プレゼン資料は、「読ませるもの」ではありません。“込み入った話”を言葉だけで伝えようとすると、どうしてもまどろっこしい表現になり、非常にわかりにくい説明になりがちです。そんな時に必要なのは、伝えるべき内容の「本質」を、直観的に理解できるように「図解化」する技術。プレゼン資料は「見せるもの」なのです。
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プレゼン資料は、「読ませるもの」ではありません。“込み入った話”を言葉だけで伝えようとすると、どうしてもまどろっこしい表現になり、非常にわかりにくい説明になりがちです。そんな時に必要なのは、伝えるべき内容の「本質」を、直観的に理解できるように「図解化」する技術。プレゼン資料は「見せるもの」なのです。
「お客様の“記憶に残る”ために必要なことがあります」。そう語るのは、『Sales is』を執筆した今井晶也氏と、『記憶に残る人になる』を執筆した福島靖氏だ。お客様の「記憶に残る」ことを心がけたことで圧倒的な成果を出した営業のプロによる対談でわかった「お客様の記憶に残る営業」の真髄に迫る。
「愚痴を言っても何も変わらない」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか? 確かに、愚痴を言うことは一時的なストレス解消になるかもしれませんが、実はそれ以上のデメリットもあります。一方で、一流の人たちは愚痴を言う代わりに、建設的な行動を日常に取り入れる習慣を持っています。
中高年になるとチラチラと頭をよぎる「認知症」。親の心配ももちろんだが、自分が認知症にならないかと不安に思ってしている人も多いはずだ。認知症とはどんな症状なのか。予防法はあるのか。専門医が詳しく解説する。
近年、同一労働同一賃金に代表されるように、「パート等」の労働条件の改善が進められています。パート等とは、この記事で便宜上使っている言葉で、
の総称です。詳しくは、いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」で定められているので確認してみてください。
さて、法令改正などに合わせて労働条件を見直していかなければトラブルのもとになります。差し当たり、今、皆さんがすべきことは、
パート等と労働契約を締結する際(雇入時、定年後の再雇用時、契約の更新時など)に、会社が交付する「労働条件通知書」の内容を精査すること
です。直近では、2024年4月1日から労働基準法施行規則が改正され、パート等に労働条件通知書を交付する際、次の3つを新たに明示することが義務付けられています。
この記事では、最新法令に対応した「パート等の労働条件通知書」のポイントと記載例を紹介します。「ここしばらくパート等の採用がなく、労働条件通知書のひな型を更新していない」という人や、「すでにひな型は見直したが、ヌケモレがないか不安」という人は、自社の労働条件通知書と照らし合わせながらご確認ください。
まず、とても大切なポイントをお伝えします。それは、
正社員とパート等では、雇入時に明示すべき労働条件の項目が違う
ということです。図表1の「必ず書面で明示」の赤字部分がパート等特有の項目です。
「2.契約更新に関する事項」は、契約更新があるか否か、更新する場合は何を基準に判断するのか具体的な内容を記載します。2024年4月1日からは、通算契約期間または更新回数の「更新上限」についても記載が必要になっています(詳細は後述)。
「3.無期転換に関する事項」は、2024年4月1日から明示が義務付けられている項目です。
無期転換とは、パート等の通算契約期間(同じ会社でのもの)が5年を超えて更新された場合、本人が会社に申し込めば契約期間の定めのない「無期契約」に転換できる制度
です。雇用形態はパート等のまま変わらず契約期間のみ無期契約に切り替わります。
なお、無期転換権が発生する(または発生している)パート等に対しては、無期転換の申込機会、転換後の労働条件について記載します(詳細は後述)。
