利子補給制度とは、企業や個人事業主等が金融機関から融資を受けて事業投資を行う場合、その利息の一部または全部を、国や自治体が補助する制度です。
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自然に囲まれて働きたい、自分のペースで仕事がしたい、地元に貢献したいなど、さまざまな理由から農業を始めようとする人は少なくありません。農林水産省によると、2023年の新規就農者数は4万3460人、うち3万9630人が親元での就農または雇用就農、3830人が新規参入者です(農林水産省「令和5年新規就農者調査結果」)。
一方、ネックとなるのが初期投資。全国新規就農相談センターによると、新規参入者が
で、農業に必要な費用と自己資金の差額にかなりの開きがあるようです(全国新規就農相談センター「令和6年度新規就農者の就農実態に関する調査結果」)。
つまり、農業を始めたいけどお金が足りない……というのが多くの新規参入者が抱える悩みなわけですが、そんな悩みの解決に役立つ制度があります。それが、
農林水産省が実施している「就農準備資金・経営開始資金」
です。どちらも新規参入であるかどうかを問わず、次世代の農業を担うことを目指す49歳以下の人々に対し、就農準備段階や経営開始時の早期の経営確立を支援するために資金を交付する制度で、40代以下の農業従事者を拡大し、将来の農業経営を担う人材を育成することを目的にしています。
以降でそれぞれの概要を簡単に紹介します。なお、制度についてより詳しく知りたい人は、こちらをご確認ください。
就農準備資金は、農業技術を習得するための研修期間中の生活を支援することを目的としています。
経営開始資金は、就農直後の経営が不安定な時期の生活を支援し、早期の経営確立を促すことを目的としています。
資金を申請する際は、地方自治体の農業支援担当窓口に対し、必要書類を提出する必要があります。両資金制度で必要となる主な書類は次の通りです。

この他、確約書、離職票の原本、経営開始時期の証明書類などが必要になります。
資金の交付は、以下の要件に該当した場合に停止されることがあります。
特に注意すべきは、交付期間中に世帯所得が600万円を超えた場合に交付が停止されるという規定です。例えば、経営開始資金の受給期間中(最長3年間)に、事業が予想以上に急成長し、農業所得が大きく向上した結果、世帯所得が600万円を超えてしまうケースが想定されます。この場合、その時点で資金の交付は停止されます。
一見喜ばしい成功のようですが、翌年の作柄が悪化したり、市場価格が暴落したりして所得が減少した場合、既に資金は停止しているため、安定した生活基盤を失うリスクを抱えることになります。単に売上を最大化するだけでなく、資金停止後の経営リスクに備え、所得を計画的に管理する必要があるということです。
次のいずれかに該当した場合、資金の全額または一部の返還が求められます。
これらの規定は、単なる手続き上のルールではなく、就農希望者が抱える2つの潜在的な事業リスクを具現化したものです。
1つ目は「就農失敗リスク」です。研修を終えたにもかかわらず、農地や資金の確保ができずに就農できなかった場合、それまでの受給額を全て返還しなければなりません。
2つ目は「経営失敗リスク」です。経営を開始しても、事業が立ち行かなくなり、義務付けられた営農期間を達成できなかった場合、資金返還の義務が発生し、自己資金と借入金に加えてさらなる負債を抱えることになります。
以上(2025年9月作成)
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1つの事業だけで成長し続けることは難しく、新製品や新規事業へのチャレンジは欠かせません。その一方で、店舗を閉じたり製品の生産をやめたりする「撤退」も大切な経営判断です。そして、撤退には、赤字続きなど後ろ向きの判断の他に、
コア事業を成長させるためにその他の事業からは撤退するという、いわゆる「選択と集中」
もあります。この記事では、こうした「前向きな事業撤退=戦略的な事業撤退」にスポットを当て、その視点に立った事業撤退プロセスの基本を紹介しています。
撤退を検討する際、足元の「収益性」だけで判断するのではなく、「この事業が将来の成長に必要かどうか」を考えることが重要です。極端な例ですが、
といったこともあり得ます。「黒字なのに撤退する」というのは違和感があるでしょうが、自社の将来にとって不要だったり、足枷になったりするのであれば、今、そこにリソースを割いていることの機会損失も考えるべきです。これは、自社開発と受託開発のジレンマに似ています。
受託開発は収益が安定しますが、リソースを割かれる分、本当にやりたい自社開発が滞る
ということです。特に中小企業は単一事業に最適化された組織となり、いざ現在の枠を出ようとしても、経営者の号令だけで組織がついてこられません。こうした事情も想定しつつ、素早く、そして勇気ある判断が経営者に求められることがあります。
事業撤退を検討する前提は、
自社の「あるべき姿」が明確になっていること
です。その上で、「あるべき姿」を実現するために必要な事業分野を決めます。基本的には、次のようなプロセスで進めます。

