【3分で分かる個人情報保護(8)】個人情報の取り扱いについて苦情が来たら、どうすればいいの?

1 個人情報の取り扱いについて苦情が来ても対応できる準備を

個人情報の取り扱いについて苦情が来たときの処理は、法律上あくまで努力義務ですが、消費者などの本人との信頼関係を構築し、事業活動に対する社会の信頼を確保するため、実務上は対応が必須と考えられます。

「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」は、苦情の適切かつ迅速な処理を行うに当たり、必要な体制の整備として、

  • 苦情処理窓口の設置や苦情処理の手順を定める

ことなどを挙げています。また、

  • いわゆるプライバシーポリシーを策定し、それを公表する(ホームページへの掲載、店舗の見やすい場所への掲示など)ことで、あらかじめ、対外的に分かりやすく説明する
  • 委託の有無、委託する事務の内容を明らかにする等、委託処理の透明化を進める

といったことも重要です。特に、前者のプライバシーポリシーの掲載等は、消費者等との信頼関係を構築するのに役立つでしょう。

なお、個人情報取扱事業者は、保有個人データの取り扱いに関する苦情の申出先について、本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)に置かなければなりません。「本人の知り得る状態(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)」とは、

ホームページへの掲載、パンフレットの配布、本人の求めに応じて遅滞なく回答を行うこと等、本人が知ろうとすれば、知ることができる状態に置くこと

で、常にその時点での正確な内容を本人の知り得る状態に置く必要があります。この対応は努力義務ではなく「義務」です。

苦情の申出先としては、苦情を受け付ける担当窓口名・係名、郵送用住所、受付電話番号その他の苦情申出先(個人情報取扱事業者が認定個人情報保護団体の対象事業者である場合は、その団体の名称および苦情解決の申出先を含む)とされています。

2 (参考)認定個人情報保護団体制度

認定個人情報保護団体は、個人情報保護委員会の認定を受けて、業界・事業分野ごとに個人情報の保護の推進を図るための自主的な取り組みを行っている団体です。

認定個人情報保護団体は、消費者と事業者の間に立ち、対象事業者である個人情報取扱事業者の個人情報の適正な取り扱いの確保を目的として、消費者からの苦情の処理や相談対応を行うこととされています。

対象事業者になると、認定個人情報保護団体から苦情処理の第三者機関としての関与・アドバイスを受けられます。また、個人情報保護法などに関連する最新の情報提供も受けられます。

個人情報保護委員会では、認定個人情報保護団体一覧を公表しています。対象事業者になるための要件は、認定個人情報保護団体ごとに異なります。

■個人情報保護委員会「認定個人情報保護団体一覧」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/nintei/list/

以上(2024年12月更新)

pj60355
画像:Orapun-Adobe Stock

【かんたん所得税(6)】税金の特典が受けられる「青色申告制度」

書いてあること

  • 主な読者:これから個人事業を起業しようとする人や不動産所得、山林所得がある人
  • 課題:確定申告には、青色申告と白色申告とがあるが違いが分からない
  • 解決策:税務署への届出や帳簿の記帳などを義務付ける代わりに、各種特典が与えられる

1 確定申告は色によって違う? 青色と白色の違い

所得税の確定申告には「青色申告」と「白色申告」とがあります。

  • 青色申告:日々の取引を複式簿記で記録する代わりに、さまざまな特典が受けられる
  • 白色申告:簡便な帳簿記録でよい代わりに、青色申告で受けられるような特典がない

近年はクラウド型の会計システムの導入が進み、会計の知識がなくても簡単に青色申告に必要な書類が作れるようになったことから、青色申告の壁はほとんどありません。そこで、この記事では、青色申告制度を受けるための手続きや特典を説明します。

なお、青色申告ができるのは、不動産所得、事業所得または山林所得が生ずる業務を行っていて、納税地の所轄税務署長の承認を受けた人です。個人事業主はもちろんですが、副収入として不動産所得のある給与所得者なども青色申告ができます。

2 青色申告の手続き

青色申告をしたい人(今まで白色申告だった事業者や、1月1~15日の間に開業した事業者)は、青色申告をしたい年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出します。例えば、2024年分の所得税を青色申告したいなら、2024年3月15日が提出期限となります。ただし、その年の1月16日以後の新規開業の場合は開業日から2カ月以内に提出すれば大丈夫です。

なお、申請書の提出後に特段の承認通知はなく、申請却下の連絡がなければ受理されたことになります。

3 青色申告者がすること

1)記帳の義務

青色申告をする人は、帳簿書類を備え付け、これに不動産所得、事業所得および山林所得の金額に係る取引を記録し、保存します。この記帳は原則として、複式簿記で行う必要があります。特例として、損益計算書が作成できる程度に簡略された簡易帳簿(現金出納帳や固定資産台帳のみなど)による記帳も認められます。しかし、青色申告の特典の1つである青色申告特別控除額が10万円に減額されます(複式簿記の場合は最高65万円)。なお、山林所得は10万円の控除のみです。

2)添付の義務

青色申告書には、貸借対照表、損益計算書その他不動産所得、事業所得または山林所得の金額の計算に関する明細書を添付しなければなりません。ただし、簡易帳簿による場合は、貸借対照表の添付は必要ありません。

4 青色申告の代表的な特典

1)青色申告特別控除

1.65万円の青色申告特別控除

次の要件を満たす青色申告者は、不動産所得または事業所得の金額の計算上、合計65万円を控除できます。この控除は、不動産所得の金額、事業所得の金額から順次控除します。なお、不動産所得または事業所得の金額が65万円より少ない場合は、原則として、その金額が限度となります。

イ.不動産所得に係る業務を事業的規模で行っていること、または事業所得を生ずべき事業を行っていること

ロ.不動産所得、事業所得に係る一切の取引の内容を詳細に帳簿に記録していること

ハ.期限内に確定申告書を提出し、かつ、貸借対照表、損益計算書その他不動産所得または事業所得の金額の計算に関する明細書を添付していること

ニ.青色申告書と決算書を、提出期限までにe-Taxにより提出していること、または仕訳帳・総勘定元帳を電子帳簿保存(税務署長へ届出が必要)していること

不動産所得を生ずべき業務については、貸付不動産が、アパートやマンションならおおむね10室以上、貸家ならおおむね5棟以上であれば事業的規模とされます。

なお、上記ニ.の要件のみを満たしていない場合の控除額は55万円です。

2.10万円の青色申告特別控除

簡易帳簿で記帳を行うなど、上記1.の要件を満たさない青色申告者は、不動産所得、事業所得または山林所得の金額の計算上、合計10万円を控除できます。この控除は、不動産所得の金額、事業所得の金額、山林所得の金額から順次控除します。なお、不動産所得、事業所得または山林所得の金額が10万円より少ない場合は、原則として、その金額が限度となります。

2)青色事業専従者給与額の必要経費算入

不動産所得、事業所得または山林所得の金額の計算上、青色事業専従者(事業に携わっている家族など)に支払った給与や賞与を必要経費に算入できます(退職金は算入できません)。給与を必要経費に算入すると所得が減り、納税額も減ります。

3)純損失の繰越控除・繰戻還付

その年の事業所得などが赤字(純損失)となった場合に、翌年以降3年間の繰越控除(翌年以降3年間の黒字と相殺)またはその前年への繰戻還付(前年の黒字のうち、その年の損失分の還付を受けられる)の請求ができます。

5 青色事業専従者給与額の必要経費算入の注意点

1)青色事業専従者とは

青色事業専従者とは、青色申告者と同一の生計で暮らしている15歳以上の親族で、一定期間、専ら青色申告者が営む事業に携わる人です。青色事業専従者は、支給額をその年分の給与所得に係る収入金額とされます。そのため、支給時には所得税の源泉徴収が必要です(支給額が月額8万8000円以上の場合)。

