全国初! 東京都などで「カスハラ」の防止条例が施行!

2025年4月1日より、東京都、群馬県、北海道などで「カスハラ(カスタマーハラスメント)」の防止条例が施行されました。カスハラとは、

顧客等が、就業者(社員など)に対し、著しい迷惑行為(土下座の強要など)をすること

で、法的には民法の「不法行為」(故意・過失によって他人の権利や法律上の利益を侵害する行為)などに該当する可能性があります。

2025年4月1日時点では、カスハラをピンポイントで取り締まる法律はないのですが、東京都などがカスハラの社会問題化を受け、全国で初めて防止条例を作った

のです。

例えば、「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」では、次の通り14の条文が定められています。

東京都カスタマー・ハラスメント防止条例(要約)

この条例により東京都内の事業者(会社)には、努力義務ではあるものの、東京都の施策に協力しつつ、カスハラから就業者(社員)を守るための体制の整備、カスハラ防止のための手引きの作成などが求められるようになりました(赤字)

また、東京都はこの条例に加えてカスハラ防止に関する指針を定め、それに基づいてカスハラ防止につながる情報提供や啓発・教育などの防止施策を実施していくようです(青字)。

■東京都カスタマー・ハラスメント防止条例■

https://www.reiki.metro.tokyo.lg.jp/reiki/reiki_honbun/g101RG00005328.html

なお、冒頭で「カスハラをピンポイントで取り締まる法律はない」と言いましたが、実は

2025年通常国会において、カスハラ防止対策を強化するための「労働施策総合推進法」の改正案が提出

されているので、今後は状況が大きく変わっていくかもしれません。改正案の内容は下記URLの「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律案」の項で確認できますので、今後の動向に注意しておきましょう。

■厚生労働省「第217回国会(令和7年常会)提出法律案」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/topics/bukyoku/soumu/houritu/217.html

次のコンテンツで、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」に基づく、カスハラの基本的な対応についてまとめているので、興味のある方はぜひご確認ください。

また、こちらはカスハラ防止に使える「職場ポスター」です。社員への周知や顧客への注意喚起のため、職場や店舗に貼ってご活用ください。

以上(2025年4月作成)

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画像:正樹 国府田-Adobe Stock

総務のお仕事 12カ月 一目で分かる「月別実務リスト」

1 実務の抜け漏れを防止するには?

人事部、経理部、法務部など、バックオフィス専門の部署がないことが多い中小企業では、経営者や管理職も例外なくこうした実務を行います。しかし、不慣れであり、片手間で処理することが多いので、どうしても抜け漏れが生じます。

一方、こうした実務は法令で定められたものが多く、放置しておくと思わぬペナルティを受けることがあります。これを避けるために、この記事では「3月末決算の中小企業」を対象に、

「人事労務」「会計・税務」「法務・その他総務」の主なお仕事を月別にリスト化

しました。

2 総務のお仕事リスト(対象:3月末決算の中小企業)

以降では、4月から順にリストを紹介しつつ、重要な実務(各リストの赤字部分)については別途ポイントを説明します。なお、リストの内容は中小企業における一例です。また、便宜上、社会保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)とします。

1)4月のお仕事

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1.入社手続き(4月入社の場合)

社員が入社したら、「労働条件通知書の交付」「社会保険や雇用保険の資格取得手続き」「雇入時健康診断の実施」などの手続きが必要です。なお、全国健康保険協会における保険料率が変更になる可能性がありますので、必ず確認するようにして下さい。

手続きの詳細は、こちらのコンテンツをご確認ください。

2.決算書の作成

1年分の取引に関する仕訳に、決算整理仕訳(売上原価の算定、収益費用の見越し・繰延べ、減価償却の計上など)を加えて集計し、それぞれの勘定科目を決算日時点の数値に確定します。確定した数値を基に、貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、キャッシュフロー計算書(中小企業の場合、作成は義務ではありません)、個別注記表を作成します。

3.3月決算法人の税務申告書の作成

2.で作成した決算書などの数値を基に、法人税(地方法人税を含む)、法人住民税、法人事業税、消費税(地方消費税を含む)の「税務申告書」を作成します。

法人税と消費税の申告書の作成が中心となります。法人税については、決算書の利益から法人税法上の所得を計算するので、さまざまな調整や税額計算が必要です。消費税については、消費税が課税されている売上・仕入かどうかなど、消費税独自の税額計算を行います。

2)5月のお仕事

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1.3月決算法人の確定申告

原則事業年度終了の日から2カ月が経過する日(3月末決算の場合は、5月31日)までに、作成した「確定申告書」を、各提出先に提出します。「国税電子申告・納税システム(e-Tax)」や「地方税ポータルシステム(eLTAX)」を利用していれば、システム上での電子申告が可能です。

2.確定申告による法人税等および消費税の納付

原則事業年度終了の日から2カ月が経過する日までに、1.で申告した納税額を、各納税先に納める必要があります。e-TaxやeLTAXを利用していれば、ダイレクト納付(口座振替)やインターネットバンキングなどを利用した電子納税が可能です。

3)6月のお仕事

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1.夏季賞与の支給、被保険者賞与支払届の提出

社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者に賞与を支給した場合、支給日から5日以内に、「被保険者賞与支払届」を所轄の日本年金機構事務センターに届け出ます。支給予定であるにも関わらず支給しなかった場合についても、「賞与不支給報告書」を同じく所轄の日本年金機構事務センターに届け出ます。

なお、賞与保険料は、通常の給与の社会保険料と併せて支給月の翌月末に納付します。賞与を年2回または3回支給している場合、支給のたびに同じ手続きが必要です(年4回以上支給している場合は対象外)。

2.定時株主総会の開催

中小企業の多くは「非公開会社(全株式の譲渡について会社の承認が必要となる旨を定款に定めている会社)」です。非公開会社は、定時株主総会開催の1週間前までに、「招集通知」を株主に送付します。ただし、議決権を行使できる全株主が同意した場合は省略できます。

また、総会後は、「議事録の作成」「決議通知書の発送」「計算書類の公告」などの他、取締役の変更などがあった場合、2週間以内に、所轄の法務局に「変更登記の申請」をします。

4)7月のお仕事

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1.算定基礎届の提出

毎年7月10日までに、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者の4、5、6月支給給与額を記載した「算定基礎届」を、所轄の日本年金機構事務センターに届け出ます。これにより9月分以降の社会保険料が改定されます(定時決定)。社会保険料は翌月末に納付するのが原則ですので、定時決定で標準報酬月額が変わった場合は、10月に支給する給与から社会保険料の控除額を変更します。

なお、定期昇給などで固定給が変わり、標準報酬月額が2等級以上変動した社員がいた場合、その社員については、変動月から起算して4カ月目から社会保険料が改定されます(随時改定)。例えば、給与が毎月末日締め、翌月払いの会社が、4月に定期昇給(昇給が反映された給与を支払うのは5月から)を行った結果、2等級以上の変動があった社員がいた場合、5、6、7月の給与支払い後、速やかに「月額変更届」を所轄の日本年金機構事務センターに届け出ます。この場合、随時改定が定時決定に優先し、昇給月から起算して4カ月目である8月から標準報酬月額が変わり、社会保険料の控除額を9月支給の給与から変更します。

2.労働保険年度更新申告書の提出

毎年7月10日までに、「労働保険年度更新申告書」を所轄の労働基準監督署に届け出ます。この申告書には、労働保険(雇用保険・労災保険)の前年度の確定保険料と当該年度の概算保険料を記載します。

また、当該年度の概算保険料も原則7月10日までに納付します(前年度に納付した概算保険料と確定保険料との間に過不足があれば、過不足を調整した額を納付します)。ただし、事前に保険料の口座振替の申し込みをしている場合、9月6日に引き落とされます。なお、労働保険料は「概算保険料が40万円以上」など所定の要件を満たす場合、3回まで分割納付が可能です。

5)8月のお仕事

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1.夏季休暇などの取得予定の確認

夏季休暇は法令で定められた休暇ではなく、会社が就業規則等で独自に設定する「特別休暇」の1つです。例えば、「7、8、9月の3カ月間で3日まで取得可」といった具合に定めるのですが、業務が多忙だと、周囲に遠慮して社員がなかなか休暇を取れないケースがあります。そのため、会社のほうから各社員に取得予定を確認するなどの配慮をするとよいでしょう。

2.建物、設備、社有車などの点検

夏季休暇などで休みを取る社員が増える間、建物、設備、社有車などの点検がおろそかにならないよう注意します。特に、建築基準法、電気事業法、道路運送車両法などで定められている「法定点検」については、所定の期限までに必ず実施します。

6)9月のお仕事

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1.定期健康診断、ストレスチェックの実施(9月実施の場合)

社員を雇用する全ての会社は、定期健康診断を1年以内に1回以上実施します。社員数が常時50人以上の場合、ストレスチェックの実施義務もあり、こちらも1年以内に1回以上実施となります(注)。

なお、社員数が常時50人以上の会社は、定期健康診断実施後に「定期健康診断結果報告書」を、ストレスチェック実施後に「心理的な負担の程度を把握するための検査結果等報告書」を、すみやかに所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。

(注)ストレスチェックについては、昨今のメンタルヘルス不調の増加などを受けて、実施義務の対象を50人未満の会社にも広げることが検討されています。

2.防災訓練の実施、BCPや備蓄の確認など

9月1日の「防災の日」に防災訓練をする会社は多いです。テレワークをしている会社も、災害伝言板やSNSを使った安否確認訓練を実施するなどして、緊急時に備えましょう。また、BCP(事業継続計画)の内容が古くないか、災害用品の備蓄(水・食料、ヘルメット、救急セットなど)に問題がないかなども、併せて確認しましょう。

7)10月のお仕事

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1.年次有給休暇の付与(4月入社の場合)

労働基準法により、「入社後6カ月以上勤務し、全労働日の8割以上出勤した社員」には、年次有給休暇(以下「年休」)を付与します。例えば、4月1日入社の正社員の場合、10月1日付で10日の年休を付与します。以降1年ごとに労働基準法に基づく日数を付与しますが、年休は付与日から2年を経過すると時効により消滅するので、日数の管理に注意しましょう。また、10日以上の年休が付与される社員については、年5日以上の年休取得義務が課されますので、付与をする際にそのルールを共有化しておくのも重要です。

2.地域別最低賃金(毎年10月改定)の確認

最低賃金には、都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」、特定の産業について定められる「特定最低賃金」があり、このうち地域別最低賃金が毎年10月に改定されます(特定最低賃金は不定期改定)。地域別最低賃金は年々引き上げられていて(2024年10月時点で、全国加重平均で1055円)、社員(特にパート等)がこれを下回らないよう注意します。

