現タカラトミーの創業者・富山栄市郎氏。逆境のおもちゃ会社が100年企業となった理由が分かる一言とは?

市場は変わるぞ。次の一手が大事だぞ。ヒットのあとには必ず停滞がやってくる。気を引き締めろ

富山栄市郎(とみやまえいいちろう)氏は、今から100年前の1924年に、21歳の若さで富山玩具製作所(現タカラトミー)を創業し、おもちゃ業界全体の発展に貢献した人物です。少年時代からおもちゃを作る玩具製作所で働いていた富山氏は、そこでモノ作りの楽しさを知り、いつか自分の手でおもちゃを作りたいと考えるようになります。そうして立ち上げたのが富山玩具製作所です。富山氏は斬新なおもちゃを次々に生み出し、おもちゃ業界をけん引していきますが、事業を支えたのはその発想力だけではありませんでした。

冒頭の言葉は、戦後に富山玩具製作所が富山商事と名を改め、「スカイピンポン」というおもちゃを売り出した頃、富山氏が社員たちに言い聞かせた言葉です。スカイピンポンは、ラケットの中にあるバネを使ってピンポン球のキャッチボールを楽しめるプラスチック製のおもちゃです。ブリキ人形などの金属製のおもちゃが主流だった時代に、プラスチック製のおもちゃを作るという発想は斬新で、スカイピンポンはたちまち人気になります。しかし、富山氏はその人気に甘んじることを良しとしませんでした。彼はそれまでの経験から、1つの成功が長くは続かないことを知っていたからです。

富山玩具製作所を立ち上げて間もない頃、富山氏は外国の飛行機をモデルにおもちゃを作り注目を集めますが、やがて昭和恐慌、さらには第二次世界対戦が始まり、おもちゃ作り自体を続けることが難しくなります。戦後、やっとの思いで事業を再開した際も、戦闘機のおもちゃで子どもたちの心をつかみ会社を立て直しますが、工場の火災や戦闘機ブームの停滞などで再び窮地に立たされます。何度も辛酸をなめ、時には人員整理という苦渋の決断を迫られてきた富山氏は、もう同じことを繰り返すまいと心に誓っていたのです。

富山氏は、スカイピンポンと並行して、目玉商品となる別のおもちゃ作りに取り組みます。それは、家の中でプラスチック製のレールをつなぎ合わせ、電車を走らせて遊ぶ「プラレール」。現代でもなお、子どもたちから愛されているおもちゃです。スカイピンポンでプラスチック製のおもちゃの存在を世に知らしめて市場を変え、そこに別のおもちゃを投入する。このように、成功を収めても油断せず「次の一手」を打ち続けることで、富山氏は会社を大きくしていったのです。

会社経営は、よくマラソンに例えられます。事業目標は、マラソンの途中にある道標(みちしるべ)であり、何か大きな成功を収めて目標を達成すれば、「道標を通過した」ということができます。ただ、それはゴールではありません。経営者が夢を見続ける限り、マラソンは続きます。一時の成功を喜ぶのはいいですが、そこに満足して足を止めてしまったら、それ以上先には行けません。大切なのは、足を動かし続けること。それが成功の後に繰り出す「次の一手」なのです。

出典:「社史『軌跡~夢をカタチに~』」(タカラトミーウェブサイト)

以上(2024年3月作成)

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画像:BillionPhotos.com–Adobe Stock

【社長のモノサシ】 退職したい社員を引き止める? 引き止めない?

書いてあること

  • 主な読者:退職を申し出た社員を引き止める社長、引き止めない社長
  • 課題:自分なりの引き止め策は講じているけれど、別の考え方もあれば聞いてみたい
  • 解決策:他の社長の考え方も参考にしつつ、自身の取り組みもバージョンアップする

1 【提案】社長のモノサシをバージョンアップしよう!

会社にはさまざまなルールがありますが、ある意味それらのルールの在り方を決定づけているのが「社長のモノサシ」です。社長のモノサシとは、

会社経営における社長の価値観や行動基準

であり、日々の判断はこのモノサシを基準に行われます。

さて、社員から退職の申し出があったら、皆さんはこれを引き止めるでしょうか? ケースバイケースといえばそれまでですが、根本には「縁があるのだから引き止める」「去る者は追わない」など、社長の考え方があるはずです。そして、これこそが社長のモノサシです。

社長である筆者も、「社長、ちょっといいですか?」と社員から退職の申し出を受けたことが何度もあります。引き止めるか否かは相手次第でしたが、実際に次のような経験をしました。

  • 頼りにしていた幹部から退職の申し出があったときは、本気で引き止めをはかり、1年間かけて話し合ったが、結局、辞めてしまった
  • かねてから問題を感じていた社員から退職の申し出があったときは、正直ほっとして、すぐに退職の手続きに入った

人手不足で売り手市場の昨今、社員の退職がますます増えていくことは覚悟しなければなりません。そうした事態に備えるためにも、他の社長が社員の退職をどのように考えているか気になりませんか?

この記事では、当社が292人の社長に行ったアンケート結果を紹介していきますので、参考にしてください。ちなみに、

社員の退職をうまく思いとどまらせた経験のある社長は40.1%

です。また、こちらに悪気がなくても、社員への引き止めが「ハラスメント」と言われてしまうこともあります。昔のような考えで引き止めるのでは通用しないケースもあり、社長のモノサシのバージョンアップが必要な時代になったようです。

2 社員が退職の申し出をしてきたら引き止めるか?

まずは、社員が退職の申し出をしてきたときに引き止めるか否かですが、社長の回答は次の通りでした。

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注目したいポイントは、引き止めるか否かが明確に決まっているのは54.2%で、状況によるという回答が45.9%もあることです(四捨五入などの関係で、合計で100.1%となります)。日々が決断の連続である社長を対象にしたアンケートの割に、明確な回答が少ない印象です。裏を返せば、それだけ社員の退職に関する問題は難しいものなのでしょう。

3 社員の退職を引き止める理由は?

社員の退職を「引き止める」と回答した社長に、その理由を聞いてみたところ、次のような結果になりました。

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こちらは、「大切な自社の社員だから(縁ができたから)」という回答が75.6%と最も多く、次いで「人材不足だから」の57.0%が続きます。小さな会社の場合は特に社長と社員の距離感が近いため「縁」を感じやすく、こうした結果になっているのでしょう。

ただし、「5 どのような社員なら引き止める?」の章で紹介しますが、いかに「縁」があるとはいえ、全ての社員が引き止める対象になるわけではありません。

4 社員の退職を引き止めない理由は?

逆に社員の退職を「引き止めない」と回答した社長に、その理由を聞いてみたところ、次のような結果になりました。

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こちらは上位が拮抗していて、「去る者は追わない主義だから」の58.3%が最も多く、「社員の意思を尊重したいから」の56.9%が続きます。筆者のまわりにも、「一切、引き止めない」という社長は少なくなく、社長の価値観が顕著に表れるところです。

5 どのような社員なら引き止める?

次に、どのような社員なら引き止めるのかについて聞いてみました。この結果はほぼ皆さんの予想通りの結果になっているのではないでしょうか。

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最も多い回答は「社員の能力が高ければ引き止める」の76.1%で、「社員の人柄が良ければ引き止める」の53.7%、「社員の仕事が専門的ならば引き止める」の50.7%が続きます。いかに「縁」があったとはいえ、どのような社員でも引き止めるわけではなく、このあたりはシビアに状況を判断していることが分かります。

転職支援を生業とする会社のウェブサイトには、「(転職者に対して)ほぼ間違いなく退職を止められるので注意」などと書かれていることがありますが、これは極端すぎる意見で、実際は相手(社員)次第です。

また、そうしたウェブサイトには「会社から退職を引き止められたときの対処法(断り方)」として、「とにかく退職届を出すこと」「とにかく退職の強い意思を伝える」などと紹介されています。こうした情報を参考にしている社員は、態度がかたくななのですぐに分かります。こちらは対話をしたいだけで他意がなくても、そうした社員を引き止めると、「辞めさせてくれない」とトラブルになる恐れがあるので注意しましょう。

6 社員の引き止めは成功した?

