「賃上げ」で使える助成金! 業務改善助成金など5種類を紹介

書いてあること

  • 主な読者:中小企業が賃上げの際に活用できる助成金等について知りたい経営者
  • 課題:具体的にどのようなものがあるか分からない
  • 解決策:主なものとして、「業務改善助成金」「キャリアアップ助成金」「働き方改革推進支援助成金」「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」「中小企業向け賃上げ促進税制」の5つを押さえる

1 賃上げの不安は、助成金等を上手に活用して払拭する

物価高の影響等から、賃上げ(定期昇給やベースアップ)に向けた動きが活発になっています。2024年春闘でも、「みんなで賃上げ。ステージを変えよう!」(日本労働組合総連合会)をスローガンに、賃上げ目標を「5%以上(定期昇給相当分を含む)」とする方針が打ち出されています。

ただ、多くの経営者は、

「先行きが不透明で、簡単には賃上げができない……」

と思っているのではないでしょうか。賃上げは簡単でも、賃下げは「労働条件の不利益変更」等の問題があって難しいので、不安になるのも無理はありません。そこでご提案したいのが、

助成金や補助金、税制を上手に活用し、賃上げによるコストアップに対応すること

です。

この記事では、

賃上げに関する中小企業向けの助成金等を5つ紹介

します。支給額や要件等の情報に加え、専門家のワンポイントアドバイスも載せています。なお、助成金等の内容は、2024年2月9日時点のもので将来変更される可能性があります。また、申請書の書き方や添付書類等については、各章で紹介しているURLをご参照ください。

2 業務改善助成金

1)業務改善助成金とは?

会社(実際は支店等の事業場単位)が事業場内最低賃金(最も賃金が低い社員の時給)を30円以上引き上げ、生産性を向上させるための設備投資等を行った場合、その費用の一部(最大600万円)を助成金として受け取れるというものです。

■厚生労働省「業務改善助成金」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/03.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。例えば、東京都の場合、地域別最低賃金が1113円(2023年10月1日~)なので、「事業場内最低賃金が1113円~1163円で、不交付事由に該当しない中小企業・小規模事業者」が対象になります。

  • 中小企業・小規模事業者であること
  • 事業場内最低賃金が、地域別最低賃金+50円以内であること
  • 解雇や賃金引き下げ等の不交付事由に該当しないこと

要件を満たしている場合、「賃上げの計画」「設備投資等の計画」を作成し、都道府県労働局に提出します。交付が決定されたら、計画に沿って賃上げと設備投資等を実施し、都道府県労働局に結果を報告すれば、助成金を受け取れます。

ちなみに、助成金の対象になる設備投資等の例としては、次のようなものがあります。

  • 設備投資(例:POSレジシステム導入による在庫管理の短縮、リフト付き特殊車両の導入による送迎時間の短縮)
  • コンサルティング(例:専門家による業務フロー見直しによる顧客回転率の向上)
  • その他(例:店舗改装による配膳時間の短縮)

3)受け取れる金額はいくら?

「助成上限額」までの範囲内で、「設備投資等の費用×助成率」で計算した額を受け取れます。

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4)専門家のワンポイントアドバイス

設備投資をする場合、都道府県労働局が交付を決定する前に業者と契約したり、都道府県労働局に提出した計画書や見積書と、内容や金額が異なる設備を導入したりすると、助成金が不支給になる恐れがあります。助成金が支給された後も、都道府県労働局から調査が入ったり、「状況報告書」の提出を求められたりすることがあるので注意が必要です。

3 キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)

1)キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)とは?

有期パート等(契約期間の定めがある非正規雇用の社員)の基本給を3%以上増額するよう賃金規定等を改定した場合、賃上げをした有期パート等の人数に応じ、助成金を定額(1人当たり最大6.5万円)で受け取れるというものです。職務評価(職務の大きさを相対的に把握すること)の実施による加算(1事業所当たり20万円)も別途受けられます。

■キャリアアップ助成金■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/part_haken/jigyounushi/career.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。「キャリアアップ計画」は、有期パート等のキャリアアップを図る上での目標や措置に関する計画、「賃金規定等」は、就業規則の賃金規定、賃金テーブル、賃金一覧表等のことをいいます。

  • 賃金規定等の改定の前日までにキャリアアップ計画を作成し、都道府県労働局に提出すること
  • 有期パート等の基本給を3%以上増額するよう賃金規定等を改定すること
  • 改定後の規定に基づき、増額した賃金を6カ月間支給していること

なお、助成金は賃上げをした有期パート等の人数(1年度1社当たり100人が上限)に応じて支給されますが、対象となるのは

雇用保険の被保険者で、賃金規定等の改定の3カ月以上前から勤務している有期パート等だけ(助成金の申請時点で離職している者等を除く)

なので注意が必要です。ちなみに、原則として週の所定労働時間が20時間以上で、雇用期間の見込みが31日以上ある人が、雇用保険の被保険者になります。

会社も有期パート等も要件を満たしている場合、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内に都道府県労働局に申請をすれば、助成金を受け取れます。

3)受け取れる金額はいくら?

「賃上げ率に応じた支給額」を定額で受け取れます。また、職務評価を実施し、適正に有期パート等の賃金規定等に反映した場合、「職務評価の実施による加算額」が上乗せされます。

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4)専門家のワンポイントアドバイス

賃上げの実施前にキャリアアップ計画を作成・提出しないと、キャリアアップ助成金は受け取れません。また、労働保険料の未納や労働関係法令の違反がある会社は、助成金の対象から外れる恐れがあるので注意が必要です。

なお、キャリアアップ助成金は、第2章の業務改善助成金と同時に受け取ると、併給調整がかかって支給額が減ることがあります。ただ、

キャリアアップ助成金は「雇用保険の被保険者しか賃上げの対象にできない」のに対し、業務改善助成金は「被保険者でない者も対象にできる」

ので、社員の雇用保険の加入状況によってはこの問題をクリアできる可能性があります。

4 働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)

1)働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)とは?

残業削減や年休(年次有給休暇)の取得促進に関する一定の取り組みを行った場合、その経費の一部(最大250万円)を受け取れるという助成金です。一定以上の賃上げに関する加算(最大480万円)も別途受けられます。

■働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース)■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000120692.html

2)助成金を受け取るには?

まず、会社が次の要件を全て満たす必要があります。

  • 中小企業であること
  • 労災保険の適用事業所であること(雇用保険の被保険者はいなくてもよい)
  • 年5日の年休取得に向けて就業規則等を整備していること
  • 助成金の申請時点で、次の1)から3)の「成果目標」のいずれかを満たしていること(賃上げに関する加算を受けたい場合、さらに4)も満たすことが必要)
    1)36協定の見直し(時間外・休日労働の時間数を一定以上縮減させる)
    2)年休の計画的付与制度の導入
    3)時間単位年休と1つ以上の特別休暇(政府が指定するもの)の導入
    4)3%以上または5%以上の賃上げ

要件を満たしている場合、残業削減や年休の取得促進に関する9つの取り組み(図表3)のいずれかを実施した上で、都道府県労働局に申請すれば、助成金を受け取れます。

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3)受け取れる金額はいくら?

助成上限額の範囲内で「取り組みの費用×助成率」で計算した額を受け取れます。なお、3%以上または5%以上の賃上げをすると加算額が上乗せされます。その場合、「助成上限額+賃上げに関する加算額」が、受け取れる金額の上限になります。

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4)専門家からのワンポイントアドバイス

働き方改革推進支援助成金は、第2章の業務改善助成金と性質が似ています。ただ、業務改善助成金には「事業場内最低賃金が、地域別最低賃金+50円以内であること」という要件があるのに対し、働き方改革推進支援助成金にはこの要件がないのが大きな違いです。事業場内最低賃金が高くて業務改善助成金の対象から外れてしまっても、働き方改革推進助成金を受け取れる可能性があるので、諦めずに活用を検討してみてください。

5 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金

1)ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金とは?

会社が制度変更などへの対応として、革新的な製品・サービスの開発、生産プロセス等の省力化を行い、生産性を向上させるための設備投資等をした場合、その費用の一部(枠に応じ、最大1250万円~8000万円)を補助金として受け取れるというものです。なお、大幅な賃上げを行うと、補助上限額が引き上げられる(枠に応じ、補助上限額が最大2250万円~1億円に引き上げ)という特例措置を受けられます。

■ものづくり補助金総合サイト「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領」■
https://portal.monodukuri-hojo.jp/about.html

2)補助金を受け取るには?

まず、会社が次の基本要件を全て満たす事業計画書を策定し、実行する必要があります。なお、対象となるのは中小企業や小規模事業者等です。

  • 付加価値額を、年平均成長率+3%以上増加させること
  • 賃金の支給総額を、年平均成長率+1.5%以上増加させること
  • 事業場内最低賃金を、地域別最低賃金+30円以上とすること

また、ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金には、

  • 生産プロセス改善等に関する設備投資等を対象とする「省力化(オーダーメイド)枠」
  • 製品・サービス開発に関する設備投資等を対象とする「製品・サービス高付加価値化枠」
  • 海外需要開拓に関する設備投資等を対象とする「グローバル枠」

があり、上記の基本要件に加え、それぞれの枠が設定する要件も満たす必要があります(枠ごとの要件の詳細は、ここでは割愛します)。

要件を満たしている場合、GビズID(1つのIDで複数の行政サービスにアクセスできるサービス)のプライムアカウントを取得、電子申請の後、「審査→交付決定→補助事業の実施→確定検査(交付額の決定)」という流れを経て実績報告と請求を提出すれば、補助金を受け取れます。

■GビズID(gBizID)■
https://gbiz-id.go.jp/top/

3)受け取れる金額はいくら?

「補助上限額」までの範囲内で、「設備投資等の費用×補助率」で計算した額を受け取れます。なお、大幅な賃上げ(賃金の支給総額を、年平均成長率+6%以上増加させる等)をした場合、補助上限額が引き上げられる特例措置を受けられます。

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4)専門家からのワンポイントアドバイス

前述した通り、補助金の申請後は「審査→交付決定→補助事業の実施→確定検査」といった具合にタスクが多いので、申請や補助事業の実施等は計画的に進めましょう。ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金は、年に複数回に分けて募集が行われるので、その都度公募要領を確認し、スケジュールの誤認等がないよう注意が必要です。

6 中小企業向け賃上げ促進税制

1)中小企業向け賃上げ促進税制とは?