「10.昇給の有無、11.退職金の有無、12.賞与の有無」は、これらの制度があるか否か(原則書面で明示)、また、それらの計算方法や支給・実施時期(口頭でも可能)を記載します。
「14.雇用管理に関する相談窓口」は、正社員との待遇の違いなどについて、パート等から相談された場合の窓口を記載します。ちなみに、この相談窓口は「ハラスメント相談窓口」と一体的に運用しても問題ありません。
図表2は、最新法令に対応したパート等の労働条件通知書のイメージです。赤字部分は、前述した法令改正やトラブル防止の観点から注意が必要な内容です(それぞれのポイントは後述)。
契約期間の始まりと終わりを「○年○月○日~○年○月○日」などの形で記載します。
無期転換権の行使により無期契約に切り替わった場合、契約更新の開始日を記載し、「〇年〇月〇日(期間の定めなし)」など、無期契約であることが分かるよう注釈を併記します。
次の1.から4.について記載します。3.は2024年4月1日から明示が義務付けられています。
なお、図表2の例では更新上限を「通算契約期間:10年まで、更新回数:10回まで」としていますが、前述した通り、通算契約期間が5年を超えると、そのパート等は無期転換を会社に申し込めるようになります。無期転換の申込みは原則拒否できないので、長期雇用を想定していないなら、通算契約期間の上限は5年未満に設定しておいたほうが無難です。
また、無期転換権を行使により無期契約に切り替わった場合、更新自体がなくなるので明示は不要になります。ただし、定年等の定めをする場合は別途明示が必要です(詳細は後述)。
次の2点について記載します。どちらも2024年4月1日から新たに明示が義務付けられている項目です。ただし、無期転換申込権がない場合(通算契約期間が5年以内)、明示は不要です。
なお、現在の通算契約期間が5年以内であったとしても、新たな契約を更新した結果、契約期間の途中で5年を超える場合(例:3年契約を繰り返すなど)については、新たな契約更新をする際に、あらかじめ無期転換に関する事項を明示しておく必要があります。
パート等特有の項目ではありませんが、テレワークでオフィス以外の場所でも勤務することがある場合は、その旨を記載します。また、2024年4月1日からは契約締結時の就業場所だけでなく、配置転換等の際の「変更範囲」の記載も義務付けられています。変更範囲については、想定される就業場所を1つずつ記載する必要はなく、
などの書き方も認められます。また、出向の可能性がある場合はその旨の記載も必要です。
ちなみに、変更範囲は未来永劫についての可能性ではなく、あくまで当該契約期間内における可能性を明示すればよいとされています。
よく見かける「○○業務その他会社が指示するあらゆる業務」といった記載だと、正社員と同じ働き方をしているとみなされ、同一労働同一賃金の観点から賃金などに差をつけにくくなります。書き方が難しいですが、
本業を逸脱しすぎないよう、「○○の業務その他これに付帯する業務」といった程度の記載にとどめるのが無難
です。なお、2024年4月1日からは就業場所と同じく、業務内容についても「変更範囲」の記載が義務付けられています。こちらについても
などの書き方が認められますが、実際に業務内容を変更する場合、変更後の業務について正社員との不合理な待遇差が生じていないかを都度チェックする必要があります。
こちらも、変更範囲については未来永劫についての可能性ではなく、あくまで当該契約期間内における可能性を明示すればよいとされています。
シフト制の場合の始業・終業時刻に注意が必要です。労働条件通知書に「シフトによる」と記載するだけでは不十分で、
労働日ごとの始業・終業時刻を明示するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、一定期間分のシフト表などと併せて交付する必要
があります。
休日についても、シフト制で働く場合の記載に注意しましょう。具体的な曜日などが確定していなくても、
休日の基本的な考え方として、「週○日以上の休日が確保できるようシフトを組む」
といったように記載する必要があります。
