【かんたん法人税(3)】固定資産に係る税務

書いてあること

  • 主な読者:税務調査などで指摘されないよう、税金対策を適切に行いたい経営者
  • 課題:法人税は税金の中でもボリュームが多く、一つの論点でも色々な角度から対策を検討しないと税務調査で指摘されることがある
  • 解決策:税務調査で重点的に調べられる論点ごとに、会社が注意すべきポイントを押さえる。固定資産に関しては、取得、減価償却等、修繕、評価、売却、リースがポイントになる

1 固定資産に係る税務上の重要ポイント

シリーズ第3回では、固定資産のうち有形減価償却資産に係る税務上の取り扱いに注目します。固定資産とは、

長期に保有する資産の総称で、有形固定資産、無形固定資産、投資その他の資産に区分

されます。「長期に保有」は、ワンイヤールール(1年以内の売却や処分を予定していない)で判断します。また、有形固定資産および無形固定資産のうち、減価償却の対象となる資産は、減価償却資産と呼ばれます。固定資産の分類は次の通りです。

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固定資産に係る税務上の取り扱いは、取得時の処理、減価償却、修繕をした場合など、詳細に定められています。

固定資産に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

  • 取得価額の判定
  • 減価償却費を損金算入するための要件
  • 一括償却資産と中小企業者における減価償却の特例
  • 特別償却制度
  • 資本的支出と修繕費
  • 評価損・耐用年数の短縮
  • 売却時・除却時の税務

2 減価償却の概要と減価償却資産の分類

1)基本的な考え方

建物や機械などの有形固定資産、鉱業権や特許権などの無形固定資産は、取得後、使用することで時間の経過とともに経済価値が消耗・損耗していきます。この資産の経済価値の消耗・損耗分を減価(価値の減少)と見なし、その金額を一定の方法により、資産の使用可能期間にわたって、各期の費用として配分する会計処理を「減価償却」といいます。

前述の通り、減価償却の対象となる資産は減価償却資産として区分され、次のように分類されます。なお、減価償却資産には、建物、車両、器具備品、機械装置、ソフトウエア、営業権などの他、家畜や果樹などの生物も含まれます。

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固定資産の分類は、税務調査で指摘されやすいポイントなので、資産取得の際に適切に区分しておく必要があります。

2)減価償却方法

減価償却の方法にはいくつかがありますが、一般的なものは定額法と定率法です。

  • 定額法:耐用年数にわたり、毎期均等の金額を減価償却費として計上
  • 定率法:耐用年数にわたり、未償却残高を毎期同じ割合を減価償却費として計上

耐用年数とは、固定資産を事業に利用できる年数のことで、税法上、業種や資産ごとに決められています。会計上は、企業が任意に合理的な耐用年数を決めて償却することができますが、その場合は税法基準での処理との二重管理が生じ煩雑になるため、多くの中小企業では税法基準で償却計算が行われています。

耐用年数も税務調査で指摘されやすいポイントです。税務調査では、資産の耐用年数が法定耐用年数にのっとったものかどうか確認されます。また、その資産が実際に事業で使用されているかも確認されます。原則として、使用されていない資産の減価償却は損金算入が認められません。

定額法と定率法の仕組みは次の通りです(取得価額100万円、耐用年数5年の資産を例示)。なお、この記事では、旧定額法・旧定率法についての説明を省略します。

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定額法、定率法ともに、償却終了時に備忘価額(保有していることを忘れないように財務諸表に表示する価額)として帳簿価額1円を計上します(図表3-定額法および定率法の「5年目の期末帳簿価額」)。

また、現行の定率法において、償却当初の償却率(0.4)は定額法の償却率(0.2)の2倍となっています。ただし、当初の償却率(0.4)のままでは耐用年数内に、備忘価額1円まで減価償却することができません。そこで、帳簿価額が取得価額に一定の率を乗じた金額(改定取得価額、図表3-定率法の「3年目の期末帳簿価額」)まで到達した後は、新たな償却率(0.5。改定償却率)により償却を行うこととなります。

なお、改定取得価額とは、当初の償却率による償却額が初めて償却保証額(資産の取得価額に当該資産の耐用年数に応じた保証率を乗じて計算した金額)に満たないこととなる年の期首における未償却残高のことをいいます。また、改定償却率とは、改定取得価額に対しその償却費の額が、その後毎期均等になるように当該資産の耐用年数に応じた償却率をいいます。

3)固定資産を処分した場合の会計処理

ここでは、図表3の事例を使って、固定資産を処分するときの会計処理を説明します。

例えば、定額法により償却していた資産が、3年間使用した時点で壊れてしまったため処分したとします。この場合、処分時(3年経過時)のこの資産の帳簿価額40万円(=取得価額100万円-減価償却累計額60万円)を、会計上、固定資産(資産科目)から費用科目に一度に振り替える必要があります。本ケースでは、40万円の固定資産除却損を損益計算書に計上し、固定資産の帳簿価額をゼロにします(税務上の詳細な取り扱いは後述)。このように、固定資産を処分した場合には、期中に予定していなかった費用が発生し、利益に大きく影響するため注意が必要です。

3 固定資産に係る税務上の取り扱いと留意点

1)取得価額の判定

固定資産の取得価額の判定は、通常その単位ごとに行います。単位といっても、全ての資産が1個の資産で成り立つわけではありません。例えば、「応接セット」として資産計上することがあります。この場合は、一式そろって初めて機能するものなので、取得価額も一式分(テーブル、椅子、ソファなどの合計)の価額となります。また、資産の取得に際し、付随して生じる費用(設置費用など)も、取得価額に含めなければなりません。取得価額とすべき付随費用が費用(支払手数料など)として処理されていないかどうかは、税務調査でも指摘の多いポイントの1つです。

また、税務上は取得価額が10万円未満のもの(または使用可能期間が1年未満のもの)については、固定資産として資産に計上せず、消耗品費などとして一括で費用にすることができます(詳細は後述)。

2)減価償却費を損金算入するための要件

有形減価償却資産については耐用年数経過時に1円まで償却することが可能ですが、減価償却費を損金算入するためには、次の要件を満たす必要があります。

  • 法人税法施行令で定められている償却限度額以内であること
  • 損金経理を行っていること
  • 別表明細書(別表16)を確定申告書に添付すること

3)一括償却資産と中小企業者における減価償却の特例

税務上、10万円以上の固定資産を購入した場合には、減価償却資産として資産に計上するのが原則ですが、取得価額が30万円未満のものについては、次のような処理方法が認められています。

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取得価額が10万円未満(または使用可能期間が1年未満のもの)のものについては前述した通り、固定資産とせず費用に計上できます。

取得価額が10万円以上20万円未満のものについては、一括償却資産として資産計上し、3年間で償却することが認められています。固定資産の多くは、耐用年数が3年を超えるものが多いため、通常より早期に償却(費用計上)することができます。

また、中小企業者等(資本金の額等が1億円以下の一定の法人)においては、「少額減価償却資産の特例」という、30万円未満の固定資産を費用に計上できる制度(年間の総額が300万円に達するまで)が利用できます。適用を受ける場合には、適用額明細書を法人税の確定申告書に添付する必要があります。

4)特別償却制度

特定産業の保護・育成や特定の投資の促進などを目的として、租税特別措置法に規定されているのが、特別償却制度です。この制度を利用することで、償却限度額が増加し、税負担を減少させられます。

税法上の早期償却の方法には、初年度特別償却と割増償却とがあります。

  • 初年度特別償却:資産を取得した最初の期のみ、償却限度額を増加させるため特別償却率を乗じることを認める制度
  • 割増償却:数年間にわたり普通償却限度額(通常の減価償却に係る償却限度額)とは別に、特別償却限度額を認める制度

特別償却は、対象資産ごとに対象事業者が設定されており、ほとんどの場合、青色申告法人であることが要件になります。また、申告時には特別償却についての付表の添付が求められます。これらの適用要件を満たしているかどうかも、税務調査で指摘の多いポイントの1つです。また、租税特別措置法の適用を受ける場合には、適用額明細書を法人税の確定申告書に添付する必要があります。

5)資本的支出と修繕費

資本的支出と修繕費の取り扱いは、現場担当者の判断にミスが生じやすい項目の1つです。

資本的支出とは、すでに保有している固定資産の修理、改良などのために支出した金額のうち、その固定資産を使うことのできる期間(使用可能期間)を延長させる部分または価値を増大させる部分をいいます。資本的支出に該当する場合は、費用ではなく、新たな固定資産を購入したものとして資産計上し、耐用年数にわたり減価償却を行っていかなければなりません。

一方、修繕費とは、固定資産の維持管理または原状回復のための支出をいいます。修繕費に該当する場合は、費用として処理されます。

資本的支出か修繕費かを判断するためのフロー図は次の通りです。

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修繕費と減価償却資産が適切に区分されているかどうかは、税務調査において指摘の多いポイントですので、留意する必要があります。

6)評価損、耐用年数の短縮

1.固定資産の評価損について

固定資産の価格の下落による損失は、会計上で評価損として費用計上することがありますが、税務上は原則として評価損の損金算入は認められません。ただし、例外として、固定資産について、一定の事実があった場合には、損金経理により帳簿価額を減額することを条件に、評価損の損金算入が認められています。税務上、固定資産の評価損を計上できるケースとできないケースは次の通りです。

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2.固定資産の耐用年数の短縮について

固定資産の耐用年数は、耐用年数表により画一的に定められています(法定耐用年数)。ただし、一定の理由により、使用可能期間が法定耐用年数と比較しておよそ10%以上短くなったと判断される場合には、所轄税務署長の承認を受けることで、法定耐用年数を使用可能期間に短縮できます。

7)売却時・除却時の税務

有形固定資産を売却した場合、売却時点の帳簿価額と売却価額との差額を固定資産売却損益として処理します。固定資産売却損益は、臨時的に発生した損益として特別損益に表示されます。また、売却に際して手数料などの付随費用が生じた場合は、売却損益に反映します。

なお、固定資産を除却する場合、税務においては固定資産を実際に廃棄するまでは除却損を損金に算入できません。従って、実務上は廃棄を証明する資料、例えば産業廃棄物管理票(マニフェスト)などを適切に保存・管理する必要があります。

ただし、次のような場合には、実際に廃棄せずとも、帳簿価額から処分見込額を控除した金額の損金に算入できます。これを有姿除却(有姿=姿を残したままの意)といいます。

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図表7の(1)は、税務調査で指摘の多いポイントの1つです。固定資産を再使用しないことを明らかにするため、当該固定資産の現況、使用中止に至った経緯、転用等の再使用の可能性を検討した資料を残しておく必要があります。

4 リース取引

リースとは、企業が設備を導入する場合に、自社で購入(所有)するのではなく、リース会社が購入した物件を賃借し使用する取引のことです。リース取引は、中途解約ができず、その資産の購入代金のほぼ全額をリース料という形で支払う賃貸借取引である「ファイナンス・リース」と、それ以外のリース取引である「オペレーティング・リース」とに分類されます。

税務上では、ファイナンス・リースのみが「リース取引」に該当し、原則として売買したものとして取り扱われます。従って、固定資産を購入した場合と同じく、リース期間にわたり減価償却をしていかなければなりません。

一方、オペレーティング・リースは、税務上は賃貸借取引とされるため、賃借料、レンタル料などの費目で処理されることになります。

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また、ファイナンス・リース取引(税務上の「リース取引」)は、リース期間の中途または終了後に所有権が移転するかしないかという観点で、さらに「所有権移転ファイナンス・リース」と「所有権移転外ファイナンス・リース」とに分類することができます。ファイナンス・リースでは減価償却費を費用計上することとなりますが、取引内容により減価償却方法が変わりますのでご留意ください(詳細は図表9の通りです)。

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以上(2024年3月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 富永慎也)

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画像:pixabay

本当につらい「休職者とのトラブル」を回避するために不可欠な就業規則の6つの規定

書いてあること

  • 主な読者:これまで社員の「休職」に直面した経験がない、または経験が少ない経営者
  • 課題:法令上、休職に関する明確なルールがないため、社員とトラブルにならないか心配
  • 解決策:トラブル回避の肝は、就業規則に明確に定めて疑義をなくすこと

1 休職をめぐるトラブルは就業規則で回避する

社員が「休職(私傷病休職)」するのは、仕事以外の理由でケガや病気になったり、うつ病などになったりした場合です。経営者としては、休職している社員をできるだけサポートしてあげたいところですが、

他の社員との兼ね合いもあり、休職期間などについて一定の基準を設けざるを得ない

のです。一方、

休職中の社員は心身ともに不安で、復職時期についても心配

しています。

このように、経営者と社員がお互いにつらい状態に置かれがちだからこそ、休職期間や復職の可否などをめぐってトラブルが生じます。こうしたトラブルを避けるために重要なのは、就業規則に、

  1. 休職の対象
  2. 休職発令のタイミング
  3. 休職期間
  4. 休職期間中の賃金
  5. 休職期間中の勤続年数の算定
  6. 復職の可否の判断

の6つについて定めることです。

休職制度は、法律(労働基準法や労働契約法など)で実施が義務付けられているわけではなく、各社で任意に定めますが、どのような点がポイントになるか、以降で具体的な内容を確認していきましょう。

2 休職の対象

休職は社員の長期雇用を前提とするため、

対象は契約期間に定めのない社員に限定

されることが多いです。一般的には正社員(試用期間中の社員を除く)を指しますが、

パート等でも無期雇用の場合は、正社員と同様、休職制度を適用するのが合理的

とされています(同一労働同一賃金ガイドライン)。

なお、有期雇用の場合は、一般的に対象に含めませんが、労働契約期間の満了までという条件で休職を認めるケースもあるようです。最近の同一労働同一賃金に関する裁判の傾向として、

長期間雇用されているパート等に関しては、同じく休職制度の対象としなければ、待遇差が不合理であると判断される可能性

もあるので、休職の対象については、よく検討する必要があります。

3 休職発令のタイミング

通常、休職は、

  1. 欠勤が一定期間(1カ月など)続き、その後も療養のため働くことができない場合
  2. その他休職を命じる必要があると会社が認めた場合

に発令します。

1.の場合には、メンタル不調の社員のように、断続的に欠勤が続くこともあるため、休職発令前においても、欠勤期間を通算することができるようにしておくのがよいでしょう。

また、2.のタイミングで発令するのは、主に早期に社員を休職させなければならない事情がある場合(重大な傷病など)です。

休職発令は、事前に社員から主治医の診断書を提出してもらうなどして、休職が必要かを判断した上で行います。主治医の診断書だけでは不安な場合、産業医などにも意見を聴きます。

なお、休職期間の起算点をめぐって、社員とトラブルにならないよう、

いつ休職を発令したかは、書面やメールなどで必ず記録に残す

ようにしましょう。

休職規定の中には、「休職事由が生じた場合には休職とする」といった記載、つまり休職事由が発生した場合には、命令を待つことなく当然に休職となると読める記載も見受けられます。

しかし、休職制度は解雇の猶予期間なので、およそ回復の見込みがないような場合にまで、休職制度を適用して解雇ができなくなるというのは妥当ではありません。ですから、「休職を命じる場合がある」というように、会社に一定の裁量を持たせる記載にするのがよいでしょう。

4 休職期間

休職を開始した社員が、一定の休職期間を経過しても復職できない場合、原則として休職期間満了時に退職となります。休職期間は会社によって異なり、3カ月から6カ月程度のところもあれば、2年から3年程度と長期に設定しているところもあります。

休職期間を考える際は「通算規定制度」も検討します。通算規定制度とは、

復職後、一定期間内に同じまたは類似の傷病で再び休職したら、休職期間を通算する制度

です。次のような規定を設けると、長期休職が何度も発生するのを防ぐことができます。

復職した社員が、その後○カ月以内に、同じまたは類似の傷病により再度欠勤をした場合、もしくは通常の労務提供ができなくなった場合は復職を取り消し直ちに再休職とする。この場合の休職期間は復職前の休職期間の残期間とする

なお、この通算規定を新設して従前よりも休職できる期間が実質短縮される場合、労働条件の不利益変更に当たるため、変更の手続には注意しましょう。

5 休職期間中の賃金

通常、休職期間中の賃金は、

ノーワーク・ノーペイの原則に従い無給

とします。無給とする場合、その旨を就業規則に定めます。ちなみに休職期間中、賃金の支払いがない場合、社員は一定の条件を満たすことで健康保険の傷病手当金をもらえます。

なお、社会保険料と住民税は休職期間中も発生しますが、無給だと控除できません。こうした場合、次の1.から3.のいずれかの方法で対応します。

  1. 社会保険料と住民税の額を社員に伝え、会社指定の口座に入金してもらう
  2. 会社が立て替えておき、復職後の賃金からまとめて控除する(労使協定の締結が必要)
  3. 傷病手当金の受取先を会社にして、社会保険料や住民税を控除した上で社員に支払う

6 休職期間中の勤続年数の算定

社員が休職する場合、

休職期間は勤続年数に含めない

のが一般的です。表彰、賞与、退職金など、会社が勤続年数を基準に評価する制度については、就業規則の規定に矛盾がないかを確認しましょう。また、年次有給休暇の付与日数を計算する際も、休職期間は勤続年数に含めないのが一般的です。

7 復職の可否の判断

復職の可否の判断はデリケートな問題です。通常、休職期間が満了する前に、社員から主治医の診断書を提出してもらって復職の可否を判断しますが、社員の主治医が仕事内容を詳しく把握しているとは限りません。また、うつ病のようなメンタルヘルス疾患の場合、症状が一進一退を繰り返し、判断が難しくなるケースがあります。

そのため、社員の主治医だけでなく、必要に応じて会社指定の医療機関にも協力を仰ぎ、復職の可否を慎重に判断できるようにします。具体的には、次のような規定を設けます。

  1. 社員は復職に当たり、所定の復職願に社員の主治医による診断書を添えて提出する
  2. 会社は復職の可否を判断するため、社員に会社指定の医療機関での受診を命じることがある
  3. 最終的な復職の可否は会社が判断する

特に2.については、会社指定の医療機関として産業医の意見を聴くことが重要です。社員の主治医の意見は、会社の業務に精通していない関係で、業務との関係性があまり考慮されないケースが多いのに対し、産業医の場合、「社員の病状に照らして会社の業務に就くことができるか」など、実務的な観点から意見を聴けるからです。

上記のように就業規則上のルールを定めていても、社員が主治医や会社指定の医療機関の診断を受けてくれないというケースがあります。そうした場合、会社としては主治医や会社指定の医療機関の診断を抜きに復職判断をせざるを得ませんが、既に休職中であることから、「回復」が明らかではない以上、復職不可という判断となることが多いと思われます。

なお、社員が復職直後から休職前と同じように働こうとして再び体調を崩し、そのまま退職してしまうケースが少なくないため、

復職してから当面の間、労働時間の短縮(時短勤務)などを適用し、経過を見ながら徐々に従前の働き方に戻していくのが無難

です。主治医や産業医の意見を聴かずに従前の働き方に戻してしまい、その結果、社員の体調が再び悪化したような場合、会社の安全配慮義務違反があるとして、損害賠償請求がされる恐れがあります。

そのため、

復職後、会社が必要と認める場合、社員との協議の上、労働条件を変更することがある旨

を就業規則に定めておくとよいでしょう。

以上(2024年4月更新)
(監修 日比谷タックス&ロー弁護士法人 弁護士 堀田陽平)

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画像:unsplash

2024年「賃上げ」に対する経営者317人の本音。あそこの企業は賃上げするのか?

書いてあること

  • 主な読者:2024年に賃上げをするか否かについて悩んでいる経営者
  • 課題:賃上げの判断が難しい。他の企業がどうするつもりなのかも知りたい
  • 解決策:重要な判断基準は自社の業績。賃上げで使える助成金なども検討

1 賃上げするか否かを判断するための情報

連日のように話題となっている賃上げ。2024年に経営者が最初に下す重要な経営判断は「賃上げ」かもしれません。そこで、経営者317人を対象に、賃上げに関する緊急アンケートを行いました。

最初の質問は、賃上げをするか否かを判断するために重視する情報についてです。これは「自社の業績」が圧倒的に多くなっています。

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2 2024年から賃上げする企業は31.9%

では、具体的にどれだけの企業が賃上げをするのでしょうか?

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2024年から賃上げするという企業は31.9%、2~3年以内に実施するという企業は16.1%となっています。賃上げする企業が求めている情報は、助成金などに関する情報、社会保険料への影響に関する情報でした。少しでも賃上げの負担を軽減したいというところでしょう。

また、経営者が賃上げについて相談する相手は、顧問の税理士が最も多く、自社の取締役がこれに続きます。

賃上げを検討する際に参考となるリポートは以下の通りです。

3 どうやって、どの程度の賃上げをする?

賃上げの手法や賃上げ率はどうでしょうか。

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賃金の範囲としては、基本給のみが最も多く、基本給の他に手当や賞与も上げるという企業が続きます。これまでは、基本給は上げず、手当や賞与を上げて対応する企業が多かったですが、2024年はそれよりも踏み込んだ賃上げを検討する企業が増えています。

具体的な賃上げ率は、2%以上と3%以上という回答が同率の首位でした。

賃上げの手法については、ベースアップで実施する企業が最も多く、定期昇給が続きます。両方を行うという企業も多く、やはり賃上げに本気で取り組む企業が増えている状況を垣間見ることができます。

賃上げをする際の参考や賃上げの方法に関するリポートは以下の通りです。

3 賃上げ「しない企業」の経営者が考えていること

これまでとは逆に、賃上げをしない企業の状況を紹介します。

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なぜ、賃上げをしないのかについては、「業績の先行きが不透明だから」が圧倒的に多くなっています。前述した通り、賃上げをするか否かを判断するために最も重視される情報は「自社の業績」でした、やはり、業績が伴わない賃上げは難しいということでしょう。

どうなったら賃上げをするのかについては、これまで同様に業績が重視されていて、「業績好調が続くと確信できたとき」が圧倒的に多くなっています。

なお、賃上げに関するその他のリポートは以下の通りです。

以上(2024年3月作成)

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画像:Mariko Mitsuda

【かんたん法人税(2)】棚卸資産に係る税務

書いてあること

  • 主な読者:税務調査などで指摘されないよう、税金対策を適切に行いたい経営者
  • 課題:法人税は税金の中でもボリュームが多く、一つの論点でも色々な角度から対策を検討しないと税務調査で指摘されることがある
  • 解決策:税務調査で重点的に調べられる論点ごとに、会社が注意すべきポイントを押さえる。棚卸資産に関しては、仕入、売上、在庫計算がポイントになる

1 棚卸資産に係る税務上の重要ポイント

シリーズ第2回では、棚卸資産を取り上げます。棚卸資産とは、

商品、製品、半製品、仕掛品、原材料などの資産(不動産会社が販売目的で所有する不動産を含む)

をいいます。一般的に棚卸資産は次の流れで取引されます。

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棚卸資産に係る税務上の取り扱いは、取引の流れの中で「いつ」「いくら」で仕入・売上・売上原価を計上するかなどが明確に決められています。棚卸資産に係る税務上の重要ポイントは次の通りです。

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仕入・売上原価・評価損など損金の過大計上や、売上(益金)の過少計上は、所得を少なくする(=納税額が少なくなる)ことに直接影響するため、税務調査でも詳細にチェックされます。

2 取得価額の計算

購入した棚卸資産の取得価額は、原則として購入代金だけではなく、棚卸資産を購入・販売するために支払った費用(付随費用)も加えるので注意しましょう。

ただし、次の付随費用は、合計額が少額(商品そのものの購入代金のおおむね3%以内の金額)であれば、取得価額に算入せず(棚卸資産に計上せず)、支払手数料などの費用として計上できます。

  1. 買入事務、検収、整理、選別、手入れなどに要した費用
  2. 販売所から販売所へ棚卸資産を移動させるために要した運賃などの費用
  3. 特別な時期に販売するなどの理由から、長期にわたって保管するために要した費用

なお、次に掲げるような費用は棚卸資産を取得するための費用であっても、取得価額に算入しないことができます。

  1. 不動産取得税
  2. 固定資産税、都市計画税
  3. 登録免許税その他の登記・登録費用
  4. 借入金の利子

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3 仕入の計上時期

一般的に仕入の計上時期は、

  • 入荷基準:棚卸資産が入荷したときに仕入を計上する基準
  • 検収基準:入荷した棚卸資産を検収したときに仕入を計上する基準

のいずれかが採用されます。注意点は、

  • 仕入の計上時期は仕入代金を仕入先に支払ったときではない
  • 計上基準は、一度選択したら継続して適用しなければならない

ことです。

4 売上の計上時期

売上の計上時期は、

  • 引渡基準:棚卸資産を引渡したときに売上を計上する基準
  • 検収基準:引渡した棚卸資産を相手が検収したときに売上を計上する基準

のいずれかが採用されます。注意点は、

  • 売上の計上時期は売上代金が入金されたときではない
  • 計上基準は、一度選択したら継続して適用しなければならない

ことです。

5 締め後売上の計上

締め後売上とは、

決算月において請求書の発行締め日から決算日までの間に引渡し、または相手が検収(以下「引渡し等」)した場合の売上

をいいます。

前述の通り、売上は棚卸資産の引渡し等をしたときに計上する必要があります。つまり、決算日までに相手先に棚卸資産の引渡し等をしていれば、その引渡し等をした棚卸資産について相手先に請求書を発行していなくても、この売上を決算に含めなければなりません。

例えば、請求書の発行締め日が毎月20日である法人は、決算月の21日から決算月末までに引渡し等をした棚卸資産の売上を集計し、これを売上に計上して決算を行わなければなりません。決算のときに、この締め後売上の計上が漏れやすいため注意が必要です。

6 在庫の計上金額が適正か

1)基本的な考え方

決算を行うために、今期の売上に対応する売上原価を計算しなければなりません。売上原価は次の計算式により計算されます。

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期首在庫の金額は前期の決算で確定しているため、今期中に行った商品の仕入金額と、期末棚卸により把握した期末在庫の金額を上記計算式に当てはめて、売上原価が確定します。

期末在庫の金額が大きくなれば、売上原価(損金)は小さくなり、法人の利益は大きくなります。反対に期末在庫の金額が小さくなれば、売上原価は大きくなり、法人の利益は小さくなります。次の例1と例2で確認してみましょう。

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ミスが起こりやすいのが期末在庫の集計です。適正な在庫金額を計上するためには、次の点に注意する必要があります。

2)除外している棚卸資産はないか

期末在庫は漏れなく集計します。法人税を少なくするために、意図的に期末在庫の金額を小さくすることは不正です。経営者に悪気がなくても、現場担当者が記録不備などの発覚を恐れ、意図的に期末在庫から除外してしまうことも考えられます。経営者自身の意識はもちろん、現場担当者の教育も大切です。

3)棚卸資産の金額が過小ではないか

意図的に期末在庫の金額を小さくするつもりがなくても、期末在庫の金額を過小に計算してしまうケースがあります。例えば、以下のようなケースです。

1.単価を正しく評価できていないケース

棚卸資産の評価方法は原価法と低価法に分けられます。原価法はさらに6つの評価方法(最終仕入原価法、個別法、先入先出法、総平均法、移動平均法、売価還元法)に区分されます。

棚卸資産の評価方法については、税務署に自社が選択した評価方法を記載した届出書を提出します(変更する際には変更届の提出が必要)。ただし、その届出書を提出しなかった場合は、「最終仕入原価法」を採用したと見なされます。このように、

税務署への届出書の提出を必要としない点や、計算が簡便である点から、多くの中小企業が「最終仕入原価法」を採用

しています。ここでは、最終仕入原価法について紹介します。

最終仕入原価法では、期末に最も近い時点で取得したものの単価を1単位当たりの取得価額とする方法で、次のように期末在庫を評価します。

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最終仕入原価法を採用する場合には、図表6でいうところの110円や140円の金額を単価として選ぶなど、初歩的なミスが生じることがあります。チェック体制を整えたり、マニュアル化を徹底したりすることが大切です。

2.期末在庫の金額を算出した表計算ソフトの入力内容に誤りがあるケース

これは初歩的なミスであるものの、在庫を数える人、在庫表を作成する人、期末在庫の金額を会計処理する人がそれぞれ別の担当者であることも多いため、比較的頻発するミスです。期末在庫の合計額が正しく計算されているかをチェックするために、過去のミス事例を担当者に周知するなどの対策を取るようにしましょう。

3.普段使用していない倉庫の保管在庫を加え忘れるケース

保管倉庫を複数使用している会社においては、普段使用していない倉庫の保管在庫を計上し忘れるというケースがあります。税務調査では、所有・賃借している倉庫のそれぞれの使途を確認されることがあります。税務調査時に計上のし忘れがあったと気付くことがないよう、棚卸チェックシートなどは定期的に更新するなど注意が必要です。

4.預け在庫の金額を加え忘れるケース

会社の中には、商品が会社を経由せず、仕入先から直接得意先に納品されるような取引をしていることもあります。その場合、仕入先の倉庫に預けている販売前の商品(預け在庫)の計上漏れがないように注意が必要です。

商品管理の担当者と経理担当者間の意思疎通や、チェック環境を整備するなどの対策を取るようにしましょう。

7 評価損の計上は適正か

棚卸資産について、会計上は評価損を計上することがあります。しかし、税務上、原則として評価損は損金に算入できません。

ただし、次に該当するような事実が生じたことにより、棚卸資産の時価が帳簿価額を下回ることとなった場合に限り、帳簿価額と時価との差額を限度として評価損の損金算入が認められます。

  • 棚卸資産が災害により著しく損傷した場合
  • 棚卸資産が著しく陳腐化した場合

陳腐化とは、棚卸資産そのものに欠陥が生じたわけではないものの、経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいいます。具体的には、商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当します。

  • 季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが、これまでの実績から明らかであること
  • その商品と用途の面でおおむね同様のものであるが、形式、性能、品質等が著しく異なる新商品が発表されたことにより、その商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと

このように税務上、評価損に関する取り扱いは詳細に決められています。棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更などの事情によって低下しただけでは、税務上は評価損の損金算入は認められないため注意が必要です。

8 廃棄損の計上は適正か

商品を廃棄した場合、会計上「商品廃棄損」を計上することになりますが、税務調査においては、実際に期末までに商品を廃棄したかどうか確認されることになります。廃棄業者から受領した廃棄完了報告書などから、計上の妥当性を確認されることになります。廃棄完了報告書の発行が受けられない場合などには、廃棄した商品の状態や廃棄したときの写真(日付あり)など、客観的に説明できる資料を残しておきましょう。

以上(2024年3月更新)
(監修 税理士法人AKJパートナーズ 税理士 富永慎也)

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画像:lenetstan-shutterstock

賃上げ時代に重要な「同一労働同一賃金」でビジネス的平等を実現

書いてあること

  • 主な読者:同一労働同一賃金について復習したい経営者
  • 課題:結局、正社員とパート等の待遇に差をつけるのは許されるの? 許されないの?
  • 解決策:「パート等だから」という理由でなく、能力や成果で差をつけるなら問題ない

1 2024年4月の法改正で重要となる同一労働同一賃金

パート等(パートやフルタイムの契約社員)の労働条件を考える上で、避けては通れないのが「同一労働同一賃金」です。簡単に言うと、

正社員でもパート等でも「同じ働き方をしているなら、同じ待遇にしなければならない」

というものです。施行は2020年4月1日(パートタイム・有期雇用労働法)と少し前ですが、実は2024年度こそ、自社が同一労働同一賃金に対応できているか、改めてチェックが必要です。

なぜなら、2024年4月1日から、

労働契約の締結時(雇入時や契約の更新時)に明示する事項が増え、社員ごとの労働条件の違いが、以前よりはっきりしやすくなったから

です(労働基準法施行規則、図表1の赤字が改正により追加された項目)。

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労働条件についてより詳細な明示が求められるということは、労働条件を曖昧な基準で運用している会社が浮き彫りになりやすいということです。特に同一労働同一賃金は、近年の最高裁判決などでも世間の注目を集めていますので、改めて基本を復習しておく必要があります。

さらに、2024年度はさらなる賃上げが進むと予想されています。誰かの賃金を上げたなら、同じ働きをする社員の賃金も上げなければならないということです。つまり、賃上げと同一労働同一賃金の組み合わせにより、企業はより慎重な賃金管理が求められているということです。

同一労働同一賃金の肝は、

「均等待遇・均衡待遇」を押さえること

です。さっそく確認していきましょう。

2 同一労働同一賃金の肝は「均等待遇・均衡待遇」

「均等待遇・均衡待遇」とは、

  • 仕事の内容などが同じなのに、パート等であるという理由だけで正社員よりも低い労働条件にすることはできない(均等待遇)
  • ただし、能力や成果に基づく待遇格差は、合理的なものであれば問題ない(均衡待遇)

というルールです。具体的には、「図表2の3つの事項を考慮して、社員ごとの待遇が不平等にならないようにしなさい」というものです。

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「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更範囲」が同じなのに待遇格差を設けることはできません。ですが、「3.その他の事情」に該当する、個人の能力や成果に基づく格差は、合理的なものであれば認められます。

なお、パート等から求められたら、会社は正社員との待遇格差の内容やその理由を説明しなければなりません。ですから、待遇格差の合理性を説明できるよう、あらかじめ準備しておく必要があります。

3 同一労働同一賃金に違反した場合のペナルティー

実は、同一労働同一賃金に違反しても法律上の罰則はありません。ですが、

都道府県労働局が、同一労働同一賃金に違反した会社に対して、報告徴収、助言、指導、勧告を行うこと

があります。当然、不合理な待遇格差・差別的な取扱いに当たる就業規則などは無効ですし、

都道府県労働局の勧告に従わない場合、厚生労働省ウェブサイトなどで会社名が公表

されることがあります。

また、各都道府県労働局には相談窓口が設置されています。正社員との待遇格差に不満を持つパート等がここに相談するかもしれません。さらに、パート等から損害賠償請求を受けたり、労働審判の申し立てを受けたりする恐れもあります。

4 均等待遇・均衡待遇を賃金に落とし込む際の考え方

1)正社員にパート等よりも基本給を高く支給するのは違法?

基本給は、「能力・経験」「業績・成果」「勤続年数」など複数の要素で決まります。もしも基本給の額が正社員とパート等とで異なるのであれば、その格差がどの要素に紐づくのかを確認しましょう。

例えば、「能力・経験」に基づいて支給される部分の額について、次のような運用をしている場合、違法になります。

正社員はパート等より多くの経験をしているので、パート等よりも基本給が高い。しかし、正社員の経験は現在の業務とは特に関連性がない

一方、次のような場合、違法になりにくいと考えられます。

正社員は会社が期待するだけの能力を持っているが、パート等は持っていない。だから、能力の違いを理由に、正社員の基本給はパート等よりも高く設定している

2)賞与をパート等にだけ支給しない、支給額を正社員より低くするなどの対応は違法?

賞与にもさまざまな趣旨・目的があります。「人材を確保する、定着させる」「業績に貢献した社員に報いる」などがそうです。もしも、賞与をパート等にだけ支給しない、支給額を正社員より低くするなどの対応をしているのであれば、その対応が賞与の趣旨・目的に照らして合理的といえるかを確認しましょう。

例えば、「業績に貢献した社員に報いる」ために賞与を支給している会社が、次のような運用をしている場合、違法になります。

パート等は正社員と同じぐらい業績に貢献しているが、正社員にだけ賞与を支給している

一方、次のような場合、違法になりにくいと考えられます。

正社員は業績目標について責任を負い、パート等は負わない。だから、正社員には貢献度に応じて賞与を支給し、パート等には貢献度に関係なく定額で賞与を支給している

3)支給する手当の種類や支給額が、正社員とパート等とで異なるのは違法?

一口に手当といっても、職務(役職や業務内容など)に関連するもの、生活(家族や住居など)に関連するもの、勤務(通勤や無遅刻・無欠勤など)に関連するものなど、さまざまです。もしも、手当の種類や支給額が、正社員とパート等とで異なるのであれば、賞与と同じように、1つ1つの手当の趣旨・目的に照らして考えましょう。

例えば、役職に応じて支給する「役職手当」を設けている会社が、次のような運用をしていると、違法になります。

「業務の難易度」を考慮して、役職手当を設けている。正社員には役職手当を支給しているが、同じ役職のパート等には役職手当を支給していない

一方、次のようなケースは違法になりにくいと考えられます。

「役職者の業務負担」を考慮して、役職手当を設けている。正社員には役職手当を支給し、パート等は所定労働時間が正社員の2分の1なので、役職手当も2分の1を支給している

5 参考:派遣社員の同一労働同一賃金

派遣社員についても、同一労働同一賃金が適用されます。実務は主に派遣元で発生しますが、派遣先がやるべきこともあります。興味がある方はお読みください。

1)派遣社員の待遇決定方式1「派遣先均等・均衡方式」

派遣先均等・均衡方式とは、
派遣元が派遣先から待遇情報を提供してもらい、派遣社員の待遇を決定する方式
です。派遣先は、派遣社員と同じ仕事をする通常の社員の待遇情報を、派遣元に提供します。派遣元はその情報を基に、派遣先の通常の社員と比較して均等待遇・均衡待遇になるよう、派遣社員の待遇を決定します。

2)派遣社員の待遇決定方式2「労使協定方式」

労使協定方式とは、

派遣元が労使協定で、派遣社員の待遇を決定する方式

です。派遣元は、対象となる派遣社員の範囲や賃金(賞与、手当、退職金などを含む)の決定方法などを労使協定に定め、自社の過半数労働組合(ない場合は過半数代表者)と締結します。

3)2つの待遇決定方式の比較

どちらの方式であっても、派遣先は派遣社員と同じ仕事をする「通常の社員」の待遇情報を、派遣元に提供します。通常の社員とは、次の1.から6.に該当し、かつその番号が最も若い社員です。例えば、1.と6.に該当する社員がいたら、1.に該当する社員の情報を派遣元に提供します。

  1. 職務の内容と職務の内容・配置の変更範囲が同じ通常の社員(正社員など)
  2. 職務の内容が同じ通常の社員
  3. 業務の内容または責任の程度が同じ通常の社員
  4. 職務の内容・配置の変更の範囲が同じ通常の社員
  5. 1.~4.に相当するパート等
  6. 派遣社員と同一の職務に従事させるため新たに通常の社員を雇い入れたと仮定した場合の当該社員

ただし、派遣先均等・均衡方式と、労使協定方式とで、派遣先が派遣元に提供すべき待遇情報が図表3のように異なります。

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なお、派遣社員が求めてきたら、派遣元は派遣社員と派遣先の通常の社員との待遇格差の内容やその理由を説明しなければなりません。

以上(2024年4月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 栗原功佑)

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画像:pixabay

2024年10月スタートの「社会保険の適用拡大」で負担が増える会社とは?

書いてあること

  • 主な読者:2024年10月1日から「社会保険の適用拡大」の対象になる会社の経営者
  • 課題:社会保険料の負担はいくら増えるのか? 実務上、会社がすべきことは何か?
  • 解決策:現状の賃金などを当てはめて社会保険料を試算する。対象となるパート等に社会保険が適用される旨を伝え、必要に応じて労働条件などを見直す

1 新たに社会保険に加入するパート等とは誰?

「社会保険の適用拡大」とは、2024年10月1日から、社会保険(健康保険と厚生年金保険)の被保険者となるパート等の範囲が拡大されることです。ここでいう「パート等」とは、

週の所定労働時間または月の所定労働日数が、正社員の4分の3未満の短時間労働者

のことです。本来、パート等は社会保険の適用対象外ですが、会社が厚生年金の被保険者数について一定の要件を満たし、さらにパート等が労働時間や賃金について一定の要件を満たすと、社会保険に強制加入となります。2024年10月1日からは、この会社が満たすべき

厚生年金の被保険者数の要件が、「常時100人超」から「常時50人超」に拡大

されます。パート等を雇用する多くの中小企業が対象になるわけです。

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経営者が気になっているのは、パート等が社会保険の被保険者になることで、

  • 社会保険料の負担(法定福利費)はいくら増えるのか?
  • 実務上、会社がすべきことは何か?

だと思います。以降でそれぞれ解説するので、確認していきましょう。

2 社会保険料の負担はいくら増えるのか?

1)まずは条件を設定しよう

2024年10月1日からの社会保険の適用拡大を想定し、会社とパート等の条件を次のように設定します。なお、健康保険の保険者は全国健康保険協会(以下「協会けんぽ」)とし、社会保険料は同協会の「令和6年度保険料額表(東京都)」を用いて計算します。

  1. 厚生年金保険の被保険者数:51人
  2. 週の所定労働時間: 20時間(1日4時間×週5日勤務)
  3. 1カ月当たりの賃金:9万2000円(時給1150円×週20時間×4週)
  4. 勤務期間の見込み:継続して2カ月を超えて使用される見込み
  5. 適用除外:学生でない

なお、時給については、2023年10月1日から、東京都の地域別最低賃金が1113円になったことを受け、1150円で設定しています。

2)会社の毎月の負担は、パート等1人につき最低でも1万2443円増える

社会保険料は、健康保険料と厚生年金保険料に分かれていて、それぞれ、

標準報酬月額(月例賃金を一定の金額幅で等級別に区分したもの)×保険料率

で計算した額を、会社とパート等が折半して負担します。なお、健康保険料率はパート等が40歳未満の場合と、40歳以上65歳未満の場合とで異なります。1)の条件の場合、

  • 標準報酬月額:8万8000円
  • 健康保険料率:9.98%(40歳未満の場合)、11.58%(40歳以上65歳未満の場合)
  • 厚生年金保険料率:18.3%

となり、会社とパート等の社会保険料の負担は次のようになります。

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図表2の場合、パート等が社会保険に加入することで、会社の負担はパート等1人につき

月額1万2443円(1万3147円)、年額に換算すると14万9316円(15万7764円)増える

ことになります。

3 実務上、会社がすべきことは何か?

1)対象となるパート等に、社会保険料の天引きが発生する旨を説明する

パート等の中には現状、配偶者などの家族(被保険者)の扶養に入っている人(被扶養者)がいます。社会保険の適用拡大によって、被扶養者であるパート等が被保険者になると、

家族の扶養から外れ、これまで負担義務のなかった社会保険料が賃金から天引きされる

ようになります。「社会保険料の負担義務がない」という理由でパート等での勤務を希望している人もいるでしょうから、被保険者要件を満たすパート等には、社会保険の適用拡大が開始される前に、社会保険料の天引きが発生する旨を説明しましょう。

なお、パート等の中には現状、家族の扶養に入っておらず、国民健康保険と国民年金に加入して自分で保険料を払っている人もいます。こちらのパート等についても社会保険料の天引きは当然発生しますが、保険料の負担については、

社会保険料<国民健康保険料+国民年金保険料

と、社会保険への加入によって軽くなるケースが多いようです(国民健康保険料の計算方法が自治体によって異なり、賃金額などによっては負担が重くなることもあるので注意)。

また、社会保険への加入により厚生年金にも同時加入する事になりますので、将来、自身が受け取る年金額にも寄与できる旨を説明に加えるのもよいかもしれません。

2)社会保険料の天引きと併せて、保険給付の変更についても説明する

パート等が社会保険の被保険者になると、社会保険料の負担が発生する代わりに、今まで受けられなかった保険給付を受けられるようになります。

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ざっくりイメージを説明すると、

社会保険に加入することで、私傷病や出産で休業する期間の生活保障が受けられるようになり、年金については、国民年金に加えて厚生年金保険の給付も受けられる

ようになります。社会保険料の天引きの件と併せてパート等に伝えてあげると親切です。

3)パート等が希望する場合、労働条件の見直しを検討する

パート等が被扶養者の場合、社会保険が適用されると聞いて「扶養から外れたくないから、もう少し労働時間を短くしたい」などと、会社に相談してくる可能性があります。この点、

会社がパート等と合意して労働条件を変更した結果、パート等が被保険者要件を満たさなくなるのであれば、社会保険に加入させる必要はない

ということになります。

一方、パート等の中には「これ以上労働時間を短くすると、賃金が減って生活が苦しいから社会保険には加入する。むしろ社会保険料が天引きされるなら、もっと労働時間を長くして賃金を増やしたい」と考える人もいるかもしれません。基本的な考え方は労働時間を短くする場合と同じですが、パート等に配偶者がいると、

労働時間を長くしてパート等の給与収入(賃金など)が増えると、パート等の配偶者が所得税の配偶者特別控除を受けられなくなるケースがある

ので注意が必要です。配偶者特別控除の控除額は満額38万円ですが、

  • パート等の給与収入が年額150万円を超えると、控除額は38万円から徐々に減額される
  • パート等の給与収入が年額201万6000円以上になると、控除額は0円になる

という仕組みになっています(扶養者である配偶者の年間給与収入が1195万円以下であることが前提となります)。ですから、労働条件の見直しについては慎重に検討しましょう。

4)社会保険に加入するパート等については、適正に加入手続きを行う

社会保険の適用拡大が施行される前に、パート等の労働条件を見直すのは問題ありませんが、施行後は被保険者要件を満たすパート等を全員、社会保険に加入させなければなりません。

2024年10月1日から社会保険の適用拡大の対象となる会社は、厚生年金保険の被保険者数が常時50人超の会社です。これらの会社に被保険者要件を満たすパート等がいる場合、

被保険者要件を満たすようになった日から5日以内(この場合、2024年10月6日まで)に、各パート等の「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を所轄年金事務所に提出

しなければなりません。

なお、2024年10月1日から社会保険の適用拡大の対象となる会社については、所轄年金事務所から、「特定適用事業所該当事前のお知らせ」「特定適用事業所該当通知書」などの書類が送付されます。厚生年金保険の被保険者数がいつ常時50人を超えたかによって、書類や送付スケジュールが異なるため、詳細は日本年金機構ウェブサイトをご確認ください。

■日本年金機構「令和6年10月1日から特定適用事業所に該当する適用事業所や該当する可能性がある適用事業所に対して、あらかじめ日本年金機構から何らかのお知らせは送付されてきますか。」■

https://www.nenkin.go.jp/faq/kounen/tekiyoukakudai/tokuteitekiyou/oshirase.html

5)新しいパート等の採用に向けて、求人案内や労働条件通知書も見直す

社会保険の適用拡大が開始された以降も、新しいパート等を採用することがあると思います。求人案内や労働条件通知書についても忘れずに見直しておきましょう。

求人案内については、職業安定法上、

募集するパート等に社会保険が適用されるかどうかを、必ず明示しなければならない

ので注意が必要です。社会保険の被保険者要件を満たすのにもかかわらず、「社会保険の適用なし」と記載しているのであれば、内容を修正しましょう。

労働条件通知書については、労働基準法上、社会保険の適用について明示する義務まではありませんが、現状の書式に項目があるのであれば、求人案内と同じように内容を修正します。

なお、社会保険の適用について確認するだけでなく、その他の労働条件が妥当かどうかについても、改めて検討してみましょう。例えば、

  • 現状、パート等の所定労働時間を週20時間に設定しているが、本当に週20時間も働く必要があるのか?
  • 現状、パート等1人につき担当業務を2つ設定しているが、担当業務を1つにする代わりにパート等を2人雇用することで、賃金や労働時間をコントロールできないか?

などを考えてみます。ただし、賃金に変更を加える場合は、最低賃金や同一労働同一賃金などの問題に注意が必要です。

以上(2024年3月更新)
(監修 人事労務すず木オフィス 特定社会保険労務士 鈴木快昌)

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画像:DESIGN ARTS-Adobe Stock

「同一労働同一賃金」チェックリスト 御社の対応は本当に大丈夫?

書いてあること

  • 主な読者:同一労働同一賃金に対応できているかを確認したい経営者
  • 課題:何をもって同一労働同一賃金に対応できているといえるのかが分からない
  • 解決策:「均等待遇・均衡待遇」を理解し、その実現度合いをチェックする

1 「均等待遇・均衡待遇」の理解が第一歩

パート等(パートやフルタイムの契約社員)の労働条件を考える上で無視できない「同一労働同一賃金」。すでに施行済の内容ではありますが、

2024年4月1日から、労働契約の締結時に明示する事項が増えた(労働基準法施行規則)

ことなどにより、パート等の労働条件について一層チェックが厳しくなることが予想されます。ですから、自社の対応に抜け漏れがないか再度、確認してみましょう。

ポイントは「均等待遇・均衡待遇」です。

1.均等待遇

パート等と正社員との間で、「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更の範囲」が同じ場合、パート等であることを理由とした差別的取扱いを禁止することをいいます。なお、同じ取扱いのもとで、能力・経験等の違いにより差がつくのは構いません。

2.均衡待遇

パート等と正社員との間で、「1.職務の内容」「2.職務の内容・配置の変更の範囲」「3.その他の事情」を考慮して不合理な待遇差を禁止することをいいます。

以降で、均等待遇・均衡待遇を実現できているかを確認するためのチェックリストを紹介します。早速見ていきましょう。

2 チェック1:パート等の状況はどうなっているか?

パート等が「均等待遇・均衡待遇」の対象になるかを確認します。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。なお、このチェックリストは転勤のない場合を想定しています。

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「○」「×」の見方は次の通りです。この確認が終わったら、次章に進んでください。

  • 全て「○」:均等待遇の対象
  • 1~5のいずれかが「×」:均衡待遇の対象

3 チェック2:賃金に待遇格差はあるか?

次に、正社員とパート等の待遇を比較します。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。なお、図表2の待遇は一例ですので、自社の内容に置き換えてお使いください。対象となるのは、正社員とパート等に対する全ての待遇(基本給、賞与、手当、退職金、福利厚生、教育訓練、安全管理など)です。

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「○」「×」の見方は次の通りです。待遇格差がある場合、次章に進んでください。待遇格差がない場合、御社は同一労働同一賃金に対応できています。

  • 全て「○」:待遇格差はない。同一労働同一賃金に対応できています!
  • 1~2が「○」:基本給の待遇格差はない
  • 1または2が「×」:基本給の待遇格差があり、検証が必要
  • 3~4が「○」:賞与の待遇格差はない
  • 3または4が「×」:賞与の待遇格差があり、検証が必要
  • 5~6が「○」:○○手当の待遇格差はない
  • 5または6が「×」:○○手当の待遇格差があり、検証が必要

4 チェック3:待遇格差に合理性はあるか?

チェック3はとても重要です。正社員とパート等の間に待遇格差がある場合、それが合理的かどうか、つまり同一労働同一賃金に対応できているかどうかを確認する内容になるからです。次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。

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「○」「×」の見方は次の通りです。是正が必要な待遇格差がある場合、次章に進んでください。是正が必要な待遇格差がない場合、御社は同一労働同一賃金に対応できています。

  • 全て「○」:待遇格差は合理的、同一労働同一賃金に対応できています!
  • 1または2が「×」:待遇格差は不合理であり、是正が必要

なお、チェック1で「均等待遇」の対象となったパート等(図表1の項目が全て「○」だったパート等)の場合、そもそも全ての待遇について正社員と同じ取扱いにすることが義務付けられているので、このチェックをするまでもなく、速やかに正社員と同じ取扱いにするための検討を行う必要があります。

5 チェック4:待遇格差の是正は進んだ?

最後のチェックです。ここまで進んできたということは、御社には是正すべき待遇格差があるということです。実際に待遇格差の是正を行った上で、次のチェックリストに「◯」「×」を入れてください。

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全て「○」になったら、ひとまず同一労働同一賃金の対応は完了です。パート等の人数などによっては対応までに時間がかかることもあるでしょうが、同一労働同一賃金に対応しようとする会社の姿勢を社員に示すことはとても重要です。

以上(2024年4月更新)
(監修 有村総合法律事務所 弁護士 渡邉和也)

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画像:photo-ac

【登録無料】商品やサービスを掲載して販路を拡大!

1 お役立ちサービスって何?

当社の商品・サービスをもっと多くの人に知ってもらい、販路を拡大したい! そのような会員の皆さんにご案内したいのが、サクセスネットの「お役立ちサービス」です。これは、指定のフォーマットに情報を入力するだけで、御社イチオシの商品・サービスを他の会社にPRできる「無料」のサービスです。

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2 実際に登録してみましょう!

手順

1)トップページから「お役立ちサービスの登録」をクリックします

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※【お役立ちサービスの登録】→【新規作成】でページに飛べます

2)「新規作成」をクリックします

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3)「メーン画像」をアップします

左上の「ファイルを選択」をクリックし、商品・サービスのアイキャッチ画像をアップしてください(画像の推奨サイズ:横800px 縦400px)。商品・サービスを使っている様子が分かる画像などがあると、会員にイメージが伝わりやすいです。

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4)「タイトル」を入力します

商品・サービスの内容を表すタイトルを140字以内で入力してください

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例えば、次のようなタイトルは会員の目を引きやすいです

■ヒント1:「誰の、どんな課題を解決するのか」をタイトルの頭に

 (例)営業担当の売上アップをサポート! AI分析ツール「○○」

■ヒント2:「イチオシのポイント」をタイトルの頭に

(例)最先端AIで将来の売上データを予測! AI分析ツール「○○」

5)「サービス提供」を入力します

会社名を入力してください

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6)「会社名および商品・サービスの概要」を入力します

240字以内で商品・サービスの特徴や性能などを簡潔にまとめて記入してください

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例えば、次のような点を工夫すると、会員に伝わりやすくなります

■ヒント1:商品・サービスのメリットを分かりやすく

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■ヒント2:具体的な実績を明らかに

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7)カテゴリ1、2を選択します

商品・サービスに適していると思われるカテゴリを選択してください。

●カテゴリ1:下記12種類から一つ選んでください。

  • 売り上げを上げたい
  • 営業力を強化したい
  • 海外進出したい
  • 人材を採用・教育したい
  • 資金を調達したい
  • リスク・トラブルに備えたい
  • 業務を効率化したい(IT化、DX)
  • 市場動向などをリサーチしたい
  • 事業承継やM&Aに興味がある
  • 専門家に気軽に相談したい
  • 他の経営者と交流したい
  • 自身や家族の健康に気をつけたい

●カテゴリ2:下記8種類から一つ選んでください。

  • 経営戦略
  • 営業・マーケティング
  • 採用・教育・人事労務
  • 会計・税務
  • 法務・リスク
  • 業務効率化
  • 市場動向
  • 経営者

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8)強調したいキーワードを入力します

商品・サービスについて、強調したいキーワードを登録してください。ここで登録されたキーワードは「タグ」となり、同じタグが登録された別の情報と関連して表示されます。

半角カンマで区切ると、キーワードを複数登録することができます。

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どんなテーマの記事を探している方に読んでほしいかを考えましょう。

9)具体的な商品・サービスの内容を入力します。

「商品やサービスの性能や特徴など」「導入事例」「料金や条件など」を入力します。

「商品やサービスの性能や特徴など」については入力必須です。

【掲載する内容の例】

  • 商品の概要
  • 活用すると解決できる経営者(利用者)の課題
  • 経営者(利用者)のメリット
  • 実際に活用している経営者(利用者)の声   など

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■ヒント1:説明は「見出し」「太字」などを付けて分かりやすく

例えば、商品・サービスの性能や特徴を複数記入したい場合、

  • 性能1:○○…
  • 性能2:□□…

といった具合に「見出し」を付けると読みやすいです。また、性能や特徴で特にアピールしたい部分は「太字」にすると伝わりやすいです。

見出しや太字を作る際は、「マークダウン(Markdown)」というウェブ上の文字の書き方を知っておく必要があります。以下の記事で詳しく紹介していますのでご確認ください。

■ヒント2:料金や条件は「画像」があると伝わりやすい

商品・サービスの料金や条件は、文章で説明してもいいですし、表などの「画像」を活用して伝わりやすくしてもよいです(画像の推奨サイズ:横800px 縦400px)。

10)お問い合わせ先や表示の設定をします

「商品・サービスのお問合せ先のメールアドレス」「この情報を見て欲しい企業の興味関心・所在地・業種」を入力します。

メールアドレスは、必ず1つ以上は入れてください。

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11)下書きを保存して最終確認をします

「下書き保存して、プレビューする」をクリックすると、お役立ちサービスのプレビュー画面が表示されます。

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プレビュー内容に問題がなければ「公開する」をクリックします。

修正がある場合、「登録・編集画面に戻る」をクリックします。

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以上(2024年2月作成)

同一労働同一賃金とは?企業に必要な対策をガイドラインにそって解説

現在、非正規雇用労働者の割合は、労働者全体のほぼ4割を占めています。
非正規雇用は多様な働き方を実現する一方で、さまざまな問題点も指摘されていますが、その1つが正規雇用労働者との間に存在する待遇格差です。

そこで国は、待遇差のうち、どのようなものが不合理であり、どのようなものが不合理でないのか、原則となる考え方と具体例を示した「同一労働同一賃金ガイドライン」を公表しています。

そのガイドラインにそって、同一労働同一賃金のルールがどのようなものか、企業にはどのような対策が求められるのか、わかりやすく解説します。

同一労働同一賃金とは?

国は2018年12月28日に、「短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針」を公表しました。*1
いわゆる「労働者派遣法」(2020年4月1日より施行)と「パートタイム・有期雇用労働法」(2021年4月1日より全面施行)を反映させた内容で、これが「同一労働同一賃金ガイドライン」(以後、「ガイドライン」)と呼ばれるものです。*2

まず、「ガイドライン」の背景と趣旨をみていきましょう。

背景

この問題の背景には、非正規雇用労働者の多さと、正規雇用者との待遇格差があります。

下の図1は、労働者数の推移を表しています。*3

図1 正規・非正規雇用労働者数・割合の推移

図1 正規・非正規雇用労働者数・割合の推移
出所)厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」p.1
https://www.mhlw.go.jp/content/001214080.pdf

非正規雇用労働者は、2010年以降増加が続き、2020年にはやや落ち込みましたが、その後、再び増加に転じ、2023年には労働者全体の37.1%を占めています。

非正規雇用労働者の中では、パート(48.5%)とアルバイト(21.6%)の割合が高く、契約社員(13.3%)がそれに続いています。

また非正規雇用労働者のうち、正社員として働く機会がなく、非正規雇用で働いている、いわゆる「不本意非正規雇用」の割合は、非正規雇用労働者全体の9.6%(2023年)に当たります。

では、待遇はどうでしょうか(図2)。

図2 年齢階層別賃金(時給ベース)

図2 年齢階層別賃金(時給ベース)
出所)厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」p.5
https://www.mhlw.go.jp/content/001214080.pdf

この図から、非正規雇用労働者の平均賃金は、一般労働者(非短時間労働者)が601円、短時間労働者が517円、正規雇用労働者(正社員・正職員)より低いことがわかります。

さらに、教育訓練の実施状況を正規雇用労働者と比較すると、非正規雇用労働者は、無期雇用パートタイム、有期雇用パートタイム、有期雇用フルタイムのいずれの就業形態においても、「計画的な教育訓練(OJT)」、「入職時のガイダンス(Off-JT)」は正規雇用労働者の7割前後となっています。
また、「将来のキャリアアップのための教育訓練(Off-JT)」は正規雇用労働者のわずか29.2%~35.7%と、その格差が際立っています。

このように、ガイドライン策定の背景には、全労働者に占める非正規雇用労働者の割合が高いのにもかかわらず、正規雇用労働者に比べて待遇が悪いという問題があります。

同一労働同一賃金の概要

同一労働同一賃金の導入は、同一企業における正規雇用労働者と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者)との間の不合理な待遇差の解消を目指すものです。*2
そして、どのような雇用形態を選択しても納得が得られる処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できる働き方を目指しています。

留意点は以下の2点です。*4

1)同じ企業で働く正社員と短時間労働者・有期雇用労働者との間で、基本給や賞与、手当、福利厚生などあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが禁止されている。

2)事業主は、短時間労働者・有期雇用労働者から、正社員との待遇の違いやその理由などについて説明を求められた場合は、説明をしなければならない。

禁止される差別的待遇、何が含まれる?

ガイドラインには、まず「原則になる考え方」が示され、次に裁判で争い得る範囲として、「問題とならない例」「問題になる例」が記されています。*5

同一労働同一賃金で禁止される差別待遇にはどのようなものがあるのか、非正規雇用労働者の約7割を占める短時間労働者・有期雇用労働者を対象に、ガイドラインにそってみていきましょう。

ポイントは、短時間労働者・有期雇用労働者の待遇が、正規雇用労働者との働き方や役割の違いに応じたものになっているかどうかです。*4

基本給

原則となる考え方は、以下のようなものです。

労働者の「能力・経験」「業績・成果」「勤続年数」に応じて支給する場合は、これらが同一であれば同一の支給をし、違いがあれば違いに応じた支給をする。*4

問題となるのは、以下のようなケースです。

1)能力・経験に応じて基本給を支給している会社で、正社員が多くの経験を有することを理由に短時間労働者・有期雇用労働者より高い基本給を支給しているが、正社員のこれまでの経験は現在の業務に関連がない。

2)労働者の勤続年数に応じて支給している会社で、短時間・有期雇用労働者に対し、当初の労働契約の開始時から通算して勤続年数を評価せず、その時点の労働契約の期間のみによって勤続年数を評価した上で支給している。*1

昇給に関しての原則となる考え方は、以下のようなものです。

労働者の勤続による能力の向上に応じて行うものについては、同一の能力の向上には同一の、違いがあれば違いに応じた昇給を行わなければならない。*5

問題となるのは、こうした原則から外れたケースです。

賞与

原則となる考え方は、以下のようなものです。

会社の業績などへの労働者の貢献に応じて支給するものについては、同一の貢献には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。*4

問題となるのは、以下のようなケースです。

1)正社員には職務内容や会社の業績などへの貢献などにかかわらず全員に何らかの賞与を支給しているが、短時間・有期雇用労働者には支給していない。

2)会社の業績などへの労働者の貢献に応じて支給している会社で、正社員と会社の業績などへの同等の貢献がある有期雇用労働者に対し、同一の賞与を支給していない。*1

各種手当

原則となる考え方は、以下のようなものです。*5

1)役職手当で、役職の内容に対して支給するものについては、同一の内容の役職には同一の、違いがあれば違いに応じた支給を行わなければならない。

2)以下のような各種手当については、同一の支給を行わなければならない。

  • 業務の危険度または作業環境に応じて支給される特殊作業手当
  • 交替制勤務などに応じて支給される特殊勤務手当
  • 業務の内容が同一の場合の精皆勤手当
  • 所定労働時間を超えて正社員と同一の時間外労働に対して支給される時間外労働手当の割増率
  • 深夜・休日労働を行った場合に支給される深夜・休日労働手当の割増率
  • 通勤手当・出張旅費
  • 労働時間の途中に食事のための休憩時間がある際の食事手当
  • 同一の支給要件を満たす場合の単身赴任手当
  • 特定の地域で働く労働者に対する補償として支給する地域手当

問題となるのは、以下のようなケースです。*1

1)役職の内容に対して役職手当を支給している会社で、正社員の役職と同一の役職名であって同一の内容の役職に就く有期雇用労働者に、役職手当を正社員より低く支給している。

2)正社員と同じ時間数、職務の内容の深夜労働または休日労働を行った短時間労働者に、深夜労働または休日労働に対して支給される手当の単価を正社員より低く設定している。

3)正社員には、有期雇用労働者に比べ、食事手当を高く支給している。

4)正社員と有期雇用労働者にいずれも全国一律の基本給の体系を適用しており、かつ、いずれも転勤があるにもかかわらず、有期雇用労働者には地域手当を支給していない。

福利厚生・教育訓練

原則となる考え方は、以下のようなものです。*5

1)以下については、同一の利用・付与を行わなければならない。

  • 食堂、休憩室、更衣室など福利厚生施設の利用
  • 転勤の有無などの要件が同一の場合の転勤者用社宅
  • 慶弔休暇
  • 健康診断に伴う勤務免除・有給保障

2)病気休職については、無期雇用の短時間労働者には正社員と同一の、有期雇用労働者にも労働契約が終了するまでの期間を踏まえて同一の付与を行わなければならない。

3)法定外の有給休暇その他の休暇は、勤続期間に応じて認めているものについては、同一の勤続期間であれば同一の付与を行わなければならない。特に有期労働契約を更新している場合には、当初の契約期間から通算して勤続期間を評価する必要がある。

4)教育訓練は、現在の職務に必要な技能・知識を習得するために実施するものについては、同一の職務内容であれば同一の、違いがあれば違いに応じた実施を行わなければならない。

問題となるのは、以上の原則から外れたものです。

なお、このガイドラインに記載がない退職手当、住宅手当、家族手当などの待遇や、具体例に該当しないケースについても、不合理な待遇差の解消が求められています。*1
そのため、ガイドラインには、各社の労使により、それぞれの事情に応じて待遇の体系について議論していくことが望まれると記されています。

同一労働同一賃金への対応 企業のメリットは?

同一労働同一賃金は、企業にとっては人件費の上昇を意味します。
では、この問題に取り組むメリットはどこにあるのでしょうか。

厚生労働省の「同一労働同一賃金に関する法整備について(報告)」には、「雇用形態にかかわらない公正な評価に基づいて待遇が決定される」ことによる効果が、以下のように記されています。*6

多様な働き方の選択が可能となるとともに、非正規雇用労働者の意欲・能力が向上し、労働生産性の向上につながり、ひいては企業や経済・社会の発展に寄与する

また、非正規雇用労働者の待遇情報がオープンになれば、労働市場を通じて正規雇用労働者との不合理な格差を是正するメカニズムが働くようになるため、待遇に関する企業の情報がオープンになればなるほど、企業は労働市場で選別されるようになるという指摘もあります。*7

したがって、ガイドラインにそって非正規雇用労働者に公正な待遇を担保し、それをオープンにすれば、労働者から選ばれる企業になるポテンシャルが高まるといえるでしょう。

ただし、逆に、不公正な待遇情報がオープンになると、離職率が上昇するだけではなく、新規の人材獲得にも苦戦するようになるというリスクも指摘されています。

人事担当者が取り組むべき対策

同一労働同一賃金に関して、人事担当者がとるべき具体的な対策についてみていきましょう。

導入に際しては、以下のような3ステップをふむことが大切です。*2

STEP1:情報収集と社内点検

まず、情報収集は以下の3つが基本です。

  • パンフレット・リーフレット で法律の内容を把握する
  • 自社の法遵守の状況を法対応チェックツールで確認する
  • 相談窓口に法律の内容を詳しく聞いてみる

次に、社内点検では、以下のポイントを押さえます。

1)従業員の雇用形態の確認

  • 正社員と比べてパート・アルバイトなど労働時間が少ない従業員はいるか。
  • 契約社員や派遣労働者など契約期間が決まっている従業員はいるか。

2)労働条件の確認

  • 法を遵守した雇用契約書になっているか。
  • 正社員とパート・アルバイトなどとの間で待遇に違いはないか。

STEP2:就業規則と賃金体系の見直し

就業規則と賃金体系の見直しについては、厚生労働省による、以下のような支援の活用を検討しましょう。

1)「働き方改革推進支援センター」:労務管理の専門家による無料の相談支援

2)「キャリアアップ助成金」:非正規雇用労働者の正社員化や待遇改善を実施した事業者への助成金の支給

3)職務分析・職務評価の導入支援:基本給の現状確認・賃金制度見直しの一助になる

STEP3:検証

同一労働同一賃金の取り組みによって、従業員のモチベーションが向上したか、離職率は低下したかなどを検証し、その結果を今後の取り組みにいかします。

おわりに

同一労働同一賃金にどのように対応すれば、企業の競争力向上につながるのでしょうか。

それをテーマにした研究では、種々の分析をふまえ、以下のような結論を導き出しています。*7

同一労働同一賃金の待遇説明義務がただちに企業の競争力を高めるのではなく、競争力を高めるために待遇説明をどういかすかという発想の転換が、企業には求められることが示された。

これは、企業の競争力向上に結び付くような有益な効果は、同一労働同一賃金を導入すればそれだけで自動的に得られるものではないということを意味しています。

公正な待遇やそれを説明をすること自体が即メリットにつながるわけではなく、日々の職場での個別のコミュニケーションを通じて、待遇に対する非正規雇用労働者の納得度が高まり、モチベーションがアップする。そのことによって能力開発や職場への積極的な参加を促すことができ、それが企業の競争力向上につながるというのです。

こうした視点も備え、同一労働同一賃金が、従業員・企業双方にとって有益な取り組みになるよう配慮することが、人事担当者の腕の見せ所ではないでしょうか。

資料一覧

*1
出所)厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」(厚生労働省告示第430号)p.7, p.9, p.10, pp.11-12, p.13
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000469932.pdf

*2
出所)厚生労働省「同一労働同一賃金特集ページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html

*3
出所)厚生労働省「非正規雇用の現状と課題」p.1, p.4
https://www.mhlw.go.jp/content/001214080.pdf

*4
出所)厚生労働省「「同一労働同一賃金」への対応に向けて」p.1, p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/000824263.pdf

*5
出所)厚生労働省「「同一労働同一賃金ガイドライン」の概要①」p.1, p.2
https://www.mhlw.go.jp/content/11650000/000470304.pdf

*6
出所)厚生労働省「同一労働同一賃金に関する法整備について(報告)」p.1
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12602000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Roudouseisakutantou/0000167471.pdf

*7
出所)中村天江(リクルートワークス研究所主任研究員)「「同一労働同一賃金」は企業の競争力向上につながるのか?─待遇の説明義務に着目して」(『日本労働研究雑誌』)pp.54-55,p.42
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2019/05/pdf/042-056.pdf

以上(2024年3月)

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2024年問題と物流業界 解決すべき課題と対策は?

トラック、タクシー、バスなどの自動車運送は、私たちの生活や経済活動を支えています。
ところが、その自動車運送業界は現在、危機に瀕しています。ドライバーの時間外労働の上限を規制する「改善基準告示」の改正が2024年4月に施行されるためです。

この問題は現在、自動車運転業界、特にトラック運転者が担う物流に深刻な影響を与えます。
これがいわゆる「2024年問題」です。

その最大の問題とはなんでしょうか。
また、その問題を解決するためには、どのような取り組みが必要でしょうか。

本記事では、自動車運送業界のうち物流に対象を絞り、2024年問題によって物流が直面する課題について解説し、国の打ち出した対策を中心に、そのソリューションを明らかにします。

2024年問題の概要と物流業界

まず、2024年問題の概要についてみていきましょう。

背景

持続可能な物流の実現に向けてドライバーの安定的な確保は大切ですが、トラック業界は、ドライバー不足という大きな課題を抱えています。*1

2022年9月の求人倍率は、全職業平均が1.20であるのに対して、トラック運転者は2.12と、約1.8倍に上っています(図1)。

図1 トラック運転者の求人倍率の推移

図1 トラック運転者の求人倍率の推移
出所)国土交通省「国民のみなさまへ トラック運転者手の仕事を知ってみよう 統計からみるトラック運転者の仕事」
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

こうしたドライバー不足の大きな要因として、他業種に比べて厳しい労働環境にあることが挙げられます。
全産業平均に比べて、労働時間が約20%長いのにもかかわらず、賃金は約5~10%安く、業務内容が厳しい現場もあります。

労災請求・支給決定の件数も、こうした道路貨物運送業の長時間・過重労働を物語っています。*2
2022年度の脳・心臓疾患の労災請求件数は133件、労災支給決定件数は50件に上り、ともに全業種の中で最多です。

こうした労働環境を改善するためには、物流現場での働き方改革が必要です。また、自動車運転者の過重労働を防ぐことは、労働者自身の健康確保だけでなく、国民の安全確保の観点からも重要です。*3

「自動車運転者の労働時間等の改善のための基準」(以後、「改善基準告示」)の見直しは、こうした状況を背景にしています。

改善基準告知の改正内容

改善基準告示は、法定労働時間の段階的な短縮を踏まえて見直しが行われた1997年以降、改正が行われていませんでした。*3

しかし、2022年12月に自動車運転者の健康確保などの観点から見直しが行われ、トラック、バス、ハイヤー・タクシーなどの自動車運転者について、労働時間などの労働条件の向上を図るため、拘束時間の上限、休息期間、運転時間などについて新たな基準が定められました。

労働基準法改正による時間外労働の上限規制では、年間960時間と定められていたものの、これまで適用が猶予されていました。したがって、違反しても罰則はありませんでしたが、2024年4月からは違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が科されることがあります(図2)。*2

図2 労働基準法改正による時間外労働の上限規制の適用

図2 労働基準法改正による時間外労働の上限規制の適用
出所)公益社団法人 全日本トラック協会「解説 トラック運転者の改善基準告示ー2024年4月適用ー」p.1
https://jta.or.jp/pdf/kaizen/kaizen_text.pdf

この960時間は将来的には一般労働者と同じ720時間にすることを目指しています。

次に、下の表1は、トラックの改善基準告示見直しのポイントです。*3

表1 トラックの改善基準告示見直しのポイント

表1 トラックの改善基準告示見直しのポイント
出所)厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト>トラック運転者の改善基準告示>改善基準告示とは?」
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice

こうした改正の施行が2024年4月1日であることから、この改正とその影響は「2024年問題」と呼ばれています。

物流業界最大の問題とは?

では、この2024年問題で、物流業界に想定される最大の問題とはなんでしょうか。
それは、輸送力不足です。

国は施策がない場合、需要に対して、2024年には14%、2030年には34%、輸送力が不足すると試算しています。*4

その背景となる状況を、厚生労働省による「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果」(2021年度)からみていきましょう。

1年の拘束時間

表1でみたように、「改善基準告示」の改正では、1年の拘束時間(「労働時間」+「休憩時間」)の上限を、現行より216時間短い3,300時間に定めています。

しかし、1年の拘束時間が3,300時間を超えるトラック運転者の割合は21.7%に上ります(図3)。*5

図3 トラック運転者の1年の拘束時間

図3 トラック運転者の1年の拘束時間
出所)厚生労働省「資料1 自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」p.3
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883703.pdf

1日の休息期間

休息期間はどうでしょうか。
「改善基準告示」では、1日の休息期間(業務終了時刻から、次の始業時刻までの時間)を、継続11時間を基本とし、下限を9時間と定めています。

しかし、継続11時間を超えるのは全体のわずか31.1%で、下限の継続9時間を超えるのも52.4%にすぎません(図4)。

図4 トラック運転者の1日の休息期間

図4 トラック運転者の1日の休息期間
出所)厚生労働省「資料1 自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」p.11
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883703.pdf

足元のトラック運転者不足

上述したように、改善基準告示の改正は、ドライバーの健康確保の観点から、労働時間などの労働条件の向上を図るためです。それは、ドライバー不足の大きな要因である厳しい労働環境を改善することにもつながります。

しかし、1年の拘束時間と1日の休息期間の実態からもわかるように、改正された改善基準告示を遵守するためには、ドライバーの労働時間を現在よりかなり削減する必要があります。
その影響で短期的には人手不足がさらに厳しくなり、輸送力不足という深刻な状況をまねくことが危惧されています。

これが「2024年問題」最大の課題です。

不足する人手…取り組むべき対策とは

2024年2月16日、国は「2024年問題」の対策指針を示した「2030年度に向けた政府の中長期計画」(以後、「中長期計画」)を公表しました。
その内容を中心に、物流業者がとるべき対策についてみていきましょう。

賃金の引上げ

まず、2024年に、運転者確保のための賃上げを図ります(図5)。*6

図5 賃上げの効果

図5 賃上げの効果
出所)内閣官房「物流革新及び賃上げに向けた政府の取組」p.9
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/ik_dai1/siryou.pdf

トラック事業者が受け取る「標準的運賃」を8%引き上げるほか、荷物の積み下ろし作業にも適正な対価を求め、これらの対応によってトラック事業者の収益を改善させ、運転者の賃金を2024年度に10%前後引き上げることを目指します。

逆にいえば、これらの施策をとらず、賃上げの達成ができない物流業者は、今以上に深刻な人手不足に陥る可能性が高いといっていいでしょう。

政策パッケージ

国は「政策パッケージ」を打ち出し、さまざまな施策を積み上げれば、輸送力の不足分を補えるという試算を示しました(表2)。*6

表2 政策パッケージの効果

表2 政策パッケージの効果
出所)内閣官房「物流革新及び賃上げに向けた政府の取組」p.9
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/ik_dai1/siryou.pdf

パッケージの内容を概観していきましょう。

(1)荷待ち・荷役の削減

荷主や物流事業者を対象に、自動化・機械化設備・システム投資を支援することで、2030年度までに運転者の荷待ちや荷役の時間を2019年度比で1人あたり年間125時間削減する。

(2)積載率向上・物流の効率化

共同輸配送や帰り荷確保を促進する取り組みなどによって、2030年度までに積載率を44%にまで増加させる。また、自動運転やドローンなどデジタル技術を活用し、物流の効率化を図る。

(3)モーダルシフト

鉄道(コンテナ貨物)や内航海運(フェリー・RORO船など)の輸送量を今後10年程度で倍増することを目指し、トラックなどの自動車で行われている貨物輸送を環境負荷の小さい鉄道や船舶の利用へと転換する。

(4)再配達削減

コンビニ受け取りや置き配、ゆとりある配送日時の指定など、物流負荷の低い受取方法を選択した消費者に対しポイントを還元する実証事業などを行い、再配達を現在の12%から6%に削減する。

(5)トラック輸送力拡大など

大型トラックの法定速度を2024年4月に90km/hに引き上げる。また、トラック輸送の省人化の促進や労働生産性の向上に向けて、1台で通常のトラック2台分の輸送を可能とする「ダブル連結トラック」の導入を推進し、その運転に必要な大型免許の取得を促進するなどの取り組みをする。

物流業者は、今後、以上のような施策が実施されることを睨み、それに対応可能な体勢を整えることが重要です。

おわりに

物流は国民の生活と経済活動を支える重要な社会インフラです。
そのため、国も2024年問題を解決するために、中長期計画をとりまとめ、有益な対策を講じようとしています。
物流業者には、そうした対策に歩調を合わせ、対応することが求められることになります。

最後に、中長期計画に盛り込まれていない点に言及したいと思います。
それは、2024年問題は、長期的な観点に立てば、今まで採用できなかった優秀な人材を採用するチャンスとも捉えられるのではないかということです。

たとえば、トラック運転者は男性がなるものというイメージがありますが、国は「トラガール促進プロジェクト」と銘打った取り組みを推進しています。*7
「トラガール」とはトラック・ガール、つまり女性のトラック運転者のことです。

国土交通省「トラガール促進プロジェクト」

トラック運送業界では近年、女性をトラック運転者として積極的に採用する動きが広がってきました。そのため、トイレや更衣室など施設の改修や力仕事の必要のない車両の整備、ライフスタイルに合わせた働き方が選べる制度の創設、福利厚生の充実など、さまざまな取り組みを進めています。*8

そうした観点からみれば、改善基準告示の改正・施行も、中長期計画も、女性が働きやすい環境の整備とも通じます。

国の打ち出した対策とともに、こうした視点を備えることも必要ではないでしょうか。

資料一覧

*1
出所)国土交通省「国民のみなさまへ トラック運転者の仕事を知ってみよう 統計からみるトラック運転者の仕事」
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/work

*2
出所)公益社団法人 全日本トラック協会「解説 トラック運転者の改善基準告示ー2024年4月適用ー」p.2, p.1
https://jta.or.jp/pdf/kaizen/kaizen_text.pdf

*3
出所)厚生労働省「自動車運転者の長時間労働改善に向けたポータルサイト>トラック運転者の改善基準告示>改善基準告示とは?」
https://driver-roudou-jikan.mhlw.go.jp/truck/notice

*4
出所)内閣官房「2030年度に向けた政府の中長期計画(ポイント)」(2024年2月16日)p.2
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/pdf/20240216.pdf

*5
出所)厚生労働省「資料1 自動車運転者の労働時間等に係る実態調査結果(概要)」(2021年)p.3, p.11
https://www.mhlw.go.jp/content/11601000/000883703.pdf

*6
出所)内閣官房「物流革新及び賃上げに向けた政府の取組」p.9, p.5, p.6, p.8, p.7
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/buturyu_kakushin/ik_dai1/siryou.pdf

*7
出所)国土交通省「トラガール促進プロジェクト」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/index.html

*8
出所)国土交通省「トラガール促進プロジェクト>トラガールの魅力」
https://www.mlit.go.jp/jidosha/tragirl/miryoku/

以上(2024年3月)

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