最後に、社員の引き止めが成功したかを聞いてみました。その結果は次の通りです。

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引き止めに成功した社長は40.1%と半数以下となっています。一度退職を決めた社員を引き止めることは簡単ではないことが分かります。筆者の経験からもハッキリと言えるのは、退職の申し出を受けた時点で未来はほぼ決まっていて、それを覆すことは相当に難しいということです。

7 他の社長はどうやって引き止めている?

アンケートでは、どのようにして社員の引き止めに成功したかについても聞いてみました。すると、

賃金など条件面の改善

を行ったケースが最も多く、次いで多かったのが、

該当社員とのコミュニケーションを密にする

というものでした。意外とドライだなと感じますが、社員に退職を思いとどまらせるには、条件面の改善など分かりやすい形が必要なようです。一方、社員の引き止めに失敗した理由には、

夢を語り過ぎた

というものもありました。年功序列や終身雇用が維持されていた頃と比較して、日本企業の労使関係は大きく変わっています。「縁」や「情」だけでは解決できない問題も多く、ここは社長のモノサシのバージョンアップも必要なのでしょう。

以上(2024年5月作成)

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画像:健二 中村-Adobe Stock

【社員が求める福利厚生】「人間ドック」で健康な会社に! 経費で処理すれば負担も軽減

書いてあること

  • 主な読者:社員に健康で長く働いてもらいたい経営者
  • 課題:社員の高齢化が進むと生活習慣病などのリスクが高まってくる
  • 解決策:福利厚生として会社の負担を抑えつつ、社員に人間ドックの受診を励行して健康経営を進める。SDGsにもつながる

1 実はニーズが高い「人間ドック受診の補助」

社員の高齢化が進むと、加齢によって

生活習慣病(脂質異常症(高脂血症)、高血圧症、糖尿病など)予備軍も増加

します。生活習慣病を放っておくとさまざまな問題が起こるため、会社としても放っておけません。そこで提案するのが「人間ドック」の受診です。人間ドックには、

  • 定期健康診断などよりも検査項目が多く、自覚症状のない病気なども早期発見できる可能性がある
  • 脳疾患や心臓疾患、性別に特有のがん、など分野を絞って受診することもできる

といった特徴があります。

実は、社員の人間ドック受診へのニーズは高く、過去に労働政策研究・研修機構が、会社員8298人の「自分にとって特に必要性が高い福利厚生」を調査した際も、「人間ドック受診の補助」が第1位(21.8%)になっています(労働政策研究・研修機構「企業における福利厚生施策の実態に関する調査(2020年7月)」)。

ただ、人間ドックは高額で、日帰りで3万円から7万円程度、1泊2日で4万円から10万円程度となります(地域や医療機関によって異なります)。また、原則として医療費控除の対象にもなりません。だからこそ、人間ドックの受診費用を会社が補助してあげれば、社員の健康維持、モチベーションアップを同時に実現することができるのです。

この記事では、社員に健康で長く働いてもらいたいと考える経営者向けに、法定外の福利厚生制度として「人間ドック受診の補助」を行う際のポイントを解説します。

2 人間ドックの受診費用を経費で処理するためには

人間ドック受診の補助に関して、一定の要件を満たす場合には、福利厚生費(経費)として処理して差し支えないものと考えられます。ただし、税務署から指摘された場合には、会社は損金にできませんし、社員も給与等として所得税が課税されますので、実際に行う場合は、税理士などの専門家へよくご相談されてください。

なお、一定の要件を満たした上で、きちんと取り組みがされていることを証明するために、人間ドックの受診について就業規則に定め、また実際に人間ドックの受診をする際は社員が希望するか否かを聞いて、その結果も残しておくことをお薦めします。

1)全社員に受診機会があること

全社員が受診できるようにしておく必要があります。よく役員だけが人間ドックを受診しているケースがありますが、これだと福利厚生費とはなりません。

一方、健康管理の必要性から「一定年齢以上の希望者」を対象とすることはできます。例えば、全社員に健康診断を実施した上で、生活習慣病予防のため、年齢35歳以上の希望者全員の2日間の人間ドックによる受診費用の一部を負担するといった具合です。

2)人間ドックの費用は、実費費用の範囲内で会社が負担すること

人間ドックの受診費用は、実費費用の範囲内で会社が負担する必要があります。なお、社員の請求に基づいて会社が社員に受診費用を支払う場合でも、会社が当該受診費用を負担したことに変わりはないものと考えられます。その場合は、領収書を保管し、実費費用の範囲内であることが確認できるようにしておきましょう。実際の受診費用を超えて補助を行うと、福利厚生費として認められませんので注意が必要です。

3)常識範囲内の金額であること

社員が受ける経済的利益が著しく多額である場合は、原則として、福利厚生費として認められません。なお、国税庁の質疑応答事例にある「一般的に実施されている人間ドック程度の健康診断の実施が義務付けられている」との記載から、前述した人間ドック1泊2日の場合の費用(4万円から10万円)程度であれば、許容範囲であると考えられます。

■国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」■

https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/gensen/03/03.htm

3 人間ドックでの検査の特徴―時短・お手軽な検査も登場

1)自覚症状のない病気なども早期発見できる可能性がある

労働安全衛生法により実施が義務付けられている健康診断(定期健康診断)では、社員が受診すべき法定項目が決められています。人間ドックの検査項目は定期健康診断などの法定項目よりも多く、自覚症状のない病気なども早期発見できる可能性があります。

日本人間ドック学会が公表している「人間ドック(1日)の基本検査項目」と「定期健康診断の法定項目」を比較すると次のようになります。

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2)分野を絞って受診することもできる

脳疾患や心臓疾患、性別に特有のがん(子宮がんなど)など、分野を絞って集中的に検査できる医療機関もあります。例えば、社員に健康上の不安に関するアンケートなどを実施し、特に不安の多い疾病などがあれば、人間ドックで集中的に検査するという運用が考えられます。

その他にも、

  • 遺伝子検査を取り入れた「遺伝子検査付き人間ドック」
  • X線画像をAIが解析し、疾病リスクを予想する「疾病リスク予測AI」

などの最新の検査手法もオプションとして取り入れる診療機関が増えてきました。

「遺伝子検査」は、将来発症する可能性のある病気を見つけるDNA検査と体内にがん細胞があるかどうかを検出することのできるRNA検査があります。検査により、各種がんの発症や細胞の老化度などが分かります。

「疾病リスク予測AI」は、1年分の健康診断データを基に、「〇年後の△疾病リスクが□%」という数値を予測します。予測できる疾病は、利用する医療機関によって異なりますが、各種がんや糖尿病、心臓疾患、認知症などです。

3)時短・お手軽な検査も登場

従来の人間ドックは、短いものでも検査に数時間を要することが多かったですが、最近は、

  • 約30分で脳ドックの受診が終わる「スマート脳ドック」
  • 血液・尿を郵送してがんや生活習慣病の検査をする「オンライン人間ドック」

など、あまり時間のかからない検査も登場しています。

「スマート脳ドック」は、Webでの予約と問診票を事前に送付し、検査後の受診結果をパソコンやスマートフォンから確認できるようにして、滞在時間を短縮した脳ドックです。検査内容は通常の脳ドックと同じで、頭部MRIやMRA(脳血管の立体画像検査)、頸部MRAなどを実施します。

