賃金のデジタル払いは、企業側には振込手数料の軽減、福利厚生面の充実、従業員満足度の向上などのメリットがあるほか、従業員側にも一定のメリットがあります。とくにキャッシュレス決済に慣れている若年層での希望・ニーズが増えており、求人採用や勤続面にもポジティブな傾向があるというデータがあります。
今後、在籍している従業員から「デジタルマネーで賃金を受け取りたい」という要望が出ることもあるかもしれません。
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賃金のデジタル払いは、企業側には振込手数料の軽減、福利厚生面の充実、従業員満足度の向上などのメリットがあるほか、従業員側にも一定のメリットがあります。とくにキャッシュレス決済に慣れている若年層での希望・ニーズが増えており、求人採用や勤続面にもポジティブな傾向があるというデータがあります。
今後、在籍している従業員から「デジタルマネーで賃金を受け取りたい」という要望が出ることもあるかもしれません。
「もめない事業承継! ~スムーズなバトンタッチのコツは!?」の最終回は複数株主対策/少数株主対策です。早速ですが、社長、御社の株主とそれぞれの持株数について、把握していますか?
社会の趨勢にあわせて目まぐるしく変化している「年収の壁」について、『令和7年度税制改正大綱』や厚生労働省の情報などをもとに最新動向および企業の実務対応についてご説明いたします(※2025年2月執筆時点の情報です)。
給付金とは、主に国や地方自治体などの行政から、事業や生活を支援するために給付されるお金のことです。給付条件を満たしてさえいれば、基本的に申請することで受給が可能です。本レポートでは、おすすめの給付金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。
ある日突然、社員から、
「今月末で退職します。今日から退職日まで有休(年次有給休暇)をいただきます」
と申し出があったらどうしますか? 今、退職を申し出た社員が、残りの有休を全て消化して出社しないケースは増えています。昨今話題の退職代行サービスを使って、会社とのコミュニケーションを完全に遮断するケースも多いです。
正直なところ、あまり戦力になっていない社員であれば、突然の退職でも残りの社員で十分にカバーできるので、むしろ論点は、負担がかかる残りの社員へのフォローとなります。
一方、管理職など幅広く仕事をしている社員が退職する場合や、テレワークなどの影響もあって組織がサイロ化し、そこそこ重要な業務を“自分色”に染めてしまっている社員が退職する場合は、引き継ぎが必須です。となると、「引き継ぎもせずに突然いなくなるなんて無責任だ!」という憤りはさておき、会社が冷静に対応しなければ、残された社員のためになりません。
では、どうすればよいのか。それは、
出社しない社員に対し、「引継書の記入を依頼する」「有休の買い取りを打診する」などの方法で、“引き継ぎなし退職”の問題を乗り切ること
です。以降で詳しく説明しますので、確認していきましょう。また、引継書については、次章でダウンロードして使えるひな型を紹介していますので、必要に応じてご活用ください。
社員が退職日まで出社してこない場合は、「引継書」の記入を求めましょう。
引継書とは、退職する際に現職者から後任者へ業務を円滑に引き継ぐための文書
です。社員には有休を取得する権利があるので難しいですが、出社して引き継ぎをするのに比べればハードルは低いですし、「後任者や取引先がどうしても困ってしまうから……」と説明すれば、応じてもらえる可能性はあります。
次の書面は、筆者が作成した簡易的な引継書のひな型です。下のボタンからワード形式でダウンロードできますので、自社の特性を踏まえて修正してください。
退職時引継書
作成日: 作成者:
所属部署: 退職予定日:
なお、引継書の作成は、社員が退職の意向を示した直後に着手させましょう。ケースによりますが、この時期であれば、まだ心理的な距離も近く、詳細な情報を引き出しやすいこともあるからです。
引継書の記入依頼と並行してもう一つ、必要に応じて検討したいのが「有休の買い取り」です。原則として有休の買い取りは禁止されていますが、退職時については、
会社が有休の買い取りを予約することや、本来なら請求できるはずの有休日数を減らしたり与えなかったりすることは違法である
という行政通達(昭和30年11月30日基収4718号)がある一方で、