「自社は何のために存在するのか」「どんな価値を社会に提供するのか」という企業の存在意義や使命を明確にします。
外部資源の「機会(Opportunities)と脅威(Threats)」、内部資源の「強み(Strengths)と弱み(Weaknesses)」を整理し、どこにチャンスがあるかを把握します。
自社の強みを活かしながら成長できる領域を検討・決定します。
選んだ事業ドメインについて、経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報)の配分やマーケティングなど具体的な戦略を立案します。
戦略を実行し、定期的に評価・見直しを行います。
撤退を決めた事業への対応は、事業の収支状況などによって異なります。
対象の事業が赤字で将来性もない場合、できるだけ早く撤退します。損失を最小限にとどめ、主力事業への集中を早めるためです。
撤退を決めた事業が黒字なら、撤退を決めた事業へのリソース配分を最小限に抑えつつ、そこから得られる利益を成長事業に振り向けます。収穫戦略を実行する場合は、撤退基準として一定の収益水準を事前に決めた上で取り組む必要があります。
収穫戦略を検討する際、重要なのが「対象となる事業の収益の予想」です。もし、対象となる事業に競合が多い(競争が激しい)場合、短期間で収益が落ち込む恐れがあります。それを避けるには一定の投資が必要で、そうなると撤退を決めている事業に対し、これまでと同等かそれ以上のリソースを割かなければならなくなります。つまり、簡単な図で示すと、dの事業が最も収穫戦略に向いているということです。

事業撤退は先送りにされがちです。主な理由としては、
などがあります。これらの中には、経営者として慎重な対応が求められるものがあります。例えば、ある事業から撤退することが他の事業の取引関係にも影響を及ぼす恐れがある場合、事前に十分な説明をして取引先の理解を得なければなりません。一方、合理的な意思決定を妨げる要因もあります。例えば、経営者や従業員などの心理的抵抗感です。特に、自らの手で生み出し、育て上げてきた事業には愛着があり、なかなか撤退を検討できないわけですが、経営者が率先してそうした意識を変革していく必要があります。そこで重要なのが、
事業撤退を検討する基準を明確にし、社内で共有しておくこと
です。例えば、「△年間継続して売上高利益率が○%を下回った場合」「市場シェアが□%以下になった場合」など、定量的な指標を設定しておけば、事業撤退の検討を自分の都合で先送りにすることはなくなるでしょう。そして、基準を作ったら、社内に広く公表します。これは、基準に該当しそうな事業に携わる従業員に対して、事業を立て直す努力をするチャンスを与えるためであり、いざ撤退が決定された場合に納得を得やすくするためです。
以上(2025年9月更新)
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2025年11月5日、きらやか銀行と、サイバーセキュリティサービスを提供しているグローバルセキュリティエキスパート(GSX)との共催で、サイバーセキュリティセミナーを開催します。
近年は事業規模、地域を問わずサイバー攻撃の被害が多発しています。自社への被害だけでなく、自社の操業が止まることで取引先にも影響を及ぼすことから、サイバーセキュリティ対策は、すべての経営者が重要課題として取り組んでいくことが求められます。
このページの最後に、サイバーセキュリティ対策に役立つコンテンツも紹介していますので、ぜひご覧ください!
↑クリックで拡大表示↑
お申し込みフォームはこちらから(外部サイトへリンク)(先着順)
お申し込み締め切りは2025年10月29日(水)17:00です。
きらやか情報ステーションでは、サイバーセキュリティ対策に役立つコンテンツも公開しています。ぜひご覧ください!
人事評価は、社員に「会社から評価された」という達成感を与え、モチベーション向上につなげる重要な制度です。しかし、上司(評価者)の主観を完全に排除することが難しく、
と受け取った社員が、不満から離職してしまうこともあります。とはいえ、社員の不満を恐れて甘く評価するのは健全とはいえませんから、上司はあくまで毅然とした評価をするべきです。
一方、もう一つ意識しておきたいことがあります。それは、
人事評価の内容が「人事権の裁量の濫用」に該当する場合は違法
になるということです。具体的には、
などのケースですが、こうした問題は、
働いている時間の長短を評価要素に組み込んでいたり、経営者や上司の鶴の一声で高評価も低評価も認められたりするような、昔ながらの感覚が残る会社で起こりがち
です。「人事評価は毅然とするべきであるが、違法はいけない」という、当たり前のことを実現するために、この記事を参考にしていただければ幸いです。
人事評価の内容が法令に違反していれば無効であり、会社が損害賠償義務を負うこともあります。特に、次のような法令(強行法規)違反につながる人事評価は認められません。
妊娠・出産により育児休業等を取得した女性に対し、会社が復職後の成果報酬をゼロとする査定を行い、トラブルに発展した事案では、
査定の内容は、育児・介護休業法における不利益取扱いの禁止の趣旨に反し、人事権の裁量の濫用に当たる
と判断されました(東京高裁平成23年12月27日判決)。こうした過ちを起こさないための最も単純な解決策は、例えば、
ことです。
また、
残業や休日労働に協力する社員を「頑張っている」と高く評価し、そうでない社員を「努力が足りない」と低く評価する
といったことがあるなら、すぐに改めましょう。
2024年4月からは、労働基準法の「時間外労働の上限規制」が、すでに適用済みの業種に加え、建設業や物流業にも適用されるようになりましたが(いわゆる2024年問題)、こうした法の趣旨に反する人事評価は、人事権の裁量の濫用に当たる恐れがありますし、そうでなくても社員のほうから、「時代に逆行している古臭い会社」と見切りを付けられる可能性があります。
就業規則や賃金規程にない基準、あるいは定めに違反する基準を用いて人事評価を行うと、人事権の裁量の濫用に当たる恐れがあります。例えば、賃金の決定方法は必ず就業規則などに定めて社員に周知・開示し、守らなければなりません。そのため、
いかに社員が大きなミスをしたとしても、就業規則などの定めを超える降給はできない
のです。
なお、人事評価によって降格された社員は降給となるのが通常ですが、前提は、
役職などと賃金が連動していることを就業規則などで明確に規定しておく
ことです。御社の就業規則などを確認してみてください。次のように定めてあれば問題ありません。
第●条(昇格・降格)
会社は、社員に勤務成績不良など職務不適格事由がある場合、役職罷免、職位および資格等級の引き下げなどの降格を命ずることがある。
第●条(昇降給・昇降格)
以上(2025年9月更新)
(執筆 石原法律事務所 弁護士 磯田翔)
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2025年7月4日(金)、東京都立産業貿易センターで、「『食の魅力』発見商談会2025」が開催されました。来場者数2526名、出展者数156社と大盛況で終わったこの商談会には、「全国の地域食品生産・製造・販売等を行う事業者と首都圏を中心とした食品バイヤーとのマッチング機会の創出」という狙いがあります。2011年にスタートしたこの商談会に、徳島大正銀行は第1回目から参加しています。
一般的な食の商談会は、出展者の規模やジャンルを問わず、食品に関連する事業者であれば出展ができますが、『食の魅力』発見商談会は、地域の食品メーカーのみ出展ができて、食品容器や資材等を扱う食品関連事業者は出展不可となっています。そうした意味では、選ばれた参加者による「濃い商談会」といえるでしょう。
一般的な食の商談会は、食品バイヤーに限らず、食品メーカーに営業をしたい資材メーカー(食品容器、機械等)、コンサル会社等多くの人が来場できます。『食の魅力』発見商談会は、食品バイヤーに限定しています。来場申込者の属性を確認し、食品バイヤーと認めた人のみが当日来場できるようになっています。こちらも、まさに成果を追求するからこその取り決めです。
他にも、
◆銀行・事務局による万全のサポート体制
◆事前予約制個別商談会
◆出展者×出展者マッチング
などの特徴があります。
今回の商談会には当行のお取引先企業6社がご出展されました。
(注)イベントページの紹介順に掲載しています。
各社のご紹介動画はこちらから、ご覧いただけます!
(下の画像をクリックしていただくと、YouTubeに遷移します)
会場の風景や参加者からの声をお届けします。

