書いてあること
- 主な読者:商品開発や営業活動に悩む担当者を中心とした、幅広いビジネスパーソン
- 課題:「お客様の声」を聞けていない。聞けてもどう活かすかイメージができない
- 解決策:まず、基本的な活かし方「お客様のニーズ把握」「社員の誇り」「会社の未来」の3つを実践する
1 お客様の「生の声」は、集められても活かせない?
どのような商品・サービスにも、使ってくださるお客様がいます。企業は、良い意見も悪い意見も、お客様の「生の声」(お客様自身の声)を大事にしなければなりません。とはいえ、アンケートやヒアリングなどで「生の声」を知っても、それを活かせていない企業も多いのではないでしょうか。
そこで本稿では、基本的で分かりやすい「生の声」の3つの活かし方、「お客様のニーズ把握」「社員の誇り」「会社の未来」をご紹介します。どれも目新しいことではありませんが、改めて「なぜお客様の生の声を聞くのか」について、考えてみることができるでしょう。
なお、本稿でいう「生の声」は、直接会って話すことに加え、電話、メール、アンケート、オンラインミーティングなども含みます。本稿の後半で、お客様から「生の声」をいただく際のポイントもまとめていますので、御社の日ごろの活動にお役立てください。
2 「生の声」の3つの活かし方
1)お客様のニーズ把握
ここでは、お客様からいただいた「生の声」の活かし方を考えます。まず、第一に、「生の声」で、お客様のニーズを把握することができます。お客様と接する機会をたくさんつくれば、お客様の発する言葉、思い、好き(嫌い)などを共有できます。
実際に、あるサービス業では、お客様にインタビューをしたおかげで、なぜ自分たちのサービスを導入してくださったのかという思いや、お客様の仕事に対する情熱などが初めて分かりました。その後、社員たちはお客様のことを積極的に知ろうとするようになりました。
こうしてお客様の思いを知ることができるようになれば、会話の中で、お客様自身も気付いていなかったニーズが明らかになるかもしれません。それに対応してお客様に喜んでいただくことができれば、これほどうれしいことはないでしょう。
2)社員の誇り
どのような社員も、直接お客様から「ありがとう。これがとても役に立ったよ」と言われたら、うれしく感じるものです。また、逆に直接お叱りを受けたら、「申し訳ない、二度とこういうことをしてはいけない」と実感することができます。
つまり、お客様の「生の声」はある意味、経営者や上司の言葉より、ずっと社員の心に響くのです。実際にある製薬会社では、営業以外の社員が直接お客様と話す機会をつくったことで、自分たちの仕事の意義が感じられ、とても喜んだといいます。
社員に喜びと誇りを感じてもらうには、お客様とたくさん接することが一番です。そして、社員一人ひとりがいただいたお客様からの「生の声」を、多くの社員の目に触れるよう、社内で共有することも大切です。
お客様から言われてうれしかったことを朝礼で発表したり、社内報や社内ブログなどで紹介したりするのもよいでしょう。こうして、社員一人ひとりが、お客様から「生の声」をいただくことを誇りに思える風土づくりも欠かせません。今日からやってみましょう。
3)会社の未来
お客様からの「生の声」を常に確認していれば、それは、次のビジネスのヒントにもなります。実際に、お客様に「商品への不満足」などをヒアリングした結果を活かしてPB(プライベートブランド)商品を開発し、ヒットさせているオフィス用品メーカーもあります。
また、お客様からの「生の声」を、会社のウェブサイトやSNSなどで社外に向けて発信するのもよいでしょう。会社として大切にしているのは、お客様からの「生の声」と、それを誇りに思っている社員たちであることを、感謝とともに広く伝えるのです。
時には、「会社として大切にしていること」に賛同した人が、一緒に働きたいと言ってくれるかもしれません。このように、お客様からの「生の声」は、ビジネスのヒントや賛同してくれる人が見つかるなど、会社の未来につながる可能性を秘めています。
3 「生の声」をいただく際に実践したい6つのポイント
お客様から「生の声」をいただくときは、どうすればお客様が「生の声」を発しやすくなるかを考えることが大切です。中には、新型コロナウイルス感染症の予防のため、「対面じゃなくオンラインのほうがいい」というお客様もいるかもしれません。そうしたお客様には、安心して話せる環境づくりも重要です。ここでは、そうしたポイントを6つに分けてご紹介します。
1)準備をする
質問の項目などをあらかじめ決めておく他、お客様のことや、自分たち自身のことについてもしっかり予習しておきましょう。その際には、3C(Customer、Competitor、Company)の視点が参考になります。お客様にとっての顧客と競合、自分たちの競合、商品・サービスなどの状況を確認しておきます。
また、SNSなどでお客様が最近関心のありそうなこともチェックしておけば、アイスブレイクや質問などに使えます。話の主役はあくまでもお客様です。お客様が話してくださったことを深掘りする質問をするためにも、しっかりとした下準備が必要です。
2)雰囲気をつくる
「生の声」をいただくときは、何よりも、お客様が話しやすい雰囲気づくりが大切です。常に、「どうすればお客様が気持ち良く話ができるか」という視点で考えましょう。時に笑い、手をたたくなど、お客様の話にリアクションするのは、まず基本です。
また、関係性や状況にもよりますが、お客様のほうが緊張していたり、構えていたりする場合があります。服装や持ち物、最近の出来事など、お客様が軽いトーンで話ができそうな話題でアイスブレイクし、場をリラックスさせるのも一策です。
3)趣旨を伝える
お客様には、初めに趣旨をしっかりとお伝えしなければなりません。時間を割いてくださったことへのお礼とともに、「生の声」をいただくことで、今後もっとお客様の役に立てるようになりたいという目的を伝えましょう。
こうした前向きな趣旨をお伝えすれば、お客様も、自分(お客様)が言ったことが何につながるかが分かるので、日ごろ「もっとこうしてほしい」と思っていることや、至らない点(悪い点)を、より言いやすくなるかもしれません。
4)思いを聞く
「生の声」をいただくときは、商品・サービスの機能などのことだけでなく、できるだけ、お客様の思いを引き出したいものです。それが本当に「お客様のためになること」「お客様のニーズ」につながっていくからです。
そこで、「どのような思いで商品・サービスを導入してくださったのか」「日ごろ、どのようなことを考えて活用していただいているか」「お客様ご自身が実現したいことはどのようなことか」といったことを質問するようにしましょう。
5)継続する仕組みをつくる
お客様からいただいた「生の声」は、「いただきっぱなし」ではいけません。できるだけ対応を試み、実現を目指します。途中経過でもいいので、お客様にはいただいた「生の声」を、次にどのように活かそうとしているかをお知らせしましょう。
また、お客様から「生の声」をいただく取り組みは、「その後の報告」も含めて、実践し続け、バージョンアップし続けることが大切です。「月に一度は必ず『生の声』をいただく」など、定期的に継続する仕組みをつくりましょう。
6)オンラインなど非対面の選択肢も用意する
今どきは、ウェブ会議ツールを使ったオンラインミーティングなど、非対面でお客様から「生の声」をいただく用意も欠かせません。その際、お客様のご要望などによっては、事前にウェブ会議ツールを実際につないでリハーサルしてみるなどの準備が必要です。
また、オンラインミーティングでは、対面よりもリアクションを大きくすることを心掛けましょう。その他、背景をお客様ゆかりの土地の写真にする、質問項目が分かりやすいイラストを準備するなど、対面ではないオンラインだからこそ、細かい配慮が欠かせません。
以上(2020年10月)
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画像:rh2010-Adobe Stock