全社員の賃金(給与等支給額)を前年度比で一定率以上引き上げると、法人税の税額控除(控除率30%)を受けられるというものです。また、教育訓練費の引き上げや女性活躍・子育て支援の取り組みによって控除率の上乗せ加算(10~15%)が別途あり、最大で45%の税額控除が受けられるようになる予定です(令和6年度税制改正による改正)。

■中小企業庁「中小企業向け『賃上げ促進税制』」■
https://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/syotokukakudai.html

2)税額控除を受けるには?

まず、会社が次の要件を満たす必要があります。

  • 青色申告書を提出する、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人であること
  • 普通法人のうち事業年度終了日における資本金の額または出資金の額が5億円以上の大法人による完全支配関係がある子法人等でないこと

税制の利用に当たって、税務申告より前に特段の手続きを行う必要はありません。ただ、法人税の申告の際に、確定申告書等に、適用額明細書、税額控除の対象となる控除対象雇用者給与等支給増加額、控除額、その金額の計算に関する明細を記載した書類を添付する必要があります。

3)控除率はどのぐらい?

給与等支給額の上昇率に応じて、15%または30%の控除を受けられます。さらに、教育訓練費の引き上げ、女性活躍・子育て支援に関わるくるみん・えるぼし認定の取得による上乗せ加算があります。なお、くるみん・えるぼし認定の取得による上乗せ加算は令和6年度税制改正により新たに設けられる予定です。

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4)専門家からのワンポイントアドバイス

令和6年度税制改正では、中小企業向け賃上げ促進税制について、前述した控除率の改正があった他、その年に控除できなかった控除額について、5年間繰り越して控除できる制度が新たに設けられる予定です。併せて押さえておきましょう。

以上、賃上げに関する中小企業向けの助成金等を5つ紹介しました。なお、厚生労働省ウェブサイトでは、ここまで紹介した内容の他に、最低賃金引き上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業等が公表されているので、興味がある人はそちらもご確認ください。

■厚生労働省「最低賃金引上げに向けた中小企業・小規模事業者への支援事業」■
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/zigyonushi/shienjigyou/index.html

以上(2024年3月作成)
(監修 ひらの社会保険労務士事務所)

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画像:LanKogal-shutterstock

弁護士が注目する2024年度の法務3大ニュース

書いてあること

  • 主な読者:2024年度の注目すべき法務分野の改正を知りたい経営者、法務担当者
  • 課題:法務分野は改正が多いため、注目すべき話題に絞って把握したい
  • 解決策:「フリーランスの保護」「不当表示等に関する自主的な是正の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等」「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」に注目する

1 2023年度・2024年度の3大ニュース

2023年度は、改正消費者契約法の施行による「契約書・約款の見直し」、改正電子通信事業法の施行による「電気通信事業該当性のチェック」の対応が求められた他、改正民法の施行による「所有者不明の不動産の有効活用」が認められるようになりました。

2024年度は、フリーランス保護新法の施行による「フリーランスの保護」、改正景品表示法の施行による「不当表示等に関する自主的な是正の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等」が行われます。また、知財一括法の施行により、「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」が図られるため、スタートアップや中小企業において、知的財産を活用した新規事業展開が後押しされるようになるという法改正もあります。

2023年度・2024年度の法務3大ニュースは次の通りです。

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2 2023年度の総括

2023年6月1日より、改正消費者契約法が施行され、「法令に反しない限り、○万円を上限として賠償する」など、免責の範囲が不明確な条項が無効になった他、消費者を保護する規制が設けられました。自社の契約書や約款を見直し、消費者に不利益となる契約条項を修正するなど、法改正への対応を迫られた会社も多いのではないでしょうか。

また、2023年6月16日より、改正電子通信事業法が施行され、登録・届出を要する電気通信事業者の範囲が拡大しました。自社の事業が、電気通信事業に該当しないか改めてチェックする必要が出てきました。

その他、民法改正により、所有者が不明な不動産の処分につき新たな制度が設けられました。不動産業者を中心に、新たな法制度への理解が求められています。

3 2024年度の主なニュース

1)フリーランスの保護

遅くとも2024年秋ごろまでに、特定の会社に所属せず、業務委託で働くフリーランスを保護するための「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」(以下「フリーランス保護新法」)が施行される予定です。主なポイントは次の通りです。

  1. 書面等での契約内容の明示
  2. 報酬の支払い時期の明確化
  3. 委託事業者の遵守事項
  4. 募集情報の的確な表示
  5. 就業環境の整備

フリーランスは、通常の従業員のように、労働関係法令(労働基準法など)が適用されません。一応、一定の資本金要件を満たす会社と契約するフリーランスであれば、下請法による保護を受けられるケースもありますが、中小企業はこの資本金要件を満たさないケースが多く、フリーランスが不利益を受けやすいという問題があります。そこで、

下請法に関係なく、「特定受託事業者」(業務委託の相手方で、従業員を使用しない事業者。つまりフリーランス)に該当すれば、法律による保護を受けられるようにする

というのが、フリーランス保護新法の趣旨です。

「1.書面等での契約内容の明示」「2.報酬の支払い時期の明確化」は、会社とフリーランスの契約における「取引条件が明確でない」「報酬の支払いが遅れる、一方的に減額される」といった典型的なトラブルを防止するためのもので、フリーランスに業務を委託する会社に対し、次の対応を義務付けています。

  • 給付の内容や報酬の額、支払い期日等を書面やメールで明示すること
  • 報酬の支払い期日について、原則として、フリーランスから給付を受けた日から起算して60日以内で、かつできる限り短い期間内に設定すること

「3.委託事業者の遵守事項」は、立場の弱いフリーランスが、会社から不利益を押し付けられないよう、会社が遵守すべき事項を定めるものです。具体的には次の通りです。

  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付の受領を拒絶すること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく報酬を減額すること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく返品を行うこと
  • 通常相場に比べ著しく低い報酬の額を不当に定めること
  • 正当な理由がなく自己の指定する物の購入・役務の利用を強制すること
  • 自己のために金銭、役務その他の経済上の利益を提供させること
  • フリーランスの責めに帰すべき事由なく給付内容を変更させ、またはやり直させること

その他、通常の従業員と同じように、フリーランスを募集するに当たって「4.募集情報の的確な表示」を行うこと、ハラスメントの防止や出産・育児・介護への配慮といった「5.就業環境の整備」を行うことなどが求められます。

2)不当表示等に関する自主的な是正の促進や、違反行為に対する抑止力の強化等

遅くとも2024年秋ごろまでに、会社の自主的な是正の促進や違反行為に対する抑止力の強化等を目的とした、「不当景品類及び不当表示防止法」(以下「景品表示法」)の改正法が施行される予定です。主な改正点は次の通りです。

  1. 確約手続の導入
  2. 課徴金制度の見直し
  3. 直罰規定の新設
  4. 適格消費者団体による開示要請規定の導入

景品表示法は、商品・サービスの品質・内容・価格等を実際よりも良く見せる(不当表示)、過大な景品を提供するなどして、消費者を惑わすのを防ぐための法律です。違反した会社は、行政指導や措置命令、課徴金納付命令等の対象になります。とはいえ、悪気なく不当表示等をしてしまい、自主的に是正しようとする会社にまで行政処分を課すのは酷です。そこで、

自主的に不当表示等の是正を進める会社に対しては、ある程度寛大な対応をしつつ、一方で悪質な会社に対しては、より重い処分を課すことで消費者を保護していく

というのが、今回の改正法の趣旨です。

「1.確約手続の導入」は、

不当表示等の疑いがある会社が「是正措置計画」を申請し、内閣総理大臣から認定を受けたときは、措置命令、課徴金納付命令の適用を受けないようにする

というものです。是正措置計画は、不当表示等を疑われるきっかけとなった行為とその影響を是正するための措置に関する計画です。

「2. 課徴金制度の見直し」は、

  • 適切な売上額を報告できない会社について、行政庁が売上額を推計することで、速やかに課徴金を納付させる規定
  • 一定期間内に繰り返し違反する会社の課徴金を、本来の1.5倍に増額する規定

を新設するというもので、これにより、会社の違反行為に対する抑止力が強化されます。

「3.直罰規定の新設」も、会社の違反行為に対する抑止力を強化する改正です。現行法では、悪質な不当表示等を行った会社に対しては、行政処分を経てから、刑事罰を科せるようになっていますが、改正法では、

行政処分を経ずに直罰(100万円以下の罰金)を科すことができる

ようになります。

「4.適格消費者団体による開示要請規定の導入」は、適格消費者団体(消費者保護のための、違反行為の差止請求権を持っている団体)が、一定の場合に会社に対し、表示の裏付けとなる根拠資料の開示を求められるようにするものです。

3)デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化

2023年6月7日に「不正競争防止法等の一部を改正する法律」(以下「知財一括法」)が成立し、2024年4月1日までに不正競争防止法、商標法、意匠法、特許法、実用新案法、工業所有権特例法等の改正法が順次施行されます。複数の改正の中で特に重要なのが「デジタル化に伴う事業活動の多様化を踏まえたブランド・デザイン等の保護強化」で、ポイントは次の通りです。

  1. 登録可能な商標の拡充
  2. 意匠登録手続の要件緩和
  3. デジタル空間における模倣行為の防止
  4. 営業秘密・限定提供データの保護の強化

デジタル技術の活用により、特にスタートアップや中小企業の事業活動が多様化していますが、現行法では商標登録のハードルが高かったり、法律で十分に保護されないデータがあったりして、事業活動の妨げになる恐れがあります。そこで、

商標登録やデータ保護の問題をクリアして、スタートアップや中小企業の新事業展開を後押ししていく

というのが、知財一括法の趣旨です。

「1.登録可能な商標の拡充」は、類似する複数の商標の取り扱いを定めたものです。現行法では、他人が既に登録している商標と類似するものは原則登録できませんが、知財一括法では、

