中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助・コロナ支援など幅広いジャンルの支援があります。
本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。
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中小企業等を支援する国や自治体の補助金・助成金事業では、雇用・人材開発・IT補助・コロナ支援など幅広いジャンルの支援があります。
本レポートでは、おすすめの補助金・助成金について支援の内容や対象条件、申請方法等についてわかりやすく紹介します。
中小企業が採用活動を成功させるべく、昨今の採用事情や、求人に応募した“採用候補者”の志望度を低下させないために面接担当者が気を付けるべき点、面接のポイントなどについてご説明いたします。
働き方にも“新時代”が到来している今、私たち社労士のもとに多く寄せられる相談事例トップ10と、その解決策を検討することで、よりよい職場環境についてともに考えてみたいと思います。
株式会社(以下「会社」)の資金調達は、金融機関からの借り入れや社債の発行などの「デット(debt:負債)」と、募集株式の発行や新株予約権の発行などの「エクイティ(equity:株主資本)」とに大別されます。エクイティは返済義務がなく、自己資本の増強につながりますが、経営権に影響が及ぶ恐れもあります。
ここで紹介するのは「募集株式の発行等」です。聞き慣れないかもしれませんが、要するに「増資」です。具体的には、
を指します。また、募集株式の発行等の形態は次の3つです。
募集株式の発行等の基本的な流れは次の通りです。
以降では、第三者割当と株主割当に注目し、手続きの概要を紹介します。
募集の際は、次の募集事項を決定します。
公開会社の場合、原則として、募集事項は取締役会が決定します。これは機動的な資金調達を行うためです。ただし、有利な価格で株式を発行する「有利発行」だと既存株主の株式価値が減少するので取締役会では足りず、株主総会の特別決議が必要です。また取締役は、その株主総会で有利発行が必要な理由を説明しなければなりません。
なお、種類株式発行会社が譲渡制限株式を募集する場合、その種類株式の種類株主総会の特別決議が必要です。ただしこの種類株主総会は、定款に定めれば省略できます。
非公開会社の場合、株主は議決権割合の維持に大きな関心があります。そのため、取締役会ではなく、株主総会の特別決議で募集事項を決定します。ただし、株主総会で募集株式数の上限と払込金額の下限を定めれば、特別決議によって募集事項の決定を取締役会に委任できます。
なお、公開会社と同様に、有利発行の場合は株主総会による特別決議と取締役の説明が必要です。譲渡制限株式を募集する場合も、種類株主総会の特別決議が必要ですが、定款に定めれば省略できます。
公開会社が取締役会で募集事項を決定した場合、原則として、株式の代金払込期日の2週間前までに、決定した募集事項を既存株主に通知します(全ての株主の同意があれば、期間の短縮可)。これは、不当な募集株式の発行がなされた場合に、既存株主が「株式発行差止請求権」を行使できるようにするためです。ただし、株主が多いと大変なので、公告でも大丈夫です。一方、公開会社が株主総会の特別決議によって募集事項を決定した場合、決定した募集事項を、別途、株主に通知や公告をする必要はありません。
また、新株発行(自己株式処分を含む)によって、新たに議決権の2分の1を超えて株式を所有する「特定引受人」が出る場合、会社は株式の代金払込期日の2週間前までに、既存株主に特定引受人の氏名等を通知するか、公告しなければなりません。そして、この通知等から2週間以内に、全ての株主の議決権の10分の1以上の議決権を有する株主が反対の旨を会社に通知した場合、事業継続のために緊急の必要があると認められるときを除き、会社は代金払込期日の前日までに株主総会の普通決議による承認を受けなければなりません。
会社は、募集株式の引き受けの申込者に、商号・募集事項・金銭の払込取扱場所などを通知します。申込者は、氏名または名称、住所、引受株式数を記載した書面などで会社に申し込みます。
会社は、割当をする申込者を決め、払込期日または払込期間の初日の前日までに、申込者に割り当てる株式数を通知します。申込者は、株式の割当を受けて「株式引受人」となります。
株式引受人が株主となるには、金銭の全部の払い込みまたは現物出資の全部の給付が必要です。払い込みまたは給付がされた場合、期日が定められていればその日に、期日が定められず期間が定められている場合は履行のあった日に、株主となります。なお、現物出資の場合の手続きは金銭の払込みとは異なりますが、ここでは説明を割愛します。
会社は、発行済株式総数、資本金の額など、変更すべき事項について変更登記をします。
株主割当の手続きの多くは、第三者割当と同じです。以降では、第三者割当てとは異なる点を中心に紹介します。
株主割当の場合、第三者割当の募集事項に加えて、次の事項を決定します(以下「募集事項等」)。
公開会社の場合、取締役会が募集事項等を決定します。なお、会社が種類株式発行会社で、今回の株主割当によって特定の種類株主に損害を与える恐れがあるときは、種類株主総会の特別決議が必要です。ただしこの株主総会は、定款に定めれば省略できます。
非公開会社の場合、定款の定めに従って取締役か取締役会が募集事項等を決定します。定款に定めがない場合は、株主総会の特別決議によって募集事項等を決定します。
なお、公開会社と同様に、会社が種類株式発行会社である場合、種類株主に損害を及ぼさないように種類株主総会の特別決議が必要ですが、定款に定めれば省略できます。
会社は、募集株式の引き受けの申し込み期日の2週間前までに、株式の割当を受ける権利を与えた株主に募集事項等を通知します。
申込者は、氏名または名称、住所、引受株式数を記載した書面などで会社に申し込みます。申し込みの期日までに申し込みをしない場合、株式の割当を受ける権利を失います。
株式の発行に違法などの瑕疵(かし)がある場合、他の株主はそれを理由に株式発行の差止請求をしたり、株式発行の無効を主張したりすることができます。
株式発行の差止請求は、株式発行の効力発生前に行使できる手段です。会社が法令や定款に違反し、または著しく不公正な方法で株式を発行することによって、株主が不利益を受けるおそれがある場合に講じる措置です。
株式発行の無効主張は、株式発行の効力発生後に行使できる手段です。ただし、いったん効力が発生したものを無効にするのは大変で、一定のルールがあります。例えば、株式発行の無効を主張するためには会社を訴えなければなりません。訴えの提起は、相手が公開会社なら発行の効力発生日から6カ月以内、非公開会社なら1年以内に限られます。また、訴えを提起できるのは、株主、取締役、執行役、清算人、監査役に限られます。
無効の主張が認められた場合、判決の効力は原告以外の第三者にも及びます。どういった場合に株式発行の無効が認められるかは個別の解釈によりますが、一般的には重大な法令・定款違反となります。
この他、株式発行の手続きがまったくないままで株式発行に関する登記が行われた場合、株主は株式発行の不存在確認の訴えを起こすことができます。この訴えは、確認の利益を有する人であれば誰でもできますが(原告になるのは、前述した株式発行の無効の訴えを提起できる人の他に、従業員や債権者などとなります)、判決の効力は原告以外の第三者にも及びます。
以上(2024年7月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 渡邉和也)
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画像:Mariko Mitsuda
近ごろよく耳にする「ダイバーシティ」。直訳すると「多様性」ですが、会社にとっては、
人種・国籍・性・年齢を問わずに人材を活用すること(小学館 デジタル大辞泉より)
と捉えるほうが分かりやすいでしょう。この考え方を採用に取り入れたものが「ダイバーシティ採用」です。採用の対象になるのは、例えば「女性」「高年齢者」「外国人」「障害者(障がい者)」「LGBTQ+」「難病患者」などです。
「ダイバーシティ採用はいろいろと大変そう」ということで、最初から検討しない経営者も多いのですが、今回、専門家の方にお話を伺ってみたところ、ポイントさえ押さえれば、ダイバーシティ採用は想像しているよりもずっと現実的であることが分かりました。そのポイントは次の通りです。
少しの気遣いと環境整備をすれば、今まで採用してこなかった人材も現場で活き活きと働けるようになるかもしれません。人材採用難の折、ダイバーシティ採用は検討に値するでしょう。各章で、専門家の見解も交えつつ詳細を紹介していきますので、参考にしてください。
