人材採用・定着に貢献する福利厚生制度「iDeCoプラス」とは?

個人型確定拠出年金(通称:iDeCo)に企業が掛け金を上乗せして補助する福利厚生制度「iDeCoプラス」が注目を集めています。
従業員がメリットをストレートに実感しやすい福利厚生制度で、企業における人材採用・定着に大きく貢献する可能性を秘めているiDeCoプラスについて解説します。

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知らなかったでは済まされない!オンラインカジノ問題と企業の対応策

オンラインカジノに接続して「賭博」を行うことは、犯罪です。
従業員のオンラインカジノ行為は、通常、従業員のプライベートな行動の範疇の行為ですから、企業がオンラインカジノ行為に関する直接責任を負うことは原則としてありません。ただし、企業には相応のリスクや責任が求められます。

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経営改善・事業再構築を後押しする専門家支援制度のご紹介

経営課題に向き合う中で、「誰に相談すればよいかわからない」「自社だけでは打開策を見いだせない」と感じたときに頼りになるのが、専門家によるハンズオン支援です。
経営改善や事業再構築を本格的に進めたい中小企業にとって、ハンズオン支援は現状打破と持続的成長を実現するための有効な手立てとなるでしょう。

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【税の勘所】押さえておきたい税金の「金額」

1 押さえておきたい税金の「金額」

この記事では、主な税金(法人税・所得税・消費税・相続税・贈与税)に関する「金額」を整理します。

主な税金

2 5億円超:消費税

5億円超は、消費税で一部の仕入税額控除が認められなくなる課税売上高です。

消費税の納税額は次のように計算されます(簡易課税制度の場合を除く)。

計算式

課税売上げに係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を差し引くことを仕入税額控除といいます。消費税の仕入税額控除の計算方法には、

  1. 全額控除方式:課税仕入れ等に係る消費税額の全額を控除
  2. 個別対応方式:課税仕入れ等に係る消費税額の一部を控除
  3. 一括比例配分方式:課税仕入れ等に係る消費税額の一部を控除

の3つがあり、全額控除方式を利用できるのは、

課税期間における課税売上割合が95%以上で、かつ課税売上高が5億円以下の事業者

に限られます。課税売上割合とは、全体の売上高のうち、課税売上高(消費税が課される売上高)が占める割合です。

そのため、課税期間における課税売上割合が95%未満の場合、または課税売上高が5億円超の場合は、個別対応方式または一括比例配分方式のいずれかを利用することになり、課税仕入れ等に係る消費税額が一部控除できなくなります。

3 1億6000万円:相続税

1億6000万円は、相続税の配偶者に相続税がかからない取得財産の金額です。

配偶者が財産を相続する場合、同一世代間における財産の移転の場合が多いことや、配偶者は被相続人の遺産形成に貢献していること、また、被相続人が死亡した後の配偶者の生活水準を保つなどの理由から、相続税を軽減する措置が設けられています。

そのため、配偶者が財産を相続した場合、その財産の額が次のいずれか多い金額までは配偶者に相続税はかかりません。

  • 1億6000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額(相続人が配偶者と子の場合は、遺産の2分の1相当額)

4 1億円以下:法人税

1億円以下は、法人税の優遇措置を利用できる中小企業者等の判定に関する金額です。

法人税には、中小企業者等が利用できるさまざまな優遇措置があります。主な優遇措置は次の通りで、いずれも資本金が1億円以下でなければ利用できません。

  1. 法人税の軽減税率
  2. 交際費等の損金不算入制度における定額控除限度額(年800万円)
  3. 欠損金の繰越控除
  4. 欠損金の繰戻還付
  5. 貸倒引当金の法定繰入率
  6. 特定同族会社における留保金課税の不適用
  7. 少額減価償却資産の取得価額の損金算入
  8. 賃上げ促進税制(中小企業向け)の適用

ただし、注意点があります。上記1.~6.は、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合は利用できません。

また、上記7.~8.については、資本金が1億円以下でも、大規模法人に発行済株式の2分の1以上を所有されている場合、または2以上の大規模法人に発行済株式の3分の2以上を所有されている場合などは利用できません。なお、大規模法人とは、資本金が1億円を超える法人、資本もしくは出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1000人を超える法人、又は大法人(資本金が5億円以上である法人)との間にその大法人による完全支配関係がある普通法人をいいます。

5 5000万円以下:消費税

5000万円以下は、消費税の「簡易課税制度」が選択できる課税売上高です。

簡易課税制度は、事業の種類に応じ、課税売上高に一定割合を乗じて仕入税額控除を計算する方法で、

小規模事業者だけ

が利用できます。原則的な消費税の計算方法は複雑なので、簡易課税制度で小規模事業者の負担を軽減しています。簡易課税制度は、その課税期間の前々年または前々事業年度における課税売上高が5000万円以下で、「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出している事業者が利用できます。

6 2000万円超:所得税

2000万円超は、所得税の確定申告をしなければならない給与の年間収入です。

給与所得者は年末調整をするので、ほとんどの人は確定申告をする必要はありません。しかし、当該給与所得以外にも所得がある場合や給与の年間収入金額が2000万円を超える場合は、年末調整の対象外となるので、自身で所得税の確定申告をしなければなりません。