結果的に取得されない有休について、日数に応じて賃金を支給することは違法ではない
とした裁判例(昭和29年3月19日神戸地裁判決)があります。
簡単に言えば、
会社と社員が合意すれば、有休の買い取りが認められる余地がある
ということです。あくまでも合意があればということなので、会社が「有休を買い取るから出社しろ!」と強制したり、社員に不利益となる情報をちらつかせて合意に持っていったりすることは認められません。しかし、条件(買い取る日数や金額など)も含めて交渉の余地は十分にあるはずです。
今や退職代行サービスのラッピングバスが繁華街を走る時代。社員が退職代行サービスを利用しても不思議ではありません。この場合、社員との直接的なやり取りは著しく制限されるので、引き継ぎだけでなく、会社備品の返却や退職金の支払いなどの問題も出てきます。
そのため、退職代行サービスを運営する業者(以下「退職代行業者」)には次のような対応で臨みましょう。
退職代行業者の正体が、「弁護士」「労働組合」「民間事業者」のいずれであるかによって法的権限が異なります。例えば、弁護士資格のない民間事業者が、退職の条件について会社と交渉することは、非弁行為に当たり認められません。まずは、退職代行業者の法的権限を確認しましょう。
退職の申し出が、社員本人の意思によるものかを確認しましょう。例えば、退職代行業者に対して、社員本人が自筆で記入した退職届の提出を求めることが可能です。
いつ退職したいか、有休を消化する意向があるかなどについて、書面での確認を求めます。
会社備品の返却や引継書の作成を、退職代行業者を通じて社員に要求します。
退職代行業者に対し、退職金や未払い給与の支払いについて、退職代行業者を介さず直接社員と連絡を取りたい旨を伝え、その方法を提案します。
退職で問題が発生した場合、会社と社員の話し合いなどで解決するのが望ましいですが、次のような深刻な状況の場合においては、弁護士への相談が必要になるケースもあります。
会社の機密情報が関係していたり、個人情報保護に関わる問題があったりする場合です。
重要書類の破棄や隠匿、システムへの故意の損害行為などがある場合です。
取引先との関係に重大な支障を来していたり、業務の長期停止で損害が出ていたりする場合です。
例えば、引き継ぎがされないことにより、業務が長期停止して大きな損害を被った場合(上記の3)に該当)などは、弁護士を通して損害賠償を請求できる可能性があります。
とはいえ、法的手段の検討は慎重に行う必要がありますので、あくまでも話し合いによる解決が困難な場合の最終手段として考えておきましょう。
以上(2025年3月作成)
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画像:k_yu-Adobe Stock
おはようございます。突然ですが、皆さんは「雁行(がんこう)」というのをご存じでしょうか。これは雁という渡り鳥が、群れで長距離を旅する際に見せる飛び方です。雁の群れは一列に並んで飛ぶのではなく、先頭の鳥の後ろから左右に広がり、アルファベットの「V」の形になるように列を組んで飛びます。このことを雁行、V字飛行などと呼ぶのです。
なぜ、V字に列を組むのかと思うでしょうが、これにはちゃんとした理由があります。雁が羽ばたくと、その後ろには体が浮きやすい気流ができます。だから、列の後ろを飛ぶ鳥は、仲間が作った気流に乗って、疲れずに飛び続けることができるのです。ただ、この飛び方だと、仲間の力を借りられない先頭の鳥には負担が集中します。そのまま放っておけば先頭の鳥は疲弊して羽ばたけなくなり、そうなると仲間も気流に乗って飛べなくなります。だから、雁たちは長距離を旅する際、先頭の役割を交代しながら順番に回し、ローテーションしながら飛行するのです。
私はこの雁行のシステムを初めて知ったとき、「雁ってとても賢い鳥なんだな」と感心すると同時に、ふと「自分の会社が雁の群れだとしたら、どんな状態だろう」と考えてみました。私たちの会社では、上司や先輩が、私のような若手の進むべき方向を照らして引っ張ってくれています。ですが、私自身はどうなのかというと、正直なところ、上司や先輩の指示にただ従うだけで、自分が皆を引っ張るという経験をあまりして来なかったように思います。雁の群れでいうなら、「先頭の役割を1人だけ交代せず、楽をし続けている状態」といえるかもしれません。