先行する商標権者が同意して、出所混同の恐れがなければ、併存して登録できる

ようになります。また、一定の場合には、他人の氏名を含む商標も、当人の承諾なく登録ができるようになります。

「2.意匠登録手続の要件緩和」は、創作者等が出願前にデザインを複数公開した場合の意匠登録のルールを定めたものです。通常、出願前にデザインが公開されると、新規性(新しく、まだ世に知られていないこと)が失われ、意匠登録が受けられなくなりますが、所定の証明書を提出すると意匠登録が受けられるようになります。現行法では、複数のデザイン全てについて証明書の提出が必要ですが、知財一括法では、

最初のデザインについての証明書を提出すれば、例外規定の適用を受けられる

ようになります。

「3.デジタル空間における模倣行為の防止」は、メタバース等のデジタル空間における模倣行為を規制するものです。

他人の商品形態を模倣した商品を提供する行為について、デジタル空間上であっても不正競争行為の対象とし、差止請求権等を行使できる

ようになります。

「4.営業秘密・限定提供データの保護の強化」は、他社に共有するビッグデータ(地図データ、消費動向データ等)の保護対象が拡充されるというものです。

データを秘密管理している場合も含め限定提供データとして保護し、侵害行為の差止請求権等を行使できる

ようになります。

4 今後の対応について

2024年度の各種法改正は、いずれも主に中小企業にとって、大きな影響があります。

最近は、フリーランスに業務を発注する中小企業が増えてきましたが、そうした会社は、フリーランス保護新法の内容を正しく理解し、規制に沿った対応をする必要があります。

一般消費者向けの商品やサービスを販売・提供する会社は、常に景品表示法を意識しなければなりません。直罰規定の新設や課徴金制度の見直し等の違反者に対する制裁も強化されていますので、意図せずに不当表示等を行ってしまった場合には確約手続を利用する等、早期に是正できる社内体制を構築しておくのもよいでしょう。

ビジネスを規制する法改正もあれば、一方で知財一括法のように、ビジネスを後押しする法改正もあります。自社に関係するものについては、タイムリーに情報を収集する必要があるでしょう。

以上(2024年3月作成)
(執筆 三浦法律事務所 弁護士 磯田翔)

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画像:Artur Szczybylo-shutterstock

税理士が注目する2024年度の税務3大ニュース

書いてあること

  • 主な読者:2024年度の注目すべき税務分野の改正を知りたい経営者、税務担当者
  • 課題:税務分野は改正が多いため、注目すべき話題に絞って把握したい
  • 解決策:「賃上げ促進税制の拡充」「交際費(社外飲食費)の金額基準引き上げ」「事業承継税制の特例承継計画等の提出期限を2年延長」に注目する

1 2023年度・2024年度の3大ニュース

2023年度は、消費税のインボイス制度の導入に伴う小規模事業者の急激な税負担の増加を軽減させる措置が取られた他、中小企業の積極的な研究開発を促進する「中小企業技術基盤強化税制」の適用期限の延長、「中小企業経営強化税制」の対象設備の一部見直しが行われるとともに、適用期限が2年延長されました。

2024年度は、「賃上げ促進税制」を適用するにあたり、子育て支援・女性活躍支援をした企業に対しては控除率が加算され、最大控除率が従来の40%から45%まで拡充されるとともに、赤字決算の中小企業に対する救済・賃上げの動機づけとして、5年間の「繰越控除制度」が導入されます。また、交際費の範囲から除外される社外飲食費の金額基準が引き上げられます。その他には、中小企業を中心とした事業承継を円滑に実行させることを趣旨とした「事業承継税制」につき、特例承継計画・個人事業承継計画の提出期限が2年延長されます。

2023年度と2024年度の税務3大ニュースは次の通りです。

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2 2023年度の総括

2023年度は、消費税の仕入税額控除の方式としてインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入され、影響範囲の大きさから、大きな関心事になりました。このインボイス制度の導入対応として、各社においては請求書のひな形変更などに追われましたが、国税当局における事前の周知などもあり、おおむね順調にスタートしたといえそうです。ただし、今後は実務上の不明点・疑問点なども出てくると考えられるため、国税当局側から示されるQ&Aなどには注視するようにしましょう。

3 2024年度の主なニュース

1)賃上げ促進税制の拡充(中小企業向け)

前年比で給与等を増加させた場合に、法人税から一定の税額控除が受けられる「賃上げ促進税制」について、控除率の上乗せ措置が見直され、税額控除率が最大40%から最大45%まで拡大されることになりました。

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新設された上乗せ措置の要件の1つとなる「くるみん・プラチナくるみん」とは、子育てサポート企業として厚生労働大臣の認定を受けた会社に与えられるものです。また、「えるぼし・プラチナえるぼし」とは、女性活躍への取り組み状況が優れているとして、厚生労働大臣の認定を受けた会社に与えられるものです。具体的な説明は省略しますが、子育て支援・女性活躍支援をした企業に対しては、税務上のインセンティブ(控除率の上乗せ)が与えられることになります。

なお、賃上げ促進税制は、法人税を直接減額させる「税額控除」のため、赤字で法人税が生じない会社では、これまでは要件を満たしてもメリットを受けることができませんでした。今回の税制改正で、このような会社が制度を活用できるよう新たに「繰越税額控除」制度が導入されます。

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これにより、赤字であっても翌事業年度以降にメリットを受けられる可能性があるため、控除額に必要な資料などを整理しておくようにしましょう。

2)交際費(社外飲食費)の金額基準引き上げ

交際費は限度額を超えると損金(税務上の費用)に算入できませんが、社外飲食費で1人あたりの金額が一定基準以下であれば交際費とせず、会議費などとして損金に算入できます。この一定基準は今まで5,000円/1人でしたが、これが2024年4月1日以降の支払いから10,000円/1人に引き上げられます。

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なお、金額基準以下で会議費として処理できるのは、得意先その他の社外の人に対する接待飲食などに関連するものに限られ、役員や従業員のみの社内飲食費(全従業員参加の懇親会のような福利厚生費となるものは除く)は対象とならず、金額に関わらず交際費となるので注意しましょう。

3)事業承継税制の特例承継計画等の提出期限を2年延長

事業承継税制とは、特例承継計画などを提出した場合、事業承継時の贈与税・相続税の納税が猶予・免除される制度です。この特例承継計画等については、2024年3月末をもってその提出期限を迎える予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響の長期化などによって経営者の事業承継が遅れているため、この期限が2026年3月末まで延長されます。

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なお、「提出期限」は延長されるものの、「適用期限」は従来のままで延長されない見込みなので注意しましょう。

4 今後の対応について

2024年度においても、今回ご紹介した制度の他、中小企業の中堅企業への成長を後押しする税制など、各趣旨のもとで多くの税制改正が予定されています。税法上の優遇措置は、適用することによって大きな効果をもたらす一方、適用するための要件が厳格に定められているため、適用する上での理解を誤っていたり、必要な書類をそろえていなかったりすることで、税務調査で指摘され、思わぬ税負担を強いられることもあります。そのため、特に改正された規定については早めに準備を進めるとともに、適用する上での判断その他について迷いがある場合には、税理士などの専門家に相談し、適切に手続きを進めることが重要です。

以上(2024年3月作成)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 森浩之)

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画像:Artur Szczybylo-shutterstock

社労士が注目する2024年度の労務3大ニュース

書いてあること

  • 主な読者:2024年度の注目すべき労務分野の改正を知りたい経営者、労務担当者
  • 課題:労務分野は改正が多いため、注目すべき話題を絞って把握したい
  • 解決策:「労働条件の明示ルール改正」「時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)」「社会保険の適用拡大」に注目する

1 2023年度・2024年度の3大ニュース

2023年度は、中小企業においても「月60時間超の時間外労働に対する50%以上の割増賃金の支払い」が義務付けられるなど、重要な法改正がありました。物価上昇の影響などを受け、最低賃金も過去最高に引き上げられ、人件費にも大きな影響があったのではないでしょうか。

2024年4月からは、労働契約の締結・更新時の「労働条件の明示ルール」に変更がある他、これまで適用が猶予されていた建設業や自動車運転業務について「時間外労働の上限規制」が適用されるようになります。また、10月には厚生年金保険の被保険者数が50人超の会社を対象とする、「社会保険の適用拡大」が控えています。

2023年度・2024年度の労務3大ニュースは次の通りです。

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2 2023年度の総括

2023年4月1日より、中小企業においても、月60時間超の時間外労働に対し、50%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられました。2010年に大企業に50%以上の割増賃金が義務付けられた後も、中小企業については適用が猶予されていた(25%以上の割増賃金を支払えばよかった)のですが、その10年以上続いた猶予措置が終了しました。

同じく2023年4月1日より、賃金のデジタル払いが認められました。労使協定を締結し、さらにデジタル払いを希望する従業員から個別の同意を得ることで、「〇〇ペイ」などの電子通貨での賃金の支払いが可能になっています。デジタル払いの対象となるのは、第二種資金移動業者が取り扱う口座で、金融庁によると、2023年12月31日時点で84社の業者が登録されています。

また、2023年3月期決算より、有価証券報告書の提出義務がある上場企業等については、人材育成や社内環境整備方針等の人的資本に関する情報を、有価証券報告書で公表することが義務付けられました。いまだ有価証券報告書への記載ルールが設けられていないため、開示情報について、課題が残る状況となっています。

3 2024年度の主なニュース

1)労働条件の明示ルール改正

2024年4月1日より、

労働契約の締結・更新時に、労働条件として明示する事項が追加

されます(改正労働基準法施行規則による)。内容は図表2の通りで、これらは全て労働条件通知書などの書面で明示しなければなりません。労働条件通知書のひな型のアップデート、また有期契約の従業員については通算契約期間の確認や無期転換後の労働条件の検討などを、しっかりやっておきましょう。

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1.就業場所・業務の変更の範囲

労働契約の締結時と有期労働契約の更新時に、雇入れ直後の就業場所・業務内容だけでなく、

労働契約の期間中における「変更の範囲」も明示

することが義務付けられます。雇用形態によって「変更の範囲」が変わるケースもあると思いますので、厚生労働省ウェブサイトに掲載されているパンフレットの記載例をもとに、内容を検討しておくようにしましょう。

■厚生労働省「令和6年4月から労働条件明示のルールが改正されます」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_32105.html