全国から156社が出展。初出展は58社。来場した食品バイヤーは2526名でした!

会場では至る所で、商品の説明や試食、名刺交換、個別商談会が行われるなど熱気に溢れていました。

個別商談会ブースで商談を行う出展者とバイヤー
当行取引先さまブースには、常にたくさんのバイヤーが訪れ、商品の魅力を知っていただくことができました。嬉しいお声を聞くことができ、本商談会に大きな可能性を感じています。また、出展者とバイヤーの真剣な交渉を肌で感じ、本商談会と金融機関支援の必要性を改めて感じる機会となりました。
(株)三越伊勢丹、(株)大丸松坂屋百貨店、(株)髙島屋、(株)小田急百貨店、(株)京阪百貨店、(株)明治屋、(株)成城石井、(株)イトーヨーカ堂、イオンリテール(株)、(株)パレスホテル、(株)西武・プリンスホテルズワールドワイド、(株)八芳園、キリンシティ(株)、サントリー(株)、(株)ローソン、三菱食品(株)、伊藤忠食品(株)、三井食品(株)、(株)日本アクセス、(株)カタログハウス、国分グループ本社(株)、(株)G7ジャパンフードサービス、(株)JR東日本商事、(株)JALUX等
「『食の魅力』発見商談会」についてのご相談は、お取引のある営業店にお問合せください。または、とくぎんサクセスクラブnaviのお問合せフォームからご連絡ください。
新リース会計基準は、2027年4月1日以降に開始する事業年度から、上場企業や会計監査人設置会社などの「大企業」を対象に強制適用されます。中小企業は任意適用ですが、次のように実質的に新基準を意識した会計対応が求められるため、無関係とはいえません。
新リース会計基準を適用した場合、経営への影響は数値の変化だけにとどまりません。会計処理の複雑化や、契約の洗い出し・再評価といった実務負担の増加、税務申告上の調整の発生など、財務・税務・経理の現場にも様々な対応が求められます。
この記事では、リースの借り手企業向けに、適用した場合の影響、新・旧リース会計基準との違い、税務上の取り扱い、そして今から講じるべき実務対応まで、段階的に解説していきます。
現行(旧リース会計基準)のリース取引は、
の2種類に分類されます。
新リース会計基準では、上記のような取引の区分がなくなります。