パート等も、6カ月以上勤務し、その全労働日の8割以上出勤すると、年次有給休暇(年休)が付与されます。付与日数は、所定労働時間と所定労働日数によって変わります。
パート等の賃金の金額は、同一労働同一賃金で示されている均等待遇と均衡待遇に違反しないようにします。
基本的に、業務の内容などが明らかに違うのであれば、正社員と差を設けても問題ありませんが、逆に言うと、
通勤手当などのように業務の内容と関係がない手当は、パート等にも支給
しなければならないでしょう。
また、時間外労働、休日労働、深夜労働に対する手当(割増賃金)は、パート等の労働時間の実態に応じて支払います。なお、この記事で対象としているパート等は、所定労働時間が法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)より短いので、
所定労働時間を超え、法定労働時間に満たない時間の割増賃金率を記載
しておく必要があります。これは0%にすることも可能です。
昇給があるか否かを記載します。昇給がある場合、可能であれば昇給の条件などを記載するほうが望ましいでしょう。
退職金があるか否かを記載します。退職金がある場合、可能であれば支給要件などを記載するほうが望ましいでしょう。
賞与があるか否かを記載します。賞与がある場合、可能であれば支給要件などを記載する方が望ましいでしょう。
パート等は契約期間が満了し、更新されない場合に退職となります。この他、本人の希望による退職や、就業規則の解雇事由に該当したことによる解雇があります。これに対応し、
を記載します。
また、無期転換権の行使により無期契約に切り替わった場合、契約期間が青天井になることを避けるため、正社員と同じように定年を設定する対応が考えられます。その場合は定年後の継続雇用についても併記して明示します。
相談窓口の担当部署、連絡先(電話番号、メールアドレス)などを記載します。
以上(2025年2月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)
pj00617
画像:ChatGPT
今日の商談は大成功。うれしい私は先輩とのランチで商談のことを話しすぎちゃった。「今訪問した○○社はいい感じですね。部長のAさんも乗り気だし、1000万円の商談が成立するかも!」って。そうしたら、それを聞いた先輩が大慌てで、「しぃ〜〜! そんなことを声に出したらダメでしょ!!」と私の話を遮ったんだよな……。あれって、何がまずかったんだろう?
電車やカフェなどで、隣の人が会社名や個人名、取引条件などを出しながら仕事の話をしていることがありますが、これはやってはいけません。仕事をしているとたくさんの情報を取り扱いますが、
どんな情報も慎重に取り扱い、相手の会社や個人、取引内容を特定できるような情報は話さない
というのが基本です。「これは話しても大丈夫か?」と迷ったら、話さないほうが正解です。情報が漏洩してしまう原因の多くはヒューマンエラーですが、電車やカフェなどのちょっとした会話もその一つなのです。
ですから、皆さんは、日々、次の6つに注意して行動してください。
関係者と「隠語」を決めておくのもよいです。例えば、相手が東京都中央区日本橋にある会社なら、会社名ではなく「日本橋」と言う感じです。
特に慎重な取り扱いが求められるのが個人情報です。個人情報は「個人情報保護法」で定義されていて、具体的には次のような情報が該当します。
相手が個人の場合はもちろん、法人の場合もその窓口担当者の名刺に記載の情報、会社の連絡網に記載の同僚の情報などは個人情報となります。会社では、個人情報を記載した書類は施錠できるキャビネットで保管するなど、取り扱いのルールを決めているはずですから、必ず守ってください。
個人情報以外にも、次のような情報は会社の営業上重要で、社外には公開したくない情報なので注意が必要です。
上記の情報以外にも、会社独自で慎重な取り扱いを求める情報があると思います。上司や先輩に確認しておきましょう。
以上(2025年1月更新)
pj00348
画像:Mariko Mitsuda
経営者の皆さんは、退任後、相談役や顧問として会社に残る予定はありますか?