8)11月のお仕事

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1.長時間労働の実態把握、改善

厚生労働省では毎年11月に「過重労働解消キャンペーン」を実施していて、キャンペーン中は労働基準監督署による長時間労働に対する監督指導が強化されます。長時間労働の改善は本来、継続的にやるべきものですが、特に11月は「勤怠打刻と実際の労働時間が乖離(かいり)していないか」などをしっかり確認しましょう。

2.中間申告による法人税等および消費税の納付

確定申告時の税額が一定額以上である場合などは、期中に複数回の納付が発生します。これを「中間申告・納付」といいます。税金ごとに、制度が異なります。

法人税、法人住民税、法人事業税については、その事業年度が6カ月を超えるとき、原則、その事業年度開始の日から6カ月を経過した日より2カ月以内(例えば、3月末決算法人の場合は11月末まで)に、中間申告・納付をします。

消費税については、確定申告時の消費税額によって中間申告の回数(なし、年1回、3回、11回)が変わってきます。この記事では、年1回のケースをモデルとしているため、11月末に消費税の中間申告・納付が必要です。

9)12月のお仕事

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1.年次有給休暇の取得推進

年末年始を休業とする会社は多いですが、仮に本来の予定よりも仕事納めを前倒しできそうであれば、前倒しする日数分、社員に年休の取得を推奨するのもよいでしょう。法律上、年10日以上の年休が付与される社員(主に正社員)については、社員の意見を尊重した上で、会社が時季を指定して年5日の年休を取得させます。業務が多忙で年休取得が滞っている社員については、この時季にまとまった日数を取得してもらうよう働きかけます。

2.年末調整

年末調整は、社員の源泉所得税の最終調整を行うものです。社員全員に

  • 給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 給与所得者の保険料控除申告書
  • 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(扶養控除等申告書)

を提出してもらい、その年分に受けられる所得控除などを社員ごとに集計し、正確な源泉所得税の金額を算定します。すでに源泉徴収している金額と差額がある場合、12月または1月支給給与で精算します。

10)1月のお仕事

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1.法定調書の提出

毎年1月31日までに、前年(1~12月)に行った一定の支払いごとの金額や内容を記載した「法定調書」を所轄の税務署に提出します。法定調書は全部で60種類あります。例えば、社員に支払った給与については「給与所得の源泉徴収票」、税理士など特定の人に支払った報酬については「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」などがあります。

2.償却資産の固定資産税の申告

毎年1月31日までに、当該年の1月1日時点で所有している償却資産について記載した「償却資産申告書」を各市区町村に提出します。償却資産とは、土地・建物以外の事業に使用するための資産で、法人税の計算上、減価償却の対象となる資産をいいます。

11)2月のお仕事

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1.賃上げに関する情報収集

毎年2月ごろになると春闘が始まり、賃上げ(定期昇給やベースアップ)に関する話題を耳にする機会が増えます。他社の動向に注視しつつ、自社の人件費負担なども考慮して、最終的にどの程度賃上げに取り組むのかを判断します。

2.新年度の予算編成

新年度の利益目標を定め、売上と費用に計上する金額を決めます。当年度業績の着地見込みや、経営者の意向、担当者からのヒアリングなどを基に具体的な数値に落とし込むとよいでしょう。作成した予算は全社で共有し、毎月の予算管理(目標達成度合いの把握や、予算と実績の差額分析など)を実施していきます。

12)3月のお仕事

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1.退職手続き(3月退職の場合)

社員が退職した場合、健康保険法、労働基準法などにより「社会保険や雇用保険の資格喪失手続き」「退職証明書の交付(必要な場合)」といった手続きが必要です。制度がある場合は、退職金の支払いも必要です。手続きの詳細については、こちらのコンテンツをご確認ください。

2.36協定の締結・届け出(4月起算の場合)

会社が社員に時間外労働や休日労働を命じるには、過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)と労働基準法第36条に基づく労使協定(通称「36協定」)を締結し、所轄の労働基準監督署に届け出ます。36協定は、1月や4月を起算日として1年間の有効期間を定めるケースが多く、有効期間が切れた状態で社員に時間外労働や休日労働を命じるのは違法です。必ず有効期間が切れる前に内容を更新し、締結・届け出た上で、社員に周知しなければなりません。また、36協定で締結した内容を超える時間外労働や休日労働を命じる事も違法となりますので、協定内容を十分検討した上で締結する様にしてください。

3.期末棚卸の実施

期末時点の在庫を確定するため、帳簿記録に基づき調査を行う帳簿棚卸と、現物を実際にカウントする実地棚卸を実施します。期末棚卸をして、在庫を確定することで決算書に計上する売上原価が算定されます。

以上(2025年4月更新)
(監修 税理士 石田和也)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:beeboys-Adobe Stock

【労務のお仕事】社員が「入社」したとき

1 入社時の手続きの見落としに備えよう

社員の入社時は、労働条件通知書の交付や社会保険の手続きなど、やるべきことがたくさんあり、実務の抜け漏れが生じがちです。そこで、この記事では正社員を中途採用したことを想定し、必要な手続きをリストにまとめつつ、重要なポイントを紹介します。なお、便宜上、健康保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)とします。

手続きリストは、

  1. 入社前または入社当日
  2. 入社後

の2段階に分かれています。また、

各手続きをオンライン化できるかについても記載

していますので、書類のペーパーレス化を検討したい場合などにもご活用いただけます。ただし、手続きで必要となる添付書類については省略していますので、その点は各書類の提出先などにご確認ください。

なお、退職時の手続きについて知りたい場合、こちらのコンテンツをご確認ください。

2 入社前または入社当日の手続き

一般的な入社前または入社当日の手続きは次の通りです。

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1)法定書類の交付:労働条件通知書

労働条件通知書は、社員に労働条件を明示するための書類です。労働条件には、必ず明示すべき事項(契約期間、就業場所、昇給に関する事項など)と、就業規則などに定めがある場合に明示すべき事項(退職金、賞与など)があります。

労働条件通知書は、労働契約を締結する際に書面で交付しなければなりませんが、社員が希望した場合はメールなどでも交付できます(退職金、賞与などの労働条件は口頭での明示も可)。

2)手続き書類の取得:マイナンバーカードのコピー

マイナンバーカードのコピーには、社会保険や税務の手続きで使用するマイナンバー(個人番号)が記載されています。マイナンバーは極めて機微な個人情報なので、マイナンバー法に従い、取り扱いには細心の注意を払います。例えば、マイナンバー取得の際に「利用目的を社員本人に通知する」「本人確認(番号確認・身元確認)をする」などの手続きが必要です。

メールなどでマイナンバーカードのコピーを受け取ることもできますが、その場合、添付ファイルにパスワードをかける、個人番号事務取扱担当者だけが閲覧できるメールアドレスに送信をしてもらうなどの配慮が必要です。

3)その他の書類の取得:誓約書・身元保証書

誓約書・身元保証書は、社員の故意や重過失による会社への損害リスクを減らすために取得します。損害賠償額や違約金の具体的な金額をあらかじめ定めることはできません。ただし、身元保証書については、極度額(連帯保証人の責任すべき限度額)を定める必要があります。

なお、誓約書・身元保証書などの書類は法的には本来必要のないものなので、社員からの提出方法は、会社が自由に決められます(PDFなどで提出してもらうことも可)。

3 入社後の手続き

一般的な入社後の手続きは次の通りです。

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1)法定書類の提出:社会労働保険関連

健康保険・厚生年金保険については、法定書類の提出後、資格取得に関する通知が会社に送付されます。到着を確認したら、

  • 資格取得に関する通知は社内で保管(退職日から2年間保管)
  • 所定の事項(資格取得や標準報酬月額など)は通知書(書式は任意)を作成して社員に交付

します。なお、従前は法定書類の提出後に「健康保険被保険者証」が交付されていましたが、

2024年12月2日以降は、マイナンバーカードが「マイナ保険証」として利用できるようになった関係で、新規の健康保険被保険者証は発行されない

ようになっています(既存社員の健康保険被保険者証は、経過措置により2025年12月1日まで使用可)。ちなみに、マイナンバーカードを保有していない場合、またはマイナンバーカードを保有しているがマイナ保険証登録をしていない場合、

マイナ保険証の代替となる「資格確認書」の交付

を受けられます。具体的には、健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届にチェック欄が設けられており、そこにチェックを入れることで交付を受けられます。

雇用保険については、次の書面が発行されます(1.から3.までは一体の書面です)。3.は社員に交付し、1.と2.は社内で保管します(退職日から4年間保管)。

  1. 雇用保険被保険者資格喪失届・氏名変更届
  2. 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(事業主通知用)
  3. 雇用保険被保険者資格取得等確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者証

なお、法定書類の提出手続きは、社会労働保険関連は「電子政府の総合窓口(e-Gov)」から、税務関連は「地方税ポータルシステム(eLTAX)」から、電子申請で行えます(どちらも事前に電子証明書の取得が必要)。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

■地方税ポータルシステム(eLTAX)■

https://www.eltax.lta.go.jp/

2)法定帳簿の作成:労働者名簿、賃金台帳、出勤簿

法定帳簿には社員の氏名、生年月日、入社日などを記入します。社内にて保管されていれば特に提出の必要はなく、また、速やかに印刷などができる状態であれば、PDFなどで保管して差し支えありません。

3)雇入時健康診断

社員が入社3カ月前までに受診した健康診断書があれば、その診断項目については雇入時健康診断の受診が免除されます。なお、採血などを行う関係上、受診自体はオンライン化できませんが、診断結果についてはPDFなどでの保管も認められています。

以上(2025年4月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:pexels

【労務のお仕事】社員が「退職」したとき

1 退職時の手続きの見落としに備えよう

社員の退職時は、退職届の徴求や雇用保険の手続きなど、やるべきことがたくさんあり、実務の抜け漏れが生じがちです。そこで、この記事では正社員が自己都合退職したことを想定し、必要な手続きをリストにまとめつつ、重要なポイントを紹介します。なお、便宜上、健康保険の保険者は全国健康保険協会(協会けんぽ)とします。

手続きリストは、

  1. 退職前または退職当日
  2. 退職後

の2段階に分かれています。また、

各手続きをオンライン化できるかについても記載

していますので、書類のペーパーレス化を検討したい場合などにもご活用いただけます。ただし、手続きで必要となる添付書類については省略していますので、その点は各書類の提出先などにご確認ください。

なお、入社時の手続きについて知りたい場合、こちらのコンテンツをご確認ください。

2 退職前または退職当日の手続き

一般的な退職前または退職当日の手続きは次の通りです。

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1)手続き書類の取得:健康保険被保険者証、退職所得の受給に関する申告書

健康保険被保険者証を返却できない(紛失したなど)場合、「健康保険被保険者証回収不能届」を年金事務所に提出すれば返却が免除されます。ただし、健康保険被保険者証の返却も健康保険被保険者証回収不能届の提出も、手続きは訪庁または郵送でしか行えません。なお、