2.更新上限の有無と内容

有期労働契約の締結時・更新時に、

「契約期間は通算〇年まで」「契約更新は〇回まで」など、更新上限の有無と内容を明示

することが義務付けられます。明示する際は、現在の契約が何回目(何年目)に当たるのかを併せて従業員に伝えると、トラブル防止につながります。なお、新たに更新上限を設けたり、現在の更新上限を短縮したりする場合、事前にその理由を従業員に説明する必要があります。

3.無期転換申込機会、無期転換後の労働条件

「無期転換」とは、有期労働契約が通算5年を超えて更新された場合、有期契約の従業員が会社に申し込むことで、期間の定めがない無期労働契約に転換されるルールのことです。改正後は、この無期転換を申し込む権利(無期転換申込権)が発生する契約更新のタイミングごとに、

「無期転換申込機会(無期転換を申し込める旨)」「無期転換後の労働条件」を明示

することが義務付けられます。無期転換後の労働条件は、就業規則や個別の労働契約で別段の定めをしなければ、無期転換前と同じになります。労働条件を変更する場合、明確に定めをする他、業務内容や責任を考慮して、他の従業員とバランスが取れた待遇にする必要があります。労働条件の決定に当たって考慮した事項も、可能な範囲で説明できるようにしておきましょう。

2)時間外労働の上限規制(いわゆる2024年問題)

2024年4月1日より、

建設業、自動車運転業務、医師、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)にも「時間外労働の上限規制」が適用される

ようになります(改正労働基準法による)。時間外労働の上限規制は、36協定に定められる時間数に上限を設けるというルールで、多くの会社は2019年4月(中小企業は2020年4月)から適用されています。建設業や自動車運転業務については、業務の特性や取引慣行の問題などから適用が猶予されていましたが、それが終了し、図表3の上限規制が適用されるようになります。

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「自動車運転業務」については、上限規制の他、拘束時間や勤務間インターバルについて定めた改善基準告示の改正も行われます。また、「医師」については、医療機関の区分に応じて規制内容が異なり、さらに区分に応じた計画作成や申請手続きを求められる場合もあります。

  • クライアント等との適正な納期の取り決め、スケジュールの緩和
  • 業界内の慣行の見直し、待機時間や再配達業務などの削減
  • 人材確保、後継人材の育成
  • IT機器・アプリケーションなどを活用した業務効率化
  • 上記により増加する負担費用を、取引価格等に転嫁していく取り組み

など、さまざまな角度から長時間労働の改善を検討し、上限規制に対応していきましょう。

3)社会保険の適用拡大

2024年10月1日より、

社会保険(健康保険と厚生年金保険)の適用対象となるパート等の範囲が拡大

されます(改正健康保険法、改正厚生年金保険法による)。ここでの「パート等」とは、

週の所定労働時間または月の所定労働日数が、正従業員の4分の3未満の短時間労働者

のことです。現行の制度では、「厚生年金保険の被保険者数が常時100人超の会社に雇用されていること」など、一定の要件を満たしたパート等が社会保険の被保険者になりますが、法改正後はこの被保険者要件が、図表4のように変更されます。

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注目すべき要件は、「1.厚生年金保険の被保険者数」で、

2024年10月1日より「常時100人超」→「常時50人超」への引き下げ

が行われ、より規模の小さな会社でもパート等が被保険者になるケースが出てきます。事前に

  • 現状、被保険者となっていないパート等の労働条件の確認
  • 2024年10月1日より社会保険の被保険者となるパート等に対し、配偶者等の扶養から外れる旨、社会保険加入のメリットやそれに伴う働き方の変化などについて説明
  • 2024年10月1日より社会保険の被保険者となるパート等の資格取得届の準備

などを行い、社会保険の適用拡大に備えましょう。

4 今後の対応について

2024年度、全ての会社で実務対応が必要になる法改正は、「労働条件の明示ルール改正」です。テレワークや時差出勤など、働き方が多様化する中で労働条件に関するトラブルが発生しやすくなっていますが、今回の法改正がさらに拍車をかける可能性があります。前述した通り、労働条件通知書のひな型のアップデートなどを欠かさないようにしましょう。

また、中小企業への影響が特に大きいのは、「社会保険の適用拡大」です。社会保険料は労使折半なので、対象となるパート等が多ければ、その分会社の保険料負担も増えます。配偶者等の扶養から外れない働き方を希望するパート等もいるでしょうから、場合によってはそうしたパート等が社会保険に加入しないで済むよう、人員確保に取り組む必要も出てくるでしょう。

今後の法改正の動向を把握した上で、人員確保や人件費の検討など、早めに対応を進めるようにしましょう。

以上(2024年3月作成)
(監修 社会保険労務士法人AKJパートナーズ)

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なぜ人は「肩こり」になるのか? 職場でできる解消法と併せて紹介

書いてあること

  • 主な読者:肩こりに悩むビジネスパーソン
  • 課題:そもそも、なぜ肩こりになるのか? どうすれば改善できるのか?
  • 解決策:主な原因は「筋肉の過度な緊張」。机や椅子の高さなどオフィス環境の改善を図ったり、こりをほぐすマッサージなどを行ったりすることで改善できる

1 軽く見てはいけない「肩こり」

ずしりと何かが乗っかるような不快感に、鈍い痛み……。「肩こり」はいつの時代も、多くのビジネスパーソンを悩ませます。有訴者率の上位5症状(2022年)を見ても、男女ともに、肩こりは「腰痛」に次いで第2位にランクインしています(厚生労働省「令和4年国民生活基礎調査」)。

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「肩こりや腰痛がもたらす経済損失は約3兆円」と試算した研究結果もあるほどで、会社の生産性を考える上でも、実は肩こりはとても重要な問題です。

「肩こりはあって当たり前、一生付き合うもの」と考えている人が多いでしょうが、

実は「オフィス環境」「マッサージやストレッチ」「生活習慣」を少し見直すだけで、肩こりを和らげられる可能性

があります。産業医監修のもと、肩こり解消のポイントをまとめましたので、気になる人はぜひこのコンテンツをご確認ください。

2 なぜ、肩こりになるの?

肩こりの主な原因は、「筋肉の過度な緊張」です。

人間は、首の骨を支柱として重い頭や腕を支えていて、その周りの首や肩の筋肉には常に大きな負担がかかっています。これらの筋肉が過度に緊張すると、血行不良が生じて酸素や栄養分が末端まで行き届かなくなり、筋肉は酸欠状態になります。

そして、酸欠状態でエネルギーを発生させると、乳酸などの老廃物が生み出されます。

血行が悪いと、老廃物は十分に排せつされず筋肉内に蓄積され、それが神経を刺激することで痛みや不快感が発生します。これが「肩こり」の正体

です。筋肉が過度に緊張する理由は、主に3つあります。

1)姿勢

人間の背骨は横から見ると緩やかなS字形に湾曲していて、全身のバランスを取ることにより、重心が偏らないようになっています。ですが、不自然な姿勢を取り続けると、全身のバランスが崩れてしまい、一部の筋肉が過度に緊張して、肩こりが起こります。うつぶせや腕枕などの不自然な姿勢で寝ている場合なども、肩こりになりやすいです。

2)運動不足

運動不足が続くと、筋肉の柔軟性が低下して次第に硬くなり、血管が圧迫されて血行が悪くなります。全身の筋力が弱ることにより、首や肩の筋肉に大きな負担がかかり、肩こりが起こります。

3)ストレス

ストレスがたまると、自律神経のうちの交感神経が刺激され、筋肉が緊張して血管が収縮し、肩こりが起こります。ストレスの原因は、多忙や人間関係、性格などさまざまですが、急激な環境の変化(「部署異動や転勤」など)があったときなどは、特に注意が必要です。

以上が、筋肉が過度に緊張する理由ですが、この他に、

内臓疾患(狭心症などの心疾患、肝炎・胆のう炎など)の症状で、肩こりが起こるケース

もあります。ですから、「頭痛や目まいなどを伴う」「肩以外の部分にも痛みがある」といった場合は、できるだけ早く医師に相談することをお勧めします。

3 オフィス環境を整えよう

デスクワークで長時間同じ姿勢を取ったり、パソコンを使用したりすることが多い職種では、特に肩こりに悩む人が多くいます。ここでは、肩こり対策としてのオフィス環境の改善法を紹介します。

1)机や椅子

机や椅子の高さが自分に合っていないと、首や肩、腕に力が入りすぎて肩こりが起こりやすくなるため、デスクワークでは机や椅子の高さの調節が重要になります。

理想的な椅子の高さは、座ったときに「膝と腰の角度が90度」になるのがよいといわれます。また、机の高さは椅子に座った際に「肘と同じくらい」が理想です。

2)デスクワークの姿勢

パソコンで作業をしていると、気付かないうちにディスプレーに近づいてしまうことがありますが、そのような場合、下を向く時間が長くなり、首の筋肉を過度に使ってしまいます。また、考え事をしているときなどは、足を組んだり、頬杖をついたりしがちですが、こうした姿勢も、首や背中の一部の筋肉に大きな負担がかかります。

デスクワークの姿勢は、

  • ディスプレーから40センチメートル以上目を離す
  • 視線を水平よりも少し下くらいに保つ

のが理想です。背筋をしっかりと伸ばして座り、体重は左右均等に配分するよう意識しましょう。また、机の周りが暗いと前かがみの姿勢になりやすく、これも肩こりの原因になります。ですから、スタンドライトなどを利用して十分な明るさを確保するようにしましょう。

なお、長時間パソコンに向かっていると、疲れ目による肩こりが起こりやすくなります。適宜休憩を取り、遠くの景色を眺めたり目薬を差したりして、目を休めることを心掛けましょう。

4 その場でできる簡単なマッサージやストレッチ

こり固まった筋肉をほぐすには、マッサージやストレッチを行うとよいです。首筋や肩の筋肉をもむ、軽くたたく、さらには肩こりに効くツボを指圧すると効果的です。ただ、その日の体調などによりマッサージやストレッチが逆効果になる恐れもあるので、自己判断はせず、医師・専門家の指示に従い、自分に合ったものを取り入れましょう。