(注)この記事では、法令等の固有名詞の場合を除いて「障がい」と記します。LGBTQ+は、いわゆる性的マイノリティや性的指向が定まっていない人をいいます。
女性を雇用する場合、会社は図表1の取り組みを実施する必要があります。「休暇・休業」「労働時間」に関する制度は、社員から請求があったら必ず、また「社内設備」については、請求の有無に関係なく、女性の人数などに応じて環境を整備しなければなりません。
内容 | 法令のルール | |
休暇・休業 (義務) |
産前・産後休業 | 妊娠・出産をする社員は、産前6週間(双子以上は14週間)、産後8週間まで休める |
育児休業 | 出生した子どもを養育する社員は、原則子どもの1歳(最長2歳)到達日まで休める(2回まで分割可) | |
子の看護休暇 | 小学校入学前の子どもを看護する社員は、1年度1人当たり5日まで、2人以上は10日まで休める(2025年4月からは、小学校3年生修了までの子どもが対象。また、学校行事に参加する場合などにも休暇を取得可) | |
生理休暇 | 生理で就業が困難な社員は、就業可能になるまで休める | |
労働時間 (義務) |
育児時間 | 就業時間中に授乳などを行う必要がある社員は、休憩時間とは別に、1日30分以上×2回まで授乳などのための時間を確保できる |
母性健康管理措置 | 産後1年間は、医師などから指示・指導があった社員に対し、健康診査等を受けるために必要な時間を確保できるようにする | |
所定外労働の制限 | 3歳未満の子どもを養育する社員、家族を介護する社員は、所定外労働を免除する(2025年4月からは、小学校入学前までの子が対象) | |
時間外労働の制限 | 小学校入学前の子どもを養育する社員、家族を介護する社員は、1カ月24時間、1年150時間を超える時間外労働を免除する | |
深夜業の制限 | 小学校入学前の子どもを養育する社員、家族を介護する社員は、深夜労働を免除する | |
所定労働時間の短縮措置等 | 3歳未満の子どもを養育する社員、家族を介護する社員は、所定労働時間の短縮(原則1日6時間以内)、時差出勤、フレックスタイム制などの措置を実施する(2024年5月31日より1年6カ月以内の法律で定める日からは、小学校入学前の子が対象) | |
社内設備 (義務) |
女性用トイレの整備 | 女性を雇用する企業は、女性20人以内ごとに1個以上女性用トイレを設置する(社員数10人以下の場合は、独立個室型トイレに限り男女共用でも可) |
休養室・休養所 | 社員が50人以上または女性が30人以上いる場合、休養室・休養所を「男女別」に設置する |
(出所:労働基準法、育児・介護休業法などを基に作成)
特に手厚いサポートが必要になるのは、子育て中の期間。以降は、子育てをしている女性に喜ばれる制度を紹介していきます。
一般的に女性が働きにくいとされる建設業界で、女性の定着促進に向けた支援を行っている「女性技能者協会」。代表理事の石川 由希恵(いしかわ ゆきえ)氏に、女性雇用のポイントを聞きました。
育児休業などで長く仕事を休む女性にとって「職場復帰のためのサポートが手厚いこと」は重要です。3歳未満の子どもについては、住民税非課税世帯であるなど一定の要件を満たさない限り幼児教育・保育無償化の対象ではないなどの理由から、子どもを保育園に入れられずに職場復帰を果たせないという女性も少なくありません。自分が子育てをしている間、「他の社員とスキルに差がついてしまうのでは」と不安に思う人も多いです。
また、時間の問題も大きなネックに。子どもの体調不良や保育園のお迎えなど、様々な場面で時間を取られるので、「労働時間に融通が利くこと」は、子育て中の女性にとって非常にありがたいです。(石川氏)
女性の求職者は、「職場復帰のサポートが手厚い会社」や「労働時間に融通が利く会社」に着目しているようです。例えば、次のような制度を整備し、求人票や採用ページなどでアピールすると非常に好印象です。
妊娠中の方は体調の管理が難しく、また、子どもが生まれた後も育休中に保育園を見つけられないなどの理由で、法定内の育休期間のみでは復職が難しいとの声もあります。また、一度離職した女性の中には、「子育てでブランクがあるから、雇ってもらえないのではないか」と不安に思う人もいます。
既存制度に「ちょい足し」するかたちで次のような制度を実施するのも、妊娠中・子育て中の女性を採用する上で、大きなアピールポイントになります。
最近では、社員の不妊治療についてサポートしている会社もあります。例えば、
といった取り組みは、不妊治療をしている/将来的にするかもしれないと考えている女性に、安心して働ける職場であることをアピールするのに役立つでしょう。
高年齢者(法令上、55歳以上の人のことをいいます)を雇用する場合、会社は「65歳まで雇用する措置を実施する義務(65歳までの雇用確保)」と、「70歳まで働ける機会を与える努力義務(70歳までの就業機会確保)」を負います。
内容 | 法令のルール |
65歳までの雇用確保 (義務) |
65歳まで雇用するよう、次のいずれかの措置を講じる ●定年の引き上げ(65歳まで) ●定年の廃止 ●継続雇用制度の導入(65歳まで) |
70歳までの就業機会確保 (努力義務) |
70歳まで働けるよう、次のいずれかの措置を講じる ●定年の引き上げ(70歳まで) ●定年の廃止 ●継続雇用制度の導入(70歳まで) ●継続的に業務委託契約を締結する制度の導入(70歳まで) ●継続的に次の事業に従事できる制度の導入(70歳まで) a.事業主が自ら実施する社会貢献事業 b.事業主が委託、出資(資金提供)等する団体が行う社会貢献事業 |
(出所:高年齢者雇用安定法などを基に作成)
高年齢者や障がい者など、多様な人材をサポートするミライロの取締役 梶尾 武志(かじお たけし)氏に、高年齢者を含め、多様な人材の活躍を実現するためのポイントを聞きました。
できるだけ細かい情報開示が必要です。バリアフリーや勤務体系の柔軟さなど会社内で実現できている制度を明記するのはもちろんですが、逆に実現できていないところもハッキリと示したほうが好印象。具体的な情報を示すことで、求職者は自分が活躍できるかどうかをイメージしやすくなります。
また、採用する人事に多様性の理解があっても、現場に理解がないと人材が定着することは困難。定着化のため、全社的な研修を行う必要性があると考えます。現場の社員含めてマインドの改革が実現すれば、「何が足りないか」がおのずと見えてくるもの。その「気付き」によって環境が改善されることが多様性の実現につながります。(梶尾氏)
高年齢の求職者の中には、健康面に不安を感じている人も少なくありません。定期的に面談を行い、本人やご家族の健康状態などに合わせた多様な勤務形態をかなえることが大切です。
また、新たに高年齢者を雇い入れた際、現場との擦れ違いを防ぐためには、全社的に多様な人材に対する研修制度を導入することも効果的。これは、後述する障がい者雇用にも通じます。
以上のポイントを踏まえて次のような制度があると、求人票や採用ページなどでアピールする材料になります。
高年齢者に、自信を持って活き活きと働いてもらうためには、
などのアイデアを取り入れることも一手です。
雇用した高年齢者が意欲的に元気で働いている姿は、他の社員のモチベーション向上にも効果をもたらすでしょう。
外国人を雇用する場合、日本人とは全く違うイメージがあるかもしれませんが、実は「在留資格(日本に滞在し、活動するための資格)」以外のルールは、基本的に日本人と同じです。
内容 | 法令のルール |
外国人特有 (義務) |
●就労可能な在留資格の取得を条件に、雇用する必要がある ●原則として、在留資格で許可された範囲を超える活動はできない ●在留資格は一部を除き在留期間が決まっているため、満了前に更新が必要 |
日本人と同じ (義務) |
●同じ活動を行う日本人と同程度の報酬を支払う ●住民登録が必要 ●税金、社会・労働保険料などの納付義務を負う(要件に該当する場合) ●労働関係法令を守る(年次有給休暇、健康診断など。労働時間などは一部扱いが異なる場合がある) |
(出所:出入国管理及び難民認定法などを基に作成)
在留資格の区分によって職種の制限や在留期間などが異なります。入社前に「業務に適合した在留資格か」「期限は切れていないか」などを必ず確認しましょう。
外国人雇用のサポートを通じて日本での多文化共生を目指す、外国人雇用協議会 理事の竹内 幸一(たけうち こういち)氏に、外国人雇用のポイントを聞きました。
外国人労働者は、ビザの有無以外は日本人と何も変わらない。ビザが切れてしまうことを不安に思う人も多いので、それをサポートする制度があると大変喜ばれ、皆安心します。また、日本に働きに来る方は向上心に満ちて、自らのキャリアを重要視している方がほとんど。求人票にはより詳細の仕事内容や外国人雇用の実績を記述し、「外国人が活躍できる」と求職者に伝わることが重要です。