世間的には社長が相談役などとして残ることは珍しくなく、社会貢献、業界団体での活動、顧客や取引先との関係維持などを行います。培ったノウハウやネットワークを活かして後任の経営者をサポートすることは、会社にとっても社会にとっても良いことです。
一方、相談役や顧問になった後の給与には注意が必要です。役員としての地位を維持するか否かが一つの別れ道ですが、退任する場合でも税法には「みなし役員」という特有の判断基準があります。
地位や職務などから、他の役員と同様に会社の経営に従事している
などの要件を満たした場合、税法上、みなし役員になります。そして、みなし役員になると、税法の取り扱いは役員と同じになります。この点を踏まえて、以降を読み進めてください。
役員としての地位を維持したまま相談役や顧問になる場合、役員給与については、
のいずれかを採用しないと、法人税法上は損金に算入できません。
相談役や顧問になるに当たって役員を退任し、その際に役員退職金を打ち切り支給した場合、税法上は原則として「賞与」となります。打ち切り支給とは、
「それまでの在任年数など」に応じて役員退職金を支払い、その後の役員退職金の計算では、「それまでの在任年数など」は加味しない
ということです。つまり、一旦、過去の分は支給し、そこから新たにカウントするという考え方です。
ただし、損金に算入できるケースもあります。それは、
役員としての地位や職務内容が激変し、実質的に退職したのと同様と認められるケース
です。この場合、法人税法上は過大部分を除いて損金に算入できます。所得税法上も退職所得として取り扱われます。こうした意味では、
相談役や顧問の役割などはガラッと変えたほうがいい
わけです。
以上(2025年2月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
pj60050
画像:ohayou!-Adobe Stock
「役員報酬」は一般的な呼称で、
と定義されます。この記事では、役員報酬と記述します。
役員報酬は会計上の損益に与える影響が大きく、また所定の期限までに決定しなければなりません。そのため、
役員報酬を決定する際は、なるべく正確に損益予測をした上で、税務と資金繰りの両面から自社に合った方法・金額を決定すること
が大切です。中小企業の場合は、
役員報酬の総枠は株主総会、具体的な支給額は取締役会で決議し、定期同額給与を採用する
ことが多いでしょう。これらの点も踏まえ、この記事では、中小企業の経営者が知っておきたい役員報酬を決定するための手続きと損金に算入するための要件を紹介します。
一定の権限を持つ役員が自身の役員報酬を自由に決めると、いわゆる「お手盛り」の懸念があります。そこで報酬の支給については、
定款に定めるか、株主総会の決議が必要
です。
ただし、金額などを変更する際の手続きが煩雑なので定款に定める会社は少なく、多くは株主総会の決議を採用しています。この場合、単年度ごとに支給額を決定する方法の他、
役員報酬の総額の上限を決め(取締役報酬と監査役等報酬は別々)、個別の支給額は取締役会等の決定に委ねる
こともできます。さらに、取締役会の決議により、各取締役の報酬の配分を社長に一任することも可能です。
役員報酬の総額の上限を株主総会決議で決定した場合、上限額に変更がない限り翌年度以降の株主総会決議は不要です。上限額を変更する場合は、取締役会での決議を経て、株主総会でも決議します。
なお、定時株主総会における議案例は次の通りです。
第●号議案 取締役の報酬等の額改定の件
現在の取締役の報酬額は、20XX年6月20日開催の第▲期定時株主総会において年額8000万円以内とご承認いただき今日に至っておりますが、役員報酬体系を見直し、取締役の報酬額を年額1億2000万円以内、監査役の報酬額を年額1500万円以内に改定させていただきたいと存じます。また、現在の取締役の員数は4名、監査役の員数は1名です。
役員報酬を支払えば会社の利益は減少するので、法人税法で経費として認められる範囲で役員報酬を増やせば、法人税等の負担を抑えられます。一方、役員報酬には所得税等が課税されるため、役員報酬を増やせば役員の所得税等は増加します。また、税金ではありませんが、役員報酬に応じて社会保険料(健康保険料や厚生年金保険料)が発生します。社会保険料は労使折半です。
さて、税法上、損金に算入できる役員報酬は次の3種類だけです。
ただし、「3.業績連動給与」は適用規定が複雑で、同族会社には適用が認められていないことから、実質的に上場企業等だけ認められている制度です。また、「1.定期同額給与」「2.事前確定届出給与」であっても、役員の職務などに照らして不相当に高額であると判断された場合、高額とされた部分(適正額を超える部分の金額)は損金に算入できません。