2)必要な手続き

この規定の適用を受ける場合、その年の3月15日まで(その年の1月16日以降に事業を開始した場合、または新たに青色事業専従者を有することとなった場合は、その開始した日あるいはその有することとなった日から2カ月以内)に「青色事業専従者給与に関する届出書」を、税務署に提出します。

また、その給与の金額の基準を変更する場合や新たに青色事業専従者が加わった場合は、変更届出書を遅滞なく提出しなければなりません。

3)専ら従事するかどうかの判定

まず、学生や他に職業のある人は、原則として専従者として認められません。その上で、その事業に専ら従事するかどうかの判定は、その年を通じて事業に従事している期間が6カ月を超えるか否かで行います。しかし、開業や廃業などでその年を通じて事業が営まれなかった場合や、専従者の死亡、長期にわたる病気、婚姻などによりその年を通じてその事業に従事することができなかった場合は、従事可能期間の2分の1を超える期間を従事すれば大丈夫です。

例えば、9月初めに開業した場合の従事可能期間は9~12月の4カ月なので、2カ月超をその事業に従事すればよいことになります。

以上(2024年12月更新)
(監修 エスコート税理士法人 税理士 林孝行)

pj30026
画像:unsplash

【人事はつらいよ】社員の問題行動、さんざん我慢してきたのに、いざ懲戒処分にしたら無効?

1 懲戒処分を受け入れたはずの社員がユニオンに……

A社の社長は、社員のBさんのことで悩んでいます。Bさんは、A社の商品の納品担当なのですが、先日、ある取引先から「依頼したものと違う商品が納品された」とクレームが入ったのです。正しい商品を納品し直し、その場は収まりましたが、Bさんはこれまでに何度も同じような納品ミスを繰り返しています。見かねた社長は、ある日、Bさんを呼び出しました。

「Bさん、度重なるクレーム対応や再納品の手配で、会社に損害が出ている。これまでは大目に見てきたが、もう見過ごせない。懲戒処分として、減給にさせてもらうよ」

Bさんは、その場では社長に謝罪し、懲戒処分を受け入れました。しかし、数日後、A社に1本の電話が……。電話の主は、Bさんから相談を受けた外部のユニオン(合同労働組合)の担当者で、「今回のBさんの納品ミスに対して、減給という懲戒処分は重すぎる」と、処分の撤回を求めてきたのです。社長は釈然としません。

「Bさんが反省し、変わってくれると信じて我慢してきたのに、いざ懲戒処分にしたら『処分が重すぎる』って、どういうことだ? 納得いかない……裏切られた気分だ」

2 まずは軽い懲戒処分から、改善が見られなければ重い処分へ

懲戒処分とは、問題行動を起こした社員に対して会社が行う制裁のことで、一般的には次の7種類に分けられます。1.が最も軽く、7.が最も重い懲戒処分です。

  1. 戒告:厳重注意を言い渡す
  2. けん責:始末書を提出させ、将来を戒める
  3. 減給:一定期間、賃金額を下げる
  4. 出勤停止:数日間、出勤することを禁じ、その間は無給とする
  5. 降格:役職の罷免・引き下げ、または資格等級の引き下げを行う
  6. 諭旨解雇:退職届の提出を勧告した上で、退職届の提出がなければ解雇とする
  7. 懲戒解雇:即時に解雇する

就業規則に「懲戒事由」の定めがあり、社員がその懲戒事由に該当した場合、会社は就業規則にのっとって、社員に懲戒処分を課します。冒頭の事例の場合、A社の就業規則に、

「故意または過失により会社に損害を与えたとき」などの懲戒事由の定め

があれば、「理論上」はBさんに懲戒処分を課すことが可能です。

ただ、難しいのは、労働契約法の中に、

社員の問題行動の内容に照らして、重すぎる懲戒処分は無効になる

というルールがあることです。例えば、「1日無断欠勤した社員を、懲戒解雇する」というのは、明らかに重すぎる懲戒処分で、認められません。

「どの程度の懲戒処分が妥当か」は裁判などで個別の事案ごとに判断されるので、一概には言えませんが、おおまかに目安を示すなら次のようなイメージになります。

画像1

「出勤停止、降格」や「諭旨解雇、懲戒解雇」といった懲戒処分は、基本的には犯罪行為やハラスメント、会社に重大な損害を与える情報漏洩などに対して適用されます。従って、これらに該当しない業務上のミスなどについては、

まずは「戒告、けん責」などの軽い懲戒処分を実施し、処分の後も社員に改善が見られなければ、「減給」などの重い処分に切り替えていく

というのが、基本的な考え方になります。

また、実際に懲戒処分を検討する際は、次のような要素を考慮する必要があります。

  • なぜ、問題行動が発生したのか
  • 業務にどのような影響があったか(会社に与えた損害の程度、他の社員への影響など)
  • 社員の勤務歴、過去の処分歴、反省の様子はどうか
  • 会社側に落ち度はなかったか など

冒頭の事例の場合、Bさんは度重なる納品ミスによりA社に損害を与えていますが、過去の納品ミスについて会社が戒告やけん責を行っていなければ、裁判などで減給が「有効」と認められるハードルは高くなります。

また、会社に与えた損害が少額で減給が妥当といえない場合や、「Bさんの業務量が他の社員よりも明らかに多く、その業務をこなすためのフォローを受けられていない」「適切な業務命令がなされていない」など、会社側にも落ち度がある場合、懲戒処分が認められない可能性があります。

この他、懲戒処分自体は妥当であっても、「Bさんに弁明の機会を与えていない」など、手続きに問題がある場合、懲戒処分が無効になることがあるので注意が必要です。

3 減給の場合、控除金額にも注意!

減給の場合、懲戒処分が認められるかという問題の他に、控除金額(賃金額の下げ幅)にも注意しなければなりません。労働基準法の中に、懲戒処分として減給を行う場合、

1回の控除金額が「平均賃金(過去3カ月間の賃金総額を暦日数で除した金額)の1日分の50%以下」、総額が「1回の賃金支払総額の10%以下」になるようにしなければならない

というルールがあるからです。

例えば、月給制(毎月1日から月末までを賃金の支払対象期間とする)の場合、1日から月末までの間に

  1. 社員の問題行動が1回しか発生していないなら、「平均賃金の1日分の50%以下」
  2. 社員の問題行動が複数回発生しているなら、「1回の賃金支払総額の10%以下」

が、1回の賃金支払いで控除できる額の上限になります。1.の場合、仮に社員の平均賃金が1日1万円(月給30万円のイメージ)だとしたら、5000円までしか控除できません。また、1回の問題行動に対しては1回の減給しか認められないので、例えば、

4月分の賃金について減給を行っても、5月分の賃金からは元に戻さなければならない

という問題が出てきます。経営者によっては、「社員に反省を促すための減給なのに、その程度しか認められないの?」と不満に思うかもしれません。

こうした場合、懲戒処分以外の方法で減給を行うという手もあります。例えば、

  • 懲戒処分としてではなく、能力適性の問題から降格を行い、結果として賃金が下がる
  • 人事考課に基づいて、基本給のうち、能力評価に基づく部分の金額だけを下げる

といったケースは、懲戒処分としての減給には当たらないので、前述した控除金額のルールが適用されません。ただし、就業規則(賃金規程など)の範囲を逸脱して減給を行うと、人事権の濫用とみなされることがあるので、その点は注意が必要です。

懲戒処分は、いつの時代も難しい問題です。経営者はかなり温情をかけているつもりでも、社員のほうは「懲戒処分を受けた」という意識ばかりが先行してしまい、その労使の擦れ違いがトラブルに発展することがあります。万が一トラブルになった場合に備え、法令のルールを正しく押さえておくことは大切です。

以上(2024年12月更新)
(監修 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

pj00644
画像:metamorworks-shutterstock

【3分で分かる個人情報保護(7)】保有個人データについて問い合わせが来たら、どうすればいいの?