今まで支払ったリース料を費用処理するだけでよかったオペレーティング・リース取引についても、貸借対照表上に資産・負債を計上しなければならない処理が必要になります。なお、リース契約期間が1年以下の短期リースや、少額リースに該当するリース取引については、現行(旧リース会計基準)から変わりなく、リース料を費用で処理することが認められています。
現行(旧リース会計基準)では、契約書に「リース契約」と明記されている取引であれば、原則としてリース会計の対象とされてきました。つまり、形式的にリース契約であるかどうかが判断基準となっていました。
しかし、新リース会計基準では考え方が大きく変わります。契約書に「リース」と書かれているかどうかではなく、契約の実態が「リースの定義」に該当するかどうかが判断基準となるためです。新リース会計基準における「リース」とは、特定の資産を一定期間使用する権利を持ち、その使用に対価を支払う契約をいい、名称にかかわらずその条件に該当するものは、全てリース会計の対象となります。例えば、オフィスやコピー機などの賃貸契約、不動産の借上契約などは、契約上「リース」と明記されていなくても、内容がリースと判断されれば、リース会計の対象となります。
一方、従来はリースとはみなされなかった電力供給契約や業務委託契約なども、その契約の中に特定の設備の使用権が含まれていれば、リースに該当する可能性があります。つまり、新リース会計基準では適用対象となる取引の範囲が大きく広がることになります。ただし、全ての取引が対象となるわけではありません。使用期間が12カ月以下の短期リースや、1契約当たりの金額が非常に小さい少額リースについては、会計上の負担軽減のために、リース会計の対象外とすることが認められています。
短期リースとは、契約期間が1年以下で、更新の義務や選択権がない契約を指します。少額リースは、1契約当たりの資産価格が企業の会計方針で「重要性が乏しい」と判断される程度の少額資産を対象とします。これらについては、従来通り費用で処理することができます。
税務上の取り扱いは2025年度の税制改正により明示されました。税務では、オペレーティング・リースについて、現行の賃貸借処理から変更はなく、今まで通り支払ったリース料を損金とする処理が継続することになります。税務上の取り扱いをまとめると、
されます。
そのため、新リース会計基準を早期に適用した会社については、会計上の費用計上額(減価償却費と利息費用)と、税務上の損金(賃借料)に差異が生じることから、2026年度以降の税務申告書上で税務調整が必要になります。
まず、貴社が新リース会計基準の強制適用対象となるか(上場企業の子会社、会計監査対象など)を確認しましょう。対象外であっても、将来IPO(株式公開)を目指していたり、大型のM&Aを検討していたりする場合には、任意適用を視野に入れるべきかの判断が必要になります。
現在締結している全てのリース、賃借契約(名称が「リース」でなくても、実態としてリースに該当する可能性のある賃借契約やSaaS契約なども含む)を洗い出し、契約内容を詳細に把握しましょう 。特に、リース期間やリース料総額、解約不能期間、残価保証の有無などを確認し、新リース会計基準の定義に照らして「リース」に該当するか、また「短期・少額リース」の簡便処理が適用できるかを判断しておきます。
新基準への対応には、契約の識別、評価、会計処理、税務調整など、新たな業務プロセスと専門知識が必要になります。そのため、経理部門の教育や、必要に応じて会計システムの改修や新システムの導入などを検討し、実務負担の軽減を図る検討を始めましょう。
中小企業は、限られたリソースの中で新基準に対応するため、会計ソフトのアップデートだけでなく、AIを活用した契約管理システムなど、外部ソリューションの導入を積極的に検討すべきです。また、税務調整の複雑さや財務指標への影響を考慮すると、税理士や会計士といった専門家との連携を強化することが、適切な対応とリスク回避のために極めて重要となります。
新リース会計基準が適用されると、これまで費用として処理していたリース契約の一部が、帳簿上では「使用権資産」(貸借対照表上の資産)と「リース負債」(貸借対照表上の負債)として記載されることになります。その結果、自己資本比率(会社の安全性を示す指標)やROA(資産を使ってどれだけ効率よく利益を出しているか)などの財務指標が、実態に変化がなくても悪く見えてしまうことがあります。
このような決算書の見た目の悪化は、外部利害関係者による融資判断や投資評価に影響する可能性があります。そのため、まずは新リース会計基準を適用した場合に、どのくらい財務数値が変動するかをあらかじめ試算(シミュレーション)しておくことが重要です。
また、必要に応じて、外部利害関係者に対し、「会計ルールの変更による財務指標の悪化が想定されますが、経営の実態は変わっていない」ことなどを事前に説明しておくと、誤解や不安を招かないですみます。
以上(2025年8月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 公認会計士 仁田順哉)
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後継者は望むと望まざるとに関係なく、先代が築いたさまざまな経営の資産を引き継ぎます。収益や負債、それ以外にも会社の雰囲気のような無形のものまで引き継ぎます。先代が抜群のカリスマ性で組織を率いていたら、後継者は自分にもカリスマ性があるか悩みますし、周囲も先代と後継者を比較します。
そのようなとき、後継者の選択は、
といったものです。例えば、「自分を出す」であれば、
「私は先代のようなカリスマ性はありませんので、全員で知恵を出し合いながら経営をしたいと思います。どうか力を貸してください」
などと宣言します。後継者は後継者であり、自由なのです。
ただし、一つだけ決して忘れてはならないことがあります。それは、
その経営の資産は、先代からの授かり物ではなく、未来からの預かり物である
ことです。先代が残してくれたものは、会社をさらに発展させて未来にバトンをつなぐために使うものなのです。
「自分は自分」と思っていても、会社が積み重ねてきた歴史はやはり重たいものです。老舗のブランド、積み上げてきた利益など、後継者はそれらを守らなければならないというプレッシャーを感じるでしょう。
厳しいようですが、これは後継者の宿命として受け入れるしかありません。また、新しいことにチャレンジしなければ老舗であっても潰れる時代ですから、「ブランドを守りつつ、新しいことにチャレンジする」という難しいかじ取りも求められます。これを実行した結果、一時、収益は落ち込むかもしれませんが、将来の飛躍のための通過点と割り切るくらいのハートの強さを持ってください。
特に中小企業の場合、社長の意向やキャラクターによって会社の雰囲気が決まります。今、先代の雰囲気で会社がうまく回っているとしたら、後継者はそれを壊したくないとプレッシャーを感じるでしょう。事業承継をきっかけに辞める社員が出ているようなら、なおさらです。
しかし、これは一過性のものなので安心してください。後継者は意識しなくても、後継者がそこにいるだけで、自然に後継者の雰囲気が会社になじんでいきます。また、ほんの一部の社員を除けば、社員は後継者が考えているほど過去の雰囲気に固執していませんし、深く考えてもいません。
当然ながら、これまでの取引を守らなければならないというプレッシャーを感じるでしょう。しかし、残念なことに、自社との取引を見直したいと考えていた先は、事業承継をきっかけに取引解消や値下げを申し出てくるかもしれません。いきなりタフな交渉となりますが、結果はどうあれ、やられっ放しは駄目なので、つらくても踏ん張って自身の存在感を示してください。
見方によっては、事業承継をしてすぐにタフな交渉に臨むことで、経営者としての胆力も鍛えられるでしょう。それに、事業承継を利用したいのはこちらも同じです。例えば、
先代の時代は人が手作業でやっていたことを、生成AIで代行できないか検討してもらう
など、取引慣習を見直す絶好のチャンスです。
いずれにしても、最初のうちは取引先と交渉する内容について先代に相談するようにしましょう。どういった経緯で現在の取引になっているのかが分かれば交渉を有利に進められます。
困ったことがあったときに限らず、定期的に話を聞いてくれるメンターを持ちたいものです。全く別の視点からのアドバイスは、後継者にとって厳しくもあり、優しくもあります。メンターはさまざまな出会いの中で見つけます。「この人だ!」という人がいたらメンターになってほしいとお願いすればよいですし、経営者仲間から紹介してもらうこともできるでしょう。
また、よくいわれることですが、経営者は孤独です。それは、経営者の気持ちは経営者しか分からないところがあるからです。そこで、ぜひとも、利害関係のない経営者仲間を持ちたいものです。後継者教育の一環として大学院に通ったのなら、その同窓生は仲間になりやすいです。異業種交流会に参加して、気の合う経営者と仲良くなることもできます。相手も経営者仲間を探しているので、ハードルは高くないです。
経営者は多忙ですが、勉強しない人はいません。「本を読む」「人から話を聞く」など、どのような方法でもよいので、ぜひ、最新で多様な情報に触れる機会を必ず持ってください。これを怠ると、本当にあっという間に時代に取り残され、周囲の話についていけなくなります。
なお、勉強するというと専門家のような知識を身に付けることを考えるかもしれませんが、そこまでの必要はありません。肝となる部分さえ押さえておけば大丈夫です。ただし、念のためにお伝えしますと、
本業については他を寄せ付けないほどの専門家
でなければなりません。
以上(2025年8月更新)
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目次
【賃金データ集】シリーズは、基本給や諸手当など賃金の主要な構成要素ごとの近年のトレンドを、モデル支給額を中心とした関連データとともに紹介します。経営者や実務家の方々が賃金支給水準の決定や改定を行う際の参考としてご活用ください。なお、モデル支給額などのデータを紹介する際は、基本的に出所に記載されている用語を使用するものとします。また、データは公表後に修正されることがあります。
この記事で取り上げるのは「賃金体系・形態管理と支給額の検討」です。
なお、以降で紹介する図表データのExcelファイルは、全てこちらからダウンロードできます。
2024年の男性の所定内給与額は36万3100円です。一方、2024年の女性の所定内給与額は27万5300円で、男性の所定内給与の75.8%の水準です。同じ計算をすると、1980年の女性の所定内給与は男性の58.9%の水準だったので、約40年間で16.9ポイント上昇したことが分かります。