定期同額給与とは、
支給時期が1カ月以下の一定の期間ごとの給与で、その事業年度の支給額が同額のもの
です。一度決定したら、原則として事業年度内に変更できません。そのため、利益が予想より多く出そうなので事業年度内に役員報酬を増額した場合、当初決定した月額報酬のみが損金として認められ、増額部分は損金に算入できません。
なお、新型コロナウイルス感染症の影響で損益が急激に悪化した場合などは、事業年度の途中であっても、役員報酬の支給額を変更することができます。
事前確定届出給与とは、
「いつ、誰に、いくら」支給するかを事前に所轄税務署長に届け出て、その通りに支給するもの
です。いわゆる「役員賞与」も、事前に届け出ていれば損金に算入できます。ただし、支給日や支給額が届け出の通りでなければ、全額が損金に算入できません。
なお、届け出の期限は、原則として以下のいずれか早いほうです。
コーポレートガバナンス・コードの適用もあり、上場企業を中心にさまざまな種類の役員報酬が導入されているので、参考として紹介します。
金銭報酬としては、
の導入が見られます。
また、株式報酬を導入する企業も増えています。ストック・オプションに加え、
といった、自社株を報酬とする制度が広まりつつあります。
これらは上場企業ないし上場準備企業でなければ現実的ではありませんが、最近の動向として押さえておくとよいでしょう。
以上(2025年2月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
pj30077
画像:hanack-Adobe Stock
今シリーズは、前シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』の実践編としてお送りしています。毎回実際にありそうなさまざまなシチュエーションを想定して、その際にどんなコミュニケーションを取るのが望ましいかを一緒に考えていきます。
前回第8回では、任された仕事に不満を覚えている部下とのコミュニケーションのあり方について、上司、部下、それぞれの立場から考えてみました。いかがだったでしょうか。
今回は課題[事例8]です。以下に再掲しますので、前回皆さんが考えてみた解答を思い出してみてください。まだ考えていなかった方もぜひ考えてみてください。自ら考えないで、解説だけを読んでいても身に付きませんよ。
—————————
Q.部下のHさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。
[事例8]
〇あなたの部下のHさんの職場での表情がさえないのが気になっています。昼休みになるとため息をつきながら、肩を揉むような姿を何度も見かけます。
〇ある日、Hさんが「ちょっといいですか?」とあなたに声をかけ「大変申し訳ないのですが、プライベートのことでしばらく金曜日だけ1時間早く退勤させていただくことは可能でしょうか。その分、朝1時間早く出社するようにしますので……」と相談がありました。
—————————
テーマは「部下のプライベートの問題」です。これまで同様、起こっている事象を整理することから始め、現場で起こっていることの可能性を探ってみましょう。
あなたの部署が人手不足で、かつ最も忙しい状態だったらどうでしょう。あなたは上司としてろくに話も聞かずに、「Hさん、今うちの部署がどういう状態なのか分かっていますよね。1人だけわがままを言わないでください」と、迷惑そうにぴしゃりと跳ね返すでしょうか。
いくら人手不足で多忙を極めていたとしても、さすがにそんな対応はしませんよね。
事例を使っての『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』の実践編も今回で8回目です。皆さんもそろそろ慣れてこられたのではないでしょうか。
最終的にHさんの希望をそのまま受け入れられるかどうかは別として、
部下から相談があった場合は“まず「傾聴」してみる”こと。
どんな状態にあろうと、あからさまに「面倒くさいな」という顔をしてはいけません。
Hさんは「その分、朝1時間早く出社するようにしますので」と添えています。職場の状況を理解し、申し訳ない気持ちで相談してきたのでしょう。
「傾聴」のための面談の10分や20分なら互いに確保できるはずです。本人が許せば休憩時間を利用してもいいでしょう。
冷静になって相談相手の話を「傾聴」してから対処を考えたほうが、すっきりと解決して近道となることが多いものです。
長い目で見ても、会社や部署、あなたとHさんとの関係構築においてもプラスに作用します。