「オンライン人間ドック」は、自分で採取した数滴の血液と尿を郵送すると、検査機関が検査し、2~3週間後に、検査結果を自宅に届けるものです。検査結果を見て電話やチャットで相談できるサービスもあります。

4 人間ドックの受診が求められる背景

1)約6割が40歳以上―日本の労働市場

現在の日本の労働市場では、40歳以上の人が労働力の多数派で約6割をしめています。

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2)定期健康診断受診者の約6割が「異常あり」

厚生労働省の「定期健康診断実施結果報告」によると有所見率(健康診断を受けた人のうち、「異常なし」以外の人の割合)は、2008年に50%を超え、2022年は58.3%となっています。

年齢や性別は調査対象外のため傾向は分かりませんが、約6割の人が何らか「異常あり」。そして、再検査や治療を受けるように促されても、忙しいからなどといって後回しにしがちです。

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3)健康経営への関心の高まり

経済産業省は、特に優良な健康経営を行っている会社を認定する「健康経営優良法人認定制度」を行っており、申請・認定件数は年々増加しています。

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補足:SDGsにも資する

2030年に17のゴールを目指しているSDGsでは、その3に「すべての人に健康と福祉を」、8に「働きがいも経済成長も」というゴールを設定しています。

福利厚生の充実をはじめとした健康経営は、

  • 3 すべての人に健康と福祉を
  • 8 働きがいも経済成長も

の達成に資することになります。社員の健康を支援することは、社員がいきいきと長期的に働くこと、ひいては労働生産性の向上と社会の持続的な成長へとつながるのです。

以上(2024年4月更新)
(監修 株式会社フェアワーク 吉田健一)

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【収支シミュレーション】特別養護老人ホームの開業収支モデル

書いてあること

  • 主な読者:特別養護老人ホームの開設を検討している人
  • 課題:自社の所有地に特別養護老人ホームを新築する
  • 解決策:開業、運営に掛かる費用の目安を押さえ、収支計画をシミュレーションしてみる

1 特別養護老人ホームとは

特別養護老人ホームとは、

65歳以上で常時介護を必要とし、在宅での生活が困難な高齢者(原則要介護3以上)に対して、生活全般の介護を提供する施設

です。

特別養護老人ホームでは、入浴、排泄、食事などの介護をはじめ、日常生活、機能訓練、健康管理及び療養上の世話を行います。

特別養護老人ホームを開設するには、

  • 社会福祉法人を設立する
  • 厚生労働省令で定められた事項を都道府県知事に届け出る
  • 厚生労働省が定める「特別養護老人ホームの設備及び運営に関する基準」の人員配置基準、設備基準、運営基準を満たす
  • 施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から老人福祉法における「特別養護老人ホーム」の指定を受ける
  • 入所定員が30人以上の施設は、施設の所在地の都道府県知事(指定都市・中核市は各市長)から介護保険法における「介護老人福祉施設」の指定を受ける
  • 入所定員が29人以下の施設は、施設の所在地の区市町村から介護保険法における「地域密着型介護老人福祉施設」の指定を受ける

必要があります。

なお、市区町村によって基準が異なる場合や、設置を計画していた施設の数を満たしているといった理由で申請を受け付けていない場合があるため、事前に市区町村の担当部署に確認しましょう。

また、市区町村によって施設整備費や設備整備費などに補助金を出していることもあるので、併せて確認するとよいでしょう。

2 開業収支を考える

1)前提条件

1.売上高

売上高は、施設定員80人(10人×8ユニット)として年間3億5129万円とします。算出式は次の通りです。

(介護サービス費30万4700円×12カ月+ホテルコスト(1970円+1380円)×365日)×定員80人×稼働率90%≒3億5129万円

特別養護老人ホームの売上高は、介護サービス費とホテルコストから成ります。

厚生労働省「介護給付費実態統計月報(2023年11月審査分)第5表、介護サービス受給者1人当たり費用額、要介護状態区分・サービス種類別」によると、介護福祉施設サービスの介護サービス受給者1人当たり費用の平均月額は30万4700円となっています。

また、ここでは日常生活費を1日当たり1970円、食費を1日当たり1380円とします。

2.原価率

原価率は、後掲の図表4(介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(4)その他を参考に29.4%とします。

3.人件費

また、人件費は同じく後掲の図表4(介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支)の介護事業費用のうち(1)給与費65.2%を参考に2億2904万円(3億5129万円×65.2%)とします。

4.施設整備費

建物(延床面積4000平方メートル。1平方メートル当たり工事単価33万円)は13億2000万円。建物附属設備(電気・給排水・消火設備など)は1億8000万円とします。

その他の諸条件は図表1の通りです。

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2)収支シミュレーション

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3 介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支

厚生労働省「令和5年度介護事業経営実態調査」によると、介護老人福祉施設の1施設1カ月当たり収支は次の通りです。

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以上(2024年3月更新)

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【かんたん法人税(8)】決算と申告・納付

書いてあること

  • 主な読者:税務調査などで指摘されないよう、税金対策を適切に行いたい経営者
  • 課題:法人税は税金の中でもボリュームが多く、一つの論点でも色々な角度から対策を検討しないと税務調査で指摘されることがある
  • 解決策:税務調査で重点的に調べられる論点ごとに、会社が注意すべきポイントを押さえる。決算と申告・納付に係る法人税の論点は、申告・納付までの流れ、4つの申告手続き、罰金税の取り扱いがポイントになる

1 決算と申告・納付の重要なポイント

シリーズ第8回は、決算と申告・納付の手続きに注目します。まずは、決算から税額を納付するまでの一連の流れを把握しましょう。

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決算と申告・納付の重要ポイントは次の通りです。

  • 決算から税額の納付までの作業内容
  • 4つの申告手続き(確定申告、中間申告、修正申告、更正の請求)
  • 申告・納付が遅れた、または間違えた場合の税金

2 決算から税額の納付までの作業内容

1)ステップ1(決算手続き)

決算手続きは「実査手続き」とも呼ばれ、帳簿に記載されている資産の金額や数量と、実際の金額や数量が一致しているかを確認する手続きです。

この手続きを通じて、現金や預金の残高、棚卸資産の数量の他、除却済みの固定資産が帳簿に残っていないかなどを確認し、帳簿上の残高と実際の残高を一致させます。もし不一致があった場合には、その原因を究明した上で、差額を損益計算書に計上します。

2)ステップ2(決算調整)

決算で費用として計上する処理(損金経理処理)をしていなければ、税務上で損金に算入できない項目があります。例えば「固定資産の減価償却費」「繰延資産の償却費」「貸倒引当金繰入」「資産の評価損」などが該当し、このような項目を「決算調整項目」といいます。

決算調整項目についてはこのステップで金額を計算し、費用に計上する処理をします。期中の仕訳(日常行われている取引の仕訳)にこの決算調整を加えることで、会計上の利益を確定させます。

3)ステップ3(申告調整)

会計上の収益・費用と税務上の益金・損金は必ずしも一致しません。そこで、「会計上の利益」をスタートとして、ステップ2で確定した会計上の利益から税務上の所得金額(税務上の利益)を算出する手続きをします。

この手続きを「申告調整手続き」といい、申告調整が必要な項目を「申告調整項目」といいます。主な申告調整項目には「役員賞与」「税務上認められる金額を超えて計上した減価償却費」「受取配当金」「延滞税や加算税などの附帯税」などがあります。この申告調整手続きは、法人税の確定申告書(別表)上で行います。