2024年12月2日以降は、マイナンバーカードが「マイナ保険証」として利用できるようになった関係で、新規の健康保険被保険者証が発行されなくなっていますが、2025年12月1日までに退職した既存社員の被保険者証については、引き続き返却手続きが必要

なので、注意してください。また、「高齢受給者証」の交付を受けている70~74歳の社員については高齢受給者証も併せて返却が必要です(健康保険被保険者証も高齢受給者証も、2025年12月2日以降は回収不要で、社員が自分で破棄してよい)。

なお、2024年12月2日以降に入社した社員については、マイナンバーカードを取得していない場合、またはマイナンバーカードを保有しているがマイナ保険証登録をしていない場合に限り、

保険証の代替となる「資格確認書」の交付

を受けられます。この交付を受けた社員が退職する場合、資格確認書の返却義務が生じますので、漏れが生じないようにきちんと状況を把握しておく必要があります。

退職所得の受給に関する申告書は、社員が正しい税額で、所得税の源泉徴収を受けるために必要な書類です。取得しない場合、退職金の支給額に対し、一律で20.42%が源泉徴収されます。こちらはPDFなど、オンラインでの取得が可能です。

2)法定書類の作成:雇用保険被保険者離職証明書

雇用保険被保険者離職証明書は3枚複写となっており、書面の名称は、

  • 「雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)」(1枚目)
  • 「雇用保険被保険者離職証明書(安定所提出用)」(2枚目)
  • 「雇用保険被保険者離職票-2」(3枚目)

となっています。

雇用保険被保険者離職証明書(安定所提出用)と雇用保険被保険者離職票-2には、社員が離職理由に異議がないことなどを証明するための署名欄があります。社員本人の署名が原則ですが、帰郷その他やむを得ない理由により、社員本人の署名が困難な場合は、その理由を記載した上で会社の印を押印することが認められています。

なお、雇用保険被保険者離職証明書は、「電子政府の総合窓口(e-Gov)」上で作成し、電子申請で提出することもできます(事前に電子証明書の取得が必要)。その場合、「離職証明書の記載内容に関する確認書」という書類を作成して社員に署名なつ印をしてもらい、PDFで電子申請データに添付することで、離職理由に異議がないことなどを証明します。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

3)その他の書類の取得:退職届

退職届の取得は任意ですが、後述する「雇用保険被保険者資格喪失届」を所轄ハローワークに提出する際、退職の事実を客観的に証明する書類が必要となるため、取得しておくのが無難です。労務管理上の観点からも、退職の意思、退職日、退職理由などを明らかにしておくことで、社員とトラブルになるリスクを減らす上で有効です。

オンラインで退職届を取得する場合、社員の直筆で署名なつ印のある退職届をPDFなどにして送ってもらいます。なお、「一身上の都合で退職します」と記載されたメールなどを退職届の代わりにするのは、本人が作成したものであると証明することが難しくなるので避けたほうがよいでしょう。

3 退職後の手続き

一般的な退職後の手続きは次の通りです。

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1)給与・退職金の支払い

退職金に関する社員とのトラブルを防ぐため、退職金の支給の有無、支給する場合は支給額や支給時期などについて、退職時に本人に通知しておくとよいでしょう。なお、給与明細や退職金支給明細は、社員の同意があればPDFなどで交付できます。

2)法定書類の提出:社会労働保険関連

健康保険・厚生年金保険については、法定書類の提出後、資格喪失に関する通知が会社に送付されます。これは社内で保管します(退職日から2年間保管)。

雇用保険については、法定書類の提出後、次の書面が交付されます(1.と2.は一体の書面)。2.と4.は社員に交付し、1.と3.は社内で保管します(退職日から4年間保管)。

  1. 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(事業主通知用)
  2. 雇用保険被保険者資格喪失確認通知書(被保険者通知用)・雇用保険被保険者離職票-1
  3. 雇用保険被保険者離職証明書(事業主控)
  4. 雇用保険被保険者離職票-2

なお、法定書類の提出手続きは、社会労働保険関連は「電子政府の総合窓口(e-Gov)」から、税務関連は「地方税ポータルシステム(eLTAX)」から、電子申請で行えます(どちらも事前に電子証明書の取得が必要)。ただし、健康保険被保険者証(高齢受給者証、資格確認書)については、現物を年金事務所に訪庁または郵送で返却しなければなりません。

■電子政府の総合窓口(e-Gov)■

https://www.e-gov.go.jp/

■地方税ポータルシステム(eLTAX)■

https://www.eltax.lta.go.jp/

3)社員への書類送付:雇用保険被保険者離職票、退職証明書

2025年1月20日から、雇用保険被保険者離職票など雇用保険資格の喪失関係書類(本人控え分)を、マイナポータルで受け取れる行政システムがスタートしています。本人がマイナポータルからデータを直接取得できるので、会社からの送付作業のひと手間が減ります。ただし、サービスを利用するには、資格喪失の手続きを電子申請(e-Gov)で行うのに加え、「マイナンバーをハローワークに登録する」などの事前準備が必要になります。

■厚生労働省「被保険者の皆さまへ 2025年1月から、『離職票』をマイナポータルで受け取れるようになります!」■

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001353163.pdf

■マイナポータル「離職票をマイナポータルで受け取る」■

https://img.myna.go.jp/manual/03-04/0230.html

退職証明書は、退職後であっても社員から請求があった場合は、必ず交付しなければなりません。実務上は、退職前に要否を確認しておくとよいでしょう。なお、退職証明書は、社員の同意があればPDFなどで交付できます。

なお、会社の中には、あらかじめ退職証明書を作成して退職時に本人に交付しているところも多いです。退職後、本人が国民健康保険に加入する場合などに、市区町村から前職の退職証明の提示を求められるケースがあるからです。

以上(2025年4月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:Andrey Popov-Adobe Stock

新入社員に理解させたい 経理・人事・総務の仕事12か月(2025年4月号)

4月になると、多くの会社に新入社員が入社してきます。経理・人事・総務部門も新入社員や、あるいは他部署からの異動で新しいスタッフを迎え入れることが少なくないでしょう。
未経験者が早く仕事に慣れるには、全体の流れをつかむことが肝要です。そこで、中小企業の経理・人事・総務を担当する人が会社のなかで担っている役割と、主にどのような業務をするのか、毎月の仕事と留意点についてまとめます。
※本冊子は、3月決算法人を想定したスケジュールに基づいています。

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2025年「賃上げ」に対する経営者315人の本音。御社はどうする?

1 2年連続で賃上げする企業は87.8%!

春闘をはじめ、「賃上げ」に関する話題が今年も世間を賑わせています。そこで、昨年に引き続き、経営者315人を対象に、賃上げに関する緊急アンケートを行いました(2025年3月19日から3月27日まで)。前回のアンケート結果については、こちらをご確認ください。

今回は、「2025年度に賃上げを実施する」という企業が全体の36.5%、そのうち

「2年連続(2024年度・2025年度)」で賃上げを実施するという企業が、なんと87.8%

もいました。ちなみに、2年連続で賃上げすると答えた企業の2024年度(昨年度)の賃上げ率は、「3%以上」が最も多かったです。

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2 賃上げを実施するか否か、何を基準に判断する?

ここからは、2025年度の賃上げの方針についての回答結果を紹介します。

まずは、賃上げをするか否かを判断するために重視する情報についてですが、「自社の業績」が圧倒的に多くなっています。

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3 賃上げする企業が求めている情報は?

では、具体的にどれだけの企業が賃上げをするのでしょうか?

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2025年度に賃上げを実施する企業は36.5%(このうち87.8%が2年連続での実施)で、2〜3年以内に実施するという企業は14.0%となっています。賃上げする企業が求めている情報は、助成金などに関する情報、社会保険料への影響に関する情報でした。少しでも賃上げの負担を軽減したいというところでしょう。

また、経営者が賃上げについて相談する相手は、顧問の税理士が最も多く、自社の取締役がこれに続きます。

賃上げを検討する際に参考となるリポートは以下の通りです。

4 どうやって、どの程度の賃上げをする?

賃上げの手法や賃上げ率はどうでしょうか。

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賃金の範囲としては、「基本給のみ」が最も多く、基本給の他に手当や賞与も上げるという企業が続きます。かつては、基本給は上げず、手当や賞与を上げて対応する企業が多かったですが、2025年はそれよりも踏み込んだ賃上げを検討する企業が増えています。

具体的な賃上げ率は、「3%以上」が最も多いですが、その次は「5%以上」となっており、賃上げに対する企業の意気込みがうかがえます。

賃上げの手法については、ベースアップで実施する企業が最も多く、定期昇給が続きます。両方を行うという企業も多く、やはり賃上げに本気で取り組む企業が増えている状況を垣間見ることができます。

5 賃上げ「しない企業」の経営者が考えていることは?

これまでとは逆に、賃上げをしない企業の状況を紹介します。

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なぜ、賃上げをしないのかについては、「業績の先行きが不透明だから」が圧倒的に多くなっています。前述した通り、賃上げをするか否かを判断するために最も重視される情報は「自社の業績」でした、やはり、業績が伴わない賃上げは難しいということでしょう。

どうなったら賃上げをするのかについては、これまで同様に業績が重視されていて、「業績好調が続くと確信できたとき」が圧倒的に多くなっています。

以上(2025年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

「賃上げ」はどこまで必要? 労働分配率や賞与・退職金を基準に考える

1 賃上げ前に労働分配率を確認する

毎年春闘の時期になると、賃上げに関する話題を耳にする機会が増えます。例えば、

2025年春闘では、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会」をスローガンに、昨年に引き続き、賃上げ目標を「5%以上(定期昇給相当分を含む)」とする方針

が打ち出されています。

どこまで賃上げに取り組むかは経営者次第ですが、人件費の負担を考えるのであれば、

賃上げを検討する前に、自社の人件費が適正な水準にあるのかを「労働分配率」で確認

しておく必要があります。労働分配率の計算方法はさまざまで、適正な数値は業種や業態によって異なります。ここでは労働分配率を求めるための計算式を紹介します。実際に、自社の適正水準を検討する際は、社会保険労務士や会計士・税理士などに相談してみるとよいでしょう。

1.労働分配率の算出方法

労働分配率=人件費÷付加価値

2.付加価値の算出方法

  • 控除方式:主に製造業で使用
      付加価値=売上高-外部購入価値(製品仕入高、直接材料費、外注加工費等)
  • 加算方式:主に非製造業で使用
      付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費

平均的な労働分配率や付加価値を知りたい場合、経済産業省「企業活動基本調査」の業種別データが参考になります。自社の過去3~5年程度の労働分配率を計算して、適正と思われる利益を出していた年度を基準にするとよいでしょう。

■経済産業省「企業活動基本調査」■

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/index.html

以降では、賃上げの種類、賞与や退職金への影響を回避する方法などを紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で賃上げを検討する場合は、ぜひご確認ください。