Hさんの相談は退勤時間に関わること、つまり働き方です。
「働き方改革」が叫ばれて久しいですが、その趣旨は社員が日々健康に業務に集中できて成果を発揮できる環境を用意すること、会社としては人材を活かし結果として生産性と付加価値を高めることです。
社員が働く上でのプラスになるのであれば、会社や部署としてはできる限り善処するというのがあるべき基本スタンスといえるでしょう。
後はHさんの希望と背景を詳しく聞いた上で、部署の状況も勘案しながら上司としてどんな対応方法が用意できるかを考え、Hさんと話し合って判断するといいでしょう。
いざHさんから話を聞くに当たって、先に伝えておきたいのは今挙げた基本方針、「社員が働く上でのプラスになるのであれば、会社や部署としてはできる限り善処する」という点です。
なるべく希望に沿うように善処したい旨を告げて、詳しい話を聞くための時間をHさんに取ってもらいましょう。本人が「プライベートのことで」と断っている以上、周囲に聞かれない環境を用意してあげるのが前提ですね。
本来、プライベートは仕事とは別と考えるべきですが、1人の人間が関わる以上、切り離せない状況は発生します。Hさんもそのはざまで悩んでいるのでしょう。上司としてはこれらの点にも配慮して、「傾聴」の前に一言、声をかけてあげたいところです。詳しくは、後ほど紹介します。
「傾聴」に当たっては、事前に予想や仮説を立ててみてもよいですが、本番では予断を持たずに臨みましょう。「傾聴」の基本は繰り返すまでもありませんが、「相手の話をよく聴き、共感を示す」ことです。
相手のほうに体を向けて適度に視線を合わせ、「うなずきや相槌(あいづち)」「承認(なるほど、そうですかなど)」「共感(それは大変でしたね、すごいですねなど)」といった言葉や表情、動きを交えながら行いましょう。「反応しているつもり」ではなく、少し大げさなくらいでいいのです。それでようやく他人に伝わります。
また「相手の話は最後まで聞く」こと。1)予め答えを用意したり誘導したりしない。2)途中でさえぎったり、決めつけたりしない。3)まとめたがらない、結論を急がない。普段、部下の話を聞く際に、当てはまる点はありませんか? メモを取りながら聞くと相手は安心できます。
より相手の状況を理解し、共感を示すためには、相槌をうちながら質問を挟んでみましょう。例えば、「それは大変ですね。あなたはどんな気持ちでしたか?」「それは良かったですね。あなたもうれしかったのではないですか?」といったように。
相手の話を受け止めて、その時の気持ちを聞いてあげるだけで、相手は心を開きやすくなります。相談の背景もより立体的に捉えられて、後で「これも話しておくべきだった(聞いておくべきだった)」と悔やむこともなくなり、より正しい判断ができるようになるでしょう。
部下のHさんに最初にかける言葉は次のようなイメージです。
「“しばらく金曜日だけ1時間早く退勤したい”という相談ですね。部署としても会社としても、Hさんが業務に集中できるよう、できる限り働きやすい環境を用意したいと考えていますので、詳しい話を聞かせてもらえますか? 時間を取って話しましょう」
“部署としても~考えていますので”までは、会社や部署としての基本方針を伝える大事なポイントです。社員が業務に集中できるようになるのであれば、できる限り善処したいという意向を示し安心してもらいましょう。
同時に今回、本人が「プライベートのことで」と断っているので、次の一言を添えたいところです。
「プライベートのこととはいえ、今回の希望に関わる部分についてはできれば詳しく聞かせてほしいし、そのほうが判断もしやすくなると思います。秘密にしておきたい部分は他言しませんので、可能な範囲で正直に教えてください」
他のメンバーに聞かれることのない、本人の話しやすい環境を用意してあげましょう。
ちなみに、私はあえてこの時点では、Hさんの「職場での表情がさえない、ため息をつきながら肩を揉んでいる」姿には触れません。今回早退を希望する理由とつながっているかもしれないし、つながっていないかもしれないからです。予断は禁物です。
「傾聴」した後に、つながっていればそこで触れればいいし、つながっていなければ本人の話とは別に、こちらから「実は最近少し気になっているのですが……」と話しかけてみるといいでしょう。
本人からは言い出しにくいけれど、早退理由より重大な話が隠れていることもあります。例えば、早退は一時的な家族に関わる問題で、それとは別に自身が大病を抱えていたといったケースです。
重大な体調の変化から来る表情や動作に本人さえ気付いていない場合もあります。上司は日ごろから部下の様子をよく観察しておくことが大切ですね。
ポイントを整理しましょう。
