書いてあること
- 主な読者:消費税の全体像をざっくり知りたい経営者
- 課題:消費税は法人税とは異なる独自の計算方法で納税額が計算されるため、どのような仕組みの税金なのかあまり分かっていない
- 解決策:消費税は負担する人(消費者)と国に納付する人(納税義務者) が異なる。取引も課税されるもの、されないものなど扱いが決まっているなどテーマごとのポイントを押さえて全体像を把握する
1 消費税って、どんな税金?
消費税は利益に関係なく課されます。そして、消費税を負担する人(消費者)と消費税を国へ納付する人(納税義務者)が異なる間接税です。
そのため、消費税は利益計算とは異なる独自の計算方法や業務上の注意点があります。これらの点や、消費税の全体像を押さえる上で必要になる基本的なポイントを、次のコンテンツで紹介します。
2 「インボイス制度」への対応
インボイス制度は、適用される税率や消費税額を正確に記載して、適切に相手に知らせるというものです。もし、インボイス制度に対応しないと取引先側の消費税負担が重くなってしまうという、取引上マイナスの影響が生じてしまう可能性があります。インボイス制度の内容や影響について、次のコンテンツで紹介します。
3 消費税を納めないといけない会社と、納めなくてもよい会社
会社は消費税を納めなければなりませんが、取引の規模などによっては免除されます。消費税が免除される会社が、これを見逃すと損をするので、しっかりチェックしましょう。また、インボイス制度下では、相手が免税事業者かそうでないかなどによって自社の消費税負担が重くなったりします。消費税が免除される免税事業者の詳細やインボイス制度について、次のコンテンツで紹介します。
4 消費税はすべての商品や取引に課されるものではない
消費税は、取引内容によって次のように区分されます。
- 消費税が課されるもの(課税取引)
- 消費税が課されないもの(課税対象外取引)
- 政策上の理由などで消費税が課されないもの(非課税取引)
- 輸出取引(輸出免税取引)
相手からもらったインボイス等や自社が発行するインボイス等を確認し、課税区分に間違いがないかチェックしましょう。また、海外取引をする会社の場合は、輸出と輸入で消費税の取り扱いが全く違ってきます。取引の区分や海外取引(輸出と輸入)の取り扱いについて、次のコンテンツで紹介します。
5 消費税の計算方法は、「原則課税」と「簡易課税」の2種類
消費税の納税額は、預かった消費税から支払った消費税を差し引いて計算します。預かった消費税とは物を売ったり、サービスを提供したりした場合に預かる消費税をいい、「仮受消費税」と呼びます。一方、支払った消費税とは物を買ったり、サービスの提供を受けたりした場合に支払う消費税をいい、「仮払消費税」と呼びます。
納税額の計算方法には、原則課税と簡易課税とがあり、大きな違いは支払った消費税(仮払消費税)の集計・計算方法です。仮払消費税の計算は、仕入税額控除といい、原則課税の場合、非常に複雑な仕組みになっています。一方、簡易課税を選択できるのは売上規模が一定以下の小規模な会社に限られており、原則課税に比べて計算が楽な方法です。
仕入税額控除は、「適格請求書発行事業者」が発行するインボイスを保存することが、必要条件になるので、どのような仕組みか理解しておきましょう。消費税の計算方法について、次のコンテンツで紹介します。
6 税率が2種類あること、覚えていますか?