1)マッサージ

人間の体には、内臓の働きや血行に大きく関係するツボ(経絡)があり、これらのツボを指圧することによって血行が良くなります。肩こりに効くツボは次の通りです。

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  • 風池(ふうち):後頭部、髪の毛の生え際のくぼんだ部分
  • 天柱(てんちゅう):後頭部、髪の毛の生え際にある太い2本の筋肉の外側の部分
  • 肩井(けんせい):肩のほぼ中央。肩先の中心点と首の付け根を結んだ真ん中部分
  • 肩髃(けんぐう):肩の前側にある腕との境目のくぼんだ部分
  • 曲垣(きょくえん):肩甲骨の内端のすぐ上にあるくぼんだ部分
  • 膏肓(こうこう):背骨の中心部分から指4本分外側に行った部分

これらのツボを、親指・人さし指・中指などで、体の中心に向かって押し込むように、ゆっくりと指圧します。その際、一定のリズムで繰り返し指圧して刺激を与えるとよいでしょう。なお、首・肩周り以外にも、次のような肩こりに効くとされるツボがあります。

  • 曲池(きょくち):肘を曲げた際にできるしわの外側の部分
  • 手三里(てさんり):肘を曲げるとできるしわから、指3本分手首寄りの親指側の部分
  • 外関(がいかん):手首の中央から指3本分肘寄りの部分
  • 合谷(ごうこく):手の甲。親指と人さし指の付け根の骨に近い部分
  • 頸頂点(けいちょうてん):人さし指と中指の付け根の間の部分

2)ストレッチ

筋肉をゆっくりと引っ張ったり伸ばしたりするストレッチも、肩こり解消に有効です。 ストレッチの基本は、首と肩の筋肉をほぐすことです。

  • 両手の指を組んで大きく背伸びをする
  • 手を伸ばして後ろで交差させて、ゆっくりと前屈する
  • 30秒ほど時間をかけて、首を大きくゆっくりと回す

などをしてみましょう。

なお、ストレッチを行う際は、深く息を吸い込んで、吐き出すようにすることで、さらに血行が良くなります。腹式呼吸(おなかを膨らませながら息を吸い、おなかをへこませながら息を吐く呼吸法)を取り入れると、より効果的です。

5 生活習慣(食生活、歩き方や立ち方、服装など)に注目

肩こりの症状は、日ごろの生活習慣でも、ある程度改善されます。日常生活の中での見直しのポイントを紹介します。

1)食生活

肩こりの主な原因は筋肉の過度な緊張による疲労や血行不良なので、「筋肉の疲労を解消する」「血行を良くする」などの効果がある食べ物を取るのも効果的です。肩こりに効くとされる主な栄養素は次の通りです。

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これらの栄養素が含まれる食べ物をバランスよく取ることが重要です。なお、表中の栄養素は食事の他、サプリメントで補ってもよいでしょう。

2)歩き方や立ち方

歩くときは背筋を伸ばして顎を引き、腕を歩く速度に合わせて軽く振るようにすると、正しい姿勢を保つことができます。通勤途中の電車などでも、「かばんなどを持つ手を時々左右で替える」「片側だけに体重をかけない」など、体のバランスを取ることを意識しましょう。

寝るときも、枕のサイズや柔らかさなど、自分に合ったものを選ぶなどして、バランスの良い姿勢で眠ることが大切です。

3)服装など

重い洋服は肩こりにつながりやすくなります。特に、冬場は厚着をすることが多いため、コートなどの防寒具はなるべく軽めのものを選びましょう。

また、靴選びも肩こり対策として重要です。足に合わない靴やヒールの高い靴を履いていると、歩き方に無理が生じて全身のバランスが崩れてしまい、一部の筋肉に負担をかけることになります。靴を買う際には、店で専門家の意見を聞きながら、自分に合ったものを選ぶとよいでしょう。

4)運動

運動不足は筋肉の硬化による血行不良を招きます。「休憩時間に簡単な体操をする」「エレベーターやエスカレーターを使わずに階段を利用する」「休日にウオーキングや水泳など、全身を動かすスポーツをする」など、日常から意識して運動を行うことが重要です。

5)ストレス対策

ストレスは、仕事や日ごろの生活の中で少しずつ蓄積され、やがて大きくなると肩こりを引き起こします。「小まめにストレッチをする」「一日のうちでゆっくりできる時間を持つ」「趣味に没頭する」などで、ストレス解消を心掛けましょう。

6)その他

肩こりは血行不良によって起こるため、こっている部分を温めて血行を良くすることが解消につながります。例えば、「入浴時に温かいシャワーを当てて刺激する」「乾いたタオルをのせ、その上から温めた蒸しタオルを当てる」「ドライヤーの温風やカイロを当てる」などの方法が効果的です。

以上(2024年3月更新)
(監修 株式会社フェアワーク 吉田健一)

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忙しい経営者のダイエットは無理をせず、“コツコツ”がポイント

書いてあること

  • 主な読者:健康管理の一環としてダイエットを考えている経営者
  • 課題:忙しくて運動をする時間が取れないし、会食が多くてダイエットが難しい
  • 解決策:隙間時間を活用した運動や、緩やかな糖質制限ダイエットなどに取り組む

1 あなたの健康管理は万全ですか?

「体が資本。ビジネスをする上で、健康が第一」です。

言われなくても分かっていることですが、経営者は「多忙でなかなか運動をする時間が取れない」「会食に行く頻度が高い」といったケースが多く、ダイエットがしにくい環境に置かれています。

とはいえ、経営のかじ取りをする経営者の身に、何か起きてからでは手遅れです。最近、体重が気になるという人は、できるだけ早い時期からダイエットに努め、健康な体をつくっていくことが大切です。この記事では、忙しい経営者がダイエットを成功させるポイントと、具体的なダイエット方法を紹介します。

2 ダイエットを成功させるポイント

1)無理をせず、“コツコツ型”で進める

ダイエットの目標は、健康な体を手に入れることであり、無理をして体を壊してしまっては本末転倒です。短期間で大きな成果を上げようとするのではなく、時間をかけて少しずつ減量にチャレンジしましょう。

大幅な減量を目指す場合も、いきなり過大な目標を立てるのではなく、まずは無理のない範囲で設定してください。それを達成できたら、改めて次の目標を設定するといったように、“コツコツ型”のダイエットがお勧めです。

なお、健康面で不安がある場合は、必ず医師に相談してからダイエットに取り組みましょう。

2)「隙間時間」をうまく使う

ダイエットに取り組む際は、毎日同じ時間に食事や運動をするなど、生活リズムを整えることが大切です。また、朝は体内の血糖値が低い関係で比較的脂肪が燃焼しやすいため、午前中の運動はダイエットに効果的といわれています。

ただ、午前中はメールの確認や打ち合わせ、業務指示などで特に忙しい経営者も多いでしょう。そうした場合は、無理に午前中に運動しようとせず、業務の合間や帰宅後のプライベートな時間など、自分の生活時間に合わせて、小まめにダイエットに取り組むとよいでしょう。

3)ダイエット(運動)仲間と一緒に取り組む

1人でダイエットを続けるのはなかなか大変ですが、仲間がいると、モチベーションが上がって取り組みやすくなることもあります。例えば、週に1度ランニングをする仲間などがいれば、「自分も頑張ろう」と張り合いが生まれます。

4)自分の現状をしっかりと把握する

ダイエットに取り組む場合、食事の摂取カロリー量や運動量の参考とするために、BMIなど自分の体に関するデータを把握しましょう。

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また、ダイエット中は毎食の摂取カロリーを記録しておきましょう。そうすると、例えば「1日に必要なエネルギーは2200キロカロリーなのに、今日の摂取カロリーは2800キロカロリーだった。600キロカロリーオーバーだから、明日からはもう少し食事量を調整しよう」といった具合に、自分の状況に合わせてダイエットの方針を決められます。

毎食の摂取カロリーを記録するのが難しい場合は、手帳にその日に食べたものをメモしておき、後でまとめて計算すればよいでしょう。

3 日々の食生活を見直す

1)糖質制限ダイエットを試してみる

糖質制限ダイエットは、パンや甘いものなどの糖質の摂取量を抑えるダイエット法です。制限する糖質量によって異なりますが、外食でも対応しやすく、前述したような細かいカロリー計算をしなくても、ある程度成果が出やすく、ダイエットの定番としてよく知られています。

手軽に取り組む場合は、朝食のパンを低糖質の商品に置き換える、朝食と昼食は通常通り食べて夕食のみおかずだけでご飯を抜くなど、糖質の高いメニューをあらかじめ把握しておき、無理のない範囲で糖質の摂取を控えるとよいでしょう。

2)かむ回数を増やして食事の量をコントロールする

かむ回数が増えると、満腹中枢や摂食中枢が刺激され、脳が満腹だと感じるため、食事の量を減らしても満腹感を得やすくなります。また、がんや虫歯・歯周病の予防、全身の体力向上にも効果があるといわれています。

日本歯科衛生士会「よく噛んで食べるための7カ条」を意識するとよいでしょう。

  1. 一口30回、噛んで食べる
  2. 右で10回、左で10回、両方で10回、噛んで食べる
  3. 飲み込もうと思ったら、あと10回噛む
  4. 食べ物の形がなくなるまで、よく噛む
  5. 先の食べ物を飲み込んだら、次のものを口に入れる
  6. 口に食べ物が入っている間は、水分を摂らない
  7. 一口食べたら、箸を置く

3)低カロリーで満腹感を得る

カロリーを抑えたものを多く食べて満腹感を得る方法もあります。例えば、白米に刻んだしらたき(こんにゃく)を混ぜて、かさを増やすなどの方法もお勧めです。

また、野菜サラダを多く食べた後に肉などのメイン料理に手を付けるなど、食べる順番も工夫しましょう。一般的に、最初に野菜をよくかんで食べると満腹感が高まり、炭水化物などの過剰摂取を防げるといわれています。さらに、野菜に入っている食物繊維は、血糖値の上昇を抑える効果があり、糖尿病の予防にもつながります。

4)夜遅くに食べない

ダイエットをする場合、夜遅くの食事は避けましょう。なぜなら、エネルギーが消費されにくく、余ったエネルギーが体脂肪として蓄積され、肥満の原因になります。また、翌朝は食欲がなくなり朝食が食べられなくなることで生活リズムにも悪影響が出ます。