【今回の3つのポイント】
1 部署としても会社としても、社員が業務に集中できるよう、できる限り働きやすい環境を用意したいと考えている旨の基本方針を伝え、詳しい話を聞ける時間を設定する(プライベートの理由であることに配慮しつつ、今回の希望に関わる部分については可能な範囲で詳しく聞かせてもらえるように依頼し、安心して話せる環境を用意する)
2 予断を持たず、「傾聴」して相談相手の詳しい現状や背景と、希望内容を確認する
3 他に気になっている点があれば触れて、総合的に本人にとってより良い選択肢を幅広く考えた上で、話し合って対処方法を決める
1、2、についてはすでに詳説しましたので、3について補足します。
Hさんの詳しい現状や背景と、希望内容を確認できたら、なるべく希望をかなえられるような方法を一緒に考えていきましょう。たとえ全ての希望をかなえるのが困難な場合でも、可能な範囲で最善の方法をぎりぎりまで考えてあげることは、本人のモチベーションや互いの信頼関係にもつながります。
ここで上司であるあなたには、本人からの申し出に限定せずにより良い方法を考えて選択肢として提示してあげてほしいのです。どこまで選択肢を用意できるかが、上司の腕の見せ所です。
例えば、“しばらく金曜日だけ1時間早く退勤したい”と本人が言っているものの、事案を客観的に判断すれば1時間では足りない、金曜日だけでは足りないのではと感じたらどうでしょうか。もう少し踏み込んだ働き方の見直しを、あえて上司から提案するのです。
一方で早退は家族の送迎や介護のためで、「職場での表情がさえない、ため息をつきながら肩を揉んでいる」姿の裏で、本人がもっと重大な健康上の問題を抱えていることが分かったとしましょう。この場合、まとまった期間の休業をあなたから提案することも必要です。
その間の給与が心配なのであれば有休の消化や、社内や公的な制度の活用なども探りましょう。休業による業務の遅延が心配なら、他部署からの応援や外部ソースを一時的に活用するなど、いかようにも考えられます。その発想ができるのが上司の裁量です。
また、上司としては重大な問題と感じながら本人に自覚がないようなら、客観的な事実を伝えてすぐに専門家に相談するよう積極的に促すことも必要でしょう。
「傾聴」によって総合的な視点を持ち、本人と組織の双方にとってより良い選択肢を幅広く用意できる人こそが、優秀で部下も信頼できる上司になれるのです。
少なくとも今回のような“しばらく金曜日だけ1時間早く退勤したい”程度の条件が不可能などということはないですよね。問題は他の選択肢も含めて、忙しくしている職場の他のメンバーの理解を得られるかどうかでしょう。
たとえ1時間でも「どうしてHさんだけ特別扱いなのか」となれば、職場の士気や一体感が失われるかもしれません。Hさんもつらいでしょうし、本来目指すべきはずだった「社員が働きやすい環境」からは程遠くなってしまいます。
同じ職場で働く仲間として、可能な範囲でHさんからもメンバーに対して説明してもらいながら、上司としてはHさんと話し合った方向性でまとまるように全力で支援していきましょう。
できればHさん、そして職場のメンバーにも、「前向き発想」の言葉を添えるのを忘れずに。
例えば「皆さんも個人的なことで相談があれば、遠慮なく相談してくださいね。部署としても会社としても、皆さんが業務に集中できるよう、できる限り働きやすい環境を用意したいと考えていますので。困ったときはお互い様、全員で力を合わせてがんばっていきましょう!」
最後に、逆に皆さんがHさんの立場だとして、できることを考えてみましょう。
“しばらく金曜日だけ1時間早く退勤したい”程度のこととはいえ、イレギュラーな働き方をお願いする立場です。上司との日ごろの関係性もあるでしょうし、プライベートは仕事とは別という気持ちがあったとしても、できる限り詳しい説明をした上で相談するべきでしょう。
そのほうが上司だけでなく、メンバーからの理解も得やすいはずです。必要以上に気兼ねすることなく退勤できるでしょうし、むしろ応援してくれるかもしれません。また、優秀な上司であればあるほど、あなたの提示を超えるより良い提案を用意してくれるはずです。
次回に向けた課題[事例9]を紹介します。
—————————
Q.部下のIさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また、それを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。
[事例9]
〇部下のIさんが、ある日の朝突然、「新しい企画を考えたんですけど、ぜひ聞いてください」と興奮気味に話しかけてきました。