もちろん、会社の指揮系統に従うことは大切なのですが、いつまでも上司や先輩に引っ張ってもらっていては、その人たちに負担が集中します。そんな状態が続けば、やがて組織は成り立たなくなってしまうでしょう。だから、私たち若手は、ただ誰かに任せきりにするのではなく、定期的に「自分がやります!」と手を挙げて、チームを引っ張る意識を持たなければなりません。
もうすぐ新年度が始まりますが、新年度の私のテーマは「前に出る」です。チーム全体が空を飛び続けられるよう、積極的に手を挙げていきたいと思います。
以上(2025年3月作成)
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画像:Mariko Mitsuda
「役員報酬」は一般的な呼称であり、会社法では「取締役(会計参与、監査役)の報酬等」、法人税法では「役員給与」とされています。この記事では役員報酬と記述しています。
役員報酬決定の手続きは会社法に定められています。具体的には、定款に役員報酬の額または具体的な算定方法を定める場合は、その定めに従って役員報酬の額を決定します。しかし、定款に定めを置く例はほとんどなく、多くは株主総会の決議によって決めることとしています。株主総会で個々の取締役の報酬の確定額を決議することもできますが、実務上は、株主総会では取締役全員の報酬総額の最高限度のみを決議し、取締役会に個々の取締役の報酬額の決定を委任するケースが多いです。
役員報酬は税務上の扱いにも注意が必要です。法人税法では、一定の要件を満たす役員報酬についてのみ損金算入を認めています。具体的には「定期同額給与」「事前確定届出給与」「一定の業績連動給与」などを定めています(法人税法第34条第1項)。ただし、一定の業績連動給与を損金算入できるのは、有価証券報告書提出会社に限られるので、多くの企業では定期同額給与や事前確定届出給与とする必要があります。
詳細は省略しますが、定期同額給与は、支給時期が1カ月以内の一定期間ごとであり、支給時期ごとの支給額が同額であるもの、および継続的に供与される経済的な利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの(法人税法施行令第69条第1項)などをいいます。
また、事前確定届出給与は、事前に支給時期と支給額を確定させて、納税地の所轄税務署長に届け出を行ったものをいいます(同族会社に該当しない国内の会社では、定期給与を支給しない役員(非常勤役員等)に対し支払う年俸等の臨時給与は、届け出を行わなくとも、事前確定届出給与に当たるものとして損金算入できます(法人税法第34条第1項第2号))。
支給額に関しては、不相応に高額な役員報酬(過大役員給与)は、高額に当たるとされる部分は損金算入できません(法人税法第34条第2項)。不相応に高額な部分は、当該役員の職務内容、会社の収益、会社の使用人に対する給与の支給状況、同業種・類似規模の他社の役員に対する給与の支給の状況などと比較して判断されます(法人税法施行令第70条)。
役員報酬規程は、役員に対して役員報酬額の算定基準や支給時期などを明確にするという役割を持つと同時に、会社法や法人税法などの関連法令に関する遵守事項を明文化する意味でも重要な規程です。
以降で紹介するひな型は、一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容は異なってきます。実際にこうした規程を作成する際には、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。
【役員報酬規程のひな型】
第1章 総則
第1条(目的)
本規程は、株式会社○○の役員の報酬および賞与の支給基準などについて定めるものである。
第2条(役員の定義)
本規程における役員とは、株主総会で選任された取締役および監査役のことをいう。
第2章 報酬
第3条(報酬の体系)
役員報酬は、月額報酬および役員賞与として支給する。
第4条(月額報酬の決定方法)
1)取締役の月額報酬は、株主総会で決議された報酬総額の範囲内において、取締役会が本規程に従ってこれを決定する。
2)監査役の月額報酬は、株主総会で決議された報酬総額の範囲内において、監査役の協議で本規程に従ってこれを決定する。
第5条(月額報酬の支給基準)
役員の月額報酬は、次の事項を参考にしながら、役員の職位ごとにこれを決定する。
第6条(常勤役員の支給基準)
常勤役員の月額報酬は、原則として従業員の給与の最高額を基準(1.0)とし、次の各号に掲げる区分により、職位別にこれを決定する。
第7条(非常勤役員の支給基準)
非常勤役員の月額報酬は、当該役員の会社への貢献度、社会的地位などを総合的に勘案した上、第5条所掲の事項も参考にして決定する。
第8条(報酬の改定)
役員報酬は、当該役員の職務内容、職務遂行状況、成果などを総合的に勘案して、原則として毎年度見直しを行うものとする。
第9条(報酬の減額措置)
役員報酬は、会社の業績その他必要に応じて、臨時に減額することができる。この場合、取締役の役員報酬については取締役会の協議により、監査役の役員報酬については監査役の協議によりそれぞれ決定した内容に従い役員報酬を減額する。
第10条(通勤手当)
通勤手当は、役員報酬とは別に、別途定める「賃金規程」(省略)第○条~第○条の定めに準じて支給する。ただし、役員のうち、社有車で送迎を行う者については、通勤手当は支給しない。
第3章 報酬の支給方法など
第11条(支給方法)
役員の月額報酬(使用人兼務役員の使用人部分給与を含む)および通勤手当は、毎月○日に役員本人の指定する金融機関の口座に振り込むことで支給する。
第12条(控除)
役員報酬を支給するに際しては、次の各号に掲げるものを控除する。
第4章 報酬に関するその他の事項
第13条(長期欠勤者の報酬)
病気療養など、やむを得ない事情により長期欠勤者の役員報酬は、原則として、任期中の減額は行わない。
第14条(就任・退任または解任時の報酬の取り扱い)
1)月の途中に就任・退任し、または解任された場合の役員報酬は、月額報酬を基に日割り計算を行う。
2)月額報酬の支給計算の期間は当月1日から末日までとする。
第5章 賞与
第15条(賞与の決定方法)
会社の業績が良好なときは、株主総会による決議を得て、役員に賞与を支給することができる。ただし、賞与の金額は、月額報酬と合計して、株主総会で決議された報酬総額の範囲内で決定しなければならない。
第16条(賞与の配分)
各役員への賞与の配分は、各役員の職務内容、職務遂行状況、成果などを総合的に勘案して、取締役の賞与は取締役会で、監査役の賞与は監査役の協議でそれぞれ決定する。
第17条(賞与の支給方法)
役員賞与は、取締役会がその都度決定した支給日において、役員本人の指定する金融機関の口座に振り込むことで支給する。
第6章 雑則
第18条(改廃)
本規程の改廃は、取締役会において行うものとする。
附則
本規程は、○年○月○日より実施する。
以上(2025年2月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)
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画像:ESB Professional-shutterstock
役員報酬の額を考える際、多くの会社は「企業業績」「従業員賃金とのバランス」「世間相場」の3つの要素を重視します。従業員賃金とのバランスが重視されるのは、中小企業の場合、多くの役員が従業員から出世するので、従業員賃金の延長線上に役員報酬があるためです。
一方、別の視点から考えた場合、
役員報酬の損金への算入
も非常に重要です。役員報酬は高額なので、損金に算入できるか否かで法人税等の負担が大きく変わってきます。この記事で、役員報酬を損金に算入するために導入する「定期同額給与」と「事前確定届出給与」の仕組みを紹介します。
定期同額給与とは、
支給時期が1カ月以下の一定の期間ごとである給与で、その事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの(以下「定期同額給与」)。その他これに準ずるものとして政令で定める給与
です。定期同額給与は、役員報酬として支給する際の基本形で、後述する事前確定届出給与のような届け出は不要です。
3月決算の場合、当事業年度4月から翌事業年度3月までの12カ月の支給時期における支給額が同額である役員報酬が該当します。例えば、当事業年度4月から翌事業年度3月までの12カ月において毎月100万円支給するイメージです。
また、これに準ずるものとして政令で定める役員報酬とは、3月決算の場合、6月30日までに改定されて支給される役員報酬です。役員の報酬等は株主総会の決議事項であり、株主総会で役員報酬の支給枠が変更される場合に対応したルールです。
3月決算の場合、定期同額給与の基本形と定期同額給与に準ずるものは次の通りです。


