書いてあること
- 主な読者:営業部に配属されたがお客様とうまく話せない “営業初心者”や「営業が苦手な部下」を持つマネジャー
- 課題:お客様と話すとき、必要以上に委縮してしまう
- 解決策:怖れるなかれ、失敗はあってよい。あとは、簡潔に話す、プラスの言い方をするなど日ごろの訓練がものを言う
1 営業担当者は「お客様が怖い」?
営業担当者がお客様としっかりコミュニケーションが取れない。うまく提案できない。多くの会社で共通する課題です。例えば、お客様のニーズや提案の検討状況など確認するための質問ができない営業担当者が少なくないのです。
営業担当者がお客様に質問できない理由は2つです。1つ目は、質問すべきことが分からないことです。上司の指示の下、言われたことをやっているだけの営業担当者は、何を質問したらよいか自分で考えることができません。
2つ目は、営業担当者に「お客様が怖い」という気持ちがあることです。確かに、お客様と向き合いその声に真摯に耳を傾けようとすればするほど、大切なお金を支払っていただいていると思えば思うほど「お客様は怖い」ものです。
しかし、必要以上に「お客様が怖い」と萎縮するのは問題です。行き過ぎると、「時間がない」と言い訳をして、お客様への連絡や提案などを避け、後回しにするようになるでしょう。これでは営業のチャンスを逃してしまいます。
「お客様が怖い」を克服して営業力を強化するには、訓練することが大切です。特に営業担当者が苦手意識を持ちやすい「質問するとき」「プレゼンテーション(プレゼン)するとき」について、今日からでも社内でできる訓練法や心構えを見てみましょう。
2 質問の訓練は、事前準備が大切
質問の訓練は、質問する役とお客様役に分かれて行うロールプレイング(ロープレ)が効果的です。お客様役には営業経験の豊富な上司や先輩が適していますが、今までにない視点を求めるなら、若手社員をお客様役にするのも一策です。
「お客様が怖い」を克服するための訓練は、臨場感が必要です。質問する役はもちろん、お客様役も、想定するお客様のことを事前に情報収集した上で訓練に臨みましょう。この事前準備を習慣づけると、実際の営業現場でも役に立ちます。
また、質問する役が「この質問によって商談をどのように進めたいのか」を考え、自分の意思を持っておくことも不可欠です。冒頭で紹介した「何を質問したらよいか自分で考えることができない」という問題の解決にもなるでしょう。
そこでお客様役は、質問する役が「どうしたいのか」をあらかじめ確認し、その方向に進む質問ができているかをチェックしましょう。例えば提案プランAの導入を目指すなら、Aについての感触を確認する質問ができているか、などのようにです。
3 「簡潔に分かりやすく」の訓練
「お客様が怖い」という気持ちが先立つと、「嫌がられたらどうしよう」「断られたらどうしよう」という不安がどんどん大きくなります。その結果、お客様に対して回りくどい言い方で長々と質問してしまうことがあります。
状況や関係性にもよりますが、回りくどい質問は、お客様を不快な気分にさせます。質問の意図が分からず、答えにくいからです。こうならないように、訓練の際に簡潔で分かりやすい言い方を心掛けることが大切です。
例えば、質問する役は、初めに「お聞きしたいことが3点あります」と言って、質問が何点あるか明らかにすることを習慣づけます。そうすれば、相手に「いつまで質問が続くのだろう」と思わせることはなくなるでしょう。
また、5W2H「いつ・どこで・誰が・何を・なぜ・どうする・いくら」を明らかにすれば、自分の考えを整理して質問ができます。特に重要かつお客様に聞きにくいのは「なぜ」です。必ず「なぜ」を明らかにする訓練をしましょう。
4 「プラスの言い方」の訓練
質問も含め、お客様と話をする際はできるだけプラスの言い方をすることが大切なのですが、「お客様が怖い」と思い過ぎていると、自分のほうからマイナスの言い方をしてしまうことがあります。
例えば、「この方法が良いと思いますが、これだと手間が掛かって大変ですよね?」と聞くのと、「多少手間が掛かるかもしれませんが、これがお客様のニーズに合った一番良い方法です。いかがですか?」と聞くのとでは印象が全く違います。
お客様に対してプラスの言い方ができるようになるには、ロープレにおいてプラスの言い方を意識します。それをお客様役がチェックし、マイナスの印象を受けた言い方については改善します。
5 プレゼンは緻密な組み立てが必要
お客様に商品・サービスを提案するプレゼンの訓練にも事前準備が必要です。プレゼンの目的や内容を覚えるのはもちろん、「どこにどのくらいの時間を掛けて話すか」をあらかじめ組み立てなければなりません。
例えば、資料1ページごとに何分間話をするかという進行表を作っておくのもよいでしょう。聞き役は、進行表を見ながら、想定時間をオーバーしたページをチェックしてプレゼンする側にフィードバックし、調整しながら全体を仕上げます。
こうした準備や訓練は自信につながります。プレゼンは緊張するので、「お客様が怖い」という気持ちが全くなくなることはないかもしれませんが、自信がつけば、必要以上に萎縮せずに済むでしょう。
また、聞き役には、厳しい上司や先輩がよいかもしれません。プレゼン後の質疑応答のロープレでは、聞き役がわざと答えにくい質問をするのもよいでしょう。厳しい状況を想定して訓練をしておけば、本番で楽に話せるようになるでしょう。
6 「堂々と話す」訓練
プレゼンで大切なのは、相手に伝わるよう、堂々と話すことです。いくら提案の内容が良くても、早口過ぎたり声が小さかったり、自信がなさそうな話し方では、相手に与える印象が良くありません。
人は自分の話し方に影響されます。小さい声で自信がなさそうに話していると、本当に自信がなくなり、「お客様が怖い」という気持ちが強くなるものです。訓練のときから大きな声でゆっくり話すよう心掛けましょう。
また、自分の言葉で話すことも大切です。上司から言われた通りのことを説明しているだけでは深みがなく、相手に伝わりません。お客様の前では、緊張してなおさら自分で言っていることが分からなくなるでしょう。
プレゼンの訓練をしていると、どうしても話しにくいところが出てきたりしますが、これも「自分の言葉になっていない」のが原因です。こうした場合は、話す内容や資料をもう一度見直して、自分の言葉で説明しやすいように変えていくとよいでしょう。
7 失敗は、あっていい
プレゼンには自信があるものの、その後にお客様から質問されるのが怖いという営業担当者も少なくありません。想定問答集は作るものの、リアルのビジネスではお客様が想像もしないような質問をしてくるのが常だからです。
これは対面のプレゼンに限らず、電話でも同じです。営業担当者はお客様からの質問にうまく答えられないと「失敗した」「お客様が怖い」と思いがちですが、分からないことを「分からないので確認します」と答えるのは恥ずかしいことではありません。
「お客様が怖い」と萎縮する気持ちは、裏を返せば「うまくいかなかったらどうしよう」「嫌な思いをしたくない」「恥ずかしい思いをしたくない」という失敗を恐れる気持ちでもあります。
こうした気持ちにとらわれ過ぎてお客様と接することを避けていては、結果を出すことはできません。たとえ失敗したとしても、それは貴重な経験です。何もしないでいるより、一歩前に進んでいるのです。
以上(2018年11月)
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