母国を遠く離れての就労には不安がつきもの。外国人求職者たちが安心して働くことができるよう、彼らを歓迎していることを求人票に明記する、里帰り休暇などを設けるなどの方法で精神的なサポートがあると、外国人求職者は会社に更に魅力を感じます。(竹内氏)
外国人の求職者は、自身のキャリアを磨ける環境、そして、外国人ならではの不安や悩みなどが少なく、安心して働ける環境を望んでいます。例えば、次のようなポイントは、求人票や採用ページなどでアピールする材料になります。
他にも気になるのは、言語や宗教、文化の壁など。同じ職場で働く日本人に、外国人の宗教や文化に関する理解を深めてもらうように研修を行うことも大切です。ですので、
などのサポートがあれば、母国から離れた場所で、より安心して働くための一助となります。
なお、今後、外国人技能実習制度を廃止し、新たに「育成就労」制度が創設され、2027年に運用が開始となる予定です。
社員数が一定数以上の会社は、社員数に障害者雇用率(2024年4月からは2.5%)を掛けた障害者を雇用しなければなりません。また、障害者(障がい者)を雇用する場合、「障害者差別の禁止」「合理的配慮の提供」といったルールもあります。
内容 | 法令のルール |
一定数の障害者の雇用 (義務) |
社員数が一定数以上の場合、社員数に障害者雇用率を掛けた人数以上の障害者を雇用しなければならない ●(2024年4月~)障害者雇用率は2.5% ●(例)常時40人以上の場合、障害者を1人以上雇用(=40人×2.5%) |
障害者差別の禁止 (義務) |
募集・採用、賃金、配置、昇進などで、次のような差別をしてはならない ●障害者であることを理由に障害者を排除する ●障害者に対してのみ不利な条件を設ける ●障害のない人を優先する |
合理的配慮の提供 (義務) |
障害の特性などに応じて、次のような観点から、障害者が働く上で必要な配慮(合理的配慮)をしなければならない ●募集・採用において、障害者にもそうでない人にも均等に機会を与える ●障害者が働く上で支障となる問題を改善し、能力を発揮しやすくする |
(出所:障害者雇用促進法などを基に作成)
障がい者の雇用をサポートする、カムラックの代表取締役 賀村 研(かむら けん)氏に、障がい者雇用のポイントを聞きました。
障がい者の中にもさまざまな人がおり、それぞれ求めているものも違うので、求人の際にはサポート制度があることを明記するのが大切です。会社側と障がい者の間に立ち、双方の擦れ違いをなくす役割として福祉的支援の外部委託を導入することなども効果的。また、活躍したいと思っている障がい者にとって、期間の定めなしの雇用やキャリアプランの提示はとても魅力的なものです。
障がい者を雇用することで仕事を整理し、よりシンプルに作業できるようになった結果、業務が効率的になったという話も聞きます。全てを障がい者に合わせるのではなく、個々が活躍できる場でお互いを認め合い、自立できる社会になるのが理想ですね。(賀村氏)
障がい者は、それぞれの障がいの程度や種類に応じて活躍できる場所を見極めれば、新たな気付きをもたらしてくれるポジティブな可能性を秘めた存在です。
例えば、次のようなポイントは、求人票や採用ページなどでアピールする材料になります。
次のような取り組みで、働きやすい環境づくりに注力している会社もあります。アイデアを取り入れ、誰もが活き活きと働ける環境を目指しましょう。
LGBTQ+を雇用する場合に限りませんが、会社は、パワハラやセクハラなどの防止措置を実施する義務、LGBTQ+への理解を増進する努力義務などを負っています。
内容 | 法令のルール |
ハラスメント防止措置の実施 (義務) |
LGBTQの場合、次のような言動がパワハラやセクハラになる可能性があり、担当者による相談対応など一定の防止措置を講じなければならない ●本人の性的指向などを暴露する(アウティング) ●LGBTQへのカミングアウトを強要する ●性的指向などに関する差別的発言をする |
LGBTQへの理解の増進 (努力義務) |
職場において、LGBTQへの理解の増進に努める ●情報の提供、研修の実施、普及啓発、就業環境に関する相談体制の整備など |
国や自治体への協力 (努力義務) |
国または地方公共団体が実施する国民の理解の増進に関する施策に協力するよう努める |
(出所:労働施策総合推進法、男女雇用機会均等法、LGBT理解増進法などを基に作成)
LGBTQ+の人材を採用するために必要なのは、
当事者が応募してきた際や入社した際に、不快感や苦痛を覚えないための工夫
です。
厚生労働省「多様な人材が活躍できる職場環境に関する会社の事例集~性的マイノリティに関する取組事例~」(2020年3月)によると、性的マイノリティのうち、職場での困り事があるのは全体の約4~5割。「プライベートの話をしづらい」「侮辱的な言動を見聞きしてしまう」など内面的なものから、「トイレや更衣室などの設備利用」「通称名の使用が認められない」など制度的なものまで、その内容はさまざまです。
ハラスメントに関する意識は年々高まっていますが、LGBTQ+に対する理解はまだ十分とはいえません。求人票や採用ページなどでアピールするというよりは、次のような取り組みや工夫があることで、当事者が不快感なく働くことができるようになるでしょう。
当事者の中には、自分の考えや性的指向を表に出しづらいと考えている人がいるのも事実。匿名のアンケートで意見を募るなどして、慎重に対応することが大切です。
「性別に応じた服装規定で苦痛を覚える」「同性パートナーに福利厚生が適応されない」という困り事もあります。社員間での不公平感を解消するために、次のような制度を導入することも効果的です。
難病患者と一口に言ってみても、一般雇用のフルタイムで働く方々から、障がい者雇用の枠で働く方までさまざまです。しかし、難病患者の中には体調の状態によっては健常者と同じ条件での労働が難しい方も存在し、そうした中には、要件に当てはまらないため障害者手帳が交付されないという人も少なくありません。障害者手帳がないと、一般枠での採用に応募せざるを得ず、その結果、就職活動がうまくいかずに、失意に沈む人が多いのも事実です。
難病患者の雇用をサポートする「就労支援ネットワークONE」の中金 竜次(なかがね りゅうじ)氏に、難病患者を雇用する際のポイントを聞きました。
難病を抱えている方にとって、治療と仕事の両立が喫緊の課題。通常の有給休暇にプラスして特別休暇が利用できる仕組みがあると、皆さんとても喜ばれます。また、体調によってフレックスタイムやテレワーク、長期の入院や治療が必要になった際の復職支援の制度などがあると、大きな安心につながります。
まずは難病について知ってもらうことで、「難病患者の雇用は難しい」という勘違いをなくしたい。実際に難病患者を雇用してイメージがガラリと変わり、続けて何人も採用した会社の例もあります。
助成金や雇用に関する勉強会、難病患者の雇用について相談できる窓口が各都道府県にあることなどを会社に知ってもらい、会社にとっても、難病患者にとっても、Win-Winの関係を築いていけるようになればと考えています。(中金氏)
難病患者にとっては治療と仕事の両立が可能であることが一番のポイントです。例えば、次のようなポイントは、求人票や採用ページなどでアピールする材料になります。
また、難病患者は定期通院や、時には急な体調の変化に合わせて治療を受けることにより、体調を保っている方が多いのが実情。入社してから必要なサポートを把握するために、採用面接の際(本人から申し出があった際)にどんなサポート(配慮)が必要かヒアリングするとよいでしょう。
採用時でなくとも、当事者の病状の変化や発症によってサポートが必要になった際、無理をすることないよう会社側に相談できる時間や場所があると当事者は更に安心するほか、同じ職場で働く人に、難病に関する理解を深めてもらうように研修を行うことも大切です。
以上(2024年7月作成)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)
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「予算」とは何か? 一言で言うならば、
1年かけて達成したい数字の「目標」
です。上場企業は、中期経営計画や業績見込みを対外的に公表しなければならないので、予算管理が経理業務に組み込まれています。一方、取引先の銀行などを除けば、中小企業が中期経営計画などを外部に公表することはなく、予算管理の取り組み度合いも経営者次第です。
ですが、このシリーズでは中小企業もきちんと予算を作ることをご提案します。その理由は2つです。
経営の先行きは常に不透明です。足元では物価高が多くの会社の経営に影響を与えています。こうした際、少しでも将来を見据え、少なくとも1年後にどのようになっていたいかという数値を明確に整理し、その達成に向けて行動をしていくことはとても重要です。