2 2種類の賃上げ「定期昇給」「ベースアップ」

1)定期昇給

定期昇給とは、

企業の定める賃金テーブル(賃金表)に基づき、賃金が従業員の年齢や勤続年数に応じて自動的に昇給(自動昇給)すること

です。査定昇給(人事考課などに基づいて昇給を行うこと)も、定期的に実施する場合は定期昇給に含まれますが、自動昇給とは異なります。企業の中には、能力や成果をもっと賃金に反映させようと、自動昇給の見直しに取り組んでいるところが少なくありません。

2)ベースアップ

ベースアップとは、

賃金テーブルを書き換え、全従業員の賃金水準を一斉に引き上げること

です。賃金テーブルが書き換えられるため、能力や成果が低い従業員も昇給(賃上げ)の対象となります。昇給は賃金規程で定められているもの、ベースアップは業績などに応じて臨時的に実施されるものです。

3 賞与や退職金への影響を回避する

1)賞与や退職金の負担を回避するには「基本給連動型→基本給非連動型」

賃上げをした場合、毎月の賃金だけでなく、賞与や退職金の負担も増えることがあります。それは、

基本給を賞与や退職金の計算基礎とする「基本給連動型」の制度

を導入している場合です。基本給連動型は、基本給に一定の支給率を掛けて賞与や退職金を計算するなど、シンプルな運用が可能ですが、基本給が支給額のベースになるため、賃上げの影響を受けやすくなります。賃上げの影響を回避したい場合、

基本給を賞与や退職金の計算基礎としない「基本給非連動型」の制度

を導入するという方法があります。

以降で、基本給非連動型の賞与・退職金制度の例を紹介します。なお、賞与・退職金制度を従前のものから変更する際は、「労働条件の不利益変更」に注意する必要があります。

2)賃上げの影響を回避する賞与制度(業績連動型)

ここでは、基本給非連動型の賞与制度の例として、「業績連動型」を紹介します。

業績連動型は、企業が重視する業績指標、勤務成績などを基に支給率を決め、賞与原資にその支給率を掛けて賞与を計算する仕組みです。業績指標については営業利益や経常利益などが、勤務成績については部門業績や人事考課の結果などがよく用いられます。

  • メリット:能力や成果を賞与に反映させやすい
  • デメリット:賞与の支給額が安定しにくく、従業員からすると不安がある

3)賃上げの影響を回避する退職金制度(定額制、別メニュー方式、ポイント制)

ここでは、基本給非連動型の退職金制度の例として、「定額制」「別メニュー方式」「ポイント制」を紹介します。

1.定額制

定額制は、勤続年数に応じて定額を定め、退職金を支給する仕組みです。例えば、20年勤続で退職した従業員の退職金は400万円、30年なら600万円といった具合です。

  • メリット:退職金の計算が不要
  • デメリット:能力や成果を退職金に反映させられない

2.別メニュー方式

別メニュー方式は、退職時の役職に応じて定額を定め、勤続年数別の支給率を掛けて退職金を計算する仕組みです。基本給連動型(退職時の基本給を退職金の基礎とする制度)と定額制を混合したようなイメージです。

  • メリット:退職金の計算が簡単
  • デメリット:能力や成果を退職金に反映させにくい

3.ポイント制

ポイント制は、一定のルールに基づいて従業員にポイントを付与し、退職時の累計ポイント数に単価を掛けて退職金を計算する仕組みです。ポイントには、勤続年数に応じて付与する「勤続ポイント」、資格等級などに応じて付与する「等級ポイント」、人事考課の結果などに応じて付与する「個人ポイント」などがあり、一般的に複数のポイントを組み合わせて運用します。

  • メリット:能力や成果を退職金に反映させやすい
  • デメリット:退職金の計算が複雑、付与されるポイント数などについて従業員の納得が得られないケースがある

4 社会保険料などへの影響にも注意する

1)労働保険料

労働保険料(労災保険料と雇用保険料)は、毎月の賃金の総支給額に保険料率を掛けて計算します。そのため、残業代などで賃金が変動すると保険料も異なってきます。また、賃上げの場合も保険料に影響します。

2)社会保険料

社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は、4~6月に支給した賃金の平均額をベースに決まります。そして、その年の9月から翌年の8月までは原則固定となります。この手続きを「定時決定」といい、算定基礎届を毎年7月初旬に年金事務所に届け出ます。

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ただし、固定的賃金(稼働実績に関係なく支給されるもの)が変動し、連続する3カ月間の賃金の平均額が2等級以上変わると、4カ月目から社会保険料が改定されます。これを「随時改定」といい、月額変更届を固定的賃金が変動した月から起算して4カ月目に速やかに届け出ます。

なお、7月から9月までのいずれかの月に随時改定をした場合、定時決定は行いません。4月から賃上げをする場合などは、随時改定の要件に該当しても定時決定として扱い、9月分の保険料から改定してしまうことがありますが、これは誤った運用です。

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5 賃上げに表れる経営者の思い

ベースアップをした場合、以降の人件費が増大します。将来的に企業の業績が悪化しても、賃下げは労働条件の不利益変更になるので、簡単に行うことができません。そのため、足元の業績好調を理由に、利益分配の目的で賃上げを検討しているのであれば、ベースアップではなく、賞与で賃上げをしたほうが無難という考え方もできます。これであれば、翌年度の業績に応じて柔軟に賞与の支給額を決められます。

頑張っている従業員に報いたいというのは、経営者の変わらぬ思いです。そうした意味で、賃上げは従業員に感謝の気持ちを伝える重要な取り組みです。ただし、事前に賃上げのメリットとデメリットを把握し、業績などに見合った適切な方法を選択しましょう。

以上(2025年3月更新)

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画像:Team Oktopus-shutterstock

【朝礼】なぜ、「新年度だから、目標を立てよう」では駄目なのか?

【ポイント】

  • ビジネスの環境は日々変わるので、変化に応じて即行動できる姿勢が大切
  • 年度のように、思考や行動を縛っている「見えない呪縛」がたくさんある
  • 目の前にあるルールを考えて、納得がいかなければ、声を上げるべき

新年度を迎えて、新しい目標を立てた人もいるでしょう。これまでの私であれば、「新年度に目標を立てて取り組むことは、とても良いことです。努力をして、ぜひ、目標を達成できるようにがんばってください」と言って、皆さんを叱咤(しった)激励してきました。

しかし、今回は、冒頭に「新年度に」という言葉を付けるのをやめて、「目標を立てて取り組むことは、とても良いことです。努力をして、ぜひ、目標を達成できるようにがんばってください」としました。その理由は、「年度」という縛りから解放されてほしいからです。

もちろん、新年度に目標を立てるのは悪いことではありません。会社も、皆さんに年度単位で目標を立ててもらい、その達成度を評価します。私自身も経営者として1年間の「業績」という結果に基づいて評価を受けます。そのため、年度という期間を全く無視していいわけではありませんが、過度に年度という単位に縛られることは良くないと思っています。

理由は至ってシンプル、「日々のビジネス活動は、年度単位では動いていないから」です。私たちが考えなければならない市場環境、競合他社、お客様のニーズなどは、日々変わります。その変化に応じて、年度にとらわれることなく即行動、そんな姿勢を持ってもらいたいと思っています。

実は、年度と同じように、私たちの思考や行動を縛っているものはたくさんあります。私は、こうした「見えない呪縛」が成長しようとしている会社や皆さんの障害になっていると思っています。
身近な例でいえば「担当業務」がそうです。担当業務の内容や手順は、「必ず守るべきもの」と思い込みがちです。しかし、より効率的な方法やミスが発生しない方法があれば、すぐに変更できるようなスピーディーかつ柔軟な組織になってほしいと思っています。

そのための大切なことは2つあります。1つは、目の前にあるルールの意味を考えることです。もう1つは、もし、考えても自分が納得できなければ、「なぜ、こうなっているのですか?」と声を上げることです。そのひと声が、皆で考え、ルールを良い方向に変えていくきっかけになるはずです。

こうしたことの積み重ねが、会社の成長のために、一番必要だと肝に銘じてください。

以上(2025年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【入社1年目の教科書 まとめ】新入社員のためのビジネスの基礎知識~シリーズを一挙紹介

書いてあること

  • 主な読者:社会人の基礎を学びたい新入社員
  • 課題:学生から社会人になると何が変わるのか、何を準備しておけばいいのかが分からない
  • 解決策:お金をもらって仕事をする「プロ」になる。プロとして働く以上、社会人として最低限の常識やマナーは身に付けておく必要がある

「入社1年目の教科書」シリーズでは、皆さんに今のうちから身に付けてほしい社会人の基礎を分かりやすくまとめたものです。服装・挨拶のマナーや電話の出方など初歩的な内容から、契約のルールなど少し専門的な内容まで、幅広く紹介していますので、参考にしてください。

1 最初が肝心! 社会人の常識やマナー

社会人になって皆さんが最初に接する相手は、会社の上司や先輩です。上司や先輩は新たに仲間となった皆さんを優しく出迎えてくれるでしょうが、その優しさに甘え過ぎず、社会人の常識やマナー、ルールを守って「大人として」行動することが大切です。

1)「会社の一員である」ことを自覚し、常識やマナーを大事にしよう

フレンドリーな雰囲気の会社、服装などのルールが比較的緩い会社などはたくさんありますが、どんな会社であっても「会社の一員である」という自覚を持って仕事をしないといけないのは同じです。社会人の常識や服装・挨拶のマナーを紹介します。

2)仕事のルールは「就業規則」を読んで理解しよう

会社の「就業規則」には、就業時間やお給料の計算方法など、働く上での基本的なルールが定められています。皆さんがまず押さえるべきは「服務規律」です。服務規律には「就業時間中は仕事に専念しなければならない」など、仕事をする上での基本的な心構えが書かれています。

一般的な就業規則の項目や、服務規律の内容を紹介します。

3 電話やメールの基本を押さえよう

電話やメールは、ビジネスの基本ツールです。最初は使い方に戸惑うかもしれませんが、マナーなどを早めに押さえておくと、電話やメールの内容(商品やサービスに関する具体的な話)に気を回す余裕が出てきて、仕事への理解が深まります。取引先を訪問したり、議事録を作成したりするときも、同じようにポイントを押さえて臨むことで、会話の内容に集中できます。

1)電話は怖がらずに出よう

電話応対では、「取り次ぎのために自社の商品名や部署、担当者を覚えられる」「リアルなビジネストークを、敬語を交えながら体験できる」といった、ビジネスの基礎体力が身に付きます。怖がらずに電話に出るためのコツを紹介します。

2)パソコンのキーボードは「静かに」叩こう

パソコンのキーボード操作に慣れていないと、見慣れない配列に悪戦苦闘。やたらに力強くキーを押してしまうので、タイピング音がうるさくなりがちです。大切なのは正しい姿勢なので、パソコンを使うときの視線の高さや、キーボード操作で指を置く基本位置を紹介します。

3)メール独特の「お作法」を覚えよう

メールは今でもビジネスにおける主力の連絡手段です。メールは長く使われてきたツールなだけに、宛先(TO、CCなど)や言い回しについて独特の「お作法」があるので、正しいマナーを身に付けましょう。メールの送り方や誤送信時の対応のポイントを紹介します。

4)訪問する際は、しっかりと事前準備をしよう

初めて取引先などを訪問するときというのは誰でも緊張しますが、「時間を取ってくれた相手に感謝し、決して準備を怠らないこと」を忘れなければ基本的には大丈夫です。取引先などを訪問する際の準備やマナーを紹介します。

5)席次の基本を覚えて、臨機応変に対応しよう

席次の基本は、偉い人が座る「上座」が、出入口とは反対の奥の席です。応接室、会議室、自動車、列車、エレベーターにも席次がありますが、時と場合によることもあります。席次についてのマナーを紹介します。

6)議事録で必要なのは速記ではない。事前準備を怠らないようにしよう

議事録の作成と聞くと、会議の進行と同時に会話をまとめていく「速記」をイメージする人がいますが、実は違います。必要なのは、アジェンダの事前共有、会議中の要点のまとめ、会議後の確認です。議事録作成のポイントを紹介します。

4 お金の流れが分かれば会社のことが見えてくる

ビジネスでは、商品やサービスを売ったり、必要な備品や設備を買ったりと、さまざまなお金の流れがあります。皆さんの「お給料の支払い」も、そうした流れの1つといえるでしょう。自社のお金の流れを見れば、例えば「自社が今、どのような活動に注力しているのか」などが、他社のお金の流れを見れば、例えば「今後も取引関係を継続できそうか」などが分かります。

1)自分のお金と会社のお金を明確に分けよう

社会人になると、仕事のために会社のお金を使うようになります。そのときに大切なのは、自分のお金と会社のお金を明確に分けることです。お金に関する基本的なルールを紹介します。

2)給与明細を見れば、お給料の支払いの流れが分かる

お給料はもらうと、とてもうれしいものです。ただ、社会保険料や税金など、お給料から引かれる金額があることをご存じでしょうか。お給料の額や内訳などを示す「給与明細」の仕組みを紹介します。

3)源泉徴収票を見れば、1年間のお給料の支払い状況が分かる

年末年始に配られる「源泉徴収票」には、その年(前年)のお給料の合計額、差し引かれた社会保険料や税金の情報などが書かれています。これは、皆さんが家や車を買うときなどにも必要になる大切な書類なので、しっかり内容を確認しましょう。

4)3つの財務諸表を押さえれば、会社のお金の動きが分かる

財務諸表は会社のお金の流れを表す重要な書類で、社会人はこれが読めて初めて一人前といわれます。会社がもうかったか損をしたかを示す「損益計算書」、会社がどのようにお金を調達し何に使っているかを示す「貸借対照表」、会社の現金の流れを示す「キャッシュフロー計算書」の読み方を紹介します。

5)金融リテラシーの基本を押さえて、もっとお金に詳しくなろう

稼いだお金を株式や投資信託などの金融商品に投資する資産形成。今では、高校の授業にも「金融教育」が組み込まれています。ただ、具体的に何をしたらよいのか分からないこともあります。そこで、資産形成の基本について紹介します。

5 そろそろ独り立ち。半歩先ゆくビジネスのルール

入社したての頃は、上司や先輩が皆さんに付いて仕事を教えてくれますが、ある程度時間がたつと、やがて1人で仕事をするようになります。そのときに注意しなければならないのが、契約違反、情報の取り扱い、取引先への営業などで、知らず知らずのうちに法律に違反してしまうことです。

1)契約の内容をしっかり把握しよう

仕事は、相手とさまざまな「契約」をしながら進めます。契約は相手との約束であり、守らなかった場合はペナルティーがあるので注意が必要です。契約の基本的なルールを紹介します。

2)ビジネス文書は何のために作成されるのかを知っておこう

ビジネス文書は、誠実にトラブルなくビジネスを進めるために必要なものです。納品書、検収書、注文書、見積書などさまざまなビジネス文書があって最初は混乱しますが、「何のために作成されるのか」を意識していれば、トラブルなく使いこなすことができます。ビジネス文書の種類や使用目的などを紹介します。

3)情報の取り扱いには細心の注意を払おう

仕事をしているとたくさんの情報を取り扱いますが、どんな情報であっても慎重に取り扱い、相手の会社や個人、取引内容を特定できるような情報は話さないのが基本です。情報の取り扱いに当たって押さえておくべき6つの注意事項を紹介します。

4)営業では、正しい情報を相手に魅力的に伝えよう

商品やサービスを売りたいからといって、話を盛り過ぎるような不当なセールストークなどをするのは法律違反です。営業で必要なのは、相手のニーズを捉え、正しい情報を魅力的に伝える力です。法律に違反しないセールストークなどのポイントを紹介します。

5)取引先には無理なお願いをしないように気を付けよう

ビジネスでは、こちらが有利な立場(発注する側など)にあるときほど、無理なお願いをしがちです。取引内容に注意しないと、「下請法」という法律に抵触し、自社の社会的な信用を傷つけてしまう恐れがあります。皆さんが守らなければならない義務や禁止事項を紹介します。

6)著作物の侵害などをしないために注意点を知っておこう

プレゼン資料やチラシを作るとき、ネット上で公開されている動画や画像を無断で使用すると、著作権の侵害になることがあります。動画や画像を使用する際のルールを紹介します。

6 働き過ぎてもダメ! 健康に働きましょう

仕事熱心なのは良いことですが、働き過ぎで体を壊してしまっては意味がありません。残業は必要最低限にして、休みを取り、健康診断も受けましょう。自分の健康をコントロールできてこそ、一人前の社会人といえるのです。

1)残業は上司の許可を得た上で、最低限にとどめよう

労働時間は、「原則1日8時間、1週40時間までが上限」と決められています。どうしても仕事が終わらないときは残業が認められますが、必ず事前に許可を得ることが大切です。残業の定義や申請するときのマナーを紹介します。

2)年次有給休暇(年休)は積極的に取得しよう

会社には、入社後6カ月以上勤務すると、お給料をもらいつつ休みを取れる「年次有給休暇(年休)」という制度があります。正社員の場合、1年間に5日の年休を取るのが決まりなので、積極的に取得しましょう。年休のルールや申請するときのマナーを紹介します。

3)健康診断の受診など健康管理のルールを知っておこう

会社には、社員が病気やけがをせずに安心して働けるように配慮をする義務があり、社員には自ら健康管理に取り組む義務があります。健康診断もこの一環です。皆さんが守るべき健康管理のルールを紹介します。

以上(2025年2月更新)

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画像:Mariko Mitsuda

2025年法令改正まで網羅「パートタイマー用就業規則」のひな型

1 就業規則と労働契約の使い分けが重要

正社員よりも労働時間の短い社員のことを、一般的に「パートタイマー」といいます。ただ、業務内容(専門的な業務か、正社員の補助的な業務か)、契約期間(有期か、無期か)、社会保険(被保険者になるか、ならないか)など、ひとえにパートタイマーといってもさまざまな違いがあります。

通常、労働条件は「就業規則」か「労働契約」で定めますが、

  • 就業規則は、原則として規程の対象者全員に効力が及ぶため、働き方の異なるパートタイマーが多いと、その違いに対応しきれない
  • 労働契約は、パートタイマーごとに個別の労働条件を設定できるが、労働条件のばらつきが大きくなると、統率がしにくくなる

という問題があります。これを解決するには、

画一的に決められる労働条件は就業規則で定め、それ以外は労働契約で定める

のがポイントです。

次章で、パートタイマー用の就業規則のひな型を紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で、自社の就業規則の見直しにご活用ください。なお、すでに施行済みの内容ではありますが、2024年4月1日からは、労働契約を締結する際、

を労働条件通知書などで明示しなければならなくなっています(労働基準法施行規則)。こちらも、画一的に決められる労働条件については、確実に就業規則に定めておきましょう。

2 パートタイマー用就業規則のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容は異なってきます。実際にこうした規程を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

なお、前述した労働条件の明示に関する定めについては、第4条(労働条件の明示)に記載しています。

【パートタイマー用就業規則のひな型】

第1章 総則

第1条(目的)

この就業規則(以下「本規則」)は、株式会社○○○○(以下「会社」)の従業員の労働条件、服務規律、その他就業に関して必要な事項について定めたものである。会社と従業員は本規則を遵守し、会社の発展に寄与するものとする。なお、本規則に定めのない事項は、労働基準法およびその他の関係法令によるものとする。

第2条(適用範囲および均衡待遇)

1)本規則の適用を受ける従業員は、第5条および第6条の手続きを経て、会社と期間の定めのある労働契約を交わした従業員で、1週間の所定労働時間が一般の従業員よりも短い短時間勤務従業員(以下「パートタイマー」)とする。

2)会社は、「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」を遵守し、パートタイマーの待遇を就業の実態から判断して決定するものとし、一般の従業員との均衡を図るよう努めるものとする。

3)本規則に規定する「無期労働契約への転換」によって無期労働契約に転換したパートタイマーについては、転換後も本規則を適用とする。

第3条(労働契約の期間等)

1)会社は、労働契約の締結に当たって期間の定めをする場合には、3年(満60歳以上のパートタイマーとの契約については5年)の範囲内で、契約時に本人の希望を考慮の上各人別に決定し、別紙の労働条件通知書で示す。

2)当該契約について更新する場合またはしない場合の判断の基準は、次の通りとする(あらかじめ当該契約を更新しない旨明示されているものを除く)。

  1. 契約期間満了時の業務量
  2. パートタイマーの勤務成績、態度
  3. パートタイマーの能力および従事している業務の進捗状況
  4. パートタイマーの健康状態
  5. 会社の経営状況
  6. その他、会社が指定する書類

3)労働契約の締結時と更新時に、有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限を労働条件通知書で示す。

第4条(労働条件の明示)

1)会社は、パートタイマーとの労働契約の締結に際し、労働契約書を取り交わすとともに、労働条件通知書および本規則(付属する諸規程等を含む)を交付し、就業場所、従事すべき業務、労働時間、賃金、退職、契約更新の基準(更新上限)、無期労働契約への転換(第64条)の申込機会および転換後の労働条件(通算契約期間が5年を超えるパートタイマーの場合)、その他の労働条件を明示する。

2)前項の明示事項の他、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律に基づき昇給の有無、退職手当の有無、賞与の有無、有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する事項に係る相談窓口についても、労働条件通知書に記載し、あわせて明示するものとする。