〇課の目標達成の期限が間近に迫っていました。課の多くのメンバーは、すでに目標を達成したりほぼ確実にしたりしていますが、Iさんを含めた数人の達成がもう少しのところで見通せないため、課としての目標達成が不確実な状況です。
—————————
テーマは「モチベーションの育て方」です。これまで同様、起こっている事象を整理することから始め、現場で起こっていることの可能性を探ってみましょう。皆さんの職場でも似たようなケースはありませんか。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
すでにシリーズもあと数回を数えるところまできています。日常で事例と近いシーンがあれば、ぜひ『新たな3つのコミュニケーション習慣』の実践にトライしてみてください。
次回もお楽しみに。
<ご質問を承ります>
ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで
Mail to: brightinfo@brightside.co.jp
※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。
『新スペシャリストになろう!』 https://amzn.asia/d/e8GZwTB
『なぜ社長の話はわかりにくいのか』 https://amzn.asia/d/8YUKdlx
以上(2025年3月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
https://www.brightside.co.jp/
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画像:PureSolution-Adobe Stock
取引先との商談は順調で、何だかうまくいきそうだぞ。商談は先輩がやってくれているけど、私もオンラインミーティングの設定とか、議事録の作成とかで貢献している。ところで、今回のビジネスではうちも設備投資が必要で、「稟議(りんぎ)書」を書かないといけないそうだ。初めて聞く書類の名前だけど、何を書けばいいのかな……。
ビジネスでは、さまざまな文書が登場します。ビジネス文書を作成したり、保管したりするのは面倒ですが、
ビジネス文書は、誠実にトラブルなくビジネスを進めるために必要なもの
です。例えば、「請求書」は法律で保管が義務付けられていますし、会社が架空請求などルール違反をしていないことを示します。また、設備投資などの場合は「稟議書」を作成して決裁者の承認を得ます。会社のお金を使う以上、しっかりと関係者の承認を得ないといけないわけで、それを稟議書で行っているのです。
となると、皆さんは代表的なビジネス文書を覚えなければなりません。以下は代表的なビジネス文書ですが、これらをビジネスの流れに沿って並べ替えることができるでしょうか? ビジネス文書が何のために必要なのかを意識していれば、すぐに並べ替えられるようになります(答えは最終章にあります)。
納品書、提案書、検収書、注文書(発注書)、支払通知書、注文請書(受注書)、領収書、請求書、見積書、契約書
ビジネス文書が面倒に感じるのは、フォーマットが分かりにくく、独特の言い回しがあるからでしょう。また、稟議書などは、「毎月、◯日が締め切りで、それまでに提出しなければ来月にならないと承認されない」といった不自由さもあります。
ただ、フォーマットや表現は慣れの問題ですし、スケジュールも先輩に質問すればよいだけです。それよりも皆さんは、
そのビジネス文書は、何のために作成されるのか?
を把握するようにしましょう。ビジネス文書がなぜ必要なのかが理解できれば、訳も分からず作成することはなくなります。一般的なビジネス文書は次の通りです。会社によって名称などは異なりますが、まずは「何のために」をざっくりと把握しておけば十分です。
今どきは、ビジネスを支援するさまざまなツールが登場していて、契約書や領収書などのビジネス文書もデータでやりとりされるようになってきています。紙の場合と勝手が違うところもあるので、先輩に教えてもらいながら、きちんとツールを使えるようになりましょう。
また、リモートワークをしている会社の場合や注文金額が小さい場合などは、正式なフォーマットではなくメールの平文で発注をもらい、その返信で受注の意思表示をすることもあります。後々トラブルにならないように、形の残る方法でやりとりすることが不可欠です。
冒頭で示した質問の答えは次の通りです。もうお分かりですよね。
以上(2025年1月更新)
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画像:Mariko Mitsuda