情報セキュリティを担保するために

独立行政法人情報処理推進機構から「情報セキュリティ10大脅威2024」が公表されました。このうち「組織」向け脅威を見ると、外部からの攻撃によるもののほか、内部不正や不注意による情報漏えいなど、社内起因の脅威も垣間見られます。

本稿では、社内起因の脅威のうち、内部不正にフォーカスを当て、現況と対策をお伝えするとともに、それを担保する規程の例をご紹介いたします。

1 内部不正による情報漏えいの現況と対応について

東京商工リサーチの調査によると、2023年の「個人情報漏えい・紛失事故」の件数は175件(前年比6.0%増)となっており、3年連続で最多件数を更新しました。そのなかで、情報の不正利用や持ち出しにより情報漏えいした「不正持ち出し・盗難」は24件(構成比13.7%)で、前年の5件から約5倍に増加しています。

情報のデータ化が進み、大量な情報であっても瞬時に操作できるようになりました。そのようなことから、企業における重要な情報は厳格に管理する必要性が高まっています。その管理や脅威への対策としては、次のようなことを実施することが考えられます。

脅威への対策

2 情報保護に関する規程について

前出のような対策については、漠然と運用するだけでなく、対策を担保する措置が必要です。例えば、企業と労働者とで情報保護に関する覚書を取り交わす、就業規則の服務規律に記載する、別途、情報取り扱いのルールについてのガイドライン等を作成して通知することなどが有効です。

次に、参考として経済産業省が公開している秘密情報管理に関する就業規則「服務規律」への規定例をご案内いたします。

秘密情報管理に関する就業規則「服務規律」への規定例

3 さいごに

企業の経営資源として、「ヒト」「モノ」「カネ」に「情報」が加わってから長らく経ちますが、ICT化の進展も相まって「情報」の価値が年々高まっています。

今一度、自社の情報資産について目を向けながら、保護体制について見直してみてはいかがでしょうか?

※本内容は2024年2月14日時点での内容です。

(監修 社会保険労務士法人 中企団総研)

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画像:photo-ac

年次有給休暇を取得中の労働者がいましたが、午後、緊急やむを得ない理由が発生し、本人の同意のうえ急遽出勤(業務終了後、即時帰宅)してもらいました。この場合、有給休暇は使用されたこととなるのでしょうか。また、急遽出勤していただいた時間は時間外労働として残業代を支払う必要があるのでしょうか。

QUESTION

年次有給休暇を取得中の労働者がいましたが、午後、緊急やむを得ない理由が発生し、本人の同意のうえ急遽出勤(業務終了後、即時帰宅)してもらいました。この場合、有給休暇は使用されたこととなるのでしょうか。また、急遽出勤していただいた時間は時間外労働として残業代を支払う必要があるのでしょうか。

ANSWER

年次有給休暇中に同意のうえ出勤してもらった場合には、年次有給休暇の使用は取り消されることとなります。このため、通常の出勤日と同様に賃金の計算をすることとなりますが、実際の労働時間が所定労働時間に満たない場合には、その満たない時間部分の賃金については、少なくとも会社都合による休業として休業手当を支払うべきです。
また、年次有給休暇中に出勤するといった事態が発生しないよう再発防止策を講じることが急務です。

解説

年次有給休暇取得中は、その労働者の労働義務が免除されている状態にあるため、業務上やむを得ない理由があっても、一方的に使用者側が出勤を命ずることはできず、その労働者の同意のもと出勤してもらうこととなります。この場合、年次有給休暇の使用が取り消されることとなりますので、通常の出勤日として勤怠管理や賃金計算を行う必要があります。

そうすると、実際の労働時間が所定労働時間に満たない場合には、その満たない時間分についてはノーワーク・ノーペイの原則により賃金が発生しないこととなりますが、その原因は会社側にあるため、少なくともその時間分について休業手当を支払うべきと考えられます。
また、時間単位年休の制度を導入している場合には、本人の希望を前提に、所定労働時間に満たない時間分について時間単位年休を取得してもらうという対応方法も考えられます。

いずれにしても、年次有給休暇中に出勤しなければならないといった事態は、勤怠管理上の問題だけでなく労働者のモチベーション低下にもつながりかねないので、同様の事態が発生しないよう業務体制や人員配置の見直しなどの再発防止策を講じることが急務です。

※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.92190

画像:Mariko Mitsuda

副業を原則解禁としたところ、社会保険や雇用保険に加入している社員が副業の申請をしてきました。副業を許可をする予定ですが、社会保険や雇用保険に関して何か手続きが必要でしょうか。

QUESTION

副業を原則解禁としたところ、社会保険や雇用保険に加入している社員が副業の申請をしてきました。副業を許可をする予定ですが、社会保険や雇用保険に関して何か手続きが必要でしょうか。

ANSWER

副業先において社会保険や雇用保険の加入要件を満たさない場合、原則として手続きは不要です。
一方、副業先において加入要件を満たす場合には、手続きが必要となったり、事務処理が煩雑となる場合があります。

解説

<副業先において社会保険、雇用保険の加入要件を満たさない場合>
副業先単体でみたときの契約期間や労働時間、賃金が、社会保険、雇用保険の加入要件を満たさないような働き方であった場合には、手続きは不要です。
ただし、本業において所定労働時間が20時間未満であることを理由として雇用保険未加入である65歳以上の労働者が副業を行う場合には、令和4年1月1日より新設されたマルチジョブホルダー制度に関する手続きが発生する可能性があります。

<副業先において雇用保険の加入要件を満たす場合>
副業先単体でみたときの契約期間や労働時間が、雇用保険の加入要件を満たすような場合には、原則として、主たる賃金を支払う事業所のみで雇用保険被保険者となります。このため、副業先において本業よりも多額の賃金の支払いを受けている場合には、本業の雇用保険被保険者資格を喪失させる手続きを行う必要があります。

<副業先において社会保険の加入要件を満たす場合>
副業先単体でみたときの契約期間や労働時間、賃金が、社会保険の加入要件を満たすような場合には、どちらの事業所においても被保険者資格を取得することとなりますので、手続きは不要です。ただし、標準報酬月額は両事業所の報酬を合算して算定され、各事業主は、支払う報酬の額により按分した保険料を、労働者が自ら手続きを行うことにより選択した年金事務所および健康保険組合に納付することとなりますので、事務処理が煩雑化する恐れがあります。

※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.98080

画像:Mariko Mitsuda

業績が悪化したため、経営改善のため部門の統廃合を行うとともに、一定人員の解雇を検討しています。業績悪化という合理的な理由があるので、問題ないでしょうか。

QUESTION

業績が悪化したため、経営改善のため部門の統廃合を行うとともに、一定人員の解雇を検討しています。業績悪化という合理的な理由があるので、問題ないでしょうか。

ANSWER

慎重な検討が必要です。
いわゆる整理解雇に該当しますが、整理解雇が正当と認められるには、「①経営上の必要性、②解雇回避努力、③被解雇者の選定基準、④十分な協議と適正な手続き」の4要素を踏まえている必要があります。
例えば、一時帰休や希望退職者の募集等の解雇回避努力をしていない場合や、解雇対象者を恣意的に選んで解雇するような場合は、例え業績悪化という理由があっても不当な解雇と判断される可能性があります。

解説

業績悪化に伴い人員削減を行う場合でも、現行の厳しい解雇規制のもとでは、単に経営上の必要性のみで解雇を行うことは得策ではありません。解雇権の濫用とみなされる恐れがあります。

判例は、人員削減(整理解雇)の正当性を判断するにあたっては、「①経営上の必要性、②解雇回避努力、③被解雇者の選定基準、④十分な協議と適正な手続き」の4要素に基づき、総合的に判断するスタンスをとっています。
特に、②解雇回避努力(配転や出向の検討、一時帰休や希望退職者の募集などを行っているか)、③被解雇者の選定基準(解雇対象者を差別的・恣意的に選ばず、客観的で合理的な基準を設定して公正に適用しているか)、④十分な協議と適正な手続き(労働組合や労働者代表、解雇対象者への十分な説明・協議を行っているか)については、厳しくチェックされる傾向にあります。

このように、整理解雇を行おうとする場合には、可能な限り丁寧かつ誠実な対応を行うことが求められますのでご注意ください。

※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.96090

画像:Mariko Mitsuda

自宅でのテレワーク制度の導入を検討していますが、テレワーク中の労働時間について事業場外のみなし労働時間制を適用してもよいのでしょうか。

QUESTION

自宅でのテレワーク制度の導入を検討していますが、テレワーク中の労働時間について事業場外のみなし労働時間制を適用してもよいのでしょうか。

ANSWER

①情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされておらず、②随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていない状況であれば、自宅テレワーク中の労働時間について、事業場外のみなし労働時間制を適用することができます。

解説

厚生労働省は、テレワークの更なる推進を図るため、「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(令和3年3月25日改定)を策定しています。同ガイドラインによると、

1.情報通信機器が、使用者の指示により常時通信可能な状態におくこととされていないこと

※単にスマートフォン等を労働者が所持していることのみをもって、「常時通信可能な状態におく」とされるわけではなく、労働者が自分の意思で通信回線自体を切断することや、自分の意思でスマートフォン等から離れること、スマートフォン等への応答の自由が認められている場合には、この要件を満たすとされています。

2.随時使用者の具体的な指示に基づいて業務を行っていないこと

※使用者の指示が、業務の目的、目標、期限等の基本的事項にとどまり、一日のスケジュール(作業内容とそれを行う時間等)をあらかじめ決めるなど作業量や作業の時期、方法等を具体的に特定するものでなければ、この要件を満たすとされています。

の二要件を満たす場合には、事業場外のみなし労働時間制を適用することができるとしています。

また、事業場外のみなし労働時間制を適用する場合であっても、法定時間外労働、休日労働、深夜労働があれば、割増賃金の支払いが必要となりますのでご留意ください。

なお、司法判断では、事業場外のみなし労働時間制の適用を否定する判決が多い傾向にあるため、テレワーク制度を導入する場合でも、本当に事業場外みなし労働時間制を適用すべきを慎重に検討するのが望ましいと考えられます。

※本内容は2024年2月29日時点での内容です。
 <監修>
   社会保険労務士法人中企団総研

No.93150

画像:Mariko Mitsuda

「賃上げ」はどこまで必要? 労働分配率や賞与・退職金を基準に考える

書いてあること

  • 主な読者:賃上げ(定期昇給やベースアップ)をするか否かを検討している経営者
  • 課題:そもそも賃上げは必要? 賞与や退職金にも影響がある?
  • 解決策:自社の賃金水準を「労働分配率」で確認。「基本給非連動型」の賞与・退職金制度で賃上げの影響を回避する

1 賃上げ前に労働分配率を確認する

毎年春闘の時期になると、賃上げに関する話題を耳にする機会が増えます。例えば、

2024年春闘では、「みんなで賃上げ。ステージを変えよう!」をスローガンに、賃上げ目標を「5%以上(定期昇給相当分を含む)」とする方針

が打ち出されています。

どこまで賃上げに取り組むかは経営者次第ですが、人件費の負担を考えるのであれば、

賃上げを検討する前に、自社の人件費が適正な水準にあるのかを「労働分配率」で確認

しておく必要があります。労働分配率の計算方法はさまざまで、適正な数値は業種や業態によって異なります。ここでは労働分配率を求めるための計算式を紹介します。実際に、自社の適正水準を検討する際は、社会保険労務士や会計士・税理士などに相談してみるとよいでしょう。

1.労働分配率の算出方法

労働分配率=人件費÷付加価値

2.付加価値の算出方法

  • 控除方式:主に製造業で使用
      付加価値=売上高-外部購入価値(製品仕入高、直接材料費、外注加工費等)
  • 加算方式:主に非製造業で使用
      付加価値=経常利益+人件費+金融費用+賃借料+租税公課+減価償却費

平均的な労働分配率や付加価値を知りたい場合、経済産業省「企業活動基本調査」の業種別データが参考になります。自社の過去3~5年程度の労働分配率を計算して、適正と思われる利益を出していた年度を基準にするとよいでしょう。

■経済産業省「企業活動基本調査」■

https://www.meti.go.jp/statistics/tyo/kikatu/index.html

以降では、賃上げの種類、賞与や退職金への影響を回避する方法などを紹介します。ここまでの内容を踏まえた上で賃上げを検討する場合は、ぜひご確認ください。

2 2種類の賃上げ「定期昇給」「ベースアップ」

1)定期昇給

定期昇給とは、

企業の定める賃金テーブル(賃金表)に基づき、賃金が従業員の年齢や勤続年数に応じて自動的に昇給(自動昇給)すること

です。査定昇給(人事考課などに基づいて昇給を行うこと)も、定期的に実施する場合は定期昇給に含まれますが、自動昇給とは異なります。企業の中には、能力や成果をもっと賃金に反映させようと、自動昇給の見直しに取り組んでいるところが少なくありません。

2)ベースアップ

ベースアップとは、

賃金テーブルを書き換え、全従業員の賃金水準を一斉に引き上げること

です。賃金テーブルが書き換えられるため、能力や成果が低い従業員も昇給(賃上げ)の対象となります。昇給は賃金規程で定められているもの、ベースアップは業績などに応じて臨時的に実施されるものです。

3 賞与や退職金への影響を回避する

1)賞与や退職金の負担を回避するには「基本給連動型→基本給非連動型」

賃上げをした場合、毎月の賃金だけでなく、賞与や退職金の負担も増えることがあります。それは、

基本給を賞与や退職金の計算基礎とする「基本給連動型」の制度

を導入している場合です。基本給連動型は、基本給に一定の支給率を掛けて賞与や退職金を計算するなど、シンプルな運用が可能ですが、基本給が支給額のベースになるため、賃上げの影響を受けやすくなります。賃上げの影響を回避したい場合、

基本給を賞与や退職金の計算基礎としない「基本給非連動型」の制度

を導入するという方法があります。

以降で、基本給非連動型の賞与・退職金制度の例を紹介します。なお、賞与・退職金制度を従前のものから変更する際は、「労働条件の不利益変更」に注意する必要があります。

2)賃上げの影響を回避する賞与制度(業績連動型)

ここでは、基本給非連動型の賞与制度の例として、「業績連動型」を紹介します。

業績連動型は、企業が重視する業績指標、勤務成績などを基に支給率を決め、賞与原資にその支給率を掛けて賞与を計算する仕組みです。業績指標については営業利益や経常利益などが、勤務成績については部門業績や人事考課の結果などがよく用いられます。

  • メリット:能力や成果を賞与に反映させやすい
  • デメリット:賞与の支給額が安定しにくく、従業員からすると不安がある

3)賃上げの影響を回避する退職金制度(定額制、別メニュー方式、ポイント制)

ここでは、基本給非連動型の退職金制度の例として、「定額制」「別メニュー方式」「ポイント制」を紹介します。

1.定額制

定額制は、勤続年数に応じて定額を定め、退職金を支給する仕組みです。例えば、20年勤続で退職した従業員の退職金は400万円、30年なら600万円といった具合です。

  • メリット:退職金の計算が不要
  • デメリット:能力や成果を退職金に反映させられない

2.別メニュー方式

別メニュー方式は、退職時の役職に応じて定額を定め、勤続年数別の支給率を掛けて退職金を計算する仕組みです。基本給連動型(退職時の基本給を退職金の基礎とする制度)と定額制を混合したようなイメージです。

  • メリット:退職金の計算が簡単
  • デメリット:能力や成果を退職金に反映させにくい

3.ポイント制

ポイント制は、一定のルールに基づいて従業員にポイントを付与し、退職時の累計ポイント数に単価を掛けて退職金を計算する仕組みです。ポイントには、勤続年数に応じて付与する「勤続ポイント」、資格等級などに応じて付与する「等級ポイント」、人事考課の結果などに応じて付与する「個人ポイント」などがあり、一般的に複数のポイントを組み合わせて運用します。

  • メリット:能力や成果を退職金に反映させやすい
  • デメリット:退職金の計算が複雑、付与されるポイント数などについて従業員の納得が得られないケースがある

4 社会保険料などへの影響にも注意する

1)労働保険料

労働保険料(労災保険料と雇用保険料)は、毎月の賃金の総支給額に保険料率を掛けて計算します。そのため、残業代などで賃金が変動すると保険料も異なってきます。また、賃上げの場合も保険料に影響します。

2)社会保険料

社会保険料(健康保険料、介護保険料、厚生年金保険料)は、4~6月に支給した賃金の平均額をベースに決まります。そして、その年の9月から翌年の8月までは原則固定となります。この手続きを「定時決定」といい、算定基礎届を毎年7月初旬に年金事務所に届け出ます。

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ただし、固定的賃金(稼働実績に関係なく支給されるもの)が変動し、連続する3カ月間の賃金の平均額が2等級以上変わると、4カ月目から社会保険料が改定されます。これを「随時改定」といい、月額変更届を固定的賃金が変動した月から起算して4カ月目に速やかに届け出ます。

なお、7月から9月までのいずれかの月に随時改定をした場合、定時決定は行いません。4月から賃上げをする場合などは、随時改定の要件に該当しても定時決定として扱い、9月分の保険料から改定してしまうことがありますが、これは誤った運用です。

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5 賃上げに表れる経営者の思い

ベースアップをした場合、以降の人件費が増大します。将来的に企業の業績が悪化しても、賃下げは労働条件の不利益変更になるので、簡単に行うことができません。そのため、足元の業績好調を理由に、利益分配の目的で賃上げを検討しているのであれば、ベースアップではなく、賞与で賃上げをしたほうが無難という考え方もできます。これであれば、翌年度の業績に応じて柔軟に賞与の支給額を決められます。

頑張っている従業員に報いたいというのは、経営者の変わらぬ思いです。そうした意味で、賃上げは従業員に感謝の気持ちを伝える重要な取り組みです。ただし、事前に賃上げのメリットとデメリットを把握し、業績などに見合った適切な方法を選択しましょう。

以上(2024年3月更新)

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画像:Team Oktopus-shutterstock

一流の経営者は健康管理も手を抜かない

書いてあること

  • 主な読者:自分の健康に自身があって、不摂生をしがちな経営者
  • 課題:多忙であり、自身の健康維持を後回しにしがち
  • 解決策:いつ健康を損ねるか分からないことを自覚し、簡単な健康管理から始める

1 日ごろから心がけたい7つの健康管理術

経営者が健康でハツラツとしていることは、経営者自身だけではなく、周囲にも良い影響を与えます。活力ある経営者の姿は社員に安心を与えます。また、取引先などは、

経営者の活力を「会社の活気」ととらえる

ので、元気な経営者が経営する会社に一目置くことになります。

ですから、「自分は健康だから大丈夫」と不摂生をせずに、自分の健康に注意しましょう。まずは、すぐに取り組める7つの健康管理術を紹介します。

1)しっかり寝る

かつては「睡眠時間の短さ」を自慢する人もいましたが、今はそのような時代ではありません。睡眠が心身の健康に与える重要な役割が解明されているからです。経営者は、多忙で、生活が不規則になりがちですが、しっかり睡眠を取るように時間を確保しましょう。

2)栄養バランスの取れた食事をする

経営者は会食が多く、栄養バランスの取れた食事をするのが難しいこともあります。そこで、毎回の食事の量を控えめにしたり、サラダやフルーツを多く摂取して、外食で不足しがちなビタミンやミネラルの補給に努めたりするなどの工夫が大切です。また、「食事を取るタイミング」「食事の中身(カロリー)」を、アプリで記録するのも効果的です。

3)お酒をあえて飲まないスタイル

ここ数年で、お酒を飲めるけれど、量を控えたり、あえて飲まなかったりする人が増えてきていることをご存じですか。そうしたライフスタイルを「ソバーキュリアス」と呼びます。会食でも、お酒を控えめにしたり、飲まなかったりすることで、思考もクリアになって会話に集中できるというメリットもあります。

4)趣味などで気分転換を図る

気分転換は効率化や新しいアイデアの発想につながります。ゴルフなど仕事上の付き合いにつながるスポーツの他、仕事から完全に切り離した趣味を楽しむのもよいでしょう。交友関係が広がり、思わぬところで仕事の関係につながることもあります。

5)気持ちを明るく保つ

経営者がストレス過多の状態になることを防ぐためには、日ごろから心に余裕を持ち、前向きな気持ちを維持しましょう。日常生活で笑いを増やすように努めたり、一歩引いて道を譲るように心がけたりすることで、心に自然と余裕が生まれてくるものです。

6)定期的にスポーツをする

ジムに通ったり、ジョギングをしたりするなど、身体を積極的に動かしましょう。毎日30分程度歩くなど軽い運動も健康に良いです。運動のための時間をつくるのが難しい場合は、「職場ではエレベーターではなく、階段を使うようにする」など、ちょっとした工夫をしてみましょう。

7)健康診断を受ける

健康管理を行うために、健康診断を受けたり、人間ドックを利用したりするとよいでしょう。また、経営者が率先して健康診断を受ける姿勢を見せることで、社員の健康管理への意識を向上させ、企業全体の受診率を上げる効果も見込めます。

2 「万が一」への備え

健康を損ねてしまった場合の対策も欠かせません。最も深刻な事態として想定されるのが、経営者の死亡です。万が一、経営者が死亡してしまった場合、金融機関からの借入金の返済・金利引き上げなどの要請、あるいは取引先からの買掛金や未払金の回収などの要請を受けるなど、企業は資金面の問題に直面する可能性があります。

また、交通事故やスポーツ中の転倒、心筋梗塞や脳梗塞、がんなどによって、入院が長期化したり、障害が残ったりして長い間働けなくなってしまうケースもあります。

こうした場合の資金面の対策としては、生命保険や損害保険を活用する企業が多いようです。仮に、そのような資金面の対策を講じていない場合は、早急に対策を検討する必要があります。

また、既に対策を講じている企業でも、事業の規模や内容は変化するため、自社の状況を踏まえた上で、保障金額などを定期的に見直しましょう。

3 経営者の「自覚」が大切

大切なことは、経営者本人が健康の維持に関心を持つことです。何の根拠も無いのに「自分だけは病気をしない」と考えがちですが、こうした意識が、健康管理に対する自覚の欠如につながり、結果として疾病や疾患などを招くことがあります。

経営者の健康管理に関する最大のポイントは、「人間である以上、いつ健康を損ねるか分からない」ということを改めて認識することです。同時に、経営者が健康を損ねた場合の影響がどれほど大きいものかについても認識しなければなりません。

以上(2024年3月更新)

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「睡眠不足」の経済損失は18兆円? 快眠のための8つのポイントを紹介!

書いてあること

  • 主な読者:睡眠不足などの睡眠に関連した悩みを持つビジネスパーソン
  • 課題:睡眠不足を解消したい、良い睡眠を取って健康になりたい
  • 解決策:睡眠サイクルを崩さないなど、快眠のための8つのポイントを紹介

1 睡眠不足による経済損失は年間18兆円

「健康経営」が注目される昨今ですが、中でも重要視されている分野の1つが「睡眠」です。睡眠は、人が生きる上で欠かせないものであり、

  • 疲労がたまった脳や体を休め、心身のバランスを取る
  • 成長ホルモンを分泌し、体の成長を促す、体の免疫力を高める、精神を安定させる

などの役割があります。ですが、日本では成人の5人に1人が睡眠の悩みを抱えているとされる他、睡眠不足による生産性の低下などにより、年間18兆円の経済損失との試算もあります。

この記事では、産業医監修のもと、

睡眠不足がもたらすリスク、昼寝の効能、快眠のための8つのポイントなど

をまとめました。健康経営には取り組んでいるけど、「睡眠についてはあまり考えたことがなかった」という人は、ぜひこのコンテンツをご確認ください。

2 睡眠不足がもたらすリスク

1)睡眠不足が企業にもたらす悪影響

睡眠不足の経験がある人は多いと思います。睡眠不足は脳の働きを鈍らせ、身体能力を低下させることが分かっています。病気が悪化したり、事故やミスをしがちになったりするなどは典型例です。

厚生労働省「健康づくりのための睡眠指針2014」では、

  • 人間が十分に覚醒して作業を行うことができるのは起床後12~13時間が限界
  • 起床後15時間以上では酒気帯び運転と同じ程度の作業能率まで低下する

とした研究結果を紹介しています(なお、「睡眠指針2014」は2023年12月に改訂され、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」となりました)。

また、睡眠不足が連日続くと作業能率はさらに低下し、もし睡眠不足が6~7日間続いた場合、その後3日間は十分な睡眠時間を確保しても、日中の作業能率は十分に回復しないようです。ですから、毎日十分な睡眠時間を確保することが重要なのです。

2)ストレスチェックの義務化で関心が高まる睡眠

従業員50人以上の事業所には、ストレスチェックの実施が義務付けられています(従業員50人未満の事業所は努力義務)。これは、うつ病などメンタルヘルス不調を未然防止するための制度ですが、標準とされる57の質問には「よく眠れない」という項目が含まれています。

不眠症状とうつ病は密接に関連しているため、ストレスチェックと併せて、従業員の睡眠状態にも気を配ることは、メンタルヘルス不調の未然防止策としても重要でしょう。

3 昼寝の効能

朝早くから活動を続けている人間の脳は、覚醒してから5~6時間もたつと疲労が蓄積されていきます。特に13~15時前後の時間帯は、昼食を取ったのと相まって、疲労や眠気を強く感じることも多いでしょう。昼食後の数時間は生産性や判断力が低下し、ミスや集中力の低下(ボーッとする、あくびをするなど)が目立ちます。

このときにコーヒーを飲んだり体を動かしたりして、午後の仕事に備える人も多いと思いますが、睡眠不足を自覚しているなら、

ごく短時間(15~20分)の昼寝は効果的

です。短時間であれば、昼寝は脳を活性化させ、判断力や集中力を回復させます。ミスの減少、生産性の向上、事故予防、心身の健康増進なども期待できます。ただし、昼寝が20分を超えると深い睡眠に入ってしまい、かえって覚醒に時間がかかる場合があるので注意しましょう。

なお、会社によっては、昼寝(シエスタ)休憩を設けていたり、仮眠が取れるスペースなどがあったりするところもあります。

4 快眠のための8つのポイント

1)規則正しい生活を送る

  • 毎日同じ時刻に眠り、決まった時間に起きると、体内に睡眠のリズムがつくられ、不眠解消につながる
  • 休日もそのリズムを崩さない
  • 睡眠のリズムが狂っている場合は、太陽の光を浴びるとよい

2)朝食をしっかり食べる

  • 朝食は覚醒後のエネルギーとして利用されるため、しっかり摂取する。朝食を抜くと、その分のエネルギーを体内で補完しなくてはならないため、体に負担がかかってしまう
  • 食事を3度きちんと取ると、睡眠リズムが回復し、健康的な生活サイクルがつくられる

3)寝る前にぬるめのお風呂にゆっくり漬かる

  • ぬるめのお風呂に20~30分ほどゆっくり漬かることで、心臓に負担をかけることなく体を温め、心身共にリラックスした状態をつくる
  • 市販の入浴剤や防水機能が付いた音楽プレーヤーなどを活用することで、リラックス効果を高める

4)適度な運動をする

  • 適度な運動は熟睡を促す効果がある
  • 過剰な運動は心身を活発にするため、寝る前には控える

5)昼寝をする

  • 昼寝は午後の活動を活性化させる効能があり、夜の熟睡につながる
  • 時間帯は13~15時が望ましい。あまり遅い時間に昼寝をすると夜に眠れなくなる
  • 睡眠時間は15~20分くらいを目安にすること。1時間以上寝ると、逆に疲労がたまってしまう

6)お茶やコーヒーの量を減らす(カフェインを減らす)

  • カフェインには覚醒作用があるので、寝る前に摂取すると不眠の原因になる
  • カフェインを摂取し過ぎると、頭痛やめまい、胃腸障害などを引き起こすことがあるので注意する

7)睡眠環境(枕、ベッド、照明、音楽など)を改善する

  • 頭の位置や首の角度を考慮した枕、適度な硬さのベッド、柔らかく周辺を照らす間接照明、リラックスを促す音楽など、睡眠環境を自分の嗜好や体に合うように工夫する

8)寝ることを意識し過ぎない

  • 「寝ないと体が持たない」「たっぷりと睡眠を取らないと病気になる」などと強く意識し過ぎてしまうとそれが自己暗示となり、かえって寝られなくなるので、横になったら寝ることを意識せず、音楽を聴いたり、体の力を抜いたりするなどしてリラックスするとよい

これらの方法は、人によっては効果を発揮しなかったり、逆に眠りを妨げる恐れもあったりするので、自分に合った方法を見つけ、快眠につなげていくとよいでしょう。

5 寝酒は逆効果

寝付けないときに寝酒を飲むという人もいるでしょう。実際、アルコールには眠りを誘う作用があり、寝付きは良くなりますが、その一方で、眠りが浅くなってしまうことがあります。

浅い眠りとは、すなわち睡眠の質の低下です。例えば、二日酔いの朝など寝付いたのは遅い時間なのに、なぜか目が覚めてしまうことがありますが、これはアルコールによる覚醒作用です。「寝付けないから寝酒」というのは、実は逆効果なのです。

6 睡眠薬は必ず医師の判断で

最後に、睡眠薬(睡眠導入剤)を飲むときの注意点を紹介します。睡眠不足が続くと生産性や判断力が鈍るため、ビジネスパーソンの中には睡眠薬を使用されている方も多くいらっしゃるでしょう。

しかし、睡眠薬は使用法を誤ると、心臓や血管に負担がかかったり、依存症に陥ったりするリスクがありますので、使用の際は医師に相談し、正しい服用を心掛けなくてはなりません。自己判断で服用量を増やしたり、アルコールと一緒に服用したりしないよう注意しましょう。

以上(2024年3月更新)
(監修 株式会社フェアワーク 吉田健一)

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画像:unsplash

ChatGPT×経営者186人アンケート! どんなふうにChatGPTを使っていますか?

書いてあること

  • 主な読者:ChatGPT初心者。または、まだ使っていない経営者やビジネスパーソン
  • 課題:そもそもどうやって使えるの? 他の人のChatGPTの使い方を知りたい
  • 解決策:経営者の60%以上は「使用経験あり」もしくは「今後、使いたい」。アンケート結果から、実際の用途、効果などを知り、とにかくChatGPTに触れてみよう

1 他の人のまねでいい。まずはChatGPTに触れてみよう!

「使い方が分からないから」。2024年1月に行った経営者アンケートで、「ChatGPTを使用したことはなく、使用したいとも思わない」と回答した1人にその理由を尋ねたときの答えです。この人のように、使い方が分からないからChatGPTを使っていない人は多いのです。

この記事で「ChatGPTの使用経験について」のアンケート結果をご紹介しますので、他の経営者の使い方や感じている効果などを参考に、ChatGPTを使ってみてください。すでに使っている方は自分の現状とアンケート結果を見比べるのもいいでしょう。

新しいものかつ、誰でも簡単に触れられるのが今のChatGPTです。まず、一度、触れてみましょう。ちなみに「うれしい気持ちの画像をつくってください」とChatGPTに指示したものが次の画像です。こんなふうにChatGPTとやり取りすることもできるのです。

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2 ChatGPTの使用に関する経営者186人アンケート

1)ChatGPTの使用経験について

ChatGPTの使用経験は次の通りです。「使用したことがある」と「使用したことはないが、使用したい」を合わせると、実に66.7%もの経営者が使ったことがある、もしくは使いたいということになります。

なお、「使用したことはなく、使用したいとも思わない」と回答した人の理由は、「使い方が分からないから」の他は、「使うタイミングがないから」などがありました。

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2)ChatGPTの活用方法について

ChatGPTの活用方法(どのような業務に使っているか、もしくは使いたいか)は次の通りです。一番多いのは「文書作成(例:報告書、提案書)」で、次に「マーケティング(例:コンテンツ作成、SNS管理、アイデア出し)」が続きます。「その他」の回答としては、コーディング、プログラム作成といったものもありました。

一番多かった「文書作成(例:報告書、提案書)」に使った(使いたい)理由としては、「文章のたたき台づくりに使って、文書作成を省力化できるから」「書類づくりをスピードアップできるから」という回答がありました。

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3)ChatGPTの効果について

ChatGPTの効果(業務における変化)は次の通りです。一番多いのは「効率化、時短」で、次に「新しい視点」が続きます。

「効率化」は分かりやすいとして、「新しい視点」についてどういうことか尋ねたところ、「質問の返答の中には、今まで自分たちが考えていなかった内容が含まれることがある」「人の行動に対する新しい視点を与えてくれたり、やりたかったエクセルでの画像取り込みコードを生成してくれたりした」といった回答がありました。

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4)ChatGPTでやっていることについて

ChatGPTを使うときに実施していること(工夫などを含む)については次の通りです。一番多いのは「わからない、特にない」ですが、その次には「質問の仕方や回答を社内で色々試して情報をシェアしている」「文章だけでなく、エクセルの集計にもChatGPTを活用している」が続きます。

「質問の仕方や返答を社内で色々試して情報をシェアしている」と回答した人に、その理由を尋ねたところ、「どんな質問をしたらどのような回答が来るか、まだよくわかっていないところがあるので、なるべく社内で共有して、無駄な質問や的外れな質問をしないようにするため」「色々試して情報をシェアすることで、より良い活用方法を見いだそうとしているため」といったものがありました。

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5)ChatGPTの難しいところについて

ChatGPTの難しいところについては次の通りです。一番多いのは「情報の信ぴょう性、鮮度がわからない」で、次に「こちらの意図がなかなかうまく伝わらない」が続きます。「その他」の回答としては、「無料版なのでデータが古い」といったものもありました。

情報の信ぴょう性、鮮度は無料・有料、バージョンなどによっても印象が変わりそうです。一方、「こちらの意図がなかなかうまく伝わらない」というのは、AIとのやり取りだからこその難しさと考えられます。そこで、そう回答した人に理由を尋ねたところ、「質問についての返答が、的外れなことがあったため」「入力にコツがあるようなのですが、自分がそれをよく知らないからだと思う」といったものがありました。

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6)ChatGPTの今後の用途について

ChatGPTの今後の用途については次の通りです。一番多いのは「文章などコンテンツ作成の効率化」で、次に「社内の知識共有、マニュアル作成」「新しい商品やサービスのアイデア出し」が続きます。

「その他」の回答としては、「コーディングチェック」「プログラム作成」「対話的な反応」といったものもありました。

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7)ChatGPTを使わない理由について

最後に、ChatGPTについて「使用したことはなく、使用したいとも思わない」と回答した33.3%の人に尋ねた、ChatGPTを使わない理由については次の通りです。一番多いのは「よく知らないから」で、次に「自社では使う必要がないから」「使う機会がないから」が続きます。

「その他」の回答としては、「人の道に反するから」「使用することによる弊害や、セキュリティーの保証が不明確」といったものもありました。

いずれにしても、使ってみたことがない方は、「一度、試しに使ってみる」ことで分かってくることがあるかもしれません。

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以上(2024年3月作成)

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画像:Arnav Pratap Singh-Adobe Stock

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