ただし、忙しい経営者はどうしても食事が夜遅くになってしまうこともあるでしょう。そのような場合、できるだけ低脂肪で消化の良いものを食べるようにしましょう。野菜などを多く取り、お肉や揚げ物などは少なめにするのがお勧めです。

4 運動によって代謝しやすい体をつくる

1)運動をする際の参考

運動をして消費カロリーを増やすことは、ダイエットの基本です。運動で消費されるカロリーはそれほど多くないものの、筋肉がついて基礎代謝が上がれば、太りにくい体質に近づきます。

継続的に取り組む運動の例は次の通りです。なお、性別や体重を選択して、簡単に運動の消費カロリーを調べることができるウェブサイトやスマートフォン用のアプリなどがあるため、運動をする際の消費カロリーの参考にしてみるとよいでしょう。

2)ウオーキング(散歩)に取り組む

昼食後のウオーキングを日課にするなど、小まめに歩くようにしましょう。歩くことは運動の基本であり、生活に手軽に取り入れられます。また、ウオーキングは、外の風に当たり体を動かすことで、気分をリフレッシュできます。行き詰まったときなどに思考を整える効果も期待できるでしょう。

3)ランニングやマラソンに取り組む

ランニングやマラソンに取り組むことも検討しましょう。ランニングやマラソンは体力をつけられるため、ハードに働きたい経営者にはお勧めです。

ただし、いきなりランニングやマラソンに取り組むのは、普段運動をしていない人にはハードルが高いかもしれません。そのため、例えば、東京マラソンへの参加を最終目標として、最初は短い距離から始めて少しずつ走行距離を延ばしていくなど、楽しみを見つけながら取り組むことがポイントになります。

4)筋トレに取り組む

ダイエットには筋トレもお勧めです。筋トレで筋肉量を増やして基礎代謝を上げれば、カロリーを消費しやすい体をつくれます。

筋トレというと、ジムにある器具を使っての本格的なトレーニングを想像する人も多いかもしれませんが、筋トレは自宅でも可能です。

腕立て伏せや腹筋、スクワットなどの自重トレーニングでも十分に筋肉をつけられます。忙しくてジムに通う時間が取れない経営者は、自宅などでの自重トレーニングを検討してみてください。

5)プロの手を借りるのも手

忙しい経営者は、限られた時間で効率的に運動をして、成果を上げたいと思う人も多いのではないでしょうか。こうした場合、トレーナーの力を借りるのも1つの方法です。体への負担を軽減させながら、自分に合ったトレーニングメニューを提案してもらえます。

最近は、トレーナーがマンツーマンで指導をしてくれる「パーソナルトレーニング」も増えているので、ぜひ利用を検討してみてください。

以上(2024年3月更新)

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2024年10月からの「社会保険の適用拡大」。対象となる会社は? パート等への対応のポイントは?

2024年10月1日から、社会保険の被保険者になるパート等の範囲が広がります。気になるのは、

  • 会社が、対応すべきことは何か?
  • 社会保険料の負担はどのくらい増えるか?

といったことでしょう。そこでこの記事では、対象となる会社、対応すべきこと、社会保険料の負担などについて、分かりやすく説明していきます。

1 やるべきことを確認。「社会保険の適用拡大」の実務チェックリスト

2024年10月1日以降、社会保険(健康保険と厚生年金保険)の被保険者になるパート等の範囲が拡大されます。これを「社会保険の適用拡大」といいます。ここでいう「パート等」とは、

週の所定労働時間または月の所定労働日数が、正社員の4分の3未満の短時間労働者

のことです。

どのパート等が被保険者になるのかは一旦置いておいて、まずは御社が法改正の対象になるかを確認しましょう。パート等を社会保険に加入させる義務があるのは、

「特定適用事業所」といって、正社員など(正確には、厚生年金保険の被保険者)を一定数雇用する会社

です。現状、特定適用事業所に該当するのは正社員などが常時100人超の会社ですが、これが、

2024年10月1日から、正社員などが常時50人超の会社へと引き下げ

られます。

御社がこの条件に該当するなら、社会保険の適用拡大の対象になりますから、今のうちに次のチェックリストで、具体的な実務を確認してみましょう。もし、対応できていないことや分からないことがあれば、次章以降の実務のポイントをご覧ください。このチェックリストに沿って説明していきます。

(図表1)【「社会保険の適用拡大」の実務チェックリスト】

発生する実務
実務1 社会保険の被保険者要件を満たすパート等がいるかを確認する  
実務2 対象となるパート等に、社会保険料の天引きが発生する旨を説明する  
実務3 社会保険料の天引きと併せて、保険給付の変更についても説明する  
実務4 パート等が希望する場合、労働条件の見直しを検討する  
実務5 社会保険に加入するパート等については、適正に加入手続きを行う  
実務6 新しいパート等の採用に向けて、求人案内や労働条件通知書も見直す  

(出所:日本情報マート作成)

2 実務1:社会保険の被保険者要件を満たすパート等がいるかを確認する

まずは、御社に社会保険の被保険者要件を満たすパート等がいるかを確認しましょう。会社とパート等が図表2の1.から5.までの要件を全て満たす場合、パート等が被保険者になります。

(図表2)【パート等の被保険者要件】

対象 要件(注) 現行 2024年10月1日~
会社 1.厚生年金保険の被保険者数 常時100人超 常時50人超
パート等 2.週の所定労働時間 20時間以上
3.1カ月当たりの賃金 8万8000円以上
4.勤務期間の見込み 継続して2カ月を超えて使用される見込み
5.適用除外 学生ではないこと

(出所:日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用拡大のご案内」を基に作成)

(注)1.から5.までの要件を全て満たすと、パート等が被保険者になります。

例えば、次のような働き方をしているパート等は、週の所定労働時間が20時間以上、賃金が月額8万8000円以上になるので、あとは継続して2カ月を超えて使用される見込みがあれば、学生以外は社会保険に加入することになります。

  • 時給:1150円(参考:東京都の2023年10月以降の最低賃金は1113円)
  • 1日の所定労働時間:4時間
  • 1カ月の所定労働日数:20日(週5日勤務×4週)

ちなみに、この働き方をしているパート等の場合、健康保険の保険者が全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」、支部は東京支部とする)であれば、会社とパート等の社会保険料の負担は次のようになります。

(図表3)【会社とパート等の社会保険料の負担】

(単位:円)
●40歳未満の場合 ●40歳以上65歳未満の場合
会社 パート等 会社 パート等
健康保険料 4,391 4,391 健康保険料 5,095 5,095
厚生年金保険料 8,052 8,052 厚生年金保険料 8,052 8,052
合計 12,443 12,443 合計 13,147 13,147

(出所:協会けんぽ「令和6年度保険料額表(東京都)」を基に作成)

(注1)社会保険料は、「標準報酬月額×保険料率」で計算した額を、会社とパート等とが折半して負担します。標準報酬月額と保険料率は次の通りです。
・標準報酬月額:8万8000円
・健康保険料率:9.98%(40歳未満の場合)、11.58%(40歳以上65歳未満の場合)
・厚生年金保険料率:18.3%
(注2)試算の都合上、小数点以下は切り捨てて記載しています。

図表3のケースの場合、パート等が社会保険に加入することで、会社の負担は、

パート等1人当たり月額1万2443円(1万3147円)増、年額14万9316円(15万7764円)増

となります。

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3 実務2:対象となるパート等に、社会保険料の天引きが発生する旨を説明する

社会保険の適用拡大が施行されると、現状、配偶者などの家族(被保険者)の扶養に入っているパート等(被扶養者)が、被保険者になる可能性があります。その場合、パート等は、

家族の扶養から外れ、これまで負担義務のなかった社会保険料が賃金から天引きされる

ようになります。トラブルにならないよう、現状、家族の扶養に入っていて、なおかつ被保険者要件を満たすパート等には、施行前に社会保険料の天引きが発生する旨を説明しましょう。

なお、パート等の中には現状、家族の扶養に入っておらず、国民健康保険と国民年金に加入して自分で保険料を払っている人もいます。もちろん、こちらのパート等も社会保険料の天引きの対象です。ただ、国民健康保険料の計算方法が自治体によって異なる関係で一概には言えないものの、保険料の負担については、

社会保険料<国民健康保険料+国民年金保険料

と、社会保険への加入によって軽くなるケースが多いようです。ただし、国民健康保険料の計算方法は自治体によって異なり、賃金額などによっては負担が重くなることもあります。

4 実務3:社会保険料の天引きと併せて、保険給付の変更についても説明する

社会保険料の話ばかりすると、なんだかネガティブなイメージを抱くかもしれませんが、パート等が社会保険に加入するということは、今まで受けられなかった保険給付を受けられるようになることでもあります。

「社会保険の被保険者」「社会保険の被扶養者」「国民健康保険と国民年金の被保険者」が受けられる主な保険給付を比較すると、次のようになります。

(図表4)【パート等の状況に応じた主な保険給付の比較】

保険給付 社会保険の被保険者 社会保険の被扶養者 国民健康保険と国民年金の被保険者
療養の給付(治療などの現物給付。本人は費用負担3割)
傷病手当金(私傷病で休業する期間の生活保障)
入院時食事療養費(入院中の食費の補助)(注3)
入院時生活療養費(入院中の居住費などの補助)(注3)
保険外併用療養費(選定療養などの費用補助)(注3)
高額療養費(医療費が高額になった場合の費用補助)
出産手当金(出産で休業する期間の生活保障)
出産育児一時金(出産に伴って支給される一時金)
老齢厚生年金(原則65歳以上になると支給される年金)
老齢基礎年金(原則65歳以上になると支給される年金)
障害厚生年金(一定の障害状態になると支給される年金)
障害基礎年金(一定の障害状態になると支給される年金)
遺族厚生年金(本人が死亡した際、遺族に支給される年金)
遺族基礎年金(本人が死亡した際、遺族に支給される年金)

(出所:日本情報マート作成)

(注1)「健:健康保険または国民健康保険」「厚:厚生年金保険」「国 :国民年金」を意味します。
(注2)「○:保険給付を受けられる」「▲:自治体によっては保険給付を受けられない場合がある」「X:保険給付を受けられない」を意味します。
(注3)社会保険の被扶養者の場合、「入院時食事療養費」「入院時生活療養費」「保険外併用療養費」は、実際は「家族療養費」という名称で被扶養者を扶養する家族(被保険者)に支給されます。