消費税の税率は、商品の種類によって10%と8%の2種類あります。軽減税率とは、
特定の商品については税率を低くする(8%にする)
ことですが、導入から数年が経過して慣れもあるのか、8%で処理することを忘れてしまうなどのミスも散見されます。いま一度、対象商品を見直し、間違いやすいケースや注意点を確認してみましょう。消費税の軽減税率について、次のコンテンツで紹介します。
7 法律で義務付けられている、値札などの価格表示方法
消費税については、商品やサービスの価格の表示ルールが決まっています。これを「総額表示義務」といい、事業者が消費者に価格を表示する場合は、
消費税額を含めた価格(税込価格)で表示しなければならない
ことになっています。総額表示をしないで税抜表示のままにしていても罰則はありませんが、法律に違反していることに変わりはありません。また、消費者からの信頼を損なう原因にもなりますので、もし税抜表示のままにしている場合には、すぐに総額表示で対応するようにしましょう。消費税の表示ルールである総額表示について、次のコンテンツで紹介します。
8 消費税の経理処理は、税込と税抜の2種類
消費税の経理処理は、
- 税抜経理:消費税を売上高や経費とは「区別して」仕訳する方法
- 税込経理:消費税を売上高や経費に「含めて」仕訳する方法
の2種類があります。税抜経理と税込経理は好きなほうを採用できますが(消費税の免税事業者は税込経理のみ)、メリットとデメリットがあるので有利な方法を選択したいものです。消費税の経理方法について、次のコンテンツで紹介します。
9 資金繰りにも影響大。消費税の確定申告と中間申告
消費税の申告は、年に1回決算のときだけやればいいわけでなく、
- 確定申告
- 中間申告
の2種類があり、中間申告については、前期の納税額の大小によって必要な回数が変わります。一番多い場合は、毎月申告納税しなければなりません。消費税は、法人税と違い、「赤字」であっても納税が必要になることが多い税金のため、資金繰り面でも注意が必要です。消費税の申告については、次のコンテンツで紹介します。
以上(2024年11月作成)
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【3分で分かる個人情報保護(3)】個人データを自ら取り扱う場合に守らなければならないルール
1 個人データを自ら取り扱う場合のルールは3つ
2 データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する
3 安全管理措置を講じる
4 従業者を監督する
5 (参考)「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置
1 個人データを自ら取り扱う場合のルールは3つ
個人データを個人情報取扱事業者(会社)が自ら取り扱う場合、守らなければならないルールが3つあります。具体的には
- データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する
- 安全管理措置を講じる
- 従業者を監督する
です。以降でポイントを確認していきましょう。
2 データ内容の正確性を保ち、必要がなくなったら消去する
個人データは、正確かつ最新の内容に保つとともに、利用する必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければなりません。
「正確かつ最新の内容に保つ」とはいえ、保有する個人データをすべて、いつも最新化しなければいけないわけではありません。それぞれの利用目的に応じて、その必要な範囲内で正確性・最新性を確保すれば大丈夫です。
また、「遅滞なく消去する」といっても、具体的に「いつまでに」「○日以内に」という期限は特にありません。業務の遂行上の必要性や引き続き個人データを保管した場合の影響等も勘案し、必要以上に長期にわたることのないようにしましょう。ただし、他の法令で保存期間が定められている場合があることに気をつけなければいけません。例えば、賃金台帳は労働基準法に基づき原則5年間保存が義務付けられています。
3 安全管理措置を講じる
取り扱う個人データの漏えい、滅失または毀損の防止その他の個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じなければなりません。
個人データの「漏えい」とは個人データが外部に流出すること、「滅失」とは個人データの内容が失われること、「毀損」とは個人データの内容が意図しない形で変更されることや、内容を保ちつつも利用不能な状態となることをいいます(3つまとめて、「漏えい等」といいます)。
「安全管理のために必要かつ適切な措置」については、「個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)」に具体例が示されています。この記事の第5章で、参考として、社員数100人以下の「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置について紹介しています。最低限対応しないといけない内容ですので、確認してみてください。
■ガイドライン10 (別添)講ずべき安全管理措置の内容■
https://www.ppc.go.jp/personalinfo/legal/guidelines_tsusoku/#a10
4 従業者を監督する
従業者に個人データを取り扱わせるに当たっては、当該個人データの安全管理が図られるよう、当該従業者に対する必要かつ適切な監督を行わなければなりません。
「従業者」は、雇用関係にある社員(正社員、契約社員、嘱託社員、パート社員、アルバイト社員など)だけではなく、取締役、執行役、理事、監査役、監事、派遣社員なども含まれます。
「必要かつ適切な監督」は、前述した安全管理措置で「やる」と決めたことがしっかり守られているかチェックすることです。
5 (参考)「中小規模事業者」が講じるべき安全管理措置
ガイドラインの10「(別添)講ずべき安全管理措置の内容」で例示されている中小規模事業者における手法を紹介します。
1)基本方針の策定
「事業者の名称」「関係法令・ガイドライン等の遵守」「安全管理措置に関する事項」「質問および苦情処理の窓口」などの項目を策定する
2)個人データの取り扱いに係る規律の整備
個人データの取得、利用、保存等を行う場合の基本的な取り扱い方法を整備する
3)組織的安全管理措置
- (組織体制の整備)個人データを取り扱う従業者が複数いる場合、責任ある立場の者とその他の者を区分する
- (個人データの取り扱いに係る規律に従った運用・個人データの取扱状況を確認する手段の整備)あらかじめ整備された基本的な取り扱い方法に従って個人データが取り扱われていることを、責任ある立場の者が確認する
- (漏えい等事案に対応する体制の整備)漏えい等事案の発生時に備え、従業者から責任ある立場の者に対する報告連絡体制等をあらかじめ確認する
- (取扱状況の把握および安全管理措置の見直し)責任ある立場の者が、個人データの取扱状況について、定期的に点検を行う
4)人的安全管理措置
- (従業者の教育①)個人データの取り扱いに関する留意事項について、従業者に定期的な研修等を行う
- (従業者の教育②)個人データに付いての秘密保持に関する事項を就業規則等に盛り込む
5)物理的安全管理措置
- (個人データを取り扱う区域の管理)個人データを取り扱うことのできる従業者および本人以外が容易に個人データを閲覧等できないような措置を講じる
- (機器および電子媒体等の盗難等の防止①)個人データを取り扱う機器、個人データが記録された電子媒体または個人データが記載された書類等を、施錠できるキャビネット・書庫等に保管する
- (機器および電子媒体等の盗難等の防止②)個人データを取り扱う情報システムが機器のみで運用されている場合は、当該機器をセキュリティワイヤー等により固定する
- (電子媒体等を持ち運ぶ場合の漏えい等の防止)個人データが記録された電子媒体または個人データが記載された書類等を持ち運ぶ場合、パスワードの設定、封筒に封入し鞄に入れて搬送する等、紛失・盗難等を防ぐための安全な方策を講じる
- (個人データの削除および機器、電子媒体等の廃棄)個人データを削除し、または、個人データが記録された機器、電子媒体等を廃棄したことを、責任ある立場の者が確認する
6)技術的安全管理措置
- (アクセス制御)個人データを取り扱うことのできる機器および当該機器を取り扱う従業者を明確化し、個人データへの不要なアクセスを防止する
- (アクセス者の識別と認証)機器に標準装備されているユーザー制御機能(ユーザーアカウント制御)により、個人情報データベース等を取り扱う情報システムを使用する従業者を識別・認証する
- (外部からの不正アクセス等の防止①)個人データを取り扱う機器等のオペレーティングシステムを最新の状態に保持する
- (外部からの不正アクセス等の防止②)個人データを取り扱う機器等にセキュリティ対策ソフトウェア等を導入し、自動更新機能等の活用により、これを最新状態とする
- (情報システムの使用に伴う漏えい等の防止)メール等により個人データの含まれるファイルを送信する場合に、当該ファイルへのパスワードを設定する
7)外的環境の把握
外国において個人データを取り扱う場合、当該外国の個人情報の保護に関する制度等を把握した上で、個人データの安全管理のために必要かつ適切な措置を講じる
以上(2024年12月更新)
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【人事はつらいよ】「残業するな」と言っただけなのにジタハラ(時短ハラスメント)?
1 社員のために「定時で帰れ」と言っているのに……
残業が一向に減らない……。今日だってもう定時を回っているのに、誰も帰ろうとしない。ここは経営者の私が帰りやすい雰囲気を作ろう! こう思ったA社の社長は言いました。
「もう定時を過ぎているぞ。さぁ、今日は残業禁止だ! 早く帰ってくれ!」
全員すぐに帰るだろうと思った社長でしたが、みんな座ったまま動こうとしません。そのうち、社員の1人が口を開きました。
「社長、今の業務量では残業しないと終わらないです。それなのに一方的に『残業禁止』だなんて……。今の発言はジタハラ(時短ハラスメント)です!」
困ったことに他の社員もこの意見に賛同する始末……。社長は釈然としません。
「社員の体調やプライベートを考えて言っているのに。それをジタハラって言うのは、どういうことだ。この国はおかしくなってしまったのか?」
2 社員のための「時短」も行き過ぎるとハラスメントに……
コスト削減、働き方改革、SDGs……会社はさまざまな観点から、長時間労働の是正に積極的に取り組んでいます。しかし、こうした会社の姿勢が、時にジタハラになることがあります。ジタハラとは、
「時短」、つまり社員の労働時間を短くすることに関連したハラスメント(嫌がらせ)
です。法令上の定義はありませんが、一般的には、
業務量などに関係なく、会社が一方的に残業を禁止したり、シフトを減らしたりすること
を指します。
ポイントは、「会社が一方的に」という部分です。会社は社員のためを思って時短に取り組むわけですが、それが一方的だと、
- 業務量の変わらないまま時短を強制された社員が、こっそり隠れ残業をする
- 無理なスケジュールでの仕事を余儀なくされた社員が、ケアレスミスを連発する
- 合理的でない時短が続くことによって、社員がやる気を失う
などの問題が発生します。ジタハラを直接規制する法令はありませんが、
このように社員の仕事に支障を来すような極端な時短は、違法なパワハラ(パワーハラスメント)とみなされる恐れがある
ので注意が必要です。
3 パワハラの「過大な要求」に該当すると違法になる
パワハラは、労働施策総合推進法で定義されたハラスメントで、
職場の上下関係など優越的な関係を利用した嫌がらせ
です。具体的には、次のような業務上必要のない(または行き過ぎた)言動によって、社員の仕事に支障を来すことを指します。
- 身体的な攻撃:暴行、傷害
- 精神的な攻撃:脅迫・名誉毀損、侮辱、ひどい暴言等
- 人間関係からの切り離し:隔離、仲間外れ、無視
- 過大な要求:業務上明らかに不要・遂行不可能なことの強制、仕事の妨害等
- 過小な要求:不合理に程度の低い仕事を命じること、仕事を与えないこと
- 個の侵害:私的なことへの過度な立ち入り
会社にはパワハラなどのハラスメント防止措置が義務付けられているので、対応が不十分なために社内でハラスメントが発生すると、民法上の使用者責任などを問われる恐れがあります。
ジタハラがパワハラ(違法)になる場合、上の「4.過大な要求」に該当する可能性が高いです。違法になる例とならない例について、弁護士にヒアリングした結果は次の通りです。
ケース1~3に共通して言えることは、
- 社員を定時で帰らせるための対策を講じず、残業禁止を言い渡すだけだと違法になる
- 「業務を引き取る」「改善点を指摘する」など対策を講じた上で、社員の残業を禁止するのであれば違法にならない
という点です。違法にならない例については、
- 業務の一部を他の社員に振っていいから、今日は帰りなさい
- 納期がきついなら取引先と交渉していいから、今日は帰りなさい
などのケースもあります。とにかく、具体策が必要なわけです。結局のところ、
ジタハラ最大の問題は、会社が社員の抱えている課題に向き合わず、時短を強制すること
であると分かります。
経営者からすれば、「決められた時間内に終業できるよう工夫するのも仕事のうちだろう、そこまで会社が面倒を見ないといけないのか」という印象かもしれませんが、法令や社員の権利意識が変わってきている今、不要なトラブルを防ぐ意味でも、会社のほうから歩み寄る姿勢を見せるのがよいでしょう。
以上(2024年12月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)
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