4)ステップ4(税額計算)

申告調整手続きにより計算された所得金額に、税率を乗じて年間の法人税額を計算します。

法人税の税率は、原則として23.2%です。ただし、中小法人資本金が1億円以下の一定の法人)の場合、所得のうち年800万円までの金額は15%に軽減されます。

なお、所得拡大促進税制などの優遇措置(税額控除)が適用できる場合は、このステップで税額控除額を計算し、法人税額から控除します。そして最後に事業年度中に納付した中間納付額を差し引いて、確定申告により最終的に納付すべき法人税の金額が計算されます。

5)ステップ5-1(確定申告書の提出)

ステップ4において法人税の金額を計算後、その法人税の金額などを記載した確定申告書を所轄税務署に提出します。提出期限は、原則として「事業年度終了の日の翌日から2カ月以内」です。例えば、3月末決算の法人の場合は、5月31日が提出期限日となります。ただし、災害その他やむを得ない事情がある場合などは、申告期限を延長することもできます。なお、確定申告書は書面(紙)にて提出する方法の他、電子申告(e-Tax)によって提出する方法もあります。

6)ステップ5-2(法人税の納付)

ステップ5-1により確定申告書を提出するとともに、法人税を納付します。法人税の納付は、納付書を利用して金融機関の窓口で納付する方法や電子納税(インターネットバンキングなどを利用した納税)の他、クレジットカードを利用した納付もできます。

なお、納付期限は確定申告書の提出期限と同様に「事業年度終了の日の翌日から2カ月以内」です。確定申告書の「提出期限」について延長の承認を受けている場合でも、法人税の「納付期限」については延長されません。誤って確定申告書の提出期限(延長された期限)に納付を行った場合、利子税(利息のようなもの)が課されますので注意しましょう。

3 さまざまな申告手続きの違い

1)確定申告

確定申告とは、各ステップによって計算した各事業年度の所得金額や、法人税額を申告・納税する手続きをいいます。ステップ5-1で解説した通り、提出期限は、原則として「事業年度終了の日の翌日から2カ月以内」となりますが、次のようなケースについては、所定の申請書を提出することにより、申告期限を延長することも可能です。

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2)中間申告

事業年度が6カ月を超える法人(前事業年度の法人税額20万円以下の法人を除く)については、事業年度開始の日以後6カ月を経過した日から2カ月以内(3月末決算法人の場合は、11月30日)に「中間申告書」を提出するとともに、「中間法人税」を納付します。一般的な1年決算法人の場合、中間法人税は基本的に前事業年度の法人税の12分の6相当額を納付します。

なお、確定申告書作成時と同様の手続き(上記ステップ1~4)を行った上で中間申告書を作成し、申告・納付を行う方法も認められており、これを「仮決算による中間申告」といいます。もし「前事業年度の法人税の12分の6相当額」より「仮決算による中間申告」を行うことにより中間納付額が少なくなる場合には、「仮決算による中間申告」を選択すると中間納付に係る納税資金が少額で済みます。ただし、手続きが煩雑となる点に注意しましょう。

3)修正申告

過去に行った法人税の確定申告の内容に誤りがあり、法人税を本来の法人税額より「少なく申告」していた場合は、正しい申告書を所轄の税務署長へ再提出し、不足していた法人税額を追加納付しなければなりません。この手続きを「修正申告」といいます。修正申告を行った場合、不足していた法人税額の他、後述する延滞税などの附帯税を併せて納める必要があります。

4)更正の請求

修正申告とは逆に、法人税を本来の法人税額より「多く申告」していた場合には、過大に納付していた法人税額の還付を所轄の税務署長に請求することができます。これを「更正の請求」といいます。

なお、修正申告については、修正申告書の提出とともに、不足していた法人税額を同時に納付する必要がありますが、「更正の請求」については、過大に納付していた法人税が必ず還付されるとは限りません。更正の請求を行った場合、一般的には申告内容の誤りについて証明するような書類の追加提出などが求められ、税務署内で審議した結果、「申告内容に誤りがある」と認められて初めて還付を受けることができます。なお、更正の請求ができるのは、確定申告書の申告期限から5年間である点に注意しましょう。

4 申告・納付が遅れた、または間違った場合の税金

1)延滞税

延滞税とは、法人税の納付が納期限後になってしまった場合や、修正申告により不足していた法人税を追加納税した場合に課されるものです。税率(2024年の場合)は、「納付が遅れた法人税の金額」や「修正申告により追加納付した法人税額」に対して、年2.4%(納期限の翌日から2カ月を経過した日以降は年8.7%)となります。

2)加算税

1.過少申告加算税

過少申告加算税とは、修正申告により追加納税した法人税に対して課されるもので、税率はそれぞれ次の通りになります。

  • 自ら誤りに気が付いて自主的に修正申告を行った場合:過少申告加算税はかかりません
  • 税務調査の予告があった後、税務調査の実施前に修正申告を行った場合:「追加納税した法人税」の5%(追加納税額が当初の申告税額と50万円のいずれか多い金額を超えるときは、その超える部分については10%)
  • 税務調査の実施後に修正申告を行った場合:「追加納税した法人税」の10%(追加納税額が当初の申告税額と50万円のいずれか多い金額を超えるときは、その超える部分については15%) 

2.無申告加算税

無申告加算税とは、確定申告書の提出が申告期限を過ぎてしまった場合に課されるもので、税率はそれぞれ次の通りになります。

  • 正当な理由があり、法定申告期限から1月以内に確定申告を行った場合:無申告加算税はかかりません。
  • 税務調査の予告がなく、自ら自主的に確定申告を行った場合:「納付すべき法人税の金額」の5%
  • 税務調査の予告があった後、税務調査の実施前に確定申告を行った場合:「納付すべき法人税の金額」の10%(納付税額のうち50万円超300万円以下の部分は15%、300万円超の部分は25%)
  • 税務調査の実施後に確定申告を行った場合:「納付すべき法人税の金額」の15%(納付税額のうち50万円超300万円以下の部分は20%、300万円超の部分は30%)

なお、過去5年以内に無申告加算税または3.の重加算税を課されたことがあるときは、上記の税率に10%がさらに加算されます。

3.重加算税

重加算税とは、仮装や隠蔽など悪質な申告の誤り(申告漏れや脱税行為など)に係る追加納税額に対して、上記の過少申告加算税や無申告加算税に代えて課される非常に重い加算税です。

税率は、過少申告加算税に代えて課される場合は追加納付税額の35%、無申告加算税に代えて課される場合は追加納付税額の40%となります。

なお、過去5年以内に無申告加算税または重加算税を課されたことがあるときは、追加納付税額の45%(無申告加算税に代えて課される場合は追加納付税額の50%)と、さらに重い加算税が課されます。

以上(2024年3月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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2024年度、就業規則はどう直す? 「労働条件の明示ルール」「時間外労働の上限規制」がポイント

書いてあること

  • 主な読者:自社の就業規則を見直したい経営者、人事労務担当者
  • 課題:直近の法改正の内容を就業規則に反映したいが、どこを見直せばよいか分からない
  • 解決策:2024年度は「労働条件の明示」「時間外労働の上限規制」に関する規定を見直す

1 2024年度は、人事労務関連の大きな法改正が4つある

近年は働き方改革などで人事労務関連の法改正が相次いでいて、就業規則の見直しも大変です。2024年度、特に注目したいのは4つです。

  1. 就業場所・業務内容に関する明示ルールの改正(2024年4月1日から、義務)
  2. 有期労働契約の更新に関する明示ルールの改正(2024年4月1日から、義務)
  3. 無期転換に関する明示ルールの見直し(2024年4月1日から、義務)
  4. 建設業等への時間外労働の上限規制適用(2024年4月1日から、義務)

この記事では、各法改正の概要とそれに合わせた就業規則の規定例を紹介します。ただし、就業規則の内容は会社ごとに異なるので、変更の際は必要に応じて専門家に相談してください。

2 就業場所・業務内容に関する明示ルールの改正

1)法改正の概要

改正労働基準法施行規則により、

2024年4月1日から、労働契約の締結時・更新時に「就業場所・業務内容」を明示する際、その「変更の範囲」を、労働条件通知書などの書面で明示すること(対象は全社員)

が義務付けられます。

改正前は、雇入時や契約更新時の就業場所・業務内容を明示すれば足りましたが、改正後は、労働契約期間中の変更の範囲も労働条件通知書に記載しなければならなくなります。ただし、

想定される就業場所・業務内容を1つずつ記載する必要はなく、「会社の定める場所」「会社の指示する業務」と記載した上で、就業場所や部署の一覧を別紙で交付する

といった対応も認められています。

2)就業規則の規定例(赤字は法改正に関連する部分)

第◯条(労働条件の明示)

会社は、従業員との雇用契約の締結に際し、雇用契約書を取り交わすとともに、労働条件通知書と本就業規則(付属する諸規程等を含む)を交付し、就業場所、従事すべき業務、労働時間、賃金、退職、その他の労働条件を明示する。なお、明示する事項のうち、就業場所および従事すべき業務については、その変更の範囲を含むものとする。

3 有期労働契約の更新に関する明示ルールの改正

1)法改正の概要

改正労働基準法施行規則により、

2024年4月1日から、有期労働契約の締結・更新時に「更新上限の有無と内容」を明示すること(対象は有期契約の社員)

が義務付けられます。「更新上限」とは、通算契約期間または更新回数の上限のことです。

改正前は、「契約更新の基準」として「更新の有無」「更新の判断基準」「その他留意すべき事項」を明示すれば足りましたが、改正後はこれらに加え、

  • 更新上限があるか否か
  • 更新上限がある場合はその内容(契約期間は通算〇年まで、契約更新は〇回までなど)

を労働条件通知書に記載しなければならなくなります。

2)就業規則の規定例(赤字は法改正に関連する部分)

第◯条(有期労働契約の期間等)

1)会社は、労働契約の締結に当たって期間の定めをする場合には、原則として1年以内の範囲で、契約時に本人の希望を考慮の上各人別に決定し、労働条件通知書で示す。

2)前項の労働契約は、更新する場合がある。ただし、最初の契約締結時から通算して○年を更新上限とする。なお、更新上限は、契約の締結・更新の都度、労働条件通知書により通知する。

3)契約を更新する場合、または更新しない場合の判断の基準は、次の通りとする(あらかじめ当該契約を更新しない旨が明示されている場合を除く)。

  1. 契約期間満了時の業務量
  2. 勤務成績、態度
  3. 従業員の能力および従事している業務の進捗状況
  4. 従業員の健康状態
  5. 会社の経営状況

4 無期転換に関する明示ルールの見直し

1)法改正の概要

改正労働基準法施行規則により、

無期転換を申し込む権利が発生する有期労働契約の更新時に、「無期転換申込機会」「無期転換後の労働条件」を明示(対象は有期契約の社員)

することが義務付けられます。「無期転換」とは、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、その社員が会社に申し込めば無期労働契約に転換されるというルールのことです。

改正前は、無期転換について特に明示する義務はありませんでしたが、改正後は、有期労働契約が通算5年を超えたら(無期転換を申し込む権利が発生したら)、更新の都度、

  • 無期転換申込機会:無期転換の申し込みができること
  • 無期転換後の労働条件:労働条件の変更の有無、変更がある場合はその内容

を明示しなければならなくなります。

2)就業規則の規定例(赤字は法改正に関連する部分)

第○条(有期労働契約更新時の転換条件の明示)

会社は、有期労働契約の期間が通算5年を超え、無期労働契約への転換(以下「無期転換」)を申し込む権利が発生する従業員に対し、契約更新の都度、次の事項を明示する。

  1. 無期転換を申し込むことができること
  2. 無期転換後の労働条件

5 建設業等への時間外労働の上限規制適用

1)法改正の概要

改正労働基準法により、

2024年4月1日から、建設業、自動車運転業務、医師、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)にも「時間外労働の上限規制」が適用

されます。「時間外労働の上限規制」とは、36協定に定められる時間数について、「時間外労働は、原則として1カ月45時間、1年360時間までとする」などの上限を設けるものです。

改正前は、建設業や自動車運転業務などについては、業務の特性や取引慣行の問題などから適用が猶予されていましたが、改正後は、図表の内容を遵守しなければならなくなります。

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2)就業規則の規定例

1)業務上必要がある場合は、所定労働時間を超えて労働を命じることがある。

2)法定労働時間を超える時間外労働は、従業員の過半数を代表する者との労使協定の範囲とする。

3)第2項に定める時間外労働は、労働基準法およびその他の関係法令における時間外労働の上限を超えることはない。

4)満18歳未満の従業員に対しては、原則として時間外労働を命じることはない。

以上(2024年4月更新)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

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【ハラスメント対策】 もう「ハラスメント」なんて言わせない! これで安心のシーン別セリフ集

書いてあること

  • 主な読者:「ハラスメント」と言われるのが怖くて、部下の指導などに消極的な上司
  • 課題:上司にとっては悪気のない言動が、部下にハラスメントと受け取られるケースがある
  • 解決策:荒い言葉遣いや容姿に触れる発言を、ハラスメントにならない言い方に変換する

1 ハラスメントと言わせない指導をお手伝いします

部下の指導は上司(管理職)の仕事。とはいえ、部下との関係が浅いうちに少し突っ込んだ指導をすると「ハラスメント!」と言われかねません。「そんなつもりはないのに……」と言いたいことも言えなくなってしまった経験もあるかもしれませんが、ご安心。

以降で、ハラスメントになる問題発言と、それをホワイト発言に変換した例を紹介するので、どこがいけないのか確認してみてください。この記事を読めば、

ハラスメントと言わせない指導

に一歩近づきます!

早速、パワハラ(パワーハラスメント)、セクハラ(セクシュアルハラスメント)、マタハラ(マタニティハラスメント)の順番で確認していきましょう。

2 パワハラ発言になりやすい言い方、なりにくい言い方

パワハラは、職場の優越的な関係(上司と部下など)を背景に、業務上必要のない(または行き過ぎた)言動によって相手を傷付けるハラスメントです。パワハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

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赤字が問題発言です。退職をにおわせる発言(1.と2.)、相手を侮辱する言葉(3.と4.)は、パワハラの典型例です。短時間で仕事を終わらせることを強制する(5.と6.)、部下から仕事を取り上げる(7.)というのも、部下の業務量や納期の状況などによってはパワハラになります。「自分は正論を言っているから」と部下の言い分に耳を傾けない(8.)、休日や休暇などのプライベートに干渉する(9.と10.)というのもリスキーです。仲間はずれにしたり(11.)、業務外の場面で特定の役割を強要したりする(12.)のも慎みましょう。

これを踏まえ、図表右側の「パワハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:何ができていないのかを明確にしつつ、できていることは評価する
  • 2.のセリフ:「新人のお手本になる」というポジティブなメッセージに言い換える
  • 3.のセリフ:部下の勉強不足は事実として指摘しつつ、改善策も示す
  • 4.のセリフ:上司の指示に問題があったことは素直に認め、その上で部下に改善を促す
  • 5.のセリフ:残業を認めない理由を伝え、仕事を引き取った上で部下を帰らせる
  • 6.のセリフ:仕事の目標時間と併せて、目標を達成するためのヒントも伝える
  • 7.のセリフ:安易に仕事を取り上げず部下にやらせつつ、次回の目標を設定する
  • 8.のセリフ:教えたことのヒントを与えて、部下自身に思い出させる
  • 9.のセリフ:休日の過ごし方には干渉せず、遅刻したことについてのみ注意する
  • 10.のセリフ:有給休暇の取得は妨げず、一方で休み明けにやるべきことは伝える
  • 11.のセリフ:親睦会を任意参加にして、参加するかどうかは部下自身に決めさせる
  • 12.のセリフ:部下にもメリットがあることを伝え、「命令」ではなく「お願い」する

3 セクハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

セクハラは、身体的な接触や性的な言葉によって相手を傷付けたり、相手がこうした言動を拒否した場合に評価を下げるなどの嫌がらせをしたりするハラスメントです。セクハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

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赤字が問題発言です。相手の容姿の特徴を指摘する発言(1.と2.)、恋愛や結婚など個人のプライベートに干渉する発言(3.と4.)、下心があると受け取られそうな発言(5.と6.)、「女性らしい」「男のくせに」など性差を強調する発言(7.と8.)は、セクハラと受け取られがちです。愛称やおばさん、お嬢さんなどと呼ぶ(9.と10.)のも、避けたほうが無難です。相手の体調を気遣う発言(11.と12.)は、業務上必要であっても、周囲に社員がいる状況などでは言い方に配慮が必要です。

これを踏まえ、図表右側の「セクハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:容姿の特徴的な部分を指摘するのではなく、容姿全体を褒める
  • 2.のセリフ:「雰囲気が変わった」「健康的」など、オブラートに包んだ表現にする
  • 3.のセリフ:具体的な休暇の過ごし方には触れず、楽しんでくるようにとだけ伝える
  • 4.のセリフ:「年齢」「結婚」に関するワードを使わずに、不安なことがないかを聞く
  • 5.のセリフ:部署の集まりであることを伝え、個人的な誘いと疑われないようにする
  • 6.のセリフ:部下の声や話し方が「仕事にどう役立っているか」という視点で褒める
  • 7.のセリフ:「女性らしい」というワードが、具体的に何を意味するかを考える
  • 8.のセリフ:個性を尊重しつつ、「元気があるとさらにいい」と遠回しに伝える
  • 9.のセリフ:職場の風土などにもよるが、「○○さん」などの呼称で統一する
  • 10.のセリフ:「○○さん」、名前が分からない場合は「清掃員さん」などと呼ぶ
  • 11.のセリフ:「生理痛」「更年期」というワードを使わずに、体調不良を気遣う
  • 12.のセリフ:「肌荒れ」というワードを使わずに、疲労が見えることを指摘する

4 マタハラになりやすい言い方、なりにくい言い方

マタハラは、妊娠等(妊娠や出産、育児休業の取得など)をした相手を傷付ける発言をしたり、育児休業などの取得を理由に評価を下げるなどの嫌がらせをしたりするハラスメントです。マタハラになりやすい言い方、なりにくい言い方の例は次の通りです。

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赤字が問題発言です。妊娠・出産等への否定的な発言はマタハラの典型例です(1.)。また、相手を気遣ったつもりでも、退職や雇用形態の変更をにおわせる発言(2.と3.)、仕事を一方的に取り上げる発言(4.)、育児休業を取りにくくなる発言(5.と6.と7.)などは、マタハラと受け取られがちです。部下を必要としていないように取れる発言(8.)、育児休業中の過ごし方などに干渉する発言(9.と10.)、職場に復帰したばかりの部下を焦らせるような発言(11.)にも注意しましょう。なお、マタハラは、社員が妊娠・出産等で「働けない」ことを理由に行われるイメージがありますが、「働いている」ことを理由に行われる発言(12.)もマタハラになり得ます。

これを踏まえ、図表右側の「マタハラになりにくい言い方」に言い換えていきます。ポイントは次の通りです。

  • 1.のセリフ:部下のつらさに寄り添って、安心できる言葉をかける
  • 2.のセリフ:「復帰が大変」という話ではなく、「復帰のサポート」に関する話をする
  • 3.のセリフ:育児休業を取得しても、部下に不利益がないことを強調する
  • 4.のセリフ:妊娠中の業務について部下の要望を聴く(医師の指示がある場合はそれも)
  • 5.のセリフ:育児休業は、子どもを育てるための大切な休みであることを強調する
  • 6.のセリフ:家族のサポートを受けられるか、柔らかい言い方で確認する
  • 7.のセリフ:育児休業を取ることに「謝罪」は不要、「感謝」をするよう伝える
  • 8.のセリフ:部下が職場に戻ってくるのを待っていることを強調する
  • 9.のセリフ:育児休業中の連絡は原則せず、する場合も必要最低限にとどめる
  • 10.のセリフ:育児休業中の勉強は強制しない、プレッシャーがかかる言い方も避ける
  • 11.のセリフ:育児休業中のブランクに配慮して、徐々に仕事の感覚を取り戻させる
  • 12.のセリフ:自分の中の子育てのイメージを押し付けず、ポジティブな言葉をかける

以上(2024年4月更新)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

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【かんたん法人税(7)】中小企業に係る税務

書いてあること

  • 主な読者:税務調査などで指摘されないよう、税金対策を適切に行いたい経営者
  • 課題:法人税は税金の中でもボリュームが多く、一つの論点でも色々な角度から対策を検討しないと税務調査で指摘されることがある
  • 解決策:税務調査で重点的に調べられる論点ごとに、会社が注意すべきポイントを押さえる。中小企業に係る法人税の論点は、税務上の中小企業の範囲と適用される優遇措置がポイントになる

1 中小企業に係る税務上の重要なポイント

シリーズ第7回は、中小企業に係る税務上の取り扱いに注目します。中小企業に対する税務上の優遇措置は多いですが、注意が必要なのは、

一般的に中小企業と呼ばれる会社の全てが、税務上の中小企業に該当するとは限らない

ことです。税務上、中小企業は「中小法人等」または「中小企業者等」と表現され、それぞれ定義は次の通りです。優遇措置には、「中小法人等に適用されるもの」と「中小企業者等に適用されるもの」とがあるため、2つの用語の定義を正確に理解しておく必要があります。

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中小法人等・中小企業者等に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

1.中小法人等に適用される優遇措置

  • 法人税の軽減税率の適用
  • 欠損金の繰越控除額に対する制限の緩和および繰戻還付制度の適用
  • 交際費の定額控除限度額
  • 特定同族会社に対する留保金課税の適用除外

2.中小企業者等に適用される優遇措置

  • 中小企業投資促進税制
  • 少額減価償却資産の全額損金算入
  • 試験研究費の税額控除の特例(中小企業技術基盤強化税制)
  • 賃上げ促進税制

2 中小法人等に適用される優遇措置

1)法人税の軽減税率の適用

法人税の税率は原則として23.2%ですが、中小法人等の場合、所得のうち年800万円までの金額は15%に軽減されます。

2)欠損金の繰越控除額に対する制限の緩和および繰戻還付制度の適用

1.欠損金の繰越控除額に対する制限の緩和

前事業年度以前に生じた欠損金は、当事業年度以降に生じた所得金額から控除できます。中小法人等以外の法人は、控除できる金額が「(欠損金控除前の)所得金額の50%まで」に制限されています。

一方、中小法人等については「50%制限」がないため、所得金額以上の欠損金がある場合は、欠損金の全額を所得金額と相殺することができます。そのため、欠損金が所得金額を超える場合には、法人税の納税は発生しません。

2.繰戻還付制度の適用

繰戻還付制度とは、欠損金が生じた場合において、欠損金が生じた事業年度(当事業年度)開始前1年以内に開始した事業年度(一般的には前事業年度)に所得が生じており、納税していた場合には、当事業年度に生じた欠損金の金額を前事業年度に生じた所得に繰り戻して(遡って)相殺し、納税済みの税金の還付を受ける制度です。

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この繰戻還付制度は、現在は取り扱いが停止されていますが、例外として、中小法人等は適用することができます。なお、還付されるのは法人税と地方法人税のみであり、地方税(住民税や事業税)については還付されません。

3)交際費の定額控除限度額

原則として、交際費は全額が損金算入できません。しかし、取引先との接待飲食費(社外飲食費)の50%相当額については、損金算入できます。また、中小法人については、特例として年800万円まで損金算入が認められています(「定額控除限度額」といいます)。

つまり、中小法人は社外飲食費の50%相当額と定額控除限度額とを比較し、いずれか多い方を損金算入限度額として選択することができます。

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4)特定同族会社に対する留保金課税の適用除外

一定の同族会社については、原則として、通常の法人税の他に「留保金課税」という特別の税金が追加で課税されます。しかし、中小法人等については、例外としてこの留保金課税が「適用除外」とされています。留保金課税は、所得に対する法人税の他に追加で負担すべき税金です。中小法人等に該当するか否かで税負担が大きく変わってくるので、判定は慎重かつ正確に行う必要があります。

3 中小企業者等に適用される優遇措置

1)中小企業投資促進税制

中小企業者等が機械装置等に設備投資した場合には、「取得価額の30%の特別償却(通常の減価償却の他、追加で減価償却ができる制度)」が認められています。また、資本金3000万円以下の法人は「取得価額の7%の税額控除(法人税から直接控除する制度)」を選択することもできます。

中小企業者等が行う設備投資に対しては、「中小企業投資促進税制」の他、税務上の優遇措置が多く設けられています。従って、設備投資を行う際には、税務上の優遇措置の有無についても併せて確認することが重要です。

2)少額減価償却資産の全額損金算入

取得価額が10万円以上である減価償却資産を取得した場合は、原則として資産に計上し、耐用年数に応じた減価償却費を計上することで損金算入されます。ただし、中小企業者等については、取得価額が30万円未満の減価償却資産(貸付け(主要な事業として行われるものを除く)の用のように供されるものは対象外)について、その全額を即時に損金算入できる特例があります。

ただし、全額を損金算入できる限度額は年間300万円までです。年間300万円を超える金額を損金算入したことによって税務調査で指摘されるケースも多いため、この制度を適用する上では、少額減価償却資産を計上する勘定科目を新たに設けるなどして、年間300万円の限度額以上に損金処理していないか確認できるようにしておきましょう。

なお、この規定は、グループ通算制度を適用している場合や、常時使用する従業員の数が500人を超える場合には適用できません。

3)試験研究費の税額控除の特例(中小企業技術基盤強化税制)

製品の製造または技術の改良や考案などに必要な試験研究費を支出している会社は、その支出した試験研究費の一定割合を法人税から控除する税額控除制度が設けられています。これは大企業でも適用される制度ですが、中小企業者等に該当する法人については税額控除割合などの面で優遇されています(中小企業者等に適用される税額控除を「中小企業技術基盤強化税制」と呼びます)。

中小企業者等については、大企業に適用される税額控除制度と中小企業技術基盤強化税制の両方を計算し、いずれか有利な方法(金額)で税額控除を適用することができます。

4)賃上げ促進税制

従業員に対して支給する当事業年度の給与額が、前事業年度に支給した給与に対して一定程度増加した場合においては、所定の税額控除を適用することができます。この制度は大企業でも適用できますが、中小企業者等に該当する法人については、その適用要件が優遇されています。中小企業者等の場合の適用要件および税額控除額は次の通りです。

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この制度は、上記の算式で計算した税額控除額がそのまま法人税を減らすことにつながるため、前事業年度と比較して高いベースアップを行っている場合などには、本制度を適用できるかどうか必ず確認しましょう。また、適用判定で使用する数値の集計には比較的時間を要するため、申告期限の間際に行うのではなく、時間にゆとりを持って判定作業をするようにしましょう。

なお、令和6年度税制改正において、下記2点の改正が入る予定です(2024年4月1日以降に開始する事業年度が対象)。

  • 上乗せ要件が緩和・追加され、最大の控除率を45%になる(現状は最大40%)
  • 控除できなかった控除額は、5年間の繰り越しができることになる(現状は繰越制度はなし)

以上(2024年3月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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ドラゴンボールはなぜ愛され続けるのか、原作者・鳥山明氏のポリシーが垣間見える一言とは?

だからやっていくうちにキャラクターが勝手に動き出したらしめたもので、意外とこのキャラで行けるかなって

鳥山明(とりやまあきら)氏は、集英社の週刊少年ジャンプ(以下「ジャンプ」)で、「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」などの作品を手掛けた漫画家です。どの作品も愛されていますが、特にドラゴンボールは、主人公の孫悟空(そんごくう)が、地球、宇宙、時には死後の世界を舞台に、さまざまな敵と戦う壮大なアクション漫画で、ジャンプでの連載終了から約30年たった今でも、絶大な人気を誇ります。鳥山氏が2024年3月1日に68年の生涯を終えられた際は、日本だけでなく世界中のファンがその早過ぎる死を悼みました。

冒頭の言葉は、鳥山氏がジャンプに連載していた頃の編集担当だった鳥嶋和彦(とりしまかずひこ)氏と対談した際、ドラゴンボールの連載当時を振り返って述べたものです。「ドラゴンボールは先の話を考えず、自分でもワクワクしながら描いているっておっしゃっていましたよね?」と尋ねられた鳥山氏は、「そうだけど、本当はただ先のことを考えるのが面倒臭いだけで……」とおどけながら、冒頭の言葉を言いました。

ドラゴンボールには、主人公である悟空を強さで上回る強敵が度々登場しますが、悟空はそんな強敵と出会うと、むしろワクワクするというキャラクターです。そして、鳥山氏も悟空が最終的にどう強敵に勝利するのか細かく筋道を立てず、自分も同じ敵と戦っているつもりで、その時その時の展開を考えていたようです。一見「行き当たりばったり」のようにも思えますが、それ故多くの読者が予想のつかない展開に魅せられました。

もう1つ、鳥山氏が心掛けていたのが「スピード感」です。ジャンプは週刊連載なので、物語の展開が遅いと読者が飽きてしまいます。複雑な背景などは描写に時間がかかるため、鳥山氏は敵に建物を破壊させて更地にするなどして背景を描く時間を節約し、その分、読者が好きな戦いのシーンに力を注いだそうです。また、悟空は物語の途中で「超(スーパー)サイヤ人」という金髪の戦士にパワーアップしますが、これも白黒漫画の場合、金髪は髪を黒く塗る「ベタ塗り」の作業を省略できるという理由から生まれた発想でした。

鳥山氏のすごいところは、うがった見方をすれば「手抜き」と思われそうなことまでも武器に変え、読者を自分の世界に引き込み続けた点です。ビジネスで競争に勝つためには、いかに自分たちの短所を改善するかが重要ですが、短所がそのまま長所に塗り替わればこれほど心強いことはありません。そして、鳥山氏がこれを成し遂げられた理由は、強敵との出会いにワクワクする悟空と、週刊連載というハードな仕事にワクワクする自分とがうまくマッチしたからでしょう。最近は、頑張ることや無理をすることが敬遠されがちな風潮がありますが、ハードな環境に身を置いてこそ初めて味わえる楽しみもあり、事実、鳥山氏がそれを続けてきたからこそ、ドラゴンボールは今なお世界中から愛されているのです。

出典:「Dr.マシリト 最強漫画術」(鳥嶋和彦 (著)、集英社、2023年7月)

以上(2024年3月作成)

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【かんたん法人税(5)】交際費・会議費・福利厚生費などに係る税務

書いてあること

  • 主な読者:税務調査などで指摘されないよう、税金対策を適切に行いたい経営者
  • 課題:法人税は税金の中でもボリュームが多く、一つの論点でも色々な角度から対策を検討しないと税務調査で指摘されることがある
  • 解決策:税務調査で重点的に調べられる論点ごとに、会社が注意すべきポイントを押さえる。販管費に関しては、交際費・会議費、福利厚生費、寄附金、租税公課、業務委託費がポイントになる

1 主な販管費に係る税務上の重要なポイント

シリーズ第5回では、主な販売費および一般管理費(以下「販管費」)に係る税務上の取り扱いに注目します。法人税の課税所得を計算する上で、販管費は損金算入できるものが多いです。しかし、

科目によっては一定金額、または全額損金に算入できないものもある

ため、税務担当者は科目ごとの基本を理解する必要があります。

また、中小企業のうち、とりわけ同族会社においては、

業務上の費用と私的な費用の区別が曖昧となりがちで、税務調査で指摘される

ことも多いです。こうした区別をきちんとすることはもちろん、業務上の費用でも私的な費用と誤解を受けることがないように、所定の 書類などをそろえておきましょう。

販管費に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

  • 交際費の損金算入限度額
  • 5000円以下の接待飲食費
  • 交際費と会議費の区別
  • 業務上の交際費と私的交際費の区別
  • 福利厚生費の範囲
  • 寄附金の損金算入限度額とその範囲
  • 租税公課
  • 業務委託費(グループ会社などに対するもの)の取り扱い

2 販管費に係る税務上の取り扱いと留意点

1)交際費・会議費

1.交際費の損金算入限度額の算定方法

原則として、交際費は全額が損金算入できません。しかし、取引先との接待飲食費(社外飲食費)の50%相当額については、損金算入できます。また、中小法人については、特例として年800万円まで損金算入が認められています(「定額控除限度額」といいます)。

つまり、中小法人は社外飲食費の50%相当額と定額控除限度額とを比較し、いずれか多い方を損金算入限度額として選択することができます。

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上記の「社外飲食費」については、帳簿書類に次の項目を記載しておく必要があります。税務調査においては、この記載事項についてチェックされるので注意しましょう。

  • 飲食等を行った年月日
  • 飲食等に参加した得意先や仕入先等の氏名または名称およびその関係
  • 飲食費の額ならびに飲食店の名称および所在地
  • その他飲食費であることを明らかにするために必要な事項

2.10000円以下(2024年3月31日支出分までは5000円以下)の接待飲食費の取り扱い

取引先との接待飲食費のうち、1人当たり10000円以下(2024年3月31日支出分までは5000円以下)のものは交際費の範囲から除かれます(以下「少額交際費」)。従って、少額交際費は上記1.の損金算入限度額に含めることなく損金算入できます。ただし、少額交際費として取り扱うためには、帳簿書類に上記の記載事項の他に、

  • 飲食等に参加した者の人数

も追加で記載する必要があります。

3.交際費と会議費の区別

会議や打ち合わせで提供されるお茶やお菓子、昼食代といった飲食費は、通常は会議費として損金に算入できます。ただし、昼食代であっても、通常の金額を超えるようなものについては交際費とされます。

どの程度までが会議費として認められるかについて、税務上では明らかにされていません。しかし、例えば居酒屋や高級飲食店などにおける飲食費など、一般的な会議では利用されなそうな場所での飲食費などは、税務調査において交際費と指摘される可能性が高いです。

4.業務上の交際費と私的交際費の区別

お酒を共にする接待などは、取引先と懇親を深めることができるでしょう。中小企業においては、一定限度額まで損金算入することが認められています。

一方、経営者1人での飲食など私的なものについては、税務上の交際費とはされずに「役員給与」とされ、損金算入できません。なお、役員給与の詳細な取り扱いについては、下記のリポートをご参照ください。

また、取引先との接待費用であっても、帳簿書類でそれが証明できない場合や領収証が無い場合などは、税務調査において私的費用として疑われる可能性もあるので注意しましょう。

2)福利厚生費

役員や従業員(以下「従業員等」)の慰安のために行われる旅行や新年会・忘年会などに通常要する費用で、おおむね従業員等の全員を対象とする場合は福利厚生費とされ、損金算入できます。また、従業員等またはその親族等のお祝いやご不幸などに際して、一定の基準に従って支給される金品(例えば、結婚祝いや香典など)も福利厚生費として損金算入できます。

一方、特定の従業員等のみを対象とした旅行費用や、特定の人だけ基準を超える高額な香典などは福利厚生費とされず、税務上は「給与」として取り扱われます。「給与」と認定されると、所得税の源泉徴収が必要ですし、役員の場合は費用そのものが損金算入できません。

税務調査においては、例えば社員旅行の場合は対象者が誰であるか、香典などについては、一定の基準(社内規程など)通りに支払われているかなどをチェックされるので注意しましょう。

3)寄附金

1.寄附金の種類と損金算入限度額の算定方法

法人税法において寄附金は次の4種類に区分され、それぞれ損金に算入できる金額(損金算入限度額)が定められています。

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2.税務上の寄附金の範囲

国・地方公共団体や一定の公益法人等(以下「国等」)に対する寄附金は会社が意図して行うものであり、領収証も発行されるため、他勘定で処理するといった誤りは少ないでしょう。

しかし、税務上の寄附金はこういった国等に対する意図した寄附金よりも非常に範囲が広く定義されています。例えば、

資産を時価より低く譲渡した場合、「譲渡した相手方に利益供与を行った」として、税務上は時価と譲渡価額との差額が寄附金として取り扱われる

ことがあります。

また、

返済能力のある取引先に対する売掛金を債権放棄した場合なども、「取引先に対して利益供与を行った」として、債権放棄額が寄附金として取り扱われる

こともあります。このように税務上の寄附金は、一般的な用語で使われるものより非常に範囲が広いため注意しましょう。もし判断に困るケースが出てきた場合には、税理士などの専門家に相談することが重要です。

4)租税公課

租税公課にはさまざまな種類がありますが、税務上、その種類によって損金に算入できるものとできないものとがあります。また、損金に算入できるものであっても、その損金に算入する時期が決まっています。主な租税公課の取り扱いは次の通りです。

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5)業務委託費

自社で作業が不可能な業務などを外部に業務委託した際に支払う業務委託費については「役務提供を受けた日」において損金に算入されますが、業務委託先がグループ会社や親族の経営する会社の場合には、業務委託費の金額を意図的に操作することも可能なため、税務調査においては重点的に調べられます。

従って、グループ会社などに対する業務委託費については、

金額の決定過程を税務調査時に詳細に説明できるよう、関係書類などを事前に準備する

ことが重要です。

以上(2024年3月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 富永慎也)

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