3)第1項の労働条件通知書において、就業場所および従事すべき業務の項目については当該労働契約期間における変更の範囲を併記して定めるものとする。なお、本通知書は当該パートタイマーが希望する場合、メール、SNS等により送ることができる。

第2章 採用、異動

第5条(採用の手続き)

会社は、就職を希望する者の中で、次の各号に定める書類を提出した者の中から、面接その他一定の選考試験により採用者を決定する。会社はパートタイマーを採用するに当たり、労働契約の締結時、あるいは労働契約の更新時に、その後労働契約を更新する可能性があるか否かをパートタイマーに書面により通知する。ただし、状況により、会社はその一部の書類の提出を求めないことがある。

  1. 履歴書
  2. 職歴のある者については職務経歴書
  3. 写真(提出日前3カ月以内に撮影したもの)
  4. 会社が指定した資格証明書のコピー
  5. 在留カードのコピー(在留資格を有する外国人のみ)
  6. その他、会社が指定する書類

第6条(採用時の提出書類)

1)パートタイマーとして採用された者は、採用日から2週間以内に次の各号に定める書類を提出しなければならない。ただし、状況により、会社はその一部の書類の提出を求めないことがある。

  1. 誓約書
  2. 身元保証書
  3. 住民票記載事項証明書。個人番号(マイナンバー)が記載されているものの場合は、第8号の書類を提出する必要はない
  4. 通勤経路図
  5. 入社の年に給与所得があった者については、源泉徴収票(甲欄適用者のみ)
  6. 給与所得の扶養控除等(異動)申告書(甲欄適用者のみ)
  7. 基礎年金番号が確認できる書類(基礎年金番号通知書など、社会保険に加入する場合のみ)のコピー、雇用保険被保険者証(職歴のある者、雇用保険に加入する場合のみ)
  8. 個人番号(マイナンバー)カードの表裏面の写し、または個人番号(マイナンバー)の通知カードの写し。なお、個人番号(マイナンバー)カードの表裏面の写しの場合は、第9号の書類を提出する必要はない
  9. 自動車運転免許証または旅券の写し(有効期間内のもので、顔写真、氏名、住所、生年月日が分かるもの。ただし、交付されている場合に限る)
  10. 健康診断書(提出日前3カ月以内に受けたもの)(労働安全衛生法および関係規則の定めに該当する場合)
  11. 他社で雇用されている者については、他社の労働条件等が分かる書類
  12. その他、会社が指定する書類

2)前項の提出書類の記載内容に変更があったときは、速やかに所属長に届け出なければならない。

3)会社は、第1項の提出書類を人事労務に関する手続きおよび人事労務管理のために利用するものとし、その他のために利用する場合にはパートタイマーから同意を得るものとする。

4)前各項の規定にかかわらず、個人番号(マイナンバー)および個人番号(マイナンバー)をその内容に含む個人情報(以下「特定個人情報等」)の利用目的や取り扱いは、別途定める「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」(省略)によるものとする。

第7条(試用期間)

1)採用日から2週間を試用期間とし、業務の適性などを総合的に判断し、本採用の有無を決定する。この決定は試用期間の途中または満了日に行う。会社が適当と認めたときは試用期間を短縮または延長することがある。なお、延長の場合は2週間の範囲内とする。

2)前項の試用期間内に業務の適性が認められないと判断される場合には、当該労働契約期間で終了となる。

第3章 服務規律

第8条(服務規律の基本原則)

パートタイマーは、会社の指揮命令に従い、職務上の責任を自覚し、互いに協力して誠実に職務を遂行するとともに、職場の秩序の維持に努めなければならない。

第9条(服務心得)

1)パートタイマーは、次の各号に定める事項を遵守しなければならない。

  1. 勤務中は誠実に業務に励み、正当な理由なく無断欠勤および遅刻、早退、私用外出等をしないこと
  2. 許可なく業務以外の目的で会社の施設、物品などを使用しないこと
  3. 職務に関して自己の利益を図り、または他より不当に金品を借用し、もしくは贈与を受けるなど不正な行為をしないこと
  4. 整理整頓を徹底し、清潔な職場を心掛けること
  5. 日ごろから健康管理を怠ることなく、健康を保持すること
  6. 会社の一員としての自覚と品位を持ち、会社の名誉または信用を傷つける行為をしないこと
  7. 酒気を帯びて就業したり、自動車を運転したりしないこと
  8. 勤務中に、職務上の必要がないにもかかわらず電子メールやSNSを私的に利用しないこと。また、職務と関係のないウェブサイトを閲覧したりしないこと
  9. 他の者の業務を妨げないこと
  10. 他の者の就業環境を害さないこと
  11. 業務上の都合により、担当業務の変更または他の部署への応援を命ぜられた場合は、正当な理由なく拒まないこと
  12. 会社の許可なく、会社の文書類または物品を社外の者に交付、提示しないこと
  13. その他、職場の風紀・秩序を乱す行為をしないこと

2)パートタイマーが会社施設内において政治活動、宗教活動、集会、演説、放送をし、または文書の配布、掲示をしようとする場合は、事前に会社の許可を受けなければならない。

第10条(機密保持)

パートタイマーは、自己の担当であるか否かを問わず、業務上知り得た機密を第三者に開示または漏洩もしくは自らのために利用してはならない。退職後も同様とする。

第11条(ハラスメントの禁止)

全てのパートタイマーは、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、職務上の地位・権限・職権、雇用形態に関係なく、職場において相手の人格や尊厳を尊重し、ハラスメント(セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント、パワーハラスメントなど)並びにそれらと疑われる行為をしてはならない。ハラスメントの防止については別途定める「ハラスメント防止規程」(省略)によるものとする。

第4章 労働時間、休憩、休日・休暇

第12条(労働時間および休憩)

1)パートタイマーの労働時間は1日6時間以内とする。始業および終業の時刻並びに休憩時間は次の通りとし、各人別に定める。ただし、パートタイマーの都合により以下の労働時間により難い場合は、個別の労働契約で定める。

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2)前項にかかわらず、業務の都合その他、やむを得ない事情により始業および終業の時刻並びに休憩時間を変更することがある。ただし、1日の労働時間は6時間を超えないようにする。

第13条(休憩時間の自由)

パートタイマーは、休憩時間を自由に使用することができる。

第14条(出勤、退社)

1)パートタイマーは、始業時刻に所定の方法に従ってその時刻を記録しなければならない。

2)退社は終業時刻に自己の管理する物品を整理整頓した後、所定の方法に従ってその時刻を記録しなければならない。

第15条(遅刻、早退、欠勤)

1)パートタイマーは、遅刻、早退、欠勤しようとするときは、その前日までに所属長の承認を受けなければならない。ただし、やむを得ない事由により事前に所属長の承認を得ることが困難な場合は、当日の始業時刻までに電話などにより連絡し、出勤後に速やかに承認を得なければならない。

2)私傷病による欠勤が連続して3日を超える場合、会社はパートタイマーに医師の診断書などの提出を求めることがある。

第16条(私用外出)

勤務時間中に私用による外出を希望するパートタイマーは、あらかじめ所属長の承認を得なければならない。

第17条(公民の権利)

パートタイマーが、選挙権の行使や裁判員としての職権行使その他、公民としての権利を行使するために必要な時間を請求するときは、会社は公民権行使に必要な時間を与えるものとする。ただし、業務上の理由により、権利の行使を妨げない限度においてパートタイマーが請求した時間を変更することがある。

第18条(年次有給休暇)

1)会社は、6カ月以上継続勤務し、所定労働日の80%以上出勤したパートタイマーに対して、次の表の通り勤続期間に応じた日数の年次有給休暇を付与する。この休暇期間中については、所定労働時間を労働した場合に支払われる通常の賃金を支払う。

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2)年次有給休暇を付与する基準日は、入社日から起算して6カ月が経過した日から1年ごとに区分した各期間(最後に1年未満の期間を生じたときは、当該期間)の初日とする。

3)年次有給休暇を請求するパートタイマーは、原則として3日前までに所属長に、別に定める「年次有給休暇の取得願」(省略)を提出しなければならない。

4)年次有給休暇は、原則としてパートタイマーが指定した時季に付与する。ただし、事業の正常な運営に支障があるときは、会社はパートタイマーの指定した時季を変更することがある。

5)会社は、労働基準法第39条第7項に基づき、第1項の付与日数が10日以上のパートタイマーに対して、時季を指定して年次有給休暇を付与することがある。

6)第1項の出勤率の算定に当たっては、年次有給休暇を取得した期間、産前産後の休業期間、育児休業期間、介護休業期間および業務上の傷病による休業期間は出勤したものとして取り扱う。ただし、育児休業および介護休業については、パートタイマーがこれを取得する権利を有し、現に取得した場合に限る。

7)年次有給休暇は、権利発生から2年の間において取得することができる。

第19条(休日)

1)休日は次の各号に定める通りとする。

  1. シフトで定める休日
  2. 国民の祝日
  3. 会社創立記念日(○月○日)
  4. 年末年始(原則として12月30日から1月3日までの5日間)
  5. その他、会社が指定する日

2)休日は1週間を通じ、1日を下回ることはない。

第20条(時間外労働、休日労働、深夜労働)

1)会社は、原則としてパートタイマーに時間外労働、休日労働、深夜労働(午後10時から午前5時までの間の労働。以降、同じ)を命じることはない。ただし、業務上必要がある場合は、時間外労働、休日労働、深夜労働を命じる場合がある。

2)法定労働時間を超える時間外労働および休日労働は、従業員の過半数を代表する者との労使協定の範囲とする。

3)第2項に定める時間外労働および休日労働は、労働基準法およびその他の関係法令における時間外労働および休日労働の上限を超えることはない。

第21条(災害など非常時の特別措置)

火災・地震・暴風雨・洪水、設備の爆発などの事故、感染症の流行その他避けることのできない事由により臨時の労働の必要がある場合は、会社は第20条にかかわらず労働基準監督署の許可を受けて、妊娠中および産後1年を経過しない女性パートタイマー(以下「妊産婦」)を除く全てのパートタイマーに時間外労働、休日労働、深夜労働を命じることがある。

第22条(産前産後の休業)

1)6週間(多胎妊娠の場合は14週間)以内に出産する予定の女性パートタイマーから請求があったときは、産前休暇を与える。

2)産後8週間を経過しない女性パートタイマーは就業させない。ただし、産後6週間を経過した女性パートタイマーが請求した場合において、当該女性パートタイマーについて医師が支障ないと認めた業務に就かせることができる。

3)前各項の休業期間は無給とする。

4)妊娠中の女性パートタイマーが請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させる。ただし、業務に適する軽易な業務がないときには請求しても応じないことがある。

第23条(母性健康管理のための時間内通院)

1)妊産婦が母子保健法に定める健康診査または保健指導を受けるために請求した場合、会社は次の各号に定める範囲において母性健康管理のため、時間内通院を認める。

  1. 妊娠23週までは4週間に1回
  2. 妊娠24週から35週までは2週間に1回
  3. 妊娠36週以後出産までは1週間に1回
  4. 医師または助産師が、前各号と異なる指示をしたときは、その指示により必要な時間

2)母性健康管理のため勤務していない時間は無給とする。

第24条(通勤緩和)

1)妊産婦が通勤による心身の負担を軽減するために請求した場合、会社は出社時および退社時について、各々30分の遅出および早退を認める。

2)通勤緩和の時間は無給とする。

第25条(疲労回復のための休憩)

1)妊産婦が業務による疲労回復のために請求した場合、会社は第12条第1項の他に適宜休憩をとることを認める。

2)業務による疲労回復のための休憩は無給とする。

第26条(医師などの指導による措置)

1)妊産婦が医師などから勤務状態が健康に支障を及ぼすとの指導を受けた場合であって、妊産婦より申し出があった場合は、会社は当該妊産婦の意見を聴いた上で、次の各号に定める措置を講じる。

  1. 担当業務の変更
  2. 心身の負担が小さいと会社が認める業務への転換
  3. 所定労働時間の短縮
  4. 休業

2)前項第4号の休業は無給とする。

3)所定労働時間の短縮の適用を受ける期間については、第5章の定めに基づく基本給を時間換算した額を基礎とした実労働時間分の基本給を支給する。

第27条(育児時間)

1)生後満1年に満たない生児を育てる女性パートタイマーは、あらかじめ所属長に申し出て、勤務時間中に1日について2回、1回につき少なくとも30分の育児時間を受けることができる。

2)前項にかかわらず、1日の労働時間が4時間以内のパートタイマーは、1日について1回の育児時間とする。

3)育児時間は無給とする。

第28条(生理日の休暇)

1)生理日の就業が著しく困難な女性パートタイマーから請求があったときは、必要な期間の生理日の休暇を与える。

2)生理日の休暇は無給とする。

第29条(育児休業および介護休業)

会社は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」に基づき、育児休業および介護休業、その他の両立支援策を講じる。育児休業および介護休業、その他の両立支援策については、別途定める「育児休業等に関する規程」(省略)および「介護休業等に関する規程」(省略)によるものとする。

第30条(特別休暇)

1)家族の慶弔など、特別の事情が生じた場合は、パートタイマーの請求により会社が認める日数の慶弔休暇を与えることがある。

2)特別休暇は無給とする。

第5章 賃金、賞与、退職金

第31条(賃金体系および賃金形態)

1)賃金は基本給、通勤手当および割増賃金とする。

  • 基本給パートタイマーの経験や職務内容などを総合的に考慮し、労働契約において決定するものとする。
  • 通勤手当最短かつ最適な通勤経路が片道1キロメートル以上のパートタイマーに対して、本人の申請により実費を支払う。ただし、月額1万円を上限とする。
  • 割増賃金a.法定労働時間を超える労働に対し、基本給(時給)の25%を加算して支払う。b.法定休日の労働に対し、基本給(時給)の35%を加算して支払う。c.深夜労働に対し、基本給(時給)の25%を加算して支払う。

2)賃金の形態は時給制とする。

第32条(賃金の計算期間、支払日)

賃金の計算期間は、前月1日より前月末日までとし、当月△△日に支払う。ただし、支払日が休日に当たるときは、その前日に支払う。

第33条(休業手当)

会社の責に帰すべき事由によりパートタイマーが休業した場合、休業1日につき労働基準法に基づき算出した平均賃金の60%を支払う。

第34条(不就労時の取り扱い)

パートタイマーが早退、遅刻などにより、所定労働時間の全部または一部を休業した場合は、その時間に相当する基本給は支払わない。

第35条(賃金の支払方法)

賃金はパートタイマーに対して、直接、通貨をもって支払う。ただし、パートタイマーが希望した場合は、当該パートタイマーが指定する金融機関口座への振り込みにより賃金を支払うことができる。

第36条(賃金の控除)

賃金支払いの際、次の各号に定めるものは控除することができる。

  • 源泉所得税
  • 住民税
  • 社会・労働保険の被保険者負担分の保険料
  • 従業員の過半数を代表する者との書面により協定されたもの

第37条(臨時および非常時払い)

会社は次の各号に該当する場合、第32条にかかわらず既往の労働に対する賃金を支払う。

  • パートタイマーが死亡または退職した場合において、本人または遺族の請求があったときは、7日以内に既往の労働に対する賃金を支払う。パートタイマーの遺族の範囲は労働基準法施行規則第42条から第45条によるものとする
  • パートタイマーまたはパートタイマーの収入により生計を維持する者から出産、疾病、災害、その他非常の場合の費用に充当するために請求があったときは、既往の労働に対する賃金を支払う

第38条(昇給)

昇給は会社の業績および本人の技能、勤務成績、勤務態度等を勘案の上、原則として労働契約の更新時に行うものとする。なお、昇給を行わない場合もある。

第39条(昇給の対象者)

昇給は、入社から3カ月以上勤務しているパートタイマーを対象とする。

第40条(賞与)

賞与の支給については、パートタイマーの経験や職務内容などを総合的に考慮し、労働契約において決定する。

第41条(退職金)

退職金の支給については、パートタイマーの経験や職務内容などを総合的に考慮し、労働契約において決定する。

第6章 退職、解雇

第42条(雇い止め)

労働契約の期間が満了し、これを更新しないこととなったときは、会社は少なくとも期間満了の30日前までにパートタイマーに雇い止めの予告をする。パートタイマーが雇い止めの理由に関する証明書の交付を請求した場合は、会社は雇い止めの予告の前後を問わず、遅滞なくこれを交付するものとする。

第43条(退職)

1)パートタイマーが次の各号のいずれかに該当する場合は、次の各号に定める日を退職の日とする。

  • 契約期間が満了したとき:契約期間の満了日
  • 死亡したとき:死亡した日
  • パートタイマーが自己の都合により退職を申し出て、会社がこれを承認したとき:会社が退職日として承認した日
  • パートタイマーが届け出および連絡なく欠勤を続け、その欠勤期間が1カ月を超え、所在が不明のとき:欠勤期間が1カ月を経過した日
  • 第64条の規定により無期労働契約に転換したパートタイマーが定年に達したとき:定年に達した日の属する月の末日

2)自己の都合により退職を申し出るパートタイマーは、退職希望日の14日前までに、総務部に別途定める「退職願」(省略)を提出しなければならない。会社の承認を受けるまでの間、パートタイマーは従前の業務に従事しなければならない。

第44条(普通解雇)

会社は、パートタイマーが次の各号のいずれかに該当した場合に解雇することがある。

  • 勤務成績または業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、他の職務にも転換できないなど、就業に適さないと認められたとき
  • 勤務状況が著しく不良で、改善の見込みがなく、パートタイマーとしての職責を果たし得ないと認められたとき
  • 業務上の負傷または疾病による療養の開始後3年を経過した日において、パートタイマーが労働者災害補償保険法に基づく傷病補償年金を受けているとき、または受けることとなったとき(労働基準法に基づく打切補償を支払った場合または労働者災害補償保険法に基づく打切補償を支払ったとみなされる場合を含む)
  • 精神または身体の障害については、適正な雇用管理を行い、雇用の継続に配慮してもなおその障害により業務に耐えられないと認められたとき
  • 事業の運営上のやむを得ない事情または天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の継続が困難となったとき
  • 事業の運営上のやむを得ない事情または天災事変その他これに準ずるやむを得ない事情により、事業の縮小・転換または部門の閉鎖などを行う必要が生じ、他の職務に転換させることが困難なとき
  • 試用期間における作業能率または勤務態度が著しく不良でパートタイマーとして不適格であると判断されたとき
  • その他、前各号に準ずるやむを得ない事由があるとき

第45条(解雇予告)

パートタイマーを解雇する場合、会社は労働基準法に基づき30日前に予告をするか、または予告に代えて平均賃金の30日分以上の解雇予告手当を支払う。ただし、労働基準監督署長の認定を受けた場合、および次の各号のいずれかに該当するパートタイマーを解雇する場合はこの限りではない。

  • 日雇いのパートタイマー。ただし、1カ月を超えて引き続き雇用されるパートタイマーを除く
  • 2カ月以内の期間を定めて使用するパートタイマー。ただし、その期間を超えて引き続き雇用されるパートタイマーを除く
  • 試用期間中のパートタイマー。ただし、14日を超えて引き続き雇用されるパートタイマーを除く

第46条(解雇理由の証明書)

会社は、解雇するパートタイマーから請求があった場合は、解雇の理由を記載した証明書を交付する。

第47条(解雇の制限)

会社は、次の各号に定める期間中はパートタイマーを解雇しない。ただし、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合で労働基準監督署長の認定を受けた場合は除く。

  • 業務上の負傷または疾病により欠勤する期間、およびその後30日間。ただし、業務上の負傷または疾病による療養の開始から3年を経過しても傷病が治癒せず、労働基準法に基づく打切補償を支払った場合または労働者災害補償保険法に基づく打切補償を支払ったとみなされる場合はこの限りではない
  • 産前産後の休業期間およびその後30日間

第48条(退職または解雇時の義務)

1)退職または解雇されたパートタイマーは、会社の指示する期間内に速やかに後任者に業務の引き継ぎを行わなければならない。

2)退職または解雇されたパートタイマーは、身分証明書、社員記章など会社からの貸与品を直ちに返納しなければならない。また、会社に債務のあるときは退職または解雇の日までに完済しなければならない。

3)退職または解雇されたパートタイマーは、退職または解雇の日以後、在職中に知り得た業務上の機密事項を他に漏らしてはならない。

第7章 賞罰

第49条(表彰)

パートタイマーが次の各号のいずれかに該当する場合は、会社はその都度審査の上で表彰することがある。表彰は賞状の他、賞品または賞金を授与して行う。

  • 業務上有益な創意工夫、改善を行い、会社の業績に貢献したとき
  • 品行方正で業務熱心であり、従業員の模範とするに足りるとき
  • 事故や災害などを未然に防止し、または非常事態に際し適切に対応し、被害を最小限にとどめるなどの功労が顕著であったとき
  • 社会的な功績があり、会社および従業員の名誉となったとき
  • その他、表彰に値する善行または功績があると会社が判断したとき

第50条(懲戒の種類)

懲戒はその情状により、次の各号の区分に従って行う。

  • けん責始末書を提出させ、将来を戒める。
  • 減給始末書を提出させ、減給する。減給は1回の額が平均賃金の1日分の50%を超えることはなく、また減給の総額が第32条に定める一つの賃金の計算期間における賃金総額の10%を超えることはない。
  • 出勤停止始末書を提出させ、出勤停止を命ずる。出勤停止は7日間を限度とし、その間は無給とする。
  • 降格始末書を提出させ、降格する。
  • 諭旨解雇退職願の提出を勧告する。ただし、応じない場合は懲戒解雇に処する。
  • 懲戒解雇即時に解雇する。