赤字の部分がポイントです。パート等が社会保険の被保険者になると、

  • 私傷病や出産で休業する期間の生活保障が受給可能(傷病手当金、出産手当金)
  • 年金については、国民年金に加えて厚生年金保険の給付も受給可能(老齢厚生年金、障害厚生年金、遺族厚生年金)

になります。社会保険料の天引きの件と併せてパート等に伝えると親切です。

5 実務4:パート等が希望する場合、労働条件の見直しを検討する

パート等が被扶養者の場合、社会保険が適用されると聞いて「家族の扶養の範囲内で働きたいので、もう少し労働時間を短くしてもらえませんか?」と、会社に相談してくる可能性があります。この場合、

会社がパート等と合意して労働条件を変更した結果、パート等が被保険者要件を満たさなくなるのであれば、社会保険への加入は不要

になります。

一方で、「社会保険には加入しますが、社会保険料の天引きで賃金の手取りが少なくなると困るので、もっと労働時間を長くしてもらえませんか?」と、相談してくるパート等もいるかもしれません。こちらも会社とパート等で合意すれば労働条件を変更できます。ただし、パート等に配偶者がいる場合は注意が必要です。

労働時間を長くしてパート等の給与収入(賃金など)が増えると、パート等の配偶者が所得税の配偶者特別控除を受けられなくなるケースがある

からです。配偶者特別控除の控除額は満額38万円ですが、

  • パート等の給与収入が年額150万円を超えると、控除額は38万円から徐々に減額される
  • パート等の給与収入が年額201万6000円以上になると、控除額は0円になる

という仕組みになっています(扶養者である配偶者の年間給与収入が1195万円以下であることが前提)。ですから、労働条件の見直しについては慎重に検討しましょう。

6 実務5:社会保険に加入するパート等については、適正に加入手続きを行う

社会保険の適用拡大が施行される前に、パート等の労働条件を見直すのは問題ありませんが、施行後は被保険者要件を満たすパート等を全員、社会保険に加入させなければなりません。

2024年10月1日から社会保険の適用拡大の対象となる会社(特定適用事業所)は、正社員などが常時50人超の会社です。これらの会社に被保険者要件を満たすパート等がいる場合、

被保険者要件を満たすようになった日から5日以内(この場合、2024年10月6日まで)に、各パート等の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を所轄年金事務所に提出

しなければなりません。

なお、2024年10月1日から社会保険の適用拡大の対象となる会社には、所轄年金事務所から、「特定適用事業所該当事前のお知らせ」「特定適用事業所該当通知書」などの書類が送付されます。詳細については、日本年金機構ウェブサイトをご確認ください。

■日本年金機構「令和6年10月1日から特定適用事業所に該当する適用事業所や該当する可能性がある適用事業所に対して、あらかじめ日本年金機構から何らかのお知らせは送付されてきますか。」■
https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/tekiyoukakudai/tokuteitekiyou/oshirase.html

7 実務6:新しいパート等の採用に向けて、求人案内や労働条件通知書も見直す

社会保険の適用拡大が開始された以降も、新しいパート等を採用することがあると思います。求人案内や労働条件通知書についても忘れずに見直しておきましょう。

  • 求人案内:募集するパート等に社会保険が適用されるかどうかを、必ず明示しなければならない(職業安定法)。社会保険の被保険者要件を満たすのに、「社会保険の適用なし」などと記載している求人案内があれば、内容を修正する
  • 労働条件通知書:社会保険の適用について明示する義務まではない(労働基準法)。ただし、現状の書式に社会保険の適用に関する項目があれば、求人案内と同じように内容を修正する

なお、社会保険の適用について確認するだけでなく、その他の労働条件に問題がないかも、改めて検討してみましょう。例えば、

  • 現状、パート等の所定労働時間を週20時間に設定しているが、本当に週20時間も働く必要があるのか?
  • 現状、パート等1人につき担当業務を2つ設定しているが、担当業務を1つにする代わりにパート等を2人雇用することで、賃金や労働時間をコントロールできないか?

といった具合で考えてみます。ただし、賃金に変更を加える場合は、最低賃金や同一労働同一賃金などの問題に注意が必要です。

以上

(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

※上記内容は、本文中に特別な断りがない限り、2024年2月26日時点のものであり、将来変更される可能性があります。

※上記内容は、株式会社日本情報マートまたは執筆者が作成したものであり、りそな銀行の見解を示しているものではございません。上記内容に関するお問い合わせなどは、お手数ですが下記の電子メールアドレスあてにご連絡をお願いいたします。

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足元で増加中の残業時間。無駄な残業を削減するための3ステップ

書いてあること

  • 主な読者:社員の残業がなかなか減らなくて困っている経営者
  • 課題:コロナ禍で残業が減っていたが、足元では再び残業が増えてきている
  • 解決策:残業削減する社員を決め、理由を探り、目標を設定してやりきる

1 足元で増加中の残業時間

2023年5月のコロナ5類移行後はオフィス回帰が進み、働き方もコロナ禍前の状況に戻ってきました。良い面がある一方、足元で残業が増えていることをご存知ですか。残業(所定外労働時間)の推移を見ると、コロナ禍の影響で2019年から2020年にかけて減少していた残業が、2021年から2022年にかけて再び増加に転じていることが分かります。

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人材不足の問題もありますが、残業削減は変わらぬ経営の重要課題です。大切なのは、

現在の残業削減は、働き方改革やSDGsとも関係していますし、無理な定時退社命令がパワーハラスメントになる

ということです。会社は、これを踏まえて社員が健康で働きやすい環境を整えなければなりません。

これまで以上に重要になった残業削減を成功させるステップは次の3つですので、この記事で紹介します。

  1. 誰の残業を削減するかを決める:定量的な実績に基づいて決める
  2. 本当に残業するほど業務が多いのかを探る:ヒアリングして理由を聞く
  3. 目標を設定してやりきる:中間目標と最終目標を決めてフォローアップする

2 誰の残業を削減するかを決める

優先的に残業を削減すべき社員は、

  • 36協定の上限時間に抵触しそうな社員
  • 業務内容の割に残業が多い社員

です。

36協定の上限時間は、労働基準法の「時間外労働の上限規制」の範囲内で設定しなければなりません。時間外労働の上限規制とは、社員に時間外・休日労働を命じる際、会社が守らなければならないルールで、違反した場合、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。

2024年4月1日からは、時間外労働の上限規制の適用範囲が拡大され、「新技術・新商品等の研究開発業務」を除くほぼ全ての業種・業務が対象となっています。

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例えば、図表2の「通常」の会社に勤める社員の場合、図表3のような働き方をしていると、時間外労働の上限規制に抵触します。

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3 本当に残業するほど業務が多いのかを探る

優先的に残業を削減すべき社員を決めたら、その社員に残業する理由を聞いてみます。最初、多くの社員は「業務量が多いから」と答えるでしょうが、その背景には、

  • 非効率な進め方をしているが、自分で気付いていない
  • 実は残業代を当てにしている

といった問題があります。

この辺りを明らかにするために、事前に業務内容の詳細を報告してもらい、ある程度、会社側で当たりをつけた上で、

  • やらなくてよい業務はあるか?
  • アウトソーシングできないか?
  • やめられないが、改善できそうな業務はあるか?

と質問してみましょう。その際、対象となる社員を批判するのではなく、冷静に状況を分析・改善する姿勢を崩してはいけません。そうして場を和ませつつ、残業代を当てにしていそうな社員にはその背景を聞いてみます。

こうして質問を繰り返していくと、残業削減の方向性が見えてきます。

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4 目標を設定してやりきる

残業削減の方法が決まったら、目標設定をしましょう。例えば、

  • 現時点の状況(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間
  • 中間目標1(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間(○時間削減)
  • 中間目標2(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間(○時間削減)
  • 最終目標(○年○月○日):時間外・休日労働が月○時間(○時間削減)

といった具合に、中間目標、最終目標を設定します。中間目標を設定するのは、思ったより残業削減の効果が上がらない場合に、軌道修正を図りやすくするためです。

目標設定の後は、中間目標の達成期限ごとに残業削減の実績(何時間削減できたか)を確認し、中間目標に届いていない場合、社員にその理由をヒアリングします。考えられる理由としては次のようなものがあります。

  • 業務配分の見直しや各部署(部門)の配置の検討が十分ではなかった
  • 社員が真剣に取り組まなかった
  • 残業削減の方法が現実的でなかった
  • 中間目標の設定後に新しい業務が割り振られた

このサイクルを繰り返しても、残業削減が想定通りに進まなければ、社員個人のレベルでは、残業削減を進めるのが難しい可能性があります。その場合、

  • 事業の一部のアウトソーシング
  • 定時以降の取引が必要なクライアントとの取引縮小
  • 新たな人員の補充

など、会社レベルでの施策の実施を検討する必要も出てくるでしょう。

以上(2024年3月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 渡邉和也)

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画像:pixabay

【規程・文例集】「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」のひな型

書いてあること

  • 主な読者:「時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)」のひな型が欲しい経営者
  • 課題:具体的に何に注意して協定を定めるべきか分からない
  • 解決策:時間外労働・休日労働の時間数などに注意する。時間数が一定以上の場合、36協定に特別条項を設けた上で、健康確保措置を定める必要がある

1 2024年度は36協定のチェックが厳しくなる?

会社は本来、労働基準法(以下「労基法」)の法定労働時間(休憩時間を除き、原則1日8時間、1週40時間)を超えて社員を働かせることができません。これは、違反すると6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が課せられるという罰則付きのルールですが、

会社が社員の代表と「時間外労働・休日労働に関する協定(通称「36協定」)」を締結し、会社の住所を管轄する労働基準監督署に届け出る

と、基準違反の刑事責任を免責する効果(免罰的効果)が生じ、時間外労働(法定労働時間を超える労働)や休日労働(法定休日の労働)を社員に命じられるようになります。なお、36協定と呼ばれる理由は、この協定が労基法第36条に基づく労使協定(過半数労働組合または過半数代表者との書面による協定)だからです。

2024年4月1日からは、いわゆる「時間外労働の上限規制」の適用を猶予されていた、

建設業、自動車運転業務、医師、砂糖製造業(鹿児島県・沖縄県)が上限規制の対象

に追加されます。法改正のタイミングということで、労働基準監督署の臨検などもより厳しくなることが予想されますから、自社の36協定の内容をいま一度見直す必要があるかもしれません。以降で、36協定のポイントやひな型を紹介するので、確認していきましょう。

2 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)のポイント

1)時間外労働・休日労働の時間数の上限は決まっている

会社は、社員に時間外労働や休日労働を命じる場合、次の内容を守らなければなりません。これを「時間外労働の上限規制」といい、これに違反する36協定は無効となります。

2024年4月1日からは、時間外労働の上限規制の適用範囲が拡大され、「新技術・新商品等の研究開発業務」を除くほぼ全ての業種・業務が対象となっています。

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通常、36協定に定められる時間外労働の時間数は、どの業種・業務も原則「1カ月45時間まで、1年360時間まで」です。これを「限度時間」といい、限度時間の範囲内で時間数を定めたものを「一般条項」といいます。

ただし、臨時的な特別な事情がある場合に限り、36協定に「特別条項」を設けることで、限度時間を超える時間外労働を社員に命じることが認められます。

特別条項とは、「納期が著しく逼迫して限度を超える時間外労働をしなければ対応できない」など、特別で臨時的な事態を想定した定め

です。特別条項を設けた場合、会社は限度時間を超える時間外労働を定められますが、1カ月の限度時間(原則45時間まで)を超えられるのは、1年に6回までです(自動車運転業務を除く)。また、限度時間を超える場合も、図表の「臨時的な特別な事情がある場合」の時間数を遵守しなければなりません。これに違反すると、労基法の罰則の対象になります。

2)特別条項を設ける場合、「健康確保措置」を定める必要がある

特別条項を設ける会社は、社員の健康・福祉を確保するための措置(健康確保措置)を36協定に定める必要があります。次のいずれかから措置を選択するのが望ましいとされています。

  1. 医師による面接指導
  2. 深夜業(原則として午後10時から午前5時までの労働)の回数制限
  3. 終業から始業までの休息時間の確保(勤務間インターバル)
  4. 代償休日・特別な休暇の付与
  5. 健康診断
  6. 連続休暇の取得
  7. 心とからだの相談窓口の設置
  8. 配置転換
  9. 産業医等による助言・指導や保健指導

3)厚生労働省ウェブサイトの「36協定届」に追記して「36協定」とする

36協定は定められた様式で届け出る必要があります。限度時間の範囲内で時間外労働を命じる場合は一般条項の36協定届、限度時間を超える時間外労働を命じる場合は、特別条項付きの36協定届を使用します。次のURLからダウンロードできますが、2024年4月1日から時間外労働の上限規制が適用される業種・業務については、それぞれ書式が異なるので注意してください。

■厚生労働省「主要様式ダウンロードコーナー」■

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/roudoukijunkankei.html

また、実務上はこれらの様式に必要な事項を書き加えて、36協定にするのが一般的です。次章では、必要な事項を書き加えた36協定のひな型を紹介します。

なお、36協定はあくまでも労基法上の免罰的効果があるだけなので、実際に社員に時間外労働や休日労働を命じるには、就業規則等にもその旨を定めておく必要があります。

3 時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)のひな型

以降で紹介するひな型は一般的な事項をまとめたものであり、個々の会社によって定めるべき内容が異なってきます。実際にこうした協定を作成する際は、必要に応じて専門家のアドバイスを受けることをお勧めします。

【時間外労働・休日労働に関する労使協定(36協定)のひな型】

株式会社○○○○(以下「甲」)と従業員の過半数代表者△△△△(以下「乙」)は、労働基準法第36条第1項に基づき、法定労働時間を超える勤務(以下「時間外労働」)および法定休日における勤務(以下「休日労働」)に関して下記の通り協定する。なお、甲は時間外労働および休日労働が従業員の健康状態や家庭生活に与える影響に配慮し、時間外労働および休日労働が最小限のものとなるように努めるものとする。

第1条(具体的事由)

甲が従業員に就業規則第○条の規定に基づき時間外労働および休日労働を命じることができる具体的な事由は次の通りとする。

  1. 需要の増大・納期集中により、緊急増産が必要なとき。
  2. 急激な販売量増加により、営業業務並びに発送業務が必要なとき。
  3. 機械など製造設備が故障したとき。

第2条(時間外労働または休日労働を必要とする業務の種類および従業員数)

時間外労働および休日労働を必要とする業務の種類および従業員数は次の通りとする。

  1. 製品の組み立て、検査、梱包。従業員数(  名)。
  2. 販売。従業員数(  名)。
  3. 製造・販売のサポート業務。従業員数(  名)。
  4. 業務遂行のための企画・立案業務。従業員数(  名)。

第3条(延長することができる時間および起算日)

1)時間外労働時間の限度は次の通りとする。

  1. 1日につき8時間以内。
  2. 1カ月間につき45時間以内(起算日:毎月1日)。
  3. 1年間につき360時間以内(起算日:4月1日)。

2)所定休日(時間外労働)および法定休日(休日労働)の労働時間の範囲は次の通りとする。ただし、業務の都合によりやむを得ない場合は午後10時00分まで延長することができる。

  1. 午前8時00分から午後5時00分までの間で実働8時間以内。

3)前2項の延長時間は、時間外労働時間数の上限を示すものであり、常に当該時間まで時間外労働を命じるものではない。

第4条(休日労働の日数)

休日労働は1カ月につき4日以内とし、事前に甲および乙の協議を経た上で実施するものとする。

第5条(特別条項)

1)第3条にかかわらず、予測不能な機械等の故障、納期の著しい逼迫など臨時の必要がある場合は、甲および乙の協議を経た上で、1年につき6回を限度に時間外労働時間の限度を1カ月につき80時間(休日労働を含む)、1年につき720時間(休日労働を含まない)まで延長することができる。

2)前項において時間外労働および休日労働を必要とする業務の種類および従業員数は次の通りとする。

  1. 製品の組み立て、検査、梱包。従業員数(  名)。
  2. 販売。従業員数(  名)。
  3. 製造・販売のサポート業務。従業員数(  名)。
  4. 業務遂行のための企画・立案業務。従業員数(  名)。

3)第1項の延長時間は、特別な事情がある場合における時間外労働時間数の上限を示すものであり、常に当該時間まで時間外労働を命じるものではない。

4)会社および従業員は、常に業務遂行に要する時間に注意を払い、1カ月当たり60時間を超える時間外労働(休日労働を含む)が生じないよう配慮する。

第6条(従業員に対する健康および福祉を確保するための措置)

前条により時間外労働の範囲を延長する場合において、甲は従業員に対する健康および福祉を確保するために次の措置を実施する。

  1. 対象従業員に対する医師による面接指導。
  2. 対象従業員に対する11時間の勤務間インターバルの設定。

第7条(割増賃金率)

1)時間外労働における割増賃金率は、次の各号の率とする。

  1. 1カ月45時間以内の時間外労働:25%。
  2. 1カ月45時間を超える時間外労働:25%。
  3. 1カ月60時間を超える時間外労働:50%

2)休日労働における割増賃金率は、一律35%とする。

第8条(有効期間)

本協定の有効期間は○年○月○日から1年間とする。

 

締結日 ○年○月○日

 

                 甲 株式会社○○○○

                   代表取締役 ○○○○

 

                 乙 株式会社○○○○

                   従業員代表 △△△△

以上(2024年3月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)

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画像:ESB Professional-shutterstock

【朝礼】管理職の皆さん、もっと闘ってください

おはようございます。今日は、特に管理職の皆さんに伝えたいメッセージがあります。それは、「もっと闘ってください」です。

今どきはすぐに「何とかハラスメント」と言われたり、SNSに投稿されたりするので、とにかく“空気”を読み、波風を立てないことが良しとされがちです。そうなると、物事に異を唱えたり、主張すべきことを主張しなかったり、指導を怖がったりして、「闘わない管理職」が出てきます。

これは由々しき事態です。私は管理職の皆さんに、声を大にして伝えます。おかしいと思うことには、堂々と異を唱えてください。主張すべきところは、相手がどこの誰であろうと、真正面からきちんと主張してください。部下やメンバーが間違っていて正す必要があるなら、しっかりと厳しく指導をしてください。管理職の皆さんには、その権利がありますし、もっと言えば、そうする義務があるのです。

昔、私は、社外の人と契約を結ぶとき、主張すべきことを主張せず、大失敗したことがあります。大企業との初取引で、売り上げが欲しいと焦った私は、相手にとって有利な条件の契約を、ほぼ相手の要求通りの内容で通してしまったのです。契約は締結できましたが、後になってから、金額的にも納期的にも、こちら側が一方的に無理をしなければならなくなり、部下にも大変な思いをさせ、結局、たった1年でこちらから契約解消を申し出ることになってしまいました。

この大失敗で、私は「相手がどこの誰であろうと、こちら側の主張すべきことは、しっかり主張して闘うことが、部下や会社、そして相手、顧客をも守ることなのだ」と実感しました。

闘うのは、社内でも同じです。管理職の皆さん、上長や、たとえ社長の私であろうとも、おかしいと思うなら、指摘して闘ってください。部下に対してもそうです。嫌われること、波風が立つことを恐れていたら、指導はできません。時には厳しい指導も必要です。それで部下や周りから何か言われるようなら、そのときは私が管理職の皆さんを守ります。

ただし、「闘うこと」と「争うこと」とは違います。相手を打ち負かそうと批判したり、傷つけたり、自分勝手に主張したりするのは闘いではなく争いです。闘いはより良い結果を導くためのものですが、争いは何も生み出しません。むしろ、相手を打ち負かそうという思いが強くなることで、本当にハラスメントになってしまうケースもあります。私は「闘うこと」は応援しますが、「争うこと」には厳しく対処します。何のために闘うのかを見失わないようにしてください。

異を唱えたり、主張したり、厳しく指導したりするのは、正直に言って、面倒で手間のかかることでもあります。「闘う」とは、「面倒で手間のかかることから逃げ出そうとする自分と闘う」ことに他なりません。管理職の皆さん。もう一度言います。逃げずに、しっかり闘ってください。

以上(2024年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda