に進みません。そこで、他の論点も交えるなどしながら交渉していきます。他の論点とは、

  • 取引規模:取引規模を拡大、あるいは縮小する
  • 取引期間:契約期間をこちらが有利に設定する、あるいは契約継続の条件を提示する
  • 納期:納期を延ばす
  • 品質:品質を落とす
  • プロモーション:取引拡大のため、共同でプロモーションをする

といったものです。多様な論点を探るには緻密な情報収集が必要ですが、その過程は後述するBATNA(バトナ)の検討にもつながります。

4)交渉決裂時の最も優れた代替案「BATNA(バトナ)」

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「BATNA(バトナ。Best Alternative To Negotiated Agreementの略)」とは、交渉決裂時の最も優れた代替案のことです。実際は留保価値とBATNAが同じであるケースが多く、その場合、留保価値が唯一の防衛線となります。しかし、これではこちらの交渉依存度が高くなり、「どうしても成立させなければならない」と心理的に追い込まれてしまいます。

ですから、事前にBATNAを見つけることが理想です。分かりやすいBATNAは、

A社で値上げ交渉に失敗しても、B社で値上げ交渉ができる

といったものになるわけですが、改めて確認したいのは、

BATNAは【交渉が決裂した場合】に発動するもの

ということです。ですから、BATNAを意識する際は、こちらにも相当の覚悟が必要であることを忘れないでください。

いずれにしても、BATNAを見つけるには、緻密な情報収集が必要です。そのためには、同業他社などとも良い関係を築いておきましょう。最近は人材の流動化が進んでいますが、名刺管理のアプリケーションなどに登録しておけば、転職先なども分かります。

3 同じ景色でも見え方が違う

いかがでしょうか。今回の記事で交渉の構造が明らかになったと思います。この構造を意識しながら交渉を進めるわけですが、もし相手にも同じだけの知識があれば、自然とプラスサム型の交渉ができそうなものです。

しかし、実際はなかなかそうなりません。その理由は、

自分と相手とでは前提としている常識が違う

からです。同じ景色を見ていても見え方が違い、さらに交渉のスタイルも違うので、なかなかかみ合わないということです。

以上(2025年2月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

【値上げに成功する交渉術(2)】誰と、いくらの値上げ交渉をするか?

1 誰と、いくらの値上げ交渉をするか?

実際の値上げ交渉では、

その値上げ交渉に失敗したら、大きな損失が出る

といったケースがあり、誰でも緊張します。

どのような交渉も軽んじてはいけませんが、難しさはそれぞれ違います。また、企業間の取引では、交渉相手によって提示する条件も変わります。こうした、ある意味でレベル感がバラバラの値上げ交渉について、組織としての勝率を高めるために経営者がすべきことは、

「誰と、いくらの値上げ交渉をするか?」を明確にすること

です。この絶対的な基準によって交渉担当者は安心と自信を得て、不要な譲歩をすることもなくなるのです。

2 誰と交渉をするか?

1)交渉する相手を決める

早速ですが、交渉相手となり得る先をリストアップしてみましょう。この記事は、値上げ交渉について紹介していますが、仕入れ先との「値下げ交渉」も視野に入れてください。

仮に100件がリストアップされたとします。ここで、「よし! 上から順番に値上げ交渉をしよう」という経営者がいたら、ちょっとお待ちください。このリストで最初に行うべきことは、

交渉しない相手を決めること

だからです。例えば、

  • 交渉決裂の際のリスクがかなり大きい相手
  • 収支は厳しいが、取引することで業界に影響を与えられる相手

などとは、あえて交渉しなくても問題ありません。一斉値上げなどをせず、他との取引条件を知られることなく、しかるべき相手と値上げ交渉をすればよいのです。

2)交渉する順番を決める

値上げ交渉をする相手を決めた後は、交渉する順番を決めます。値上げ交渉に限らず、交渉は情報が多く経験が豊富なほど有利になりますから、

簡単な先から交渉をして相手の出方や感触を確かめ、そこで学んだことを次の交渉に活かしていくことの繰り返し

が基本になります。

値上げ交渉の難易度を整理する参考として、縦軸を「交渉への依存度」、横軸を「交渉の論点(価格以外の納期や品質などの交渉余地)」とするポジションマップを紹介します。交渉への依存度とは、「その交渉に必ず勝たなければならない」といったように、文字通り、依存度が高い交渉を指します。

画像1

上段は依存度が高く、難しい交渉になりそうですから、最初は下段にある決裂しても仕方がないと判断した相手から、値上げ交渉を始めるとよいでしょう。

左右の「論点が多いか少ないか」は状況次第で有利、不利が変わりますが、交渉担当者には、それぞれ次のような性質が求められます。

  • 論点が多い:相手のことをよく知っており、的確な状況判断ができる
  • 論点が少ない:タフな場面でも感情的にならず、突破することができる

3 いくらの値上げ交渉をするか?

1)相手によって条件を変える

値上げ交渉をする相手を決めたら、相手ごとに、

  • 値上げ額
  • 留保価値(それを下回ったら交渉を打ち切る水準)

を設定します。値上げ額と留保価値は同じ場合もありますし、次のように違う場合もあります。

できれば100万円の値上げをしたいが(値上げ額)、80万円までなら譲歩できる。ただし、80万円を下回るのはあり得ない(留保価値)

最もシンプルな考え方は、

値上げ額=仕入れ額の増加分以上

とすることです。仕入れ額が80万円増加したら、販売価格も80万円上げればよいですし、これまで無理してきた分も取り返したければ、100万円の値上げをするということです。現実には、

  • 取引の規模(自社の収益に与えるインパクト)
  • その相手と取引に至った背景や取引年数
  • その相手と取引することによる宣伝効果

といった事情も考慮することになりますから、

  • 販売先であるA社とは、100万円の値上げ交渉
  • 販売先であるB社とは、60万円の値上げ交渉
  • 販売先であるC社とは、値上げをしない代わりに、取引量の増加交渉

といったように対応が分かれていくでしょう。もちろん、

仕入先であるD社とは、10%の値下げ交渉

といったように、仕入れ額の減額交渉も行います。結果として、自社の取引全体から適正な収益が生まれればよいわけです。

2)変動損益分岐点を用いた値上げ額の設定

具体的な値上げ額を決める際に使うのが「損益分岐点」です。詳細は割愛しますが、損益分岐点は固定費と限界利益が同じになる水準です。限界利益は「売上高-変動費」で求められ、売上高に占める限界利益の割合を限界利益率と呼びます。

損益分岐点は、

固定費÷限界利益率(売上高に占める限界利益の割合)

で出します。目標利益がある場合は、固定費に目標利益を足して計算します。例えば、固定費が400万円、営業利益が100万円の取引で、限界利益率が50%から40%に下がった場合、損益分岐点売上高は次のように変化します。

  • 限界利益率が50%の場合:(400万円+100万円)÷0.5=1000万円
  • 限界利益率が40%の場合:(400万円+100万円)÷0.4=1250万円

今の仕入れ額を受け入れつつ、同じ営業利益を確保したければ25%の値上げが必要になります。こうした計算をするには、自社の収益構造を正しく把握する必要があるので、「変動損益計算書」を作成してみるとよいでしょう。変動損益計算書とは、

費用を変動費と固定費に分けて作成する損益計算書

であり、財務会計上の損益計算書とは次のように違います。

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変動損益計算書を見ると、企業全体と取引先ごとの収益構造が把握しやすくなります。もとの状態からの変化を、

  • 変動費(仕入れ)の上昇で赤字転落
  • 値上げによって利益を確保
  • 変動費(仕入れ)削減で赤字を回避
  • 固定費の削減で赤字を回避

の例を示すと、次のようになります。

画像2

仮に、企業全体で10%の値上げを目標とするなら、

  • 大手取引先と交渉して、1社で10%分を値上げする
  • 小口取引先と交渉して、10社で10%分を値上げする

といった方法があります。変動損益計算書で収益構造を把握しつつ、交渉条件の方針を決めましょう。

4 現場に情報を伝える

方針が決まったら、現場の社員に伝えます。値上げをする企業が増える中で、現場の社員が、取引先の担当者から、

「御社との取引価格は今のままで大丈夫ですよね? 上司から確認するように指示されていまして……」

などと確認を受けることもあるでしょう。そうしたときに、

  • 申し訳ありませんが、変更したいと考えています。上司より改めて取引条件についてご相談させていただく予定です
  • はい、大丈夫です。御社との取引条件は当面、今のままで変わりません

などと明確に答えられるようにしてあげることで、現場の社員と取引先とのコミュニケーションが図れるようになります。

以上(2025年2月更新)

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