目次
1 損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)を「見える化」してみよう
損益計算書(以下「PL」)や貸借対照表(以下「BS」)を使って財務分析をしようとしても、細かな数字が多く、どこをみると良いのか判断に困った経験はないでしょうか。
こうしたときには、図表に落とし込んで視覚的に増減が分かるようにすると、読みやすくなります。
この記事では、財務総合政策研究所「法人企業統計調査 時系列データ」を基に、業種ごとの営業利益率などを「見える化」します。これで、業種ごとのコスト構造が一目瞭然になります。
■財務総合政策研究所「法人企業統計調査 時系列データ」■
https://www.e-stat.go.jp/statsearch/files?page=1&layout=datalist&toukei=00350600&tstat=000001047744&cycle=8&tclass1=000001049372&tclass2val=0
2 PLを「見える化」して業種ごとの利益率を確認しよう
PLは、一定期間の業績を表す財務諸表の一つです。
日本の会計基準の根幹である企業会計原則に基づくと、一番上の「売上高」から費用を引いていき、「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5つの利益を求める構造になっているため、
それぞれの利益を売上高で割り、段階的に利益率を出すことで収益性が分析できる
ことが特徴です。
早速、業種ごとの利益率と特徴を確認してみましょう。

図表から分かる、業種ごとの主な特徴は次の通りです。
- 売上原価率が高くなる業種:農業・林業、漁業、建設業、製造業、電気業、運輸業・郵便業、卸売業・小売業
材料や販売用商品の仕入れや製造等に係る労務費、燃料の調達などのコスト比率が高いことに加えて、商品やサービスに付加価値をつけにくく、売上原価率が高くなる傾向にあります。 - 販管費が高くなる業種:宿泊業・飲食サービス業、教育・学習支援業、医療・福祉業
店舗・施設の運営費用として、人件費・減価償却費・光熱費・広告宣伝費などが高くなる傾向にあります。また、サービス業では、接客スタッフや管理スタッフの給料は売上原価ではなく販管費として処理されるケースが通常のため、これらスタッフの人員比率が高いサービス業では結果として販管費の比率が膨らんで見えます。
3 BSを「見える化」して企業の「体力」を確認しよう
PLから企業の「もうける力」が分かりますが、これだけでは判断が不十分です。例えば、「もうける力」が大きかったとしても、借金があまりに多く、返済が追い付いていないなどの場合もあるためです。また、PLで売り上げが計上されていても、売上代金が支払われるまでにはタイムラグがあります。これを「売掛金」といいますが、売掛金が膨らみ売上代金の回収が遅れるようでは、そのうち営業できなくなるかもしれません。
また、資産をどのくらい自己資本で賄っているか、いざというときに、お金に換えられる資産がどのくらいあるかといった企業の「体力」も確認する必要があります。これを安全性分析といい、財務諸表のうち、主にBSの項目を使います。BSは、企業の体力を「資産」と「負債」に分け、そのバランスを見ていくことになります。

一般的に、安全性分析では流動資産と流動負債を比較して短期的な支払い能力を見る「流動比率」、負債を含めた総資本に対する自己資本の割合を見る「自己資本比率」などの指標を見ていきます。
例えば、流動比率は1年以内に返済しなければならない流動負債に対して、1年以内に現金化できる流動資産がどのくらいあるかを見るものです。卸売業や小売業などは短い期間で仕入れと販売を繰り返すため、流動資産と流動負債が大きくなります。こうした業種の場合、短期的な支払い能力を見る流動比率は重要な指標といえます。一方、そもそも流動負債が小さい電気業(電力会社など)は、流動比率だけでは企業の「体力」を知ることは難しいので、自己資本比率を見ることになります。
なお、厳密にはキャッシュ・フロー計算書なども併せて安全性分析をする必要がありますが、ここでは分かりやすくするために自己資本比率で「体力」を見ることとしています。
前述したPLと同様に、BSも業種によってさまざまな特徴があります。

ここでは建設業(2024年度)を例に、図表に見える主な特徴と業界特有の事情を付け合せてみます。
- 建設業は、工事の着手から代金回収までの期間が長いため、流動資産(65.5%)の割合が高いのが特徴です。特に未成工事支出金(注)として多額の資金が固定される(他の投資や消費に資金を回せない状況)ため、不測の事態に備えて高い流動比率を維持し、資金繰りの安全性を確保する傾向にあります。
流動負債(38.0%)には、下請業者への支払手形や未成工事受入金(注)が含まれます。この「受入金」をうまく活用することで、先行する工事費用を賄うという、建設業特有の資金調達構造が見て取れます。
純資産比率が2024年度は43.8%と高く、固定資産(34.2%)を自己資本の範囲内で十分に賄えていることから、長期的な財務健全性は極めて高いといえます。これは、工期遅延や資材高騰といった外部環境の変化(地政学リスクや経済変動)に対する抵抗力が強いことを示しています。
(注)未成工事支出金は、現在進行中の工事にかかっている材料費、労務費、外注費などのコストを、完成・引き渡し時まで一時的に資産(棚卸資産)に計上する勘定科目です。未成工事受入金は、工事完成・引渡し前に顧客から預かっている手付金や中間金(前受金)を計上する勘定科目です。
4 成長企業を見極めるには、この指標もポイント!
1)キャッシュ・フロー計算書(CF)も併せて確認しよう
企業の「もうける力」や「体力」を見極めるためには、PLやBSに加え、現金の流れが分かるキャッシュ・フロー計算書(以下「CF」)も見なければなりません。
前述した通り、いくら売り上げが立っていても、資金がなければ営業を続けられず倒産してしまいます。その逆もあります。例えば電気業(電力会社など)のBSを見ると自己資本比率(純資産÷総資産×100)が高くありません。一見すると「体力」がなく、支払い能力が乏しいように感じます。しかし、電気業の場合、電気料金という必ず支払われる膨大なキャッシュがあり、そうした意味では支払い能力の高い業種といえます。
CFは、「営業キャッシュ・フロー」「投資キャッシュ・フロー」「財務キャッシュ・フロー」に分かれます。一般的に、順番にプラス・マイナス・マイナスになっているのが良い状態です。営業活動で得た資金を投資活動に回して企業を大きくしつつ、銀行などへの返済や株主への配当などを増やすため、財務活動上はマイナスになる。これが成長企業のキャッシュ・フローの理想型といえます。ただし、単年度に限らず、数年間この状況が続くことが大切です。
2)利益と資産の関係で見るROAとROE
利益と資産の関係から、どのくらい効率的に利益を上げているかという観点で収益性を見ることもできます。例えば、総資産に対してどれだけ利益を上げているかを見る指標にROA(総資産利益率)があります。一般的に、IT関連など大きな固定資産を持たない業種ではROAは高くなり、製造業などの装置産業の場合は低くなる傾向にあります。
また、ROE(株主資本利益率)は、株主から預かった資本に対して、どのくらい効率的に利益を出しているかを見るものです。なお、計算上は自己資本比率が下がるとROEは上がることになるため、この指標で企業を見るときには借入金の急激な増加や自社株式の購入等がある場合には注意が必要です。
以上(2026年6月更新)
(監修 KOSOパートナーズ合同会社 代表社員CEO 公認会計士 朝倉厳太郎)
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