賃金をマネジメントする上で、最初に知っておきたいのが「賃金体系」です。賃金体系とは、賃金の要素である基本給や諸手当の組み合わせのことです。賃金体系を理解することで賃金の全体像が把握できるようになります。

現金給与の「毎月きまって支給する給与」の中心は「基準内賃金」で、概要は次の通りです。
通常の労働に対して支払われる基本給や諸手当のことで、基準外賃金の算定基礎になるもの
なお、諸手当のうち、家族手当、住宅手当、通勤手当などは基準外賃金の計算の基礎から除外できるため、基準内賃金に含めないケースがあります。
また、基準内賃金と似た言葉に「所定内給与(賃金)」があります。基準内賃金と所定内給与はほぼ同義ですが、所定内給与は企業が就業規則などに定めた所定労働時間の労働に対する賃金で、家族手当、住宅手当、通勤手当などが含まれます。
基準内賃金の中心は「基本給」です。基本給は次のように大別されますが、一般的なのは属人給と仕事給です。
基本給の要素を属人給と仕事給に振り分けることが難しい場合、「本給」などの名目で設定されるのが典型ですが、運用しやすい一方、評価基準が曖昧になりがちという問題があります。

基本給の体系は、属人給や仕事給などをどのように組み合わせるかによって次のように大別されます。
単一型体系の場合、「研究職は100%職務給」「営業職は100%成果給」といった運用ができますが、配置転換で職務が変更された場合、労働者がケガなどをした場合などに問題が生じるため、これを導入する企業と対象となる労働者は限られます。このような事情から、多くの企業は併存型体系を導入しており、属人給と仕事給の割合を調整することで賃金制度をマネジメントしています。
現金給与の「毎月きまって支給する給与」のもう1つの要素が「基準外賃金」で、概要は次の通りです。
通常の労働以外に対して支払われる賃金で、時間外労働手当(いわゆる「残業手当」)など
基準外賃金は、通常よりも割り増しした金額を支払わなければならず、その割増率は労働基準法で定められています。いわゆる「残業」が慢性化している企業では、基準外賃金が大きな負担になります。特に、2023年4月1日からは、中小企業に対する割増賃金率の猶予措置が廃止され、従業員の残業(時間外労働)が1カ月で60時間を超える場合、その時間については50%以上の割増賃金の支払いが必要になったため、注意が必要です。
また、基準外賃金と似た言葉に「所定外給与(賃金)」がありますが、これは基準外賃金と同じ意味です。
賃金は労働の単位(時間や出来高)に応じて支払うという考え方があり、それを類型化したものが「賃金形態」です。具体的には、次のようなパターンがあります。
賃金形態を管理することで、雇用形態(正社員やパートなど)、職務の難易度、成果を上げるまでの期間などに応じて賃金をマネジメントしやすくなります。
注意が必要なのは、労働基準法の「賃金支払いの5原則」です。賃金支払いの5原則は次の通りで、一部、例外があるものの、順守しなければなりません。そのため、年俸制を導入した場合でも、年俸を12等分して毎月支払うことになります(賞与を支払う場合はさらに細かく分けて賞与相当分を確保します)。
厚生労働省「平成26年就労条件総合調査」によると、主な賃金形態で最も割合が高いのは「月給」の80.9%です。

労働者が労働力を提供し、企業がその対償として賃金を支払うことは労働契約の基本です。賃金支給額はこの点を前提としつつ、次の視点を考慮して決定されます。
労働者の労働力を購入するという「人件費」の視点です。他のコストと賃金(人件費)を全く同様に捉えることはできませんが、賃金が販売費・一般管理費(製造業などでは売上原価)の多くを占めているのは事実であり、これを適正水準に保つ必要があります。
賃金には、労働力の需給状況に応じて変化する市場性があります。具体的には、労働者数全体、特定の業界の就業者、特定の技能の習得者などが変化の要因になります。現在のような「売り手市場」だと、一般的に賃金は上昇します。
賃金は企業規模、業種、地域によって支給水準が異なります。この水準を下回ると労働者の不満足につながり、他社に転職してしまうこともあります。企業は、モデル賃金に関する情報を収集し、自社との違いを確認しておく必要があります。
景気動向、雇用環境、人事制度の変化などによって賃金のトレンドが生じます。分かりやすいのは、人手不足への対策として賃上げを検討するケースです。
賃金は労働者にとって「生活の糧」であり、労働者の年齢、家族構成、居住地域などを考慮する必要があります。
企業への貢献度は、労働者の職務遂行能力、担当職務の難易度、具体的に達成した成果(売り上げや研究成果など)などによって変わるため、これを加味して賃金を決定します。
企業業績に連動し、利益分配の意味合いで支給する賃金です。毎月きまって支給される「業績給」と、臨時的に支払われる「賞与・期末一時金」の場合があります。
賃金支給額は前述した視点を考慮した上で決定され、それを実現するための仕組みが賃金制度として構築されます。これまでの日本企業の賃金制度は、その時々の状況に応じて年功主義から能力主義・成果主義へと変化してきました。主な流れを、基本給の構成要素の変化を中心に確認してみましょう。
戦後の日本の賃金体系に大きな影響を与えたのが、1946年に電力関係企業の労働組合が提案した、いわゆる「電産型賃金体系」です。これには、労働者の年齢、家族構成、勤続年数などに重きを置いた、生活防衛的・安定的な賃金制度であるといった特徴があり、基本給の中心は「年齢給」「勤続給」でした。
電産型賃金体系には、「職能給」などといった能力給も組み込まれてはいるものの、その割合はそれほど高くありませんでした。
家族構成や勤続年数などによって賃金の大部分が決定される電産型賃金体系への不満が高まり、1950年代後半から1980年代にかけて、基本給に「職能給」「職務給」が取り入れられるようになりました。
中でも職能給は、いわゆる「職能資格制度」として多くの日本企業に定着しました。しかし、職能資格制度が年功的に運用されるようになり、能力主義がほぼ有名無実化し、問題となりました。
1990年代に入ると、脱年功主義がより鮮明なものとなり、成果主義が注目されるようになりました。ここで基本給の要素として注目されたのが、「成果給」「業績給」です。
成果主義では、従業員が個人(あるいはチーム)で目標を達成するために取ったプロセスとその結果を評価するのが基本です。しかし、1990年代当時は、結果を必要以上に重視する企業が多く、「過酷な目標設定による従業員のストレス過多」「自分の成績につながらない仕事を嫌う従業員の発生」「確実に達成できそうな低い目標を掲げる従業員の発生」などの問題が生じ、多くの企業で成果主義の導入は失敗に終わりました。
もっとも、近年は業務管理ツールの発達に伴い、評価の中心を結果に置きつつ、プロセスについてもある程度評価する、バランスの取れた成果主義を導入している企業もあります。
賃金支給額を検討する際は「適正人件費」に注目します。適正人件費の算出方式はいくつかありますが、例えば、「売上高×付加価値率×労働分配率」によって求めます。付加価値は売上高から原価(製造業は材料費や外注加工費、小売業は売上原価)を差し引いたもので(業種によって異なります)、その割合が付加価値率です。また、労働分配率とは、付加価値に占める人件費の割合です。自社の過去3年分のデータと将来の利益目標を参考に付加価値率などを設定すれば、適正人件費の目安を把握することができます。

また、世間相場を確認するためには、自社の「適正人件費」だけではなく、他社の賃金支給状況も確認します。世間相場と大きな違いがある場合は、必要に応じて見直しを検討します。
中小企業庁「令和5年中小企業実態基本調査(令和4年度決算実績)」によると、合計の売上高労務費比率は6.43%、売上高人件費比率は9.67%です。


厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」によると、企業規模計、産業計の「きまって支給する現金給与額」は35万9600円で、そのうちの33万400円が所定内給与額です。差額の2万9200円は時間外労働手当などです。また、「年間賞与その他特別給与額」は95万4700円です。

この記事で紹介した統計資料は以下の通りです。調査内容は個別のURLからご確認ください。なお、内容はここ数年の公表実績に基づくものであり、調査年(度)によって異なることがあります。




以上(2025年8月更新)
pj17901
画像:ChatGPT
目次
中期経営計画とは、企業が3~5年後にどのような姿になっていたいのかを描き、その実現に向けて現状を整理し、必要な施策を決める計画です。変化が激しい時代には、企業の進むべき方向を社内外に共有し、目線を合わせる役割があります。
中期経営計画で示される3~5年の活動は、単年度の事業計画にも落とし込まれます。年度ごとの売上目標・製品販売個数などに反映することで、「将来あるべき姿」の達成に向け、具体的にどのような行動を起こせばいいかが定まってきます。
企業によりますが、中期経営計画は、基本的には以下の図のような手順で策定します。

この記事では、中期事業計画の事前準備から策定、運用に至るまでの一般的な流れと、そのポイントをご紹介します。
中期経営計画を策定するには、まず自社の現状を確認し分析することが必要です。ここでは
の2つのフレームワークを紹介します。自社を取り巻く環境について確認することが、中期経営計画策定に向けた第一歩です。
他にも外部環境・内部環境の分析に使えるフレームワークとして、自社の強み・弱みを確認する「SWOT分析」、業界の競争環境を分析する「ファイブフォース分析」などがあります。
PEST分析は、自社を取り巻く外部環境のうち、政治や経済といった世の中の大きな流れを整理し、確認するフレームワークです。「PEST」(ペスト)は、分析する4つの項目の頭文字を表しています。
項目ごとに現状を洗い出し、それが自社にとってプラス(↑)なのかマイナス(↓)なのかをまとめます。分析を重ねていけば、単に現状を理解するだけでなく、これからの時代の変化を予測するのにも役立ちます。

3C分析は、顧客(市場)・競合・自社の現状を洗い出すフレームワークです。顧客(市場)のニーズや、競合に対する自社の優位性といった現状を把握するための基本となるものです。それぞれ確認する主な指標や項目などは次の通りです。
3C分析では、市場規模・販売実績・市場シェアなどの定量面と、顧客(市場)のニーズの変化・競合の営業戦略といった定性面の両方を洗い出します。特に難しいのは定性面ですが、現場の営業担当者が持っている情報や、顧客アンケートなどを活用すると理解が深まります。

PEST分析や3C分析などを活用して現状を把握する際は、財務省「貿易統計」、内閣府「景気動向指数」、総務省「国勢調査」などの公的データに加え、新聞、インターネット、関係各所へのヒアリングなどが必要です。
現状分析で自社の立ち位置を把握したら、自社が勝負する事業領域である「事業ドメイン」を決めます。創業時などを除けば、既に事業ドメインは決まっていることが多いでしょう。そのため中期経営計画を策定する際には、現状分析に基づいて、「事業ドメインを見直すかどうか」を検討します。
事業ドメインの決定や見直しは、企業が今後成長していくための“要”です。何もかも経営者1人で決めず、日々現場でビジネスを進めている社員の、自社に対する意見をよく聞くことも大切です。
今後の成長戦略を考える際には、「アンゾフの成長マトリクス」が有効です。市場(既存・新規)と製品(既存・新規)の組み合わせによって、次の4つの戦略が考えられます。