7 2000万円超:所得税

2000万円超は、住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)が受けられない合計所得金額です。

住宅借入金等特別控除とは、個人が住宅ローンを利用して、マイホームの取得や増改築した場合に、その住宅ローンの年末残高を基に計算した一定額を住み始めた年分以後の各年分の所得税額から控除できる制度です。住宅借入金等特別控除は、適用する年の合計所得金額が2000万円を超える年分については対象外となります。

8 2000万円以下:贈与税

2000万円以下は、住宅取得資金贈与を受けるための受贈者の要件の1つとなる金額です。

投資や賃貸用ではなく、自身の住宅を取得するため、直系尊属である父母や祖父母などから贈与により金銭を取得した場合、一定の金額までは贈与税がかかりません。この特例を受けるには、贈与を受けた年の受贈者(贈与を受ける人)の合計所得金額が原則2000万円以下であるなどの要件を満たす必要があります。

9 1000万円以下:消費税

1000万円以下は、消費税の納税義務が免除される基準期間の課税売上高です。

事業者は、国内において行った資産の譲渡や貸付け、役務の提供について、消費税を納めなければなりません。ただし、基準期間の課税売上高が1000万円以下の場合、一定の場合を除き、消費税の納税義務が免除されます。

10 1000万円未満:消費税

1000万円未満は、消費税の納税義務が免除される基準期間が無い場合の資本金の額です。

新規に設立された法人は基準期間がありません。そのため、その事業年度開始の日における資本金が1000万円未満なら、一定の場合を除き、消費税の納税義務が免除されます。

11 850万円超:所得税

850万円超は、所得税の給与所得控除の上限となる収入金額(195万円控除)です。

給与所得の金額は、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いて計算し、上限は195万円です。

給与所得控除額

12 800万円:法人税

800万円は、中小法人における交際費等の損金算入限度額の1つとなる金額です。

原則として交際費等は損金算入できませんが、資本金が1億円以下の法人(中小法人)は、特例として、年800万円(定額控除限度額)まで交際費等を損金算入できます。ただし、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合は対象外です。

なお、交際費等のうち、接待飲食の費用の50%相当額は損金算入できるので、年800万円と比較して有利なほうを選択しましょう。

13 800万円以下:法人税

800万円以下は、中小法人が法人税の軽減税率を受けられる所得金額です。

普通法人の場合、各事業年度に適用される税率は次の通りです。中小法人の場合、年800万円以下の所得金額部分については、通常よりも低い税率(軽減税率)が適用されます。ただし、資本金が1億円以下でも、資本金が5億円以上の法人と完全支配関係にある場合、軽減税率が適用されません。

適用される税率

14 300万円以下:法人税

300万円以下は、中小企業者等が30万円未満の減価償却資産を全額損金算入できる限度額です。

中小企業者等が、取得価額が30万円未満である少額減価償却資産を取得した場合、取得価額の全額を損金算入できます。ただし、1事業年度に損金算入できる限度は300万円以下です。事業年度が1年未満の場合は、月数で按分します。

15 110万円以下:贈与税、相続税

110万円以下は、贈与税(暦年課税)および相続時精算課税の基礎控除額です。

贈与税は個人が個人から財産をもらったときに課される税金ですが、個人がその年の1月1日から12月31日までの1年間にもらった財産の合計が110万円以下なら贈与税はかかりません。これを「基礎控除」といいます。基礎控除は、贈与をした人ごとではなく、贈与を受けた人ごとに1年間で110万円となります。なお、死亡日以前7年間(2023年12月31日以前の贈与については3年間)の分については、基礎控除分であっても、相続財産に加えることになっており、相続税の対象になります。

また、2024年1月以降は、相続時精算課税(贈与税については2500万円までの特別控除が受けられるが、贈与した財産については相続時にまとめて相続税が課せられる制度)の適用を選択した場合でも、毎年110万円の基礎控除が設けられるようになりました。以前は、相続時に生前贈与した財産の全額が相続税の課税対象となっていましたが、2024年1月以降の贈与については、毎年110万円を控除した残額の合計が相続税の課税対象とります。

16 1万円以下:法人税

1万円以下は、交際費等から除かれる一定の飲食代の1人当たりの金額です。

飲食等の費用のうち、1人1万円以下までなら損金算入できます。1万円の判定は、法人が適用している消費税等の経理処理(税抜経理方式または税込経理方式)に応じて行われます。

なお、経営者や社員、その親族の接待で使った飲食代は、1万円以下でも損金算入できません。

以上(2025年11月更新)
(監修 税理士法人アイ・タックス 税理士 山田誠一朗)

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画像:Charnchai saeheng-Adobe Stock

【ハラスメント対策】ハラスメントの再発防止 情報開示や研修のポイントは?

1 全社員に当事者意識を持たせる。ただし情報開示は慎重に

ハラスメントが発生した場合、2度と同じような事案が起きないよう、再発防止策を講じなければなりません。

大切なのは、社員に「自分もハラスメントの行為者になるかもしれない」という当事者意識を持ってもらうことです。そのために必要なのが、

発生したハラスメントについて社内に情報を開示すること

です。開示する(しない)情報のイメージは次の通りです。

  • 開示する情報:社内でハラスメントが発生したこと、ハラスメントの類型など
  • 開示しない情報:行為者や被害者の名前、具体的な言動、行為者の処分内容など

行為者や被害者の名前などを伏せるのは、関係者のプライバシーへの配慮です。ただ、中小企業の場合、名前などを伏せても何となく誰のことなのかが分かってしまい、それによって被害者が傷付くことがあります。こうした場合は、そもそも情報を開示しない、ある程度期間が経ってから詳細を隠して開示するなどの対応を検討する必要があります。

2 ハラスメント防止方針を再周知する

次に、全社員に対して、「ハラスメント防止方針」の内容を再周知します。ハラスメント防止方針とは、ハラスメントに対する会社の姿勢を示す方針で、主に次の9つの項目を定めます(ハラスメント防止規程など、就業規則の中に定めることもあります)。

  • 基本的な考え方(ハラスメントを行ってはならない旨)
  • ハラスメントに当たる言動
  • 方針の対象(全社員)
  • ハラスメントに当たる言動を取った者への処分
  • ハラスメントに関する相談窓口
  • 相談者・事実関係の確認への協力者等への不利益な取扱いの禁止
  • 被害者に対する配慮のための措置・行為者に対する措置
  • 制度等の利用(就業規則等に従い、育児休業等の制度を正当に利用できる旨)
  • ハラスメント防止研修・講習

再発防止の観点で考えると、特に「1.基本的な考え方」「2.ハラスメントに当たる言動」「4.ハラスメントに当たる言動を取った者への処分方針」を重点的に再周知するのがよいでしょう。

また、ハラスメントを受けた経験の有無やその内容について、社内アンケートを実施するのも効果的です。厚生労働省・あかるい職場応援団「ハラスメント関係資料ダウンロード」では、「過去3年間にパワハラを受けたと感じたことはあるか?」など、パワハラ(パワーハラスメント)に関する社内アンケートの例を示しているので参考になります。

■厚生労働省・あかるい職場応援団「ハラスメント関係資料ダウンロード」■
https://www.no-harassment.mhlw.go.jp/jinji/download/

3 ハラスメント防止研修

ハラスメント防止方針を周知するのと合わせて、社員にハラスメントに関する正しい知識・意識を持ってもらうために、ハラスメント防止研修や講義も実施します。弁護士事務所やコンサルタントなどの外部の専門機関などに研修を依頼するのが一般的です。

研修の内容としては、例えば次のようなものがあります。どのような内容にするにしても、「なぜこの研修を実施するのか」という経営者のメッセージを伝え、可能な限り社員全員に受講させることが大切です。

  • ハラスメントの種類(パワハラ、セクハラなど)
  • ハラスメントに当たる具体的な言動
  • ハラスメントを起こしやすい人の行動特性
  • ハラスメントにならないためのコミュニケーションのポイント
  • ハラスメントを起こした場合のリスク
  • ハラスメントに関する法規制、裁判事例
  • ハラスメント対策の進め方(相談窓口の設置、社内規程の整備など)
  • ハラスメント対応の実務のポイント(相談受付、社内処分、被害者への対応など)

以上(2025年10月更新)
(監修 Earth&法律事務所 弁護士 岡部健一)

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画像:UTS-Adobe Stock

【かんたん消費税(5)】海外と取引する際に必要な消費税の知識

1 輸出と輸入では全く違う消費税の取り扱い

海外取引をする会社が知っておきたいのは、輸出と輸入とで消費税の取り扱いが全く違うということです。

  • 輸出:消費税が課されない
  • 輸入:消費税が課される

このような違いがあるのは、「消費税は日本国内の消費に対して課する」という考えがあるためです。つまり、

  • 物を海外に輸出したら、その物の消費地は「海外」になるので消費税は課されない
  • 物を日本に輸入したら、その物の消費地は「日本国内」になるので消費税が課される

ということです。

このように輸出と輸入では消費税の取り扱いが全く違うのに、その理解を誤ると、物を輸出した際に得意先に消費税を請求してしまうなどのトラブルが発生します。この記事では、輸出取引と輸入取引に対する消費税の取り扱いの概要と注意点を解説します。

2 輸出した際の消費税の取り扱い

1)輸出の考え方

物を輸出した場合は消費税が課されません。これを、

「免税取引(輸出免税)」

と呼びますが、同じように消費税が課されない取引として「非課税取引」があります。両取引は「消費税が課されない」という点で共通していますが、消費税の「納税額」を計算する際の取り扱いは全く違います。

具体的には、

  • 非課税:本来は課税対象だけど、例外的に課税しないこととしている
  • 免税:消費税は課税されているが、税率が0%(=免除)になっている

と考えるのです。つまり、「消費税が課税されない(=非課税)」のか「消費税は課税されているが、結果としてゼロになる(=免税)」のかということです。そして、このちょっとした違いが、納税額の計算方法に大きな影響を与えます。この点の詳細は後述します。

2)免税となる輸出の範囲と注意点

免税となる「輸出」の代表例は、「物の輸出」です。

免税となる輸出の範囲と注意点

「物の輸出」は輸出免税とされる典型的な例ですが、この場合でも、

輸出許可証(税関長が証明した書類)を保存

しておかないと輸出免税として取り扱われません。税務調査では、この輸出許可証の提示を求められることがあるので注意しましょう。

また、「物の輸出」以外にも、非居住者に対して工業所有権(特許権や意匠権など)を貸し付けて貸付料を受け取ったり、「非居住者」に対するコンサルティングなどの役務提供を行って対価を受け取ったりする取引も輸出免税として取り扱われます。目に見えないサービスを海外に輸出していると考えるためです。

輸出免税

この場合、輸出許可証などの保存は必要ない代わりに、次の事項が記載されている契約書その他の書類を保存しておかなければなりません。

  1. 役務の提供等をした側(つまり読者の皆さん)の氏名又は名称及び住所
  2. 取引を行った年月日
  3. 役務の提供等の内容
  4. 対価の額
  5. 相手側の氏名又は名称及び住所

なお、「非居住者」の詳細は、「外国為替及び外国貿易法(外為法)」という法律で定められています。その内容は多岐にわたりますが、主に、

取引相手先の事務所がどこにあるか

が判断の目安になるので、海外に事務所を構えている相手先に役務提供を行ったら輸出免税となります。ただし、外国法人でも、その法人の日本支店への役務提供は輸出免税にはなりません。

3)輸出免税がある場合の消費税計算の注意点は?

先ほど、非課税取引と免税取引との違いは、「消費税が課税されない(=非課税)」のか、「消費税は課税されているが、結果としてゼロになる(=免税)」のかの違いであるとお伝えしました。実はこのちょっとした違いが、消費税の納税額の計算方法に大きな影響を与えます。

具体的には、

仕入税額控除の金額が変わってくる

のです。

仕入税額控除とは、

預かった消費税(仮受消費税)から支払った消費税(仮払消費税)を差し引くこと

です。

仕入を行ったときに支払う消費税は、どんなときでも仕入税額控除が取れるわけではなく、

課税される売上に対応する仕入に掛かった消費税しか仕入税額控除は取れない

のです。そのため、

売上が非課税の場合、その仕入に掛かった消費税で仕入税額控除は取れない

ことになります。

仕入税額控除

「免税取引」なのに、誤って「非課税取引」として処理した場合、本来は消費税が還付されるべきなのに、還付される消費税がゼロと計算されてしまいます(図表3の計算に置き換えると、仮払消費税が0円となってしまうため)。

経営者の方は消費税の細かい計算方法まで理解する必要はありませんが、同じ「消費税が課されない取引」であっても、

「免税取引」と「非課税取引」の区分を誤ると納税額(還付額)に大きな影響が出る

ということをしっかり理解しておきましょう。

3 輸入した際の取り扱い

1)輸入の考え方

海外で商品を購入しても、その時点で日本の消費税は課されません。しかし、その商品を日本国内に輸入する際は消費税が課されます。具体的には、

保税地域から商品を引き取った際に消費税が課される

ことになります。保税地域とは、

税関の輸入許可がまだ下りていない外国貨物を一時的に保管する場所

のことです。

海外で購入した商品を自由に日本国内に持ち込むことはできないため、まずは保税地域で保管されます。この商品を最終的に引き取る(日本国内に持ち込む)までの一般的な流れは次の通りです。

  1. 関税及び消費税の計算を行い、税関に対して「輸入申告」を行う
  2. 計算した関税及び消費税を納付する
  3. 税関より「輸入許可通知書」が発行される
  4. 商品を引き取る

2)輸入消費税がある場合の消費税計算の注意点は?

輸入申告を行った際に納付する消費税を、一般的に「輸入消費税」と呼びます。この輸入消費税も、日本国内で仕入をした際の仮払消費税と同様に、

仕入税額控除の対象

となります。ただし、仕入税額控除を取るには、

「輸入許可通知書」を保存しておく必要

があります。商品を引き取ったからといって書類を廃棄せずに保存しておきましょう。

なお、日本国内で仕入を行う際は、仕入価格に税率(10%)を掛ければ消費税額が計算できますが、輸入消費税の計算は少し複雑で、単に仕入価格に税率を掛けても計算はできません(具体的な計算方法は割愛)。そうしたこともあり、輸入取引について会計処理を行う際は、

一般的な仮払消費税と輸入消費税は別の勘定科目を使用する

ようにすると、消費税の申告作業時に必要な数値を集計したりするのに便利です。

以上(2025年11月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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【規程・文例集】株式交付計画書のひな型

1 株式交付計画書に定めるべき内容

株式交付は、2021年3月に施行された改正会社法によって認められた比較的新しいスキームということもあり、中小企業のM&Aのスキームとしてまだあまり採用されているケースは見受けられません。もっとも、今後、

  • 買収したい会社の経営者が、引き続き、一部の株式を持ち続けたいという希望を持っている状況で当該会社を子会社化していきたい場合
  • 自社株を用いて、譲渡会社を子会社化したい場合

に株式交付のスキームが採用されることもあるのではないかと思われます。なお、類似のスキームとして株式交換というスキームがありますが、このスキームは株式すべてを交換し取得されることを想定していますので完全親子会社化が前提になります。そのため、株式の一部取得にとどまることが可能な株式交付とは異なるものといえます。

株式交付を行うときには、株式交付計画書を作成する必要があり、次の事項(法定記載事項)を定めなければなりません(会社法第774条の3)。なお、新株予約権を発行している場合などには別途追加で定めるべき事項がありますが、この記事では省略します。

  • 株式交付子会社の商号および住所(第1条)
  • 株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数(第2条)
  • 株式交付子会社の株式の譲渡人に対して交付する対価の内容等および割当てに関する事項(第3条)
  • 効力発生日(第7条)

2 株式交付計画書のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の企業によって定めるべき内容が異なってきます。実際に就業規則を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【株式交付計画書のひな型】

株式会社○○(以下「甲」という。)は、甲を株式交付親会社、株式会社○○(以下「乙」という。)を株式交付子会社とする株式交付(以下「本株式交付」という。)を行うにあたって、次のとおり株式交付計画(以下「本計画」という。)を作成する。

第1条(株式交付子会社の商号及び住所)

乙の商号及び住所は、次のとおりである。

商号:○○

住所:○○

第2条(株式交付親会社が本株式交付に際して譲り受ける株式交付子会社の株式の数の下限)

甲が本株式交付に際して譲り受ける乙の普通株式の数の下限は、○○株とする。

第3条(本株式交付に際して株式交付子会社の株式の譲渡人に対して交付する株式及び金銭並びにそれらの割当て)

1)甲は、本株式交付に際して、乙の普通株式の譲渡人に対して、当該普通株式の対価として、その譲渡する乙の普通株式の合計数に○○を乗じて得た数の甲の普通株式を交付する。

2)甲は、本株式交付に際して、乙の普通株式の譲渡人に対して、その譲渡する乙の普通株式1株につき、甲の普通株式○○株を割り当てる。

3)前二項の規定に従い、甲が乙の普通株式の譲渡人に対して交付する甲の普通株式の数に1株に満たない端数があるときは、甲は、会社法第234条その他関係法令の規定に従い、処理する。

第4条(株式交付親会社の資本金及び準備金の額)

本株式交付により増加すべき甲の資本金及び準備金の額は以下のとおりとする。

1.資本金の額 金0円

2.資本準備金の額 会社計算規則第39条の2に従い甲が別途定める額

3.利益準備金の額 金0円

第5条(株式交付子会社の株式の申込みの期日)

乙の普通株式申込みの期日は、○○年○○月○○日とする。

第6条(株式交付計画の承認決議)

甲は、効力発生日の前日までに、本計画の承認及び本計画に必要な事項に関する機関決定を行う。

第7条(本株式交付がその効力を生ずる日)

本株式交付が効力を生ずる日(以下「効力発生日」という。)は、○○年○○月○○日とする。ただし、本株式交付の手続進行上の必要性その他の事由により必要がある場合には、甲は、これを変更することができる。

第8条(本計画の変更及び本株式交付の中止)

本計画作成日から効力発生日までの間において、本株式交付の実行に重大な支障となる事象が生じたこと等により本株式交付の目的を達成することが困難となった場合には、甲は、本計画の内容を変更し又は本株式交付を中止することができる。

第9条(株式交付計画の効力)

本計画は、第6条に定める甲の適法な機関決定が得られないときは、その効力を失うものとする。

第10条(規定外事項)

本計画に定める事項のほか、本株式交付に関する事項は、本株式交付の趣旨に従って、甲がこれを決定する。

○○年○○月○○日

株式会社○○

代表取締役 ○○

以上(2025年9月作成)
(執筆 リアークト法律事務所 弁護士 松下翔)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【朝礼】 「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」

【ポイント】

  • 川端康成氏の「雪国」は、出来事や登場人物の心情をぼかして書いている
  • 代わりに、情景や人物の所作の描写がとても丁寧で、“温度”が感じられる
  • 小さな兆しを“観る”ことのできる人は、事故やクレームを未然に防ぐことができる

皆さん、おはようございます。11月に入り、冬の兆しが見えてきましたね。今日は、川端康成氏の小説「雪国」をテーマに話をします。雪に閉ざされた温泉町を舞台に、都会から来た男性・島村と、雪国の芸者・駒子の関わりを、澄んだ空気と静けさの中に描いた物語です。

島村は冬の温泉町で駒子と出会い、季節をまたいで通いながら、互いに近づいたり離れたりを繰り返します。町にはもう1人、葉子という女性もいて、それぞれの思いが交錯する中、最後は冬の闇を裂くような火事の場面へ。雪の白さ、夜の暗さ、炎の赤さが対照的に描かれ、島村はただ見上げることしかできない。結末の多くは語りませんが、ざっくりお伝えするとこんなストーリーです。

「雪国」は、例えば「2人はこうなった」「こう思っていた」など、出来事や登場人物の心情をあまり直接的に書きません。その代わり、何が起きたのかを読者に想像させる仕掛けが至る所にちりばめられています。例えば、「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった」で有名な冒頭のシーン。列車の窓の反射、雪明かり、ガラス越しの視線など、情景の描写がとても丁寧です。登場人物の所作も、衣(きぬ)擦れの音、楽器の稽古、身の回りの整え方に至るまで、細かく描写されています。

出来事や登場人物の心情をぼかした文章は、人によっては「分かりにくい」と敬遠したくなるかもしれませんが、そう思う人こそ、ぜひ一度、「雪国」を読んでみてください。内容は決して派手ではありませんが、雪の光、息づかい、指先の所作までを丁寧に“観(み)る”ことで、人の心の揺れや距離が浮かび上がってきます。月並みな言い方ですが、“温度”が感じられるのです。

ビジネスでは「分かりやすく」「簡潔に」という点ばかりが重視されがちですが、「分かりにくい」ものに目を向けることもとても大切です。例えば、お客さまの表情、同僚の疲れのサイン、機械のかすかな違和感――小さな兆しを“観る”ことのできる人は、事故やクレームを未然に防ぐことができます。

冬は雑音が少ないぶん、本質がよく見える季節です。「雪国」に学び、私たちも観る力と丁寧さで、年末の仕事の質を一段上げていきましょう。

以上(2025年11月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

投資評価に必要なコストの考え方/設備投資の成果チェック(3)

1 見落としてはいけない投資評価特有のコスト

投資の判断を誤る原因の1つに、

「お金を集め、利用することにかかるコスト(以下「資金調達コスト)」を意識せずに計画を立ててしまう

ことがあります。同じ1000万円の設備投資であっても、その資金をどのように調達したかによって、実際の採算性は大きく変わります。銀行から借りた資金であれば利息が発生し、株主からの出資であれば配当が必要になるように、資金を調達する方法によってコストの内容が変わってくるからです。

投資評価は、「この設備を導入すれば売上が増えるか」という一面的な判断ではありません。

資金調達コストを正しく把握し、その分を差し引いても利益を生むかどうかを見極める

ことが大切です。

今回は、投資評価の判断において欠かせない「資金調達コスト」の考え方やその具体的な計算方法と、資金調達コスト以外に投資評価やファイナンスで使う独特のコストである「機会コスト」「埋没コスト」を解説します。

2 資金調達コストはどのように使われるのか

投資案件の採算性を評価する際、問題となるのが、

  • 将来その投資から得られるキャッシュ・フロー
  • 現時点で投資のため支払われるキャッシュ・フロー

とで、時点(将来と現時点)が異なる点です。なぜなら、現在の100万円は、利息や配当が発生することで、1年後に受け取る100万円に比べ、その価値が高くなるからです。

この問題を解消するために、「将来その投資から得られるキャッシュ・フロー」を「現時点の価値」に換算する必要があります。この「将来のお金の価値を現時点の価値に換算すること」を「現在価値に割り引く」といいます。

資金調達コストは、将来のキャッシュ・フローを現在価値に調整する際に用いる率(割引率)として使われます。また、それ以外にも投資利益率、内部収益率を使った具体的な投資の評価方法で投資案件を採択するかどうかの判断基準として使われます。

3 資金調達コストの具体的な計算方法

事例として、

  • 投資額は100万円
  • 資金調達コストは10%
  • 投資案件はA案(利益率は15%)、B案(利益率は8%)、C案(利益率は17%)の3案

とした場合で、投資案件にかかる5年間のキャッシュ・フローの推移を見てみましょう。

5年間のキャッシュ・フローの推移

この投資案件を選ぶ際に、B案は選ぶことはまずありません。なぜなら、投資するための資金を集めてくる資金調達コスト(10%)よりも利益率(8%)が低いので、予定通りいったとしてもマイナス2%(=8%-10%)になってしまい、やらないほうがマシだからです。

では、その他の案はどうでしょうか。A案、C案については、どちらも利益率が資金調達コスト(10%)を上回っており、どちらを選ぶかは会社の経営状況次第です。この事例では、A案のように「投資後初期(1~3年目)からある程度リターンが見込めるのがよいのか」、C案のように「最初は少ないリターンで耐える期間は長いものの5年目の総額が大きいキャッシュ・フローを得られるほうがよいのか」といった判断になります。

4 資金調達コストの具体的な中身と計算方法(WACC)

それでは、資金調達コストの中身を見てみましょう。資金調達コストは、資金調達の方法により異なるため、貸借対照表に注目します。

貸借対照表

貸借対照表は、企業の財政状態を表しています。左側(借方)が、資金の利用状況を、右側(貸方)は利用している資金の調達方法を表しています。資金調達コストは、貸方の資金の調達方法ごとに決まっています。

買掛金などの営業活動にかかる項目は、企業間の信用で得られた資金なので資金調達コストはかかりません。そのため、計算でも考慮しません。

次に、金融機関からの借入金は、支払う利息が資金調達コストです。例えば、年利2.0%なら、借入金の資金調達コストは2.0%になります(詳細な解説は後述)。昨今、この金利は上がっていく傾向にあるので、今後借入金に係る資金調達コストは高くなっていくというのが、現在の一般的な見方ではないでしょうか。

ただし、支払利息は税金計算上の費用(損金)になるため、節約効果があります。そのため、実際の資金調達コストは、

支払利息-税金の節約効果(利息×税率)

で考えます。ただし、税金の節約効果を考慮しなければならないのは、利益が出て税金を払っている会社だけです。

一方、資本(株主の出資に内部留保を加え、株主資本と呼ぶ)は、支払う配当金が資金調達コストです。配当金は損金にならないため、配当金の全額が資金調達コストになります。

それでは、実際に計算例を使って資金調達コストを算出してみましょう。投資評価では、会社全体で資金の調達方法を加重平均した資金調達コストを用います。これを「加重平均資本コスト」といいます。英語ではweighted average cost of capital、頭文字をとってWACC(ワック)と世間では呼ばれ、次の算式で計算されます。

WACC=借入利率×(1-実効税率)×負債シェア+資本金配当率×株主資本シェア

例えば、借入金4000万円、資本6000万円、借入利率5%、資本金配当金10%、実効税率30%の場合は次のようになります。

7.4%=5%×(1-30%)×0.4(注1)+10%×0.6(注2)

(注1)負債シェア0.4=4000万円/(4000万円+6000万円)

(注2)株主資本シェア0.6=6000万円/(4000万円+6000万円)

5 中小企業における資金調達コストの考え方

中小企業の場合、配当を支払うことは稀です。なぜなら、経営者と株主が同じであることが多いため、株主の資本に対して資金調達コストを要求されないケースが多いからです。このような場合に、筆者は、

借入金による資金調達コストをベースに考えるのがよい

と考えています。中小企業では、会社に資金を残すか、経営者兼株主に還元していくかは比較的自由であり、その状況に応じて資金調達コストを変えていくのは現実的ではないためです。

無借金経営の場合はどうでしょうか。この場合も、

一般的な借入金の利息、または、安全な運用利回りとして定期預金などの利息を参考に資金調達コストを考える

ようにしましょう。資金は資本金、内部留保を使えばよいだけですが、少なくとも預金で置いておくよりも利益率は高くないと事業をする意味がないからです。

もちろん、資金調達コストは判断をする上での最低限の基準なので、定期預金などの利息をそのまま資金調達コストとして設定するのではなく、一定の+α(上乗せ幅)を乗せて目指すべき目標とすることになります。

6 投資評価時に必要な「機会コスト」と「埋没コスト」

投資評価の場面では、機会コストと埋没コストという考え方も大切です。

まず、機会コストとは、

ある案を選択した場合に「他の選択肢を選べば得られたはずの利益や収益」のこと

です。例えば、新しい製造ラインに1000万円の投資をすることを決めたとします。しかし、その同じ1000万円で不動産投資に回していれば年間で5%の利益が見込めたかもしれません。この場合、新しい製造ラインへの設備投資の機会コストは、不動産投資をしなかったために得ることのできなかった5%の利益です。このように、得られなかったメリットをコストと考えます。

機会コストは、実際には支出をすることがないイメージ上のコストであり、何かの意思決定、選択をすると必ず何かを失っているということを強く意識するためのコストといえます。ぜひ、皆さんの判断の際には気にしてみましょう。

次に、埋没コストとは、

投資によって、どの案を選んだとしても「変わらない費用」のこと

です。例えば、新店舗を出店するかどうかを検討する際に、本社の管理部門の費用(本社の人件費や賃料など)は出店してもしなくても発生するため、埋没コストに該当します。

また、「ここまで資金を使ってしまったのだから、途中でやめるのはもったいない」と考えてしまう心理も、埋没コストに関係します。途中まで進めた段階で、そこまでに払った資金は戻ってきません。大切なのは、その案件を継続するかどうかは、これからの収入と費用を冷静に比較して考えることです。例えば、ギャンブルで、こんなに時間とお金をかけたのだから、当たるまでやらないともったいないと考え続けてしまうケースがあるようです。この“こんなにかけた時間とお金”が埋没コストです。続けても、やめても変わらないコストです。経営判断でも同じで、過去の支出に引きずられないという考え方が、正しい意思決定を行う上で非常に重要です。

以上(2025年11月作成)

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画像:apinan-Adobe Stock

【高齢者雇用】法改正で変わる高齢社員の働き方、どうマネジメントする?

1 法改正の動向を押さえつつ、自社の方針を決めよう

日本の65歳以上人口は、1950年には総人口の5%にも満たなかったものの、その後はどんどん増加し、2024年10月時点では29.3%に達しています。一方で総人口は減少局面に入り、2056年には1億人を下回ると予測されています(内閣府「令和7年版高齢社会白書」)。

こうした少子高齢化の進行により、多くの会社が深刻な人手不足に直面しています。実際、製造業や建設業、運輸業などではその傾向が顕著で、長年の経験や技術を持つベテラン人材は、単なる「戦力の穴埋め」ではなく、若手の育成や品質の安定に欠かせない存在になっています。

会社にとって「高齢社員をどのように雇用し続けるか」は、今や避けて通れない経営課題。特に2025年・2026年は高年齢者雇用・給付制度において重要な節目を迎えています。すでに施行済の内容も含め、押さえておきたいものは次の3つです。

  • 1.高年齢者雇用確保措置の経過措置が終了(2025年3月31日)
  • 2.高年齢雇用継続給付の縮小(2025年4月1日)
  • 3.在職老齢年金の支給停止調整額の見直し(2026年4月1日)

これらの制度改正は相互に影響し合うため、就業規則・処遇制度の見直しや社員への説明を怠ると、誤解や不満がトラブルに直結するリスクがあります。まずは3つの改正点について、詳しく見ていきましょう。

2 高年齢者雇用確保措置の経過措置が終了(2025年3月31日)

会社は高年齢者雇用安定法により、社員を65歳まで雇用するために

  • 定年の引き上げ(65歳まで)
  • 定年制の廃止
  • 継続雇用制度(65歳まで)の導入

のいずれかの措置を実施する義務があります。このうち、継続雇用制度(65歳まで)については、以前は労使協定(2012年度以前に締結されたものに限る)により、例えば、「希望者のうち62歳以上のみを継続雇用の対象とする」といった基準を設けることが認められていました。

しかし、2025年3月31日をもってこの経過措置は終了し、

定年後も働くことを希望する社員は全員、継続雇用(65歳まで)の対象

になりました

経過措置の流れ

3 高年齢雇用継続給付の縮小(2025年4月1日)

高年齢雇用継続給付とは、

賃金が「60歳時点の75%未満」に低下した状態で働く場合に支給される雇用保険給付

です。雇用保険の被保険者であった期間が5年以上ある、60歳以上65歳未満の社員が対象です。

社員を定年後に再雇用すると、定年前と比べ賃金がガクッと下がることがあります。こうした場合に、社員の仕事へのモチベーションが下がらないよう、高年齢雇用継続給付が減った分の賃金を補填するわけです。

この高年齢雇用継続給付は、以前は賃金低下率に応じて最大15%が支給されていましたが、

2025年4月1日以降に60歳になった新規受給者からは、最大給付率が「10%」に引き下げ

られています(2025年3月31日以前に60歳になった人の給付率は最大15%のまま)。

高年齢雇用継続給付

例えば、60歳時点の賃金が月額40万円、再雇用後が月額24万円(60歳時点の60%)の場合、

  • 改正前の給付額:3.6万円給付(24万円×15%)
  • 改正後の給付額:2.4万円給付(24万円×10%)

となり、月額1.2万円、年額14.4万円もの差が出てしまいます。

高年齢雇用継続給付の縮小により、60歳以降の社員は従来よりも実質収入が下がる可能性があります。社員のモチベーション低下を防ぐためには、会社としては「給付ありき」の賃金設計を避け、職務給・役割給の導入や評価制度の見直しなどを検討する必要があります。

4 在職老齢年金の支給停止調整額の見直し(2026年4月1日)

在職老齢年金とは、

年金を受け取りながら働くと、賃金が一定以上の場合、年金の一部がカットされる制度

です。厚生年金保険に加入しながら年金をもらう60歳以上の社員が対象で、賃金(ボーナスを含む)と年金の合計額が「支給停止調整額」というボーダーラインを超えると、十分な収入があるとみなされ、老齢年金の一部または全額が支給停止となる仕組みです。

ただ、「せっかく働いても年金が減ってしまうのは困る」という声が多く寄せられているのに加え、近年の賃金上昇の影響もあって、支給停止調整額は段階的に引き上げられています。

2026年4月1日からは、支給停止調整額は「51万円→62万円」になる予定

です。簡単に言うと、

  • 賃金(ボーナスを含む年収の1/12)と、老齢厚生年金の合計額が月62万円以下の場合、年金は全額支給される
  • 合計額が月62万円を超える場合、超えた分の1/2の額が年金から差し引かれる

という仕組みになります。なお、支給停止を受けるのは年金のうち老齢厚生年金(厚生年金保険)だけで、老齢基礎年金(国民年金)は対象になりません。具体的には次のようなイメージです(図表3の「50万円」は2024年度の金額です)。

在職老齢年金

5 これからの高齢者雇用をどう考える?

制度改正の内容を踏まえた上で、企業は「高齢社員をどのような形で雇い続けるか」という方針を検討する必要があります。代表的な視点をいくつか紹介します。

1)70歳までの雇用機会をどう確保するか

高年齢者雇用安定法では、65歳までの雇用確保は義務ですが、70歳までは「努力義務」とされています。とはいえ、単なる「努力」ではなく、実際に具体的な措置を検討・導入することが求められています。例えば、

  • 定年を70歳に延長する
  • 継続雇用制度の対象を70歳まで広げる
  • グループ会社や他社での再就職を支援する
  • フリーランスや業務委託での就業機会を設ける

などの方法が考えられます。70歳までの就業機会をどう設計するかは、今後の人材戦略に直結する大きなテーマです。

高齢者雇用の基本的な考え方については、次の記事をご確認ください。

2)高齢社員の待遇はこのままでよいか

定年後の社員を再雇用する場合、賃金は定年前よりも下がるのが一般的ですが、

「パートや嘱託だから」というだけで賃金を下げるのは、同一労働同一賃金違反

です。仕事内容や役職、労働時間、責任、ノルマなどが定年前とどう変わるのかを考慮した上で、待遇を決めるようにしないといけません。

特に、2025年4月1日以降は高年齢雇用継続給付が新規受給者から縮小されているため、「給付で差額を補う」従来型の設計では社員の不満が残りやすくなります。今後は、職務や責任に応じた合理的な賃金制度へ移行し、処遇に納得感を持たせる人事制度を整えることが重要です。

在職老齢年金にも注意しましょう。法改正でボーダーライン(支給停止調整額)が段階的に引き上げられているとはいえ、高所得であればあるほど老齢年金のカット幅が大きくなるのは変わりません。カットされた分の年金は退職後も戻ってきませんから、賃金設計を考える際は確認が必要です。

高齢社員の待遇については、次の記事をご確認ください。

3)シニア労災をどう防ぐか?

厚生労働省「令和6年 労働災害発生状況について」によると、労働災害による休業4日以上の死傷者のうち、60歳以上の割合は30.0%に上ります。いわゆる「シニア労災」が深刻化しており、とくに転倒や骨折といった事故が増加傾向にあります。

シニア労災

高齢社員の多くは、「自分はまだ若い」と思っているケースが少なくないので、健康診断や体力テストで自分の体の状態を正しく理解してもらうことが大切です。また、時短勤務やフレックスタイム制、在宅勤務制度、あるいは労働時間の枠にとらわれないフリーランスなど、加齢に合わせて自分のペースで稼働できる働き方を提案してみるのもよいでしょう。

高齢社員の健康を考慮した働き方については、次の記事をご確認ください。

以上(2025年10月更新)

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