第51条(懲戒の事由)

会社は、パートタイマーが次の各号のいずれかに該当する場合は、その程度に応じて、けん責、減給、出勤停止、降格、諭旨解雇に処する。

  • 就業規則、社内規程、通達に違反したとき
  • 正当な理由なく、無断で欠勤、遅刻、早退を繰り返したとき
  • 正当な理由なく、しばしば業務上の指示・命令に従わなかったとき
  • 正当な理由なく、無断でしばしば職場を離れたとき
  • 職務、勤務に関する諸手続きを怠り、または不正に偽ったとき
  • 素行不良で、会社内の秩序または風紀を乱したとき
  • 会社を誹謗(ひぼう)中傷し、または虚偽の風説を流布・宣伝したとき
  • 会社に所属する個人の名誉・信用を傷つけたとき
  • 性的な言動によって他人に不快な思いをさせたり、職場の環境を悪化させたりしたとき。または、性的な関心を示したり、性的な行為をしかけたりして、他の従業員の業務に支障を与えたとき
  • 妊娠・出産・育児に関する不適切な言動により、他人に精神的・身体的な苦痛を与えたり、また他の従業員に不利益を与えたりして、就業環境を害したとき
  • 職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景とした不適切な言動により、他人に精神的・身体的な苦痛を与えたり、また他の従業員に不利益を与えたりして、就業環境を害したとき
  • 業務上知り得た機密を、不正に第三者に開示または漏洩もしくは自らのために利用したとき
  • 重要な経歴を詐称して雇用されたとき
  • その他、前各号に準ずる程度の不都合な行為があったと会社が判断したとき

第52条(懲戒解雇)

1)会社は、パートタイマーが次の各号のいずれかに該当する場合は懲戒解雇に処する。ただし、平素の服務態度その他情状によっては、諭旨解雇または降格にとどめることがある。

  • 重要な経歴を詐称して雇用されたとき
  • 正当な理由なく無断欠勤が14日以上に及び、出勤の督促に応じなかったとき
  • 正当な理由なく無断で遅刻、早退または欠勤を繰り返し、再三にわたって注意を受けても改めなかったとき
  • 故意または重大な過失により、会社に重大な損害を与えたとき
  • 会社内において刑法その他刑罰法規の各規程に違反する行為をし、その犯罪事実が明らかとなったとき
  • 素行不良で、著しく会社内の秩序または風紀を乱したとき
  • 数回にわたり懲戒を受けたにもかかわらず、なお、勤務態度などに関し、改善の見込みがないと認められたとき
  • 相手方の望まない性的言動により、円滑な職務遂行を妨げ、就業環境を悪化させ、またはその性的言動に対する相手方の対応によって、一定の不利益を与えるような行為をしたとき
  • 職務上の立場を利用して交際や性的な関係を強要したとき
  • 許可なく職務以外の目的で会社の施設、物品などを使用し、会社に損害を与えたとき
  • 会社における職務上の地位を利用して私利を図り、または取引先などより不当な金品を受け、もしくは求め、または供応を受けたとき
  • 私生活上の非違行為や会社に対する誹謗中傷などによって会社の名誉・信用を傷つけ、業務に重大な悪影響を及ぼすような行為があったとき
  • 会社の業務上重要な機密を外部に漏洩して会社に損害を与え、または業務の正常な運営を阻害したとき
  • 酒気帯び、あるいは酒酔いの状態で自動車を運転したとき
  • 特定個人情報等を不正に取得、利用、提供したとき
  • 非違行為に対し、再三の注意、指導を受けたにもかかわらず、なお改悛(かいしゅん)の見込みがないとき
  • 前条に準ずる行為において、その情状等に悪質性があると判断される場合
  • その他、前各号に準ずる程度の不都合な行為があったと会社が判断したとき

2)会社は、諭旨解雇または懲戒解雇事由に該当し、実際に諭旨解雇または懲戒解雇になるおそれがあるパートタイマーに対し、原則として事前に弁明の機会を与える。

第8章 安全衛生

第53条(安全衛生の遵守事項)

会社は、パートタイマーの安全衛生の確保および改善を図り、快適な職場の形成のため必要な措置を講ずる。職場の安全衛生については、別途定める「安全衛生管理規程」(省略)によるものとする。

第54条(就業禁止)

1)会社は、次の各号のいずれかに該当するパートタイマーの就業を禁止する。

  • 病毒伝ぱのおそれのある伝染病の疾病に罹患した者
  • 心臓、腎臓、肺などの疾病で労働のため病勢が著しく増悪するおそれがある疾病に罹患した者
  • 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものおよび感染症法等で定める疾病に罹患した者

2)会社は、前項の定めにより就業を禁止しようとするときは、あらかじめ、会社が指定する医師の意見を聴くものとする。また、パートタイマーは、第1項に該当するおそれがあるときは、直ちに会社に届け出なければならない。

3)第1項の定めにより就業を禁止された期間は、無給とする。

第55条(健康診断)

1)会社は、常時雇用されるパートタイマーであって、週所定労働時間が一般の従業員の4分の3以上である者に対し、入社時および毎年1回定期的に健康診断を行う。

2)会社は、前項の健康診断の結果を本人に速やかに通知する。結果に異常の所見があり、会社が必要と認めるときは、就業の禁止、配置の転換、その他必要な措置を命ずることがある。

第56条(医師による面接指導の実施)

1)会社は、第20条の時間外労働および休日労働の合計が1カ月当たり80時間を超えたパートタイマーから申し出があった場合には、医師の面接指導を受けさせるものとする。

2)前項の他、労働安全衛生法およびその他の関係法令において必要とされる場合、医師が必要と認めた場合、会社が必要と判断した場合等において、面接指導を実施することがある。

第9章 災害補償

第57条(災害補償)

パートタイマーが業務上の事由または通勤途中に負傷し、疾病にかかり、または死亡した場合の災害補償や保険給付については、別途定める「災害補償規程」(省略)によるものとする。

第10章 個人情報の取り扱い

第58条(パートタイマー個人情報の取り扱い)

1)会社は、適正な雇用管理を行うために必要な範囲において、パートタイマーおよびその家族から適正な方法で入手した情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。以下「パートタイマー個人情報」)を利用し、または法令の範囲内において第三者に開示する。

2)前項にかかわらず、特定個人情報等の取り扱いは、別途定める「マイナンバー(特定個人情報)取扱規程」(省略)によるものとする。

第59条(パートタイマー個人情報の管理責任者)

パートタイマー個人情報の管理責任者は総務部長とする。

第60条(パートタイマー個人情報の開示請求)

1)パートタイマーは、会社に対して自らのパートタイマー個人情報の開示を求めることができる。

2)会社は、パートタイマーからパートタイマー個人情報の開示を求められたときは、速やかにこれを開示する。ただし、次の各号のいずれかに該当する場合は、パートタイマー個人情報の全部または一部の開示を拒否することができる。

  • 法令に違反することとなる場合
  • 本人または第三者の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合
  • 雇用管理に重大な支障を来すおそれがある場合

3)パートタイマー個人情報が開示された結果、当該パートタイマー個人情報に誤りがあることが判明した場合、会社は当該パートタイマーに通知し、同意を得た上でパートタイマー個人情報を修正する。

第61条(パートタイマーが退職などをした際のパートタイマー個人情報の取り扱い)

退職などの事由により、会社とパートタイマーの雇用関係が消滅した場合、会社は法令で定められている期間において、当該パートタイマーのパートタイマー個人情報を管理し、その後は検証可能な方法による完全な廃棄処分を行う。

第62条(顧客個人情報の取り扱い)

1)会社が保有するパートタイマー個人情報以外の情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述などにより、特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)を「顧客個人情報」という。

2)パートタイマーは、別途定める「個人情報保護規程」(省略)を遵守して、適切に顧客個人情報を利用しなければならない。

第11章 一般の従業員への転換など

第63条(一般の従業員への転換)

1)1年以上勤続し、一般の従業員への転換を希望するパートタイマーについては、次の各号の要件を満たす場合、一般の従業員として採用し、労働契約を締結するものとする。

  • 1日8時間、1週40時間の勤務ができること
  • 筆記試験および面接試験に合格すること
  • 所属長の推薦があること

2)第18条で定める年次有給休暇の付与日数の算定において、パートタイマーとしての勤続年数を通算する。

3)一般の従業員に転換する場合の転換時期は、毎年○月○日とする。

第64条(無期労働契約への転換)

1)通算契約期間が5年を超えるパートタイマーは、別途定める「無期労働契約転換申込書」で申し込むことにより、現在締結している有期労働契約の契約期間の末日の翌日から、無期パートタイマーでの雇用に転換することができる。

2)前項の無期転換の申し込みは、原則として、現在の労働契約期間が満了する1カ月前までに行うものとする。

3)第1項の通算契約期間は、2013年4月1日以降に開始した有期労働契約の契約期間を通算するものとし、現在締結している有期労働契約については、その末日までの期間とする。ただし、労働契約が締結されていない期間が連続して6カ月以上あるパートタイマーについては、それ以前の契約期間は通算契約期間に含めない。なお、労働契約が締結されていない期間以前の通算契約期間が1年未満の場合に当該契約期間の通算の可否については、労働契約法およびその他の関係法令に従うものとする。

4)この規則に定める労働条件は、第1項の規定により期間の定めのない労働契約での雇用に転換した後も引き続き適用する。

5)無期労働契約へ転換したパートタイマーに係る定年は、満60歳とする。ただし、満60歳を超えて無期労働契約へ転換したパートタイマーの定年は満65歳とする。

6)無期労働契約へ転換したパートタイマーで定年を迎えた者が希望し、解雇事由または退職事由に該当しないときは、会社が別途定める「労働条件」(省略)により満65歳まで継続雇用する。なお、前項ただし書きのパートタイマーに対する定年後の継続雇用については、都度決定をする。

第12章 雑則

第65条(福利厚生)

パートタイマーは、一般の従業員と同様に福利厚生施設を利用することができる。

第66条(教育訓練)

会社は、職務遂行に必要な能力を付与・向上させるための教育訓練について、一般の従業員と同様にパートタイマーにも実施する。

第67条(損害賠償)

パートタイマーが故意または過失によって会社に損害を与えた場合、会社はその全部または一部の賠償を求めることがある。パートタイマーの退職後に、その者の行為が故意または過失によって会社に与えた損害の原因であると判明した場合も、その損害の全部または一部の賠償を求めることがある。

第68条(改廃)

本規則の改廃は、取締役会において行うものとする。

附則

本規則は、○年○月○日より実施する。

■無期労働契約転換申込書■

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以上(2025年3月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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