また、そうした行動を起こす際の共通言語として「予算」を示すことで、予算達成に向けた組織のモチベーションが高まります。経営者や一部の経営幹部だけではなく、従業員も巻き込んだ取り組みが期待できます。
予算管理は「管理会計」の1つなので、まず管理会計がどういうものかを説明します。管理会計とは、
将来を予測し、将来を変える会計
のことです。イメージしやすいように日常生活に置き換えて考えると、
管理会計は天気予報にとてもよく似ている
のです。
皆さんは、なぜ、天気予報を確認しますか? 雨だったら傘を持ち、寒いなら厚手のコートを着るためでしょう。つまり、これからの天気を知った上で、自身が快適に過ごせるように対応するのです。
まさに管理会計も同じです。
会社の売上や利益がどうなるか(晴れか雨か)を把握し、問題がありそう(降水確率が高い、気温が高い低い)なら何らかの手を打つためのものです。
「管理会計と経理は何が違うのか?」という疑問を持たれた方もいるでしょう。一言で答えるなら、
経理(財務会計または税務会計と呼ばれます)は「やらされている会計」、管理会計は「自分からやる会計」
です。
「やらされている会計」というのは、法律などに基づいて行うことが強いられているという意味です。その代表格は税務計算のための税務会計であり、ルール通りに厳格に処理しなければなりません。
一方、「自分からやる会計」である管理会計はやるもやらないも会社の自由で、特にルールもありません。
管理会計の目的は、会社のより良い将来を実現するために、経営者の意思決定に役立つ情報を提供することです。経営に役立つ情報というものは、会社の状況によって異なり、10社あれば10通りあるものです。
予算はこうなりたいという「目標」なので、
一度決めたら簡単に変えないことが原則
です。予算をコロコロ変えるとどれが最新のものなのか、どのレベルを目指したらよいのかが分からなくなり、予算が目標として機能しない事態に陥ってしまいます。
ただ、会社が置かれている環境に大きな変化があった場合は予算を変えざるを得ません。例えば、極端な円安の進行といった外部環境の変化や、会社の経営方針の大転換といった内部環境の変化が起きた場合には、当初の予算に固執する意味はありません。
次に、役立つ予算に必要なことは、
どう頑張っても達成できないものを予算としない
ことです。とはいえ、その逆に簡単に達成できる予算というのも、目標としては意味が薄くなってしまいます。ということは、予算には、
という2つの条件をバランスよく満たすようにする必要があるのです。
以上(2024年7月作成)
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画像:thanksforbuying-Adobe Stock
「新規事業にどれだけ資金投入するか?」「社員を採用すべきか、業務委託にすべきか?」「運転資金をどう工面するか?」など経営はこうした判断の連続で、その結果には常に「リスク(不確実性)」が伴います。リスクに備えるうえで重要となるのが「リスクマネジメント」です。
リスクマネジメントとは、リスクを組織的に管理し、損失などの回避や低減を図るプロセスです。
コロナ禍、不安定な国際情勢、物価高、円安、人材不足などが同時に押し寄せる不確実な時代にあって、リスクマネジメントはますます重要になりました。この記事では、一般的なリスクマネジメントの流れやビジネスに関するリスク一覧を紹介していきます。
まずは、リスクマネジメントとクライシスマネジメントの違いを確認しましょう。下の図で分かりやすく示してみました。
「事業を脅かす危機の発生」を挟んでリスクマネジメントとクライシスマネジメントがあることから分かるように、両者には次のような違いがあります。
では、この記事のテーマであるリスクマネジメントに注目し、その進め方を説明していきます。基本的な進め方は、「リスクの特定」から「モニタリングと改善」にいたる、5つのステップに分けられます。
リスクの特定とは、自社に悪影響を及ぼす恐れがあるリスクを網羅的に洗い出すことです。
経営者はさまざまなリスクを想定しているはずですが、加えて他の取締役や現場の担当者も交えたディスカッションによって、抜け漏れなくリスクを洗い出しましょう。リスクは純粋リスクと投機的リスクに大別されるので、これを意識すると整理しやすくなります。
ビジネスに関わる一般的なリスクは次の通りです。純粋リスクと投機的リスクの違いも意識しながら確認してみてください。
(図表2)【ビジネスに関わる一般的なリスク】
戦略リスク | |
---|---|
競争状態の変化 | 予期せぬ競合の出現と顧客喪失など |
技術の進化 | 新技術の出現や研究開発の失敗など |
トレンドの変化 | 消費者ニーズの変化や価格決定の失敗など |
人材 | 採用難、離職、社員の高齢化など |
サプライチェーン | 自然災害によるサプライチェーンの寸断など |
規制強化 | 法令や新たな規制によるビジネスの停滞など |
風評被害 | スキャンダルによる企業イメージの失墜など |
M&A | 敵対的買収、M&A後のPMIの失敗など |
持続可能性 | 環境や社会的責任への不適切な対応など |
反社会的勢力 | ずさんな信用調査による反社会勢力との取引など |
財務リスク | |
金利 | 金利変動による貸付コストや投資収益の変化など |
為替 | 為替変動が収益に与える影響など |
調達価格 | 原材料、原油価格の高騰など |
流動性 | 金融商品の売買不能など |
資金繰り | 資金調達難、運転資金の不足、黒字倒産など |
与信 | 取引相手の倒産による貸し倒れなど |
株価の変動 | 株価の変動による投資損失など |
不動産価値の変動 | 不動産価格の変動による影響など |
投資活動 | 投資活動の失敗による損失など |
ハザードリスク | |
自然災害 | 地震、洪水、台風、異常気象による被害など |
火災 | 火事による損失など |
サイバーセキュリティ | サイバー攻撃やデータ漏洩など |
地政学 | 不安定な国際情勢による戦争やテロなど |
事故、故障 | 交通事故や設備交渉など |
感染症 | 新型ウイルスのパンデミックなど |
オペレーショナルリスク | |
製造物責任 | 製品の瑕疵(かし)、リコールなど |
ヒューマンエラー | 誤操作や不適切な判断など |
業務プロセスの問題 | 納期遅延、納品ミスなど |
情報漏洩 | 機密情報などの漏洩 |
コンプライアンス | 独禁法や下請法などの違反など |
知的財産の侵害 | 特許や著作権などの不正利用 |
労務管理 | 過重労働、ハラスメントなど |
労働組合関連 | 団体交渉やストライキの長期化など |
不正会計など | 粉飾決算、横領など |
環境問題 | 工場排水の不適切な処理など |
(出所:日本情報マート作成)
リスクの分析とは、洗い出したリスクの大きさを分析することです。
リスクの大きさを定量的に把握するために、
発生確率、被害規模、対策状況といった指標で点数化
をしてみましょう。
(図表3)【定量化する際の判断基準のイメージ】
発生確率 | 被害規模 | 対策状況 | |
---|---|---|---|
5点 | 6カ月以内の発生確率が高い | 全社的に甚大な被害がある | 対策が検討されていない |
3点 | 1年以内の発生確率が高い | 局所的に大きな被害がある | 対策は検討している |
1点 | 発生の可能性がある | 被害は限定的である | 6カ月以内にメドがつく |
0点 | ほぼ発生しない | ほぼ被害はない | ほぼ対策は完了している |
(出所:日本情報マート作成)
リスクの評価とは、特定したリスクについて、対応の優先順位をつけることです。
リスクを評価する際は、前述した発生確率、被害規模、対策状況といった指標で点数化した結果を見ます。この他、製品ライフサイクルの考え方を取り入れることもできます。
製品ライフサイクルとは、プロダクト・ライフサイクルとも呼ばれ、製品の状況を、導入期、成長期、成熟期、衰退期の4つのフェーズで示すものです。
製品ライフサイクルを法人の存在そのものに当てはめて、リスクを評価することもできます。例えば、導入期はまだ市場が小さい状況なので競合はほとんど存在しませんが、そもそも製品自体が不発に終わるリスクがあります。フェーズが進んで成長期に入ると、製品がコモディティー化し、値下げを余儀なくされるリスクがあります。
リスクの対応とは、対応すべきリスクに対して、具体的な対策を講じることです。
基本的な考え方は、リスクコントロールとリスクファイナンシングに大別されます。
リスクコントロールとリスクファイナンシングの具体的な手法は次の通りです。
(図表5)【リスク対策の方法】
区分 | 手段 | 内容 |
---|---|---|
リスクコントロール | 回避 | リスクを伴う活動自体を中止し、予想されるリスクを遮断する対策。リターンの放棄を伴う。 |
損失防止 | 損失発生を未然に防止するための対策、予防措置を講じて発生頻度を減じる。 | |
損失削減 | 事故が発生した際の損失の拡大を防止・軽減し、損失規模を抑えるための対策。 | |
分離・分散 | リスクの源泉を一箇所に集中させず、分離・分散させる対策。 | |
リスクファイナンシング | 移転 | 保険、契約等により損失発生時に第三者から損失補てんを受ける方法。 |
保有 | リスク潜在を意識しながら対策を講じず、損失発生時に自己負担する方法。 |
(出所:中小企業庁「2016年版中小企業白書」)
(注)この図表は、リスク管理・内部統制に関する研究会「リスク新時代の内部統制」から中小企業庁が作成したものです。
モニタリングと改善とは、リスクマネジメントの効果を検証し、必要に応じて改善することです。
リスクマネジメントは継続的に取り組まなければなりません。半期や年度ごとに、特定したリスクの発生状況や、実際に顕在化したリスクの対応が適切だったかを確認します。その際、他の取締役や現場の担当者も交えて話し合いをするのが好ましいです。
ここまでリスクマネジメントの流れを確認してきましたが、他社が何をリスクと捉えているかも気になるところです。ここでは、デロイトトーマツグループ「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査2022年版」を紹介します。
(図表6)【優先して着手が必要と思われるリスク】
●日本国内 | |||
---|---|---|---|
1位 | 人材流失、人材獲得の困難による人材不足 | 39.3% | (2) |
2位 | 原材料ならびに原油価格の高騰 | 29.8% | (5) |
3位 | 異常気象(洪水・暴風など)、大規模な自然災害(地震・津波・火山爆発・地磁気嵐) | 19.7% | (1) |
4位 | サイバー攻撃・ウイルス感染等による大規模システムダウン | 17.8% | (6) |
5位 | サイバー攻撃・ウイルス感染等による情報漏えい | 17.0% | (3) |
6位 | 事業に影響するテクノロジーの変革 | 12.8% | (12) |
7位 | サプライチェーン寸断 | 12.5% | (11) |
8位 | 製品/サービスの品質チェック体制の不備 | 11.0% | (7) |
9位 | 長時間労働、過労死、メンタルヘルス、ハラスメント等労務問題の発生 | 10.7% | (10) |
10位 | 市場における価格競争 | 10.4% | (7) |
10位 | 中国・ロシアにおけるテロ、政治情勢 | 10.4% | (27) |
●海外拠点 | |||
1位 | 中国・ロシアにおけるテロ、政治情勢 | 30.9% | (4) |
2位 | グループガバナンスの不全 | 24.7% | (2) |
3位 | 人材流失、人材獲得の困難による人材不足 | 21.1% | (5) |
4位 | 原材料ならびに原油価格の高騰 | 18.8% | (8) |
5位 | サプライチェーン寸断 | 18.4% | (5) |
6位 | 疫病の蔓延(パンデミック)等の発生 | 16.1% | (1) |
7位 | 東南・東アジアにおけるテロ、政治情報 | 13.9% | (11) |
8位 | サイバー攻撃・ウイルス感染等による情報漏えい | 13.0% | (3) |
9位 | 為替変動 | 11.1% | (15) |
10位 | 従業員の不正・贈収賄等 | 9.8% | (14) |
10位 | 市場における価格競争 | 9.8% | (13) |
(出所:デロイトトーマツグループ「企業のリスクマネジメントおよびクライシスマネジメント実態調査2022年版」)
(注1)有効回答数は376社です。
(注2)( )内は、2021年調査時の順位です。
こうした調査の他にも、有価証券報告書やホームページから他社が重視しているリスクを確認できます。同じ業界であれば自社にも関係しますし、取引先(大企業)のリスクを把握し、自社のリスクマネジメントに反映させることもできます。
通常、リスクを分類整理するときは発生確率と被害規模の軸を用います。これを基本としつつ、想定時期と対策状況などの軸を加えたポジションマップを作ることで、別の視点からもリスクを評価できます。何を軸にするかは、会社の状況と経営者の感覚によります。
以上(2024年1月更新)
画像:Photon photo-Shutterstock
今回から新シリーズが始まります。その前に、前回シリーズの『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』を読んでくださった皆さん、ありがとうございました。その後、現場で実践してみていただけましたか? うまく一歩を踏み出せたでしょうか?
今シリーズは、「コミュニケーションに関わる知識やノウハウを、実践するのは難しい」という前提でお送りする前回シリーズの【実践編】です。
前回シリーズをまだ読んでいないという方、読んだけれど忘れてしまったかもという方のために、簡単におさらいしておきましょう。「私はしっかり読んで覚えている」という方はこの章を飛ばして先に進んでください。
組織は人でできていて、多くの仕事がチームで行われるため、仕事をスピーディかつ高い成果へと結実させるには、人と人とのコミュニケーションが欠かせません。とりわけ管理職・リーダーの立場にある人たちには、チームとしての課や部、経営者であれば会社全体をリードしマネジメントしたりする立場として高いコミュニケーション能力が求められます。
しかしながら、ここ10年で若手社員が職場や上司に求めるものがすっかり変化しているにもかかわらず、そのことに気付いていないリーダーが多いのです。
新入社員が理想とする職場像の上司像のキーワードとして、ここ10年で「丁寧な指導/褒める/傾聴」「個性の尊重/助け合い」などの優先順位が上昇しています。逆に低下したのは「活気がある」「互いに鍛え合う」「みんなで1つの目標を共有する」などでした。
若手社員のそうしたスタンスに対して、上司としては「君たちは仕事や組織というものが全く分かっていない、教えてやろう」と言いたくなる方もいるかもしれません。が、グローバルな視点で見てみれば、彼らのスタンスの方が正しいことが分かります。
世界のビジネストレンドのキーワードは、[競争]から[共創]へ、[経験・改善]から[新価値創造(イノベーション)]へと変わり、それらを選択し、決断した企業が高い成長力を手にしています。
[共創]や[新価値創造(イノベーション)]を進めていくためのマネジメントにおいても、[管理]から[自律]へ、[指導]から[支援]へと時代は変わっているのです。これらは先ほど挙げた新入社員が理想とする職場像の上司像である「丁寧な指導/褒める/傾聴」「個性の尊重/助け合い」の方向性に合致しています。
すなわち、管理職・リーダーの側が昭和世代のマネジメントやコミュニケーションスタイルを持ち出しても何の解決にもならないばかりか、成長が期待できず戦えない、そして若手の人材確保すらできなくなってしまうのです。
会社は人でできています。将来に向けて人がいなくなれば、会社は存在できません。となれば、昭和世代の上司やリーダーの側が若手や世界のトレンドに合わせ、むしろ推進していくしかありません。
そこで前回シリーズでは『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』として「①傾聴」「②褒める」「③前向き発想」の3つをご提案し、詳しい解説とその使い方をご紹介しました。
さて問題は実践です。私はコラムの執筆以外にもコンサルティングを初め、企業向け研修の講師や講演・セミナーなどを行っているのですが、そこで受講者の声として感じるのは実践し定着させることの難しさです。
世の中には参加無料をうたう研修・講演・セミナーがいろいろあります。
経済の原則からすれば至極当然ですが、こうした研修などの裏には、費用を負担している主催者側の少なからぬ期待が隠れています。それは必ずしも受講者の学びや成長を意図するものではありません。募集で得た受講者リストを事後の商売につなげる意図があるからこそ、費用を全て負担=投資してくれているのです。
片や有料の場合はどうでしょう。
受講者本人が費用を負担するケースと会社が「行って来い」と送り出して負担するケースがありますが、いずれにしても“投資”です。会社負担の場合、単価と人数を考えれば年間では少なくない金額となるでしょう。加えて本人が参加している時間自体も投資です。だからこそ、私は講師として受講者の皆さんにこう言います。
「お金と時間をかけていくら学んでも、あなたが実践しない限り1円にもなりませんよ」
自腹を切ることなく、会社負担で参加されている社員の皆さんにも分かってほしいのです。社員研修や講演・セミナーへの参加は、新たな機械やシステムの導入、新事業開拓、新技術への投資などと同じく“投資”であり、投資額に見合ったリターンが必要なのです。同じ額を他のことに投資したらどうだっただろうという検証も含めて。
管理職・リーダーの方にとっては釈迦(しゃか)に説法かもしれませんね。その上で「分かってはいるけれど、『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』をなかなか実践できない」と悩んでおられるのかもしれません。
そんなわけで、今シリーズ『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣【実践編】』をスタートすることとしました。
『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』の実践がうまくいかないという方のために、
毎回社内の“あるある”場面を想定したケースを用意し、回をまたいで読者の皆さんにも考えていただきながら、実践イメージを膨らませていただきます。
また、若手社員の読者の皆さんに向けては、リーダー側の視点とは別に、若手社員側の視点による“上司世代との上手な付き合い方のヒント”も紹介していこうと思います。
ご期待ください。
ではさっそく、第1回の“あるある”場面を想定したケースについて考えていきましょう。
—————————
[事例1]
〇4月に新人Aさんが加わりました(皆さんの部署に新卒配属がなければ、若手の異動をイメージしてください)。歓迎会など酒席パーティが開かれ、部署単位での2次会も用意してひと通りの交流を無事に終えました。幸いにも部署の業績は右肩上がりで、その後はずっと部署全員が日々の業務に追われる毎日でした。
〇ところが最近Aさんの表情が心配です。「おはよう」と声をかけても元気がなく、業務中も飲み会の時に見たような笑顔がありません。
〇そこで上司であるあなたは、Aさんと話す時間をつくってみようと考えて声を掛けました。「Aさん、最近仕事はどう? よかったら今日仕事が終わったら一杯飲みに行かないか」。するとAさんは「ええ……まあ……」とはっきりしません。
—————————
Q. Aさんに対して、あなたはこの後、最初にどんな声をかけますか? また最初の声かけを考える際に注意するべきポイントを3つほど挙げください。書かれているさまざまな要素を考慮してみましょう。
ヒントの1つは、「まずAさんの現在の心の状態を想像すること」です。「ええ……まあ……」の言葉の裏にはどんな心理状態があるのでしょうか。
Aさんのような若手社員の皆さん。あなたの上司がこのコラムを読んで一生懸命に若手社員の気持ちやコミュニケーションを考えて努力してくれる人であればいいのですが……。
必ずしもそうでなかった場合、あなたならどのような一言を告げますか。上司の反感を買うことなく、自分の素直な気持ちを伝えられるでしょうか。
上司の側の視点だけでなく、上司からの的確な一言が期待できなかった場合 の部下側の上手なコミュニケ―ションの方法についても触れていきたいと思います。ぜひ第2回までに考えてみてください。
上司の方にとっても若手社員の視点を想像することは、毎回の事例を考える上でもヒントになります。彼らがどんな気持ちでそのように返してくるのかを想像できれば、自身の日常のコミュニケ―ションを『次世代リーダーに必須のコミュニケーション習慣』に変えるヒントになることでしょう。
最後までお読みいただきありがとうございました。次回は、[事例1]に対して最初に上司がAさんにかけるべき一言、また若手社員Aさんが上司の反感を買うことなく、自分の素直な気持ちを伝えられる一言の例をご紹介していきたいと思います。
<ご質問を承ります>
ご質問や疑問点などあれば以下までメールください。※個別のお問合せもこちらまで
Mail to: brightinfo@brightside.co.jp
※武田が以前上梓した書籍『新スペシャリストになろう!』および『なぜ社長の話はわかりにくいのか』(いずれもPHP研究所)が、ディスカヴァー・トゥエンティワンより電子書籍として復刻出版されました。前者はキャリア選択でお悩みの方に、後者はリーダーやトップをめざしている方にお薦めです。
『新スペシャリストになろう!』 https://amzn.asia/d/e8GZwTB
『なぜ社長の話はわかりにくいのか』 https://amzn.asia/d/8YUKdlx
以上(2024年7月作成)
(著作 ブライトサイド株式会社 代表取締役社長 武田斉紀)
pj90262
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会計には、財務会計、税務会計、管理会計の3種類があります。財務会計とは「株主や金融機関などの利害関係者に会社の状況を説明するための会計」、税務会計とは「法人税や住民税などを申告・納税するための会計」、管理会計とは「経営者が会社の状況を知って意思決定するための会計」といったところです。
ビジネスでよく聞く「損益分岐点」とは、管理会計で用いられる最もポピュラーな項目の1つです。英語では「Break-even Point」と訳され、文字通り、「利益を出すために必要な売上高」ということになります。裏を返せば、「いくら売れば利益が出るのか」ということであり、経営者にとっては、足元の状況を確認するときや、将来の経営計画を立てるときに重要な指標となります。
経営者の興味は損益分岐点の計算方法を暗記することではなく、いかに損益分岐点を下げるかにあるでしょう。つまり、どのようにして効率的に利益を上げていくかということです。これを検討するには、やはり損益分岐点の構造を知る必要があります。その上で、目標利益に応じて必要な売上高を計算するなど、より実践的な使い方をしていくことが大切です。
タイトルでも示している通り、損益分岐点は「固定費/限界利益率」で求めることができます。とにかく、この基本を覚えてください。この公式を覚えたら、これらが何を意味しているのか、具体的に確認していきましょう。
損益分岐点とは、売上と費用が収支トントンになるポイントです。ここでいう費用の内容は、財務会計でいうところの売上原価や販売費及び一般管理費(以下「販管費」)をイメージすればよいのですが、区分の仕方が違います。財務会計では、売上に直接的に関係するものを売上原価、売上を上げるための活動に関係するものを販管費に区分します。
しかし、損益分岐点を求める際は、費用を「固定費」と「変動費」に分けます。固定費と変動費の考え方はとてもシンプルです。固定費とは、販売数量などにかかわらず一定額が発生する費用であり、減価償却費や建物の賃借料などが該当します。変動費とは、販売数量などに比例して増加する費用であり、仕入原価や材料費などが該当します。固定費と変動費のイメージは次の通りです。
固定費は販売数量などにかかわらず常に一定額なので、真横の線になります。変動費は販売数量などに比例して増加するので、右肩上がりの線になります。そして固定費と変動費の合計額が費用総額となります。
先に損益分岐点のイメージを確認しておきましょう。上の図表【固定費と変動費のイメージ】に売上高の線を加えると次のようになります。売上高と費用総額の線が交差するポイントが損益分岐点になります。そして、売上高が損益分岐点を超えると利益が生まれます。この利益は、財務会計の営業利益と考えればよいでしょう(売上原価と販管費は、固定費か変動費として認識しているためです)。
では、「限界利益」と「変動費率」を確認しましょう。限界利益とは、売上高から変動費を引いたものです。具体的には、次のように限界利益を計算します。
限界利益=売上高-変動費
変動費は販売数量などに応じて変動するものですから、売上が増えるときも減るときも一緒についてくるイメージです。基本的には限界利益を超える利益を出すことはできず、限界利益は会社に残る利益の源泉といえます。つまり、限界利益で固定費を賄えれば利益が出るということであり、限界利益と固定費が同じになるポイントが損益分岐点です。
さて、計算の話に戻りましょう。限界利益が分かれば、「限界利益率」も理解しやすくなります。限界利益率とは、売上に占める限界利益の割合です。具体的には、次のように限界利益率を計算します。
限界利益率=限界利益/売上高
限界利益率が高ければ(変動費率が低ければ)、損益分岐点は低くなる傾向となります(固定費の状況にもよります)。そして、固定費を限界利益率で割ることで、どれだけの限界利益率ならば固定費を賄うことができるかが分かります。これが損益分岐点です。具体的には、次のように損益分岐点を計算します。
損益分岐点=固定費/限界利益率
なお、損益分岐点の計算式としては、次のものを見かけることが多いかもしれませんが、意味する内容は同じであることを理解いただけると思います。「(1-(変動費/売上高))」の部分が表しているのは、限界利益率のことなのです。
損益分岐点=固定費/(1-(変動費/売上高))
次のように判断することが、結構多くありませんか。しかし、「40万円の黒字」というのは本当なのでしょうか?
「よし、2000個を完売! 仕入原価が160万円(800円×2000個)で、売上は200万円(1000円×2000個)なので、40万円の黒字だ!」
実は、上の説明だけでは40万円の黒字と判断することはできません。仕入原価は変動費であり、売上高から変動費を引いたものが限界利益です。そのため、「40万円の限界利益」あるいは「限界利益率は20%」という説明は正しくても、「40万円の黒字」と判断するのは早計です。
なぜなら、損益分岐点を求める際は固定費も考えなければなりません。例えば、製造機械の減価償却費や、建物の賃借料などが固定費となります。この固定費を限界利益で賄えているかどうかが重要です。仮に「固定費が50万円」だったらどうでしょうか。40万円の黒字どころか、10万円の赤字に転落してしまいます。計算式は次のようにシンプルです。
200万円(売上高)-160万円(変動費)-50万円(固定費)=-10万円
では、このようなケースでは、いくら売れば利益が出るのでしょうか?
これを求めるのが損益分岐点です。損益分岐点の求め方はこれまで紹介した通り、「損益分岐点=固定費/限界利益率」となります。具体的には、次のように損益分岐点を計算します。
損益分岐点=50万円/20%=250万円
参考として、よく見る計算式も紹介しておきましょう。この2つの計算式は同じことを示しています。
損益分岐点=50万円/(1-80%)=250万円
ここまでの内容で、損益分岐点やそれに関連した数値の求め方についてご紹介しましたが、冒頭で触れた通り、 経営者の興味は損益分岐点を下げることです。実際のビジネス上では、より多くの利益を上げる、つまり損益分岐点を下げるために、硬軟織り交ぜた戦略が取られますが、その効果を感覚的に検証するだけでは十分ではありません。損益分岐点の考え方を加え、定量的に捉えるようにしましょう。以下で2つの例を紹介します。
ビジネスプランを練る際、「夢のあるトップライン(売上高)から決める!」という人がいます。悪いことではないものの、利益についても考慮しないと、目標売上は達成しているのに、利益が出ていないということになりかねません。そこで、目標利益をきちんと設定し、それを達成する売上高を求める必要があります。具体的には、次のように目標利益を達成する売上高を計算します。
目標利益達成売上高=(固定費+目標利益)/限界利益率
仮に、「固定費は400万円」「目標利益は500万円」「限界利益率は30%(変動費率:70%)」といった場合、次のように目標利益を達成する売上高を計算します。
目標利益達成売上高=(400万円+500万円)/30%=3000万円
さて、上の例では500万円の目標利益を達成するためには、3000万円の売上が必要ということになります。単純にいえば、利益を上げる方法は売上高を上げるか、費用を抑えるかの2通りしかないわけです。仮に、費用を抑える施策を打つとしましょう。仕入先を変えて変動費率を10%削減できれば、変動費率の裏返しである限界利益率は10%向上します。その結果、目標利益を達成する売上高は次のようになります。
目標利益達成売上高=(400万円+500万円)/40%=2250万円
損益分岐点を下げる、つまり売上高を上げるか、費用を抑えるかの方法について、今度は売上高を上げる施策を取った別の事例を見てみましょう。売上高を上げるために広告を打つか、それとも値下げをするか。ビジネスでよくあることです。どちらの施策が効果的なのかを検証してみましょう。
ここで販売するのは「商品A」です。この商品Aの過去の販売実績は次の通りです。
商品Aの販売数量を30%伸ばすために、次の2つのプランを検討しています。どちらが効果的だと思いますか?
この前提条件で考えた場合の結果は次の通りです。
プラン1:広告戦略の利益は70万円、プラン2:値下げ戦略の利益は40万円なので、このケースではプラン1:広告戦略が効果的という結果になります。ただし、状況によって結果は大きく変わるので注意が必要です。図表3の【参考_値下げ戦略】の欄を見てください。仮に商品Aの価格弾力性が高く、値下げによって販売数量が45%伸びると予想すれば、利益は85万円となります。
損益分岐点を求める際の基本である固定費と変動費について、現場において最も迷う点について触れておきます。それは、費用を固定費と変動費のどちらに区別するかということです。
例えば、「広告宣伝費は、固定費か、変動費か」と聞かれたら、迷う人もいるのではないでしょうか。利用する広告媒体などによって違いますが、原則として、広告宣伝費は売上高の金額に比例して増加しないので、固定費に分類します。
それぞれの費用を厳密に分類するのは難しく、時間もかかります。少し大ざっぱでもよいので、経理・会計上の勘定科目に基づいて、次の方針に従って分類するとよいでしょう。その上で、不都合が生じれば、実情に応じて見直しましょう。
損益分岐点比率とは、実際の売上高に占める損益分岐点売上高の割合で、企業がどれだけの売上減少に耐えられるかが把握できます。この比率が低ければ低いほど良く、一般的に80%以下であるのが望ましいとされています。具体的には、次のように損益分岐点比率を計算します。
損益分岐点比率=損益分岐点売上高/実際の売上高
安全余裕率とは、実際の売上高に占める、実際の売上高と損益分岐点売上高の差額の割合で、企業の経営状況にどの程度余裕があるのかが把握できます。この比率は高ければ高いほど良く、一般的に20%以上であるのが望ましいとされています。具体的には、次のように安全余裕率を計算します。
安全余裕率=(実際の売上高-損益分岐点売上高)/実際の売上高×100
損益分岐点を計算することで、取り扱う商品やサービスに対して最適な価格を設定する助けになります。思うように商品が売れなかったり、集客がうまくいかない状況が続いたりすると、安易に価格を下げすぎてしまったり、割引セールなどの施策に走ってしまったりしがちです。そういった場合でも損益分岐点を押さえておくことで、利益とのバランスを考慮した価格設定を意識することができます。
損益分岐点を分析することで、売上目標の設定にも役立ちます。分析結果を基に、事業として目指すべき売上高を定量的に定めることができます。これによって、営業活動やマーケティング戦略を具体的かつ効果的に策定するための指標として利用でき、また貴重な経営資源も効率よく配分することが可能になります。
損益分岐点を把握することで、市場の変動や経済状況の悪化に対するリスク管理を強化できます。例えば、市場が予想よりも縮小した場合に、どれだけの売上が減少するか、またそれによってどの程度利益に影響が出るかを事前に把握することができます。こういった情報は、不測の事態に備える上での貴重なデータとなり、将来的にも持続可能な成長を支える基盤となります。
ここまでの解説で、損益分岐点の分析が、いかに企業の健全性や効率的な経営戦略を把握するために重要かということが理解できたのではないでしょうか。近年では人工知能(AI)の進化により、こういった売上関連の分析手法も革新的な変化を遂げています。最後に、身近なAIの活用事例をいくつかご紹介しておきたいと思います。
ダイナミックプライシングとは、需要と供給のバランスに合わせて価格設定を変動させるシステムのことです。これまで商品やサービスの価格設定は、この記事でもご紹介したように、損益分岐点などの分析結果や経営者の経験に基づいた判断などによって決定されてきました。そのため、どうしても属人化に対する費用や時間の面で、価格設定の変更には大きな負担が伴っていました。
ところがAIの活用により状況は一変、より高度で複雑な価格設定が即座に反映できるようになりました。飛行機や新幹線のチケット、ホテル・旅館などの宿泊料金などは、このダイナミックプライシングのシステムの身近な導入事例として、なじみがあるのではないでしょうか。
近年、ShopifyなどのECプラットフォームでも、AIによる技術が積極的に導入されています。これによりオンラインストアの運営がさらに効率化されるだけでなく、売上データの分析にも大きな影響を与えており、販売戦略や価格設定の最適化などにも活かされています。
以上(2024年5月更新)
(監修 辻・本郷税理士法人 税理士 安積健)
資金は会社の血液であり、事業の存続のために資金を絶やさないことが不可欠です。経営の先行きはいつも不透明だからこそ、適切な資金調達によって憂いのない資金繰りを実現することは経営者の重要な責務の1つです。
資金調達の方法はさまざまですが、この記事では、貸借対照表(バランスシート)の「資産」「負債」「純資産」の3つに分けて整理していきます。
貸借対照表の「資産」に計上されている項目に関する資金調達には、ファクタリング、動産担保融資、リース、不要な資産の売却があり、アセットファイナンスと呼ばれます。それぞれ保有資産を現金化したり、資産購入時の支払いを先延ばししたりすることで行われます。
ファクタリングは、会社がファクターと呼ばれる事業者に対して、回収期日前の売掛債権を譲渡することで現金化する資金調達方法です。利用に際しては、ファクターへの手数料が必要になることや、基本的には売掛先の同意を取り付けなければならないので注意が必要です。
動産担保融資は、原材料・在庫・売掛金などを担保に金融機関から融資を受ける資金調達方法です。企業の事業性などを考慮した上で動産の担保価値を評価するため、「経営能力は高いものの、不動産など一般的な担保が乏しい」ケースでも、相応の金額の資金を調達できる可能性があります。
リースはリース会社を通して設備を導入する方法であり、契約で定めるリース期間にわたって、リース料を支払います。そのため、購入すると多額の資金が必要になるような設備もリース期間にわたって分割払いすることで、少額の手元資金で設備の導入ができます。
リースの利用は、直接的な資金調達方法ではありませんが、資金調達と同じような効果を得ることができるため、高額な設備購入の際には検討しましょう。
不要だけれど、会社が保有し続けている固定資産を売却し現金化する資金調達方法です。例えば、活用されていない建物や土地、現在取引がなくなった得意先の有価証券などがあります。
また、テレワークの広がりにより、以前はオフィスにあることが当たり前だったものも、不要になっている可能性があります。例えば、オフィス機器や家具類など(備品)は、全社員がオフィスにいることが前提の分量が用意されていましたが、在宅勤務によりオフィスに通勤する社員の数が激減し、使用していないものが相当数出てきます。現状にあった見直しにより資金調達とまではいかないまでも、コスト削減による資金確保ができるかもしれません。
貸借対照表の負債に計上される資金調達には、金融機関(銀行や保険会社など)からの借入や社債の発行などがあり、デットファイナンスと呼ばれます。この方法により資金調達した場合には、調達した金額(元本)と利息の返済・支払いが必要になります。
金融機関からの借入(融資)は、資金調達時の交渉相手が金融機関だけであり、比較的手間のかからない資金調達の方法で、主なものに証書借入、当座借越、手形借入、手形(電子記録債権)割引などがあります。
証書借入は、金額、利率、借入期間、返済条件などを記載した金銭消費貸借契約証書を金融機関に差し入れる資金調達方法で、主に比較的大きな額の設備資金など、中長期資金の調達に利用されます。
この証書借入の一部で、オンライン上で申し込みから審査、入金までが完結するのがオンラインレンディング(オンライン融資)と呼ばれる借入方法です。会計データなどを基にAIが審査を行うため、手続き全てがオンライン上で済み、スピーディーに借入できるのが大きな特徴です。
当座借越は、当座預金の残高を超えて融資を受ける資金調達方法で、機動的に資金調達できるため、主に短期の運転資金の調達に利用されます。金融機関と当座勘定借越契約を結ぶことで、契約の限度内で何度でも借り入れることができ、ビジネスローンなども該当します。
手形借入は、自社が金融機関を受取人とした手形を振り出して融資を受ける資金調達方法で、3カ月程度の短期の運転資金の調達に利用することが一般的です。
手形(電子記録債権)割引は、支払期日前の手形や電子記録債権を金融機関に譲渡して融資を受ける資金調達方法です。資金調達できる金額は、手形の場合は額面金額から割引料(金利+手数料相当額)を差し引いた金額、電子記録債権の場合は金融機関に譲渡した金額から割引料を差し引いた金額となります。
社債の発行は、社債(会社が発行する債券)を、投資家などに引き受けて(購入して)もらい資金を調達する方法です。社債を発行する方法として、私募債と公募債があり、私募債は投資家を限定する方法で、公募債は不特定多数の投資家などに対して発行する方法です。また、企業が発行する社債には、次のような種類があります。
(図表1)【会社が発行する主な社債の種類】
種類 | 内容 |
---|---|
普通社債 | 特別な権利が付与されていない社債 |
新株予約権付社債(転換社債型新株予約権付社債) | 株式に転換できる権利が付与された社債(注) |
(注)転換社債型新株予約権付社債を取得した投資家は、償還期限の満期日に社債を償還するか、もしくは社債を株式に転換するかのいずれかを選ぶことができます。なお、株式に転換した場合、企業は元金を返済する必要はありません。
貸借対照表の純資産に計上される資金調達には、株式の発行やクラウドファンディングなどがあり、エクイティファイナンスと呼ばれます。資金調達した金額(出資額など)の返済は必要ありません。ただし、配当により出資者に対する支払いが必要であったり、発行する株式の種類によっては投資家による経営介入のリスクが高まったりする可能性があります。
株式の発行の方法は、「公募」「株主割当」「第三者割当」の3つに分けられます。
公募は、不特定多数の者に対して募集を行う形態です。証券取引所(金融商品取引所)への上場時や、上場後に行うのが一般的です。
株主割当は、既存株主に株式の割当を受ける権利を与えた上で、これらの者に株式を発行する形態をいいます。
第三者割当は、特定の者のみを相手に募集を行い、その者だけに株式を発行する形態です。例えば、ベンチャーキャピタルや役員・従業員などの自社の関係者に対して、新たに引き受けてもらいます。
また、企業が発行できる株式には、次のような種類があります。
(図表2)【企業が発行できる主な株式】
種類 | 内容 |
---|---|
普通株式 | 当該株式を所有する株主の権利に制限のない株式 |
種類株式 | 取締役会の決議事項の拒否権が付いていたり、配当や議決権などの権利が異なったりする株式(注) |
(注)拒否権付株式(いわゆる黄金株)や配当優先株式などがあります。
クラウドファンディングは、ウェブサイト上で企業と出資者を仲介して資金調達する方法です。
出資者は、リターン(返礼)を受け取るなどができます。このリターンの内容によって、さまざまな種類に分けられます。一般的に利用されるのは、株式型、ファンド型、融資(貸付)型、購入型、寄付型などです。なお、株式型とファンド型以外は、純資産に計上される資金調達ではありませんが、まとめてここで紹介しています。
株式型は、未公開株式を提供して事業資金を募集する方法です。企業の調達可能額が年間で1億円未満、出資者の投資可能額は同一の企業につき年間で50万円以下といった制限があります。
ファンド型は、ファンドを組成した上で、事業資金を募集する方法です。融資(貸付)型と似ていますが、利息ではなく事業の配当を支払います。配当だけでなく、事業で作られた商品やサービスの割引券などを提供する場合もあります。
融資(貸付)型は、ソーシャルレンディングともいわれる方法で、事業資金への融資を募集します。融資してくれる人には元金を返済し、利払いをします。なお、受け取ったお金は、通常の融資と同様貸借対照表の負債(借入金)として計上されます。
購入型は、リターンは支援金額に応じた金銭以外の商品やサービスになります。例えば、新製品の開発・生産コストを募集するプロジェクトであれば、商品を一般販売よりも先行して手に入れられるといった特典が付いている場合があります。なお、受け取ったお金は一旦貸借対照表の資産(前受金)として計上し、商品などを引き渡した時に損益計算書の収益(売上)に計上されます。
寄付型は、被災地支援や途上国の支援など社会的意義が大きい一方で、収益が見込めないプロジェクトで多く採用されることが多く、リターンがないものをいいます(活動報告書など無償の成果物が提供される場合があります)。なお、受け取ったお金は損益計算書に収益(受贈益などの勘定)として計上されます。
国(各省庁)や地方自治体などでは、創業間もない会社に対する助成金・補助金事業を行っています。助成金・補助金は、原則、返済の必要がありませんが、一定の要件に該当する場合しか利用できなかったり、該当していても応募者数が多い場合などは受給できなかったりすることがあります。
また、提出する書類が多く手続きが煩雑であったり、多くの助成金・補助金は受け取った資金用途が決められたりするので、内容をしっかり確認するようにしましょう。
以上(2024年5月更新)