1 保有個人データについて所定の情報は本人の知り得る状態に

会社が保有する個人データのことを「保有個人データ」といいます。正確な定義は、

個人情報取扱事業者(会社)が、開示、内容の訂正、追加または削除、利用の停止、消去、第三者への提供の停止を行うことのできる権限を有するもの

です。

保有個人データについては、次の1から5までの情報を本人の知り得る状態に置かなければなりません(本人の求めに応じて遅滞なく回答する場合を含む)。

  1. 個人情報取扱事業者の氏名または名称および住所(法人にあっては、その代表者名)
  2. 保有個人データの利用目的
  3. 利用目的の通知の求めまたは開示等の請求に応じる手続きおよび手数料の額
  4. 保有個人データの安全管理のために講じた措置
  5. 保有個人データの取扱いに関する苦情の申出先

実務上は、講じた措置の概要や一部をホームページに掲載し、残りを本人の求めに応じて遅滞なく回答を行うといった対応が可能です。とはいえ、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」に沿って安全管理措置を実施しているといった内容の掲載や回答のみでは適切ではないとされており、具体的にどういった措置を講じているのかを掲載したり、回答したりする必要があります。

2 保有個人データの開示等の請求等への対応

本人(または代理人)から

  • 保有個人データの「利用目的の通知」の求め
  • 保有個人データの「開示」「第三者提供記録の開示」「内容の訂正・追加・削除」「利用の停止」「消去」「第三者への提供の停止」の請求

があった場合、原則としてその求めや請求に沿って対応しなければなりません。

これらの開示等の請求を受け付ける方法として次の(1)から(4)までの事項を定めることができる(ガイドライン3-8-7参照)ので、実務的にも、あらかじめ定めておくほうがよいでしょう。

画像1

なお、本人(または代理人)の請求等に対して、確認・調査を行った結果、そもそも当該保有個人データが存在しないことや、第三者提供をしていないこともあり得ます。また、請求された措置をとらない決定をすることもあり得ます。例えば次のような場合です。

画像2

請求された措置をとらない、またはその措置と異なる措置をとる場合は、その旨を遅滞なく本人に通知しなければならないのですが、注意が必要なのは、その理由も説明することが求められるということです。あくまで努力義務ではありますが、実務上、事態をこじらせないために、本人が納得のいくように理由を説明することが大切です。

以上(2024年12月更新)

pj60354
画像:mayucolor-Adobe Stock

【朝礼】仕事納めの日に伝えたい、たった1つのこと

【ポイント】

  • 今あるビジネス基盤「1」を、「0」ベースで見直し、新たなビジネス「2」を生み出す
  • こうしたチャレンジは、社員が経営者に着いてきてくれるからこそできること
  • 社員への感謝を忘れず、そして「1→0→2」のチャレンジを続けていこう

2024年も今日で仕事納めとなります。今年最後の朝礼で、私から皆さんに伝えたいことは1つだけ。「今年も、私のような経営者についてきてくれて本当にありがとう!」です。今年、我が社は大きなピンチに見舞われながらも、それを切り抜けることができました。新しいことにもチャレンジし、将来への布石を打つことができました。ひとえに皆さんの頑張りのおかげです。

今年の我が社の目標は「1→0→2」でした。これは、今あるビジネス基盤「1」を、「0」ベースで見直してダイナミックに改革を推し進め、新たなビジネス「2」を生み出すチャレンジを意味します。現場で働いている皆さんはあまり意識していなかったかもしれませんが、私には、多くの社員が積極的にチャレンジしている姿がはっきりと見えていました。これは、とてもうれしいことです。

一方、私は反省しています。私はこれまでもさまざまな場面で、皆さんとともに「2」を創り上げようという話をしてきたつもりですが、振り返ると私からの一方通行で、皆さんがその時々でどのような状況に置かれていたのか、皆さんの話をしっかり“聞き切る”ことができていませんでした。その反省を踏まえ、そして皆さんへの感謝を込めて、次の「ありがとう」を皆さんに贈ります。

  • あ:私から「あいさつ」をします
  • り:皆さんが夢中になれる「理想」を掲げます
  • が:誰よりも「頑張る」姿勢を貫きます
  • と:「共」に考え、悩み、喜ぶようにします
  • う:「上から目線」を改めます

「1→0→2」の取り組みは、来年も続きます。今年の成果を来年につなげるため、年末年始は家族と団らんする、思い切り趣味を楽しむなどしっかり休息を取ってください。よいお年を!

以上(2024年12月更新)

pj16794
画像:Mariko Mitsuda

え、うちの社員がギャンブル依存症!? WHOも認める病気に会社としてどのように向き合うか

1 ギャンブル依存症は誰でもなり得る?

大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手の口座から巨額の預金を不正送金し、銀行詐欺罪などで訴追された元通訳が、自ら告白したことで注目される「ギャンブル依存症」。

ギャンブル依存症は、ギャンブルにのめり込み、自分ではコントロールができなくなってしまう精神疾患の1つ

で、世界保健機関(WHO)では「病的賭博」、米・精神医学会では「ギャンブル障害」として診断基準が定められています。

日本でも「ギャンブル等依存症対策基本法」により、ギャンブル等(公営競技である競馬・競輪・競艇・オートレース、その他パチンコ・パチスロといった射幸行為)にのめり込むことで、日常生活・社会生活に支障が生じている状態を「ギャンブル等依存症」と定義しています。

健全な娯楽のレベルで楽しむぶんには個人の自由ですが、仕事も手につかなくなるほどギャンブルにのめり込んでしまう社員がいたら、とても困りますよね。ただ、会社として社員の趣味にどこまで口を出してよいのかは悩むところもあります。

そこで、この記事では、

  • ギャンブル依存症について、会社が介入(懲戒処分など)できるケースを押さえること
  • ギャンブル依存症を生まない職場をつくること
  • ギャンブル依存症が疑われるときの参考情報、相談先を知っておくこと

をご提案します。

なお、ギャンブルは、広義には「金銭等を賭けて、より価値あるものを手に入れる行為」を指します。その意味では、FXや商品先物などの金融取引、宝くじやスポーツくじ、ゲームセンターのクレーンゲーム、スマホゲームやソーシャルゲームの「ガチャ」などもギャンブルといえるでしょう。また、違法ですが、海外のオンラインカジノや友人同士の賭け麻雀などの賭博もギャンブルです。この記事では便宜上、違法なものも含めて「ギャンブル」として扱います。

2 ギャンブル依存症の社員を解雇できるのか?

前提として、健全な娯楽として社員が個人的に行っているギャンブルを会社が規制することはできません。プライベートな時間をどう過ごすかは、基本的に労働者(=社員)の自由だからです。

ここでは、会社として判断が求められる次の3つの場合を考えてみましょう。

  1. 社員が行っているギャンブルが違法な賭博だった場合
  2. 合法でも勤務中に社員がギャンブルを行った場合
  3. ギャンブルに起因して社員が借金問題を抱えている場合

なお、判断の基になるのは、就業規則にどのように定めているかです。例えば、

就業規則にギャンブルに関する懲戒事由を定めていなければ、そもそも懲戒処分は不可

です。自社の就業規則が厚生労働省「モデル就業規則(令和5年7月版)」を参考に策定したものであれば、不足がないか確認の上、規定を見直して労働基準監督署に届け出るようにしましょう。

■厚生労働省「モデル就業規則(令和5年7月版)」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/model/

1)社員が行っているギャンブルが違法な賭博だった場合

多くの会社では、

「会社の名誉や信用を損なう行為をしないこと」

を服務規律の遵守事項として定めています。賭博は、刑法が定める犯罪類型の1つで、単純賭博の場合は50万円以下の罰金または科料、常習賭博の場合は3年以下の懲役が科されます。社員が賭博を行ったことが明るみに出れば、会社の名誉や信用を損なう恐れがあります。つまり、

賭博をすること自体が服務規律違反(懲戒事由)

になるというわけです。

懲戒処分の種類(懲戒解雇、出勤停止、減給など)は、事案の大きさなどに応じて決めることになります。ただし、解雇の判断は慎重に行わなければなりません。たとえ、社員が単純賭博の容疑で現行犯逮捕されたとしても、それをもって直ちに解雇することはNGです。逮捕された時点では、社員が本当に有罪なのかは分からないからです。

また、逮捕された社員の家族や弁護人から「会社に迷惑をかけられない」といった理由で退職の申し入れがあるかもしれませんが、承認するかどうかは、事案の重大さや捜査状況を見ながら検討するべきでしょう。

なお、逮捕された場合、社員は身柄を拘束され働けない状態になります(検察官が起訴・不起訴といった終局処分を決定するまでに、最長23日間(72時間+20日間)身柄を拘束される恐れがあります)。そのフォローをどうするかなどは検討する必要があります。

2)合法でも勤務中に社員がギャンブルを行った場合

同じく服務規律の遵守事項として、

「勤務中は職務に専念し、正当な理由なく勤務場所を離れないこと」

という定めもよく見受けられます。この定めにのっとると、

社員が勤務中に正当な理由なく店に行ってパチンコを打つのは服務規律違反(懲戒事由)

となります。

とはいえ、勤務場所を離れなくても、スマホがあれば、オンラインで競馬、競輪、競艇、オートレースに賭けることはできてしまいます。こうした行為を防ぐために、服務規律の遵守事項に「勤務中は職務に専念し、正当な理由なく私用で携帯電話他、通信機器での通話・メール等通信を行わない」旨を定めることも1つの手です。

なお、休憩時間は、労働者(=社員)に自由に利用させなければなりませんが、一定の制限を加えるのは可能です。服務規律の遵守事項に「休憩時間中のギャンブルを禁止する」旨を定めることも検討の余地があります。

このように「ギャンブルを禁止する」旨を定める場合、少なくとも会社のネットワーク環境からは、競馬、競輪、競艇、オートレース関連のウェブサイトに接続できないように設定するなど(Webフィルタリング)、技術的な対応も併せて行い、ルールと実態の整合性を保つように努めるとよいでしょう。

3)ギャンブルに起因して社員が借金問題を抱えている場合

社員がギャンブルに起因する借金問題を抱えていても、

職務遂行に影響を及ぼさない限り、会社が介入する余地はない

というのが原則です。とはいえ、社員が隠そうとしても、消費者金融業者などから督促の電話が会社にかかってきたり、裁判所から給与の差し押さえ命令が会社に送られてきたりすることで、借金問題は露呈します。

社員の借金問題が露呈したときには、本人としっかり話し合い、対応を決める必要があります。例えば、

社員が経理業務やレジ業務の担当の場合、直接お金を扱う職種を避けて配置転換をする

といった対応もあり得るでしょう。

また、現実には、社員が同僚から借金を重ねた挙げ句に、返済が滞りトラブルに発展することも起きています。こうしたトラブルを避けるためには、服務規律の遵守事項に

「社員間の金銭の貸借を禁止する」

といった定めを設けるとよいでしょう。

3 ギャンブル依存症を生まない職場づくりを

1)ギャンブル依存症の人は日本に何人いる?

ギャンブル等依存症対策基本法に基づいて2021年に行われた国立病院機構久里浜医療センターによる調査では、調査対象者の過去1年以内のギャンブル等の経験の評価結果から、「ギャンブル等依存が疑われる者」の割合を、成人の2.2%と推計しています(松下幸生、新田千枝、遠山朋海「令和2年度 依存症に関する調査研究事業 ギャンブル障害およびギャンブル関連問題の実態調査」、2021年)。

単純計算すると、社員数50人規模の会社では、ギャンブル依存症の社員が1人くらいいても不思議ではないということになります。

2)ギャンブル依存のメカニズムを知る

依存症の原因は、脳内の「報酬系」などの機能異常と考えられています。ギャンブルで勝ったときなどに、脳内では快楽物質であるドーパミンが放出され、多幸感や高揚感が得られます。そして、それを繰り返すうちに脳が刺激に慣れてしまい、より強い刺激を求めるようになります。その結果、行動がコントロールできなくなってしまうのがギャンブル依存のメカニズムと考えられています。

3)ギャンブル依存に至る変化を見過ごさない

最初は、興味本位で、友人や知り合いから教えてもらってギャンブルに手を出し、勝ったことに味をしめて、次第にのめり込んでしまうという人が少なからずいます。ギャンブル依存症になると、自らギャンブルをやめたくてもやめられない状態に陥り、泥沼から抜け出せなくなってしまいます。

例えば、職場で「パチスロで〇万円勝った」「週末に万馬券とった」「万舟きた」などと自慢気に吹聴している社員がいたら、度が過ぎていないか、それとなく言動に気をつけておきましょう。勤務中にギャンブルの話ばかりしているようであれば、口頭で注意することも必要です。

再三にわたって注意を聞かず、他の社員から苦情まで出てくるような場合などには、服務規律の遵守事項に照らして、けん責などの処分対象にすることも検討しましょう。

4 ギャンブル依存症が疑われるときの参考情報、相談先

1)ギャンブル等依存症対策推進本部

首相官邸に設けられたギャンブル等依存症対策推進本部では、ギャンブル等依存症を克服した人やその家族などからの体験談を公開しています。また、後述する「ギャンブル依存症問題を考える会」をはじめとする、相談先などを紹介しています。

■ギャンブル等依存症対策推進本部「ギャンブル等依存症を克服された方の体験談」■

https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/gamble/

2)依存症対策全国センター

国立病院機構久里浜医療センターは、アルコール健康障害、薬物依存症、ギャンブル等依存症、ゲーム依存症の全国拠点機関(依存症対策全国センター)に指定され、依存症の治療や回復支援に携わる専門家の育成、依存症相談事業の拡充、依存に関する情報発信の向上など各種事業を実施しています。

ギャンブル依存症を含む依存症に関する基礎的な知識を紹介しているほか、全国の依存症専門相談窓口と医療機関が検索できます。

■依存症対策全国センター■

https://www.ncasa-japan.jp/

3)ギャンブル依存症問題を考える会

ギャンブル依存症問題を考える会は、ギャンブル依存症当事者・家族の支援に力を入れ、そこから派生する各地域の支援者との連携や啓発活動を行っています。

考える会の代表・田中紀子氏らは、2018年、病的ギャンブラーとギャンブル愛好家を分ける重要4項目を抽出し、その頭文字から「LOST」と名付けた、ギャンブル依存症自己診断ツールを開発しました。

  • Limitless:ギャンブルをするときには予算や時間の制限を決めない、決めても守れない
  • Once again:ギャンブルに勝ったとき「次のギャンブルに使おう」と考える
  • Secret:ギャンブルをしたことを誰かに隠す
  • Take money back:ギャンブルに負けたときすぐに取り返したいと思う

直近1年間のギャンブル経験にあてはめ、上記4項目のうち2つ以上が「はい」という回答の場合、ギャンブル依存症の危険度が高いと考えられます(田中紀子、松本俊彦、森田展彰、木村智和「病的ギャンブラーとギャンブル愛好家とを峻別するものは何か:LINEアプリ・セルフスクリーニングテストを用いた病的ギャンブラーの臨床的特徴に関する研究」日本アルコール・薬物医学会雑誌 53 (6) 264-282、2018年)。

■ギャンブル依存症問題を考える会■

https://www.scga.jp/

以上(2024年12月作成)
(監修 弁護士 田島直明)

pj00720
画像:ChatGPT

【かんたん所得税(5)】2024年に住宅を購入した人は必見の「住宅ローン控除」

書いてあること

  • 主な読者:2024年中に住宅をローンで購入した人
  • 課題:はじめて確定申告をするが、必要な書類や控除額の計算が分かりにくい
  • 解決策:まずは5つの要件を全て満たすかを確認する。例えば、建ててから6カ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで住んでいるなどがある

1 住宅ローン控除ではじめての確定申告

年末調整だけで済んでいた人が、はじめて所得税の確定申告をする。そのきっかけとして最も一般的なのが、いわゆる「住宅ローン控除」(正式には「住宅借入金等特別控除」)です。しかし、はじめての確定申告は戸惑うものです。また、住宅ローン控除は、控除期間が10年または13年と長いので、毎年、きちんと手続きしなければなりません。

この記事では、2024年中にローンで住宅を購入した人向けに、住宅ローン控除の基本的な手続きや適用要件、事例を用いた控除額の計算などを説明します。

2 確定申告は1年目だけ。2年目以降は年末調整で

住宅ローン控除を受けるには、次の書類を添付した確定申告書を税務署に提出します。給与所得者の場合、住宅に住み始めた年に確定申告をすれば、翌年以降は勤務先の年末調整で大丈夫です。

  • 金融機関等から交付を受けた「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」
  • 法務局で発行を受ける「家屋の登記簿謄本または抄本」
  • 不動産会社との「売買契約書、請負契約書など」で、家屋の新築年月日または取得年月日、家屋の新築工事の請負代金または取得対価の額および家屋の床面積を明らかにする書類またはその写し
  • 認定長期優良住宅等(詳細は後述)の場合、その証明書等

土地の取得に係る住宅ローンがある場合、土地の登記簿謄本または抄本、売買契約書などで土地等を取得したこと、取得年月日および取得対価の額が明らかになる書類またはその写しが必要です。

確定申告をすると、申告をした年の秋ごろに残りの年数分(9年または12年分)の控除申告書が、まとめて税務署から郵送(確定申告時にe-Taxで電子データによる交付を希望した場合には、e-Tax上で証明書を受け取る)されます。年末調整では、その控除申告書に毎年金融機関から送られてくる残高等証明書の項目を転記し、年末調整の書類と併せて会社に提出することで、2年目以降の住宅ローン控除を受けることができます。

3 全て満たす必要がある6つの要件

1)新築した住宅は省エネ基準を満たしていますか

2024年1月1日以降に建築確認を受けた新築の住宅(不動産会社が中古住宅をリホームして販売する買取再販住宅を含む)については、省エネ基準などを満たさない住宅(以下「一般住宅」。住宅区分の詳細は後述)は、住宅ローン控除の適用を受けられなくなりました。

ただ、次のいずれかのケースに該当する場合には、新築した住宅が一般住宅であっても、借入限度額2000万円かつ控除期間10年間の住宅ローン控除を受けることができます。

  • 2023年12月31日までに建築確認を受けているケース
  • 2024年6月30日までに工事が完了しているケース
  • 取得した住宅が、買取再販住宅ではない中古住宅に該当するケース

2)年末まで住み続けていますか?

新築・取得・増改築(以下「新築等」)の日から6カ月以内に住み始め、適用を受ける各年の12月31日まで引き続いて住んでいる必要があります。

3)控除を受ける年の合計所得金額は2000万円以下ですか?

特別控除を受ける各年分の合計所得金額が2000万円以下である必要があります。

4)新居の床面積や用途は適切ですか?

新築等をした住宅の床面積が50平方メートル以上(その年分の合計所得金額が1000万円以下の人は40平方メートル以上)であり、床面積の2分の1以上の部分を自分自身が居住するために使っている必要があります。つまり、賃貸や店舗利用をしていないということです。

5)住宅ローンの借入先・返済期間・利率は適切ですか?

10年以上の分割返済をする新築等のための、一定の借入金または債務(住宅の敷地となる土地を取得するための借入金を含む)である必要があります。一定の借入金または債務とは、例えば、金融機関、独立行政法人住宅金融支援機構、勤務先などからの借入金や、独立行政法人都市再生機構、地方住宅供給公社、建設業者などに対する債務です。しかし、勤務先からの借入金で、無利子または0.2%に満たない利率による場合は該当しません。また、親族や知人からの借入金は全て該当しません。

6)住み始めた年の直前2年間・直後3年間に今まで住んでいた住宅を売って、特例を受けていませんか?

住み始めた年とその直前2年間、直後の3年の6年間に、以前居住していた住宅を譲渡した場合の特例(住宅を譲渡したときに受けられる3000万円の特別控除や軽減税率などの特例)の適用を受けていると該当しません。

4 自分が購入した住宅はどの区分か

住宅ローン控除は、新築等をした住宅を次のように区分しており、一般住宅以外の住宅には一定の評価基準があります。

  • 認定長期優良住宅:長期に使用するための構造設備などが備わっている住宅
  • 認定低炭素住宅:二酸化炭素の排出が抑制できる住宅
  • 省エネ基準適合住宅:日本住宅性能表示基準(外壁などの耐熱性や給湯・照明などの1次エネルギー消費の評価基準)において一定以上の性能を満たしている住宅
  • ZEH水準省エネ住宅:日本住宅性能表示基準(外壁などの耐熱性や給湯・照明などの1次エネルギー消費の評価基準)において一定以上の性能を満たしている住宅。省エネ住宅よりも多くの性能を満たす必要がある
  • 一般住宅:上記以外の住宅

いずれの場合も、居住開始1年目~10年目または13年目において、合計所得金額が2000万円以下の年について適用できます。

5 控除対象年と控除額

1)認定長期優良住宅または認定低炭素住宅の新築等

認定長期優良住宅や認定低炭素住宅を新築等した場合の控除額は、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:31万5000円=4500万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%、中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、

  • 35万円=5000万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)

となります。

2)省エネ基準適合住宅

省エネ基準適合住宅を新築等した場合、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:21万円=3000万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、

  • 28万円=4000万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)

となります。

3)ZEH水準省エネ住宅

ZEH水準省エネ住宅を新築等した場合、2024年に変更(縮小)されました。控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:24万5000円=3500万円×0.7%(増改築の場合は14万円=2000万円×0.7%または中古住宅の場合は21万円=3000万円×0.7%)

なお、子育て世帯(19歳未満のこどもがいる世帯)と若者夫婦世帯(夫婦のうちいずれかが40歳未満の世帯)の控除限度額は縮小が見送りになり、

  • 31万5000円=4500万円×0.7%(増改築または中古住宅の場合は上記と同じ)

となります。

4)一般住宅(中古住宅に限る)

一般住宅(中古住宅に限る)に係る住宅ローン控除の控除期間、控除額の計算方法は次の通りです。

  • 控除期間:13年(増改築または中古住宅の場合は10年)
  • 各年の控除額の計算:各年末借入金残高等×0.7%
  • 控除限度額:14万円=2000万円×0.7%

6 事例で計算してみよう

1)条件

居住者甲は、2024年3月1日に新築のマンション(床面積84平方メートル、省エネ基準適合住宅に該当)を取得し、すぐに住み始めました。

  1. マンションの取得対価:5350万円(消費税10%込み)
  2. 取得資金
    • 自己資金:1250万円
    • 借入金(20年間):4100万円
    • 借入金の年末残高:4062万円

  3. 甲の2024年分の合計所得金額:850万円

2)住宅ローン控除額の算出方法

1.要件の確認

合計所得金額が850万円(2000万円以下に該当)、かつ、床面積が84平方メートル(50平方メートル以上に該当)なので「適用あり」とします。

2.控除額の計算

年末借入金残高は4062万円であり、3000万円を上回っているため、控除額は28万4340円(4062万円×0.7%)ではなく、21万円(3000万円×0.7%)となります。

7 住宅ローン控除の注意点

1)適用除外になるケース

住み始めた年とその直前2年間、直後の3年の6年間のどこかで、居住用財産の課税の特例(住宅の買換えがあった場合の課税の繰延規定や、住宅の譲渡があった場合の3000万円特別控除など)の適用を受ける場合、住宅ローン控除は住み始めた年以後10年または13年間は適用できません。従って、住宅を譲渡または買換える場合は、どの特例が有利なのかを判断しましょう。

2)転勤などで購入した住宅に住めなくなったケース

住宅ローン控除の適用を受けた人が、転勤などやむを得ない事情で住宅に住めなくなった場合、その年以後は住宅ローン控除が受けられません。しかし、その人が再び居住用家屋に住むことになったら、一定の手続きをして適用を受けることができます。一定の手続きとは、計算書や控除額を添付・記載した確定申告書の提出です。

例えば、東京に住宅を購入して住み始めた年以後3年間、住宅ローン控除の適用を受けた人が大阪に転勤となり、その間、東京の家屋は他人に賃貸していたとします。2年後、その人が東京に戻り、元の家屋に再び住み始めた場合、当初の居住開始年からの適用期間(10年または13年間)のうち賃貸していた年の翌年から、再び住宅ローン控除が適用できます。

以上(2024年12月更新)
(監修 税理士 谷澤佳彦)

pj30025
画像:osabee-Adobe Stock

【3分で分かる個人情報保護(6)】個人データを第三者に渡しても良い?

1 個人データの第三者提供には、あらかじめ本人の同意が必要

一般の事業会社が、あらかじめ本人の同意を得ないで個人データを第三者に提供できるのは、次のような場合です。

  1. 法令に基づく場合
  2. 人の生命、身体または財産の保護のために必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
  3. 公衆衛生の向上または児童の健全な育成の推進のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるとき
  4. 国の機関もしくは地方公共団体またはその委託を受けた者が法令の定める事務を遂行することに対して協力する必要がある場合であって、本人の同意を得ることにより当該事務の遂行に支障を及ぼすおそれがあるとき

なお、そもそも「第三者への提供」自体が利用目的である場合などには、所定の事項をあらかじめ本人に通知するか、本人が容易に知り得る状態に置いた上で、個人情報保護委員会へ届け出れば、「オプトアウト」の形で個人データを第三者に提供できます。

オプトアウトとは、あらかじめ本人の同意を得ることなく、個人データを第三者に提供すること(本人から求めがあった場合に、求めに応じて第三者提供を停止することが条件)

です。

注意が必要なのは「要配慮個人情報」を第三者に提供する場合です。

要配慮個人情報とは、不当な差別や偏見などの不利益が生じないよう、取り扱いに特に配慮を要する個人情報のこと

です。具体的には、本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実、心身の機能の障害があること、医師等により行われた健康診断の結果などが該当します。要配慮個人情報をオプトアウトの形で第三者に提供することは禁止されており、法令に基づく場合などの例外を除いて、必ず本人の同意を得なければなりません。

実務上、社員の健康情報(健康診断の結果や病歴など、健康に関する個人情報)を健康保険組合に提供する場合などがありますが、健康情報の多くは要配慮個人情報に該当し、そうでない場合も機微な情報が含まれ得ることなどから、要配慮個人情報に準じて取り扱うことが望ましいとされています。あらかじめ利用目的を通知し、社員の同意を得ておくとよいでしょう。

■個人情報保護委員会「雇用管理分野における個人情報のうち健康情報を取り扱うに当たっての留意事項」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/ryuuijikou_health_condition_info/

2 外国にある第三者への提供は制限されている

個人データを外国にある第三者に提供する場合、あらかじめ外国にある第三者への提供を認める旨の本人の同意を得なければならず、その際、

  • 当該外国の名称
  • 適切かつ合理的な方法により得られた当該外国における個人情報の保護に関する制度
  • 当該第三者が講ずる個人情報の保護のための措置

に関する情報を、本人に提供しなければなりません。

この他にも押さえるべきポイントは多岐にわたります。そのため、ガイドライン(通則編)とは別に「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」が定められています。興味のある方は確認してみてください。

■個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(外国にある第三者への提供編)」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_offshore/

3 第三者提供については記録を残す

個人データを第三者に提供したとき、または第三者から個人データの提供を受けるときには、次の事項の確認および記録の作成を行わなければなりません(保存期間は原則3年)。

画像1

この他にも押さえるべきポイントは多岐にわたります。そのため、ガイドライン(通則編)とは別に「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」が定められています。興味のある方は確認してみてください。

■個人情報保護委員会「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(第三者提供時の確認・記録義務編)」■

https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_thirdparty/

以上(2024年12月更新)

pj60353
画像:THAWEERAT-Adobe Stock

【かんたん所得税(4)】見逃したら損をする。所得税の負担を減らす方法を教えます

書いてあること

  • 主な読者:所得税の負担を減らすために「所得控除」について確認したい人
  • 課題:所得控除は種類が多く計算も複雑なのでとっつきにくい
  • 解決策:所得控除は15種類ある。自身に適用されそうなものから確認する

1 見逃していませんか? 自分が受けられる所得控除

所得税の計算のベースとなる「所得」から控除できる「所得控除」を使うと、所得税の負担は減ります。所得控除は15種類で、その内容は、

  • 物的所得控除:医療費や保険料など特定の支払いなどが対象
  • 人的所得控除:家族構成や個人の状況が対象

に大別されます。

画像1

物的所得控除と人的所得控除いずれも、対象となる親族や支払いについて、どの時点の状況で判断するかがポイントとなります。

物的所得控除における同一生計親族(生活費の出どころが同じ親族。詳細は後述)への支出の判定は、原則、控除をうけられる事由が発生した時または支払い時の状況で行います。例えば、親族に係る医療費を支払った場合、受診時または医療費の支払い時のどちらかの時点で、その親族が同一生計の状況に該当していれば、医療費控除の対象になります。

人的所得控除における配偶者や親族の年齢の判定、同一生計であるかまたは障害者であるかの判定などは、原則として、その年の12月31日の現況で行います。

いずれにしても、所得控除は種類が多く、税制改正も頻繁なので見逃してしまったり、分かっていても計算が面倒なので無視してしまったりする人も少なくありません。しかし、これはもったいないことです。この記事で15種類の所得控除を分かりやすく説明しますので、確認してみてください。

2 物的所得控除について説明

1)雑損控除

1.適用要件

雑損控除は、納税者本人や同一生計親族(総所得金額等が48万円以下の者に限る)が持っている「生活に通常必要な資産」について、災害・盗難・横領による損失が生じた場合に適用できます。ただし、詐欺、強迫による損失や保証債務の履行による損失などは適用対象外です。

同一生計親族とは、同じ家屋に住んでいる場合は、明らかに互いに独立した生活を営んでいると認められるケース(例:二世帯住宅)を除いて、同一生計とされます。また、日常生活を共にしていなくても、単身赴任の場合や生活費の送金が行われている場合(仕送り学生など)も、同一生計とされます。

生活に通常必要な資産とは、居住用家屋、家財、衣類、現金、時価30万円以下の宝石・書画・骨董品などです。

2.控除額

イ.損失の金額:被害直前の時価-被害直後の時価-保険金等の額+後片付け費用等

ロ.足切限度額:総所得金額等×10%

ハ.イ.-ロ.=雑損控除額

なお、損害を受けた資産が減価償却資産(減価償却の対象となる資産)である場合、上記イ.損失の金額を、次の算式により計算した金額とすることができます。

損失の金額=取得価額から減価償却累積相当額を控除した金額-被害直後の時価-保険金等の額+後片付け費用等

また、損失の金額のうち災害関連支出の金額がある場合には、「雑損控除額」と「災害関連支出の金額-5万円」のいずれか多いほうの金額が控除額となります。

2)医療費控除

1.適用要件

納税者本人または同一生計親族の医療費を支払った場合に適用できます。同一生計親族に所得要件はありません。また、未払いの医療費は対象となりません(実際に支払った日の属する年分の医療費となります)が、クレジットカードにて医療費を支払ったときは、そのカードを決済した日において医療費の額に含めることになります。

2.控除額

イ.支払った医療費の額-医療費を補填する保険金等の額

ロ.10万円(総所得金額等が200万円未満の場合には、「総所得金額等の合計額×5%」)

ハ.イ.-ロ.=医療費控除額(200万円限度)

3.医療費控除の対象となるものの具体例

  • 医師、歯科医師に対する医療費
  • 薬局からの医薬品の購入費
  • 病院等への通院費(電車・バスなど)
  • 入院費用(部屋代、食事代など)
  • あんまマッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師に対する施術費

4.医療費控除の対象とならないものの具体例

  • 人間ドックや健康診断のための費用(一定の例外を除く)
  • 美容整形手術のための費用
  • ドリンク剤、ビタミン剤などの購入費用
  • 医師や看護師に対する謝礼
  • 差額ベッド代(一定の例外を除く)、診断書作成料
  • メガネ(一定の治療用を除く)、コンタクトの購入費用

5.セルフメディケーション税制

納税者本人または同一生計親族が特定一般用医薬品等(ドラッグストアなどの領収書に★マークや但書などがされているもの)を購入し、かつ、その年中に健康の保持増進・疾病の予防への取り組みとして、一定の健康診断や予防接種などを行っているときに受けられる医療費控除です。

その年中の特定一般用医薬品等の購入費の合計額のうち、1万2000円を超える部分の金額(8万8000円を限度)が控除の対象です。ただし、上記1.~4.の医療費控除との併用はできません。

3)社会保険料控除

1.適用要件

納税者本人または同一生計親族の社会保険料を支払った場合に適用できます。社会保険料の範囲は、健康保険料、国民健康保険料、介護保険料、雇用保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料などです。給与などから控除される場合を含み、未払いの社会保険料は対象となりません。

2.控除額

支払った金額

4)小規模企業共済等掛金控除

1.適用要件

小規模企業共済等掛金を支払った場合に適用できます。小規模企業共済等掛金の範囲は、小規模企業共済法の共済契約の掛金、確定拠出年金法の個人型年金加入者掛金、心身障害者扶養共済制度の掛金です。未払いの小規模企業共済等掛金は対象となりません。

2.控除額

支払った金額

5)生命保険料控除

1.適用要件

一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料を支払った場合に適用できます。ただし、保険金受取人は納税者本人または親族とするものに限り、年金受取人は納税者本人または配偶者とするものに限ります。未払いの保険料は対象となりません。

2.控除額

生命保険料の控除額は次の通りです。

画像2

旧契約分と新契約分の両方を適用する場合、旧契約分と新契約分のそれぞれの計算を行い、控除額を合算しますが、一般生命保険料と個人年金保険料の控除額の上限はそれぞれ5万円となります。

また、一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料の3つを合わせた控除額の上限は12万円です。

6)地震保険料控除

1.適用要件

納税者本人または同一生計親族の、居住用家屋や家財の地震などによる損害を保険目的とする地震保険料を支払った場合に適用されます。地震などによる損害とは、地震・噴火・津波を直接の原因とする火災、損壊、埋没、流失によるものをいいます。未払いの保険料は対象となりません。また、旧長期損害保険契約の損害保険料も地震保険料控除の対象となります。

2.控除額

支払った金額(地震保険の場合は、5万円限度。旧損害保険契約(2006年12月31日以前の契約で一定の損害保険)の場合は、1万5000円限度)

7)寄附金控除

1.適用要件

特定寄附金を支払った場合に適用されます。特定寄附金の具体例は次の通りです。未払いの寄附金は対象となりません。

  • 国または地方公共団体に対する寄附金
  • 公益社団法人、公益財団法人等に対する寄附金のうち財務大臣が指定したもの
  • 日本学生支援機構・日本赤十字社・社会福祉法人・学校法人等に対する寄附金(学校の入学に関するものは除く)
  • 認定特定非営利活動法人に対する寄附金
  • 政党等に対する寄附金で、公職選挙法または政治資金規正法により報告されたもの
  • 特定新規中小会社への払い込みにより取得した株式の取得金額(エンジェル税制、限度額800万円)

2.控除額

特定寄附金の額(総所得金額等の合計額×40%を限度)-2000円=寄附金控除額

3 人的所得控除について説明

1)障害者控除

1.適用要件

納税者本人、同一生計配偶者や扶養親族が障害者である場合に適用できます。同一生計配偶者とは同一生計の配偶者のうち、合計所得金額が48万円以下である人をいいます。扶養親族とは同一生計の親族等(配偶者を除く)のうち、合計所得金額が48万円以下である人をいいます。障害者とは、障害者手帳の交付を受けているなど精神または身体に障害がある一定の人をいいます。

2.控除額

1人につき27万円(特別障害者は40万円、特別障害者で同居の同一生計配偶者または扶養親族がいる場合は75万円)。なお、特別障害者の具体例は次の通りです。

  • 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態にある人
  • 身体障害者手帳に1級または2級の記載がある人
  • 常に就床を要し、複雑な介護を要する人

2)ひとり親控除

1.適用要件

納税者本人がひとり親である場合に適用されます。

2.ひとり親の意義(次の要件の全てに該当する人をいう)

  • 夫または妻と死別または離婚しているか生死不明、または未婚である人(事実婚の人を除く)
  • 総所得金額等が48万円以下である同一生計の子がいる人
  • 納税者本人の合計所得金額が500万円以下である人

3.控除額

35万円

3)寡婦控除

1.適用要件

納税者本人が寡婦である場合に適用されます。上記2)のひとり親に該当しない女性で、一定の要件に該当する人が対象です。ひとり親控除と混同されやすいですが、大きな違いは、

寡婦控除が過去に結婚をしていることを前提としている一方、ひとり親控除は結婚の有無を前提としていない点や、寡婦控除は女性のみが対象ですが、ひとり親控除は男性・女性ともに対象となっている点

です。

2.寡婦の意義(次のいずれかの要件に該当する人をいいます)

  • 夫と離婚し、その後婚姻をしていない人のうち、扶養親族(障害者控除参照)がいる人で、合計所得金額が500万円以下である人
  • 夫と死別し、その後婚姻をしていない人または夫の生死が明らかでない一定の人のうち、合計所得金額が500万円以下である人

3.控除額

27万円

4)勤労学生控除

1.適用要件

納税者本人が勤労学生である場合に適用となります。勤労学生とは働きながら、所定の学校に通っている学生のうち、合計所得金額が75万円以下である一定の人をいいます。

2.控除額

27万円

5)配偶者控除

1.適用要件

控除対象配偶者がいる場合に適用できます。控除対象配偶者とは同一生計配偶者(障害者控除参照)のうち、納税者本人の合計所得金額が1000万円以下の場合の配偶者をいいます。

2.控除額

配偶者控除の金額は次の通りです。

画像3

なお、老人控除対象配偶者は、控除対象配偶者のうち、年齢が70才以上の人をいいます。

6)配偶者特別控除

1.適用要件

同一生計配偶者(障害者控除参照)で、合計所得金額が48万円超133万円以下の人がいる場合に適用できます。ただし、納税者本人の合計所得金額が1000万円を超える場合には、配偶者特別控除の適用はありません。

2.控除額

配偶者特別控除の金額は次の通りです。また、納税者本人の合計所得金額が900万円超950万円以下、950万円超1000万円以下の場合には、配偶者特別控除額が段階的に縮小されます。

画像4

7)扶養控除

1.適用要件

控除対象扶養親族を有する場合に適用となります。

2.扶養親族の種類

イ.控除対象扶養親族

扶養親族(障害者控除参照)のうち、年齢が16歳以上の人をいいます。

ロ.老人扶養親族

控除対象扶養親族のうち、年齢70歳以上の人をいいます。

ハ.特定扶養親族

控除対象扶養親族のうち、年齢19歳以上23歳未満の人をいいます。

ニ.同居老親等

同居している老人扶養親族のうち、納税者本人または配偶者の父母・祖父母をいいます。

3.控除額

扶養親族の態様別控除額は次の通りです。

画像5

8)基礎控除

1.適用要件

合計所得金額が2500万円以下の納税者本人が適用できます。

2.控除額

基礎控除額は次の通りです。

画像6

以上(2024年12月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)

pj30024
画像:pixabay

【人事はつらいよ】妊娠した女性社員を気遣って業務を軽くしたのにマタハラ?

1 体調を気遣って業務を軽くしただけなのに……

A課長は、部下の女性社員Bさんから「妊娠したので、いずれ産休(産前・産後休業)をいただくことになります。日程は改めてご相談します」と報告を受けました。A課長は「Bさんがいつ休んでもいいようにしなければ」と部署内の業務体制を見直し、ある日、Bさんに言いました。

「Bさんの担当業務は他の社員に割り振ることにしたから、今日からは負担の少ない簡単な業務だけやってくれればいいよ。いつ休んでも大丈夫だから、遠慮なく言ってね」

しかし、Bさんの反応は、A課長の思っていたものとは違いました。

「課長、妊娠したとは言いましたが、私は働ける状態です! なぜ私に何の相談もなく、仕事を取り上げてしまうんですか? 産休を取られると迷惑だから、嫌がらせをしているんですか? それってマタハラ(マタニティハラスメント)です!」

A課長は釈然としません。

「Bさんを気遣っただけなのに、なぜマタハラなんて言われなきゃいけないんだ? 無理に働いておなかの子に何かあったら、それこそ問題じゃないか。納得いかない……」

2 就業に支障がない状態で業務を変更すると、マタハラ?

「マタハラ(マタニティハラスメント)」とは、

女性社員の妊娠・出産・育児に関する嫌がらせのこと

です。法的には、男性社員の育児に関する嫌がらせ「パタハラ(パタニティハラスメント)」や、介護に関する嫌がらせ「ケアハラ(ケアハラスメント)」を含めた、

「職場における妊娠・出産・育児休業・介護休業等に関するハラスメント」

の一種で、会社は男女雇用機会均等法と育児・介護休業法にのっとって、これらのハラスメントを防止する義務があります。

マタハラ、パタハラ、ケアハラは、

  • 制度等の利用への嫌がらせ型(産休などを利用する(した)ことによる嫌がらせ)
  • 状態への嫌がらせ型(妊娠などによって就業状況が変わったことによる嫌がらせ)

に分けることができ、マタハラの場合、例えば次のような言動が当てはまります。

画像1

こうした言動のせいで、女性社員が産休などの制度を利用できなかったり、会社に居づらくなったりして就業環境が害されるとマタハラ(違法)になり、女性社員から民法に基づく損害賠償などを請求される恐れがあります。一方で、

上司などの言動が、客観的に見て業務上の必要性(業務分担や安全配慮など)に基づくものであれば、マタハラにならない

とされています。

さて、冒頭のA課長の「妊娠したBさんに、簡単な業務だけを命じる」という対応は、マタハラになるのでしょうか。内容自体は、図表の「状態への嫌がらせ型」の「2.妊娠などをしたことによる嫌がらせ」に近そうですが、A課長は妊娠したBさんを気遣っただけで、嫌がらせの意図はありません。判断が難しいですが、上の業務上の必要性の問題に照らすと、

  • Bさんが妊娠前後を通じて就業状況が変わらず就業に支障がない場合、妊娠を理由に勝手に業務を変更するとマタハラになる恐れがある(業務上の必要性がないため)
  • Bさんが妊娠してから、妊娠に由来する体調不良により早退や欠勤が続いているといった事情がある場合、業務を変更してもマタハラにならない(業務上の必要性があるため)

と考えられます。ただ、Bさんが体調不良の場合でも、「就業場所をオフィスから自宅に変更すれば、テレワークで今の業務を続けられる」ケースなどがあるので、慎重な判断が必要です。

3 女性社員と相談した上で対応すれば、基本的にOK

マタハラの問題には注意が必要な一方で、法令上、女性社員の業務内容や労働時間を必ず見直さなければならないケースというのもあります。具体的には、

  • 妊娠した女性社員から請求があった場合、軽易な業務に転換する義務(労働基準法)
  • 女性社員が妊娠中・出産後の健康管理について医師から指導を受けた場合、その指導事項を守れるよう必要な措置を講じる義務(男女雇用機会均等法)
  • 3歳未満の子を養育する社員(男性社員も含む)が請求した場合、所定外労働を免除する義務、または所定労働時間の短縮措置などを実施する義務(育児・介護休業法)
  • 小学校就学前の子を養育する社員(男性社員も含む)が請求した場合、1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働、深夜労働を免除する義務(育児・介護休業法)

などがあります。

いずれも基本的には、女性社員から請求を受けた上で対応するので、結局のところ、

妊娠・出産・育児で女性社員の業務を変更する場合、本人と相談した上で方向性を決めればトラブルになりにくい

といえます。ただし、業務を変更する場合、

降格や賃金の引き下げといった「労働条件の不利益変更」の問題

に注意が必要です。

過去に、会社が妊娠した女性社員を軽易な業務に転換した際、管理職から降格させてトラブルになった事例があります(最高裁第一小法廷平成26年10月23日判決)。最高裁判所は、

  • 原則として、妊娠中の軽易な業務への転換を理由に、降格させることは違法である
  • ただし、「当該女性社員が自由な意思に基づいて降格を承諾したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在する場合」または「降格させずに業務を変更すると、円滑な業務運営や人員配置の確保などの業務上の必要性から支障がある場合であって、当該措置が法の趣旨・目的に実質的に反しないものと認められる特段の事情が存在するとき」は違法でない

との考えを示していて、この裁判では、会社が事前に「職場復帰後も女性社員を管理職に復帰させる予定がない旨」を本人に説明していなかったことなどから、降格は違法と判断されました。

つまり、会社が女性社員と業務の変更について相談する場合、

「女性社員に不利益はないか」「不利益がある場合、どのような内容なのか。また、不利益を避けられない理由は何か」などを明らかにして、本人に説明する必要がある

ということです。

近年は、育児・介護休業法の改正が続いていて、妊娠・出産・育児と仕事を両立するハードルは昔よりも下がってきています。だからこそ、会社がその両立を妨げないよう、マタハラ対策はしっかり進めておく必要があります。

以上(2024年12月更新)
(監修 弁護士 八幡優里)

pj00643
画像: