中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助・コロナ支援など幅広いジャンルの支援があります。
本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。
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中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助・コロナ支援など幅広いジャンルの支援があります。
本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。
令和6年度に注目すべき厚生労働省の雇用関係助成金を5つ選び、その詳細と活用方法について解説します。これらの助成金は、企業が人材を確保し、定着させ、また働きやすい環境を整備し、結果として事業の持続的な成長を実現するための重要な手助けになります。
「人生100年時代」と言われる今、老後の資金はいくら必要になるでしょう?
突然そんな質問をされたとき、明確な根拠をもって答えられるでしょうか。
数年前、話題となった「老後資金2000万円問題」を思い出された方もいるでしょう。そのきっかけとなったのは、金融庁の金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(2019年6月)です。そこでは、「夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職の世帯では毎月の不足額の平均は約5万円であり、まだ20~30年の人生があるとすれば、不足額の総額は単純計算で1,300万円~2,000万円になる」ということが書かれています。報告書に使われた統計データ等の前提条件下では、公的年金を中心とした収入だけでは資金不足に陥る恐れがあるというわけです。
とはいえ、実際に老後に必要となるお金は、年金や貯蓄額、保有資産、生活スタイル、健康状態などによっても大きく異なります。老後の生活にいくら必要になるのかは、
ご自身やご家族がどのように暮らしたいのか、最低でも守りたい生活水準はどれくらいか
によります。生活水準を下げるのは、なかなか難しいことですし、そうした事態はなるべく避けたいものです。
この記事では、老後の生活に必要なお金をシミュレーションしてみるためのツール、そして将来的な資金不足に備え、それを補うために、家計で「当面使う予定のないお金」を投資に振り向けようとする際、押さえておきたい主な金融商品の特徴を紹介します。
なお、以降で紹介するのは情報提供のみを目的とするものであり、取引の申し込みや勧誘、あっせん、推奨、助言、金融商品を含む商品やサービスの販売等を目的として提供されるものではありません。
また、実際の個人の資産運用についてはファイナンシャルプランナーなど専門家に相談するとよいでしょう。
ここでは、生命保険文化センターがウェブサイトを通じて無償提供しているシミュレーションツールを紹介します。シミュレーションには前提条件がありますので、あくまで、ライフイベントなどに応じて必要になるお金の目安を把握するためのものとしてご活用ください。
基本情報(生年月日、性別、配偶者の有無、家計を主に担う方はご自身か配偶者か、子どもの有無)を入力し、「ライフプランを作る」「リスクに備える」などのメニューに進み、必要情報(家計の収支・資産や将来のリスクなど)を入力することで、退職後のセカンドライフ、老後生活資金の不足などについて結果を確認できます。
老後の生活に必要なお金をシミュレーションしてみた結果、将来的に生活資金が不足するかもしれないことが分かったとしたら、どうすればよいでしょうか。
まずは、ご自身の家計を、大まかに次のように分けて、それぞれどれくらいの金額がかかっているのかを整理してみましょう。
そして、まずは、ムダな出費をできる限り抑えるようにしましょう。その上で、「当面使う予定のないお金」があるならば、それを預貯金だけでなく、バランスよく他の金融商品に振り向けることを検討してみましょう。日本ではマイナス金利政策が解消されたとはいえ、預金金利は低い水準が続いており、銀行にお金を預けていてもさほど増えないのが実情だからです。
金融商品にはたくさんの種類があり、商品によって特徴もさまざまです。ご自身と相性のよさそうな金融商品を見つけるために押さえておきたいのが「リスク許容度」です。
リスク許容度とは、投資によって損失が出るリスクをどこまで受け入れられるかを示す限度のことで、年齢(=運用できる期間)、家族構成(=予定されるライフイベント)、収入や保有資産の状況、これまでの投資経験、ご自身の性格などによって個人差があります。
試しにご自身の性格がどんなタイプか、次の簡単な質問に「はい/いいえ」で答えていってみてください。
いかがだったでしょうか? 割と当たっているという方もいれば、全然違うという方もいるかもしれません。
リスク許容度の診断テストを、ウェブサイトを通じて提供している金融機関などもあるので、ご興味のある方は「リスク許容度 診断」などのキーワードで検索してみてください。
金融商品は「安全性」「収益性」「流動性」という3つの観点で整理すると、特徴が分かりやすくなります。それぞれ簡単に言うと、次のような意味合いです。
主な金融商品の特徴を押さえて、ご自身と相性のよさそうな金融商品を見つけてください。
預金(銀行や信用金庫などに預けている日本円)と貯金(ゆうちょ銀行に預けている日本円)は、必要なときに引き出すことができ、万一、金融機関が破綻しても預金保険の対象として1000万円まで(とその利息)は全額保護されます。普通預金の金利は、年率0.02%ほど(2024年7月31日時点)で、預けていてもさほど増えません。
株式会社が発行する「株式」は、会社が利益を上げるとその一部を配当として株主に還元します。「この会社は成長しそう」と多くの人が思い、株式を購入したがると株価が上がります。購入時よりも株価が上がったタイミングで売却することで利益を得ることもできます。一方、会社の業績が下がると、一般的には株価も下がります。会社が破綻してしまうと株式の価値はゼロになります。株式は比較的簡単に売却して現金化できますが、手元に現金が入るまでは時間がかかります。
先述したチャートで「好奇心旺盛でいろいろ挑戦したいタイプ」となった方は、株式を中心とした資産運用に興味を持つかもしれません。
国が発行する国債、地方公共団体が発行する地方債、株式会社などが発行する社債といった「債券」は、利子を支払う時期や利率、満期日があらかじめ決められており、満期日に購入した元本(額面金額)が払い戻されます(償還といいます)。
債券の発行者が破綻するとお金が返ってこない恐れがあるため、格付け会社が、発行者の信用力によって債券を格付けします。収益性は、一般的に預貯金よりも高く、株式より低くなります。満期日前に売却して現金化できますが、金利などの影響を受けて価格が変動し、売却価格が額面を下回って元本割れとなる可能性もあります。
先述したチャートで「堅実で無理はしたくないタイプ」となった方は、債券を中心とした資産運用に興味を持つかもしれません。
投資信託は、多くの人からお金を集めて、専門家である資産運用会社が株式や債券などで運用するもので「ファンド」ともいいます。運用により利益が出ると配当として、また値上がり益を分配金として保有者に還元します。少額から投資できるものも多いですが、安全性や収益性は投資信託が何にどれだけ投資しているかによります。株式同様、比較的簡単に売却して現金化できますが、手元に現金が入るまでは時間がかかります。
先述したチャートで「大ざっぱだけれどバランスを重視するタイプ」となった方は、投資信託を中心とした資産運用に興味を持つかもしれません。
リスクという言葉は、「危険」「良くないことが起こる恐れ」という意味合いで使われていますが、資産運用の世界では、リターンのブレの大きさを指すことが一般的です。
そして、リスクの小さな資産からは得られるリターンも小さく、リスクの大きな資産からは大きいリターンが得られると言われています。
ローリスク・ハイリターンの金融商品があれば理想的ですが、現実には存在し得ないので、そのようなことをうたう商品を見つけたら詐欺を疑ってかかったほうが無難です。だまされないように気をつけましょう。
また、ハイリスク・ハイリターンの金融商品の中でも、リスクが高い商品(例えば、FX、信用取引、先物取引など)は、損失が生じたときの影響も大きくなるので注意が必要です。老後の生活に必要なお金をカバーするのには不向きでしょう。
以上(2024年8月作成)
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画像:photo-ac
「M&A(Mergers and Acquisitions)」は、企業が成長や競争力を高めるための戦略であり、具体的には、新市場の開拓、競争相手の排除、コスト削減、経済規模の拡大などさまざまな目的で実施されます。M&Aには、合併と買収という2つの意味がありますが、両方の意味を含むものとして、「企業再編」という言葉が使われることがあります。主な企業再編には次の7つの手法があります。
ここで紹介するのは上記のうち、会社分割です。吸収分割の手続きを中心とし、新設分割についてはポイントを絞って紹介します。
会社分割とは、事業の権利義務の全部または一部を別の会社に譲渡することで、
があります。事業を譲渡するという意味では、別の組織再編の手法である「事業譲渡」に似ています。ただし、会社分割の特徴は、
ことであり、この点で事業譲渡と異なります。
以降では、
として、手続きのポイントを紹介します。なお、全ての会社は株式会社である想定とします。
吸収分割の場合、吸収分割会社と吸収分割承継会社は「吸収分割契約」を締結します。吸収分割契約で定める事項は次の通りです。
新設分割会社では「新設分割計画」を作成する必要がありますが、その内容は吸収分割契約で定める事項と似ています。違いとしては、新設分割計画では新設分割設立会社に関する事項(商号、本店の所在地、発行可能株式総数など)を定めなければなりません。また、新設分割の場合、対価として金銭等の交付をすることはできません。新設分割設立会社は、新設分割会社に株式、社債、新株予約権を交付しなければなりません。
吸収分割の吸収分割会社と吸収分割承継会社、新設分割の新設分割会社と新設分割設立会社は、分割契約、分割計画の内容などを記載した書面を、事前に本店に備え置かなければなりません。これは、株主が会社分割を承認するか否か、債権者が異議を述べるか否かを判断するための資料です。事前開示する期間は、一定の日から効力発生日後6カ月を経過する日までです。一定の日とは、次の1.~5.のいずれか早い日を指します。
吸収分割の場合、吸収分割会社と吸収分割承継会社がそれぞれ株主総会の特別決議で吸収分割契約を承認します。
ただし、吸収分割会社における株主総会の承認決議を省略できる場合があります。まず、簡易吸収分割の場合です。簡易分割とは、吸収分割会社が吸収分割承継会社に承継させる資産の額が、吸収分割会社の総資産額の20%以下の場合です。この場合、吸収分割会社の株主に与える影響が小さいと考えられ、株主総会の承認決議は不要となるのです。
また、略式吸収分割の場合も株主総会の承認決議は不要になります。略式吸収分割とは、特別支配関係にある会社の吸収分割です。特別支配関係とは、相手の会社の議決権の90%以上を有しているケースです。具体的には、吸収分割会社が吸収分割承継会社を特別支配している場合、吸収分割会社における株主総会の承認決議は不要です。
視点を変えて、吸収分割承継会社における株主総会の承認決議を省略できる場合もあります。考え方は先と同じで、承継会社における簡易吸収分割および略式吸収分割です。前者は、吸収分割承継会社が吸収分割会社に分割対価として交付する株式等の額が、吸収分割承継会社の総資産額の20%以下の場合です。後者は、吸収分割承継会社が吸収分割会社を特別支配している場合です。
新設分割の場合、新設分割会社が株主総会の特別決議で新設分割計画を承認します。ただし、簡易新設分割の場合、新設分割会社における承認決議を省略できます。簡易新設分割とは、新設分割設立会社に承継させる資産の額が、新設分割会社の総資産の20%以下の場合です。
会社分割について、次のことを株主に通知します(一定の場合には公告で代用することができます)。
上記の株主通知を受けた株主のうち、分割に反対する株主は、自身の有する株式を公正な価格で買い取るよう会社に請求できます。請求する相手は、吸収合併の場合は吸収分割会社、吸収分割承継会社となります。同様に新設分割の場合は新設分割会社となります。ただし、簡易合併の場合、原則として、株式買取請求権は認められません。同様に略式合併の場合、特別支配会社は株式買取請求権を有しません。
吸収分割会社および新設分割会社の新株予約権者は、その新株予約権と同条件の新株予約権が交付される場合を除き、新株予約権の公正な価格での買取請求ができます。
吸収分割および新設分割の分割会社、承継会社は、次に掲げる事項を官報に公告しなければなりません。
同時に、知れたる債権者に個別の通知をしなければなりません。知れたる債権者の範囲に明確な定義はありませんが、実務上、少額の債権者は除くこともあります。また、定款で日刊新聞紙または電子公告による公告方法を定めている場合、官報への公告に加えてこれらの方法による公告を行った場合、債権者に対する個別の催告は必要ありません。また、分割後も分割会社に全額を請求できる債権者については、債権者保護手続きは必要ありません。
債権者が一定の期間内に異議を述べなかった場合は、分割について承認したものとみなされます。一方、異議を述べた債権者に対しては、分割をしてもその債権者を害する恐れがない場合を除き、弁済、相当の担保提供、弁済のための相当の財産の信託をしなければなりません。
吸収分割の場合、吸収分割会社および吸収分割承継会社は、分割の効力が生じた日から2週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をします。
新設分割の場合は、新設分割設立が設立された日に新設分割の効力が発生します。つまり、登記が効力発生の要件となります。この登記は、株主総会の承認決議など会社法で定められている所定の日から2週間以内に、本店の所在地で行わなければなりません。
吸収分割の場合、吸収分割会社および吸収分割承継会社は効力が発生した後遅滞なく(新設分割の場合、新設会社および新設分割設立会社の設立登記の日から遅滞なく)、分割により承継した権利義務その他の分割に関する事項を記載した書面または電磁的記録を作成しなければなりません。
これらの書面または電磁的記録は、吸収分割では効力発生日から6カ月間、新設分割では成立の日から6カ月間、本店に備え置かなければなりません。
以上(2024年8月更新)
(監修 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)
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画像:Mariko Mitsuda
おはようございます。皆さんは、オーケストラの生演奏を聞いたことがありますか。実は、私には趣味でチェロをやっている友人がいて、その友人が参加するアマチュアオーケストラを見に行くことがあります。私自身は音楽にあまり明るくないのですが、何十人もの演奏者が、寸分の乱れもなく統率されたメロディーを奏でる姿には、いつも圧倒されます。演奏する楽器はそれぞれ違うのに、彼らが奏でるメロディーは、まるで歯車のようにカッチリとかみ合い、人々を感動させるのです。今日は、オーケストラの演奏者がどのように“いい音楽”を作り上げているのか、彼らの「練習」をテーマに話をしたいと思います。
学生や社会人が集まるアマチュアオーケストラの場合、自分の楽器の「個人練習」を行うのと併せ、「チームでの練習」として、
という流れを繰り返し行うそうです。自分の楽器を演奏するだけでは、曲の流れや全体像が分かりませんし、演奏の速さや抑揚の付け方も演奏者1人1人で異なります。だから、まずは全員が集まって「合奏」することで曲のイメージをつかみ、その後、小さなチームに分かれて「分奏」「パート練習」を行うことで、1人1人の細かい“ズレ”を解消して、演奏の精度を高めるのです。
友人いわく「“いい音楽”を作り上げる上で大切なのは、チームがやりたいことと個人がやりたいことをできるだけ一致させ、演奏者全員が同じ方向を向いて練習すること」なのだそうです。曲を楽譜通りに再現することももちろん大切ですが、楽譜に表現されない部分については、「こんな風に演奏したい」「このパートには特に力を入れたい」といった、演奏者それぞれのこだわりがあります。
そういった部分は、演奏者同士で「対話」を繰り返して、お互いのこだわりを共有します。一方、全員の曲に対するこだわりを拾い上げることは難しいので、最終的には経験・知識量が豊富な指揮者が、トップダウンで演奏のイメージを伝え、チームを統率するそうです。
こうしたオーケストラのチームワークには、私たちも学ぶべきところが多々あるはずです。社員の皆さんには、日々さまざまな仕事をしていただいていますが、皆さんはその仕事の先にある「会社がやりたいこと」のイメージをちゃんとつかめているでしょうか。一方、経営者である私、あるいは皆さんの上司は「皆さんがやりたいこと」、すなわち仕事に対するこだわりをちゃんと拾い上げられているでしょうか。お互いに足りない部分があるはずです。
大切なのは「対話の繰り返し」です。お互いが納得して“いい会社”を作っていけるよう、しっかり「練習」していきましょう。
以上(2024年9月作成)
pj17194
画像:Mariko Mitsuda
人事評価は、社員に「この会社に評価された」「認められた」という達成感を持たせ、モチベーションを向上させるための制度です。しかし、人事評価では、評価者の主観を完全に排除することが難しく、評価する側とされる側で結果に対する納得度が違います。具体的には、
といった具合です。そのため、降格や降給など低い評価を受けた社員の不満は大きくなりがちで、場合によっては「この会社では自分は評価されない」と離職することもあります。ただし、
社員の不満を恐れて遠慮してしまうようでは、健全な人事評価はできない
ため、評価する側は主観を排除する訓練と努力を惜しまないことを前提に、厳しい結果になるとしても、毅然と評価するべきです。
一方、もう一つ意識しておきたいことがあります。それは、
人事評価の内容が「人事権の裁量の濫用」に該当する場合は違法
になるということです。具体的には、
などのケースですが、こうした問題は、
働いている時間の長短を評価要素に組み込んでいたり、経営者や上司の鶴の一声で高評価も低評価も認められたりするような、昔ながらの感覚が残る会社で起こりがち
です。「人事評価は毅然とするべきであるが、違法はいけない」という、当たり前のことを実現するために、この記事を参考にしていただければ幸いです。
人事評価の内容が法令に違反していれば無効であり、会社が損害賠償義務を負うこともあります。特に、次のような法令(強行法規)違反につながる人事評価は認められません。
妊娠・出産により育児休業等を取得した女性に対し、会社が復職後の成果報酬をゼロとする査定を行い、トラブルに発展した事案では、
査定の内容は、育児・介護休業法における不利益取扱いの禁止の趣旨に反し、人事権の裁量の濫用に当たる
と判断されました(東京高裁平成23年12月27日判決)。こうした過ちを起こさないための最も単純な解決策は、例えば、
ことです。
また、
積極的に残業や休日労働に協力する社員を「頑張っている」と高く評価し、逆の場合は「努力が足りない」と低く評価する
といったことがあるなら、すぐに改めましょう。
2024年4月からは、労働基準法の「時間外労働の上限規制」が、すでに適用済みの業種に加え、建設業や物流業にも適用されるようになりましたが(いわゆる2024年問題)、こうした法の趣旨に反する人事評価は、人事権の裁量の濫用に当たる恐れがありますし、そうでなくても社員のほうから、「時代に逆行している古臭い会社」と見切りを付けられる可能性があります。
就業規則や賃金規程に定めがない、あるいは定めに違反する基準を用いて人事評価を行うと、人事権の裁量の濫用に当たる恐れがあります。例えば、賃金の決定方法は必ず就業規則などに定めて社員に周知・開示し、守らなければなりません。そのため、
いかに社員が大きなミスをしたとしても、就業規則などの定めを超える降給はできない
のです。
なお、人事評価によって降格された社員は降給となるのが通常ですが、前提は、
役職などと賃金が連動していることを就業規則などで明確に規定しておく
ことです。御社の就業規則などを確認してみてください。次のように定めてあれば問題ありません。
【就業規則の規定例】
第●条(昇格・降格)
会社は、社員に勤務成績不良など職務不適格事由がある場合、役職罷免、職位および資格等級の引き下げなどの降格を命ずることがある。
【賃金規程の規定例】
第●条(昇降給・昇降格)
1)職務給の昇給・降給は、毎年1回、原則として4月に行うものとする。
2)昇給・降給は、別表1(省略)に定める基準に基づき人事考課により決定する。
3)職務等級の昇格・降格は、別表2(省略)に定める基準に基づき人事考課により決定する。この場合、昇格・降格後の役職と職務等級に基づき賃金を決定する。
4)懲戒処分による降格および勤務成績不良等、職務不適格事由による人事権の行使としての降格の場合も、降格後の役職と職務等級に基づき賃金を決定する。
以上(2024年9月更新)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)
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画像:Worawut-Adobe Stock
日本国内の貨物輸送量の約90%は、トラック輸送が占めているといわれます。災害時には救援輸送を担うなど社会的な使命も大きく、トラックは産業や生活に必要な大事なものです。
一方で、トラックは大事故を引き起こす恐れもあります。国土交通省が発表している走行距離1億キロあたりの交通事故件数でみると自家用車のほうが2倍近く多いのに対し、交通「死亡」事故件数はトラックのほうが多くなっています(ここ数年は減少傾向にあります)。
運送会社はとにかく安全が第一、ドライバーへの安全教育は欠かせません。2024年問題に直面している中、各社には効率的に事業を行うことに加え、高い安全性が求められます。
そこで、この記事ではトラックドライバーへの指導項目として決められている「法定12項目」の内容を確認した上で、実際に指導に取り組んでいる運送会社や協会などにヒアリングした内容を紹介します。
こうした事例なども参考にして、今行っている指導方法を改めて見直してみましょう。自社のドライバーが「ちゃんと関心を持って安全教育に参加する、指導内容をしっかり身に付ける」ように工夫することが大切です。
法定12項目とは、国土交通省が定める指導項目で(貨物自動車運送事業輸送安全規則第10条)、年に1回、必ず全ドライバーに指導を実施する必要があります。
また、指導内容は具体的に記録し、指導で使用した資料の写しとともに3年間保存することが必要です。法定12項目の内容は以下の通りです。
運転時の心構えからトラックの構造や荷物の積載方法、安全運転や健康管理まで、トラックドライバーとして身に付けておくべき項目が盛り込まれています。法定12項目の指導や指導記録の保持を怠ると、車両使用停止など行政処分の対象となる場合もあるので注意しましょう。
運送会社や協会などが行っている、法定12項目をはじめとした安全教育の事例を紹介します。
西濃運輸は、月ごとに重点を置く法定項目を決めて各エリアで指導を行っています。
本社から各エリアに重要な点をまとめた資料(国土交通省が公表している資料を基に作成)を送り、各店所の責任者(運行管理者・安全推進インストラクター)の下、討議またはミーティングで理解させる(初任ドライバーについては安全推進インスタラクターが解説を行う)という仕組みです。
さらに、初任ドライバーについては、Googleフォームを使った確認テストを解いてもらうことで、法定12項目の教育を受講していることを確認・管理します。他にも、安全推進インストラクター制度やセーフティーライセンス制度といった独自の資格を作り、資格取得を昇進条件にしています。
「ドライバーへの教育ができることを証明する安全推進インストラクター制度はドライバーの10分の1弱程度(697人/10897人中)、自分自身が安全運転をできることを証明するセーフティーライセンス制度はドライバーの10分の2弱程度(1542人/10897人中)程度が取得しています。これらの制度を作ったことでドライバーの安全運転への意識が向上し、全国トラックドライバーコンテストでは自社ドライバーが2連覇を達成しています」(西濃運輸)
西部運輸は、YouTube配信でドライバーへの法定12項目の指導を行っています。
法定12項目の解説や指導について視聴できるYouTube動画のQRコードが載ったアンケート用紙を配布し、ドライバーはQRコードから動画を見てアンケート用紙に感想を記載し提出する仕組みです。動画は、提携の保険会社が提供する「法定12項目を1項目ずつ解説する」計12本の動画を利用しています。
また、法定12項目とは別に自社でヒヤリハット映像などを用いた安全教育の動画も作成していて、これらの動画と法定12項目の動画を月ごとに分けて配信しています。
「YouTubeでの動画は好きな時に視聴できるためドライバーに好評です。また、気になる部分を何度も繰り返し視聴しているドライバーもいます。今年の安全教育は構内事故の削減を目標に動画を作成していて、2024年1月~4月の構内事故の件数は前年同月比で40%減少しています」(西部運輸)
ジャパンロジスティクスパートナーズは、毎月実施する部署ごとの安全会議で1項目ずつ法定12項目の教育を行っています。
安全教育の支援などを行っている会社ディ・クリエイトより提供されるドラレコ映像を基に資料を作成し、各部署で講習を実施する仕組みです。また、前月の安全会議の内容を基に振り返りテストも実施していて、テストの順位を車庫に提示しています。
「振り返りテストを実施する仕組みを作ったことで、ドライバーがより前向きに安全会議に参加するようになりました。また、毎月の安全会議や振り返りテストの実施などの取り組みを続けた結果、事故件数は減少し、2021年度以降の年間事故件数(製品事故除く)は1桁を継続しています」(ジャパンロジスティクスパートナーズ)
同社は、他にも「法定速度を超過した際にデジタコが鳴った回数をドライバーへ周知することで、安全運転の意識向上を目指す」という取り組みも実施しています。この取り組みにより、3年間でスピード超過(デジタコが鳴った回数)が96%減少しました。
さらに、トレーナー養成講座を1年かけて受講したトレーナーが社内に複数人いるため、協力会社のドライバーなどに指導教育・講演も行っています。
トラック協会でも、会員運送会社が法定12項目の指導をスムーズに行えるように支援をしていますので紹介します。
全日本トラック協会は、会員事業者向けに「事業用トラックドライバー研修テキスト」を提供しています。また、経営者や管理者を対象にした「プラン2025目標達成セミナー~削減目標達成への取り組み」で事故防止をテーマにセミナーも行っています。
「トラック業界として安全は一丁目一番地です。安全な業界を作っていく上で、法定12項目は各運送事業者が最低限やらなくてはいけない項目となっています。ぜひ、全日本トラック協会が会員事業者様向けに提供している研修テキストやセミナーなども活用しながら事故削減に取り組んでいただきたいです」(全日本トラック協会)
神奈川県トラック協会は、会員事業者の運行管理者などを対象とした「安全教育リーダー養成講座」を開催していて、法定12項目の一部やドライバーへの添乗教育・安全教育の方法を学べます。また、初任ドライバーなどを対象に「初任運転者安全教育講習」も開催していて、自動車教習所において実車を用いて、法定12項目の一部に関する指導を受けることが可能です。
「コンプライアンス遵守という観点でも、法定12項目に基づいた指導は、各運送事業者が必ず実施しなくてはならないことです。神奈川県トラック協会では、ドライバーへの法定12項目に基づいた指導をサポートするための講習や講座を実施しているので、ぜひご利用ください」(神奈川県トラック協会)
法定12項目の指導をより効率的かつ効果的に行うために、運送会社の安全教育をサポートする民間のサービスもあります。例えば、VR動画で法定12項目に関して効果的な教育が行えるサービスを提供する「WacWac」もその1つです。運輸安全マネジメントに沿ってご活用ください。
WacWac(東京都練馬区)
WacWacは、VR動画を視聴することで安全教育を行い、さらに受講実績をシステムで自動的に管理できるサービス「らくらく監査システム」を提供する会社です。
VRゴーグルを着けてトラック事故を疑似体験することで、安全運転のポイントをリアルに学べます。また、視聴履歴は自動的に管理システムに転送されるため、教育履歴の管理を効率的に行うことができます。
「導入している企業様の車両台数は20~1500台までと幅広く、さまざまな企業で事故削減の実績があります。業務効率化も可能なので、法定12項目の指導サポートとして、ぜひらくらく監査システムをご利用ください」(WacWac)
らくらく監査システム(VRプラン)の利用料金は次の通りとなっています。
以上(2024年7月作成)
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画像:Nuad Contributor-Adobe Stock
今シリーズは、前回シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』の実践編です。
知識やノウハウは分かったけれど、「現場で実践するにはまだハードルが高い」「うまく一歩を踏み出せない」という方も少なくないでしょう。そこで毎回実際にありそうなさまざまなシチュエーションを想定して、どんなコミュニケーションを取るのが望ましいかを一緒に考えていきます。
さっそく始めましょう。前回ご提示した課題[事例1]を再掲します。あなたの考えた解答を思い出してください。
—————————
Q. Aさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声を掛けますか? また最初の声掛けを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。
[事例1]
〇4月に新人Aさんが加わりました(皆さんの部署に新卒配属がなければ、若手の異動をイメージしてください)。歓迎会など酒席パーティーが開かれ、部署単位での2次会も用意してひと通りの交流を無事に終えました。幸いにも部署の業績は右肩上がりで、その後はずっと部署全員が日々の業務に追われる毎日でした。
〇ところが最近Aさんの表情が心配です。「おはよう」と声を掛けても元気がなく、業務中も飲み会の時に見たような笑顔がありません。
〇そこで上司であるあなたは、Aさんと話す時間をつくってみようと考えて声を掛けました。「Aさん、最近仕事はどう? よかったら今日仕事が終わってから一杯飲みに行かないか」。するとAさんは「ええ……まあ……」とはっきりしません。
—————————
前回、事例の最後にヒントを書いておきました。ヒントの1つは、「まずAさんの現在の心の状態を想像すること」です。「ええ……まあ……」という言葉の裏にはどんな心理状態があるのでしょうか。
間違っても「なんだ、こっちが心配して声をかけてやったのに断るのか」などと感情的に反応しないことです。言葉にしなくても表情や態度でAさんは気付きます。その瞬間に、これまで以上にあなたに対して心を閉ざしてしまうでしょう。「この人には絶対に分かってもらえない」と。
相手の反応に対して高ぶる気持ちがあって、一旦落ち着きましょう。そして
ポイントの1つ目「相手をよく観察する」です。こちらで勝手に思い込むことなく、相手をよく観察して事実を受け入れます。
Aさんは「ええ……まあ……」とはっきりしない返事です。つまり上司であるあなたと飲みに行きたいわけではない(恐らく行きたくないがストレートに言えない)。この事実を受け入れることから始めます。
「相手をよく観察する」のは、今声をかけた瞬間のAさんの反応についてと、同時に日常のAさんをよく観察して、深く理解しておくことの両方を意味します。観察であって、傍観ではありません。日ごろから声もかけ、必要なら時間を取り、コミュニケーションを通じて相手の反応を観察するのです。反応とは言葉だけではなく、声のトーンや顔の表情、しぐさなども含みます。
日常の観察も必要なのは、今の瞬間を観察しただけでは初対面の人に会ったときのように情報が不十分だからです。一方で、
コミュニケーションは生物(“いきもの”であり“なまもの”)です。
これまでこうだったからこうだろうではなく、今の目の前の相手が何を感じて、何を考え、何を求めているかをよく観察しないと次に取るべき対応を間違ってしまうでしょう。
例えば、Aさんがふだんから上司にストレートに意見を言えないタイプなのであれば、今回も正直な気持ちを言えずに困っているのだろうと想像できます。ふだんはストレートに意見を言えるタイプなのだとすれば、よほど困っているのだろうと私は受け止めます。
残念ながらご用意している[事例1]は、実際のコミュニケーションではなく、あくまで事例です。しかも、相手が目の前にいて観察できるわけではなく、テキストの文字情報しかありません。
そこは実際と異なる部分ですが、トレーニングとしてはもってこいのメリットもあります。文字情報なら何度も読み直せますし、観察したり考えたりする時間が十分に取れます。提供されている文字情報を丁寧に読み込んで、大事なポイントを見落とさないようにしましょう。
話を[事例1]に戻します。事実としてAさんは今夜、上司であるあなたと飲みに行きたくなさそうです。現時点で理由は分かりませんが、無理強いはいけません。
最初の一言は、「そうかごめん、今夜飲みに行くのはやめにしよう」でいいと思います。
こちらから誘った以上はこちらから取り下げましょう。上司と部下の関係では、相手は断りづらいはず、それが反応に表れています。
今夜飲みに行くことをあなたから撤回したことで、Aさんはあなたに対して「自分の気持ちを分かってくれた」と思えるでしょう。少し話しやすい状態になれたかもしれません。
ポイントの2つ目は「起きている問題は何かに立ち戻る」ことです。ここでシリーズの目指す習慣の1つ「傾聴」と「褒める」のスキルを使ってみましょう。
今回、あなたはなぜAさんに声を掛けたのでしたっけ? 何が問題だと考えたのでしょうか。[事例1]の1つ目と2つ目の〇印のテキスト情報にありますね。
〇幸いにも部署の業績は右肩上がりで、その後はずっと部署全員が日々の業務に追われる毎日でした。
〇ところが最近Aさんの表情が心配です。「おはよう」と声を掛けても元気がなく、業務中も飲み会の時に見たような笑顔がありません。
「最近Aさんの表情に元気がない、業務中にあまり笑顔がない」のは事実として受け止めます。でも、そのことで現状、業務上の支障は発生しているでしょうか。
少なくとも[事例1]のテキスト内では言及されていません。なので、ここでは特に支障は発生していないと仮定しましょう。実際場面では、発生しているかどうか、もう一度確かめたほうがいいかもしれませんね。
発生していない前提で、Aさんに次のように聞いてみてはどうでしょう。
右肩上がりの業績に一生懸命対応して働いてくれているのですから、その事実を最初に「褒める」ことを忘れないでください。
「業績が右肩上がりの中、Aさんも毎日本当に頑張ってくれていますね、ありがとう。ただ、最近Aさんの表情に元気がない、業務中もあまり笑顔がないようで気になっていたんですよ。どうでしょう、正直なところを聞かせてもらえませんか?」
Aさんは、あなたが飲みに行こうと誘った理由を察するでしょう。心配してくれたことに感謝して
何かを話してくれるようでしたら「傾聴」してみましょう。こちらの言いたいことは一旦横において、ひたすら「傾聴」するのです。
もし、Aさんが
「元気がない、笑顔がないように見えていましたか。ずっと忙しくて仕事に追われていたからですよ。でも忙しいけれど倒れるほどじゃないし、仕事も楽しめていますし、大丈夫ですよ」
と答えたとすればどうでしょう。
ポイントの3つ目は「相手の希望を尊重する」ことです。
Aさんの言葉に嘘がないかは、表情を観察して慎重に判断してほしいのですが、業務上も支障がなく、Aさんもそれ以上特に相談したいこともないようであれば、一旦話を終わりにしてもいいでしょう。「相手の希望を尊重」し、しばらく様子を見るほうがいいかもしれません。
「分かりました。頼もしい限りですが、ずっと忙しいことで体調を崩すと大変ですし、様子を見ながら対応策を考えます。また状況を詳しく教えてくださいね」
上司の意向を優先して必要以上にまぜかえさないことです。どうしても心配なら、周囲のメンバーにさりげなく聞いてみましょう。Aさんは上司のあなたには知られたくないプライベートの問題を抱えているのかもしれません。業務上の支障がないのであれば静かに見守ってあげるほうが本人のためです。
[事例1]のQとして最初にどんな声をかけるか、その際に注意するべき3つのポイントについては以上です。一声掛けて、反応を確認して様子を見る。意外にシンプルでしたか?
時に最初から難しく考えすぎないことも大事です。
ところであなたは、[事例1]を通して部署の他のメンバーの様子や表情も観察してみようと考えたでしょうか。
もしかしたら部署の全員が日々の業務に追われて元気がなく、笑顔がなくなっているのかもしれません。だとすれば、事態はAさんだけの問題ではありませんね。誰かが急に倒れる、また退職などに至ることのないよう、早急に部署全体としての対応策を考える必要があります。
では最後に、もし上司からの的確な一言が期待できなかった場合、Aさんはどうすればいいでしょう。部下側の上手なコミュニケ―ション方法についても考えてみましょう。
現実問題として、日々の業務の忙しさで元気や笑顔がなかなか出せない状況下では、上司に相談している時間もないかもしれません。目の前の業務が終わるまで帰れないとなれば、業務に専念せざるを得ない状況は分かります。
であれば、
上司が声をかけてきたタイミングや面談などの機会に、ちょっとした一言でサインを出してみてはどうでしょう。
「業績がいいのは分かるんですが、それにしても毎日忙しすぎます」「私はまだ大丈夫ですけど、〇〇さんあたりはしんどそうですよ」「仕事は楽しいですし頑張りますけど、どこかで有休ください(笑)」
といった感じで。
では、次回に向けた [事例2]を紹介します。
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Q. Bさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声を掛けますか? またそれを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げてください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。
[事例2]
〇若手社員Bさんが異動してきて3カ月。はりきって新しい業務に取り組んでくれていましたが、ある日のこと、課のミーティングで提案があるというので時間を取ることにしました。内容は部署での従来のやり方を根本から見直す新しいアプローチの提案でした。
〇いきなり聞かされた他のメンバーからは「今までのやり方が間違っていたとは思わないが……」と後ろ向きな意見が出てきます。上司であるあなたは、新天地でやる気に燃えているBさんからのせっかくの提案だけに、まずは1カ月、一部業務でやってみればと受け入れ、他のメンバーにも協力を促しました。しかし、1カ月後に結果は出ませんでした。
〇Bさんはあなたに「メンバーの反対を押し切って受け入れてくれたのに、失敗に終わってすみません」と謝罪。異動したての頃の仕事への意欲をすっかり失っているようです。
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ヒントとしては、今回の[事例1]の解説でお話ししたポイントも思い出しながら、[事例2]の文章を丁寧に読み返してみてください。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。実際の場面では、事例と似たようなシチュエーションであっても全く同じということはないでしょう。
今回私がご提示した声掛けや注意すべきポイントを参考にしながらも、目の前の状況に合わせてご自身で判断し、実行してみてください。
次回もお楽しみに。
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※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。
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以上(2024年8月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
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企業の顧客の中には、障害のある人もいます。障害のために商品を買えなかったり、サービスを利用できなかったりすることは、望ましくありません。今年4月1日には、改正障害者差別解消法が施行され、障害者への配慮が企業にも義務づけられました。本稿では、企業に求められる障害者への配慮についてお伝えします。
予算として作成される代表的な書類は、
です。予算は目標であるという話をしましたが、目標とする業績は売上と利益を指すことが大半です。そのため、利益につながる内訳書である損益計算書を作成します。売上から仕入(原価)、人件費をはじめとした様々な諸費用の数字の根拠を集め、予算損益計算書を作成していきます。
それ以外に考えられる書類として、予算貸借対照表、予算キャッシュ・フロー計算書(または資金繰り表)がありますが、この2つは全ての会社にとって常に必要というわけではありません。実際に作成している会社は多くないです。資金繰りに不安がある場合など、これらを事前に確認しておきたい状況でのみ作成すれば十分です。そのため、この記事では、予算損益計算書の作成にスポットを当てていきます。
予算損益計算書は、月次決算で比較できるように月ごとに立てます。その際に、どの業種であっても、売上には季節による変動があるので、単純に年間目標の12分の1としてはいけません。月次決算で実績の数値を正確に把握するために、自社の特性に応じた予算を立てましょう。
予算の重要な勘定科目の数字の作り方には大きく、
の2つのタイプがあります。以降で詳しく見ていきましょう。
掛け算型とは、
数字の構成要素を分解し、掛け算で計算できる勘定科目に適した方法
です。この方法で数字を作るのに適した主な勘定科目に、売上や人件費があります。
例えば、売上は「単価×数量」で分解するのが一般的です。また、人件費は「平均月給×人数」に分解することができます。
売上の構成要素は、よくKPI(重要業績評価指標)としても使われています。業績を改善するために必要な行動を考える指標として、この切り口が適しているからです。例えば、市場全体や自社の顧客の状況から、単価を上げるのは厳しいと分析したとします。それであれば、数量を伸ばすという方法を考えるしかないですよね。このように重要な科目だからこそ行動とセットで考えられるよう、予算の数字の計算方法も工夫する必要があるのです。
実務上の留意点として、掛け算型の場合は複数の担当に構成要素がまたがることも多いので、予算作成の進め方に特に注意が必要なことが挙げられます。1つの売上高という勘定科目でも、単価は仕入担当が、数量は営業担当が責任を負うというように、責任の所在が分かれて複雑になることがあります。構成要素ごとに、自社の中で責任のある部署や担当者を明確に決めておき、実績とのずれが生じた際、その背景や理由の聞き先を把握しておくことが大切です。
足し算型とは、
数字の構成要素をエリアや媒体で分解し、足し算で計算できる勘定科目に適した方法
です。この方法で数字を作るのに適した主な勘定科目に、売上や広告宣伝費があります。
例えば、売上は関東、関西、九州などエリア別に分解することができます。全エリアを足して売上予算とします。また、広告宣伝費は、テレビCM、電車やバスの交通広告、インターネット広告など媒体ごとに分けることができます。これは、広告宣伝においては媒体ごとに対象顧客や効果が異なるため、それぞれに管理をすることが広告宣伝の活動において一般的であることに基づいた分類です。このように、自社のビジネスの特性や、行動計画に沿った形で、構成要素を分解するのが足し算型の特徴です。
売上の予算は、
掛け算型と足し算型のいずれか、または掛け算型と足し算型の折衷型
というのもあり得ます。例えば、全国展開、あるいは全国ではなくても、ある程度の地域を横断して展開している会社であれば、まず、全社の売上をエリア別に、Aエリア、Bエリアと分解して、足し算型の形で計算した上で、エリアごとに単価と数量に分解して、掛け算型で計算するといった具合です。
そして、季節性や繁忙期・閑散期といった自社の特性をしっかり数字に落とし込んでいきましょう。例えば、観光・宿泊業であればゴールデンウイークや夏休み、年末年始といった繁忙期と、その他の閑散期では明らかに数字が変わってくるはずです。
その上で、客単価×客数といった具体的な数字から各月の売上予算を立てていきます。このような予算であれば、実績との差異が発生した際に、原因は客単価、または客数なのか、あるいはその両方なのかを把握できます。
仕入の予算は、
一般的に売上に連動する変動費であるため、掛け算型で数値を立て、具体的には「売上×原価率」
とします。例えば、物価高騰や賃上げの影響で原価率の上昇が見込まれている場合は、「7月から原価率を50%から55%に変更する」といったように予算を立てます。原価に含まれる構成要素が多い場合は、重要なものについて個別に数字を作るようにし、内訳として明記しておきましょう。これは実績が乖離(かいり)した場合や、売上が想定より下がった場合、問題点を明確にし、利益維持・回復する対策を早期に練るためにも大切になります。
人件費の予算は、
人員の採用計画などに基づいて掛け算型
で立てます。人件費というのは繁忙期の残業代を除くと、営業活動に連動しない固定的な部分が大半と考えられます。例えば、「7月から製造工程で人員を2人増やすため、人件費が月50万円(平均月給25万円×2人)増加する」といったようになります。なお、社員については「平均月給×人数」、パート・アルバイトについては「平均時給×労働時間数」というように、雇用形態ごとに明確に分けておきましょう。予算管理と同時に採用計画の見直しなど、幅広く活用することができます。
金額が大きくない・重要度の低い費用の場合は、数字の根拠について、必ずしも掛け算型と足し算型といった積み上げである必要はありません。前年度実績の金額をそのまま使うというのも手です。スポット的に生じる可能性のある費用についても、金額の多寡で予算に乗せるかどうかを決定していきます。また、重要度の低い費用について、細かすぎるのも問題です。例えば、消耗品費のような勘定科目については、「ボールペン 単価90円×10本」などではなく、「文房具 年2万円」とまとめも問題のないことがほとんどです。細かすぎる情報は管理も大変で、経営陣にとってもノイズ(雑音)となってしまうからです。
以上(2024年8月作成)
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