これ以外にも、定期同額給与の額の改定は臨時改定事由や業績悪化改定事由により認定されます。例えば、業績悪化改定事由に該当するのは次の通りです。
事前確定届出給与とは
その役員の職務につき所定の時期に確定した額の金銭等を交付する旨の定めに基づいて支給する給与(定期同額給与および一定の業績連動給与を除く)で、決められた日までに納税地の所轄税務署長にその定めの内容に関する届け出をしているもの
です。
事前確定届出給与には役員賞与のイメージがあります。かつて、会計上の役員賞与の取り扱いが、利益処分から費用処理に変更されたことを受けて、事前確定届出給与が認められた経緯があるためです。
ここで、賞与について「従業員」と「役員」とに分けて確認してみましょう。従業員賞与の場合、前事業年度下期の業績を反映した賞与が翌事業年度6月に支給されるのが一般的です。従来の役員賞与も従業員賞与と同様、前事業年度の業績を反映して、翌事業年度に支給されていました。両者の違いは、従業員賞与が経費処理、役員賞与は利益処分である点でした。
そこで、事前確定届出給与を活用して、役員賞与を従業員賞与のように「課税所得の計算上、損金の額に算入できるようにしよう」という考えが出てきました。しかし、前事業年度の業績を反映した従来の役員賞与の考えの場合は通用しません。なぜなら、事前確定届出給与の位置付けは、従来の役員賞与というよりも従来の役員報酬に近いものだからです。分かりやすく説明すると、事前確定届出給与は役員報酬を12等分して毎月同額支給するのではなく、役員報酬を14等分して6月と12月に14分の2を支給するといったものです。
こうした考えは、事前確定届出給与は要件を満たせば、課税所得の計算上、損金の額に算入できることが前提にあるためです。
事前確定届出給与が従来の役員報酬に近いものだと分かるのが、「四半期支給など定時同額に支給する額」を納税地の所轄税務署長に届け出る場合です。定期同額給与を支給している役員には「定期同額給与に加えて支給する額」を、定期同額給与を支給していない役員に対しては、「四半期支給など定時同額に支給する額」を納税地の所轄税務署長に届け出ます。なお、「四半期支給など定時同額に支給する額」について、非同族会社の場合には届け出は不要です。
次の「定期同額給与+事前確定届出給与」と「事前確定届出給与のみ(四半期支給)」の図表を見れば、「四半期支給など定時同額に支給する額」は従来の役員賞与ではなく、役員報酬であることが分かるでしょう。


事前確定届出給与について次のことを覚えておきましょう。
なお、事前確定届出給与において、企業(法人)の利益調整などは可能な限り排除される傾向にあるため、事前確定届出給与の運用には留意が必要です。事前確定届出給与を導入する際は、税理士などの専門家の意見を聞くか、納税地の所轄税務署に問い合わせましょう。
以上(2025年2月更新)
(監修 税理士 石田和也)
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画像:pixabay
近年、同一労働同一賃金に代表されるように、「パート等」の労働条件の改善が進められています。パート等とは、この記事で便宜上使っている言葉で、
の総称です。詳しくは、いわゆる「パートタイム・有期雇用労働法」で定められているので確認してみてください。
さて、法令改正などに合わせて労働条件を見直していかなければトラブルのもとになります。差し当たり、今、皆さんがすべきことは、
パート等と労働契約を締結する際(雇入時、定年後の再雇用時、契約の更新時など)に、会社が交付する「労働条件通知書」の内容を精査すること
です。直近では、2024年4月1日から労働基準法施行規則が改正され、パート等に労働条件通知書を交付する際、次の3つを新たに明示することが義務付けられています。
この記事では、最新法令に対応した「パート等の労働条件通知書」のポイントと記載例を紹介します。「ここしばらくパート等の採用がなく、労働条件通知書のひな型を更新していない」という人や、「すでにひな型は見直したが、ヌケモレがないか不安」という人は、自社の労働条件通知書と照らし合わせながらご確認ください。
まず、とても大切なポイントをお伝えします。それは、
正社員とパート等では、雇入時に明示すべき労働条件の項目が違う
ということです。図表1の「必ず書面で明示」の赤字部分がパート等特有の項目です。

「2.契約更新に関する事項」は、契約更新があるか否か、更新する場合は何を基準に判断するのか具体的な内容を記載します。2024年4月1日からは、通算契約期間または更新回数の「更新上限」についても記載が必要になっています(詳細は後述)。
「3.無期転換に関する事項」は、2024年4月1日から明示が義務付けられている項目です。
無期転換とは、パート等の通算契約期間(同じ会社でのもの)が5年を超えて更新された場合、本人が会社に申し込めば契約期間の定めのない「無期契約」に転換できる制度
です。雇用形態はパート等のまま変わらず契約期間のみ無期契約に切り替わります。
なお、無期転換権が発生する(または発生している)パート等に対しては、無期転換の申込機会、転換後の労働条件について記載します(詳細は後述)。
「10.昇給の有無、11.退職金の有無、12.賞与の有無」は、これらの制度があるか否か(原則書面で明示)、また、それらの計算方法や支給・実施時期(口頭でも可能)を記載します。
「14.雇用管理に関する相談窓口」は、正社員との待遇の違いなどについて、パート等から相談された場合の窓口を記載します。ちなみに、この相談窓口は「ハラスメント相談窓口」と一体的に運用しても問題ありません。
図表2は、最新法令に対応したパート等の労働条件通知書のイメージです。赤字部分は、前述した法令改正やトラブル防止の観点から注意が必要な内容です(それぞれのポイントは後述)。

契約期間の始まりと終わりを「○年○月○日~○年○月○日」などの形で記載します。
無期転換権の行使により無期契約に切り替わった場合、契約更新の開始日を記載し、「〇年〇月〇日(期間の定めなし)」など、無期契約であることが分かるよう注釈を併記します。
次の1.から4.について記載します。3.は2024年4月1日から明示が義務付けられています。
なお、図表2の例では更新上限を「通算契約期間:10年まで、更新回数:10回まで」としていますが、前述した通り、通算契約期間が5年を超えると、そのパート等は無期転換を会社に申し込めるようになります。無期転換の申込みは原則拒否できないので、長期雇用を想定していないなら、通算契約期間の上限は5年未満に設定しておいたほうが無難です。
また、無期転換権を行使により無期契約に切り替わった場合、更新自体がなくなるので明示は不要になります。ただし、定年等の定めをする場合は別途明示が必要です(詳細は後述)。
次の2点について記載します。どちらも2024年4月1日から新たに明示が義務付けられている項目です。ただし、無期転換申込権がない場合(通算契約期間が5年以内)、明示は不要です。
なお、現在の通算契約期間が5年以内であったとしても、新たな契約を更新した結果、契約期間の途中で5年を超える場合(例:3年契約を繰り返すなど)については、新たな契約更新をする際に、あらかじめ無期転換に関する事項を明示しておく必要があります。
パート等特有の項目ではありませんが、テレワークでオフィス以外の場所でも勤務することがある場合は、その旨を記載します。また、2024年4月1日からは契約締結時の就業場所だけでなく、配置転換等の際の「変更範囲」の記載も義務付けられています。変更範囲については、想定される就業場所を1つずつ記載する必要はなく、
などの書き方も認められます。また、出向の可能性がある場合はその旨の記載も必要です。
ちなみに、変更範囲は未来永劫についての可能性ではなく、あくまで当該契約期間内における可能性を明示すればよいとされています。
よく見かける「○○業務その他会社が指示するあらゆる業務」といった記載だと、正社員と同じ働き方をしているとみなされ、同一労働同一賃金の観点から賃金などに差をつけにくくなります。書き方が難しいですが、
本業を逸脱しすぎないよう、「○○の業務その他これに付帯する業務」といった程度の記載にとどめるのが無難
です。なお、2024年4月1日からは就業場所と同じく、業務内容についても「変更範囲」の記載が義務付けられています。こちらについても
などの書き方が認められますが、実際に業務内容を変更する場合、変更後の業務について正社員との不合理な待遇差が生じていないかを都度チェックする必要があります。
こちらも、変更範囲については未来永劫についての可能性ではなく、あくまで当該契約期間内における可能性を明示すればよいとされています。
シフト制の場合の始業・終業時刻に注意が必要です。労働条件通知書に「シフトによる」と記載するだけでは不十分で、
労働日ごとの始業・終業時刻を明示するか、原則的な始業・終業時刻を記載した上で、一定期間分のシフト表などと併せて交付する必要
があります。
休日についても、シフト制で働く場合の記載に注意しましょう。具体的な曜日などが確定していなくても、
休日の基本的な考え方として、「週○日以上の休日が確保できるようシフトを組む」
といったように記載する必要があります。
パート等も、6カ月以上勤務し、その全労働日の8割以上出勤すると、年次有給休暇(年休)が付与されます。付与日数は、所定労働時間と所定労働日数によって変わります。
パート等の賃金の金額は、同一労働同一賃金で示されている均等待遇と均衡待遇に違反しないようにします。
基本的に、業務の内容などが明らかに違うのであれば、正社員と差を設けても問題ありませんが、逆に言うと、
通勤手当などのように業務の内容と関係がない手当は、パート等にも支給
しなければならないでしょう。
また、時間外労働、休日労働、深夜労働に対する手当(割増賃金)は、パート等の労働時間の実態に応じて支払います。なお、この記事で対象としているパート等は、所定労働時間が法定労働時間(原則として1日8時間、1週40時間)より短いので、
所定労働時間を超え、法定労働時間に満たない時間の割増賃金率を記載
しておく必要があります。これは0%にすることも可能です。
昇給があるか否かを記載します。昇給がある場合、可能であれば昇給の条件などを記載するほうが望ましいでしょう。
退職金があるか否かを記載します。退職金がある場合、可能であれば支給要件などを記載するほうが望ましいでしょう。
賞与があるか否かを記載します。賞与がある場合、可能であれば支給要件などを記載する方が望ましいでしょう。
パート等は契約期間が満了し、更新されない場合に退職となります。この他、本人の希望による退職や、就業規則の解雇事由に該当したことによる解雇があります。これに対応し、
を記載します。
また、無期転換権の行使により無期契約に切り替わった場合、契約期間が青天井になることを避けるため、正社員と同じように定年を設定する対応が考えられます。その場合は定年後の継続雇用についても併記して明示します。
相談窓口の担当部署、連絡先(電話番号、メールアドレス)などを記載します。
以上(2025年2月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)
pj00617
画像:ChatGPT
今日の商談は大成功。うれしい私は先輩とのランチで商談のことを話しすぎちゃった。「今訪問した○○社はいい感じですね。部長のAさんも乗り気だし、1000万円の商談が成立するかも!」って。そうしたら、それを聞いた先輩が大慌てで、「しぃ〜〜! そんなことを声に出したらダメでしょ!!」と私の話を遮ったんだよな……。あれって、何がまずかったんだろう?
電車やカフェなどで、隣の人が会社名や個人名、取引条件などを出しながら仕事の話をしていることがありますが、これはやってはいけません。仕事をしているとたくさんの情報を取り扱いますが、
どんな情報も慎重に取り扱い、相手の会社や個人、取引内容を特定できるような情報は話さない
というのが基本です。「これは話しても大丈夫か?」と迷ったら、話さないほうが正解です。情報が漏洩してしまう原因の多くはヒューマンエラーですが、電車やカフェなどのちょっとした会話もその一つなのです。
ですから、皆さんは、日々、次の6つに注意して行動してください。
関係者と「隠語」を決めておくのもよいです。例えば、相手が東京都中央区日本橋にある会社なら、会社名ではなく「日本橋」と言う感じです。
特に慎重な取り扱いが求められるのが個人情報です。個人情報は「個人情報保護法」で定義されていて、具体的には次のような情報が該当します。
相手が個人の場合はもちろん、法人の場合もその窓口担当者の名刺に記載の情報、会社の連絡網に記載の同僚の情報などは個人情報となります。会社では、個人情報を記載した書類は施錠できるキャビネットで保管するなど、取り扱いのルールを決めているはずですから、必ず守ってください。
個人情報以外にも、次のような情報は会社の営業上重要で、社外には公開したくない情報なので注意が必要です。
上記の情報以外にも、会社独自で慎重な取り扱いを求める情報があると思います。上司や先輩に確認しておきましょう。
以上(2025年1月更新)
pj00348
画像:Mariko Mitsuda