「既存市場×既存製品=市場浸透」は、これまでの自社のノウハウを活かしやすいこともあり、成功率が高い戦略といわれています。具体策としては、新しい提案方法で使用量を増やすなどが考えられるでしょう。
「新規市場×既存製品=新市場開拓」は、例えばターゲットの拡大です。既存製品を使って他の顧客(市場)を開拓するので、既存製品に対するニーズがありそうな顧客(市場)を見極める力や、営業力の強化が必要になるでしょう。
「既存市場×新規製品=新製品開発」は、既存顧客の潜在ニーズの掘り起こしが求められるでしょう。
「新規市場×新規製品=多角化」では、思い切った新規事業開発が必要になるかもしれません。
こうして全体的な方向性が決定した後は、それを実現するためのマーケティング戦略や人材戦略などを個別に決めていくことになります。個別の戦略策定では、どこに経営資源を集中させるかという点を重視するとよいでしょう。
戦略策定の後、いよいよ具体的な計画を立案します。まずは、ビジョンの実現に向けて解決すべき課題を、時間軸とともに盛り込んでいくのが分かりやすいでしょう。次のような項目などで資料に落とし込むイメージです。

具体的な計画立案では、活動計画に落とし込んでいくのが大変です。そこで、「理由:なぜこの課題を改善するのか」「手段:改善するために必要なことは何か」などを整理していきます。
例えば、「理由:新規市場開拓に注力するためには営業面の人材確保・育成が課題」「手段:既存の営業担当者の社外研修、新しい営業担当者の採用枠拡大」といったことが考えられるでしょう。
改善する課題は企業によって違いますが、課題となりやすいのは売上増大や管理者層の育成、資金繰りなどです。現状分析に基づく自社の課題に加え、日本政策金融公庫「事業計画書」などを参考にすると、抜け漏れがなく課題を考えられるでしょう。

計画立案では、これからの活動を具体的な数値に落とし込みます。企業の状況にもよりますが、「営業利益」がポイントの1つです。3~5年先には「本業でどれだけもうけられるようになっていたいか」を念頭に、数値計画を立てていきます。

ただし、数値が一人歩きするようではいけません。3~5年先のビジョンを達成するため、「いつ、どのような課題を解決するか」「どのように営業利益を伸ばしていくか」といった活動計画と連動させると、具体的な経営計画となります。
まず、中期経営計画の内容を、経営者が全社員に伝えることが大切です。外部環境・内部環境から自社の置かれている現状を説明し、「なぜこのような中期経営計画が必要なのか」というところから話します。
このとき、ビジョンをしっかりと伝えましょう。例えば、「今から10年後の203X年に、我が社は○○のような姿になっている」と理想を語り、社員に夢を持たせるのもよいでしょう。
活動計画に含まれるプロジェクトやタスクには、それぞれ責任者を割り当てます。責任者はそれらを進行し、経営者に進捗状況を報告します。経営者は責任者と話し合い、「いつまでに」「何をするか」を決め、ガントチャートを作成しておくとよいでしょう。こうして責任者を明確にしておけば、「計画は立てたものの、誰も何も動いていなかった」という事態を防げます。
また、細かな確認のためにプロジェクトなどの進行が止まらないように、責任者にはある程度の権限を与えることも必要です。
進捗を確認できる仕組みをつくります。例えば、毎月1回、責任者を集めて報告会を行うようにします。オンラインミーティングが定着した今、地理的に離れた場所にいる責任者ともコミュニケーションが取りやすくなりました。事前に動画や資料で状況を報告してもらうことで、責任者が順番に話す単なる報告会ではなく、その場で議論ができるようになります。
月次決算は、中期経営計画の達成度合いを把握するのに有効です。とはいえ、年度末の決算書のようなルールがないので、数値計画と照らし合わせやすいように、売上や利益であれば取引先別・製品群別に管理するなどの工夫が必要です。いわゆる「管理会計」の分野です。
ただし、管理会計は凝り過ぎると実務負担が大きくなるので注意しましょう。売上原価を管理する場合はあまり科目を細かくせずに、固定費と変動費の内訳がおおよそ分かるくらいのレベルでよいでしょう。
中期経営計画は策定して終わりではなく、実行、つまり具体的な行動が伴わなければ意味がありません。また、行動の内容は外部環境・内部環境の変化などに応じて柔軟に見直す必要があります。その時々の状況によって優先すべきことは変わってくるからです。
また、市場環境が大きく変化した場合は「将来あるべき姿」そのものを見直さざるを得ないこともあります。企業にとって、「将来あるべき姿」はとても重要ですが、企業経営では、多角化によって事業ドメインそのものを変えなければならないこともあります。こうした大きな方向転換は大変なことです。
とはいえ、「事業ドメインそのものを変えるべき」なのに、その変化に気付かず進んでしまうことのほうが問題です。「将来あるべき姿」を決めたからといって、必ずそのゴールにたどり着かなければならないわけではないのです。
中期経営計画を策定した後は、常に「本当にこれが自社にとって正しいのか」を客観視する目を持ち、変化を捉え続ける努力が求められます。こうした努力こそが、中期経営計画を支え、企業の未来をつくっていくのです。
以上(2025年9月更新)
pj80018
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